JP5706617B2 - ケラタン硫酸の測定方法および測定用キット、これらを用いる関節疾患の検知方法等 - Google Patents

ケラタン硫酸の測定方法および測定用キット、これらを用いる関節疾患の検知方法等 Download PDF

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Description

本発明は、試料中の微量のケラタン硫酸を高感度且つ特異的に測定することが可能なケラタン硫酸の測定方法およびこれに用いる測定用キットに関し、さらに、当該測定方法を用いる関節疾患の検知方法およびこれに用いる検知用キット、並びに、関節疾患治療薬またはその候補物質の薬剤効果の判定方法および判定用キットに関する発明である。
ケラタン硫酸はグリコサミノグリカンの一種であり、軟骨、角膜など比較的限定された組織にアグリカン、ケラトカン、ルミカンなどのプロテオグリカンあるいはケラタン硫酸プロテオグリカンの側鎖として存在している。ケラタン硫酸はN−アセチル−D−グルコサミンとD−ガラクトースからなる二糖の繰り返し構造を基本糖鎖構造として有する酸性多糖であり、様々な程度の硫酸化により修飾されている。ケラタン硫酸は、角膜では角膜透明性の維持を担う重要な成分であり、軟骨ではその構造維持に重要な細胞外マトリックスであるアグリカンの構成成分である。特に、関節疾患では、変形性関節症、関節リウマチなどの患者における血清中のケラタン硫酸レベルの変動が知られており、関節疾患のマーカーとして注目されている分子である。
ケラタン硫酸には、角膜、サバ魚皮に由来するケラタン硫酸−Iと軟骨、椎間板、髄核に由来するケラタン硫酸−IIがあり、ケラタン硫酸とコア蛋白質との結合様式は、ケラタン硫酸−Iではアスパラギン酸残基と糖鎖がN−グリコシド結合し、ケラタン硫酸−IIではセリンあるいはトレオニン残基にN−アセチルガラクトサミンがO−グリコシド結合(生化学辞典(第3版),(株)東京化学同人発行)した形であり、両者の結合様式は異なる。また、これらのケラタン硫酸の構造は、ケラタン硫酸−Iは4糖に対し3つの硫酸基を含む構造が主構造であり、ケラタン硫酸−IIは4糖に対し4つの硫酸基を含む構造が主構造と認識されており、ケラタン硫酸−Iはケラタン硫酸−IIより硫酸含量が低い。
このようなケラタン硫酸に対する抗体としては、5D4(クローン名)が知られており、本抗体の認識最小単位は6糖あたり5硫酸基を含む構造と報告されており(非特許文献1)、比較的硫酸含量の多いケラタン硫酸と反応することが認識されている。また、本抗体は生化学工業株式会社から販売されており、研究分野で広く使用されている。
現在用いられているケラタン硫酸の検出方法としては、セルロースアセテート膜電気泳動、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)、免疫学的測定法(ELISA法等)がある。セルロースアセテート膜電気泳動法は感度が低く、試料中の微量のケラタン硫酸を検出するには不利な方法である。HPLC法としては宮内らの方法(特許文献1)などが知られている。HPLC法は、ケラタン硫酸を特異的に分解するケラタナーゼで試料中のケラタン硫酸を消化し、生じたケラタン硫酸の二糖を分析する方法である。HPLC法は、特異性が高く且つより高感度ではあるものの、プロテアーゼ消化、粗精製、ケラタナーゼ消化等の試料の前処理が必要であり、一般に多検体を処理するには不利な方法である。より多検体処理に適し、操作性に優れているELISA法では、5D4を用いた競合ELISA法(特許文献2)およびサンドイッチELISA法(特許文献3)が知られている。
競合ELISA法は、使用する抗体が1種類のため測定系の特異性が低い場合があり、また、試料中の共存物質の影響を受けやすい方法とされており、特異性の点ではサンドイッチELISA法の方が優れている。サンドイッチELISA法による5D4を用いたケラタン硫酸測定法は、試料中のケラタン硫酸検出に有用とのことから、本方法を用いたヒト、イヌ、ウマもしくはウサギの血清または関節液およびモルモット関節液での測定報告はあるが、ケラタン硫酸量が非常に少ないと考えられているラットおよびマウス由来の試料での測定報告は殆どない状態である。このように、現在でもケラタン硫酸の測定が困難であり、ケラタン硫酸の存在が明確でない生体由来試料も多いのが現状である。
特開2001−57900 特公平6−84971 WO90/07120
Eur.J.Biochem.,157,385−491(1987)
本発明は、試料中の微量のケラタン硫酸、特に従来の方法では測定が難しかったケラタン硫酸−Iを含む全ケラタン硫酸を高感度且つ特異的に測定することが可能なケラタン硫酸の測定方法およびこれに用いる測定用キット、さらに、当該測定方法を用いる関節疾患の検知方法およびこれに用いる検知用キット、並びに、関節疾患治療薬またはその候補物質の薬剤効果の判定方法および判定用キットを提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ケラタン硫酸に対する抗体の反応特異性に着目し、硫酸含量の少ないケラタン硫酸−I、および、硫酸含量の多いケラタン硫酸−IIに対し十分に反応し、ケラタン硫酸−Iとケラタン硫酸−IIに対する反応特異性の差が少ない抗ケラタン硫酸抗体を用いることにより、試料中の微量のケラタン硫酸を高感度に簡便且つ特異的に測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ケラタン硫酸−Iとケラタン硫酸−IIとに対する相対的反応特異性が、IC50KS−I/KS−IIとして0.4〜5である抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体を、生体試料に接触させ、これにより得られるシグナルにより、当該生体試料中のケラタン硫酸を検出する、ケラタン硫酸の免疫学的測定方法(以下、本発明の測定法ともいう)を提供する発明である。
ただし、IC50KS−I/KS−IIは、ケラタン硫酸−Iの競合的免疫測定方法での50%阻害濃度(ng/mL)をケラタン硫酸−IIの競合的免疫測定方法での50%阻害濃度(ng/mL)で除した値を示す。上記において、ケラタン硫酸−Iの競合的免疫測定方法での50%阻害濃度およびケラタン硫酸−IIの競合的免疫測定方法での50%阻害濃度とは、それぞれ後述する実施例1に記載の方法により測定される濃度を意味する。上記のケラタン硫酸−Iとケラタン硫酸−IIとしては、後述する実施例1に記載の通り、それぞれKS(BC)(生化学工業株式会社販売)、KPS−1(生化学工業株式会社製)を用いることができ、これらは典型的には下記の性質を有する。
KS-I: 二糖分析での分析値: (Gal6S-GN6S)/ total = 36〜44 %
GPC法での分析値: 13kDa〜15kDa
KS-II: 二糖分析の分析値: (Gal6S-GN6S) /total = 95〜100 %
GPC法での分析値: 12kDa〜14kDa
上記の分析値は下記(1)および(2)の方法で得ることができる。測定結果の具体例と合わせて下記に示す。
(1) KS-IおよびKS-IIの二糖組成比
KS-IおよびKS-IIの二糖構成単位である、
2-acetamido-2-deoxy-4-O-(b-D-glucopyranosyl)-6-O-sulfo-D-gulcose (Gal-GN6S)
および
2-acetamido-2-deoxy-4-O-(6-O-sulfo-β-D-glucopyranosyl)-6-O-sulfo-D-gulcose (Gal6S-GN6S)
の組成比を、Analytical method to determine keratan sulfate in the serum using HPLC. Kurahashi Y, Masuda H, Miyazaki K. Rinsho Byori (2008) 56(5), 373-378に記載の方法に基づきHPLC法で分析した。その結果を、表1に示した。結果は、2種類の二糖単位の総和に占める各成分の割合で示した。
Figure 0005706617
(2) KS-IおよびKS-IIの分子量分析
KS-IおよびKS-IIの分子量を、Identification and functions of chondroitinsulfate in the milieu of neural stem cells. Ida M, ShuoT, Hirano K, Tokita Y, Nakanishi K, Matsui F, Aono S, Fujita H, Fujiwara Y, KajiT, Oohira A. J. Biol. Chem. (2006) 281(9), 5982-5991に記載の方法に基づきGPC法で分析した。分析の標準品としては、Evaluation of Molecular Weights of Hyaluronate Prfeparations by Multi-Angle Laser Light Scattering. Chikako Yomota Bull. Natl. Health Sci. (2003) 121, 030-033に記載の方法で分子量を定めた5種のコンドロイチン硫酸を使用した。その結果を、表2に示した。結果は、ピーク分子量で示した。
Figure 0005706617
上記生体試料は、血液試料または関節液であることが好適である。血液試料とは、例えば、血清、血漿、全血等を意味するものである。
上記の「IC50KS−I/KS−IIとして0.4〜5である抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体」としては、BCD-4、BCD-7、BC-261、BC-703、MK-172、MK-202、または、EFG-11(後述する)が挙げられる。
本発明の測定法では、固相体に抗ケラタン硫酸抗体が固定化された固相化抗ケラタン硫酸抗体、または、標識物質が抗ケラタン硫酸抗体に結合した標識抗ケラタン硫酸抗体、を用いることを好適な態様の一つとして挙げられる。
例えば、下記工程を含む、ケラタン硫酸の免疫学的測定方法が挙げられる。
[工程1]ケラタン硫酸−Iとケラタン硫酸−IIとに対する相対的反応特異性が、IC50KS−I/KS−IIとして0.4〜5である抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体を固着させた固相、および、標識された当該抗体を、一緒に若しくは先後別々に生体試料に接触させ、当該抗体と生体試料中のケラタン硫酸の免疫複合体を当該固相上に形成させる工程。
[工程2]当該免疫複合体における標識のシグナルにより得られる検出値により、生体試料中のケラタン硫酸を測定する工程。
本発明の測定法の当該好適態様においては、固相化抗ケラタン硫酸抗体と標識抗ケラタン硫酸抗体が、互いに同一の抗ケラタン硫酸抗体であっても、異なる抗ケラタン硫酸抗体であってもよい。
また、本発明は、上記のような本発明の測定法を行うための測定用キット、すなわち、試料中に存在するケラタン硫酸を免疫学的測定法により測定するために用いるキットであって、抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体として、BCD-4、BCD-7、BC-261、BC-703、MK-172、MK-202、および、EFG-11からなる群から選択されるモノクローナル抗体を含んでなる、ケラタン硫酸測定用キット(以下、本発明の測定用キットともいう)を提供する発明である。
さらに、本発明は、BCD-4およびMK-172の組み合わせ、またはBCD-7およびEFG-11の組み合わせからなるモノクローナル抗体を含む、上記本発明の測定用キットを提供する発明である。
さらに、本発明は、下記の工程を含む、関節疾患の検知方法(以下、本発明の疾患の検知法ともいう)を提供する発明である。
[工程1]本発明の測定法によって、被検体中のケラタン硫酸を測定する工程。
[工程2]工程1により測定される被検体中のケラタン硫酸量と、正常検体中のケラタン硫酸量、および/または、時間をおいて複数回にわたり測定される被検体中のケラタン硫酸量とを比較する工程。
[工程3]工程2における比較に基づいて、被検体中のケラタン硫酸量が、正常検体中のケラタン硫酸量よりも増加している場合を、関節疾患について陽性であると判定し、あるいは、複数回の測定により検出された被検体中のケラタン硫酸量が、前の回の測定値よりも増加している場合を関節疾患は進行傾向にあると判定する工程。
