JP5697051B2 - 電解銅合金箔、その製造方法、その製造に用いる電解液、二次電池用負極集電体、二次電池及びその電極 - Google Patents

電解銅合金箔、その製造方法、その製造に用いる電解液、二次電池用負極集電体、二次電池及びその電極 Download PDF

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本発明は、電解析出面が低プロファイルであり、且つ、大きな機械的強度を備え、高温で加熱しても機械的強度が変化し難い電解銅合金箔及びその製造方法に関するものである。
また、本発明は、該電解銅合金箔を製箔する電解銅合金箔製箔用電解液に関するものである。
なお、ここで機械的強度とは引張強さ、0.2%耐力を指す。
本発明はさらに、前記電解銅合金箔を導電材としたリジッドプリント配線板、フレキシブルプリント配線板、電磁波シールド材料等に関するものである。
また本発明は、前記電解銅合金箔を二次電池用集電体とし、該集電体に活物質を堆積して二次電池用電極とし、該電極を組み込んだ二次電池に関するものである。
銅箔は、リジッドプリント配線板、フレキシブルプリント配線板、電磁波シールド材料、電池の集電体等々、種々の分野で使用されている。
これらの分野の内、ポリイミドフィルムと張り合わせるプリント配線板(フレキシブル配線板、以下「FPC」と称する。)の分野において、ハードディスク(以下、「HDD」と称する。)サスペンション材料、或いはテープ・オートメーティド・ボンディング(以下、「TAB」と称する。)材料は、銅箔の強度向上を要求してきている。
HDDに搭載されているサスペンションは、HDDの高容量化が進むに従い従来使用されてきたワイヤタイプのサスペンションから、記憶媒体であるディスクに対しフライングヘッドの浮力と位置精度が安定した配線一体型のサスペンションへ大半が置き換わってきている。
この配線一体型サスペンションは、次の三種類のタイプがある。
a.FSA(フレックス サスペンション アッセンブリ)法と呼ばれるフレキシブルプリント基板を加工し接着剤を用いて張り合わせたタイプ
b.CIS(サーキット・インテグレーティッド・サスペンション)法と呼ばれるポリイミド樹脂の前駆体であるアミック酸を形状加工した後、イミド化し更にポリイミド上にメッキ加工を施すことにより配線を形成するタイプ
c.TSA(トレース・サスペンション・アッセンブリ)法と呼ばれるステンレス箔−ポリイミド樹脂−銅箔からなる積層体をエッチング加工により所定の形状に加工するタイプ
TSA法サスペンションは、高強度を有する銅合金箔を積層することによって、容易にフライングリードを形成させることが可能であり、形状加工での自由度が高いことや比較的安価で寸法精度が良いことから幅広く使用されている。
TSA法により形成される積層体は、ステンレス箔厚さは12〜30μm程度、ポリイミド層厚みは5〜20μm程度、銅合金箔厚さは7〜14μm程度の材料を用いて製造されている。
積層体の製造は、まず基体となるステンレス箔上にポリイミド樹脂液を塗布する。塗布後、予備加熱により溶媒を除去した後、さらに加熱処理してイミド化を行う。続いてイミド化したポリイミド樹脂層の上に銅合金箔を重ね合わせ、300℃程度の温度で加熱圧着してラミネートし、ステンレス層/ポリイミド層/銅合金層からなる積層体を製造する。
この300℃程度の加熱時において、ステンレス箔には寸法変化がほとんど見られない。しかし、従来の電解銅箔を使用すると、電解銅箔は300℃程度の温度で焼鈍され、再結晶が進み、軟化して寸法変化が生ずる。このため、ラミネート後に積層体に反りが生じ、製品の寸法精度が低下する。
ラミネート後に積層体に反りを生じさせないためには、加熱時の寸法変化ができるだけ小さい銅合金箔の提供が求められている。
また、TAB材料においてはHDDサスペンション材料と同様、銅箔の高強度化と共に箔表面の低粗度化が要求されている。
TAB製品においては、製品のほぼ中央部に位置するデバイスホールに配されるインナーリード(フライングリード)に対し、ICチップの複数の端子を直接ボンディングする。このボンディングはボンディング装置を用いて、瞬間的に通電加熱し、一定のボンディング圧を付加して行う。このとき、電解銅箔をエッチング形成して得られたインナーリードが、ボンディング圧で引っ張られて伸びるという問題がある。
さらには、電解銅箔の強度が低いと塑性変形してインナーリードにたるみが発生し、著しい場合には破断する可能性がある。
従って、インナーリードの線幅を細線化するには、使用する電解銅箔は低粗度化された粗面を持ち、かつ高強度であることが要求される。
この場合も、常態(常温・常圧状態)で銅箔が高強度であるとともに、加熱した後でも高強度であることが必要である。TAB用途の場合には、銅箔とポリイミドが張り合わされた2層または3層のFPCが使用される。3層のFPCでは銅箔にポリイミドを張り合わせる場合には、エポキシ系の接着剤を使用し、180℃前後の温度で張り合わせる。またポリイミド系の接着剤を使用した2層FPCでは、300℃前後の温度で張り合わせを行う。
仮に常態で機械的強度が大きい電解銅箔であっても、ポリイミドに接着した時に電解銅箔が軟化しては意味がない。従来の高強度電解銅箔は常態での機械的強度が大きく、180℃前後で加熱してもほとんど機械的強度は変化しないが、300℃程度で加熱した場合は、焼鈍され再結晶が進むため、急速に軟化して機械的強度が低下する。このような銅箔はTAB用途には不向きである。
また銅箔はリチウムイオン二次電池等の電池用集電体として使用されている。リチウムイオン二次電池は基本的に、正極、負極、電解液から構成される。負極は、集電体として用いられる銅箔の表面に負極活物質層をコーティングすることで形成される。
負極の形成法としては、負極活物質とバインダー樹脂(活物質と銅箔基板とを結着することを目的に添加される)を溶剤に溶かしたスラリーを銅箔基板上に塗布し、バインダー樹脂の硬化温度以上の温度で乾燥させた後、プレスすることで形成する方法が一般的である。
バインダー樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やスチレンブタジエンゴム(SBR)等が広く用いられている。
近年、電池の高容量化に伴い着目されている、理論容量の高いケイ素、スズ、ゲルマニウム合金系材料などからなる活物質は、充放電時のリチウムの挿入脱離に伴う体積膨張率が非常に大きく、上述したバインダー樹脂では強度が足りない。そこで、銅基板との接着強度の高いポリイミド系樹脂が好ましく使用されてきている。しかし、ポリイミド系樹脂は上述したバインダー樹脂と違い、硬化温度が300℃程度と非常に高く、この加熱条件に耐え得る負極集電体(銅箔)が要求されている。
このように、FPC分野、二次電池分野では共に硬化温度が300℃程度と非常に高いポリイミド系樹脂がバインダーとして使用されるようになってきており、この加熱条件に耐え得る銅箔が要求されている。
他方、ポリイミド樹脂基材と張り合わせる面が低プロファイルで、且つ、機械的強度にも優れた電解銅箔として、以下に示すように種々の研究が行われてきた。
例えば、特許文献1(日本特許第4120806号)は、プリント配線板用途や二次電池用負極集電体用途に最適な銅箔として粗面粗さRzが2.0μm以下で均一に低粗度化された粗面を持ち、180℃における伸び率が10.0%以上である低粗面電解銅箔を開示している。
