JP5712428B2 - 紫外励起光源用赤色蛍光体 - Google Patents

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Description

本発明は、LED等に用いられる色純度の高い赤色蛍光体に関する。
半導体材料からなる発光素子(LED)は低い消費電力で鮮やかに発色する発光材料であり、その特性を活かして液晶のバックライトや照明等に使用される白色光源に応用されている。その多くは青色発光を示すLED上に(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12を母体結晶とする黄色蛍光体を配置したものであるが、演色性が低いという欠点がある。そこで現在注目されているのが、紫外発光を示すLED上に赤色、緑色、青色の発光を示す蛍光体を配置することで演色性を向上した白色光源である。この光源の構成要素となる赤色蛍光体としてEuを添加したY2O2Sに代表される酸硫化物や硫化物系、(Y,Gd,Eu)BO3や(Y,Gd,Eu)2O3に代表される酸化物系などが挙げられるが、前者は真空条件化における揮発が原因で発光強度が低下するといった問題があり(非特許文献1-5)、後者は色純度が劣るという欠点が存在する(非特許文献6)。また、例に挙げた蛍光体は母体結晶成分として希土類元素であるイットリウムを含むため、原料が高価といった問題点も存在する。この状況を打破すべく、近年紫外光励起により赤色発光を示すBa3-x-yEuxMnyMgSi2O8珪酸塩蛍光体が開発された(非特許文献7-10)。この蛍光体は、Euを介して紫外励起光エネルギーをMnに受け渡すことによりMnが励起され、赤色発光を示すものであるが、Euにより吸収されたエネルギーの一部が青色に発光するため、観測される蛍光色は純度の低い赤色発光となる。
特許文献1には、EuとMnを含有する蛍光体に関する技術が開示されている。また特許文献2にはMnを含有し、Cuを含有する蛍光体に関する技術が開示されている。特許文献3にはEuを含有した珪酸塩蛍光体において、Ceを含有することが示唆されている。
特開2008−208203号公報 特開2009−132875号公報 特表2009−506915号公報
T.A. Trotier et al., J. Soc. Info. Disp., 4 (1996) 351-355. H.C. Swart et al., J. Vac. Sci. Technol. A, 14 (1996) 1697-1703. L. Oosthuizen et al., Appl. Surf. Sci., 120 (1997) 9-14. S. Itoh et al., J. Electrochem. Soc., 136 (1989) 1819-1823. T. Igarashi et al., Mater. Res. Bull., 36 (2001) 1317-1324. 高効率希土類蛍光体とその応用,TIC出版 (2005) Y. Umetsu et al., J. Electrochem. Soc., 155 (2008) J193-J197. J.S. Kim et al., J. Lumin., 122-123 (2007) 583-586. L. Ma et al., Appl. Phys. Lett., 93 (2008) 144101. J.A. Kim et al., Solid State Commun., 135 (2005) 21-24
解決しようとする問題点は、一般式Ba3-x-yEuxMnyMgSi2O8で示される珪酸塩蛍光体にお
いて、Euを介して紫外励起光エネルギーをMnに受け渡すことによりMnが励起され、赤色発光を示すものであるが、Euにより吸収されたエネルギーの一部が青色に発光するため、観測される蛍光色は純度の低い赤色発光となる。
本発明は、珪酸塩の結晶母体を用い、色純度の高い赤色蛍光体を提供することを目的とする。
本発明の赤色蛍光体は、化学組成式がM3-x-yCexRyMg1-wMnwSi2O8で示され、MはBa、Sr、Caの中から選ばれる、少なくとも1種類、もしくは複数の混合物であり、RはLi、Na、Kの中から選ばれる、少なくとも1種類、もしくは複数の混合物であることを特徴とする。
さらに本赤色蛍光体は、前記化学組成式において、xは0.0≦x≦0.1の範囲内にあり、yは0.0≦y≦2.0xの範囲内にあり、wは0.0<w≦0.4であることを特徴とする。
