以下に、実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、開示する発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定されず、発明の趣旨から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者にとって自明である。したがって、発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、異なる実施の形態に係る構成は、適宜組み合わせて実施することができる。また、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を用い、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、絶縁表面上に半導体層を有する半導体基板の作製方法及び当該半導体基板を用いた半導体装置の作製方法の一例について、図面を参照して説明する。
<半導体基板の作製方法>
はじめに、半導体基板の作製方法について図1を用いて説明する。
まず、ベース基板300を用意し、該ベース基板300上に絶縁層302を形成する(図1(A)参照)。
ベース基板300としては、ガラス基板、多結晶シリコン基板等を用いることができる。ガラス基板としては、歪み点が580℃以上(好ましくは、600℃以上)であるものを用いると良い。また、ガラス基板は無アルカリガラス基板であることが好ましい。無アルカリガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられている。
他にも、ベース基板300として、セラミック基板、石英基板やサファイア基板などの絶縁体でなる基板、シリコンなどの単結晶半導体でなる基板、金属やステンレスなどの導電体でなる基板等を用いることもできる。
絶縁層302の形成方法は特に限定されないが、例えば、スパッタリング法、CVD法等を用いることができる。絶縁層302は、貼り合わせに係る表面を有する層(接合層)であるから、その表面が、高い平坦性を有するように形成されることが好ましい。絶縁層302は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどから選ばれた一または複数の材料を用いて形成することができる。例えば、酸化シリコンを用いて絶縁層302を形成する場合には、有機シランガスを用いて化学気相成長法により形成することで極めて平坦性に優れた絶縁層302を得ることができる。なお、絶縁層302は単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
また、貼り合わせに際して特に問題がない場合など、絶縁層302を設ける必要がない場合には、絶縁層302を設けない構成としても良い。
次に、単結晶半導体基板310を用意する(図1(B)参照)。単結晶半導体基板310としては、例えば、単結晶シリコン基板を用いることができる。他にも、単結晶半導体基板310として、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコンなどの第14族元素でなる単結晶半導体基板を用いることができる。単結晶半導体基板310のサイズに制限は無いが、例えば、直径が8インチ(200mm)、12インチ(300mm)、18インチ(450mm)といったサイズの半導体基板を用いることができる。
本実施の形態においては、単結晶半導体基板310として、{211}面から±15°以内の面を表面とする単結晶シリコン基板を用いる場合について説明する。一例として、面方位が{211}であり、<111>軸方向にノッチが形成された円形状の単結晶シリコン基板を用いることができる(図2(A)参照)。また、円形の半導体基板を矩形状に加工して用いてもよい。矩形状に加工した場合には、<111>軸方向を判別できるように単結晶半導体基板310にレーザーマーカーを形成することができる(図2(B)参照)。{211}面の他にも、例えば、{311}面、{321}面、{322}面、{421}面、{432}面、{433}面、{521}面、{522}面、{531}面、{532}面、{533}面、{542}面、{543}面、{544}面、{632}面、{643}面、{653}面、{654}面、{655}面、等を表面とする単結晶半導体基板を用いることができる。
次に、単結晶半導体基板310の表面に絶縁層312を形成すると共に、単結晶半導体基板310中に脆化領域314を形成する(図1(C)参照)。
絶縁層312の形成方法は特に限定されないが、例えば、熱酸化法、スパッタリング法、CVD法等を用いることができる。絶縁層312は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等から選ばれた一または複数の材料を用いて形成することができる。例えば、酸化シリコンを用いた絶縁層312を形成する場合には、単結晶半導体基板310を酸化性雰囲気(例えば、酸素雰囲気)中で熱処理することにより形成することができる。他にも、有機シランガスを用いて化学気相成長法により酸化シリコンを形成してもよい。なお、絶縁層312は単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
また、熱酸化処理を用いて、絶縁層312を形成する場合には、酸化性雰囲気中にハロゲン(フッ素、塩素等)を添加して行うことができる。例えば、塩素(Cl)ガスが導入された酸化性雰囲気中で単結晶半導体基板310に熱酸化処理(塩酸酸化処理)を行うことにより、塩素原子を含有する絶縁層312を形成することができる。一例として、酸素に対し塩化水素(HCl)を0.5〜10体積%(好ましくは3体積%)の割合で含む酸化性雰囲気中で、900℃〜1150℃の温度で処理を行うことができる。処理時間は0.1〜6時間、好ましくは0.5〜1時間とし、形成する絶縁層312の膜厚は、10nm〜1000nm(好ましくは50nm〜300nm)とすることができる。
絶縁層312に塩素原子を含有させることにより、不純物である重金属(例えば、Fe、Cr、Ni、Mo等)を捕集して単結晶半導体基板310が汚染されることを防止する効果を奏する。また、塩酸酸化等によって、絶縁層312に塩素等のハロゲンを含ませることは、半導体基板の洗浄が不十分である場合や、半導体基板を繰り返し再利用して用いる場合の汚染除去に有効となる。また、塩素等のハロゲンを含む絶縁層312を単結晶半導体基板310上に形成することにより、単結晶半導体基板310をガラス基板からなるベース基板300と貼り合わせた場合に、ガラスに含まれるNa等の不純物を中和する膜として機能する。
また、絶縁層312に含有させるハロゲン原子は塩素原子に限られない。絶縁層312にフッ素原子を含有させてもよい。単結晶半導体基板310表面をフッ素酸化するには、単結晶半導体基板310表面をHF溶液に浸漬した後に酸化性雰囲気中で熱酸化処理を行う方法や、NF3を酸化性雰囲気に添加して単結晶半導体基板310を熱酸化処理する方法を用いることができる。
脆化領域314は、単結晶半導体基板310にイオンを添加することにより形成することができる。例えば、電界で加速されたイオンでなるイオンビームを照射して、単結晶半導体基板310の表面から所定の深さの領域に脆化領域314を形成する。脆化領域314が形成される深さは、イオンビームの加速エネルギーやイオンビームの入射角によって制御することができる。つまり、脆化領域314は、イオンの平均侵入深さと同程度の深さの領域に形成されることになる。
