JP5703455B2 - キヌクリジノン還元酵素及びそれを用いた光学活性3−キヌクリジノールの製造方法 - Google Patents

キヌクリジノン還元酵素及びそれを用いた光学活性3−キヌクリジノールの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有用且つ新規なキヌクリジノン還元酵素及びその遺伝子に関する。また、本発明は、当該キヌクリジノン還元酵素を製造するために使用されるベクター及び形質転換体に関する。さらに、本発明は当該キヌクリジノン還元酵素を用いた光学活性3−キヌクリジノール又はその塩を製造する方法に関する。
3-キヌクリジノンの還元生成物である光学活性3-キヌクリジノールは、スクアレンシンターゼ阻害作用を有する動脈硬化の治療剤、またはムスカリン受容体拮抗作用を有する気管支拡張剤、および胃腸運動抑制剤などの合成中間体として知られる化合物である。
当該光学活性3-キヌクリジノールの製造方法としては、化学合成法、エステル加水分解法、酵素還元法等が知られている。
化学合成法としては、ロジウム錯体化合物を触媒としてルイス酸付加物を不斉還元することにより、3-キヌクリジノンから光学活性3-キヌクリジノールを製造する方法が報告されている(特許文献1)。しかし、この方法で製造された3-キヌクリジノールの光学純度はあまり高くないため、より有利な製造方法の開発が望まれる。また、光学活性酒石酸等を分割剤とする優先晶析法により光学活性3−キヌクリジノール誘導体に導く方法が報告されている(非特許文献1)。しかし、この方法は、ラセミ体を出発原料とし、光学分割して目的の光学異性体を得る手法であるため、対掌体が残存し、生産コストが高くなる傾向にある。
エステル加水分解法としては、3−キヌクリジノールの低級脂肪酸エステルを微生物由来の酵素により不斉加水分解して光学活性3−キヌクリジノールに分割する方法が知られている(特許文献2〜4及び非特許文献2)。この方法もラセミ体を出発原料とし、光学分割して目的の光学異性体を得る手法であるため、対掌体が残存し、生産コストが高くなる傾向にある。
酵素還元法としては、微生物菌体を利用した酵素不斉還元による方法が知られている(特許文献5〜8)。しかし、特許文献5〜8に記載された菌体を用いた反応は、菌体由来の不純物又は菌体内の他の酵素による副反応等が生じることがあるため、さらに効率よく生成物を単離できる方法が望まれていた。また、ロドトルーラ属に属する微生物より産生された酵素を用いる方法も知られている(特許文献9)。しかし、この酵素は、高価なNADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)を補酵素とするものであり、コストが高くなる。さらに、酵素を用いた不斉還元による光学活性3−キヌクリジノールの他の製造法として、トロピノンを還元する活性を持つ酵素とケトンを作用させる方法が提案されている(特許文献10)。しかし、トロピノンを還元する酵素は植物体由来のものが多く、植物体からの酵素製造は、コスト高となる。微生物を宿主として製造する場合には、酵素を高発現させることが困難な場合も多いなど工業的に酵素を製造することが困難である。
一方、本発明者も、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する微生物より、3−キヌクリジノン又はその塩を還元し、R−3−キヌクリジノール又はその塩を生成する新規な酵素を見出している(特許文献11)。当該酵素は、SDS−PAGEで測定した場合の分子量が約52,000であり、ゲル濾過で測定した場合の分子量は約220,000であり、NADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を補酵素として必要とする。また、当該酵素は、3−キヌクリジノン以外にも、トロピノン、N-メチル-4-ピペリジノン、6-ヒドロキシトロピノン、4-ピペリドン、テトラヒドロチオピラン-4-オン、4-メチルシクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン、2-メチルシクロヘキサノンなどにも作用して対応するアルコールを生成する。さらに、当該酵素は、種々のアルデヒド化合物に対しても高い活性を示す。このように広範な基質に対して高い活性を示す酵素は、原料に混在する3−キヌクリジノン以外の類似化合物を対応するアルコールへと変換させてしまうために、後工程での不純物分離に多大な労力を要し、工業的な生産には不利である。よって基質特異性の高い酵素の取得が強く求められていた。
特開平9−194480号公報 米国特許第5,215,918号公報 特開平10-136995号公報 特開平10-210997号公報 特開平10-243795号公報 特開平11-196890号公報 特開2000-245495号公報 特開2002-153293号公報 特開2007-124922号公報 特開2003-230398号公報 特開2003-334069号公報
Acta. Pharm. Suec., 16,281-3 (1979) Life Sic. 21, 1293-1302 (1977)
本発明の目的は、新規なキヌクリジノン還元酵素及びその遺伝子を提供することである。また、本発明の目的は、当該酵素による不斉還元反応により、医農薬合成中間体として有用な光学活性3−キヌクリジノール又はその塩の工業的に有利な製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する微生物が新規なキヌクリジノン還元酵素を産生し、この酵素が低コストかつ工業的に使用可能であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)下記の理化学的性質を有する、キヌクリジノン還元酵素。
(i)分子量:
ゲルろ過法による測定値:90,000〜95,000Da
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による測定値:32,000〜36,000Da
(ii)至適pH:pH6.0〜8.0
(iii)補酵素としてNADH又はその誘導体を必要とする
(2)3−キヌクリジノンに特異的に作用し、3−キヌクリジノールを生成する触媒活性を有する、上記(1)に記載のキヌクリジノン還元酵素。
(3)以下の(a)、(b)又は(c)のタンパク質を含むキヌクリジノン還元酵素。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加してなるアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列と96%以上同一のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
(4)キヌクリジノン還元酵素が、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する微生物由来のものである上記(1)〜(3)のいずれかに記載のキヌクリジノン還元酵素。
(5)ミクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する微生物が、Microbacterium luteolum JCM 9174、Microbacterium estevoaromaticum JCM 9172及びMicrobacterium arabinogalactanolyticum JCM 9171からなる群から選ばれる少なくとも一種である、上記(4)に記載のキヌクリジノン還元酵素。
(6)以下の(a)、(b)又は(c)のタンパク質をコードするキヌクリジノン還元酵素遺伝子。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加してなるアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列と96%以上同一のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
(7)以下の(d)又は(e)に示すポリヌクレオチドを含むキヌクリジノン還元酵素遺伝子。
(d)配列番号1に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド
