以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。燃料電池の冷却システムは、燃料電池の運転システムに適用される冷却システムであるので、最初に燃料電池の運転システムの構成を説明し、その後に、その冷却システムを述べる。図1は燃料電池の冷却システムが適用される燃料電池運転システム10の構成図である。燃料電池運転システム10は、システム本体部20と、システム本体部20の各要素をシステム全体として制御する制御部70とを含んで構成されている。
システム本体部20は、燃料電池セルが複数積層されて燃料電池スタック22と呼ばれる燃料電池本体及び、燃料電池スタック22のアノード側に配置される水素ガス供給のための各要素と、カソード側に配置される空気供給のための各要素を含んで構成される。
アノード側の水素ガス源24は、燃料ガスとしての水素を供給するタンクである。水素ガス源24は、レギュレータ26に接続される。レギュレータ26は、水素ガス源24からのガスを適当な圧力と流量に調整する機能を有する。レギュレータ26の出力口に設けられる圧力計28は、供給水素圧力を検出する測定器である。レギュレータ26の出力口は燃料電池スタック22のアノード側入口に接続され、適当な圧力と流量に調整された燃料ガスが燃料電池スタック22に供給される。
燃料電池スタック22のアノード側出口から排出されるガスは、発電で水素が消費されて水素濃度が低くなり、また、MEA(Membrane Electrode Assembly)を通してカソード側の空気の成分である窒素ガスが透過してきて不純物ガス濃度が高くなっている。また、MEAを通して、反応生成物の水も透過してくる。
燃料電池スタック22のアノード側出口に接続される分流器32は、アノード側出口からの排出ガスの不純物ガス濃度が高まってきたときに、排気バルブ34を通して希釈器64に流すためのものである。このときの排気ガスは、窒素の他に反応生成物の水も含む水素ガスである。また、分流器32の後でさらにアノード側入口との間に設けられる循環昇圧器30は、アノード側出口から戻ってくるガスの水素分圧を高めて再びアノード側入口に戻し再利用する機能を有する水素ポンプである。
カソード側の酸素供給源40は、実際には大気を用いることができる。酸素供給源40である大気はフィルタ42を通してからカソード側に供給される。フィルタ42の後に設けられる流量計44は、酸素供給源40からの全供給流量を検出するフローメータである。また、フィルタ42の後に設けられる温度計46は、酸素供給源40からのガスの温度を検出する機能を有する。
エアコンプレッサ(ACP)48は、モータ50によって供給ガスを容積圧縮してその圧力を高める気体昇圧機である。またACP(48)は、制御部70の制御の下で、その回転速度(毎分当りの回転数)を可変して、所定量の供給ガスを提供する機能を有する。すなわち、供給ガスの所要流量が大きいときは、モータ50の回転速度を上げ、逆に供給ガスの所要流量が小さいときは、モータ50の回転速度を下げる。ACP消費電力検出部52は、ACP(48)の消費電力、具体的にはモータ50の消費電力を検出する機能を有する測定器である。モータ50は、回転速度を上げると消費電力が大きくなり、回転速度を下げると消費電力が小さくなるので、消費電力は、モータの回転速度、あるいは供給ガス流量に密接に関連する。
このように燃料電池スタック22のカソード側には酸素を含む空気がACP(48)によって制御部70の制御の下で供給されるので、以後、酸素を含む空気のことをカソード側の供給ガス、あるいは単に供給ガスと呼ぶことにする。したがって、酸素供給源40からACP(48)までの要素を、酸素供給装置と呼ぶことができる。
加湿器54は、供給ガスを適度に湿らせ、燃料電池スタック22での燃料電池反応を効率よく行わせる機能を有するものである。加湿器54により適度に湿らせられた供給ガスは、燃料電池スタック22のカソード側入口に供給され、カソード側出口から排気される。このときに、排気とともに反応生成物である水も排出される。燃料電池スタック22は反応により高温になるので、排出される水は水蒸気となっており、この水蒸気が加湿器54に供給され、供給ガスを適度に湿らせる。このように、加湿器54は、供給ガスに水蒸気の水分を適当に与える機能を有するもので、いわゆる中空糸を用いたガス交換器を用いることができる。すなわち、加湿器54は、ACP(48)からのガスが流れる流路と、水蒸気が流れる流路との間でガス交換できる構成となっている。例えば、中空糸の内側流路をACP(48)からの供給ガスの流路とし、中空糸の外側流路を燃料電池スタック22のカソード側出口からの水蒸気とすることで、燃料電池スタック22のカソード側入口への供給ガスを適度に湿らせることができる。
ここで、上記の酸素供給装置と、燃料電池スタック22のカソード側入口とを接続する流路のことを入口側流路と呼ぶことができる。これに対応して、燃料電池スタック22のカソード側出口から排気側へ接続される流路を出口側流路と呼ぶことができる。
出口側流路のカソード側出口に設けられる圧力計56は、カソード側出口のガス圧を検出する機能を有する。また出口側流路に設けられる調圧弁60は、背圧弁とも呼ばれるが、カソード側出口のガス圧を調整し、燃料電池スタック22への供給ガスの流量を調整する機能を有する弁で、例えばバタフライ弁のように流路の実効開口を調整できる弁を用いることができる。
調圧弁60の出力口は、上記の加湿器54に接続されるので、調圧弁60を出たガスは加湿器54に水蒸気を供給した後、再び戻って、希釈器64に入り、その後外部に排出される。
バイパス弁62は、入口側流路と出口側流路を接続して燃料電池スタック22と並列に配置されるバイパス流路に設けられる弁で、主に、排気における水素濃度を希釈するための空気を希釈器64に供給する機能を有する。すなわち、バイパス弁62を開くことで、ACP(48)からの供給ガスを、燃料電池スタック22へ流れる成分とは別に、燃料電池スタック22を流れずにバイパス流路を経由して、希釈器64に供給することができる。バイパス弁62としては、エンジンの排気ガス希釈のために用いられる排気バイパス弁と同様な構成のものを用いることができる。かかる排気バイパス弁はEGR弁と呼ばれることもある。
希釈器64は、アノード側の排気バルブ34からの水素混じりの排水、及び、カソード側の水蒸気混じりでさらにMEAを通して漏れてくる水素混じりの排気を集め、適当な水素濃度として外部に排出するためのバッファ容器である。そして、水素濃度が適当な濃度を超えるときは、バイパス弁62を開けることで燃料電池スタック22を経由せずに提供される供給ガスを用いてさらに適度な希釈を行うことができる。
制御部70は、システム本体部20の上記の各要素をシステム全体として制御するもので、いわゆる燃料電池CPUと呼ばれることがある。例えば、制御部70は、燃料電池の運転状況に応じ調圧弁とバイパス弁の協調制御を行う機能を有する。また、燃料電池の運転状況に応じて、燃料電池スタック22の温度、ACP48の温度、カソード側の供給ガスの温度等を適度に維持するために、後述の冷却システムを制御する機能を有する。これらの機能はソフトウェアで実現でき、具体的には、対応する燃料電池運転プログラム、燃料電池冷却プログラム等を実行することで実現できる。これらの機能の一部をハードウェアで実現することもできる。
