JP5699777B2 - インクジェット記録用インク組成物、インクジェット記録方法、およびインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録用インク組成物、インクジェット記録方法、およびインクジェット記録装置 Download PDF

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Description

本発明は、インクジェット記録において、インク組成物の安定性を保ちつつ、光学濃度を向上させる技術に関する。
インクジェット記録方法は、インクを液滴状に吐出させて紙などの記録媒体に付着させて印刷を行う方法である。このようなインクジェット記録方法においては、例えば、顔料を水溶性の分散剤に分散させたインク組成物が用いられる(例えば特許文献1を参照)。
特開平7−331146号公報
しかしながら、近年では、上記インク組成物よりも光学濃度(OD値)が高く、画像品質の優れた印刷物を得ることができるという観点から、分散剤を必要としない自己分散顔料を用いたインク組成物が多く検討されており、さらなるOD値の向上が求められている。
OD値を向上させる方法としては、インク組成物中の顔料濃度を高くする方法が考えられるが、単に顔料濃度を高くするだけでは、インク組成物の安定性が低下するという問題がある。
本明細書では、インクジェット記録において、インク組成物の安定性を保ちつつ、光学濃度を向上させる技術を開示する。
本明細書によって開示されるインクジェット記録用インク組成物は、水と、水溶性有機溶媒と、水溶性のN−ヒドロキシ環状イミド化合物と、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基、及びその塩から選ばれる官能基により修飾された自己分散顔料と、アルキル硫酸エステル塩型の界面活性剤およびアルキルエーテル硫酸エステル塩型の界面活性剤から選ばれる一種以上の界面活性剤と、を含むものである。
上記N−ヒドロキシ環状イミド化合物は、N−ヒドロキシコハク酸イミドおよびN−ヒドロキシフタルイミドから選ばれる一種以上の化合物であるのが好ましい。
上記自己分散顔料は、カルボキシ基、リン酸基、及びその塩から選ばれる官能基により修飾された顔料であるのが好ましい。
上記界面活性剤はポリオキシエチレン構造を含むアルキルエーテル硫酸エステル塩型の界面活性剤であるのが好ましい。
なお、この発明はインクジェット記録方法、インクジェット記録装置などの種々の態様で実現することができる。
本発明によれば、環状イミド化合物と界面活性剤を含むインクを用いているので、インクジェット記録において、インク組成物の安定性を保ちつつ、光学濃度を向上させることができる。
実施形態で説明するインクジェット記録装置の構成図である。
以下、本発明のインクジェット記録用インク組成物、インクジェット記録方法、およびインクジェット記録装置について説明する。
(インクジェット記録用インク組成物)
インクジェット記録用インク組成物は、水と、水溶性有機溶媒と、水溶性のN−ヒドロキシ環状イミド化合物と、自己分散顔料と、アルキル硫酸エステル塩型の界面活性剤およびアルキルエーテル硫酸エステル塩型の界面活性剤から選ばれる一種以上の界面活性剤(以下、「硫酸エステル塩型界面活性剤」ともいう)と、を含むものである。以下、インク組成物について詳細に説明する。
水溶性有機溶媒としては、例えば、インクジェットヘッドの先端部におけるインクの乾燥を防止する湿潤剤および記録媒体上での乾燥速度を調整する浸透剤があげられる。水溶性有機溶媒としては、インクジェット記録用インク組成物に一般的に用いられている水溶性有機溶媒と同様のものがあげられる
湿潤剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトン等のケトン;ジアセトンアルコール等のケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;ポリアルキレングリコール、アルキレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;2−ピロリドン;N−メチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等があげられる。前記ポリアルキレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等があげられる。前記アルキレングリコールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール等があげられる。これらの湿潤剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの中で、アルキレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好ましい。
