JP5699877B2 - 耐かじり性に優れた高強度鋼板及びその製造方法 - Google Patents

耐かじり性に優れた高強度鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車用鋼板等のプレス成形が行われる鋼板に好適な耐かじり性に優れた高強度鋼板及びその製造方法に関する。
自動車等の部品は鋼板をプレス成形することで大量かつ安価に生産されることが多い。近年、鋼板の高強度化に対する要求が高まっているが、高強度鋼板をプレス成形するには高い圧力で高強度鋼板を抑えつけることが重要である。しかしながら、このようなプレス成形では高強度鋼板と金型との間にかじりが発生しやすく、金型が損傷して生産性が大きく損なわれることがある。
従来、かじりを抑制すること等を目的として、鋼板の表面に被膜を形成する技術が提案されている(特許文献1〜4)。しかしながら、被膜の形成のためには大規模な設備が必要とされるため、これらの技術では、製造コストが大幅に上昇してしまう。
また、かじりを抑制すること等を目的として、鋼板の表面の幾何学形状を制御する技術も提案されている(特許文献5〜9)。しかしながら、これらの技術では、圧延ロールの表面形状を精緻に管理したり、鋼板に粒子を投射したりする必要があるため、工程負荷の増大や大規模な設備の投入等に伴って製造コストが大幅に上昇してしまう。
また、耐かじり性の向上等のために鋼板表面を軟質な組織とする技術も提案されている(特許文献10)。しかしながら、非特許文献1に記載されているように、鋼板表面を軟質な組織とすると耐かじり性は劣化させるため、耐かじり性は不十分である。
このように、従来、大幅なコストの上昇を伴わなければ、十分な耐かじり性を得ることは困難である。
特開2004−211151号公報 特開2008−081808号公報 特開2007−138216号公報 特開2007−138213号公報 特開2010−126808号公報 特開2010−229514号公報 特開2010−255060号公報 特開2006−007233号公報 特開2005−240148号公報 特開2006−070328号公報
「塑性加工におけるトライポロジ」、 塑性加工学会、 1988、 コロナ社
本発明は、大幅なコストの上昇を回避しながら、かじりを十分に抑制することができる耐かじり性に優れた高強度鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、高強度鋼板に微細なSi及び/又はMnを含む酸化物を表面から一定の深さに分散させ、その直下における硬さを十分に高めることで高強度及び優れた耐かじり性を両立した高強度鋼板が得られることを見出した。
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)
質量%で、
C:0.075%〜0.350%、
Si:0.30%〜2.50%、
Mn:1.20%〜3.50%、
P:0.001%〜0.100%、
S:0.0001%〜0.0100%、
Al:0.005%〜2.500%、及び
N:0.0001%〜0.0100%、
を含有し、
残部が鉄及び不可避的不純物からなり、
粒子径が20nm以上のSi及び/又はMnを含む酸化物粒子が2.5μm以下の平均粒子間距離で分散した領域が表面から0.3μm〜15μmの平均深さの範囲に存在し、その領域における該酸化物粒子の平均粒子径が0.3μm以下であり、その領域との界面からの深さが30μmの箇所における平均硬さがHv250以上であることを特徴とする高強度鋼板。
(2)
更に質量%で、Ca、Ce、Mg、REMの1種又は2種以上を合計で0.0001%〜0.500%含有することを特徴とする(1)に記載の高強度鋼板。
(3)
更に質量%で、
Ti:0.001%〜0.150%、
Nb:0.001%〜0.100%、
V:0.001%〜0.500%、及び
W:0.01%〜1.00%、
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の高強度鋼板。
(4)
更に質量%で、
B:0.0001%〜0.0100%、
Cr:0.01%〜1.50%、
Cu:0.01%〜1.50%、
Ni:0.01%〜1.50%、及び
Mo:0.01%〜0.50%、
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の高強度鋼板。
(5)
前記Si及び/又はMnを含む酸化物粒子のうちフェライト粒界上に存在するものの割合が30%以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の高強度鋼板。
(6)
前記Si及び/又はMnを含む酸化物を含む領域から深さが30μmの箇所におけるミクロ組織が面積分率で10%以上75%以下のフェライトを有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の高強度鋼板。
(7)
前記Si及び/又はMnを含む酸化物を含む領域から深さが30μmの箇所におけるミクロ組織が更に焼戻しマルテンサイトを面積分率で10%以上50%以下、ベイナイトとベイニティックフェライトの一方あるいは双方を合わせて10%以上50%以下有し、
前記ミクロ組織に含まれる焼入れままマルテンサイトの面積分率が30%以下であることを特徴とする(6)に記載の高強度鋼板。
(8)
前記Si及び/又はMnを含む酸化物を含む領域から深さが30μmの箇所におけるミクロ組織が更に面積分率で2%以上25%以下の残留オーステナイトを有することを特徴とする(6)又は(7)に記載の高強度鋼板。
(9)
粒子径が20nm以上のSi及び/又はMnを含む酸化物粒子が2.5μm以下の平均粒子間距離で分散した領域が表面から0.3μm〜15μmの平均深さの範囲に存在し、その領域における該酸化物粒子の平均粒子径が0.3μm以下であり、その領域との界面からの深さが30μmの箇所における平均硬さがHv250以上である高強度鋼板を製造する方法であって、
質量%で、
C:0.075%〜0.350%、
Si:0.30%〜2.50%、
Mn:1.20%〜3.50%、
P:0.001%〜0.100%、
S:0.0001%〜0.0100%、
Al:0.005%〜2.500%、及び
N:0.0001%〜0.0100%、
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるスラブを鋳造する工程と、
前記スラブを直接又は一旦冷却した後1050℃以上に加熱し、1250℃から800℃の温度域において、式1で表わされるパラメータPの値が5.0〜10.0となる条件で熱間圧延を行い、前記熱間圧延の最終圧延温度を840℃以上とし、550℃〜750℃の温度域にて巻取る工程と、
400℃まで1℃/分以下の平均冷却速度で冷却を行う工程と、
更に100℃以下まで冷却し、式2で表わされるパラメータQの値が0.3〜3.0となる条件で酸洗を行う工程と、
35%〜70%の圧下率で冷間圧延を施す工程と、
760℃以上の最高加熱温度で焼鈍を行う工程と、
を有することを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
Figure 0005699877