(e)配列番号1に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(8)上記(6)又は(7)に記載のキヌクリジノン還元酵素遺伝子を含有する組換えベクター。
(9)上記(8)に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
(10)上記(9)に記載の形質転換体を培養し、得られる培養物からキヌクリジノン還元酵素を採取することを特徴とする、キヌクリジノン還元酵素の製造方法。
(11)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のキヌクリジノン還元酵素、該酵素を産生する微生物若しくは上記(9)に記載の形質転換体、又は前記微生物若しくは形質転換体の処理物を、3−キヌクリジノン又はその塩に作用させる工程を含む、R−3−キヌクリジノール又はその塩の製造方法。
本発明により、キヌクリジノンに特異的に作用し、医農薬合成中間体等として重要なR−3−キヌクリジノールを製造する触媒活性を有するキヌクリジノン還元酵素が得られ、また、当該酵素を利用してR−3−キヌクリジノールの効率的な生産が可能となる。
本発明のキヌクリジノン還元酵素(QNR)の至適pHの測定結果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施をすることができる。
(1)本発明に係るキヌクリジノン還元酵素
本発明の酵素はキヌクリジノン還元酵素であり、NADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を補酵素として、3−キヌクリジノンあるいはその塩を還元し、R−3−キヌクリジノールを生成する触媒作用を有する。本発明の酵素の理化学的性質及び特徴を以下に示す。
(イ)分子量
本発明の酵素の分子量は、SDS-PAGEで測定した場合、32kDa〜36kDa程度、好ましくは約34.0 kDaである。また、ゲル濾過(高速液体クロマトグラフィー)で測定した場合の分子量は、約90kDa〜95kDa、好ましくは、約93.7 kDaである。
(ロ)至適pH
本発明のキヌクリジノン還元酵素は、至適pHが6.0から8.5程度、特に、3−キヌクリジノンを基質とした場合の至適pHは6.0から8.5程度である。より好ましくは至適pHが約7.0〜8.0程度である。
(ハ)基質特異性
本発明のキヌクリジノン還元酵素は、3−キヌクリジノンに特異的に作用して、3−キヌクリジノンのカルボニル基を還元し、3−キヌクリジノールを生成する触媒活性を有する。「3−キヌクリジノンに特異的に作用」するとは、3−キヌクリジノンには作用するが、ほかの化合物、例えば3−キヌクリジノンに類似した化合物には実質的には作用しないことをいう。
ここで、「3−キヌクリジノンに類似した化合物」とは、例えば、トロピノン、N-メチル-4-ピペリジノン、6-ヒドロキシトロピノン、4-ピペリドン、テトラヒドロチオピラン-4-オン、4-メチルシクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン、2-メチルシクロヘキサノンなどを例示することができる。これらの化合物は、トロピノン還元酵素の基質として作用する化合物として知られている(Phytochemistry 67, 327-337 (2006)参照)。
(ニ)補酵素
本発明において、補酵素とは、酵素のタンパク質部分と可逆的に結合して酵素作用の発現に寄与する補欠分子族を意味し、本発明の酵素が特異的にR−3−キヌクリジノールを生成する触媒作用に寄与するものをいう。
補酵素としては、本発明に係る酵素が特異的にR−3−キヌクリジノールを生成することができれば特に限定されないが、例えば、NADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)又はその誘導体が好ましい。NADH以外の補酵素は、R−3−キヌクリジノールの生成能を発揮することができる限り特に限定されるものではないが、NADH依存性であることが望ましい。NADHの誘導体は、R−3−キヌクリジノールを特異的に生成することができれば特に限定されず、例えばNADPHなどが挙げられる。補酵素は、本発明において、R−3−キヌクリジノールを生成させる酵素反応を行う際に、当業者が適宜選択することができる。
(ホ)アミノ酸配列
本発明のキヌクリジノン還元酵素は、以下の(a)、(b)又は(c)のタンパク質を含むものである。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加してなるアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列と96%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
上記のとおり、本発明のキヌクリジノン還元酵素には、配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が、欠失、置換若しくは付加され、又はそれらの組合せにより変異されたアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質も含まれる。
配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、若しくは付加され、又はそれらの組合せにより変異されたアミノ酸配列としては、例えば、
(i) 配列番号2で示されるアミノ酸配列中の1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
(ii) 配列番号2で示されるアミノ酸配列中の1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
(iii) 配列番号2で示されるアミノ酸配列に1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、
(iv) 上記(i)〜(iii) の組合せにより変異されたアミノ酸配列
などが挙げられる。
ここで、「キヌクリジノン還元酵素活性」とは、3−キヌクリジノンに特異的に作用して、3−キヌクリジノンのカルボニル基を還元し、3−キヌクリジノールを生成する触媒活性を意味する。当該酵素活性は、公知方法、例えば第4124453号特許公報に記載されたガスクロマトグラフィーによる活性測定法、分光光学法を用いた活性測定法により測定することができる。また、「キヌクリジノン還元酵素活性を有する」とは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質のキヌクリジノン還元酵素活性を100としたときと比較して、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、好ましくは90%以上の活性を有することを意味する。
また、本発明のキヌクリジノン還元酵素には、配列番号2に示されるアミノ酸配列と約96%以上、好ましくは約97%以上、より好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつキヌクリジノン還元酵素活性を有するもの(配列番号2に示されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列)も含まれる。相同性は、インターネットを利用したホモロジー検索サイト、例えば日本DNAデータバンク(DDBJ)において、FASTA、BLAST、PSI-BLAST等の相同性検索を利用できる。また、National Center for Biotechnology Information (NCBI) において、BLASTを用いた検索を行うこともできる。
ここで、配列番号2で示されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸に欠失、置換又は付加などの変異の生じたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Press(1989))、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons(1987-1997))、Kunkel(1985)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 488-92、Kramer and Fritz(1987)Method. Enzymol. 154: 350-67、Kunkel(1988)Method. Enzymol. 85: 2763-6等に記載の部位特異的変異誘発法等の方法に従って調製することができる。