本発明の疾患の検知法は、特に、被検体を、本発明の測定法に準じて、血液検体(血液試料と同意義)または関節液とすることにより、関節疾患を判定することが可能である。
関節疾患は、例えば、変形性関節症または外傷性関節症が挙げられる。特に、本発明の疾患の検知法は、X線によっては検知できない変形性関節症変形性を容易に検知することができる。
なお、本明細書においてX線によっては検知できない変形性関節症変形性とは、Kellgren and Lawrenceの方法(Ann. Rheum. Dis. 1957, 16, 494-502)に従って関節症の診断を行った場合に、X線所見ではGrade0あるいはgradeIであるが、疼痛、腫脹等何らかの症状が認められ、且つ関節内視鏡により関節軟骨の色調変化、けば立ち、粗造化等の変性あるいは損傷が認められる状態をいう。
また、本発明は、上記のような本発明の疾患の検知法を行うための検知用キットであって、抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体として、BCD-4、BCD-7、BC-261、BC-703、MK-172、MK-202、および、EFG-11からなる群から選択されるモノクローナル抗体を含んでなる、関節疾患検知用キット(以下、本発明の検知用キットともいう)を提供する発明である。
さらに、本発明は、BCD-4およびMK-172の組み合わせ、またはBCD-7およびEFG-11の組み合わせからなるモノクローナル抗体を含む、上記関節疾患検知用キットを提供する発明である。
また、本発明は、下記の工程を含むことを特徴とする関節疾患治療薬またはその候補物質の治療効果の判定方法(以下、本発明の薬剤効果判定法ともいう)を提供する発明である。
[工程1]本発明の測定法によって、関節疾患治療薬またはその候補物質(以下、治療薬等ともいう)の投与前の検体と、投与後の検体中のケラタン硫酸を測定する工程。
[工程2]工程1により得られた治療薬等の投与前の被検体中のケラタン硫酸量と、投与後の被検体中のケラタン硫酸量を比較する工程。
[工程3]工程2における比較に基づいて、治療薬等の投与前のケラタン硫酸量から、投与後のケラタン硫酸量への正常方向への変化の度合いを検出し、これを指標として上記治療薬等の効果を判定する工程。
また、本発明は、上記のような本発明の疾患の薬剤効果判定法を行うための判定用キットであって、抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体として、BCD-4、BCD-7、BC-261、BC-703、MK-172、MK-202、および、EFG-11からなる群から選択されるモノクローナル抗体を含んでなる、薬剤効果判定用キット(以下、本発明の薬剤効果判定用キットともいう)を提供する発明である。
さらに、本発明は、BCD-4およびMK-172の組み合わせ、またはBCD-7およびEFG-11の組み合わせからなるモノクローナル抗体を含む、上記本発明の薬剤効果判定用キットを提供する発明である。
本明細書において、免疫学的測定法とは抗原抗体反応を利用した測定法を全て包含する意味で使用し、イムノアッセイ(immunoassay)と同義である。また、競合的免疫測定法とは、標識抗原と抗体が存在する系に、測定すべき物質(被検抗原)を存在させて、標識抗原と被検抗原を抗体に対して競合的あるいは阻害的に反応させ、適当な方法でB/F分離を行い、標識物質のシグナルを測定する方法を意味する。また、サンドイッチ法とは固相化抗体と抗原と標識抗体との免疫複合体を測定系中で形成させ、適当な方法でB/F分離を行い、標識物質のシグナルを測定する方法で、固相法による非競合的な免疫学的測定法(イムノメトリックアッセイ)である。このうち、標識物質として酵素を使用する方法をサンドイッチELISA法という。また、プロテアーゼとは、蛋白質分解酵素(proteolyticenzyme、peptide hydrolase)であり、ペプチド結合を分解する酵素類の総称である。これらの用語の詳細な定義については「バイオテクノロジー事典(1989年、(株)シーエムシー発行)」または「生化学辞典 第3版(1998年)」等を参照されたい。
本発明の測定法および測定用キットを用いることにより、従来測定が困難であったケラタン硫酸−Iも感度良く検出することができ、生体試料中の微量のケラタン硫酸を高感度に簡便且つ特異的に検出することができる。また、従来検出困難であった各種動物試料中の極めて微量のケラタン硫酸を特異的に検出することが可能となり、多様な試料中のケラタン硫酸の検出への応用が可能となる。これにより、生物学および医学上、特には、関節領域において、動物モデルあるいはin vitroモデルでのエビデンスをベースとした医薬品開発、検査薬開発が可能となり、極めて有用な研究開発および検査ツールを提供することができる。
また、本発明の疾患の検知法および検知用キットでは、従来は検知不可能であった、被検体中の微量のケラタン硫酸の動向を関節疾患と関連付けて、新たな関節疾患についての有用な指標を与えるものである。具体的には、例えば、膝関節等における軟骨の損傷を鋭敏に検出することができる。さらに、本発明の薬剤効果の判定法および判定用キットでは、確立した関節疾患の治療薬の臨床における効果、または、当該治療薬の候補物質のスクリーニングに際しての効果を、被検体中のケラタン硫酸量を鋭敏に検出することで判定することが可能である。
各抗ケラタン硫酸抗体におけるケラタン硫酸−IとIIとの反応性について検討した結果を示している。 サンドイッチELISA法におけるケラタン硫酸の反応曲線である。 BCD−4/MK172測定系で、プロナーゼ無処理血清及び当該処理血清を試料として測定したケラタン硫酸濃度と、HPLCで測定したケラタン硫酸濃度との間の相関を示している。 EGF11/EGF11測定系で、プロナーゼ無処理血清及び当該処理血清を試料として測定したケラタン硫酸濃度と、HPLCで測定したケラタン硫酸濃度との間の相関を示している。 ラット半月板切除モデルでの肉眼スコアである。 ラット半月板切除モデルにおける関節液のケラタン硫酸レベルを示している。 アジュバント誘発関節炎のラットの関節液におけるケラタン硫酸レベルを示している。 アジュバント誘発関節炎のラットにおける血漿中のケラタン硫酸レベルを示している。 パパイン誘発ウサギモデルにおける血清中KSレベルを示している。 健康人群、OA群およびTA群における血中KSレベルを示している。 健康人群とOA群とにおける血中KSレベルのROC曲線を示している。 健康人群とTA群とにおける血中KSレベルのROC曲線を示している。 健康人群と早期OA群における血中KSレベルを示している。 健康人群と早期OA群における血中KSレベルのROC曲線を示している。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
[測定法およびキット]
本発明の測定法は、ケラタン硫酸−I(以下、「KS−I」ともいう)およびケラタン硫酸−II(以下、「KS−II」ともいう)の2種類のケラタン硫酸への反応性を十分に有し、かつ、KS−IとKS−IIとの反応特異性の差が少ない抗ケラタン硫酸抗体、すなわち、KS−IとKS−IIとに対する相対的反応特異性が、IC50KS−I/KS−IIとして0.4〜5、好ましくは、0.4〜3.8である抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体を用いることを特徴とするものである。なお、上述したように、「IC50KS−I」は、競合的免疫測定法、(例えば、競合ELISA法)を用いて測定した際に、抗ケラタン硫酸抗体のビオチン標識KS−Iに対する反応がKS−Iによって50%阻害される濃度であり、「IC50KS−II」は、同抗ケラタン硫酸抗体のビオチン標識KS−Iに対する反応がKS−IIによって50%阻害される濃度を意味するものである。
このようなKS−IとKS−IIとの反応性の差が少ない抗ケラタン硫酸抗体の製造法は、前記の抗体が得られる方法であれば特に限定されず、公知の方法を適宜応用することにより製造することができる。たとえば、軟骨、角膜などに由来するマトリックス成分、プロテオグリカン、アグリカン、ルミカン、ケラトカンなどのケラタン硫酸プロテオグリカンあるいは精製ケラタン硫酸、ケラタン硫酸誘導体を抗原として、in vivo免疫、in vitro免疫、細胞工学的手法または遺伝子工学的手法等により抗体を製造することができる(J. of Biological Chemistry 258, 8848-8854 (1993)、Biochem. J., 234, 31-41 (1986))。
すなわち、本発明の測定法に用いるKS−IとKS−IIとの反応性の差が少ない抗ケラタン硫酸抗体は、抗体を産生するハイブリドーマを作成し、このハイブリドーマを培養し、または、動物の体内で増殖させることによって製造することができる。また、抗体産生細胞から得られたmRNAを用いてファージ・ディスプレイ法によって遺伝子工学的に抗体を製造することもできる。
本発明の測定法に用いる抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体を製造する工程は、基本的には(1)ヒト関節軟骨等の免疫原の異種動物への免疫、(2)異種動物から抗体産生細胞の分離、(3)抗体産生細胞とミエローマ細胞の細胞融合、(4)ハイブリドーマの選択、(5)ハイブリドーマの増殖、(6)抗体の分離・精製、からなる。
(1)免疫
使用する免疫原は、軟骨、プロテオグリカン、ケラタン硫酸プロテオグリカン、アグリカン、また、これらのコンドロイチナーゼAまたはABCの消化物あるいは未消化物が好ましい。免疫原の由来する動物種は、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、モルモット、イヌ、ブタ、ウサギ、サル、ハト、ニワトリなどいずれであっても良く、特にヒト、ウシ、ブタなどの比較的大型の動物の使用が好都合である。免疫原を調製する材料は、前述の動物の角膜、関節軟骨など免疫原を含む組織から免疫原を調製するのが好ましい。
免疫原を投与する異種動物(ヒト以外の動物)としては、免疫原とは異なる動物種であればよく、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、モルモット、イヌ、ブタ、ウサギ、サル、ハト、ニワトリなどいずれであってもよく、特にマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどが使用上好都合であり、特には、マウス(BALB/c)が最も一般的な免疫動物である。
このような動物への免疫原の投与は常法に従って行えばよく、たとえば、完全フロインドアジュバンド、不完全フロインドアジュバンド、ミョウバンアジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント、百日咳菌アジュバント、TiTer Max、Titer Max Gold、RIBIアジュバントシステムなどの各種アジュバントと上述の免疫原との懸濁液を調製し、これを上記動物の静脈内、腹腔内、足蹠、脾臓、リンパ節、皮下または皮内等に投与すればよい。
投与量は、免疫動物の種類、免疫注射部位等により適宜決められるものであるが、免疫動物としてマウスを使用する場合には免疫原量として0.01〜10mg/匹程度が好適である。
初回投与後、1〜4週間おきに1〜5回程度の上記と同様の追加免疫を行うことにより、動物体内でケラタン硫酸に対する抗体産生を誘導する。
免疫動物の血清中の抗体価の測定をELISA法等により繰り返し行い、抗体価が目標レベルに達したら、免疫原をアジュバント、生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液あるいはPBS)などに溶解したものを静脈内、腹腔内、脾臓、足蹠等に注射し、最終免疫とする。
(2)異種動物から抗体産生細胞の分離
免疫を獲得した動物からの脾細胞、リンパ節細胞、末梢血リンパ球などの抗体産生細胞を常法により取得する。取得する抗体産生細胞としては脾細胞、リンパ節細胞が好ましい。
(3)抗体産生細胞とミエローマ細胞の細胞融合
