JP5692674B1 - カルシウム低吸収型経口リン吸着剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムによって体内でリンを吸着でき、しかも炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムに由来するカルシウムの吸収を効果的に抑制できる経口リン吸着剤を提供することである。【解決手段】経口リン吸着剤として炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムを投与する際に、平均分子量10万以下のアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を併用することによって、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムのリン吸着能力を有効に発揮させつつ、生体へのカルシウム吸収をより一層効果的に抑制できる。【選択図】なし

Description

本発明は、カルシウム低吸収型の経口リン吸着剤に関する。より具体的には、本発明は、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムによって体内でリンを吸着でき、しかも炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムに由来するカルシウムの吸収を効果的に抑制できる経口リン吸着剤に関する。
慢性腎臓病はリン排泄が不十分であることから、体内にリンが蓄積し、しばしば高リン血症に陥る。高リン血症は、二次性副甲状腺機能亢進症及びそれに伴う腎性骨異栄養症の発症原因となり、患者の生命予後やQOL(クオリティオブライフ)に著しい影響を及ぼす。
従来、高リン血症等の治療には、国内外問わず経口リン吸着剤が一般的に使用されている。経口リン吸着剤には、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸ランタン等の無機化合物を有効成分とする無機製剤や、塩酸セベラマー等の有機化合物を有効成分とするポリマー樹脂製剤がある。
従来の経口リン吸着剤の有効成分の中でも、炭酸カルシウムは、リン吸着力が強いことや、安価であること、体内に多く存在するイオンで構成されており安全性が高いこと等から、現在最も使用されている。また、酢酸カルシウムも、リン吸着力が強く、経口リン吸着剤として実用化されている。炭酸カルシウム及び酢酸カルシウムの体内動態については、経口投与された炭酸カルシウム及び酢酸カルシウムからカルシウムイオンが遊離し、これが主に食物由来のリン酸イオンと結合して、腸管で不溶性のリン酸カルシウム又はリン酸カルシウム様の物質となることにより、糞便中へのリン排出を促して体内へのリン吸収阻害作用を発揮することが分かっている。
一方、服薬コンプライアンスが低い患者の場合や、リン吸収阻害作用をより高めたい場合では、炭酸カルシウムや酢酸カルシウムの過剰量の服用や、二次性副甲状腺機能亢進症の治療薬であるビタミンD製剤の併用等が行われることがあり、これによってカルシウムの吸収量が増大して高カルシウム血症に陥ることが多々ある。とりわけ、透析患者等の長期間継続的にリン吸着剤の服用が必要とされる慢性腎臓病患者においては、カルシウムの吸収量の増大は、血管石灰化を引き起こし、動脈硬化等の心血管疾患のリスクを上昇させるという問題点がある。
これらの問題点を解決するため、リン吸着剤として、非カルシウム製剤である炭酸ランタンや塩酸セベラマーの使用が有効であると考えられている。しかしながら、炭酸ランタンは、ランタンの体内蓄積による安全性への懸念とコストが高いという問題がある。また、塩酸セベラマーは炭酸カルシウムや酢酸カルシウムと比較してリン吸着力が弱く、副作用として便秘や腹痛、腹部膨満感などの消化器症状が現れるという問題がある。このように従来技術では、十分なリン吸着効果を持ち、かつ安全に長期使用できる経口リン吸着剤は見出されていないというのが現状である。
一方、アルギン酸は、渇藻類に含まれる多糖類で、食物繊維の一種である。アルギン酸は、D−マンヌロン酸とL−グルロン酸からなり、D−マンヌロン酸だけのブロック(MMブロック)、L−グルロン酸だけのブロック(GGブロック)、さらにD−マンヌロン酸とL−グルロン酸がランダムにつながったブロック(MGブロック)が任意に結合したブロック共重合体である。GGブロックのL−グルロン酸は、2価の金属イオンが配位結合しやすく、Egg Box Junctionと呼ばれる架橋領域を形成し、分子としての運動が抑制される。このため、GGブロックの割合が多いほど、より硬いゲルを形成するという性質がある。
アルギン酸ナトリウムやアルギン酸カリウム等のアルギン酸の塩は、水に容易に溶けて増粘作用を示すことや、カルシウムイオンとの共存により容易にゲル化することから、増粘剤やゲル化剤、安定剤などとして、食品分野で古くから利用されている。これらはカルシウムと反応してゲル化するという性質から、カルシウム吸収への阻害作用が懸念されたが、ヒト及びラットによる投与試験において、アルギン酸およびアルギン酸塩によるカルシウム吸収阻害作用は認められておらず、食品添加物としても指定されている(非特許文献1及び2参照)。
また、アルギン酸及びその塩は、歯科印象剤、創傷被覆材、胃粘膜保護用剤、コーティング剤、カプセル剤等として、医療器具や医薬品分野においても使用されている。
