JP5706858B2 - クロステロウイルス耐性植物の生産方法 - Google Patents
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Description
この15年間、キュウリの黄斑ウイルスがキュウリを生産する生産者の主な関心事となっている(Hassan「A Review of a Yellowing and Stunting disorder of Cucurbits in the United Arab Emirates Emir」J.Agric.Sci.(1991)、2、1〜16)。黄斑ウイルスとはクロステロウイルスのことである。特に、2種類のコナジラミが運ぶウイルスが問題である。これらのウイルスは、Trialeurodes vaporariorumによって運ばれる別名キュウリクロロテックスポットウイルス(cucumber chlorotic spot virus)と呼ばれるビートシュード−イエローウイルス(beat pseudo−yellows virus)(BPYV)、およびBemisia tabaciによって運ばれるウリイエロースタンティングディスオーダーウイルス(cucurbit yellow stunting disorder virus)(CYSDV)として知られている。クロステロウイルスの群にはさらに、とりわけクロステロウイルスのクリニウイルス属の1種であるレタス伝染性黄斑ウイルス(LIYV)が含まれる。これらのウイルスは通常約7日間媒介昆虫内に保持され、コナジラミの摂食活動によって植物上に運ばれる。疾患の制御は通常、殺虫剤処理による媒介昆虫の排除によって実施される。現在まで、この病原体に耐性の植物原料は知られておらず、殺虫剤処理またはコナジラミ耐性の品種改良によって媒介昆虫を排除する研究が行われてきた。現在のところ、いずれの取り組みもこの疾患の制御に成功していない。
本発明者等は、パキスタン原産のキュウリ在来系統Khira、PI250147がBPSVおよびCYSDVに対する耐性をもたらすことを発見した。PI250147とCucumis sativus栽培育種材料とを交配した。交配実施後この植物には種子が生じたので、この種子を採取して植物体に生育させた。この植物のBPYVおよびCYSDVに対する耐性を評価した。耐性を示した植物を感受性のキュウリ優良系に戻し交配した。AFLPフィンガープリント技術を使用して量的遺伝子座(QTL)解析を実施したところ、この耐性が2種のQTLに関連するという結果が導かれた。
a.キュウリクロステロウイルスに対する耐性を与える対立遺伝子を含有するCucumis sativus植物を提供する段階であって、この対立遺伝子は異なる染色体上にある2種類の量的遺伝子座QTL1およびQTL2を特徴としており、QTL1は以下のフランキングマーカー、
i)5’から3’に向かってヌクレオチド配列、配列番号1を有するEcoRIプライマー、キュウリゲノム断片およびヌクレオチド配列、配列番号2を有するMseIプライマーから成る約244bpのマーカー、
ii)5’から3’に向かってヌクレオチド配列、配列番号1を有するEcoRIプライマー、キュウリゲノム断片およびヌクレオチド配列、配列番号2を有するMseIプライマーから成る約188bpのマーカー、
iii)5’から3’に向かってヌクレオチド配列、配列番号3を有するEcoRIプライマー、キュウリゲノム断片およびヌクレオチド配列、配列番号4を有するMseIプライマーから成る約251bpのマーカー、
または、クロステロウイルス耐性を与えるフランキングマーカーの間のPI250147にあるようなDNA配列のいずれかの部分によって定義され、QTL2は以下のマーカー、
i)5’から3’に向かってヌクレオチド配列、配列番号5を有するEcoRIプライマー、キュウリゲノム断片およびヌクレオチド配列、配列番号2を有するMseIプライマーから成る約260bpのマーカー、
ii)5’から3’に向かってヌクレオチド配列、配列番号5を有するEcoRIプライマー、キュウリゲノム断片およびヌクレオチド配列、配列番号6を有するMseIプライマーから成る約107bpのマーカー、
または、クロステロウイルス耐性を与えるフランキングマーカーの間のPI250147にあるようなDNA配列のいずれかの部分によって定義される段階、
b.段階aで得られたCucumis sativusをCucumis sativus栽培育種材料とを交配する段階、
c.段階bの交配体から得られた種子を採取する段階、
d.種子を植物に再生する段階、
