JP5709634B2 - 積層体の製造方法 - Google Patents
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しかしながら、ガラスとPVA系樹脂は表面特性が大きく異なることから、直接接着させるのは困難であり、同様の理由からガラスとPVA系樹脂のいずれに対しても良好な接着性を有する接着剤は限られている。
また、ガラス板とPVA系樹脂は、いずれも耐薬品性、耐熱性、透明性に優れたものであるが、これらを接着剤を介して積層した場合、積層体全体の特性が接着剤によって制限され、上記の特性が充分に活かされない場合がある。
従って、光学用途等に用いられるガラス板とPVA系樹脂フィルムの積層体は、接着剤を介さずに積層されたものが望ましい。
これは、シランカップリング剤処理によって、ガラス板の表面に各種官能基が導入され、かかる官能基が、AA化PVA系樹脂中のアセトアセチル基と反応することによるものと推測される。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明で用いられるAA化PVA系樹脂フィルムは、AA化PVA系樹脂がフィルム状に形成されたものである。かかるAA化PVA系樹脂は、側鎖にアセト酢酸エステル基を有するPVA系樹脂であり、その他の部分は、通常のPVA系樹脂と同様、ビニルアルコール構造単位と、けん化度に応じた酢酸ビニル構造単位を有するものである。
また、かかるAA化PVA系樹脂は、通常のPVA系樹脂と同様、水溶性樹脂であり、皮膜としたときに透明性、耐薬品性、強度等についても、通常のPVA系樹脂と同様の特性を有するものである。
かかるAA化PVA系樹脂以外のPVA系樹脂としては、未変性のPVA系樹脂や、前述のビニルエステル系モノマーと各種モノマーを共重合し、それをケン化して得られた各種変性PVA系樹脂を挙げることができる。
かかる架橋剤としては、AA化PVA系樹脂の架橋剤として公知のものを使用することができ、例えば、有機系架橋剤としては、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒド、グリオキシル酸やそのエステル、ナトリウム塩、カルシウム塩などのアルカリ(土類)金属塩などのアルデヒド化合物;
尿素樹脂、グアナミン樹脂、メチロール化メラミンなどのメチロール基含有化合物;
アミノ樹脂、水溶性エポキシ樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等のグリシジル基含有化合物;
エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、1,3−ビスアミノシクロヘキサン、ポリオキシアルキレン型ジアミン又はポリアミンなどのアミン系化合物;
アジピン酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジドなどのヒドラジド化合物;
ポリイソシアネート、ブロックイソシアネートなどのイソシアネート系化合物;
ヒドラジン化合物、酸無水物、などを挙げることができる。
クロロヒドロキシオキソジルコニウム(第一稀元素化学社製「ジルコゾールZC−2」)、硝酸ジルコニル(第一稀元素化学社製「ジルコゾールZN」)などのジルコニウム化合物;
テトラアルコキシチタネート、水溶性チタン化合物(松本製薬社製「TC−310」「TC−400」)などのチタニウム化合物;
アルコキシ基やグリシジル基などの反応性官能基を有するシリコーン化合物、などを挙げることができる。
また、同様に各種添加剤として、消泡剤、レベリング剤、着色剤、染料、顔料、蛍光増白剤、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、熱安定化剤、界面活性剤、乾燥剤、消臭剤、抗菌剤、防腐剤、消泡剤等を含有させることも可能である。
中でも、製膜時の熱によるAA化PVA系樹脂の劣化の問題が少ないことから、(1)および(3)の方法が好ましく用いられる。
次に、本発明で用いられるガラス板について説明する。
上記PVA系樹脂体と接着積層されるガラス板としては、各種ガラス板があげられ、例えば、ソーダ石灰ガラス(ソーダガラス)、白板ガラス(ソーダ系ガラス)、ホウ珪酸ガラス(ボロシリケートガラス)、アルカリ亜鉛ホウ珪酸ガラス、高歪点ガラス(PDP用ガラス)、合成石英ガラス、無アルカリガラス、極薄無アルカリガラス(日本電気硝子社製「OA−10」などのロール状ガラス)、ケミカルエッチングにより作成した薄型板ガラス(ミクロ技術研究所製の曲げられるガラス)、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、強化ガラス等があげられる。
次に、本発明で用いられるシランカップリング剤と、かかるシランカップリング剤によるガラス板の表面処理について説明する。