このような燃料電池運転システム10において、燃料電池スタック22は燃料ガスと供給ガスとの間の反応により発熱する。また、ACP(48)もその運転に伴い、モータ50等が発熱する。さらに、燃料電池スタック22のカソード側に供給される供給ガスの温度は適当であることが好ましい。そして、燃料電池運転システム10が車両に搭載されるときは、車室内の空調のために空調システムが設けられるが、例えば車室内が冷え切っているときなど、燃料電池スタック22の廃熱が利用できるならば、それを用いて車室内を短時間で適度な温度にすることが望まれる。このように、燃料電池運転システム10を構成する要素について、その冷却等の温度調節が必要であり、そのために燃料電池の冷却システムが設けられる。
なお、以下において、燃料電池スタックをラジエータで冷却する冷却流路を主冷却流路とし、主冷却流路に並列に冷媒を分流する冷却流路を分流冷却流路として説明する。そして、分流冷却流路に設けられる熱交換器として、ACP(48)の冷却用のものと、車室内空調に用いられるものとを説明する。前者は、ラジエータを第1の熱交換器と考えて、第2熱交換器と呼ぶことにし、後者は空調熱交換器と呼ぶことにしている。この場合の第2熱交換器は、従来ACP(48)を独立して冷却するためのインタクーラを、分流された冷媒で熱交換することにして、冷却システムとして統合を図った形態となっているが、もちろん、インタクーラを従来通り独立の冷却系のままとし、第2熱交換器を他の要素の冷却に用いるものとしてもよい。
図2は、燃料電池の冷却システム100の構成を示す図である。ここでは、燃料電池運転システムにおけるカソード側の冷却システムが示されている。ACP(48)から加湿器54を経て燃料電池スタック22に入り、燃料電池スタック22から出る供給ガスの流路80が細い線で示され、これに対して、冷媒の流れる流路が太い線で示してある。燃料電池の冷却システム100は、冷媒の流れる流路として、主冷却流路102と、この主冷却流路102に並列に配置され、同じ冷媒を分流する分流冷却流路104とが設けられる。冷媒としては、水を主体としたLLC(Long Life Coolant)等を用いることができる。
主冷却流路102には、空冷用ファンを備えるラジエータ110と、加熱用のヒータ112と、ヒータ112に冷媒を適当に分流するための三方弁114と、冷媒を循環させるための循環ポンプ(WP)130が配置される。主冷却流路102を流れる冷媒は、ラジエータ110と燃料電池スタック22との間で循環し、温度が上昇した燃料電池スタック22の熱を冷媒によって運び出し、ラジエータ110で冷却し、再び燃料電池スタック22に戻す機能を有する。また、加湿器54は、上記のように燃料電池スタック22のカソード側に酸化ガスを供給するガス入口及びガス出口に対し並列に配置されるが、その冷却も主冷却流路102によって行われる。
分流冷却流路104は、主冷却流路102に並列に配置される。そして、主冷却流路102の冷媒が燃料電池スタック22からラジエータ110に向かって戻される排出側流路から冷媒が取り入れられ、主冷却流路102の冷媒がラジエータ110から燃料電池スタック22に向かって流れる供給側流路に向かって戻される。分流冷却流路104は、ACP(48)の第2熱交換器120に至り、そこで、ACP(48)から加湿器54及び燃料電池スタック22に供給される圧縮供給ガスの流路80に対しても熱交換を行い、その後主冷却流路102に戻される。したがって、第2熱交換器120は、供給ガスの温度を調整する機能を有する。従来、この機能は、インタクーラと呼ばれる独立の冷却系で実行されているが、図2の構成では、この従来のインタクーラの機能を、ラジエータ110から燃料電池スタック22に至る冷却系と冷媒を共通化して統合する形態となっている。
ここで、循環ポンプ130は、主冷却流路102の供給側流路に設けられ、加湿器54の上流側で、分流冷却流路104の冷媒戻し分流位置の下流側に設けられる。図2に即して述べれば、加湿器54は、循環ポンプ130の下流側で燃料電池スタック22の上流側に配置され、第2熱交換器120は、ラジエータ110の上流側であって燃料電池スタック22の下流側から冷媒が取り入れられる。つまり、循環ポンプ130の上流側において冷媒が流れるものとして、ラジエータ110と第2熱交換器120があり、循環ポンプ130の下流側において冷媒が流れるものとして、加湿器54と燃料電池スタック22とがある。
したがって、この構成では、(ラジエータ110を流れる冷媒量)+(第2熱交換器120を流れる冷媒量)=冷媒総量=(燃料電池スタック22を流れる冷媒量)+(加湿器54を流れる冷媒量)となるので、(加湿器54を流れる冷媒量)が少ないとすれば、燃料電池スタック22にかなり多くの冷媒量を供給できる。加湿器54を流れる冷媒量と、燃料電池スタック22を流れる冷媒量との比率は、これらの流路抵抗の比率等で定めることができる。例えば、加湿器54を流れる冷媒量:燃料電池スタック22を流れる冷媒量=2:98等にする場合には、冷媒総量の98%を燃料電池スタック22に供給できる。これにより、燃料電池スタック22の温度が高すぎるときは迅速にその熱をラジエータ110側に運び出すことができる。また、(ラジエータ110を流れる冷媒量)と(第2熱交換器120を流れる冷媒量)との比率も、これらの流路抵抗の比率等で定めることができ、あるいは、分流比率を制御する制御弁を用いて、これらを流れる冷媒量を定め、ラジエータ110と、第2熱交換器120とを協調的に作動させることができる。
また、分流冷却流路104が主冷却流路102と並列に設けられるので、第2熱交換器120から排出される冷媒の温度と、燃料電池スタック22から排出される冷媒の温度との差を少なくすることができる。前者は、加湿器54の供給ガス入口側の供給ガス温度を規定し、後者は、加湿器54の供給ガス出口の温度を規定するので、これにより、加湿器54のガス入口両端の温度差を少なくすることができ、中空糸構造のものを用いる場合でも両端温度差による損傷を抑制することができる。
燃料電池の冷却システムにおいて、主冷却流路から分流冷却流路が分流する態様、及び循環ポンプ130の配置態様によって、冷媒の分配の仕方を変更できる。図3は、ラジエータ110に最も多くの冷媒量を送ることができる燃料電池の冷却システム140の構成を示す図である。図2と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図3の燃料電池の冷却システム140において、循環ポンプ130は、主冷却流路102の供給側流路に設けられ、ラジエータ110の下流側で、分流冷却流路144の冷媒取り入れ分流位置の上流側に設けられる。図3に即して述べれば、加湿器54は、循環ポンプ130の下流側で燃料電池スタック22の上流側に配置され、第2熱交換器120は、ラジエータ110の下流側であって循環ポンプ130の下流側から冷媒が取り入れられる。つまり、循環ポンプ130の上流側において冷媒が流れるものとして、ラジエータ110のみがあり、循環ポンプ130の下流側において冷媒が流れるものとして、第2熱交換器120と加湿器54と燃料電池スタック22とがある。