そして、特許文献1は、硫酸−硫酸銅水溶液を電解液とし、ポリエチレンイミン又はその誘導体、活性有機イオウ化合物のスルホン酸塩及び塩素イオンを存在させることによって、上記の電解銅箔が得られることも開示している。
特許文献2(日本特許第4273309号)は、粗面粗さRzが2.5μm以下であり、電着完了時点から20分以内に測定した25℃における引張強さが820MPa以上であり、電着完了時点から20分以内に測定した25℃における引張強さに対する電着完了時点から300分経過時に測定した25℃における引張強さの低下率が10%以下である電解銅箔を開示している。
そして特許文献2は、硫酸銅と硫酸を含有する水溶液を電解液として、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンイミン、活性有機イオウ化合物のスルホン酸塩、アセチレングリコール、及び塩素イオンを存在させて上記の電解銅箔が得られることも開示している。
特許文献3(日本特許第3270637号)は、円柱状粒子および双晶境界がなく、そして、10μmまでの平均粒子サイズを有する粒子構造を持つ電解銅箔であって、該粒子構造が実質的に一様でランダムに配向する粒子構造である、制御された低プロフィルの電解銅箔を開示している。
この電解銅箔は、23℃における最大引張強さが87,000〜120,000psi(600MPa〜827MPa)の範囲にあり、180℃における最大引張強さが25,000〜35,000psi(172MPa〜241MPa)である。
上記特許文献1〜3に開示された電解銅箔の場合、いずれも常態での機械的強度は大きいものの、300℃以上の高温で加熱した場合には著しく機械的強度が低下する。
上記特許文献1〜3に開示された電解銅箔の場合、いずれも硫酸銅と硫酸を含有する電解液を用い、添加剤の種類は異なるが、いずれも有機化合物を添加剤として使用している(以下、有機添加剤と記す)。
有機添加剤は通常は結晶の成長を抑制する効果のあるものが多く、結晶粒界に取り込まれると考えられている。
この場合、結晶粒界に取り込まれる有機添加剤の量が多いほど機械的強度が向上する傾向にある(非特許文献1:志賀章二;金属表面技術 Vol31, No10,p573 (1980))。
結晶粒界に取り込まれた有機添加剤を300℃以上の高温で加熱した場合には有機添加剤が分解してしまい、その結果として機械的強度が低下すると考えられる。
一方、上記要求を満たす銅箔として圧延銅合金箔が使用されている。圧延銅合金箔は300℃程度の温度では焼鈍されにくく、加熱時の寸法変化が小さく、機械的強度変化も少ない。
しかし圧延銅箔は電解銅箔に比べると高価であり、幅、厚さ等の要求を満足させることが難しい。
そこで本発明者等はポリイミド樹脂基材と張り合わせる面が低プロファイルで、且つ、機械的強度にも優れた電解銅箔として、銅箔にタングステンを添加して銅箔の耐熱性を改善し、ポリイミド系樹脂をバインダー樹脂とする用途に適合する電解銅合金箔の開発を試みた。
しかし、タングステンは電解銅箔中に非常に取り込みにくい金属である。
特許文献4(日本特許3238278号)、特許文献5(特開平9−67693号)は、電解銅箔を製箔する電解液にタングステンを添加したことを開示している。
特許文献4、5は印刷回路用銅箔に関するものであり、その実施例には電解液にタングステン(W)と塩素イオン(塩化物イオン)を20〜100mg/l添加した電解液で製箔し、製箔した銅箔はピンホールがなく、樹脂基板との接着性に優れ、180℃における熱間伸び率が高い、と開示している。しかし、銅箔中にタングステンが取り込まれた、即ち、Cu−W合金箔が製造された、との記載はない。
ところで、電解銅箔の電解液には硫酸銅と硫酸を含有する電解液を使用し、銅箔表面の光沢化や平滑化、銅箔の応力減少などを目的として、めっき浴には種々の添加剤が添加されている。添加剤を用いない場合には、銅箔に要求される表面形態や機械的特性などが得られないことから、添加剤の重要性は非常に高い。特に硫酸銅めっき浴は単純酸性浴であるために均一電着性に劣り、添加剤無しでは好ましい電解銅箔の製造は困難である。硫酸銅めっき浴に用いられる添加剤としては、塩素イオン、ポリオキシエチレン系の界面活性剤、平滑剤、有機硫化物などの光沢剤、膠(にかわ)、ゼラチンなどが提案され、使用されている。
硫酸銅めっき浴に塩素や添加剤を添加しないと電気が流れやすい高電流部分(陽極に近い箇所や、陰極の端、とがったものの先端など)にめっきが集中し、一般的に言う「ヤケの状態(めっき面がより凸凹になる)」になる。そのため通常の硫酸銅めっきでは20〜100mg/l程度の塩素イオンを添加する。塩素イオンが20mg/l未満になると、上記理由から、ヤケが出やすくなり、逆に80mg/lを超えるとレベリング作用が強すぎて低電流部分(小穴の中など)で「曇り」が発生する。
しかし、電解液中に塩素イオンが存在すると銅箔中に特定の金属を混入させて銅箔の特性を変化させることが困難となる。即ち、塩素イオンが存在しない電解液では銅箔中に他の金属を混入させることが可能であり、他の金属を混入させ(合金化し)銅箔の特性を変化させることができるが、電解液中に塩素イオンが入ると銅箔に他の金属が混入しづらくなり、銅箔の特性を他の金属で変化させることが極めて困難となる。
例えば、特許文献4、5は、硫酸−硫酸銅電解液中にタングステンを加え、さらに膠と塩素イオンを加えた電解液で電解銅箔を製造する方法を開示しており、その効果として180℃における熱間伸び率が3%以上であり、粗面の粗さが大きく、ピンホール発生の少ない銅箔が製造可能であると記載している。
そこで本発明者は、硫酸−硫酸銅電解液中にタングステンを加え、さらに膠と塩素イオンを加えた実験を繰り返し、特許文献4に開示されている電解銅箔が目的とする180℃における熱間伸び率が3%以上であり、粗面の粗さが大きく、ピンホール発生の少ない銅箔を製造することができた。しかし、この銅箔を300℃×1時間加熱処理したところ、機械的強度が保持できないことが判明した。そこでこの銅箔を分析したところ、電析銅中にタングステンが共析していない結果となった。
即ち、特許文献4,5の方法では硫酸−硫酸銅電解液中にタングステンを加え、さらに膠10mg/l以下と塩素イオンを20〜100mg/l添加した電解液で電析を行ったため、銅箔中にタングステンが共析せず、300℃で加熱しても高い機械的強度を保持する電解銅合金箔を製造することができない結果となった。
特許第4120806号 特許第4273309号 特許第3270637号 特許第3238278号 特開平9−67693号公報 特許第3238278号 特開平9−67693号公報
志賀章二;金属表面技術 Vol31, No10,p573 (1980)
本発明者は、上述した課題を克服し、銅箔中にタングステンを銅合金として取り込み、その結果として、常温での引張強さ650MPa以上、300℃×1時間熱処理後の引張強さ450MPa以上、導電率が80%以上の電解銅合金箔を製箔することに成功した。
また、本発明者は、たとえば、HDDサスペンション材料、TAB材料として、或いはSi又はSn合金系活物質の大きな膨張、収縮を繰り返す活物質に対して、ポリイミドバインダーの使用を可能とし、集電体(銅箔)として変形あるいは破断しない電解銅合金箔の開発に成功した。
本発明は、常温での引張強さ650MPa以上、300℃×1時間熱処理後の引張強さ450MPa以上、導電率が80%以上の電解銅合金箔を提供することを目的とする。
