JP5713730B2 - 樹脂組成物、成形方法および成形品 - Google Patents

樹脂組成物、成形方法および成形品 Download PDF

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Description

本発明は、ポリ乳酸樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、相溶化剤(C)および結晶核剤(D)を含有する樹脂組成物に関するものである。
一般に、成形用の原料としては、ポリプロピレン(PP)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、ポリアミド(PA6、PA66)、ポリエステル(PET、PBT)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂が使用されている。しかしながら、このような樹脂から製造された成形品は、成形性、機械的強度に優れているが、廃棄する際、ゴミの量を増すうえに、自然環境下で殆ど分解されないために、埋設処理しても半永久的に地中に残留する。
一方、近年、環境保全の見地から、ポリ乳酸をはじめとする生分解性ポリエステル樹脂が注目されている。生分解性樹脂の中でも、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどの樹脂は、大量生産可能なためコストも安く、有用性が高い。そのうち、ポリ乳酸樹脂は、既にトウモロコシやサツマイモ等の植物を原料として製造可能となっており、使用後に焼却されても、これらの植物の生育時に吸収した二酸化炭素を考慮すると、炭素の収支として中立であることから、特に、地球環境への負荷の低い樹脂とされている。
しかしながら、ポリ乳酸樹脂そのものは、成形性や物性性能の点で、従来使用されている各種成形用樹脂に比べて劣っている。そこで、成形性や物性性能の改善のために、種々の添加剤を添加してポリ乳酸樹脂そのものを改質する方法や、あるいは、従来使用されている各種樹脂をポリ乳酸樹脂と混合(アロイ化)するなどの方法がとられている。
従来使用されている各種樹脂のうち、ポリオレフィン樹脂は、その経済的なメリットや、通常のプラスチック用途に充分対応できる物性性能の点から、広範囲に用いられている。したがって、ポリオレフィン樹脂とポリ乳酸樹脂とのアロイ化によって、ポリオレフィン樹脂に低環境負荷性を付与すると、特に二酸化炭素の固定化の面で、大きな貢献となる。
しかしながら、ポリオレフィン樹脂は本来ポリ乳酸樹脂との相溶性に乏しく、そのままでは、外観や性能の点から、アロイ化は困難である。これに関して、従来、各種相溶化成分を配合することにより両者を充分に相溶させ、外観や性能の問題をクリアする手法が各種提案されている。
一方、ポリオレフィン樹脂とポリ乳酸樹脂のアロイにおいて、両者の相溶度合いの改善に伴って、ポリオレフィン樹脂が元来持っている、通常の日用品用途に対応するレベルの耐熱性は、ポリ乳酸樹脂の低い耐熱性に引き寄せられる形で、逆に失われていく。
これまで、ポリオレフィン樹脂とポリ乳酸樹脂のアロイについては、ポリ乳酸樹脂の結晶化を促進して、耐熱性を改善する提案が数多くなされている。例えば、特許文献1や2には、無機充填材としてのタルクや、結晶核剤としてのトリメシン酸アミド系化合物やステアリン酸アミド系化合物などのアミド化合物を添加する方法が開示されている。
しかし、このような方法では、ポリ乳酸樹脂を結晶化させるために、成形時の金型温度が100℃近傍、少なくとも70〜80℃以上の温度であることが必要であり、ポリオレフィン樹脂の成形条件として一般的な、室温近傍の金型温度での成形条件に直接適用することは困難であった。この点は、通常のポリオレフィン樹脂用途への、ポリ乳酸樹脂アロイの置き換えに際して、大きな障害となるものであった。
また、これらの化合物の添加は、ポリオレフィン樹脂とポリ乳酸樹脂との相溶性に悪影響を及ぼすことがある。相溶性に劣る樹脂組成物を用いて射出成形により成形品を得ると、金型内で溶融樹脂の流れが合流して融着した部分に細い線(ウェルドライン)が発生する不良が生じやすい。ウェルドラインは、融着不良によって生じたものであるので、成形品の外観を損なうものであり、また、融着した部分(ウェルド部)は特に曲げ強度(ウェルド強度)に劣るものである。
中でもポリマーアロイは、本質的には非相溶系のポリマーを組み合わせたものであるため、射出成形時にはこのようなウェルドラインの発生が顕著となり、得られる成形品はウェルド強度が低下したものとなりやすい。
特開2009−185244号公報 特開2010−100759号公報
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、既存のポリオレフィン系樹脂と同等の耐熱性を有し、特に射出成形において、ウェルドラインの発生を抑えることができ、充分なウェルド強度を備えた射出成形品を得ることができる、ポリ乳酸樹脂を配合したポリオレフィン樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸樹脂とポリオレフィン樹脂と相溶化剤とからなる組成物に、特定の結晶核剤を添加することにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)と相溶化剤(C)と結晶核剤(D)とを含有する樹脂組成物であり、ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)との質量比率(A/B)が20/80〜60/40であり、ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の合計100質量部に対して、相溶化剤(C)の含有量が0.5〜20質量部であり、結晶核剤(D)の含有量が0.01〜10質量部であり、ポリオレフィン樹脂(B)がポリプロピレン樹脂であり、相溶化剤(C)が、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)またはエチレン・グリシジルメタクリレート共重合体であり、結晶核剤(C)がアルカントリカルボン酸アミド系化合物であることを特徴とする樹脂組成物
