JP5687953B2 - 繊維体の固定方法及び発泡成形体の製造方法 - Google Patents

繊維体の固定方法及び発泡成形体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、被固定物に対して繊維体を固定するための方法、及び、金型に形成されたキャビティ内で発泡樹脂原液を発泡硬化させることにより発泡成形体を製造する方法に関する。
例えば、発泡成形体の一例である車両用のシートクッションパッドの裏面には、不織布などの繊維体が一体的に形成されている場合がある(例えば、特許文献1〜3参照)。当該シートクッションパッドが取り付けられるシートフレームには、例えばスプリングなどの金属部品が固定されており、当該金属部品を上方から覆うようにしてシートクッションパッドが取り付けられる。上記のようにシートクッションパッドの裏面に繊維体を一体的に形成することにより、シートクッションパッドの裏面と前記金属部品が直接接触しないようにして、摩擦による耐久性の低下や異音の発生などを防止することができる。
図12は、シートクッションパッドを製造するための成形金型の一例を示す断面図である。この成形金型は、シートクッションパッドの表面側を成形するための下型31と、シートクッションパッドの裏面側を成形するための上型32とを備えている。下型31の上方に上型32を対向させることにより、成形金型内に閉塞されたキャビティ33を形成することができる。このキャビティ33内に注入された発泡樹脂原液34を発泡硬化させることにより、キャビティ33の形状に対応するシートクッションパッドが成形される。
シートクッションパッドの裏面に繊維体を一体的に形成する場合には、図12に示すように、例えば上型32の下面に繊維体35を取り付け、その状態でキャビティ33内の発泡樹脂原液34を発泡硬化させることにより、繊維体35がシートクッションパッドの裏面に一体化される。
特開2002−120236号公報 特開平5−130923号公報 特開2004−358916号公報
繊維体を金型に取り付ける方法としては、固定ピンを用いた方法(上記特許文献3参照)と、磁気シートを用いた方法(上記特許文献1参照)とを例示することができる。このような方法を用いて繊維体の周縁部を上型に取り付けた場合には、上型を下型の上方に対向させたときに、繊維体の周縁部が垂れ下がってキャビティ内に入り込むのを防止することができる。
固定ピンを用いた方法は、金型の固定孔に固定された固定ピンに対して、繊維体に形成されている孔を嵌め込むことにより、繊維体を金型に取り付ける方法である。しかしながら、この方法では、繊維体の周縁部を固定ピンで固定する際などに、作業者側から固定ピンの位置が見えず、固定ピンに繊維体の孔を嵌め込み難い場合があった。また、例えば金型の周縁部のように、成形されるシートクッションパッドの厚みが薄い部分(薄肉折り返し部など)に対応する領域では、固定ピンを設けること自体が困難な場合があった。また、作業工数に制限がある場合には、繊維体に形成された小さな孔に固定ピンを通す工数が作業を圧迫する場合があった。
一方、磁気シートを用いた方法は、繊維体に予め磁気シートを取り付けておき、その磁気シートを金型に設けられた永久磁石の磁力で引き寄せることにより、繊維体を金型に取り付ける方法である。しかしながら、この方法では、磁気シートや永久磁石といった部品を用意する必要があるため、製造コストが高くなるという別の問題が生じる。
上記のような問題は、シートクッションパッドに限らず、他の発泡成形体を製造する際にも生じる場合がある。また、発泡成形体を製造する際だけでなく、他の各種繊維体を被固定物に固定する際にも、容易に固定できるような構成が望まれていた。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、被固定物に対して繊維体を容易に固定することができる繊維体の固定方法及び発泡成形体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る繊維体の固定方法は、被固定物に対して繊維体を固定するための方法であって、開口部と当該開口部の周縁部に設けられたエッジ部とが形成された固定部材を、前記被固定物に取り付ける固定部材取付工程と、前記固定部材の開口部に前記繊維体を押し込むことにより、当該繊維体を前記エッジ部に引っ掛けて固定する繊維体固定工程とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、固定部材の開口部に繊維体を押し込むだけで、当該繊維体の任意の位置を固定部材のエッジ部に引っ掛けて固定することができる。したがって、被固定物に対して繊維体を容易に固定することができる。