抗体産生細胞(本項目では、免疫後に取得した脾細胞、リンパ節細胞を示す)と融合させるミエローマ細胞としては、マウス、ラット、ヒトなどの種々の動物に由来し、当業者が一般に入手可能な株化細胞を使用する。使用する細胞株としては、薬剤抵抗性を有し、未融合の状態では選択培地で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。通常、8−アザグアニン耐性株が用いられ、この細胞株はヒポキサンチン−グアニンホスフォリボシルトランスフェラーゼ(Hypoxanthine guaninephosphoribosyl transferase)を欠損し、ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(HAT)培地で生育できない。また細胞の性質として免疫グロブリンを分泌しない、いわゆる非分泌型の細胞株であることが好ましい。
ミエローマ細胞株の具体例としては、P3x63Ag8(ATCC TIB−9)(Nature,256495−497(1975))、P3x63Ag8U.1(P3-U1)(ATCC CRL−1597)(Current Topics in Microbiology and Immunology,81,1−7(1978))、P3x63Ag8.653(ATCC CRL−1580)(J.Immunology.123.1548−1550(1979))、P2/NSI/1−Ag4−1(ATCC TIB−18)(Europian J.Immunology.6,511−519(1976))、Sp2/O−Ag14(ATCC CRL−1581)Nature,276,269−270(1978))などのマウスミエローマ細胞株、210.RCY.Agl.2.3(Y3−Ag1.2.3)(ATCC CRL−1631)(Nature.277,131−133(1979))などのラットミエローマ細胞株、U−266−AR1(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,77,5429(1980))、GM1500(Nature,288,488(1980))、KR−4(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,79,6651(1982))などのヒトミエローマ細胞株を例示することができる。
細胞融合にあたっては、抗体産生細胞に適合したミエローマ細胞を選定する。細胞融合は、イーグルの最少必須培地(MEM)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、RPMI−1640培地などの動物細胞培養用培地中で10〜10個/mLのミエローマ細胞と抗体産生細胞を混合比1:1〜10に混合し、37℃で1〜10分間細胞同士を接触させることにより効率よく融合を行うことができる。細胞融合を促進させるために、平均分子量1,000〜6,000のポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニールアルコール、センダイウイルスなどの融合促進剤を使用することができる。また、電気パルスを利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞とミエローマ細胞を融合させることもできる。
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選別する手段としては、選択的培地における細胞の選択的増殖を利用する方法を用いることができる。たとえば、細胞懸濁液を10〜20%ウシ胎児血清(FCS)含有RPMI−1640培地などで適当に希釈後、マイクロプレート上に10〜10個(抗体産生細胞数として)/ウェル程度まき、各ウェルに選択培地(たとえば、HAT培地など)を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。ミエローマ細胞として8−アザグアニン耐性株、選択培地としてHAT培地を用いた場合は、未融合のミエローマ細胞は培養7〜14日目ぐらいまでに死滅し、正常細胞である抗体産生細胞もインビトロ(in vitro)では長期間生育できないので、培養7〜14日目から生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。
(4)ハイブリドーマの選択(スクリーニング)
ケラタン硫酸を認識する抗体を産生するハイブリドーマの検索は、酵素免疫測定法(EIA、ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)などによって行うことができる。たとえば、ケラタン硫酸あるいはケラタン硫酸誘導体を固相に固定化させた96ウェルELISA用マイクロプレートにモノクローナル抗体を含む培養上清を添加し、ハイブリドーマが産生した抗体とケラタン硫酸とを反応させ、次いで結合した特異抗体に酵素標識抗免疫グロブリン抗体を反応させるか、あるいはビオチン標識抗免疫グロブリン抗体を反応させたのちアビジンあるいはストレプトアビジン−酵素標識体を反応させ、次いでいずれの場合とも各ウェルに酵素基質を加えて発色させる。ケラタン硫酸を固定化したウェルのみで発色する培養上清を選別することにより、ケラタン硫酸と特異的に反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択(スクリーニング)することができる。
ハイブリドーマのクローニングは、限界希釈法、軟寒天法、フィブリンゲル法、蛍光励起セルソーター法などにより行うことができる。
(5)ハイブリドーマの増殖
このようにして取得したハイブリドーマを増殖させ、抗体を生産させる方法としては、通常の細胞培養法や腹水形成法などが採用されうる。
細胞培養法においては、ハイブリドーマを10〜20%FCS含有RPMI−1640培地、無血清培地などの動物細胞培養用培地中で通常の培養方法あるいは高密度状態での培養方法により培養し、その培養上清液から抗体を取得することができる。
腹水から回収する方法では、ハイブリドーマと腫瘍組織適合性が一致する動物に、プリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)などの鉱物油を腹腔内に投与した後、たとえばマウスの場合にはハイブリドーマを約10〜10個/匹腹腔内投与する。ハイブリドーマは7日〜1ヶ月程腹水腫瘍で形成し、血清および腹水中に高濃度に抗体を生産する。このようにして得られた腹水を採取する。
(6)抗体の分離・精製
抗体を含有する培養上清、腹水などから抗体の精製が必要である場合には、硫安塩析法、DEAEセルロースなどの陰イオン交換体を利用するイオン交換クロマトグラフィー、プロテインA−セファロースなどを用いるアフィニティークロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜に選択し、組み合わせることにより、培養上清、腹水などからそれらに含まれる抗体を精製することができる。
また、市販されている抗体も利用することができる。使用する上記抗体の種類は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体等特に制限されないが、特異性の点から、モノクローナル抗体が好ましい。例えば、Biochem. J. (1986) 234, 31-41、in vivo 4:149-152(1990)、Cancer Immunol Immunother.(1990)32:132-142、Biochem. J. (1986) 236, 71-75、The Journal of Histochemistry and Cytochemistry. Vol.39, No.9, pp.1175-1187 (1991)またはARTHRITIS&RHEUMATISM. Vol.38, No.5, pp.660-668 (1995)に記載されたモノクローナル抗体を利用することができる。
上記抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体としては、EFG−11、BCD−4、BCD−7、BC−261、BC−703、MK−172またはMK−202(全てモノクローナル抗体のクローン名)を例示することができる。
これらの抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体は、後述する実施例1(表4)にて示すように、全て、IC50KS−I/KS−IIが、0.4〜5の範囲内のKS−IとKS−IIとの反応性の差が少ない抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体である。
なお、これらの抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体の典型的な特徴は下記の通りである。
1)EGF−11(コスモ・バイオ株式会社およびCHEMICON INTERNATIONAL INC. カタログ品番:MAB2022)
免疫原:コンドロイチナーゼABCで消化したヒト関節軟骨プロテオグリカン
免疫動物:マウス
抗体クラス:IgG2b
交差する動物種:ヒト、マウス、ウシ、犬、豚、羊
特異性:骨格由来(Type I)および角膜由来(Type II)のケラタン硫酸鎖(単独またはプロテオグリカン結合体のどちらか)の2−3の二糖単位を認識
2)BC−261(コスモ・バイオ株式会社およびCHEMICON INTERNATIONAL INC. カタログ品番:MAB2020)
免疫原:ウシ角膜由来ケラタン硫酸プロテオグリカン
免疫動物:マウス
交差する動物種:ヒト、ウシ
抗体クラス:IgG1
特異性:ヒトおよびウシの角膜由来ケラタン硫酸プロテオグリカンと高密度軟骨プロテオグリカンに存在する蛋白質関連エピトープと反応
3)BC−703(コスモ・バイオ株式会社およびCHEMICON INTERNATIONAL INC. カタログ品番:MAB2025)
免疫原:ウシ角膜由来ケラタン硫酸プロテオグリカン
免疫動物:マウス
交差する動物種:ヒト、ウシ
抗体クラス:IgG3
特異性:様々な動物種の軟骨および角膜プロテオグリカンのO−結合オリゴ糖と結合する蛋白質関連エピトープと反応
4)MK−172(コスモ・バイオ株式会社およびCHEMICON INTERNATIONAL INC. カタログ品番:MAB2005)
免疫原:コンドロイチナーゼA消化胎児性ヒト関節軟骨
免疫動物:マウス
交差する動物種:ヒト、ウシ、犬
抗体クラス:IgG3
特異性:異なる種の高密軟骨プロテオグリカンのコンドロイチン硫酸鎖の結合領域と結合する蛋白質関連エピトープを認識
5)MK−202
免疫原:コンドロイチナーゼA消化胎児性ヒト関節軟骨
免疫動物:マウス
抗体クラス:IgG1
特異性:異なる種の高密軟骨プロテオグリカンのコンドロイチン硫酸鎖の結合領域と結合する蛋白質関連エピトープを認識
6)BCD−4
免疫原:ヒト関節プロテオグリカンA1D1フラクションおよび/またはコンドロイチナーゼABC消化したヒトプロテオグリカン
免疫動物:マウス
抗体クラス:IgG1
特異性:プロテオグリカンモノマーのケラタン硫酸あるいはケラタン硫酸様構造が結合しているペプチド部分を認識
7)BCD−7
免疫原:ヒト関節プロテオグリカンA1D1フラクションおよび/またはコンドロイチナーゼABC消化したヒトプロテオグリカン
免疫動物:マウス
抗体クラス:IgG1
特異性:プロナーゼ、パパイン、アルカリ処理による切断に敏感で、ケラタン硫酸、コンドロイチン硫酸、オリゴ糖を含まない部分を認識
本発明では、新たに見出された反応特異性、すなわち、硫酸含量の少ないケラタン硫酸−I、および、硫酸含量の多いケラタン硫酸−IIに対し反応性を十分に有し、さらに好適には、KS−IとKS−IIとの反応特異性の差が少ないという特徴を有する抗ケラタン硫酸抗体を使用することにより、初めて試料中の微量のケラタン硫酸、特に従来の方法では測定が難しかったケラタン硫酸−Iを含む全ケラタン硫酸を特異的に測定することが可能となった。
上記のモノクローナル抗体のうち、BCD−4を産生するハイブリドーマ・セルラインとして、マウス−マウス・ハイブリドーマ(Mouse-Mouse Hybridoma)BCD−4が、MK−172を産生するハイブリドーマ・セルラインとしてマウス−マウス・ハイブリドーマ(Mouse-Mouse Hybridoma)MK−172が、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1)に国内寄託され(寄託日:2007年9月13日、受託番号:それぞれ、FERM P−21364、FERM P−21365)、その後、国内寄託から国際寄託に移管された(移管申請受領日:2009年12月15日、受領番号:それぞれ、FERM ABP−11210、FERM ABP−11211;受託番号:それぞれ、FERM BP−11210、FERM BP−11211)。