インク組成物全体に対する湿潤剤の配合割合は、例えば、0質量%〜95質量%であり、好ましくは、10質量%〜80質量%である。
浸透剤としては、例えば、グリコールエーテルがあげられる。グリコールエーテルとしては、具体的には、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコール−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコール−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−プロピルエーテルおよびトリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル等があげられる。これらの浸透剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
インク組成物全体に対する浸透剤の配合割合は、例えば、0質量%〜20質量%である。浸透剤の配合割合を前記範囲とすることで、インク組成物の紙への浸透性を、より好適なものとできる。浸透剤の配合割合は、好ましくは、0.1質量%〜15質量%である。
自己分散顔料は、顔料粒子の表面に、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基等の親水性官能基およびその塩の少なくとも一種が化学結合により導入されることで、分散剤を使用しなくても水に分散可能とされたものである。自己分散顔料としては公知のものを使用することができ、例えば、顔料の表面を、特表2009−5150076号公報記載の方法によって修飾処理したもの等が挙げられる。
自己分散顔料としては、N−ヒドロキシ環状イミド化合物との反応を考慮すると、カルボキシ基、リン酸基、およびその塩から選ばれる官能基により修飾されたものが好ましい。
インク組成物全体に対する自己分散顔料の配合割合は、例えば、0.1質量%〜20質量%であり、好ましくは、1質量%〜10質量%である。自己分散顔料の配合割合を0.1質量%〜20質量%の範囲とすると、インク組成物の保存安定性を優れたものとすることができる。自己分散顔料としては一種のみを使用してもよいし二種以上を併用してもよい。
水溶性のN−ヒドロキシ環状イミド化合物としては、水溶性を有するとともに、自己分散顔料を修飾する官能基と反応可能(詳細は後述する)な化合物を用いることができる。このようなN−ヒドロキシ環状イミド化合物としては、水への溶解性が良好で、自己分散顔料を修飾する官能基との反応が早いという観点からN−ヒドロキシコハク酸イミドおよびN−ヒドロキシフタルイミドから選ばれる一種以上の化合物を用いるのが好ましい。
インク組成物全体に対するN−ヒドロキシ環状イミド化合物の配合割合は、硫酸エステル塩型界面活性剤の量とのバランスを考慮して決定される。例えば、インク組成物全体に対するN−ヒドロキシ環状イミド化合物の配合割合は0.01質量%〜2質量%とすることができる。N−ヒドロキシ環状イミド化合物の配合割合を前述のような範囲とすると、インク組成物の保存安定性を優れたものとすることができる。
硫酸エステル塩型界面活性剤としては、下記式(1)で表わされるアルキル硫酸エステル塩型の界面活性剤およびアルキルエーテル硫酸エステル塩型の界面活性剤界面活性剤があげられる。
O−(RO)−SOM (1)
式(1)中、Rはアルキル基、Rはエチレン基またはプロピレン基、nは0〜10、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたはアルカノールアミンである。
上記式(1)中、Rは炭素数が8〜18のアルキル基であるのが好ましく、Rはエチレン基であるのが好ましく、nは1〜10であるのが好ましい。
式(1)中のMの具体例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、NH、NH(COH)、NH(COH)、NH−COH等があげられ、これらのうちナトリウム、カリウム、アンモニウムが好ましい。
ここで、式(1)中のnが0の硫酸エステル塩型界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩型の界面活性剤などがあげられ、具体的には、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、およびステアリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
式(1)中のnが1以上の硫酸エステル塩型界面活性剤としてはアルキルエーテル硫酸エステル塩型の界面活性剤などがあげられ、具体的には、アルキル基の炭素数が8〜18のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(n=2または3)や、アルキル基の炭素数が8〜18のポリオキシプロピレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(n=1)などがあげられる。