なお、式1中の「Ti」は第iパス目の圧延温度(K)を示し、「ti」は第iパス目から第i+1パス目までの経過時間(秒)を示し、「hi」は第iパス目の圧延後の板厚を示す。但し、「T0」は加熱炉からの抽出温度又は1250℃のうちより低温な温度であり、「Tn+1」は800℃であり、「tn」は圧延完了から鋼板の温度が800℃に至るまでの経過時間であり、「h0」はスラブの板厚である。
Figure 0005699877
なお、式2中の「T」は酸洗液の温度(K)を示し、「t」は滞留時間(秒)を示し、「ω」は酸洗液の濃度(%)を示し、「A」は酸洗液の種類に応じた定数である。「A」の値は、例えば、酸洗液が塩酸の場合は2150(K-1)であり、硫酸の場合は2780(K-1)である。
(10)
最高焼鈍温度から室温までの冷却工程において、730℃〜550℃間の冷却を平均冷却速度5℃/s以上で行い、冷却停止温度をMs点以下とし、Ms点〜Bs点間の温度まで再加熱することを特徴とする(9)に記載の高強度鋼板の製造方法。
(11)
前記スラブが、更に質量%でCa、Ce、Mg、REMの1種又は2種以上を合計で0.0001%〜0.500%含有することを特徴とする(9)又は(10)に記載の高強度鋼板の製造方法。
(12)
前記スラブが、更に質量%で、
Ti:0.001%〜0.150%、
Nb:0.001%〜0.100%、
V:0.001%〜0.500%、及び
W:0.01%〜1.00%、
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする(9)〜(11)のいずれか1項に記載の高強度鋼板の製造方法。
(13)
前記スラブが、更に質量%で、
B:0.0001%〜0.0100%、
Cr:0.01%〜1.50%、
Cu:0.01%〜1.50%、
Ni:0.01%〜1.50%、及び
Mo:0.01%〜0.50%、
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする(9)〜(12)のいずれか1項に記載の高強度鋼板の製造方法。
本発明によれば、適切な酸化物粒子含有領域の作用及び硬さの調整により、大幅なコストの上昇を回避しながら、耐かじり性を向上することができる。
本発明の実施形態に係る耐かじり性に優れた高強度鋼板を示す断面図である。 本発明の実施形態に係る耐かじり性に優れた高強度鋼板の製造方法を工程順に示す断面図である。
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る耐かじり性に優れた高強度鋼板を示す断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る高強度鋼板1には、基部2、及びその両表面に位置する酸化物粒子含有領域3が含まれている。
ここで、高強度鋼板1及びその製造に用いる鋼の化学組成について説明する。なお、以下の説明における含有量の単位である「%」は「質量%」を意味する。
C:0.075%〜0.350%
Cは高強度鋼板の強度を高めるために含有される。Cの含有量が0.075%未満では、十分な強度が得られない。一方、Cの含有量が0.350%を超えると、溶接性が著しく劣化する。従って、Cの含有量は0.075%〜0.350%とする。また、Cの含有量は、0.080%以上であることが好ましく、0.085%以上であることが更に好ましい。更に、Cの含有量は0.300%以下であることが好ましく、0.250%以下であることが更に好ましい。
Si:0.30%〜2.50%
Siは高強度鋼板の最表層において微細な酸化物粒子を密に生成させ、耐かじり性を大幅に向上するために含有される。詳細は後述するが、この酸化物粒子が酸化物粒子含有領域3に含まれている。Siの含有量が0.30%未満では、酸化物粒子の生成が不十分となり、耐かじり性を十分に確保できない。一方、Si含有量が2.50%を超えると、高強度鋼板が脆化する。従って、Siの含有量は0.30%〜2.50%とする。また、耐かじり性の観点から、Siの含有量は0.50%以上であることが好ましく、0.7%以上であることが更に好ましい。更に、Siの含有量は2.20%以下であることが好ましく、2.00%以下であることが更に好ましい。
Mn:1.20%〜3.50%
Mnは高強度鋼板の焼入れ性を高めることから、高強度鋼板の表面近くにおいて十分な硬質組織を生成させ、酸化物粒子の分散した領域(酸化物粒子含有領域3)の直下における強度を高め、耐かじり性を向上させるために添加する。また、高強度鋼板の最表層において微細な酸化物粒子を形成することからも、耐かじり性を向上させる。Mnの含有量が1.20%未満であると、焼入れ性が十分でなく、高強度鋼板の表層部における強度が大幅に低下し、耐かじり性が劣化する。一方、Mnの含有量が3.50%を超えると、Mn偏析に起因した局所的な脆化が起こりやすくなり、プレス成形性が著しく劣化する。従って、Mnの含有量は1.20%〜3.50%とする。また、高強度鋼板の表層部における強度を高めるため、Mnの含有量は1.35%以上であることが好ましく、1.50%以上であることが更に好ましい。更に、脆化を避けるため、Mnの含有量は3.20%以下であることが好ましく、3.00%以下であることが更に好ましい。
P:0.001%〜0.100%
Pは高強度鋼板の板厚中央部に偏析する傾向があり、溶接部を脆化させる。そして、Pの含有量が0.100%を超えると、溶接部の脆化が顕著になる。一方、Pの含有量を0.001%未満とすることは、経済的に不利である。従って、Pの含有量は0.001%〜0.100%とする。
S:0.0001%〜0.0100%
Sは、溶接性に悪影響を及ぼす。また、SはMnと結びついて粗大なMnSを形成してプレス成形性を低下させる。そして、Sの含有量が0.0100%を超えると、溶接性の低下及びプレス成形性の低下が顕著となる。一方、Sの含有量を0.0001%未満とすることは、経済的に不利である。従って、Sの含有量は0.0001%〜0.0100%とする。
Al:0.005%〜2.500%
Alは脱酸剤として添加する。しかし、Alの含有量が0.005%未満では、十分な効果が得られない。また、Alは鉄系炭化物の生成を抑え、残留オーステナイト分率を高める作用も呈する。一方、Alの含有量が過剰となると、高強度鋼板中のフェライト分率が高くなって強度が低下する。そして、Alの含有量が2.500%を超えると、この傾向が顕著となる。従って、Alの含有量は0.005%〜2.500%とする。また、Alの含有量は2.000%以下であることが好ましく、1.600%以下であることが更に好ましい。
N:0.0001%〜0.0100%
Nは、粗大な窒化物を形成し、プレス成形性を劣化させる。そして、Nの含有量が0.0100%を超えると、この傾向が顕著となる。また、Nは、溶接時のブローホール発生の原因になることから少ない方がよい。Nの含有量の下限は、特に定めることなく本発明の効果は発揮されるが、Nの含有量を0.0001%未満にすると、製造コストの大幅な増加を招く。従って、Nの含有量は0.0001%〜0.0100%とする。また、Nの含有量は、製造コストの点から0.0005%以上であることが好ましい。
なお、高強度鋼板1が、必要に応じて、以下に示す元素を更に含んでいてもよい。
Ca、Ce、Mg、及びREM(希土類金属)の1種又は2種以上:合計で0.0001%〜0.500%
