JP5688561B2 - 光学表示装置 - Google Patents
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Description
このような意匠パターンのマスク層を複数用意して重複配置(交錯)させ、異なる色のバックライトを使用することで異なる意匠パターンを表示させる光学表示装置に関する技術が提供されている。そのような技術の一例として特許文献2を挙げる。特許文献2では異なる2種類の光源として赤色LEDと青色LEDを使用して赤色と青色のそれぞれの波長域に透過特性を有するマスク層を使用して赤色LEDと青色LEDのいずれかを点灯させて赤色あるいは青色の意匠パターンを表示させるものである。
ここで、第1のマスク層の特性では青色の照射光の透過率が100%近くとなり、マスクパターンの有無による光量差がなく、赤色の照射光の透過率が0%近くとなるのが理想である(第2のマスク層ではこの逆)。しかし、実際には染料などの吸収材料では波長の違いに応じてマスク層にそれほど明瞭に透過率の差を設けることは困難である。そのため、次のような問題が生じている。
例えば図5のように第1のマスク層で青色の照射光の透過を優先するように設計すると、赤色の透過率は0%とはならないため、赤色の照射光を照射させた場合に第1のマスク層から光が漏れることとなるためコントラストが弱くなって明視性や可読性が悪くなってしまう。
今ここで、図5及び図6で、第1のマスク層において、実際に第1のマスク層が青色の照射光で目視できない領域のしきい値を第1の飽和レベルとし、一方実際に光の漏れを感じない領域のしきい値をここでは第2の飽和レベルとする。(尚、マスク層を通過しない光(マスクパターンの無い領域を通る光)は100%の透過率であるため第1の飽和レベル以上にある。)少なくとも第1のマスク層は青色の照射光の透過率が100%とはいわないまでも第1の飽和レベル以上や第1の飽和レベルに近くなり、赤色の照射光の透過率が0%とはいわないまでも第2の飽和レベル以下や第2の飽和レベルに近くなればマスクの特性はより改善されることとなる。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、マスク層における光の漏れや複数のマスク層のカブリを防止することに効果的な光学表示装置を提供することである。
また、請求項2の発明では請求項1の発明の構成に加えて、前記再帰反射層を前記透明基板上に成膜し前記光学構造体の一部としたことをその要旨とする。
また、請求項3の発明では請求項1又は2の発明の構成に加えて、前記再帰反射層と最も可視光光源側に配置された前記マスク層の間には拡散層が配置されていることをその要旨とする。
また、請求項4の発明では請求項1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、前記マスク層の外光側には拡散層が配置されていることをその要旨とする。
また、請求項5の発明では請求項1〜4のいずれかの発明の構成に加えて、複数の前記マスク層の上層には外光によって複数の前記マスク層の意匠パターンを透視させない程度の所定の吸収率又は所定の反射率を備え、なおかつ前記可視光光源からの照射光を透過させる所定の透過率を備えた遮蔽層が配置されていることをその要旨とする。
「反射手段」とは再帰反射層と対面して光をマスク層方向に再指向させられる手段であれば特に限定されるものではない。可視光光源自体に設けるようにしても、可視光光源の周囲に設けるようにしてもよい。
また、前記マスク層の外光側には拡散層が配置されていることが好ましい。このような構成であれば、光の拡散によってマスク層の意匠パターンにカブリがある場合にこれを目視させないような効果を与えることができる。また、外光によってマスク層の意匠パターンを見えにくくする効果もある。
また、複数のマスク層の上層には外光によって複数のマスク層の意匠パターンを透視させない程度の所定の吸収率又は所定の反射率を備え、なおかつ可視光光源からの照射光を透過させる所定の透過率を備えた遮蔽層が配置されていることが好ましい。これによって、光学表示装置において可視光光源が点灯しておらず外光のみが与えられている状態でマスク層の意匠パターンを透視させず、なおかつ可視光光源が点灯した場合には可視光光源の種類に応じた意匠パターンを遮蔽層を透過して目視させることができる。遮蔽層として、より具体的には、外光を吸収することで明度が低くなって外光による複数のマスク層の意匠パターンを透視させないような濃色を呈する濃色層であり、濃色層における所定の透過率を吸収率よりも大きく設定したものが考えられる。
また、外光を反射することで明度が高くなって外光による複数のマスク層の意匠パターンを透視させないような淡色を呈する淡色層であり、淡色層における所定の透過率を反射率よりも大きく設定したものが考えられる。
ここに、濃色層や淡色層とは特に明度の高低をいい、彩度のあるなしは問わない。濃色の代表は黒色であり淡色の代表は白色であるが、どの程度で黒であり白であるかは周囲の色や周囲の光量によって変化する相対的な概念であるため、明度0%の黒や明度100%の状態のみを意味するものではない。