また、脆化領域314が形成される深さが単結晶半導体基板310の全面において均一となるようにすることが望ましい。これにより、単結晶半導体基板310の表面と同等の結晶面({211}面から±15°以内の面)において分離させることが可能になる。すなわち、単結晶半導体基板310の分離によって形成される単結晶半導体層の表面の面方位を、{211}面から±15°以内とすることができる。
脆化領域314が形成される深さは、単結晶半導体基板310の表面から50nm以上1μm以下、好ましくは50nm以上300nm以下とすることができる。
イオンを単結晶半導体基板310に添加する際には、イオン注入装置またはイオンドーピング装置を用いることができる。イオン注入装置は、ソースガスを励起してイオン種を生成し、生成されたイオン種を質量分離して、所定の質量を有するイオン種を被処理物に照射する。イオンドーピング装置は、プロセスガスを励起してイオン種を生成し、生成されたイオン種を質量分離せずに被処理物に照射する。なお、質量分離装置を備えているイオンドーピング装置では、イオン注入装置と同様に、質量分離を伴うイオンの照射を行うこともできる。
イオンドーピング装置を用いる場合の脆化領域314の形成工程は、例えば、以下の条件で行うことができる。
・加速電圧 10kV以上100kV以下(好ましくは30kV以上80kV以下)
・ドーズ量 1×1016/cm2以上4×1016/cm2以下
・ビーム電流密度 2μA/cm2以上(好ましくは5μA/cm2以上、より好ましくは10μA/cm2以上)
イオンドーピング装置を用いる場合、ソースガスとして水素を含むガスを用いることができる。該ガスを用いることによりイオン種としてH+、H2 +、H3 +を生成することができる。水素ガスをソースガスとして用いる場合には、H3 +を多く照射することが好ましい。具体的には、イオンビームに、H+、H2 +、H3 +の総量に対してH3 +イオンが70%以上含まれるようにすることが好ましい。また、H3 +イオンの割合を80%以上とすることがより好ましい。このようにH3 +の割合を高めておくことで、脆化領域314に1×1020atoms/cm3以上の濃度で水素を含ませることが可能である。これにより、脆化領域314における分離が容易になる。また、H3 +イオンを多く照射することで、H+、H2 +を照射する場合より短時間で脆化領域314を形成することができる。また、H3 +を用いることで、イオンの平均侵入深さを浅くすることができるため、脆化領域314を浅い領域に形成することが可能になる。
イオン注入装置を用いる場合には、質量分離により、H3 +イオンが照射されるようにすることが好ましい。もちろん、H+やH2 +を照射してもよい。
イオン照射工程のソースガスには水素を含むガスの他に、ヘリウムやアルゴンなどの希ガス、フッ素ガスや塩素ガスに代表されるハロゲンガス、フッ素化合物ガス(例えば、BF3)などのハロゲン化合物ガスから選ばれた一種または複数種類のガスを用いることができる。ソースガスにヘリウムを用いる場合は、質量分離を行わないことで、He+イオンの割合が高いイオンビームを作り出すことができる。このようなイオンビームを用いることで、脆化領域314を効率よく形成することができる。
また、イオンの照射を複数回に分けて行うことで、脆化領域314を形成することもできる。この場合、ソースガスを異ならせてイオン照射を行っても良いし、同じソースガスを用いてもよい。例えば、ソースガスとして希ガス(例えば、ヘリウム)を用いてイオン照射を行った後、水素を含むガスをソースガスとして用いてイオン照射を行うことができる。また、初めにハロゲンガスまたはハロゲン化合物ガスを用いてイオン照射を行い、次に、水素を含むガスを用いてイオン照射を行うこともできる。
なお、脆化領域314は、絶縁層312を設ける前に形成してもよいし、絶縁層312を設けた後に形成してもよい。イオンの添加に伴う単結晶半導体基板310の表面の損傷を低減する観点からは、絶縁層312を形成した後に脆化領域314を形成することが好ましい。
次に、ベース基板300と単結晶半導体基板310を貼り合わせる(図1(D)参照)。具体的には、接合層となる絶縁層302及び絶縁層312を介してベース基板300と単結晶半導体基板310を貼り合わせる。なお、貼り合わせに係る絶縁層302および絶縁層312の表面は、超音波洗浄などの方法で洗浄しておくことが望ましい。絶縁層302の表面と絶縁層312の表面とを接触させた後、加圧処理を施すことで、ベース基板300と単結晶半導体基板310の貼り合わせが実現される。なお、貼り合わせのメカニズムとしては、ファン・デル・ワールス力が関与するメカニズムや、水素結合が関与するメカニズムなどが考えられている。
なお、ベース基板300と単結晶半導体基板310を貼り合わせる前に、貼り合わせに係る表面に表面処理を行うことが好ましい。表面処理を行うことで、ベース基板300と単結晶半導体基板310の接合界面での接合強度を向上させることができる。
表面処理としては、ウェット処理、ドライ処理、またはウェット処理及びドライ処理の組み合わせが挙げられる。また、異なるウェット処理を組み合わせる、または異なるドライ処理を組み合わせて行うことができる。
ウェット処理としては、オゾン水を用いたオゾン処理(オゾン水洗浄)、メガソニック洗浄、または2流体洗浄(純水や水素添加水等の機能水を窒素等のキャリアガスとともに吹き付ける方法)などが挙げられる。ドライ処理としては、紫外線処理、オゾン処理、プラズマ処理、バイアス印加プラズマ処理、またはラジカル処理などが挙げられる。被処理体に対し、上記のような表面処理を行うことで、被処理体表面の親水性および清浄性を高める効果を奏する。その結果、基板同士の接合強度を向上させることができる。
ウェット処理は、被処理体表面に付着するマクロなゴミなどの除去に効果的である。ドライ処理は、被処理体表面に付着する有機物などミクロなゴミの除去または分解に効果的である。ここで、被処理体に対し、紫外線処理などのドライ処理を行った後、洗浄などのウェット処理を行うことで、被処理体表面を清浄化および親水化し、さらに被処理体表面のウォーターマークの発生を抑制できるため好ましい。
また、ドライ処理として、オゾンまたは一重項酸素などの活性状態にある酸素を用いた表面処理を行うことが好ましい。オゾンまたは一重項酸素などの活性状態にある酸素により、被処理体表面に付着する有機物を効果的に除去または分解することができる。また、オゾンまたは一重項酸素などの活性状態にある酸素に、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光による処理を組み合わせることで、被処理体表面に付着する有機物をさらに効果的に除去することができる。以下、具体的に説明する。
例えば、酸素を含む雰囲気下で紫外線を照射することにより、被処理体の表面処理を行う。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光と200nm以上の波長を含む光を照射することにより、オゾンを生成させるとともに一重項酸素を生成させることができる。また、紫外線のうち180nm未満の波長を含む光を照射することにより、オゾンを生成させるとともに一重項酸素を生成させることもできる。