したがって、この構成では、(ラジエータ110を流れる冷媒量)=冷媒総量=(第2熱交換器120を流れる冷媒量)+(燃料電池スタック22を流れる冷媒量)+(加湿器54を流れる冷媒量)となるので、(ラジエータ110を流れる冷媒量)を最大にできる。これにより、例えば、燃料電池スタック22の供給ガス入口側と出口側の温度差が大きいときに、燃料電池スタック22からラジエータ110に最大の冷媒を送り込んで、その温度差を効果的に減少させることができる。
図4は、燃料電池スタック22に最も多くの冷媒量を送ることができる燃料電池の冷却システム150の構成を示す図である。図2、3と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図4の燃料電池の冷却システム150において、循環ポンプ130は、主冷却流路102の供給側流路に設けられ、分流冷却流路154の冷媒戻し分流位置及び加湿器54の下流側で、燃料電池スタック22のすぐ上流側に設けられる。図4に即して述べれば、加湿器54は、循環ポンプ130の上流側であってラジエータ110の下流側に配置され、第2熱交換器120は、ラジエータ110の上流側であって加湿器54の下流側で、燃料電池スタック22の下流側から冷媒が取り入れられる。つまり、循環ポンプ130の上流側において冷媒が流れるものとして、ラジエータ110と第2熱交換器120と加湿器54とがあり、循環ポンプ130の下流側において冷媒が流れるものとしては燃料電池スタック22のみがある。
したがって、この構成では、(ラジエータ110を流れる冷媒量)+(第2熱交換器120を流れる冷媒量)+(加湿器54を流れる冷媒量)=冷媒総量=(燃料電池スタック22を流れる冷媒量)となるので、(燃料電池スタック22を流れる冷媒量)を最大にできる。これにより、燃料電池スタック22に最大の冷媒を送り込んで、燃料電池スタック22からその熱を効果的に排出させることができる。
燃料電池の冷却システムにおいて、主冷却流路から車室内空調のための空調熱交換器に冷媒を分流することもできる。図5は、空調熱交換器に冷媒を分流する燃料電池の冷却システム160の構成を示す図である。図2等と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図5の燃料電池の冷却システム160においては、図2で説明した分流冷却流路104及び第2熱交換器120を含む冷却システムに加えてさらに、車室162の空調のための空調熱交換器170に、主冷却流路102から冷媒を分流する空調用分流冷却流路164が設けられている。空調用分流冷却流路164には、必要に応じ設けられるヒータ166と、この空調用分流冷却流路164への分流を開閉制御するシャット弁168とが設けられる。
主冷却流路102における空調熱交換器170のための冷媒取入分流位置は、燃料電池スタック22への冷媒入口の直前である。図5に即して述べれば、加湿器54は、循環ポンプ130の下流側であって燃料電池スタック22の上流側に配置され、空調熱交換器170は、加湿器54の下流側であって燃料電池スタック22の上流側から冷媒が取り入れられる。そして、シャット弁168が開かれているときは、取り入れられた分流冷媒が、ヒータ166を経由し、空調熱交換器170に供給され、再び、主冷却流路102に戻される。この冷媒戻し位置は、燃料電池スタック22からの冷媒出口の直後である。
この構成では、(ラジエータ110を流れる冷媒量)+(第2熱交換器120を流れる冷媒量)=冷媒総量=(加湿器54を流れる冷媒量)+(燃料電池スタック22を流れる冷媒量)+(空調熱交換器170を流れる冷媒量)となるので、燃料電池スタック22に適当な冷媒量を供給しながら空調熱交換器に冷媒を供給できる。
すなわち、この構成により、燃料電池スタック22の運転によって暖められラジエータ110によって適当な温度に維持されて循環している冷媒を空調熱交換器170に供給でき、特別に独立な空調用システムを設けることなく、車室162を暖め、適当な空調環境とすることができる。必要があればヒータ112またはヒータ166を用いることもできる。また、燃料電池スタック22が十分暖まっていないときにはシャット弁168を閉じることで、冷たい冷媒を空調熱交換器170に送り込まないようにできる。
このように、車室内の暖房が必要なときのみ、シャット弁168を開くように制御することで、循環ポンプ130の動力を低減することができる。また、図6に示すように、車室内の補助暖房用のためのヒータ166を空調熱交換器170の系の中に設けることで、シャット弁168が閉じている通常の燃料電池スタック22の冷却運転のときに、ヒータ166における圧力損失が生じず、燃費を低減することができる。
上記のように、燃料電池スタック22の冷却系と、車室空調系とについて冷媒を共通化し、燃料電池スタック22の温度と車室内温度とに応じてシャット弁168の開閉を制御することで、燃料電池スタック22の冷却系と、車室空調系とを、協調的制御の下で統合することができる。なお、図6において、第2熱交換器120を含む分流冷却流路104を備え、ラジエータ110、第2熱交換器120、空調熱交換器170の協調的制御を行うものとして説明したが、第2熱交換器120を省いて、ラジエータ110と空調熱交換器170との間で協調的制御を行うものとしてもよい。
空調熱交換器を含む冷却システムにおいて、主冷却流路から空調用分流冷却流路が分流する態様、及び循環ポンプ130の配置態様によって、冷媒の分配の仕方を変更できる。図6は、主冷却流路102における空調熱交換器170のための冷媒取入分流位置をラジエータ110の直前に設けて冷媒を分流する燃料電池の冷却システム180の構成を示す図である。図5と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図6の燃料電池の冷却システム180においては、主冷却流路102における空調熱交換器170のための冷媒取入分流位置は、燃料電池スタック22の下流側で、ラジエータ110の上流側である。図6に即して述べれば、加湿器54は、循環ポンプ130の下流側であって燃料電池スタック22の上流側に配置され、空調熱交換器170は、燃料電池スタック22の下流出口の直後であってラジエータ110の上流側から冷媒が取り入れられる。そして、シャット弁168が開かれているときは、取り入れられた分流冷媒が、空調熱交換器170とヒータ166とに供給され、再び、主冷却流路102に戻される。この冷媒戻し位置は、ラジエータ110の下流側で、循環ポンプ130の上流側である。
