[第1の実施の形態]
(構成)
この発明の第1実施形態に係る超音波診断装置について図1を参照して説明する。図1は、この発明の第1実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
第1実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信部3、信号処理部4、画像記憶部5、画像生成部6、表示制御部7、ユーザインターフェース(UI)8、制御部9、演算部10、及び画像生成制御部14を備えている。
超音波プローブ2には、複数の超音波振動子が2次元的に配置された2次元アレイプローブが用いられる。超音波プローブ2は、被検体に対して超音波を送信し、被検体からの反射波をエコー信号として受信する。また、所定方向(走査方向)に1列に配置された複数の超音波振動子を、走査方向に直交する方向(揺動方向)に揺動させる1次元アレイプローブを用いても良い。
送受信部3は送信部と受信部とを備え、超音波プローブ2に電気信号を供給して超音波を発生させるとともに、超音波プローブ2が受信したエコー信号を受信する。
送信部は、制御部9の制御の下、超音波プローブ2に電気信号を供給して所定の焦点にビームフォーム(送信ビームフォーム)した超音波を送信させる。送信部の具体的な構成を説明する。送信部は、図示しないクロック発生回路、送信遅延回路、及びパルサ回路を備えている。クロック発生回路は、超音波信号の送信タイミングや送信周波数を決めるクロック信号を発生する。送信遅延回路は、超音波の送信時に遅延を掛けて送信フォーカスを実施する。パルサ回路は、各超音波振動子に対応した個別経路(チャンネル)の数分のパルサを内蔵し、遅延が掛けられた送信タイミングで駆動パルスを発生し、超音波プローブ2の各超音波振動子に供給する。
受信部は、超音波プローブ2が受信したエコー信号を受信し、そのエコー信号に対して遅延処理を行うことで、アナログの受信信号を整相された(受信ビームフォームされた)デジタルの受信データに変換する。つまり、受信部は、対象とする反射体から各超音波振動子までの距離に応じてそれぞれ時間的に異なって受信されたエコー信号を、その位相(時間)を揃えて加算し、焦点の合った1本の受信データ(1走査線上の画像用信号)を生成する。
受信部の具体的な構成を説明する。受信部は、図示しないプリアンプ回路、A/D変換回路、及び受信遅延・加算回路を備えている。プリアンプ回路は、超音波プローブ2の各超音波振動子から出力されるエコー信号を受信チャンネルごとに増幅する。A/D変換回路は、増幅されたエコー信号をA/D変換する。受信遅延・加算回路は、A/D変換後のエコー信号に対して受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、加算する。その加算により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
なお、超音波プローブ2と送受信部3とによって、この発明の「3Dスキャン手段」の1例を構成する。
信号処理部4は、Bモード処理部やCFM処理部などを備えて構成されている。送受信部3から出力されたデータは、いずれかの処理部にて所定の処理が施される。
Bモード処理部は、エコーの振幅情報の映像化を行い、エコー信号からBモード超音波ラスタデータを生成する。具体的には、Bモード処理部は、送受信部3から送られる信号に対してバンドパスフィルタ処理を行い、その後、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。
CFM処理部は、動いている血流情報の映像化を行い、カラー超音波ラスタデータを生成する。血流情報には、速度、分散、パワーなどの情報があり、血流情報は2値化情報として得られる。具体的には、CFM処理部は、位相検波回路、MTIフィルタ、自己相関器、及び流速・分散演算器を備えている。このCFM処理部は、組織信号と血流信号とを分離するためのハイパスフィルタ処理(MTIフィルタ処理)を行い、自己相関処理により血流の移動速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。その他、組織信号を低減及び削減するための非線形処理が行われる場合もある。
また、信号処理部4に、ドプラ処理部を設けても良い。ドプラ処理部は、送受信部3から出力される受信信号を直交検波することによりドプラ偏移周波数成分を取り出し、更に、FFT処理を施して、血流速度を表すドプラ周波数分布を生成する。
信号処理部4は、信号処理後の超音波ラスタデータを画像記憶部5に出力する。画像記憶部5は、信号処理部4から超音波ラスタデータを受けて、その超音波ラスタデータを記憶する。また、超音波プローブ2と送受信部3とによってボリュームスキャンが行なわれた場合、信号処理部4は、そのボリュームスキャンで取得されたボリュームデータを画像記憶部5に出力する。画像記憶部5は、信号処理部4からボリュームデータを受けて、そのボリュームデータを記憶する。
画像生成部6は、画像記憶部5に記憶されている超音波ラスタデータに基づいて画像データを生成する。画像生成部6は、DSC(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)を備え、走査線信号列で表される信号処理後の超音波ラスタデータを、直交座標で表される画像データに変換する(スキャンコンバージョン処理)。例えば、画像生成部6は、Bモード処理部にて信号処理が施されたBモード超音波ラスタデータにスキャンコンバージョン処理を施すことで、被検体の組織形状を表すBモード画像データを生成する。
また、ボリュームスキャンが行なわれている場合、画像生成部6は、画像記憶部5からからボリュームデータを読み込み、そのボリュームデータにボリュームレンダリングを施すことで、被検体の組織形状を立体的に表す3次元画像データを生成する。また、画像生成部6は、ボリュームデータにMPR処理(Multi Plannar Reconstruction)を施すことにより、任意断面における画像データ(MPR画像データ)を生成する。そして、画像生成部6は、3次元画像データやMPR画像データなどの超音波画像データを表示制御部7に出力する。また、画像生成部6は、3次元画像データやMPR画像データなどの超音波画像データを画像記憶部5に出力する。画像記憶部5は、3次元画像データやMPR画像データを記憶する。
さらに、超音波診断装置1の外部に設置された心電計によって、被検体の心電波形(ECG信号)を取得する。心電計は、被検体のECG信号を取得して、制御部9にそのECG信号を出力する。制御部9は、ECG信号を超音波診断装置1の外部から受け付け、各超音波ラスタデータに各超音波ラスタデータが取得されたタイミングで受け付けた心時相を対応付けて画像記憶部5に記憶させる。例えば、制御部9は、ECG信号からR波を検出し、R波が検出された心時相に取得された超音波ラスタデータに、R波を示す心時相を対応付けて画像記憶部5に記憶させる。
第1実施形態に係る超音波診断装置1は、被検体の心臓を超音波で走査することで、例えば、左心室全体を含む心臓のボリュームデータを心時相ごとに取得する。すなわち、超音波診断装置1は、心臓の動画像データを取得する。例えば、1心周期以上に亘って被検体の心臓を超音波で走査することで、1心周期以上に亘って複数のボリュームデータ(心臓の動画像データ)を取得する。また、制御部9は、各心時相のボリュームデータに各ボリュームデータが取得されたタイミングで受け付けた心時相を対応付けて画像記憶部5に記憶させる。これにより、複数のボリュームデータのそれぞれに、ボリュームデータが取得された心時相が対応付けられて画像記憶部5に記憶される。なお、心電波形(ECG信号)の代わりに、被検体の心音波形を取得して、各ボリュームデータに心時相を対応付けても良い。
表示制御部7は、画像生成部6からMPR画像データや3次元画像データを受けて、MPR画像や3次元画像を表示部81に表示させる。例えば、操作者が操作部82を用いて任意の心時相を指定すると、画像生成部6は指定された心時相が対応付けられたボリュームデータに基づいてMPR画像データや3次元画像データを生成し、表示制御部7はその心時相のMPR画像や3次元画像を表示部81に表示させる。
第1実施形態においては、操作者が操作部82を用いて任意の心時相を指定し、更に、ボリュームデータに対する任意の断面を指定する。操作部82によって指定された心時相を示す情報と3次元空間における断面の座標情報とが、ユーザインターフェース(UI)8から制御部9に出力される。そして、制御部9は、心時相を示す情報と断面の座標情報とを画像生成部6に出力する。
1例として、操作者は操作部82を用いて、心臓の長軸方向に沿った断面(以下、「長軸断面」と称する場合がある)と、心臓の短軸方向に沿った断面(以下、「短軸断面」と称する場合がある)とを指定する。長軸断面と短軸断面は直交している。画像生成部6は、操作者によって指定された心時相が対応付けられたボリュームデータを画像記憶部5から読み込み、長軸断面によってボリュームデータを切断し、その切断面におけるMPR画像データ(以下、「長軸像データ」と称する場合がある)を生成する。また、画像生成部6は、短軸断面によってボリュームデータを切断し、その切断面におけるMPR画像データ(以下、「短軸像データ」と称する場合がある)を生成する。
