JP5704545B2 - 甲状腺癌の検出方法 - Google Patents

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本発明は、検体において、特定の染色体領域に存在する遺伝子の変化を検出することを含む癌の検出方法に関する。
未分化甲状腺癌(以下ATC)は甲状腺癌の2〜5%を占めており、極めて悪性度の高い癌のひとつである。高分化型の甲状腺癌(WDTC)、すなわち甲状腺乳頭癌(PTC)、濾胞性甲状腺癌が、良好な予後を示すのに対し、ATCは極めて予後の悪い固形癌として位置づけられており、平均生存期間は4〜12ヶ月と言われている。ATCはいくつかの遺伝子異常がWDTCと共通していることが知られている(RAS遺伝子、BRAF遺伝子のポイントミューテーションや、PIK3CA遺伝子のポイントミューテーションまたは遺伝子増幅など)。一方、WDTCにおいてTP53遺伝子の変異は稀だが、ATCにおいては、70%以上においてTP53遺伝子が変異していることが知られている。ATCはWDTCとの組織学的な関連から、ATCはWDTCを前段階として発生しているといわれているが、新規(de novo)に発生するものもあり、悪性度に対する分子機序はほとんど解明されていないのが現状である。
最近のがん遺伝子に対する分子標的治療法の進歩により、ATCの遺伝子の変異領域を詳細に明らかにすることが、有効な治療法の開発につながると考えている。
増幅やホモ欠失といった遺伝子のコピー数変化は、癌化の原因となるがん遺伝子やがん抑制遺伝子を同定する上での有用な目印となる。
本発明者らはこれまでのハイスループットのarrayCGH法を用い、さまざまながんの細胞株を解析することで、癌化につながる新規な遺伝子の同定を成し遂げてきた。ATCに対して、ハイスループットのアレイのひとつであるMCG Cancer Array800(非特許文献1)を用いた解析を行い、新規なマーカー遺伝子となるDUSP26遺伝子を見出した。しかしながら、ATCの分子機構の解明は未だ不十分であり、更なる解析が求められていた。
Yu et al., Oncogene 26,1178-1187,2007
甲状腺の腫瘍のなかで特に予後の悪いATCの癌化についての遺伝子レベルでのメカニズムが解明されれば、遺伝子レベルにおける甲状腺由来細胞の癌化の早期発見や、甲状腺癌の悪性度の診断、進行の抑制をおこなうことが可能となり、さらに、メカニズムに基づく薬剤の選別、開発や治療法の確立が可能となるはずである。具体的には、未分化甲状腺癌に特徴的な挙動を示す遺伝子を同定して、遺伝子を中心とした技術的検討をおこなうことにより、この課題を解決することができると考えられる。即ち、本発明は、甲状腺癌などの癌に特徴的な挙動を示す遺伝子を同定して癌の検出方法及び細胞増殖抑制剤を提供することを解決すべき課題とした。
Comparative Genomic Hybridization (CGH)はゲノム上で多数の遺伝子増幅並びに欠失、あるいは遺伝子の不活性化に伴う遺伝子異常を解析するためには、簡便で迅速であり、最良の方法である。そして、癌化並びに癌の悪性化などに関与するゲノム上の遺伝子異常を解析するためにCGHアレイに搭載する4500種類のBAC/PAC DNAを選別する(MCG Whole Genome‐4500;Inazawa J., et al.,Cancer Sci.95,559−563,2004)ことにより、甲状腺がんで変化する特徴的な13の染色体領域(1q41、3q28,7q31.2、8p12、8q22.2、8q24.21、11q14.1、17q12、20q11、9p21.3、16q13.2、16q23.1)を明らかにし、とくに癌化に関連する遺伝子として、9つの遺伝子(ITCH遺伝子、AHCY遺伝子、DYNLRB1遺伝子、MAP1LC3A遺伝子、PIGU遺伝子、TP53IPN2遺伝子、NCOA6遺伝子、HMG4L遺伝子、ASIP1遺伝子)を甲状腺由来の細胞の癌化を促進する癌関連遺伝子として見出し、マーカーとして特に好ましい遺伝子として、ITCH(itchy homolog E3 ubiquitin protein ligase)遺伝子を含む20q11の新しいコピー数異常の同定に成功した。またATCを含む原発性甲状腺癌のITCHタンパク質の過剰発現を、免疫組織化学的解析により明確にした。そして、ITCHタンパク質の増加がATC細胞の増殖を顕著に促進すること、また、ITCH遺伝子の転写産物を抑制するとATC細胞の増殖が著しく低下することを見出すことに成功し、本発明を完成した。
即ち、本発明によれば、検体において、1q41、3q28、7q31.2、8p12、8q22.2、8q24.21、11q14.1、17q12、20q11、9p21.3、16q13.2、16q23.1の染色体領域に存在する遺伝子の変化の少なくとも1つ以上を検出することにより癌化を検出することを含む、癌の検出方法が提供される。
好ましくは、1q41、3q28、7q31.2、8p12、8q22.2、8q24.21、11q14.1、17q12、20q11の染色体領域に存在する遺伝子の増幅、及び/又は9p21.3、16q13.2、16q23.1の染色体領域に存在する遺伝子の欠失の少なくとも1つ以上を検出する。
好ましくは、検体において20q11の染色体領域に存在する遺伝子の増幅を検出する。
好ましくは、前記遺伝子はITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、又はASIP1から選択される少なくとも1つ以上である。
好ましくは、増幅の指標は、正常検体と比較して1.32倍以上である。
好ましくは、遺伝子はITCH遺伝子である。
好ましくは、検体は、甲状腺由来の組織である。
好ましくは、癌は、甲状腺癌である。
好ましくは、遺伝子の変化を、DNAチップ法、サザンブロット法、ノーザンブロット法、リアルタイムRT−PCR法、FISH法、CGH法、または、アレイCGH法、Bsulfite Sequence法、又はCOBRA法を用いて検出する。
本発明によればさらに、検体において、ITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、又はASIP1から選択される少なくとも1つ以上の遺伝子から翻訳される蛋白質の量を検出することを含む、癌の検出方法が提供される。
好ましくは、蛋白質の量を免疫組織化学的法により検出する。
好ましくは、検体の悪性度を含めた癌化を検出する。
本発明によればさらに、ITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、又はASIP1から選択される少なくとも1つ以上の遺伝子のsiRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは機能欠失型遺伝子を、インビトロで細胞に導入することを含む、細胞の増殖を抑制する方法が提供される。
本発明によればさらに、ITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、又はASIP1から選択される少なくとも1つ以上の遺伝子のsiRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは機能欠失型遺伝子を含む、細胞増殖抑制剤が提供される。
本発明によればさらに、ITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、又はASIP1から選択される少なくとも1つ以上の遺伝子を、インビトロで細胞に導入することを含む、細胞の増殖を活性化する方法が提供される。
本発明によればさらに、ITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、又はASIP1から選択される少なくとも1つ以上の遺伝子を含む、細胞増殖活性化剤が提供される。
本発明により、甲状腺由来の細胞検体における癌化、悪性度を的確に把握することが可能となった。また、甲状腺癌において、遺伝子発現を不活性化する本発明の遺伝子の転写産物を導入することにより、甲状腺癌、特に未分化甲状腺癌の増殖を抑制することができる。