また、上記のモノクローナル抗体のうち、EFG−11を産生するハイブリドーマ・セルラインとして、マウス−マウス・ハイブリドーマ(Mouse-Mouse Hybridoma)EFG−11が、上記特許生物寄託センターに国内寄託され(寄託日:2008年12月3日、受託番号:FERM P−21741)、その後、国内寄託から国際寄託に移管された(移管申請受領日:2009年12月15日、受領番号:FERM ABP−11212;受託番号:FERM BP−11212)。さらに、BCD−7を産生するハイブリドーマ・セルラインとして、マウス−マウス・ハイブリドーマ(Mouse-Mouse Hybridoma)BCD−7もまた、上記特許生物寄託センターに国内寄託され(寄託日:2009年2月17日、受託番号:FERM P−21773)、その後、国内寄託から国際寄託に移管された(移管申請受領日:2009年12月15日、受領番号:FERM ABP−11213;受託番号:FERM BP−11213)。

本発明の測定法は、上述のような抗体を使用し、免疫学的測定法により試料中のケラタン硫酸を測定するものである。免疫学的測定法としては、競合法、サンドイッチ法等が挙げられるが、特異性の点からサンドイッチ法が好ましい。
その中でも競合法、サンドイッチ法とも標識物質として酵素を使用する方法(競合ELISA法、サンドイッチELISA法)が取り扱い等の点で好ましい。
本発明の測定法において、サンドイッチ法を用いる場合、基本的には、従来用いられている方法、手順等と同様に行うことができる。例えば、抗ケラタン硫酸抗体を固相体に固定化させた後、ケラタン硫酸を含み得る試料を添加し、例えば、常温(15〜25℃)で20〜120分間反応させることにより、「固相化抗ケラタン硫酸抗体」と「ケラタン硫酸」との複合体(「固相化抗ケラタン硫酸抗体−ケラタン硫酸」を形成させる。続いて、「固相化抗ケラタン硫酸抗体−ケラタン硫酸」中のケラタン硫酸に、検出に用いる標識物質が抗ケラタン硫酸抗体に結合した標識抗ケラタン硫酸抗体を添加し、例えば、常温(15〜25℃)で20〜120分間静置あるいは攪拌させることにより、「固相化抗ケラタン硫酸抗体−ケラタン硫酸」と「標識抗ケラタン硫酸抗体」との免疫複合体(「固相化抗ケラタン硫酸抗体−ケラタン硫酸−標識抗ケラタン硫酸抗体」)を形成させる。次いで、固相と液相の分離(B/F分離)を行い、当該固相中または液相中の標識物質のシグナルを測定し、当該シグナルを、試料におけるケラタン硫酸の、定量的または定性的検出の指標とすることができる。なお、上記の例において、先に試料中に含まれ得るケラタン硫酸と標識抗ケラタン硫酸を反応させ、「ケラタン硫酸−標識抗ケラタン硫酸抗体」との免疫複合体を形成させた後に、当該免疫複合体を含む液相において固相化抗ケラタン硫酸を反応させて、「固相化抗ケラタン硫酸抗体−ケラタン硫酸−標識抗ケラタン硫酸抗体」免疫複合体を形成させた後に、固相と液相の分離を行うことも可能である。さらに、試料中に含まれ得るケラタン硫酸と固相化抗ケラタン硫酸抗体、および、標識抗ケラタン硫酸抗体を一緒に反応系に共存させて、「固相化抗ケラタン硫酸抗体−ケラタン硫酸−標識抗ケラタン硫酸抗体」免疫複合体を形成させた後に、固相と液相の分離を行うことも可能である。
すなわち、本発明の測定法を、サンドイッチELISA法にて行う場合には、例えば、「生体試料に対し、(1)抗ケラタン硫酸抗体が固定化された固相化抗ケラタン硫酸抗体、および、(2)標識物質が抗ケラタン硫酸抗体に結合した標識抗ケラタン硫酸抗体を、一緒に、または、先後別々に反応させて、当該試料中に存在するケラタン硫酸と(1)および(2)で構成される免疫複合体の形成工程を行った後、固相と液相を分離し、当該固相または液相中の標識物質のシグナルを測定し、当該シグナルを、生体試料におけるケラタン硫酸の、定量的または定性的検出の指標とすることを特徴とする、本発明の測定法。」として規定される。
さらに、本発明の測定法を、競合ELISA法を用いて行う場合には、例えば、固相体にケラタン硫酸または抗ケラタン硫酸抗体を固定化し、生体試料と標識物質が結合した標識抗ケラタン硫酸抗体または標識ケラタン硫酸を加え、固相体に固定化したケラタン硫酸または抗ケラタン硫酸抗体に競合的に結合した標識抗ケラタン硫酸抗体または標識ケラタン硫酸の標識物質を前記の方法により検出することにより、生体試料中のケラタン硫酸を測定することができる。
固相体に固定化される抗ケラタン硫酸抗体は、上述した通り、IC50KS−I/KS−IIの値が0.4〜5、好ましくは0.4〜3.8である抗体である。具体的には、上述のEFG−11、BCD−4、BCD−7、BC−261、BC−703、MK−172またはMK−202を例示することが可能である。
また、標識抗ケラタン硫酸抗体を構成する抗ケラタン硫酸抗体もまた、IC50KS−I/KS−IIの値が0.4〜5、好ましくは0.4〜3.8である抗体である。具体的には、上述の、EFG−11、BCD−4、BCD−7、BC−261、BC−703、MK−172またはMK−202を例示することが可能である。
さらに具体的な固相化抗ケラタン硫酸抗体と、標識抗ケラタン硫酸抗体の組み合わせとしては、後述するモルモット、ラット、マウス、ウサギ等の小型動物由来の試料中のケラタン硫酸を測定対象とする場合には、各種生体試料中のケラタン硫酸をより高感度に検出できる故に、後述する実施例に示される通り、BCD−4またはMK−172から選択される抗ケラタン硫酸抗体を用いることがより好ましく、固相化抗ケラタン硫酸抗体としてBCD−4を用い、標識抗ケラタン硫酸抗体としてMK−172を用いる組み合わせが最も好ましい。
一方、ヒト由来の試料中のケラタン硫酸を測定対象とする場合には、固相化抗ケラタン硫酸抗体としてEFG−11またはBCD−7を用い、標識抗ケラタン硫酸抗体としてはBCD−7またはEFG−11を用いることがより好ましい。
抗ケラタン硫酸抗体を固定化させる固相体としては、一般に抗体を固定化し得る担体であればよく、特に限定はされないが、例えば、プレート、チューブ、ボール、ビーズ、メンブレン、ラテックス、ゲル、磁性微粒子等を例示することができ、プレート、ボール、ビーズ、ラテックス、プレートが好ましい。その中でも、プレート、特に複数のウェルを有するマイクロプレートは、多数の検体の同時検出を容易にするためより好ましい。材質としては、ガラス、セラミックス、シリコンラバー、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル樹脂、ゴム等を例示することができる。
上記固相体に抗ケラタン硫酸抗体またはケラタン硫酸を固定化させる方法としては、物理的吸着法、共有結合法または包括法等、固定化酵素の調製法として一般的な方法(固定化酵素、1975年、講談社発行、第9〜75頁参照)を採用することができるが、物理的吸着は操作が簡便な点で好ましい。
また、上記固定化は固相体に抗ケラタン硫酸抗体を直接結合させることによって行ってもよく、両物質の間に他の物質を介して行ってもよい。
例えば、抗ケラタン硫酸抗体をpH7〜9程度の緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、炭酸緩衝液等)に溶解して固相体(例えばマイクロプレートのウェル)に加え、37℃程度で1〜2時間保存するか、4℃程度で一晩保存して直接固定化させる方法等を挙げることができる。このように得られた固相化抗ケラタン硫酸抗体は、試料中のケラタン硫酸や他の分子種等の固相体表面への非特異的結合を抑制するため、ブロッキング剤を添加して抗ケラタン硫酸抗体が固定化していない部分を被覆しておくことが好ましい。このようなブロッキング剤としては、動物由来の血清アルブミン、カゼイン、ミルク蛋白、あるいは、植物由来のタンパクまたはその加水分解物であるペプチド等が挙げられ、また、ブロッキング剤として市販されているもの、例えば、ApplieDuo(生化学工業株式会社販売)等を使用することもできる。ブロッキングの方法としては、例えば、ApplieDuo、ウシ血清アルブミン等のブロッキング剤を固相体に添加して、37℃程度で30分〜2時間静置するか、常温(15〜25℃) で1〜2時間保存して、固相体の該抗ケラタン硫酸抗体が固定化していない部分を被覆しておく。なお、ApplieDuoのように抗体が固定化された乾燥プレートに適用可能なブロッキング剤においては、ブロッキング溶液を十分に除去した後、35〜40℃でプレートを乾燥することにより、所望する抗ケラタン硫酸抗体固相化プレートを得ることができる。
また、固相体に固定化された抗ケラタン硫酸抗体に試料中のケラタン硫酸を結合させた後、固相体の表面を洗浄液で洗浄して非特異吸着物を除去することが好ましい。洗浄液としては、例えば、トゥイーン(Tween) 系界面活性剤等の界面活性剤を添加した緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリス塩酸緩衝液)等を使用することができる。
検出に用いられる抗ケラタン硫酸抗体に結合される標識物質としては、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、マイクロパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素等の酵素類、例えば、[125I]、[131I]、[H]、[99mTc]、[14C]等の放射性同位元素 、例えば、クマリン、ナフチルアミン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)等の蛍光性物質、例えば、ルミノール、イソルミノール等の化学発光物質、ハプテン、ビオチン、アビジン(例えば、ストレプトアビジン等)等を例示することができるが、通常タンパク質の標識に可能なものであればよく、特に限定されない。
なお、ここで標識物質とは、ビオチンのようにそれ自体を直接検出せず、その物質と特異的結合能を有する物質(例えば、アビジン等)に検出可能な標識を結合したものを組み合わせて用いる方法に使用する物質も包含する。
前記抗体の標識方法は、標識物質に適した公知の方法、例えば、酵素を標識する際にはグルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸架橋法、マレイミド架橋法、カルボジイミド法、活性化エステル法等、放射性同位元素で標識する際にはクロラミンT法、ラクトペルオキシダーゼ法等(続生化学実験講座2「タンパク質の化学(下)」、東京化学同人、1987年発行参照)から適宜選択することができる。また、市販の標識キット、例えば、ペルオキシダーゼ標識キット(商品名:Quick Labeler−Pro NH、生化学工業株式会社販売)を用いて標識することも可能である。
標識物質の検出法、すなわち標識物質のシグナルを測定する方法としては、用いる標識物質により異なるが、例えば、標識物質にビオチンを使用する場合には、ストレプトアビジン等を結合させた酵素を添加し、このストレプトアビジン等を介してペルオキシダーゼ等の酵素を、標識物質としてビオチンを含む免疫複合体へ結合させ、該酵素の基質としてテトラメチルベンジジン等の発色基質および過酸化水素水を加え、酵素反応による生成物の発色の度合いを吸光度の変化で測定する方法等を挙げることができる。また、例えば、標識物質として蛍光物質や化学発光物質を使用する場合には、反応後の溶液の蛍光や発光を測定する方法等が挙げられる。
本発明の測定法において、試料中のケラタン硫酸の濃度は、予め既知濃度のケラタン硫酸標準液を用いてケラタン硫酸濃度と標識物質のシグナルの検出結果との関係について検量線を作成し、未知濃度の検体についての検出結果と前記検量線とを用いる方法により定量することができる。
また、本発明の測定法で用いる生体試料は、ケラタン硫酸を含有し得るものであれば特に限定されず、例えば、ヒトを含む各種動物の関節液、血液、血清、血漿、尿、骨髄液、組織(軟骨、角膜等)の抽出液等を例示することができるが、前述のように、血液試料または関節液が好適である。
ヒトを除く動物由来の試料としては、特に、モルモット、ラット、マウス、ウサギ等の小型動物由来の試料が好ましいものとして例示される。
