JP5690386B2 - 織物による炭素繊維強化複合材料の成形方法 - Google Patents

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本発明は、繊維強化分野における、特に熱可塑性繊維糸を巻縫いした織物による炭素繊維強化複合材料の成形方法に関するものである。
本出願人は、自動車やモーターボートのボディ等を補強するのに、規格外で廃棄処分される光ファイバーを織物として製織し、有効にリサイクルすることを提案している。
規格外の廃棄処分される光ファイバーを利用すると、費用は格安となって好ましいが、光ファイバーは滑りやすいので天然や合成の繊維糸と絡ませて織物糸としており、また光ファイバーなので折曲したりすると、途中で切断することがあり、その用途は限定される。
また、使用する光ファイバーは、極細状で軽量であるが、多数本を組み合わせると軽量ではなくなってくる。
一方、軽量で強度が高いことから、炭素繊維の利用が航空機や自動車、ボート、スポーツ分野で行なわれている。たとえば、特開2003−20542号公報や特開10−102792号公報などのように炭素繊維糸を織物や布帛として航空機や構造物の補強用に利用することが提案されている。
実用新案登録第3115990号 特開2003−20542号公報 特開10−102792号公報
しかし、炭素繊維は、単繊維糸径が4〜20μmといった極細の繊維長30〜500mmといった短繊維と長繊維のものを数十本〜数千本サイジング剤等で付着して炭素繊維糸としているもので、織物とするときに単繊維糸がばらけたり、毛羽だったり、剥がれたりしやすく、また炭素繊維糸を織物としてもその厚さが薄いので何枚も重ね合わせなければならざず、その重ね合わせるのにプリプレグ工程等が必要となったりして相当の手間がかかるものであった。
そのため、炭素繊維糸にカバリング精紡機でカバリングすることも提案されているが、一本一本の炭素繊維糸にカバリングするもので、装置も大掛かりとなり、手間もかかり、またそのカバリングが伸縮しやすいもので品質が安定しにくいものであった。
本発明は、上記のような点に鑑みたもので、上記の課題を解決するために、オーバロックミシンやロックミシンのメローミシンでマルチフィラメントを束ねた炭素繊維束の1束ないし複数束に熱可塑性の合成繊維糸の掛合糸をループ状に巻縫い掛合して炭素繊維束糸を成形し、この成形した炭素繊維束糸を経糸および/または緯糸として所定の大きさの織物に作製し、作製した炭素繊維束糸の織物を加熱して熱可塑性の合成繊維糸の掛合糸を溶融させて炭素繊維強化複合材料を成形することを特徴とする織物による炭素繊維強化複合材料の成形方法を提供するにある。
また、マルチフィラメントを束ねた炭素繊維束の1束ないし複数束にロックミシンのメローミシンで2〜5mmピッチで熱可塑性の合成繊維糸の掛合糸をループ状に巻縫い掛合して炭素繊維束糸を成形して、この熱可塑性の合成繊維糸の掛合糸を巻縫いした炭素繊維束糸による織物を複数層重ね合わせることを特徴とする織物による炭素繊維強化複合材料の成形方法を提供するにある。
本発明の織物による炭素繊維強化複合材料の成形方法は、オーバロックミシンやロックミシンのメローミシンでマルチフィラメントを束ねた炭素繊維束の1束ないし複数束に熱可塑性の合成繊維糸の掛合糸をループ状に巻縫い掛合して炭素繊維束糸を成形することによって、オーバロックミシンやロックミシンのメローミシンでマルチフィラメントを束ねた炭素繊維束の1束ないし複数束を掛合糸でループ状に巻縫いでき、単繊維がばらけたり、毛羽立って、剥がれたりせずに、ループ状となった掛合糸でほとんど伸縮性のない炭素繊維束に弾力性を付与でき、経糸切れ、緯糸切れを起こすことなく、製織性が向上でき、また撚りがかからずに巻縫いすることができて、非常に細く折れやすい単炭素繊維糸を切断することなく巻縫いできて、炭素繊維糸の強度を低下させることを防止できて織物に製織することができる。
そして、この成形した炭素繊維束糸を経糸および/または緯糸として所定の大きさの織物に作製し、作製した炭素繊維束糸の織物を加熱して熱可塑性の合成繊維糸の掛合糸を溶融させることで、容易に樹脂を溶融させた炭素繊維強化複合材料を成形することができるものであり、成形工程の省力化がはかれる。
また、マルチフィラメントを束ねた炭素繊維束の1束ないし複数束であっても、撚りがかからずに簡単に巻縫いできて製織することができ、非常に細く折れやすい単炭素繊維糸を切断することなく、炭素繊維糸の強度を低下させることを防止できる炭素繊維強化複合材料を成形することができる。特に、被補強物に補強する場合に従来に比して少ない積層で補強でき、補強の手間を低減できて補強することができる。