すなわち化学組成においてCeのモル比が0.0≦x≦0.1であれば、任意の赤色発光を得ることができ、この範囲外では、適当な発光強度が得られないか、赤色の純度が低いものとなる。またLiまたはNaまたはK、またはそれらの混合物のモル比が0.0≦y≦2.0xであれば、任意の発光を得ることができ、この範囲外では、適当な発光強度が得られない。またMnのモル比が0.0<w≦0.4であれば、任意の赤色発光を得ることができ、この範囲外では、適当な発光強度が得られないか、赤色の純度が低いものとなる。
このとき、前記赤色蛍光体を紫外光で励起する場合、170〜360nmの波長の光を用いることを特徴とする。
本発明の蛍光体は酸化物であるため、現行の硫化物、酸硫化物を母体結晶とする蛍光体と比較して、真空条件下における安定性の向上が期待される。
現行の赤色蛍光体の母体結晶がイットリウム系の化合物であることを鑑みると、製造時の原料コストの減少が見込まれる。
現行の赤色蛍光体と比較して色純度の高い赤色発光を得ることができる。また、CeをMnと共に添加することで、発光効率(量子効率)が向上する。
Ba量を変えることで容易に発光色、発光強度の調節が可能である。
BaCa2MgSi2O8化合物をベースとした試料の光吸収スペクトル。BaCa2MgSi2O8(a)、Ba0.98Ca1.96Ce0.03Na0.03MgSi2O8(b)、BaCa2Mg0.8Mn0.2Si2O8(c)、Ba0.98Ca1.96Ce0.03Na0.03Mg0.8Mn0.2Si2O8(d)。 254nm励起光を照射した際のBa1-2x/3Ca2-4x/3CexNaxMgSi2O8(x=0.01, 0.02, 0.03,0.04) 化合物の発光スペクトル。 Ba0.98Ca1.96Ce0.03Na0.03MgSi2O8 化合物の励起スペクトル。測定蛍光波長はそれぞれ329.3nm(a)、420.2nm(b)、717.0nm(c)。 MgO6 八面体とSiO4 四面体で表現したGlaserite型結晶構造。 Mn添加BaCa2MgSi2O8化合物の254nm励起光照射下における発光スペクトル。データはそれぞれ、Ba0.98Ca1.96Ce0.03Na0.03MgSi2O8(a,参照試料)、Ba0.98Ca1.96Ce0.03Na0.03Mg0.8Mn0.2Si2O8(b)、BaCa2(Mg0.8Mn0.2)Si2O8(c)。点線は試料(b)に対して638.2nmの蛍光(Mn由来の蛍光)をモニタして得られた励起スペクトル。 Ce、Mnを共添加したBaCa2MgSi2O8化合物に対する発光スペクトルのMn添加量依存性。励起光波長は254nm。試料の組成はそれぞれBa0.98Ca1.96Ce0.03Na0.03MgSi2O8(a),参照試料)、Ba0.98Ca1.96Ce0.03Na0.03Mg0.9Mn0.1Si2O8(b)、Ba0.98Ca1.96Ce0.03Na0.03Mg0.8Mn0.2Si2O8(c)、Ba0.98Ca1.96Ce0.03Na0.03Mg0.7Mn0.3Si2O8(d)。 Ce、Mnを共添加したglaserite型アルカリ土類ケイ酸塩(M2BaMgSi2O8, M: Ba, Sr,Ca)の254nm励起光照射時の発光スペクトル。点線はCe単独添加試料のデータ。実線はCe、Mn共添加試料のデータ。Ba0.98Ca1.96Ce0.03Na0.03Mg0.8Mn0.2Si2O8(a)、Ba0.98Sr1.96Ce0.03Na0.03Mg0.8Mn0.2Si2O8(b)、Ba1.96Sr0.98Ce0.03Na0.03Mg0.8Mn0.2Si2O8(c)、Ba2.94Ce0.03Na0.03Mg0.8Mn0.2Si2O8(d)。 励起波長は254 nmにおいてCeに対するアルカリ金属のNaの添加量を変化させた場合の発光スペクトル。BaCa1.98Ce0.02MgSi2O8(a)、BaCa1.96Ce0.02Na0.02MgSi2O8(b)、BaCa1.94Ce0.02Na0.04MgSi2O8(c) 励起波長254 nmにおいて、アルカリ金属の種類を変えた場合の発光スペクトル。Ba(Sr1.94Ce0.03K0.03)(Mg0.8Mn0.2)Si2O8(a)、Ba(Sr1.94Ce0.03Na0.03)(Mg0.8Mn0.2)Si2O8(b)、Ba(Sr1.94Ce0.03Li0.03)(Mg0.8Mn0.2)Si2O8(c)
以下に、M2BaMgSi2O8を母体結晶とした赤色蛍光体の合成方法および、本合成法により作製した結晶の分析結果を示す。
(合成法)
