[実施例1]
〔駆動系構成〕
まず、ハイブリッド車両の駆動系構成を説明する。図1は実施例1の後輪駆動によるハイブリッド車両を示す全体システム図である。
実施例1におけるハイブリッド車の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、第1クラッチCL1と、モータジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、を有する。尚、FLは左前輪、FRは右前輪である。
エンジンEは、例えばガソリンエンジンであり、後述するエンジンコントローラ1からの制御指令に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度等が制御される。尚、エンジン出力軸にはフライホイールFWが設けられている。
第1クラッチCL1は、エンジンEとモータジェネレータMGとの間に介装されたクラッチであり、後述する第1クラッチコントローラ5からの制御指令に基づいて、第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された制御油圧により、スリップ締結を含み締結・開放が制御される。
モータジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ4を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。尚、このモータジェネレータMGのロータは、図外のダンパーを介して自動変速機ATの入力軸に連結されている。
第2クラッチCL2は、モータジェネレータMGと左右後輪RL,RRとの間に介装されたクラッチであり、後述するATコントローラ7からの制御指令に基づいて、第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、スリップ締結を含み締結・開放が制御される。
自動変速機ATは、前進5速後退1速等の有段階の変速比を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える変速機であり、第2クラッチCL2は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、いくつかの摩擦締結要素を流用している。尚、詳細については後述する。
そして、自動変速機ATの出力軸は、車両駆動軸としてのプロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。尚、前記第1クラッチCL1と第2クラッチCL2には、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチを用いている。
このハイブリッド駆動系には、第1クラッチCL1の締結・開放状態に応じて3つの走行モードを有する。第1走行モードは、第1クラッチCL1の開放状態で、モータジェネレータMGの動力のみを動力源として走行するモータ使用走行モードとしての電気自動車走行モード(以下、「EV走行モード」と略称する。)である。第2走行モードは、第1クラッチCL1の締結状態で、エンジンEを動力源に含みながら走行するエンジン使用走行モード(以下、「HEV走行モード」と略称する。)である。第3走行モードは、第1クラッチCL1の締結状態で第2クラッチCL2をスリップ制御させ、エンジンEを動力源に含みながら走行するエンジン使用スリップ走行モード(以下、「WSC走行モード」と略称する。)である。このモードは、特にバッテリSOCが低いときやエンジン水温が低いときに、クリープ走行を達成可能なモードである。尚、EV走行モードからHEV走行モードに遷移するときは、第1クラッチCL1を締結し、モータジェネレータMGのトルクを用いてエンジン始動を行う。
また、路面勾配が所定値以上における上り坂等で、運転者がアクセルペダルを調整し車両停止状態を維持するアクセルヒルホールドが行われるような場合、WSC走行モードでは、第2クラッチCL2のスリップ量が過多の状態が継続されるおそれがある。エンジンEをアイドル回転数より小さくすることができないからである。そこで、実施例1では、エンジンEを作動させたまま、第1クラッチCL1を解放し、モータジェネレータMGを作動させつつ第2クラッチCL2をスリップ制御させ、モータジェネレータMGを動力源として走行するモータスリップ走行モード(以下、「MWSC走行モード」と略称する)を備える。尚、詳細については後述する。
上記「HEV走行モード」には、「エンジン走行モード」と「モータアシスト走行モード」と「走行発電モード」との3つの走行モードを有する。
「エンジン走行モード」は、エンジンEのみを動力源として駆動輪を動かす。「モータアシスト走行モード」は、エンジンEとモータジェネレータMGの2つを動力源として駆動輪を動かす。「走行発電モード」は、エンジンEを動力源として駆動輪RR,RLを動かすと同時に、モータジェネレータMGを発電機として機能させる。
定速運転時や加速運転時には、エンジンEの動力を利用してモータジェネレータMGを発電機として動作させる。また、減速運転時は、制動エネルギを回生してモータジェネレータMGにより発電し、バッテリ4の充電のために使用する。