さらに、本発明の測定法で用いる生体試料は、プロテアーゼ処理を施すことで、測定の確度をいっそう向上させることができる。生体試料中において、ケラタン硫酸は、アグリコンのコア蛋白に結合しており、その一方で、標準品として用いられるケラタン硫酸は、当該コア蛋白には結合していない。よって、生体試料にプロテアーゼ処理を施して、予め、ケラタン硫酸のアグリコンのコア蛋白への結合を切断することにより、生体試料中のケラタン硫酸と標準品のケラタン硫酸の状態を、より近似させることにより、本発明の測定法の確度をいっそう向上させることが可能となる。ここで用いられるプロテアーゼは、特に限定されないが、基質蛋白への反応特異性が低く、また、ケラタン硫酸自体の安定性に影響せず、測定時のpHへの影響が少ない中性域の至適pHを有するプロテアーゼを用いることが好ましい。このような好適なプロテアーゼとしては、例えば、プロナーゼ、ズブチリシン(subtilisin)、パパイン、トリプシン等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものとして、プロナーゼ、ズブチリシンが挙げられ、極めて好ましいものとして、プロナーゼが挙げられる。プロナーゼは、放線菌Streptomyces griseusの産生するプロテアーゼであり、市販品として、例えば、アクチナーゼシリーズ(アクチナーゼE、A、AS、AF:科研製薬株式会社)、Sigma-Aldrich社のプロナーゼ(カタログ番号:P9811)、ロッシュ社のプロナーゼ等が挙げられる。また、用いられるプロテアーゼは、一種を選択して用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。二種以上を組み合わせる場合には、少なくとも一種がプロナーゼであることが好適である。プロテアーゼは、その至適pHおよび至適温度等の至適条件近傍にて、生体試料に反応させることが好ましいことは明らかである。また、その使用量は、選択されたプロテアーゼの性質や力価によっても異なり、一様に規定されるものではなく、用いるプロテアーゼが、十分にケラタン硫酸のアグリコンのコア蛋白を分解することができる量であればよい。この具体的なプロテアーゼの使用量は、当業者であれば、容易に個別に決定することが可能であり、その決定のために過度の試行錯誤を行う必要はない。また、具体例は、後述する実施例において開示されている。
ケラタン硫酸の測定に用いる、本発明の測定用キットは、上述の測定法を実施するためのものであり、少なくとも上述の抗ケラタン硫酸抗体、EFG−11、BCD−4、BCD−7、BC−261、BC−703、MK−172およびMK−202から選ばれる1種または2種以上、を構成として含むものが好ましい。
より好ましい態様としての、具体的な固相化抗ケラタン硫酸抗体と標識抗ケラタン硫酸抗体の組み合わせについては、前述と同様である。
本発明の測定用キットには、非標識および/または標識された上記抗体の他に、必要により、検量線作成のための標準となる既知濃度のケラタン硫酸標準品、標識物質の検出試薬、抗ケラタン硫酸抗体を標識する試薬、前記ブロッキング剤、前記洗浄液、検体希釈液、酵素反応停止液等を適宜選択し、添付することができる。また、この本発明の測定用キットの基本的な構成は、本発明の検知用キット、および、本発明の判定用キットにおいても同様である。ただし、本発明の検知用キットや本発明の判定用キットには、関節疾患の効率的な検知や被験薬剤の効率的な効果判定に資する要素、例えば、被検体における本発明の測定法による健常人の標準的なケラタン硫酸の測定値等のデータが記載された測定用マニュアル等が含まれることが好適である。
[疾患の検知法]
上述のように、本発明の測定法では、検体におけるケラタン硫酸を、簡便且つ鋭敏に定量的または定性的に検出することができるが、当該測定法を、ヒトを含む動物の検体に対して用いて、主にはその定量値を指標とすることにより関節疾患の検知を行うことが可能である。
すなわち、前述のように、本発明の疾患の検知法は、
1)本発明の測定方法によって、被検体中のケラタン硫酸を測定する工程(第一工程)。
2)第一工程により測定される被検体中のケラタン硫酸量と、正常検体中のケラタン硫酸量、および/または、時間をおいて複数回にわたり測定される被検体中のケラタン硫酸量とを比較する工程(第二工程)。
3)第二工程における比較に基づいて、被検体中のケラタン硫酸量が、正常検体中のケラタン硫酸量よりも増加している場合を、関節疾患について陽性であると判定し、あるいは、複数回の測定により検出された被検体中のケラタン硫酸量が、前の回の測定値よりも増加している場合を関節疾患は進行傾向にあると判定する工程(第三工程)。
の3工程を含む関節疾患の検知方法である。
第1工程において、被検体は、関節液、血液検体(血清、血漿、全血)、尿検体等が挙げられるが、患部の関節液または血清若しくは血漿が好適に用いられる。採取方法や処理方法は常法に従う。また、検体提供対象は、関節疾患の診察・治療の対象となるヒトを含む動物である。以下の記載は、ヒトを対象に説明するが、ヒト以外の動物に関してもヒトと実質的に同様の内容にて、本発明の疾患の判定法を行うことができる。
第2工程において、「正常検体中のケラタン硫酸量」は、検体提供者の健常時の対象検体中のケラタン硫酸量とすることが可能であり、厳密にはこれが好適であるが、現実的には、健常人の対象検体中における平均的なケラタン硫酸量を好ましいものとして用いることができる。この平均的ケラタン硫酸量は、本発明の測定法による健常人の対象検体におけるケラタン硫酸の定量値を複数の被検者から得て、これを平均化処理することにより得られる値である。この平均値は、国レベルでも地域レベルでも診療機関レベルでも行うことが可能であり、ボランティアが集まれば、当業者において過度の努力を行うことなく算出することができる。
第3工程において、「被検体中のケラタン硫酸量が、正常検体中のケラタン硫酸量よりも増加する」とは、被検体中のケラタン硫酸量が、正常検体中のケラタン硫酸量と比較すると明らかに増加している状態を意味するものである。
なお、後述する実施例に示すように、関節の炎症においては、関節液と血液検体における、本発明の測定法により得られるケラタン硫酸量は増加する。
特に、本発明の疾患判定法により、軟骨の損傷が認められるか否かを判定することが可能である。例えば、膝関節の疾患のうち、軟骨の損傷が懸念される代表的な疾患に、変形性関節症が挙げられる。変形性関節症は、原因疾患が特にないもの(一次性)と、先天性(内反/外反変形など)、外傷性(骨折、半月板切除など)、内分泌性(肥満など)、リウマチ性など先行する原因疾患を基盤として発症するもの(二次性)がある。通常軟骨は関節組織において主に衝撃吸収と潤滑を担っており、長年使用しても骨がすり減ったりすることなく、円滑に動かせる構造になっている。しかし変形性関節症では、軟骨組織を構成しているコラーゲン(結合組織を構成する弾力性のある線維性タンパク質)やプロテオグリカン(弾力性を与える物質)を合成する軟骨細胞が異常をきたし、コラーゲンやプロテオグリカンの合成能が低下するため、本来なめらかでツルツルとした関節軟骨の表面がザラザラになり、小さなくぼみがたくさんでき、外部からの衝撃を吸収できなくなる。こうなると関節のすべての構成体である骨、関節包、滑膜組織、腱、靭帯などが変形し、最も深刻な状態では、歩行困難となる場合もある。その反面、軟骨の損傷の初期はそれほどの痛みとなって顕れない傾向があるため、気がつかないケースも多く、気づいた時には軟骨の重篤な損傷が判明して関節置換術を余儀なくされることもある。膝関節において軟骨の損傷が認められる場合には、適切な治療を施す必要がある。現在、軟骨の損傷の確実な確認は、関節鏡を用いて行われるが、これはかなり手間がかかり、熟練も必要な手技である。よって、高感度且つ簡便な軟骨の損傷の判定手段が求められるところである。
具体的には、本発明の疾患検知法による、例えば、膝関節における軟骨の損傷の判定は、被検体を関節液または血液検体として、被検体中のケラタン硫酸量が正常検体中のケラタン硫酸量よりも増加している場合、あるいは、時間を置いた複数回の検出における2回目以降の検出において、被検体中のケラタン硫酸が、前回の定量値よりも増加傾向である場合に、軟骨の損傷が認められると判定することができる。
この軟骨の損傷の判定法において、検体提供者の前回の判定時(例えば、初診時)は、検体提供者の膝関節液におけるケラタン硫酸量は未知であるとの前提で、上述した「正常検体中のケラタン硫酸量」を基に、検体提供者における膝関節の軟骨の損傷について判定することができる。また、2回目以降の判定において(例えば、継続診の場合)には、前回の膝関節液におけるケラタン硫酸量と、新たなケラタン硫酸量を比較して、新たに軟骨の損傷を起こした場合や当該損傷の程度が増悪した場合には、新たなケラタン硫酸量は前回よりも増加傾向にある。このように、本発明によって、膝関節の軟骨の損傷を的確に検知することが可能である。
本発明の疾患の検知法によると、上述のように、変形性膝関節症を確度良く検知することができる。特に、X線によっては検知できない、または、検知困難な、例えば、罹患初期の変形性膝関節症を検知可能であることが、従来には認められなかった、本発明の著しい効果である。加えて、本発明の疾患の検知法によると、外傷性関節症も的確に検知することが可能である。
本発明は、上述のように、本発明の疾患の検知法を行うための、検知用キットをも提供するものである。
本発明の疾患の検知方法または検知用キットにおいて用いる抗ケラタン硫酸抗体としては、上述の本発明の測定法と同様、EFG−11、BCD−4、BCD−7、BC−261、BC−703、MK−172およびMK−202が例示される。
より好ましい態様としての、具体的な固相化抗ケラタン硫酸抗体と標識抗ケラタン硫酸抗体の組み合わせについても前述と同様であるが、特に、ヒトの変形性関節症または外傷性関節症の検知を行う場合には、後述する実施例に示す通り極めて高い効率で疾患を判定することができる故に、固相化抗ケラタン硫酸抗体としてEFG−11またはBCD−7用い、標識抗ケラタン硫酸抗体としてEFG−11またはBCD−7を用いること、あるいは、固相化抗ケラタン硫酸抗体としてBCD−4またはMK−172を用い、標識抗ケラタン硫酸抗体としてBCD−4またはMK−172を用いることが最も好ましい。この場合の具体的な組み合わせとしては下記1)〜6)が例示される。
1)固相化抗ケラタン硫酸抗体:BCD−7、標識抗ケラタン硫酸抗体:BCD−7
2)固相化抗ケラタン硫酸抗体:BCD−7、標識抗ケラタン硫酸抗体:EFG−11
3)固相化抗ケラタン硫酸抗体:EFG−11、標識抗ケラタン硫酸抗体:BCD−7
4)固相化抗ケラタン硫酸抗体:EFG−11、標識抗ケラタン硫酸抗体:EFG−11
5)固相化抗ケラタン硫酸抗体:BCD−4、標識抗ケラタン硫酸抗体:MK−172
6)固相化抗ケラタン硫酸抗体:MK−172、標識抗ケラタン硫酸抗体:BCD−4
[薬剤効果の判定法]
本発明の測定法において、検体中のケラタン硫酸を高感度で測定することが可能であることから、これを、投薬した関節疾患の治療薬の効果の判定や、関節疾患の治療薬の候補物質のスクリーニングに用いることが可能である。
本発明の薬剤効果の判定法は、上述のように、下記の工程を含むことを特徴とする関節疾患治療薬またはその候補物質の治療効果の判定方法である。
1)本発明の測定法によって、治療薬またはその候補物質(治療薬等)の投与前の検体と、投与後の検体中のケラタン硫酸を測定する工程(第1工程)
2)1)により得られた治療薬等の投与前の検体中のケラタン硫酸量と、投与後の検体中のケラタン硫酸量を比較する工程(第2工程)
3)2)における比較に基づいて、治療薬等の投与前のケラタン硫酸量から、投与後のケラタン硫酸量への正常方向への変化の度合いを検出し、これを指標として上記関節疾患治療薬等の効果を判定する工程(第3工程)
第1工程において、治療薬の効果の判定を行う場合には、検体提供対象は、ヒトまたは薬剤治療対象となる動物である。薬剤スクリーニングを行う場合には、検体提供対象は、通常は、関節疾患を惹起された実験動物(好適には、上述したモルモット、ラット、マウス等の小型動物)を用いることができる。検体は、必要に応じて、関節液、血液検体(血清、血漿、全血)、尿検体等から選択することが可能である。
用いる抗ケラタン硫酸抗体については、前述の本発明の疾患の検知法における説明と同様である。
これらの工程において、治療薬等の投与前の検体におけるケラタン硫酸量と、投与後の検体中のケラタン硫酸量の比較を、本発明の測定法を用いて行うことで、投与した治療薬等の効果、または、被検物質の関節疾患に対する治療効果の検討を行うことができる。
すなわち、臨床において、関節疾患治療薬の投与後の本発明の測定法により得られるケラタン硫酸の定量値が、健常人における定量値の方向、すなわち、正常方向へと変化していれば、顕在的または潜在的に治療対象となっている関節疾患における投薬効果が認められることを示している。このように、本発明により、関節疾患治療薬の投薬の効果を判定することができる。なお、ここで、顕在的効果とは、臨床的な効果が認められることを示し、潜在的な効果とは、臨床的な効果は即時には認められないが、生化学的な検査値が好転していることを示す。
