(A)第1の実施形態
以下、本発明によるワイヤレス電力伝送システム、送電装置及び給電制御プログラムの第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図1において、第1の実施形態のワイヤレス電力伝送システムは、送電装置1及び複数の受電装置11−1〜11−mを有する。
第1の実施形態のワイヤレス電力伝送システムは、送電装置1から複数の受電装置11へ送電した際の各受電装置11−1〜11−mの受電電力を測定し、それらの値と各受電装置11−1〜11−mの必要な給電量から給電方法を決定する「給電方法決定フェーズ」と、決定した給電方法に従って給電を実施する「給電実施フェーズ」を繰り返すものである。
(A−1−1)送電装置1の構成
送電装置1は、電源2、発振部3、共振部4、供給電力制御部5、発振周波数制御部6、共振周波数制御部7、周波数・時間決定部8、送信部9及び受信部10を有する。
電源2は、供給電力制御部5から与えられた制御信号S3に従って、所定の電力で、電気エネルギーS1を発振部3へ供給するものである。
発振部3は、発振周波数制御部6から与えられた制御信号S4に従って、有限個の発振周波数候補の中から1つの発振周波数を選択し、電源2から供給された電気エネルギーS1を、選択した発振周波数で電磁界又は電気エネルギーS2に変換して共振部4へ伝達するものである。
共振部4は、共振周波数制御部7から与えられた制御信号S5に従って、有限個の共振周波数候補の中から1つの共振周波数を選択し、発振部3から受けた電磁界又は電気エネルギーS2を、選択した共振周波数で電磁界エネルギーS10に変換して複数の受電装置11−1〜11−mへ送電するものである。
供給電力制御部5は、周波数・時間決定部8から与えられた制御情報S6又はS22に従って、電源2の電力供給を開始又は終了するための制御信号S3を生成し、電源2へ与えるものである。
発振周波数制御部6は、周波数・時間決定部8から与えられた制御情報S6又はS22に従って、発振部3の発振周波数を切り替えるための制御信号S4を生成し、発振部3へ与えるものである。
共振周波数制御部7は、周波数・時間決定部8から与えられた制御情報S6又はS22に従って、共振部4の共振周波数を切り替えるための制御信号S5を生成し、共振部4へ与えるものである。
周波数・時間決定部8は、「給電方法決定フェーズ」においては、有限個の当該送電装置1の発振周波数候補及び共振周波数候補、並びに、受電装置11(11−1〜11−m)の共振周波数候補及び整流周波数候補の中から、各々1つ選択した組み合わせ(以下、周波数セットと呼ぶ)を有限個生成するものである。ここで、周波数セットは、考えられる全ての組み合わせを生成する必要はない。例えば、微調整を想定しない場合には、送電装置1側の発振周波数及び共振周波数、並びに、受電装置11側の共振周波数及び整流周波数が等しい組み合わせのみを選択して生成すれば良い。微調整を想定する場合には、送電装置1側の発振周波数及び共振周波数、並びに、受電装置11側の共振周波数及び整流周波数が等しい、又は、微小量だけ離れている組み合わせを選択して生成すれば良い。
また、周波数・時間決定部8は、生成した有限個の周波数セットの候補の中から順に選択して給電を行うために、制御情報S6を生成し、供給電力制御部5、発振周波数制御部6及び共振周波数制御部7へ与えると同時に、制御情報S7を生成し、送信部9へ与えるものである。ここで、制御情報S6は、「給電方法決定フェーズ」において選択した周波数セットに従って当該送電装置1が送電を行うタイミング、時間、発振周波数及び共振周波数に関する情報であり、制御情報S7は、「給電方法決定フェーズ」において選択した周波数セットに従って対向する受電装置11が受電を行うタイミング、時間、共振周波数、整流周波数と受電電力情報要求に関する情報である。
さらに、周波数・時間決定部8は、各受電装置11−1〜11−mへの所要給電量情報要求に関する制御情報S25を生成し、送信部9へ与えるものである。さらにまた、周波数・時間決定部8は、受信部10から与えられた複数の受電装置11−1〜11−mに対する受電電力情報S8を、選択した周波数セットと共に記憶するものである。また、周波数・時間決定部8は、受信部10から与えられた複数の受電装置11−1〜11−mに対する所要給電量情報S9を記憶するものである。周波数・時間決定部8は、記憶した各受電装置11−1〜11−mに対する受電電力情報S8及び所要給電量情報S9に基づいて、候補となった有限個の周波数セットを少なくとも1組用いた給電方法、すなわち、各周波数セットによる給電タイミング及び時間を決定するものである。
周波数・時間決定部8は、「給電実施フェーズ」においては、上述した「給電方法決定フェーズ」で決定した給電方法(使用周波数セット、給電タイミング、時間)に従って、制御情報S22を生成し、供給電力制御部5、発振周波数制御部6及び共振周波数制御部7へ与えると同時に、制御情報S23を生成し、送信部9へ与えるものである。ここで、制御情報S22は、「給電実施フェーズ」で使用する各周波数セットに従って、当該送電装置1が送電を行うタイミング、時間、発振周波数及び共振周波数に関する情報であり、制御情報S23は、「給電実施フェーズ」で使用する各周波数セットに従って、受電装置11-1〜11−mが受電を行うタイミング、時間、共振周波数及び整流周波数に関する情報である。
周波数・時間決定部8は、CPUと、CPUが実行するプログラム(給電制御プログラム)で実現するようにしても良い。
送信部9は、周波数・時間決定部8から与えられた制御情報S7、S23又はS25に基づいて、無線信号S11を生成し、送信アンテナを介して複数の受電装置11−1〜11−mの受信部19−1〜19−Nへ送信するものである。
受信部10は、受信アンテナを介して、複数の受電装置11−1〜11−mの送信部20−1〜20−Nから送信された無線信号S12を受信し、この無線信号S12に基づいて受電電力情報S8又は所要給電量情報S9を生成し、周波数・時間決定部8へ与えるものである。
図1では、送信部9の送信アンテナと受信部10の受信アンテナとが別々のように示しているが、これら送信アンテナ及び受信アンテナを共用するようにしても良い。
(A−1−2)受電装置11の構成
次に、各受電装置11−1〜11−mの構成を説明する。図1では、1つの受電装置11−1のみ詳細構成を示しているが、他の受電装置11−2〜11−mも同様な構成を有するものである。以下では、符号に枝番を付加せずに説明する。
受電装置11(11−1〜11−m)は、共振部12、整流部13、蓄電部14、負荷15、共振周波数制御部16、受電電力検出部17、所要給電量検出部18、受信部19、送信部20及び整流周波数制御部21を有する。
共振部12は、共振周波数制御部16から与えられた制御信号S16に従って、有限個の共振周波数候補の中から1つの共振周波数を選択し、送電装置1の共振部4から受けた電磁界エネルギーS10を、選択した共振周波数を用いて電磁界又は電気エネルギーS13に変換して整流部13へ伝達するものである。
整流部13は、整流周波数制御部21から与えられた制御信号S24に従って、有限個の整流周波数候補の中から1つの整流周波数を選択し、共振部12から受けた電磁界又は電気エネルギーS13を、選択した整流周波数を用いて整流し、電気エネルギーS14に変換して蓄電部14へ供給するものである。また、整流部13は、受電時の受電電力、すなわち、電気エネルギーS14の電力量の値を受電電力値S17として受電電力検出部17へ与えるものである。
蓄電部14は、整流部13から供給された電気エネルギーS14を蓄電し、接続された負荷15(1つに限定されない)に電気エネルギーS15を供給するものである。また、蓄電部14は、蓄電量、未蓄電量(完全に蓄電した場合の蓄電量と現蓄電量との差)、負荷15の消費電力量等に基づいて所要給電量を決定し、所要給電量値S18として所要給電量検出部18へ与えるものである。
1つ以上の負荷で構成される負荷15は、蓄電部14に接続され、供給される電気エネルギーS15を消費するものである。
共振周波数制御部16は、受信部19から与えられた制御情報S19又はS28に従い共振部12の共振周波数を切り替えるための制御信号S16を生成し、共振部12へ与える。
整流周波数制御部21は、受信部19から与えられた制御情報S19又はS28に従って、整流部13の整流周波数を切り替えるための制御信号S24を生成し、整流部13へ与えるものである。
受電電力検出部17は、「給電方法決定フェーズ」においては、受信部19から与えられた制御情報S26に従って、整流部13から与えられた受電電力値S17を検出し、受電電力情報S20として送信部20へ与えるものである。
所要給電量検出部18は、「給電方法決定フェーズ」においては、受信部19から与えられた制御情報S27に従って、蓄電部14から与えられた所要給電量値S18を検出し、所要給電量情報S21として送信部20へ与えるものである。