例えば、画像生成部6は、1つの短軸像データと3つの長軸像データを生成する。長軸像データとして、画像生成部6は、心臓の2腔断層像データ(2Chビュー)、3腔断層像データ(3Chビュー)、及び4腔断層像データ(4Chビュー)を生成する。2腔断面、3腔断面、及び4腔断面は、それぞれ所定の角度をなしており、その角度を示す情報を画像生成部6に予め設定しておくことが好ましい。これにより、操作者が操作部82を用いて1つの断面を指定すると、画像生成部6は、予め設定された角度を示す情報に基づいて、2腔断面に平行な2腔断層像データ、3腔断面に平行な3腔断層像データ、及び4腔断面に平行な4腔断層像データを生成する。画像生成部6は、1つの短軸像データと3つの長軸像データを表示制御部7に出力する。
表示制御部7は、長軸像データと短軸像データを画像生成部6から受けて、長軸像データに基づく長軸像と、短軸像データに基づく短軸像を表示部81に表示させる。
第1実施形態では、1例として、操作者は操作部82を用いて拡張末期(R波が検出された心時相)と、収縮末期(R波が検出された心時相から所定時間経過後の心時相)を指定する。画像生成部6は、拡張末期に取得されたボリュームデータを画像記憶部5から読み込み、そのボリュームデータに基づいて、1つの短軸像データと3つの長軸像データを生成する。すなわち、画像生成部6は、拡張末期における1つの短軸像データと3つの長軸像データ(2腔断層像データ、3腔断層像データ、及び4腔断層像データ)を生成する。また、画像生成部6は、収縮末期に取得されたボリュームデータを画像記憶部5から読み込み、そのボリュームデータに基づいて、1つの短軸像データと3つの長軸像データを生成する。すなわち、画像生成部6は、収縮末期における1つの短軸像データと3つの長軸像データ(2腔断層像データ、3腔断層像データ、及び4腔断層像データ)を生成する。
なお、拡張末期はECG信号からR波が検出された心時相であり、収縮末期はR波が検出された心時相から所定時間経過後の心時相である。そして、R波が検出された心時相を拡張末期として画像生成部6に予め設定しておき、また、R波が検出された心時相から所定時間経過後の心時相を収縮末期として画像生成部6に予め設定しておく。これにより、画像生成部6は、予め設定された心時相(拡張末期又は収縮末期)が対応付けられたボリュームデータを画像記憶部5から読み込み、拡張末期における画像データと収縮末期における画像データを生成する。また、操作者が操作部82を用いて、コマ送りで画像を進めて、拡張末期又は収縮末期を指定しても良い。
ここで、表示部81に表示される短軸像と長軸像の1例を図2に示す。図2は、心臓の短軸像と長軸像の1例を示す画面の図である。表示制御部7は、心臓の長軸像100、110、120と、心臓の短軸像130とを表示部81に表示させる。例えば、長軸像100は2腔断層像を表し、長軸像110は3腔断層像を表し、長軸像120は4腔断層像を表すものとする。長軸像100、110、120にはそれぞれ、長軸断面における心筋が表されている。図2に示す例では、長軸像100、110、120、及び短軸像130は、拡張末期に取得された画像を表している。
次に、演算部10について説明する。演算部10は、位置算出部11、断面設定部12、及び断面推定部13を備えている。この演算部10の処理について図3から図6を参照して説明する。図3は、心臓の長軸像の1例を示す画面の図である。図4は、心臓と、弁輪面に平行な面とを示す模式図である。図5及び図6は、任意の心時相における断面を補間する処理を説明するための図である。
まず、拡張末期と収縮末期において、心臓の心尖の位置と弁輪面の位置を特定する。心尖の位置を特定するためには、1つ以上の長軸像において、操作者が操作部82を用いて心尖の位置を指定する。また、弁輪面の位置を特定するためには、2つ以上の長軸像において、操作者が操作部82を用いて弁輪の位置を指定する。なお、心尖が、この発明の「第1特徴点」と「第2特徴点」の1例に相当し、弁輪面が、この発明の「特徴部位」の1例に相当する。
例えば図2に示すように、拡張末期における長軸像100、110、120が表示部81に表示されている状態で、操作者は操作部82を用いて、長軸像に対して心臓の弁輪の位置と心尖の位置を指定する。心尖の位置を特定するためには、長軸像100、110、120のうち1つ以上の長軸像において心尖の位置を指定すれば良い。また、弁輪面の位置を特定するためには、長軸像100、110、120のうち2つ以上の長軸像において弁輪の位置を指定すれば良い。例えば図3に示すように、操作者は操作部82を用いて、長軸像100に対して心尖20Aの位置と、弁輪20B、20Cの位置を指定する。さらに、操作者は操作部82を用いて、別の長軸像110に対して心尖21Aの位置と、弁輪21B、21Cの位置を指定する。これにより、拡張末期における心尖の位置と弁輪の位置が指定されたことになる。
以上のように拡張末期の長軸像において、心尖の位置と弁輪の位置とが指定されると、長軸像100における心尖20Aの位置を示す情報(座標情報)と、弁輪20B、20Cの位置を示す情報(座標情報)とが、ユーザインターフェース(UI)8から制御部9を介して演算部10に出力される。また、長軸像110における心尖21Aの位置を示す情報(座標情報)と、弁輪21B、21Cの位置を示す情報(座標情報)とが、ユーザインターフェース(UI)8から制御部9を介して演算部10に出力される。これにより、拡張末期における心尖の座標情報と弁輪の座標情報とが、演算部10に設定される。
さらに、収縮末期の長軸像においても拡張末期の長軸像と同様に、心尖の位置と弁輪の位置を指定する。拡張末期の画像と同様に、表示制御部7は、収縮末期における1つの短軸像と、3つの長軸像(2腔断層像、3腔断層像、及び4腔断層像)を表示部81に表示させる。そして、心尖の位置を特定するために、操作者は操作部82を用いて、3つの長軸像のうち1つ以上の長軸像において心尖の位置を指定する。また、弁輪面の位置を特定するために、操作者は操作部82を用いて、3つの長軸像のうち2つ以上の長軸像において弁輪の位置を指定する。収縮末期の長軸像において、心尖の位置と弁輪の位置とが指定されると、心尖の位置を示す情報(座標情報)と、弁輪の位置を示す情報(座標情報)とが、ユーザインターフェース(UI)8から制御部9を介して演算部10に出力される。これにより、収縮末期における心尖の座標情報と弁輪の座標情報とが、演算部10に設定される。
なお、第1実施形態では、3つの長軸像と1つの短軸像を表示部81に表示しているが、心尖と弁輪を指定するために、2つ以上の長軸像を表示部81に表示すれば良い。例えば、拡張末期においては、長軸像100と長軸像110とを表示部81に表示すれば良い。
位置算出部11は、各長軸像上で指定された弁輪の位置に基づいて、3次元空間における弁輪面の座標を求める。また、位置算出部11は、各長軸像上で指定された心尖の位置に基づいて、3次元空間における心尖の位置を特定する。
まず、位置算出部11は、拡張末期の長軸像100上で指定された心尖20Aの座標情報と、弁輪20B、20Cの座標情報とをユーザインターフェース(UI)8から受け付ける。さらに、位置算出部11は、拡張末期の長軸像110上で指定された心尖21Aの座標情報と、弁輪21B、21Cの座標情報とをユーザインターフェース(UI)8から受け付ける。また、位置算出部11は、長軸像100を表す長軸像データと、長軸像110を表す長軸像データとを画像記憶部5から読み込む。3次元空間における各長軸像(各長軸断面)の位置は特定されているため、位置算出部11は、各長軸像上で指定された心尖と弁輪について、3次元空間における座標を特定する。例えば、位置算出部11は、長軸像100で指定された心尖20A、弁輪20B、20Cについて、3次元空間における座標を特定する。また、位置算出部11は、長軸像110で指定された心尖21A、弁輪21B、21Cについて、3次元空間における座標を特定する。
そして、位置算出部11は、拡張末期について、3次元空間における心尖と弁輪面の座標を求める。1つの長軸像で心尖の位置が指定された場合、位置算出部11は、指定された位置を3次元空間における心尖の位置とする。また、図3に示すように、2つの長軸像100、110でそれぞれ心尖の位置が指定された場合、位置算出部11は、心尖20Aと心尖21Aの中間の位置を3次元空間における心尖の位置としても良い。これにより、拡張末期について、3次元空間における心尖の位置が求められたことになる。
さらに、位置算出部11は、2つの長軸像で指定された複数の弁輪の位置のうち、少なくとも3つの弁輪の位置を含む平面を3次元空間における弁輪面として定義する。図3に示す例では、位置算出部11は、弁輪20B、20C、21B、21Cのうち少なくとも3つの弁輪を含む平面を弁輪面として定義する。これにより、拡張末期について、3次元空間における弁輪面の位置が求められたことになる。