また、本発明はポリイミドフィルムと張り合わせるプリント配線板分野における用途において機械的強度に優れた電解銅合金箔を提供することを目的とする。
更に本発明は、Si又はSn合金系活物質を用いるリチウムイオン二次電池で、Si又はSn合金系活物質の大きな膨張、収縮に対して、集電体(銅箔)と活物質との密着性をポリイミドバインダーにより保持し、集電体(銅箔)が変形あるいは破断しない銅合金箔を提供することを目的とする。
本発明電解銅合金箔は、タングステンを含有する電解銅合金箔である。
当該電解銅合金箔には、前記タングステンの全てまたは一部が酸化物として取り込まれている。
また本発明の電解銅合金箔は、タングステン酸化物を含有する。
好ましくは、タングステンを0.0001〜0.060質量%含有する。
また好ましくは、タングステンを0.001〜0.055質量%含み、常温での引張強度が650MPa以上で、300℃×1時間後の引張強度が450MPa以上である。
また好ましくは、タングステンを0.001〜0.055質量%含み、常温での引張強度が650MPa以上で、300℃×1時間後の引張強度が450MPa以上で、導電率が80%以上である。
また好ましくは、タングステンを0.001〜0.055質量%含み、常温での引張強度が650MPa以上で、300℃×1時間後の引張強度が450MPa以上で、常温での伸びが2.5%以上、300℃×1時間後の伸びが3.5%以上である。
また本発明の電解銅合金箔は、タングステン酸化物及び塩素を含有する。
好ましくは、タングステンを0.0001〜0.060質量%含有し、塩素を0.005〜0.040質量%含有する。
また好ましくは、タングステンを0.0001〜0.060質量%含有し、X線回折より得られた結晶方位<220>のピーク強度I<220>と、結晶方位<200>のピーク強度I<200>とのピーク強度比率、I<220>/I<200>が1.2以上である。
また本発明によれば、上記いずれかの電解銅合金箔を用いたリチウムイオン二次電池用負極集電体が提供される。
また本発明によれば、上記いずれかの電解銅合金箔をリチウムイオン二次電池用負極集電体として用い、その表面に、シリコン、ゲルマニウム、錫又はそれらの合金化合物またはそれらを主成分とする活物質が堆積されている、二次電池用電極が提供される。
また本発明によれば、上記いずれかの電解銅合金箔を集電体として用いたリチウムイオン二次電池が提供される。
また本発明によれば、硫酸−硫酸銅系電解液に、添加剤としてチオ尿素系化合物、タングステン塩、塩素イオンを添加し、電解析出により上記電解銅合金箔を製箔する電解銅合金箔の製造方法が提供される。
また本発明によれば、タングステンを0.001〜0.055質量%含み、常温での引張強度が650MPa以上で、300℃×1時間後の引張強度が450MPa以上で、導電率が80%以上である、電解銅合金箔の製造方法であって、該電解銅合金箔は、硫酸銅系電解液に、添加剤としてタングステン10〜1,000ppm、チオ尿素系化合物を1〜20ppm、塩素イオンを1〜100ppm添加した硫酸銅系電解液で製箔する電解銅合金箔の製造方法が提供される。
また本発明によれば、硫酸銅、硫酸と塩素イオンを含有し、タングステンまたはタングステン化合物と、チオ尿素系有機添加剤を添加してなる、電解銅箔製箔用電解液が提供される。
好ましくは、前記電解銅箔製箔用電解液は、タングステンまたはタングステン化合物をタングステンとして10〜1,000ppm、チオ尿素系化合物を1〜20ppm、塩素イオンを1〜100ppm含有する
また好ましくは、前記電解液に添加するチオ尿素系化合物は、チオ尿素、N,N−ジエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、エチレンチオ尿素のいずれかである。
また好ましくは、上記電解液にアンモニアイオン、硝酸イオンのうち少なくとも何れかを添加してなる、電解銅合金箔製箔用電解液が提供される
また本発明によれば、上記いずれかの電解銅合金箔製箔用電解液を用いて電解製箔された、電解銅合金箔が提供される。
なお、以下の記述において、たとえば、「残部が実質的に銅からなる」との記載は、銅に不可避的不純物が含まれ、或いは微量の添加物が含まれている、ことを意味する。
本発明によれば、常態の機械的強度が大きく、かつ、300℃以上で加熱しても熱劣化がし難い電解銅合金箔を提供することができた。
図1は、本発明の電解銅合金箔のXAFSスペクトル図である。
本発明の電解銅合金箔はタングステンを含有し、残部が銅の電解銅合金箔(Cu−W合金箔)である。
電解銅合金箔に含まれるタングステンの量は0.0001〜0.060wt%の範囲が好ましい。
タングステンの含有量を好ましくは、0.001wt%以上とする理由は、0.001wt%以下ではタングステンを添加した効果が殆ど現れないためである。一方、タングステンの添加量を、好ましくは、0.060wt%以下とする理由は、0.060wt%以上添加してもその効果は既に飽和し、物性改善の効果が見られないためである。
即ち、タングステンを0.0001wt%以下添加した銅合金箔では300℃×1H加熱後の機械的強度は、タングステンを含有しない場合と同様、強度が低下する傾向を示す。
タングステンの添加量が増加するに従って300℃×1H加熱後の強度の低下は小さくなるが、含有量がある程度多くなるとその効果は飽和してくる。従って添加量の上限は0.060wt%程度である。
本発明者等はCu−W合金箔を製造するために種々の実験を繰り返した。その結果、塩素イオンが含まれる電解液では、液中にタングステンを多く添加しても製箔した銅箔中にタングステンが取り込まれることはなく、当然この様な電解液で製箔された銅箔の常温及び加熱後の箔の機械的強度は向上しなかった。
しかし、電解液に塩素イオンを添加しても、液中にチオ尿素系化合物を添加すると製箔条件によってはタングステンが箔中に取り込まれる、との知見を得た。
このような知見を基にタングステンが銅箔中に取り込まれる要因を解析したところ、銅箔のX線回析より得られる、結晶方位〈220〉におけるピーク強度I〈220〉と、結晶方位〈200〉におけるピーク強度I〈200〉の比率、すなわち、ピーク強度比、I〈220〉/I〈200〉が1.2以上であると、タングステンが箔中に取り込まれる、との結果を得た。
このような知見を踏まえて電解銅合金箔を以下の条件で製箔することで、耐熱性に優れた電解銅合金箔を製造することに成功した。
即ち、300℃、1時間加熱後の引張り強さが450MPa以上の銅合金箔を下記基本電解浴組成、電解条件で製箔することにより、電解銅合金箔のX線回析より得られるピーク強度比、I〈220〉/I〈200〉が1.2以上となり、タングステンがCu−W合金として箔内に取り込まれた電解銅合金箔を製箔することができる。
基本電解浴組成
Cu=50〜150g/l
2SO4=20〜200g/l
Cl=1〜100ppm
タングステン酸ナトリウム(タングステンとして)=10〜1,000ppm
チオ尿素系化合物=3〜20ppm
電解条件
電流密度=30〜100A/dm2
液温=30〜70℃
硫酸−硫酸銅系銅電解液に添加する添加剤は下記の通りである。
添加剤A:チオ尿素系化合物
添加剤B:タングステン塩
添加剤C:塩素イオン
添加剤A:チオ尿素系化合物とは下記構造をもつ有機化合物である。

>N−C(=S)−N<

