JP5687939B2 - マスクブランクス用ガラス基板の製造方法、マスクブランクスの製造方法、転写マスクの製造方法、及び半導体装置の製造方法 - Google Patents

マスクブランクス用ガラス基板の製造方法、マスクブランクスの製造方法、転写マスクの製造方法、及び半導体装置の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、基板表面に高さが数十nm程度の凸状欠陥の発生を抑制するのに有効なマスクブランクス用ガラス基板の製造方法、マスクブランクスの製造方法、転写マスクの製造方法、及び半導体装置の製造方法等に関する。
近年における超LSIデバイスの高密度化、高精度化により、マスクブランクス用ガラス基板の平坦度や表面欠陥に対する要求は年々厳しくなる状況にある。ここで、従来のマスクブランクス用ガラス基板の表面粗さを低減するための精密研磨方法としては、例えば、特開平1−40267号公報に記載されているものがある。この精密研磨方法は、酸化セリウムを主材とする研磨材を用いて研磨した後、コロイダルシリカを用いて仕上げ研磨するものである。この場合、上記公報によれば、一般的に市販されているコロイダルシリカは、安定性の点からpHが9〜10.5の範囲にあるが、希釈して使う場合にはpH値が低下するので、NaOH、KOH等の無機アルカリや、アミン等の有機アルカリを新たに添加し、pHを〜11と高めて使用する方がアルカリのガラスをエッチングする効果も相乗的に発揮されるので好ましいとされている。
本願出願人は、上記コロイダルシリカを用いてpHを高めた状態で仕上げ研磨を行ったガラス基板の表面が、近年要求されている平坦度や表面欠陥に対する高いレベルの条件を満たすものであるか否かを克明に調査した。その結果、上記方法で仕上げ研磨を行ったガラス基板表面には、高さが数nm程度、大きさは数十nm〜2000nmの凸状の突起が形成されることがあることが判明した。これは、従来の目視検査では確認できない小さい高さ(数nm程度)の凸状の突起で、上記近年要請されるようになった高いレベルの表面欠陥フリーの要請を確認するために開発された欠陥検査装置によってはじめて確認することができたものである。
この高さが数nm程度の凸状の突起上に薄膜を形成し、マスクブランクス、転写マスクを作製した場合、高さが数nm程度の凸状の突起の大きさが拡大化されるため、次世代の基板として要求される0.3μm欠陥フリー(0.3μm以上の欠陥がないこと)、更には0.1μmフリー(0.1μm以上の欠陥がないこと)、0.05μm欠陥フリー(0.05μm以上の欠陥がないこと)であったとしてもマスクブランクス、マスクの欠陥検査を行った場合、問題となることがある。
また、この高さが数nm程度の凸状の突起が形成されたガラス基板を使って位相シフトマスクブランクス、位相シフトマスクを作製した場合、露光光の波長が短波長になるにしたがって、高さが数nm程度の凸状の突起による位相角変化が大きくなり位相欠陥となる。この位相欠陥は、使用する露光波長が短くなるに従って、高さが数nm程度の凸状の突起による影響が大きくなり、特に、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV光源を露光光源とする次世代のリソグラフィーにおいてその問題は顕著になる。例えば、凸状の突起の高さが5nmの場合、露光波長がArF(193nm)の場合、位相角変化は4.6度、F(157nm)の場合、位相角変化は5.7度となり、また、この高さが数nm程度の凸状の突起が形成されたガラス基板を使ってEUV反射型マスクブランクス、EUV反射型マスクを作成した場合、凸状の突起の高さが5nmの場合、露光波長が13.5nmで20度を超え、これらの位相角変化によって、CD誤差不良となり、無視できない問題となる。
上記のように、コロイダルシリカを用いる超精密研磨後のガラス基板の主表面に、高さが数nm程度、大きさが数十nm〜2000nmの凸状の突起が発生することが確認されている。また、その発生原因として、コロイダルシリカ砥粒中に金属成分の不純物が混入していることが原因であることが本願出願人により解明されている。これは、基板主表面に金属成分を含んだゲル状のコロイダルシリカが付着し、それがマスクとなって、研磨レート差が生じ、凸状の突起が発生するというメカニズムであった。
この問題を解決するために、本願出願人は、有機ケイ素化合物を加水分解することで得られる高純度のコロイダルシリカを研磨砥粒に適用することなどを行い、改善を図る技術に関し先に出願を行っている(特許文献1)。
特開2004−98278号公報
しかし、これらの対策を施しても、高さが数十nm(上述した「凸状の突起」の約10倍)、大きさが数十nm〜2000nmの凸状欠陥(上述した「凸状の突起」と区別するため「凸状欠陥」と称する)の発生を抑制できない場合があった。
近年、研削工程、第1および第2研磨工程(粗研磨、精密研磨)を行った後、コロイダルシリカ砥粒とNaOH(基板をエッチングする効果を有する)を含有する研磨液を用いた超精密研磨工程(第3研磨工程)を行った後に、さらに研磨レ一トの低い(第3研磨工程の約1/10程度)、コロイダルシリカ砥粒とTMAH(テトラメチルアンモニア、基板をエッチングする効果が小さい)を含有する研磨液を用いた最終研磨工程(第4研磨工程)を行った高精度のガラス基板が製造され始めている。特に、この最終研磨工程で、凸状欠陥の発生率が増大しており、問題となっていた。
本発明は、コロイダルシリカを用いた研磨砥粒による精密研磨を行っても、基板表面に本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥が発生しないか又は発生率の低いマスクブランクス用ガラス基板の製造方法、及び本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥に起因する位相欠陥のないマスクブランクスの製造方法を提供することを第一の目的とする。