ATC細胞株のITCH遺伝子の増幅および過剰発現を示している。(A)MCG Whole Genome Array−4500を使用したアレイCGH解析画像を示している。2つのATC細胞株(8305C細胞株およびKTA−4)において、20q11.22での顕著なコピー数増加がきれいな緑色のシグナルとして検出された(赤矢印)。(B)8305CおよびKTA−4細胞から作られた、分裂中期染色体のFISH解析画像を示している。BACクローンRP11−318N1(緑発光)がプローブとして使用された。コントロールプローブとして20番染色体のBAC(RP11−7F10、20p1.22;赤発光)が使用された。KTA―4細胞がタンデムリピートパターンによる増幅(矢印部)を示したのに対し、8305C細胞は、微小染色体対(dmin)を伴う明らかな増幅が検出された。(C)ATC細胞株で増幅している20q11.22を含む領域のマップ。FISH解析で使用された8つのBACが黒横棒で示されている。配列中の9つの転写物が示されている。SRO中の全てのマーカーおよび転写物はヒトゲノムデータベース(ncbi.nlm.nih.gov and http://www.genome.ucsc.edu/)に基づき配置された。(D)RT−PCRにより決定された、ATC細胞株の20q11.22に位置する遺伝子の発現。DW、蒸留水はネガコンである。アレイCGHによって検出された20q11.22の増幅部分は矢頭で示されている。ATC細胞株のコピー数とITCHの発現パターンは相関していた。(E)ATC細胞株のITCH蛋白質のウエスタンブロット解析。ITCHたんぱく質の発現レベルもこの遺伝子のコピー数と相関していた。(F)7つの原発性ATC検体と正常甲状腺組織のITCH遺伝子発現のRT−PCR解析。バンドの定量化は、LAS−3000(富士フイルム社製)およびマルチゲージ(富士フイルム社製ソフト)により定量化した。それぞれの試料のGAPDHで規格化されたITCHの発現量を、正常甲状腺組織の発現量で割った数値を増加量として示した。 原発性甲状腺癌と甲状腺良性腫瘍のITCH免疫染色の例である。(A)ATC(強度3)(B)ATC(強度2)(C)ATC(強度0)(D)PMC(強度3)(E)PTC(強度2)(F)甲状腺腫(強度1)。免疫染色の強さから、四つの強度レベルに分類した。棒線は20μmを示している。 (A−C)ATC細胞の成長に対するITCHの抑制効果。siRNA−Lucを形質導入した細胞、もしくは溶媒のみの添加にくらべ、ITCHに特異的なsiRNA(siRNA−ITCH)を形質導入された8305C細胞(A)、KTA−4細胞(B)のウエスタンブロッティングの結果および成長曲線を示している。siRNAによるノックダウンの効果は、形質導入後24−72時間の間で調べられた。WST試験法により形質導入後24〜72時間の生存細胞数を計測した。データは3回の計測の平均を示している。P<0.05を※印で示している(Mann−Whitney U法により統計解析)。(C)8305C細胞にsiRNA−ITCHおよびsiRNA−Lucをそれぞれ形質導入後、72時間経過後、FACSにより測定した細胞周期ごとの細胞数分布を示している。ITCH特異的siRNAの形質導入により、G0/G1期の細胞が蓄積することがわかる。(D,E)TTA−1細胞(D)8505C細胞(E)を用いたコロニー形成法。ITCH遺伝子の発現は比較的少ない細胞に、ITCH遺伝子のMycタグを発現する2つのプラスミド(ワイルドタイプ:pCMV−3Tag4−ITCH WT、ユビキチン結合酵素活性を無くしたミュータントタイプ:pCMV−3Tag4−ITCH MUT)ITCH遺伝子を挿入しない空ベクター(pCMV−3Tag4−mock)形質導入し、さらにネオマイシン系薬剤であるG418存在下で3週間、増殖した。(左)ウエスタンブロッティングで、形質導入を確認。(右)形質導入によりコロニーが形成されている。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
(1)癌の検出方法
本発明による癌の検出方法は、検体において、1q41、3q28、7q31.2、8p12、8q22.2、8q24.21、11q14.1、17q12、20q11、9p21.3、16q13.2、16q23.1の染色体領域に存在する遺伝子の変化の少なくとも1つ以上を検出することを特徴とする。好ましくは、検出される遺伝子は、ITCH遺伝子である。
ITCH遺伝子(itchy homolog E3 ubiquitin protein ligase)はAIP4(atrophin−1 interacting protein4)とも呼ばれており、E3Ubiquitin ligasesであるNedd4−likeタンパク質ファミリーに属する。N末端側には、protein kinase−Cに関連するC2領域が、C末端部には、4つのWW領域と、HECT(homologous to the E6−associated protein carboxyl−terminus) ubiquitin protein ligase領域が含まれる構造を有している。Itch遺伝子(Itchy)のないマウスは、皮膚の定常的なそう痒、重篤な炎症、免疫不全を伴う致死的な症状を呈する。Nedd4−like E3は食道扁平上皮癌、乳がん、前立腺癌、膵臓癌の発癌に対し重要な役割を演じているといわれている。しかしながらITCH遺伝子と癌の関係を示す報告はほとんどなされていない。
上述したように、本検出方法は、甲状腺由来の細胞や甲状腺癌における本発明の染色体領域および本発明の複数の遺伝子の変異を検出することを特徴とする方法である。
本発明の染色体領域および本発明の複数の遺伝子の変異を検出する対象となる甲状腺由来の細胞や甲状腺癌は、検体提供者の生検組織細胞が好適である。
この検体組織細胞は、健常人の甲状腺に由来する細胞か、甲状腺癌患者の癌組織であるかを問わないが、現実的には、検査等の結果、癌化が疑われる病変部が認められた場合の病変組織、または甲状腺癌であることが確定しているが、その悪性度や進行度を判定する必要がある甲状腺癌の組織、等が主な対象となり得る。
本検出方法により、「検査等の結果、甲状腺に由来する組織や細胞に癌化が疑われる病変部が認められた場合の病変組織」における本発明の染色体領域および本発明の複数の遺伝子の変異が認められた場合には、病変組織は癌化に向かって進行しているか或るいは既に癌化の状態であり、かつ、悪性度が高くなりつつあることが判明し、早急な本格的治療(手術等による病変部の除去、本格的な化学療法等)をおこなう必要性が示される。また、「甲状腺癌であることが確定しているが、その悪性度や進行度を判定する必要がある甲状腺癌の組織」における本発明の染色体領域および本発明の複数の遺伝子の変異が認められた場合にも、癌組織の悪性度が高くなりつつあることが判明し、早急な本格的治療手術等による病変部の除去、本格的な化学療法等)をおこなう必要性が示される。検体として採取された甲状腺癌組織は、必要な処理、例えば、採取された組織からのDNA或るいはRNAの調製をおこない、本検出方法をおこなう対象とすることができる。
本検出方法は、上述したように、甲状腺由来の細胞、および甲状腺癌細胞における本発明の染色体領域および本発明の複数の遺伝子の変異を検出することにより、当該細胞の腫瘍化の検出、分類をおこなうことが可能である。
次に、本発明の染色体領域および本発明の複数の遺伝子の変異の検出について説明する。
本発明の染色体領域および本発明の複数の遺伝子の増幅や欠失の検出を直接的におこなうことができる代表的な方法として、CGH(Comparative Genomic Hybridization)法とFISH(Fluorescence in situ hybridization)法を挙げることができる。この態様の本検出方法は、本発明の染色体領域および本発明の複数の遺伝子を有するBAC(Bacterial Artificial Chromosome)DNA、YAC(Yeast Artificial Chromosome)DNA、PAC(P1−drived Artificial Chromosome)DNA(以下、BAC DNA等ともいう)を標識し、FISHをおこなうと、本発明の染色体領域および本発明の複数の遺伝子の変異を検出することができる。
上記の態様の方法は、ゲノムDNA定着基盤を用いておこなうことが、好適であり、かつ、現実的である。
通常に得られるBAC DNA等は、ゲノムDNA定着基盤を多数製造して実用化するには少量であるので、当該DNAを遺伝子増幅産物として得る必要がある(この遺伝子増幅行程を「無尽蔵化」ともいう)。無尽蔵化においては、まずBAC DNA等を、4塩基認識酵素、例えば、RsaI、DpnI、HaeIII等で消化した後、アダプターを加えてライゲーションをおこなう。アダプターは10〜30塩基、好適には15〜25塩基からなるオリゴヌクレオチドで、2本鎖は相補的配列を有し、アニーリング後、平滑末端を形成する側の3‘-末端のオリゴヌクレオチドをリン酸化する必要がある。次に、アダプターの一方のオリゴヌクレオチドと同一配列を有するプライマーを用いて、PCR(Polymerase Chain Reaction)法により増幅し、無尽蔵化することができる。一方、各BAC DNA等に特徴的な50〜70塩基のアミノ化オリゴヌクレオチドを検出用プローブとして用いることもできる。
このようにして無尽蔵化したBAC DNA等を基盤上、好適には固体基盤上に定着させることにより、所望するDNA定着基盤を製造することができる。固体基盤としては、ガラス板が好ましい。ガラス等の固体基盤は、ポリ−L−リジン、アミノシラン、金・アルミニウム等の凝着により基盤をコートすることがより好ましい。