チオ尿素系化合物の例としては、チオ尿素、N,N‐ジエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、エチレンチオ尿素である。しかし、これらは後述する実施例で使用したものを例示しているに過ぎず、以上で述べたような構造的特徴を有し、同様の効果を発揮する化合物であれば、いずれの化合物も使用可能である。
添加剤B:タングステン塩は硫酸銅と硫酸を含有する電解液中で溶解するもので、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸カリウム等をあげることができる。
添加剤C:塩素イオンの添加は、硫酸銅と硫酸を含有する電解液中で溶解する化合物から選ばれる。塩酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム等をあげることができる。
有機添加剤としてチオ尿素系化合物を使用する理由は、これらの化合物が溶液中で容易に[=S]の構造に変化し、[=S]構造が優先的に銅に吸着して有機分子の吸着層を形成し、該吸着層上にタングステン酸化物が吸着することで、タングステンはチオ尿素系化合物と一緒に箔中に取り込まれるためである。
タングステンは酸性溶液中では酸化物として存在するが、塩素を含む電解液を用いた銅電析では銅の析出面上を塩素イオンが被覆しているため、タングステン酸化物は銅に吸着されず、箔中へのタングステンの取り込みが起こらない。該電解液にチオ尿素系化合物を添加すると、[=S]構造が塩素イオンよりも優先的に銅上に吸着して銅に有機分子の吸着層を形成する。該吸着層上にタングステン酸化物が吸着することにより、タングステンはチオ尿素系化合物と一緒に箔中に取り込まれるものと推考される。
このように、本発明電解銅合金箔は、硫酸−硫酸銅電解液にタングステン、チオ尿素系化合物、塩素を含む電解液から電解析出により形成する。このタングステン、チオ尿素系化合物、塩素を含む硫酸−硫酸銅電解液中で銅を電解析出すると、タングステン酸化物がチオ尿素系化合物と一緒に銅の結晶粒界に吸着され、結晶核の成長を抑制し、結晶粒を微細化(低プロファイル化)し、常態で大きな機械的強度を備えた電解銅合金箔を形成するものと考えられる。
また、本発明者等は、Cu−W合金箔を製造するために種々の実験を繰り返した。その結果、塩素イオンが含まれる電解液では、液中にタングステンを多く添加しても電解銅箔中にタングステンが取り込まれるようなことはなかった。また、特許文献4、5に開示されているように、塩素イオンが含まれる電解液にタングステンと膠を添加しても、電解銅箔中にタングステンが取り込まれるようなことはなかった。
当然のことながら、このような電解液で製箔した電解銅箔は、300℃程度の高温で加熱した後に機械的強度が大きく低下した。
しかし、電解液中にチオ尿素系化合物を添加すると塩素イオンが含まれていても製箔条件によってはタングステンが箔中に取り込まれるとの知見を得た。
このような知見をもとにタングステンが銅箔中に取り込まれる要因を解析したところ、銅箔のX線回折により得られるピーク強度比、I〈220〉/I〈200〉が1.2以上であると、タングステンの取り込みが促進される。
この銅合金箔の結晶粒界に存在するタングステン酸化物は、バルクの銅結晶と結合、あるいは吸収されることなく、タングステン酸化物のまま結晶粒界にとどまると考えられる。
従って、タングステンを含有する電解銅合金箔は300℃程度の高温で加熱しても、タングステン酸化物は結晶粒界にとどまり、銅の微細結晶が熱により再結晶し、結晶が粗大化するのを防ぐ働きをすると考えられる。
よって、本発明の電解銅箔は、300℃程度の高温で加熱した後でも、低プロファイルで、機械的強度の低下が小さいという、これまでの有機添加剤を用いた硫酸−硫酸銅系の電解液により製造された電解銅箔には見られない優れた特徴を発揮する。
硫酸−硫酸銅系の電解液に添加されるチオ尿素系化合物は、電解液中で金属元素、塩素とともに錯体を形成すると考えられる。
タングステンが添加されていない場合は、電解銅箔製箔用の電解液に添加されている金属元素は銅である。従って、硫酸銅と硫酸を含有する電解液中で銅−チオ尿素系化合物が形成される。この電解液による銅電析で電解銅箔を形成すると、銅−チオ尿素系化合物が結晶粒界に吸着され、結晶核の成長を抑制し、結晶粒を微細化し、常態で大きな機械的強度を備えた電解銅箔を形成する。
しかし、この銅箔は結晶粒界に存在する物質が、銅−チオ尿素系化合物であるため、銅はバルクの銅結晶と結合あるいは吸収され、結晶粒界に存在する物質が、チオ尿素系化合物のみとなってしまうため、300℃程度の高温に曝されると分解し、その結果として機械的強度が低下すると考えられる。
300℃程度の高温で加熱した場合に引張強さが著しく低下する理由は、上記のように結晶粒界に存在する化合物が有機化合物であり、該有機化合物は300℃程度の加熱により分解しやすいため、機械的強度が低下すると考えられる。
特許文献1〜3に開示されている方法では異なる有機化合物を使用して電解析出を行い、電解銅箔を製造しているが、いずれも有機添加剤と塩素を含む硫酸−硫酸銅電解液から製造されたものであり、電解銅箔の結晶粒界に吸着しているのは有機化合物成分であるため、かかる電解銅箔が300℃以上の高温に曝された場合、著しく機械的強度が低下するのは結晶粒界に吸着している化合物がいずれも300℃以上の高温加熱で分解しやすい有機化合物であるからと考えられる。
これに対して本発明は、硫酸銅と硫酸を含有する電解液にタングステン、チオ尿素系化合物、塩素を含む電解液により銅電析を行い、銅合金箔を形成するので、タングステン酸化物はチオ尿素系化合物と一緒に銅上に吸着する。吸着されたタングステン酸化物及びチオ尿素系化合物により結晶核の成長が抑制され、結晶粒が微細化され、常態で大きな機械的強度を備えた電解銅合金箔が形成される。
このように、本発明の電解銅合金箔はタングステン酸化物及びチオ尿素系化合物が結晶粒界に存在するため、銅−チオ尿素系化合物の場合とは異なり、タングステン酸化物はバルクの銅結晶と結合、あるいは吸収されることなく、タングステン酸化物及びチオ尿素系化合物のまま結晶粒界にとどまると考えられる。このため、300℃程度の高温に曝されても、タングステン酸化物は結晶粒界にとどまり、銅の微細結晶が熱により再結晶し、結晶が粗大化するのを防ぐ働きをする。
電解液中に添加するタングステンの量は10〜1,000ppmが好ましい。タングステンの添加量を10ppm以上とするのは、これ以下ではタングステンを含有させた効果が現れず、1,000ppmを超えて含有させても引張強度向上等の効果は向上しないためである。従ってタングステンの添加量は10〜1,000ppmとすることが好ましい。
上述したように塩素イオンを添加した電解液では銅箔にまともにタングステンを取り込むことは極めて困難である。しかし、本発明ではチオ尿素系化合物を添加することで、銅箔中にタングステンを取り込むことに成功した。
添加するチオ尿素系化合物の量を3ppm〜20ppmとするのは、3ppm未満では銅箔中にタングステンを規定量取り込むことができず、300℃、1時間加熱後の引張強度が450MPa以下となり、20ppmを超えて添加すると銅箔中にタングステンが入りすぎ、引張強度が高くなり過ぎ、或いは伸びが小さくなり、好ましくない性質が現れるためで、添加量は3ppm〜20ppmが好ましい範囲である。