例えば、特許文献1には、(1)ゼラチン、(2)水溶性多価アルコール又はその水溶性誘導体、及び(3)低メトキシルペクチン又はアルギン酸ナトリウムを含有する被覆層を有する軟カプセルを、カルシウム塩等で処理することにより、軟カプセル被覆層中の低メトキシルペクチン又はアルギン酸ナトリウムがゲル化して、水、熱湯、胃液と接触しても溶解しないが、腸液と接触すると容易に溶解できる腸溶性軟カプセルを提供できることが開示されている。しかしながら、特許文献1は、軟カプセルに腸溶性を備えさせるために、軟カプセル被覆層中のアルギン酸ナトリウムをカルシウム塩でゲル化させる技術を開示しているに止まっている。
また、特許文献2には、カルシウム塩を含有する、腸管におけるリン酸塩結合のための組成物であって、カルシウム塩がアルギン酸カルシウムからなるコーティングで被覆されている組成物が開示されている。しかしながら、特許文献2も、前記特許文献1と同様、アルギン酸カルシウムのコーティング層によって腸溶性を備えさせる製剤技術である。即ち、特許文献2は、pHが2前後である胃を通過するまではアルギン酸カルシウムのコーティング層が維持され、pHが約7〜8に上昇した腸管に到達した際にコーティング層が溶解して、主剤であるカルシウム塩が放出、溶解されることによって薬効を示すという製剤技術を開示している。
このように、従来、アルギン酸塩のゲル化特性を利用して腸溶性コーティングを形成する製剤技術は知られているが、経口投与された炭酸カルシウム若しくは酢酸カルシウムに対して、アルギン酸を使用してカルシウムの吸収を抑制する製剤技術は一切知られていない。
J Millis,Fay B Reed Biochem J.1947;41(2):273−275 Y Nakamura,Y Tonogai et al. J.Food Hyg.Soc.Japan Vol.29,No.4 240−248
特開昭58−172313号公報 特表平11−510499号公報
前述するように、炭酸カルシウム及び酢酸カルシウムは、経口リン吸着剤として非常に有用であるが、高カルシウム血症や血管石灰化を引き起こす等のカルシウム吸収による問題点を抱えている。このような背景の下、本願の出願人は、経口リン吸着剤として炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムを投与する際に、アルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を併用することによって、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムのリン吸着能力を有効に発揮させつつ、生体へのカルシウム吸収を抑制できることを見出し、前記問題点を解決できる経口リン吸着剤について特許出願(PCT/JP2014/55433)を行っている。但し、どのような構造を備えるアルギン酸及び/又はその塩が、生体へのカルシウム吸収をより一層効果的に抑制できるかについては、更なる検討の余地が残っている。
そこで、本発明は、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムによって体内でリンを吸着でき、しかも炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムに由来するカルシウムの吸収を効果的に抑制できる経口リン吸着剤を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、経口リン吸着剤として炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムを投与する際に、平均分子量が10万以下のアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を併用することによって、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムのリン吸着能力を有効に発揮させつつ、生体へのカルシウム吸収をより一層効果的に抑制できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、以下に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (i)炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウム、並びに(ii)平均分子量が10万以下のアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含有することを特徴とする、経口リン吸着剤。
項2. 前記アルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の平均分子量が5万以下である、項1に記載の経口リン吸着剤。
項3. 前記アルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩において、全グリコシド結合に対するマンヌロン酸−グルロン酸の結合の比率が40%以下である、項1又は2に記載の経口リン吸着剤。
項4. 前記アルギン酸が非膨潤性である、項1〜3のいずれかに記載の経口リン吸着剤。