酸素を含む雰囲気下で、200nm未満の波長を含む光および200nm以上の波長を含む光を照射することにより起きる反応例を示す。
O2+hν(λ1nm)→O(3P)+O(3P) ・・・ (1)
O(3P)+O2→O3 ・・・ (2)
O3+hν(λ2nm)→O(1D)+O2 ・・・ (3)
上記反応式(1)において、酸素(O2)を含む雰囲気下で200nm未満の波長(λ1nm)を含む光(hν)を照射することにより基底状態の酸素原子(O(3P))が生成する。次に、反応式(2)において、基底状態の酸素原子(O(3P))と酸素(O2)とが反応してオゾン(O3)が生成する。そして、反応式(3)において、生成されたオゾン(O3)を含む雰囲気下で200nm以上の波長(λ2nm)を含む光が照射されることにより、励起状態の一重項酸素O(1D)が生成される。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光を照射することによりオゾンを生成させるとともに、200nm以上の波長を含む光を照射することによりオゾンを分解して一重項酸素を生成する。上記のような表面処理は、例えば、酸素を含む雰囲気下での低圧水銀ランプの照射(λ1=185nm、λ2=254nm)により行うことができる。
また、酸素を含む雰囲気下で、180nm未満の波長を含む光を照射して起きる反応例を示す。
O2+hν(λ3nm)→O(1D)+O(3P) ・・・ (4)
O(3P)+O2→O3 ・・・ (5)
O3+hν(λ3nm)→O(1D)+O2 ・・・ (6)
上記反応式(4)において、酸素(O2)を含む雰囲気下で180nm未満の波長(λ3nm)を含む光を照射することにより、励起状態の一重項酸素O(1D)と基底状態の酸素原子(O(3P))が生成する。次に、反応式(5)において、基底状態の酸素原子(O(3P))と酸素(O2)とが反応してオゾン(O3)が生成する。反応式(6)において、生成されたオゾン(O3)を含む雰囲気下で180nm未満の波長(λ3nm)を含む光が照射されることにより、励起状態の一重項酸素と酸素が生成される。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち180nm未満の波長を含む光を照射することによりオゾンを生成させるとともにオゾンまたは酸素を分解して一重項酸素を生成する。上記のような表面処理は、例えば、酸素を含む雰囲気下でのXeエキシマUVランプの照射により行うことができる。
200nm未満の波長を含む光により被処理体表面に付着する有機物などの化学結合を切断し、オゾンまたは一重項酸素により被処理体表面に付着する有機物や化学結合を切断した有機物などを酸化分解して除去することができる。上記のような表面処理を行うことで、被処理体表面の親水性および清浄性をより高めることができ、接合を良好に行うことができる。
また、ベース基板300と単結晶半導体基板310を貼り合わせ後に熱処理を施して、貼り合わせを強固なものとすると良い。この際の加熱温度は、脆化領域314における分離が進行しない温度とする必要がある。例えば、400℃未満、好ましくは300℃以下とする。熱処理時間については特に限定されず、処理時間と貼り合わせ強度との関係から適切な条件を設定すればよい。例えば、200℃、2時間の熱処理を施すことができる。なお、貼り合わせに係る領域にマイクロ波などを照射して、該領域のみを局所的に加熱することも可能である。貼り合わせ強度に問題がない場合には、上記熱処理は省略すればよい。
次に、単結晶半導体基板310を、脆化領域314において分離する(図1(E)参照)。単結晶半導体基板310の分離は、熱処理により行うとよい。該熱処理の温度は、ベース基板300の耐熱温度を目安にすることができる。例えば、ベース基板300としてガラス基板を用いる場合には、熱処理の温度は400℃以上750℃以下とすることが好ましい。ただし、ガラス基板の耐熱性が許すのであればこの限りではない。なお、本実施の形態においては、600℃、2時間の熱処理を施すこととする。
上述のような熱処理を行うことにより、脆化領域314に形成された微小な空孔の体積変化が生じ、脆化領域314に亀裂が生ずる。その結果、脆化領域314に沿って単結晶半導体基板310を分離することができる。これにより、ベース基板300上には単結晶半導体基板310から分離された単結晶半導体層316が残存することになる。また、この熱処理で、貼り合わせに係る界面が加熱されるため、当該界面に共有結合が形成され、貼り合わせを一層強固なものとすることができる。
ここで、単結晶半導体基板310は、{211}面から±15°以内の面を貼り合わせに係る表面としているため、当該表面と略平行な脆化領域314において単結晶半導体基板310を分離することで、{211}面から±15°以内の面を上面に有する単結晶半導体層316を形成することができる。
なお、上述のようにして形成された単結晶半導体層316の表面(特に上面)には、分離工程やイオン照射工程に起因する欠陥が存在し、また、その平坦性は損なわれている場合がある。そのため、単結晶半導体層316の欠陥を低減させる処理、または、単結晶半導体層316の表面の平坦性を向上させる処理を行うことが好ましい。
本実施の形態において、単結晶半導体層316の欠陥の低減、および、平坦性の向上は、例えば、単結晶半導体層316にレーザー光を照射することで実現できる。レーザー光を単結晶半導体層316に照射することで、単結晶半導体層316が溶融し、その後の冷却、固化によって、欠陥が低減され、表面の平坦性が向上した単結晶半導体層が得られる。
また、単結晶半導体層の膜厚を小さくする薄膜化工程を行っても良い。半導体層の薄膜化には、ドライエッチング処理またはウエットエッチング処理の一方、または双方を組み合わせたエッチング処理を適用すればよい。例えば、半導体層がシリコンからなる場合、SF6と02をプロセスガスに用いたドライエッチング処理で、半導体層を薄くすることができる。
以上により、ベース基板300上に、{211}面から±15°以内の面を上面とする島状の単結晶半導体層316を形成することができる(図1(F)参照)。
なお、本実施の形態においては、レーザー光を用いて欠陥の低減、および、平坦性の向上を実現しているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。熱処理など、他の方法を用いて欠陥の低減、平坦性の向上を実現しても良い。また、欠陥低減処理が不要であれば、エッチング処理などの平坦性向上処理のみを適用しても良い。
<半導体装置の作製方法>
続いて、ベース基板300上に設けられた単結晶半導体層316を用いて、n型のトランジスタ及びp型のトランジスタを有する半導体装置を作製する方法について、図3、図4を参照して説明する。なお、図3は平面の模式図を示し、図4は図3におけるA−B間の断面の模式図を示し、図5図3におけるC−D間の断面の模式図を示している。
まず、上記図1の作製工程で得られた半導体基板を準備する(図3(A)、図4(A)、図5(A)参照)。
次に、単結晶半導体層316をエッチングして、島状の単結晶半導体層320a、単結晶半導体層320bを形成する(図3(B)、図4(B)、図5(B)参照)。