塩素イオンの添加量は1〜100ppmである。塩素イオンが1ppm未満の添加では、箔にピンホールが多く発生するため好ましくなく、また、塩素イオンを100ppmを超えて添加すると、表面粗さが著しく大きくなる等の不具合が発現すためで、従って、塩素イオンは1〜100ppmの範囲とすることが好ましく、特に好ましく15〜50ppmである。
電解銅合金箔は、タングステン、チオ尿素系化合物、塩素イオンを上記した規定量添加した硫酸銅溶液を電解液として、貴金属酸化物被覆チタンを陽極に、チタン製回転ドラムを陰極として、電流密度30〜100A/dm2、液温30〜70℃の条件で電解処理することで製箔する。
このような条件で製箔することでX線回析により得られるピーク強度比I〈220〉/I〈200〉を1.2以上とすることができ、電解銅箔中へのタングステンの取り込みを促進することができる。
好ましくは、本発明の電解液にアンモニウムイオン、または硝酸イオンを添加することで製箔される電解銅合金箔の300℃×1H加熱後の機械的強度をさらに向上させることができる。
電解液に添加するアンモニウムイオンの量は1〜15g/l、硝酸イオンの量は50〜200mg/lが適している。加熱処理後の機械的強度をさらに向上させる際には、電解液にアンモニアイオンまたは硝酸イオンを添加することが好ましい。
前記電解液を使用し、適正な電流密度と液温で製箔することで、300℃×1時間加熱後の引張り強さが450MPa以上、300℃×1時間加熱後の伸び率3.5%以上、導電率が80%以上の電解銅合金箔を製造することができる。
上述したように、リチウムイオン二次電池の負極集電体を構成する集電体(銅箔)は、ポリイミドバインダーを使用する場合、通常300℃×1時間の熱処理に耐える必要性がある。即ち、リチウムイオン二次電池用集電体表面には活物質、導電材とバインダーの混合物に溶剤などを加えてペースト状に調製した活物質組成物が塗布され、乾燥工程を経て、リチウムイオン二次電池の負極とする。その乾燥工程において、300℃×1時間の熱処理を必要とする。この乾燥工程の加熱条件に耐え、かつ活物質の充放電サイクルによる膨張、収縮に耐える銅箔として、300℃×1時間加熱後の引張り強さが450MPa以上、伸び率3.5%以上の条件を満足する性能が必要である。
また、SiやSnなどの活物質はカーボンなどの活物質と比べ電子伝導性が悪い。活物質の導電性が悪いと、電極の内部抵抗が上がるため、サイクル特性が劣化する。そのため、集電体としての銅箔には80%以上の導電率が要求される。
本発明のCu−W合金箔は上記二次電池用集電体が要求する諸特性を満足する。従ってかかる電解銅合金箔を集電体とし、該集電体にシリコン、ゲルマニウム、錫又はそれらの合金化合物またはそれらを主成分とする活物質を堆積して電極とし、該電極を組み込むことで性能の優れたリチウムイオン二次電池を製造することができる。
〈実施例A〉
表1に示す量の銅、硫酸、塩素イオン、タングステン、チオ尿素系有機添加剤を添加した硫酸銅と硫酸を含有する電解液を用いて貴金属酸化物被覆チタンを陽極に、チタン製回転ドラムを陰極として、下記電解条件で電解銅合金箔を製箔した。
電解条件
電流密度 30〜100A/dm2
温度 30〜70℃
なお、加熱後とは不活性ガス雰囲気中で、300℃×1H加熱した後のことを示す。以下の実施例でも同様である。
Figure 0005697051
防錆処理
このようにして製箔した電解銅合金箔に下記条件で防錆処理を施した。
製箔した電解銅合金箔(未処理銅合金箔)をCrO3;1g/l水溶液に5秒間浸漬して、クロメート処理を施し、水洗後乾燥させた。
なお、ここでは、クロメート処理を行ったが、ベンゾトリアゾール系処理、或いはシランカップリング剤処理、又はクロメート処理後にシランカップリング剤処理を行ってもよいことは勿論である。
〈比較例〉
表2に示す量の銅、硫酸、塩素、タングステン、チオ尿素系有機添加剤または膠を添加した硫酸銅と硫酸を含有する電解液を用いて貴金属酸化物被覆チタンを陽極に、チタン製回転ドラムを陰極として、下記電解条件で電解銅合金箔を製箔した。
電解条件
電流密度 10〜40A/dm2
温度 30〜70℃
このようにして製箔した銅箔に実施例と同様の表面処理を行った。
Figure 0005697051
作成した銅箔について次の試験を実施した。
銅合金箔中のタングステンの含有量の測定
タングステン含有量は、一定重量の電解銅合金箔を酸で溶解した後、溶液中のタングステンをICP発光分光分析法により求めた。
使用機器 :ICPS−7000(島津製作所)
銅合金箔の引張り強度、伸びの測定
銅合金箔の引張強度及び伸び率は、IPC−TM−650に基づいて箔の加熱前と加熱後に付き測定した。
使用機器 : AG−I (島津製作所)
導電率の測定
導電率は、まず20mm×200mmの銅箔の抵抗値を測定した後、測定した抵抗値を銅箔の断面積で割って算出した。
抵抗値の測定
抵抗値の測定はJIS−K6271に基づき、4端子法(電流電圧法)で測定した。
塩素含有量の測定
塩素含有量は、一定重量の電解銅合金箔を酸で溶解した後、溶液中の塩素を硝酸銀滴定により定量を行い、算出を行った。
タングステンの解析
電解銅合金中に含有されるタングステンの化学結合状態や電子状態の解析をXAFS(X線微細吸収構造:X-ray Absorption Fine Structure)法で行った。XAFS法では、試料にX線エネルギーを変化させながらX線を照射し、得られたX線吸収スペクトルから試料中の化学結合状態や電子状態の解析を行う。
その他、X線吸収スペクトルを得る手法として、入射したX線の強度と透過したX線の強度からX線吸収スペクトルを求める透過法、X線の吸収に伴って試料から発せられる蛍光X線の強度を測定する蛍光法がある。
金属材料などの添加元素を分析対象とするとき、その添加量は微量であり透過法でのXAFSスペクトルを得ることは困難である。この様な場合に有効なのが上記に記した蛍光法である。蛍光法の特徴としては、その光軸系よりX線の照射面積が広く取れることにより微量成分の元素でもXAFS測定が可能であることである。
本測定では高強度銅箔中のタングステンの化学結合状態や電子状態を知ることが目的であり、タングステンの量は微量であり、透過法でXAFSスペクトルを得るには困難であることから蛍光法を選択した。
測定に関してはSPring−8の産業利用ビームラインBL14B2を使用した。測定したX線のエネルギー範囲は10000〜10434eVとした。このエネルギー範囲にはタングステンのL3−吸収端(10207eV)があるため本測定の目的に適う。
その測定例を図1に示す。
測定試料はタングステンが0.058wt%含有する銅箔(実施例23)を用意した。また比較のため、タングステン箔とWO3を用意した。測定時間としては1試料当り4時間とした。タングステン含有銅箔のスペクトルは金属タングステンではなくWO3のスペクトルとほぼ一致したエネルギー領域にピークをもつことから、電解銅箔中のタングステン元素は酸化物状態として含有されていることが分かった。この結果を基に各実施例においても測定した結果、酸化物状態で含有されていることを確認した。
電池性能試験
次に実施例で製箔した電解銅箔を集電体として、リチウム二次電池を作成し、サイクル寿命試験を行った。
粉末状のSi合金系活物質(平均粒径0.1μm〜10μm)を85、バインダー(ポリイミド)を15の比率(重量比)で混合し、N−メチルピロリドン(溶剤)に分散させて活物質スラリーとした。
次いで、このスラリーを、作成した12μm厚の電解銅箔両面に塗布し、乾燥後ローラープレス機で圧縮形成し、その後、窒素雰囲気下で300℃、1時間焼結し、負極とした。この負極は、成形後の負極合剤の膜厚が両面共に20μmと同一であった。
