JP5703455B2 - キヌクリジノン還元酵素及びそれを用いた光学活性3−キヌクリジノールの製造方法 - Google Patents
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Description
当該光学活性3-キヌクリジノールの製造方法としては、化学合成法、エステル加水分解法、酵素還元法等が知られている。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)下記の理化学的性質を有する、キヌクリジノン還元酵素。
(i)分子量:
ゲルろ過法による測定値:90,000〜95,000Da
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による測定値:32,000〜36,000Da
(ii)至適pH:pH6.0〜8.0
(iii)補酵素としてNADH又はその誘導体を必要とする
(2)3−キヌクリジノンに特異的に作用し、3−キヌクリジノールを生成する触媒活性を有する、上記(1)に記載のキヌクリジノン還元酵素。
(3)以下の(a)、(b)又は(c)のタンパク質を含むキヌクリジノン還元酵素。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加してなるアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列と96%以上同一のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
(4)キヌクリジノン還元酵素が、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する微生物由来のものである上記(1)〜(3)のいずれかに記載のキヌクリジノン還元酵素。
(5)ミクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する微生物が、Microbacterium luteolum JCM 9174、Microbacterium estevoaromaticum JCM 9172及びMicrobacterium arabinogalactanolyticum JCM 9171からなる群から選ばれる少なくとも一種である、上記(4)に記載のキヌクリジノン還元酵素。
(6)以下の(a)、(b)又は(c)のタンパク質をコードするキヌクリジノン還元酵素遺伝子。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加してなるアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列と96%以上同一のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
(7)以下の(d)又は(e)に示すポリヌクレオチドを含むキヌクリジノン還元酵素遺伝子。
(d)配列番号1に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド
(e)配列番号1に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(8)上記(6)又は(7)に記載のキヌクリジノン還元酵素遺伝子を含有する組換えベクター。
(9)上記(8)に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
(10)上記(9)に記載の形質転換体を培養し、得られる培養物からキヌクリジノン還元酵素を採取することを特徴とする、キヌクリジノン還元酵素の製造方法。
(11)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のキヌクリジノン還元酵素、該酵素を産生する微生物若しくは上記(9)に記載の形質転換体、又は前記微生物若しくは形質転換体の処理物を、3−キヌクリジノン又はその塩に作用させる工程を含む、R−3−キヌクリジノール又はその塩の製造方法。
本発明の酵素はキヌクリジノン還元酵素であり、NADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を補酵素として、3−キヌクリジノンあるいはその塩を還元し、R−3−キヌクリジノールを生成する触媒作用を有する。本発明の酵素の理化学的性質及び特徴を以下に示す。
(イ)分子量
本発明の酵素の分子量は、SDS-PAGEで測定した場合、32kDa〜36kDa程度、好ましくは約34.0 kDaである。また、ゲル濾過(高速液体クロマトグラフィー)で測定した場合の分子量は、約90kDa〜95kDa、好ましくは、約93.7 kDaである。
(ロ)至適pH
本発明のキヌクリジノン還元酵素は、至適pHが6.0から8.5程度、特に、3−キヌクリジノンを基質とした場合の至適pHは6.0から8.5程度である。より好ましくは至適pHが約7.0〜8.0程度である。
(ハ)基質特異性
本発明のキヌクリジノン還元酵素は、3−キヌクリジノンに特異的に作用して、3−キヌクリジノンのカルボニル基を還元し、3−キヌクリジノールを生成する触媒活性を有する。「3−キヌクリジノンに特異的に作用」するとは、3−キヌクリジノンには作用するが、ほかの化合物、例えば3−キヌクリジノンに類似した化合物には実質的には作用しないことをいう。
ここで、「3−キヌクリジノンに類似した化合物」とは、例えば、トロピノン、N-メチル-4-ピペリジノン、6-ヒドロキシトロピノン、4-ピペリドン、テトラヒドロチオピラン-4-オン、4-メチルシクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン、2-メチルシクロヘキサノンなどを例示することができる。これらの化合物は、トロピノン還元酵素の基質として作用する化合物として知られている(Phytochemistry 67, 327-337 (2006)参照)。