また、本発明は、基板表面に本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥があることに起因するパターン欠陥のない転写マスクの製造方法、及び半導体装置の製造方法を提供することを第二の目的とする。
さらに、基板表面に本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥のないマスクブランクス用ガラス基板、及び本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥による位相欠陥のないマスクブランクス及び転写マスクを提供することを第三の目的とする。
本願発明者は、上記最終研磨工程(第4研磨工程)で、凸状欠陥の発生率が増大している現象および原因を克明に調べた。その結果、以下のことを解明した。
(1)超精密研磨工程(第3研磨工程)後のガラス基板の保管期間が長いとガラス基板の表面は撥水性になる。
(2)ガラス基板の接触角が高い原因は、例えば有機物の付着が考えられる。
(3)基板外周で接触角が高い。この原因は、例えば、流通ケースに基板を保管するときに基板外周がケースの内子(ガラス基板を保持するための部材)で把持されるので有機物等が基板外周に付着するのが原因の一つではないかと考えられる。
(4)凸状欠陥は基板外周部に多く発生する。
(5)上記最終研磨工程(第4研磨工程)後に、この研磨後の基板を、フッ酸、ケイフッ酸、またはフッ酸及びケイフッ酸を含む洗浄液で処理する場合に、本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥は、凸状欠陥の高さが助長されて顕在化し、問題となる。
(6)基板のぬれ性が低い(接触角が高い)と、研磨砥粒が流動しにくくなることで、むらになりやすく、本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥の発生を増長すると考えられる。これに対し、基板のぬれ性が高い(接触角が低い)と、研磨砥粒が流動しやすくなることで、むらになりにくく、本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥の発生を抑制すると考えられる。
(7)最終研磨工程(第4研磨工程)では、基板をエッチングする効果が第3研磨工程と比べ相対的に小さい研磨液を用いており、研磨の取り代が第3研磨工程と比べ相対的に小さい(研磨の取り代が片側100nm)こと、が原因の1つとして考えられる。
(8)超精密研磨工程(第3研磨工程)及び研磨後の洗浄を行った直後はガラス基板の接触角は低い。
高さ数十nm程度の凸状欠陥(目視では巨大シミに見える)のメカニズムは、以下のように考えられる。
図1(1)、(2)に示すように、研磨阻害因子(汚染物質、撥水性の強い箇所など)のある箇所で研磨が阻害される。図1(3)に示すように研磨阻害因子箇所は縮小し、図1(4)に示すように研磨阻害因子箇所は消滅し、ヒル(丘状の突起)外周部から研磨が進み、図1(5)に示すようにヒルが残る。一方、図1(6)、(7)に示すように、研磨阻害因子箇所は縮小するが、研磨阻害因子箇所は除去されず、凸状欠陥が発生する。
微分干渉顕微鏡を用いて取得した高さ数十nm程度の凸状欠陥の微分干渉像を図2に示す。
この高さ数十nm程度の凸状欠陥ミは、TEM−EDX分析(透過型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線分光装置)で分析したところ、界面及び特異元素は確認できないことから石英の段差(主成分がSiとOとを含む凸状欠陥)であり、その高さは数十nm程度(AMF:原子間力顕微鏡で測定)で、大きさは数十nm〜2000nm程度(SEM:走査型電子顕微鏡で測定)のものであることがわかった。
研磨阻害因子(汚染物質、撥水性の強い箇所など)の要因としては、以下の要因などが考えられる。
(1)経時変化
(2)研磨室内の環境、保管ケースの清浄度、水中保管容器の清浄度などの保管環境
(3)装置の空圧系、油圧系からのオイルミストの飛散
(4)人体からの発塵
本発明者は、以下の対策が効果的であることを解明した。
(1)最終研磨工程(第4研磨工程)の直前(例えば300時間以内)に、研磨阻害因子(汚染物質、撥水性の強い箇所など)を除去可能な処理を行う。例えばフッ酸処理、アルカリ処理、UV・オゾン処理、スクラブ処理、超音波・メガソニック処理、これらの組み合わせ処理、などで研磨阻害因子(汚染物質、撥水性の強い箇所など)を除去後、最終研磨工程(第4研磨工程)を行う。
(2)超精密研磨工程(第3研磨工程)及び研磨後の洗浄を行った後すぐ(例えば300時間以内)に、最終研磨工程(第4研磨工程)を行う。
(3)超精密研磨工程(第3研磨工程)及び研磨後の洗浄を行った後、研磨阻害因子(汚染物質、撥水性の強い箇所など)が付着し、発生しないように保管する。例えば、化学フィルターで化学物質を除去した気体(空気、窒素ガスなど)中で保管する。保管中に、有機物等が基板外周に付着しないように注意する。
(4)研磨時間を長くする(研磨の取り代大きくする)と、凸状欠陥は小さくなる。
本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)
マスクブランクス用ガラス基板表面を、研磨砥粒を含む研磨液を用いて両面研磨する研磨工程を有するマスクブランクス用ガラス基板の製造方法において、
前記研磨砥粒は、コロイダルシリカ砥粒を含み、
研磨前の基板の濡れ性(接触角)は、θ/2法で測定したとき20°未満である状態で前記研磨を行う、