上記の変異を有するタンパク質を調製するためにポリヌクレオチドに変異を導入するには、Kunkel法やGapped duplex法等の部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuikChangeTMSite-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。
さらに、本発明のキヌクリジノン還元酵素には、他のペプチド配列により付加された融合タンパク質が含まれる。上記配列番号2に示すアミノ酸配列またはその変異体のアミノ酸配列に付加するペプチド配列としては、インフルエンザ凝集素(HA)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、多重ヒスチジンタグ(6×His、10×His等)、FLAG等が挙げられ、これらのペプチド配列は、タンパク質の識別や採取を容易にするものであり、配列等は適宜選択することができる。
また、本発明のキヌクリジノン還元酵素には、配列番号1で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質であって、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質も含まれる。
このようなポリヌクレオチドは、上記部位特異的突然変異誘発法を利用して得ることができ、あるいは、配列番号1で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド又はその断片をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法によりcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから得ることもできる。ライブラリーの作製方法については、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Press(1989))等を参照することができる。また、市販のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーを用いてもよい。
「ストリンジェントな条件」は、BergerとKimmel (Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol.152, Academic Press, San Diego, CA, USA, 1987)に教示されるように、複合体又はプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる
ハイブリダイゼーションは、公知の方法によって行うことができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons(1987-1997))等を参照することができる。
(2)酵素の取得
本発明におけるキヌクリジノン還元酵素の供給源は、3−キヌクリジノン又はその塩に特異的に作用してR−3−キヌクリジノール又はその塩を生成する酵素が得られる限り、特に限定されるものではない。
当該供給源としては、本発明に係る酵素を産生することができる微生物が挙げられる。このような微生物としては、Microbacterium属に属する微生物が好ましい。Microbacterium属に属する微生物としては、好ましいものとしてMicrobacterium estevoaromaticum(JCM 9172)、Microbacterium arabinogalactanolyticum(JCM9171)、Microbacterium luteolum (JCM 9174)が挙げられる。特に好ましくはMicrobacterium luteolum JCM 9174である。なお、JCM番号が付された菌株は、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンターから容易に入手することができる。
本発明の酵素の単離精製方法は、蛋白質の溶解度による分画(有機溶媒による沈澱や硫安などによる塩析など)、陽イオン交換、陰イオン交換、ゲルろ過、疎水性クロマトグラフィーなどのほか、キレート、色素又は抗体などを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜組み合わせることにより精製することができる。たとえば、菌体を破砕後、硫安沈澱、Blue-Sepharose カラム、DEAT-Toyopearl 、Hiload Superdex 200 pg FPLC カラム、HAP-C-BEADA hydroxyapatite FPLC カラム、Pros HQ/M FPLC カラム、BioAssistQ FPLCカラムクロマトグラフィー等を行うことにより、ほぼ単一バンド(ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE))にまで精製することができる。
また、このような微生物以外にも、遺伝子工学的手法により当該酵素を産生することが可能となった形質転換微生物(後述)を使用することができる。
(3)キヌクリジノン還元酵素遺伝子
本発明はまた、上記キヌクリジノン還元酵素をコードする遺伝子を提供する。なお、ここでいう遺伝子には、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA及びRNAが含まれる。
当該遺伝子は、前述するアルコール脱水素酵素(タンパク質)をコードする塩基配列を有するものであればよい。具体的には、配列番号1に示す塩基配列からなるDNA、並びにそのホモログを挙げることができる。ここでホモログとしては、配列番号1で示される塩基配列からなるDNAによってコードされるタンパク質(キヌクリジノン還元酵素)と機能的に同等なタンパク質をコードする遺伝子を挙げることができる。
「機能的に同等」とは、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(キヌクリジノン還元酵素)と同様に、好ましくはpHが約6.0〜8.5の範囲、より好ましくはpHが約7.0〜8.0の範囲でキヌクリジノン還元酵素活性を有することを意味する。
本発明において、ホモログとしては、上記(1)において説明した酵素の性質の(イ)〜(ホ)の少なくとも1つの性質又は特徴を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを挙げることができる。かかるホモログとして、具体的には、配列番号1で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド(例えばDNA)とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を有する遺伝子を挙げることができる。
「ストリンジェントな条件」は前記した条件と同様であり、BergerとKimmel (Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol.152, Academic Press, San Diego, CA, USA, 1987)に教示されるように、複合体又はプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる
本明細書において、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドには、例えば、配列番号1で示される塩基配列と少なくとも90%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性(相同性)を有する塩基配列を含むポリヌクレオチドが含まれる。同一性を示す値は、BLASTなどの公知のプログラムを利用することにより算出することができる。
