JP5712428B2 - 紫外励起光源用赤色蛍光体 - Google Patents
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いて、Euを介して紫外励起光エネルギーをMnに受け渡すことによりMnが励起され、赤色発光を示すものであるが、Euにより吸収されたエネルギーの一部が青色に発光するため、観測される蛍光色は純度の低い赤色発光となる。
本発明の赤色蛍光体は、化学組成式がM3-x-yCexRyMg1-wMnwSi2O8で示され、MはBa、Sr、Caの中から選ばれる、少なくとも1種類、もしくは複数の混合物であり、RはLi、Na、Kの中から選ばれる、少なくとも1種類、もしくは複数の混合物であることを特徴とする。
すなわち化学組成においてCeのモル比が0.0≦x≦0.1であれば、任意の赤色発光を得ることができ、この範囲外では、適当な発光強度が得られないか、赤色の純度が低いものとなる。またLiまたはNaまたはK、またはそれらの混合物のモル比が0.0≦y≦2.0xであれば、任意の発光を得ることができ、この範囲外では、適当な発光強度が得られない。またMnのモル比が0.0<w≦0.4であれば、任意の赤色発光を得ることができ、この範囲外では、適当な発光強度が得られないか、赤色の純度が低いものとなる。
現行の赤色蛍光体の母体結晶がイットリウム系の化合物であることを鑑みると、製造時の原料コストの減少が見込まれる。
Ba量を変えることで容易に発光色、発光強度の調節が可能である。
M2BaMgSi2O8: Ce3+, Mn2+化合物は高温下における固相反応により合成した。Ce3+と同量のアルカリ金属イオンを添加することで、2価のイオンを取り込むべきMサイトをCe3+が占有する際の電荷補償を行った。BaCO3、SrCO3、CaCO3、塩基性炭酸水酸化マグネシウム、シリカゲルCe(OH)4、Na2CO3 を原料とし、少量のNH4Clをフラックスとして用いた。化学量論量の原料とフラックスを2-プロパノール中で4 時間、ボールミルにより粉砕、混合後、2%水素98%窒素混合ガスを用いた還元雰囲気中1200℃、4時間熱処理を行った。熱処理後、同還元雰囲気中で室温になるまで生成物を冷却し、粉体試料を得た。
(特性評価結晶相の同定)
粉体試料中に含まれる結晶相の同定を行うためにRINT-2200V(Rigaku)装置により、40kV、30mAの条件で発生させたCuKα線を用いて室温下で粉末X 線回折測定を行った。
(フォトルミネッセンス特性)
FP-6500(JASCO)装置を用いて室温下で粉体試料の発光スペクトル、励起スペクトルを測定した。
図1にBaCa2MgSi2O8化合物をベースとした試料の光吸収スペクトルを示す。これらの試料はX 線回折法によりglaserite 型構造をもつ単一の結晶相からなることが確認された。スペクトル形状の差異は添加された遷移(希土類)金属イオンによるものと考えられる。測定した波長域においてホスト結晶からは目立った光吸収が起こっていない(図1a)のに対し、Ceを添加した試料(図1b)では190-400nm の範囲に幅広い吸収ピークが確認される。
両発光ピーク強度は増加し、Ba(Ca1.94Ce0.03Na0.03)MgSi2O8 組成のときに最大値をとった後、減少し始めている。この結果は、両発光がCeに由来することを示している。これらの発光ピーク幅が広いことから、両発光は3 価のCeにおける5d-4f 軌道間電子遷移に由来するものといえる。一般にCe3+由来の発光ピークはスピン-軌道相互作用に基づいて基底状態が約2000cm-1 程度分裂しているため、非対称でダブレットな発光ピーク形状をしめす。図2に示した近紫外発光のピークもまた非対称な形状である。この非対称性の原因を確認するために、最小二乗法を用いて近紫外発光ピークを2つのGaussian ピークに分解し、そのエネルギー差を見積もった。結果、ピーク間のエネルギー差は約1600cm-1となり、分裂した基底状態から予測される値よりもかなり小さくなった。この結果は近紫外発光ピークが単一のCe3+イオンからの発光では説明できないことを示しており、Ce3+イオンが結晶学的に異なる環境にある複数のサイトを占有していることを示唆している。図3a と図3bにCe添加試料の近紫外ピークの両端の波長の蛍光をモニタして得られた励起スペクトルを示す。
にはみられないピークが267nm付近にみられる。一方、図3bには図3aにおいてほとんどみられない315nm付近のピークがみえる。励起スペクトル内に観測されるピークは、結晶場の影響を受けて分裂したCe3+イオンの5d 軌道エネルギーに対応しており、励起スペクトルの形状が異なるということは異なる配位環境下(異なるサイト)にCe3+イオンが存在することを示している。Eu2+イオンを添加した場合(非特許文献3)と同様に、近紫外域の発光はBaサイトを占有するCe3+イオン(Ce3+(Ba))とCa サイトを占有するCe3+イオン(Ce3+(Ca))によるものと推測される(図4)。一方、Ce 由来の近赤外発光に注目してみると、ピーク幅の広さから、やはりCe3+イオンの5d-4f軌道間電子遷移に基づくものであると考えられる。
Ce3+(Mg)の励起スペクトルは励起バンドをもたないことから、多極子間相互作用による
Forster resonance energy transfer (FRET機構)によりエネルギーがMn2+に受け渡されていると考えられる。
図5bはCeとMnを共添加したBaCa2MgSi2O8化合物の発光スペクトルである。このスペクトルにはCe単独添加した試料には存在しない発光ピークが630nm 付近にみられる。このピークはMgサイトを占有するMn2+イオン(Mn2+(Mg))の4T1(4G)-6A1(6S)遷移に由来している。この発光により、Ce、Mnを共添加した試料は紫外光照射時、深い赤色に発光してみえる。ここで特筆すべきは、Ceが共添加されていない試料からはMn2+由来の赤色発光が確認されないことである。図5cに同じ量のMn2+イオンのみが添加された試料の発光スペクトルが示されているが、この試料からは全く発光が確認されていない。この事実は、3d軌道間電子遷移はパリティ禁制、スピン禁制であるにもかかわらず、Ce共存下では効率的にMn