Ca、Ce、Mg、及びREMは、高強度鋼板の強度の向上や材質の改善に寄与する。Ca、Ce、Mg、及びREMの1種又は2種以上の含有量が0.0001%未満であると、十分な効果が得られない場合がある。一方、Ca、Ce、Mg、及びREMの1種又は2種以上の含有量が0.500%を超えると、延性を損なう可能性があり、成形加工性の悪化の原因となる。従って、Ca、Ce、Mg、及びREMの1種又は2種以上の含有量は、合計で0.0001%〜0.500%であることが好ましい。なお、REMとは、ランタノイド系列に属する元素をさす。REM及びCeはミッシュメタルにて添加することができる。ミッシュメタルがLa及びCeの他にランタノイド系列の元素を複合で含有する場合もある。なお、不可避不純物として、これらLa及びCe以外のランタノイド系列の元素が含まれていても本発明の効果が得られる。また、金属Laや金属Ceが添加されても本発明の効果は発揮される。
Ti:0.001%〜0.150%
Tiは微細な炭窒化物を形成し、析出強化、フェライト粒径の微細化による細粒強化、及び再結晶の抑制による転位強化によって強度を高める元素である。Tiの含有量が0.001%未満では、高強度鋼板の強化が十分となりにくい。一方、Tiの含有量が過度に大きくなると、延性が劣化して成形性が損なわれやすくなり、Tiの含有量が0.150%以下を超えると、この傾向が顕著となる。従って、Tiの含有量は0.001%〜0.150%であることが好ましい。また、Tiの含有量は、強化の観点から、0.010%以上であることが更に好ましく、0.015%以上であることがより一層好ましい。更に、Tiの含有量は0.120%以下であることが更に好ましい。
Nb:0.001%〜0.100%
Nbは、Tiと同様に、微細な炭窒化物を形成し、析出強化、フェライト粒径の微細化による細粒強化、及び再結晶の抑制による転位強化によって強度を高める元素である。Nbの含有量が0.001%未満では、高強度鋼板の強化が十分となりにくい。一方、Nbの含有量が過度に大きくなると、延性が劣化して成形性が損なわれやすくなり、Nbの含有量が0.100%を超えると、この傾向が顕著となる。従って、Nbの含有量は0.001%〜0.100%とすることが好ましい。また、Nbの含有量は、強化の観点から、0.005%以上であることが更に好ましく、0.010%以上であることがより一層好ましい。更に、Nbの含有量は0.080%以下であることが更に好ましい。
V:0.001%〜0.500%
Vは、Ti及びNbと同様に、微細な炭窒化物を形成し、析出強化、フェライト粒径の微細化による細粒強化、及び再結晶の抑制による転位強化によって強度を高める元素である。Vの含有量が0.001%未満では、高強度鋼板の強化が十分となりにくい。一方、Vの含有量が過度に大きくなると、延性が劣化して成形性が損なわれやすくなり、Vの含有量が0.500%を超えると、この傾向が顕著となる。従って、Vの含有量は0.001%〜0.500%とすることが好ましい。また、Vの含有量は、強化の観点から、0.010%以上であることが更に好ましく、0.015%以上であることがより一層好ましい。更に、Vの含有量は0.300%以下であることが更に好ましい。
W:0.01%〜1.00%
Wは微細な炭化物を形成して高強度鋼板の強度を向上させる元素である。Wの含有量が0.01%未満では、高強度鋼板の強化が十分となりにくい。一方、Wの含有量が過度に大きくなると、延性が劣化して成形性が損なわれやすくなり、Wの含有量が1.00%を超えると、この傾向が顕著となる。従って、Wの含有量は0.01%〜1.00%であることが好ましい。また、Wの含有量は0.02%以上であることが更に好ましい。更に、Wの含有量は0.80%以下であることが更に好ましい。
B:0.0001%〜0.0100%
Bは鋼板の焼入れ性を飛躍的に高めることから、高強度鋼板の表面近くにおいて十分な硬質組織を生成させ、酸化物粒子の分散した領域の直下における強度を高め、耐かじり性を向上させる。Bの含有量が0.0001%未満であると、これらの効果、特に焼き入れ性の向上の効果を得にくくなる。一方、Bの含有量が0.0100%を超えると、成形性を著しく損なうことがある。従って、Bの含有量は0.0001%〜0.0100%であることが好ましい。また、Bの含有量は0.0003%以上であることが更に好ましい。更に、Bの含有量は0.0060%以下であることが更に好ましい。
Cr:0.01〜1.50%、Cu:0.01〜1.50%、Ni:0.01〜1.50%、Mo:0.01〜0.50%
Cr、Cu、Ni、及びMoは、強度の向上に寄与する元素である。Cr、Cu、Ni、及びMoの含有量がそれぞれ0.01%未満であると、十分な強化が得られないことがある。一方、Cr、Cu、及びNiの含有量がそれぞれ1.50%を超えると、酸洗性、溶接性、熱間加工性等が劣化することがある。また、Moの含有量が0.50%を超えると、酸洗性、溶接性、熱間加工性等が劣化することがある。従って、Cr、Cu、及びNiの含有量は、それぞれ0.01%〜1.50%であることが好ましく、Moの含有量は0.01%〜0.50%であることが好ましい。
なお、高強度鋼板1及びその製造に用いる鋼の残部はFe及び不可避的不純物からなる。
次に、酸化物粒子含有領域3について説明する。酸化物粒子含有領域3は、高強度鋼板1の両表面から0.3μm〜15μmの平均深さの範囲に存在する。そして、酸化物粒子含有領域3内には、粒子径が20nm以上のSi及び/又はMnを含む酸化物粒子が2.5μm以下の平均粒子間距離で分散している。また、これら酸化物粒子の平均粒子径は0.3μm以下である。
高強度鋼板の優れた耐かじり性を実現するには、その表面の潤滑性を高めることが重要である。高強度鋼板1の表面近傍に微細な酸化物の粒子が密に分散した領域(酸化物粒子含有領域3)が設けられている場合、高い板抑え圧が加えられて高強度鋼板1が成形される際に、酸化物粒子含有領域3とそれよりも内部の基部2との界面近傍に多数のボイドが発生し、酸化物粒子含有領域3の一部又は全部が微細な粒子となる。そして、この微細な粒子が高強度鋼板1と金型との間で固体潤滑材と同様に作用し、高強度鋼板1の表面の潤滑性が飛躍的に高まる。
本発明者が鋭意検討を行ったところ、上記の潤滑性の向上の効果を得るためには、酸化物粒子含有領域3に含まれる、粒子径が20nm以上の酸化物粒子の平均粒子径及び分布形態が重要であることが判明した。なお、粒子径が20nm未満の酸化物粒子が存在しても、それだけでは成形時に酸化物粒子の周辺に応力が十分に集中せず、酸化物粒子含有領域3と基部2との界面近傍にボイドが発生しにくい。従って、粒子径が20nm未満の酸化物粒子は、潤滑性の向上にほとんど寄与しない。このような知見に基づいて、本発明者は、酸化物粒子含有領域3に含まれる、粒子径が20nm以上の酸化物粒子の粒子径、粒子間距離、及び酸化物粒子の分散した領域の深さを、高強度鋼板の圧延方向に平行な板厚断面において、鏡面に研磨した断面を電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM:field emission scanning electron microscope)を用いた観察により測定した。このとき、平均粒子間距離は、合計で7μm2以上の領域において単位面積あたりの酸化物粒子の個数密度を測定し、その平方根とした。平均粒子径は、平均粒子間距離を求めた領域において、50個以上の酸化物粒子の長径及び短径を測定し、それぞれの円相当径を求め、その平均値とした。酸化物の分散した領域の平均深さは、互いに高強度鋼板の圧延方向に1.0mm以上離れた3ヶ所以上の観察点において酸化物粒子含有領域3の深さを測定し、その平均値とした。また、酸化物粒子の組成の分析はFE−SEMに併設したエネルギー分散型X線分光器を用いて行った。酸化物粒子のうち、粒子径を測定したものから10個を選んで化学組成の分析を行ったところ、Si及び/又はMnが含まれることが確認された。