リチウム二次電池の作成
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、以下の構成で評価用三極式セルを構築した。
負極:上記で作製のSi合金系負極
対極、参照極:リチウム箔
電解液:1mol/l LiPF6/EC+DEC(3:7vol%)
構築したセルをボックスから大気中に取り出し、25℃の雰囲気下で充放電測定を実施した。
充電はLiの標準単極電位基準に対して0.02Vまで定電流で行い、その後はCV(定電位のまま)電流が0.05C低下した時点で充電終了とした。放電は定電流にて0.1Cで1.5V(Li基準)まで行った。同じ0.1C相当電流で充放電を繰り返した。
充放電性能の評価として、充放電100サイクルを行った後電池を分解し、箔の変形、破断を観察した。その結果を表1、2に示す。
タングステン含有電解銅合金箔のタングステン含有量は0.0001〜0.060wt%であることが好ましく、特に0.001〜0.055wt%であることが好ましく、この範囲を外れると充放電試験後にしわの発生が見られた。
Figure 0005697051
Figure 0005697051
〈実施例B〉
下記の浴組成を硫酸銅と硫酸を含有する電解液の基本浴組成とした。
Cu=50〜150g/l
2SO4=20〜200g/l
Cl=1〜100ppm
表5に示す有機添加剤=3〜20ppm
Figure 0005697051
上記の浴に、添加剤としてタングステン酸ナトリウム、及び表5に示されるチオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N−ジエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素を表3に示す濃度となるよう添加し、表3に示す電流密度で電解銅合金箔を12μm厚さに製箔した。
このようにして製箔した電解銅合金箔に下記条件で防錆処理を施した。
製箔した電解銅合金箔(未処理銅合金箔)をCrO3;1g/l水溶液に5秒間浸漬して、クロメート処理を施し、水洗後乾燥させた。
なお、ここでは、クロメート処理を行ったが、ベンゾトリアゾール系処理、或いはシランカップリング剤処理、又はクロメート処理後にシランカップリング剤処理を行ってもよいことは勿論である。
このようにして作成した銅合金箔につき以下の各種測定、試験を行い、その結果を表3に示した。
(1)結晶方位測定(XRD)
銅箔の結晶方位は、X線回折(XRD)により測定した。
使用機器 : RAD−B (理学電機)
条件 CuKα
スキャン法 θ―2θ
管電圧 40kV
管電流 20mA
測定範囲 20〜100°
(2)箔中のタングステン含有量の測定(ICP)
銅合金箔中のタングステン含有量は、一定量の銅合金箔を酸で溶解し、その後蒸留水で希釈したサンプルに対して、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置を使用して測定を行った。
使用機器 : ICPS−7000 (島津製作所)
(3)引張強度測定
銅合金箔の引張強度は、IPC−TM−650に基づいて箔の加熱前と加熱後に付き測定した。
使用機器 : AG−I (島津製作所)
(4)電池性能試験
次に実施例で製箔した電解銅合金箔を集電体として、リチウム二次電池を作成し、サイクル寿命試験を行った。
粉末状のSi合金系活物質(平均粒径0.1μm〜10μm)を85、バインダー(ポリイミド)を15の比率(重量比)で混合し、N−メチルピロリドン(溶剤)に分散させて活物質スラリーとした。
次いで、このスラリーを、作成した12μm厚の電解銅合金箔両面に塗布し、乾燥後ローラープレス機で圧縮形成し、その後、窒素雰囲気下で300℃、1時間焼結し、負極とした。この負極は、成形後の負極合剤の膜厚が両面共に20μmと同一であった。
リチウム二次電池の作成
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、以下の構成で評価用三極式セルを構築した。
負極:上記で作製のSi合金系負極
対極、参照極:リチウム箔
電解液:1mol/l LiPF/EC+DEC(3:7vol%)
構築したセルをボックスから大気中に取り出し、25℃の雰囲気下で充放電測定を実施した。
充電はLiの標準単極電位基準に対して0.02Vまで定電流で行い、その後は定電位のまま電流が0.05C低下した時点で充電終了とした。放電は定電流にて0.1Cで1.5V(Li基準)まで行った。同じ0.1C相当電流で充放電を繰り返した。
充放電性能の評価として、放電容量が1サイクル目の放電容量の70%に達するまでのサイクル数を測定し、サイクル数が100回以上の電極を実用上使用可能と判断し、合格レベルとした。各条件で製造した電極のサイクル数を表3及び表4に示す。
また、充放電試験終了後電池を分解し、負極集電体材料として用いた電極(銅箔)について変形の有無を観察した。その結果をシワ等の変形がないものに対して「○」を、シワ等の変形が生じたものは不合格とし「×」を付した。
(比較例1〜15)
下記の浴組成を硫酸銅と硫酸を含有する電解液の基本浴組成とした。
Cu=50〜150g/l
2SO4=20〜200g/l
Cl=1〜100ppm
上記の浴に、実施例と同様に、添加剤としてタングステン酸ナトリウム、及びチオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N−ジエチルチオ尿素、膠を表4に示す濃度となるよう添加し、表4に示す電流密度で電解銅箔を12μm厚さに製箔した。
製箔した銅箔に対して実施例と同様の評価を行い、箔の結晶方位、箔中のタングステン濃度、加熱処理前後の引張強度、電池特性を測定し、表4にその結果を示した。
表3に、実施例1〜36で作製した銅箔の評価結果を示す。各サンプルは、添加剤濃度や電流密度の変化により、X線回折より得られるピーク強度比I〈220〉/I〈200〉が変化していることを確認することができる。表3に示される銅箔は、X線回折より得られるピーク強度比、I〈220〉/I〈200〉が全て1.2以上であり、タングステンが取り込まれやすい結晶方位に制御されていることで、箔中にはタングステンが0.001wt%以上0.055wt%以下取り込まれている。
電解浴中のタングステン量を増加させると箔中へのタングステン取り込み量も増加する傾向にあることが分かる。また、加熱後の引張強度は450MPa以上であり耐熱性に優れていることが分かった。
300℃、1時間加熱の引張強度をみると、全ての箔において450MPa以上と耐熱性に優れており、サイクル試験後の箔の変形も全ての条件において確認することができなかった。
タングステンの取り込み量が0.001wt%以上となる条件においては、300℃、1時間加熱後の引張強度が450MPa以上と耐熱性に優れており、電池のサイクル数は実用上使用可能な100以上と好ましい特性を示した。なお、タングステン取り込み量が0.055wt%より多い箔においては、箔が切れやすく製箔が困難となる傾向があるため、箔中のタングステンの取り込み量は0.001〜0.055wt%であることが最も好ましい。
表4に比較例1〜15の評価結果を示す。