これらの層は誘電体多層膜によって構成することが考えられる。誘電体薄膜層としては一般にはそれ自体が多層膜構造を取ることとなる。誘電体薄膜の膜数、膜素材、膜厚を設計することによって透過光(つまり反射光)を自由に制御することが可能である。多層膜の各構成膜層は金属もしくは金属窒化物もしくは金属酸化物もしくは金属フッ化物からなる膜素材であって、例えばCr(クロム)、Ni(ニッケル)、Si(シリコン)、Si3N4(窒化シリコン)TiO2(二酸化チタン)、Ta2O5(五酸化タンタル)、SiO2(酸化ケイ素)、MgF2(フッ化マグネシウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、ZrO2(酸化ジルコニュウム)らが挙げられる。
本発明では構成されるマスク層の数は特に限定されるものではない。所望の波長に対する反射性能又は透過性能を発現させるために化合物を選択し、組み合わせて誘電体光学膜を構成することが可能である。誘電体薄膜層の成膜方法に特に限定的な意味はないが一般的には蒸着法やスパッタリング法で成膜されることが好ましい。
また、これらの層はバインダー樹脂中に微粒子を分散させ所定の成膜方法(印刷、スピンコート、ディッピング、塗布、染色等)で成膜することが考えられる。バインダー樹脂としては実質的に透明であって、照射光を大きく変化させないものであれば特に限定されるものではない。例えばポリエステル、ポリカーボネート、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、有機ケイ素系樹脂、フッ素系樹脂が挙げられる。微粒子素材としてはシリカ粒子、顔料、染料あるいは蛍光剤等が具体的に挙げられる。
本発明は例えば、家電製品、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistants)のような電化製品の表示画面に応用することが可能である。
(実施例1)
図1に示すように、光学表示装置10は例えば電化製品であるファクシミリ装置11に搭載されるものとする。光学表示装置10は光学フィルム12とその背後に配置された可視光光源としての青色の照射光を発光する第1のLED13(λtyp:470nm)と赤色の照射光を発光する第2のLED14(λtyp:630nm)と反射手段としてのミラー15とより構成されている。第1及び第2のLED13、14は意匠パターンに対応した位置に過不足なく照明できるように適度な間隔で複数個配置されている。光学表示装置10は第1及び第2のLED13、14の点灯状態を変更することで待機時に表示される「SLEEP」の文字(意匠パターンP1)と操作可能状態で表示される「START」の文字(意匠パターンP2)の両方の意匠パターンP1,P2を選択的に表示させることができる。
光学フィルム12は図2に示すように2枚の第1及び第2の透明基板17,18を重複させた2枚構成とされている。第1の透明基板17が上層(外側)に配置されている。第1の透明基板17の下面には遮蔽層19が形成されている。遮蔽層19は特定の意匠パターンが形成されているわけではなく均一に第1の透明基板17に対して延設される膜体である。本実施例1では遮蔽層19は印刷によって成膜されている。
第2の透明基板18の上面には第1のマスク層21が形成され、下面には第2のマスク層22が形成されている。本実施例では第1及び第2のマスク層21,22は印刷によって成膜されている。尚、図2においては実際には第1及び第2のマスク層21,22が成膜されていない部分に空白の空間が存在するわけではなく、光の透過・遮蔽関係を模式的に説明するために空間があるような図示としているものである。
第1のマスク層21は透過−吸収特性を示す表1のグラフにおいて(1)の光学特性を示し、第2のマスク層22は表1のグラフ(2)の光学特性を示し、遮蔽層19は表1のグラフ(3)の光学特性を示す。
表2は拡散層24に使用可能なインキを比較例と共に示したものである。ここでは十分な濁りと拡散透過率を示した白インキCを採用した。再帰反射層25は表3のグラフ(1)の光学特性を示す。尚、表1及び表3において各層の光学特性は可視光域のみに特化して記入されている。
一方、表1のグラフ(2)に示すように、第2のマスク層22は青色を中心とした波長群である450nm〜500nm辺りの光に対しては平均5%以下の透過率(平均95%程度の吸収率)に設定され、赤色を中心とした波長群である600nm〜750nmの光に対しては平均90%近くの非常に高い透過率に設定されている。つまり、第2のマスク層22は赤色に対する透過率が極めて高く、青色付近の可視光を吸収するため、この第2のマスク層22を単独目視した場合には赤色を呈することとなる。
つまり、遮蔽層19は青色に対しても赤色に対しても透過性能を十分備えているため、第1及び第2のLED13、14が点灯された場合には第1のマスク層21の意匠パターンP1を浮かび上がらせる青色の照射光として、あるいは第2のマスク層22の意匠パターンP2を浮かび上がらせる赤色の照射光として透過していずれも上層側から目視できることとなる。また、第1及び第2のマスク層21,22の吸収特性を合成すると紫色系となり、更にここに遮蔽層19の吸収特性、主として530〜600nm付近の緑色系の吸収特性を合成すると遮蔽層19をデフォルト状態で目視した場合にはほぼ黒に近い非常に濃色の背景から浮かび上がることとなる。本実施例1では遮蔽層19の平均透過率は約25%に設定したため第1及び第2のマスク層21,22の重なった部分の平均透過率はこれ以下とされる。
(1)第1及び第2のLED13、14のいずれかが点灯された場合には、第1のマスク層21の意匠パターンP1が青色で浮かび上がる、あるいは第2のマスク層22の意匠パターンP2が赤色で浮かび上がることとなり、いずれか一方の意匠パターンのみを目視させることができる。