ことを特徴とするマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
(構成2)
前記研磨後の基板を、フッ酸、ケイフッ酸、またはフッ酸及びケイフッ酸を含む洗浄液で処理する工程を有することを特徴とする構成1に記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
(構成3)
前記研磨工程における研磨レートが20nm/min以下であることを特徴とする構成1又は2記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
(構成4)
前記研磨工程における研磨の取り代が片面で100nm以下であることを特徴とする構成1又は2記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
(構成5)
前記研磨液のpHが、9.6〜11.0であることを特徴とする構成1〜4のいずれかに記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
(構成6)
前記研磨液は、水酸化テトラメチルアンモニウムを添加したものであることを特徴とする構成1〜5のいずれかに記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
(構成7)
前記ガラス基板は、ArFエキシマレーザー露光用位相シフトマスクブランクス用ガラス基板、F2エキシマレーザー露光用位相シフトマスクブランクス用ガラス基板、又は、EUV反射型マスクブランクス用ガラス基板の何れかであることを特徴とする構成1〜6のいずれかに記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
(構成8)
構成1〜7のいずれかに記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法で製造したマスクブランク用ガラス基板の主表面上に、露光光に対し光学的変化をもたらす薄膜を形成することを特徴とするマスクブランクスの製造方法。
(構成9)
構成8に記載のマスクブランクスの製造方法で製造したマスクブランクスにおける前記薄膜をパターニングして、前記ガラス基板上に薄膜パターンを形成することを特徴とする転写マスクの製造方法。
(構成10)
構成9に記載の転写マスクの製造方法で製造した転写マスクを用いて、半導体基板上にリソグラフィー技術により微細パターンを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
本発明によれば、コロイダルシリカを用いた研磨砥粒による精密研磨を行っても、基板表面に高さ数十nm程度の凸状欠陥が発生しないマスクブランクス用ガラス基板及びその製造方法を提供することができる。また、基板表面に高さ数十nm程度の凸状欠陥のないマスクブランクス用ガラス基板を使用してマスクブランクスを作製することにより、位相欠陥のないマスクブランクス及びその製造方法を提供することができる。位相欠陥のないマスクブランクスを使用して転写マスクを作製することによりパターン欠陥のない転写マスクをを製造することができる。さらに、パターン欠陥のない転写マスクを使用してリソグラフィー技術により半導体基板上に微細パターンを形成するので、パターン欠陥のない半導体装置を製造することができる。
特に、本発明は、高さ数十nmレベルの凸状欠陥でも位相欠陥を生じてしまうような位相シフトマスク用のガラス基板の製造に有効である。また、高さ数十mnレベルの凸状欠陥でもその上に多層反射膜が形成されたときにEUV露光光に対する反射率が低下してしまうような反射型マスクブランク用の基板の製造にも有効である。
高さ数十nm程度の凸状欠陥の発生メカニズムを説明するための模式図である。 微分干渉顕微鏡を用いて取得した高さ数十nm程度の凸状欠陥の微分干渉像を示す図である。 両面研磨装置の概略構成例を示す図である。 実施例1の試料に関する欠陥検査結果を示す図である。 実施例2の試料に関する欠陥検査結果を示す図である。 実施例3の試料に関する欠陥検査結果を示す図である。 実施例4の試料に関する欠陥検査結果を示す図である。 比較例1の試料に関する欠陥検査結果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法は、マスクブランクス用ガラス基板表面を、研磨砥粒を含む研磨液を用いて両面研磨する研磨工程を有するマスクブランクス用ガラス基板の製造方法において、
前記研磨砥粒は、コロイダルシリカ砥粒を含み、
研磨前の基板の濡れ性(接触角)は、θ/2法で測定したとき20°未満である状態で前記研磨を行う、
ことを特徴とする。
本発明において、接触角の測定は、一般的に用いられている、θ/2法を用いる。θ/2法は、液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度から接触角を求める。θ/2法は、液滴が球の一部であることを前提としているため、重力の影響を無視できる液滴量で測定する。
本発明において、研磨前の基板の濡れ性(接触角)(θ/2法で測定)は20°未満であることが好ましい。高さ数十nm程度の凸状欠陥を極力低減する観点からは、研磨前の基板の濡れ性(接触角)(θ/2法で測定)は14°以下であることが好ましく、12°未満であることがさらに好ましい。高さ数十nm程度の凸状欠陥を発生させない観点からは、研磨前の基板の濡れ性(接触角)(θ/2法で測定)は10°以下であることが好ましく、8°以下〜0°(測定限界)であることがさらに好ましい。