比較例1〜6の銅箔は、実施例と同様の電解液を使用し、異なる電析条件(電流密度)で作製したサンプルの結果であるが、X線回折より得られるピーク強度比、I〈220〉/I〈200〉が1.2未満であり、タングステンの取り込みに寄与すると考えられる結晶方位を示していないことが確認された。また、タングステンの取り込み量は、電解浴中のタングステン濃度に関らず全て検出限界である0.0001wt%未満とタングステンはほとんど取り込まれておらず、300℃、1時間加熱後の引張強度は450MPa以下と耐熱性が非常に低いことが明らかとなった。
また、添加剤として一般的に使用される膠を添加して製箔した比較例7〜15の銅箔は、どの電解条件においても、X線回折より得られるピーク強度比、I〈220〉/I〈200〉が1.2以上になるような結晶方位を示すことはなく、全てのサンプルでタングステンの取り込み量は0wt%であり、加熱後の引張強度は250MPa以下と非常に低い耐熱性を示した。
比較例の電解銅箔を集電体とした電池は、サイクル試験後、全ての電解銅箔に変形が見られた。また、電池のサイクル数も85以下であり、好ましい特性ではなかった。
上述したように、上記特性のCu−W合金箔により、ケイ素系又は錫合金系活物質の大きな膨張、収縮に対して、集電体(銅箔)と活物質との密着性を保持しながら、集電体(銅箔)が破断しない電解銅箔を提供でき、該電解銅箔を負極集電体とすることで、優れたリチウム二次電池を提供することができる、優れた効果を有するものである。
〈実施例C〉
本実施例では、電解液として、銅濃度50〜150g/l、フリーの硫酸濃度20〜200g/l、塩素イオン濃度1〜100ppmに調製した硫酸銅溶液を基本溶液とした。添加剤としてのチオ尿素系化合物とその添加濃度、タングステン濃度を比較例と対比可能なように表6に纏めて示す。
基本溶液の塩素濃度を100ppm以下としたのは、100ppm以上添加しても箔の機械的特性に差異が見られなかったためである。
本実施例では上記電解液を用いて12μmの銅合金箔を製箔した。製箔条件は、電流密度30〜100A/dm2、温度30〜70℃である。
製箔した銅箔中のタングステン含有量については、一定重量の電解銅合金箔を酸で溶解した後、ICP発光分光分析法により溶液中のタングステン量を求めて算出した。
銅合金箔の引張強度及び伸び率は、IPC−TM−650に基づいて箔の加熱前と加熱後に付き測定した。それぞれの結果を比較例とともに表6に示した。
使用機器 : AG−I (島津製作所)
Figure 0005697051
表6に示す評価結果から、実施例3−1〜3−15の電解銅合金箔は、300℃×1H加熱後の機械的強度が450MPaを上回っており、SiまたはSn合金系活物質の大きな膨張、収縮に対して、集電体と活物質との密着性をポリイミドバインダーにより保持し、集電体が破断しないことを証明している。
実施例3−16は、実施例3−4の電解液にアンモニウムイオンを7g/l含む電解液を用いて製箔している。また、実施例3−17は、実施例3−4の電解液に硝酸イオンを130mg/l含む電解液を用いて製箔している。
実施例3―16、実施例3−17の電解銅合金箔は、300℃×1H加熱後の機械的強度が実施例3−4に比べて増加しており、加熱処理後の機械的強度をさらに向上させる際は、アンモニアイオンまたは硝酸イオンを含む電解液を用いることが好ましい。
比較例
比較例3−1は、基本溶液にタングステンを添加している。常態での機械的強度は大きいが、300℃×1H加熱後では機械的強度が著しく低下している。またこの銅箔中のタングステン量を測定してみると、検出下限、0.0001wt%未満である。
電解液中に塩素イオンを含むとタングステンの析出が抑制され、電解銅箔が形成されるがCu−W合金からなる電解銅合金箔は形成されなかった。
比較例3−2は、特許文献4(特許第3238278号)に基づいて銅箔を作成したものであり、比較例3−1の電解液にさらに膠を添加した組成で製箔したものである。
この銅箔は常態での機械的強度も小さく、300℃×1H加熱後では機械的強度が著しく低下する。この銅箔中のタングステン量を測定してみると、検出下限、0.0001wt%未満であった。
電解液中に膠を添加したが、膠は[=S]を持たないため、膠では、塩素イオンよりも優先的に銅上に吸着して銅上に有機分子の吸着層を形成することができず、タングステン酸化物は銅上に吸着されず、箔中へのタングステンの取り込みが起こらず、電解Cu−W合金箔は形成されなかったものと推考される。
〈実施例D〉
本実施例では、電解銅合金箔を作成した後、ステンレス箔/ポリイミド樹脂層/電解銅合金箔の構成であるHDDサスペンション用基板を作成し、その特性評価を行った。
電解銅合金箔及び電解銅箔の準備
〔実施例4−1〕
硫酸−硫酸銅系の電解液として以下の浴を基本浴組成として用いた。
Cu=50〜150g/l
2SO4=20〜200g/l
チオ尿素=3〜20ppm
タングステン酸ナトリウム(タングステンとして)=10〜1,000ppm
塩素イオン=1〜100ppm
この電解液を用いて以下の条件で電析して未処理銅合金箔を製箔した後、古河電気工業(株)製電解銅箔F2-WSと同じ粗化処理及び表面処理を行って、9μm厚さの電解銅合金箔を製箔した。
電流密度=30〜100A/dm2
温度=30〜70℃
〔実施例4−2〕
実施例1と同条件の電解液組成で以下のチオ尿素系化合物のみを用いた。
エチレンチオ尿素=1〜20ppm
この電解液を用いて実験1と同条件で電析して未処理銅合金箔を製箔した後、古河電気工業(株)製電解銅箔F2-WSと同じ粗化処理及び表面処理を行って、9μm厚さの電解銅合金箔を製箔した。
〔実施例4−3〕
実施例1と同条件の電解液組成で以下のチオ尿素系化合物のみを用いた。
N,N−ジエチルチオ尿素=1〜20ppm
この電解液を用いて実験1と同条件で電析して未処理銅合金箔を製箔した後、古河電気工業(株)製電解銅箔F2-WSと同じ粗化処理及び表面処理を行って、9μm厚さの電解銅合金箔を製箔した。
〔比較例4−1〕
古河電気工業(株)製電解銅箔F2-WS 9μm厚さを準備した。
〔比較例4−2〕
日本電解(株)製電解銅箔HLA 9μm厚さを準備した。
以上の実施例及び比較例で準備した電解銅合金箔及び電解銅箔を用い、ステンレス箔/ポリイミド樹脂層/電解銅合金箔または電解銅箔の構成であるHDDサスペンション用基板を作成した。
ポリイミド樹脂の合成
合成例1
線膨張係数が30ppm/K以下の低熱膨張性のポリイミド系樹脂を合成するため、9.0モルのDADMBを秤量し、40Lのプラネタリーミキサーの中で攪拌しながら溶媒DMAc25.5kgに溶解させた。次いで、8.9モルのBPDAを加え、室温にて3時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド前駆体Aの溶液を得た。本合成例によるポリイミド前駆体Aのイミド化後の線膨張係数は、13ppm/Kであった。
合成例2
ガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂を合成するため、6.3molのDADMBを秤量し、40Lのプラネタリーミキサーの中で攪拌しながら溶媒DMAc25.5kgに溶解させた。次いで、6.4molのBPDAを加え、室温にて3時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド前駆体Bの溶液を得た。本合成例によるポリイミド前駆体Bのイミド化後の動的粘弾性測定装置によるガラス転移温度は、225℃であった。
なお、ここで用いられている略号は以下の通りである。