受信部19は、受信アンテナを介して、送電装置1の送信部9から送信された無線信号S11を受信し、この無線信号S11に基づいて制御情報S19、S26、S27又はS28を生成するものである。ここで、制御情報S19は、「給電方法決定フェーズ」における制御情報S7に関する無線信号S11に基づいて生成される、受電を行う際のタイミング、時間、共振周波数及び整流周波数に関する情報であり、共振周波数制御部16及び整流周波数制御部21へ与えられる。制御情報S26は、「給電方法決定フェーズ」における制御情報S7に関する無線信号S11に基づいて生成される、受電時の受電電力情報要求に関する情報であり、受電電力検出部17へ与えられる。制御情報S27は、「給電方法決定フェーズ」における制御情報S25に関する無線信号S11に基づいて生成される、所要給電量情報要求に関する情報であり、所要給電量検出部18へ与えられる。制御情報S28は、「給電実施フェーズ」における制御信号S23に関する無線信号S11に基づいて生成される、受電を行う際のタイミング、時間、共振周波数及び整流周波数に関する情報であり、共振周波数制御部16及び整流周波数制御部21へ与えられる。
送信部20は、受電電力検出部17から与えられた受電電力情報S20、又は、所要給電量検出部18から与えられた所要給電量情報S21に基づいて無線信号S12を生成し、送信アンテナを介して、送電装置1の受信部10へ送信するものである。
図1では、送信部20の送信アンテナと受信部19の受信アンテナとが別々のように示しているが、これら送信アンテナ及び受信アンテナを共用するようにしても良い。
第1の実施形態のワイヤレス電力伝送システムは、上述した電磁誘導方式、(磁界/電界)共鳴方式、電波放射方式、エバネッセント波方式のいずれの方式にも適用可能である。具体的には、電磁誘導方式の場合、図1における発振部3、共振部4及び共振部12はそれぞれ、インバータ、送電側コイル及び受電側コイルが該当する。同様に、磁界共鳴方式の場合、発振部3、共振部4及び共振部12はそれぞれ、発振器、送電側LC共振器及び受電側LC共振器が相当し、電界共鳴方式の場合、発振部3、共振部4及び共振部12はそれぞれ、インバータ、送電側電極及び受電側電極が該当し、電波放射方式の場合、発振部3、共振部4及び共振部12はそれぞれ、発振器、送電側アンテナ及び受電側アンテナが該当し、エバネッセント波方式の場合、発振部3、共振部4及び共振部12はそれぞれ、発振器、送電側コネクタ及び受電側コネクタが該当する。
(A−1−3)周波数・時間決定部8の担当機能の詳細
次に、周波数・時間決定部8の「給電方法決定フェーズ」の際に決定する「給電実施フェーズ」における給電方法、すなわち、有限個の周波数セット(送電側の発振周波数、共振周波数、受電側の共振周波数、整流周波数の組み合わせ)に対する給電(送電及び受電)タイミング及び時間の決定手順を説明する。
ここで、この決定手順は、全ての受電装置に電力を安定して効率的に伝送するためには、各受電装置に必要な電力をなるべく短い時間で給電する必要がある、という思想に基づいている。
今、給電中の複数の受電装置11の個数をm個とし、周波数セットの候補数をn個とする。各受電装置11−1〜11−mの所要給電量P(i)(1≦i≦m,P(i)≧0)は所要給電量情報S9から分かり(iは受信装置を区別するためのパラメータである)、各周波数セットを用いた場合の各受電装置11−1〜11−mの(単位時間当たりの)受電電力R(i,j)(1≦i≦m,1≦j≦n,R(i)≧0)は受電電力情報S8から分かる(jは周波数セットを区別するためのパラメータである)。各周波数セットjを用いた給電時間(単位時間)をそれぞれT(j)(1≦j≦n,T(j)≧0)とすると、全ての受電装置11−1〜11−mに必要な電力を最も短い時間で効率的に給電するための条件を求めることは、(1)式を満足し、かつ、給電時間T(1)〜T(n)の総和ΣT(j)が最小となる給電時間T(j)を求めること(以下、総給電時間最小条件と呼ぶ)と同じである。ここで、(1)式における各行は、周波数セットj毎の受電装置11−i側から見た供給量R(i,j)×T(j)を全ての周波数セットについて合算した値が、所要給電量P(i)以上であることを表している。
従って、給電時間の算出方法は、図2に示すように、まず、所要給電量情報S9及び受電電力情報S8から、それぞれ所要給電量P(i)及び受電電力R(i,j)を決定し(ステップ100)、次に、(1)式を満足し、かつ、総給電時間ΣT(j)が最小となる給電時間T(j)を算出し(ステップ101)、最後に、各周波数セットに対する給電タイミングを、算出した給電時間に従って給電期間が重ならないように順次決定する(ステップ102)方法となる。給電時間T(j)を算出するときには、所要給電量P(i)及び受電電力R(i,j)は既知の値と取り扱って良いものとなっている。
以下に、(1)式を満足し、かつ、総給電時間ΣT(j)が最小となる給電時間T(j)の算出方法の具体例を示す。なお、以下の具体的な算出方法は、あくまで一例を示すものであり、給電時間の算出方法をこれに限定されるものではない。
まず、n=2、すなわち周波数セットが2つの場合は総給電時間最小条件を満たす給電時間T(j)の算出方法を、図3を参照しながら説明する。周波数セットが2つの場合は総給電時間最小条件を満たす給電時間T(j)の厳密解のうち一つを代数的解法で求めることができる(但し、総給電時間最小条件の厳密解は一つとは限らない)。n=2の場合、(1)式は、(2)式で表すことができる。(2)式の両辺を等しいとすると、(3)式が成立する。
まず、(3)式の給電時間T(2)に0を代入した場合のi行目(1≦i≦m)の方程式に対する解T(1)=P(i)/R(i,1)を算出しT(1;1;i)とする(ステップ150)。但し、受電電力R(i,1)=0の場合は算出対象外とする。次に、(3)式の給電時間T(1)に0を代入した場合のi行目(1≦i≦m)の方程式に対する解T(2)=P(i)/R(i,2)を算出しT(2;2;i)とする(ステップ151)。但し、受電電力R(i,2)=0の場合は算出対象外とする。さらに、(3)式のi1行目及びi2行目(1≦i1≦m,1≦i2≦m,i1≠i2)の連立方程式に対する解T(1)及びT(2)を算出し、T(1;3;i1,i2)及びT(2;3;i1,i2)とする(ステップ152)。但し、連立方程式が解なし、又は不定の場合、並びに、解T(1;3;i1,i2)、T(2;3;i1,i2)のいずれか一方が負となる場合は対象外とする。
続いて、対象外を除いた上述の解の給電時間[T(1;1;i),0]、[0,T(2;2,i)]、及び[T(1;3;i1,i2),T(2;3;i1,i2)]の全てをそれぞれ、(2)式に代入し、不等式を満たすか否かを判定する(ステップ154)。(2)式の不等式を満足する解の中で、T(1)+T(2)が最小となるものが、総給電時間最小条件の厳密解の一つであり、「給電実施フェーズ」の給電方法に用いれば良い。
n≧3の場合には、総給電時間最小条件を満たす各周波数セットの給電時間T(j)の厳密解を代数的解法で算出することは困難である。以下、総給電時間最小条件の給電時間を算出する第2の具体例として、逐次的解法によって近似解を算出する方法を説明する。以下で説明する近似解を算出する逐次的解法の例は、「山登り法」を用いた例であるが、逐次的解法による給電時間の算出方法は、これに限定されるものではない。また、当然ながら、以下に説明する開放は、n=2の場合も適用可能なものである。
図4は、第1の実施形態における逐次的解法による近似解を用いた「給電実施フェーズ」の給電方法の決定手順を示すフローチャートである。図5は、その決定手順のうち、給電時間の初期値の算出方法を示すフローチャートである。なお、上述したように、図4及び図5の処理は一例であり、これに限定されるものではない。
近似解を徐々に探索していく逐次的解法の場合、探索の初期値が必要となる。そのため、まず、周波数・時間決定部8は、給電時間T(j)の初期値T_ini(j)を算出する(図4のステップS200)。以下では、給電時間T(j)の初期値T_ini(j)を算出する方法の具体例を図5を参照しながら説明する。給電時間T(j)の初期値T_ini(j)の算出でも、終了条件を満たすまで、ループ処理の繰返しが実行される。
まず、周波数・時間決定部8は、給電が必要な各受電装置11−i(iは1〜m)の残存所要給電量Q(i)というパラメータを所要給電量P(i)に初期化すると共に、周波数セットj(k)を適用する順番(言い換えると、後述するループ処理の繰り返し数)を規定するパラメータkを初期値0に設定する(ステップ250、251)。その後、周波数・時間決定部8は、ステップ252〜257でなるループ処理を繰返す。
ループ処理に入ると、周波数・時間決定部8は、パラメータkをインクリメントした後(ステップ252)、給電が必要な(すなわち、Q(i)>0)全ての受電装置11−iの受電電力R(i,j(k))の合計が最も大きい周波数セットを選択し、番号をj(k)とする(ステップ253)。給電が必要な各受電装置11−iに関して、ステップ253で求めた周波数セットj(k)を用いた際の給電時間T(j(k);4;i)をそれぞれ算出する(ステップ254)。なお、給電が必要ない受電装置(すなわち、Q(i)≦0の受電装置)に関しては算出不要である。次に、周波数・時間決定部8は、ステップ254で算出した給電時間の中で最小の給電時間T(j(k);5)=min(T(j(k);4;i))を選択する(ステップ255)。給電が必要な全ての受電装置(この時点でQ(i)>0の受電装置の全て)に対して、ステップ253で選択した周波数セットj(k)を用いて、ステップ255で選択した最小給電時間T(j(k);5)だけ給電した場合の給電量R(i,j(k))×T(j(k);5)をそれぞれ算出し、それまでの残存所要給電量Q(i)から引いて、新たな残存所要給電量Q(i)を算出する(ステップ256)。但し、新たな残存所要給電量Q(i)の算出結果が負又は0となった受電装置は「給電の必要なし」(Q(i)=0が「給電の必要なし」を表している)とする。周波数・時間決定部8は、全ての受電装置11−1〜11−mが「給電の必要なし」となるまで、ステップ252〜256を繰り返し(ステップ257)、各繰り返し時の周波数セットj(k)及び給電時間T(j(k);5)を記憶する(ステップ255、256参照)。
