JP5696830B2 - Par−2活性化阻害物質 - Google Patents

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本発明は、プロテアーゼ活性化受容体(PAR−2)の活性化を阻害する物質に関する。
血液凝固反応は、活性化された凝固因子が下流の凝固因子を活性化する一連の酵素反応であるが、同時に、血液中の細胞や血管内皮細胞、さらに血管周囲の細胞の活性化をひき起こす。凝固因子によるこれらの細胞の活性化には、プロテアーゼ活性化受容体(Protease activated receptors:PAR)と呼ばれる受容体が重要な役割を演じている。PARは7回膜貫通型のG蛋白共役受容体の1ファミリーである。PARは、細胞外に伸びる受容体のN末端にリガンド部位を有するが、非活性の状態ではリガンド部位のさらにN末端側にあるペプチドにより、リガンド活性が抑制されている。このN末端ペプチドがプロテアーゼで切断されると、リガンドが受容体の第2ループ周辺に結合することで受容体が構造変化し、G蛋白質を活性化すると考えられている(非特許文献1)。
現在までにPAR−1からPAR−4までの4種類が知られている。PAR類のうち、PAR−1、PAR−3およびPAR−4はトロンビンによって活性化されるが、PAR−2はトロンビンによって活性化されず、他のセリンプロテアーゼ(トリプシン、トリプターゼなど)によって活性化される(非特許文献1)。
PAR−2は、血管内皮細胞あるいは血管周囲の細胞に存在するのみならず、神経細胞、消化器系の細胞、気道の上皮細胞と平滑筋細胞などに存在する。PAR−2は、上記のようにトリプシンおよび肥満細胞に存在するトリプターゼで活性化されて、CGRP(calcitonin gene related peptide)を放出させ、神経性の浮腫、炎症に関係する(非特許文献2)。また、気道緊張性の制御および呼吸器炎症の発生・進展に関与する(非特許文献3)。例えば、上皮からのプロスタノイド産生を介した気道弛緩、平滑筋や繊維芽細胞の増殖、炎症細胞の浸潤および炎症誘導物質の産生亢進などに関与する。気管支喘息の病的状態でPAR−2の発現増大が認められていることからも、PAR−2の起炎症作用が臨床的に注目されている(非特許文献3)。このように、PAR−2は、循環器系、呼吸器系、神経系、皮膚・骨系、消化器系、血液、泌尿器系、外分泌腺など、生体現象と深い関わりを有しており(非特許文献4)、各種の炎症に関連している。
そこで、新規抗炎症治療薬を目的としたPAR−2のアンタゴニストあるいはアゴニストの開発が進められており、いくつかの候補物質がスクリーニングされている(特許文献1および2)。例えば、PAR−2に結合する抗体が報告されている(特許文献3)。しかし、より有効なPAR−2活性化阻害物質がさらに求められている。
ところで、一本鎖DNAや一本鎖RNAが種々の立体構造をとり、低分子からタンパク質までの種々の化合物を認識して結合して、抗体のような機能を有し得ることが明らかになっている(非特許文献5)。このような核酸分子をアプタマーと称する。アプタマーは、例えば、ランダム配列の中からSELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)という選別方法によって得られる(非特許文献5)。
アプタマーは、試験管内で大量に合成できること、抗体よりも結合力が強いものが得られる可能性があること、安定化できることなどの利点を有する。そのため、アプタマーは抗体と同様に、医療や医学用途などに応用され得る。医療などへの応用が検討されている例として、HIV−1逆転写酵素に対するRNAアプタマー(非特許文献6)、老人性黄斑変性症の治療薬として開発中の血管内皮細胞増殖因子に対するRNAアプタマー(非特許文献7)などが報告されている。しかし、PAR−2活性化阻害物質としてアプタマーが用いられた例は報告されていない。
特表2003−530875号公報 特表2008−519039号公報 特表2009−525758号公報
内場ら, 血管医学, 2005-2006年, 6巻, pp.39-45 丸山征郎, Surgery Frontier, 2000年, 7巻, pp.69-71 大谷ひとみら, Surgery Frontier, 2005年, 12巻, pp.27-34 小川道雄, Surgery Frontier, 2005年, 12巻, pp.105-107 Tuerk C.およびGold L., Science,1990年, 249巻, pp.505-510 Kensch O.ら, J.Biol.Chem., 2000年, 275巻, pp.18271-18278 Ruckman J.ら, J.Biol.Chem., 1988年, 273巻, pp.20556-20567 Nystedt S.ら, Eur. J. Biochem., 1995年, 232巻, pp.84-89 Hollenberg M.およびCompton S., Pharmacol. Rev., 2002年, 54巻, pp.203-217 Ossovskaya V.およびBunnett N., Physiol. Rev., 2004年, 84巻, pp.579-621