前記被固定物には、前記固定部材の開口部に対向する位置に凹部が形成されていてもよい。
本発明によれば、固定部材の開口部に繊維体を押し込む際に、被固定物の凹部内まで繊維体を押し込むことができるので、エッジ部に対して繊維体をより確実に引っ掛けることができる。
前記固定部材が、金属により形成されていてもよい。
本発明によれば、固定部材のエッジ部が金属で形成されることにより、繊維体を固定部材の開口部の奥の方まで押し込まなくても、エッジ部に対して繊維体を引っ掛かりやすくすることができる。また、固定部材が金属により形成されていれば、高温環境下でも耐久性が高く、劣化しにくい。
前記固定部材取付工程では、前記被固定物に固定された磁性体の磁力によって前記固定部材を取り付けてもよい。
本発明によれば、被固定物に固定された磁性体の磁力を用いて、固定部材を容易に着脱することができる。
前記固定部材が、樹脂により形成されていてもよい。
本発明によれば、固定部材のエッジ部が樹脂で形成されることにより、繊維体を固定部材の開口部に押し込む際に、エッジ部を弾性変形させることができる。これにより、繊維体を固定部材の開口部に押し込んだ後にエッジ部が復元するため、当該エッジ部に対して繊維体を引っ掛かりやすくすることができる。また、樹脂により形成された安価な固定部材を使用することができる。
前記固定部材取付工程では、取付部材で前記固定部材を前記被固定物に押さえ付けて取り付けてもよい。
本発明によれば、取付部材を用いて固定部材を被固定物に強固に取り付けることができるので、樹脂により形成された固定部材であっても、繊維体を被固定物に安定して固定することができる。
前記固定部材の開口部及びエッジ部は、作業者が前記開口部に指を挿入できるように構成されており、前記繊維体固定工程では、前記固定部材の開口部に前記繊維体を指で押し込むことにより、当該繊維体を前記エッジ部に引っ掛けて固定してもよい。
本発明によれば、作業者が、固定部材の開口部に繊維体を指で押し込むだけで、被固定物に対して繊維体を容易に固定することができる。
本発明に係る発泡成形体の製造方法は、金型に形成されたキャビティ内で発泡樹脂原液を発泡硬化させることにより発泡成形体を製造する方法であって、開口部と当該開口部の周縁部に設けられたエッジ部とが形成された固定部材を、前記金型に取り付ける固定部材取付工程と、前記固定部材の開口部に前記繊維体を押し込むことにより、当該繊維体を前記エッジ部に引っ掛けて固定する繊維体固定工程と、前記キャビティ内で発泡樹脂原液を発泡硬化させることにより、前記繊維体と一体化された発泡成形体を成形する発泡成形工程とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、金型に対して繊維体を容易に固定し、当該繊維体と一体化された発泡成形体を容易に製造することができる。
本発明の一実施形態に係る固定部材を用いて製造されたシートクッションパッドの一例を示す斜視図である。 シートクッションパッドの取付態様の一例を示す側面図である。 シートクッションパッドを製造するための成形金型の一例を示す側面図である。 繊維体の取付態様の一例を示す斜視図である。 固定プレートの構成例を示した平面図である。 固定プレートの構成例を示した平面図である。 固定プレートの構成例を示した平面図である。 固定プレートの構成例を示した平面図である。 固定プレートの構成例を示した平面図である。 固定プレートの構成例を示した平面図である。 固定プレートの構成例を示した平面図である。 固定プレートの別の構成例を示した平面図である。 固定プレートの別の構成例を示した平面図である。 固定プレートのさらに別の構成例を示した平面図である。 固定プレートのさらに別の構成例を示した平面図である。 固定プレートのさらに別の構成例を示した平面図である。 固定プレートのさらに別の構成例を示した平面図である。 図7A〜図7Dに例示されるような樹脂製の固定プレートを取り付ける際に用いられる取付部材の一例を示した平面図である。 固定プレートの一例の部分拡大図である。 固定プレートの取付態様の一例を示した断面図である。 シートクッションパッドの製造方法の一例を示すフローチャートである。 シートクッションパッドを製造するための成形金型の一例を示す断面図である。
図1は、本発明の一実施形態に係る固定部材を用いて製造されたシートクッションパッド10の一例を示す斜視図である。図2は、シートクッションパッド10の取付態様の一例を示す側面図である。ただし、シートクッションパッド10は発泡成形体の単なる一例に過ぎず、本発明は、シートクッションパッド10以外の各種発泡成形体の製造に用いることができるだけでなく、各種の被固定物に対して繊維体を固定する場合に用いることができる。