項5. 前記アルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩のマンヌロン酸/グルロン酸のモル比が0.8以上である、項1〜4のいずれかに記載の経口リン吸着剤。
項6. 錠剤、顆粒剤、散剤、又はカプセル剤である、項1〜5のいずれかに記載の経口リン吸着剤。
項7. (i)炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウム、並びに(ii)平均分子量が10万以下のアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含有する組成物からなる1剤タイプの製剤である、項1〜6のいずれかに記載の経口リン吸着剤。
項8. (i)炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムを含む第1剤と、(ii)平均分子量が10万以下のアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含む第2剤を含む、2剤タイプの組み合わせ製剤である、項1〜6のいずれかに記載の経口リン吸着剤。
項9. 平均分子量が10万以下のアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含有することを特徴とする、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムを含む経口リン吸着剤によるカルシウム吸収を抑制するためのアルギン酸製剤。
本発明によれば、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムのリン吸着能力を有効に発揮させつつ、生体へのカルシウム吸収を効果的に抑制できるので、カルシウム低吸収型の経口リン吸着剤を提供することができる。従って、本発明によれば、カルシウム製剤の長期服用、過剰服用等による高カルシウム血症や血管石灰化、心血管疾患等のリスクを低減しつつ、高リン血症等を効果的に予防又は治療することが可能になる。また、本発明で使用するアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩は、保存安定性も向上しているので、本発明の経口リン吸着剤は、優れた製剤安定性を備えることもできると推察される。
試験例1において、各種分子量のアルギン酸のカルシウム吸着作用を評価した結果を示す図である。 試験例1で得られた結果から、アルギン酸のM-G結合率とカルシウム吸着作用の相関性を分析した結果を示す図である。 試験例2において、尿中のカルシウム排泄量を測定した結果を示す図である。 試験例2において、尿中のリン排泄量を測定した結果を示す図である。 試験例3において、尿中のカルシウム排泄量を測定した結果を示す図である。 試験例3において、尿中のリン排泄量を測定した結果を示す図である。
1.経口リン吸着剤
本発明の経口リン吸着剤は、(i)炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウム、並びに(ii)平均分子量が10万以下のアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含有することを特徴とする。以下、本発明の経口リン吸着剤について詳述する。
含有成分
本発明の経口リン吸着剤は、生体内でリンを吸着する成分として、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウム(以下、「(i)成分」と表記することもある)を使用する。
本発明で使用される炭酸カルシウムとしては、沈降炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム)及び軽質炭酸カルシウムのいずれであってもよく、またこれらの混合物であってもよいが、優れたリン吸着作用を発揮させるという観点から、好ましくは沈降炭酸カルシウムが挙げられる。また、炭酸カルシウムは、無水物であってもよく、また水和物であってもよい。
また、本発明で使用される酢酸カルシウムについても、無水物、1水和物等の水和物のいずれを使用してもよい。
本発明の経口リン吸着剤において、(i)成分として、炭酸カルシウム及び酢酸カルシウムのいずれか一方を単独で使用してもよく、またこれらの双方を組み合わせて使用してもよい。
また、本発明の経口リン吸着剤は、平均分子量が10万以下のアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩(以下、「(ii)成分」と表記することもある)を含有する。このように、特定の平均分子量のアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を使用することによって、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムによるリン吸着作用を有効に発揮させつつ、生体内で炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウム由来のカルシウム吸収を効果的に抑制することが可能になる。