本発明は、PAR−2に特異的に結合し、PAR−2の活性化を阻害し得る物質を提供することを目的とする。
本発明は、配列表の配列番号2の212位から226位までのアミノ酸配列で示されるPAR−2ペプチド領域に結合し、PAR−2の活性化を阻害する、アプタマーを提供する。
1つの実施態様では、上記アプタマーは、一本鎖DNAである。
他の実施態様では、上記アプタマーは、35〜120塩基の塩基配列を有する。
さらに他の実施態様では、上記アプタマーは、配列表の配列番号9の1位から50位までの塩基配列で示されるDNAを含む。
本発明はまた、配列表の配列番号2の212位から226位までのアミノ酸配列で示されるPAR−2ペプチド領域に結合し、PAR−2の活性化を阻害する、モノクローナル抗体を提供する。
本発明はまた、上記アプタマーまたはモノクローナル抗体を含む、抗炎症剤、PAR−2が関与する疾患の診断試薬、診断用キット、予防剤、治療剤を提供する。
本発明はまた、上記アプタマーまたはモノクローナル抗体を含む、PAR−2の検出試薬を提供する。
本発明によれば、PAR−2に特異的に結合し、PAR−2の活性化を阻害し得る、アプタマーおよびモノクローナル抗体が提供される。したがって、PAR−2が関与する種々の炎症、例えば神経性の炎症、呼吸器系の炎症、気管支炎などの抗炎症剤としての効果が期待される。
SELEX法の概要を示す工程図である。 抗ヒトPAR−2ペプチドアプタマーの、トリプシン誘導性のPAR−2活性化の阻害効果を示すグラフである。 抗ヒトPAR−2ペプチドモノクローナル抗体の、トリプシン誘導性のPAR−2活性化の阻害効果を示すグラフである。 抗ヒトPAR−2ペプチドアプタマーの、トリプシン誘導性の細胞内カルシウムイオン流入阻害効果を示すグラフである。 抗ヒトPAR−2ペプチドモノクローナル抗体の、トリプシン誘導性の細胞内カルシウムイオン流入阻害効果を示すグラフである。 蛍光標識された抗ヒトPAR−2ペプチドアプタマーEEL4が、細胞表面に発現しているヒトPAR−2を認識することを示すヒストグラムである。 蛍光標識された抗ヒトPAR−2ペプチドモノクローナル抗体22Cfあるいは27Dが、細胞表面に発現しているヒトPAR−2を認識することを示すヒストグラムである。
本明細書中で「アプタマー」とは、特定の化合物に特異的に結合し得る一本鎖DNAまたは一本鎖RNAをいう。本発明においては、この特定の化合物がPAR−2である。
本発明のアプタマーは、配列表の配列番号2の212位から226位までのアミノ酸配列で示されるPAR−2ペプチド領域に結合し、PAR−2の活性化を阻害し得る(以下、このようなアプタマーを、単に「抗PAR−2ペプチドアプタマー」または「抗ヒトPAR−2ペプチドアプタマー」とも称する)。本発明の抗PAR−2ペプチドアプタマーは、一本鎖DNAまたは一本鎖RNAのいずれであってもよい。本発明の抗PAR−2ペプチドアプタマーは、35塩基以上であることが好ましく、45塩基以上がより好ましい。本発明の抗PAR−2ペプチドアプタマーは、120塩基以下であることが好ましく、100塩基以下がより好ましい。35塩基未満あるいは120塩基を超えると、アプタマーとしての機能が低下する。好ましくは、45塩基から80塩基程度である。
本発明の抗PAR−2ペプチドアプタマーの具体的な例としては、配列表の配列番号9の1位から50位までの塩基配列で示されるDNAからなる一本鎖DNAが挙げられる。配列番号9の一本鎖DNAは、50塩基からなるが、このDNAを含む塩基長のより長い抗PAR−2ペプチドアプタマーも、配列表の配列番号2の212位から226位までのアミノ酸配列で示されるPAR−2ペプチド領域に結合し、PAR−2の活性化を阻害し得る限り、本発明に含まれる。
本発明の抗PAR−2ペプチドアプタマーは、アプタマーを得るための一般的な方法であるSELEX法によって得られ得る。一本鎖DNAをライブラリー源とするSELEX法の概要を図1に基づいて説明する。
まず、任意の2つのプライマー配列で挟まれた適当な長さのランダム配列を含むテンプレートDNAを合成する。本発明においては、ランダム配列の長さは、35塩基〜120塩基が適切である。このテンプレートDNAを上記プライマー配列を用いるPCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)で増幅して、ランダムDNAアプタマープールを得る。次いで、(1)このランダムDNAアプタマープールを標的物質と会合させ、結合しなかったDNAを除去し、そして結合したDNAアプタマーを抽出する。(2)得られたDNAアプタマーを、上記プライマー配列を用いるPCRによって増幅する。このとき、5〜8mMのMg2+存在下でPCRを行うことにより、DNAアプタマーの複製の正確性を低下させてDNAアプタマーに変異を導入しやすくする。この結果、標的物質との会合前のDNAアプタマープールに存在しない新たなDNAアプタマーを含むDNAアプタマープールが得られる。新たなDNAアプタマーは、標的物質との結合力がより強い可能性がある。すなわち、DNAアプタマーが進化する可能性が生じる。この進化したDNAアプタマーを含むDNAアプタマープールについて、上記の(1)、(2)の一連の操作を5〜15ラウンド繰り返すことによって、標的物質に特異的に結合するDNAアプタマーが得られる。最終ラウンドの後、得られたDNAアプタマープールは、当業者が通常行う操作によってクローニングされ、次いで配列決定される。