本発明において、基板の濡れ性(表面エネルギー)の評価方法は、表面張力(mN/m)の異なる指示薬を滴下し、その指示薬の広がり具合を側面から観察する。膨らみが無く表面になじんでいる状態が得られる指示薬の表面張力値を採用する。表面上に液滴が膨らみ(だまり)として残る場合は、滴下した指示薬では表面張力が高すぎると判断する。表面上に広がりすぎて指示薬が消滅する場合は、滴下した指示薬では表面張力が高すぎると判断する。基板の濡れ性(表面エネルギー)(mN/m)は数値が大きい方がぬれ性が良い。
本発明において、研磨前の基板の濡れ性(表面エネルギー)は40mN/m以上であることが好ましい。高さ数十nm程度の凸状欠陥を極力低減する観点からは、研磨前の基板の濡れ性(表面エネルギー)は50mN/m以上であることが好ましく、55mN/m以上であることがさらに好ましい。高さ数十nm程度の凸状欠陥を発生させない観点からは、研磨前の基板の濡れ性(表面エネルギー)は58mN/m以上であることが好ましく、60mN/m以上であることがさらに好ましい。
本発明において、研磨前の基板の濡れ性(接触角または表面エネルギー)の測定箇所は、基板の有効エリア外も含めることが好ましい。ここで有効エリアとは、この基板にパターン形成用の薄膜を形成してマスクブランクを製造し、そのマスクブランクを用いて転写用マスクを作製する際、薄膜に転写パターンを形成する領域のことをいう。通常、基板のサイズが152mm角の場合では、基板の中心から132mm角内の領域が有効エリアになる。
高さ数十nm程度の凸状欠陥は、有効エリア内よりもその外側の方がその発生率が高い傾向があるためである。また、研磨前の基板の濡れ性(接触角または表面エネルギー)が有効エリア内で上記本願範囲内であっても、高さ数十nm程度の凸状欠陥が有効エリア内で発生することがあるからである。
本発明において、研磨前の基板の濡れ性(接触角また表面エネルギー)は、基板の有効エリア外で測定することが好ましい。
高さ数十nm程度の凸状欠陥は、有効エリア外で、多発する傾向があるからである。有効エリア外で高さ数十nm程度の凸状欠陥が少ないかゼロの場合は、有効エリア内に関しても高さ数十nm程度の凸状欠陥がより発生確率が低いと推定される。つまり、高さ数十nm程度の凸状欠陥が有効エリア内にはなく有効エリア外にある場合と、高さ数十nm程度の凸状欠陥が有効エリア内になく有効エリア外にもない場合とでは、後者の方がより高品質であると推定される。
本発明においては、例えば、152mm角の基板で、149mmの領域を検査する。
本発明において、前記研磨工程で使用する研磨布は軟質であることが好ましい。
本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥は、前記研磨工程で使用する研磨布が軟質である場合に問題となるからである。
研磨布が軟質だと、研磨布が高さ数十nm程度の凸状欠陥に追従して、高さ数十nm程度の凸状欠陥を除去しにくくなる。
研磨布が硬質だと高さ数十nm程度の凸状欠陥は除去できるが、傷の発生の問題が生じる。
本発明においては、上記のように、前記研磨工程で使用する研磨布は軟質であることが好ましく、具体的には、研磨布は、AskerA硬度が35以下、AskerC硬度が50以下、が好ましい。
本発明において、研磨対象物はガラス基板である。
本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥は、研磨対象物の材質がガラスである場合の研磨工程において問題となる。
本発明において、ガラス基板は両面同時に研磨する。
本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥は、ガラス基板を両面同時に研磨する研磨工程において問題となる。
本発明において、研磨砥粒はコロイダルシリカである。
本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥は、研磨砥粒としてコロイダルシリカを使用する研磨工程において問題となる。
コロイダルシリカは、例えば、第1および第2研磨工程(粗研磨、精密研磨)後の、超精密研磨工程(第3研磨工程)や、最終研磨工程(第4研磨工程)において研磨砥粒として使用される。
本発明において、研磨砥粒は、有機ケイ素化合物を加水分解することで生成したコロイダルシリカであることが好ましい。これにより、特許文献1記載の高さ数nm程度の凸状の突起の発生が抑制される。
ここで、有機ケイ素化合物を加水分解することで生成したコロイダルシリカ砥粒とは、具体的には、例えば、金属不純物が除去された高純度アルコキシシランを原料にゾルゲル法で合成することによって、高純度なコロイダルシリカ砥粒としたもの等である。
上記の方法で合成、生成された高純度なコロイダルシリカ砥粒は、純度が99.99999%と極めて高く、しかも、Na、Kのアルカリ金属や、Fe、Al、Mg、Ti等の重金属といった不純物も極めて少ない。よって、後述するようなアルカリ金属によるゲル状物質や、重金属の不純物がガラス基板に付着し、付着した箇所がマスクとなって研磨速度の差やエッチングにより形成される高さ数nm程度の凸状の突起の発生を抑えることができる。この場合、上記コロイダルシリカ砥粒を用いた研磨液のpHは、例えば、9.6〜11.0程度に調整して用いることがより好ましい。
本発明では、前記研磨後の基板を、フッ酸、ケイフッ酸、またはフッ酸及びケイフッ酸を含む洗浄液で処理する工程を有することが好ましい。
本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥は、前記研磨後の基板を、フッ酸、ケイフッ酸、またはフッ酸及びケイフッ酸を含む洗浄液で処理する場合に特に問題となるからである。例えば、図1(7)に示すように、汚染物質が除去されない状態でエッチングされると、高さ数十nm程度の凸状欠陥の高さが助長され、高さ数十nm程度の凸状欠陥が顕在化する。