また、更なるモードとして、車両停止時には、エンジンEの動力を利用してモータジェネレータMGを発電機として動作させる発電モードを有する。
〔制御系構成〕
次に、ハイブリッド車両の制御系構成を説明する。実施例1におけるハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。尚、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、第1クラッチコントローラ5と、ATコントローラ7と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10とは、互いの情報交換が可能なCAN通信線11を介して接続されている。
エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報を入力し、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(Ne:エンジン回転数,Te:エンジントルク)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。更に詳細なエンジン制御内容については後述する。尚、エンジン回転数Ne等の情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
モータコントローラ2は、モータジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報を入力し、統合コントローラ10からの目標モータジェネレータトルク指令等に応じ、モータジェネレータMGのモータ動作点(Nm:モータジェネレータ回転数,Tm:モータジェネレータトルク)を制御する指令をインバータ3へ出力する。尚、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電状態を表すバッテリSOCを監視していて、バッテリSOC情報は、モータジェネレータMGの制御情報に用いると共に、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
第1クラッチコントローラ5は、第1クラッチ油圧センサ14と第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報を入力し、統合コントローラ10からの第1クラッチ制御指令に応じ、第1クラッチCL1の締結・開放を制御する指令を第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。尚、第1クラッチストロークC1Sの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と車速センサ17と第2クラッチ油圧センサ18と運転者の操作するシフトレバーの位置に応じた信号を出力するインヒビタスイッチからのセンサ情報を入力し、統合コントローラ10からの第2クラッチ制御指令に応じ、第2クラッチCL2の締結・開放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブ内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する。尚、アクセルペダル開度APOと車速VSPとインヒビタスイッチの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19とブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報を入力し、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(摩擦ブレーキによる制動力)で補うように、統合コントローラ10からの回生協調制御指令に基づいて回生協調ブレーキ制御を行う。
統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21と、第2クラッチ出力回転数N2outを検出する第2クラッチ出力回転数センサ22と、第2クラッチ伝達トルク容量TCL2を検出する第2クラッチトルクセンサ23と、ブレーキ油圧センサ24と、第2クラッチCL2の温度を検知する温度センサ10aと、前後加速度を検出する前後加速度センサ10bからの情報およびCAN通信線11を介して得られた情報を入力する。
また、統合コントローラ10は、エンジンコントローラ1への制御指令によるエンジンEの動作制御と、モータコントローラ2への制御指令によるモータジェネレータMGの動作制御と、第1クラッチコントローラ5への制御指令による第1クラッチCL1の締結・開放制御と、ATコントローラ7への制御指令による第2クラッチCL2の締結・開放制御と、を行う。
〔統合コントローラの構成〕