このSELEX法における、テンプレートDNAの合成、PCRなどの操作、およびクローニングおよび配列決定は、当業者が通常用いる方法によって行われる。
本発明においては、SELEX法における標的物質はPAR−2である。PAR−2の塩基配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)は、非特許文献8に記載されており、この塩基配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)を元に、例えば、遺伝子組換え技術によりPAR−2を生産し、入手できる。必ずしもPAR−2の全長アミノ酸配列を用いる必要はなく、本発明では、ヒトPAR−2のアミノ酸配列(配列番号2)の212位〜226位に相当するアミノ酸配列(配列番号3)を利用できる。この配列番号3のアミノ酸配列は、PAR−2の活性化に重要な役割を担い得る(非特許文献9および10)。この配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドは、例えば、以下のようにして化学合成され得る。ペプチドの合成は、9−fluorenylmethoxycarbonyl(Fmoc)法に従い、自動化シンセサイザを使って行われ得る。tert-butoxycarbonylによって保護されたFmoc-レジンを充填したWang-PHB樹脂が固相化の支持体として用いられ得る。0.1mMアミノ酸をそれぞれの結合に使用し得る。使用されるアミノ酸(側鎖の保護基)は、例えば、アスパラギン(triphenylmethyl)、セリン(tert-butyl)、リジン(tert-butoxy-carbonyl)などが挙げられる。樹脂(レジン)に結合したFmoc-アミノ酸の遊離は、ピペリジンを使用して行われ得る。アミノ酸の結合には2-(1H-benzotriazol-1-yl)-1,1,3,3-tetramethyluronium tetrafluoroborateおよびhydroxybenzotriazole(HOBt)が用いられ得る。5%フェノール含有TFA(トリフルオロ酢酸)、5%thioanisole、5%ethanedithiole、および7%水を用いて、樹脂からのペプチドの切り出しおよびすべての保護基の除去を行い得る。合成の進行は、エレクトロスプレーイオン化質量分析機によってモニターされ得る。
本発明の抗PAR−2ペプチドアプタマーは、SELEX法で決定された配列に基づいて、当業者が通常用いる方法によって化学合成することができる。合成の手順の一例を以下に示す。まず、3’末端のヌクレオチドが3’水酸基を介して結合されたCPG(controlled pore glass)担体をカラムに詰め、次いで、ヌクレオチドのリボースの5’位の保護基であるジメトキシトリチル基をトリクロロ酢酸によって除去して、脱トリチル化を行い得る。リボースの3’位の水酸基がリン酸シアノエチルアミダイト誘導体である2番目のヌクレオチドを、脱トリチル化された1番目のヌクレオチドの5’水酸基に、塩基触媒(テトラゾール)を用いてカップリングさせ、未反応の5’水酸基を無水酢酸によってアセチル化し得る。2つのヌクレオチド間の結合を、ヨードを用いて酸化して、3価のリンから5価のリン酸エステルへ変換し得る。上記の脱トリチル化からリン酸エステルへの変換までの操作を目的のDNA鎖長になるまで繰り返し得る。すべての反応終了後、カラムからアンモニア処理によってオリゴDNAを切り出し、逆相カートリッジカラムによって精製し、凍結乾燥し得る。
なお、本発明の抗PAR−2ペプチドアプタマーをより安定化させるために、抗PAR−2ペプチドアプタマーを、修飾ヌクレオチドを用いて合成してもよい。あるいは、抗PAR−2ペプチドアプタマーに蛍光または発光ドメインが付加されていてもよい。蛍光または発光ドメインが付加された抗PAR−2ペプチドアプタマーは、PAR−2に特異的に結合するので、PAR−2の検出試薬として使用できる。
本発明のモノクローナル抗体は、配列表の配列番号2の212位から226位までのアミノ酸配列で示されるPAR−2ペプチド領域に結合し、PAR−2の活性化を阻害し得る(以下、このようなモノクローナル抗体を、単に「抗PAR−2ペプチドモノクローナル抗体」または「抗ヒトPAR−2ペプチドモノクローナル抗体」とも称する)。
本発明の抗PAR−2ペプチドモノクローナル抗体は、例えば、以下のようにして調製され得る。上述のようにして調製される配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号2の212位から226位までのアミノ酸配列で示されるPAR−2ペプチド領域に相当する)を免疫原(必要に応じて、そのシステイン残基に、ペプチドの免疫活性を高めるために、KLH(Keyhole limpet hemocyanin)を結合させ得る)としてマウスを免疫し、免疫したマウスから脾臓細胞を取り出し、取り出された脾臓細胞をポリエチレングリコールを用いてミエローマ細胞と融合して不死化させ得る。HAT培地(ヒポキサンチン(H)、アミノプテリン(A)およびチミジン(T)を含む培地)での培養で生存する細胞を融合細胞(ハイブリドーマ)として選抜し、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法またはイムノブロット法でスクリーニングし、陽性と判定した細胞株をクローニングして、モノクローナル抗体を取得し得る。