本発明では、前記研磨後の基板を、フッ酸及び/又はケイフッ酸を含む洗浄液で洗浄することが好ましい。通常、コロイダルシリカ砥粒を用いた研磨液によりガラス基板を精密研磨した後の洗浄としては、アルカリ洗浄や硫酸、塩酸等の洗浄が行われる。しかし、コロイダルシリカ砥粒には極微量のFe、Al、Ca、Mg、Ti、Cu、Ni、Cr等の不純物が含まれていることがあり、この不純物が精密研磨終了後にガラス基板表面に付着したことにより発生する高さ数nm程度の凸状の突起を従来の洗浄方法をそのまま適用したのでは効果的に防止することができない。フッ酸及び/又はケイフッ酸を含む洗浄液で洗浄することにより、これらの不純物を効果的に溶解除去でき、これらの不純物が原因の高さ数nm程度の凸状の突起の発生を効果的に低減することができる。
前記研磨後の基板としては、例えば、前記最終研磨工程(第4研磨工程)実施後の基板や、前記超精密研磨工程(第3研磨工程)実施後の基板などが挙げられる。
本発明では、洗浄による表面粗さの悪化をなるべく防ぐために、フッ酸やケイフッ酸の濃度は、低い方が好ましい。すなわち、上述の不純物を溶解除去すると共に、本発明に係る上記研磨阻害因子(汚染物質、撥水性の強い箇所など)を溶解除去し、かつ、ガラス基板はあまりエッチングされない条件にすることにより、高さ数nm程度の凸状の突起の高さ、並びに、本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥の高さ、を抑えることができる。よって、ガラス基板に対して比較的エッチング作用が弱いケイフッ酸、ケイフッ酸+フッ酸、又は、低濃度のフッ酸を用いることによって、高さ数nm程度の凸状の突起の高さ、並びに、本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥の高さ、を低減することができるのである。フッ酸、ケイフッ酸の濃度としては、両者とも、0.001〜0.5wt%が好ましい。
本発明では、前記研磨工程における研磨レートが20nm/min以下であることが好ましい。
本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥は、前記研磨工程における研磨レートが20nm/min以下である場合(研磨の取り代が小さい場合)に特に問題となるからである。
研磨の取り代が大きい場合は、本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥は除去される。
本発明では、前記研磨工程における研磨の取り代が片面で100nm以下であることが好ましい。
本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥は、前記研磨工程における研磨の取り代が片面で100nm以下である(研磨の取り代が小さい場合)に特に問題となるからである。
研磨の取り代が大きい場合は、本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥は除去されるが、基板の平坦度が悪化する。
本発明では、前記研磨工程における研磨の取り代が片面で100nm以下とすることによって、基板の平坦度を高い精度で維持しつつ、本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥が発生しないかまたは発生率を低減すことができる。
本発明では、前記研磨液のpHが、9.6〜11.0であることが好ましい。
本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥は、前記研磨液のpHが、9.6〜11.0である研磨工程において問題となる。
前記研磨液のpHが、9.6〜11.0である研磨工程は、例えば、第1および第2研磨工程(粗研磨、精密研磨)後の、超精密研磨工程(第3研磨工程)や、超精密研磨工程(第4研磨工程)が挙げられる。
本発明では、前記研磨液は、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH:Tetramethyl ammonium hydroxide)を添加したものであることが好ましい。
本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥は、前記研磨液が水酸化テトラメチルアンモニウムを添加したものである研磨工程において問題となる。
前記研磨液が水酸化テトラメチルアンモニウムを添加したものである研磨工程は、例えば、第1および第2研磨工程(粗研磨、精密研磨)、超精密研磨工程(第3研磨工程)後の、超精密研磨工程(第4研磨工程)が挙げられる。
前記研磨液がNaOHを添加したものである研磨工程においては、水酸化テトラメチルアンモニウムを添加した場合に比べ、研磨レートが約10倍大きいので、本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥は問題となりにくい。
精密研磨工程で使用されている研磨パッドは、基材である不織布の上に、発泡させた樹脂の表面をバフ研磨して開孔を露出させてナップ層を形成させたものが用いられる場合が多い。
本発明において、研磨パッド(研磨布)は、少なくとも、基材と、前記基材上に形成され、表面に開孔を有する発泡した樹脂からなるナップ層とからなる。
本発明において、発泡した樹脂としては、例えば、合成樹脂中にガスを細かく分散させ、内部に細かな泡を無数に含む、発泡状または多孔質形状に成形されたものを指し、固体である合成樹脂と気体の不均一分散系とも定義できる。
本発明において、発泡樹脂(ナップ層)としては、ウレタンが広く利用されている。
発泡樹脂(ナップ層)がポリウレタン樹脂である場合は、ポリウレタン樹脂を構成する原料樹脂として、ポリカーボネート系、ポリエステル系、ポリエーテル系などの樹脂や、これらの樹脂をブレンドした樹脂を用いることができる。