図2は統合コントローラ10の制御ブロック図である。以下に、図2を用いて、実施例1の統合コントローラ10にて演算される制御を説明する。例えば、この演算は、制御周期10[msec]毎に統合コントローラ10で演算される。統合コントローラ10は、目標駆動トルク演算部100と、モード選択部200と、目標充放電演算部300と、動作点指令部400と、変速制御部500と、待ち時間設定部600を有する。
図3は目標駆動トルクマップである。目標駆動トルク演算部100では、図3に示す目標駆動トルクマップを用いて、アクセルペダル開度APOと車速VSPとから、目標駆動トルクTdを演算する。
モード選択部200は、前後加速度センサ10bの検出値に基づいて路面勾配を推定する路面勾配推定演算部201を有する。路面勾配推定演算部201は、車輪速センサ19の車輪速加速度平均値等から実加速度を演算し、この演算結果とGセンサ検出値との偏差から路面勾配を推定する。
更に、モード選択部200は、推定された路面勾配に基づいて、後述する二つのモードマップのうち、いずれかを選択するモードマップ選択部202を有する。図4はモードマップ選択部202の選択ロジックを表す概略図である。モードマップ選択部202は、通常モードマップが選択されている状態から推定勾配が所定値g2以上になると、MWSC対応モードマップに切り換える。一方、MWSC対応モードマップが選択されている状態から推定勾配が所定値g1(<g2)未満になると、通常モードマップに切り換える。すなわち、推定勾配に対してヒステリシスを設け、マップ切り換え時の制御ハンチングを防止する。
次に、モードマップについて説明する。モードマップとしては、推定勾配が所定値未満のときに選択される通常モードマップと、推定勾配が所定値以上のときに選択されるMWSC対応モードマップとを有する。図5は通常モードマップ、図6はMWSCモードマップを表す。
通常モードマップ(図5)内には、EV走行モードと、WSC走行モードと、HEV走行モードとを有し、アクセルペダル開度APOと車速VSPとから、目標モードを演算する。但し、EV走行モードが選択されていたとしても、バッテリSOCが所定値以下であれば、強制的に「HEV走行モード」を目標モードとする。
図5の通常モードマップにおいて、HEV→WSC切換線は、所定アクセル開度APO1未満の領域では、自動変速機ATが1速段のときに、エンジンEのアイドル回転数よりも小さな回転数となる下限車速VSP1よりも低い領域に設定されている。また、所定アクセル開度APO1以上の領域では、大きな駆動トルクを要求されることから、下限車速VSP1よりも高い車速VSP1'領域までWSC走行モードが設定されている。尚、バッテリSOCが低く、EV走行モードを達成できないときには、発進時等であってもWSC走行モードを選択するように構成されている。
アクセルペダル開度APOが大きいとき、その要求をアイドル回転数付近のエンジン回転数に対応したエンジントルクとモータジェネレータMGのトルクで達成するのは困難な場合がある。ここで、エンジントルクは、エンジン回転数が上昇すればより多くのトルクを出力できる。このことから、エンジン回転数を引き上げてより大きなトルクを出力させれば、例え下限車速VSP1よりも高い車速までWSC走行モードを実行しても、短時間でWSC走行モードからHEV走行モードに遷移させることができる。この場合が図5に示す下限車速VSP1'まで広げられたWSC領域である。
MWSCモードマップ(図6)内には、EV走行モード領域が設定されていない点で通常モードマップとは異なる。また、WSC走行モード領域として、アクセルペダル開度APOに応じて領域を変更せず、下限車速VSP1のみで領域が規定されている点で通常モードマップとは異なる。また、WSC走行モード領域内にMWSC走行モード領域が設定されている点で通常モードマップとは異なる。MWSC走行モード領域は、下限車速VSP1よりも低い所定車速VSP2と所定アクセル開度APO1よりも高い所定アクセル開度APO2とで囲まれた領域に設定されている。尚、MWSC走行モードの詳細については後述する。
図7は、目標充放電量マップである。目標充放電演算部300では、図7に示す目標充放電量マップを用いて、バッテリSOCから目標充放電電力tPを演算する。
動作点指令部400では、アクセルペダル開度APOと、目標駆動トルクTdと、目標モードと、車速VSPと、目標充放電電力tPとから、これらの動作点到達目標として、過渡的な目標エンジントルク/目標エンジン回転数と目標モータジェネレータトルク/目標モータジェネレータ回転数と目標第2クラッチ伝達トルク容量と自動変速機ATの目標変速段と第1クラッチソレノイド電流指令を演算する。また、動作点指令部400には、EV走行モードからHEV走行モードに遷移するときにエンジンEを始動するエンジン始動制御部が設けられている。
変速制御部500では、シフトマップに示すシフトスケジュールに沿って、目標第2クラッチ伝達トルク容量と目標変速段を達成するように自動変速機AT内のソレノイドバルブを駆動制御する。尚、シフトマップは、車速VSPとアクセルペダル開度APOに基づいて予め目標変速段が設定されたものである。