さらに、位置算出部11は、拡張末期と同様に収縮末期について、3次元空間における心尖と弁輪面の位置を求める。そして、位置算出部11は、拡張末期と収縮末期における心尖と弁輪面の座標情報(3次元空間での座標情報)を断面設定部12に出力する。
断面設定部12は、拡張末期と収縮末期における心尖と弁輪面の座標情報を位置算出部11から受けると、拡張末期と収縮末期における心尖と弁輪面との間に、弁輪面に平行な複数の断面を設定する。超音波画像を用いた心臓の診断においては、心筋の運動などを観察するために、弁輪面に平行な断面の画像(短軸像)が用いられることが多い。そのため、第1実施形態においては、弁輪面に平行な短軸像を生成するために、弁輪面に平行な複数の断面を設定する。
ここで、弁輪面に平行な複数の断面を設定する方法について図4を参照して説明する。図4において、心筋200は拡張末期の心筋を表しており、心筋300は収縮末期の心筋を表している。また、断面A1は位置算出部11にて求められた拡張末期における弁輪面を表しており、心尖22Aは位置算出部11にて求められた拡張末期における心尖を表している。また、断面Z1は位置算出部11にて求められた収縮末期における弁輪面を表しており、心尖23Aは位置算出部11にて求められた収縮末期における心尖を表している。なお、断面A1、Z1は、図4の奥行き方向に延びる平面を形成している。また、後述する断面A2〜A11、及び断面Z2〜Z11も、図4の奥行き方向の延びる平面を形成している。
断面設定部12は、拡張末期について、心尖22Aと弁輪面(断面A1)との間に、弁輪面(断面A1)に平行な複数の断面を設定する。例えば、断面設定部12は、心尖22Aと弁輪面(断面A1)との間の領域を10個の領域に等分割する10個の断面A2、A3、・・・、A10、A11を設定する。断面A11は、心尖22Aを通る断面として定義する。すなわち、断面設定部12は、弁輪面を含めた11個の断面A1〜A11を設定する。これにより、拡張末期について、11個の断面A1〜A11が設定されたことになる。弁輪面(断面A1)を基準にすると、断面A1〜A11のうち、断面A1は1番目の断面に相当し、断面A2は2番目の断面に相当し、断面A3は3番目の断面に相当する。そして、断面A11は11番目の断面に相当する。断面設定部12は、拡張末期について定義された断面A1〜A11のそれぞれの座標情報に、各断面の番号を示す番号情報を付帯させて、番号情報が付帯された各断面の座標情報を断面推定部13に出力する。例えば、断面設定部12は、断面A1の座標情報に1番目の断面を示す番号情報を付帯させ、断面A2の座標情報に2番目の断面を示す番号情報を付帯させて、番号情報を付帯した各断面の座標情報を断面推定部13に出力する。
また、断面設定部12は、収縮末期について、心尖23Aと弁輪面(断面Z1)との間に、弁輪面(断面Z1)に平行な複数の断面を設定する。例えば、断面設定部12は、心尖23Aと弁輪面(断面Z1)との間の領域を10個の領域に等分割する10個の断面Z2、Z3、・・・、Z10、Z11を設定する。断面Z11は、心尖23Aを通る断面として定義する。すなわち、断面設定部12は、弁輪面を含めた11個の断面Z1〜Z11を設定する。これにより、収縮末期の心筋に対して、11個の断面Z1〜Z11が設定されたことになる。収縮末期についても拡張末期と同様に、弁輪面(断面Z1)を基準にすると、断面Z1〜Z11のうち、断面Z1は1番目の断面に相当し、断面Z2は2番目の断面に相当し、断面Z3は3番目の断面に相当する。そして、断面Z11は11番目の断面に相当する。断面設定部12は、収縮末期について定義された断面Z1〜Z11のそれぞれの座標情報に、各断面の番号を示す番号情報を付帯させて、番号情報が付帯された各断面の座標情報を断面推定部13に出力する。例えば、断面設定部12は、断面Z1の座標情報に1番目の断面を示す番号情報を付帯させ、断面Z2の座標情報に2番目の断面を示す番号情報を付帯させて、番号情報が付帯された各断面の座標情報を断面推定部13に出力する。
なお、第1実施形態では、11個の断面を設定しているが、任意の数の断面を設定しても良い。例えば、操作者が操作部82を用いることで所望の断面数を指定すると、指定された断面数を示す情報がユーザインターフェース(UI)8から制御部9を介して演算部10に出力される。断面設定部12は、指定された断面数に従って、心尖と弁輪面との間に断面を設定する。
拡張末期における1番目の断面A1(弁輪面)と、収縮末期における1番目の断面Z1(弁輪面)とが対応している。すなわち、断面A1は拡張末期における弁輪面を表し、断面Z1は収縮末期における弁輪面を表している。このように、断面A1と断面Z1は、異なる心時相(拡張末期と収縮末期)における心臓の同一部位を切断する断面として定義されている。同様に、拡張末期における2番目の断面A2と、収縮末期における2番目の断面Z2とが対応し、3番目の断面A3と断面Z3とが対応している。このように、拡張末期における各断面と、収縮末期における各断面とがそれぞれ対応している。すなわち、拡張末期における各断面と収縮末期における各断面は、異なる心時相(拡張末期と収縮末期)における心臓の同一部位を切断する断面として定義されている。
断面推定部13は、拡張末期について定義された断面A1〜A11の座標情報と、収縮末期について定義された断面Z1〜Z11の座標情報とを断面設定部12から受けて、断面A1〜A11と断面Z1〜Z11とに基づいて、補間処理を行うことで、拡張末期と収縮末期との間の心時相における各断面の位置を推定する。すなわち、断面推定部13は、拡張末期と収縮末期との間に取得された各フレームにおける弁輪面に平行な各断面の位置を推定する。これにより、拡張末期と収縮末期との間の各心時相における心臓の同一部位を切断する断面の位置が推定される。補間処理として、例えば線形補間や三角関数による補間を行う。
断面A1〜A11のそれぞれの座標情報には、断面A1を基準にした番号を示す番号情報が付帯されている。また、断面Z1〜Z11のそれぞれの座標情報には、断面Z1を基準にした番号を示す番号情報が付帯されている。断面推定部13は、同一の番号情報が付帯されている2つの断面を対象として補間処理を行うことで、収縮末期と拡張末期との間の各心時相(各フレーム)における断面の位置を推定する。具体的には、断面推定部13は、1番目の番号が付された断面A1と断面Z1とに基づいて、収縮末期と拡張末期との間の各心時相(各フレーム)における断面の位置を推定する。同様に、断面推定部13は、2番目の番号が付された断面A2と断面Z1とに基づいて、収縮末期と拡張末期との間の各心時相(各フレーム)における断面の位置を推定する。
例えば図5に示すように、断面推定部13は、拡張末期における1番目の断面(弁輪面)と収縮末期における1番目の断面Z1(弁輪面)との間を線形補間することにより、拡張末期と収縮末期との間の各心時相(各フレーム)における1番目の断面(弁輪面)の位置を推定する。同様に、断面推定部13は、拡張末期における2番目の断面A2と収縮末期における2番目の断面Z2との間を線形補間することにより、拡張末期と収縮末期との間の各心時相(各フレーム)における2番目の断面の位置を推定する。このように、断面推定部13は、拡張末期の断面とその断面に対応する収縮末期の断面との間を線形補間することにより、拡張末期と収縮末期との間の各心時相(各フレーム)における断面の位置を推定する。すなわち、断面推定部13は、拡張末期の断面A1〜A11と、各断面に対応する収縮末期の断面Z1〜Z11との間をそれぞれ線形補間することにより、拡張末期と収縮末期との間の各心時相(各フレーム)における各断面の位置を推定する。
また、断面推定部13は、図6に示すように、拡張末期における1番目の断面A1(弁輪面)と収縮末期における1番目の断面Z1(弁輪面)との間を三角関数による補間を行うことで、拡張末期と収縮末期との間の各心時相(各フレーム)における弁輪面の位置を推定しても良い。例えば、断面推定部13は、コサイン関数を用いた補間を行うことで、拡張末期と収縮末期との間の各心時相(各フレーム)における弁輪面の位置を推定する。そして、断面推定部13は、拡張末期の断面A1〜A11と、各断面に対応する収縮末期の断面Z1〜Z11との間をそれぞれ三角関数による補間を行うことにより、拡張末期と収縮末期との間の各心時相(各フレーム)における各断面の位置を推定する。
以上の処理によって、心臓の同一部位を切断する断面を心時相ごと(フレームごと)に追跡することが可能となる。例えば、弁輪面(断面A1)の位置を拡張末期から収縮末期にかけて追跡することが可能となる。また、弁輪面以外の断面(断面A2〜A11)の位置についても、拡張末期から収縮末期にかけて追跡することが可能となる。