シートクッションパッド10は、発泡樹脂の成形体からなり、本実施形態では軟質ポリウレタンフォーム(以下、単に「ウレタンフォーム」と呼ぶ。)により形成されている例を示す。このシートクッションパッド10は、ウレタンフォーム16が不図示の表皮により被覆された状態で車両(例えば、自動車)に取り付けられることにより、車両の座席シートの着座部として用いられる。
シートクッションパッド10は、シートフレーム9に裏面部12を対向させた状態で取り付けられることにより、その表面部11上に着座することが可能になる。シートフレーム9には、例えばスプリングなどの金属部品が固定されており、当該金属部品が裏面部12と接触する状態でシートクッションパッド10が取り付けられる。
ウレタンフォーム16の裏面が前記金属部品と直接接触するような構成の場合には、摩擦による耐久性の低下や異音の発生などの問題が生じる。そこで、本実施形態では、シートクッションパッド10の裏面部12に繊維体14を設けて、当該繊維体14を介してシートクッションパッド10の裏面部12が前記金属部品に接触するように構成されている。繊維体14は、如何なる材料で形成されていてもよいが、例えば不織布などのように、先細りした部分に引っ掛かりやすい材料で形成されていることが好ましい。
図3は、シートクッションパッド10を製造するための成形金型1の一例を示す側面図である。この成形金型1は、シートクッションパッド10の表面部11側を成形するための下型2と、シートクッションパッド10の裏面部12側を成形するための上型3とを備えている。下型2及び上型3は、いずれも鋼材により形成されている。下型2の周囲には、例えば不図示の温調配管が設けられている。
この例では、上型3は、下型2に対して回動軸4を中心に回動可能に取り付けられている。図3に示すように、下型2に対して上型3が上方に対向していない状態から、回動軸4を中心に上型3を回動させることにより、上型3の上方に下型2を対向させることができる。
下型2の上面(上型3に対向する側の面)には、シートクッションパッド10の表面部11に対応する形状の凹部21が形成されている。一方、上型3の下面(下型2に対向する側の面)には、シートクッションパッド10の裏面部12に対応する形状の内型22が設けられている。当該内型22は、上型3の一部を構成しており、上型3が下型2に対向した状態では、凹部21との間に閉塞されたキャビティ23を形成する。このようにして下型2と上型3との間に形成されたキャビティ23内で、発泡樹脂原液を発泡硬化させることにより、シートクッションパッド10を製造することができる。
本実施形態では、内型22の下面(下型2に対向する側の面)に上述の繊維体14が取り付けられた後、上型3が下型2に対向する状態に回動され、成形金型1内にキャビティ23が形成される。すなわち、キャビティ23の上側の少なくとも一部が、内型22に取り付けられた繊維体14により形成されるようになっている。この状態で、キャビティ23内の発泡樹脂原液を発泡硬化させることにより、成形されるウレタンフォーム16の裏面に繊維体14が付着し、当該繊維体14と一体化されたシートクッションパッド10を製造することができる。
図4は、繊維体14の取付態様の一例を示す斜視図である。繊維体14は、上型3の下面、より具体的には内型22の下面に沿って配置された後、被固定物の一例である内型22に対して固定装置5を用いて固定される。固定装置5には、例えば固定ピン51及び固定プレート52などが含まれる。
装着工数や作業性に問題がない場合、固定ピン51は、内型22の下面に形成されている固定孔(不図示)に固定され、当該固定ピン51に対して繊維体14に形成されている孔が嵌め込まれる。この固定ピン51によれば、繊維体14を強固に固定することが可能であり、本実施形態では、繊維体14の中央部側、すなわち周縁部よりも内側の部分を固定する際に固定ピン51を用いることが好ましい。
固定プレート52は、被固定物である内型22に予め取り付けられる固定部材の一例であり、例えば中央に開口部53を有する板状部材からなる。固定プレート52の厚みは、1mm〜3mm程度であることが好ましい。この例では、繊維体14における固定プレート52に対向する部分を開口部53に外側から押し込むことにより、繊維体14を開口部53の周縁部に引っ掛けて固定することができる。本実施形態では、繊維体14の周縁部を固定する際に固定プレート52を用いることが好ましい。ただし、上記固定部材は、板状部材に限られるものではない。
図5A〜図5Gは、固定プレート52の構成例を示した平面図である。この例では、固定プレート52が金属により形成されている場合について説明する。
