JP5709634B2 - 積層体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガラス板の少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂と略記する。)フィルムを積層してなる積層体の製造方法に関し、さらに詳しくは、接着剤を用いることなく良好な層間接着性が得られる積層体の製造方法に関するものである。
ガラス板の表面に光学特性やその他の機能を付与するため、これにPVA系樹脂フィルムを積層した積層体が求められている。
しかしながら、ガラスとPVA系樹脂は表面特性が大きく異なることから、直接接着させるのは困難であり、同様の理由からガラスとPVA系樹脂のいずれに対しても良好な接着性を有する接着剤は限られている。
また、ガラス板とPVA系樹脂は、いずれも耐薬品性、耐熱性、透明性に優れたものであるが、これらを接着剤を介して積層した場合、積層体全体の特性が接着剤によって制限され、上記の特性が充分に活かされない場合がある。
従って、光学用途等に用いられるガラス板とPVA系樹脂フィルムの積層体は、接着剤を介さずに積層されたものが望ましい。
このような課題に対して適用可能な技術として、プラスチックの接着面に特定強度のエネルギー線を照射した後、ガラス板等の被着物と接着させる方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
特開2004−268383号公報
しかしながら、特許文献1に開示された方法によってPVA系樹脂フィルムとガラス板を接着してえられた積層体は、PVA系樹脂フィルム面の表面状態、エネルギー線の照射条件、接着条件等によって充分な接着強度が得られない場合があり、実用的には、より層間接着強度が優れた積層体が必要とされる。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、接着剤を用いずに、層間接着強度に優れたPVA系樹脂フィルムとガラス板を直接積層させる方法の提供を目的とするものである。
本発明者は、上記事情に鑑み鋭意検討した結果、ガラス板の表面をシランカップリング剤で処理し、かかる処理面とアセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂(以下、AA化PVA系樹脂と略記する。)フィルムを圧着する方法を用いることによって本発明の課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、PVA系樹脂フィルムとしてAA化PVA系樹脂フィルムを用い、ガラス板として、その表面をシランカップリング剤で処理したものを用いることを最大の特徴とするものである。
これは、シランカップリング剤処理によって、ガラス板の表面に各種官能基が導入され、かかる官能基が、AA化PVA系樹脂中のアセトアセチル基と反応することによるものと推測される。
本発明の方法で得られたガラス板の少なくとも一方の面にPVA系樹脂フィルムが積層された積層体は、両者の層間接着性に優れたものであり、また、接着剤を必要としないため、その影響を受けることなく、ガラスとPVA系樹脂の特性、例えば透明性、耐熱性、耐薬品性などを充分に活かすことができるものである。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の積層体の製造方法は、ガラス板の表面をシランカップリング剤で処理し、かかる処理面とAA化PVA系樹脂フィルムを直接圧着することを特徴とするものである。
〔AA化PVA系樹脂フィルム〕
まず、本発明で用いられるAA化PVA系樹脂フィルムは、AA化PVA系樹脂がフィルム状に形成されたものである。かかるAA化PVA系樹脂は、側鎖にアセト酢酸エステル基を有するPVA系樹脂であり、その他の部分は、通常のPVA系樹脂と同様、ビニルアルコール構造単位と、けん化度に応じた酢酸ビニル構造単位を有するものである。
また、かかるAA化PVA系樹脂は、通常のPVA系樹脂と同様、水溶性樹脂であり、皮膜としたときに透明性、耐薬品性、強度等についても、通常のPVA系樹脂と同様の特性を有するものである。
かかるAA化PVA系樹脂の製造法としては、特に限定されるものではないが、例えば、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法、PVA系樹脂とアセト酢酸エステルを反応させてエステル交換する方法、酢酸ビニルとアセト酢酸ビニルの共重合体をケン化する方法等を挙げることができるが、製造工程が簡略で、品質の良いAA化PVA系樹脂が得られることから、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法で製造するのが好ましい。以下、かかる方法について説明する。
原料となるPVA系樹脂としては、一般的にはビニルエステル系モノマーの重合体のケン化物又はその誘導体が用いられ、かかるビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済性の点から酢酸ビニルが好ましく用いられる。