ここで説明の便宜上、拡張末期から収縮末期の間の各心時相(各フレーム)における断面を断面B、C、D、・・・と称することにする。例えば、拡張末期の断面A1と収縮末期の断面Z1との間を補間することで求めた各心時相(各フレーム)の断面を、断面B1、C1、D1、・・・と称することにする。すなわち、断面B1、C1、D1、・・・は、各心時相(各フレーム)において断面A1に対応し、それぞれの心時相(フレーム)において1番目の断面(弁輪面)を表していることになる。同様に、拡張末期の断面A2と収縮末期の断面Z2との間を補間することで求めた各心時相(各フレーム)の断面を、断面B2、C2、D2、・・・と称することにする。すなわち、断面B2、C2、D2、・・・は、各心時相(各フレーム)において断面A2に対応し、それぞれの心時相(フレーム)において2番目の断面を表していることになる。このように、各心時相(各フレーム)において断面A1〜A11に対応する断面を、断面B1〜B11、断面C1〜C11、断面D1〜D11、・・・と称することにする。
断面推定部13は、各断面の座標情報に、各断面が定義された心時相を示す情報と、各断面の番号を示す番号情報とを付帯させて、画像生成制御部14に出力する。画像生成制御部14は、メモリを有し、心時相を示す情報と番号情報とが付帯された各断面の座標情報をメモリに記憶する。
そして、操作者が操作部82を用いて所望の断面を指定する。例えば、操作者は操作部82を用いることで、画像生成制御部14に設定された11個の断面のなかから所望の断面を指定する。操作者は1つの断面を指定しても良いし、複数の断面を指定しても良い。
例えば、画像生成制御部14は、拡張末期における断面A1〜A11のそれぞれの座標情報を表示制御部7に出力する。表示制御部7は、画像生成制御部14から各断面の座標情報を受けると、断面A1〜A11のそれぞれを示すマーカを生成する。そして、表示制御部7は、拡張末期の長軸像を表示部81に表示させ、更に、断面A1〜A11のそれぞれを示すマーカを長軸像に重ねて表示部81に表示させる。1例として、表示制御部7は、図3に示す長軸像100(拡張末期の長軸像)を表示部81に表示させ、断面A1〜A11をそれぞれ示すマーカを長軸像100に重ねて表示部81に表示させる。操作者は、表示部81に表示された長軸像と断面のマーカを観察し、操作部82を用いることで、断面A1〜A11のうち所望の断面を指定する。ここでは、3番目の断面A3を指定した場合について説明する。
操作者によって3番目の断面A3が指定されると、断面A3を示す番号情報がユーザインターフェース(UI)8から制御部9を介して画像生成制御部14に出力される。画像生成制御部14は、各心時相(各フレーム)において、3番目の番号情報が付帯された断面の座標情報を画像生成部6に出力する。
画像生成部6は、各心時相のボリュームデータを画像記憶部5から読み込み、各心時相における3番目の断面を切断面として、各心時相のボリュームデータにMPR処理を施す。この処理により、画像生成部6は、3番目の断面におけるMPR画像データ(短軸像データ)を心時相ごとに生成する。
具体的には、画像生成部6は、断面A3を切断面として断面A3におけるMPR画像データを生成し、断面B3を切断面として断面B3におけるMPR画像データを生成し、断面C3を切断面として断面C3におけるMPR画像データを生成し、以降、各心時相における3番目の断面におけるMPR画像データを生成する。そして、画像生成部6は、各心時相における3番目の断面におけるMPR画像データを表示制御部7に出力する。
表示制御部7は、画像生成部6から各心時相の3番目におけるMPR画像データを受けて、心時相ごとに順番に3番目におけるMPR画像データに基づくMPR画像を表示部81に表示させる。また、画像生成部6は、短軸像データの他、長軸像データや3次元画像データを生成しても良い。この場合、表示制御部7は、短軸像とともに、長軸像や3次元画像を表示部81に表示させる。
ここで、表示部81に表示される短軸像の1例について図7を参照して説明する。図7は、表示部に表示される短軸像の1例を示す図である。図7に示す例では、心臓の短軸像と長軸像を表示する場合について説明する。
例えば、操作者によって3番目の断面A3が指定されると、画像生成部6は、各心時相で取得されたボリュームデータを画像記憶部5から読み込み、各ボリュームデータにMPR処理を施すことで、各心時相の3番目の断面A3、B3、C3、・・・におけるMPR画像データ(短軸像データ)を生成する。また、画像生成部6は、操作者によって指定された所望の長軸断面におけるMPR画像データ(長軸像データ)を生成する。画像生成部6は、各心時相の長軸像データを生成する。
そして、図7(a)に示すように、表示制御部7は、拡張末期における長軸像400と、3番目の断面A3における短軸像500とを表示部81に表示させる。長軸像400には心筋を長軸断面で切断した組織が表されており、短軸像500には心筋を短軸断面で切断した組織が表されている。
そして、次のフレーム(次の心時相)では、図7(b)に示すように、表示制御部7は、次の心時相における長軸像410と短軸像510とを表示部81に表示させる。短軸像510は、ボリュームデータを断面B3で切断した面の画像である。断面B3は、断面A3に対応し、断面A3と同じ部位を切断する断面であると推定されているため、短軸像510には短軸像500と同じ部位が表されていることになる。
更に次のフレーム(次の心時相)では、図7(c)に示すように、表示制御部7は、次の心時相における長軸像420と短軸像520とを表示部81に表示させる。短軸像520は、ボリュームデータを断面C3で切断した面の画像である。断面C3は、断面A3に対応し、断面A3、B3と同じ部位を切断する断面であると推定されているため、短軸像520には短軸像500、510と同じ部位が表されていることになる。
そして、表示制御部7は、心時相ごとに短軸像と長軸像とを表示部81に表示させる。なお、図7に示す例では、長軸像を表示部81に表示しているが、短軸像のみを表示部81に表示しても良い。また、短軸像と3次元画像とを表示部81に表示しても良い。
なお、第1実施形態では、画像生成部6は各断面におけるMPR画像データを生成しているが、各断面の厚み方向における情報を含ませた厚み付きMPR画像データを生成しても良い。また、画像生成部6は、MPR処理の他、MIP(maximum intensity projection)法によって最大値が投影されたMIP画像データを生成しても良い。さらに、画像生成部6は、MinIP(minimum intensity projection)法によって最小値が投影されたMinIP画像データを生成しても良い。このように、MPR画像データの他、厚み付きMPR画像データ、MIP画像データ、又はMINIP画像データを生成することで、各断面の組織を表す画像データを生成しても良い。このように、この発明の「断面を表す画像」には、MPR画像の他、厚み付きMPR画像を含ませても良いし、MIP画像やMinIP画像を含ませても良い。
なお、第1実施形態においては、画像生成部6が、この発明の「画像取得手段」の1例に相当する。
ユーザインターフェース(UI)8は表示部81と操作部82とを備えている。表示部81はCRTや液晶ディスプレイなどのモニタで構成されており、画面上にカラードプラ画像やBモード画像などを表示する。操作部82は、ジョイスティックやトラックボールなどのポインティングデバイス、スイッチ、各種ボタン、キーボード又はTCS(Touch Command Screen)などで構成されている。なお、ユーザインターフェース(UI)8が、この発明の「指定手段」の1例に相当する。
制御部9は、超音波診断装置1の各部に接続され、超音波診断装置1の各部の動作を制御する。この実施形態では、制御部9は、超音波診断装置1の外部から被検体のECG信号を受け付け、各心時相に取得されたボリュームデータに心時相を対応付けて画像記憶部5に記憶させる。
なお、演算部10は、CPUと、ROM、RAMなどの記憶装置を備えている。記憶装置には、演算部10の機能を実行するための演算プログラムが記憶されている。演算プログラムには、位置算出部11の機能を実行するための位置算出プログラム、断面設定部12の機能を実行するための断面設定プログラム、及び断面推定部13の機能を実行するための断面推定プログラムが含まれる。CPUが、位置算出プログラムを実行することで、3次元空間における心尖と弁輪面の位置を求める。また、CPUが、断面設定プログラムを実行することで、心尖と弁輪面との間に複数の断面を設定する。また、CPUが、断面推定プログラムを実行することで、拡張末期と収縮末期との間の各フレームにおける断面の位置を推定する。
また、画像生成部6は、CPUと、ROM、RAMなどの記憶装置を備えている。記憶装置には、画像生成部6の機能を実行するための画像生成プログラムが記憶されている。CPUが、画像生成プログラムを実行することで、MPR処理やボリュームレンダリングなどの画像処理を行う。例えば、CPUが、画像生成プログラムを実行することで、所望の心時相における短軸像データや長軸像データなどの画像データを生成する。
また、表示制御部7は、CPUと、ROM、RAMなどの記憶装置を備えている。記憶装置には、表示制御部7の機能を実行するための表示制御プログラムが記憶されている。CPUが、表示制御部プログラムを実行することで、短軸像データに基づく短軸像や長軸像データに基づく長軸像を表示部81に表示させる。