本発明において、アルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の平均分子量については、10万以下であることを限度として特に制限されないが、カルシウム吸収抑制作用をより一層効果的に向上させるという観点から、好ましくは5万以下、更に好ましくは3万以下が挙げられる。また、アルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の平均分子量の下限値については、特に制限されないが、通常1千以上、好ましくは1万以上が挙げられる。このような平均分子量を充足することによって、アルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の分解を抑制でき、その保存安定性を高めることもできる。なお、本発明において、前記平均分子量は、GPC法によって求められるプルラン換算の重量平均分子量である。
アルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩において、全グリコシド結合に対するマンヌロン酸−グルロン酸の結合の比率(以下、「M-G結合率」と表記することもある)については、特に制限されないが、カルシウム吸収抑制作用をより一層効果的に向上させるという観点から、好ましくは40%以下、更に好ましくは20%以下が挙げられる。また、アルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩のM-G結合率の下限値については、特に制限されないが、通常1%以上、好ましくは10%以上が挙げられる。
なお、本発明において、前記M-G結合率は、NMR分析によって求められる値であり、その具体的測定方法は以下の通りである。先ず、アルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の1H−NMRのスペクトルを取得し、マンヌロン酸−マンヌロン酸の結合(M-M結合)由来のピーク(1,4-グリコシド結合の1位の側に位置するマンヌロン酸の1位のプロトンのピーク)の積分値、マンヌロン酸−グルロン酸の結合(M-G結合)由来のピーク(マンヌロン酸の1位のプロトンのピーク)の積分値、マンヌロン酸−グルロン酸−マンヌロン酸の結合(M-G-M結合)由来のピーク(グルロン酸の5位のプロトンのピーク)の積分値、グルロン酸−グルロン酸−グルロン酸の結合(G-G-G結合)由来のピーク(中央に位置するグルロン酸の5位のプロトンのピーク)の積分値、マンヌロン酸−グルロン酸−グルロン酸の結合(M-G-G結合)由来のピーク(中央に位置するグルロン酸の5位のプロトンのピーク)の積分値、及びグルロン酸−グルロン酸−マンヌロン酸の結合(G-G-M結合)由来のピーク(中央に位置するグルロン酸の5位のプロトンのピーク)の積分値を求める。次いで、下記式に従ってM-G結合率を算出する。
前記M-G結合率を有するアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩は、公知の製造方法で得ることができる。例えば、アルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩において、M-G結合は、M-M結合及びG-G結合に比べて、高温条件下で加水分解され易いことが知られているので、M-G結合率が40%超のアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を高温条件下で加水分解することにより、M-G結合率が前記範囲を満たすアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を得ることができる。
また、本発明において、アルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を構成するマンヌロン酸とグルロン酸の比率(モル比)については、特に制限されず、例えば、グルロン酸に対するマンヌロン酸の比率(M/G比)として、0.1〜11程度が挙げられる。中でも、M/G比が、0.8以上、好ましくは0.8〜11、更に好ましくは1.0〜11、特に好ましくは1.2〜11を充足するアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩は、カルシウム吸収抑制作用をより一層効果的に向上させることができるので、本発明において特に好適に使用される。
また、本発明において、(ii)成分としてアルギン酸を使用する場合、当該アルギン酸は膨潤性又は非膨潤性のいずれであってもよく、これらの混合物であってもよいが、カルシウム吸収抑制作用をより一層高めるという観点から、好ましくは非膨潤性のアルギン酸が挙げられる。ここで、「非膨潤性」とは、水を吸収しても殆ど膨潤しない性質を示すことであり、具体的には、水に膨潤させたときの容積が80ml/2g以下であることを意味する。
本発明で使用されるアルギン酸のアルカリ金属塩としては、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。これらのアルギン酸のアルカリ金属塩の中でも、好ましくはナトリウム塩が挙げられる。これらのアルギン酸のアルカリ金属塩は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の経口リン吸着剤において、(ii)成分として、平均分子量が10万以下のアルギン酸及びそのアルカリ金属塩の中から、1種のものを単独で使用してもよく、2種以上のものを混合して使用してもよい。なお、アルギン酸のアルカリ金属塩は、アルギン酸よりも炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウム由来のカルシウム吸収を強く抑制する反面、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムによるリン吸着作用を若干緩和する傾向を示すため、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムによるリン吸着作用と、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウム由来のカルシウム吸収抑制作用をより一層効率的にバランス良く発揮させるという観点からは、(ii)成分として、好ましくは平均分子量が10万以下のアルギン酸が挙げられる。