本発明において、ガラス基板の材料としては、例えば、合成石英ガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、などが挙げられる。また、本発明は、例えばアモルファスガラスであれば、SiO−TiO系ガラス、結晶化ガラスであれば、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス等の基板の研磨に適用できる。
本発明において、マスクブランクスとしては、フォトマスクブランクス、位相シフトマスクブランクス(ArFエキシマレーザー露光用位相シフトマスクブランクス、Fエキシマレーザー露光用位相シフトマスクブランクス)、X線やEUV用反射型マスクブランクスなどが挙げられ、用途としてはLSI(半導体集積回路)用マスクブランクス、LCD(液晶表示板)用マスクブランクスなどが挙げられる。
上述の通り、本実施の形態にかかるマスクブランクス用ガラス基板の製造方法は、高さ数十nm程度の凸状欠陥により発生する位相差変化(位相欠陥)を抑えることができるため、特に、露光波長の短いリソグラフィーに使用されるArFエキシマレーザー露光用位相シフトマスクブランクス用ガラス基板、Fエキシマレーザー露光用位相シフトマスクブランクス用ガラス基板、EUV反射型マスクブランクス用ガラス基板に特に効果がある。
本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記本発明のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法によって製造したマスクブランクス用ガラス基板の主表面上に、露光光に対し光学的変化をもたらす薄膜を形成することを特徴とする
基板表面に高さ数十nm程度の凸状欠陥がないマスクブランクス用ガラス基板を使用してマスクブランクスを製造するので、マスクブランクス表面に位相欠陥等の表面欠陥のないマスクブランクスが得られる。
ここで、露光光に対し光学的変化をもたらす薄膜とは、位相シフト膜(多層の場合を含む)又は遮光膜(多層の場合を含む)、あるいは位相シフト膜と遮光膜とを積層した膜や、位相シフト機能と遮光機能を有するハーフトーン膜(多層の場合を含む)、位相シフト機能を有さず、所定の透過率で露光光を透過させる半透過膜、多層反射膜、吸収体膜などを指す。従って、本発明でいうマスクブランクは広義の意味で用い、遮光膜のみが形成されたフォトマスクブランクのほか、位相シフト膜やハーフトーン膜などが形成された位相シフトマスクブランク、半透過膜などが形成されたエンハンサ用マスクブランク、更には多層反射膜と吸収体膜などが形成された反射型マスクブランクスが含まれる。
本発明の転写マスクの製造方法は、上記本発明のマスクブランクスの製造方法で製造したマスクブランクスにおける前記薄膜をパターニングして、前記ガラス基板上に薄膜パターンを形成することを特徴とする。
上記本発明のマスクブランクスの製造方法によって得られたマスクブランクス表面に位相欠陥等の表面欠陥のないマスクブランクスを使用して転写マスクを製造するので、パターン欠陥のない転写マスクが得られる。
本発明の半導体装置の製造方法は、上記本発明の転写マスクの製造方法で製造した転写マスクを用いて、半導体基板上にリソグラフィー技術により微細パターンを形成することを特徴とする。
上記本発明の転写マスクの製造方法によって得られた転写マスク表面にパターン欠陥のない転写マスクを使用してリソグラフィー技術により半導体装置を製造するので、パターン欠陥のない半導体装置が得られる。
本発明により得られるガラス基板は、ガラス基板の主表面内に主成分がSiとOとを含み、高さ数十nm程度の凸状欠陥が存在しないマスクブランクス用ガラス基板である。位相欠陥の要因となる高さ数十nm程度の凸状欠陥が、ガラス基板の主表面内に存在しないので、ガラス基板上に薄膜を形成してマスクブランクスにしたときに、位相欠陥等の表面欠陥のないマスクブランクスを提供することができる。このようなマスクブランクス用ガラス基板は、上記本発明のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法によって製造することができる。
本発明により得られるマスクブランクスは、本発明により得られるマスクブランクス用ガラス基板の主表面上に、露光光に対し光学的変化をもたらす薄膜を形成することを特徴とするマスクブランクスである。基板表面に高さ数十nm程度の凸状欠陥がないマスクブランクス用ガラス基板を使用してマスクブランクスを製造するので、マスクブランクス表面に位相欠陥等の表面欠陥のないマスクブランクスが得られる。
本発明により得られる転写マスクは、本発明により得られるマスクブランクスにおける前記薄膜をパターニングして、前記ガラス基板上に薄膜パターンが形成されている転写マスクである。マスクブランクスの位相欠陥等の表面欠陥によるパターン欠陥がない転写マスクが得られる。
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。以下の例では、マスクブランクス用ガラス基板として、位相シフトマスクブランクス用ガラス基板(以下、単にガラス基板と称する)を例に説明する。尚、本実施例における研磨の工程は、両面研磨装置を用いて行なう。図1は両面研磨装置の概略構成例を示す図である。図1に示した例は、遊星歯車方式の両面研磨装置である。この遊星歯車方式の両面研磨装置1は、太陽歯車2と、その外方に同心円状に配置される内歯歯車3と、太陽歯車2及び内歯歯車3に噛み合い、太陽歯車2や内歯歯車3の回転に応じて公転及び自転するキャリア4と、このキャリア4に保持された被研磨加工物5(ガラス基板)を研磨パッド6が貼着された挟持可能な上定盤7及び下定盤8と、上定盤7と下定盤8との間に研磨液を供給する研磨液供給部9とを備えている。