待ち時間設定部600は、第2クラッチCL2の温度と、目標駆動トルクから待ち時間を演算して設定する。詳しくは後述するが、エンジンと駆動している状態で第1クラッチCL1を解放する際に、解放が早すぎるとエンジン回転数の吹き上がりが生じるおそれがあり、解放が遅すぎると第2クラッチCL2の発熱が過大となるおそれがある。そのため、解放のタイミングを適切に設定する必要がある。実施例1では、目標エンジントルクがゼロとなってから第1クラッチCL1を解放するまでの時間を待ち時間として設定している。
図8は待ち時間マップである。図8に示すように、第2クラッチCL2の温度が高いほど待ち時間を小さく設定している。また、目標駆動トルクが大きいほど待ち時間を小さく設定している。また、目標エンジントルクがゼロとしたときにエンジントルクが低下する応答性が高いほど待ち時間を短く設定している。
動作点指令部400は、第1クラッチCL1を解放する際に、目標エンジントルクがゼロとなってから設定した待ち時間が経過したのちに第1クラッチCL1を解放するように制御する。
〔WSC走行モードについて〕
次に、WSC走行モードの詳細について説明する。WSC走行モードとは、エンジンEが作動した状態を維持している点に特徴があり、目標駆動トルク変化に対する応答性が高い。具体的には、第1クラッチCL1を完全締結し、第2クラッチCL2を目標駆動トルクに応じた伝達トルク容量としてスリップ制御し、エンジンE及び/又はモータジェネレータMGの駆動トルクを用いて走行する。
実施例1のハイブリッド車両では、トルクコンバータのように回転数差を吸収する要素が存在しないため、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2を完全締結すると、エンジンEの回転数に応じて車速が決まってしまう。エンジンEには自立回転を維持するためのアイドル回転数による下限値が存在し、このアイドル回転数は、エンジンの暖機運転等によりアイドルアップを行っていると、更に下限値が高くなる。また、目標駆動トルクが高い状態では素早くHEV走行モードに遷移できない場合がある。
一方、EV走行モードでは、第1クラッチCL1を解放するため、上記エンジン回転数による下限値に伴う制限はない。しかしながら、バッテリSOCに基づく制限によってEV走行モードによる走行が困難な場合や、モータジェネレータMGのみで目標駆動トルクを達成できない領域では、エンジンEによって安定したトルクを発生する以外に手段がない。
そこで、上記下限値に相当する車速よりも低車速領域であって、かつ、EV走行モードによる走行が困難な場合やモータジェネレータMGのみでは目標駆動トルクを達成できない領域では、エンジン回転数を所定の下限回転数に維持し、第2クラッチCL2をスリップ制御させ、エンジントルクを用いて走行するWSC走行モードを選択する。
図9はWSC走行モードにおけるエンジン動作点設定処理を表す概略図、図10はWSC走行モードにおけるエンジン目標回転数を表すマップである。
WSC走行モードにおいて、運転者がアクセルペダルを操作すると、図10に基づいてアクセルペダル開度に応じた目標エンジン回転数特性が選択され、この特性に沿って車速に応じた目標エンジン回転数が設定される。そして、図9に示すエンジン動作点設定処理によって目標エンジン回転数に対応した目標エンジントルクが演算される。
ここで、エンジンEの動作点をエンジン回転数とエンジントルクにより規定される点と定義する。図9に示すように、エンジン動作点は、エンジンEの出力効率が高い動作点を結んだ線(以下、α線)上で運転することが望まれる。
しかし、上述のようにエンジン回転数を設定した場合、運転者によるアクセルペダル開度APO(目標駆動トルク)によってはα線から離れた動作点を選択することとなる。そこで、エンジン動作点をα線に近づけるために、目標エンジントルクは、α線を考慮した値にフィードフォワード制御される。
一方、モータジェネレータMGは、設定されたエンジン回転数を目標回転数とする回転数フィードバック制御が実行される。今、エンジンEとモータジェネレータMGは直結状態とされていることから、モータジェネレータMGが目標回転数を維持するように制御されることで、エンジンEの回転数も自動的にフィードバック制御されることとなる。
このとき、モータジェネレータMGが出力するトルクは、α線を考慮して決定された目標エンジントルクと目標駆動トルクとの偏差を埋めるように自動的に制御される。モータジェネレータMGでは、上記偏差を埋めるように基礎的なトルク制御量(回生・力行)が与えられ、更に、目標エンジン回転数と一致するようにフィードバック制御される。
あるエンジン回転数において、目標駆動トルクがα線上の駆動トルクよりも小さい場合、エンジン出力トルクを大きくした方がエンジン出力効率は上昇する。このとき、出力を上げた分のエネルギをモータジェネレータMGにより回収することで、第2クラッチCL2に入力されるトルク自体は運転者の要求トルクとしつつ、効率の良い発電が可能となる。
ただし、バッテリSOCの状態によって発電可能なトルク上限値が決定されるため、バッテリSOCからの要求発電出力(SOC要求発電電力)と、現在の動作点におけるトルクとα線上のトルクとの偏差(α線発電電力)との大小関係を考慮する必要がある。