またさらに、マルチフィラメントを束ねた炭素繊維束の1束ないし複数束にロックミシンのメローミシンで2〜5mmピッチで熱可塑性の合成繊維糸の掛合糸をループ状に巻縫い掛合して炭素繊維束糸を成形し、この熱可塑性の合成繊維糸の掛合糸を巻縫いした炭素繊維束糸による織物を複数層重ね合わせて巻縫いした炭素繊維糸による織物に成形することによって、できるだけ少ない積層として、上記のように樹脂を溶融させた炭素繊維糸の強度を低下させることを防止できる炭素繊維強化複合材料を成形することができる。
本発明の一実施例の炭素繊維糸の形成説明用図、 同上の炭素繊維糸のそれぞれの説明用断面図(a)、(b)、(c)、 同上の他の炭素繊維糸のそれぞれの説明用断面図(a)、(b)、 同上の織物の製造説明用図、 同上の炭素繊維束への掛合糸の巻縫い状態を示す拡大した撮影図、 同上の織物の積層状態説明用の説明図。
本発明の織物による炭素繊維強化複合材料の成形方法は、オーバロックミシンやロックミシンのメローミシンでマルチフィラメントを束ねた炭素繊維束の1束ないし複数束に熱可塑性の合成繊維糸の掛合糸をループ状に巻縫い掛合して炭素繊維束糸を成形し、この成形した炭素繊維束糸を経糸および/または緯糸として所定の大きさの織物に作製し、作製した炭素繊維束糸の織物を加熱して熱可塑性の合成繊維糸の掛合糸を溶融させて炭素繊維強化複合材料を成形することを特徴としている。
巻縫いした炭素繊維糸1は、図1のようにオーバーロックやロックミシンのメローミシン2を利用してマルチフィラメントを束ねた炭素繊維束3の1束ないし複数束をメローミシン2に供給し、この炭素繊維束3に熱可塑性の合成繊維糸の掛合糸4をループ状に巻縫い掛合して炭素繊維束糸として成形するようにしている。
マルチフィラメントを束ねた炭素繊維束3は、ポリアクリロニトリルのPAN系の炭素繊維や石油ピッチのピッチ系の炭素繊維などのものが利用でき、PAN系は樹脂をマトリックスとする複合材料として優れた特性を有するので、特に軽量構造用に適する。
炭素繊維束3のフィラメントは、直径が約7〜10μmといった極細であり、これらのフィラメントを上記したように1000〜12000本を束ねて0.数mm〜1mm位の太さとし、その際毛羽の発生を防止するのに少量の樹脂をコーティングするサイジング処理をしている。
炭素繊維束3は、1束毎に掛合糸4をループ状に巻縫い掛合できるが、3〜5束の複数束、好ましくは5〜20束毎に掛合糸4を巻縫い掛合するのが、炭素繊維糸1を太状ないし嵩高にできるものである。炭素繊維束3は、図2(a)のように1束であれば太状のものを、複数束の場合は図2(b)、(c)のように3束の3芯状や7束の7芯状、さらにこれらの外周部に軸対称に二重、三重状に配設してさらに太状ないし嵩高にすることもできる。
また、図3(a)、(b)のように炭素繊維束3の空隙に小径の炭素繊維束3を介添して軸対称状に型崩れしないように安定した密な状態にすることもできる。
掛合糸4は、ポリエチレンやポリプロピレン、アラミド等の丈夫な熱可塑性の合成繊維糸が使用でき、0.1〜10デニールの極細のものが炭素繊維束3に嵩高とならずに掛合できて蜜な炭素繊維糸1の織物に形成できて好ましいが、上記した太状や嵩高状の炭素繊維束3のものでは必要により100〜240デニールの適宜の太さの糸を使用することができる。また、掛合糸4は、メローミシン2に供給して2〜5mmピッチで炭素繊維束3に係合していくのが好ましく、かつ炭素繊維束3がばらけたり、毛羽だったり、剥がれたりするのを有効に防止できて好ましい。
このように巻縫いした炭素繊維糸1は、図4のように織物5とするのに経糸6および/または緯糸7に使用して平織、綾織等の所定の大きさの織物5を製織し、ばらけたり、毛羽だったり、剥がれたりするのを防止でき、かつほとんど伸縮性のない炭素繊維束3に弾力性を付与でき、また経糸切れ、緯糸切れなくて製織性を向上できる。
この炭素繊維束3は、1束以上でよいが、上記したように複数束とすることにより、所定の嵩高のものが迅速かつ容易にできて強度を高められて好ましい。特に、図3(a)、(b)のように炭素繊維束3の空隙に小径の炭素繊維束3を介添して密な状態のものが強度を高められて好ましい。なお、本発明の趣旨の範囲で適宜の太さのもので適宜の束数とすることができる。
上記した掛合糸4は、図1のようにロックミシンのメローミシン2に上記した炭素繊維束4を同時に供給して、搖動昇降するミシン針8の針糸9に掛合糸4と同一の糸の上糸10、下糸11をかがり縫いして巻縫いすることによって容易かつ迅速に得ることができる。