研磨加工時には、キャリア4に保持された被研磨加工物5を上定盤7及び下定盤8に挟持するとともに、上下定盤の研磨パッド6と被研磨加工物5との間に研磨液を供給しながら太陽歯車2や内歯歯車3の回転に応じて、キャリア4が公転及び自転しながら、被研磨加工物5の上下両面を同時に研磨加工する。両面研磨装置1には、太陽歯車3、内歯歯車4、上定盤7、下定盤8、これらの回転数と回転時間、及び荷重シーケンス(研磨時間と荷重)を設定し、制御する動作制御部10(図示せず)が接続されており、予め設定した太陽歯車3、内歯歯車4、上定盤7、下定盤8の回転数と回転時間、及び加工荷重にしたがって、被研磨加工物5を研磨加工するようになっている。
(実施例1〜4、比較例1)
(マスクブランクス用ガラス基板の製造)
(1)粗研磨工程
合成石英ガラス基板の端面を面取加工、及び両面ラッピング装置によって研削加工を終えたガラス基板(152.1mm×152.1mm×6.35mm)を、両面研磨装置に10枚セットし、以下の研磨条件で粗研磨工程を行った。10枚セットを10回行い合計100枚のガラス基板の粗研磨工程を行った。尚、加工荷重、研磨時間は適宜調整して行った。
研磨液:酸化セリウム(平均粒径2〜3μm)+水
研磨パッド:硬質ポリシャ(ウレタンパッド)
研磨取り代:35μm
粗研磨工程後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を洗浄槽に浸漬(超音波印加)し、洗浄を行った。
(2)精密研磨工程
両面研磨装置に10枚セットし、以下の研磨条件で精密研磨工程を行った。10枚セットを10回行い合計100枚のガラス基板の精密研磨工程を行った。尚、加工荷重、研磨時間は適宜調整して行った。
研磨液:酸化セリウム(平均粒径1μm)+水
研磨パッド:軟質ポリシャ(スウェードタイプ)
研磨取り代:35μm
精密研磨工程後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を洗浄槽に浸漬(超音波印加)し、洗浄を行った。
(3)超精密研磨工程1(第3ポリシング)
両面研磨装置に10枚セットし、以下の研磨条件で超精密研磨工程を行った。
10枚セットを10回行い合計100枚のガラス基板の超精密研磨工程を行った。尚、加工荷重、研磨時間は位相シフトマスクブランクスに使用するガラス基板として必要な表面粗さ(所望の表面粗さ:二乗平均平方根粗さRqで0.2nm以下)となるように適宜調整して行った。
研磨液:アルカリ性(pH10.2);コロイダルシリカ(平均粒径30〜200nm)+水(NaOH添加)
研磨パッド:超軟質ポリシャ(スウェードタイプ);バフ処理発泡樹脂/不織布(基材)の構成のもの使用
研磨取り代:5μm
超精密研磨工程1を実施後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を、フッ酸とケイフッ酸(0.4wt%)を含む洗浄液が入った洗浄槽に浸漬(超音波印加)し、洗浄を行った。
超精密研磨工程1(第3ポリシング)及びその後の洗浄処理を実施した基板について、高さ数十nm程度の凸状欠陥がないこと確認した。
(4)最終研磨工程(超精密研磨工程2、第4ポリシング)
両面研磨装置に10枚セットし、以下の研磨条件で超精密研磨工程を行った。
10枚セットを10回行い合計100枚のガラス基板の超精密研磨工程を行った。尚、加工荷重、研磨時間は位相シフトマスクブランクスに使用するガラス基板として必要な表面粗さ(所望の表面粗さ:二乗平均平方根粗さRqで0.17nm以下)となるように適宜調整して行った。
研磨液:アルカリ性(pH10.7);コロイダルシリカ(平均粒径80nm)+水(TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム添加)
研磨パッド:超軟質ポリシャ(スウェードタイプ);バフ処理発泡樹脂/不織布
加工荷重: 30g/cm
研磨時間: 20 分
基板回転数: 6rpm
研磨定盤回転数:12rpm
研磨取り代:200nm(片側100nm)
最終研磨工程(超精密研磨工程2)終了後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板をフッ酸とケイフッ酸を含む洗浄液の洗浄槽に浸漬(超音波印加)し、洗浄を行った。
比較例1では、超精密研磨工程1(第3ポリシング)及び洗浄工程実施後、長期(約8ヶ月)保管したガラス基板を、未処理のまま、最終研磨工程(第4ポリシング)及び洗浄工程を実施した。
実施例1では、超精密研磨工程1(第3ポリシング)及び洗浄工程実施後、長期(約8ヶ月)保管したガラス基板を、最終研磨工程(第4ポリシング)の実施直前に、フッ酸+ケイフッ酸処理を含む洗浄処理した直後(100時間以内)に、最終研磨工程(第4ポリシング)及び洗浄工程を実施した。
実施例2では、超精密研磨工程1(第3ポリシング)及び洗浄工程実施後、長期(約8ヶ月)保管したガラス基板を、最終研磨工程(第4ポリシング)の実施直前に、純水オバーフロー1分、フッ酸+ケイフッ酸1分、フッ酸+ケイフッ酸1分、純水スクラブ洗浄、純水オバーフロー+メガソニック、スピンすすぎ、スピン乾燥処理した直後(100時間以内)に、最終研磨工程(第4ポリシング)及び洗浄工程を実施した。
実施例3では、超精密研磨工程1(第3ポリシング)及び洗浄工程実施後、長期(約8ヶ月)保管したガラス基板を、最終研磨工程(第4ポリシング)の実施直前に、エキシマUV処理(Xeエキシマランプを光源とした波長172nmを中心とした波長のXe光を80秒、基板に照射する処理。)した直後(100時間以内)に、最終研磨工程(第4ポリシング)及び洗浄工程を実施した。