本発明において、補酵素とは、酵素のタンパク質部分と可逆的に結合して酵素作用の発現に寄与する補欠分子族を意味し、本発明の酵素が特異的にR−3−キヌクリジノールを生成する触媒作用に寄与するものをいう。
補酵素としては、本発明に係る酵素が特異的にR−3−キヌクリジノールを生成することができれば特に限定されないが、例えば、NADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)又はその誘導体が好ましい。NADH以外の補酵素は、R−3−キヌクリジノールの生成能を発揮することができる限り特に限定されるものではないが、NADH依存性であることが望ましい。NADHの誘導体は、R−3−キヌクリジノールを特異的に生成することができれば特に限定されず、例えばNADPHなどが挙げられる。補酵素は、本発明において、R−3−キヌクリジノールを生成させる酵素反応を行う際に、当業者が適宜選択することができる。
本発明のキヌクリジノン還元酵素は、以下の(a)、(b)又は(c)のタンパク質を含むものである。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加してなるアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列と96%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
上記のとおり、本発明のキヌクリジノン還元酵素には、配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が、欠失、置換若しくは付加され、又はそれらの組合せにより変異されたアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質も含まれる。
(i) 配列番号2で示されるアミノ酸配列中の1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
(ii) 配列番号2で示されるアミノ酸配列中の1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
(iii) 配列番号2で示されるアミノ酸配列に1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、
(iv) 上記(i)〜(iii) の組合せにより変異されたアミノ酸配列
などが挙げられる。
本発明におけるキヌクリジノン還元酵素の供給源は、3−キヌクリジノン又はその塩に特異的に作用してR−3−キヌクリジノール又はその塩を生成する酵素が得られる限り、特に限定されるものではない。
当該供給源としては、本発明に係る酵素を産生することができる微生物が挙げられる。このような微生物としては、Microbacterium属に属する微生物が好ましい。Microbacterium属に属する微生物としては、好ましいものとしてMicrobacterium estevoaromaticum(JCM 9172)、Microbacterium arabinogalactanolyticum(JCM9171)、Microbacterium luteolum (JCM 9174)が挙げられる。特に好ましくはMicrobacterium luteolum JCM 9174である。なお、JCM番号が付された菌株は、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンターから容易に入手することができる。
また、このような微生物以外にも、遺伝子工学的手法により当該酵素を産生することが可能となった形質転換微生物(後述)を使用することができる。
本発明はまた、上記キヌクリジノン還元酵素をコードする遺伝子を提供する。なお、ここでいう遺伝子には、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA及びRNAが含まれる。
当該遺伝子は、前述するアルコール脱水素酵素(タンパク質)をコードする塩基配列を有するものであればよい。具体的には、配列番号1に示す塩基配列からなるDNA、並びにそのホモログを挙げることができる。ここでホモログとしては、配列番号1で示される塩基配列からなるDNAによってコードされるタンパク質(キヌクリジノン還元酵素)と機能的に同等なタンパク質をコードする遺伝子を挙げることができる。
「機能的に同等」とは、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(キヌクリジノン還元酵素)と同様に、好ましくはpHが約6.0〜8.5の範囲、より好ましくはpHが約7.0〜8.0の範囲でキヌクリジノン還元酵素活性を有することを意味する。
(a) 配列番号1で示される塩基配列中の1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の核酸が欠失した塩基配列、
(b) 配列番号1で示される塩基配列中の1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の核酸が他の核酸で置換された塩基配列、
(c) 配列番号1で示される塩基配列に1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の核酸が付加した塩基配列、
(d)上記(a)〜(c)の組合せにより変異された塩基配列
などが挙げられる。
ストリンジェントな条件としては、前述のものを同様に挙げることができる。