また、ビニルエステル系モノマーと該ビニルエステル系モノマーと共重合性を有するモノマーとの共重合体のケン化物等を用いることもでき、かかる共重合モノマーとしては、例えばエチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート、等が挙げられる。
なお、かかる共重合モノマーの導入量はモノマーの種類によって異なるため一概にはいえないが、通常は10モル%以下、特には5モル%以下であり、多すぎると水溶性や耐薬品性が損なわれる場合があるため好ましくない。
また、通常のPVA系樹脂の場合、主鎖の結合様式は1,3−ジオール結合が主であり、1,2−ジオール結合の含有量は1.5〜1.7モル%程度であるが、ビニルエステル系モノマーを重合する際の重合温度を高温にすることによって、その含有量を1.7〜3.5モル%としたものを使用することも可能である。
上記ビニルエステル系モノマーの重合体および共重合体をケン化して得られたPVA系樹脂にジケテンを反応させてアセトアセチル基を導入する方法としては、PVA系樹脂とガス状または液状のジケテンを直接反応させる方法、酢酸などの有機酸をPVA系樹脂に予め吸着吸蔵せしめた後、不活性ガス雰囲気下でガス状または液状のジケテンを反応させる方法、あるいはPVA系樹脂に有機酸とジケテンの混合物を噴霧して反応させる方法、などが用いられる。
上記反応の反応装置としては、加温可能で撹拌機の付いた装置が好ましく、例えば、ニーダー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、その他各種ブレンダーを用いることができる。
上述の方法で得られた本発明で用いられるAA化PVA系樹脂の平均重合度(JIS K6726に準拠)は、通常、300〜4000であり、特に500〜3000、さらに1000〜2000である。かかる平均重合度が小さすぎると、ガラス板との層間接着強度が不十分になる傾向があり、平均重合度が大きすぎると、水溶液として使用した場合に、その粘度が高くなりすぎて作業性が低下する傾向がある。
また、AA化PVA系樹脂のケン化度は、通常、80モル%以上であり、さらには90〜100モル%、特に95〜99.9モル%のものが好適に用いられる。かかるケン化度が低いと、水溶液とすることが困難になったり、水溶液の安定性が低下する傾向がある。
また、AA化PVA系樹脂中のアセト酢酸エステル基の含有量(以下AA化度と略記する。)は、通常、0.1〜20モル%であり、さらには1〜15モル%、特には3〜10モル%である。かかる含有量が少なすぎると、ガラス板との層間接着性が不足する傾向があり、逆に多すぎると、水溶性が低下したり、水溶液の安定性が低下する傾向がある。
本発明においては、PVA系樹脂のすべてがAA化PVA系樹脂であるいことが好ましいが、AA化PVA系樹脂以外のPVA系樹脂が併用されていてもよく、その含有量は通常50重量%以下であり、特に30重量%以下、さらに10重量%以下であることが好ましい。
かかるAA化PVA系樹脂以外のPVA系樹脂としては、未変性のPVA系樹脂や、前述のビニルエステル系モノマーと各種モノマーを共重合し、それをケン化して得られた各種変性PVA系樹脂を挙げることができる。
また、本発明のAA化PVA系樹脂には、製造工程で使用あるいは副生した酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属の酢酸塩(主として、ケン化触媒として用いたアルカリ金属水酸化物とポリ酢酸ビニルのケン化によって生成した酢酸との反応物等に由来)、酢酸などの有機酸(PVA系樹脂にアセト酢酸エステル基を導入する際の、ジケテンとの反応時にPVAに吸蔵させた有機酸等に由来)、メタノール、酢酸メチルなどの有機溶剤(PVA系樹脂の反応溶剤、AA化PVA製造時の洗浄溶剤等に由来)が一部残存していても差し支えない。
本発明において用いられるAA化PVA系樹脂は、反応性に富むアセト酢酸エステル基を有することから、かかるアセト酢酸エステル基と反応し得る架橋剤を併用することで、耐水性、耐湿性を向上させることが可能である。
かかる架橋剤としては、AA化PVA系樹脂の架橋剤として公知のものを使用することができ、例えば、有機系架橋剤としては、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒド、グリオキシル酸やそのエステル、ナトリウム塩、カルシウム塩などのアルカリ(土類)金属塩などのアルデヒド化合物;
尿素樹脂、グアナミン樹脂、メチロール化メラミンなどのメチロール基含有化合物;
アミノ樹脂、水溶性エポキシ樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等のグリシジル基含有化合物;
エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、1,3−ビスアミノシクロヘキサン、ポリオキシアルキレン型ジアミン又はポリアミンなどのアミン系化合物;
アジピン酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジドなどのヒドラジド化合物;
ポリイソシアネート、ブロックイソシアネートなどのイソシアネート系化合物;
ヒドラジン化合物、酸無水物、などを挙げることができる。
また、無機系架橋剤としては、ホウ酸、ホウ砂などのホウ素化合物;
クロロヒドロキシオキソジルコニウム(第一稀元素化学社製「ジルコゾールZC−2」)、硝酸ジルコニル(第一稀元素化学社製「ジルコゾールZN」)などのジルコニウム化合物;
テトラアルコキシチタネート、水溶性チタン化合物(松本製薬社製「TC−310」「TC−400」)などのチタニウム化合物;
アルコキシ基やグリシジル基などの反応性官能基を有するシリコーン化合物、などを挙げることができる。
中でも反応性が高く、少量の添加で効率よく耐水性が向上する点から、アルデヒド化合物、特にグリオキザールやグリオキシル酸のアルカリ(土類)金属塩が好ましく用いられる。
かかる架橋剤の配合量としては、特に限定されるものではなく、所望の耐水性などから選定すればよいが、通常、AA化PVA系樹脂100重量部に対して100重量部以下、さらに0.1〜50重量部であり、特に0.5〜10重量部、殊に1〜5重量部の範囲が好ましく用いられる。かかる架橋剤の配合量が多すぎると、使用条件等によってや、AA化PVA系樹脂と架橋剤を混合した水溶液の粘度安定性が悪くなる場合がある。
また、本発明で用いられるAA化PVA系樹脂には、さらに本発明の目的を損なわない範囲、通常30重量%以下、特に20重量%以下で他の樹脂、例えばデンプン、セルロース等の多糖類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキサゾリン、水溶性ポリアミド、水溶性ポリエステル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン等の水溶性樹脂、さらにはウレタン系接着剤やエマルジョン型接着剤を併用することができる。
また、同様に各種添加剤として、消泡剤、レベリング剤、着色剤、染料、顔料、蛍光増白剤、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、熱安定化剤、界面活性剤、乾燥剤、消臭剤、抗菌剤、防腐剤、消泡剤等を含有させることも可能である。
上記AA化PVA系樹脂、およびAA化PVA系樹脂に各種添加剤が配合された樹脂組成物は、フィルム状に形成して用いられ、その厚みは、通常5〜500μmであり、さらに10〜300μm、特に20〜200μmの範囲のものが好ましく用いられる。
かかるAA化PVA系樹脂のフィルムは、PVA系樹脂フィルムの公知の製造法によって製造することができるが、例えば、(1)AA化PVA系樹脂の水溶液を調製し、この水溶液を金属製加熱ベルト、またはドラム上に流延し、乾燥する方法(溶液流延法)や、(2)AA化PVA系樹脂を押出機にて溶融混練し、所望の厚みとなるように押出成形し製膜する方法(押出し法)、などを挙げることができ、あるいは(3)AA化PVA系樹脂の水溶液を、ガラス板との接着面の反対側に積層される層を基材とし、これに塗布、乾燥してAA化PVA系樹脂層を形成したものを用いることも可能である。
中でも、製膜時の熱によるAA化PVA系樹脂の劣化の問題が少ないことから、(1)および(3)の方法が好ましく用いられる。
かくして得られたAA化PVA系樹脂のフィルムは、次いでガラス板と積層されるが、かかる積層の前に、フィルムの表面に紫外線、電子線、イオン線等のエネルギー線を照射したり、プラズマ処理、コロナ処理などによって表面を活性化させたものを用いることも好ましい実施態様である。
〔ガラス板〕
次に、本発明で用いられるガラス板について説明する。
上記PVA系樹脂体と接着積層されるガラス板としては、各種ガラス板があげられ、例えば、ソーダ石灰ガラス(ソーダガラス)、白板ガラス(ソーダ系ガラス)、ホウ珪酸ガラス(ボロシリケートガラス)、アルカリ亜鉛ホウ珪酸ガラス、高歪点ガラス(PDP用ガラス)、合成石英ガラス、無アルカリガラス、極薄無アルカリガラス(日本電気硝子社製「OA−10」などのロール状ガラス)、ケミカルエッチングにより作成した薄型板ガラス(ミクロ技術研究所製の曲げられるガラス)、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、強化ガラス等があげられる。
上記ガラス板の厚みとしては、その目的によって所望のものを用いることが可能であるが、通常0.05〜20mmであり、特に好ましくは0.1〜10mm、殊に好ましくは0.1〜5mmである。
〔シランカップリング剤処理〕
次に、本発明で用いられるシランカップリング剤と、かかるシランカップリング剤によるガラス板の表面処理について説明する。