PAR−2の活性化の阻害は、トリプシン刺激によるPAR−2の活性化が、転写因子NF−κBの活性化を誘導することを利用して検出および測定できる。例えば、NF−κB結合DNA断片の下流にルシフェラーゼ遺伝子を結合させたレポーターベクターとヒトPAR−2発現ベクターとを動物細胞(例えば、COS細胞)に導入し、培養後、培地にトリプシンおよびPAR−2活性化阻害候補物質(例えば、アプタマー、モノクローナル抗体など)を添加し、一定時間後にルシフェラーゼ活性を測定することにより、PAR−2の活性化阻害の検出および測定ができる。PAR−2の活性化の阻害はまた、ヒトPAR−2活性化が、細胞内カルシウムイオン濃度上昇を誘導することを利用して検出および測定できる。例えば、ヒトPAR−2発現ベクターを動物細胞(例えば、COS細胞)に導入し、培養後、培地にPAR−2活性化阻害候補物質(例えば、アプタマー、モノクローナル抗体など)を添加した後にトリプシンを添加した直後に生じる細胞内カルシウムイオン濃度を例えば蛍光プレートリーダーを用いて測定することにより、PAR−2の活性化阻害の検出および測定ができる。このようにして、PAR−2との親和性の強いアプタマーまたはモノクローナル抗体を選択することができる。
本発明の抗PAR−2ペプチドアプタマーまたは抗PAR−2ペプチドモノクローナル抗体は、PAR−2の活性化としてヒトPAR−2活性化を介して誘導される転写因子NF−κBの活性化について、約20%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約40%以上、さらに好ましくは約50%以上、抑制し得る。本発明の抗PAR−2ペプチドアプタマーまたは抗PAR−2ペプチドモノクローナル抗体は、PAR−2の活性化として、ヒトPAR−2活性化を介して誘導される細胞内カルシウムイオン濃度上昇について、約20%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約40%以上、さらに好ましくは約50%以上、抑制し得る。
本発明の抗PAR−2ペプチドアプタマーまたは抗PAR−2ペプチドモノクローナル抗体は、PAR−2の活性化としてヒトPAR−2活性化を介して誘導される細胞内カルシウムイオン濃度上昇について、50%阻害する濃度(IC50)が、好ましくは1μM以下であり、より好ましくは100nM以下であり、さらに好ましくは70nM以下である。
本発明の抗PAR−2ペプチドアプタマーおよび抗PAR−2ペプチドモノクローナル抗体はともに、PAR−2と特異的に結合し、PAR−2の活性化を阻害し得るため、循環器系、呼吸器系、神経系、皮膚・骨系、消化器系、血液、泌尿器系、外分泌腺などの各種の炎症に対する抗炎症剤として使用される。したがって、PAR−2が関与する疾患の治療剤あるいは予防剤として用いることができる。
さらに、本発明の抗PAR−2ペプチドアプタマーおよび抗PAR−2ペプチドモノクローナル抗体はともに、例えば、ELISA、組織染色などのような、通常抗体が用いられ得る種々の分析において、PAR−2が関与する疾患の診断試薬あるいは診断用キットとして用いることができる。
このようなPAR−2の検出に供する試料としては、種々の生体試料(血液、細胞、組織など)およびその処理物が挙げられる。このような試料について、PAR−2を検出することにより、PAR−2が関与する疾患、例えば、循環器系、呼吸器系、神経系、皮膚・骨系、消化器系、血液、泌尿器系、外分泌腺などの各種の炎症を検出/診断することができる。
さらに、本発明の抗PAR−2ペプチドアプタマーおよび抗PAR−2ペプチドモノクローナル抗体はともに、PAR−2が関与する疾患の発症機構の解明などの基礎研究にも用いられ得る。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1:抗PAR−2ペプチドアプタマーの取得)
(1−1:一本鎖ランダムオリゴDNAの作製)
50塩基のランダム領域およびその両側にプライマー部位(配列番号4および5)を含む種々の一本鎖ランダムオリゴDNAを調製した。これらの一本鎖ランダムオリゴDNAの合成は、オペロンバイオテクノロジー株式会社に委託し、精製標品を得た。精製標品をSELEXライブラリーのテンプレートDNAとした。
(1−2:ヒトPAR−2ペプチドの合成)
ヒトPAR−2のアミノ酸配列(配列番号2)の212位〜226位に相当するアミノ酸配列(配列番号3:VKQTIFIPALNITTC)のペプチドを調製した。このペプチドの合成は、オペロンバイオテクノロジー株式会社に委託し、精製標品を得た。
(1−3:ヒトPAR−2ペプチドのビーズへの結合)