全ての受電装置11−1〜11−mが「給電の必要なし」となったら、周波数・時間決定部8は、同一の周波数セットj(k)に関する給電時間T(j(k);5)の合計を算出し、給電時間T(j)の初期値T_ini(j)とする(ステップ258)。すなわち、(4)式に従って、給電時間T(j)の初期値T_ini(j)を算出する。
次に、第1の実施形態における逐次的解法による近似解を用いた「給電実施フェーズ」の給電方法の決定手順を、図4を参照しながら説明する。
周波数・時間決定部8は、周波数セットjを適用した給電時間T(j)の初期値T_ini(j)を上述のように算出すると共に(ステップ200)、後述するループ処理の繰り返し数を表すパラメータhを初期値0に設定する(ステップ201)。そして、ループ処理に入る。ここで、給電時間T(j)の近似解を探索する際の時間分解能は順次細かくしていくこととし、h回繰り返し時の時間分解能dt(h)をdt(h)=dt(1)÷L(h−1)とする(1≦h≦h_max,L≧2)。すなわち、図4では、時間分解能dt(h)の更新ステップを記載していないが、ループ処理が繰り返される毎に、時間分解能dt(h)は更新されている。
ループ処理に入ると、周波数・時間決定部8は、パラメータhをインクリメントした後(ステップ202)、パラメータhが1の場合(1回目の繰り返し時)の初期値T(j;6;1)には、上述のように算出した初期値T_ini(j)を設定し(ステップ204)、パラメータhが2以上の場合の初期値T(j;6;h)には(h−1)回目の最終的な近似解T(j;8;h−1)を初期値に設定する(ステップ205)。次に、周波数・時間決定部8は、各周波数セットjの初期値T(j;6;h)を時間分解能dt(h)の整数倍N(j;h)となるように変換する(ステップ206)。すなわち、(5)式に従った演算を実行する。
次に、周波数・時間決定部8は、各周波数セットjに対し、(5)式で得た整数N(j;h)を利用し、時間分解能の何倍の時間を適用するかの探索候補N’(j;h)を決定する(ステップ207)。N(j;h)を中心とした探索範囲をdN(≧1)とすると、各周波数セットjの探索候補N’(j;h)は、N(j;h)−dN,N(j;h)−dN+1,…,N(j;h),…,N(j;h)+dN−1,N(j;h)+dNとなる。但し、給電時間T(j)が0以上であるから、探索候補N’(j;h)も0以上のみを対象とすれば良く、0未満の探索候補は対象外とする。
総給電時間最小条件の近似解と成り得るのは、各周波数セットjの探索候補N’(j;h)の組み合わせの中で、探索候補の合計が、(5)式で得られたN(j;h)の合計よりも小さくなるもののみである。そこで、周波数・時間決定部8は、この条件を満たす探索候補の組み合わせを順次抽出し(ステップ208、209)、各周波数セットについて、時間分解能の抽出された組み合わせの探索候補倍の時間を適用した場合に、(1)式を満足するか否かを判定する(ステップ210)。すなわち、抽出した探索候補の組み合わせに対して、T(j;7;h)=N’(j;h)・dt(h)を算出し、T(j;7;h)を(1)式のT(j)に代入し、(1)式を満足するか否かを判定すれば良い。
抽出した探索候補の組み合わせの中から(1)式を満足するものが見つかったら、周波数・時間決定部8は、それらを新たな時間分解能の適用中心回数N(j;h)とし(ステップ211)、ステップ207からの手順を繰り返す。
一方、ステップ208〜210のループ処理を繰り返し、探索候補の新たな組み合わせを抽出し得なくなった場合には、言い換えると、抽出された探索候補の組み合わせの全てが(1)式を満足しない場合には、周波数・時間決定部8は、そのときのN(j;h)から、周波数セットjに係る新たな給電時間T(j;8;h)=N(j;h)・dt(h)を算出し(ステップ212)、この新たな給電時間T(j;8;h)を繰り返しh回目の最終的な近似解として、上述したステップ202からの手順を繰り返す。
繰り返し上限回数(h_max)目の最終的な近似解T(j;8;h_max)を算出したら(ステップ213)、その値を総給電時間最小条件の給電時間T(j)の逐次的解法による近似解とする(ステップ214)。
なお、周波数・時間決定部8の「給電方法決定フェーズ」の際に決定する「給電実施フェーズ」における給電方法の決定手順の上述した説明では、(2)式のP(i)として、各所要給電量情報S9から得られる、それぞれの受電装置11−1〜11−mの所要給電量をそのまま用いている場合を説明した。しかし、受電装置11−1〜11−mの所要給電量を加工して適用するようにしても良い。例えば、先に給電を開始した受電装置の給電を優先させたい場合など、複数の受電装置11−1〜11−m間で優先度を付けたいときには、各所要給電量情報S9から得られる所要給電量に重みを付けた上で給電方法を決定しても良い。例えば、優先度の高い受電装置11−Hに関しては所要給電量情報S9から得られる所要給電量をそのまま用い、優先度の低い受電装置11−Lに関しては所要給電量情報S9から得られる所要給電量から、ある規則に従った量(例えば、固定量であっても良く、所要給電量の所定割合であっても良い)だけ減らした上で給電方法を決定するようにしても良い。
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムの動作を説明する。上述したように、第1の実施形態のワイヤレス電力伝送システムは、送電装置1から複数の受電装置11−1〜11−mへ送電した際の各受電装置11−1〜11−mの受電電力を測定し、それらの値と各受電装置11−1〜11−mの必要な給電量(所要給電量)から給電方法を決定する「給電方法決定フェーズ」と、決定した給電方法に従い給電を実施する「給電実施フェーズ」を繰り返す。
まず、「給電方法決定フェーズ」の動作を、図6及び図7のフローチャートを参照しながら説明する。図6及び図7では、受電装置11が1つであるように記載しているが、受電装置11(11−1〜11−m)が複数存在する場合は、全ての受電装置11−1〜11−mが図6及び図7に記載の受電装置と同様に動作する。
最初に、送電装置1の周波数・時間決定部8は、送電装置1側の有限個の発振周波数候補及び共振周波数候補、並びに、受電装置11側の有限個の共振周波数候補及び整流周波数候補の中から、各々1つ選択した周波数セットを有限個生成する(ステップ300)。周波数・時間決定部8は、生成した有限個の周波数セットの候補の中から順に選択して、制御情報S6を生成し、供給電力制御部5、発振周波数制御部6及び共振周波数制御部7へ与えると同時に、制御情報S7を生成し送信部9へ与える(ステップ301、302)。制御情報S7が与えられた送信部9は、制御情報S7に基づいて無線信号S11を生成し、送信アンテナを介して全ての受電装置11−1〜11−mの受信部19へ送信する(ステップ303)。
各受電装置11−1〜11−mの受信部19は、受信アンテナを介して、送電装置1の送信部9から送信された無線信号S11を受信し、無線信号S11に基づいて、制御情報S19及び制御情報S26を生成し、それぞれ、共振周波数制御部16及び整流周波数制御部21、並びに、受信電力検出部17へ与える(ステップ304)。
制御情報S6が与えられた送電装置1の供給電力制御部5は、制御情報S6の中の送電開始のタイミングに従い、電源2の電力供給を開始するための制御信号S3を生成し、電源2へ与える(ステップ305)。制御情報S6が与えられた発振周波数制御部6は、制御情報S6の中の送電開始のタイミングに従い、制御情報S6の中の発振周波数の値に発振部3の発振周波数を切り替えるための制御信号S4を生成し、発振部3へ与える(ステップ306)。制御情報S6が与えられた共振周波数制御部7は、制御情報S6の中の送電開始のタイミングに従い、制御情報S6の中の共振周波数の値に共振部4の共振周波数を切り替えるための制御信号S5を生成し、共振部4へ与える(ステップ307)。
制御情報S19が与えられた各受電装置11−1〜11−mの共振周波数制御部16は、制御情報S19の受電開始のタイミングに従い、制御情報S19の中の共振周波数の値に共振部12の共振周波数を切り替えるための制御信号S16を生成し、共振部12へ与える(ステップ308)。制御情報S19が与えられた整流周波数制御部21は、制御情報S19の中の受電開始のタイミングに従い、制御情報S19の中の整流周波数の値に整流部13の整流周波数を切り替えるための制御信号S24を生成し、整流部13へ与える(ステップ309)。