一旦本発明の遺伝子の塩基配列が決定されると、その後は、当該塩基配列情報に基づき、PCR法により、あるいは他の化学的な合成法によって本発明の遺伝子を調製することができる。
本発明は、上記キヌクリジノン還元酵素をコードする遺伝子を含有する組換えベクターを提供する。当該組換えベクターは、上記キヌクリジノン還元酵素をコードする遺伝子を、所望の宿主細胞内で発現可能な状態で含んでおり、当該宿主細胞を形質転換するために使用される。
従って、本発明の組換えベクターは、宿主細胞の形質転換が達成できる形態を有するものであればよく、例えばプラスミド、バクテリオファージ、レトロトランスポゾンの形態を有するものであってもよい。
以下、より詳細に形質転換(導入)体(以下、単に「形質転換体」と称す)の作製方法について説明する。
形質転換体を作製するための発現ベクターは、宿主細胞中にてプラスミドが増殖するために必要なDNA配列、プロモーター、リボソーム結合配列、転写終結配列、更に好ましくは形質転換体の選択マーカーとなる遺伝子を含む。
選択マ−カ−としては、例えばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子等を挙げることができる。
大腸菌宿主としては、例えば大腸菌K12株やB株、あるいはそれら野生株由来の派生株であるJM109株、XL1-Blue株、C600株、W3110株等を挙げることができる。その他、これら菌株の変異体、組換え体および遺伝子工学的手法による誘導体等も用いられ得る。
ロドコッカス属細菌としては、例えばロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)ATCC 12674株やロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J-1株(FERM BP-1478)等を挙げることができる。
このようにして得られた発現ベクターを宿主細胞に導入すれば、本発明のキヌクリジノン還元酵素を高発現する形質転換体が得られる。そして、当該形質転換体を培養することにより、これらの酵素を発現・蓄積させることができる。
このようにして得られた形質転換体は、宿主に応じて適切な培地中で培養されることによって、本発明の新規キヌクリジノン還元酵素を産生することができる。本発明は、かかる形質転換体を利用した新規キヌクリジノン還元酵素の製造方法を提供するものである。当該方法は、具体的には、上記の形質転換体を培地で培養し、得られた培養物から、キヌクリジノン還元酵素を採取することによって実施することができる。
たとえば、菌体を破砕後、硫安沈澱、Blue-Sepharose カラム、DEAT-Toyopearl、Hiload Superdex 200pg FPLC カラム、HAP-C-BEADA hydroxyapatiteFPLC カラム、Pros HQ/M FPLC カラム、BioAssistQ FPLCカラムクロマトグラフィー等を行うことによりポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)的にほぼ単一バンドにまで精製することができる。
無細胞タンパク質合成系とは、細胞抽出液を用いて試験管などの人工容器内でタンパク質を合成する系である。なお、本発明において使用される無細胞タンパク質合成系には、DNAを鋳型としてRNAを合成する無細胞転写系も含まれる。
上記のように無細胞タンパク質合成によって得られるキヌクリジノン還元酵素は、前述のように適宜クロマトグラフィー等を選択して、精製することができる。
本発明において、3−キヌクリジノンの塩又は3−キヌクリジノールの塩とは、当該化合物中に存在する窒素原子を、有機酸又は鉱酸等により塩を形成させたものを意味する。
鉱酸塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等が例示できる。有機酸塩としては酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、フマル酸、マロン酸、シュウ酸等の脂肪族有機酸塩、安息香酸等の芳香族有機酸塩等が例示される。
反応時間は、目的とする化合物の量や酵素活性の続く時間等を考慮して、当業者であれば適宜選択することができるが、通常、1時間〜1週間程度、好ましくは1〜72時間程度が好ましい。
M. luteolumゲノムDNAを鋳型として、キヌクリジノン還元酵素のアミノ酸シークエンスの結果から作製した縮重プライマーを用いてPCRを行った。
縮重プライマー(FW1及びRV1)の塩基配列、PCR反応液組成及びPCR反応条件を以下に示す。
FW1:5'-ATGMGNYTNGARAAYAA-3’(配列番号3)
RV1:5'-AANGCRTTNGTRTCYTG-3’(配列番号4)
PCR反応液組成:
ゲノムDNA 1μl
プライマー FW1(10μM) 5μl
プライマー RV1(10μM) 5μl
10×EX Taq buffer 10μl
2.5mM dNTP mix 8μl
TaKaRa Ex TaqTM(DNAポリメラーゼ) 0.5μl
蒸留水 70.5μl
PCR反応は、94℃で2分間の加熱処理を行った後、94℃で2秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、60℃で1分間の伸長反応のサイクルを30サイクル行い、その後72℃で10分間処理した。精製はWizard(R) PCR Preps DNA Purification System(プロメガ社)を用いて行った。
その結果、約500bpの増幅断片を得た。
得られた増幅断片をTAクローニングし、ABI PRISM 310 Genetic Analyzerを用いて当該増幅断片の塩基配列の決定を行った。