そして、平均粒子間距離、平均粒子径、及び平均深さと耐かじり性等との関係について検討した。この結果、以下の事項が見出された。
酸化物粒子の平均粒子間距離が大きいほど、酸化物粒子含有領域3と基部2との界面近傍において発生するボイド同士の間隔が大きくなる。上記のような成形の際の粒子の発生はボイドの連結に伴って生じるため、ボイド同士の間隔が大きくなるほど、発生する粒子は大きくなる。この結果、成形後に粗大な粒子が残存して成形後の外観が損なわれることがある。そして、この傾向は、平均粒子間距離が2.5μm超の場合に顕著である。従って、酸化物粒子含有領域3における平均粒子間距離は2.5μm以下とする。また、発生する粒子をより細かくし、潤滑性及び外観品位をより良好にするために、平均粒子間距離が1.5μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることが更に好ましい。平均粒子間距離の下限は特に設定しないが、過度に平均粒子間距離を小さくすると、酸化物粒子含有領域3における地鉄の割合が低下し、外観が損なわれる可能性がある。このため、平均粒子間距離は0.05μm以上であることが好ましい。
酸化物粒子の平均粒子径が大きいほど、過度に大きなボイドが発生しやすくなり、このボイドを発生源とした割れが成形時に生じることがある。そして、このような割れは、平均粒子径が0.30μm超の場合に顕著に発生する。従って、酸化物粒子含有領域3に含まれる酸化物粒子の平均粒子径は0.30μm以下とする。また、成形時の割れをより抑制するために、平均粒子径は0.15μm以下であることが好ましく、0.10μm以下であることが更に好ましい。なお、上述の通り、粒子径が20nm未満の酸化物粒子ではボイドの発生が抑制されることから、平均粒子径は20nmであることが好ましい。
上述の通り、酸化物粒子含有領域3の一部又は全部は、成形時に微細な粒子となる。この粒子の量が過剰であると、成形後に高強度鋼板1の表面に多量の粒子が残り、外観が損なわれることがある。そして、この傾向は、酸化物粒子含有領域3の平均厚さが15μm超の場合に顕著となる。従って、粒子径が20nm以上のSi及び/又はMnを含む酸化物粒子が2.5μm以下の平均粒子間距離で分散した領域である酸化物粒子含有領域3の平均厚さは15μm以下とする。また、過剰な粒子の発生をより確実に抑制するために、酸化物粒子含有領域3の平均厚さは12μm以下であることが好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。一方、酸化物粒子含有領域3の厚さが0.3μm未満であると、潤滑性の向上に十分な量の粒子が発生しないことがある。従って、酸化物粒子含有領域3の平均厚さは0.3μm以上とする。また、潤滑性をより良好なものとするために、酸化物粒子含有領域3の平均厚さは0.4μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることが更に好ましい。
酸化物粒子含有領域3を含む高強度鋼板1を得るためには、鉄中に大量に固溶し、かつ酸化物形成傾向の強いSi及び/又はMnを含む酸化物粒子を生成させることで地鉄の結晶粒内での核生成を促進することが重要である。つまり、結晶粒界等における酸化物の偏在を抑制することが重要である。Si及び/又はMnを含む酸化物としては、具体的には、例えば、SiO2、FeSiO3、Fe2SiO4、MnO、MnSiO3、及びMn2SiO4が挙げられる。また、これらの2種以上を含む複合酸化物もSi及び/又はMnを含む酸化物の一例に該当する。
上記のように、潤滑性を大きく高める微細な粒子を成形時に発生させるためには、Si及び/又はMnを含む酸化物粒子が偏在しないことが好ましい。その一方で、酸化物粒子は地鉄フェライトの結晶粒界に生成しやすいという傾向がある。このため、Si及び/又はMnを含む酸化物粒子のうち、フェライト粒界上に存在するものの割合が個数割合で30%以下であることが好ましく、25%以下であることが更に好ましい。
次に、基部2について説明する。本実施形態では、酸化物粒子含有領域3と基部2との界面から基部2側に30μm離間した箇所における平均硬さ(ビッカース硬さ)がHv250以上である。つまり、基部2の酸化物粒子含有領域3との界面からの深さが30μmの箇所における平均硬さがHv250以上である。
高強度鋼板の耐かじり性を高めるには、上記のような潤滑性の向上に加え、成形時に粒子が発生した後に露出する部位の硬さも重要である。上記のように、酸化物粒子含有領域3の一部又は全部が成形時に微細な粒子となって基部2から離脱する。従って、硬さが重要な部位は、基部2の表層部である。
なお、ここでいう硬さとは、ビッカース硬さ試験等で測定されるマクロな硬さを指し、ナノインデンテーション法等により測定される極微小な領域における硬さとは異なる。これは、詳細は後述するが、高強度鋼板1のミクロ組織は複合組織であるため、極微小な領域における硬さでは、その測定箇所の組織の影響を受けやすく、高強度鋼板1の硬さを代表することができないためである。このような知見に基づいて、本発明者は、酸化物粒子含有領域3と基部2との界面から基部2側に30μm離間した箇所における平均硬さを求めた。このとき、平均硬さは、高強度鋼板の圧延方向に互いに1mm以上離れた3ヶ所以上においてビッカース硬さを測定し、その平均値とした。ビッカース硬さの測定では、荷重を100gfとした。100gfの荷重で形成される圧痕の大きさは、フェライト粒径に代表されるミクロ組織の構成単位よりも十分に大きなものとなる。従って、確実にマクロな硬さを評価することができる。
なお、ビッカース硬さの測定箇所を酸化物粒子含有領域3と基部2との界面に近い箇所ほど、成形時に粒子が離脱した後の耐かじり性をよく反映するが、当該界面にあまり近い箇所に上記のような十分な大きさの圧痕を形成すると、圧痕が基部2内のみならず酸化物粒子含有領域3にまで及ぶことがある。この場合、粒子が離脱した後の耐かじり性の評価に誤差が生じやすい。当該界面から基部2側に30μm離間した箇所であれば、耐かじり性を十分に反映しながら、測定に十分な大きさ圧痕を形成することができる。
そして、当該箇所における平均硬さと耐かじり性等との関係について検討した結果、以下の事項が見出された。
すなわち、基部2の酸化物粒子含有領域3との界面からの深さが30μmの箇所における平均硬さがHv250以上であれば、十分な耐かじり性が得られる。当該箇所の硬さが高いほど耐かじり性は向上するため、平均硬さはHv275以上であることが好ましく、Hv300以上であることが更に好ましい。一方、平均硬さがHv500超であると、割れ感受性の低下を招くため、成形時に高強度鋼板の取り扱いにおいて不可避の微細な傷を起点とした割れが進展することがある。このため、平均硬さはHv500以下であることが好ましく、Hv450以下であることが更に好ましい。
なお、高強度鋼板1のミクロ組織は特に限定されないが、基部2の酸化物粒子含有領域3との界面からの深さが30μmの箇所において、以下に示すものとなっていることが好ましい。高強度及び耐かじり性に加えて、十分な成形性を確保するためである。