図9(a)は、α線発電電力がSOC要求発電電力よりも大きい場合の概略図である。SOC要求発電電力以上にはエンジン出力トルクを上昇させることができないため、α線上に動作点を移動させることはできない。ただし、より効率の高い点へ移動させることで燃費効率を改善する。
図9(b)は、α線発電電力がSOC要求発電電力よりも小さい場合の概略図である。SOC要求発電電力の範囲内であれば、エンジン動作点をα線上に移動させることができるため、この場合は、最も燃費効率の高い動作点を維持しつつ発電することができる。
図9(c)は、エンジン動作点がα線よりも高い場合の概略図である。目標駆動トルクに応じた動作点がα線よりも高いときは、バッテリSOCに余裕があることを条件として、エンジントルクを低下させ、不足分をモータジェネレータMGの力行により補う。これにより、燃費効率を高くしつつ目標駆動トルクを達成することができる。
次に、WSC走行モード領域を、推定勾配に応じて変更している点について説明する。図11は車速を所定状態で上昇させる際のエンジン回転数マップである。
平坦路において、アクセルペダル開度がAPO1よりも大きな値の場合、WSC走行モード領域は下限車速VSP1よりも高い車速領域まで実行される。このとき、車速の上昇に伴って図10に示すマップのように徐々に目標エンジン回転数は上昇する。そして、VSP1'に相当する車速に到達すると、第2クラッチCL2のスリップ状態は解消され、HEV走行モードに遷移する。
推定勾配が所定勾配(g1もしくはg2)より大きい勾配路において、上記と同じ車速上昇状態を維持しようとすると、それだけ大きなアクセルペダル開度となる。このとき、第2クラッチCL2の伝達トルク容量TCL2は平坦路に比べて大きくなる。この状態で、仮に図5に示すマップのようにWSC走行モード領域を拡大してしまうと、第2クラッチCL2は強い締結力でのスリップ状態を継続することとなり、発熱量が過剰となるおそれがある。そこで、推定勾配が大きい勾配路のときに選択される図6のMWSC対応モードマップでは、WSC走行モード領域を不要に広げることなく、車速VSP1に相当する領域までとする。これにより、WSC走行モードにおける過剰な発熱を回避する。
〔MWSC走行モードについて〕
次に、MWSC走行モード領域を設定した理由について説明する。推定勾配が所定勾配(g1もしくはg2)より大きいときに、例えば、ブレーキペダル操作を行うことなく車両を停止状態もしくは微速発進状態に維持しようとすると、平坦路に比べて大きな駆動トルクが要求される。自車両の荷重負荷に対向する必要があるからである。
第2クラッチCL2のスリップによる発熱を回避する観点から、バッテリSOCに余裕があるときはEV走行モードを選択することも考えられる。このとき、EV走行モード領域からWSC走行モード領域に遷移したときにはエンジン始動を行う必要があり、モータジェネレータMGはエンジン始動用トルクを確保した状態で駆動トルクを出力するため、駆動トルク上限値が不要に狭められる。
また、EV走行モードにおいてモータジェネレータMGにトルクだけを出力し、モータジェネレータMGの回転を停止もしくは極低速回転すると、インバータのスイッチング素子にロック電流が流れ(電流が1つの素子に流れ続ける現象)、耐久性の低下を招くおそれがある。
また、1速でエンジンEのアイドル回転数に相当する下限車速VSP1よりも低い領域(VSP2以下の領域)において、エンジンE自体は、アイドル回転数より低下させることができない。このとき、WSC走行モードを選択すると、第2クラッチCL2のスリップ量が大きくなり、第2クラッチCL2の耐久性に影響を与えるおそれがある。
特に、勾配路では、平坦路に比べて大きな駆動トルクが要求されていることから、第2クラッチCL2に要求される伝達トルク容量は高くなり、高トルクで高スリップ量の状態が継続されることは、第2クラッチCL2の耐久性の低下を招きやすい。また、車速の上昇もゆっくりとなることから、HEV走行モードへの遷移までに時間がかかり、更に発熱するおそれがある。
そこで、エンジンEを作動させたまま、第1クラッチCL1を解放し、第2クラッチCL2の伝達トルク容量を運転者の目標駆動トルクに制御しつつ、モータジェネレータMGの回転数が第2クラッチCL2の出力回転数よりも所定回転数高い目標回転数にフィードバック制御するMWSC走行モードを設定した。
言い換えると、モータジェネレータMGの回転状態をエンジンのアイドル回転数よりも低い回転数としつつ第2クラッチCL2をスリップ制御するものである。同時に、エンジンEはアイドル回転数を目標回転数とするフィードバック制御に切り換える。WSC走行モードでは、モータジェネレータMGの回転数フィードバック制御によりエンジン回転数が維持されていた。これに対し、第1クラッチCL1が解放されると、モータジェネレータMGによってエンジン回転数をアイドル回転数に制御できなくなる。よって、エンジンE自体によりエンジン回転数フィードバック制御を行う。
MWSC走行モード領域の設定により、以下に列挙する効果を得ることができる。
1) エンジンEが作動状態であることからモータジェネレータMGにエンジン始動分の駆動トルクを残しておく必要が無く、モータジェネレータMGの駆動トルク上限値を大きくすることができる。具体的には、目標駆動トルク軸で見たときに、EV走行モードの領域よりも高い目標駆動トルクに対応できる。