図5A〜図5Gのいずれの例においても、矩形状の固定プレート52の中央に円形状の開口部53が形成され、開口部53の周縁部には、当該開口部53に押し込まれた繊維体14に引っ掛かるエッジ部54が形成されている。このように、固定プレート52の開口部53に繊維体14を押し込むだけで、当該繊維体14の任意の位置を固定プレート52のエッジ部54に引っ掛けて固定することができるので、被固定物(例えば、内型22)に対して繊維体14を容易に固定することができる。
図5A〜図5Dの例では、開口部53の周縁部から外側(中心部側とは逆方向)に向かって溝部55が形成されている。溝部55の数は、1つ以上であれば何個でもよく、図5Aでは4個、図5Bでは3個、図5Cでは2個、図5Dでは1個の例がそれぞれ示されている。これらの例では、溝部55が矩形状である例が示されているが、例えば円弧状などの他の形状で形成されていてもよい。また、開口部53の形状についても、円形状に限らず、例えば矩形状などの他の形状で形成されていてもよい。
エッジ部54は、開口部53の周縁部と溝部55との境界部、すなわち開口部53から溝部55への入口部分に形成されている。より具体的には、各溝部55に対応付けて2つのエッジ部54が、当該溝部55の入口部分の両端縁から、互いに接近する方向へ突出するように形成されている。この例では、各エッジ部54が先細り形状となっている。互いに対向する2つのエッジ部54の先端部は、溝部55への入口を形成しており、当該入口の間隔が溝部55の幅よりも小さくなるように形成されている。
図5A〜図5Dに例示されるような構成によれば、固定プレート52の開口部53に押し込まれた繊維体14の一部が溝部55内に入り込もうとする際に、開口部53の周縁部と溝部55との境界部に形成されているエッジ部54に、当該繊維体14の一部が引っ掛かるため、当該エッジ部54に対して繊維体14を引っ掛かりやすくすることができる。
図5E〜図5Gの例では、開口部53の周縁部から中心部側に向かって先細りするようにエッジ部54が形成されている。エッジ部54は、開口部53の中心部に対して放射状に複数形成されているが、いずれも開口部53の中心部まで先端部が到達しないような比較的短い形状(例えば、開口部53の半径の1/2未満の長さ)となっている。図5E及び図5Fの例では、エッジ部54の先端部のみが開口部53の中心部側に位置しているのに対して、図5Gの例では、エッジ部54の先端部の内接円と同程度まで開口部53の中心部側に延びるフランジ部56が形成され、作業者に対する安全性が向上されている。
エッジ部54の先端部の形状は、図5E及び図5Gでは鋭角をなしているのに対して、図5Fでは鈍角をなしている。エッジ部54に対する繊維体14の引っ掛かりの観点からは、エッジ部54の先端部は鋭角をなしていることが好ましいが、作業者に対する安全性の観点からは、エッジ部54の先端部は鈍角をなしていることが好ましい。ただし、エッジ部54の先端部の形状は、上記のような形状に限定されるものではなく、例えば直角をなすような形状であってもよい。
図5E〜図5Gに例示されるような構成によれば、エッジ部54が開口部53の周縁部から中心部に向かって先細りするように形成されているため、固定プレート52の開口部53に押し込まれた繊維体14を、エッジ部54の先端部に引っ掛かりやすくすることができる。また、放射状に複数形成されたエッジ部54の先端部に繊維体14を引っ掛けることができるため、繊維体14を被固定物(例えば、内型22)に安定して固定することができる。
図5A〜図5Gに例示されるような形状を有する金属製の固定プレート52は、例えば鉄、又は、耐久性を考慮したバネ鋼などにより形成されていることが好ましい。この場合、被固定物(例えば、内型22)に磁性体を固定しておくことにより、固定プレート52を磁力によって取り付けることができる。ただし、固定プレート52は、ステンレスなどの他の金属により形成されていてもよく、この場合には、ビスなどの他の取付部材を用いて固定プレート52が取り付けられてもよい。
図6A及び図6Bは、固定プレート52の別の構成例を示した平面図である。この例では、固定プレート52が金属により形成されている場合について説明する。
図6A及び図6Bのいずれの例においても、矩形状の固定プレート52の中央に円形状の開口部53が形成され、開口部53の周縁部には、当該開口部53に押し込まれた繊維体14に引っ掛かるエッジ部54が形成されている。このように、固定プレート52の開口部53に繊維体14を押し込むだけで、当該繊維体14の任意の位置を固定プレート52のエッジ部54に引っ掛けて固定することができるので、被固定物(例えば、内型22)に対して繊維体14を容易に固定することができる。