この構成では、(ラジエータ110を流れる冷媒量)+(空調熱交換器170を流れる冷媒量)+(第2熱交換器120を流れる冷媒量)=冷媒総量=(加湿器54を流れる冷媒量)+(燃料電池スタック22を流れる冷媒量)となるので、燃料電池スタック22にかなりの冷媒量を供給しながら、他の要素に冷媒を供給できる。
すなわち、この構成によれば、燃料電池スタック22の運転によって暖められラジエータ110によって適当な温度に維持されて循環している冷媒を空調熱交換器170に供給でき、特別に独立な空調用システムを設けることなく、車室162を暖め、適当な空調環境とすることができる。必要があればヒータ166を用いることもできる。また、燃料電池スタック22が十分暖まっていないときにはシャット弁168を閉じることで、冷たい冷媒を空調熱交換器170に送り込まないようにできる。そして、燃料電池スタックに22にかなりの冷媒量を供給できるので、燃料電池スタック22から速やかに熱を運び出すことができる。
上記のように、燃料電池の冷却システムにおいて、主冷却流路から第2熱交換器のための分流冷却流路及び空調熱交換器のための空調用分流冷却流路が分流する態様、及び循環ポンプの配置態様によって、冷媒の分配の仕方を様々に変更できる。したがって、主冷却流路からの分流位置と循環ポンプの配置位置とを切り換えることで、燃料電池運転システム10の運転状況あるいは車両の運転状況に応じて、燃料電池スタックの冷却、第2熱交換器によるACP(48)及び供給ガスの熱交換、空調熱交換器による車室内の空調等を協調的に制御し、それぞれに適した冷媒量を供給することができる。
例えば、冷却流路から第2熱交換器に冷媒を分流する分流流路の入口と出口の冷却流路上の位置を切り換える分流位置切換手段を備えることで、また燃料電池スタックの運転状態に応じて分流位置を切り換えることによって、燃料電池スタックにその運転状態に応じた冷媒量を供給することができる。
また、冷却流路から空調熱交換器に冷媒を分流する分流流路の入口と出口の冷却流路上の位置を切り換える分流位置切換手段を備えるので、車室内温度等に応じて分流位置を切り換えることで、空調熱交換器に車室内温度に応じた冷媒量を供給することができる。
図7は、空調用分流冷却流路の構成を工夫し、空調熱交換器170に流す冷媒を、主冷却流路102と協調的に共通化もでき、あるいは空調熱交換器170のためのみの独立的に用いることもできる燃料電池の冷却システム200の構成を示す図である。図5等と共通の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図7の燃料電池の冷却システム200においては、空調用分流冷却流路202は、3つの要素から構成される。すなわち、主冷却流路102から冷媒が取り入れられ戻される入出力流路204と、空調熱交換器170を通って冷媒が流れる空調分流流路206と、空調分流流路206と並列に配置される循環流路208とで、空調用分流冷却流路202の全体が構成される。
図7に示されるように、三方弁210,212が、入出力流路204と、空調分流流路206と、循環流路208の3つの流路の接続点に設けられる。したがって、入出力流路204と、空調分流流路206と、循環流路208間の接続関係は、2つの三方弁210,212によって切り換えられる。その意味で、2つの三方弁210,212は、空調分流流路206について、主冷却流路102につながる入出力流路204と循環流路208とに対する接続関係を切り換える手段である。切り換えのいくつかの態様については後述する。
主冷却流路102に設けられる循環ポンプ130とは別の冷媒循環用のポンプが空調分流流路206に設けられる。このポンプを循環ポンプ130と区別して、第2循環ポンプ220と呼ぶことができる。空調分流流路206は、第2循環ポンプ220と、ヒータ222と、空調熱交換器170とが直列に配置される。図7においては、三方弁210−第2循環ポンプ220−ヒータ222−空調熱交換器170−三方弁212の順に配置されているが、三方弁210,212の間の各要素の配置の順序は、これ以外の順序であってもよく、場合によってはさらに切換弁等を含めて並列配置するものとしてもよい。
第2循環ポンプ220は、主冷却流路102における循環ポンプ130よりも小型の冷媒循環ポンプである。主冷却流路102における循環ポンプ130は、ラジエータ110、加湿器54、燃料電池スタック22を含む冷媒流路に冷媒を循環させ、迅速に熱交換させて冷媒の温度を適切に維持することができるように、大流量でも十分作動可能な容量のポンプが用いられる。これに対し、第2循環ポンプ220は、主に空調熱交換器170を中心に冷媒を循環させるためであるので、小型の容量のポンプを用いることができる。第2循環ポンプ220は小型であるので、主冷却流路102における循環ポンプ130と比べて、低流量において作動効率が良い。また、第2循環ポンプ220は、作動駆動しないときでも、冷媒が通過できるものがよい。こうすることで、第2循環ポンプ220を作動させないときでも、冷媒の流れの効率を低下させないことができる。
入出力流路204は、主冷却流路102から三方弁210,212までの冷媒流路で、その意味で、主冷却流路102の一部の分岐流路と考えることもできる。循環流路208は、空調分流流路206と並列接続されることによってループ流路を形成するものである。
次に、三方弁210,212による冷却流路の切り換えについて説明する。三方弁210,212の切り換え作動は、図示されていない冷却制御部によって、燃料電池スタック22の運転状態に応じて行われる。なお、冷却制御部は、燃料電池運転システム10の制御部70がかねることもできる。図8は、三方弁210,212の切り換えによって、空調分流流路206と循環流路208とを閉ループ状に接続する状態を示す図である。このとき、入出力流路204は、この閉ループ状流路から分離される。なお、流路の状態を分かりやすくするため、図8では三方弁210,212の図示を省略してある。具体的には、三方弁210は、空調分流流路206の一方側と循環流路208の一方側とを接続するように作動され、三方弁212は、空調分流流路206の他方側と循環流路208の他方側とを接続するように作動されることで、この閉ループ状流路が形成される。
閉ループ状流路を形成することで、主冷却流路102とは独立に、第2循環ポンプ220によって、この閉ループ状流路内において冷媒を循環させることができる。つまり、ヒータ222と空調熱交換器170との間で冷媒を循環させることができる。この接続状態は、燃料電池スタック22がまだ低温である運転状態のときに行うことがよい。これにより、燃料電池スタック22によってまだ十分に暖められずに冷たいままの冷媒を空調熱交換器170に送り込まないようにできる。そして、ヒータ222と第2循環ポンプ220とを作動させることで、閉ループ状流路内の冷媒を十分暖めて空調熱交換器170に供給できる。これにより、車室162を効率よく迅速に暖めることができる。