M2BaMgSi2O8: Ce3+, Mn2+化合物は高温下における固相反応により合成した。Ce3+と同量のアルカリ金属イオンを添加することで、2価のイオンを取り込むべきMサイトをCe3+が占有する際の電荷補償を行った。BaCO3、SrCO3、CaCO3、塩基性炭酸水酸化マグネシウム、シリカゲルCe(OH)4、Na2CO3 を原料とし、少量のNH4Clをフラックスとして用いた。化学量論量の原料とフラックスを2-プロパノール中で4 時間、ボールミルにより粉砕、混合後、2%水素98%窒素混合ガスを用いた還元雰囲気中1200℃、4時間熱処理を行った。熱処理後、同還元雰囲気中で室温になるまで生成物を冷却し、粉体試料を得た。
(特性評価結晶相の同定)
粉体試料中に含まれる結晶相の同定を行うためにRINT-2200V(Rigaku)装置により、40kV、30mAの条件で発生させたCuKα線を用いて室温下で粉末X 線回折測定を行った。
可視紫外光吸収積分球を装着したV-650(JASCO)装置を用いて室温下で粉体試料の光吸収スペクトルを測定した。装置に付属の白板プラスチックを標準試料とした。
(フォトルミネッセンス特性)
FP-6500(JASCO)装置を用いて室温下で粉体試料の発光スペクトル、励起スペクトルを測定した。
(Ceを添加したBaCa2MgSi2O8からの発光)
図1にBaCa2MgSi2O8化合物をベースとした試料の光吸収スペクトルを示す。これらの試料はX 線回折法によりglaserite 型構造をもつ単一の結晶相からなることが確認された。スペクトル形状の差異は添加された遷移(希土類)金属イオンによるものと考えられる。測定した波長域においてホスト結晶からは目立った光吸収が起こっていない(図1a)のに対し、Ceを添加した試料(図1b)では190-400nm の範囲に幅広い吸収ピークが確認される。
この光吸収はCe3+イオン内の4f-5d 軌道間電子遷移に対応する。Ce由来の吸収帯の出現と同時に、紫外光励起によりCe添加試料は発光を示すようになった。図2はCe を添加したBaCa2MgSi2O8化合物の254nm 励起光下における発光スペクトルを示している。近紫外域に強い発光ピークと近赤外域に弱い発光ピークがみられる。Ce添加量が増加するに従い、
両発光ピーク強度は増加し、Ba(Ca1.94Ce0.03Na0.03)MgSi2O8 組成のときに最大値をとった後、減少し始めている。この結果は、両発光がCeに由来することを示している。これらの発光ピーク幅が広いことから、両発光は3 価のCeにおける5d-4f 軌道間電子遷移に由来するものといえる。一般にCe3+由来の発光ピークはスピン-軌道相互作用に基づいて基底状態が約2000cm-1 程度分裂しているため、非対称でダブレットな発光ピーク形状をしめす。図2に示した近紫外発光のピークもまた非対称な形状である。この非対称性の原因を確認するために、最小二乗法を用いて近紫外発光ピークを2つのGaussian ピークに分解し、そのエネルギー差を見積もった。結果、ピーク間のエネルギー差は約1600cm-1となり、分裂した基底状態から予測される値よりもかなり小さくなった。この結果は近紫外発光ピークが単一のCe3+イオンからの発光では説明できないことを示しており、Ce3+イオンが結晶学的に異なる環境にある複数のサイトを占有していることを示唆している。図3a と図3bにCe添加試料の近紫外ピークの両端の波長の蛍光をモニタして得られた励起スペクトルを示す。
高エネルギー側の蛍光をモニタした図3aには低エネルギー側の蛍光をモニタした図3b
にはみられないピークが267nm付近にみられる。一方、図3bには図3aにおいてほとんどみられない315nm付近のピークがみえる。励起スペクトル内に観測されるピークは、結晶場の影響を受けて分裂したCe3+イオンの5d 軌道エネルギーに対応しており、励起スペクトルの形状が異なるということは異なる配位環境下(異なるサイト)にCe3+イオンが存在することを示している。Eu2+イオンを添加した場合(非特許文献3)と同様に、近紫外域の発光はBaサイトを占有するCe3+イオン(Ce3+(Ba))とCa サイトを占有するCe3+イオン(Ce3+(Ca))によるものと推測される(図4)。一方、Ce 由来の近赤外発光に注目してみると、ピーク幅の広さから、やはりCe3+イオンの5d-4f軌道間電子遷移に基づくものであると考えられる。