2+イオンが励起されることを意味している。Mn2+由来の発光をモニタした励起スペクトル(図5b)が、図3a、3bと似たスペクトル形状をもつことからCe3+(Ba,Ca)→Mn2+(Mg)のエネルギー移動が起こっていると考えられる。図6はCeの添加量を固定し、Mnの添加量を変化させた際の発光スペクトルの変化を示している。Mn添加量の増加に伴いCe3+由来の発光強度が減少し、Mn2+由来の赤色発光の強度が上昇している。この発光スペクトルのMn濃度依存性からもエネルギー移動が起こっていることが示唆される。3割のMgがMnで置換されると濃度消光あるいは試料自身の高い吸光度(図1d)によりMn2+由来の赤色発光が阻害されているようである。Mnの添加によりCe3+由来の発光ピークが全体的に減少していることからFRET機構によりエネルギー移動が起こっていると考えられる。
図7にCe添加M2BaMgSi2O8(M: Ba, Sr, Ca)化合物のMn 添加前後の発光スペクトルを示す。半径の小さなアルカリ土類金属イオンを含有する化合物ほどCe3+由来の発光の強度が強くなっていることが分かる。この傾向はEu2+イオンを添加した場合(非特許文献4)とは逆である。CeとMn を共添加した試料を比較するとBa3MgSi2O8をホスト結晶とした場合が最もMn2+由来の赤色発光の強度が高い。M3MgSi2O8化合物はアルカリ土類金属イオンの比率により結晶構造が変形することが知られており、Baをある一定量以上含有する場合に限りglaserite型構造が得られる。 Glaserite 型構造には層間にアルカリ土類金属イオンを取り込むサイトが3 箇所存在する。ひとつは層と層の中間に位置し、残りの2 箇所はMgO6 八面体とSiO4 四面体が形成する層上のポケットである(図4)。イオン半径の制約上、Ba2+イオンは後者のサイトから排除され、層間のサイトを占有する傾向にある。しかしながら、Ba含有量がM3MgSi2O8中のMで示される部分の1/3 以上である場合、必然的に層上のポケットを占有せざるを得なくなる。本来占有できないはずのポケットにサイズの大きなBa2+イオンが入るため、層を形成するMgO6八面体やSiO4 四面体に歪みが生じることとなる。結果、Mg サイトの対称性が下がり、Mg サイトを占有するMn2+イオンの3d 軌道間電子遷移に対する選択則が部分的に破れるため、Baを多く含む試料においてMn2+由来の赤色発光の強度が大きくなったものと推測される。事実、Ba含有量の多いホスト結晶では、Ceが添加されない場合でも、Mn2+由来の赤色発光が微弱ではあるが確認された。このような現象はBaCa2MgSi2O8やBaSr2MgSi2O8をホスト結晶とした場合には確認されなかった。Mn2+由来の赤色発光に関してはM位を占めるアルカリ土類金属イオンの平均サイズの増大と共にブルーシフトも観測されているが、これもまたMgO6八面体の歪みにより説明が可能である。大きなアルカリ土類金属イオンが層上のポケットを占有する場合、それを取り囲むMgO6八面体やSiO4四面体を押さえつけることになる。結果、Mgサイトの配位子場は上昇し、Mgサイトを占有するMn2+イオンの発光が短波長側へシフトすることとなるのである。
てナトリウムイオンの代わりに、リチウムイオンやカリウムイオンを使用しても問題ないことが分かる。
2・・・SiO4四面体
3・・・層上のポケットサイト
4・・・層間サイト
Claims (10)
- 化学組成式がM3−x−yCexRyMg1−wMnwSi2O8で示され、Mはアルカリ土類金属である1種類又は複数の元素であり、Rはアルカリ金属である1種類又は複数の元素であり、x、y、wはいずれも0より大きく1以下の実数であることを特徴とする赤色蛍光体。。
- 前記赤色蛍光体は、glaserite型であり、6つの酸素原子を頂点とする八面体の中にマグネシウムが位置することを特徴とする請求項1に記載の赤色蛍光体。
- 前記赤色蛍光体の層間サイト及び層上ポケットであるサイトを前記アルカリ土類金属が占めることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の赤色蛍光体。
- 前記赤色蛍光体の前記マンガンが前記マグネシウムのサイトを占めることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の赤色蛍光体。
- 前記赤色蛍光体の前記セリウムが層間サイト及び層上ポケットであるサイトを占めることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の赤色蛍光体。
- 前記Mはバリウム、ストロンチウム、カルシウムの中から選ばれる1種類又は複数の元素であることを特徴とする請求項1から5に記載の赤色蛍光体。。
- 前記Rはリチウム、ナトリウム、カリウムの中から選ばれる1種類又は複数の元素であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の赤色蛍光体。
- 前記xは0.0<x≦0.1の範囲内にあり、前記wは0.0<w≦0.4の範囲内にあることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の赤色蛍光体。
- 前記yは、0.0≦y≦2.0xの範囲内にあることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の赤色蛍光体。
- 前記赤色蛍光体を紫外光で励起する場合、170〜360nmの波長の光を用いることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の赤色蛍光体。
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