上記1−2で得たヒトPAR−2ペプチドを、PIERCE社製のSulfoLink(登録商標)カップリングゲル(カタログ番号20401)を用いて製品の指示書に従って、次のようにビーズに固定化した。
まず、カップリングゲルをカラムに詰め、カップリング緩衝液(50mM Tris-HCl,5mM EDTA,pH8.5)で平衡化した。ヒトPAR−2ペプチドをカップリング緩衝液に溶解し、カップリングゲルと混合して、室温で1時間インキュベートした。反応終了後、カップリング緩衝液でカラムを数回洗浄した。L−システインをカップリング緩衝液に溶解し、カップリングゲルと混合して、室温で30分間インキュベートした。反応終了後、カップリング緩衝液およびリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate-buffered saline;PBS)(8.1mM NaHPO,1.5mM KHPO,137mM NaCl,2.7mM KCl,pH7.2)でカラムを数回洗浄した。なお、反応前および反応後の吸光度を測定することによって、ヒトPAR−2ペプチドの固定化量を算出した。固定化後のゲル(ビーズ)を小分けし、使用するまで冷暗所に保存した。また、ヒトPAR−2ペプチドを固定化していないビーズは、ヒトPAR−2ペプチドをカップリング緩衝液に溶解しないこと以外は同様の操作で調製した(SulfoLinkビーズの活性部位をシステインでブロックしたもの)。
(1−4:SELEX法)
上記1−1で合成したランダムオリゴDNAを鋳型にして、forwardプライマー(配列番号4)とreverseプライマー(配列番号5)とによるPCR(1サイクル:94℃,15秒;55℃,15秒;72℃,15秒×12サイクル)を行った。増幅後、forwardプライマーのみを用いた非対称PCRによりプラス鎖を増幅した(1サイクル:94℃,15秒;55℃,15秒;72℃,15秒×45サイクル)。増幅したプラス鎖をアガロースゲル電気泳動によって精製し、SELEX用DNAライブラリーとした。このSELEX用DNAライブラリーをPBSに溶解し、95℃で5分間加熱し、室温に戻した。次いで、SELEX用DNAライブラリーと上記1−3で調製したヒトPAR−2ペプチドを固定化させたビーズとを混合し、室温で30分間インキュベートした。インキュベーション後、PBSでビーズを数回洗浄した。適量の水をビーズに加えて混合し、100℃で5分間加熱し、PAR−2ペプチドビーズに結合したDNAを解離させて回収した。回収したDNAと上記1−3で調製したヒトPAR−2ペプチドを固定化していないビーズとを混合し、室温で10分間インキュベートした。素通りしたDNA(ヒトPAR−2ペプチドに結合するDNA)を回収して、エタノール沈殿法によって濃縮した。濃縮したDNAを鋳型にして、上記の操作を5〜15ラウンド繰り返した。この時、5〜8mMのMg2+存在下でPCRを行って、変異を導入した。
(1−5:クローニング)
第15ラウンドで得られたDNAを、forwardプライマー(配列番号4)およびreverseプライマー(配列番号5)を用いるPCRによって増幅し、アガロースゲル電気泳動によって精製し、ヒトPAR−2ペプチド特異的DNAを得た。このDNAを平滑末端クローニングベクター(Invitrogen社製Zero Blunt(登録商標)TOPO(登録商標)PCR Cloning Kit for Sequencing(カタログ番号K2875J10))に導入し、次のようにして配列を決定した。
まず、ヒトPAR−2ペプチド特異的DNA(PCR産物)と平滑末端クローニングベクターとを混合し、室温で5分間インキュベーションした。反応終了後、反応液の一部をコンピテントセルに加え、氷冷下で30分間インキュベーションした。42℃にて30秒間ヒートショックした後、氷上で2分間冷却した。冷却した反応液に、キット中に含まれているSOC培地を加えて37℃にて1時間のインキュベーションを行った。適量を寒天プレート(50μg/mLアンピシリンを含むLB培地)に播種し、37℃にて一晩培養した。無作為に数十個のクローンを選び、これらのクローンからアルカリ法によってプラスミドDNAを抽出・調製した。
(1−6:配列決定)
上記1−5で得られたプラスミドDNA中のヒトPAR−2ペプチド特異的DNAの配列を、Applied Biosystem社製のABI377を用いてBigDye Terminator Cycle sequence法によって決定した。
その結果、配列番号6〜9(それぞれEEL1〜4と呼ぶ)に示す50塩基の一本鎖DNAが得られた。
配列番号6:5’−GACTCGCGACGGTGAGTCTGAGCGTCGTTATTGGCGTGAGTTACACTTGC−3’(EEL1)
配列番号7:5’−GCCACGCTTTGGCATGTGCGGGGCTGAGCGGTGGGCCAATGTGGGGTGTA−3’(EEL2)
配列番号8:5’−CCCGCAAGGCGAGGTGAGCGCATGGGCACACAAAAGGCACAGAACGGGCT−3’(EEL3)
配列番号9:5’−CCGGCGATACGCGCCGGGGAGCGGGAGGATTAAAGTAACTTTTAGCAAGC−3’(EEL4)
(実施例2:抗ヒトPAR−2ペプチドモノクローナル抗体の取得)