制御信号S3が与えられた送電装置1の電源2は、所定の電力で電気エネルギーS1を発振部3へ供給開始する(ステップ310)。制御信号S4が与えられた発振部3は、有限個の発振周波数候補の中から1つの発振周波数を選択し、電源2から供給された電気エネルギーS1を、選択した発振周波数で電磁界又は電気エネルギーS2に変換して共振部4へ伝達する(ステップ311)。制御信号S5が与えられた共振部4は、有限個の共振周波数候補の中から1つの共振周波数を選択し、発振部3から受けた電磁界又は電気エネルギーS2を、選択した共振周波数で電磁界エネルギーS10に変換して全ての受電装置11−1〜11−mへ送電する(ステップ312)。
制御信号S16が与えられた各受電装置11−1〜11−mの共振部12は、有限個の共振周波数候補の中から1つの共振周波数を選択し、送電装置1の共振部4から受けた電磁界エネルギーS10を、選択した共振周波数を用いて電磁界又は電気エネルギーS13に変換して整流部13へ伝達する(ステップ313)。制御信号S24が与えられた整流部13は、有限個の整流周波数候補の中から1つの整流周波数を選択し、共振部12から受けた電磁界又は電気エネルギーS13を、選択した整流周波数を用いて整流し、電気エネルギーS14に変換して蓄電部14へ供給する(ステップ314)。また、整流部13は、受電時の受電電力の値を受電電力値S17として受電電力検出部17へ与える(ステップ315)。
制御情報S26(ステップ304参照)が与えられた受電電力検出部17は、制御情報S26の中の受電開始タイミング及び時間をもとに適当なタイミングで、整流部13から与えられた受電電力値S17を検出し、受電電力情報S20として送信部20へ与える(ステップ316)。送信部20は、受電電力検出部17から与えられた受電電力情報S20をもとに無線信号S12を生成し、送信アンテナを介して送電装置1の受信部10へ送信する(ステップ317)。
送電装置1の受信部10は、受信アンテナを介して複数の受電装置11−1〜11−mの送信部20から送信された無線信号S12を受信し、無線信号S12をもとに各受電装置11−1〜11−mの受電電力情報S8を生成し、周波数・時間決定部8へ与える(ステップ318)。周波数・時間決定部8は、受信部10から与えられた各受電装置11−1〜11−mについての受電電力情報S8を、選択した周波数セットと共に記憶する(ステップ319)。
周波数・時間決定部8は、周波数セットを選択し、その周波数セットの場合における各受電装置11−1〜11−mについての受電電力情報S8を取り込んで記憶する処理を、ステップ300で生成した有限個の周波数セットの全てについて繰り返す。
各受電装置11−1〜11−mの蓄電部14はそれぞれ、整流部13から供給された電気エネルギーS14を蓄電し、接続された負荷15(1つである必要はない)に電気エネルギーS15を供給する(ステップ320)。負荷15は、蓄電部14に接続され、供給される電気エネルギーS15を消費する(ステップ321)。また、蓄電部14は、蓄電量、未蓄電量(完全に蓄電した場合の蓄電量と蓄電量との差)、負荷15の消費電力量等をもとに所要給電量を決定し、所要給電量値S18として所要給電量検出部18へ与える(ステップ322)。
送電装置1の周波数・時間決定部8は、全ての周波数セット候補に対する全ての受電装置11−1〜11−mから受電電力情報S8を記憶したら、全ての受電装置11−1〜11−mへの所要給電量情報要求に関する制御情報S25を生成し送信部9へ与える(ステップ323)。制御情報S25が与えられた送信部9は、制御情報S25をもとに無線信号S11を生成し、送信アンテナを介して全ての受電装置11−1〜11−mの受信部19へ送信する(ステップ324)。
各受電装置11−1〜11−mの受信部19は、受信アンテナを介して送電装置1の送信部9から送信された無線信号S11を受信し、無線信号S11をもとに制御情報S27を生成し、所要給電量検出部18へ与える(ステップ325)。このとき、所要給電量検出部18は、蓄電部14から与えられた所要給電量値S18を検出し所要給電量情報S21として送信部20へ与える(ステップ326)。所要給電量情報S21が与えられた送信部20は、所要給電量情報S21をもとに無線信号S12を生成し、送信アンテナを介して送電装置1の受信部10へ送信する(ステップ327)。
送電装置1の受信部10は、受信アンテナを介して全ての受電装置11−1〜11−mの送信部20から送信された無線信号S12をそれぞれ受信し、無線信号S12をもとに受電装置11−1〜11−mの所要給電量情報S9を生成し、周波数・時間決定部8へ与える(ステップ328)。周波数・時間決定部8は、受信部10から与えられた各受電装置11−1〜11−mについての所要給電量情報S9を全て記憶する(ステップ329)。
最後に、送電装置1の周波数・時間決定部8は、記憶した各受電装置11−1〜11−mの各周波数セットに対する受電電力情報S8や各受電装置11−1〜11−mの所要給電量情報S9を用いて、上述した手順で「給電実施フェーズ」における給電方法、すなわち、有限個の周波数セット(送電側の発振周波数、共振周波数、受電側の共振周波数、整流周波数の組み合わせ)に対する給電(送電及び受電)タイミング及び時間を決定する(ステップ330)。
次に、第1の実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムの「給電実施フェーズ」の動作を、図8のフローチャートを参照しながら説明する。図8では、受電装置11が1つであるように記載しているが、受電装置11(11−1〜11−m)が複数存在する場合は、全ての受電装置11−1〜11−mが図8に記載の受電装置と同様に動作する。
「給電実施フェーズ」では、送電装置1の周波数・時間決定部8は、最初に、上述した「給電方法決定フェーズ」で決定した給電方法に従い、制御情報S22を生成し給電電力制御部5、発振周波数制御部6及び共振周波数制御部7へ与えると共に、制御情報S23を生成し送信部9へ与える(ステップ350)。この処理は、決定した給電方法におけるいずれかの周波数セットに対して実行される。制御情報S23が与えられた送信部9は、制御情報S23をもとに無線信号S11を生成し、送信アンテナを介して全ての受電装置11−1〜11−mの受信部19へ送信する(ステップ351)。
各受電装置11−1〜11−mの受信部19はそれぞれ、受信アンテナを介して送電装置1の送信部9から送信された無線信号S11を受信し、無線信号S11をもとに制御情報S28を生成し、共振周波数制御部16及び整流周波数制御部21へ与える(ステップ352)。
制御情報S22が与えられた送電装置1の供給電力制御部5は、制御情報S22の中の送電開始のタイミングに従い、電源2の電力供給を開始するための制御信号S3を生成し、電源2へ与える(ステップ353)。制御情報S22が与えられた発振周波数制御部6は、制御情報S6の中の送電開始のタイミングに従い、制御情報S22の中の発振周波数の値に発振部3の発振周波数を切り替えるための制御信号S4を生成し、発振部3へ与える(ステップ354)。制御情報S22が与えられた共振周波数制御部7は、制御情報S22の中の送電開始のタイミングに従い、制御情報S22の中の共振周波数の値に共振部4の共振周波数を切り替えるための制御信号S5を生成し、共振部4へ与える(ステップ355)。
各受電装置11−1〜11−mの制御情報S28が与えられた共振周波数制御部16は、制御情報S28の受電開始のタイミングに従い、制御情報S28の中の共振周波数の値に共振部12の共振周波数を切り替えるための制御信号S16を生成し、共振部12へ与える(ステップ356)。制御情報S28が与えられた整流周波数制御部21は、制御情報S28の中の受電開始のタイミングに従い、制御情報S28の中の整流周波数の値に整流部13の整流周波数を切り替えるための制御信号S24を生成し、整流部13へ与える(ステップ357)。
制御信号S3が与えられた送電装置1の電源2は、所定の電力で電気エネルギーS1を発振部3へ供給開始する(ステップ358)。制御信号S4が与えられた発振部3は、有限個の発振周波数候補の中から1つの発振周波数を選択し、電源2から供給された電気エネルギーS1を、選択した発振周波数で電磁界又は電気エネルギーS2に変換して共振部4へ伝達する(ステップ359)。制御信号S5が与えられた共振部4は、有限個の共振周波数候補の中から1つの共振周波数を選択し、発振部3から受けた電磁界又は電気エネルギーS2を、選択した共振周波数で電磁界エネルギーS10に変換して全ての受電装置11−1〜11−mへ送電する(ステップ360)。
各受電装置11−1〜11−mの制御信号S16が与えられた共振部12は、有限個の共振周波数候補の中から1つの共振周波数を選択し、送電装置1の共振部4から受けた電磁界エネルギーS10を、選択した共振周波数を用いて電磁界又は電気エネルギーS13に変換して整流部13へ伝達する(ステップ361)。制御信号S24が与えられた整流部13は、有限個の整流周波数候補の中から1つの整流周波数を選択し、共振部12から受けた電磁界又は電気エネルギーS13を、選択した整流周波数を用いて整流し、電気エネルギーS14に変換して蓄電部14へ供給する(ステップ362)。