(2)第1及び第2のLED13、14のいずれも点灯されない場合においては遮蔽層19によって第1及び第2のマスク層21,22が遮蔽され、外光によって意匠パターンP1,P2が目視されにくくなっている。一方、遮蔽層19は第1及び第2のLED13、14のいずれかが点灯された場合に意匠パターンP1,P2の目視を阻害することはない。
(3)第1及び第2のマスク層21,22によって吸収されるはずの青色光と赤色光は再帰反射層25によって反射され、ミラー15によって再び反射されることで再帰反射層25以外の第1及び第2のマスク層21,22を透過することとなる。特に本実施例のように意匠パターンP1,P2が文字としてポジで表現される場合には意匠パターンP1,P2の認識のための光量に加算できる光量が多いため意匠パターンのコントラストの向上や複数のマスク層のカブリの防止において有効である。
(4)拡散層24によって第1及び第2のLED13、14の光が分散されるため、意匠パターンP1,P2のコントラストがムラになることがない。
・拡散層24を第2のマスク層22と再帰反射層25の間以外の位置に配置するようにしてもよい。特に図3に示すように、第1及び第2のマスク層21,22の上層であることが好ましい。図3では遮蔽層19の下層に配置したが、遮蔽層19の上層であってもよい。このように第1及び第2のマスク層21,22の上層に拡散層24を配置することで意匠パターンP1,P2にカブリが生じるような場合にそれも目視させないようにすることが可能となる。
・上記では説明の簡略化のために2つのマスク層の場合について説明したが、3つ以上のマスク層を有する光学表示装置に応用することも可能である。
・マスク層や光源の波長域は上記に限定されるものではない。
・透明基板15への成膜順序や成膜方法、また、透明基板17,18の枚数は適宜変更可能である。
・遮蔽層19の光学特性は上記に限定されるものではない。例えば表1のグラフ(4)のように可視光域(400〜750nmの範囲)においてフラットな特性、つまり一定した透過率に設定するようにしてもよい。青の照光量と赤の照光量の光量バランスが調整しやすくなる。また、遮蔽層19は蒸着以外に市販品の減光フィルムを用いてもよいし、スモーク色の成型材料でも構わない。また、遮蔽層19を使用せずに光学表示装置10を構成することも可能である。
・再帰反射層25の光学特性は上記に限定されるものではない。例えば表3のグラフ(2)のように可視光域(400〜750nmの範囲)において高い反射率(90%以上)でフラットな特性、つまり一定した透過率に設定するようにしてもよい。このようなフラットな特性であれば可視光光源の特性が上記以外の場合であっても容易に適用することが可能である。
・拡散層24としては上記実施例では表2の白インキCを採用したが、十分な濁りと拡散透過率があれば他のインキ(例えば白インキD)を採用することも可能である。
・遮蔽層19としては上記実施例では濃色(黒色系)としたが、白インキのような淡色系の遮蔽層とすることも可能である。
・照射用の光源はLEDやELなどの単色光源が好ましいが、電球などの光源と薄膜を組み合わせた光源を用いても良く、導光板や拡散板などを使って照射光としても良い。
・反射手段としてのミラー15の形状や配置位置は上記に限定されない。ミラー15の光学特性は上記以外に再帰反射層25と同じ特性とすることも可能である。
・遮蔽層19の上面(例えば第1の透明基板17の上面)に反射層のような他の膜を設けるようにしてもよい。
その他本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
Claims (5)
- 記号あるいは図形等からなる意匠パターンをネガあるいはポジのいずれかの関係となるように中抜きしたそれぞれ他のマスク層とは異なる波長域を透過領域とする複数のマスク層を1枚あるいは複数枚の透明基板上に成膜した光学構造体と、
複数の前記マスク層に対応した波長域に発光強度のピークを有する照射光を発生させる複数種類の可視光光源とを備えた光学表示装置において、
複数の前記マスク層と前記可視光光源の間であって複数の前記マスク層の重複した前記意匠パターンの成膜部分には再帰反射層を配置するとともに、前記再帰反射層によって反射させた可視光を前記マスク層方向に再び反射させる反射手段とを備え、
前記マスク層の透過領域となる波長域の光に対する前記再帰反射層の反射率を前記マスク層の透過率よりも高くすることを特徴とする光学表示装置。 - 前記再帰反射層は前記透明基板上に成膜され前記光学構造体の一部とされていることを特徴とする請求項1に記載の光学表示装置。
- 前記再帰反射層と最も可視光光源側に配置された前記マスク層の間には拡散層が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学表示装置。
- 前記マスク層の外光側には拡散層が配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学表示装置。
- 複数の前記マスク層の上層には外光によって複数の前記マスク層の意匠パターンを透視させない程度の所定の吸収率又は所定の反射率を備え、なおかつ前記可視光光源からの照射光を透過させる所定の透過率を備えた遮蔽層が配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学表示装置。
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