2) モータジェネレータMGの回転状態を確保することでスイッチング素子等の耐久性を向上できる。
3) アイドル回転数よりも低い回転数でモータジェネレータMGを回転することから、第2クラッチCL2のスリップ量を小さくすることが可能となり、第2クラッチCL2の耐久性の向上を図ることができる。
〔走行モード切換処理〕
図12は、走行モード切り換え処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1では、通常モードマップが選択されているか否かを判断し、通常モードマップが選択されているときはステップS2へ進み、MWSC対応モードマップが選択されているときはステップS11へ進む。
ステップS2では、推定勾配が所定値g2よりも大きいか否かを判断し、大きいときはステップS3へ進み、それ以外のときはステップS15へ進んで通常モードマップに基づく制御処理を実行する。
ステップS3では、通常モードマップからMWSC対応モードマップに切り換える。
ステップS4では、現在のアクセルペダル開度と車速により決定される動作点がMWSC走行モード領域内にあるか否かを判断し、領域内にあると判断したときはステップS5へ進み、領域内にないと判断したときはステップS8へ進む。
ステップS5では、バッテリSOCが所定値Aよりも大きいか否かを判断し、所定値Aよりも大きいときはステップS6へ進み、所定値A以下であるときはステップS9へ進む。ここで、所定値Aとは、モータジェネレータMGのみによって駆動トルクを確保することが可能か否かを判断するための閾値である。SOCが所定値Aよりも大きいときはモータジェネレータMGのみによって駆動トルクを確保できる状態であり、所定値A以下のときはバッテリ4への充電が必要であるため、MWSC走行モードの選択を禁止する。
ステップS6では、第2クラッチCL2の伝達トルク容量TCL2が所定値B未満か否かを判断し、所定値B未満のときはステップS7へ進み、所定値Bよりも大きいときはステップS9へ進む。ここで、所定値Bとは、モータジェネレータMGに過剰な電流が流れないことを表す所定値である。モータジェネレータMGは回転数制御されるため、モータジェネレータMGに発生するトルクは、モータジェネレータMGに作用する負荷以上となる。
言い換えると、モータジェネレータMGは第2クラッチCL2をスリップ状態となるように回転数制御されるため、モータジェネレータMGには第2クラッチ伝達トルク容量TCL2よりも大きなトルクが発生する。よって、第2クラッチCL2の伝達トルク容量TCL2が過剰なときは、モータジェネレータMGに流れる電流が過剰となり、スイッチング素子等の耐久性が悪化する。この状態を回避する為に所定値B以上のときはMWSC走行モードの選択を禁止する。
ステップS7では、MWSC制御処理を実行する。具体的には、エンジン動作状態のまま第1クラッチCL1を解放し、エンジンEをアイドル回転数となるようにフィードバック制御とし、モータジェネレータMGを第2クラッチCL2の出力側回転数Ncl2outに所定回転数αを加算した目標回転数(ただし、アイドル回転数よりも低い値)とするフィードバック制御とし、第2クラッチCL2を目標駆動トルクに応じた伝達トルク容量とするフィードバック制御とする。尚、通常モードマップにはMWSC走行モードは設定されていないことから、ステップS7におけるMWSC制御処理にはEV走行モードもしくはWSC走行モードからのモード遷移処理が含まれる。
ステップS8では、現在のアクセルペダル開度と車速により決定される動作点がWSC走行モード領域内にあるか否かを判断し、領域内にあると判断したときはステップS9へ進み、それ以外のときはHEV走行モード領域内にあると判断してステップS10へ進む。
ステップS9では、WSC制御処理を実行する。具体的には、第1クラッチCL1を完全締結し、エンジンEを目標トルクに応じたフィードフォワード制御とし、モータジェネレータMGをアイドル回転数となるフィードバック制御とし、第2クラッチCL2を目標駆動トルクに応じた伝達トルク容量とするフィードバック制御とする。尚、MWSC対応モードマップにはEV走行モードが設定されていないことから、ステップS9におけるWSC制御処理にはEV走行モードからのモード遷移処理が含まれる。
ステップS10では、HEV制御処理を実行する。具体的には、第1クラッチCL1を完全締結し、エンジンE及びモータジェネレータMGを目標駆動トルクに応じたトルクとなるようにフィードフォワード制御し、第2クラッチCL2を完全締結する。尚、MWSC対応モードマップにはEV走行モードが設定されていないことから、ステップS10におけるHEV制御処理にはEV走行モードからのモード遷移処理が含まれる。
ステップS11では、推定勾配が所定値g2未満か否かを判断し、g2未満のときはステップS12へ進み、それ以外のときはステップS4に進んでMWSC対応モードマップによる制御を継続する。
ステップS12では、MWSC対応モードマップから通常モードマップに切り換える。