この第1実施形態においては、演算部10の機能を実行する演算プログラム、画像生成部6の機能を実行する画像生成プログラム、及び表示制御部7の機能を実行する表示制御プログラムが、この発明の「超音波画像処理プログラム」の1例を構成する。
以上のように、第1実施形態に係る超音波診断装置1によると、拡張末期と収縮末期とで設定された、弁輪面に平行な断面に基づいて、フレーム(心時相)ごとに断面の位置を推定することで、心臓の同一部位を切断する断面を心時相ごとに追跡することが可能となる。このように、心時相ごとに断面の位置を自動的に変えることで、心臓の動きに追従した短軸像を生成して表示することが可能となる。これにより、心臓の同一部位を追跡して観察することが可能となる。例えば、短軸像に表された心筋の同一部位における壁厚の変化を追跡して観察することが可能となる。
(動作)
次に、第1実施形態に係る超音波診断装置1による一連の動作について、図8を参照して説明する。図8は、この発明の第1実施形態に係る超音波診断装置による一連の動作を示すフローチャートである。
(ステップS01)
まず、超音波プローブ2と送受信部3とによって、1心周期以上に亘って被検体の心臓を超音波で走査することで、例えば、左心室全体を含む心臓のボリュームデータを心時相ごとに取得する。制御部9は、被検体のECG信号を受けて、各心時相のボリュームデータに各ボリュームデータが取得されたタイミングで受け付けた心時相を対応付けて画像記憶部5に記憶させる。
(ステップS02)
操作者が操作部82を用いて拡張末期と収縮末期を指定し、更に、所望の長軸断面を指定する。画像生成部6は、制御部9を介して操作者の指定を受け付け、画像記憶部5から拡張末期のボリュームデータと収縮末期のボリュームデータを読み込み、拡張末期の長軸像データと収縮末期の長軸像データを生成する。表示制御部7は、長軸像を表示部81に表示させる。
(ステップS03)
そして、操作者が操作部82を用いて、収縮末期と拡張末期の長軸像において、心臓の心尖と弁輪の位置を指定する。例えば図3に示すように、操作者は操作部82を用いて、拡張末期の長軸像100に対して心尖20Aの位置と、弁輪20B、20Cの位置を指定する。さらに、操作者は操作部82を用いて、拡張末期の長軸像110に対して心尖21Aの位置と、弁輪21B、21Cの位置を指定する。さらに、収集末期の長軸像においても拡張末期の長軸像と同様に、心尖の位置と弁輪の位置を指定する。心尖の座標情報と弁輪の座標情報は、ユーザインターフェース(UI)8から制御部9を介して演算部10に出力される。
(ステップS04)
位置算出部11は、拡張末期の長軸像で指定された心尖に基づいて、拡張末期における心尖の3次元空間での位置を特定する。また、位置算出部11は、2つの長軸像で指定された弁輪の位置のうち、少なくとも3つの弁輪の位置を含む平面を3次元空間における弁輪面として定義する。さらに、収縮末期についても拡張末期と同様に、位置算出部11は、心尖と弁輪面の位置を求める。そして、位置算出部11は、拡張末期と収縮末期における心尖と弁輪面の3次元空間での座標情報を断面設定部12に出力する。
(ステップS05)
断面設定部12は、拡張末期と収縮末期における心尖と弁輪面の座標情報を位置算出部11から受けると、拡張末期と収縮末期において、心尖と弁輪面との間に、弁輪面に平行な複数の断面を設定する。例えば図4に示すように、断面設定部12は、拡張末期について、弁輪面(断面A1)を含む複数の断面A1〜A11を設定し、収縮末期について、弁輪面(断面Z1)を含む断面Z1〜Z11を設定する。そして、断面設定部12は、断面A1〜A11と断面Z1〜Z11のそれぞれの座標情報に、各断面の番号を示す番号情報を付帯させて断面推定部13に出力する。
(ステップS06)
断面推定部13は、断面A1〜A11と断面Z1〜Z11の座標情報に基づいて、線形補間又は三角関数による補間を行うことで、拡張末期と収縮末期との間の各心時相(各フレーム)における各断面の位置を推定する。各心時相における断面の座標情報は、画像生成制御部14に設定される。
(ステップS07)
そして、操作者は操作部82を用いて、設定された複数の断面のうち所望の断面を指定する。例えば、操作者は断面A1〜A11のうち、3番目の断面A3を指定する。指定された断面の番号情報が、ユーザインターフェース(UI)8から制御部9を介して画像生成制御部14に出力される。
(ステップS08)
画像生成制御部14は、各心時相(各フレーム)において、3番目の番号情報が付帯された断面の座標情報を画像生成部6に出力する。画像生成部6は、各心時相のボリュームデータを画像記憶部5から読み込み、各心時相における3番目の断面を切断面として、3番目の断面におけるMPR画像データ(短軸像データ)を心時相ごとに生成する。
(ステップS09)
表示制御部7は、各心時相における3番目の断面における短軸像データを画像生成部6から受けて、心時相ごとに順番に3番目の短軸像を表示部81に表示させる。また、画像生成部6は、各心時相の長軸像データや3次元画像データを生成しても良い。この場合、表示制御部7は、短軸像とともに、長軸像や3次元画像を表示部81に表示させる。例えば、表示制御部7は、図7(a)に示すように、拡張末期の断面A3における短軸像500を表示部81に表示させ、次のフレーム(心時相)では、図7(b)に示すように、次の心時相の断面B3における短軸像510を表示部81に表示させ、次のフレーム(心時相)では、図7(c)に示すように、次の心時相の断面C3における短軸像520を表示部81に表示させる。このように、表示制御部7は、同一部位を切断する断面の画像を心時相ごとに表示部81に表示させる。
以上のように、各フレーム(各心時相)における同一部位を切断する断面の位置を推定することで、心臓の動きに追従した短軸像を生成して表示することが可能となる。その結果、各心時相において、心臓の同一部位の断面を追跡して観察することが可能となる。
(超音波画像処理装置)
また、各心時相における断面の位置を推定して、各心時相における短軸像データを生成する超音波画像処理装置を、超音波診断装置の外部に設けても良い。この超音波画像処理装置は、上述した画像記憶部5、画像生成部6、表示制御部7、ユーザインターフェース(UI)8、制御部9、演算部10、及び画像生成制御部14を備えている。
超音波画像処理装置の外部に設置された超音波診断装置によって、心臓を超音波で走査することで、心時相ごとにボリュームデータを取得する。超音波画像処理装置は、心時相が対応付けられた複数のボリュームデータを超音波診断装置から受けて、それら複数のボリュームデータを画像記憶部5に記憶させる。そして、上述した超音波診断装置1と同様に、演算部10が心尖と弁輪面との間に複数の断面を設定し、拡張末期と収縮末期との間の各心時相における各断面の位置を推定する。そして、画像生成部6は、所望の断面について、各心時相におけるMPR画像データ(短軸像データ)を生成し、表示制御部7は、短軸像を心時相ごとに表示部81に表示させる。
以上のように、超音波画像処理装置によっても、上述した超音波診断装置1と同様に、心臓の同一部位を切断する断面を心時相ごとに追跡して、各心時相における断面の画像を生成して表示することが可能となる。これにより、心臓の同一部位を追跡して観察することが可能となる。
[第2の実施の形態]
次に、この発明の第2実施形態に係る超音波診断装置について図9を参照して説明する。図9は、この発明の第2実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
第2実施形態に係る超音波診断装置1Aは、超音波プローブ2、送受信部3、信号処理部4、画像記憶部5、画像生成部6、表示制御部7、ユーザインターフェース(UI)8、制御部9、演算部10A、及びスキャン制御部18を備えている。この超音波診断装置1Aは、第1実施形態に係る超音波診断装置1に設置された演算部10と画像生成制御部14の代わりに、演算部10Aとスキャン制御部18を備えている。演算部10Aとスキャン制御部18以外の構成は、第1実施形態に係る超音波診断装置1と同じである。従って、演算部10Aとスキャン制御部18について詳しく説明する。
上述した第1実施形態に係る超音波診断装置1は、画像生成面としての短軸断面の位置を心時相(フレーム)ごとに変えることで、心臓の動きに追従して短軸像を生成する。これに対して、第2実施形態に係る超音波診断装置1Aは、スキャン対象となる断面の位置を心時相(フレーム)ごとに変えることで、心臓の動きに追従して短軸像を生成する。
スキャン制御部18には、3次元の撮影領域を示す座標情報と、その撮影領域に含まれる所望の断面の位置を示す情報(座標情報)とが予め設定されている。3次元の撮影領域の範囲と断面の位置は、操作者が操作部82を用いることで任意に変更することができる。例えば、超音波で走査する角度の範囲を指定することで、3次元の撮影領域の範囲を指定することができる。また、超音波の送信角度を指定することで、断面の位置を指定することができる。