本発明で用いられるシランカップリング剤は、一般的に下記式(1)で表わされるシラン化合物である。
[化1]
X−(CH−Si(OR3−m
上記一般式(1)において、Xは反応性基を表し、Rはアルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基を表し、Rはアルキル基、より好ましくはメチル基を表し、nは0〜3の整数を表し、mは0または1を表す。
かかるXとしては、アミノ基、アミノエチルアミノ基、フェニルアミノ基などのアミノ基、グリシドキシ基、エポキシシクロヘキシル基などのエポキシ基、ビニル基、アリル基、スチリル基などの不飽和基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基などの(メタ)アクリル基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基などを挙げることができる。中でも、ガラス板とPVA系樹脂フィルムとの層間接着性が得られる点で、特にアミノ基を含有するシランカップリング剤が好ましく用いられる。
かかるシランカップリング剤の具体例としては、アミノ基含有シランカップリング剤である3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン;エポキシ基含有シランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;不飽和基含有シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン;(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤である、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、などを挙げることができる。
かかるシランカップリング剤は、通常、溶液としてガラス板の表面に塗布し、加熱乾燥することでガラス板表面処理が行われる。
かかるシランカップリング剤溶液に用いられる溶剤としては、シランカップリング剤の溶解性と乾燥の容易さから、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、および水が好ましく用いられ、これらは単独で、あるいはシランカップリング剤の溶解性や乾燥性を調整するために混合して用いてもよい。
シランカップリング剤溶液の濃度は、通常、0.01〜10重量%であり、特に0.1〜3重量%の範囲が好ましく用いられる。かかる濃度が低すぎると一度の塗布作業で所望の塗布量が得られない場合があり、逆に高すぎると塗布量の制御が困難になる場合がある。
かかるシランカップリング剤溶液をガラス板の表面に塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、具体的には、スピンコート法、ロールコート法、スプレー法、スクリーン印刷法などを挙げることができる。
ガラス板表面上へのシランカップリング剤の塗布量は、通常、固形分換算で0.001〜10g/mであり、好ましくは0.005〜1g/m、特に好ましくは0.01〜0.1g/mである。かかる塗布量が少なすぎても、多すぎても、ガラス板とPVA系樹脂層の充分な層間接着性が得られなくなる場合がある。
ガラス板表面にかかるシランカップリング剤溶液を塗布した後、加熱乾燥することで溶液中の溶剤が除去されるとともに、シランカップリング剤のケイ素に結合するアルコキシ基と、ガラス表面のシラノール基が反応、脱アルコールすることによって結合が形成され、かかる結合を介してガラス表面にシランカップリング剤中の反応性基が導入される。
かかる加熱乾燥の条件としては、シランカップリング剤溶液中の溶剤の種類、塗布量などによって適宜好ましい条件を設定すべきものであるが、通常、乾燥温度は50〜200℃であり、特に80〜150℃の範囲で行われ、乾燥時間は、1〜60分、特に5〜20分の範囲で行われる。
また、乾燥方法についても特に限定されず、熱風乾燥、赤外線加熱乾燥、真空乾燥、などの公知の方法を用いることができる。
なお、必要に応じて塗布工程と乾燥工程を連続して実施することも可能である。
〔ガラス板とPVA系樹脂フィルムの積層〕
本発明では、上記のとおりシランカップリング剤で表面処理されたガラス板と、上記特定のAA化PVA系樹脂フィルムとを直接圧着させることにより、ガラス板とAA化PVA系樹脂フィルムた積層された積層体が得られる。
かかるガラス板とAA化PVA系樹脂フィルムを圧着する際の圧力は、通常0.1〜500N/cmであり、特に好ましくは1〜150N/cm、殊に好ましくは5〜100N/cmである。かかる圧力が低すぎると、ガラス板とPVA系樹脂層の層間接着性が不十分となる場合があり、逆にかかる圧力が高すぎると、PVA系樹脂フィルムが劣化・変形したりガラス板が割れたりする可能性がある。