フェライトは延性の向上に有効な組織であり、プレス加工における成形性を高める。そして、成形性の向上は、ミクロ組織に面積分率で10%以上のフェライトが含まれている場合に顕著となる。従って、フェライトの面積分率は10%以上であることが好ましく、15%以上であることが更に好ましく、20%以上であることがより一層好ましい。一方、この面積分率が75%超であると、高い強度を保つことが困難となることがある。従って、フェライトの面積分率は75%以下であることが好ましく、65%以下であることが更に好ましい。
ベイナイト及びベイニティックフェライトは高強度鋼板の成形性を高める。また、ベイナイト及びベイニティックフェライトが含まれていても、強度の低下は小さい。そして、成形性の向上は、ミクロ組織に面積分率で10%以上のベイニティックフェライト及び/又はベイナイトが含まれている場合に顕著となる。従って、ベイニティックフェライト及び/又はベイナイトの総面積分率は10%以上であることが好ましく、15%以上であることが更に好ましく、20%以上であることがより一層好ましい。一方、この総面積分率が50%超であると、高い強度を保つことが困難となることがある。従って、ベイニティックフェライト及び/又はベイナイトの総面積分率は50%以下であることが好ましく、45%以下であることが更に好ましい。
焼戻しマルテンサイトは鋼板の強度を高める。また、焼戻しマルテンサイトが含まれていても、延性の劣化は小さい。そして、成形性の向上は、ミクロ組織に面積分率で10%以上の焼戻しマルテンサイトが含まれている場合に顕著となる。従って、焼戻しマルテンサイトの面積分率は10%以上であることが好ましく、15%以上であることが更に好ましく、20%以上であることがより一層好ましい。一方、焼戻しマルテンサイトの面積分率が50%超であると、延性が大きく劣化することがある。従って、焼戻しマルテンサイトの面積分率は50%以下であることが好ましく、45%以下であることが更に好ましい。
焼入れままマルテンサイトは鋼板の強度を飛躍的に高めるが、一方で破壊の起点となってプレス成形性を劣化させる。そして、プレス成形性の劣化は、ミクロ組織に面積分率で30%超の焼入れままマルテンサイトが含まれている場合に顕著となる。従って、焼入れままマルテンサイトの面積分率は30%以下であることが好ましく、25%以下であることが更に好ましく、15%以下であることがより一層好ましい。
残留オーステナイトは鋼板の延性を飛躍的に高める。そして、延性の向上は、ミクロ組織に面積分率で2%以上の残留オーステナイトが含まれている場合に顕著となる。従って、残留オーステナイトの面積分率は2%以上であることが好ましく、5%以上であることが更に好ましい。一方、残留オーステナイトの面積分率を25%超とするには、C及びMn等のオーステナイト安定化元素を多量に添加する必要があるため、溶接性が著しく劣化することがある。従って、残留オーステナイトの面積分率は25%以下であることが好ましく、20%以下であることが更に好ましい。
なお、これらのミクロ組織に含まれる各組織の面積分率は、例えば、以下に示す方法により測定できる。
フェライト、ベイニティックフェライト、ベイナイト、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積分率は、FE−SEMを用いて、基部2の酸化物粒子含有領域3との界面からの深さが30μmの点を中心とする視野の観察により測定することができる。この観察用の試料の作製では、例えば、高強度鋼板の圧延方向に平行な板厚断面を観察面として試料を採取し、観察面を研磨、ナイタールエッチングする。FE−SEMで観察した観察面の面積は、例えば一辺が30μmの正方形の面積とすることができ、各観察面において各組織は、以下に示すように区別できる。
フェライトは塊状の結晶粒であって、内部に長径が100nm以上の鉄系炭化物が無い領域である。なお、フェライトの面積分率は、最高加熱温度において残存するフェライト、及びフェライト変態温度域で新たに生成したフェライトの面積分率の和である。製造中にフェライトの面積分率を直接測定することは困難であるが、連続焼鈍ラインに通板させる前の冷延鋼板の小片を切り出し、その小片を連続焼鈍ラインに通板させた場合と同じ温度履歴で焼鈍して、小片のフェライトの体積の変化を測定し、その結果を用いて算出した数値をフェライトの面積分率とすることができる。
ベイニティックフェライトは、ラス状及び/又は板状の結晶粒の集合であり、ラスの内部に長径が20nm以上の鉄系炭化物を含まないものである。
ベイナイトは、ラス状及び/又は板状の結晶粒の集合であり、結晶粒の内部に長径が20nm以上の鉄系炭化物を複数有し、更にそれらの炭化物が単一のバリアント、すなわち同一の方向に伸張した鉄系炭化物群に属するものである。ここで、同一の方向に伸長した鉄系炭化物群とは、鉄系炭化物群の伸長方向の差異が5°以内であるものを意味している。
焼戻しマルテンサイトは、ラス状及び/又は板状の結晶粒の集合であり、結晶粒の内部に長径が20nm以上の鉄系炭化物を複数有し、更にそれらの炭化物が複数のバリアント、すなわち異なる方向に伸長した複数の鉄系炭化物群に属するものである。
また、残留オーステナイトの面積分率は、基部2の酸化物粒子含有領域3との界面からの深さが30μmの、高強度鋼板1の板面に平行な面を観察面としたX線解析から算出することができる。
なお、高強度鋼板1のミクロ組織に、パーライト及び/又は粗大なセメンタイト等の上記以外の組織が含まれていてもよい。しかし、高強度鋼板1のミクロ組織に含まれるパーライト及び/又は粗大なセメンタイトが過剰となると、延性が劣化する。そして、延性の劣化は、パーライト及び/又は粗大なセメンタイトの総面積分率が10%超である場合に、顕著となる。従って、パーライト及び/又は粗大なセメンタイトの総面積分率は10%以下であることが好ましく、5%以下であることが更に好ましい。
なお、FE−SEMを用いて結晶粒内部の鉄系炭化物を観察し、その伸長方向を調べることによって、ベイナイト及び焼戻しマルテンサイトは互いに容易に区別しうる。
また、フレッシュマルテンサイト及び残留オーステナイトは、ナイタールエッチングでは十分に腐食されない。従って、FE−SEMによる観察において上述の組織(フェライト、ベイニティックフェライト、ベイナイト、焼戻しマルテンサイト)とは明瞭に区別される。
従って、フレッシュマルテンサイトの面積分率は、FE−SEMにて観察された腐食されていない領域の面積分率と、X線によって測定した残留オーステナイトの面積分率との差分として求められる。
なお、酸化物粒子含有領域3は、基部2の両面に存在している必要はなく、少なくともプレス成形時に金型が接する面に設けられていればよい。
次に、高強度鋼板1の製造方法について説明する。
先ず、上述した化学成分(組成)を有するスラブを鋳造する。このスラブとしては、連続鋳造スラブや薄スラブキャスター等で製造したもの等を用いることができる。
次いで、スラブの熱間圧延を行う。この熱間圧延では、圧延条件を制御して、熱延鋼板の表層におけるスケールの形成、及びスケールと地鉄との界面から地鉄側におけるSi及び/又はMnが偏在した領域の形成を進める。また、コイルの巻取り条件を制御し、スケールと地鉄との界面から地鉄側におけるSi及び/又はMnを含む微細な酸化物粒子の形成を進める。具体的には、スラブを1050℃以上に加熱し、直接又は一旦冷却した後1050℃以上に加熱し、1250℃から800℃の温度域において、式1で表わされるパラメータPの値が5.0〜10.0となる条件で圧延を行い、最終圧延温度を840℃以上とし、550℃〜750℃の温度域にて巻取る。