(2)ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の合計100質量部に対して、結晶核剤(D)の含有量が0.05〜2質量部であることを特徴とする(1)記載の樹脂組成物
(3)スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)のスチレン含有量が50質量%以上であることを特徴とする(1)または(2)記載の樹脂組成物。
)ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の合計100質量部に対して、(メタ)アクリル系樹脂(E)0.1〜5質量部を含有することを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載の樹脂組成物。
)上記(1)〜()のいずれかに記載の樹脂組成物を金型温度50℃未満で射出成形することを特徴とする成形方法。
)上記(1)〜()のいずれかに記載の樹脂組成物にて形成されていることを特徴とする成形品。
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂とポリオレフィン樹脂とを含有する樹脂組成物であり、結晶核剤として、アルカントリカルボン酸アミド系化合物を用いることにより、主にポリオレフィン樹脂の結晶化が促進され、これによりポリオレフィン樹脂と同等の耐熱性を有するものとなり、成形性にも優れたものとなる。そして、本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂とポリオレフィン樹脂の相溶性も良好であるため、射出成形において、ウェルドラインの発生を抑えることができ、ウェルド強度にも優れた射出成形品を得ることができる。また、環境への負荷の低い熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。この樹脂組成物を各種用途に用いることで、低環境負荷材料であるポリ乳酸樹脂の使用範囲を大きく広げることができ、産業上の利用価値はきわめて高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)と、相溶化剤(C)と、結晶核剤(D)としてのアルカントリカルボン酸アミド系化合物とを含有する。
本発明においてポリ乳酸樹脂(A)としては、耐熱性、成形性の面からポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、およびこれらの混合物または共重合体を用いることができるが、生分解性および成形加工性の観点からは、ポリ(L−乳酸)を主体とすることが好ましい。
また、ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸樹脂(A)の融点は、光学純度によってその融点が異なるが、本発明においては、成形品の機械的特性や耐熱性を考慮すると、融点を160℃以上とすることが好ましい。ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸樹脂(A)において、融点を160℃以上とするためには、D−乳酸成分の割合を約3モル%未満とすればよい。
さらに、樹脂組成物の成形性および耐熱性の点から、ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸樹脂(A)においては、D−乳酸成分の割合が0.6モル%以下であることが、特に好ましい。市販のポリ乳酸樹脂としては、たとえば、トヨタ社製ポリ乳酸樹脂『S−09』、『S−12』、『S−17』などが挙げられる。
ポリ乳酸樹脂(A)の190℃、荷重21.2Nにおけるメルトフローインデックス(例えば、JIS規格K−7210(試験条件4)による値)は、0.1〜50g/10分であることが好ましく、0.2〜20g/10分であることがより好ましく、0.5〜10g/10分であることがさらに好ましい。メルトフローインデックスが50g/10分を超える場合は、溶融粘度が低すぎて成形品の機械的特性や耐熱性が劣る場合がある。また、メルトフローインデックスが0.1g/10分未満の場合は成形加工時の負荷が高くなって、操業性が低下する場合がある。
ポリ乳酸樹脂(A)は公知の溶融重合法で、あるいは、さらに固相重合法を併用して製造される。また、ポリ乳酸樹脂(A)のメルトフローインデックスを所定の範囲に調節する方法として、メルトフローインデックスが大きすぎる場合は、少量の鎖長延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、ビスオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を用いて樹脂の分子量を増大させる方法が挙げられる。逆に、メルトフローインデックスが小さすぎる場合はメルトフローインデックスの大きなポリエステル樹脂や低分子量化合物と混合する方法が挙げられる。