e.段階dの植物のキュウリクロステロウイルス耐性を評価する段階、および
f.キュウリクロステロウイルスに耐性の植物を同定し選択する段階が含まれる。
本発明は、BPYVおよびCYSDVに耐性のキュウリ植物(Cucumis sativus)を生産することに関する。植物は、BPYVおよびCYSDVを含有するコナジラミに暴露したとき、疾患の徴候が現れないか、または感受性植物と比較して有意に徴候の減少が見られる場合、疾患耐性であると言われる。Cucumis sativusにおいてBPYVおよびCYSDVに対する耐性が認められたことはなかったので、本発明の植物は新規である。PI205147は、BPYVおよびCYSDVに対する耐性を与える対立遺伝子を含有する。この対立遺伝子は、マーカーを補った交配方法を使用することによって優良種に首尾良く転移することができる。本発明の植物は、伝統的な交配技術によって作製することができる。たとえば、PI250147の種子を使用することができる。しかし、疾患は変化しやすいので、市場で知られている優良な雑種に対抗できる優良種に選択的に転移するためにマーカーを選択することは極めて重要である。
媒介昆虫であるコナジラミ(Trialeurodesおよび/またはBemisia)を使用して試験方法を開発した。管理した温室環境内でコナジラミにBPYVを含有する感染キュウリ植物成木を与えた。この温室内には、感受性を調べた遺伝子バンクの150品目(インド産75品目、中国産60品目およびパキスタン産15品目)を置いた。2〜4葉期の個々の幼木をトレイに入れて(30植物/m2)、感染した植物およびコナジラミに取り巻かれた温室内に置いた。2週間後に2連ずつ評価した。このように設定した試験によって、トレイ内の幼木全てにウイルスを無作為に分布させることができた。2週間後、全植物を媒介動物が含まれる温室に植えた。さらに3〜4週間した後、感染を1(耐性)から8(感受性)の段階で評価した。感受性の徴候は、実験開始後5〜6週間して認められた。驚いたことに、1個の登録番号、PI250147(Khira)だけは徴候が明らかに認められず、耐性であることが判明した。
耐性の登録物を優良育種系と交配した。1回目の戻し交配(BC1)によって、ウイルスに対して完全に感受性になることが判明し、耐性は劣性遺伝子によって制御されているという事実が示された。したがって、BC1を自殖した。自殖した種子をこの実施例で説明したようにトレイに播種して、植物の耐性を試験した。耐性植物を温室に置いて、そこで最初の交配で使用した優良系と同等の表現型が認められるものの選択を実施した。選択した個々の植物を元の優良系親に戻し交配し、その後優良系に劣性特性を転移する同様の育種計画を実施した。
PI250147を優良育種系と交配した。F1種子を採取した。F1植物を成熟するまで生育させ、植物を自殖させた。その後F2種子を収穫した。実施例1で説明した条件と本質的に同様の試験条件下で、F2集団を温室内で播種した。個々の植物の耐性の程度を評価し、DNA試料を得た。Young、Annual Review of Phytopathology 34、479〜501(1996)の記載と本質的に同様に量的遺伝子座(QTL)分析をこの物質に実施した。この分析は、KeygeneでAFLP法を使用して実施された(Vos et al、Nucleic Acids Research、1995、Vol23、No21、4407〜4414)。その結果、耐性は3種類のQTLに関連していた。
配列番号1
GACTGCGTACCAATTCCC
配列番号2
GATGAGTCCTGAGTAACAT
配列番号3
GACTGCGTACCAATTCAA
配列番号4
GATGAGTCCTGAGTAACAC
配列番号5
GACTGCGTACCAATTCAT
配列番号6
GATGAGTCCTGAGTAACGT
Claims (7)
- キュウリに発生するクロステロウイルスに耐性のキュウリ植物の生産方法であって、
a.キュウリクロステロウイルスに対する耐性を与える対立遺伝子を含有するCucumis sativus植物を提供する段階であって、
該対立遺伝子は異なる染色体上にある2種類の量的遺伝子座QTL1およびQTL2を特徴としており、
該QTL1は以下のフランキングマーカー、
i)5'から3'に向かってヌクレオチド配列、配列番号1を有するEcoRIプライマー、キュウリゲノム断片およびヌクレオチド配列、配列番号2を有するMseIプライマーから成る244bpのマーカー、