第2実施形態では、送受信部3はスキャン制御部18の制御の下、スキャン制御部18に設定された断面を超音波で走査する(2Dスキャン)。送受信部3は、この2Dスキャンによって、その断面の受信信号を取得する。
そして、上述した第1実施形態と同様に、被検体の心臓を撮影対象とし、その心臓の短軸像を心時相ごとに取得する。そのために、心臓の短軸断面が2Dスキャンされるように、被検体に対して超音波プローブ2を当てる位置や角度を調整し、また、超音波の送信角度を調整する。第2実施形態では、例えば拡張末期において、心臓の弁輪面にほぼ平行な短軸断面が2Dスキャンの対象となるように、超音波プローブ2の位置や角度を調整し、また、超音波の送信角度を調整する。例えば、2Dスキャンをして短軸像を表示部81に表示し、その短軸像を観察しながら、拡張末期において弁輪面にほぼ平行な断面の短軸像が取得されるように、超音波プローブ2の位置と角度を調整したり、送信角度を調整したりすれば良い。拡張末期において調整された送信角度は、初期設定の送信角度としてスキャン制御部18に設定される。
また、拡張末期において弁輪面にほぼ平行な断面(短軸断面)の座標情報は、初期設定の情報として制御部9に設定される。第2実施形態では、初期設定された拡張末期における短軸断面の位置を心時相ごとに追跡し、心時相ごとに短軸断面の位置を変えて2Dスキャンを行なう。
そして、送受信部3は心臓の短軸断面を2Dスキャンすることで、短軸断面における受信信号を取得する。信号処理部4は、短軸断面における受信信号に対して信号処理を施し、画像生成部6は信号処理後のデータに基づいて、短軸断面における断層像データ(短軸像データ)を生成する。表示制御部7は、その短軸像データに基づく短軸像を表示部81に表示させる。そして、継続して2Dスキャンを行なうことで、短軸像をリアルタイムに表示部81に表示し続ける。
また、送受信部3はスキャン制御部18の制御の下、スキャン制御部18に設定された3次元の撮影領域を超音波で走査する(3Dスキャン)。送受信部3は、この3Dスキャンによって、撮影領域(心臓)のボリュームデータを取得する。この第2実施形態では、2Dスキャンの対象となる短軸断面の位置を追跡するために、ボリュームデータを取得する。
なお、第2実施形態においては、超音波プローブ2と送受信部3とによって、この発明の「3Dスキャン手段」と「2Dスキャン手段」の1例を構成する。
上述した第1実施形態に係る超音波診断装置1と同様に、超音波診断装置1Aは、1心周期以上に亘って被検体の心臓を超音波で走査することで、例えば、左心室全体を含む心臓のボリュームデータを心時相ごとに取得する。さらに、制御部9は、各ボリュームデータに各ボリュームデータが取得されたタイミングで受け付けた心時相を対応付けて画像記憶部5に記憶させる。これにより、複数のボリュームデータのそれぞれに、ボリュームデータが取得された心時相が対応付けられて画像記憶部5に記憶される。例えば、R波を検出してから次のR波を検出するまでの間、制御部9は送受信部3に3Dスキャンを実行させて、1心周期に亘ってボリュームデータを取得する。
そして、画像生成部6は、画像記憶部5から各心時相のボリュームデータを読み込み、各心時相のボリュームデータにMPR処理を施すことで、第1実施形態と同様に、各心時相における1つの短軸像データと3つの長軸像データを生成する。長軸像データとして、画像生成部6は、2腔断層像データ、3腔断層像データ、及び4腔断層像データを生成する。表示制御部7は、短軸像と長軸像を表示部81に表示させる。
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、操作者は操作部82を用いて拡張末期と収縮末期を指定する。画像生成部6は、拡張末期に取得されたボリュームデータにMPR処理を施すことで、拡張末期における1つの短軸像データと3つの長軸像データを生成する。また、画像生成部6は、収縮末期に取得されたボリュームデータにMPR処理を施すことで、収縮末期における1つの短軸像データと3つの長軸像データを生成する。
そして、図2に示すように、表示制御部7は、心臓の長軸像100、110、120と、心臓の短軸像130とを表示部81に表示させる。
次に、演算部10Aについて説明する。演算部10Aは、位置算出部11、領域設定部15、領域推定部16、及び断面推定部17を備えている。この演算部10Aの処理について図10を参照して説明する。図10は、心尖と弁輪面との間の個別領域を示す模式図である。
まず、第1実施形態と同様に、拡張末期と収縮末期において、心臓の心尖の位置と弁輪面の位置を特定する。例えば図3に示すように、操作者は操作部82を用いて、長軸像100に対して心尖20Aの位置と、弁輪20B、20Cの位置を指定する。さらに、操作者は操作部82を用いて、別の長軸像110に対して心尖21Aの位置と、弁輪21B、21Cの位置を指定する。これにより、拡張末期における心尖の位置と弁輪の位置が指定されたことになる。長軸像100における心尖20Aの座標情報と、弁輪20B、20Cの座標情報とが、ユーザインターフェース(UI)8から制御部9を介して演算部10Aに出力される。また、長軸像110における心尖21Aの座標情報と、弁輪20B、20Cの座標情報とが、ユーザインターフェース(UI)8から制御部9を介して演算部10Aに出力される。
さらに、収縮末期の長軸像においても拡張末期の長軸像と同様に、心尖の位置と弁輪の位置を指定する。これにより、心尖の座標情報と弁輪の座標情報とが、ユーザインターフェース(UI)8から制御部9を介して演算部10Aに出力される。
位置算出部11は、第1実施形態と同様に、拡張末期と収縮末期について、3次元空間における弁輪面の位置と心尖の位置を特定する。そして、位置算出部11は、拡張末期と収縮末期における心尖と弁輪面の座標情報(3次元空間での座標情報)を領域設定部15に出力する。
領域設定部15は、拡張末期と収縮末期における心尖と弁輪面の座標情報を位置算出部11から受けると、拡張末期と収縮末期における心尖と弁輪面との間に、弁輪面に平行な複数の平面を設定することで、心尖と弁輪面との間の領域を複数の個別領域に分割する。
ここで、心尖と弁輪面との間の領域を複数の個別領域に分割する方法について、図10を参照して説明する。図10において、心筋200は拡張末期の心筋を表しており、心筋300は収縮末期の心筋を表している。また、断面A1は位置算出部11にて求められた拡張末期における弁輪面を表しており、心尖22Aは位置算出部11にて求められた拡張末期における心尖を表している。また、断面Z1は位置算出部11にて求められた収縮末期における弁輪面を表しており、心尖23Aは位置算出部11にて求められた収縮末期における心尖を表している。なお、断面A1、Z1は、図10の奥行き方向に延びる平面を形成している。
領域設定部15は、拡張末期について、心尖22Aと弁輪面(断面A1)との間に、弁輪面(断面A1)に平行な複数の平面を設定することで、心尖22Aと弁輪面(断面A1)との間の領域を複数の個別領域に分割する。例えば、領域設定部15は、心尖22Aと弁輪面(断面A1)との間の領域を10個の個別領域に等分割する。図10に示す例では、領域設定部15は、心尖22Aと弁輪面(断面A1)との間の領域を、個別領域α1、α2、α3、・・・、α9、α10に等分割する。これにより、拡張末期について、10個の個別領域α1〜α10が設定されたことになる。弁輪面(断面A1)を基準にすると、個別領域α1〜α10のうち、断面A1に近い順から、個別領域α1は1番目の個別領域に相当し、個別領域α2は2番目の個別領域に相当し、個別領域α3は3番目の個別領域に相当する。そして、個別領域α10は10番目の個別領域に相当する。領域設定部15は、拡張末期について定義された個別領域α1〜α10のそれぞれの座標情報に、各個別領域の番号を示す番号情報を付帯させて、番号情報が付帯された各個別領域の座標情報を領域推定部16に出力する。例えば、領域設定部15は、個別領域α1の座標情報に1番目の個別領域を示す番号情報を付帯させ、個別領域α2の座標情報に2番目の個別領域を示す番号情報を付帯させて、番号情報を付帯した各個別領域の座標情報を領域推定部16に出力する。
また、領域設定部15は、収縮末期について、心尖23Aと弁輪面(断面Z1)との間に、弁輪面(断面Z1)に平行な複数の平面を設定することで、心尖23Aと弁輪面(断面Z1)との間の領域を複数の個別領域に分割する。例えば、領域設定部15は、心尖23Aと弁輪面(断面Z1)との間の領域を10個の個別領域に等分割する。図10に示す例では、領域設定部15は、心尖23Aと弁輪面(断面Z1)との間の領域を、個別領域ω1、ω2、ω3、・・・、ω9、ω10に等分割する。これにより、収縮末期について、10個の個別領域ω1〜ω10が設定されたことになる。弁輪面(断面Z1)を基準にすると、個別領域ω1〜ω10のうち、断面Z1に近い順から、個別領域ω1は1番目の個別領域に相当し、個別領域ω2は2番目の個別領域に相当し、個別領域ω3は3番目の個別領域に相当する。そして、個別領域ω10は10番目の個別領域に相当する。領域設定部15は、収縮末期について定義された個別領域ω1〜ω10のそれぞれの座標情報に、各個別領域の番号を示す番号情報を付帯させて、番号情報が付帯された各個別領域の座標情報を領域推定部16に出力する。例えば、領域設定部15は、個別領域ω1の座標情報に1番目の個別領域を示す番号情報を付帯させ、個別領域ω2の座標情報に2番目の個別領域を示す番号情報を付帯させて、番号情報を付帯した各個別領域の座標情報を領域推定部16に出力する。