各受電装置11−1〜11−mの蓄電部14は、整流部13から供給された電気エネルギーS14を蓄電し、接続された負荷15(1つである必要はない)に電気エネルギーS15を供給する(ステップ363)。負荷15は、蓄電部14に接続され供給される電気エネルギーS15を消費する(ステップ364)。
周波数・時間決定部8は、決定した給電方法で採用した全ての周波数セットでの給電が終了したか否かを判別し、(ステップ365)、全ての周波数セットでの給電が終了していない場合には、上述したステップ350に戻り、一方、全ての周波数セットでの給電が終了した場合には、「給電実施フェーズ」の動作を終了する。
なお、図6〜図8では、給電の有無に関わらず、負荷15の電力消費、及びそれに必要な蓄電部14からの電力供給が行われている場合を示したが、例えば、負荷15の稼動時間以外に給電を実施する形のように、電力消費と給電が分かれて行われる場合でも、第1の実施形態の技術思想は適用可能である。
また、図6及び図7の「給電方法決定フェーズ」の動作では、受電電力情報S8を収集した後、所要給電量情報S9を収集して、「給電実施フェーズ」における給電方法を決定しているが、第1の実施形態の動作はこれに限定されるものではない。例えば、複数の受電装置11の受電電力の時間的変化が緩やかな場合、受電電力情報S8の収集を頻繁に実施しない形をとっても良い。
第1の実施形態の動作では、「給電方法決定フェーズ」及び「給電実施フェーズ」を分けて説明したが、上記2つのフェーズを交互に実施しても、同時に実施しても良い。ここでいう「同時」の動作例として、図2から図5に示したような「給電方法決定フェーズ」における受電電力情報S8を収集する動作時以外、すなわち、所要給電量情報S9を収集する動作時や給電方法の決定手順を行っているときは、送電装置1の共振部4から電磁界エネルギーS10の送電は可能なので、「給電実施フェーズ」の動作を先行して実施する方法を挙げることができる。但し、この場合、「給電方法決定フェーズ」で決定した給電方法を実施するのは、同時に実施した「給電実施フェーズ」の一つ後の「給電実施フェーズ」となる。他の「同時」の動作例として、「給電方法決定フェーズ」における受電電力情報S8の収集時間を短くするために、「給電実施フェーズ」の際の給電中に受電電力情報S8を取得する方法を挙げることができる。
図4及び図5の「給電方法決定フェーズ」給電方法の決定手順における近似解を算出する処理が、所定の「給電方法決定フェーズ」の上限時間を越えてしまった場合、処理を中断し収束途中の近似解の近似解を用いて給電方法を決定するようにしても良い。
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、位置、周辺構造物の異なる複数の受電装置が存在する場合にも、給電が可能であり、各受電装置に接続された負荷の消費電力を考慮した形で、全ての受電装置へ必要な電力を適切に短時間で伝送することができる。
(B)第2の実施形態
次に、本発明によるワイヤレス電力伝送システム、送電装置及び給電制御プログラムの第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。第2の実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムは、第1の実施形態のように送電装置の発振部及び共振部が1個ではなく、複数個で構成されているものである。受電装置は、第1の実施形態と同様なものである。
(B−1)第2の実施形態の構成
図9は、第2の実施形態における送電装置の構成を示すブロック図であり、第1の実施形態に係る図1との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。図9は、送電装置の発信部及び共振部が2個の場合を示しているが、3個以上あっても良い。
以下、第1の実施形態における送電装置と異なる部分を中心に説明する。
この第2の実施形態の場合、電源2は、供給電力制御部5から与えられた制御信号S3に従い所定の電力で電気エネルギーS1を発振部3−1又は3−2へ供給する。
2つの発振部3−1及び3−2はそれぞれ、発振周波数制御部6から与えられた制御信号S4に従い有限個の発振周波数候補の中から1つの発振周波数を選択し、電源2から供給された電気エネルギーS1を、選択した発振周波数で電磁界又は電気エネルギーS2に変換して、対応する共振部4−1、4−2へ伝達する。2つの発振部3−1及び3−2は、例えば、有限個の発振周波数候補が異なるもの(なお、オーバーラップしていても良い)、言い換えると、発振周波数の可変範囲が異なるものである。そのため、2つの発振部3−1及び3−2によって、受電電力が低い位置の受電装置や、周辺構造物の影響が大きい受電装置など、多様な受電装置に適した発振周波数をも発振周波数候補に含めることができる。両発振部3−1及び3−2が同時に伝達すると相互に干渉し伝達の効率が劣化する可能性があるため、基本的には同時に伝達することはないようにする。しかし、同時に伝達する場合も、本発明の実施形態となる。
2つの共振部4−1及び4−2はそれぞれ、共振周波数制御部7から与えられた制御信号S5に従い有限個の共振周波数候補の中から1つの共振周波数を選択し、発振部3から受けた電磁界又は電気エネルギーS2を、選択した共振周波数で電磁界エネルギーS10に変換して全ての受電装置11−1〜11−mへ送電する。
例えば、2つの共振部4−1及び4−2は、有限個の共振周波数候補が同様なものであっても良い。送電装置からの距離等、受電装置の位置の違いや、周辺構造物による反射、回折によるフェージングの影響で受電電力が小さくなってしまうことを、異なる位置に配置した複数の共振部を用いることで回避することができる。すなわち、受電装置は、少なくとも一方の共振部からの供給電力を受電できるようにし、受電電力の低下を防止することができる。また、2つの発振部3−1及び3−2の発振周波数候補も、同様なものであっても良い。また例えば、2つの共振部4−1及び4−2は、有限個の共振周波数候補が異なるもの(なお、オーバーラップしていても良い)、言い換えると、共振周波数の可変範囲が異なるものであっても良い。共振部4−1及び4−2が電磁界エネルギーS10の指向性を有するものである場合には、共振部4−1による電磁界エネルギーS10の指向性と、共振部4−2による電磁界エネルギーS10の指向性とが相互に補完するものであっても良い(この場合であれば、共振周波数の可変範囲が同様であっても良い)。そのため、2つの共振部4−1及び4−2によって、受電電力が低い位置の受電装置や、周辺構造物の影響が大きい受電装置など、多様な受電装置に適した共振周波数をも共振周波数候補に含めることができる。両共振部4−1及び4−2が同時に伝達すると相互に干渉し送電の効率が劣化する可能性があるため、基本的には同時に伝達することはないようにする。しかし、同時に伝達する場合も、本発明の実施形態となる。
供給電力制御部5は、第1の実施形態のものと同様なものである。
発振周波数制御部6は、周波数・時間決定部8から与えられた制御情報S6又はS22に従い、2つの発振部3−1及び3−2の中から伝達する発振部の選択と発振周波数を切り替えるための制御信号S4を生成し、発振部3−1及び3−2へ与えるものである。
共振周波数制御部7は、周波数・時間決定部8から与えられた制御情報S6又はS22に従い、2つの共振部4−1及び4−2の中から送電する共振部の選択と共振周波数を切り替えるための制御信号S5を生成し、共振部4−1及び4−2へ与えるものである。
周波数・時間決定部8Aは、概ね第1の実施形態と同様なものである。第1の実施形態と異なる点は、以下の通りである。
第2の実施形態では、周波数・時間決定部8Aは、「給電方法決定フェーズ」において、送電装置1A側の有限個の発振部候補、発振周波数候補、共振部候補及び共振周波数候補、並びに、受電装置11側の共振周波数候補及び整流周波数候補の中から、各々1つ選択した組み合わせ(以降、周波数セット2と呼ぶ)を有限個生成し、「給電実施フェーズ」で適用する周波数セット2の組を決定する(図2〜図5参照)。周波数セット2に発振部候補や共振部候補が含まれている点が、第1の実施形態と異なっている。「給電実施フェーズ」で適用する周波数セット2の組を決定する方法は、第1の実施形態と同様である。但し、発振部3−1及び3−2に係る発振周波数候補が重複していなく、しかも、共振部4−1及び4−2に係る共振周波数候補が重複していない場合であれば、適用する周波数セットを決定する際には、発振部候補及び共振部候補を含まない周波数セットで決定し、決定した発振周波数候補や共振周波数候補に基づいて、利用する発振部及び共振部を定めるようにしても良い。また、周波数・時間決定部8Aは、「給電実施フェーズ」においては、「給電方法決定フェーズ」で決定した給電方法(使用周波数セット2、給電タイミング、時間)に従い、制御情報S22を生成し供給電力制御部5、発振周波数制御部6及び共振周波数制御部7へ与える。
送信部9及び受信部10は、第1の実施形態のものと同様なものである。
複数の受電装置11−1〜11−mの構成は第1の実施形態と同じである。第1の実施形態で周波数セットを用いていたのが、第2の実施形態では周波数セット2を用いている点が異なるが、この違いは送電装置1Aの構成が異なるためであるので、受電装置11−1〜11−mの構成は第1の実施形態と同じである。以下の動作説明において、受電装置11の構成に言及する際には、図1における符号を用いる。