ii)5'から3'に向かってヌクレオチド配列、配列番号1を有するEcoRIプライマー、キュウリゲノム断片およびヌクレオチド配列、配列番号2を有するMseIプライマーから成る188bpのマーカー、及び
iii)5'から3'に向かってヌクレオチド配列、配列番号3を有するEcoRIプライマー、キュウリゲノム断片およびヌクレオチド配列、配列番号4を有するMseIプライマーから成る251bpのマーカー、
によって定義され、
該QTL2は以下のマーカー、
i)5'から3'に向かってヌクレオチド配列、配列番号5を有するEcoRIプライマー、キュウリゲノム断片およびヌクレオチド配列、配列番号2を有するMseIプライマーから成る260bpのマーカー、及び
ii)5'から3'に向かってヌクレオチド配列、配列番号5を有するEcoRIプライマー、キュウリゲノム断片およびヌクレオチド配列、配列番号6を有するMseIプライマーから成る107bpのマーカー、
によって定義される段階、
b.段階aで得られたCucumis sativusをCucumis sativus栽培育種材料とを交配する段階、
c.段階bの交配体から得られた種子を採取する段階、
d.該種子を植物に再生する段階、
e.再生された植物を、Cucumis sativus優良育種系に戻し交配する段階、
f.戻し交配した植物を、自殖する段階、
g.段階fの植物のキュウリクロステロウイルス耐性を評価する段階、および
h.キュウリクロステロウイルスに耐性の植物を同定し選択する段階
を含む方法。 - 段階aで提供された該Cucumis sativus植物がPI250147、Khira在来系統である請求項1に記載の方法。
- 前記クロステロウイルスがビートシュード−イエローウイルス(BPYV)またはウリイエロースタンティングディスオーダーウイルス(CYSDV)である請求項1または2に記載の方法。
- 請求項1または2に記載の方法によって生産した、キュウリに発生するクロステロウイルスに耐性のキュウリ植物。
- 交雑キュウリ植物である請求項4に記載のキュウリ植物。
- 請求項4または5に記載の植物によって生産した果実または種子。
- キュウリに発生するクロステロウイルスに耐性のキュウリ植物を生じる種子の生産方法であって、
a.キュウリクロステロウイルスに対する耐性を与える対立遺伝子を含有するCucumis sativus植物を提供する段階であって、
該対立遺伝子は異なる染色体上にある2種類の量的遺伝子座QTL1およびQTL2を特徴としており、
該QTL1は以下のフランキングマーカー、
i)5'から3'に向かってヌクレオチド配列、配列番号1を有するEcoRIプライマー、キュウリゲノム断片およびヌクレオチド配列、配列番号2を有するMseIプライマーから成る244bpのマーカー、
ii)5'から3'に向かってヌクレオチド配列、配列番号1を有するEcoRIプライマー、キュウリゲノム断片およびヌクレオチド配列、配列番号2を有するMseIプライマーから成る188bpのマーカー、及び
iii)5'から3'に向かってヌクレオチド配列、配列番号3を有するEcoRIプライマー、キュウリゲノム断片およびヌクレオチド配列、配列番号4を有するMseIプライマーから成る251bpのマーカー、
によって定義され、
該QTL2は以下のマーカー、
i)5'から3'に向かってヌクレオチド配列、配列番号5を有するEcoRIプライマー、キュウリゲノム断片およびヌクレオチド配列、配列番号2を有するMseIプライマーから成る260bpのマーカー、及び
ii)5'から3'に向かってヌクレオチド配列、配列番号5を有するEcoRIプライマー、キュウリゲノム断片およびヌクレオチド配列、配列番号6を有するMseIプライマーから成る107bpのマーカー
によって定義される段階、
b.段階aで得られたCucumis sativusをCucumis sativus栽培育種材料とを交配する段階、
c.キュウリクロステロウイルスに耐性のキュウリ植物を生じる段階bの交配から得られた種子を採取する段階、
d.該種子を植物に再生する段階、
e.再生された植物を、Cucumis sativus優良育種系に戻し交配する段階、
f.戻し交配した植物を、自殖する段階、
g.段階fの自殖した植物のキュウリクロステロウイルス耐性を評価する段階、
h.キュウリクロステロウイルスに耐性の植物を同定し選択する段階、および
i.前記自殖した植物に追加の自殖を行い、キュウリクロステロウイルスに対する耐性の植物を与える追加の自殖の結果得られる植物の種を採取する段階
を含む方法。
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