Figure 0005699877
スラブを加熱する温度が1050℃未満であると、仕上げ圧延温度がAr3点を下回わる可能性が生じる。仕上げ圧延温度がAr3点を下回わると、熱間圧延がフェライト及びオーステナイトの二相域圧延となって、熱延鋼板の組織が不均質な混粒組織になる場合がある。熱延鋼鈑の組織が不均質な混粒組織である場合、熱間圧延後に冷間圧延及び焼鈍を行ったとしても、不均質な混合組織が解消されず、焼鈍の後に得られる高強度鋼板の成形性が損なわれる。従って、スラブを加熱する温度は1050℃以上とする。なお、スラブ(鋼片)を効率良く均一に加熱するために、この加熱温度は1150℃以上とすることが好ましい。加熱温度の上限は特に規定しないが、1350℃超に加熱すると、熱延鋼板の結晶粒径が粗大になり、加工性を損なうことがあるため、1350℃以下とすることが好ましい。また、経済性の観点から、加熱温度は1300℃以下とすることが好ましい。
式1で表わされるパラメータPは、一般的な拡散律速成長を表す式3から導出したパラメータであり、表層のスケールと地鉄との界面から地鉄側におけるSi及びMnの偏在の度合いを表している。このパラメータPの値が大きいほど、スケールの形成に伴う母材からスケールの方向へ向かうSi及び/又はMn原子の拡散が進み、スケールと地鉄との界面から地鉄側においてSi及び/又はMnが偏在した領域が形成される。ただし、1250℃を超える温度域、及び800℃未満の温度域では、Si及びMnのスケール方向へ向かう拡散は無視できるほど小さいことから、パラメータPの値は1250℃から800℃の温度域において考慮すれば十分である。
Figure 0005699877
なお、式3中の「L」は成長距離を示し、「E」は定数であり、「D」は拡散係数を示し、「t」は経過時間を示す。
そして、パラメータPの値が5.0未満であると、Si及びMnの偏在が十分に進まず、以降の工程において微細な酸化物粒子を地鉄の表層付近に十分に生成させることが困難となる。従って、熱間圧延はパラメータPの値が5.0以上となる条件で行う。また、パラメータPの値が5.5以上となる条件で熱間圧延を行うことが好ましく、6.0以上となる条件で熱間圧延を行うことが更に好ましい。一方、パラメータPの値が10.0を超えると、熱間圧延中に鋼板の表面から脱炭が進み、地鉄の表面に近い領域の炭素濃度が低下し、基部2の酸化物粒子含有領域3との界面から30μmの深さにおける硬さが低下して、耐かじり性が劣化する。従って、熱間圧延はパラメータPの値が10.0以下となる条件で行う。また、パラメータPの値が9.0以下となる条件で熱間圧延を行うことが好ましく、8.5以下となる条件で熱間圧延を行うことが更に好ましい。
また、熱間圧延の最終圧延温度(熱間圧延の完了温度)が840℃未満であると、圧延における反力が大きくなり、熱間鋼板の形状が損なわれる。従って、熱間圧延の最終圧延温度は840℃以上とする。また、熱間鋼板の形状をより良好に維持するために、熱間圧延の最終圧延温度は860℃以上とすることが好ましく、880℃以上とすることが更に好ましい。
熱間圧延が完了してから熱延コイルとして巻取るまでの冷却速度は、パラメータPの値が5.0〜10.0となればよい。
巻取り温度の制御は、高強度鋼板1の製造において重要である。巻取り温度が550℃未満では、巻取り後に地鉄においてSi及び/又はMnを含む酸化物が十分に生成しないため、耐かじり性が劣化する。一方、巻取り温度が750℃を超えると、地鉄の最表層からの脱炭が進行し、酸化物の分散した領域の直下における炭素濃度が低下し、それによって当該個所の硬さが低下するため、耐かじり性が劣化する。従って、巻取り温度は550℃〜750℃とする。また、これらの観点から、巻取り温度は580℃以上とすることが好ましく、600℃以上とすることが更に好ましい。また、巻取り温度は720℃以下とすることが好ましく、700℃以下とすることが更に好ましい。
巻取ったコイルにおいて、地鉄におけるSi及び/又はMnを含む酸化物の生成を十分に進めるため、コイルは徐冷することが重要である。そして、酸化物の生成が停止する400℃までの冷却時の平均冷却速度が1℃/分超であると、十分な酸化物が生成されない。従って、400℃までの冷却時の平均冷却速度は1℃/分以下とする。また、この平均冷却速度は0.8℃/分以下とすることが好ましく、0.5℃/分以下とすることが更に好ましい。なお、コイルの平均冷却速度は、コイル周辺の温度を高めたり、断熱材を巻きつけて保温したりすることによって小さくすることができる。平均冷却速度の下限は特に設けないが、0.03℃/分未満とするにはコイルの再加熱等が必要にあることがあるため、0.03℃/分以上とすることが好ましい。
また、本実施形態では、熱延鋼板の酸洗を安定して行うため、熱延鋼板を100℃以下まで冷却する。この冷却の方法は特に限定されないが、コイルを水冷してもよい。生産コストの観点からは、一度巻取ったコイルを巻きほどき、外気に晒して放冷することが好ましい。
これらの処理を通じて、図2に示すように、表層から順に、鉄系酸化物のスケール14、地鉄中にSi及び/又はMnを含む微細な酸化物が分散した酸化物粒子含有領域13、並びに基部12(母材)が重なった熱延鋼板11が得られる。
次いで、熱延鋼板11の酸洗を、式2で表わされるパラメータQの値が0.3〜3.0となる条件で行う。
Figure 0005699877
この酸洗により、図2(b)に示すように、酸化物粒子含有領域13を残存させつつ、スケール14を除去する。パラメータQは酸洗液の種類、温度、酸洗液中に滞留した時間を基に、酸洗の進行度合いを評価するための指標である。パラメータQの値が0.3未満では、酸洗が不十分であり、鋼板の表面にスケール14が残存して、高強度鋼板の外観及び化成処理性が損なわれる。一方、パラメータQの値が3.0を超えると、酸化物粒子含有領域13までもが酸洗液に過度に浸食されて、耐かじり性を高める効果が得られなくなる。従って、酸洗はパラメータQの値が0.3〜3.0となる条件で行う。また、これらの観点から、パラメータQの値が0.5以上となる条件で酸洗を行うことが好ましく、2.8以下となる条件で行うことが好ましい。酸洗の回数は、1回でも複数回でもよい。
酸洗の後、熱延鋼板11を35%〜75%の圧下率で冷間圧延して、冷延鋼板を得る。このときの圧下率が35%未満であると、冷延鋼板の形状を平坦に保つことが困難となる。一方、圧下率が75%を超える冷間圧延では、冷間圧延時の圧延荷重が大きくなりすぎて冷延が困難となる。従って、冷間圧延の圧下率は35%〜75%とする。また、これらの観点から、圧下率は40%以上であることが好ましく、70%以下であることが好ましい。なお、冷間圧延時のパスの回数、及び各パス毎の圧下率は特に限定されない。
冷間圧延後、冷延鋼板を、例えば連続焼鈍ラインに通板させて、図2(c)に示すように、高強度鋼板1を得る。つまり、冷間圧延及び焼鈍を経て、基部12が基部2となり、酸化物粒子含有領域13が酸化物粒子含有領域3となった高強度鋼板1が得られる。この焼鈍での最高加熱温度が760℃未満では、冷間圧延において多量の転位が導入された部位が、焼鈍後まで残り、延性が大幅に劣化する。従って、最高加熱温度は760℃以上とする。最高加熱温度の上限は特に規定しないが、900℃を超えると焼鈍後の鋼板における粒径が大きくなり、特性が損なわれることがあるため、900℃以下とすることが好ましい。