このライブラリーを鋳型としてinverse PCRを行い、キヌクリジノン還元酵素(QNR)のC末端側をコードする塩基配列及びその下流の塩基配列を得た。
inverse PCRに用いたプライマー(FW2及びRV2)の塩基配列、PCR反応液組成及びPCR反応条件を以下に示す。
FW2:5'-GGTCATGTTCACCAC-3’(配列番号5)
RV2:5'-CACCGGGATGCTGC-3’(配列番号6)
PCR反応液組成:
遺伝子ライブラリーDNA 1μl
プライマー FW2(10μM) 2μl
プライマー RV2(10μM) 2μl
2X SeeAmpTM ACPTM Master Mix II 10μl
蒸留水 5μl
PCR反応は、94℃で5分間、42℃で1分間、72℃で2分間の加熱処理を行った後、94℃で30秒間の変性、57℃で30秒間のアニーリング、72℃で100秒間の伸長反応のサイクルを30サイクル行い、その後72℃で1分間処理した。精製はWizard(R) PCR Preps DNA Purification System(プロメガ社)を用いて行った。
FW3:5'- TTTCATATGCGGCTGGAGAATAAGAAGGC -3’(配列番号7)
RV3:5'- TTTAAGCTTGACACCGGCGGACGCGCGAC -3’(配列番号8)
PCR反応液組成:
ゲノムDNA 0.5μl
プライマー FW3(4μM) 0.75μl
プライマー RV3(4μM) 0.75μl
2 × PCR buffer for KOD FX buffer 5μl
2mM dNTP mix 2μl
KOD FX(1.0 U/ml)(DNAポリメラーゼ) 0.2μl
蒸留水 0.8μl
PCR反応は、94℃で2分間の加熱処理を行った後、94℃で15秒間の変性、60℃で30秒間のアニーリング、68℃で2分間の伸長反応のサイクルを35サイクル行い、その後68℃で5分間処理した。精製はWizard(R) PCR Preps DNA Purification System(プロメガ社)を用いて行った。
PCRにより得られた増幅断片の3’末端側にTaqでAを付加した後、pGEM-TベクターにTAクローニングを行った。塩基配列を確認した後、pET28-a(+)のNdeI及びHindIIIサイトにサブクローニングし、キヌクリジノン還元酵素遺伝子発現ベクターpET28a-qnrを構築した。
pET28a-qnrはN末端側にHisタグを持つキヌクリジノン還元酵素遺伝子融合タンパクをコードする。
得られた増幅断片の塩基配列を決定し、さらに、DNA Walking SpeedUp Premix Kit (Seegene社)を用いて、ゲノムDNA上の取得配列両側の未知配列を決定し、Microbacterium luteolumのキヌクリジノン還元酵素遺伝子の全配列を決定した(配列番号1)。
pET28a-qnrを宿主であるE. coli BL21(DE3)株に形質転換し、得られた遺伝子組換え体 E. coli BL21(DE3)株/ pET28a-qnrを、4mlのMagic MediaTM E. coli Expression Medium(invitrogen)にカナマイシン(終濃度50μg/ml)を添加した培地に加え、37℃で14時間振とう培養した。培養後、集菌して緩衝液に再懸濁し、超音波破砕した。破砕液を遠心し、その上清を粗酵素とした。さらにNi-NTA resin(Qiagen)を用いて部分精製酵素を調製し、3−キヌクリジノン変換反応について調べた。
10 mM 3−キヌクリジノン、0.3μM NADH及び0.2Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を含む1 mlの反応液を、粗酵素を添加する前に25℃で約5分間予備加温した。加温後、反応液に粗酵素液を加えて速やかに混和後、水を対照に25℃に制御された分光光度計を用いて波長340nmの吸光度変化を2分〜3分間記録し、その初期直線部分より1分間あたりの吸光度変化を求めた。波長340nmにおけるNADHの分子吸光係数を、6.22 mM-1cm-1で1分間に1μmolのNADHが減少する酵素量を1単位(U)とし、活性値を求めた。
その結果、培養液1mlあたりに換算して4.2Uの酵素活性を示した。
実施例2記載の方法で作製した部分精製酵素画分中のキヌクリジノン還元酵素の分子量およびポリアクリルアミドゲル電気泳動の分子量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、以下の条件で検討した。
カラムにTSK-GEL G3000SW×X(東ソー株式会社)、溶離液に0.1M NaClを含む0.1M リン酸緩衝液(pH7.0)を使用し、流速1.0ml/minでゲル濾過クロマトグラフィーを行った。
溶出液を分別回収し、各画分における3-キヌクリジノン還元酵素活性の測定結果により3-キヌクリジノン還元酵素の溶出時間を求め、分子量マーカー(MW-Marker;オリエンタル酵母工業株式会社)の溶出時間と比較して画分中のタンパク質の分子量を求めた。
SDS-PAGEは12.5%(w/v)ポリアクリルアミドゲルを使用した。タンパク質の検出はクマジーブリリアントブルーR-250を用いて行った。
この結果から、本発明の酵素の分子量は約93,700(ゲル濾過)であることが示された。また、SDS-PAGEの結果より、本発明の酵素は、サブユニットの分子量が34,000の2量体であると推定された。
本実施例では、実施例2に記載の方法で作製した部分精製酵素を用いて反応pH依存性を調べた。方法は、pH4.5〜9.0の緩衝液を用いた点以外は全て実施例2に記載した方法で行った。結果を図1に示す。図1の結果より、本酵素の至適pHは、6.0〜8.0であることが示された。