本発明の経口リン吸着剤において、前記(i)成分と(ii)成分の比率については、使用する(i)成分と(ii)成分の種類に応じて適宜設定すればよいが、例えば、前記(i)成分の総量100重量部当たり、前記(ii)成分の総量が100重量部以下、好ましくは2.5〜100重量部となる範囲が挙げられる。特に、(i)成分として炭酸カルシウムを使用する場合であれば、リン吸着作用をより一層有効に発揮させつつ、カルシウム吸収抑制作用をより一層高めるという観点から、炭酸カルシウムの総量100重量部当たり、前記(ii)成分の総量が、好ましくは100重量部以下、更に好ましくは2.5〜100重量部、特に好ましくは2.5〜11重量部が挙げられる。また、(i)成分として酢酸カルシウムを使用する場合であれば、リン吸着作用をより一層有効に発揮させつつ、カルシウム吸収抑制作用をより一層高めるという観点から、酢酸カルシウムの総量100重量部当たり、前記(ii)成分の総量が、好ましくは100重量部以下、更に好ましくは22〜100重量部、特に好ましくは55〜100重量部が挙げられる。
また、本発明の経口リン吸着剤には、前記(i)成分と(ii)成分以外に、必要に応じてアルギン酸の誘導体を含んでいてもよい。アルギン酸の誘導体としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、プロピレングリコールエステル等のエステル誘導体が挙げられる。
本発明の経口リン吸着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウム以外に、必要に応じてリン吸着作用を示す他の成分を含んでいてもよい。このようなリン吸着作用を示す成分(炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウム以外)としては、例えば、塩酸セベラマー、ポリリジン、アルミゲル等が挙げられる。
また、本発明の経口リン吸着剤は、所望の剤型に調製するために、必要に応じて、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等の添加剤が含まれていてもよい。賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ショ糖、果糖、フルクトオリゴ糖、ブドウ糖、マルトース、還元麦芽糖、粉糖、粉末飴、還元乳糖等の糖類;D−マンニトール、エリスリトール、D−ソルビトール、マルチトール、キシリトール等の糖アルコール類;コーンスターチ、バレイショデンプン、コメデンプン、部分アルファ化デンプン等のデンプン類等が挙げられる。結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、プルラン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、コーンスターチ、バレイショデンプン、コメデンプン、部分アルファ化デンプン、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
更に、本発明の経口リン吸着剤は、服用感を向上させるために、必要に応じて、甘味剤、矯味剤、着色剤、安定化剤等の添加剤が含まれていてもよい。
製剤形態
本発明の経口リン吸着剤は、前記(i)成分及び前記(ii)成分を含む組成物からなる1剤タイプの製剤であってもよく、前記(i)成分を含む第1剤と、前記(ii)成分を含む第2剤とが別々に製剤化されている2剤タイプの製剤であってもよい。服用簡易性の観点からは、好ましくは1剤タイプの製剤が挙げられる。
本発明の経口リン吸着剤を1剤タイプの製剤として提供する場合、前記(i)成分及び前記(ii)成分の含有量については、剤型、用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(i)成分の含有量として50〜99重量%、好ましくは70〜90重量%、更に好ましくは80〜85重量%が挙げられ、(ii)成分の含有量として1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは2〜20重量%が挙げられる。
また、本発明の経口リン吸着剤を2剤タイプの製剤として提供する場合、前記第1製剤中の(i)成分の含有量、及び前記第2製剤中の(ii)成分の含有量については、剤型、用途等に応じて適宜設定すればよい。例えば、前記第1製剤中の(i)成分の含有量としては、70〜100重量%、好ましくは75〜90重量%、更に好ましくは80〜85重量%が挙げられる。また、前記第2製剤中の(ii)成分の含有量としては、10〜100重量%が挙げられる。