また、かかる圧着時の雰囲気温度は、通常0〜200℃であり、特に好ましくは20〜150℃、殊に好ましくは30〜100℃である。かかる温度が低すぎると、充分な層間接着性が得られない場合があり、温度が高すぎると、PVA系樹脂フィルムが劣化し、着色する場合がある。
また、かかる圧着時間としては、通常0.1秒〜60分であり、特に好ましくは1秒〜30分、殊に好ましくは5秒〜10分である。かかる圧着時間が長すぎると、PVA系樹脂体が劣化し、着色する場合があり、短すぎると充分な層間接着性が得られない場合がある。
かかる圧着に用いられる装置としては、例えば、プレス機、ロールラミネーター、平板ガラス用ラミネーター(大成ラミネータ社製「MA−700」など)、曲面ガラスラミネーター(大成ラミネータ社製「CS−1110GL」など)、加圧式真空ラミネーター(ニチゴー・モートン社製「V−160」「V−130」など)、フィルム搬送加圧式真空ラミネーター(ニチゴー・モートン社製「CV−300」など)、枚葉式の貼りあわせ装置(ウシオ電機株式会社製マイクロTAS接着装置「SUS−504」など)、真空貼りあわせ装置(芝浦メカトロニクス社製「真空貼りあわせ装置」など)、各種半導体ウエハー用ボンダー(EVG社製「統合型ボンダー」「SOIボンダー」など)等を挙げることができる。中でも、ガラス板とPVA系樹脂フィルムの位置あわせをしながら連続的に加圧圧着できる装置が好ましい。
〔積層体〕
かくして得られた本発明の積層体は、ガラス板の少なくとも一方の面にAA化PVA系樹脂フィルムが直接積層されたものであり、そのままで各種用途に用いることができるが、かかる積層体に、さらに他の層を積層させることによって様々な機能を付与することも可能である。
例えば、ガラス板/接着層/偏光子/保護層、の構成を有するガラス基板付き偏光板において、かかる接着層としてAA化PVA系樹脂層を用いたものに本発明の積層体を適用することが考えられる。この場合、AA化PVA系樹脂フィルムは予め偏光子の片面に積層しておくことが好ましく、その方法としては、上述のAA化PVA系樹脂フィルムの製造法の(3)として挙げた方法、すなわち、AA化PVA系樹脂の水溶液を偏光子に塗布、乾燥してAA化PVA系樹脂層を形成する方法を用いることが好ましい。
かかるガラス基板付き偏光板に用いられる偏光子の代表的なものとしては、PVA系フィルムにヨウ素や二色性色素等の二色性材料を吸着させた後、一軸延伸したものを挙げることができ、その厚さは、通常0.1〜100μmであり、特に好ましくは0.5〜80μm、さらに好ましくは1〜60μmである。
また保護フィルムとしては、トリアセチルセルロースなどのセルロースエステル系樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂などの環状オレフィン系樹脂フィルムや、ポリ(メタ)アクリル酸樹脂フィルム、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などを挙げることができ、その厚さは、通常10〜100μm、好ましくは20〜80μmである。
なお、偏光子と保護フィルムの接着に用いられる接着剤としては、PVA系樹脂、特にアセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂に架橋剤を配合した接着剤が好適に用いられ、かかる偏光子と保護フィルムの接着は、偏光子の片面にAA化PVA系樹脂層を形成する前でも、形成後でも、さらにはガラス基板と積層させた後でも可能である。
本発明の積層体を、かかるガラス基板付き偏光板に適用する場合、ガラス板の厚さは、
通常0.05〜5mmであり、さらに0.1〜3mm、特に0.5〜2mmである。
また、AA化PVA系樹脂層の厚さは、通常0.01〜50μmであり、さらに0.05から10μm、特に0.1〜5μmの範囲が好ましく用いられる。
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
実施例1
<AA化PVA系樹脂の作製>

温度調節器付きリボンブレンダーに、未変性PVA樹脂(平均重合度1200、ケン化度99.2モル%)を、ニーダーに3600部仕込み、これに酢酸1000部加えて膨潤させ、回転数20rpmで攪拌しながら、60℃に昇温後、ジケテン550部を3時間かけて滴下し、更に1時間反応させた。反応終了後、メタノールで洗浄した後、70℃で6時間乾燥してAA化PVA樹脂(1)を得た。 得られたAA化PVA系樹脂(1)のAA化度は5.3モル%、ケン化度は98.9モル%であり、平均重合度は1200であった。
<AA化PVA系樹脂フィルムの作製>
得られたAA化PVA系樹脂の5%水溶液を作製し、これを枠壁で囲まれたPETフィルム上に流延し、23℃、50%RHの雰囲気下で三日間静置した後、70℃の乾燥機中で5分間加熱乾燥して、厚さ100μmのAA化PVA系樹脂フィルムを得た。
<ガラス板のシランカップリング剤処理>