(2−1:免疫原の調製)
上記1−2で合成したペプチド(配列番号3:配列番号2のヒトPAR−2のアミノ酸配列の212位〜226位に相当するペプチド)のシステイン残基に、ペプチドの免疫活性を高めるために、KLH(Keyhole limpet hemocyanin)を結合させて免疫原とした(これをKLH−ペプチドと呼ぶ)。
(2−2:マウスへの免疫)
PBSに溶解した25μgのKLH−ペプチドを、フロイント完全アジュバントと共に懸濁して、Balb/cマウスの腹腔に注射した。その2週間後に、同量の抗原をフロイント不完全アジュバントに懸濁して、同じマウスの腹腔に注射した。これをさらに2〜4回繰り返した。
(2−3:ハイブリドーマの作成)
最終免疫から3日後に脾臓を摘出し、脾臓細胞を分散させた。ポリエチレングリコールを用いて、脾臓細胞をミエローマSP2/0−Ag14細胞と融合させた(融合により脾臓細胞の増殖が半永久化される)。融合した細胞(ハイブリドーマ)のみが生育するHAT培地(ヒポキサンチン(H)、アミノプテリン(A)およびチミジン(T)を含む培地)(Sigma社製)で培養し、増殖したハイブリドーマをクローン化した。
(2−4:抗ヒトPAR−2ペプチド抗体を生産するハイブリドーマの選択)
クローン化したハイブリドーマの培養上清について、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法を利用してヒトPAR−2ペプチドに結合する抗体の有無を検定した。その結果、16A、16B、22A、22Cf、27A、27Dの6クローンが抗ヒトPAR−2ペプチド抗体を生産するハイブリドーマとして得られた。
(2−5:各モノクローナル抗体の性質の検定)
単一クローン化されたハイブリドーマを拡大培養した後、培養上清からプロテインGカラム(ファルマシア社製MAbTrap GII)を用いてマニュアルに従って抗体を精製した。それぞれの抗体はIsoStrip(登録商標)mouse monoclonal antibody isotyping kit(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を用いてアイソタイプを解析した。その結果、22CfはIgG2a/κで、それ以外はIgG1/κであった。
(実施例3:ヒトPAR−2活性化を介して誘導されるNF−κB活性化の抗ヒトPAR−2ペプチドアプタマーまたは抗ヒトPAR−2ペプチドモノクローナル抗体による阻害)
トリプシン刺激によるPAR−2活性化は、転写因子NF−κBの活性化を誘導する。実施例1で得られたアプタマーあるいは実施例2で得られたモノクローナル抗体がPAR−2活性化の阻害能を示すかをNF−κBルシフェラーゼレポーターアッセイにより評価した。以下にその手順を示す。
NF−κB結合DNA断片の下流にルシフェラーゼ遺伝子を結合させたレポーターベクターpNF−κB−lucを、Stratagene社から購入した。4mM L-glutamine、100U/mlのpenicillin G、および100μg/mlのstreptomycinを含有するD−MEM(ニッスイ社製)で培養した1×10個のCOS−7細胞(ATCC(アメリカンタイプカルチャーコレクション)から購入、ATCC Number:CRL-1651)に0.01μgのレポーターベクターpNF−κB−lucおよび0.1μgのヒトPAR−2発現ベクター(Sigma社製pFLAG-CMV1ベクターに、ヒトPAR−2のシグナルペプチドを除去したアミノ酸配列をコードするcDNAを挿入したもの)をFuGENE6(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を用いて導入した。48時間培養後、培地にトリプシン(最終濃度25nM、カルビオケム社製)とアプタマー(最終濃度1μM)あるいはモノクローナル抗体(最終濃度68nM(10μg/mL))を添加し、さらに6時間培養後、ルシフェラーゼ活性をDual-Luciferase Reporter Assay System(プロメガ社製)により測定した。対照として、アプタマーまたは抗体無添加、およびマウスIgG(Invitrogen社より入手)添加を用いた。
図2は、種々のアプタマーのトリプシン誘導性のPAR−2活性化の阻害の結果を示す。縦軸はルシフェラーゼ活性を相対光単位(Relative light units)で表し、横軸は試験物質の結果を表す。横軸は、左から順に、トリプシンおよびアプタマー無添加、トリプシン添加+アプタマー無添加、トリプシン添加+EEL1添加、トリプシン添加+EEL2添加、トリプシン添加+EEL3添加、トリプシン添加+EEL4添加を表す。図2に示されるように、トリプシン誘導性のPAR−2活性化は、対照のアプタマー非存在下と比較してEEL4の存在下では、約50%抑制された。