また、関節疾患を惹起された実験動物におけるケラタン硫酸の定量値が、被検物質の投与後に正常方向へと向かっていれば、当該被検物質において、関節疾患の治療作用が認められることを示す。このように、本発明により、関節疾患治療薬のスクリーニングを行うことができる。
本発明は、上述のように、本発明の薬剤効果の判定法を行うための、判定用キットをも提供するものである。
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらにより何等限定されるものではない。
なお、実施例で使用する略号は以下の通りである。
GAG:グリコサミノグリカン
KS:ケラタン硫酸
KSPG:ケラタン硫酸プロテオグリカン
HA:ヒアルロン酸
Ch:コンドロイチン
CS−AまたはCSA:コンドロイチン硫酸A
CS−A(S)またはCSA(S):サメ由来コンドロイチン硫酸A
CS−A(W)またはCSA(W):クジラ由来コンドロイチン硫酸A
CS−BまたはCSB:コンドロイチン硫酸B
CS−CまたはCSC:コンドロイチン硫酸C
CS−DまたはCSD:コンドロイチン硫酸D
CS−EまたはCSE:コンドロイチン硫酸E
EDC:1−メチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
HEP:ヘパリン
HRP:ホースラディッシュペルオキシダーゼ
HS:ヘパラン硫酸
Tris:2−アミノ−2−ハイドロキシメチル−1,3−プロパンジオールPBS:リン酸緩衝生理食塩水
EDC:N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
BSA:ウシ血清アルブミン
TMB:3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン
Bi:ビオチン
MES:2−モルホリノエタンスルホン酸
ELISA法:酵素免疫測定法(EnzymeLinked Immunosorbent Assay法;ELISA法)
競合ELISA法:競合法を利用した酵素免疫測定法
[参考例1] ビオチン標識GAG(以下、「Bi−GAG」)の調製
各種GAG(HS、HA、HEP、Ch、CS−A(S)、CS−A(W)、CS−B、CS−C、CS−D、CS−E、KS)を0.1M MES緩衝液(pH5.5)に溶解して、10mg/mL のGAG溶液を調製した。1mLの各GAG溶液に、ジメチルスルホキシド(和光純薬工業社製)で20mMに調製したビオチン-LC-ヒドラジド(PIERCE社製)を25μL 添加した。続いて、0.1M MES緩衝液(pH5.5)で100mg/mLに調製したEDC(PIERCE社製)溶液を12.5μL添加した。よく撹拌した後、常温(15℃〜25℃)で16〜24時間撹拌反応を行った。
反応終了後、この反応物を、透析液としてリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2〜7.5、カルシウムイオン等の2価イオン不含:以下、「PBS(−)」ともいう)等を用い、透析膜(カットオフ分子量10,000以下)で十分に遊離のビオチンを除去した。透析終了後、Bi−GAG濃度を5mg/mL に調製し、凍結保存した。
上記の方法により、各種Bi−GAG(Bi−HS、Bi−HA、Bi−HEP、Bi−Ch、Bi−CSA(S)、Bi−CSA(W)、Bi−CSB、Bi−CSC、Bi−CSD、Bi−CSE、Bi−KS)を得た。
尚、HEPはSPL社製、その他のGAGは生化学工業株式会社製を用いた。
[参考例2] ストレプトアビジン固相化プレートの作製
ストレプトアビジン(VECTOR社製)をPBS(−)で20μg/mLに希釈し、マキシソープ(登録商標)96ウェルマイクロプレート(ナルジェヌンク社製)の各ウェルに50μLずつストレプトアビジン溶液を加え、4℃で14〜18時間保存することにより、均一にコーティングした。このプレートをPBS(−)で2回洗浄し、ウェルのストレプトアビジンでコーティングされていない部分をブロッキングするため、ブロッキング剤として、ApplieDuo(登録商標)(使用希釈率5倍、生化学工業株式会社製)および防腐剤として0.05%プロクリン(登録商標)950(SUPELCO社製)を含むリン酸緩衝液(上記PBS(−)のうち、塩化ナトリウム、塩化カリウム不含、pH7.2〜7.5:以下、「PB」という)を加え、常温で2時間静置した。静置後、ブロッキング溶液を十分に除去し、37℃で2時間乾燥させることにより、所望する固相化ストレプトアビジンプレートを得た。プレートは乾燥剤とともにアルミラミネート袋に封入し、冷蔵保存した。
[参考例3] Bi−GAG固相化プレートの作製
参考例1で調製したBi−GAGを、添加剤としてApplieDuo(登録商標)(使用希釈率20倍、生化学工業株式会社製)、0.05%のTween(登録商標)20(0.05%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(ICI社 Tween20相当品、和光純薬工業社製)および防腐剤として0.05%のプロクリン(登録商標)950とを含むTBS(50mM Tris塩酸塩、pH7.3〜7.8)(以下、「反応液A」ともいう)に溶解し、1μg/mL溶液を調製した。参考例2で作製した固相化ストレプトアビジンプレートを0.05%のTween20および防腐剤として0.05%のプロクリン(登録商標)950を含む50mM Tris塩酸塩(pH7.3〜7.8)(T−TBS、以下、「洗浄液」ともいう)300μLで4回洗浄し、各ウェルにBi−GAG溶液を100μLずつ加え、常温で30分静置して、固相化ストレプトアビジンにBi−GAGを固定化した(以下、「Bi−GAG」固相化プレート」といい、各GAGを固相化したものを個々に示すときは「Bi−GAG」の「GAG」を各GAG名に代えた略称を使用する)。
[参考例4] 抗体精製
表4に示した各KS抗体を含む各腹水(入手先:Rush University Medical Center)から、プロテインAを用いたアフィニティークロマトグラフィーで、常法に従って精製した。
[参考例5] ペルオキシダーゼ標識抗体の作製
参考例4で得られた8種の精製抗体0.2mgをQuick labeler Pro−PO NH(生化学工業株式会社販売)を用い、その操作方法に従って、ペルオキシダーゼ標識抗体を調製した。
[参考例6] 抗KS抗体固相化プレートの作製
ストレプトアビジンの代わりに参考例4で精製した各抗KS抗体を用いること以外は参考例2記載の方法と同じ方法で各抗KS抗体固相化プレートを作製した。
[参考例7] 関節疾患患者検体の採取
病院施設の倫理委員会の承認を受けた上で、被験者からのインフォームドコンセントのもとに、変形性膝関節症(OA)患者29名、膝関節にスポーツや事故などによる外傷を受け来院し、関節内視鏡検査または手術時に直視で関節軟骨の変性または損傷が認められた外傷性膝関節症(TA)患者17名および健常者18名から血液を採取した。血液は市販の血清分離用採血管で採取し、血清を分離した後、血清を−20℃で保管した。
[実施例1] 各種抗KS抗体におけるKS−IとKS−IIとの反応性の検討
各種抗KS抗体におけるKS−IとKS−IIとの反応性を、抗KS抗体とビオチン標識KS−I(以下、「Bi−KS」という)との結合をKS−IあるいはKS−IIを存在させて阻害させる、いわゆる競合ELISA法を用いて評価した。
参考例3の方法で作製したBi−KS固相化プレートを洗浄液で4回洗浄した後、各ウェルにKS−IあるいはKS−II溶液(ともに濃度100〜0ng/mL、5倍希釈系列)を100μLずつ加え、続いて各抗KS抗体溶液(5D4は精製抗体希釈溶液、その他の抗体は腹水希釈溶液を用いた。なお、用いた抗KS抗体の試験希釈率または試験濃度は表3に示した通り。)を100μLずつ加え、これを常温で60分間静置して抗原抗体反応させた。なお、ブランクはBi−KSを添加していないウェルとした。反応終了後、洗浄液で4回洗浄し、各ウェルにHRP標識ヤギ抗マウスイムノグロブリン抗体(ダコ社製)を反応液で2000倍希釈した二次抗体溶液を100μLずつ加え、これを常温で60分間静置して抗原抗体反応させた。反応終了後、このプレートを洗浄液で4回洗浄し、ペルオキシダーゼの基質としてTMB溶液(商品名:TMB 1 Component HRP Microwell Substrate、BioFX社製)を100μLずつ加え、常温で30分間反応させ、発色させた。プレートに反応停止液(BioFX社製)を100μLずつ 加えて反応を停止させた後、TMB分解によって増加する波長450nmの吸光度(対照波長630nm)をウェルリーダーSK−603(登録商標;生化学工業株式会社販売)で測定した。抗体の反応性は、阻害物質を用いた場合の阻害率から、IC50を算出し、KS−IおよびKS−IIの反応性を評価した。
なお、阻害物質としては、KS−IにはKS(BC)(生化学工業株式会社販売)、KS−IIにはKPS−1(生化学工業株式会社製)を用い、試験濃度は100〜0ng/mL(5倍希釈系列)とした。
更に、各KS抗体のKS−IとKS−IIとの反応性の差を評価するために、各KS抗体におけるKS−IのIC50とKS−IIのIC50の比(IC50KS−I/KS−II)を算出した。なお、IC50KS−I/KS−IIは、1に近い方がKS−IとKS−IIとの反応性の差が少ない、すなわち、抗ケラタン硫酸抗体のKSの反応性における硫酸含量の依存性が低いことを示す。
また、阻害率は、各ウェルの吸光度からブランクの吸光度を減じた吸光度差を算出し、Bi−KSのみのウェルにおける吸光度差(最大吸光度差)に対する各阻害物質濃度における吸光度差を減じた残存吸光度差の百分率を阻害率とした。
Figure 0005706617
結果を表4および図1に示す。
Figure 0005706617
5D4におけるKS−IおよびKS−IIのIC50は、それぞれ、14.47、1.40ng/mLであった。その他7種のKS抗体におけるKS−IのIC50は、いずれも5D4の14.47ng/mLより低く、これら7種のKS抗体は5D4よりKS−Iとの反応性は高いと判明した。また、KS−IIでのIC50は、BCD−7、BC−703、EFG−11では5D4より低く、これら3種の抗体は5D4よりKPS−1との反応性が高かった。
また、5D4におけるIC50KS−I/KS−IIは10.4であり、KS−Iとの反応性はKS−IIの反応性と比較しておよそ1/10であった。その他7種の抗KS抗体のIC50KS−I/KS−IIはいずれも5D4より低く、7種の抗体はいずれも5D4と比較して、抗原抗体反応における硫酸含量依存性が低い抗KS抗体であると判明した。
[実施例2] サンドイッチELISA法
5D4を用いたサンドイッチELISA法は、市販のケラタン硫酸測定キット(生化学工業販売)を用い、その操作方法に従ってアッセイした。
本発明の測定法でのアッセイ法は以下の通りである。
抗KS抗体固相化プレートとしては、参考例6の方法で作製した抗KS抗体固相化プレートを用いた。また、検出用の抗KS抗体としては、参考例5の方法で調製したHRP標識抗KS抗体を用いた。なお、検討した固相化抗体と検出用抗体の組み合わせは、以下の12種類である。
1)固相化:BCD−4 検出:BCD−4
2)固相化:BCD―4 検出:MK−172
3)固相化:MK−172 検出:MK−172
4)固相化:MK−172 検出:BCD−4
5)固相化:EFG−11 検出:EFG−11
6)固相化:BCD−7 検出:BCD−7
7)固相化:EFG−11 検出:BCD−7
8)固相化:MK−202 検出:MK−202
9)固相化:BCD−7 検出:EFG−11
10)固相化:BC−261 検出:BC−261
11)固相化:BC−703 検出:BC−703
各種抗KS抗体固相化プレートの各ウェルに参考例3で用いた反応液Aを100μL添加した。続いて、表5のケラタン硫酸を含む試験溶液あるいはブランク溶液を20μL添加し、緩やかにプレートを撹拌後、15−25℃で1時間静置した(第一反応)。第一反応終了後、反応液を除去し、洗浄液(300μL/ウェル)で4回洗浄した。洗浄後、HRP標識抗KS抗体 (800倍希釈)を各ウェルに100μL添加し、15−25℃で1時間静置した(第二反応)。第二反応終了後、先と同様に洗浄液で4回洗浄した。洗浄後、HRPの基質としてTMB溶液(BioFX社製)を100μL 加え、常温で30分間遮光下静置反応させ、発色させた(発色反応)。発色後、プレートに1N−HClを100μL加えて反応を停止させ、TMBの分解による着色液の波長 450nmでの吸光度(対照波長630nm)をウェルリーダー(商標)SK603(生化学工業株式会社販売)にて測定した。サンドイッチELISA法における評価は、各試験溶液における吸光度とブランク溶液との吸光度差とした。