式(1)で表わされる界面活性剤としては、市販されているものを用いてよい。
インク組成物には、アルキル硫酸エステル塩型の界面活性剤およびアルキルエーテル硫酸エステル塩型の界面活性剤から選ばれる一種以上の界面活性剤が含まれる。このような硫酸エステル塩型界面活性剤としては、式(1)中のRがエチレン基でnが1以上のポリオキシエチレン構造を含むアルキルエーテル硫酸エステル塩型の界面活性剤が好ましい。
インク組成物全体に対する硫酸エステル塩型界面活性剤の配合割合は、N−ヒドロキシ環状イミド化合物の量とのバランスを考慮して決定される。例えば、インク組成物全体に対する硫酸エステル塩型界面活性剤の配合割合は0.01質量%〜2質量%とすることができる。硫酸エステル塩型界面活性剤の配合割合を上記のような範囲とすると、インク組成物の保存安定性を優れたものとすることができる。
インク組成物に含まれる、水溶性のN−ヒドロキシ環状イミド化合物、自己分散顔料、および、アルキル硫酸エステル塩型の界面活性剤およびアルキルエーテル硫酸エステル塩型の界面活性剤から選ばれる界面活性剤は、インク組成物の安定性を保ちつつ光学濃度(OD値)を向上させるという作用を有する。本発明のインク組成物を用いることにより、インク組成物の安定性を保ちつつ、光学濃度を向上させることができるという効果のメカニズムは、明らかではないが、以下のように考えられる。
本発明のインク組成物においては、自己分散顔料の表面を修飾する官能基とN−ヒドロキシ環状イミド化合物とが接触すると、下記式(2)に示すように、自己分散顔料の表面を修飾する官能基(カルボキシ基)と、N−ヒドロキシ環状イミド化合物の窒素に結合しているヒドロキシ基とが縮合反応する。この縮合反応により自己分散顔料の顔料粒子間の反発力が弱められ、顔料粒子の凝集が促進される。
Figure 0005699777
本発明のインク組成物には、自己分散顔料と水溶性のN−ヒドロキシ環状イミド化合物が含まれているので、上記式(2)に示す縮合反応により自己分散顔料の顔料粒子間の反発力が弱められるが、インク組成物に含まれる硫酸エステル塩型界面活性剤が作用して、上記縮合反応により弱められた顔料粒子間の反発力が、高められる。その結果、インク組成物における自己分散顔料の分散状態が保持され、インクの安定性が保持される。
ここで、本発明のインク組成物を、記録媒体上に吐出した際には、上記式(2)に示す反応が進んで自己分散顔料の顔料粒子間の反発力が弱められ、顔料粒子の凝集が促進され、これにより光学濃度(OD値)を向上させることができる。これは、本発明のインク組成物を例えば紙(記録媒体の一例)の上に吐出すると、記録媒体上に紙繊維がフィルターとなって自己分散顔料が紙面上に高濃度に存在することや、硫酸エステル塩型界面活性剤が紙繊維表面(新規界面)に配向消費されることで顔料粒子への分散に寄与する量が減少することに起因すると考えられる。
一方、本発明のインク組成物が保存状態にあるときには、上述のフィルターとなるものはないうえに、新規界面が増加しないため、インク組成物においては自己分散顔料の分散状態が保持されると考えられる。
以上説明したようなメカニズムにより、本発明によれば、インク組成物の安定性を保ちつつ、光学濃度を向上させることができると考えられる。
なお、上記式(2)においては、自己分散顔料の表面を修飾する官能基(修飾基)がカルボキシ基のものを例示し、N−ヒドロキシ環状イミド化合物としてN−ヒドロキシコハク酸イミドの例を示しているが、例えばリン酸基やスルホ基等を有する自己分散顔料や、修飾基との反応性を有するNーヒドロキシ環状イミド化合物(例えばN−ヒドロキシフタルイミド)でも同様であると考えられる。
インク組成物は、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、上述の硫酸エステル塩型界面活性剤以外の界面活性剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防黴剤、防錆剤等があげられる。
インク組成物は、例えば、自己分散顔料、水および水溶性有機溶剤と、必要に応じて他の添加成分とを、従来公知の方法で均一に混合した後、フィルタ等で不溶解物を除去することにより調製することができる。
(インクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録方法は、上記のインク組成物を用いる記録方法であって、記録媒体上に、上記インク組成物を、インクジェット方式により吐出して付着させるインク付着工程を含む。インク付着工程におけるインク組成物の記録媒体への付着は公知の方法により行うことができる。
(インクジェット記録装置)