本実施例では、実施例2に記載の方法で作製した部分精製酵素を用いて、3-キヌクリジノンから(R)-キヌクリジノールへの変換反応について調べた。
0.5mM NADH、0.12M 3-キヌクリジノン、0.2M リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、0.24M ギ酸、0.4U ギ酸脱水素酵素及び部分精製酵素からなる反応液を30℃、120rpm、5時間以上変換反応させた。反応後、上記反応液0.8mlに、6N NAOHを0.16ml及び5mMオクタノールを溶かしたブタノール0.96mlを添加してよく攪拌し、5000rpmで5分間遠心した。上層のブタノール層を新しいチューブに取り、硫酸ナトリウムを加えて脱水、15000rpmで1分間遠心を行い、上澄み液をキヌクリジノールの分析サンプルとした。キヌクリジノールの分析にはガスクロマトグラフを用いた。
3-キヌクリジノールの定量にはガスクロマトグラフGC-18A(島津製作所)を用いた。分析条件は以下の通りで行った。
カラム : Rtx-5 Amine (30m×0.25μm)
カラム温度 : 70℃-180℃(昇温速度10℃/min)
インジェクション温度 : 250℃
検出温度 : 250℃
スプリット比 1対40
内部標準溶液 : 1-ブタノールに5miMオクタノールを溶かしたもの
(ガスクロマトグラフによる(R)-キヌクリジノールの分析方法)
(R)-キヌクリジノールの定量にはガスクロマトグラフHP6890シリーズGC system(Hewlett-Packard)を用いた。分析条件は以下の通りで行った。
カラム : cyclodextrine(25m×0.25μm)
カラム温度 : 70℃-180℃(昇温速度8℃/min)
インジェクション温度 : 250℃
検出温度 : 250℃
スプリット比 1対50
内部標準溶液 : 1-ブタノールに5miMオクタノールを溶かしたもの
それぞれ内部標準(オクタノール)を元にエリア値を補正して、作成した検量線に従いキヌクリジノールの生成量を算出した。
その結果、生成したキヌクリジノールは、(R)体(99%ee 以上)であることが確認された。
配列番号4:合成DNA
配列番号5:合成DNA
配列番号6:合成DNA
配列番号7:合成DNA
配列番号8:合成DNA
Claims (9)
- 以下の(a)、(b)又は(c)のタンパク質を含むキヌクリジノン還元酵素。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加してなるアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列と96%以上同一のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質 - キヌクリジノン還元酵素が、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する微生物由来のものである請求項1に記載のキヌクリジノン還元酵素。
- ミクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する微生物が、Microbacterium luteolum JCM 9174、Microbacterium estevoaromaticum JCM 9172及びMicrobacterium arabinogalactanolyticum JCM 9171からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項2に記載のキヌクリジノン還元酵素。
- 以下の(a)、(b)又は(c)のタンパク質をコードするキヌクリジノン還元酵素遺
伝子。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加してなるアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列と96%以上同一のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列からなり、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質 - 以下の(d)又は(e)に示すポリヌクレオチドを含むキヌクリジノン還元酵素遺伝子。
(d)配列番号1に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド
(e)配列番号1に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、キヌクリジノン還元酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド - 請求項4又は5に記載のキヌクリジノン還元酵素遺伝子を含有する組換えベクター。
- 請求項6に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
- 請求項7に記載の形質転換体を培養し、得られる培養物からキヌクリジノン還元酵素を採取することを特徴とする、キヌクリジノン還元酵素の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のキヌクリジノン還元酵素、該酵素を産生する微生物若しくは請求項7に記載の形質転換体、又は前記微生物若しくは形質転換体の処理物を、3−キヌクリジノン又はその塩に作用させる工程を含む、R−3−キヌクリジノール又はその塩の製造方法。
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