上記の無尽蔵化したDNAを基盤上にスポットする濃度は、好ましくは10pg/μl〜5μg/μl、より好ましくは1ng/μl〜200ng/μlである。スポットする量は好ましくは1nl〜1μl、より好ましくは10nl〜100nlである。また、基盤に定着させる個々のスポットの大きさ及び形状は、特に限定されないが、例えば、大きさは直径0.01〜1mmであり得、上面から見た形状は円形〜楕円形であり得る。乾燥スポットの厚みは、特に制限はないが、1〜100μmである。さらに、スポットの個数は、特に制限はないが、使用する基盤あたり10〜50,000個、より好ましくは100〜5,000個である。それぞれのDNAはSingularからQuadruplicateの範囲でスポットするが、Duplicate或るいはTriplicateにスポットすることが好ましい。
乾燥スポットの調整は、例えば、スポッターを用いて無尽蔵化したBAC DNA等を基盤上にたらして、複数のスポットを形成した後、スポットを乾燥することにより製造することができる。スポッターとしてインクジェット式プリンター、ピンアレイ式プリンター、バブルジェット(登録商標)式プリンターが使用できるが、インクジェット式プリンターを使用することが望ましい。例えば、GENESHOT(日本ガイシ株式会社、名古屋)等を使用できる。
このようにして無尽蔵化したBAC DNA等を基盤上、好適には固体基盤上に定着させることにより、所望するDNA定着基盤を製造することができる。
また、この本発明の染色体領域および本発明の複数の遺伝子の変異を直接的に検出する手段の一つとしてサザンブロット法を挙げることができる。サザンブロット法は、検体から得られるゲノムDNAを分離して固定し、これと、本発明の染色体領域および本発明の複数の遺伝子とのハイブリダイズを検出することにより、検体中の当該遺伝子の存在を検出する方法である。また、この本発明の染色体領域および本発明の複数の遺伝子の増幅を直接的に検出する手段の一つとしてPCR法も用いることができる。被検検体よりゲノムDNAを分離して当該遺伝子の全部、または一部を増幅することが可能なプライマーを用いて増幅後、定量をおこなうことにより検出することが可能である。
本発明において、1q41、3q28,7q31.2、8p12、8q22.2、8q24.21、11q14.1、17q12、20q11、9p21.3、16q13.2、16q23.1の染色体領域に存在する遺伝子の変化を少なくとも1つ以上を検出することにより、検体の悪性度を含めた癌化を検出することが可能である。
変異の検出において、1q41、3q28,7q31.2、8p12、8q22.2、8q24.21、11q14.1、17q12、20q11、の染色体領域においては、増幅を検出することが好ましく、9p21.3、16q13.2、16q23.1においては、欠失を検出することが好ましい。
検体において20q11領域の遺伝子増幅を指標とすることがより好ましく、20q11領域の遺伝子として、ITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、ASIP1の少なくとも1つ以上の変異を検出して、検体の悪性度を含めた癌化を検出することがより好ましい。
また、増幅の指標として、正常検体と比較して1.32倍以上である、ことがこのましい。
ITCH遺伝子の遺伝子増幅を指標とすることが特に好ましい。
さらに検体が、甲状腺由来の組織であることが好ましく、甲状腺癌であることがより好ましい。
具体的には、1q41の染色体領域の変異を検出する方法としては、BAC−DNAとして、RP11−124A11、RP11−5F19、RP11−79H5、RP11−45L21、RP11−66M7 等を用いることが好ましく、3q28の染色体領域の変異を検出する方法としてはRP11−54L9、RP11−455C22、RP11−88H6等を用いることが好ましく、7q31.2の染色体領域の変異を検出する方法としてはRP11−51M22等を用いることが好ましく、8p12の染色体領域の変異を検出する方法としてはRP11−451O18 、RP11−258M15 、RP11−91P13等を用いることが好ましく、8q22.2の染色体領域の変異を検出する方法としてはRP11−142F22等を用いることが好ましく、8q24.21の染色体領域の変異を検出する方法としては、RP11−89K10、RP11−89L16等を用いることが好ましく、11q14.1の染色体領域の変異を検出する方法としてはRP11−91M10等を用いることが好ましく、17q12の染色体領域の変異を検出する方法としてはRP11−19G24等を用いることが好ましく20q11の染色体領域の変異を検出する方法としては、RP11−318N1等を用いることが好ましい。
また9p21.3の染色体領域の変異を検出する方法としてはRP11−113D19 RP11−344A7、RP11−408N14、RP11−441I5、RP11−11J1、RP11−782K2、RP11−346N23、RP11−33O15、RP11−482I10等を用いることが好ましく、16q13.2の染色体領域の変異を検出する方法としては、RP11−185J20等を用いることが好ましく、16q23.1の染色体領域の変異を検出する方法としてはRP11−61L1等を用いることが好ましい。
また、もっとも好ましいマーカ遺伝子であるITCH遺伝子を有するBAC DNAとして、RP11−318N1等を上げることができる。
本発明の複数の遺伝子を取り扱う場合、当業者に公知の技術を用いて培養細胞などから取得したcDNAであってもよいし、又は公知の塩基配列に基づいてPCR法などにより酵素学的に合成したものでもよい。PCR法により公知の塩基配列を有するDNAを取得する場合、ヒトの染色体DNA又はcDNAライブラリーを鋳型として使用し、当該塩基配列を増幅できるように設計したプライマーを使用してPCRをおこなう。PCRで増幅したDNA断片は大腸菌などの宿主で増幅可能な適切なベクター中にクローニングすることができる。
本発明の染色体領域および本発明の複数の遺伝子の検出ブローブ又はプライマーの調製、並びに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、Molecular Cloning: A laboratory Mannual、2nd Ed.、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY.、1989、Current Protocols in Molecular Biology、Supplement 1〜38、John Wiley & Sons(1987−1997)などに記載された方法に準じておこなうことができる。
(2)細胞増殖の抑制方法及び細胞増殖抑制剤。
本発明によれば、 ITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、又はASIP1から選択される少なくとも1つ以上の遺伝子のsiRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは機能欠失型遺伝子を、インビトロで細胞に導入することを含む細胞の増殖を抑制する方法、並びに上記のsiRNA、shRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは機能欠失型遺伝子を含む細胞増殖抑制剤が提供される。
siRNAは、約20塩基(例えば、約21〜23塩基)またはそれ未満の長さの二本鎖RNAであり、このようなsiRNA は、細胞に発現させることにより、そのsiRNA の標的となる遺伝子(本発明においては、ITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、又はASIP1遺伝子)の発現を抑制することができる。
本発明において用いられるsiRNA は、RNAiを引き起こすことができる限り、どのような形態のものでもよい。ここで、「siRNA 」とは、short interfering RNAの略称であり、人工的に化学合成されるかまたは生化学的に合成されたものか、あるいは生物体内で合成されたものか、あるいは約40塩基以上の二本鎖RNAが体内で分解されてできた10塩基対以上の短鎖二本鎖RNAをいい、通常、5’−リン酸、3’−OHの構造を有しており、3’末端は約2塩基突出している。このsiRNA に特異的なタンパク質が結合して、RISC(RNA−induced−silencing−complex)が形成される。この複合体は、siRNA と同じ配列を有するmRNAを認識して結合し、RNaseIII様の酵素活性によってsiRNA の中央部でmRNAを切断する。
siRNA の配列と、標的として切断するmRNAの配列とは100%一致することが好ましい。しかし、siRNA の中央から外れた位置の塩基が一致していない場合については、RNAiによる切断活性は部分的には残存することが多いので、必ずしも100%一致していなくてもよい。