この場合、後に形成されるトランジスタのチャネル長方向が<111>軸から±15°以内となるように単結晶半導体層320a、単結晶半導体層320bを形成する。ここでは、一例として、単結晶半導体層320a、単結晶半導体層320bを矩形状に形成し、矩形状の長軸が<111>軸方向に平行になるように形成する場合を示している。但し、単結晶半導体層320a、単結晶半導体層320bの形状は、矩形状に限られない。
また、単結晶半導体層316のエッチングを行う前に、TFTのしきい値電圧を制御するために、ホウ素、アルミニウム、ガリウムなどの不純物元素、またはリン、ヒ素などの不純物元素を単結晶半導体層316に添加することができる。例えば、nチャネル型TFTが形成される領域に不純物元素を添加し、pチャネル型TFTが形成される領域に不純物元素を添加する。
次に、単結晶半導体層320a、単結晶半導体層320bを覆うように絶縁層322を形成した後、当該絶縁層322上に、単結晶半導体層320aと重なる導電層324a及び単結晶半導体層320bと重なる導電層324bを形成する(図4(C)、図5(C)参照)。
絶縁層322の形成方法は特に限定されないが、例えば、スパッタリング法、CVD法等を用いることができる。絶縁層322は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン等から選ばれた一または複数の材料を用いて形成することができる。また、絶縁層322は単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
また、プラズマ処理を行うことにより単結晶半導体層320a、単結晶半導体層320bの表面を酸化又は窒化させて絶縁層322を形成してもよい。
プラズマ処理は、例えば、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガスと、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などガスの混合ガスを用いて行うことができる。この場合、プラズマの励起をマイクロ波の導入により行うことで、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。このような高密度のプラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、単結晶半導体層320a、単結晶半導体層320bの表面を酸化または窒化することにより、1nm以上20nm以下、望ましくは2nm以上10nm以下の絶縁層を形成することができる。
上述したプラズマ処理による単結晶半導体層320a、単結晶半導体層320bの酸化または窒化は固相反応であるため、絶縁層322と単結晶半導体層320a、単結晶半導体層320bとの界面準位密度を低くすることができる。また、プラズマ処理により単結晶半導体層320a、単結晶半導体層320bを直接酸化または窒化することで、形成される絶縁層の厚さのばらつきを抑えることが出来る。
上述した方法で形成される絶縁層322は、単結晶半導体層320aをチャネル層とするトランジスタや、単結晶半導体層320bをチャネル層とするトランジスタのゲート絶縁層として機能する。
導電層324a、導電層324bは、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等の材料を用いて形成することができる。また、これらの金属を主成分とする合金材料を用いて導電層324a、導電層324bを形成してもよいし、これらの金属を含む化合物を用いて形成してもよい。又は、半導体に導電性を付与する不純物元素をドーピングした多結晶珪素等の半導体材料を用いて導電層324a、導電層324bを形成してもよい。導電層324a、導電層324bは、CVD法、スパッタリング法等を用いて形成することができる。また、導電層324a、導電層324bは単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
上述した方法で形成される導電層324aは単結晶半導体層320aをチャネル層とするトランジスタのゲート電極として機能し、導電層324bは単結晶半導体層320bをチャネル層とするトランジスタのゲート電極として機能する。
次に、単結晶半導体層320a、単結晶半導体層320bに不純物元素を添加することにより、単結晶半導体層320aにn型の不純物領域326a、不純物領域326bを形成し、単結晶半導体層320bにp型の不純物領域328a、不純物領域328bを形成する(図3(C)、図4(D)参照)。
不純物領域326a、不純物領域326bは、単結晶半導体層320aをチャネル層とするトランジスタのソース領域又はドレイン領域として機能し、不純物領域328a、不純物領域328bは、単結晶半導体層320bをチャネル層とするトランジスタのソース領域又はドレイン領域として機能する。
不純物元素としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウム等のp型を付与する不純物元素、又はリン、ヒ素等のn型を付与する不純物元素を添加すればよい。
次に、導電層324a、導電層324b及び絶縁層322を覆うように絶縁層332を形成した後、当該絶縁層332上に、不純物領域326aに電気的に接続する導電層334a、不純物領域326b及び不純物領域328aに電気的に接続する導電層334b、不純物領域328bに電気的に接続する導電層334cを形成する(図3(D)、図4(E)、図5(D)参照)。
絶縁層332としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン等の無機絶縁材料、又はポリイミド、アクリルなどの有機絶縁材料を用いて形成することができる。また、絶縁層332は、単層構造としてもよいし、複数の絶縁層を積層させて積層構造としてもよい。
導電層334a、導電層334b、導電層334cとしては、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、Nd(ネオジム)、スカンジウム(Sc)から選ばれた元素を含む金属、上述の元素を成分とする合金又は上述の元素を成分とする窒化物等からなる材料を用いて、単層又は積層させて形成することができる。これらの材料は、スパッタ法や真空蒸着法等を用いて形成することができる。
以上の工程により、単結晶半導体層320aをチャネル層とするn型のトランジスタ330aと単結晶半導体層320bをチャネル層とするp型のトランジスタ330bを形成することができる。
また、本実施の形態で示すトランジスタの構成おいて、nチャネル型トランジスタ330a及びpチャネル型トランジスタ330bを、そのチャネル長方向が<111>軸から±15°以内、好ましくは<111>軸から±10°以内、より好ましくは<111>軸から±5°以内となるように形成することが好ましい。チャネル長方向をこのような方向とすることにより、nチャネル型トランジスタ及びpチャネル型トランジスタの移動度の差を低減することができる。これにより、nチャネル型トランジスタ及びpチャネル型トランジスタを構成するチャネル層の大きさ(チャネル長L、チャネル幅W)を同程度とすることができるため、静電容量の大きさの差に起因する信号のばらつきを抑制することができる。
なお、本実施の形態では、n型のトランジスタ330aとp型のトランジスタ330bを用いて、CMOS回路を形成する場合を示しているが、これに限られない。また、本実施の形態で示すトランジスタ330a、330bの構成は、様々な形態をとることができ、図で示した構成に限定されない。