焼鈍工程において強度と延性に優れたミクロ組織を得るため、最高加熱温度から室温までの冷却条件を制御することが好ましい。730℃〜550℃間ではパーライト組織が過度に生成することを防ぐため、平均冷却速度を5℃/s以上として冷却を行うことが好ましい。この観点から冷却速度は7℃/s以上であることがさらに好ましい。該冷却速度の上限は特に規定しないが、200℃/sを超えるとミクロ組織への影響は見られず、一方で製造コストが大きく上昇することから、200℃/s以下とすることが好ましい。
また、冷却停止温度はMs点以下とすることが好ましい。これは鋼板の一部をマルテンサイト変態させ、その後に再加熱を施し、優れた特性を有する焼戻しマルテンサイトを得るためである。この観点から冷却停止温度は(Ms点−10℃)以下とすることがより好ましく、(Ms点−20℃)以下とすることが更に好ましい。冷却停止温度の下限は特に規定しないが、冷却停止温度が低いと残留オーステナイトが残らず、十分な延性が得られない場合がある。この観点から、冷却停止温度は(Ms点−150℃)以上とすることが好ましい。
焼戻しマルテンサイトを得るため、冷却停止後にMs点〜Bs点間の温度まで再加熱することが好ましい。再加熱温度がBs点を超えると、焼戻しにより生成する鉄系炭化物が粗大化し、延性が劣化する。このため、再加熱温度はBs点以下とすることが好ましい。また、再加熱温度がMs点未満では、焼戻しによる微細な炭化物の生成が不十分となり、延性が十分に向上しない。このため、再加熱温度はMs点以上とすることが好ましい。
なお、Ms点は下記の式により求められる。
Ms点(℃)=541−474[C]/(1−VF)−15[Si]−35[Mn]−17[Cr]−17[Ni]+19[Al]
上記式において、VFはフェライトの面積分率を示し、[C]、[Si]、[Mn]、[Cr]、[Ni]、[Al]は、それぞれC、Si、Mn、Cr、Ni、Alの添加量(質量%)である。以下の式においても同様である。なお、製造中にフェライトの面積分率を直接測定することは困難であるため、本発明においてMs点を決定するにあたっては、連続焼鈍ラインに通板させる前の冷延鋼板の小片を切り出し、その小片を連続焼鈍ラインに通板させた場合と同じ温度履歴で焼鈍して、小片のフェライトの面積分率の変化を測定し、その結果を用いて算出した数値をフェライトの面積分率VFとしている。
また、Bs点は下記の式により求められる。
Bs点[℃]=820−290[C]/(1−VF)−37[Si]−90[Mn]−65[Cr]−50[Ni]+70[Al]
焼鈍後の鋼板の形状を矯正するため、冷間で圧延を施してもかまわない。圧延条件は特に規定しないが、圧延率が0.01%未満では十分な効果が得られないことから、0.01%以上の圧延を施すことが好ましい。一方、圧延率が1.00%を超えると延性が著しく劣化することから、圧延率は1.00%以下とすることが好ましい。
このようにして、高強度鋼板1を製造することができる。なお、この製造方法は、鋳造後に直ちに熱間圧延を行う連続鋳造−直接圧延(CC−DR)のようなプロセスにも適合する。
表1に示すA〜Zの化学成分(組成)を有するスラブを鋳造し、鋳造後直ちに表2に示す条件で熱間圧延、冷却、巻取り、酸洗および冷間圧延を施した後、表3に示す条件で焼鈍を施して実験例1〜64の冷延鋼板とした。
Figure 0005699877
Figure 0005699877
Figure 0005699877
表4は、実験例1〜64の表面の酸化物を含む領域の観察結果である。鋼板から圧延方向に平行な面を切り出し、鏡面に研磨した断面を電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM:field emission scanning electron microscope)を用いて観察を行った。
Figure 0005699877
表5は、実験例1〜64の鋼板の基部2の酸化物粒子含有領域3との界面からの深さが30μmの箇所におけるミクロ組織分率を測定した結果である。ミクロ組織分率のうち、残留オーステナイト量はX線回折によって測定し、他は、圧延方向に平行な面を切り出し、鏡面に研磨した断面をナイタールエッチし、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM:field emission scanning electron microscope)を用いて観察して求めた。
Figure 0005699877
また、実験例1〜64の鋼板の基部2の酸化物粒子含有領域3との界面からの深さが30μmの箇所におけるビッカース硬さを各鋼板で10点ずつ測定し、平均値を表5に示した。
表5に示す通り、本発明の実施例である実験例1〜3、5〜7、9〜11、14、15、17〜24、26、27、29、30、32〜54、56〜60では、粒子径が20nm以上のSi及び/又はMnを含む酸化物粒子が2.5μm以下の平均粒子間距離で分散した領域が表面から0.3μm〜15μmの平均深さの範囲に存在し、その領域における該酸化物粒子の平均粒子径が0.3μm以下であり、その領域との界面からの深さが30μmの箇所における平均硬さがHv250以上であった。
これに対し、本発明の比較例である実験例8、13、16、31では粒子径が20nm以上のSi及び/又はMnを含む酸化物粒子が分散した領域の平均深さが0.3μm未満である。また、実験例63,64は該酸化物の平均粒子間距離が2.5μmを超えている。
また、実験例12、28、55、61は、該酸化物が分散した領域と鋼板基部との界面から深さが30μmの箇所における平均硬さがHv250未満である。
表6は、実験例1〜64の鋼板の特性評価結果である。実験例1〜64の鋼板からJIS Z 2201に準拠した引張試験片を採取し、引張試験をJIS Z 2241に準拠して行い、降伏強度、引張強度、全伸びおよびn値を測定した。
また、実験例1〜64の鋼板の耐かじり性を評価した。実験例1〜64の鋼板から10mm幅の鋼片を採取し、防錆油を塗布し、平板金型で垂直面圧300MPaないし450MPaで圧着し、引き抜き速度400〜500mm/minで引き抜いた後、目視で鋼板表面のかじりを評価した。5回の試行で全てかじりが無い鋼板を○、1ないし2回のものを△、それ以外を×とし、垂直面圧300MPaでは○、450MPaでは○あるいは△の鋼板を耐かじり性に優れた鋼板とする。
表6に示す通り、本発明の実施例である実験例1〜3、5〜7、9〜11、14、15、17〜24、26、27、29、30、32〜54、56〜60では、高強度と優れた耐かじり性を両立し、かつプレス成形に必要な加工性も有する鋼板が得られた。
一方、本発明の比較例である実験例8、13、16、31、63、64では、本発明で規定する粒子径が20nm以上のSi及び/又はMnを含む酸化物粒子が分散した領域が得られず、耐かじり性評価試験中に鋼板表層からの粒子の発生が不十分となり、耐かじり性が劣化した。
また、実験例12、28、55、61は、酸化物が分散した領域と鋼板基部との界面から深さが30μmの箇所における平均硬さがHv250未満であり、酸化物が分散した領域が粒子となった後に露出する表面の硬度が低く、耐かじり性が劣化した。