siRNAの塩基配列と、発現を抑制すべきITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、又はASIP1遺伝子の塩基配列との間で相同性のある領域は、当該遺伝子の翻訳開始領域を含まないことが好ましい。翻訳開始領域には種々の転写因子や翻訳因子が結合することが予想されるため、siRNA が効果的にmRNAに結合することができず、効果が低減することが予測されるからである。従って、相同性を有する配列は、当該遺伝子の翻訳開始領域から20塩基離れていることが好ましく、より好ましくは当該遺伝子の翻訳開始領域から70塩基離れている。相同性を有する配列としては、例えば、当該遺伝子の3’末端付近の配列でもよい。
本発明の別の態様によれば、RNAiにより標的遺伝子の発現を抑制することができる因子として、3’末端に突出部を有する短いヘアピン構造から成るshRNA(short hairpin RNA)を使用することができる。shRNAとは、一本鎖RNAで部分的に回文状の塩基配列を含むことにより、分子内で二本鎖構造をとり、ヘアピンのような構造となる約20塩基対以上の分子のことを言う。そのようなshRNAは、細胞内に導入された後、細胞内で約20塩基(代表的には例えば、21塩基、22塩基、23塩基)の長さに分解され、siRNA と同様にRNAiを引き起こすことができる。上記の通りshRNAは、siRNA と同様にRNAiを引き起こすことから、本発明において有効に用いることができる。
shRNAは好ましくは、3’突出末端を有している。二本鎖部分の長さは特に限定されないが、好ましくは約10ヌクレオチド以上であり、より好ましくは約20ヌクレオチド以上である。ここで、3’突出末端は、好ましくはDNAであり、より好ましくは少なくとも2ヌクレオチド以上のDNAであり、さらに好ましくは2〜4ヌクレオチドのDNAである。
上記の通り、本発明では、RNAiによりITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、又はASIP1遺伝子の発現を抑制することができる因子として、siRNA またはshRNAを使用することができる。siRNAの長所としては、(1)細胞内に導入してもRNA自体は正常細胞の染色体内に組み込まれないので、子孫に伝わる変異を起こすような治療ではなく、安全性が高いこと、及び(2)短鎖二本鎖RNAは化学合成が比較的容易であり二本鎖にするとより安定であること、などが挙げられる。また、shRNAの長所としては、遺伝子発現を長期間抑制することによって治療を行う場合、細胞内でshRNAを転写するようなベクターを作製して細胞内に導入することができることなどが挙げられる。
本発明で用いるRNAiによりITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、又はASIP1遺伝子の発現を抑制することができるsiRNA又はshRNAは、人工的に化学合成してもよいし、センス鎖およびアンチセンス鎖のDNA配列を逆向きに連結したヘアピン構造のDNAをT7 RNAポリメラーゼによってインビトロでRNAを合成することによって作製することもできる。インビトロで合成する場合は、T7 RNAポリメラーゼおよびT7プロモーターを用いて、鋳型DNAからアンチセンスおよびセンスのRNAを合成することができる。これらをインビトロでアニーリングした後、細胞に導入すると、RNAiが引き起こされ、標的遺伝子の発現が抑制される。ここでは、例えば、リン酸カルシウム法、又は各種のトランスフェクション試薬(例えば、oligofectamine、Lipofectamineおよびlipofectionなど)を用いてそのようなRNAを細胞内に導入することができる。
上記したsiRNA又はshRNAは、細胞増殖抑制剤として有用である。本発明の細胞増殖抑制剤の投与方法は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与、皮膚投与など)、患部への直接投与などが挙げられる。本発明の薬剤は、医薬組成物として使用する場合、必要に応じて薬学的に許容可能な添加剤を配合することができる。 薬学的に許容可能な添加剤の具体例としては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、キャリア、賦形剤および/または薬学的アジュバントなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の薬剤の製剤形態は特に限定されないが、例えば、液剤、注射剤、徐放剤などが挙げられる。本発明の薬剤を上記製剤として処方するために使用される溶媒としては、水性または非水性のいずれでもよい。
さらに、本発明の細胞増殖抑制剤の有効成分であるsiRNA又はshRNAは、非ウイルスベクターまたはウイルスベクターの形態で投与することができる。非ウイルスベクター形態の場合、リポソームを用いて核酸分子を導入する方法(リポソーム法、HVJ−リポソーム法、カチオニックリポソーム法、リポフェクション法、リポフェクトアミン法など)、マイクロインジェクション法、遺伝子銃(Gene Gun)でキャリア(金属粒子)とともに核酸分子を細胞に移入する方法などを利用することができる。siRNA又はshRNAをウイルスベクターを用いて生体に投与する場合は、組換えアデノウイルス、レトロウイルスなどのウイルスベクターを利用することができる。無毒化したレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、センダイウイルス、SV40などのDNAウイルスまたはRNAウイルスに、siRNA又はshRNAを発現するDNAを導入し、細胞または組織にこの組換えウイルスを感染させることにより、細胞または組織内に遺伝子を導入することができる。
本発明の細胞増殖抑制剤の投与量は、使用目的、疾患の重篤度、患者の年齢、体重、性別、既往歴、又は有効成分であるsiRNA又はshRNAの種類などを考慮して、当業者が決定することができる。siRNA又はshRNAの投与量は特に限定されないが、例えば、約0.1ng〜約100mg/kg/日、好ましくは約1ng〜約10mg/kg/日である。RNAiは、一般に投与後1〜3日間効果が見られる。したがって、毎日〜3日に1回の頻度で投与することが好ましい。発現ベクターを用いる場合、1週間に1回程度投与することも可能である。
本発明では、アンチセンスオリゴヌクレオチドを細胞増殖抑制剤として使用することもできる。本発明で用いるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、又はASIP1遺伝子のDNA配列中の連続する5から100の塩基配列に対して相補的な、またはハイブリダイズするヌクレオチドであって、DNA又はRNAのいずれであっても良く、また機能に支障がない限りにおいて修飾されたものであってもよい。本明細書で言う「アンチセンスオリゴヌクレオチド」とは、DNA又はmRNAの所定の領域を構成するヌクレオチドに対応するヌクレオチドがすべて相補的であるもののみならず、DNA又はmRNAとオリゴヌクレオチドとが安定にハイブリダイズできる限り、多少のミスマッチが存在してもよい。
なお、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、修飾されていてもよい。適当な修飾を施すことにより、当該アンチセンスオリゴヌクレオチドは生体内で分解されにくくなり、より安定して標的を阻害できるようになる。このような修飾されたオリゴヌクレオチドとしては、S−オリゴ型(ホスフォロチオエート型)、C−5チアゾール型、D−オリゴ型(フォスフォジエステル型)、M−オリゴ型(メチルフォスフォネイト型)、ペプチド核酸型、リン酸ジエステル結合型、C−5プロピニルピリミジン型、2−O−プロピルリボース、2’−メトキシエトキシリボース型等の修飾型のアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、リン酸基を構成する酸素原子の少なくとも一部がイオウ原子に置換、修飾されているものでもよい。このようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ耐性、水溶性、RNAへの親和性に特に優れている。リン酸基を構成する酸素原子の少なくとも一部がイオウ原子に置換、修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、例えば、S−オリゴ型等のオリゴヌクレオチドが挙げられる。
アンチセンスオリゴヌクレオチドの塩基数は、50以下であることが好ましく、25以下であることがより好ましい。塩基数があまりに多くなると、オリゴヌクレオチドの合成の手間とコストが増大し、また、収率も低下する。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドの塩基数は5以上であり、9以上であることが好ましい。塩基数が4以下の場合には、標的遺伝子に対する特異性が低下して好ましくないためである。