図6A及び図6Bの例では、開口部53の周縁部から中心部側に向かって先細りするようにエッジ部54が形成されている。エッジ部54は、開口部53の中心部に対して放射状に複数形成されており、いずれも開口部53の中心部まで先端部が到達するような比較的長い形状(例えば、開口部53の半径の1/2以上の長さ)となっている。エッジ部54の先端部の形状は鋭角をなしており、図6Aの例の方が、図6Bの例よりも先端部の角度が小さい。ただし、エッジ部54の先端部の形状は、上記のような形状に限定されるものではない。
図6A及び図6Bに例示されるような構成によれば、エッジ部54が開口部53の周縁部から中心部に向かって先細りするように形成されているため、固定プレート52の開口部53に押し込まれた繊維体14を、エッジ部54の先端部に引っ掛かりやすくすることができる。また、放射状に複数形成されたエッジ部54の先端部に繊維体14を引っ掛けることができるため、繊維体14を被固定物(例えば、内型22)に安定して固定することができる。
特に、開口部53の中心部まで先端部が到達するような比較的長い形状のエッジ部54が多数形成されているため、エッジ部54の先端部の内接円によって形成される比較的小さい空間内に繊維体14を若干押し込むだけで、エッジ部54の先端部に繊維体14を引っ掛けることができる。したがって、開口部53に対する繊維体14の押し込み量に相当するだけの凹部を被固定物に形成する場合に、その凹部の深さを浅くすることができるため、厚みの小さい被固定物にも適用可能である。
図6A及び図6Bに例示されるような形状を有する金属製の固定プレート52は、例えば鉄、又は、耐久性を考慮したバネ鋼などにより形成されていることが好ましい。この場合、被固定物(例えば、内型22)に磁性体を固定しておくことにより、固定プレート52を磁力によって取り付けることができるため、固定プレート52を容易に着脱することができる。ただし、固定プレート52は、ステンレスなどの他の金属により形成されていてもよく、この場合には、ビスなどの他の取付部材を用いて固定プレート52が取り付けられてもよい。
図5A〜図5G、並びに、図6A及び図6Bの例では、固定プレート52のエッジ部54が金属で形成されることにより、繊維体14を固定プレート52の開口部53の奥の方まで押し込まなくても、エッジ部54に対して繊維体14を引っ掛かりやすくすることができる。また、固定プレート52が金属により形成されていれば、高温環境下でも耐久性が高く、劣化しにくい。
図7A〜図7Dは、固定プレート52のさらに別の構成例を示した平面図である。この例では、固定プレート52が樹脂により形成されている場合について説明する。
図7A〜図7Dのいずれの例においても、矩形状の固定プレート52の中央に円形状の開口部53が形成され、開口部53の周縁部には、当該開口部53に押し込まれた繊維体14に引っ掛かるエッジ部54が形成されている。このように、固定プレート52の開口部53に繊維体14を押し込むだけで、当該繊維体14の任意の位置を固定プレート52のエッジ部54に引っ掛けて固定することができるので、被固定物(例えば、内型22)に対して繊維体14を容易に固定することができる。
図7A〜図7Dの例は、固定プレート52が樹脂で形成されている点、及び、ビスなどを挿通させるための挿通孔57が形成されている点を除いて、図7Aは図5Aに、図7Bは図5Eに、図7Cは図6Aに、図7Dは図6Bにそれぞれ対応する構成を有している。これらの対応する構成については、図に同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図7A〜図7Dに例示されるような形状を有する樹脂製の固定プレート52は、例えば塩化ビニルなどにより形成された弾性変形可能な構成であることが好ましい。固定プレート52のエッジ部54が樹脂で形成されることにより、繊維体14を固定プレート52の開口部53に押し込む際に、エッジ部54を弾性変形させることができる。これにより、繊維体14を固定プレート52の開口部53に押し込んだ後にエッジ部54が復元するため、当該エッジ部54に対して繊維体14を引っ掛かりやすくすることができる。また、樹脂により形成された安価な固定プレート52を使用することができる。ただし、固定プレート52は、樹脂以外の弾性変形可能な材料により形成されていてもよい。
図8は、図7A〜図7Dに例示されるような樹脂製の固定プレート52を取り付ける際に用いられる取付部材58の一例を示した平面図である。この取付部材58は、固定プレート52を被固定物(例えば、内型22)に押さえ付けて取り付けるための部材であり、金属により形成されていることが好ましい。この場合、取付部材58は、例えば鉄、又は、耐久性を考慮したバネ鋼などの金属により形成されていてもよいし、ステンレスなどの他の金属により形成されていてもよい。