なお、図9では、発振部及び共振部の両方が複数存在する場合を示しているが、共振部だけが複数存在しても良く、発振部だけが複数存在しても良い。
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、第2の実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムの動作を説明する。第2の実施形態のワイヤレス電力伝送システムも、「給電方法決定フェーズ」と「給電実施フェーズ」とを繰り返す。
まず、「給電方法決定フェーズ」の動作を、図10及び図11のフローチャートを参照し、第1の実施形態との相違点を明らかにしながら説明する。図10及び図11では、受電装置11が1つであるように記載しているが、受電装置11(11−1〜11−m)が複数存在する場合は、全ての受電装置11−1〜11−mが図10及び図11に記載の受電装置と同様に動作する。また、図10及び図11において、第1の実施形態に係る図6及び図7との同一、対応ステップには同一、対応符号を付して示している。
最初に、送電装置1Aの周波数・時間決定部8Aは、送電装置1A側の有限個の発振部候補、発振周波数候補、共振部候補及び共振周波数候補、並びに、受電装置11側の共振周波数候補及び整流周波数候補の中から、各々1つ選択した周波数セット2を有限個生成する(ステップ300A)。周波数・時間決定部8Aは、生成した有限個の周波数セット2の候補の中から順に選択して、制御情報S6を生成し、供給電力制御部5、発振周波数制御部6及び共振周波数制御部7へ与えると同時に、制御情報S7を生成し送信部9へ与える(ステップ301−2、302)。制御情報S7が与えられた送信部9は、制御情報S7をもとに無線信号S11を生成し、送信アンテナを介して全ての受電装置11−1〜11−mの受信部19へ送信する(ステップ303)。
各受電装置11−1〜11−mの受信部19は、受信アンテナを介して、送電装置1Aの送信部9から送信された無線信号S11を受信し、無線信号S11に基づいて、制御情報S19、並びに制御情報S26を生成し、それぞれ、共振周波数制御部16及び整流周波数制御部21、並びに、受信電力検出部17へ与える(ステップ304)。
制御情報S6が与えられた送電装置1Aの供給電力制御部5は、制御情報S6の中の送電開始のタイミングに従い、電源2の電力供給を開始するための制御信号S3を生成し、電源2へ与える(ステップ305)。制御情報S6が与えられた発振周波数制御部6は、制御情報S6の中の送電開始のタイミングに従い、制御情報S6の中の発振部の選択の値及び発振周波数の値に発振部3−1又は3−2の発振周波数を切り替えるための制御信号S4を生成し、発振部3−1及び3−2へ与える(ステップ306A)。制御情報S6が与えられた共振周波数制御部7は、制御情報S6の中の送電開始のタイミングに従い、制御情報S6の中の共振部の選択の値及び共振周波数の値に共振部4−1又は4−2の共振周波数を切り替えるための制御信号S5を生成し、共振部4−1及び4−2へ与える(ステップ307A)。
制御情報S19が与えられた各受電装置11−1〜11−mの共振周波数制御部16は、制御情報S19の受電開始のタイミングに従い、制御情報S19の中の共振周波数の値に共振部12の共振周波数を切り替えるための制御信号S16を生成し、共振部12へ与える(ステップ308)。制御情報S19が与えられた整流周波数制御部21は、制御情報S19の中の受電開始のタイミングに従い、制御情報S19の中の整流周波数の値に整流部13の整流周波数を切り替えるための制御信号S24を生成し、整流部13へ与える(ステップ309)。
制御信号S3が与えられた送電装置1Aの電源2は、所定の電力で電気エネルギーS1を発振部3へ供給開始する(ステップ310)。制御信号S4が与えられた発振部3−1又は3−2は、有限個の発振周波数候補の中から1つの発振周波数を選択し、電源2から供給された電気エネルギーS1を、選択した発振周波数で電磁界又は電気エネルギーS2に変換して、それぞれ共振部4−1又は4−2へ伝達する(ステップ311A)。制御信号S5が与えられた共振部4−1又は4−2は、有限個の共振周波数候補の中から1つの共振周波数を選択し、それぞれ発振部3−1又は3−2から受けた電磁界又は電気エネルギーS2を、選択した共振周波数で電磁界エネルギーS10に変換して全ての受電装置11−1〜11−mへ送電する(ステップ312A)。
制御信号S16が与えられた各受電装置11−1〜11−mの共振部12は、有限個の共振周波数候補の中から1つの共振周波数を選択し、送電装置1Aの共振部4から受けた電磁界エネルギーS10を、選択した共振周波数を用いて電磁界又は電気エネルギーS13に変換して整流部13へ伝達する(ステップ313)。制御信号S24が与えられた整流部13は、有限個の整流周波数候補の中から1つの整流周波数を選択し、共振部12から受けた電磁界又は電気エネルギーS13を、選択した整流周波数を用いて整流し、電気エネルギーS14に変換して蓄電部14へ供給する(ステップ314)。また、整流部13は、受電時の受電電力の値を受電電力値S17として受電電力検出部17へ与える(ステップ315)。
制御情報S26(ステップ304参照)が与えられた受電電力検出部17は、制御情報S26の中の受電開始タイミング及び時間をもとに適当なタイミングで、整流部13から与えられた受電電力値S17を検出し、受電電力情報S20として送信部20へ与える(ステップ316)。送信部20は、受電電力検出部17から与えられた受電電力情報S20をもとに無線信号S12を生成し、送信アンテナを介して送電装置1Aの受信部10へ送信する(ステップ317)。
送電装置1Aの受信部10は、受信アンテナを介して複数の受電装置11−1〜11−mの送信部20から送信された無線信号S12を受信し、無線信号S12をもとに各受電装置11−1〜11−mの受電電力情報S8を生成し、周波数・時間決定部8Aへ与える(ステップ318)。周波数・時間決定部8Aは、受信部10から与えられた各受電装置11−1〜11−mについての受電電力情報S8を、選択した周波数セット2と共に記憶する(ステップ319A)。
各受電装置11−1〜11−mの蓄電部14はそれぞれ、整流部13から供給された電気エネルギーS14を蓄電し、接続された負荷15(1つである必要はない)に電気エネルギーS15を供給する(ステップ320)。負荷15は、蓄電部14に接続され、供給される電気エネルギーS15を消費する(ステップ321)。また、蓄電部14は、蓄電量、未蓄電量(完全に蓄電した場合の蓄電量と蓄電量との差)、負荷15の消費電力量等をもとに所要給電量を決定し、所要給電量値S18として所要給電量検出部18へ与える(ステップ322)。
送電装置1Aの周波数・時間決定部8Aは、全ての周波数セット2の候補に対する全ての受電装置11−1〜11−mからの受電電力情報S8を記憶したら、全ての受電装置11−1〜11−mへの所要給電量情報要求に関する制御情報S25を生成し送信部9へ与える(ステップ323A)。制御情報S25が与えられた送信部9は、制御情報S25をもとに無線信号S11を生成し、送信アンテナを介して全ての受電装置11−1〜11−mの受信部19へ送信する(ステップ324)。
各受電装置11−1〜11−mの受信部19は、受信アンテナを介して送電装置1Aの送信部9から送信された無線信号S11を受信し、無線信号S11をもとに制御情報S27を生成し、所要給電量検出部18へ与える(ステップ325)。このとき、所要給電量検出部18は、蓄電部14から与えられた所要給電量値S18を検出し所要給電量情報S21として送信部20へ与える(ステップ326)。所要給電量情報S21が与えられた送信部20は、所要給電量情報S21をもとに無線信号S12を生成し、送信アンテナを介して送電装置1Aの受信部10へ送信する(ステップ327)。
送電装置1Aの受信部10は、受信アンテナを介して全ての受電装置11−1〜11−mの送信部20から送信された無線信号S12をそれぞれ受信し、無線信号S12をもとに受電装置11−1〜11−mの所要給電量情報S9を生成し、周波数・時間決定部8Aへ与える(ステップ328)。周波数・時間決定部8Aは、受信部10から与えられた各受電装置11−1〜11−mについての所要給電量情報S9を全て記憶する(ステップ329)。
最後に、送電装置1Aの周波数・時間決定部8Aは、記憶した各受電装置11−1〜11−mの各周波数セット2に対する受電電力情報S8や各受電装置11−1〜11−mの所要給電量情報S9を用いて、上述した手順(但し、周波数セットは周波数セット2に置き換え)で「給電実施フェーズ」における給電方法、すなわち、有限個の周波数セット2(送電側の発振部、発振周波数、共振部、共振周波数、受電側の共振周波数、整流周波数の組み合わせ)に対する給電(送電及び受電)タイミング及び時間を決定する(ステップ330A)。