アンチセンスオリゴヌクレオチド(又はその誘導体)は常法によって合成することができ、例えば、市販のDNA合成装置(例えばAppliedBiosystems社製など)によって容易に合成することができる。合成法はホスホロアミダイトを用いた固相合成法、ハイドロジェンホスホネートを用いた固相合成法などで得ることができる。
本発明においてアンチセンスオリゴヌクレオチドを細胞増殖抑制剤として使用する場合には、一般的には、アンチセンスオリゴヌクレオチドと製剤用添加物(担体、賦形剤など)とを含む医薬組成物の形態で提供される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヒトを含む哺乳動物に医薬として投与することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドの投与経路は特に限定されず、経口投与または非経口投与(例えば、筋肉内投与、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、鼻腔などへの粘膜投与、または吸入投与など)の何れでもよい。
アンチセンスオリゴヌクレオチドの製剤形態は特に限定されず、経口投与のための製剤としては例えば、錠剤、カプセル剤、細粒剤、粉末剤、顆粒剤、液剤、シロップ剤などが挙げられ、非経口投与のための製剤としては例えば、注射剤、点滴剤、座剤、吸入剤、経粘膜吸収剤、経皮吸収剤、点鼻剤、点耳剤などが挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む薬剤の形態、使用すべき製剤用添加物、製剤の製造方法などは、いずれも当業者が適宜選択可能である。
アンチセンスオリゴヌクレオチドの投与量は、患者の性別、年齢または体重、症状の重症度、予防または治療といった投与目的、あるいは他の合併症状の有無などを総合的に考慮して適宜選択することができる。投与量は、一般的には、0.1μg/kg体重/日〜100mg/kg体重/日、好ましくは0.1μg/kg体重/日〜10mg/kg体重/日である。
さらに本発明では、ITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、又はASIP1遺伝子の機能欠失型遺伝子を細胞増殖抑制剤として使用することもできる。機能欠失型遺伝子とは、該当する遺伝子においてその機能を欠失するように変異が導入されている遺伝子のことを言う。具体的には当該遺伝子から作製されるアミノ酸配列の少なくとも1個の構成アミノ酸を欠くもの、少なくとも1個の構成アミノ酸が別のアミノ酸で置換されているもの、少なくとも1個のアミノ酸が付加されたもの等の本来の機能を欠失した一般にムテインと呼ばれるタンパク質を翻訳する当該遺伝子がこれに相当する。
機能欠失型遺伝子を細胞増殖抑制剤として使用する場合は、有効成分である上記遺伝子を遺伝子治療剤に通常用いる基剤と共に配合することにより製造することができる。また、上記遺伝子をウイルスベクターに組み込んだ場合は、組換えベクターを含有するウイルス粒子を調製し、これを遺伝子治療剤に通常用いる基剤と共に配合する。
上記基剤としては、通常注射剤に用いる基剤を使用することができ、例えば、蒸留水、塩化ナトリウム又は塩化ナトリウムと無機塩との混合物などの塩溶液、マンニトール、ラクトース、デキストラン、グルコースなどの溶液、グリシン、アルギニンなどのアミノ酸溶液、有機酸溶液又は塩溶液とグルコース溶液との混合溶液などが挙げられる。あるいはまた、当業者に既知の常法に従って、これらの基剤に浸透圧調整剤、pH調整剤、植物油、界面活性剤などの助剤を用いて、溶液、懸濁液、分散液として注射剤を調製することもできる。これらの注射剤は、粉末化、凍結乾燥などの操作により用時溶解用製剤として調製することもできる。
機能欠失型遺伝子の投与形態としては、通常の静脈内、動脈内などの全身投与でもよいし、局所注射又は経口投与などの局所投与を行ってもよい。さらに、投与にあたっては、カテーテル技術、遺伝子導入技術、又は外科的手術などと組み合わせた投与形態をとることもできる。
機能欠失型遺伝子の投与量は、患者の年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なるが、一般に、成人では一日当たり組み換え遺伝子の重量として1μg/kg体重から1000mg/kg体重程度の範囲であり、好ましくは10μg/kg体重から100mg/kg体重程度の範囲である。投与回数は特に限定されない。
また、上記した本発明の各種の遺伝子治療剤は、常法により調製されたリポソームの懸濁液に遺伝子を添加し凍結した後融解することにより製造することもできる。リポソームを調製する方法は、薄膜振とう法、超音波法、逆相蒸発法、界面活性剤除去法などがある。リポソームの懸濁液は超音波処理した後、遺伝子を添加するのが遺伝子の封入効率を向上させる上で好ましい。遺伝子を封入したリポソームはそのまま、又は水、生理食塩水などに懸濁して静脈投与することができる。
本発明の細胞増殖抑制剤は、抗腫瘍剤として有用である。本明細書でいう「抗腫瘍」とは、腫瘍の発生又は転移・着床を防止するという予防的作用、ならびに腫瘍細胞の増殖を抑制したり、腫瘍を縮小することによって腫瘍の進行を阻止したり、症状を改善させるという治療的作用の両方を含む最も広い意味を有し、いかなる場合においても限定的に解釈されるものではない。
本発明の抗腫瘍剤の適用対象となる癌の具体例としては、例えば悪性黒色腫、悪性リンパ腫、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、尿管腫瘍、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、睾丸腫瘍、上顎癌、舌癌、口唇癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、甲状腺癌、脳腫瘍、カポジ肉腫、血管腫、白血病、真性多血症、神経芽細胞腫、網膜芽腫、骨髄腫、膀胱腫、肉腫、骨肉腫、筋肉腫、皮膚癌、基底細胞癌、皮膚付属器癌、皮膚転移癌、皮膚黒色腫などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記のうち特に好ましい適用対象となる癌は、甲状腺癌である。
(3)細胞増殖の活性化方法および細胞増殖活性化剤
本発明によればさらに、ITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、又はASIP1から選択される少なくとも1つ以上の遺伝子、または、該遺伝子の発現産物である蛋白質をインビトロで細胞に導入することを含む、細胞の増殖を活性化する方法、並びに上記遺伝子又は蛋白質を含む細胞増殖活性化剤が提供される。
ITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、又はASIP1から選択される少なくとも1つ以上の遺伝子を取り扱う場合、当業者に公知の技術を用いて培養細胞などから取得したcDNAであってもよいし、PCR法などにより酵素学的に合成したものでもよい。PCR法によりDNAを取得する場合、ヒトの染色体DNA又はcDNAライブラリーを鋳型として使用し、目的とする塩基配列を増幅できるように設計したプライマーを使用してPCRを行う。PCRで増幅したDNA断片は大腸菌などの宿主で増幅可能な適切なベクター中にクローニングすることができる。
ITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、又はASIP1から選択される少なくとも1つ以上の遺伝子の検出ブローブ又はプライマーの調製、並びに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、Molecular Cloning: A laboratory Mannual、2nd Ed.、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY.、1989、Current Protocols in Molecular Biology、Supplement 1〜38、John Wiley & Sons(1987−1997)などに記載された方法に準じて行うことができる。
ITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、又はASIP1から選択される少なくとも1つ以上の遺伝子は、ベクターに組み込んだ組換えベクターの形態で用いることができる。ベクターとしてはウイルスベクター又は動物細胞発現用ベクター、好ましくはウイルスベクターが用いられる。ウイルスベクターとしてはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられる。中でも、レトロウイルスベクターは、細胞に感染後、ウイルスゲノムが宿主染色体に組み込まれ、ベクターに組み込んだ外来遺伝子を安定にかつ長期的に発現させる可能であるからレトロウイルスベクターを使用することが特に望ましい。
動物細胞発現用ベクターとしては例えばpCXN2(Gene,108,193−200,1991)、PAGE207(特開平6−46841号公報)又はその改変体などを用いることができる。