取付部材58は、例えば固定プレート52と同程度の外形からなる矩形状に形成され、その中央部には開口部59が形成されている。また、取付部材58には、固定プレート52と同様の位置にビスなどを挿通させるための挿通孔60が形成されている。取付部材58と固定プレート52を重ね合わせた状態で、取付部材58の挿通孔60及び固定プレート52の挿通孔57にビスなどが挿通されて被固定物に締め付けられることにより、取付部材58と被固定物との間に固定プレート52を挟み込んだ状態で取り付けることができる。
取付部材58の開口部59は、例えば円形状に形成され、取付部材58を固定プレート52に対向させたときに、少なくとも固定プレート52の開口部53とエッジ部54とが取付部材58の開口部59から露出するような形状となっている。これにより、取付部材58の開口部59を介して固定プレート52の開口部53に繊維体14を押し込むことができるとともに、押し込まれた繊維体14をエッジ部54に良好に引っ掛けることができる。
上記のような取付部材58を用いることにより、固定プレート52を被固定物に強固に取り付けることができるので、樹脂により形成された固定プレート52であっても、繊維体14を被固定物に安定して固定することができる。
図9は、固定プレート52の一例の部分拡大図である。この例では、図5A〜図5D及び図7Aのように、開口部53の周縁部に溝部55が形成された構成について説明する。
図9に示すように、エッジ部54は、溝部55側に向かって傾斜するように形成されていることが好ましい。この例では、開口部53の中心部側から溝部55に向かう方向D1に対して、エッジ部54が突出する方向D2のなす角度θが、90°以下となっている。これにより、溝部55に繊維体14が入り込みやすく、かつ、溝部55に入り込んでエッジ部54に引っ掛かった繊維体14が溝部55から外れにくいので、エッジ部54に対して繊維体14をさらに引っ掛かりやすくすることができる。また、エッジ部54の先端部が開口部53の内側(中心部側)に向いていないため、開口部53内に指を挿入した場合などであっても、指にエッジ部54の先端部が引っ掛かることがなく安全である。
図10は、固定プレート52の取付態様の一例を示した断面図である。図10に示すように、被固定物の一例である内型22には、固定プレート52の開口部53に対向する位置に凹部61が形成されている。凹部61の深さは、3mm〜10mm程度であることが好ましい。これにより、固定プレート52の開口部53に繊維体14を押し込む際に、凹部61内まで繊維体14を押し込むことができるので、エッジ部54に対して繊維体14をより確実に引っ掛けることができる。
内型22には、固定プレート52の周縁部(開口部53よりも外側の部分)に対応する形状の磁性体62が固定されており、当該磁性体62の磁力によって固定プレート52が取り付けられている。このように、固定プレート52を磁力によって取り付けることにより、固定プレート52を容易に着脱することができる。
図11は、シートクッションパッド10の製造方法の一例を示すフローチャートである。シートクッションパッド10を製造する際には、まず、固定プレート52を内型22に予め取り付ける(ステップS101:固定部材取付工程)。この固定部材取付工程では、上述の通り、磁性体62を予め内型22に固定しておくことにより、当該磁性体62の磁力によって固定プレート52が取り付けられてもよい。あるいは、固定部材取付工程において、取付部材58で固定プレート52を内型22に押さえ付けて取り付けるような構成であってもよい。
この状態で、下型2に対して上型3を開放させておき、内型22の下面に沿って繊維体14を配置する(ステップS102)。その後、固定プレート52の開口部53に繊維体14を押し込むことにより、当該繊維体14をエッジ部54に引っ掛けて固定する(ステップS103:繊維体固定工程)。固定プレート52の開口部53及びエッジ部54は、作業者が開口部53に指を挿入することができるように構成されていることが好ましく、この場合、繊維体固定工程では、作業者が固定プレート52の開口部53に繊維体14を指で押し込むことにより、当該繊維体14をエッジ部54に引っ掛けて容易に固定することができる。なお、繊維体固定工程では、固定ピン51などの他の固定装置5も用いて、繊維体14が内型22に取り付けられてもよい。
以上のステップS101〜S103は、本発明に係る繊維体14の固定方法の一実施形態である。すなわち、本発明に係る繊維体14の固定方法は、発泡成形体(例えば、シートクッションパッド10)の製造方法の一部を構成することができる。