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(B)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリブテン、ポリイソブチレン、シクロオレフィン樹脂などを挙げることができる。なかでも、ポリプロピレン、ポリエチレンが好ましく、ポリプロピレンが最も好ましい。なお、耐熱性・耐久性の面からはアイソタクチックポリプロピレンが好ましい。ポリオレフィン樹脂(B)は有機過酸化物などで三次元架橋されたものでもよいし、一部が塩素化されていてもよいし、酢酸ビニル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸などとの共重合体でもかまわない。
ポリオレフィン樹脂(B)の分子量は、特に限定されないが、その指標となる190℃、2.16kgにおけるメルトフローインデックスが0.1〜50g/10分の範囲であれば好ましく使用することができる。さらに好ましくは、0.5〜50g/10分の範囲である。
ポリオレフィン樹脂(B)のうち、ポリプロピレン樹脂としては例えば、日本ポリプロ製『ノバテック』シリーズの各種グレードが挙げられる。
本発明の樹脂組成物において、ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)との質量比率(A/B)は、20/80〜60/40であることが必要であり、中でも25/75〜50/50であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂(A)が20質量%未満では、ポリ乳酸による低環境負荷性を充分に発揮することが困難となって、環境への貢献が小さく、一方、ポリ乳酸樹脂(A)が60質量%を超えると、すなわちポリオレフィン樹脂(B)が40質量%未満になると、耐熱性や耐衝撃性、成形性などのポリオレフィン樹脂(B)が本来持つ性能を充分に発揮することができなくなる。
ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)とを溶融混合するに際しては、ポリ乳酸樹脂(A)の190℃におけるメルトフローインデックス(MI)と、ポリオレフィン樹脂(B)の同温度におけるメルトフローインデックス(MIPO)との比(MI/MIPO)は、0.1〜10であることが好ましく、0.2〜8であることがより好ましい。なお、メルトフローインデックスの測定温度として190℃における値を採用するのは、メルトフローインデックスにはこの測定温度が一般に用いられていること、および本発明の樹脂組成物の製造時におけるポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)との溶融混練温度に近いことの理由による。
本発明において、相溶化剤(C)は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の相溶性を改善し、特に射出成形時のウェルド部の融着を強化し、成形品のウェルド強度を向上することを目的として配合されるものである。
相溶化剤(C)としては、各種のものを用いることができ、具体的には、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)、エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体、エポキシ変性の各種ポリマーなどが挙げられる。ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の相溶化効果の点で好適なものとしては、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)、および、エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体が挙げられる。
そのうち、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)を用いることで、好ましいウェルド融着効果が得られる。さらにスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)として、スチレン含有量が50質量%以上のものを用いることで、特に好ましいウェルド融着効果が得られる。
市販のスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)としては、例えば、旭化成社製『タフテック』シリーズや、JSR社製『ダイナロン』シリーズに含まれるものが挙げられる。一方、エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体としては、例えば、住友化学社製『ボンドファースト』シリーズに含まれるものが挙げられる。
相溶化剤(C)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.5〜20質量部であることが必要であり、0.8〜15質量部であることが好ましい。相溶化剤(C)の含有量が0.5質量部未満では、必要な効果を得ることができず、含有量が20質量部を超えた場合、得られる成形品の耐熱性が低下することがある。