上記組換えベクターは適当な宿主に導入して形質転換し、得られた形質転換体を培養することによって生産することができる。組換えベクターがウイルスベクターの場合、これを導入する宿主としてはウイルス生産能を有する動物細胞が用いられ、例えば、COS−7細胞、CHO細胞、BALB/3T3細胞、HeLa細胞などが挙げられる。レトロウイルスベクターの宿主としては、ΨCRE、ΨCRIP、MLVなどが、アデノウイルスベクター及びアデノ随伴ウイルスベクターの宿主としては、ヒト胎児腎臓由来の293細胞などが用いられる。ウイルスベクターの動物細胞への導入はリン酸カルシウム法などで行うことができる。また、組換えベクターが動物細胞発現用ベクターの場合、これを導入する宿主としては大腸菌K12株、HB101株、DH5α株などを使用でき、大腸菌の形質転換は当業者に公知である。
得られた形質転換体はそれぞれに適した培地、培養条件により培養する。例えば、大腸菌の形質転換体の培養は、生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他を含有するpH5〜8程度の液体培地を用いて行うことができる。培養は通常15〜43℃で約8〜24時間程度行う。この場合、目的とする組み換えベクターは、培養終了後、通常のDNA単離精製法により得ることができる。
また、動物細胞の形質転換体の培養は、例えば約5〜20%のウシ胎児血清を含む199培地、MEM培地、DMEM培地などの培地を用いて行うことができる。培地のpHは約6〜8が好ましい。培養は通常約30〜40℃で約18〜60時間行う。この場合、目的とする組み換えベクターは、それを含有するウイルス粒子が培養上清中に放出されるので、ウイルス粒子の濃縮、精製を塩化セシウム遠心法、ポリエチレングリコール沈澱法、フィルター濃縮法などにより得ることができる。
本発明の細胞増殖活性化剤は、有効成分である上記遺伝子を遺伝子治療剤に通常用いる基剤と共に配合することにより製造することができる。また、上記遺伝子をウイルスベクターに組み込んだ場合は、組換えベクターを含有するウイルス粒子を調製し、これを遺伝子治療剤に通常用いる基剤と共に配合する。
有効成分である上記遺伝子又は蛋白質を配合するために使用する基剤としては、通常注射剤に用いる基剤を使用することができ、例えば、蒸留水、塩化ナトリウム又は塩化ナトリウムと無機塩との混合物などの塩溶液、マンニトール、ラクトース、デキストラン、グルコースなどの溶液、グリシン、アルギニンなどのアミノ酸溶液、有機酸溶液又は塩溶液とグルコース溶液との混合溶液などが挙げられる。あるいはまた、当業者に既知の常法に従って、これらの基剤に浸透圧調整剤、pH調整剤、植物油、界面活性剤などの助剤を用いて、溶液、懸濁液、分散液として注射剤を調製することもできる。これらの注射剤は、粉末化、凍結乾燥などの操作により用時溶解用製剤として調製することもできる。
本発明の細胞増殖活性化剤の投与形態としては、通常の静脈内、動脈内などの全身投与でもよいし、局所注射又は経口投与などの局所投与を行ってもよい。さらに、細胞増殖活性化剤の投与にあたっては、カテーテル技術、遺伝子導入技術、又は外科的手術などと組み合わせた投与形態をとることもできる。
本発明の細胞増殖活性化剤の投与量は、患者の年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なるが、一般に、成人では一日当たり組み換え遺伝子の重量として1μg/kg体重から1000mg/kg体重程度の範囲であり、好ましくは10μg/kg体重から100mg/kg体重程度の範囲である。投与回数は特に限定されない。
(4)ITCH遺伝子を用いた腫瘍の検出方法
本発明の細胞増殖抑制(抗腫瘍剤)の適用対象となる腫瘍を選別するための検出方法は、ITCH遺伝子の全部又はその一部を含むDNA又はRNAを用いて検体試料中のITCH遺伝子を解析する工程を含む。ここで、ITCH遺伝子の一部とは、ITCH遺伝子の塩基配列のうち、例えば約10〜30個の連続する塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを意味する。検体試料としては、腫瘍が疑われる組織切片、血液、リンパ液、喀痰、肺洗浄液、尿、便、組織培養上清などを用いることができる。
上記の「抗腫瘍化剤の適用対象となる腫瘍を選別するための検出」とは組織等における本発明における抗腫瘍化剤が有効に作用する腫瘍の存在の有無を知ることをいう。
腫瘍を選別するための検出は、ITCH遺伝子の全部又はその一部を含むDNA又はRNAをプライマー又はプローブとして用いて検体試料中のITCH遺伝子を解析することによりおこなう。ここで「ITCH遺伝子を解析する」とは、具体的にはゲノムDNAの当該遺伝子の増幅・欠失の検出又は遺伝子の発現量の異常を検出することをいう。
遺伝子の変異の検出は、上記DNA又はRNAをプライマーとして用いる場合では、例えば選択した2種の配列のプライマーによりPCR法で検体試料より調製したDNAの部分配列を増幅させ、その存在の有無を確認する、もしくはその増幅物をそのまま、あるいは各種プラスミドベクターに組み換えた後配列を確認することにより可能である。
一方、遺伝子の発現量の異常の検出は、上記RNA配列を含むプローブを用いてノーザンハイブリダイゼーション法又はRT−PCR(reverse transcription−polymerase chain reaction)法によっておこなうことができる。
(5)ITCHタンパク質抗体又はその断片を用いた腫瘍を選別するための検出方法
本発明の細胞増殖抑制剤(抗腫瘍剤)の適用対象となる腫瘍を選別するための検出方法は、ITCHタンパク質に対する抗体又はその断片を用いて検体試料中のITCHタンパク質の量を解析する工程を含む。
本方法に用いるITCHタンパク質に対する抗体(以下、ITCH抗体という)は、ITCHタンパク質の全部又は一部を抗原として、通常の方法で作製することができる。ITCHタンパク質の一部とは、配列番号2に記載するITCHタンパク質のアミノ酸配列のうち、例えば連続する少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは少なくとも約8〜10個のアミノ酸、さらに好ましくは、少なくとも約11〜20個のアミノ酸からなるポリペプチドをいう。抗原とするITCHタンパク質の全部又は一部の調製法は生物学的手法、化学合成手法いずれでもよい。
ポリクローナル抗体は、例えば上記抗原をマウス、モルモット、ウサギなどの動物の皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内などに複数回接種し十分に免疫した後、該動物から採血、血清分離して作製することができる。モノクローナル抗体は、例えば上記抗原で免疫したマウスの脾細胞と市販のマウスミエローマ細胞との細胞融合により得られるハイブリドーマを作製後、該ハイブリドーマ培養上清、又は該ハイブリドーマ投与マウス腹水から作製することができる。
上記のようにして調製したITCHタンパク質抗体又はその断片を用いることによって検体試料中のITCHタンパク質の発現量を知ることができる。測定には、例えばイムノブロット法、酵素抗体法(EIA)、放射線免疫測定法(RIA)、蛍光抗体法、免疫細胞染色などの免疫学的方法、又はウエスタンブロット法などが利用できる。ここで、ITCHタンパク質抗体の断片とは当該抗体の一本鎖抗体断片(scFv)などをいう。また、検体試料としては、腫瘍が疑われる骨髄試料、組織切片、血液、リンパ液、喀痰、肺洗浄液、尿、便、組織培養上清などを用いることができる。測定した検体試料中のITCHタンパク質の発現量が低い場合は、検体とした組織や細胞においてITCH遺伝子の発現が抑制されていることになり、本発明の抗腫瘍化剤の適用対象となる腫瘍を選別することができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により特に限定されるものではない。
実験材料:
用いた14種のATC細胞株(KTA−1,KTA−2,KTA−3,KTA−4,ARO,FRO,TTA−1,TTA−2,TTA−3,8305C,8505C,HTC/C3,TCO−1,KHM/5M)は臨床サンプルより樹立した細胞株を使用した。これら細胞株を10%胎児牛血清と100U/mlpenicillin/100μg/mlstreputomycin液で培養をおこなった。原発性甲状腺癌の116の臨床検体は伊藤病院より入手し、各患者の同意をもってかつ同組織の倫理委員会の承認を得て使用した。
実施例1:ATC細胞株での遺伝子領域の増幅と欠失
未分化甲状腺癌での新規な遺伝子変化を検出するために、上述の14種類のATC細胞株から調製したゲノムDNAを用いてMGC Whole Genome Array−4500(Inazawa J., et al.,Cancer Sci.95,559−563,2004))を使用したCGHアレイ解析をおこなった。なお、対象として甲状腺由来の正常な細胞から抽出したゲノムを使用しCy5で標識した。被検DNAとして未分化甲状腺癌細胞株から調整したゲノムDNAを使用しCy3で標識した。