また、配列番号1で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドは、例えば、配列番号1で示される塩基配列において1個又は数個の核酸に欠失、置換又は付加などの変異の生じた塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
ここで、配列番号1で示される塩基配列において1個又は数個の核酸に欠失、置換又は付加などの変異の生じた塩基配列としては、例えば、
(a) 配列番号1で示される塩基配列中の1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の核酸が欠失した塩基配列、
(b) 配列番号1で示される塩基配列中の1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の核酸が他の核酸で置換された塩基配列、
(c) 配列番号1で示される塩基配列に1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の核酸が付加した塩基配列、
(d)上記(a)〜(c)の組合せにより変異された塩基配列
などが挙げられる。
本酵素遺伝子の単離方法は、精製した酵素のN末端アミノ酸配列や内部ペプチドのアミノ酸配列や特定の機能を持つ酵素は、比較的類似したアミノ酸配列を有することなどを利用して縮重プライマーを設計し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、特定の遺伝子部分配列を増幅することにより取得することができる。
例えば、キヌクリジノン還元酵素の1種であるトロピノン還元酵素遺伝子類で保存されているアミノ酸配列などを比較してプライマー又はプローブを設計し、PCR法により、あるいはコロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法によりcDNAライブラリー、ゲノムライブラリーなどの核酸から得ることができる。ライブラリーの作製方法は、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Press(1989))を参照することができる。この際、プライマーには、適当な制限酵素配列やタグ配列等を付加させてもよい。
ここで、公知の酵素の保存領域を参照して作製されたプライマー等を利用して遺伝子を取得する場合、一般には、比較した酵素と性質の似た酵素遺伝子が得られるはずである。しかしながら、本発明の酵素は、従来知られていた酵素とは全く性質の異なる酵素であり、本発明によって意外にもこのような酵素をコードする遺伝子が得られたことは、当業者が予測し得るものではないといえる。
さらに、本発明のキヌクリジノン還元酵素は、本発明で開示するアミノ酸配列に基づいてPCR法等の化学的または遺伝子工学的手法によって製造することができる。遺伝子工学的手法による本発明の酵素の製造方法の詳細については、後述する。また、アミノ酸配列における改変は、当業界において既に公知な方法、例えば部位特異的変異導入法[Current Protocols I molecular Biology, edit. Ausubel et al., John Wily & Sons, Section 8. 1-8.5 (1987)]等を用いて、改変しようとするアミノ酸配列に、適宜、置換、欠失、挿入、付加、逆位などの変異を導入することによって行うことができる。
ストリンジェントな条件としては、前述のものを同様に挙げることができる。
本発明において、塩基配列の確認は、慣用の方法により配列決定することにより行うことができ、例えば、適当なDNAシークエンサーを利用して配列が解析される。
一旦本発明の遺伝子の塩基配列が決定されると、その後は、当該塩基配列情報に基づき、PCR法により、あるいは他の化学的な合成法によって本発明の遺伝子を調製することができる。
(4)組換えベクター
本発明は、上記キヌクリジノン還元酵素をコードする遺伝子を含有する組換えベクターを提供する。当該組換えベクターは、上記キヌクリジノン還元酵素をコードする遺伝子を、所望の宿主細胞内で発現可能な状態で含んでおり、当該宿主細胞を形質転換するために使用される。
従って、本発明の組換えベクターは、宿主細胞の形質転換が達成できる形態を有するものであればよく、例えばプラスミド、バクテリオファージ、レトロトランスポゾンの形態を有するものであってもよい。
本発明の組換えベクター(発現ベクター)は、宿主として大腸菌(E. coli)や枯草菌(B. subtilis)などの細菌を使用する場合、一般に、少なくともプロモーター−オペレーター領域(プロモーター、オペレーター及びリボゾーム結合領域(SD領域)を含む)、開始コドン、本発明のキヌクリジノン還元酵素遺伝子、終止コドン、ターミネーター領域、及び複製可能単位を有する。
また、酵母等の真菌細胞または動物細胞を宿主細胞として用いる場合は、一般に、少なくともプロモーター、開始コドン、シグナルペプチド及び本発明のキヌクリジノン還元酵素遺伝子、及び終止コドンを有する。
また、本発明の組換えベクター(発現ベクター)は、必要に応じて、エンハンサーなどのシスエレメント、本発明のキヌクリジノン還元酵素遺伝子の5'側または3'側の非翻訳領域、スプライシング接合部、ポリアデニレーション部位、複製可能単位、相同領域、選択マーカーを含むことができる。これらのエレメントは、本発明のキヌクリジノン還元酵素遺伝子の発現に用いられる宿主に対応したものであれば、特に制限されず、当分野の技術常識に基づいて選択することができる。
なお、選択マーカーとしては、特に制限されず、例えば遺伝子発現に使用される宿主が細菌の場合は、薬剤抵抗性遺伝子(例えば、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、シクロヘキシミド耐性遺伝子、テトラマイシン耐性遺伝子など)、宿主が細菌以外の例えば酵母などの場合は、栄養要求性遺伝子(例えば、HIS4、URA3、LEU2、ARG4など)などを始めとする公知の各種選択マーカーを利用することができる。
本発明の組換えベクター(発現ベクター)は、簡便には、上記本発明のキヌクリジノン還元酵素遺伝子を、公知の発現用ベクターに、目的のキヌクリジノン還元酵素が発現可能な状態で導入することによって、具体的にはプロモーターの下流に導入することによって作製することができる。かかる導入は、DNA組換えの一般的な方法、例えばMolecular Cloning. (1989). (Cold Spring Harbor Lab.)に記載される方法に従って行うことができる。
発現用ベクターに用いるプラスミドベクターとして、例えばpRS413、pRS415、pRS416、YCp50、pAUR112またはpAUR123などのYCp型大腸菌(E. coli)-酵母シャトルベクター;pRS403、pRS404、pRS405、pRS406、pAUR101またはpAUR135などのYIp型大腸菌(E.coli)-酵母シャトルベクター;大腸菌(E. coli)由来のプラスミド(例えばpBR322、pBR325、pUC18、pUC19、pUC119、pTV118N、pTV119N、pBluescript、pHSG298、pHSG396またはpTrc99AなどのColE系プラスミド;pACYC177またはpACYC184などのp1A系プラスミド;pMW118、pMW119、pMW218またはpMW219などのpSC101系プラスミドなど);枯草菌(B.subtilis)由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5など);pHSP64などの大腸菌(E. coli)-枯草菌(B. subtilis)シャトルベクターを挙げることができる。
またファージベクターとして、λファージ(Charon 4A, Charon21A, EMBL4, λgt100, gt11, zap)、ψX174、M13mp18、M13mp19などを挙げることができる。レトロトランスポゾンとしてはTy因子などを挙げることができる。また、融合タンパク質として発現する発現ベクター、例えばpGEXシリーズ(ファルマシア製)、pMALシリーズ(Biolabs社製)を使用することもできる。
(5)形質転換体
以下、より詳細に形質転換(導入)体(以下、単に「形質転換体」と称す)の作製方法について説明する。