<{211}面を用いる利点>
次に、トランジスタのチャネル層の上面を{211}面とする利点について、シミュレーションに基づいて説明する。
はじめに、結晶面および結晶軸を変化させた場合のシリコンの構造を第一原理計算ソフトであるCASTEP(アクセルリス社製)を用いた計算機シミュレーションにより確認した。
{211}面を<111>軸方向から見た構造を図16(A)に示し、{110}面を<110>軸方向から見た構造を図16(B)に示し、{211}面を<110>軸方向から見た構造を図16(C)に示す。
続いて、トランジスタの移動度μと結晶面および結晶軸との関係を考察する。
トランジスタの移動度μは、(7)式で表される。
ここで、τは緩和時間、mは有効質量である。なお、(7)式は等方的な場合に成り立つ式である。
(7)式を、μとτが非等方的な場合にまで拡張すると、(8)式のようになる。
(8)式から分かるように、μと1/mはテンソルである。本来はτも方向依存性を持つが、ここでは簡単のため、等方的であると仮定して計算を行った。具体的には、1/mの方向依存性を計算し、n型キャリアとp型キャリアの移動度が同程度になるシリコン結晶面とチャネル方向を求めた。その結果、{211}面の<111>軸方向において、n型キャリアとp型キャリアの移動度が同程度となる事が分かった。
このように、{211}面の<111>軸方向では、n型キャリアとp型キャリアの移動度が同程度となるため、これを用いてnチャネル型トランジスタ及びpチャネル型トランジスタを形成する場合にはトランジスタのチャネル層の大きさ(チャネル長L、チャネル幅W)を同程度とすることができる。これにより、静電容量の差に起因する信号のばらつきを抑制することができる。
また、nチャネル型トランジスタ及びpチャネル型トランジスタに適した結晶面及び結晶軸を用いてチャネル層を形成することにより、半導体装置の集積化を図ることができる。
<変形例>
上記図1では、1枚のベース基板300と1枚の単結晶半導体基板310を貼り合わせる場合を示したが、本実施の形態はこれに限られない。1枚のベース基板300に複数の単結晶半導体基板を貼り合わせてもよい。以下、ベース基板300に複数の半導体基板を貼り合わせる場合について図6を参照して説明する。
まず、ベース基板300を準備し、当該ベース基板300上に絶縁層302を形成する(図6(A)参照)。ここでは、絶縁層302として、窒化シリコン又は窒化酸化シリコンを用いる場合を示す。
次に、表面に絶縁層312が設けられ、所定の深さに脆化領域314が設けられた単結晶半導体基板310を複数枚(ここでは、3枚)準備し(図6(B)参照)、当該複数の単結晶半導体基板310をベース基板300と貼り合わせる(図6(C)参照)。ここでは、単結晶半導体基板310上に形成された絶縁層312とベース基板300上に形成された絶縁層302を介して貼り合わせを行う。
次に、熱処理を行い脆化領域314において単結晶半導体基板310を分離することにより、ベース基板300上に、それぞれ絶縁層312を介して複数の単結晶半導体層316を設ける(図6(D)参照)。
このように、1枚のベース基板に複数の半導体基板を貼り合わせる場合に、サイズが大きいベース基板300側にバリア層として機能する絶縁層302を形成することによって、ベース基板300上に設けられた複数の単結晶半導体層316の隙間から、当該単結晶半導体層316に不純物が浸入することを効果的に抑制することができる。
なお、本実施の形態において、各々の図で述べた内容は、別の実施の形態で述べた内容に対して、適宜、組み合わせ、又は置き換えることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、単結晶シリコン基板の作製方法について、図面を参照しながら、以下に説明する。
図7(A)に、単結晶シリコン基板の元となる単結晶シリコンインゴット601を示す。単結晶シリコンインゴット601は、例えば、チョクラルスキー法(CZ法)により、<111>軸方向の種結晶を用いて<111>軸方向に成長させることで得られたものを用いることができる。他に、<100>軸方向の種結晶を用いて<100>軸方向に成長させたものや、<110>軸方向の種結晶を用いて<110>軸方向に成長させたものを用いても良い。
次に、単結晶シリコンインゴット601の切断加工、外周研削加工を行う。具体的には、例えば、単結晶シリコンインゴット601の肩部602および尾部603が除去されるように、所定の長さに単結晶シリコンインゴット601を切断する。また、所定の直径となるように外周を研削する。これにより、円筒形の単結晶シリコンインゴット604が得られる(図7(B)参照)。上記切断はバンドソーなどを用いて行うことができる。また、上記の研削は、ダイヤモンドの砥石を備えたホイールを高速回転させ、インゴット表面に接触させることにより行うことができる。
次に、結晶方位を示す指標として、オリエンテーションフラット(オリフラ)又はノッチを付与する。オリフラやノッチは、結晶の方位軸を示す重要な指標であるから、X線を用いた結晶軸の精密測定の後、精密三次元円筒研削盤などを用いて形成される。なお、ここでは<111>軸方向にノッチを付与することとする。もちろん、<111>軸と垂直な方向にノッチを付与しても良い。
次に、ノッチが付与された単結晶シリコンインゴット604を、{111}面に対し、19.47°±15°、好ましくは、19.47°±10°、より好ましくは、19.47°±5°の傾斜角でスライスをすることによって、{211}面から±15°以内の面を表面として有する単結晶シリコン基板605を形成する(図7(C1)および図7(C2)参照)。ここで、図7(C1)は、単結晶シリコン基板の605の斜視図であり、図7(C2)は、単結晶シリコン基板605の平面図である。上記スライスは、枚葉切断方式である外周刃ソーまたは内周刃ソーや、一括切断方式であるマルチワイヤソーなどを用いて行われる。なお、その切断精度から、直径200mm以下では内周刃ソーを、直径200mm以上ではマルチワイヤソーを用いると良い。
なお、<100>軸方向に成長させたインゴットを用いる場合には、{100}面に対し、35.26°±15°、好ましくは、35.26°±10°、より好ましくは、35.26°±5°の傾斜角でスライスをすることによって、{211}面から±15°以内の面を表面として有する単結晶シリコン基板を得ることができる。また、<110>軸方向に成長させたインゴットを用いる場合には、{110}面に対し、30.00°±15°、好ましくは、30.00°±10°、より好ましくは、30.00°±5°の傾斜角でスライスをすることによって、{211}面から±15°以内の面を表面として有する単結晶シリコン基板を得ることができる。
このようにして形成された単結晶シリコン基板605は、円筒形の単結晶シリコンインゴット604を{111}面に対して斜めにスライスしたものであるため、単結晶シリコン基板605の外形は楕円形となっている。単結晶シリコン基板605の外形が楕円形のままでは後工程で取り扱いにくいため、外周研削などにより単結晶シリコン基板605の外形を真円化して、単結晶シリコン基板606を形成することが好ましい(図7(D1)参照)。ここで、図7(D1)は、単結晶シリコン基板606の斜視図であり、図7(D2)は、単結晶シリコン基板606の平面図である。なお、上記真円化は、面取り加工と共に行うことができる。単結晶シリコン基板の外形を真円化することにより、後工程での取り扱い易さを向上させることができる。