次に、第2の実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムの「給電実施フェーズ」の動作を、図12のフローチャートを参照しながら説明する。図12では、受電装置11が1つであるように記載しているが、受電装置11(11−1〜11−m)が複数存在する場合は、全ての受電装置11−1〜11−mが図12に記載の受電装置と同様に動作する。また、図12において、第2の実施形態に係る図8との同一、対応ステップには同一、対応符号を付して示している。
「給電実施フェーズ」では、送電装置1Aの周波数・時間決定部8Aは、最初に、上述した「給電方法決定フェーズ」で決定した給電方法に従い、制御情報S22を生成し給電電力制御部5、発振周波数制御部6及び共振周波数制御部7へ与えると共に、制御情報S23を生成し送信部9へ与える(ステップ350)。制御情報S23が与えられた送信部9は、制御情報S23をもとに無線信号S11を生成し、送信アンテナを介して全ての受電装置11−1〜11−mの受信部19へ送信する(ステップ351)。
各受電装置11−1〜11−mの受信部19はそれぞれ、受信アンテナを介して送電装置1Aの送信部9から送信された無線信号S11を受信し、無線信号S11をもとに制御情報S28を生成し、共振周波数制御部16及び整流周波数制御部21へ与える(ステップ352)。
制御情報S22が与えられた送電装置1Aの供給電力制御部5は、制御情報S22の中の送電開始のタイミングに従い、電源2の電力供給を開始するための制御信号S3を生成し、電源2へ与える(ステップ353)。制御情報S22が与えられた発振周波数制御部6は、制御情報S6の中の送電開始のタイミングに従い、制御情報S22の中の発振部の選択の値及び発振周波数の値に発振部3−1又は3−2の発振周波数を切り替えるための制御信号S4を生成し、発振部3−1及び3−2へ与える(ステップ354A)。制御情報S22が与えられた共振周波数制御部7は、制御情報S22の中の送電開始のタイミングに従い、制御情報S22の中の共振部の選択の値及び共振周波数の値に共振部4−1又は4−2の共振周波数を切り替えるための制御信号S5を生成し、共振部4−1及び4−2へ与える(ステップ355A)。
各受電装置11−1〜11−mの制御情報S28が与えられた共振周波数制御部16は、制御情報S28の受電開始のタイミングに従い、制御情報S28の中の共振周波数の値に共振部12の共振周波数を切り替えるための制御信号S16を生成し、共振部12へ与える(ステップ356)。制御情報S28が与えられた整流周波数制御部21は、制御情報S28の中の受電開始のタイミングに従い、制御情報S28の中の整流周波数の値に整流部13の整流周波数を切り替えるための制御信号S24を生成し、整流部13へ与える(ステップ357)。
制御信号S3が与えられた送電装置1Aの電源2は、所定の電力で電気エネルギーS1を発振部3−1又は3−2へ供給開始する(ステップ358A)。制御信号S4が与えられた発振部3−1又は3−2は、有限個の発振周波数候補の中から1つの発振周波数を選択し、電源2から供給された電気エネルギーS1を、選択した発振周波数で電磁界又は電気エネルギーS2に変換して、対応する共振部4−1又は4−2へ伝達する(ステップ359A)。制御信号S5が与えられた共振部4−1又は4−2は、有限個の共振周波数候補の中から1つの共振周波数を選択し、対応する発振部3−1又は3−2から受けた電磁界又は電気エネルギーS2を、選択した共振周波数で電磁界エネルギーS10に変換して全ての受電装置11−1〜11−mへ送電する(ステップ360A)。
各受電装置11−1〜11−mの制御信号S16が与えられた共振部12は、有限個の共振周波数候補の中から1つの共振周波数を選択し、送電装置1Aの共振部4から受けた電磁界エネルギーS10を、選択した共振周波数を用いて電磁界又は電気エネルギーS13に変換して整流部13へ伝達する(ステップ361)。制御信号S24が与えられた整流部13は、有限個の整流周波数候補の中から1つの整流周波数を選択し、共振部12から受けた電磁界又は電気エネルギーS13を、選択した整流周波数を用いて整流し、電気エネルギーS14に変換して蓄電部14へ供給する(ステップ362)。
各受電装置11−1〜11−mの蓄電部14は、整流部13から供給された電気エネルギーS14を蓄電し、接続された負荷15(1つである必要はない)に電気エネルギーS15を供給する(ステップ363)。負荷15は、蓄電部14に接続され供給される電気エネルギーS15を消費する(ステップ364)。
周波数・時間決定部8は、決定した給電方法で採用した全での周波数セット2での給電が終了したか否かを判別し、(ステップ365A)、全ての周波数セット2での給電が終了していない場合には、上述したステップ350に戻り、一方、全ての周波数セット2での給電が終了した場合には、「給電実施フェーズ」の動作を終了する。
(B−3)第2の実施形態の効果
第2の実施形態によれば、発振部及び共振部のうち、少なくとも共振部を複数設け、複数有する部分の選択情報をも含む適当な周波数セット2を選択することにより、第1の実施形態のシステムで、受電電力が低い位置の受電装置や、周辺構造物による反射、回折などの伝搬環境の変動の影響を受ける受電装置などがあったとしても、そのような受電装置の受電電力を向上でき、より高い伝送効率の電力伝送が可能となる。
(C)第3の実施形態
次に、本発明によるワイヤレス電力伝送システム、送電装置及び給電制御プログラムの第3の実施形態を、図面を参照しながら説明する。第3の実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムは、第1の実施形態及び第2の実施形態のように所定の供給電力による一定の送電電力による給電ではなく、送電電力を制御し得るものである。受電装置は、第1の実施形態と同様なものである。
(C−1)第3の実施形態の構成
図13は、第3の実施形態における送電装置の構成を示すブロック図であり、第1の実施形態に係る図1との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。図13は、第1の実施形態から変更した場合を示しているが、第2の実施形態から変更するようにしても良い。
以下、第1の実施形態における送電装置と異なる部分を中心に説明する。
第3の実施形態の場合、電源2Bは、供給電力制御部5から与えられた制御信号S3Bに従い、調整した供給電力の値で電気エネルギーS1を発振部3へ供給するものである。
ここでは、電源2Bの供給電力を調整することで送電電力を制御するが、第3の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、パワーアンプのように、発振部3からの電磁界又はエネルギーS2を調整する機能を追加することで送電電力を制御するようにしても良い。
発振部3及び共振部4は、第1の実施形態のものと同様なものである。
供給電力制御部5Bは、周波数・時間決定部8Bから与えられた制御情報S6B又はS22Bに従い、調整された供給電力の値で電源2Bが電力供給の開始/終了をするための制御信号S3を生成し、電源2Bへ与えるものである。
発振周波数制御部6及び共振周波数制御部7は、第1の実施形態のものと同様なものである。
第3の実施形態の周波数・時間決定部8Bも、供給電力制御部5、発振周波数制御部6及び共振周波数制御部7へ与える制御情報S6Bを生成するが、制御情報S6Bが、「給電方法決定フェーズ」において選択した周波数セットに従い送電装置1Bが送電を行うタイミング、時間、供給電力、発振周波数及び共振周波数に関する情報である点は、第1の実施形態と異なっている。制御情報S6Bには、供給電力も含まれている。但し、各受電装置11−1〜11−mの各周波数セットにおける受電電力の値を収集する「給電方法決定フェーズ」においては、送電電力の値を一定とするため、供給電力は固定値Pcである。
周波数・時間決定部8Bは、「給電実施フェーズ」において、「給電方法決定フェーズ」で決定した給電方法(使用周波数セット、給電タイミング、時間、供給電力)に従い、制御情報S22Bを生成し、供給電力制御部5B、発振周波数制御部6及び共振周波数制御部7へ与えるが、制御情報S22Bに、供給電力が含まれている点が第1の実施形態と異なっている。すなわち、制御情報S22Bは、「給電実施フェーズ」で使用する各周波数セットに従い送電装置1Bが送電を行うタイミング、時間、供給電力、発振周波数及び共振周波数に関する情報である。
送信部9及び受信部10は、第1の実施形態のものと同様なものである。
複数の受電装置11−1〜11−mの構成は第1の実施形態と同じである。第3の実施形態は、第1の実施形態に送電電力制御の機能を追加したものであるが、この違いは送電装置1Bの構成にだけ表れ、受電装置11−1〜11−mの構成は第1の実施形態と同じである。以下の動作説明において、受電装置11の構成に言及する際には、図1における符号を用いる。
次に、周波数・時間決定部8Bの「給電方法決定フェーズ」の際に決定する「給電実施フェーズ」における給電方法、すなわち、有限個の周波数セット(送電側の発振周波数、共振周波数、受電側の共振周波数、整流周波数の組み合わせ)に対する給電(送電及び受電)タイミング及び時間、並びに、供給電力の決定手順を説明する。
図14は、第3の実施形態における「給電実施フェーズ」の給電方法の決定手順を示すフローチャートであり、第1の実施形態に係る図2と同一、対応ステップには同一符号を付して示している。