本実施形態のインクジェット記録装置10は、ライン型インクジェットヘッドを搭載し、記録用紙P(記録媒体の一例)の記録面に対して、インクジェット方式で、本発明のインクジェット記録用インク組成物を塗布する構成の装置10である。
図1に示すように、このインクジェット記録装置10は、4つのインクカートリッジ1(インク収容部に相当)と、4つのインクジェットヘッド2(インク吐出部に相当)と、給紙部11と、排紙部12と、ベルト搬送機構13と、インクジェット記録装置10全体を制御する制御装置16とを備える。
4つのインクカートリッジ1には本発明のインク組成物が収容されるようになっており、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色のインク組成物が収容されている。
給紙部11は、ベルト搬送機構13の一方の側(図1における左側)に配置され、排紙部12は、ベルト搬送機構13の他方の側(図1における右側)に配置されている。
インクジェット記録装置10においては、給紙部11からベルト搬送機構13を介し、排紙部12に向かって記録用紙Pが搬送されるようになっている(図中の矢線Xの方向)。給紙部11は、記録用紙ストッカ11aと、ピックアップローラ11cを備えている。ピックアップローラ11cは、モータ(図示せず)により駆動されることで、記録用紙ストッカ11a内に積層された記録用紙Pを上から一枚ずつピックアップするとともに、ピックアップした記録用紙Pを記録用紙搬送方向の上流から下流に送り出すものである。
給紙部11のすぐ下流側には、記録用紙検知センサ20が配置されている。記録用紙検知センサ20は、送り出された記録用紙Pが、印刷待機位置に到達したか否を検知するためのものであり、印刷待機位置にある記録用紙Pの下流側の端部を検出することができるように調整されている。送り出された記録用紙Pは、印刷待機位置を通過して、ベルト搬送機構13に搬送される。
搬送ベルト8は、2つのベルトローラ6および7の間に掛け渡されるように巻き回されたエンドレスベルトである。搬送ベルト8により囲まれた領域内において、4つのインクジェットヘッド2と対向する位置に配置されているプラテン15は、搬送ベルト8が下方に撓まないように支持するものである。
ベルトローラ7と対向する位置には、ベルト搬送機構13に搬送された記録用紙Pが、その外周面に載置されたとき、この記録用紙Pを外周面に押さえ付けるニップローラ4が配置されている。
搬送ベルト8は、搬送モータが、ベルトローラ6を回転させることにより駆動(回転)する。これにより、搬送ベルト8が、押さえ付けられた記録用紙Pを粘着保持しつつ、排紙部12に向けて搬送する。搬送ベルト8のすぐ下流側に設けられた剥離機構14は、搬送ベルトの外周面に粘着されている記録用紙Pを、当該外周面から剥離して、排紙部12に向けて送るものである。
インクジェット記録装置10により記録を行う際には、搬送ベルト8によって搬送される記録用紙Pが、4つのインクジェットヘッド2のすぐ下方を順に通過するときに、インク吐出面2aから各色のインク滴(液滴状のインク組成物)が吐出される。このとき、記録用紙Pの表面においてインク組成物に含まれるN−ヒドロキシ環状イミド化合物と自己分散顔料の修飾基とが反応して顔料粒子の凝集化が促進され、これにより光学濃度値の高い画像が得られる。
図1に示す装置10は、処理液吐出部を有さないタイプの装置であるが、本発明のインク組成物とともに処理液を用いてインクジェット記録を行う場合には、処理液収容部および処理液吐出部を備えるタイプの記録装置を用いてもよい。また、図1に示す装置10は、ライン型インクジェットヘッドを採用するが、本発明は、これに限定されず、シリアル型インクジェットを採用した装置であってもよい。
<実施例>
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
(1)実施例及び比較例のインク組成物の作製およびインク化についての評価
表1および表2に記載されている各成分のうち自己分散顔料以外の成分を均一に配合した後、自己分散顔料を添加して均一に混合してインク混合物を得た。ここで、表1および表2に記載の各成分の数値は、インク混合物全体を100質量%としたときの配合割合を示す。得られたインク混合物を、目視により観察し凝集物の有無を確認した結果を表1および表2に示した。
表1および表2に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
サンノール(登録商標)NL1430:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ライオン(株)製、有効成分量=27質量%、表中( )内は有効成分量を示す
エマール(登録商標)20C:ポリオキシエチレン(エチレンオキシド3モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、花王(株)製、有効成分量=25質量%、表中( )内は有効成分量を示す