図7(E)には、ノッチに代えてオリフラを付与し、その後、真円化を行った単結晶シリコン基板607の上面を示す。この場合においても、<111>軸方向またはこれに垂直な方向にオリフラを付与することが望ましい。
なお、上述の円筒形の単結晶シリコンインゴットを切断加工する場合、{111}面からの傾斜角が大きくなると肩部および尾部の除去量が増大し、単結晶シリコン材料のロスにつながる。また、円筒形の単結晶シリコンインゴットをスライスする際、{111}面からの傾斜角が大きくなると、スライスされた単結晶シリコン基板605の楕円率も大きくなる。単結晶シリコン基板605の楕円率が大きくなると、真円化の際に外周研削による研削量を多くせざるを得ず、この場合にも結果的に単結晶シリコン材料のロスが生じることになる。
上述のような単結晶シリコン材料のロスを低減するためには、例えば、<211>軸方向の種結晶を用いて<211>軸方向に成長させた単結晶シリコンインゴット611を用いると良い(図8(A)参照)。
この場合にも、単結晶シリコンインゴット611の切断加工、外周研削加工を行って単結晶シリコンインゴット614を形成し(図8(B)参照)、その後、オリフラまたはノッチを付与する。切断加工、外周研削加工、オリフラまたはノッチ付与の詳細については、先の説明を参酌することができる。
スライスは、ノッチが付与された単結晶シリコンインゴット614の{211}面から±15°以内、好ましくは、±10°以内、より好ましくは、±5°の面において行う。これにより、{211}面から±15°以内の面を表面として有する単結晶シリコン基板615が形成される(図8(C)、図8(D1)、図8(D2)参照)。なお、図8(D1)は、単結晶シリコン基板615の斜視図であり、図8(D2)は、単結晶シリコン基板615の平面図である。
このように、図8に示す方法で単結晶シリコン基板を形成する場合、図7に示す方法で単結晶シリコン基板を形成する場合と比較して、傾斜角を小さくすることが可能である。このため、傾斜角に起因する単結晶シリコン材料のロスを低減することができるというメリットがある。
なお、上述のようにして形成した単結晶シリコン基板は円形であるが、これを矩形または多角形となるように加工しても良い。例えば、図9に示すように、円形の単結晶シリコン基板621(図9(A)参照)から、矩形の単結晶シリコン基板622(図9(B)参照)、多角形の単結晶シリコン基板623(図9(C)参照)を切り出すことができる。
なお、図9(B)は、円形の単結晶シリコン基板621に内接し、面積が最大となる矩形の単結晶シリコン基板622を切り出す場合について示している。ここで、単結晶シリコン基板622の角部(頂点)の内角は略90度である。また、図9(C)は、上記単結晶シリコン基板622よりも対辺の間隔が長い単結晶シリコン基板623を切り出す場合について示している。この場合、単結晶シリコン基板623の角部(頂点)の内角は90度とはならず、該単結晶シリコン基板623は矩形ではなく多角形となる。
なお、上述の説明は、円形の単結晶シリコン基板を矩形または多角形となるよう加工する場合のものであるが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。例えば、図7に係る工程において、楕円形の単結晶シリコン基板を真円化せずに矩形化しても良い。
以上の工程の後、所定の形状に加工された単結晶シリコン基板に対して、ラッピング、エッチング、ドナーキラー処理、ミラーポリッシング、洗浄等を施すことにより、単結晶シリコン基板を製造することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態において、図面を参照しながら半導体装置の具体的な態様を説明する。
まず、半導体装置の一例として、マイクロプロセッサについて説明する。図10はマイクロプロセッサ500の構成例を示すブロック図である。
マイクロプロセッサ500は、演算回路501(Arithmetic logic unit。ALUともいう。)、演算回路制御部502(ALU Controller)、命令解析部503(Instruction Decoder)、割り込み制御部504(Interrupt Controller)、タイミング制御部505(Timing Controller)、レジスタ506(Register)、レジスタ制御部507(Register Controller)、バスインターフェース508(Bus I/F)、読み出し専用メモリ509、およびメモリインターフェース510を有している。
バスインターフェース508を介してマイクロプロセッサ500に入力された命令は、命令解析部503に入力され、デコードされた後、演算回路制御部502、割り込み制御部504、レジスタ制御部507、タイミング制御部505に入力される。演算回路制御部502、割り込み制御部504、レジスタ制御部507、タイミング制御部505は、デコードされた命令に基づき様々な制御を行う。
演算回路制御部502は、演算回路501の動作を制御するための信号を生成する。また、割り込み制御部504は、マイクロプロセッサ500のプログラム実行中に、外部の入出力装置や周辺回路からの割り込み要求を処理する回路であり、割り込み制御部504は、割り込み要求の優先度やマスク状態を判断して、割り込み要求を処理する。レジスタ制御部507は、レジスタ506のアドレスを生成し、マイクロプロセッサ500の状態に応じてレジスタ506の読み出しや書き込みを行う。タイミング制御部505は、演算回路501、演算回路制御部502、命令解析部503、割り込み制御部504、およびレジスタ制御部507の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えば、タイミング制御部505は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えている。図10に示すように、内部クロック信号CLK2は他の回路に入力される。
次に、非接触でデータの送受信を行う機能、および演算機能を備えた半導体装置の一例を説明する。図11は、このような半導体装置の構成例を示すブロック図である。図11に示す半導体装置は、無線通信により外部装置と信号の送受信を行って動作するコンピュータ(以下、「RFCPU」という)と呼ぶことができる。
図11に示すように、RFCPU511は、アナログ回路部512とデジタル回路部513を有している。アナログ回路部512として、共振容量を有する共振回路514、整流回路515、定電圧回路516、リセット回路517、発振回路518、復調回路519と、変調回路520と、電源管理回路530とを有している。デジタル回路部513は、RFインターフェース521、制御レジスタ522、クロックコントローラ523、CPUインターフェース524、中央処理ユニット525、ランダムアクセスメモリ526、読み出し専用メモリ527を有している。
RFCPU511の動作の概要は以下の通りである。アンテナ528が受信した信号は共振回路514により誘導起電力を生じる。誘導起電力は、整流回路515を経て容量部529に充電される。この容量部529はセラミックコンデンサーや電気二重層コンデンサーなどのキャパシタで形成されていることが好ましい。容量部529は、RFCPU511を構成する基板に集積されている必要はなく、他の部品としてRFCPU511に組み込むこともできる。