また、本発明の経口リン吸着剤を2剤タイプの製剤として提供する際に、前述するアルギン酸の誘導体、リン吸着作用を示す成分(炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウム以外)、添加剤等を配合する場合、これらは、前記第1剤又は第2剤のいずれか一方に含まれていてもよく、またこれらの双方に含まれていてもよい。
剤型
本発明の経口リン吸着剤の剤型については、経口投与が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形状が挙げられる。これらの中でも、好ましくは錠剤、顆粒剤、カプセル剤が挙げられる。また、本発明の経口リン吸着剤を錠剤、丸剤、又は顆粒剤の剤型にする場合には、必要に応じて、糖衣コーティング、腸溶性コーティング等のコーティングを施しておいてもよい。
また、本発明の経口リン吸着剤を2剤タイプの製剤として提供する場合、前記第1剤と前記第2剤は、相互に同じ剤型であってもよく、また相互に異なる剤型であってもよい。
このような剤型に製剤化する方法は公知であり、例えば、日本薬局方の製剤総則に記載の方法によって行うことができる。
適用対象・投与方法
本発明の経口リン吸着剤は、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムによって食物由来のリンを吸着し、リン吸収を抑制することができるので、リンの過剰摂取等に起因する種々の疾患、例えば、高リン血症、腎不全、骨粗鬆症等の症状の予防又は治療用の医薬として好適に使用される。また、本発明の経口リン吸着剤は、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムに由来するカルシウム吸収を抑制できるので、透析患者等の長期間継続的にリン吸着剤の服用が必要とされる慢性腎臓病患者において、高カルシウム血症や血管石灰化、動脈硬化等の心血管疾患を予防するための医薬としても好適に使用される。
本発明の経口リン吸着剤の投与量及び投与回数については、投与対象者の年齢や症状の程度等に応じて適宜設定されるが、例えば、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムの投与量換算で1日当たり約3〜20g、好ましくは3〜10gになるように設定し、投与回数は、通常、1日3回毎食時に設定すればよい。また、本発明の経口リン吸着剤として2剤タイプの製剤を使用する場合であれば、前記第1剤と第2剤を、同時に又は任意の順で投与すればよい。
2.アルギン酸製剤
前述するように、平均分子量が10万以下のアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩は、生体内で炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウム由来のカルシウム吸収を抑制する作用を示す。従って、本発明は、更に、平均分子量が10万以下のアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含有することを特徴とする、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムを含む経口リン吸着剤によるカルシウム吸収を抑制するためのアルギン酸製剤を提供する。なお、本発明において、「アルギン酸製剤」という表記は、平均分子量が10万以下のアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含む製剤を意味している。
本発明のアルギン酸製剤は、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムを含む経口リン吸着剤を投与する際に、当該炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウム由来のカルシウム吸収を抑制するために使用される。即ち、本発明のアルギン酸製剤は、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムを含み、且つアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含まない経口リン吸着剤が処方される患者に対して投与される製剤である。
本発明のアルギン酸製剤において使用されるアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の組成や種類については、前記「1.経口リン吸着剤」に記載する通りである。また、本発明のアルギン酸製剤におけるアルギン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の含有量、他の添加可能な成分、剤型、適用対象、投与方法等については、前記「1.経口リン吸着剤」の欄に示す第2剤の場合と同様である。
以下に、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
製造例
以下に示す方法で、各種分子量及びM-G結合率のアルギン酸を製造又は準備した。
[アルギン酸1]
非膨潤性のアルギン酸(「和光一級アルギン酸」、和光純薬工業株式会社)を約6重量%となるように精製水に懸濁し、高圧蒸気滅菌器(TOMY社製ES−315)にて105℃で30分間、オートクレーブ処理した。オートクレーブ処理終了後、常温まで冷却して、アルギン酸を水洗した後に、脱水、乾燥及び粉砕を行い、アルギン酸1(非膨潤性)を得た。当該アルギン酸1は、M-G結合率34%、G-G結合率23%、M-M結合率43%、M/G比1.2、平均分子量5万であった。