DADMB:4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物BAPP:2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
HDDサスペンション用基板の作成
(a)合成例2で得られたポリイミド前駆体Bの溶液をステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)上に、硬化後の厚みが1μmになるように塗布して110℃で3分乾燥し、(b)その後、その上に合成例1で得られたポリイミド前駆体Aの溶液を硬化後の厚さが7.5μmになるように塗布し、(c)110℃で10分乾燥し、(d)更にその上に合成例2で得られたポリイミド前駆体Bの溶液をそれぞれ硬化後の厚みが1.5μmになるように塗布し、(e)110℃で3分乾燥し(f)その後、更に130〜360℃の範囲で数段階、各3分間段階的な熱処理によりイミド化を完了させ、(g)ステンレス上にポリイミド樹脂層の厚み10μmの積層体を得た。なお、第1層目のポリイミド樹脂層と第3層目のポリイミド樹脂層は同じとした。
次に、実施例及び比較例に示す電解銅合金銅箔または電解銅箔を重ね合わせ、真空プレス機を用いて、面圧15Mpa、温度320℃、プレス時間20分の条件で加熱圧着して目的の積層体を得た。
剥離強度の測定
金属箔とポリイミド系樹脂との間の接着力は、ステンレス箔上にポリイミド系樹脂層を形成した後、更に電解銅合金箔または電解銅箔を熱圧着して両面金属箔の積層体を作成し、所定の形状に加工することにより1/8インチ配線幅の測定用試験片を作成した。このサンプルを固定板にSUS箔側及び銅合金箔または銅箔側をそれぞれ貼り付け、引張試験機を用いて、各金属箔を90°方向に引き剥がし強さを測定した。
反りの測定
積層体を加工して直径65mmのディスクを作成し、23℃、湿度50%で24時間放置後、机上に置いた際に最も反りが大きくなる部分をノギスにより測定した。
線熱膨張係数の測定
線熱膨張係数の測定は、サーモメカニカルアナライザー(セイコーインスツルメンツ(株)製)を用いて255℃まで20℃/分の速度で昇温し、その温度で10分間保持した後、更に5℃/分の一定速度で冷却した。冷却時の240℃から100℃までの平均熱膨張係数(線熱膨張係数)を算出した。
結果を表7に示した。実施例4−1〜4−3に示した電解銅合金箔を用いたステンレス箔/ポリイミド樹脂層/電解銅合金箔の構成であるHDDサスペンション用基板はサスペンション基板材料としての要求特性を充分満たすものである。
Figure 0005697051
上述したように本発明によれば、常態の機械的強度が大きく、かつ、300℃以上で加熱しても熱劣化し難い電解銅合金箔を提供することができる。
また、本発明によれば、リチウムイオン二次電池用集電体として優れた電解銅合金箔を提供でき、該集電体を用いることで優れた二次電池を提供することができる。
本発明の電解銅合金箔は加熱後でも大きな機械的強度を要求されるプリント配線板材料、例えばHDDサスペンション材料、或いはTAB材料の分野の構成材料として好適である。
また、プリント配線板材料のみならず、高温で加熱した後でも大きな機械的強度と導電性を要求される分野の構成材料としても好適に使用することができる。

Claims (19)

  1. タングステンを含有し、当該タングステンの全てまたは一部が酸化物として取り込まれている、電解銅合金箔。
  2. タングステン酸化物を含有する電解銅合金箔。
  3. タングステンを、0.0001〜0.060質量%含有する、請求項1または2に記載の電解銅合金箔。
  4. タングステンを0.001〜0.055質量%含み、常温での引張強度が650MPa以上で、300℃×1時間後の引張強度が450MPa以上である、請求項1または2に記載の電解銅合金箔。
  5. タングステンを0.001〜0.055質量%含み、常温での引張強度が650MPa以上で、300℃×1時間後の引張強度が450MPa以上で、導電率が80%以上である、請求項1または2に記載の電解銅合金箔。
  6. タングステンを0.001〜0.055質量%含み、常温での引張強度が650MPa以上で、300℃×1時間後の引張強度が450MPa以上で、常温での伸びが2.5%以上、300℃×1時間後の伸びが3.5%以上である、請求項1または2に記載の電解銅合金箔。
  7. タングステン酸化物及び塩素を含有する電解銅合金箔。
  8. タングステンを0.0001〜0.060質量%含有し、塩素を0.005〜0.040質量%含有する、請求項7に記載の電解銅合金箔。
  9. タングステンを0.0001〜0.060質量%含有し、X線回折より得られた結晶方位<220>のピーク強度I<220>と、結晶方位<200>のピーク強度I<200>とのピーク強度比率、I<220>/I<200>が1.2以上である、請求項7に記載の電解銅合金箔。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の電解銅合金箔を用いたリチウムイオン二次電池用負極集電体。
  11. 請求項1〜9のいずれかに記載の電解銅合金箔を負極集電体として用い、その表面にシリコン、ゲルマニウム、錫又はそれらの合金化合物またはそれらを主成分とする活物質が堆積されているリチウムイオン二次電池用電極。
  12. 請求項1〜9のいずれかに記載の電解銅合金箔を集電体として用いたリチウムイオン二次電池。
  13. 硫酸−硫酸銅系電解液に、添加剤としてチオ尿素系化合物、タングステン塩、塩素イオンを添加し、電解析出により請求項1または2に記載の電解銅合金箔を製箔する電解銅合金箔の製造方法。
  14. タングステンを0.001〜0.055質量%含み、常温での引張強度が650MPa以上で、300℃×1時間後の引張強度が450MPa以上で、導電率が80%以上である、電解銅合金箔の製造方法であって、
    該電解銅合金箔は、硫酸銅系電解液に、添加剤としてタングステン10〜1,000ppm、チオ尿素系化合物を1〜20ppm、塩素イオンを1〜100ppm添加した硫酸銅系電解液で製箔する、請求項13に記載の電解銅合金箔の製造方法。
  15. 硫酸銅、硫酸と塩素イオンを含有し、タングステンまたはタングステン化合物と、チオ尿素系有機添加剤を添加してなる、タングステン酸化物を含有する電解銅合金箔製箔用電解液。
  16. 前記電解液は、タングステンまたはタングステン化合物をタングステンとして10〜1,000ppm、チオ尿素系化合物を1〜20ppm添加してなり、塩素イオンを1〜100ppm含有する、請求項15に記載の電解銅合金箔製箔用電解液。
  17. 前記電解液に添加するチオ尿素系化合物は、チオ尿素、N,N−ジエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、エチレンチオ尿素のいずれかである、請求項15または16に記載の電解銅合金箔製箔用電解液。
  18. 請求項15〜17のいずれかに記載の電解液にアンモニアイオン、硝酸イオンのうち少なくとも何れかを添加してなる、電解銅合金箔製箔用電解液。
  19. 請求項15〜18のいずれかに記載の電解銅合金箔製箔用電解液を用いて電解製箔された、電解銅合金箔。
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