周波数・時間決定部8Bは、まず、所要給電量情報S9及び供給電力が固定値Pcのときの受電電力情報S8から、それぞれ所要給電量P(i)及び受電電力R(i,j)を決定し(ステップ100)、次に、(1)式を満足し、かつ、総給電時間ΣT(j)が最小となる給電時間T(j)を算出する(ステップ101)。給電時間T(j)の算出方法は、第1の実施形態で説明した方法と同じである。ステップ110及び111が、第1の実施形態に追加されている。
周波数・時間決定部8Bは、算出した給電時間T(j)の和である総給電時間ΣT(j)と、給電時間の和の上限値として設定された値T_tot_maxから、調整供給電力値Pm(=ΣT(j)/T_tot_max)を算出する(ステップ110)。次に、給電電力T(j)を調整供給電力値Pmで割った値T(j)/Pmを算出し、算出値T(j)/Pmに給電時間T(j)を置き換える(ステップ111)。
最後に、周波数・時間決定部8Bは、各周波数セットに対する給電タイミングを、算出した給電時間に従って給電期間が重ならないように順次決定する(ステップ102)。
以上の処理を行うことで、最初に算出した給電時間の和が、上限値T_tot_maxより大きい場合、供給電力、すなわち送電電力を増加させることで給電時間の和を上限値T_tot_maxまで減らすことが可能となり、上限値T_tot_maxより小さい場合、給電時間の和を伸ばすことで供給電力、すなわち送電電力を減少させることが可能となる。
(C−2)第3の実施形態の動作
次に、第3の実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムの動作を説明する。第3の実施形態のワイヤレス電力伝送システムも、「給電方法決定フェーズ」と「給電実施フェーズ」とを繰り返す。多くの動作に関する説明が第1の実施形態と共通するため、以下では異なる部分だけを説明する。
まず、第3の実施形態における「給電方法決定フェーズ」の動作を説明する。多くの動作ステップが第1の実施形態と共通するため、第1の実施形態の説明で用いた図6及び図7を参照して、第3の実施形態における「給電方法決定フェーズ」の動作を説明する。
ステップ300及び301は、第1の実施形態と同様である。
第3の実施形態においては、ステップ302が第1の実施形態から異なっている。周波数・時間決定部8Bは、生成した有限個の周波数セットの候補の中から順に選択して、「供給電力Pcの情報を加えて」制御情報S6Bを生成し供給電力制御部5、発振周波数制御部6及び共振周波数制御部7へ与える。
その後に行うステップ303は、第1の実施形態と同様である。受電装置11−1〜11−mにおけるステップ304は、第1の実施形態と同様である。
第3の実施形態においては、ステップ305が第1の実施形態から異なっている。制御情報S6Bが与えられた供給電力制御部5は、制御情報S6Bの中の送電開始のタイミングに従い、電源2Bが供給電力は固定値Pcで電力供給を開始するための制御信号S3Bを生成し、電源2Bへ与える。
ステップ306及び307は、第1の実施形態と同様である。受電装置11−1〜11−mが行うステップ308及び309も、第1の実施形態と同様である。
第3の実施形態においては、ステップ310が第1の実施形態から異なっている。制御信号S3Bが与えられた電源2Bは、供給電力Pcで電気エネルギーS1を発振部3へ供給開始する。
ステップ311及び312は、第1の実施形態と同様である。受電装置11−1〜11−mが行うステップ313〜317は、第1の実施形態と同様である。ステップ318及び319は、第1の実施形態と同様である。受電装置11−1〜11−mが行うステップ320〜321は、第1の実施形態と同様である。ステップ323及び324は、第1の実施形態と同様である。受電装置11−1〜11−mが行うステップ325〜327は、第1の実施形態と同様である。ステップ328及び329は、第1の実施形態と同様である。
第3の実施形態においては、ステップ330が第1の実施形態から異なっている。周波数・時間決定部8Bは、記憶した全ての受電装置11−1〜11−mの各周波数セットに対する受電電力情報S8及び所要給電量情報S9、並びに、供給電力Pcを用いて、上述した手順で「給電実施フェーズ」における給電方法、すなわち、有限個の周波数セット(送電側の発振周波数、共振周波数、受電側の共振周波数、整流周波数の組み合わせ)に対する給電(送電及び受電)タイミング及び時間、並びに、調整された供給電力Pmを決定する。
次に、第3の実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムの「給電実施フェーズ」の動作を説明する。多くの動作ステップが第1の実施形態と共通するため、第1の実施形態の説明で用いた図8を参照して、第3の実施形態における「給電実施フェーズ」の動作を説明する。
第3の実施形態においては、ステップ350が第1の実施形態から異なっている。周波数・時間決定部8Bは、「給電方法決定フェーズ」で決定した給電方法(周波数セット、供給電力Pm)に従い、制御情報S22Bを生成し給電電力制御部5B、発振周波数制御部6及び共振周波数制御部7へ与えると共に、制御情報S23を生成し送信部9へ与える。
ステップ351は、第1の実施形態と同様である。受電装置11−1〜11−mが行うステップ352は、第1の実施形態と同様である。
第3の実施形態においては、ステップ353が第1の実施形態から異なっている。制御情報S22Bが与えられた供給電力制御部5Bは、制御情報S22Bの中の送電開始のタイミングに従い、供給電力Pmで電源2Bが電力供給を開始するための制御信号S3Bを生成し、電源2Bへ与える。
ステップ354及び355は、第1の実施形態と同様である。受電装置11−1〜11−mが行うステップ356及び357は、第1の実施形態と同様である。
第3の実施形態においては、ステップ358が第1の実施形態から異なっている。制御信号S3Bが与えられた電源2Bは、供給電力Pmで電気エネルギーS1を発振部3へ供給開始する。
ステップ359及び360は、第1の実施形態と同様である。受電装置11−1〜11−mが行うステップ361〜364は、第1の実施形態と同様である。ステップ365は、第1の実施形態と同様である。
(C−3)第3の実施形態の効果
第3の実施形態によれば、送電電力(供給電力)を大きくすることで、給電時間を短くすることが可能となり、所定の給電時間内で給電が完了しない状況が発生することを防止することができる。また、第3の実施形態によれば、給電時間を必要以上に短くせずに、送電電力を小さくすることで、他の機器、システムへの干渉を抑制することが可能となる。
(D)他の実施形態
上記各実施形態の説明においても、種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
上記各実施形態では、受電装置の数が一定であるものを示したが、受電装置の数が時間と共に変化する場合でも、本発明の技術思想を適用することができる。例えば、「給電方法決定フェーズ」及び「給電実施フェーズ」に加えて、送電装置と複数の受電装置との通信リンクを確立する「通信リンク確立フェーズ」を追加し、受電装置の個数の時間的変化を送電装置が把握した上で、上述したいずれかの実施形態に処理を適用するようにしても良い。送電装置と複数の受電装置はいずれも、送信部及び受信部を有するので「通信リンク確立フェーズ」の通信を容易に実行することができる。
ここで、受電装置の数が変化する場合において、「給電実施フェーズ」で給電される受電装置の上限数を設けるようにしても良い。給電を希望する受電装置数が上限数を超えている場合には、所要給電量が多い方から、上限数の受電装置を給電対象とし、給電対象外の受電装置には所定時間だけスリープ状態になることを指示するようにしても良い。
上記各実施形態の図面においては、受電装置の各構成要素が近接して配備されているように示しているが、受電装置の一部の要素が、他の要素から離間して設けられていても良い。例えば、受電装置の共振部と送電装置の共振部との距離が所定距離以内になるように、受電装置の共振部が、他の構成要素から離れた位置に設けられたものであっても良い。
また、上記各実施形態の図面においては、送電装置の各構成要素が近接して配備されているように示しているが、送電装置の一部の要素が、他の要素から離間して設けられていても良い。例えば、給電に直接は関係しない周波数・時間決定部8、送信部9及び受信部10を、他の要素から離れた位置に設けるようにしても良い。
さらに、上記各実施形態においては、送電装置及び受電装置間の通信は無線で行うものを示したが、有線で行うものであっても良い。また、無線で行う場合も、送電装置及び受電装置間の直接的な通信に限定されない。例えば、携帯電話網を利用するような通信であっても良い。
上記各実施形態は、受電装置が複数台の場合に特に有効なものであるが、受電装置の数は複数台に限定されるものではない。
上記各実施形態の説明では、受電装置を有する装置の用途に言及しなかったが、受電装置を有する装置の用途としては、非特許文献1に記載のいずれの用途にも適用可能であり、さらに、ワイヤレス電力伝送を欲する装置であれば、本発明の技術思想を広く適用することができる。