形質転換体を作製するための発現ベクターは、宿主細胞中にてプラスミドが増殖するために必要なDNA配列、プロモーター、リボソーム結合配列、転写終結配列、更に好ましくは形質転換体の選択マーカーとなる遺伝子を含む。
プロモーター配列としては、大腸菌由来のトリプトファンオペロンのtrpプロモーター・ラクトースオペロンのlacプロモーター・ラムダファージ由来のPLプロモーターおよびPRプロモーターなどが挙げられる。また、枯草菌由来のグルコン酸合成酵素プロモーター(gnt)、アルカリプロテアーゼプロモーター(apr)、中性プロテアーゼプロモーター(npr)、α−アミラーゼプロモーター(amy)等を挙げることができる。さらに、tacプロモーター、trcプロモーター等の独自に改変及び設計された配列も利用できる。
リボソーム結合配列としては、SD配列やKozak配列が知られており、これらの配列を変異遺伝子の上流に挿入することができる。原核生物を宿主に用いるときにはSD配列を、真核細胞を宿主に用いるときにはKozak配列をPCR法等により付加してもよい。SD配列としては、大腸菌由来、ロドコッカス属細菌または枯草菌由来の配列等を挙げることができるが、所望の宿主内で機能する配列であれば特に限定されるものではない。例えば、16SリボゾームRNAの3’末端領域に相補的な配列が4塩基以上連続したコンセンサス配列をDNA合成により作製してこれを利用してもよい。
転写終結配列は発現ベクターの構築には必ずしも必要ではないが、ρ因子非依存性のもの、例えばリポプロテインターミネーター、trpオペロンターミネーター等が利用できる。
選択マ−カ−としては、例えばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子等を挙げることができる。
宿主としては、上記の酵素遺伝子が発現するものであれば良い。例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、大腸菌、枯草菌、酵母、カビ、植物等を挙げることができる。好ましくは、大腸菌及びロドコッカス属細菌である。
大腸菌宿主としては、例えば大腸菌K12株やB株、あるいはそれら野生株由来の派生株であるJM109株、XL1-Blue株、C600株、W3110株等を挙げることができる。その他、これら菌株の変異体、組換え体および遺伝子工学的手法による誘導体等も用いられ得る。
ロドコッカス属細菌としては、例えばロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)ATCC 12674株やロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J-1株(FERM BP-1478)等を挙げることができる。
大腸菌を宿主に用いる場合には、特に有用なベクターとしては、pTrc99A、pKK233−2、pFY529、pET−12、pET−26b等が例示される。これらベクターに本発明のキヌクリジノン還元酵素遺伝子又はその断片を組み込むには、これらを含むDNAを適当な制限酵素で切断し、必要であれば適当なリンカ−を付加した後、適当な制限酵素で切断したベクターと結合させることにより行うことができる。
このようにして得られた発現ベクターを宿主細胞に導入すれば、本発明のキヌクリジノン還元酵素を高発現する形質転換体が得られる。そして、当該形質転換体を培養することにより、これらの酵素を発現・蓄積させることができる。
発現ベクターの宿主への導入方法としては、DNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレ−ション法等を挙げることができる。酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)等を用いることができる。酵母への発現プラスミドの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等を挙げることができる。
動物細胞を宿主とする場合は、サル細胞COS-7、Vero、CHO細胞、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞等が用いられる。動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
昆虫細胞を宿主とする場合は、Sf9細胞、Sf21細胞等が用いられる。昆虫細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法等が用いられる。
植物細胞を宿主とする場合は、タバコBY-2細胞等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。植物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばアグロバクテリウム法、パーティクルガン法、PEG法、エレクトロポレーション法等が用いられる。
次に上記のようにして作製した形質転換体を培養する方法を説明する。培養に際し使用する培地には特に制限は無く、宿主菌が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。また培養条件に関しても、形質転換体が生育、増殖可能で且つ酵素産生が良好に行える条件を選択し、培養すればよい。
使用する培地として、炭素源としては、グルコース、ガラクトース、フラクトース、スクロース、ラフィノース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール、グリセリン等のアルコール類を挙げることができる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物を挙げることができる。その他、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー、酵母エキス、各種アミノ酸等を用いてもよい。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を挙げることができる。その他、ビタミン等が必要に応じて適宜添加してもよい。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現プラスミドで形質転換した微生物を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)で誘導可能なプロモーターを有する発現プラスミドで形質転換した微生物を培養するときには IPTG等を培地に添加することができる。また、インドール酢酸(IAA)で誘導可能なtrpプロモーターを用いた発現プラスミドで形質転換した微生物を培養するときにはIAA等を培地に添加することができる。
大腸菌の培養に際し、通常の固体培養法で培養してもよいが、可能な限り液体培養法を採用して培養することが好ましい。培養に用いる培地としては、例えば、酵母エキス、トリプトン、ポリペプトン、コーンスティープリカー、大豆若しくは小麦ふすまの浸出液等の1種以上の窒素源に、塩化ナトリウム、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄若しくは硫酸マンガン等の無機塩類の1種以上を添加し、更に必要により糖質原料、ビタミン等を適宜添加したものを用いることができる。なお、培地の初発pHは7〜9に調整することが適当である。また、培養は、5〜40℃、好ましくは10〜37℃で5〜100時間行う。通気攪拌深部培養、振盪培養、静置培養、流加培養等により実施することが好ましい。
(6)キヌクリジノン還元酵素の製造
このようにして得られた形質転換体は、宿主に応じて適切な培地中で培養されることによって、本発明の新規キヌクリジノン還元酵素を産生することができる。本発明は、かかる形質転換体を利用した新規キヌクリジノン還元酵素の製造方法を提供するものである。当該方法は、具体的には、上記の形質転換体を培地で培養し、得られた培養物から、キヌクリジノン還元酵素を採取することによって実施することができる。
本発明において、「培養物」とは、培養上清、培養細胞、培養菌体、又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。本発明の形質転換体を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。