本発明の比較例である実験例4はスラブの加熱温度が低く、延性が著しく劣化しており、十分なプレス成形性が得られていない。
また、本発明の比較例である実験例25では酸化物を含む領域が過度に厚く、引張試験後の試験片表面において、肉眼で多量の粒子が確認でき、外観が著しく損なわれる。
1:高強度鋼板
2:基部
3:酸化物粒子含有領域
11:熱延鋼板
12:基部
13:酸化物粒子含有領域
14:スケール

Claims (13)

  1. 質量%で、
    C:0.075%〜0.350%、
    Si:0.30%〜2.50%、
    Mn:1.20%〜3.50%、
    P:0.001%〜0.100%、
    S:0.0001%〜0.0100%、
    Al:0.005%〜2.500%、及び
    N:0.0001%〜0.0100%、
    を含有し、
    残部が鉄及び不可避的不純物からなり、
    粒子径が20nm以上のSi及び/又はMnを含む酸化物粒子が2.5μm以下の平均粒子間距離で分散した領域が表面から0.3μm〜15μmの平均深さの範囲に存在し、その領域における該酸化物粒子の平均粒子径が0.3μm以下であり、その領域との界面からの深さが30μmの箇所における平均硬さがHv250以上であることを特徴とする高強度鋼板。
  2. 更に質量%で、Ca、Ce、Mg、REMの1種又は2種以上を合計で0.0001%〜0.500%含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。
  3. 更に質量%で、
    Ti:0.001%〜0.150%、
    Nb:0.001%〜0.100%、
    V:0.001%〜0.500%、及び
    W:0.01%〜1.00%、
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又2に記載の高強度鋼板。
  4. 更に質量%で、
    B:0.0001%〜0.0100%、
    Cr:0.01%〜1.50%、
    Cu:0.01%〜1.50%、
    Ni:0.01%〜1.50%、及び
    Mo:0.01%〜0.50%、
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度鋼板。
  5. 前記Si及び/又はMnを含む酸化物粒子のうちフェライト粒界上に存在するものの割合が30%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度鋼板。
  6. 前記Si及び/又はMnを含む酸化物を含む領域から深さが30μmの箇所におけるミクロ組織が面積分率で10%以上75%以下のフェライトを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高強度鋼板。
  7. 前記Si及び/又はMnを含む酸化物を含む領域から深さが30μmの箇所におけるミクロ組織が更に焼戻しマルテンサイトを面積分率で10%以上50%以下、ベイナイトとベイニティックフェライトの一方あるいは双方を合わせて10%以上50%以下有し、
    前記ミクロ組織に含まれる焼入れままマルテンサイトの面積分率が30%以下であることを特徴とする請求項に記載の高強度鋼板。
  8. 前記Si及び/又はMnを含む酸化物を含む領域から深さが30μmの箇所におけるミクロ組織が更に面積分率で2%以上25%以下の残留オーステナイトを有することを特徴とする請求項6又は7に記載の高強度鋼板。
  9. 粒子径が20nm以上のSi及び/又はMnを含む酸化物粒子が2.5μm以下の平均粒子間距離で分散した領域が表面から0.3μm〜15μmの平均深さの範囲に存在し、その領域における該酸化物粒子の平均粒子径が0.3μm以下であり、その領域との界面からの深さが30μmの箇所における平均硬さがHv250以上である高強度鋼板を製造する方法であって、
    質量%で、
    C:0.075%〜0.350%、
    Si:0.30%〜2.50%、
    Mn:1.20%〜3.50%、
    P:0.001%〜0.100%、
    S:0.0001%〜0.0100%、
    Al:0.005%〜2.500%、及び
    N:0.0001%〜0.0100%、
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるスラブを鋳造する工程と、
    前記スラブを直接又は一旦冷却した後1050℃以上に加熱し、1250℃から800℃の温度域において、式1で表わされるパラメータPの値が5.0〜10.0となる条件で熱間圧延を行い、前記熱間圧延の最終圧延温度を840℃以上とし、550℃〜750℃の温度域にて巻取る工程と、
    400℃まで1℃/分以下の平均冷却速度で冷却を行う工程と、
    更に100℃以下まで冷却し、式2で表わされるパラメータQの値が0.3〜3.0となる条件で酸洗を行う工程と、
    35%〜70%の圧下率で冷間圧延を施す工程と、
    760℃以上の最高加熱温度で焼鈍を行う工程と、
    を有することを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
    Figure 0005699877
    (式1中の「Ti」は第iパス目の圧延温度(K)を示し、「ti」は第iパス目から第i+1パス目までの経過時間(秒)を示し、「hi」は第iパス目の圧延後の板厚を示す。但し、「T0」は加熱炉からの抽出温度又は1250℃うちより低温な温度であり、「Tn+1」は800℃であり、「tn」は圧延完了から鋼板の温度が800℃に至るまでの経過時間であり、「h0」はスラブの板厚である。)
    Figure 0005699877
    (式2中の「T」は酸洗液の温度(K)を示し、「t」は滞留時間(秒)を示し、「ω」は酸洗液の濃度(%)を示し、「A」は酸洗液の種類に応じた定数である。)
  10. 最高焼鈍温度から室温までの冷却工程において、730℃〜550℃間の冷却を平均冷却速度5℃/s以上で行い、冷却停止温度をMs点以下とし、Ms点〜Bs点間の温度まで再加熱することを特徴とする請求項9に記載の高強度鋼板の製造方法。
  11. 前記スラブが、更に質量%でCa、Ce、Mg、REMの1種又は2種以上を合計で0.0001%〜0.500%含有することを特徴とする請求項9又は10に記載の高強度鋼板の製造方法。
  12. 前記スラブが、更に質量%で、
    Ti:0.001%〜0.150%、
    Nb:0.001%〜0.100%、
    V:0.001%〜0.500%、及び
    W:0.01%〜1.00%、
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の高強度鋼板の製造方法。
  13. 前記スラブが、更に質量%で、
    B:0.0001%〜0.0100%、
    Cr:0.01%〜1.50%、
    Cu:0.01%〜1.50%、
    Ni:0.01%〜1.50%、及び
    Mo:0.01%〜0.50%、
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の高強度鋼板の製造方法。
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