図9は、三方弁210,212の切り換えによって、循環流路208を分離し、入出力流路204と空調分流流路206とを接続する状態を示す図である。ここでも図8と同様に、流路の状態を分かりやすくするため、三方弁210,212の図示を省略してある。具体的には、三方弁210は、主冷却流路102の冷媒の取り入れ側と接続される入出力流路204の一方側と、空調分流流路206の一方側とを接続するように作動され、三方弁212は、空調分流流路206の他方側と、主冷却流路102の冷媒の戻し側と接続される入出力流路204の他方側とを接続するように作動される。これにより、循環流路208を分離し、入出力流路204と空調分流流路206とを直接接続し、空調分流流路206を、燃料電池スタック22を流れる主冷却流路102に対し並列に配置することができる。
この接続法は、基本的に図5の構成と同じである。つまり、空調用分流冷却流路202は、主冷却流路102と冷媒を共通化し、いわゆる協調制御が行われる。したがって、三方弁210,212は、空調分流流路206について、主冷却流路102と協調制御的な接続、あるいは独立制御的な接続に切り換える機能を有することになる。なお、この協調制御的な接続においては、第2循環ポンプ220の作動駆動は停止される。上記のように、この場合でも第2循環ポンプ220を自由に冷媒が通過できるので、空調分流流路206の冷媒の流れの効率は低下しない。
協調制御が行われるのは、図5で説明したように、燃料電池スタック22の運転によって暖められラジエータ110によって適当な温度に維持されて冷媒が循環しているときである。したがって、図8の閉ループ状流路の接続法と、協調制御の接続法とは、燃料電池スタック22の運転状態に応じて切り換えられる。例えば、燃料電池スタック22がまだ暖まっていないときは、図8の閉ループ状流路の接続法としてヒータ222と第2循環ポンプ220を作動させ空調熱交換器170に供給する冷媒の温度を上げ、燃料電池スタック22が暖まって主冷却流路102の冷媒の温度が上昇してきたら、図9の直接接続法に切り換え、ヒータ222の作動を停止させる。これにより、車室162の暖気のために要する動力を低減することができ、燃費を改善できる。
図8の閉ループ状流路の接続法と、図9の直接接続法との間の切り換えタイミングは、燃料電池スタック22の冷媒の温度、例えば冷却水温が所定の目標水温に到達するときとすることができる。あるいは、さらに燃費を改善するために、それよりも早期のタイミング、例えば、熱交換が可能で、目標水温に近い50℃に到達したタイミング等で切り換えるものとしてもよい。
図10は、図9の接続法、つまり空調分流流路206と主冷却流路102とを直接接続する場合に、第2循環ポンプ220を作動させ、主冷却流路102の循環ポンプ130の作動を停止するときの様子を示す図である。主冷却流路102の循環ポンプ130と第2循環ポンプ220の作動の切り換えは、図示されていない冷却制御部によって、燃料電池スタック22の運転状態に応じて行われる。主冷却流路102の循環ポンプ130が作動しないときは、主冷却流路102において冷媒は循環しない。その条件の下で、図9の接続状態において第2循環ポンプ220を作動させると、冷媒は、第2循環ポンプ220−ヒータ222−空調熱交換器170−燃料電池スタック22−第2循環ポンプ220の閉ループ内を循環できる。
図10で説明した作動状態は、燃料電池スタック22がアイドル運転状態、あるいは間欠運転状態のように、低負荷運転状態のときに用いられることがよい。燃料電池スタック22が低負荷運転状態のときは発熱量が少ないので、ラジエータ110による冷却が必要でないことが多い。そこで、主冷却流路102の大容量の循環ポンプ130の作動を停止し、代わって、小型の第2循環ポンプ220によって冷媒を循環させる。第2循環ポンプ220は低流量のときは大容量用の循環ポンプ130よりも作動効率がよい。すなわち、大容量の循環ポンプ130に比べ少ない電力で冷媒を効率よく循環でき、低負荷のときの燃費を向上させることができる。燃料電池スタック22が中負荷あるいは高負荷のときは、図9で説明したように、第2循環ポンプ220の作動駆動を停止させ、主冷却流路102の循環ポンプ130の作動駆動のみによって冷媒を循環させる。これによって第2循環ポンプ220の駆動に要する電力を削減でき、中負荷及び高負荷のときの燃費を向上させることができる。
また、図8の閉ループ状流路の接続状態で冷媒を暖め、空調熱交換器170によって車室162を暖気したのち、ユーザによって車室162の空調がオフされたときは、ヒータ222を作動させたまま、図9または図10の直接接続状態に切り換える。空調オフによって空調熱交換器170から車室162に暖気を送るファン等がオフされるが、ヒータ222が作動しているので、暖かい冷媒が燃料電池スタック22に供給され、燃料電池スタック22を早期に暖機できる。
図5から図10において、空調熱交換器170を含む冷媒流路を、適当な断熱手段によって断熱することが好ましい。例えば、冷媒流路用パイプを適当な断熱材で覆うことができる。これにより、燃料電池運転システムの起動時に、空調熱交換器170における熱交換を効率よく行うことができ、車室162を早期に暖気できる。したがって、少ない電力等で車室162を暖気でき、燃費を向上させることができる。
上記では、主冷却流路102が加湿器54を通過するものとして説明したが、加湿器54を通過しないものとする構成とすることもできる。以下に、そのような構成について説明する。なお、以下では、図1から図10における要素と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図11は、燃料電池の冷却システム300の構成を示す図である。この燃料電池の冷却システム300は、図2で説明した燃料電池の冷却システム100に対し、主冷却流路102が加湿器54を通過しない構成となっている。ここでは、図2で説明したのと同様に、燃料電池の冷却システム300は、冷媒の流れる流路として、主冷却流路102と、この主冷却流路102に並列に配置され、同じ冷媒を分流する分流冷却流路104とが設けられる。
主冷却流路102には、空冷用ファンを備えるラジエータ110と、加熱用のヒータ112と、ヒータ112に冷媒を適当に分流するための三方弁114と、冷媒を循環させるための循環ポンプ(WP)130が配置される。主冷却流路102を流れる冷媒は、ラジエータ110と燃料電池スタック22との間で循環し、温度が上昇した燃料電池スタック22の熱を冷媒によって運び出し、ラジエータ110で冷却し、再び燃料電池スタック22に戻す機能を有する。なお、加湿器54は、上記のように燃料電池スタック22のカソード側に酸化ガスを供給するガス入口及びガス出口に対し並列に配置されるが、主冷却流路102は、加湿器54の中を通過せず、加湿器54は、主冷却流路102による冷媒によって冷却されない。
図11におけるイオン交換器132は、冷媒である冷却水のイオンを除去する機能を有する装置である。これは、冷却水の循環流路を構成する要素からイオンが冷却水の中に溶存してくるので、これを除去し、冷媒である冷却水の抵抗を高く維持するためのものである。イオン交換器132は、図11に示されるように主冷却流路102に並列に配置されるが、場合によっては主冷却流路102に直列に配置されてもよい。また、イオン交換器132には、冷却水のイオン濃度を検出するイオン検出手段が設けられることが好ましい。