培地には、上記形質転換体の生育に必須な炭素源、窒素源、無機塩、ビタミン、薬剤などが含有される。炭素源としてはマンナン成分、アラビノース、セロビオース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グリセロール、イノシトール、ラクトース、マンニトール、マンノース、ラフィノース、ラムノース、スクロース、トレハロース、キシロースが;窒素源としては硫酸アンモニウムや塩化アンモニウムなどの無機窒素、並びにカゼイン分解物、酵母抽出物、ポリペプトン、バクトトリプトン及びビーフ抽出物などの有機窒素源;無機塩としては例えば二リン酸ナトリウムまたは二リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム等;ビタミンとしてはビタミンB1を始めとする各種のビタミン;薬剤としてはアンピシリン、ネオマイシン、シクロヘキシミド、テトラマイシンなどの各種抗生物質を挙げることができる。なお、これらは一例であり、これらに制限はされない。
培地の一例としては、宿主が大腸菌などのグラム陰性菌、または枯草菌などのグラム陽性菌といった細菌の場合は、LB培地(日水製薬)、M9培地(J. Exp. Mol. Genet., Cold Spring Harbor Laboratory, New York, p.431, 1972)などが;また宿主が酵母の場合、YPD培地(1% Bacto yeast extract, 2% Bacto peptone, 2% glycerol)、YPG培地(1% Bacto yeast extract, 2% Bacto peptone, 2% glycerol)、YP培地(1% Bacto yeast extract, 2% Bacto peptone、YPD培地(1% Bacto yeast extract, 2% Bacto peptone, 2% glucose)、0.7% Yeast Nitrogen Base (Difco社)、YP培地〔1% Bacto yeast extract (Difco社) , 2% Polypeptone S (日本製薬)〕、などが例示される。
培養は、通常10〜40℃の温度範囲で数〜80時間程度実施され、必要に応じて通気、攪拌を加えることもできる。培養温度は、宿主に応じて設定できるため、特に制限されないが、好ましくは18〜42℃、より好ましくは25〜38℃の範囲で実施することができる。
本発明のキヌクリジノン還元酵素の製造方法は、さらに、このようにして得られる培養物から目的のキヌクリジノン還元酵素を採取することによって実施される。目的タンパク質の採取は、培養後、培養上清中または形質転換体(菌体)中に蓄積された、目的のタンパク質を公知の方法で抽出し、また必要に応じて精製することによって行うことができる。
本発明の酵素の単離精製方法は、蛋白質の溶解度による分画(有機溶媒による沈澱や硫安などによる塩析など)や陽イオン交換、陰イオン交換、ゲルろ過、疎水性クロマトグラフィーや、キレート、色素、抗体などを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適当に組み合わせることにより精製することができる。
たとえば、菌体を破砕後、硫安沈澱、Blue-Sepharose カラム、DEAT-Toyopearl、Hiload Superdex 200pg FPLC カラム、HAP-C-BEADA hydroxyapatiteFPLC カラム、Pros HQ/M FPLC カラム、BioAssistQ FPLCカラムクロマトグラフィー等を行うことによりポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)的にほぼ単一バンドにまで精製することができる。
また、本発明においては、上記キヌクリジノン還元酵素遺伝子又は上記ベクターから無細胞タンパク質合成系を採用して、キヌクリジノン還元酵素を産生することが可能である。
無細胞タンパク質合成系とは、細胞抽出液を用いて試験管などの人工容器内でタンパク質を合成する系である。なお、本発明において使用される無細胞タンパク質合成系には、DNAを鋳型としてRNAを合成する無細胞転写系も含まれる。
上記細胞抽出液は、真核細胞由来又は原核細胞由来の抽出液、例えば、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球、マウスL-細胞、HeLa細胞、CHO細胞、出芽酵母、大腸菌などの抽出液を使用することができる。なお、これらの細胞抽出液は濃縮されたものであっても濃縮されないものであってもよい。細胞抽出液は、例えば限外濾過、透析、ポリエチレングリコール(PEG)沈殿等によって得ることができる。
さらに本発明において、無細胞タンパク質合成は、市販のキットを用いて行うこともできる。そのようなキットとしては、例えば試薬キットPROTEIOSTM(東洋紡)、TNTTM System(プロメガ)、合成装置のPG-MateTM(東洋紡)、RTS(ロシュ・ダイアグノスティクス)などが挙げられる。
上記のように無細胞タンパク質合成によって得られるキヌクリジノン還元酵素は、前述のように適宜クロマトグラフィー等を選択して、精製することができる。
(7)光学活性3−キヌクリジノールの生成
本発明において、3−キヌクリジノンの塩又は3−キヌクリジノールの塩とは、当該化合物中に存在する窒素原子を、有機酸又は鉱酸等により塩を形成させたものを意味する。
鉱酸塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等が例示できる。有機酸塩としては酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、フマル酸、マロン酸、シュウ酸等の脂肪族有機酸塩、安息香酸等の芳香族有機酸塩等が例示される。
本発明において、酵素とは、精製酵素に限定されず、当該酵素を含む微生物、粗精製物、固定化物等も含まれる。また、本発明において、形質転換微生物とは本発明の酵素をコードする遺伝子が導入され、該遺伝子が発現した組換え微生物をいう。その宿主としては、例えば、エシェリキア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、ピキア(Pichia)属、カンジダ(Candida)属、アスペルギルス(Aspergillus)属などが挙げられる。
さらに、形質転換微生物の「処理物」とは、アセトン乾燥微生物菌体、凍結乾燥微生物菌体、機械的並びに酵素的方法により細胞壁を破砕した無細胞抽出物、界面活性剤、有機溶媒などにより処理したものあるいはそれらの固定化物などをいう。
本発明において、不斉還元反応によるR−3−キヌクリジノール又はその塩の生産は、以下の方法で行うことができる。グルコース、ギ酸、イソプロパノール、エタノール、メタノール等のエネルギー源の存在下、水または緩衝液等の反応溶媒中で3−キヌクリジノン又はその塩に酵素、形質転換微生物、または該菌体処理物を接触させることにより行うことができる。このとき、必要に応じて補酵素(NADH、NADPH、NAD+、NADP+)を添加すればよい。本発明においてはNADHを添加することが好ましい。
当該反応は一バッチで行っても良いし、反応基質(3−キヌクリジノン又はその塩)、補酵素、エネルギー源等を適宜加え、反応を継続させることも可能である。継続して反応を行う場合には、反応液のpHを制御しながら反応を行えばよい。
また、還元反応に付随してNADHから生成するNAD+の、NADHへの再生は、微生物の持つNAD+還元能(解糖系など)を用いて行うことができる場合がある。これらNAD+還元能は、反応系にグルコースやエタノールを添加することにより増強することが可能である。また、NAD+からNADHを生成する能力を有する微生物やその処理物、酵素を反応系に添加することによっても行うことができる。
反応液中の基質濃度は特に限定されるものではないが、例えば、0.01〜50重量%が好ましく、生産性等の面からも0.05〜30重量%の濃度で実施するのが好ましい。反応液中の酵素等の触媒の濃度は、その形状及びその活性により適宜決定され、特に限定されない。反応温度は0〜60℃が好ましく、5〜50℃がより好ましい。