以下に、具体的な解析方法を示す。具体的には、DpnII消化したゲノムDNA(0.5μg)を、各々0.6mM dATP、0.6mM dTTP、0.6mM dGTP、0.3mM dCTP及び0.3mMCy3−dCTP(未分化甲状腺癌細胞株)或るいは0.3mMCy5−dCTP(正常細胞)存在下で、BioPrime Array CGH Genomic Labeling System(Invitrogen社)により標識した。Cy3及びCy5標識dCTPはGE ヘルスケア社より入手した。両標識ゲノムDNAをCot−1 DNA(Invitrogen社)存在下でエタノールを加えて沈殿させ、120μlのハイブリダイゼーション混合液(50%ホルムアミド、10%Dextran sulfate、2xSSC(1xSSC:150mM NaCl/15mM Sodium Citrate)、4% sodium dodecyl sulfate、pH7.0)に溶解した。37℃で30分間インキュベーション後、ハイブリダイゼーションマシーン(GeneTAC;ハーバードバイオサイエンス社)にCGHアレイをセットし、48−72時間イハイブリダイゼーションをおこなった。その後、CGHアレイを50%ホルムアミド/2xSSC(pH7.0)溶液中で50℃にて15分間洗浄し、次に2xSSC/0.1%SDS中で50℃にて15分間洗浄した。風乾した後、CGHアレイをGenePix 4000Bスキャナー(Axon Instruments、CA、USA)を用いてCy3及びCy5に由来する蛍光をモニタリングした。得られた結果をGenePix Pro6.0イメージングソフトウエア(Axon Instruments、CA、USA)を用いて解析した。Cy3に由来する蛍光強度の平均とCy5に由来する蛍光強度の平均を同じ値に調整し、Cy3/Cy5のRatioを求めた。
ゲノムに異常がない場合にはRatio値は1(log2Ratio=0)である。Ratio値が1.32以上(log2Ratioで0.4以上)の時にゲノムの増幅があり、4以上(log2Ratioで2以上)の時に顕著な増幅が認められると判定した。Ratio値が0.75以下(log2Ratioで−0.4以下)の時にゲノムのヘテロ接合体欠失の可能性、0.25以下(log2Ratioで−2以下)の時にホモ接合体欠失の可能性が極めて大きいと判定した。その結果を表1、2に示す。
Figure 0005704545
Figure 0005704545
増幅は、1q41、3q28,7q31.2、8p12、8q22.2、8q24.21、11q14.1、11q22.2、17q12、20q11に見出された。これらの変異のうち、11q22.2以外の染色体領域の変化は、本発明において初めて明らかになった変異である。
また、ホモ欠失は14細胞株中6細胞株(ARO、KTA−4、TCO−1、TTA−1、TTA−2、TTA−3)の3つの部位(9p21.3、16q13.2、16q23.1)に見出された。そのうち、CDKN2A/p16遺伝子を含む9p21.3領域の欠失が尤も高頻度に観察された。がん抑制遺伝子と推定されるWWOX遺伝子を含む16q23のホモ欠失はKTA−4細胞株でのみ検出され、ARO細胞株は新規領域16q13.2にホモ欠失が検出された。高レベルの増幅は14個中、4つの細胞株(ARO、KTA−3,TTA−1,8305C)の10の領域で検出された。
以上の結果より、表1、2に示す染色体領域の変化を検出することで甲状腺のがん化を検出することが可能と考えられる。
さらに、これらの領域の中で20q11.22の高レベルな増幅は、これまで報告されたことがなく、8305C細胞だけでなく、KTA−4においても中程度の増幅(Log2ratio=1.6:BACPR11−318N1)をしているとこが判明した(図1A)。遺伝子増幅が腫瘍の病理学的、臨床的意義が大きく治療法に繋がることからこの20q11.22領域に注力して解析をおこなった。
実施例2:8305C、KTA−4細胞でのFISH解析による増幅領域の絞り込みと構成される遺伝子の発現解析
20q11.22の増幅領域の絞込みをおこなうため、RP11−318N1を中心する7つのBACおよび、20p11領域のBACをコントロールプローブとして、定法(Inoue J, Otsuki T, Hirasawa A, et al. Am J Pathol.;165:71−81.,2004)により、FISH解析を行った。
8305C細胞においてRP11−318N1プローブでは微小染色体対(double minute chromosomes)を伴う多数のシグナルが見出された。(図1B)
一方KTA−4細胞株においては、6個のBAC(RP11−134I8,318O16,318N1,160I20,353C18,382A12)がタンデムリピートパターンを伴う8つのシグナルを検出した(図1B)。両者の結果からターゲットの候補となる増幅領域はRP11−318N1に絞り込まれ、ヒトゲノムデータベース(http://genome.ucsc.edu/)から、約0.6Mbの範囲でありASIP1,AHCY,ITCH,DYNLRB1,MAP1LC3A,TP53IPN2,PIGU,NCOA6,HMG4Lの9の遺伝子を含むことがわかった(図1C)。
以上より、ASIP1,AHCY,ITCH,DYNLRB1,MAP1LC3A,TP53IPN2,PIGU,NCOA6,HMG4Lのコピー数の増加を検出することで、甲状腺由来細胞の癌化を検出できることがわかった。
さらにこれらのターゲット遺伝子の中で、より好ましいターゲットを明確にするために、遺伝子の増幅と、発現状態の関係を決定することにした。
次に、絞り込まれた領域中に存在するASIP1,AHCY,ITCH,DYNLRB1,MAP1LC3A,TP53IPN2,PIGU,NCOA6,HMG4Lの9の遺伝子について簡易定量を目的としたPCR反応をおこなった。RT−PCRの発現量のコントロールとして発現量が細胞種、条件で変化しにくいことで知られるGAPDHを用いた。対数増殖期の各細胞よりtotal RNAを採取後、定法にてcDNAを作製した。各遺伝子に特異的なプライマー(プライマーの塩基配列を表3に示す)と条件を事前に設定し、PCR反応をおこない3%アガロースゲルにて電気泳動をおこなった。
Figure 0005704545
ゲルイメージを LAS−3000(富士写真フイルム)にて測定しMulti Gauge software(富士写真フイルム)にて画像解析した(図1D)。14の細胞株について半定量RT−PCR法を用いて解析した結果、8305C細胞とKTA−4細胞においてITCH遺伝子が明らかに過剰発現していることを見出した。通常、コピー数と発現量の間には正の相関関係があることが知られており、このことから、ITCH遺伝子がもっとも好ましいターゲット遺伝子となることが分かった。
実施例3:ATC細胞株でのITCH遺伝子のタンパク発現レベルの確認
8305C,KTA−4のITCHの過剰発現を確認するため、特異抗体を用いたウエスタンブロッキング法により、タンパクの発現を確認した。
具体的には、各細胞をprotease−inhibitor cocktail(Roche Diagnostics)を含むRIPAバッファー(10mM Tris−HCl,150mM NaCl,1mM EDTA,1% sodium deoxycholate,0.1% SDS,1% Triton X−100,pH7.4)にて溶解後、BCA assay(Pierce Chemical)にてタンパク濃度を測定し各30μgをSDS−ポリアクリルアミドゲルにて電気泳動した。これを、difluoride膜に転写し、抗ITCH抗体(Santa Cruz Biotechnology)、コントロールとして抗β−アクチン抗体(Sigma)にて一次検出後、パーオキシダーゼ結合二次抗体にてenhanced electrochemiluminescence system(Amersham)を用い発色、検出した(図1E)。
またRT−PCR法により、原発性未分化甲状腺癌7検体についてITCHmRNAの発現量の解析を行い、原発性未分化甲状腺癌においてもITCHmRNAが過剰発現していることを確認した(図1F)。
実施例4:原発性甲状腺癌におけるITCHの過剰発現について
ATCを含む原発性甲状腺癌のITCHの発現状態を調べるため、109の原発性甲状腺癌検体(ATC 49検体、PTC 25検体、PMC 25検体、甲状腺腫(adenomatous goiters) 10検体)について、ITCH蛋白質の発現レベルを免疫組織化学染色により評価することにした。