図3は、種々のモノクローナル抗体のトリプシン誘導性のPAR−2活性化の阻害の結果を示す。縦軸はルシフェラーゼ活性を相対光単位(Relative light units)で表し、横軸は試験物質の結果を表す。横軸は、左から順に、マウスIgG、抗体16A、抗体16B、抗体22A、抗体22Cf、抗体27A、および抗体27Dを表す。各試験物質において、白の棒グラフはトリプシン無添加を表し、黒の棒グラフはトリプシン添加を表す。図3に示されるように、トリプシン誘導性のPAR−2活性化は、対照のマウスIgG存在下と比較して、モノクローナル抗体22Cfあるいはモノクローナル抗体27D存在下では約50%抑制された。また、それら以外のモノクローナル抗体の存在下では約20〜30%の抑制が認められた。
これらの結果は、EEL4(アプタマー);ならびに16A、16B、22A、22Cf、27A、および27D(モノクローナル抗体)が、ヒトPAR−2活性化の阻害能を発揮することを示している。
(実施例4:ヒトPAR−2活性化を介して誘導される細胞内カルシウムイオン濃度上昇の抗ヒトPAR−2ペプチドアプタマーまたは抗ヒトPAR−2モノクローナル抗体による阻害)
PAR−2の活性化により誘導される細胞内カルシウムイオン濃度の上昇が、抗ヒトPAR−2ペプチドアプタマーあるいは抗ヒトPAR−2ペプチドモノクローナル抗体によって阻害されるかどうかをカルシウム蛍光指示薬(Dojindo社製Fluo 4−AM)により評価した。以下にその手順を示した。使用した試薬は特に記載がある場合を除いてナカライテスク社製である。
2×10個のCOS−7細胞に2μgのヒトPAR−2発現ベクターを、FuGENE6を用いて導入した。48時間培養後、細胞をPBS-based enzyme free cell dissociation buffer(Invitrogen社製)で分散させた。PBSで1回洗浄した後、細胞を2×10個/mLとなるようにLoading緩衝液(2mM Fluo 4−AM、0.04% pluronic(登録商標) F-127、1.25mM probenecidを含むhank's balanced salt solution、pH7.4)に懸濁した。細胞懸濁液を37℃で1時間保温した後、細胞をあらかじめ37℃で保温したPBSを用いて1回洗浄した。洗浄後、細胞を2×10個/mLとなるようにHEPES緩衝化生理食塩水(137mM NaCl、5mM KCl、1mM NaHPO、5mM glucose、1mM CaCl、0.5mM MgCl、0.1% bovine serum albumin、10mM HEPES、pH7.4)に懸濁し、0.1mLずつ96ウェル黒色プレート(Berthold社製)に分注した。細胞懸濁液を分注したウェルへトリプシン(最終濃度25nM、カルビオケム社製)を添加し、直ちにTwinkle LB970蛍光プレートリーダー(Berthold社製)を用いて、蛍光変化を励起485nm、発光535nmで測定した。トリプシン添加の10分前にアプタマー(最終濃度1μM)あるいはモノクローナル抗体(最終濃度68nM(10μg/mL))を添加することで、アプタマーあるいはモノクローナル抗体による細胞内カルシウムイオン濃度上昇の阻害効果を評価した。対照として、アプタマーまたは抗体無添加(すなわち、トリプシンのみ添加)、およびマウスIgG添加を用いた。それぞれの測定値はトリプシンのみで刺激したときに得られた測定値を100%とした時の相対値として表した。
図4は、種々のアプタマーのトリプシン誘導性の細胞内カルシウムイオン流入阻害の結果を示す。縦軸はカルシウム流入量をトリプシンのみ添加に対する割合(% control)で表し、横軸は試験物質の結果を表す。横軸は、左から順に、トリプシンのみ添加、トリプシン+EEL1添加、トリプシン+EEL2添加、トリプシン+EEL3添加、トリプシン+EEL4添加を表す。図4に示されるように、トリプシン誘導性の細胞内カルシウムイオン流入(細胞内カルシウムイオン濃度の上昇)は、対照のアプタマー非存在下と比較してEEL4の存在下では約50%抑制された。
図5は、種々のモノクローナル抗体のトリプシン誘導性の細胞内カルシウムイオン流入阻害の結果を示す。縦軸はカルシウム流入量をトリプシンのみ添加に対する割合(% control)で表し、横軸は試験物質の結果を表す。横軸は、左から順に、トリプシンのみ添加、トリプシン+マウスIgG添加、トリプシン+抗体16A添加、トリプシン+抗体16B添加、トリプシン+抗体22A添加、トリプシン+抗体22Cf添加、トリプシン+抗体27A添加、およびトリプシン+抗体27D添加を表す。図5に示されるように、トリプシン誘導性の細胞内カルシウムイオン流入は、対照のマウスIgG存在下と比較して、22Cfあるいは27D存在下では約50%抑制された。また、それら以外のモノクローナル抗体の存在下では約20〜30%の抑制が認められた。
これらの結果は、EEL4(アプタマー);ならびに16A、16B、22A、22Cf、27A、および27D(モノクローナル抗体)が、ヒトPAR−2活性化の阻害能を発揮することを示している。
アプタマーEEL4ならびにモノクローナル抗体22Cfおよび27Dについて、トリプシン誘導性の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を50%阻害する濃度(IC50)を決定した。IC50は、アプタマーEEL4では44nMであり、抗体22Cfでは70nMであり、抗体27Dでは63nMであった。
(実施例5:抗ヒトPAR−2アプタマーまたは抗ヒトPAR−2ペプチドモノクローナル抗体によるヒトPAR−2の認識能)