ヘキサデシル硫酸ナトリウム ステアリル硫酸ナトリウム混合物:ヘキサデシル硫酸ナトリウム(60%)ステアリル硫酸ナトリウム(40%)の混合物、関東化学(株)製
オルフィン(登録商標)E1010:アセチレングリコール系界面活性剤(ジオールのエチレンオキサイド10モル付加物)、日信化学工業(株)製、有効成分量=100質量%
1−ドデカンスルホン酸ナトリウム:関東化学(株)製
ベンゼンスルホン酸ナトリウム :関東化学(株)製
ネオペレックス(登録商標)G−15:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、花王(株)製、有効成分量=25質量%、( )内は有効成分量を示す
ラウリル酸ナトリウム:関東化学(株)製
N−ヒドロキシコハク酸イミド:関東化学(株)製
N−ヒドロキシフタルイミド:関東化学(株)製
コハク酸イミド:関東化学(株)製
フタルイミド:関東化学(株)製
カルボキシ基修飾自己分散顔料:Cab−O−Jet(登録商標)300キャボットスペシャリティ・ケミカルズ製、顔料濃度15質量%、表中( )内は顔料固形分を表わす。
リン酸修飾自己分散顔料:特表2009−414007号公報に記載の方法により顔料濃度15質量%に調製した水分散体
表1および表2には、凝集物が認められたものについては「凝集」と記載し、凝集物が認められなかったものについては「凝集なし」と記載した。凝集物が認められないものはインク化が可能であり、凝集物が認められるものはインク化が不可能である。
凝集物が認められなかったインク混合物を東洋濾紙(株)製のセルロースアセテートタイプメンブレンフィルタ(孔径3.00μm)でろ過してインク組成物を得た。
(2)評価試験
(2−1)インクの保存安定性(再分散性)
(1)で得られたインク組成物10μLを、プレパラート上に滴下し、ついで、このプレパラートを、温度60℃、相対湿度40%の環境下にて1日保存することで、インク組成物を蒸発乾固させた。
つぎに、保存後の固形物上に純水を1mL滴下して評価サンプルを作製した。この評価サンプル中の粗大粒子や異物の有無を顕微鏡(倍率200倍)にて観察し、下記評価基準に従って再分散性を評価し表1および表2に示した。
AA:純水の滴下により前記固形物がすぐに再分散(純水に溶解・分散)し、粗大粒子や異物は認められなかった
A :前記固形物の再分散には時間がかかったが、粗大粒子や異物は認められなかった
B :粗大粒子や異物が認められた
(2−2)OD値
ブラザー工業(株)製のインクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP−385Cを使用して、(1)で得られたインク組成物を用いて普通紙上に解像度600dpi×600dpiで黒単色パッチを含む画像を記録し評価サンプルを作製した。普通紙としては4種の普通紙を用いた。普通紙1としてはHammermill社製の「Laser Print」を用い、普通紙2としてはXEROX社製の「Business4200」を用い、普通紙3としては(株)NBSリコー製の「マイペーパー」を用い、普通紙4としてはXEROX社製の「Business」を用いた。
上記評価サンプルの光学濃度(OD)値を、Gretag Macbeth社製の分光測色計Spectrolino(光源:D50、視野:2°、STATUS T)により測定した。光学濃度(OD)値の測定は、普通紙1枚についてそれぞれ2回測定してその平均値を算出して表1および表2にOD値として示した。また、4種の普通紙のOD値の平均値についても表1および表2に示した。
測定したOD値が±0.01の範囲は機器誤差の範囲であるので、OD値が比較例1のOD値の平均値に対して0.01を超えた場合にはOD値が向上したと判定することができる。
Figure 0005699777
Figure 0005699777
(3)結果と考察
N−ヒドロキシコハク酸イミドまたはN−ヒドロキシフタルイミドのいずれか一方と、アルキル硫酸エステル塩型の界面活性剤およびアルキルエーテル硫酸エステル塩型の界面活性剤から選ばれる界面活性剤とを含むインク組成物(実施例1〜10の組成物)はインクとすることができ、インクの保存安定性もAまたはAAで優れていた。また、実施例1〜10の組成物ではOD値も1.06以上という結果が得られ、OD値の向上効果も確認することができた。
なお、実施例1〜10の組成物において、温度60℃、湿度40%で1日保存後の安定性が優れていたのは、以下の理由によると考えられる。上記保存状態において組成物中の溶媒成分のうち水分の多くは失われるが、水以外の低揮発性の成分(グリセリンなど)は残るので、顔料粒子は低揮発性の成分中に安定に分散した状態で含まれていたと考えられる。