ステップS13では、マップ切り換えに伴って走行モードが変更されたか否かを判断し、変更されたと判断したときはステップS14へ進み、それ以外のときはステップS15に進む。MWSC対応モードマップから通常モードマップに切り換えると、MWSC走行モードからWSC走行モードへの遷移、WSC走行モードからEV走行モードへの遷移、HEV走行モードからEV走行モードへの遷移が生じうるからである。
ステップS14では、走行モード変更処理を実行する。具体的には、MWSC走行モードからWSC走行モードへの遷移時には、モータジェネレータMGの目標回転数をアイドル回転数に変更し、同期した段階で第1クラッチCL1を締結する。そして、エンジン制御をアイドル回転数フィードバック制御から目標エンジントルクフィードフォワード制御に切り換える。
WSC走行モードからEV走行モードへの遷移のときは、第1クラッチCL1を解放し、エンジンEを停止し、モータジェネレータMGを回転数制御から目標駆動トルクに基づくトルク制御に切り換え、第2クラッチCL2を目標駆動トルクに基づくフィードバック制御から完全締結に切り換える。
HEV走行モードからEV走行モードへの遷移のときは、第1クラッチCL1を解放し、エンジンEを停止し、モータジェネレータMGは目標駆動トルクに基づくトルク制御を継続し、第2クラッチCL2を目標駆動トルクに基づくフィードバック制御から完全締結に切り換える。
ステップS15では、通常モードマップに基づく制御処理を実行する。
〔作用〕
図13は、WSC走行モードからMWSC走行モードへの移行するときの各要素のタイムチャートである。ここでは図13に示すように、アクセルペダル開度APOは全期間にわたって一定に踏み込まれており、ブレーキストロークはゼロである。また、全期間にわたって駆動輪RL,RRの回転数(出力回転数×ギヤ比)は一定となるように制御している。
時間t1まではEV走行モードが選択されている。このとき、モータジェネレータMGは回転数制御され、エンジンは停止されている。また第1クラッチCL1は解放されているため、第1クラッチ伝達トルク容量はゼロである。
時間t1において、例えば推定勾配がg2以上となったことにより、モードマップが通常モードマップからMWSCモードマップに選択が切り替わった。そのため、運転領域がMWSC走行モードとなり、MWSC走行モード移行要求がONとなる。ここで、エンジン始動のために第1クラッチ伝達トルク容量がエンジン始動トルクまで上昇され、モータジェネレータMGによりエンジンEが始動される。
EV走行モードからMWSC走行モードへの移行の際は、エンジンを始動する必要があるため、一端WSC走行モードを経由してMWSC走行モードへ移行する。
エンジンEが始動する直前の時間t2において、エンジンEをアイドル回転数に制御するアイドルリクエスト(IDLREQ)が出力される。EV走行モードでは、モータジェネレータMGは、エンジンEのアイドル回転数よりも低い回転数で制御されているが、WSC走行モードでは、エンジンEのアイドル回転数以上の回転数で制御されるため、この時間t2おいてモータジェネレータMGの回転数が上昇し、それに伴い自動変速機ATの入力回転数が上昇する。
ここでは、WSC走行モードにおいて発電制御が行われている。時間t3において、アイドルリクエストが下げられて、WSC走行モードにおける発電制御が開始される。このとき、目標エンジントルクは、駆動分のトルクに発電分のトルクを加えた値が出力され、これに応じて第1クラッチ伝達トルク容量が上昇される。
時間t4において、WSC走行モードからMWSC走行モードへの移行制御が開始される。このとき、目標エンジントルクはゼロに設定され、第1クラッチ伝達トルク容量エンジン始動トルクまで低下される。
時間t4において目標エンジントルクがゼロに設定されてから時間t5までの時間を待ち時間とし、第1クラッチCL1の解放を遅らせて、時間t5において目標第1クラッチ伝達トルク容量をゼロにする。この待ち時間の間に、エンジントルクが低下するため、第1クラッチCL1を解放したときの吹き上がりを抑制することができる。また第2クラッチCL2の温度が高くなるほど、待ち時間を短く設定しているため、第2クラッチCL2の過大な発熱を抑制することができる。目標駆動トルクは大きいほど第2クラッチCL2における発熱量は高くなるが、目標駆動トルクが大きくなるほど、待ち時間を短く設定しているため、第2クラッチCL2の過大な発熱を抑制することができる。
時間t5において、第1クラッチ伝達トルク容量をゼロにして、再びアイドルリクエストが出力され、エンジンEはアイドル回転数を維持するように制御される。
例えば、図13で説明したWSC走行モードからMWSC走行モードの移行のように、エンジンEを駆動した状態で第1クラッチCL1を解放するモード移行の場合、第1クラッチCL1の解放が早いと、エンジン回転数の吹き上がりが生じる。逆に第1クラッチCL1の解放が遅いと、第2クラッチCL2をスリップ制御しているときには発熱用が過大となってしまう。