なお、個別領域α1〜α10、及び個別領域ω1〜ω10は、図10の奥行き方向に延びる3次元の領域を形成している。
この第2実施形態では、10個の個別領域を設定しているが、任意の数の個別領域を設定しても良い。例えば、操作者が操作部82を用いることで所望の数を指定すると、指定された数を示す情報がユーザインターフェース(UI)8から制御部9を介して演算部10Aに出力される。領域設定部15は、指定された数に従って、心尖と弁輪面との間の領域を複数の個別領域に分割する。
拡張末期における1番目の個別領域α1と、収縮末期における1番目の個別領域ω1とが対応している。すなわち、個別領域α1は収縮末期における1番目の個別領域を表しており、個別領域ω1は収縮末期における1番目の個別領域を表している。このように、個別領域α1と個別領域ω1は、異なる心時相(拡張末期と収縮末期)における心臓の同一部位を表していることになる。同様に、拡張末期における2番目の個別領域α2と、収縮末期における2番目の個別領域ω2とが対応し、3番目の個別領域α3と個別領域ω3とが対応している。このように、拡張末期における各個別領域と、収縮末期における各個別領域とがそれぞれ対応している。すなわち、拡張末期における各個別領域と収縮末期における各個別領域は、異なる心時相(拡張末期と収縮末期)における心臓の同一部位を表していることになる。
領域推定部16は、拡張末期について定義された個別領域α1〜α10の座標情報と、収縮末期について定義された個別領域ω1〜ω10の座標情報とを領域設定部15から受けて、個別領域α1〜α10と個別領域ω1〜ω10とに基づいて、補間処理を行うことで、拡張末期と収縮末期との間の各心時相における各個別領域の位置を推定する。すなわち、領域推定部16は、拡張末期と収縮末期との間に取得された各フレームにおける各個別領域の位置を推定する。これにより、拡張末期と収縮末期との間の各心時相における心臓の同一部位を表す個別領域の位置が推定される。補間処理として、第1実施形態と同様に、例えば線形補間や三角関数による補間を行う。
個別領域α1〜α10のそれぞれの座標情報には、断面A1を基準にした番号を示す番号情報が付帯されている。また、個別領域α1〜α10のぞれぞれの座標情報には、断面Z1を基準にした番号を示す番号情報が付帯されている。領域推定部16は、同一の番号情報が付帯された2つの個別領域を対象として補間処理を行うことで、収縮末期と拡張末期との間の各心時相(各フレーム)における個別領域の位置を推定する。具体的には、領域推定部16は、1番目の番号が付された個別領域α1と個別領域ω1とに基づいて、収縮末期と拡張末期との間の各心時相(各フレーム)における個別領域の位置を推定する。同様に、領域推定部16は、2番目の番号が付された個別領域α2と個別領域ω2とに基づいて、収縮末期と拡張末期との間の各心時相(各フレーム)における個別領域の位置を推定する。
以上の処理によって、心臓の同一部位を表す個別領域を心時相ごと(フレームごと)に追跡することが可能となる。例えば、個別領域α1の位置を拡張末期から収縮末期にかけて追跡することが可能となる。
ここで説明の便宜上、拡張末期から収縮末期の間の各心時相(各フレーム)における個別領域を個別領域β、γ、δ、・・・と称することにする。例えば、拡張末期の個別領域α1と収縮末期の個別領域ω1との間を補間することで求めた各心時相(各フレーム)の個別領域を、個別領域β1、γ1、δ1、・・・と称することにする。すなわち、個別領域β1、γ1、δ1、・・・は、各心時相(各フレーム)において個別領域α1に対応し、それぞれの心時相(フレーム)において1番目の個別領域を表していることになる。同様に、拡張末期の個別領域α2と収縮末期の個別領域ω2との間の補間をすることで求めた各心時相(各フレーム)の個別領域を、個別領域β2、γ2、δ2、・・・と称することにする。すなわち、個別領域β2、γ2、δ2、・・・は、各心時相(各フレーム)において個別領域α2に対応し、それぞれの心時相(フレーム)において2番目の個別領域を表している。このように、各心時相(各フレーム)において個別領域α1〜α10に対応する個別領域を、個別領域β1〜β10、個別領域γ1〜γ10、個別領域δ1〜δ10、・・・と称することにする。
領域推定部16は、各個別領域の座標情報に、各個別領域が定義された心時相を示す情報と、各個別領域の番号を示す番号情報とを付帯させて、断面推定部17に出力する。断面推定部17は、メモリを有し、心時相を示す情報と番号情報とが付帯された各個別領域の座標情報をメモリに記憶する。
断面推定部17は、2Dスキャンの対象として初期設定された短軸断面の座標情報と、各心時相における個別領域の座標情報に基づいて、初期設定された短軸断面の位置を心時相ごとに求める。まず、制御部9は、初期設定された拡張末期における短軸断面の座標情報を断面推定部17に出力する。上述したが、2Dスキャンにおいては、この座標で特定される断面がスキャンされ、その短軸断面の短軸像が表示部81に表示される。そして、断面推定部17は、拡張末期において設定された個別領域α1〜α10のそれぞれの座標情報と、初期設定された拡張末期における短軸断面の座標情報とに基づいて、個別領域α1〜α10のうち、初期設定された短軸断面が含まれる個別領域を特定する。
例えば図10に示すように、断面30Aが初期設定された拡張末期における短軸断面である。この場合、断面推定部17は、断面30Aの座標情報と、拡張末期における個別領域α1〜α10のそれぞれの座標情報とに基づいて、断面30Aを含む個別領域α4を特定する。一方、領域推定部16によって、個別領域α4に対応する各心時相の個別領域の位置が求められている。すなわち、個別領域α4に対応する各心時相の個別領域β4、γ4、δ4、・・・の位置がそれぞれ求められている。拡張末期においては、断面30Aは4番目の個別領域α4に含まれているため、拡張末期以外の心時相においても、断面30Aに対応する断面は4番目の個別領域β4、γ4、δ4、・・・にそれぞれ含まれていると推定される。従って、断面推定部17は、各心時相の個別領域β4、γ4、δ4、・・・、ω4のそれぞれに、断面30Aに対応する断面が含まれていると推定する。
そして、断面推定部17は、各心時相の個別領域内における断面の相対的な位置は固定されていると推定し、各心時相における断面30Aに対応する断面の位置を求める。換言すると、断面推定部17は、断面30Aと個別領域α4との相対的な位置関係に従って、各心時相の個別領域内における断面30Aに対応する断面の位置を求める。
例えば図10に示すように、断面推定部17は、収縮末期においても、断面30Aに対応する断面30Zは4番目の個別領域ω4に含まれていると推定し、断面30Aと個別領域α4との相対的な位置関係に従って、個別領域ω4内における断面30Zの位置を特定する。
そして、断面推定部17は、断面30Aと個別領域α4との相対的な位置関係に従って、個別領域β4内における断面の位置を特定し、個別領域γ4内における断面の位置を特定する。そして、断面推定部17は、個別領域β4、γ4、δ4、・・・、ω4のそれぞれにおいて、断面30Aに対応する断面の位置を特定する。断面推定部17は、各心時相の短軸断面の位置を示す情報(座標情報)をスキャン制御部18に出力する。
スキャン制御部18は、各心時相の短軸断面の座標情報に基づいて、各心時相における超音波の送信角度を決定する。例えば、スキャン制御部18は、初期設定された短軸断面と各心時相の短軸断面との間の角度(角度差)を求める。そして、スキャン制御部18は、初期設定された送信角度をその角度差の分、変えることで、各心時相における超音波の送信角度を決定する。
そして、スキャン制御部18は、制御部9を介してECG信号を受け付けて、各心時相に対応する送信角度に従って、送受信部3に超音波を送信させる。この制御により、送受信部3は、時間とともに2Dスキャンの対象となる断面(短軸断面)の位置を変えて、それぞれの断面を超音波で走査し、各心時相の受信信号を取得する。
ここで、各心時相における2Dスキャンの対象となる断面について、図11を参照して説明する。図11は、2Dスキャンの対象となる断面を示す図である。例えば図11に示すように、送受信部3はスキャン制御部18の制御の下、拡張末期においては断面30Aをスキャンし、心時相ごとに2Dスキャンの対象となる断面の位置を変えてスキャンを行なう。例えば収縮末期においては、送受信部3は、初期設定における断面30Aに対する送信角度から角度Bずらした位置の断面30Zをスキャンする。また、拡張末期と収縮末期との間のある心時相では、送受信部3は、断面30Aに対する送信角度から角度Aずらした位置の断面30Mをスキャンする。このように、拡張末期から収縮末期の間の心時相において、送受信部3は、2Dスキャンの対象となる断面の位置を、断面30A、・・・、断面30M、・・・、断面30Zと変えながら2Dスキャンを行なう。