[アルギン酸2]
アルギン酸ナトリウム(「キミカアルギンIL−6M」、株式会社キミカ)を1重量%となるように精製水に溶解(pH6.8)し、塩酸水溶液を添加して、アルギン酸ゲルに変換した。得られたアルギン酸ゲル溶液を95℃で約120分間、加熱処理した。加熱処理終了後、常温まで冷却して、アルギン酸を水洗した後に、脱水、乾燥及び粉砕を行い、アルギン酸2(非膨潤性)を得た。当該アルギン酸2は、M-G結合率20%、G-G結合率27%、M-M結合率53%、M/G比1.7、平均分子量4万であった。
[アルギン酸3]
オートクレーブ処理の条件を105℃で200分間に変更したこと以外は、前記アルギン酸1と同条件で操作し、アルギン酸3(非膨潤性)を得た。当該アルギン酸3は、M-G結合率19%、G-G結合率39%、M-M結合率42%、M/G比1.2、平均分子量2万であった。
[アルギン酸4]
オートクレーブ処理の条件を105℃で10分間に変更したこと以外は、前記アルギン酸1と同条件で操作し、アルギン酸4(非膨潤性)を得た。当該アルギン酸4は、M-G結合率31%、G-G結合率26%、M-M結合率43%、M/G比1.3、平均分子量10万であった。
[アルギン酸5]
アルギン酸ナトリウム(「キミカアルギンI−3」、株式会社キミカ)を1重量%となるように精製水に溶解(pH6.8)し、塩酸水溶液を添加して、アルギン酸ゲルに変換させた。次いで、アルギン酸を回収して水洗した後に、脱水、乾燥及び粉砕を行い、アルギン酸5(非膨潤性)を得た。当該アルギン酸5は、M-G結合率49%、G-G結合率18%、M-M結合率33%、M/G比0.8、平均分子量41万であった。
[アルギン酸6]
アルギン酸ナトリウム(「キミカアルギンIL−6M」、株式会社キミカ)を1重量%となるように精製水に溶解(pH6.8)し、塩酸水溶液を添加して、アルギン酸ゲルに変換させた。得られたアルギン酸ゲル溶液を81℃で約60分間、加熱処理した。次いで、アルギン酸を回収して水洗した後に、脱水、乾燥及び粉砕を行い、アルギン酸6(非膨潤性)を得た。当該アルギン酸6は、M-G結合率37%、G-G結合率11%、M-M結合率52%、M/G比1.7、平均分子量10万であった。
[アルギン酸7]
非膨潤性のアルギン酸(「和光一級アルギン酸」、和光純薬工業株式会社)を80℃で13日間加温処理し、アルギン酸7(非膨潤性)を得た。当該アルギン酸7は、M-G結合率43%、G-G結合率14%、M-M結合率43%、M/G比1.4、平均分子量5万であった。
[アルギン酸8]
アルギン酸8として、非膨潤性のアルギン酸(「和光一級アルギン酸」、和光純薬工業株式会社)を使用した。当該アルギン酸8は、M-G結合率48%、G-G結合率11%、M-M結合率41%、M/G比1.1、平均分子量40万であった。
[アルギン酸9]
アルギン酸9として、非膨潤性のアルギン酸(「和光一級アルギン酸」、和光純薬工業株式会社;前記アルギン酸8とは購入日及びロットが異なるもの)を使用した。当該アルギン酸9は、M-G結合率49%、G-G結合率7%、M-M結合率44%、M/G比1.8、平均分子量24万であった。
前記各アルギン酸のM-G結合率、G-G結合率、M-M結合率、M/G比、及び平均分子量については、以下に記載の方法で測定した。
<M-G結合率、G-G結合率、M-M結合率、及びM/G比の測定方法>
各アルギン酸について1H−NMRのスペクトルを求めた。M-G結合率は、1H−NMRのスペクトルに基づいて、前述する方法に従って求めた。また、G-G結合率及びM-M結合率は、1H−NMRのスペクトルに基づいて、下記式に従って算出した値である。
また、M/G比については、「松嶋景一郎ら、超臨界・亜臨界水マイクロリアクションによるアルギン酸の選択的分解反応、北海道立工業試験場報告 No.305、2006年、39〜44頁」に記載の方法に従って、1H−NMRによって測定した。
<平均分子量の測定方法>
各アルギン酸の平均分子量については、島津製作所社製GPCシステムを用いてプルラン換算の重量平均分子量を算出した。具体的な測定条件は以下の通りである。
測定溶液の調製:アルギン酸約0.05gを量りとり、0.1Mの硝酸ナトリウム水溶液約20mLに懸濁した。この懸濁溶液に炭酸ナトリウム水溶液をアルギン酸が溶解するまで添加した後、0.1Mの硝酸ナトリウム水溶液で50mLとして測定溶液とした。
使用カラム:Shodex社製 SB-806M HQ
標準物質:プルラン(Shodex社製 STANDARD P-82)
移動相:0.1M硝酸ナトリウム水溶液
検出器:示差屈折計
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
試験例1
前記アルギン酸1〜3及び5〜6についてカルシウム吸着作用の評価を行った。具体的には、溶出試験第2液(関東化学株式会社)100mlに、各アルギン酸を0.1重量%となるように添加して溶解させた。次いで、CaCl2・2H2O(和光純薬工業株式会社)を0.55重量%となるように添加して、アルギン酸をゲル化させた。十分にゲルが形成されたことを確認した後に、溶液を回収した。溶液中のカルシウムイオン濃度をICP発光分析法にて測定し、以下の式に従って、カルシウム吸着率を算出した。
