JP5896771B2 - 耐雷ファスナの取付治具、航空機の組立方法 - Google Patents
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Description
このとき、ファスナ部材は、ピン状のファスナ本体を、翼パネルおよび翼内部の構造部材の双方に形成された貫通孔に翼の外部側から挿入し、その先端部を翼の内部側から締結金具で固定することで、翼パネルと構造部材とを締結する。
また、この他にも翼内部や胴体部で、翼パネル以外の構造部材や装備品の固定用の部材もファスナ部材によって締結・固定されている。
このとき、ファスナ部材は、ピン状のファスナ本体を、互いに固定される部材の双方に形成された貫通孔の双方を通過するように挿入し、その先端部を締結部材(カラー)で固定することで双方の部材を締結する。
なお、固定される翼パネルまたは部材は2つに限らない。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、シーラント材が剥がれるのを確実に防ぐことのできる耐雷ファスナ、航空機、治具、航空機の組立方法を提供することを目的とする。
また、治具を用いることで、キャップを作業者が指で押しつぶしてしまったりするのを防ぐことができる。
このように、キャップが押し戻されてキャップの開口側の端面が翼パネル等の部材から離れてしまうと、ここに隙間が生じ、アークの封じ込めが行えなくなってしまう。
そこで、キャップの装着時、キャップがキャップ外に流れ込んでキャップの内圧が下がるまでの間、キャップを作業者が手で押さえている必要がある。
これに対し、治具の先端部に、第一の部材または第二の部材に当該治具を吸着させる磁石または吸引手段を設けることもできる。これにより、治具から手を離しても治具によりキャップをファスナ部材の軸部に押し付けたままとすることができ、作業効率が高まる。
図1は、本実施の形態における耐雷ファスナ、航空機、治具、航空機の組立方法を適用した航空機の機体を構成する翼の一部の断面図である。
この図1(a)に示すように、航空機の翼20は、その外殻が、例えば炭素繊維と樹脂との複合材料であるCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)や、アルミ合金等の金属材料からなる翼パネル(第一の部材)21によって形成されている。翼20の内部に設けられる、補強のための構造材や燃料タンク、各種の機器が、アルミ合金等の金属材料により形成されたステー等の部材(第二の部材)22を介して翼パネル21に固定されている。そして、ステー等の部材22は、ファスナ部材24によって翼パネル21に取り付けられている。
ファスナ本体25およびカラー26は、強度の面から一般に金属材料により形成される。ピン状をなしたファスナ本体25は、先端部にネジ溝が形成され、後端部は先端部側より拡径した拡径部25bとされている。このファスナ本体25は、翼パネル21および部材22を貫通して形成された孔21a、22aに翼20の外側から挿入され、後端部の拡径部25bを翼パネル21の外表面に突き当てた状態で、先端部を翼20の内方に突出させる。
カラー26は、筒状で、その内周面にはファスナ本体25のネジ溝に噛み合うネジ溝が形成されている。このカラー26は、翼20の内方に突出したファスナ本体25のネジ溝にねじ込まれる。これによって、翼パネル21と部材22とは、ファスナ本体25の拡径部25bとカラー26とによって挟み込まれ、部材22が翼パネル21に固定されている。
キャップ30は、断面円形で、一端部30a側のみが開口し、他端部30b側に向けてその内径および外径が漸次縮小する有底状または傘状の形状とされている。このキャップ30は、シーラント材34と同種の材料を用いて予め成形したものを用いることができる。これ以外にも、キャップ30は、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、ポリイミド、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂)、ナイロン樹脂等の絶縁性を有した樹脂により形成することもできる。
治具50は、キャップ30を収容する凹部51を有している。凹部51は、一方に開口部51aを有した有底状で、凹部51の底部側は、キャップ30の他端部30bの外周形状に沿って密着する形状を有したキャップ保持面51bとされている。凹部51の開口部51a側は、キャップ保持面51b側に対してその外径が漸次大きくなる拡径面51cが形成されている。拡径面51cは、キャップ30の軸線に沿った断面で見たときに、一定の率で拡径する直線状の断面としても良いし、キャップ30側に凸となる湾曲状の断面形状としてもよい。
キャップ30は、装着時にこの凹部51内に収容される。この状態で、他端部30bがキャップ保持面51b側に嵌り込み、開口部51a側においては、一端部30aの外周面30dと拡径面51cの間に、一端部30a側に向けて漸次拡大するクリアランスCが形成される。
ここで、キャップ30をファスナ本体25に傾いた状態で押し付けると、シーラント材34は、キャップ30の全周から均等に溢れ出てくるわけではなく、キャップ30の周方向の一部から集中的に溢れ出てくることがある。そのような場合、溢れ出てきたシーラント材34は、治具50の拡径面51cによって、流れの方向が矯正され、最終的に、キャップ30がファスナ本体25に正対してその全周が部材22の表面22fに突き当たるときには、シーラント材34が拡径面51cの内側でキャップ30の全周に均等に回り込む。
また、図2(b)に示すように、部材22が非磁性の材料の場合、治具50の先端部に磁石70を設ける一方、部材22の背面に磁性を有した材料からなるプレートやリング72を配置し、磁石70をプレートやリング72に吸着させることによって、治具50を部材22の表面22fに保持することもできる。
さらに、部材22の表面22fに押し付けた治具50の内部空間の雰囲気を吸引して負圧とする吸引手段を有し、この負圧によって治具50を部材22の表面22fに保持させるようにしても良い。