本発明において、結晶核剤(D)は、主にポリオレフィン樹脂(B)の結晶化を促進し、高い耐熱性を得るために配合されるものである。結晶核剤(D)として、主にポリオレフィン樹脂の結晶化を促進できる点、耐熱性向上への効果が高い点およびウェルドラインの発生を抑えることができる点から、アルカントリカルボン酸アミド系化合物を用いることが必要である。
アルカントリカルボン酸アミド系化合物としては、種々のものを用いることができるが、アルカントリカルボン酸成分と、アルキルアミン成分とからなるアミド化合物が好ましく、具体的には、アルカントリカルボン酸成分としては、1,2,3−プロパントリカルボン酸が、また、アルキルアミン成分としては、アルキル(無)置換シクロヘキシルアミンが好ましい。アルカントリカルボン酸アミド系化合物の具体例としては、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(シクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2,3−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2,4−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(3,4−ジメチルシクロヘキシルアミド)等が挙げられる。
市販の結晶核剤(D)としては、例えば、新日本理化社製トリス(メチルシクロヘキシル)プロパントリカルボキサミド『リカクリアPC1』(1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド))などが挙げられる。
結晶核剤(D)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが必要であり、0.05〜2質量部であることが好ましい。結晶核剤(D)の含有量が0.01質量部未満では、ポリオレフィン樹脂(B)の結晶化を促進することができず、耐熱性に優れた樹脂組成物とすることができない。一方、結晶核剤(D)の含有量が10質量部を超えた場合、ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の相溶性が阻害され、得られる成形品はウェルド強度の低いものとなり、また耐衝撃性も低いものとなる。
本発明において、樹脂組成物は、(メタ)アクリル系樹脂(E)を含有することが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂(E)の配合により、相溶化剤(C)自体の、ポリ乳酸樹脂(A)やポリオレフィン樹脂(B)への相溶性が改善され、そのことにより、相溶化剤(C)によるウェルド融着改善効果をさらに促進することが可能となる。
(メタ)アクリル系樹脂(E)としては種々のものを用いることができ、一般成形用のPMMA系樹脂などを好適に用いることができる。耐熱性への影響の点から、単体での荷重たわみ温度(1.8MPa)が90℃以上である耐熱タイプが好ましい。市販のものとしては、例えば、三菱レイヨン社製『アクリペットVH』などが挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂(E)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.5〜3質量部であることがより好ましい。(メタ)アクリル系樹脂(E)の含有量が0.1質量部未満では、必要な効果を得ることができず、含有量が5質量部を超えた場合、耐衝撃性などに悪影響を与えることがある。
本発明の樹脂組成物にはその特性を大きく損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等を添加することができる。難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、リン系難燃剤や水酸化金属などが挙げられる。熱安定剤や酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物などが例示される。なお、本発明の樹脂組成物にこれらを混合する方法は特に限定されない。
ポリ乳酸樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、相溶化剤(C)および結晶核剤(D)を混合して本発明の樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されないが、一軸あるいは二軸の押出機を用いて溶融混練する方法を挙げることができる。混練状態をよくする意味で二軸の押出機を使用することが好ましい。混練温度は(ポリ乳酸樹脂(A)の融点+5℃)〜(ポリ乳酸樹脂(A)の融点+100℃)の範囲が、また、混練時間は20秒〜30分が好ましい。この範囲より低温や短時間であると、混練や反応が不充分となったり、逆に、高温や長時間であると樹脂の分解や着色が起きる場合があり、ともに好ましくない。
本発明の樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、および、シート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形方法により、各種成形品とすることができる。とりわけ、射出成形法を採ることが好ましく、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等も採用できる。