KS(BC)(KS−I)とKPS−1(KS−II)の濃度依存性の試験では、表5記載の抗体の組合せにて、試験物質としてKS(BC)およびKPS−1を表5記載の試験濃度で用いて測定し、反応曲線を比較した。結果を図2に示す。
Figure 0005706617
5D4を用いた測定系では、吸光度1.0を示すKS(BC)およびKPS−1の濃度は、それぞれ、921.7ng/mLおよび25.5ng/mLであった。本発明の測定法を用いた場合のKPS−1での当該濃度は、検討したいずれの組合せの測定方法も従来の5D4法より低く、5D4法より高感度と判明した。また、本発明の測定法を用いた場合のKS(BC)での当該数値は、固相化:BCD−7/検出:BCD−7(「固相化抗KS抗体」として「BCD−7(「/」の左記)」を、「検出抗KS抗体」として「BCD−(「/」の右記)」を用いたことを示す。以下同様にして、用いた抗体を略記することがある)の組合せを除く9種の組合せにおいて、5D4法より低く、5D4より高感度と判明した。固相化:BCD−7/検出:BCD−7の組合せにおける反応性は、他の9種の組合せとは例外的に5D4と同程度若しくは若干高感度と推測された。
また、各種組み合わせによるKSの検出能を評価するために、各グラフの濃度依存性曲線から算出される吸光度差1.0を示すKS(BC)、KPS−1の濃度(それぞれ、KS(BC)(1.0)、KPS−1(1.0)と表記する。)およびその検出能比(KS(BC)(1.0)/KPS−1(1.0)、以下、「検出能比KS−I/KS−II」ともいう)を算出した。結果を表6に示す。
Figure 0005706617
5D4を用いた測定系では、検出能比KS−I/KS−IIは36.1であり、KS(BC)の検出能はKPS−1の検出能と比較しておよそ1/36であった。検討した抗体の組合せのうち固相化:BCD−7/検出:BCD−7の組合せを除く9種の組合せでは、検出能比KS−I/KS−IIは2.7〜20.2と、5D4法での数値より低く、5D4法に比べ、硫酸含量に影響されずにKSを検出できる測定法であることが判明した。一方で、BCD−7単独でのIC50KS(BC)/KPS−1は5D4より低いものの、固相化:BCD−7/検出:BCD−7の組合せでは、検討した組合せの中では例外的に検出能比KS−I/KS−IIが55.6以上と5D4より高いと推測された。
更に、各種検体の検出能の試験では、表7に記載の各試料を測定し、検出能を評価した。
Figure 0005706617
結果を表8および表9に示す。なお、表8および表9では、試験に用いた試料が異なる。
Figure 0005706617
表8の試験では、5D4による測定系において、ヒト血清では10倍希釈での吸光度差が0.913であった。BCD−4とMK−172との組合せによる4種の測定系では、未確認の固相化:MK−172/検出:BCD−4の組み合わせを除き、4800倍希釈にて充分な吸光度差が得られ、5D4を用いた測定系に比べてより高感度にKSを検出した。
その他のウサギ、モルモット、ラット、マウスの試料では、5D4はウサギ血清、モルモット関節液のみ検出されたが、吸光度差が0.136、0.1と低レベルであり、その他の試料中KSは検出不能であった。
一方、表8記載の4種の組合せの測定系では、固相化:MK−172/検出:BCD−4がその他の3種と比較して検出能が低いが、固相化:MK−172/検出:BCD−4以外の他の3種の測定系ではいずれの検体も5D4よりも高感度にKSを検出した。特に、固相化:BCD−4/検出:MK−172の組み合わせがより高感度にKSを検出できることが判明した。
Figure 0005706617
表9の試験では、5D4法におけるウサギおよびモルモット血清の吸光度差は、それぞれ0.150、0.230と検出されるものの低レベルであり、ラットおよびマウス血清では表8と同様に検出不能であった。
一方、表9記載の4種の組合せの測定系では、固相化:BCD−7/検出:BCD−7、固相化:EFG−11/検出:BCD−7がその他の2種の組合せと比較して検出能が低いが、4種の組合せともにウサギ、モルモット血清は十分に検出し、5D4法では検出できないラット血清を検出した。表8記載の4種の組合せでは、5D4法と同様にマウス血清は検出できなかったものの、当該4種の組合せは、5D4法よりも高感度にKSを検出可能であることが判明した。
表8および表9に示すように、本発明測定系は、従来の5D4法より各種試料中のKSを高感度に検出し、従来法では検出できない微量のKSをも検出可能と判明した。特に、固相化:BCD−4/検出:MK−172の組み合わせでは、マウス血清中の極めて微量のKSを検出することができた。
[実施例3]
プロナーゼで血清中たんぱく質を消化した検体と、プロナーゼ処理を行わなかった検体を生体試料として、BCD−4/MK172の測定系とEFG11/EFG11の測定系で、血清中のKS濃度を測定し、HPLCで測定したKS濃度との相関を比較した。検体は参考例7で採取したサンプルの一部で、健常者15名、および、OA患者20名の血清である。プロナーゼ処理検体は、血清20μLに、精製水180μLおよび2.0%アクチナーゼE溶液(科研製薬株式会社)を加え、55℃で一夜、酵素処理を行った。反応液を精製水で8mLに希釈した後、100℃で10分加熱することにより酵素反応を止めた試料を測定試料とした。また、プロナーゼ無処理検体は、血清を精製水で希釈したものを測定試料とした。ELISA測定は実施例2と同様に行った。
BCD−4/MK172測定系で、アクチナーゼ無処理血清およびプロナーゼ処理血清を試料として測定したKS濃度とHPLCで測定したKS濃度との相関は、図3に示したように、それぞれ、R=0.7034およびR=0.7813で、プロナーゼ処理によりHPLC測定値との相関は向上した。
同様に、EFG11/EFG11測定系でも、図4に示したようにプロナーゼ無処理のR=0.4343から、プロナーゼ処理のR=0.7709に相関係数が向上した。
プロナーゼ処理により、両測定系ともHPLC測定値との相関が向上し、測定値の正確度が高まったことを示している。
[実施例4] 半月板切除モデル動物での検討
動物には7週齢Wistar系雄ラット(日本チャールスリバー、SPF)を用いた。
小動物用麻酔装置(Bio Machinery、TK−5)に充填したイソフルラン(商品名:フォーレン、大日本製薬)吸入麻酔下(濃度2.0%、流量3.0l/min)にラットの左後肢膝関節周囲を除毛し、内側を約1cm切開後、血管を避けて内側側副靱帯を切断し、内側半月板を露出した。次いでニューロブレイド・カーブメス(Feather、K−5410)を用いて半月板中央部を真横に切断し、また半月板を繋いでいる末梢側の靱帯を切断し、半月板を半摘出した。Sham群については内側側副靱帯のみを切断した。
施術後、切開部は縫合糸で縫合した。術後28日にエーテル(和光純薬工業)麻酔下に安楽的に放血致死させた後、左後肢膝関節組織を採取し、関節腔内を生理食塩液で洗浄し、0.3mLを回収した。関節液は3,000回転で10分間遠心分離し、無処置対照群、Sham群、半月板切除群での術後28日目における関節液中KSレベルを既存KS測定キット(5D4測定系)および本発明KS測定系で測定した。なお、本発明KS測定系には、「固相化:BCD−4、検出:HRP標識MK−172」の系を用い、実施例2と同様の方法により測定した。
測定時の試料の希釈率は、既存KS測定キット(5D4測定系)が5倍希釈、本発明のKS測定系では60倍希釈とした。また、肉眼所見については、脛骨軟骨面にインディアンインクを塗布し、デジタルカメラ(*istD、ペンタックス)で撮影後、表面粗造化の程度を0〜4点(0:異常なし、1:軽度粗造化、2:重度粗造化、3:軽度びらん、4:重度びらん)の5段階スコアで評価した。さらに関節辺縁部に骨棘形成がみられた場合には+1点を加点した。
(1)関節の状態
Sham群、半月板切除群での術後28日目における肉眼所見による関節の状態(肉眼スコア)を図5に示す。半月板切除群の肉眼スコアはSham群に比べて有意に高く、関節の状態が悪化していることが確認された。
(2)関節液中のKSレベル
ラット半月板切除モデルにおける各群の関節液KSは、既存KS測定キットでは検出不能であったが、本発明KS測定系では検出可能であった。本発明KS測定系での結果のみを図6に示す。半月板切除群の関節液KSはSham群より有意に高レベルであった。このように、本発明KS測定系では既存KS測定キットで検出不能である試料を検出可能であることが確認できた。また、ラット半月板切除モデルでも術後28日目における関節液KSレベルが増加していることが新たに判明した。さらに、本発明KS測定系でラット半月板切除モデルにおける関節液KSレベルを測定することにより、関節の状態を把握しうる可能性が示された。
ここに示した結果は、上述したように、本発明の疾患判定法により、膝関節における軟骨の損傷の判定を行うことが可能であることを示している。
[実施例5] アジュバント誘発関節炎モデル動物(AIA)での検討
動物には6週齢Lewis系雄ラット(日本チャールスリバー、SPF)を用いた。アジュバントとしてMycobacterium butyricumの乾燥菌体(DIFCO)をメノウ乳鉢でよく研磨後、6mg/mLの濃度に流動パラフィン(和光純薬工業)に懸濁したものを用いた。非麻酔下にラットの右後肢足蹠皮下にアジュバント(0.3mg/paw)を投与し、その14日後に群分けした。無処置正常群のラットには流動パラフィンのみを同様に投与した。Incadronate(ビスフォナール(登録商標)注射液10mg、アステラス製薬)は群分け時より1mg/kgの用量で、剖検日前日まで1日1回連日皮下投与した。無処置正常群とAIA対照群のラットには、PBSを剖検日前日まで1日1回静脈内投与した。左後肢足蹠浮腫容積は浮腫測定装置(TK−101CMP、UNICOM)により測定した。アジュバント感作後35日にエーテル麻酔下に腹部大静脈より採血(ヘパリン加)した後、ラットは安楽的に放血致死させた。血液は3,000回転で10分間遠心分離し、無処置正常群、AIA対照群、Incadronate投与群でのアジュバント投与後35日目における血漿中KSレベルを既存KS測定キット(5D4測定系)および本発明KS測定系で測定した。本発明KS測定系には、「固相化:BCD−4、検出:HRP標識MK−172」の系を用い、実施例2と同様の方法により測定した。ラット血漿の希釈率は、既存KS測定キットでは5倍(×5)、本発明KS測定系では120倍(×120)であった。
(1)関節の状態
無処置正常群、AIA対照群、Incadronate(ビスフォスフォネート製剤)投与群(アジュバント投与+インカドロネート投与)でのアジュバント投与後35日目における左足浮腫容積(Left Paw volume)の結果を図7に示す。AIA対照群の左足浮腫容積は無処置正常群に比べて有意に高く、関節状態の悪化が確認された。Incadronate投与群ではAIA対照群と比較して浮腫容積が低下し、治療薬の効果(浮腫改善効果)が認められた。
(2)血漿中のKSレベル
ラットAIAモデルにおける各群の血漿中KSは既存KS測定キットでは検出不能であったが、本発明KS測定系では検出可能であった。本発明KS測定系での結果のみを図8に示す。AIA群の血漿KSは無処置正常群より高レベルであり、浮腫の増加と同様の変動を示した。Incadronate群ではAIA対照群より低下し、浮腫の低下(改善)と同様の変動を示した。このように、本発明KS測定系により、ラットAIAモデルではアジュバント投与後35日目において血漿KSレベルが増加し、そのレベルはIncadronateによる治療により低下することが新たに判明した。このKSレベルの変動は浮腫の変動と一致することから、本発明KS測定系でラットAIAモデルにおける血漿KSレベルを測定することにより、関節の状態を把握し、治療による効果を評価しうることが示された。
AIAは慢性関節リウマチ(RA)のモデルであり、ここに示した結果は、本発明の方法により、RAの判定を行うことができるとともに、RA治療薬の効果を判定できることを示している。
[実施例6] パパイン誘発ウサギ関節炎モデルにおける血中KSレベルの測定