実施例品のうち、N−ヒドロキシ環状イミド化合物の含有量の多い組成物(例えば実施例3や実施例4)ではOD値が特に高かった。この結果からN−ヒドロキシ環状イミド化合物の含有量を多くするとOD値が高くなると考えられる。
実施例3の組成物は、実施例2(N−ヒドロキシ環状イミド化合物の量以外は実施例3と同じ配合)の組成物よりもOD値は高いが、インクの保存安定性が劣っていた。さらに実施例4の組成物においては、N−ヒドロキシコハク酸イミドの量が実施例3の組成物の2倍ではあるが、インクの保存安定性が実施例3と同様に良好であるという結果が得られた。実施例4の組成物には硫酸エステル塩型界面活性剤が実施例3の5倍量含まれている。
これらの結果から、インクの保存安定性の優れた組成物を得るには、N−ヒドロキシ環状イミド化合物の量を増量するだけでなく、硫酸エステル塩型界面実施例の量も増量する必要があるということが分かった。
そして、N−ヒドロキシ環状イミド化合物と、前記硫酸エステル型界面活性剤とを含むことにより得られる上述の効果は、自己分散顔料の修飾基がカルボキシ基の場合であってもリン酸基であっても得られることが確認できた。なお、詳細にデータは示さないが、修飾基がスルホ基の場合も、修飾基がカルボキシ基やリン酸基の自己分散顔料と同様の効果が得られた。
これに対してN−ヒドロキシコハク酸イミドまたはN−ヒドロキシフタルイミドのいずれか一方を含むが、硫酸エステル塩型界面活性剤を含まないインク混合物(比較例2、比較例4〜9、比較例12、比較例13)では、凝集が認められインク化することができなかった。これらのインク混合物にはそれぞれ、硫酸エステル型界面活性剤とは違うタイプの界面活性剤が含まれている。この結果から、アルキル硫酸エステル塩型の界面活性剤およびアルキルエーテル硫酸エステル塩型の界面活性剤から選ばれる界面活性剤が、顔料粒子の凝集の抑制に寄与していると考えられる。
さらに、アルキル硫酸エステル塩型の界面活性剤およびアルキルエーテル硫酸エステル塩型の界面活性剤を含むが水溶性のN−ヒドロキシ環状イミド化合物を含まないインク組成物(比較例1、比較例3、比較例10、比較例11)では、インク化が可能であるとともに、インクの保存安定性がAまたはAAで優れているが、OD値の向上効果が得られなかった。上記インク組成物のうち、比較例3および比較例10の組成物は、N位にヒドロキシ基が置換されていない環状イミド化合物を含んでいるがOD値の向上効果は得られなかった。この結果から、N−ヒドロキシ環状イミド化合物を含まないものでは、OD値の向上効果が得られないと考えられ、N位のヒドロキシ基がOD値の向上に寄与していると考えられる。
1...インクカートリッジ(インク収容部)、2...インクジェットヘッド(インク吐出部)、6,7...ベルトローラ、8...搬送ベルト、11...給紙部、16...制御装置

Claims (6)

  1. 水と、水溶性有機溶媒と、水溶性のN−ヒドロキシ環状イミド化合物と、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基、及びその塩から選ばれる官能基により修飾された自己分散顔料と、アルキル硫酸エステル塩型の界面活性剤およびアルキルエーテル硫酸エステル塩型の界面活性剤から選ばれる一種以上の界面活性剤と、を含むインクジェット記録用インク組成物。
  2. 請求項1に記載のインクジェット記録用インク組成物であって、
    前記N−ヒドロキシ環状イミド化合物がN−ヒドロキシコハク酸イミドおよびN−ヒドロキシフタルイミドから選ばれる一種以上の化合物であるインクジェット記録用インク組成物。
  3. 請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録用インク組成物であって、
    前記自己分散顔料がカルボキシ基、リン酸基、及びその塩から選ばれる官能基により修飾された顔料であるインクジェット記録用インク組成物。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク組成物であって、
    前記界面活性剤がポリオキシエチレン構造を含むアルキルエーテル硫酸エステル塩型の界面活性剤であるインクジェット記録用インク組成物。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク組成物を用いたインクジェット記録方法であって、
    記録媒体上に、前記インク組成物を、インクジェット方式により吐出して付着させるインク付着工程を含むインクジェット記録方法。
  6. 請求項5に記載のインクジェット記録方法を実行するインクジェット記録装置であって、
    前記インク組成物を収容するインク収容部と、
    前記インク収容部に収容されたインク組成物を記録媒体上に吐出させ付着させるインク吐出部と、を備えるインクジェット記録装置。
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