しかしながら、その発光波長の長さからこの蛍光を発するCe3+イオンはかなり強い配位子場の影響下にあることが推測される。このような理由から近赤外発光は6 つの配位子に囲まれたMg サイトを占有するCe3+イオン(Ce3+(Mg))に対応すると考えられる。しかしその発光強度の弱さから、6配位Mg サイトは偶然Ce3+イオンにより占有されたものと考えた方が妥当である。近紫外発光とは異なり、Ce3+由来の近赤外発光はCe3+(Ba,Ca)からCe3+(Mg)へのエネルギー移動により励起エネルギーを得ていると考えられる。図3c に示す近赤外発光をモニタした励起スペクトルには2 箇所の励起効率の高い帯域が確認される。ひとつは530-670nmの範囲であり、もうひとつは350nmより短い波長域にある帯域である。前者はCe3+(Mg)自身の5dバンドによるもので、後者はそのスペクトル形状が図3a、3bに酷似していることから、Ce3+(Ba, Ca)が吸収したエネルギーの一部をCe3+(Mg)に渡しているために観測された励起バンドである。Ce3+(Ba, Ca)由来の発光波長に対して
Ce3+(Mg)の励起スペクトルは励起バンドをもたないことから、多極子間相互作用による
Forster resonance energy transfer (FRET機構)によりエネルギーがMn2+に受け渡されていると考えられる。
(Ce, Mn 共添加BaCa2MgSi2O8の発光特性)
図5bはCeとMnを共添加したBaCa2MgSi2O8化合物の発光スペクトルである。このスペクトルにはCe単独添加した試料には存在しない発光ピークが630nm 付近にみられる。このピークはMgサイトを占有するMn2+イオン(Mn2+(Mg))の4T1(4G)-6A1(6S)遷移に由来している。この発光により、Ce、Mnを共添加した試料は紫外光照射時、深い赤色に発光してみえる。ここで特筆すべきは、Ceが共添加されていない試料からはMn2+由来の赤色発光が確認されないことである。図5cに同じ量のMn2+イオンのみが添加された試料の発光スペクトルが示されているが、この試料からは全く発光が確認されていない。この事実は、3d軌道間電子遷移はパリティ禁制、スピン禁制であるにもかかわらず、Ce共存下では効率的にMn
2+イオンが励起されることを意味している。Mn2+由来の発光をモニタした励起スペクトル(図5b)が、図3a、3bと似たスペクトル形状をもつことからCe3+(Ba,Ca)→Mn2+(Mg)のエネルギー移動が起こっていると考えられる。図6はCeの添加量を固定し、Mnの添加量を変化させた際の発光スペクトルの変化を示している。Mn添加量の増加に伴いCe3+由来の発光強度が減少し、Mn2+由来の赤色発光の強度が上昇している。この発光スペクトルのMn濃度依存性からもエネルギー移動が起こっていることが示唆される。3割のMgがMnで置換されると濃度消光あるいは試料自身の高い吸光度(図1d)によりMn2+由来の赤色発光が阻害されているようである。Mnの添加によりCe3+由来の発光ピークが全体的に減少していることからFRET機構によりエネルギー移動が起こっていると考えられる。
(Mn2+赤色発光のアルカリ土類金属イオン依存性)
図7にCe添加M2BaMgSi2O8(M: Ba, Sr, Ca)化合物のMn 添加前後の発光スペクトルを示す。半径の小さなアルカリ土類金属イオンを含有する化合物ほどCe3+由来の発光の強度が強くなっていることが分かる。この傾向はEu2+イオンを添加した場合(非特許文献4)とは逆である。CeとMn を共添加した試料を比較するとBa3MgSi2O8をホスト結晶とした場合が最もMn2+由来の赤色発光の強度が高い。M3MgSi2O8化合物はアルカリ土類金属イオンの比率により結晶構造が変形することが知られており、Baをある一定量以上含有する場合に限りglaserite型構造が得られる。 Glaserite 型構造には層間にアルカリ土類金属イオンを取り込むサイトが3 箇所存在する。ひとつは層と層の中間に位置し、残りの2 箇所はMgO6 八面体とSiO4 四面体が形成する層上のポケットである(図4)。イオン半径の制約上、Ba2+イオンは後者のサイトから排除され、層間のサイトを占有する傾向にある。しかしながら、Ba含有量がM3MgSi2O8中のMで示される部分の1/3 以上である場合、必然的に層上のポケットを占有せざるを得なくなる。本来占有できないはずのポケットにサイズの大きなBa2+イオンが入るため、層を形成するMgO6八面体やSiO4 四面体に歪みが生じることとなる。結果、Mg サイトの対称性が下がり、Mg サイトを占有するMn2+イオンの3d 軌道間電子遷移に対する選択則が部分的に破れるため、Baを多く含む試料においてMn2+由来の赤色発光の強度が大きくなったものと推測される。事実、Ba含有量の多いホスト結晶では、Ceが添加されない場合でも、Mn2+由来の赤色発光が微弱ではあるが確認された。このような現象はBaCa2MgSi2O8やBaSr2MgSi2O8をホスト結晶とした場合には確認されなかった。Mn2+由来の赤色発光に関してはM位を占めるアルカリ土類金属イオンの平均サイズの増大と共にブルーシフトも観測されているが、これもまたMgO6八面体の歪みにより説明が可能である。大きなアルカリ土類金属イオンが層上のポケットを占有する場合、それを取り囲むMgO6八面体やSiO4四面体を押さえつけることになる。結果、Mgサイトの配位子場は上昇し、Mgサイトを占有するMn2+イオンの発光が短波長側へシフトすることとなるのである。