得られた結果を図1及び2に示す。図1から明らかなように、いずれのアルギン酸(アルギン酸1〜3及び5〜6)にも、優れたカルシウム吸着作用が認められたが、特に、平均分子量10万以下のアルギン酸(アルギン酸1〜3及び6)では高いカルシウム吸着作用を示していた。また、図2から明らかなように、M-G結合率が低い程、カルシウム吸着作用が強いことも確認された。特に、平均分子量10万以下であり、且つM-G結合率が40%以下のアルギン酸(アルギン酸1〜3)では、格段に優れたカルシウム吸着作用が認められた。
試験例2
8週齢の雄ラット(Crl:CD(SD)日本チャールズリバー)を準備し、表1に示す組成の飼料を自由摂取させた。当該飼料の摂取開始から4日後に、24時間蓄尿し、尿中のカルシウム排泄量及びリン排泄量を測定した。なお、本試験は、1群当たりの平均体重が均一となるように予め群分けした各群8匹のラットを用いて行った。また、尿中のカルシウム濃度は比色法(OCPC法)にて測定し、尿中のリン濃度は比色法(リンモリブデン酸法)にて測定し、尿中のカルシウム排泄量とリン排泄量を算出した後、平均値を算出した。
得られた結果を図3及び4に示す。この結果から、炭酸カルシウムとアルギン酸を併用した場合(比較例2-2、実施例2-1、2-2)では、炭酸カルシウム単独の場合(比較例2-1)に比して、尿中カルシウム排泄量が低下しており、カルシウムの吸収を抑制できていたが、平均分子量10万以下のアルギン酸を使用した場合(実施例2-1、2-2)では、更に優れたカルシウムの吸収抑制効果が認められた。また、炭酸カルシウムとアルギン酸を併用した場合(比較例2-2、実施例2-1、2-2)は、尿中リン排泄量の点では、炭酸カルシウム単独の場合(比較例2-1)と同等であり、炭酸カルシウムはアルギン酸と共存してもリン吸着能力を有効に発揮させることができていた。
試験例3
8週齢の雄ラット(Crl:CD(SD)日本チャールズリバー)を準備し、表2に示す組成の飼料を自由摂取させた。当該飼料の摂取開始から2日後に、24時間蓄尿し、尿中のカルシウム排泄量及びリン排泄量を測定した。なお、本試験は、1群当たり平均体重が均一となるように予め群分けした各群5匹のラットを用いて行った。また、尿中のカルシウム濃度は比色法(OCPC法)にて測定し、尿中のリン濃度は比色法(リンモリブデン酸法)にて測定し、尿中のカルシウム排泄量とリン排泄量を算出した後、平均値を算出した。
得られた結果を図5及び6に示す。この結果からも、前記試験例2と同様に、炭酸カルシウムと平均分子量10万以下のアルギン酸を併用することにより、カルシウムの吸収を抑制できていた(実施例3-1及び3-2)。特に、平均分子量10万以下且つM-G結合率が40%以下のアルギン酸を使用した場合(実施例3-2)では、格段に優れたカルシウムの吸収抑制効果が認められた。また、炭酸カルシウムと平均分子量10万以下のアルギン酸を併用した場合(実施例3-1及び3-2)は、尿中リン排泄量の点では、炭酸カルシウム単独の場合(比較例3-1)と同等であり、炭酸カルシウムはアルギン酸と共存してもリン吸着能力を有効に発揮させることができていた。
試験例4
アルギン酸の保存安定性を評価するために以下の試験を行った。前記アルギン酸3及びアルギン酸9を温度40℃、相対湿度75%の雰囲気で60日間保存し、各アルギン酸の色の変化を目視にて確認した。
得られた結果を表3に示す。この結果から、平均分子量が10万以下且つM-G結合率が40%以下のアルギン酸3は、着色しにくく安定であり、製剤化に適していることが確認された。

Claims (8)

  1. (i)炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウム、並びに(ii)平均分子量が10万以下の非膨潤性のアルギン酸を含有することを特徴とする、経口リン吸着剤。
  2. 前記非膨潤性のアルギン酸の平均分子量が5万以下である、請求項1に記載の経口リン吸着剤。
  3. 前記非膨潤性のアルギン酸において、全グリコシド結合に対するマンヌロン酸−グルロン酸の結合の比率が40%以下である、請求項1又は2に記載の経口リン吸着剤。
  4. 前記非膨潤性のアルギン酸のマンヌロン酸/グルロン酸のモル比が0.8以上である、請求項1〜のいずれかに記載の経口リン吸着剤。
  5. 錠剤、顆粒剤、散剤、又はカプセル剤である、請求項1〜のいずれかに記載の経口リン吸着剤。
  6. (i)炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウム、並びに(ii)平均分子量が10万以下の非膨潤性のアルギン酸を含有する組成物からなる1剤タイプの製剤である、請求項1〜のいずれかに記載の経口リン吸着剤。
  7. (i)炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムを含む第1剤と、(ii)平均分子量が10万以下の非膨潤性のアルギン酸を含む第2剤を含む、2剤タイプの組み合わせ製剤である、請求項1〜のいずれかに記載の経口リン吸着剤。
  8. 平均分子量が10万以下の非膨潤性のアルギン酸を含有することを特徴とする、炭酸カルシウム及び/又は酢酸カルシウムを含む経口リン吸着剤によるカルシウム吸収を抑制するためのアルギン酸製剤。
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