分流冷却流路104は、主冷却流路102に並列に配置される。そして、主冷却流路102の冷媒が燃料電池スタック22からラジエータ110に向かって戻される排出側流路から冷媒が取り入れられ、主冷却流路102の冷媒がラジエータ110から燃料電池スタック22に向かって流れる供給側流路に向かって戻される。分流冷却流路104は、ACP(48)の第2熱交換器120に至り、そこで、ACP(48)から加湿器54を経由して燃料電池スタック22に供給される圧縮供給ガスの流路80に対して熱交換を行い、その後主冷却流路102に戻される。したがって、第2熱交換器120は、供給ガスの温度を調整する機能を有する。従来、この機能は、インタクーラと呼ばれる独立の冷却系で実行されているが、図2と同様に図11の構成では、この従来のインタクーラの機能を、ラジエータ110から燃料電池スタック22に至る冷却系と冷媒を共通化して統合する形態となっている。
ここで、循環ポンプ130は、主冷却流路102の供給側流路に設けられ、分流冷却流路104の冷媒戻し分流位置の下流側に設けられる。図11に即して述べれば、第2熱交換器120は、ラジエータ110の上流側であって燃料電池スタック22の下流側から冷媒が取り入れられる。つまり、循環ポンプ130の上流側において冷媒が流れるものとして、ラジエータ110と第2熱交換器120があり、循環ポンプ130の下流側において冷媒が流れるものとして燃料電池スタック22がある。
したがって、この構成では、(ラジエータ110を流れる冷媒量)+(第2熱交換器120を流れる冷媒量)=冷媒総量=(燃料電池スタック22を流れる冷媒量)となるので、燃料電池スタック22にかなり多くの冷媒量を供給できる。これにより、燃料電池スタック22の温度が高すぎるときは迅速にその熱をラジエータ110側に運び出すことができる。また、(ラジエータ110を流れる冷媒量)と(第2熱交換器120を流れる冷媒量)との比率も、これらの流路抵抗の比率等で定めることができ、あるいは、分流比率を制御する制御弁を用いて、これらを流れる冷媒量を定め、ラジエータ110と、第2熱交換器120とを協調的に作動させることができる。
また、分流冷却流路104が主冷却流路102と並列に設けられるので、第2熱交換器120から排出される冷媒の温度と、燃料電池スタック22から排出される冷媒の温度との差を少なくすることができる。前者は、加湿器54の供給ガス入口側の供給ガス温度を規定し、後者は、加湿器54の供給ガス出口の温度を規定するので、これにより、加湿器54のガス入口両端の温度差を少なくすることができ、中空糸構造のものを用いる場合でも両端温度差による損傷を抑制することができる。
燃料電池の冷却システムにおいて、主冷却流路から分流冷却流路が分流する態様、及び循環ポンプ130の配置態様によって、冷媒の分配の仕方を変更できる。図12は、ラジエータ110に最も多くの冷媒量を送ることができる燃料電池の冷却システム340の構成を示す図である。
図12の燃料電池の冷却システム340において、循環ポンプ130は、主冷却流路102の供給側流路に設けられ、ラジエータ110の下流側で、分流冷却流路144の冷媒取入分流位置の上流側に設けられる。図12に即して述べれば、第2熱交換器120は、ラジエータ110の下流側であって循環ポンプ130の下流側で、燃料電池スタック22の上流側から冷媒が取り入れられる。つまり、循環ポンプ130の上流側において冷媒が流れるものとして、ラジエータ110のみがあり、循環ポンプ130の下流側において冷媒が流れるものとして、第2熱交換器120と燃料電池スタック22とがある。
したがって、この構成では、(ラジエータ110を流れる冷媒量)=冷媒総量=(第2熱交換器120を流れる冷媒量)+(燃料電池スタック22を流れる冷媒量)となるので、(ラジエータ110を流れる冷媒量)を最大にできる。これにより、例えば、燃料電池スタック22の供給ガス入口側と出口側の温度差が大きいときに、燃料電池スタック22からラジエータ110に最大の冷媒を送り込んで、その温度差を効果的に減少させることができる。
図13は、燃料電池スタック22に最も多くの冷媒量を送ることができる燃料電池の冷却システム350の構成を示す図である。
図13の燃料電池の冷却システム350において、循環ポンプ130は、主冷却流路102の供給側流路に設けられ、分流冷却流路154の冷媒戻し分流位置の下流側で、燃料電池スタック22のすぐ上流側に設けられる。図13に即して述べれば、第2熱交換器120は、ラジエータ110の上流側であって燃料電池スタック22の下流側から冷媒が取り入れられる。つまり、循環ポンプ130の上流側において冷媒が流れるものとして、ラジエータ110と第2熱交換器120とがあり、循環ポンプ130の下流側において冷媒が流れるものとしては燃料電池スタック22のみがある。
したがって、この構成では、(ラジエータ110を流れる冷媒量)+(第2熱交換器120を流れる冷媒量)=冷媒総量=(燃料電池スタック22を流れる冷媒量)となるので、(燃料電池スタック22を流れる冷媒量)を最大にできる。これにより、燃料電池スタック22に最大の冷媒を送り込んで、燃料電池スタック22からその熱を効果的に排出させることができる。
燃料電池の冷却システムにおいて、主冷却流路から車室内空調のための空調熱交換器に冷媒を分流することもできる。図14は、空調熱交換器に冷媒を分流する燃料電池の冷却システム360の構成を示す図である。
図14の燃料電池の冷却システム360においては、図11で説明した分流冷却流路104及び第2熱交換器120を含む冷却システムに加えてさらに、車室162の空調のための空調熱交換器170に、主冷却流路102から冷媒を分流する空調用分流冷却流路164が設けられている。空調用分流冷却流路164には、必要に応じ設けられるヒータ166と、この空調用分流冷却流路164への分流を開閉制御するシャット弁168とが設けられる。
主冷却流路102における空調熱交換器170のための冷媒取入分流位置は、燃料電池スタック22への冷媒入口の直前である。図14に即して述べれば、空調熱交換器170は、燃料電池スタック22の上流側から冷媒が取り入れられる。そして、シャット弁168が開かれているときは、取り入れられた分流冷媒が、ヒータ166を経由し、空調熱交換器170に供給され、再び、主冷却流路102に戻される。この冷媒戻し位置は、燃料電池スタック22からの冷媒出口の直後である。
この構成では、(ラジエータ110を流れる冷媒量)+(第2熱交換器120を流れる冷媒量)=冷媒総量=(燃料電池スタック22を流れる冷媒量)+(空調熱交換器170を流れる冷媒量)となるので、燃料電池スタック22に適当な冷媒量を供給しながら空調熱交換器に冷媒を供給できる。