リセット回路517は、デジタル回路部513をリセットし初期化する信号を生成する。例えば、電源電圧の上昇に遅延して立ち上がる信号をリセット信号として生成する。発振回路518は、定電圧回路516により生成される制御信号に応じて、クロック信号の周波数とデューティー比を変更する。復調回路519は、受信信号を復調する回路であり、変調回路520は、送信するデータを変調する回路である。
例えば、復調回路519はローパスフィルタで形成され、振幅変調(ASK)方式の受信信号を、その振幅の変動をもとに、二値化する。また、送信データを振幅変調(ASK)方式の送信信号の振幅を変動させて送信するため、変調回路520は、共振回路514の共振点を変化させることで通信信号の振幅を変化させている。
クロックコントローラ523は、電源電圧または中央処理ユニット525における消費電流に応じてクロック信号の周波数とデューティー比を変更するための制御信号を生成している。電源電圧の監視は電源管理回路530が行っている。
アンテナ528からRFCPU511に入力された信号は復調回路519で復調された後、RFインターフェース521で制御コマンドやデータなどに分解される。制御コマンドは制御レジスタ522に格納される。制御コマンドには、読み出し専用メモリ527に記憶されているデータの読み出し、ランダムアクセスメモリ526へのデータの書き込み、中央処理ユニット525への演算命令などが含まれている。
中央処理ユニット525は、CPUインターフェース524を介して読み出し専用メモリ527、ランダムアクセスメモリ526、制御レジスタ522にアクセスする。CPUインターフェース524は、中央処理ユニット525が要求するアドレスより、読み出し専用メモリ527、ランダムアクセスメモリ526、制御レジスタ522のいずれかに対するアクセス信号を生成する機能を有している。
中央処理ユニット525の演算方式は、読み出し専用メモリ527にOS(オペレーティングシステム)を記憶させておき、起動とともにプログラムを読み出し実行する方式を採用することができる。また、専用回路で演算回路を構成して、演算処理をハードウェア的に処理する方式を採用することもできる。ハードウェアとソフトウェアを併用する方式では、専用の演算回路で一部の演算処理を行い、プログラムを使って、残りの演算を中央処理ユニット525が処理する方式を適用できる。
次に、図12、図13を用いて、表示装置について説明する。
図12は液晶表示装置を説明するための図面である。図12(A)は液晶表示装置の画素の平面図であり、図12(B)は、J−K切断線による図12(A)の断面図である。
図12(A)に示すように、画素は、単結晶半導体層820、単結晶半導体層820と交差している走査線822、走査線822と交差している信号線823、画素電極824、画素電極824と単結晶半導体層820を電気的に接続する電極828を有する。単結晶半導体層820は、実施の形態1で示した{211}面から±15°以内の面を上面とする単結晶半導体層であり、画素のTFT825を構成する。
図12(B)に示すように、ベース基板300上に、絶縁層302及び絶縁層312を介して単結晶半導体層820が積層されている。ベース基板300としては、ガラス基板を用いることができる。TFT825の単結晶半導体層820は、単結晶半導体層をエッチングにより素子分離して形成された膜である。単結晶半導体層820には、チャネル形成領域840、不純物元素が添加されたn型の高濃度不純物領域841が形成されている。TFT825のゲート電極は走査線822に含まれ、ソース電極およびドレイン電極の一方は信号線823に含まれている。
層間絶縁膜827上には、信号線823、画素電極824および電極828が設けられている。層間絶縁膜827上には、柱状スペーサ829が形成されている。信号線823、画素電極824、電極828および柱状スペーサ829を覆って配向膜830が形成されている。対向基板832には、対向電極833、対向電極を覆う配向膜834が形成されている。柱状スペーサ829は、ベース基板300と対向基板832の隙間を維持するために形成される。柱状スペーサ829によって形成される隙間に液晶層835が形成されている。信号線823および電極828と高濃度不純物領域841との接続部は、コンタクトホールの形成によって層間絶縁膜827に段差が生じるので、この接続部では液晶層835の液晶の配向が乱れやすい。そのため、この段差部に柱状スペーサ829を形成して、液晶の配向の乱れを防ぐ。
次に、エレクトロルミネセンス表示装置(以下、EL表示装置という。)について図13を参照して説明する。図13(A)はEL表示装置の画素の平面図であり、図13(B)は、J−K切断線による図13(A)の断面図である。
図13(A)に示すように、画素は、TFTでなる選択用トランジスタ401、表示制御用トランジスタ402、走査線405、信号線406、および電流供給線407、画素電極408を含む。エレクトロルミネセンス材料を含んで形成される層(EL層)が一対の電極間に挟んだ構造の発光素子が各画素に設けられている。発光素子の一方の電極が画素電極408である。また、単結晶半導体層403は、選択用トランジスタ401のチャネル形成領域、ソース領域およびドレイン領域が形成されている。単結晶半導体層404は、表示制御用トランジスタ402のチャネル形成領域、ソース領域およびドレイン領域が形成されている。単結晶半導体層403、404は、ベース基板上に設けられた単結晶半導体層から形成された層である。
選択用トランジスタ401において、ゲート電極は走査線405に含まれ、ソース電極またはドレイン電極の一方は信号線406に含まれ、他方は電極411として形成されている。表示制御用トランジスタ402は、ゲート電極412が電極411と電気的に接続され、ソース電極またはドレイン電極の一方は、画素電極408に電気的に接続される電極413として形成され、他方は、電流供給線407に含まれている。
表示制御用トランジスタ402はpチャネル型のTFTである。図13(B)に示すように、単結晶半導体層404には、チャネル形成領域451、およびp型の高濃度不純物領域452が形成されている。なお、本実施の形態で用いる半導体基板は、実施の形態1で作製した半導体基板である。
表示制御用トランジスタ402のゲート電極412を覆って、層間絶縁膜427が形成されている。層間絶縁膜427上に、信号線406、電流供給線407、電極411、413などが形成されている。また、層間絶縁膜427上には、電極413に電気的に接続されている画素電極408が形成されている。画素電極408は周辺部が絶縁性の隔壁層428で囲まれている。画素電極408上にはEL層429が形成され、EL層429上には対向電極430が形成されている。補強板として対向基板431が設けられており、対向基板431は樹脂層432によりベース基板300に固定されている。
EL表示装置の階調の制御は、発光素子の輝度を電流で制御する電流駆動方式と、電圧でその輝度を制御する電圧駆動方式とがあるが、電流駆動方式は、画素ごとでトランジスタの特性値の差が大きい場合、採用することは困難であり、そのためには特性のばらつきを補正する補正回路が必要になる。実施の形態1に係る半導体装置の作製工程を含む製造方法でEL表示を作製することで、選択用トランジスタ401および表示制御用トランジスタ402は画素ごとに特性のばらつきがなくなるため、電流駆動方式を採用することができる。