実施例3および4においてトリプシン誘導性のPAR−2活性化のより高い抑制能を示したアプタマーEEL4ならびにモノクローナル抗体22Cfおよび27Dについて、ヒトPAR−2の認識能を調べた。
なお、本実施例で使用した6−FAM標識EEL4は5’末端の合成をフルオレセイン標識ヌクレオチドアミダイト(6-FAMdCTP)で行う以外は上記1−1のようにして合成した。
2×10個のCOS−7細胞に2μgのヒトPAR−2発現ベクターあるいは対照としてpFLAG−CMV1ベクター(Sigma社製)を、FuGENE6を用いて導入した。48時間培養後、細胞をPBS-based enzyme free cell dissociation buffer(Invitrogen社製)で分散させた。PBSで1回洗浄した後、細胞を2×10個/mLとなるようにFACS緩衝液(2%FBS(牛胎児血清)/PBS)に懸濁した。1.5mLチューブ(グライナー社製)に細胞懸濁液を50μLずつ分注した後、3.1pmol(50ng)の6−FAM標識EEL4または6.8pmol(1μg)の22Cf、27Dもしくは対照のマウスIgGを添加し氷上にて60分間のインキュベーションを行った。次に、細胞をFACS緩衝液にて2回洗浄し、FACS緩衝液50μLに懸濁した。細胞の入ったチューブに2次抗体として50ngのロバF(ab’)2フラグメント抗マウスIgG(H+L)ポリクローナル抗体−PE(Abcam社製)を添加した後、氷上にて30分間反応させた。なお、6−FAM標識EEL4による染色の場合は2次抗体の代わりにPBSを添加した。反応後、細胞をFACS緩衝液にて2回洗浄し、FACS緩衝液100μLに懸濁してフローサイトメトリーに供した。フローサイトメトリーには日本分光社製のCytoACE−300を用いた。前方散乱光(forward scatter)および側方散乱光(side scatter)のドットプロットにて生細胞集団にゲートを設定し、当該集団に含まれる細胞についてFL1(6−FAM標識EEL4による染色の場合)あるいはFL2(22Cfもしくは27Dもしくは対照のマウスIgGによる染色の場合)のヒストグラムを取得して認識能を評価した。
図6は、蛍光標識されたアプタマーEEL4の結果を示す。縦軸は細胞数を表し、横軸は蛍光強度を表す。図中、「hPAR-2」はヒトPAR−2発現ベクター導入細胞、「mock」は対照pFLAG−CMV1ベクター導入細胞の結果を表す。図6に示されるように、アプタマーである6−FAM標識EEL4を用いた場合、ヒトPAR−2発現ベクターを導入した細胞では、対照としてpFLAG−CMV1ベクターを導入した細胞と比較して蛍光強度の増強が認められた。この結果は、抗ヒトPAR−2ペプチドアプタマーEEL4が、細胞表面に発現しているヒトPAR−2を認識することを示している。
図7は、蛍光標識されたモノクローナル抗体22Cfおよび27Dならびに対照のマウスIgGの結果を示す。各結果を表すヒストグラムの縦軸は細胞数を表し、横軸は蛍光強度を表す。図中、「hPAR-2」はヒトPAR−2発現ベクター導入細胞、「mock」は対照pFLAG−CMV1ベクター導入細胞の結果を表す。図7に示されるように、モノクローナル抗体22Cfあるいは27Dを用いた場合、ヒトPAR−2発現ベクターを導入した細胞では、対照としてpFLAG−CMV1ベクターを導入した細胞と比較して蛍光強度の増強が認められた。一方、対照のマウスIgGで染色した場合は、ヒトPAR−2発現ベクターあるいは対照としてpFLAG−CMV1ベクターを導入した細胞における蛍光強度の増強は認められなかった。これらの結果は、モノクローナル抗体22Cfおよび27Dが、細胞表面に発現しているヒトPAR−2を認識することを示している。
本発明によれば、PAR−2に特異的に結合し、PAR−2の活性化を阻害し得る、アプタマーおよびモノクローナル抗体が提供される。これらは、PAR−2が関与する疾患、例えば、循環器系、呼吸器系、神経系、皮膚・骨系、消化器系、血液、泌尿器系、外分泌腺などの各種の炎症の予防・治療剤として使用され得る。また、これらは、PAR−2が関与する疾患の検出試薬あるいは診断薬として利用され得る。また、これらは、PAR−2が関与する疾患の発症機構の解明などの基礎研究にも用いられ得る。

Claims (7)

  1. 配列表の配列番号2の212位から226位までのアミノ酸配列で示されるPAR−2ペプチド領域に結合し、PAR−2の活性化を阻害し、配列表の配列番号9の1位から50位までの塩基配列で示されるDNAを含む、アプタマー。
  2. 請求項1に記載のアプタマーを含む、抗炎症剤。
  3. 請求項1に記載のアプタマーを含む、PAR−2が関与する疾患の診断試薬。
  4. 請求項1に記載のアプタマーを含む、PAR−2が関与する疾患の診断用キット。
  5. 請求項1に記載のアプタマーを含む、PAR−2が関与する疾患の予防剤。
  6. 請求項1に記載のアプタマーを含む、PAR−2が関与する疾患の治療剤。
  7. 請求項1に記載のアプタマーを含む、PAR−2の検出試薬。
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