すなわち、この構成により、燃料電池スタック22の運転によって暖められラジエータ110によって適当な温度に維持されて循環している冷媒を空調熱交換器170に供給でき、特別に独立な空調用システムを設けることなく、車室162を暖め、適当な空調環境とすることができる。必要があればヒータ112またはヒータ166を用いることもできる。また、燃料電池スタック22が十分暖まっていないときにはシャット弁168を閉じることで、冷たい冷媒を空調熱交換器170に送り込まないようにできる。
このように、車室内の暖房が必要なときのみ、シャット弁168を開くように制御することで、循環ポンプ130の動力を低減することができる。また、図14に示すように、車室内の補助暖房用のためのヒータ166を空調熱交換器170の系の中に設けることで、シャット弁168が閉じている通常の燃料電池スタック22の冷却運転のときに、ヒータ166における圧力損失が生じず、燃費を低減することができる。
上記のように、燃料電池スタック22の冷却系と、車室空調系とについて冷媒を共通化し、燃料電池スタック22の温度と車室内温度とに応じてシャット弁168の開閉を制御することで、燃料電池スタック22の冷却系と、車室空調系とを、協調的制御の下で統合することができる。なお、図14において、第2熱交換器120を含む分流冷却流路104を備え、ラジエータ110、第2熱交換器120、空調熱交換器170の協調的制御を行うものとして説明したが、第2熱交換器120を省いて、ラジエータ110と空調熱交換器170との間で協調的制御を行うものとしてもよい。
空調熱交換器を含む冷却システムにおいて、主冷却流路から空調用分流冷却流路が分流する態様、及び循環ポンプ130の配置態様によって、冷媒の分配の仕方を変更できる。図15は、主冷却流路102における空調熱交換器170のための冷媒取入分流位置をラジエータ110の直前に設けて冷媒を分流する燃料電池の冷却システム380の構成を示す図である。
図15の燃料電池の冷却システム380においては、主冷却流路102における空調熱交換器170のための冷媒取入分流位置は、燃料電池スタック22の下流側で、ラジエータ110の上流側である。図15に即して述べれば、空調熱交換器170は、燃料電池スタック22の下流出口の直後で、ラジエータ110の上流側から冷媒が取り入れられる。そして、シャット弁168が開かれているときは、取り入れられた分流冷媒が、空調熱交換器170とヒータ166とに供給され、再び、主冷却流路102に戻される。この冷媒戻し位置は、ラジエータ110の下流側で、循環ポンプ130の上流側である。
この構成では、(ラジエータ110を流れる冷媒量)+(空調熱交換器170を流れる冷媒量)+(第2熱交換器120を流れる冷媒量)=冷媒総量=(燃料電池スタック22を流れる冷媒量)となるので、燃料電池スタック22にかなりの冷媒量を供給しながら、他の要素に冷媒を供給できる。
すなわち、この構成によれば、燃料電池スタック22の運転によって暖められラジエータ110によって適当な温度に維持されて循環している冷媒を空調熱交換器170に供給でき、特別に独立な空調用システムを設けることなく、車室162を暖め、適当な空調環境とすることができる。必要があればヒータ166を用いることもできる。また、燃料電池スタック22が十分暖まっていないときにはシャット弁168を閉じることで、冷たい冷媒を空調熱交換器170に送り込まないようにできる。そして、燃料電池スタックに22にかなりの冷媒量を供給できるので、燃料電池スタック22から速やかに熱を運び出すことができる。
上記のように、加湿器54に主冷却流路からの冷媒を通過させない形態の燃料電池の冷却システムにおいても、主冷却流路から第2熱交換器のための分流冷却流路及び空調熱交換器のための空調用分流冷却流路が分流する態様、及び循環ポンプの配置態様によって、冷媒の分配の仕方を様々に変更できる。したがって、主冷却流路からの分流位置と循環ポンプの配置位置とを切り換えることで、燃料電池運転システム10の運転状況あるいは車両の運転状況に応じて、燃料電池スタックの冷却、第2熱交換器によるACP(48)及び供給ガスの熱交換、空調熱交換器による車室内の空調等を協調的に制御し、それぞれに適した冷媒量を供給することができる。
例えば、冷却流路から第2熱交換器に冷媒を分流する分流流路の入口と出口の冷却流路上の位置を切り換える分流位置切換手段を備えることで、燃料電池スタックの運転状態に応じて分流位置を切り換えることで、燃料電池スタックにその運転状態に応じた冷媒量を供給することができる。
また、冷却流路から空調熱交換器に冷媒を分流する分流流路の入口と出口の冷却流路上の位置を切り換える分流位置切換手段を備えるので、車室内温度等に応じて分流位置を切り換えることで、空調熱交換器に車室内温度に応じた冷媒量を供給することができる。
図16は、空調用分流冷却流路の構成を工夫し、空調熱交換器170に流す冷媒を、主冷却流路102と協調的に共通化もでき、あるいは空調熱交換器170のためのみの独立的に用いることもできる燃料電池の冷却システム400の構成を示す図である。
図16の燃料電池の冷却システム400においては、空調用分流冷却流路202は、3つの要素から構成される。すなわち、主冷却流路102から冷媒が取り入れられ戻される入出力流路204と、空調熱交換器170を通って冷媒が流れる空調分流流路206と、空調分流流路206と並列に配置される循環流路208とで、空調用分流冷却流路202の全体が構成される。
図16に示されるように、三方弁212が、入出力流路204と、空調分流流路206と、循環流路208の3つの流路の接続点に設けられる。したがって、入出力流路204と、空調分流流路206と、循環流路208間の接続関係は、三方弁212によって切り換えられる。その意味で、三方弁212は、空調分流流路206について、主冷却流路102につながる入出力流路204と循環流路208とに対する接続関係を切り換える手段である。切り換えのいくつかの態様については後述する。
主冷却流路102に設けられる循環ポンプ130とは別の冷媒循環用のポンプが空調分流流路206に設けられる。このポンプを循環ポンプ130と区別して、第2循環ポンプ220と呼ぶことができる。空調分流流路206は、第2循環ポンプ220と、ヒータ222と、空調熱交換器170とが直列に配置される。図16においては、三方弁212−第2循環ポンプ220−ヒータ222−空調熱交換器170の順に配置されているが、三方弁212の間の各要素の配置の順序は、これ以外の順序であってもよく、場合によってはさらに切換弁等を含めて並列配置するものとしてもよい。
第2循環ポンプ220は、主冷却流路102における循環ポンプ130よりも小型の冷媒循環ポンプである。主冷却流路102における循環ポンプ130は、ラジエータ110、加湿器54、燃料電池スタック22を含む冷媒流路に冷媒を循環させ、迅速に熱交換させて冷媒の温度を適切に維持することができるように、大流量でも十分作動可能な容量のポンプが用いられる。これに対し、第2循環ポンプ220は、主に空調熱交換器170を中心に冷媒を循環させるためであるので、小型の容量のポンプを用いることができる。第2循環ポンプ220は小型であるので、主冷却流路102における循環ポンプ130と比べて、低流量において作動効率が良い。また、第2循環ポンプ220は、作動駆動しないときでも、冷媒が通過できるものがよい。こうすることで、第2循環ポンプ220を作動させないときでも、冷媒の流れの効率を低下させないことができる。