本発明で用いられるシランカップリング剤は、一般的に下記式(1)で表わされるシラン化合物である。
[化1]
X−(CH2)n−Si(OR1)3−mR2 m
かかるXとしては、アミノ基、アミノエチルアミノ基、フェニルアミノ基などのアミノ基、グリシドキシ基、エポキシシクロヘキシル基などのエポキシ基、ビニル基、アリル基、スチリル基などの不飽和基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基などの(メタ)アクリル基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基などを挙げることができる。中でも、ガラス板とPVA系樹脂フィルムとの層間接着性が得られる点で、特にアミノ基を含有するシランカップリング剤が好ましく用いられる。
かかるシランカップリング剤溶液に用いられる溶剤としては、シランカップリング剤の溶解性と乾燥の容易さから、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、および水が好ましく用いられ、これらは単独で、あるいはシランカップリング剤の溶解性や乾燥性を調整するために混合して用いてもよい。
シランカップリング剤溶液の濃度は、通常、0.01〜10重量%であり、特に0.1〜3重量%の範囲が好ましく用いられる。かかる濃度が低すぎると一度の塗布作業で所望の塗布量が得られない場合があり、逆に高すぎると塗布量の制御が困難になる場合がある。
ガラス板表面上へのシランカップリング剤の塗布量は、通常、固形分換算で0.001〜10g/m2であり、好ましくは0.005〜1g/m2、特に好ましくは0.01〜0.1g/m2である。かかる塗布量が少なすぎても、多すぎても、ガラス板とPVA系樹脂層の充分な層間接着性が得られなくなる場合がある。
かかる加熱乾燥の条件としては、シランカップリング剤溶液中の溶剤の種類、塗布量などによって適宜好ましい条件を設定すべきものであるが、通常、乾燥温度は50〜200℃であり、特に80〜150℃の範囲で行われ、乾燥時間は、1〜60分、特に5〜20分の範囲で行われる。
また、乾燥方法についても特に限定されず、熱風乾燥、赤外線加熱乾燥、真空乾燥、などの公知の方法を用いることができる。
なお、必要に応じて塗布工程と乾燥工程を連続して実施することも可能である。
本発明では、上記のとおりシランカップリング剤で表面処理されたガラス板と、上記特定のAA化PVA系樹脂フィルムとを直接圧着させることにより、ガラス板とAA化PVA系樹脂フィルムた積層された積層体が得られる。
かくして得られた本発明の積層体は、ガラス板の少なくとも一方の面にAA化PVA系樹脂フィルムが直接積層されたものであり、そのままで各種用途に用いることができるが、かかる積層体に、さらに他の層を積層させることによって様々な機能を付与することも可能である。
例えば、ガラス板/接着層/偏光子/保護層、の構成を有するガラス基板付き偏光板において、かかる接着層としてAA化PVA系樹脂層を用いたものに本発明の積層体を適用することが考えられる。この場合、AA化PVA系樹脂フィルムは予め偏光子の片面に積層しておくことが好ましく、その方法としては、上述のAA化PVA系樹脂フィルムの製造法の(3)として挙げた方法、すなわち、AA化PVA系樹脂の水溶液を偏光子に塗布、乾燥してAA化PVA系樹脂層を形成する方法を用いることが好ましい。
また保護フィルムとしては、トリアセチルセルロースなどのセルロースエステル系樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂などの環状オレフィン系樹脂フィルムや、ポリ(メタ)アクリル酸樹脂フィルム、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などを挙げることができ、その厚さは、通常10〜100μm、好ましくは20〜80μmである。
なお、偏光子と保護フィルムの接着に用いられる接着剤としては、PVA系樹脂、特にアセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂に架橋剤を配合した接着剤が好適に用いられ、かかる偏光子と保護フィルムの接着は、偏光子の片面にAA化PVA系樹脂層を形成する前でも、形成後でも、さらにはガラス基板と積層させた後でも可能である。
通常0.05〜5mmであり、さらに0.1〜3mm、特に0.5〜2mmである。
また、AA化PVA系樹脂層の厚さは、通常0.01〜50μmであり、さらに0.05から10μm、特に0.1〜5μmの範囲が好ましく用いられる。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
<AA化PVA系樹脂の作製>