本発明の樹脂組成物に適した射出成形条件の一例を挙げれば、シリンダ温度は、樹脂組成物の融点または流動開始温度以上、好ましくは190〜270℃とするのが適当である。成形温度が低すぎると成形品にショートが発生するなど操業性が不安定になったり、過負荷に陥りやすく、逆に、成形温度が高すぎると樹脂組成物が分解し、得られる成形品の強度が低下したり、着色する等の問題が発生しやすく、ともに好ましくない場合がある。
また、金型温度は、樹脂組成物の(融点−20℃)以下とするのが適当であり、本発明の樹脂組成物は、アルカントリカルボン酸アミド系化合物を結晶核剤(D)として含有するため、50℃未満の金型温度で射出成形しても耐熱性に優れた成形品を得ることができる。したがって、本発明の成形方法は、本発明の樹脂組成物を金型温度50℃未満で射出成形することを特徴とするものであり、中でも金型温度25℃〜50℃で射出成形することが好ましく、耐熱性やウェルド強度の点から金型温度30℃〜50℃が特に好ましい。この金型温度条件は簡便な成形設備であっても容易に実現可能な条件である。
本発明の成形品は、本発明の樹脂組成物にて形成されているものである。本発明の成形品の具体例としては、パソコン周辺の各種部品および筐体、携帯電話部品および筐体、その他OA機器部品等の電化製品用樹脂部品、バンパー、インストルメントパネル、コンソールボックス、ガーニッシュ、ドアトリム、天井、フロア、エンジン周りのパネル等の自動車用樹脂部品等が挙げられる。また、フィルム、シート、中空成形品などとすることもできる。
そのうち、充分なウェルド強度と耐熱性を必要とされる部品において、本発明の樹脂組成物は、特に有用である。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例および比較例の樹脂組成物の評価に用いた測定法は次のとおりである。
(1)ウェルド強度:
得られた樹脂組成物(ペレット)を85℃×10時間熱風乾燥したのち、東芝機械社製IS−80G型射出成形機を用いて金型表面温度30℃(温度調整なし)で、ASTM型ウェルド測定用試験片(両端から樹脂が充填され、中央部でウェルド形成)を得た。ISO178に従って、この試験片の曲げ強度を測定した。ウェルド強度は、22MPa以上であることが好ましく、27MPa以上であることがより好ましい。
(2)耐熱性:
得られた樹脂組成物(ペレット)を85℃×10時間熱風乾燥したのち、東芝機械社製IS−80G型射出成形機を用いて金型表面温度30℃(温度調整なし)で、一般物性測定用試験片(ISO型)を得た。ISO 75に準拠し、荷重0.45MPaで熱変形温度を測定した。熱変形温度は80℃以上であることが好ましい。
(3)耐衝撃性:
上記(2)と同様にして一般物性測定用試験片(ISO型)を得た。そして、ISO170に準拠してシャルピー衝撃強度[kJ/m]を測定した。シャルピー衝撃強度は、2.6kJ/m以上であることが好ましい。
また、実施例、比較例に用いた各種原料は次の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)
・カーギルダウ社製『3001D』(D体含有量1.4モル%、MI=10g/10分(190℃、2.16kgf))
・トヨタ自動車社製『S−12』(D体含有量0.1モル%、MI=8g/10分(190℃、2.16kgf))
(2)ポリオレフィン樹脂(B)
・日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂『ノバテックPP−BC03C』(MI=30g/10分(230℃、2.16kgf)、MI=10g/10分(190℃、2.16kgf))
(3)相溶化剤(C)
(3−1)スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)
・JSR社製『ダイナロン8630P』(スチレン含有量15質量%、MI=15(230℃、2.16kgf))
・旭化成社製『タフテックH1043』(スチレン含有量67質量%、MI=2.0(230℃、2.16kgf))
・旭化成社製『タフテックM1943』(スチレン含有量20質量%、MI=8.0(230℃、2.16kgf))
(3−2)エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体
・住友化学社製『ボンドファーストE』
(4)結晶核剤(D)
(4−1)アルカントリカルボン酸アミド系化合物
・新日本理化社製トリス(メチルシクロヘキシル)プロパントリカルボキサミド『リカクリアPC1』(1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド))
(4−2)タルク
・林化成社製『MW−HST』
(4−3)トリメシン酸アミド系化合物
・新日本理化社製『TF−1』
(4−4)エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド系化合物
・川研ファインケミカル社製『WX−1』
(5)(メタ)アクリル系樹脂(E)
・三菱レイヨン社製PMMA系樹脂(耐熱タイプ)『アクリペットVH』
実施例1