入出力流路204は、主冷却流路102から三方弁212までの冷媒流路で、その意味で、主冷却流路102の一部の分岐流路と考えることもできる。循環流路208は、空調分流流路206と並列接続されることによってループ流路を形成するものである。
次に、三方弁212による冷却流路の切り換えについて説明する。三方弁212の切り換え作動は、図示されていない冷却制御部によって、燃料電池スタック22の運転状態に応じて行われる。なお、冷却制御部は、燃料電池運転システム10の制御部70がかねることもできる。図17は、三方弁212の切り換えによって、空調分流流路206と循環流路208とを閉ループ状に接続する状態を示す図である。このとき、入出力流路204は、この閉ループ状流路から分離される。なお、流路の状態を分かりやすくするため、図17では三方弁212を破線で示してある。具体的には、三方弁212は、空調分流流路206の一方側と循環流路208の一方側とを接続するように作動されることで、この閉ループ状流路が形成される。
閉ループ状流路を形成することで、主冷却流路102とは独立に、第2循環ポンプ220によって、この閉ループ状流路内において冷媒を循環させることができる。つまり、ヒータ222と空調熱交換器170との間で冷媒を循環させることができる。この接続状態は、燃料電池スタック22がまだ低温である運転状態のときに行うことがよい。これにより、燃料電池スタック22によってまだ十分に暖められずに冷たいままの冷媒を空調熱交換器170に送り込まないようにできる。そして、ヒータ222と第2循環ポンプ220とを作動させることで、閉ループ状流路内の冷媒を十分暖めて空調熱交換器170に供給できる。これにより、車室162を効率よく迅速に暖めることができる。
図18は、三方弁212の切り換えによって、循環流路208を分離し、入出力流路204と空調分流流路206とを接続する状態を示す図である。ここでも図17と同様に、流路の状態を分かりやすくするため、三方弁212を破線で示してある。具体的には、三方弁212は、主冷却流路102の冷媒の取り入れ側と接続される入出力流路204の一方側と、空調分流流路206の一方側とを接続するように作動される。これにより、循環流路208を分離し、入出力流路204と空調分流流路206とを直接接続し、空調分流流路206を、燃料電池スタック22を流れる主冷却流路102に対し並列に配置することができる。
この接続法は、基本的に図6、図15の構成と同じである。つまり、空調用分流冷却流路202は、主冷却流路102と冷媒を共通化し、いわゆる協調制御が行われる。したがって、三方弁212は、空調分流流路206について、主冷却流路102と協調制御的な接続、あるいは独立制御的な接続に切り換える機能を有することになる。なお、この協調制御的な接続においては、第2循環ポンプ220の作動駆動は停止される。上記のように、この場合でも第2循環ポンプ220を自由に冷媒が通過できるので、空調分流流路206の冷媒の流れの効率は低下しない。
協調制御が行われるのは、図6、図15で説明したように、燃料電池スタック22の運転によって暖められラジエータ110によって適当な温度に維持されて冷媒が循環しているときである。したがって、図17の閉ループ状流路の接続法と、協調制御の接続法とは、燃料電池スタック22の運転状態に応じて切り換えられる。例えば、燃料電池スタック22がまだ暖まっていないときは、図17の閉ループ状流路の接続法としてヒータ222と第2循環ポンプ220を作動させ空調熱交換器170に供給する冷媒の温度を上げ、燃料電池スタック22が暖まって主冷却流路102の冷媒の温度が上昇してきたら、図18の直接接続法に切り換え、ヒータ222の作動を停止させる。これにより、車室162の暖気のために要する動力を低減することができ、燃費を改善できる。
図17の閉ループ状流路の接続法と、図18の直接接続法との間の切り換えタイミングは、燃料電池スタック22の冷媒の温度、例えば冷却水温が所定の目標水温に到達するときとすることができる。あるいは、さらに燃費を改善するために、それよりも早期のタイミング、例えば、熱交換が可能で、目標水温に近い50℃に到達したタイミング等で切り換えるものとしてもよい。
図19は、図18の接続法の変形例である。ここでは、空調分流流路206を、主冷却流路102における燃料電池スタック22上流側に戻している。そして、三方弁212は、主冷却流路102の冷媒の取り入れ側と接続される入出力流路204の一方側と、空調分流流路206の一方側とを接続するように作動される。これにより、循環流路208を分離し、入出力流路204と空調分流流路206とが直接接続されるが、そこで、第2循環ポンプ220を作動させ、主冷却流路102の循環ポンプ130の作動を停止させる。主冷却流路102の循環ポンプ130と第2循環ポンプ220の作動の切り換えは、図示されていない冷却制御部によって、燃料電池スタック22の運転状態に応じて行われる。
主冷却流路102の循環ポンプ130が作動しないときは、主冷却流路102において冷媒は循環しない。その条件の下で、図19の接続状態において第2循環ポンプ220を作動させると、冷媒は、第2循環ポンプ220−ヒータ222−空調熱交換器170−燃料電池スタック22−第2循環ポンプ220の閉ループ内を循環できる。
図19で説明した作動状態は、燃料電池スタック22がアイドル運転状態、あるいは間欠運転状態のように、低負荷運転状態のときに用いられることがよい。燃料電池スタック22が低負荷運転状態のときは発熱量が少ないので、ラジエータ110による冷却が必要でないことが多い。そこで、主冷却流路102の大容量の循環ポンプ130の作動を停止し、代わって、小型の第2循環ポンプ220によって冷媒を循環させる。第2循環ポンプ220は低流量のときは大容量用の循環ポンプ130よりも作動効率がよい。すなわち、大容量の循環ポンプ130に比べ少ない電力で冷媒を効率よく循環でき、低負荷のときの燃費を向上させることができる。燃料電池スタック22が中負荷あるいは高負荷のときは、図9で説明したように、第2循環ポンプ220の作動駆動を停止させ、主冷却流路102の循環ポンプ130の作動駆動のみによって冷媒を循環させる。これによって第2循環ポンプ220の駆動に要する電力を削減でき、中負荷及び高負荷のときの燃費を向上させることができる。
また、図17の閉ループ状流路の接続状態で冷媒を暖め、空調熱交換器170によって車室162を暖気したのち、ユーザによって車室162の空調がオフされたときは、ヒータ222を作動させたまま、図18または図19の直接接続状態に切り換える。空調オフによって空調熱交換器170から車室162に暖気を送るファン等がオフされるが、ヒータ222が作動しているので、暖かい冷媒が燃料電池スタック22に供給され、燃料電池スタック22を早期に暖機できる。