温度調節器付きリボンブレンダーに、未変性PVA樹脂(平均重合度1200、ケン化度99.2モル%)を、ニーダーに3600部仕込み、これに酢酸1000部加えて膨潤させ、回転数20rpmで攪拌しながら、60℃に昇温後、ジケテン550部を3時間かけて滴下し、更に1時間反応させた。反応終了後、メタノールで洗浄した後、70℃で6時間乾燥してAA化PVA樹脂(1)を得た。 得られたAA化PVA系樹脂(1)のAA化度は5.3モル%、ケン化度は98.9モル%であり、平均重合度は1200であった。
得られたAA化PVA系樹脂の5%水溶液を作製し、これを枠壁で囲まれたPETフィルム上に流延し、23℃、50%RHの雰囲気下で三日間静置した後、70℃の乾燥機中で5分間加熱乾燥して、厚さ100μmのAA化PVA系樹脂フィルムを得た。
アミノ基含有シランカップリング剤(信越シリコーン社製「KBP−90」、32%水溶液)をメタノールにて濃度1重量%に調整した。これを、木片に巻きつけた紙製ウエスに含浸させ、ガラス板(無アルカリガラス、コーニング社製「イーグルXG」、45mm×75mm×厚み1.1mm)の表面に、シランカップリング剤の塗布量が約0.04g/m2となるように塗布した後、100℃の乾燥機中で10分間加熱乾燥し、シランカップリング剤処理を施した。
上記AA化PVA系樹脂フィルムと、シランカップリング剤で表面処理されたガラス板を積層し、これをシリコンシートに挟み、表面温度60℃のテストプレス機にて、85N/cm2の圧力で5分間加熱圧着した。
このようにしてPVA系樹脂フィルムとガラス板からなる積層体を作製した。
得られた積層体のガラス板とAA化PVA系樹脂フィルムの層間接着性を、目視観察により評価し、以下の通り判定した。結果を雹に示す。
◎:非常に強固に接着している。
○:接着している。
×:全く接着していない。
実施例1において、AA化PVA系樹脂フィルムの片面に下記条件にてプラズマ処理を行わった以外は実施例1と同様に積層体を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
得られたAA化PVA系樹脂フィルム(38mm×38mm)のガラス板との接着面を、下記に示す条件にてプラズマ処理した。
装置 :積水化学社製「常圧プラズマ表面処理装置」
処理強度:28W/cm2
処理速度:1000mm/s
窒素流量:25mL/分
方法 :ダイレクト方式
距離 :1mm(プラズマ噴射供給吹き出しスリットとフィルム設置台の拒理)
実施例1において、AA化PVA系樹脂の水溶液に架橋剤としてグリオキシル酸ナトリウムをAA化PVA系樹脂100重量部に対して10重量部配合し、AA化PVA系樹脂の架橋フィルムとした以外は実施例1と同様に積層体を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例3において、AA化PVA系樹脂の架橋フィルムの片面に、実施例2と同様にプラズマ処理を施した以外は実施例3と同様に積層体を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、AA化PVA系樹脂の代わりに、平均重合度1200、けん化度99.2モル%の未変性PVAを用い、未変性PVA樹脂フィルムとした以外は実施例1と同様に積層体を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
比較例1において、未変性PVAフィルムの片面に、実施例2と同様にプラズマ処理を施した以外は比較例1と同様に積層体を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1〜4、比較例1,2において、ガラス板のシランカップリング剤処理を行わなかった以外は実施例1〜4と同様に積層体を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
一方、PVA系樹脂として未変性PVAを用いたもの(比較例1,2)は、PVA系樹脂フィルムの表面処理の有無に関わらず、充分な層間接着性は得られなかった。
また、PVA系樹脂としてAA化PVA系樹脂、あるいはその架橋体を用いたとしても、ガラス板をシランカップリング剤で表面処理しなかったもの(比較例3〜6)は、同様にPVAフィルムのプラズマ処理の有無に関わらず、充分な層間接着性は得られなかった。
Claims (2)
- ガラス板の少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを積層してなる積層体の製造方法であって、上記ポリビニルアルコール系樹脂としてアセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂を用い、ガラス板の表面をシランカップリング剤で処理した後、かかる処理面とポリビニルアルコール系樹脂フィルムとを圧着させることを特徴とする積層体の製造方法。
- シランカップリング剤が、アミノ基含有シランカップリング剤である請求項1記載の積層体の製造方法。
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