ウサギ左後肢膝関節腔内に、生理食塩水で25mg/mlに溶解したパパイン溶液(パパイン:SIGMA社製)を関節あたり150μlで投与し、その1週間後に、同量のパパイン溶液を再投与した。対照群の左後肢膝関節腔内には生理食塩液を同様に投与した。初回パパイン投与後49日目に血清を採取し、血清中KSレベルを測定した。KS測定には、既存KS測定キットおよび本発明KS測定系で測定した。本発明KS測定系には、「固相化:BCD−4、検出:HRP標識MK−172」の系を用い、実施例2と同様の方法により測定した。既存KS測定キットによる測定系には、「固相化:5D4、検出:ビオチン標識5D4」の系を用いた。ウサギ血清の希釈率は、既存KS測定キットでは5倍(測定時:5倍希釈)、本発明KS測定系では20倍(測定時:120倍希釈)であった。結果を図9に示す。
既存KS測定キットでは、5倍希釈ウサギ血清にて殆どの試料が測定範囲の下限以下であり、パパイン投与群におけるKSレベルは対照群より若干高レベルであるが、実質的に十分な判定ができない状態であった。
一方、本発明のBCD−4/MK−172の系においては、20倍希釈ウサギ血清にて十分に測定可能且つパパイン投与群におけるKSレベルが対照群より明確に高レベルであると判定できた。
このように本発明KS測定系は、高感度であるために、既存KS測定キットで測定できないKSを検出することができ、且つ生体試料中のKSの変化をより鋭敏に検出しうることが示された。
[実施例7] 関節疾患患者における血中KSレベルの測定
変形性膝関節症(OA)患者血清(n=29)、外傷性膝関節症(TA)患者血清(n=17)および健康人血清(n=18)は参考例7で採取したサンプルを用いた。
測定は、市販の5D4を用いたKS測定キットおよび表10記載の組合せ法で行った。また、表10記載の希釈率で希釈した試料をそれぞれの測定系に用いた。なお、本発明測定系での測定は、実施例2と同様に行った。各群における中央値および4分位偏差を表11に、測定結果のグラフを図10に示す。なお、有意差検定は健康人に対するMann−Whitney検定を用いた。また、健康人群に対する各疾患群におけるReciever−Oparation Curve(ROC曲線)を算出した。図11には健康人群とOA群との結果を、図12には健康人群とTA群との結果を示す。ROC曲線の評価は、曲線下面積(AUC)とした。AUCは最小値が0.5、最大値が1.0であり、数値が高いほど診断効果が高いことを示す。
Figure 0005706617
Figure 0005706617
既存KS測定キット(5D4/5D4)におけるKSレベル(中央値、ng/ml)は、健康人群では173、OA群では240、TA群では205と、OA群およびTA群ともに健康人群より高値であった。検討した組合せにおけるKSレベルはいずれも、既存KS測定キットと同様に、OA群およびTA群ともに健康人群より高値であった。検討した組合せにおける測定値は、健康人群、OA群、TA群ともに既存KS測定キットより高値でとなった。
健康人に対するOA群およびTA群の有意差(P値)は、既存KS測定キットではそれぞれ0.0073、0.204で、健康人群とTA 群間には有意な差はみられなかった。検討した9種の組合せでは、いずれも既存KS測定キットより低く、有意性が改善した。
既存KS測定キット(5D4/5D4)のROC曲線において、健康人群のKSレベルに対するOA群のKSレベルのAUCは0.735であり、健康人群のKSレベルに対するTA群のKSレベルのAUCは0.636であった。検討した9種の組合せのAUCは、OA群およびTA群ともに、既存KS測定キットのAUCより高値であった。このように、本発明測定系では、既存KS測定キットより関節疾患に対する診断効果が改善した。
さらに、得られたOA群のうち、X線にて所見の認められないあるいは認められにくい早期OA群(grade0あるいはgradeI)を対象に、前述と同様の解析を行った。各群における中央値および4分位偏差を表12に、測定結果のグラフを図13に示す。また、健康人群に対する早期OA群におけるROC曲線を図14に示す。
Figure 0005706617
既存KS測定キット(5D4/5D4)におけるKSレベル(中央値、ng/ml)は、健康人群では173、早期OA群では240と、早期OA群は健康人群より高値であった。検討した組合せにおけるKSレベルはいずれも、既存KS測定キットと同様にOA群およびTA群ともに健康人群より高値であった。
健康人に対する早期OA群の有意差(P値)は、既存KS測定キットでは0.011であり、有意性が認められた。検討した9種の組合せにおけるP値はいずれも、既存KS測定キットより極めて低く、有意性が著しく向上した。
既存KS測定キット(5D4/5D4)のROC曲線において、健康人群対する早期OA群のAUCは0.785であった。検討した9種の組合せのAUCはいずれも0.85以上と、既存KS測定キットAUCより高値であった。このように、本発明測定系では、既存KS測定キットより早期OAに対しても診断効果が改善した。
これらの関節疾患での臨床的性能から、本発明測定系は、既存KS測定キットより優れた関節疾患検査用ツールとなり得ることが示された。

Claims (14)

  1. 下記工程1および2を含むケラタン硫酸の免疫学的測定方法であって、下記工程1において用いる抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体はさらに下記(1)または(2)に従う、ケラタン硫酸の免疫学的測定方法。
    工程1:抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体を固着させた固相、および、標識された当該抗体を、一緒に若しくは先後別々に生体試料に接触させ、当該抗体と生体試料中のケラタン硫酸の免疫複合体を当該固相上に形成させる工程;
    工程2:当該免疫複合体における標識のシグナルにより得られる検出値により、生体試料中のケラタン硫酸を測定する工程。
    (1)固相に固着させる抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体は、受託番号FERM BP−11211であるハイブリドーマより産生されるMK-172または、受託番号FERM BP−11210であるハイブリドーマより産生されるBCD-4であり、標識された抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体は標識された、受託番号FERM BP−11210であるハイブリドーマより産生されるBCD-4または標識された、受託番号FERM BP−11211であるハイブリドーマより産生されるMK-172である。
    (2)固相に固着させる抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体は、受託番号FERM BP−11213であるハイブリドーマより産生されるBCD-7または、受託番号FERM BP−11212であるハイブリドーマより産生されるEFG-11であり、標識された抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体は、標識された、受託番号FERM BP−11213であるハイブリドーマより産生されるBCD-7または、標識された、受託番号FERM BP−11212であるハイブリドーマより産生されるEFG-11である。
  2. 生体試料が動物由来の試料である、請求項1に記載のケラタン硫酸の免疫学的測定方法。
  3. 動物が、ウサギ、モルモット、ラットまたはマウスである、請求項2に記載のケラタン硫酸の免疫学的測定方法。
  4. 生体試料がヒト由来の試料である、請求項1に記載のケラタン硫酸の免疫学的測定方法。
  5. 生体試料が血液試料または関節液である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のケラタン硫酸の免疫学的測定方法。
  6. 前記生体試料は、プロテアーゼ処理が施されている生体試料である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のケラタン硫酸の免疫学的測定方法。
  7. 前記プロテアーゼは、プロナーゼ、ズブチリシン、パパイン、および、トリプシン、からなる群のプロテアーゼから選ばれる1種または2種以上のプロテアーゼである、請求項6に記載のケラタン硫酸の免疫学的測定方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のケラタン硫酸の免疫学的測定方法に使用するためのキットであって、抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体として、(1)受託番号FERM BP−11210であるハイブリドーマより産生されるBCD-4および受託番号FERM BP−11211であるハイブリドーマより産生されるMK-172、あるいは、(2)受託番号FERM BP−11213であるハイブリドーマより産生されるBCD-7および受託番号FERM BP−11212であるハイブリドーマより産生されるEFG-11、を含む、ケラタン硫酸測定用キット。
  9. 下記の工程を含む、関節疾患の検知方法。
    工程1:請求項1〜7のいずれか1項に記載のケラタン硫酸の免疫学的測定方法によって、被検体中のケラタン硫酸を測定する工程;
    工程2:工程1により測定される被検体中のケラタン硫酸量と、正常検体中のケラタン硫酸量、および/または、時間をおいて複数回にわたり測定される被検体中のケラタン硫酸量とを比較する工程;
    工程3:工程2における比較に基づいて、被検体中のケラタン硫酸量が、正常検体中のケラタン硫酸量よりも増加している場合を、関節疾患について陽性であると判定し、あるいは、複数回の測定により検出された被検体中のケラタン硫酸量が、前の回の測定値よりも増加している場合を関節疾患は進行傾向にあると判定する工程。
  10. 関節疾患が、変形性関節症または外傷性関節症である、請求項9に記載の関節疾患の検知方法。
  11. 関節疾患が、X線によっては検知できない変形性関節症である、請求項10に記載の関節疾患の検知方法。
  12. 請求項9〜11のいずれか1項に記載の関節疾患の検知方法に使用するためのキットであって、抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体として、(1)受託番号FERM BP−11210であるハイブリドーマより産生されるBCD-4および受託番号FERM BP−11211であるハイブリドーマより産生されるMK-172、あるいは、(2)受託番号FERM BP−11213であるハイブリドーマより産生されるBCD-7および受託番号FERM BP−11212であるハイブリドーマより産生されるEFG-11、を含む、関節疾患の検知用キット。
  13. 下記の工程を含むことを特徴とする関節疾患治療薬またはその候補物質の治療効果の判定方法。
    工程1:請求項1〜7のいずれか1項に記載のケラタン硫酸の免疫学的測定方法によって、関節疾患治療薬またはその候補物質の投与前の被検体と、投与後の被検体中のケラタン硫酸を測定する工程;
    工程2:工程1により得られた関節疾患治療薬またはその候補物質の投与前の被検体中のケラタン硫酸量と、投与後の被検体中のケラタン硫酸量を比較する工程;
    工程3:工程2における比較に基づいて、関節疾患治療薬またはその候補物質の投与前のケラタン硫酸量から、投与後のケラタン硫酸量への正常方向への変化の度合いを検出し、これを指標として上記治療薬またはその候補物質の効果を判定する工程。
  14. 請求項13に記載の関節疾患治療薬またはその候補物質の治療効果の判定方法に使用するためのキットであって、抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体として、(1)受託番号FERM BP−11210であるハイブリドーマより産生されるBCD-4および受託番号FERM BP−11211であるハイブリドーマより産生されるMK-172、あるいは、(2)受託番号FERM BP−11213であるハイブリドーマより産生されるBCD-7および受託番号FERM BP−11212であるハイブリドーマより産生されるEFG-11、を含む、治療効果の判定用キット。
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