アミノ基含有シランカップリング剤(信越シリコーン社製「KBP−90」、32%水溶液)をメタノールにて濃度1重量%に調整した。これを、木片に巻きつけた紙製ウエスに含浸させ、ガラス板(無アルカリガラス、コーニング社製「イーグルXG」、45mm×75mm×厚み1.1mm)の表面に、シランカップリング剤の塗布量が約0.04g/mとなるように塗布した後、100℃の乾燥機中で10分間加熱乾燥し、シランカップリング剤処理を施した。
<圧着>
上記AA化PVA系樹脂フィルムと、シランカップリング剤で表面処理されたガラス板を積層し、これをシリコンシートに挟み、表面温度60℃のテストプレス機にて、85N/cmの圧力で5分間加熱圧着した。
このようにしてPVA系樹脂フィルムとガラス板からなる積層体を作製した。
<層間接着性の評価>
得られた積層体のガラス板とAA化PVA系樹脂フィルムの層間接着性を、目視観察により評価し、以下の通り判定した。結果を雹に示す。
◎:非常に強固に接着している。
○:接着している。
×:全く接着していない。
実施例2
実施例1において、AA化PVA系樹脂フィルムの片面に下記条件にてプラズマ処理を行わった以外は実施例1と同様に積層体を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
<AA化PVA系樹脂フィルムのプラズマ処理>
得られたAA化PVA系樹脂フィルム(38mm×38mm)のガラス板との接着面を、下記に示す条件にてプラズマ処理した。
装置 :積水化学社製「常圧プラズマ表面処理装置」
処理強度:28W/cm
処理速度:1000mm/s
窒素流量:25mL/分
方法 :ダイレクト方式
距離 :1mm(プラズマ噴射供給吹き出しスリットとフィルム設置台の拒理)
実施例3
実施例1において、AA化PVA系樹脂の水溶液に架橋剤としてグリオキシル酸ナトリウムをAA化PVA系樹脂100重量部に対して10重量部配合し、AA化PVA系樹脂の架橋フィルムとした以外は実施例1と同様に積層体を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例4
実施例3において、AA化PVA系樹脂の架橋フィルムの片面に、実施例2と同様にプラズマ処理を施した以外は実施例3と同様に積層体を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
比較例1
実施例1において、AA化PVA系樹脂の代わりに、平均重合度1200、けん化度99.2モル%の未変性PVAを用い、未変性PVA樹脂フィルムとした以外は実施例1と同様に積層体を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
比較例2
比較例1において、未変性PVAフィルムの片面に、実施例2と同様にプラズマ処理を施した以外は比較例1と同様に積層体を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
比較例3〜8
実施例1〜4、比較例1,2において、ガラス板のシランカップリング剤処理を行わなかった以外は実施例1〜4と同様に積層体を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
〔表1〕
Figure 0005709634
PVAフィルムとしてAA化PVA系樹脂を用い、ガラス板をシランカップリング剤で処理し、これを圧着して得られた本発明の積層体は、いずれも優れた層間接着性が得られた。(実施例1〜4)
一方、PVA系樹脂として未変性PVAを用いたもの(比較例1,2)は、PVA系樹脂フィルムの表面処理の有無に関わらず、充分な層間接着性は得られなかった。
また、PVA系樹脂としてAA化PVA系樹脂、あるいはその架橋体を用いたとしても、ガラス板をシランカップリング剤で表面処理しなかったもの(比較例3〜6)は、同様にPVAフィルムのプラズマ処理の有無に関わらず、充分な層間接着性は得られなかった。
本発明の方法で得られたガラス板の少なくとも一方の面にPVA系樹脂フィルムが積層された積層体は、両者の層間接着性に優れたものであり、また、接着剤を必要としないため、その影響を受けることなく、ガラスとPVA系樹脂の特性、例えば透明性、耐熱性、耐薬品性などを充分に活かすことができるものである。

Claims (2)

  1. ガラス板の少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを積層してなる積層体の製造方法であって、上記ポリビニルアルコール系樹脂としてアセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂を用い、ガラス板の表面をシランカップリング剤で処理した後、かかる処理面とポリビニルアルコール系樹脂フィルムとを圧着させることを特徴とする積層体の製造方法。
  2. シランカップリング剤が、アミノ基含有シランカップリング剤である請求項1記載の積層体の製造方法。
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