二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS型)を用い、ポリ乳酸樹脂(A)としての『3001D』32.0質量部、ポリオレフィン樹脂(B)としての『ノバテックPP−BC03C』68.0質量部、相溶化剤(C)としての『タフテックH1043』5.3質量部、結晶核剤(D)としてのアルカントリカルボン酸アミド系化合物『リカクリアPC1』0.2質量部、および(メタ)アクリル系樹脂(E)としての『アクリペットVH』1.1質量部をドライブレンドして押出機の根元供給口から供給し、バレル温度180℃、スクリュー回転数150rpm、吐出20kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出しを実施した。押出機先端から吐出された樹脂をペレット状にカッティングして樹脂組成物のペレットを得た。
実施例2〜12、比較例1〜8
ポリ乳酸樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、相溶化剤(C)、結晶核剤(D)、(メタ)アクリル系樹脂(E)の量、種類を変えた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。
実施例1〜12、比較例1〜8で得られた樹脂組成物の特性値の測定結果を表1、2に示す。
Figure 0005713730
Figure 0005713730
表1から明らかなように、実施例1〜12の樹脂組成物は、金型温度50℃未満で射出成形することができ、得られた成形品は、ウェルド強度、耐熱性、耐衝撃性に優れていた。
実施例のうち実施例1、2、3においては、相溶化剤(C)としてスチレンを50質量%以上含むSEBSを用い、かつ、結晶核剤(D)の配合量が特に好ましい範囲内であったため、ウェルド強度において特に優れた結果となり、かつ、耐熱性も特に優れた結果となった。
実施例3においては、ポリ乳酸樹脂(A)としてD体含有量の低いものを用いたため、耐熱性に特に優れた結果となった。
実施例7、8においては相溶化剤(C)としてSEBSを用いなかったため、ウェルド強度に改善の余地を残す結果となった。
実施例1、5、7においては、(メタ)アクリル系樹脂(E)を併用したため、それぞれ実施例2、4、8に比べて、ウェルド強度がさらに改善された。
一方、比較例1においては結晶核剤(D)が配合されていなかったため、耐熱性に劣る結果となった。比較例2〜4においては、結晶核剤(D)としてアルカントリカルボン酸アミド系化合物を用いなかったため、耐熱性、ウェルド強度、および耐衝撃性が、いずれも、好ましくない結果となった。
比較例5においては、ポリオレフィン樹脂(B)とポリ乳酸樹脂(A)の配合量が不適当であったため、耐熱性と耐衝撃性に劣る結果となった。
比較例6においては、相溶化剤(C)の配合量が過少であったため、ウェルド強度に劣る結果となった。比較例7においては、相溶化剤(C)の配合量が過多であったため、耐熱性に劣る結果となった。
比較例8においては、結晶核剤(D)の配合量が過大であったため、ウェルド強度や耐衝撃性に劣る結果となった。

Claims (6)

  1. ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)と相溶化剤(C)と結晶核剤(D)とを含有する樹脂組成物であり、ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)との質量比率(A/B)が20/80〜60/40であり、ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の合計100質量部に対して、相溶化剤(C)の含有量が0.5〜20質量部であり、結晶核剤(D)の含有量が0.01〜10質量部であり、ポリオレフィン樹脂(B)がポリプロピレン樹脂であり、相溶化剤(C)が、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)またはエチレン・グリシジルメタクリレート共重合体であり、結晶核剤(D)がアルカントリカルボン酸アミド系化合物であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の合計100質量部に対して、結晶核剤(D)の含有量が0.05〜2質量部であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
  3. スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)のスチレン含有量が50質量%以上であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。
  4. ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の合計100質量部に対して、(メタ)アクリル系樹脂(E)0.1〜5質量部を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の樹脂組成物。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の樹脂組成物を金型温度50℃未満で射出成形することを特徴とする成形方法。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の樹脂組成物にて形成されていることを特徴とする成形品。
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