具体的な方法としては、パラフィン包埋した組織切片をホルマリン固定することでおこなった。シランコートされたガラススライド上の切片は、脱パラフィン化とエタノールによる段階的な脱水をおこなった。抗原は、95℃で15分間10mM Citrate Buffer (pH 6.0)中でマイクロウエーブ前処理により取り出した。内因性ペルオキシダーゼは5%過酸化水素を用いて阻害した。非特異的染色は2%標準ブタ血清で阻害した。そのスライドは抗ヒトCTGFヤギポリクローナル抗体(L−20、1:100希釈;Santa Cruz Biotechnology社)を用いて4℃で一晩インキュベートした。スライドはHistofine シンプルステインMAX PO(G)(Nichrei社)を用いて室温で2時間反応させた。抗原―抗体反応は0.2%ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリドと過酸化水素により可視化した。そのスライドはMayer’s ヘマトキシリンを用いて対比染色した。ITCHの免疫染色パターンを図2に、まとめを表4に示す。ATC検体,PMC検体,PTC検体は免疫染色陽性であった。一方、良性腫瘍に分類される甲状腺腫は、染色されないか、もしくは非常の弱い染色量であった。
Figure 0005704545
実施例4:ATC細胞中の発癌能(Oncogenic Activity)
ATC細胞増殖に対するITCH過剰発現の効果を調べるため、特異的siRNAによるITCHの発現抑制後の細胞成長試験をおこなった。
ITCH遺伝子に対応するsiRNAは、GGUGACAAAGAGCCAACAAGAG(配列番号19)とデザインし購入(シグマ社)した。また、コントロールのsiRNAとしてルシフェラーゼ遺伝子に対応する CGUACGCGGAAUACUUCGA(配列番号20)を購入(シグマ社)した。合成したsiRNA(10nmol/L)は、Lipofectamine siRNA MAX試薬(インビトロジェン社)を用いる(製品プロトコールで処理)ことで、それぞれのATC細胞株に遺伝子導入された。遺伝子導入後、その効率を実施例3と同様Western blotting法にて解析した。生存細胞の数はwater−soluble tetrazolium salt(WST)アッセイ(Cell counting kit−8;同仁堂)にて測定した。コントロールとして抗β−アクチン抗体を用いた。予想どおりITCHが増幅/過剰発現している8305CおよびKTA−4細胞について、非特異的なsiRNAのコントロールに比べ、24−72h時間後にITCHに特異的なsiRNAにより内在性ITCHタンパクの抑制されていることをウエスタンブロット法により確認した(図3A、B)。
また増殖に対する影響は24ウェルプレートに細胞株を播き、siRNAをトランスフェクションし、経時的に生細胞数をwater−soluble tetrazolium salt(WST)アッセイ(Cell counting kit−8;同仁堂)にて測定した(図3A、B)。
8305C細胞については、ITCH−特異的siRNAにより成長が明らかに抑制されていた。同様の結果がITCHが過剰発現しているKTA−4細胞についても得られたが、成長抑制の効果は8305C細胞より小さく、ITCHタンパクの発現レベルに依存しているものと考えられる。細胞の増殖に対する抑制効果は、8305Cで77%、KTA−4で69%であった。
実施例5:Fluorescence−activated cell sorting(FACS)法を用いたITCH遺伝子の作用機序(mode of action)の解析
ATC細胞の成長に対するITCHの作用機序を明らかにするため、ITCH特異的siRNAを導入した8305C細胞とコントロール細胞の細胞周期の解析をFACSを用いて行った。
具体的には、細胞はトリプシン処理後、70%エタノール液にオーバーナイトで固定化処理し、引き続きRNaseA(40U/ml)で30分、さらにPBSバッファーのPI液(20g/ml)で30分処理をした。細胞のDNA量はFACSCaliber cytometerおよびCell Quest software(共にBecton−Dickinson社製)にて解析された。実験は3回行った。
解析の結果、ITCHの発現を抑制させると、G0/G1が増加し、SおよびG2/Mが減少しているがわかり、このことから、G1期で細胞周期が停止していることが明らかとなった(図3C)。
実施例6:ITCH遺伝子による成長促進効果の確認
これまでの結果をふまえ、ITCH遺伝子発現を活性化することで、ATC細胞の増殖が促進されるかどうかどうかを検討した。まず、ITCH遺伝子のMycタグを発現する2つのプラスミド(ワイルドタイプ:pCMV−Tag3B−ITCH WT、ユビキチン連結酵素活性を無くしたミュータントタイプ:pCMV−Tag3B−ITCH MUT)を構築した。本プラスミドは、RT−PCRにより増幅したITCHのWTおよびMUTの cDNAをpCMV−3Tag4ベクター(Stratagene社)にMycタグと翻訳フレームがあうように挿入して作製した。対照として、ITCH遺伝子を挿入しない空ベクター(pCMV−Tag3B−mock)を使用した。これらの発現プラスミドを、トランスフェクション試薬であるLipofectamine 2000(Invitrogen)と混合し、TTA−1細胞または8505C細胞へトランスフェクションした。48時間後細胞を回収し、抗Myc抗体(Cell Signaling Technology社)を用いたウエスタンブロットによりITCH蛋白質の発現を確認した(図3D,E)。
また、トランスフェクションの3週間後に、ネオマイシン系薬剤であるG418存在下で増殖した細胞を70%エタノールで固定し、クリスタルバイオレッドで染色することによりカウントした。その結果、空ベクターでトランスフェクションした細胞と比べて、pCMV−Tag3B−ITCH WTおよびMUTでトランスフェクションした細胞は顕著にコロニー数が増加した(図3D、E)。この結果から、明らかにITCH遺伝子の発現を活性化することで、ATC細胞の増殖を促進できること、および、細胞増殖は、ユビキチン連結酵素とは独立な方式で生じていることが明らかとなった。
(結論)
(1) アレイCGH法によるスクリーニングから、1q41、3q28,7q31.2、8p12、8q22.2、8q24.21、11q14.1、11q22.2、17q12、20q11、9p21.3、16q13.2、16q23.1の遺伝子領域が、甲状腺癌の新しい癌マーカーとなることを見出した。
(2) その中で、22q11領域、およびそこに含まれる9の遺伝子(ITCH、AHCY、DYNLRB1、MAP1LC3A、PIGU、TP53IPN2、NCOA6、HMG4L、ASIP1)が、より好ましい癌マーカーとなることを見出した。
(3) 14種の未分化甲状腺癌由来細胞におけるDNAの増幅遺伝子のスクリーニングと発現解析データを組み合わせた確認によりITCH遺伝子を特に好ましい、新たな癌マーカーとして同定した。
(4) ITCH遺伝子の発現は甲状腺癌の細胞増殖を促進していることが明らかとなった。

Claims (13)

  1. 甲状腺由来の組織検体において、ITCH遺伝子の増幅又は発現増大を検出し、増幅又は発現増大が存在する場合に癌化が認められると判断することを含む、甲状腺癌の検出方法。
  2. 検体の悪性度を含めた癌化を検出する、請求項1に記載の甲状腺癌の検出方法。
  3. 甲状腺癌が、未分化甲状腺癌である、請求項1又は2に記載の甲状腺癌の検出方法。
  4. 遺伝子の増幅又は発現増大を、DNAチップ法、サザンブロット法、FISH法、CGH法、または、アレイCGH法、Bsulfite Sequence法、又はCOBRA法を用いて検出する、請求項1から3の何れか1項に記載の甲状腺癌の検出方法。
  5. 増幅又は発現増大の指標が、正常検体と比較して1.32倍以上である、請求項1から4の何れか1項に記載の甲状腺癌の検出方法。
  6. 甲状腺由来の組織検体において、ITCH遺伝子から翻訳される蛋白質の量を検出し、蛋白質の量が増大している場合に癌化が認められると判断することを含む、甲状腺癌の検出方法。
  7. 検体の悪性度を含めた癌化を検出する、請求項6に記載の甲状腺癌の検出方法。
  8. 甲状腺癌が、未分化甲状腺癌である、請求項6又は7に記載の甲状腺癌の検出方法。
  9. 蛋白質の量を免疫組織化学的法により検出する、請求項6から8の何れか1項に記載の甲状腺癌の検出方法。
  10. ITCH遺伝子のsiRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを、インビトロでITCH遺伝子が過剰発現している細胞に導入することを含む、前記細胞の増殖を抑制する方法。
  11. ITCH遺伝子のsiRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、ITCH遺伝子が過剰発現している細胞の増殖抑制剤。
  12. ITCH遺伝子を、インビトロで細胞に導入することを含む、細胞の増殖を活性化する方法。
  13. ITCH遺伝子を含む、細胞増殖活性化剤。
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