そこで実施例1では、エンジンEを駆動しつつ、第1クラッチCL1が締結され、第2クラッチCL2をスリップ制御している状態から、第1クラッチCL1を解放する際に、目標エンジントルクがゼロとなってから第1クラッチCL1を解放するまでの待ち時間を、第2クラッチCL2の温度が高いほど、目標駆動トルクTdが大きいほど短く設定するようにした。
これにより、待ち時間の間に、エンジントルクが低下するため、第1クラッチCL1を解放したときの吹き上がりを抑制することができる。また第2クラッチCL2の温度が高くなるほど、待ち時間を短く設定しているため、第2クラッチCL2の過大な発熱を抑制することができる。さらに目標駆動トルクが大きくなるほど、待ち時間を短く設定しているため、第2クラッチCL2の過大な発熱を抑制することができる。
また実施例1では、第2クラッチCL2の温度と目標駆動トルクとから待ち時間を求めるマップを用いた。
これにより、演算により待ち時間を求めるよりも、演算器の負荷が小さく、また処理を速くすることができる。
また実施例1では、WSC走行モードからMWSC走行モードへ移行するときに、待ち時間を設定するようにした。
これにより、不必要に第1クラッチCL1の解放を遅らせることなく、エンジン回転数の吹け上がり量の悪化などを防ぐことができる。
また実施例1では、エンジンの出力トルクが低下する低下応答性が高いほど待ち時間を短く設定するようにした。
これにより、エンジン回転数の吹け上がり量の防止を行うことができる。
〔効果〕
次に、実施例1により得られる効果を下記に記載する。
(1)エンジンEと、車両の駆動トルクを出力すると共にエンジンEの始動を行うモータジェネレータMGと、エンジンEとモータジェネレータMGとの間に介装されエンジンEとモータジェネレータMGとを断接する第1クラッチCL1(第1締結要素)と、モータジェネレータMGと駆動輪RL,RRとの間に介装されモータジェネレータMGと駆動輪RL,RRとを断接する第2クラッチCL2(第2締結要素)と、エンジンEを駆動しつつ、第1クラッチCL1を締結し、第2クラッチCL2をスリップ制御している状態から、第1クラッチCL1を解放する際に、目標エンジントルクがゼロとなってから第1クラッチCL1を解放するまでの待ち時間を、第2クラッチの温度が高いほど、目標駆動トルクが大きいほど短く設定する待ち時間設定部600(待ち時間設定手段)と、待ち時間に応じて第1クラッチを解放させる動作点指令部400(第1締結要素制御手段)とを設けた。
よって、待ち時間の間に、エンジントルクが低下するため、第1クラッチCL1を解放したときの吹き上がりを抑制することができる。また第2クラッチCL2の温度が高くなるほど、待ち時間を短く設定しているため、第2クラッチCL2の過大な発熱を抑制することができる。さらに目標駆動トルクが大きくなるほど、待ち時間を短く設定しているため、第2クラッチCL2の過大な発熱を抑制することができる。
(2)待ち時間設定部600に、第2クラッチCL2の温度、目標駆動トルクと待ち時間との関係を示すマップを設けた。
よって、演算により待ち時間を求めるよりも、演算器の負荷が小さく、また処理を速くすることができる。
(3)待ち時間設定部600は、第1クラッチCL1を締結し、エンジンEが所定回転数以上となるようにモータジェネレータMGを制御して第2クラッチCL2をスリップ締結するWSC走行モード(エンジン使用スリップ走行制御)から、エンジンEを所定回転数で作動させたまま第1クラッチCL1を解放し、モータジェネレータMGを所定回転数よりも低い回転数として第2クラッチCL2をスリップ締結するMWSC走行モード(モータスリップ走行制御)へ移行する際に、目標エンジントルクがゼロとなってから第1クラッチCL1を解放するまでの待ち時間を設定するようにした。
よって、不必要に第1クラッチCL1の解放を遅らせることなく、エンジン回転数の吹け上がり量の悪化などを防ぐことができる。
(4)待ち時間設定部600は、エンジンEの出力トルクが低下する低下応答性が高いほど待ち時間を短く設定するようにした。
よって、エンジン回転数の吹け上がり量の悪化を防止することができる。
[他の実施例]
以上、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例1に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施例1で待ち時間の設定をWSC走行モードからMWSC走行モードへ移行するときに設定していた。これをHEV走行モードまたはWSC走行モードからEV走行モードへ移行するときに設定するようにしても良い。つまり、エンジンを駆動している状態からエンジン停止する際に第1クラッチCL1を解放するときにも待ち時間を設定するようにしても良い。
また実施例1では、目標エンジントルクがゼロとなってから設定した待ち時間を待って、第1クラッチCL1を解放するようにしている。目標エンジントルクは、ゼロにならなくともある設定値以下となってから待ち時間をまって第1クラッチCL1を解放するようにしても良い。また目標エンジントルクのみならず、フューエルカット制御信号の出力をもとに制御してもよい。
また、実施例1では、FR型のハイブリッド車両について説明したが、FF型のハイブリッド車両であっても構わない。