図8には励起波長は254 nmにおいて、Ceに対し、アルカリ金属であるNaの添加量を変化させた場合の発光スペクトルを示している。アルカリ金属の添加により、Ce3+由来の発光の強度が強くなっていることが分かる。2価のイオンが占めるべきサイトを3価のセリウムイオンが占有することで起こる電荷の差異が、1価のナトリウムイオンにより補償され、正負の電荷バランスをとることで発光強度抑制の原因となる欠陥の生成を抑えたものと考えられる。
図9には励起波長254 nmにおいて、アルカリ金属の種類を変え、(a) Ba(Sr1.94Ce0.03K0.03)(Mg0.8Mn0.2)Si2O8、(b) Ba(Sr1.94Ce0.03Na0.03)(Mg0.8Mn0.2)Si2O8、(c) Ba(Sr1.94Ce0.03Li0.03)(Mg0.8Mn0.2)Si2O8とした場合の発光スペクトルを示している。2価のイオン(この場合はストロンチウムイオン)が占めるべきサイトを3価のセリウムイオンが占有することで起こる電荷の差異を補償するために用いる1価のアルカリ金属イオンとし
てナトリウムイオンの代わりに、リチウムイオンやカリウムイオンを使用しても問題ないことが分かる。
照明装置、平面パネル表示装置用バックライト、プラズマディスプレイパネル用赤色蛍光体、蛍光塗料としての利用が期待できる。
1・・・MgO6八面体
2・・・SiO4四面体
3・・・層上のポケットサイト
4・・・層間サイト

Claims (10)

  1. 化学組成式がM3−x−yCeMg1−wMnSiで示され、Mはアルカリ土類金属である1種類又は複数の元素であり、Rはアルカリ金属である1種類又は複数の元素であり、x、y、wはいずれも0より大きく1以下の実数であることを特徴とする赤色蛍光体。。
  2. 前記赤色蛍光体は、glaserite型であり、6つの酸素原子を頂点とする八面体の中にマグネシウムが位置することを特徴とする請求項1に記載の赤色蛍光体。
  3. 前記赤色蛍光体の層間サイト及び層上ポケットであるサイトを前記アルカリ土類金属が占めることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の赤色蛍光体。
  4. 前記赤色蛍光体の前記マンガンが前記マグネシウムのサイトを占めることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の赤色蛍光体。
  5. 前記赤色蛍光体の前記セリウムが層間サイト及び層上ポケットであるサイトを占めることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の赤色蛍光体。
  6. 前記Mはバリウム、ストロンチウム、カルシウムの中から選ばれる1種類又は複数の元素であることを特徴とする請求項1から5に記載の赤色蛍光体。。
  7. 前記Rはリチウム、ナトリウム、カリウムの中から選ばれる1種類又は複数の元素であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の赤色蛍光体。
  8. 前記xは0.0<x≦0.1の範囲内にあり、前記wは0.0<w≦0.4の範囲内にあることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の赤色蛍光体。
  9. 前記yは、0.0≦y≦2.0xの範囲内にあることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の赤色蛍光体。
  10. 前記赤色蛍光体を紫外光で励起する場合、170〜360nmの波長の光を用いることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の赤色蛍光体。
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