反応液のpHは用いる酵素の至適pH等を考慮して、特に限定されず、総合的に決定される。pH5〜10程度の範囲でも反応を行うことが可能であるが、本酵素の至適pH6.0から8.5の範囲で実施することがより好ましい。また、反応が進行するに従いpHが変化してくるが、この場合は適当な中和剤を添加して最適pHに調整することができる。
反応溶媒は、通常はイオン交換水、緩衝液等の水性媒体を使用するが、3−キヌクリジノン又はその塩の溶解を促進させるために、有機溶媒又は界面活性剤を含んだ系でも反応を行うことができる。
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t-ブチルアルコール、t-アミルアルコール等のアルコール系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、その他アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド等の一種又は複数を適宜選択して使用することができる。
また、これらの有機溶媒又は界面活性剤を水への溶解度以上に加えて2層系で反応を行うことも可能である。有機溶媒を反応系に共存させることで、選択率、変換率、収率などを向上させることも可能である。
反応時間は、目的とする化合物の量や酵素活性の続く時間等を考慮して、当業者であれば適宜選択することができるが、通常、1時間〜1週間程度、好ましくは1〜72時間程度が好ましい。
反応終了混合液からの目的物の単離は、除菌後、濃縮、抽出、カラム分離、結晶化等通常の公知の方法によって行うことができる。例えば、pHをアルカリ性に調整後、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類; ブタノール、イソブタノール、t-アミルアルコール等のアルコール系溶媒等一般的な溶媒により抽出分離することができる。
目的物が光学活性3−キヌクリジノールであることの確認は、ガスクロマトグラフィーあるいは、高速液体クロマトグラフィーにより、標品と溶出時間を比較することにより行われる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。
Microbacterium luteolumのキヌクリジノン還元酵素遺伝子の取得
M. luteolumゲノムDNAを鋳型として、キヌクリジノン還元酵素のアミノ酸シークエンスの結果から作製した縮重プライマーを用いてPCRを行った。
縮重プライマー(FW1及びRV1)の塩基配列、PCR反応液組成及びPCR反応条件を以下に示す。
FW1:5'-ATGMGNYTNGARAAYAA-3’(配列番号3)
RV1:5'-AANGCRTTNGTRTCYTG-3’(配列番号4)

PCR反応液組成:
ゲノムDNA 1μl
プライマー FW1(10μM) 5μl
プライマー RV1(10μM) 5μl
10×EX Taq buffer 10μl
2.5mM dNTP mix 8μl
TaKaRa Ex TaqTM(DNAポリメラーゼ) 0.5μl
蒸留水 70.5μl

PCR反応は、94℃で2分間の加熱処理を行った後、94℃で2秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、60℃で1分間の伸長反応のサイクルを30サイクル行い、その後72℃で10分間処理した。精製はWizard(R) PCR Preps DNA Purification System(プロメガ社)を用いて行った。
その結果、約500bpの増幅断片を得た。
得られた増幅断片をTAクローニングし、ABI PRISM 310 Genetic Analyzerを用いて当該増幅断片の塩基配列の決定を行った。
他方、M. luteolumゲノムを制限酵素Sau3AIで部分分解し、pUC19のBamHIサイトにクローニングしたゲノムライブラリを構築した。ライゲーション後、大腸菌に形質転換しLAに塗布培養した。コロニーができたプレートにTE緩衝液を1ml加え、コロニーをかき集めた。かき集めた大腸菌よりプラスミド抽出を行い、遺伝子ライブラリーを得た。
このライブラリーを鋳型としてinverse PCRを行い、キヌクリジノン還元酵素(QNR)のC末端側をコードする塩基配列及びその下流の塩基配列を得た。
inverse PCRに用いたプライマー(FW2及びRV2)の塩基配列、PCR反応液組成及びPCR反応条件を以下に示す。
FW2:5'-GGTCATGTTCACCAC-3’(配列番号5)
RV2:5'-CACCGGGATGCTGC-3’(配列番号6)

PCR反応液組成:
遺伝子ライブラリーDNA 1μl
プライマー FW2(10μM) 2μl
プライマー RV2(10μM) 2μl
2X SeeAmpTM ACPTM Master Mix II 10μl
蒸留水 5μl

PCR反応は、94℃で5分間、42℃で1分間、72℃で2分間の加熱処理を行った後、94℃で30秒間の変性、57℃で30秒間のアニーリング、72℃で100秒間の伸長反応のサイクルを30サイクル行い、その後72℃で1分間処理した。精製はWizard(R) PCR Preps DNA Purification System(プロメガ社)を用いて行った。
さらに、M. luteolumゲノムを鋳型として、inverse PCRの結果から作製したプライマーでキヌクリジノン還元酵素遺伝子を含む領域をDNAポリメラーゼKOD FXを用いてPCRで増幅した。PCRに用いたプライマー(FW3及びRV3)の塩基配列、PCR反応液組成及びPCR反応条件を以下に示す。
FW3:5'- TTTCATATGCGGCTGGAGAATAAGAAGGC -3’(配列番号7)
RV3:5'- TTTAAGCTTGACACCGGCGGACGCGCGAC -3’(配列番号8)

PCR反応液組成:
ゲノムDNA 0.5μl
プライマー FW3(4μM) 0.75μl
プライマー RV3(4μM) 0.75μl
2 × PCR buffer for KOD FX buffer 5μl
2mM dNTP mix 2μl
KOD FX(1.0 U/ml)(DNAポリメラーゼ) 0.2μl
蒸留水 0.8μl

PCR反応は、94℃で2分間の加熱処理を行った後、94℃で15秒間の変性、60℃で30秒間のアニーリング、68℃で2分間の伸長反応のサイクルを35サイクル行い、その後68℃で5分間処理した。精製はWizard(R) PCR Preps DNA Purification System(プロメガ社)を用いて行った。
PCRにより得られた増幅断片の3’末端側にTaqでAを付加した後、pGEM-TベクターにTAクローニングを行った。塩基配列を確認した後、pET28-a(+)のNdeI及びHindIIIサイトにサブクローニングし、キヌクリジノン還元酵素遺伝子発現ベクターpET28a-qnrを構築した。
pET28a-qnrはN末端側にHisタグを持つキヌクリジノン還元酵素遺伝子融合タンパクをコードする。
得られた増幅断片の塩基配列を決定し、さらに、DNA Walking SpeedUp Premix Kit (Seegene社)を用いて、ゲノムDNA上の取得配列両側の未知配列を決定し、Microbacterium luteolumのキヌクリジノン還元酵素遺伝子の全配列を決定した(配列番号1)。
3-キヌクリジノン還元活性の測定
pET28a-qnrを宿主であるE. coli BL21(DE3)株に形質転換し、得られた遺伝子組換え体 E. coli BL21(DE3)株/ pET28a-qnrを、4mlのMagic MediaTM E. coli Expression Medium(invitrogen)にカナマイシン(終濃度50μg/ml)を添加した培地に加え、37℃で14時間振とう培養した。培養後、集菌して緩衝液に再懸濁し、超音波破砕した。破砕液を遠心し、その上清を粗酵素とした。さらにNi-NTA resin(Qiagen)を用いて部分精製酵素を調製し、3−キヌクリジノン変換反応について調べた。
10 mM 3−キヌクリジノン、0.3μM NADH及び0.2Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を含む1 mlの反応液を、粗酵素を添加する前に25℃で約5分間予備加温した。加温後、反応液に粗酵素液を加えて速やかに混和後、水を対照に25℃に制御された分光光度計を用いて波長340nmの吸光度変化を2分〜3分間記録し、その初期直線部分より1分間あたりの吸光度変化を求めた。波長340nmにおけるNADHの分子吸光係数を、6.22 mM-1cm-1で1分間に1μmolのNADHが減少する酵素量を1単位(U)とし、活性値を求めた。