送受信部3によって各心時相の受信信号が取得されると、信号処理部4は各受信信号に対して信号処理を施し、画像生成部6は各心時相の短軸像データを生成する。そして、表示制御部7は、取得された順番に従って順次、各心時相の短軸像を表示部81に表示させる。心臓の同一部位を切断する断面をスキャンしていると推定されるため、心臓の同一部位を心時相ごとに追跡し、同一部位の短軸像を生成して表示することが可能となる。
なお、第2実施形態においては、超音波プローブ2、送受信部3、及び画像生成部6によって、この発明の「画像取得手段」の1例を構成する。
また、短軸断面に対する2Dスキャンのみを行なって、短軸像のみを表示部81に表示しても良いし、3Dスキャンを行なうことで、長軸像や3次元画像を表示部81に表示しても良い。
また、3Dスキャンを行なう場合に、スキャン制御部18は、各心時相における断面を含み、予め設定された所定の大きさの3次元領域を送受信部3にスキャンさせることが好ましい。これにより、各心時相において、所望の部位を含む3次元領域がスキャンされ、所望の部位以外の3次元領域はスキャンされないため、ボリュームレートを向上させ、さらに、画質を向上させることが可能となる。例えば、心臓の弁を切断する断面を追跡し、弁を含む3次元領域を送受信部3によってスキャンさせることで、所望の部位(弁)を含む3次元領域がスキャンされ、弁以外の3次元領域はスキャンされないため、ボリュームレートを向上させ、更に、弁を表す画像の画質を向上させることが可能となる。
なお、演算部10Aは、CPUと、ROM、RAMなどの記憶装置を備えている。記憶装置には、演算部10Aの機能を実行するための演算プログラムが記憶されている。演算プログラムには、位置算出部11の機能を実行するための位置算出プログラム、領域設定部15の機能を実行するための領域設定プログラム、領域推定部16の機能を実行するための領域推定プログラム、及び断面推定部17の機能を実行するための断面推定プログラムが含まれる。CPUが、位置算出プログラムを実行することで、3次元空間における心尖と弁輪面の位置を求める。また、CPUが、領域設定プログラムを実行することで、心尖と弁輪面との間の領域を複数の個別領域に分割する。また、CPUが、領域推定プログラムを実行することで、拡張末期と収縮末期との間の各フレームにおける個別領域の位置を推定する。また、CPUが、断面推定プログラムを実行することで、拡張末期と収縮末期との間の各フレームにおける断面の位置を推定する。
以上のように、第2実施形態に係る超音波診断装置1Aによると、拡張末期と収縮末期とで設定された個別領域に基づいて、フレーム(心時相)ごとに個別領域の位置を推定し、更に、初期設定された短軸断面の位置を推定することで、心臓の同一部位を切断する断面を心時相ごとに追跡することが可能となる。このように、心時相ごとに2Dスキャンの対象となる断面の位置を自動的に変えることで、心臓の動きに追従して短軸像を生成して表示することが可能となる。これにより、短軸像に表された心臓の同一部位を追跡して観察することが可能となる。例えば、心筋の同一部位における壁厚の変化を追跡して観察することが可能となる。
なお、第1実施形態に係る超音波診断装置1においても、第2実施形態のように、心尖と弁輪面との間を複数の個別領域に分割し、各個別領域の各心時相における位置を求めることで、各心時相における短軸断面の位置を推定しても良い。
(動作)
次に、第2実施形態に係る超音波診断装置1Aによる一連の動作について、図12を参照して説明する。図12は、この発明の第2実施形態に係る超音波診断装置による一連の動作を示すフローチャートである。
(ステップS10)
送受信部3はスキャン制御部18の制御の下、初期設定の短軸断面を2Dスキャンする。例えば、送受信部3は、拡張末期において弁輪面にほぼ平行な短軸断面を2Dスキャンの対象とする。初期設定された短軸断面の座標情報は、制御部9に設定される。そして、継続して2Dスキャンを行なうことで、短軸像をリアルタイムに表示部81に表示する。
(ステップS11)
また、送受信部3はスキャン制御部18の制御の下、3次元の撮影領域を3Dスキャンすることで、撮影領域のボリュームデータを取得する。例えば、送受信部3は、1心周期に亘って、左心室全体を含む心臓のボリュームデータを心時相ごとに取得する。制御部9は、各ボリュームデータに、各ボリュームデータが取得された心時相を対応付けて画像記憶部5に記憶させる。このボリュームデータは、2Dスキャンの対象となる断面の位置を推定する処理に用いられる。
(ステップS12)
操作者が操作部82を用いて拡張末期と収縮末期を指定し、更に、所望の長軸断面を指定する。画像生成部6は、制御部9を介して操作者の指定を受け付け、画像記憶部5から拡張末期のボリュームデータと収縮末期のボリュームデータを読み込み、拡張末期の長軸像データと収縮末期の長軸像データを生成する。表示制御部7は、長軸像を表示部81に表示させる。
(ステップS13)
そして、操作者が操作部82を用いて、拡張末期と収縮末期の長軸像において、心臓の心尖と弁輪の位置を指定する。心尖の座標情報と弁輪の座標情報は、ユーザインターフェース(UI)8から制御部9を介して演算部10Aに出力される。
(ステップS14)
位置算出部11は、拡張末期の長軸像で指定された心尖に基づいて、拡張末期における心尖の3次元空間での位置を特定する。また、位置算出部11は、2つの長軸像で指定された弁輪の位置のうち、少なくとも3つの弁輪の位置を含む平面を3次元空間における弁輪面として定義する。さらに、収縮末期についても拡張末期と同様に、位置算出部11は、心尖と弁輪面の位置を求める。そして、位置算出部11は、拡張末期と収縮末期における心尖と弁輪面の3次元空間での座標情報を領域設定部15に出力する。
(ステップS15)
領域設定部15は、拡張末期と収縮末期における心尖の弁輪面の座標情報を位置算出部11から受けると、拡張末期と収縮末期において、心尖と弁輪面との間に、弁輪面に平行な複数の平面を設定することで、心尖と弁輪面との間の領域を複数の個別領域に分割する。例えば図10に示すように、領域設定部15は、拡張末期について、心尖22Aと弁輪面(断面A1)との間の領域を、個別領域α1〜α10に分割し、収縮末期について、心尖23Aと弁輪面(断面Z1)との間の領域を、個別領域ω1〜ω10に分割する。そして、領域設定部15は、個別領域α1〜α10と個別領域ω1〜ω10のそれぞれの座標情報に、各個別領域の番号を示す番号情報を付帯させて領域推定部16に出力する。
(ステップS16)
領域推定部16は、個別領域α1〜α10と個別領域ω1〜ω10の座標情報に基づいて、線形補間又は三角関数による補間を行うことで、拡張末期と収縮末期との間の各心時相(各フレーム)における各個別領域の位置を推定する。各心時相における個別領域の座標情報は、断面推定部17に出力される。
(ステップS17)
断面推定部17は、2Dスキャンの対象として初期設定された短軸断面の座標情報を制御部9から受けて、その初期設定された短軸断面の座標情報と各心時相における個別領域の座標情報とに基づいて、初期設定された短軸断面の位置を心時相ごとに求める。例えば図10に示すように、拡張末期においては、初期設定された断面30Aは4番目の個別領域α4に含まれているため、断面推定部17は、拡張末期以外の心時相においても、断面30Aに対応する断面は4番目の個別領域β4、γ4、δ4、・・・にそれぞれ含まれていると推定する。そして、断面推定部17は、断面30Aと個別領域α4との相対的な位置関係に従って、各心時相の個別領域内における断面30Aに対応する断面の位置を求める。断面推定部17は、各心時相の短軸断面の座標情報をスキャン制御部18に出力する。
(ステップS18)
スキャン制御部18は、各心時相の短軸断面の座標情報に基づいて、各心時相における超音波の送信角度を決定する。例えば、スキャン制御部18は、初期設定された短軸断面と各心時相の短軸断面との角度差を求め、初期設定された送信角度をその角度差の分、変えることで、各心時相における送信角度を求める。
(ステップS19)
そして、送受信部3はスキャン制御部18の制御の下、各心時相に対応する送信角度に従って、時間とともに2Dスキャンの対象となる短軸断面の位置を変えて、それぞれの短軸断面を2Dスキャンする。
(ステップS20)
送受信部3によって各心時相の受信信号が取得されると、信号処理部4は各受信信号に対して信号処理を施し、画像生成部6は各心時相の短軸像データを生成する。そして、表示制御部7は、各心時相の短軸像を順番に表示部81に表示させる。
以上のように、心時相ごとに個別領域の位置を推定し、更に、初期設定された短軸断面の位置を推定することで、心臓の同一部位を切断する断面を追跡して2Dスキャンすることが可能となる。その結果、各心時相において、心臓の同一部位の断面を追跡して観察することが可能となる。