上記した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の主旨の範囲内であれば、様々な変形例を許容する。以下、その変形例を例示する。なお、以下に説明する各形態においては、基本的な構成は上記実施形態に共通しているため、上記実施形態と差異のある構成のみを説明し、共通する構成についてはその説明を省略する。
図3に示すように、キャップ30は、一端部30aの外周縁部に、その外径が他端部30b側から一端部30aに向けて漸次小さくなるテーパ面30cを形成することもできる。このテーパ面30cは、部材22の表面22fに対する交差角度θが30〜60°程度となるように形成すれば良く、キャップ30をその軸線に沿った断面で視たときに、テーパ面30cは直線状であっても良いし、内方に凹んだ形状、外方に膨らんだ形状とすることもできる。
これにより、テーパ面30cと部材22の表面22fとの間に介在するシーラント材34Bに、その外周側の環状の外周シーラント材60が一体化されるため、この環状の外周シーラント材60が脱落するのを防ぐことができる。
また、キャップ30を装着する終盤で、キャップ30と部材22との間に挟み込まれたシーラント材34の圧力と弾性とにより、キャップ30が部材22から離間する方向に押し戻されたとしても、テーパ面30cと部材22の表面22fとの間に介在するシーラント材34Bが十分な厚さを有している。したがって、キャップ30の一端部30aと部材22の表面22fとが離れても、シーラント材34Bが途切れにくく、また、その外周側で環状に盛り上がった外周シーラント材60を吸い込むことができ、シーラント材34はより一層途切れにくくなっている。
したがって、キャップ30が浮き上がった場合であっても、キャップ30と部材22との界面において、アークを確実に封じ込めることができ、高い信頼性を有した耐雷ファスナを構成することができる。
これによって、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
これによって、溢れ出てきたシーラント材34によって押し出される治具50内の雰囲気を外部に排出することができる。
このような貫通孔40を有するキャップ30では、キャップ30をファスナ本体25に押し付けると、キャップ30内に充填されたシーラント材34が、キャップ30の一端部30aの開口部から溢れ出るとともに、貫通孔40からも溢れ出てくる。
これにより、キャップ30内のシーラント材34の圧力が高まるのを抑え、キャップ30が部材22から離間する方向に押し戻されるのを防ぐことができる。
また、キャップ30の外形形状はいかなるものであっても良い。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
21 翼パネル(第一の部材)
21a 孔
22 部材(第二の部材)
22a 表面
24 ファスナ部材
25 ファスナ本体
26 カラー(締結部材)
30 キャップ
30a 一端部
30b 他端部
30c テーパ面
30d 外周面
34、34B シーラント材
40 貫通孔
50 治具
51 凹部
51a 開口部
51b キャップ保持面
51c 拡径面
51d 段部
55 貫通孔
57 凹部
60 外周シーラント材
61 傾斜面
70 磁石
72 リング
Claims (3)
- 航空機の機体を構成する第一の部材に第二の部材を締結するため、前記第一の部材および前記第二の部材を貫通するとともに、前記第一の部材および前記第二の部材の少なくとも一方の側に突出する軸部を有するファスナ部材と、
前記第一の部材に前記第二の部材を締結するために前記ファスナ部材の前記軸部に装着される締結部材と、
前記第一の部材および前記第二の部材の少なくとも一方の側に突出した前記ファスナ部材の前記軸部を覆うように取り付けられる絶縁性材料からなるキャップと、
前記キャップの内部に充填されて、前記キャップと前記ファスナ部材との間の空間を塞ぐ絶縁性材料からなるシーラント材と、
前記キャップの先端部の外周面と当該先端部が突き当たる前記第一の部材または前記第二の部材の表面との境界部に、前記第一の部材または前記第二の部材の表面に接近するにつれてその外径が漸次大きくなる外周シーラント材と、を備える耐雷ファスナの前記キャップを前記ファスナ部材の前記軸部を覆うように取り付けるための治具であって、
前記キャップを収容する凹部を備え、
前記凹部は、前記キャップの先端部とは反対側の頭部の外周面に沿うキャップ保持面と、
前記キャップの先端部側で、前記キャップの前記外周面に対して外周側に拡径し、前記キャップの先端部の前記外周面との間にクリアランスを形成する拡径面と、を有することを特徴とする治具。 - 前記治具の先端部に、前記第一の部材または前記第二の部材に当該治具を吸着させる磁石または吸引手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の治具。
- 航空機の機体を構成する第一の部材および第二の部材にファスナ部材の軸部を貫通させて、前記第一の部材および前記第二の部材の少なくとも一方の側に突出させるとともに、前記ファスナ部材の前記軸部に締結部材を装着する工程と、
前記第一の部材および前記第二の部材の少なくとも一方の側に突出した前記ファスナ部材の前記軸部および前記締結部材を覆うように、予め内部にシーラント剤を充填しておいたキャップを取り付ける工程と、を有し、
前記キャップを取り付ける工程では、請求項1または2に記載の前記治具の前記凹部に前記キャップを収容した状態で、前記キャップを前記ファスナ部材の軸部および前記締結部材に向けて押し付けつつ、前記キャップ内に充填された前記シーラント剤を、前記キャップの開口部から前記キャップ外にあふれ出させるとともに、溢れ出た前記シーラント材を前記キャップの前記拡径面で成形することを特徴とする航空機の組立方法。
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