その結果、培養液1mlあたりに換算して4.2Uの酵素活性を示した。
分子量の測定
実施例2記載の方法で作製した部分精製酵素画分中のキヌクリジノン還元酵素の分子量およびポリアクリルアミドゲル電気泳動の分子量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、以下の条件で検討した。
カラムにTSK-GEL G3000SW×X(東ソー株式会社)、溶離液に0.1M NaClを含む0.1M リン酸緩衝液(pH7.0)を使用し、流速1.0ml/minでゲル濾過クロマトグラフィーを行った。
溶出液を分別回収し、各画分における3-キヌクリジノン還元酵素活性の測定結果により3-キヌクリジノン還元酵素の溶出時間を求め、分子量マーカー(MW-Marker;オリエンタル酵母工業株式会社)の溶出時間と比較して画分中のタンパク質の分子量を求めた。
SDS-PAGEは12.5%(w/v)ポリアクリルアミドゲルを使用した。タンパク質の検出はクマジーブリリアントブルーR-250を用いて行った。
この結果から、本発明の酵素の分子量は約93,700(ゲル濾過)であることが示された。また、SDS-PAGEの結果より、本発明の酵素は、サブユニットの分子量が34,000の2量体であると推定された。
至適pHの測定
本実施例では、実施例2に記載の方法で作製した部分精製酵素を用いて反応pH依存性を調べた。方法は、pH4.5〜9.0の緩衝液を用いた点以外は全て実施例2に記載した方法で行った。結果を図1に示す。図1の結果より、本酵素の至適pHは、6.0〜8.0であることが示された。
基質特異性の測定
本実施例では、実施例2に記載の方法で作製した部分精製酵素を用いて、表1に記載のケトン類を基質として反応特異性を調べた。反応条件は、基質以外は、実施例2記載の方法で実施した。
その結果、本発明の酵素は3-キヌクリジノンと特異的に反応し、3-キヌクリジノン以外の基質には全く反応しなかった(表1)。
Figure 0005703455
NADH再生系酵素を共存させた(R)-キヌクリジノールの生産反応
本実施例では、実施例2に記載の方法で作製した部分精製酵素を用いて、3-キヌクリジノンから(R)-キヌクリジノールへの変換反応について調べた。
0.5mM NADH、0.12M 3-キヌクリジノン、0.2M リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、0.24M ギ酸、0.4U ギ酸脱水素酵素及び部分精製酵素からなる反応液を30℃、120rpm、5時間以上変換反応させた。反応後、上記反応液0.8mlに、6N NAOHを0.16ml及び5mMオクタノールを溶かしたブタノール0.96mlを添加してよく攪拌し、5000rpmで5分間遠心した。上層のブタノール層を新しいチューブに取り、硫酸ナトリウムを加えて脱水、15000rpmで1分間遠心を行い、上澄み液をキヌクリジノールの分析サンプルとした。キヌクリジノールの分析にはガスクロマトグラフを用いた。
(ガスクロマトグラフによるキヌクリジノールの分析方法)
3-キヌクリジノールの定量にはガスクロマトグラフGC-18A(島津製作所)を用いた。分析条件は以下の通りで行った。
カラム : Rtx-5 Amine (30m×0.25μm)
カラム温度 : 70℃-180℃(昇温速度10℃/min)
インジェクション温度 : 250℃
検出温度 : 250℃
スプリット比 1対40
内部標準溶液 : 1-ブタノールに5miMオクタノールを溶かしたもの

(ガスクロマトグラフによる(R)-キヌクリジノールの分析方法)
(R)-キヌクリジノールの定量にはガスクロマトグラフHP6890シリーズGC system(Hewlett-Packard)を用いた。分析条件は以下の通りで行った。
カラム : cyclodextrine(25m×0.25μm)
カラム温度 : 70℃-180℃(昇温速度8℃/min)
インジェクション温度 : 250℃
検出温度 : 250℃
スプリット比 1対50
内部標準溶液 : 1-ブタノールに5miMオクタノールを溶かしたもの

それぞれ内部標準(オクタノール)を元にエリア値を補正して、作成した検量線に従いキヌクリジノールの生成量を算出した。
その結果、生成したキヌクリジノールは、(R)体(99%ee 以上)であることが確認された。
本発明により、キヌクリジノンに特異的に作用し、医農薬合成中間体等として重要なR−3−キヌクリジノールを製造する触媒活性を有するキヌクリジノン還元酵素が提供される。また、当該酵素を利用してR−3−キヌクリジノールの効率的な生産が可能となる。
配列番号3:合成DNA
配列番号4:合成DNA
配列番号5:合成DNA
配列番号6:合成DNA
配列番号7:合成DNA
配列番号8:合成DNA

Claims (9)

  1. 以下の(a)、(b)又は(c)のタンパク質を含むキヌクリジノン還元酵素。
    (a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加してなるアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
    (c)配列番号2に示すアミノ酸配列と96%以上同一のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
  2. キヌクリジノン還元酵素が、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する微生物由来のものである請求項に記載のキヌクリジノン還元酵素。
  3. ミクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する微生物が、Microbacterium luteolum JCM 9174、Microbacterium estevoaromaticum JCM 9172及びMicrobacterium arabinogalactanolyticum JCM 9171からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項に記載のキヌクリジノン還元酵素。
  4. 以下の(a)、(b)又は(c)のタンパク質をコードするキヌクリジノン還元酵素遺
    伝子。
    (a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加してなるアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
    (c)配列番号2に示すアミノ酸配列と96%以上同一のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
  5. 以下の(d)又は(e)に示すポリヌクレオチドを含むキヌクリジノン還元酵素遺伝子。
    (d)配列番号1に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド
    (e)配列番号1に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
  6. 請求項又はに記載のキヌクリジノン還元酵素遺伝子を含有する組換えベクター。
  7. 請求項に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
  8. 請求項に記載の形質転換体を培養し、得られる培養物からキヌクリジノン還元酵素を採取することを特徴とする、キヌクリジノン還元酵素の製造方法。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載のキヌクリジノン還元酵素、該酵素を産生する微生物若しくは請求項に記載の形質転換体、又は前記微生物若しくは形質転換体の処理物を、3−キヌクリジノン又はその塩に作用させる工程を含む、R−3−キヌクリジノール又はその塩の製造方法。
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