つまり、実施の形態1に係る半導体装置を用いることで、様々な電気機器を作製することができる。電気機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポなど)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍など)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD(digital versatile disc)などの記録媒体に記憶された音声データを再生し、かつ記憶された画像データを表示しうる表示装置を備えた装置などが含まれる。それらの一例を図14、図15に示す。
図14(A)は表示装置であり、筐体901、支持台902、表示部903、スピーカ部904、ビデオ入力端子905などを含む。この表示装置は、実施の形態1で示した作製方法により形成したトランジスタを駆動ICや表示部903などに用いることにより作製される。なお、表示装置には液晶表示装置、発光表示装置などがあり、用途別にはコンピュータ用、テレビ受信用、広告表示用などの全ての情報表示用表示装置が含まれる。具体的には、ディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、反射型プロジェクターなどを挙げることができる。
図14(B)はコンピュータであり、筐体911、表示部912、キーボード913、外部接続ポート914、ポインティングデバイス915などを含む。実施の形態1に係るトランジスタは、表示部912の画素部だけではなく、表示用の駆動IC、本体内部のCPU、メモリなどの半導体装置にも適用が可能である。
また、図14(C)は携帯電話であり、携帯用の情報処理端末の1つの代表例である。この携帯電話は筐体921、表示部922、操作キー923などを含む。実施の形態1に係る半導体基板を用いて作製されたトランジスタは表示部922の画素部やセンサ部924だけではなく、表示用の駆動IC、メモリ、音声処理回路などに用いることができる。センサ部924は光センサ素子を有しており、センサ部924で得られる照度に合わせて表示部922の輝度コントロールを行うことや、センサ部924で得られる照度に合わせて操作キー923の照明を抑えることによって、携帯電話の消費電力を抑えることができる。
上記の携帯電話を初めとして、PDA(Personal Digital Assistants、情報携帯端末)、デジタルカメラ、小型ゲーム機、携帯型の音響再生装置などの電子機器に、実施の形態1に係る半導体基板を用いることもできる。例えば、CPU、メモリ、センサなどの機能回路を形成することや、これらの電子機器の画素部や、表示用の駆動ICにも適用することが可能である。
また、図14(D)、(E)はデジタルカメラである。なお、図14(E)は、図14(D)の裏側を示す図である。このデジタルカメラは、筐体931、表示部932、レンズ933、操作キー934、シャッターボタン935などを有する。実施の形態1に係るトランジスタは、表示部932の画素部、表示部932を駆動する駆動IC、メモリなどに用いることができる。
図14(F)はデジタルビデオカメラである。このデジタルビデオカメラは、本体941、表示部942、筐体943、外部接続ポート944、リモコン受信部945、受像部946、バッテリー947、音声入力部948、操作キー949、接眼部950などを有する。実施の形態1に係るトランジスタは、表示部942の画素部、表示部942を制御する駆動IC、メモリ、デジタル入力処理装置などに用いることができる。
この他にも、ナビゲーションシステム、音響再生装置、記録媒体を備えた画像再生装置などに用いることが可能である。これらの表示部の画素部や、表示部を制御する駆動IC、メモリ、デジタル入力処理装置、センサ部などの用途に、実施の形態1に係るトランジスタを用いることができる。
図15は、本発明の一態様を適用した携帯電話の一例であり、図15(A)が正面図、図15(B)が背面図、図15(C)が2つの筐体をスライドさせたときの正面図である。図15に示す携帯電話は、筐体701及び筐体702二つの筐体で構成されている。図15に示す携帯電話は、携帯電話と携帯情報端末の双方の機能を備えており、コンピュータを内蔵し、音声通話以外にも様々なデータ処理が可能な所謂スマートフォンである。
図15に示す携帯電話は、筐体701及び筐体702で構成されている。筐体701においては、表示部703、スピーカ704、マイクロフォン705、操作キー706、ポインティングデバイス707、表面カメラ用レンズ708、外部接続端子ジャック709及びイヤホン端子710等を備え、筐体702においては、キーボード711、外部メモリスロット712、裏面カメラ713、ライト714等により構成されている。また、アンテナは筐体701に内蔵されている。
また、図15に示す携帯電話には、上記の構成に加えて、非接触型ICチップ、小型記録装置等を内蔵していてもよい。
重なり合った筐体701と筐体702(図15(A)に示す)は、スライドさせることが可能であり、スライドさせることで図15(C)のように展開する。表示部703には、図12や図13に示される表示装置の作製方法を適用した表示パネル又は表示装置を組み込むことが可能である。表示部703と表面カメラ用レンズ708を同一の面に備えているため、テレビ電話としての使用が可能である。また、表示部703をファインダーとして用いることで、裏面カメラ713及びライト714で静止画及び動画の撮影が可能である。
スピーカ704及びマイクロフォン705を用いることで、図15に示す携帯電話は、音声記録装置(録音装置)又は音声再生装置として使用することができる。また、操作キー706により、電話の発着信操作、電子メール等の簡単な情報入力操作、表示部に表示する画面のスクロール操作、表示部に表示する情報の選択等を行うカーソルの移動操作等が可能である。
また、書類の作成、携帯情報端末としての使用等、取り扱う情報が多い場合は、キーボード711を用いると便利である。更に、重なり合った筐体701と筐体702(図15(A))をスライドさせることで、図15(C)のように展開させることができる。携帯情報端末として使用する場合には、キーボード711及びポインティングデバイス707を用いて、円滑な操作でマウスの操作が可能である。外部接続端子ジャック709はACアダプタ及びUSBケーブル等の各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータ等とのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット712に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動が可能になる。
筐体702の裏面(図15(B))には、裏面カメラ713及びライト714を備え、表示部703をファインダーとして静止画及び動画の撮影が可能である。
また、上記の機能構成に加えて、赤外線通信機能、USBポート、テレビワンセグ受信機能、非接触ICチップ又はイヤホンジャック等を備えたものであってもよい。
図15において説明した電子機器は、上述したトランジスタ及び表示装置の作製方法を適用して作製することができる。