その後、下型2の凹部21内に発泡樹脂原液を注入した後(ステップS104)、回動軸4を中心に上型3を回動させることにより、下型2の上方に上型3を対向させて成形金型1を閉塞し、成形金型1内にキャビティ23を形成する(ステップS105)。このようにして形成されたキャビティ23内で発泡樹脂原液を発泡硬化させることにより、繊維体14と一体化されたシートクッションパッド10を成形する(ステップS106:発泡成形工程)。そして、回動軸4を中心に上型3を回動させることにより成形金型1を開放し(ステップS107)、下型2の凹部21内からシートクッションパッド10を取り出すことにより(ステップS108)、成形体としてのシートクッションパッド10を得ることができる。
シートクッションパッド10は、自動車用に限らず、他の車両用のものであってもよいし、車両用以外の用途に用いられるものであってもよい。また、シートクッションパッド10は、着座部として用いられるものに限らず、例えば背もたれ部などの他の部分に用いられるものであってもよい。シートクッションパッド10は、軟質ポリウレタンフォームにより形成される構成に限らず、他の各種材料により形成することも可能である。また、本発明により製造される発泡成形体は、シートクッションパッド10に限らず、他の発泡成形体であってもよい。
繊維体14の取付態様は、固定プレート52のみで繊維体14を被固定物に取り付けるような構成であってもよいし、固定プレート52とともに、固定ピン51以外の他の固定装置5(例えば、磁気シートなど)を用いて繊維体14を被固定物に取り付けるような構成であってもよい。
1 成形金型
2 下型
3 上型
4 回動軸
5 固定装置
9 シートフレーム
10 シートクッションパッド
11 表面部
12 裏面部
14 繊維体
16 ウレタンフォーム
21 凹部
22 内型
23 キャビティ
51 固定ピン
52 固定プレート
53 開口部
54 エッジ部
55 溝部
56 フランジ部
57 挿通孔
58 取付部材
59 開口部
60 挿通孔
61 凹部
62 磁性体

Claims (8)

  1. 被固定物に対して繊維体を固定するための方法であって、
    開口部と当該開口部の周縁部に設けられたエッジ部とが形成された固定部材を、前記被固定物に取り付ける固定部材取付工程と、
    前記固定部材の開口部に前記繊維体を押し込むことにより、当該繊維体を前記エッジ部に引っ掛けて固定する繊維体固定工程とを含むことを特徴とする繊維体の固定方法。
  2. 前記被固定物には、前記固定部材の開口部に対向する位置に凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の繊維体の固定方法。
  3. 前記固定部材が、金属により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維体の固定方法。
  4. 前記固定部材取付工程では、前記被固定物に固定された磁性体の磁力によって前記固定部材を取り付けることを特徴とする請求項3に記載の繊維体の固定方法。
  5. 前記固定部材が、樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維体の固定方法。
  6. 前記固定部材取付工程では、取付部材で前記固定部材を前記被固定物に押さえ付けて取り付けることを特徴とする請求項5に記載の繊維体の固定方法。
  7. 前記固定部材の開口部及びエッジ部は、作業者が前記開口部に指を挿入できるように構成されており、
    前記繊維体固定工程では、前記固定部材の開口部に前記繊維体を指で押し込むことにより、当該繊維体を前記エッジ部に引っ掛けて固定することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の繊維体の固定方法。
  8. 金型に形成されたキャビティ内で発泡樹脂原液を発泡硬化させることにより発泡成形体を製造する方法であって、
    開口部と当該開口部の周縁部に設けられたエッジ部とが形成された固定部材を、前記金型に取り付ける固定部材取付工程と、
    前記固定部材の開口部に前記繊維体を押し込むことにより、当該繊維体を前記エッジ部に引っ掛けて固定する繊維体固定工程と、
    前記キャビティ内で発泡樹脂原液を発泡硬化させることにより、前記繊維体と一体化された発泡成形体を成形する発泡成形工程とを含むことを特徴とする発泡成形体の製造方法。
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