このようにして平織り等の所定の大きさの織物5を製織していくことができ、掛合糸4に熱可塑性繊維糸を使用することで、作製した炭素繊維糸1の織物5を加熱して容易に樹脂を溶融させた炭素繊維強化複合材料(CFRP)を成形することができ、成形工程の省力化ができる。織物5の成形材料は、用途によってその幅を適宜に決定できて装着して、従来のFRPやCFRPと同様に航空機や自動車、ボート、スポーツ分野や、土木、建築分野、通信装置、携帯電話、TV、医療機器、レーザー装置、その他の用途に対応して機械、装置、物品、構造物等の軽量、補強、電磁雑音防止などに有効に対処することができる。
図1以下は、本発明の実施例を示すもので、図1のようにマルチフィラメントを束ねた0.5mm径位の炭素繊維束3を図2(a)や(b)、(c)のように一束ないし複数束をメローミシン2に供給し、メローミシンを駆動してミシン針8を搖動、昇降して140デニールのポリプロピレンの熱可塑性の合成繊維糸の針糸9を上糸10、下糸11を介して同様の合成繊維糸の掛合糸4に3mmピッチで、図5のようにループ状に掛合して炭素繊維束3に撚りがかからずに、したがって単炭素繊維糸が折れなくて炭素繊維糸1を成形し、図4のように製織機に経糸6および緯糸7として供給し、たとえば平編みとして所定の大きさに製織していくものである。
炭素繊維束3は、1ないし所定の複数を供給することによって、図2(a)〜(c)のように1束ないし複数の軸対称状の束となった所要の太さの炭素繊維束糸として、図4のように製織機に経糸6および緯糸7として供給して平織等の織物5を形成し、プリプレグ処理等を行なってできるだけ少なく所要数を積層して手間を少なく補強用に成形できるものである。
図5のように掛合糸4は、炭素繊維束3のばらけ防止と、毛羽立ち、剥がれを防ぐだけでなく、ほとんど伸縮性のない炭素繊維糸にループ状となった掛合糸4で弾力性を付与することができる。その結果、経糸切れ、緯糸切れを起こすことなく非常に製織性が向上できる。また、掛合糸4を巻縫い掛合するとき、炭素繊維束3に撚りがかからずに巻縫いをすることができるため、非常に細く折れやすい単炭素繊維糸を切断することなく巻縫いできて、炭素繊維糸1の強度を低下させることを防止できるものである。
また、掛合糸4に熱可塑性繊維糸を使用することで、作製した炭素繊維糸1の織物5を加熱して容易に樹脂を溶融させた炭素繊維強化複合材料(CFRP)を成形することができるものであり、成形工程の省力化ができる。
なお、このようなCFRPの織物は、上記したように航空機や自動車、ボート、スポーツ分野や、土木、建築分野、通信装置、携帯電話、TV、医療機器、レーザー装置、その他の用途に対応してこれらの機械、装置、物品、構造物等に内装、外装して軽量、補強、電磁雑音防止などに有効に対処することができる。特に、炭素繊維糸の織物を上記した器具や装置に装着することによって補強の他に電磁雑音防止をはかることができて好ましい。
またさらに、積層する炭素繊維糸1を製織した織物5の炭素繊維糸1の方向が、図6のように交互に45度等毎に対応するように積層して、積層する織物5の強度を所要の均一状に成形して利用することができるものである。
なお、図3(a)、(b)のように太径の炭素繊維束3の間に小径の炭素繊維束3を介添して型崩れしないように安定した密な状態にすることができるものである。
本発明は、繊維強化分野における炭素繊維強化複合材料による航空機や自動車、ボート、スポーツ分野や、土木、建築分野、通信装置、携帯電話、TV、医療機器、レーザー装置、その他の用途に対応してこれらの機械、装置、物品、構造物等に内装、外装して軽量、補強、電磁雑音防止などに広く利用することができる。
1…炭素繊維糸 2…メローミシン 3…炭素繊維束
4…掛合糸 5…織物

Claims (2)

  1. オーバロックミシンやロックミシンのメローミシンでマルチフィラメントを束ねた炭素繊維束の1束ないし複数束に熱可塑性の合成繊維糸の掛合糸をループ状に巻縫い掛合して炭素繊維束糸を成形し、この成形した炭素繊維束糸を経糸および/または緯糸として所定の大きさの織物に作製し、作製した炭素繊維束糸の織物を加熱して熱可塑性の合成繊維糸の掛合糸を溶融させて炭素繊維強化複合材料を成形することを特徴とする織物による炭素繊維強化複合材料の成形方法。
  2. マルチフィラメントを束ねた炭素繊維束の1束ないし複数束にロックミシンのメローミシンで2〜5mmピッチで熱可塑性の合成繊維糸の掛合糸をループ状に巻縫い掛合して炭素繊維束糸を成形し、この熱可塑性の合成繊維糸の掛合糸を巻縫いした炭素繊維束糸による織物を複数層重ね合わせる請求項1に記載の織物による炭素繊維強化複合材料の成形方法。
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