実施例4は、超精密研磨工程1(第3ポリシング)及びその後の洗浄処理を実施した基板について、直後(100時間以内)に、最終研磨工程(第4ポリシング)及び洗浄工程を実施した。
以上の工程および条件に従って、マスクブランクス用ガラス基板を得た。
なお、メガソニック洗浄は、超音波洗浄より高周波(1MHz程度)の超音波で洗浄する洗浄法である。メガソニック洗浄は、高周波な分、振動が細かくマイルドなので、超音波洗浄に比べ洗浄力は若干落ちるが、もともと汚れの少ない第3ポリシング後のガラス基板の洗浄などに向いている。メガソニック洗浄は浸漬式、枚葉スピン式のどちらの装置でも適用出来る。メガソニック洗浄と超音波洗浄を組み合わせることもできる。
(評価)
実施例1〜4、比較例1で得られたマスクブランクス用ガラス基板について、最終研磨工程(第4ポリシング)実施前の表面状態を評価するための試料と、最終研磨工程(第4ポリシング)実施後に本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥の発生状況を測定するための試料を準備し、相関関係を調べた。
接触角の測定は、θ/2法を用い2mlの純水を滴下し、水滴の接触角を測定した。接触角は、152mm角の基板の149mm角の一辺(有効エリア外の基板外周の一辺)に沿って等間隔で6点測定した。
基板の表面エネルギーは、表面張力(mN/m)の異なる指示薬を滴下し、その指示薬の広がり具合を側面から観察して測定した。基板の表面エネルギーは、152mm角の基板の中心部分(132mm角より内側)の1点と、基板の外周部分(132mm角より外側)における基板の上部及び下部2点で測定した。
本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥は、欠陥検査装置(レーザーテック社製M1320)で、152mm角の基板の149mm角の領域(有効エリア外含む)で検査した。結果を図4〜8に示す。
比較例1(図8)は、接触角:30〜32°、表面エネルギー:30〜38mN/mであり、本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥を含む凸状欠陥の総数は極めて多数(具体的には572個)であった。
実施例1(図4)は、接触角:16〜19°、表面エネルギー:40〜46mN/mであり、本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥を含む凸状欠陥の総数は少数(具体的には61個)であった。なお、基板の132mm角の内側の領域においては、凸状欠陥の総数はゼロであった。
実施例2(図5)は、接触角:測定限界〜7.7°、表面エネルギー:60mN/m以上であり、本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥を含む凸状欠陥の総数はゼロ(発生なし)であった。なお、図5中の▽は、凹状欠陥であるが、132mm角の外側の領域であり、かつ存在個数も1個だけであった。
実施例3(図6)は、接触角:12〜14°、表面エネルギー:57〜59mN/mであり、本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥を含む凸状欠陥の総数はごく少数(具体的には4個)であった。なお、基板の132mm角の内側の領域においては、凸状欠陥の総数はゼロであった。
実施例4(図7)は、接触角:7.4〜9.5°、表面エネルギー:60mN/m以上であり、本発明に係る上記高さ数十nm程度の凸状欠陥を含む凸状欠陥の総数はゼロ(発生なし)であった。
(実施例5)
上述の実施例3において、超精密研磨工程1、2で使用する研磨液を以下のようにした以外は実施例3と同様にしてマスクブランクス用ガラス基板を作製した。
研磨液:高純度コロイダルシリカ(平均粒径30〜100nm)+水
高純度コロイダルシリカ:有機ケイ素を加水分解することで生成したコロイダルシリカであって、金属不純物が除去された高純度アルコキシシランを原料にゾルゲル法により合成したもの。純度が99.99999%。コロイダルシリカ砥粒に含まれるアルカリ金属(Na,K)の含有量が0.1ppm以下。
超精密研磨工程1実施後、及び、超精密研磨工程2実施後に、それぞれ、得られたガラス基板の主表面をレーザー干渉コンフォーカル光学系による欠陥検査装置を用いて高さ数nm程度(約2〜7nm)の凸状の突起を調べたところ、いずれの場合においても、このような表面欠陥は全く確認できず、高さ数nm程度の凸状の突起の発生率は0%(100枚中0枚)であった。
尚、上述の実施例及び比較例で確認された高さ数十nm程度の凸状の突起をEPMA(Electron Probe(X-ray) Micro Analyzer)で成分分析を行ったところ、主成分がSi、Oを含むものであることが確認された。
また、上述の実施例1〜5にかかるマスクブランクス用ガラス基板の製造方法によって製造した、少なくとも132mm角の内側の領域では高さ数十nm程度の凸状欠陥のないマスクブランクス用ガラス基板、並びに、上述の比較例1の製造方法によって製造した高さ数十nm程度の凸状欠陥のあるガラス基板の一主表面上に、モリブデンシリサイド窒化膜からなるハーフトーン膜をスパッタリング法により形成した。
こうして作製したモリブデンシリサイド窒化膜からなるハーフトーン膜の欠陥検査を行ったところ、実施例1〜5にかかるマスクブランクス用ガラス基板の製造方法によって製造したマスクブランクス用ガラス基板上のハーフトーン膜には、少なくとも132mm角の内側の領域では凸状の表面欠陥が認められなかった。これに対し、高さ数十nm程度の凸状欠陥が確認されたマスクブランクス用ガラス基板(比較例1)上のハーフトーン膜においては、、132mm角の内側の領域でもハーフトーン膜表面に凸状の表面欠陥が確認された。
さらに、欠陥検査後の実施例1〜5、比較例1に係るマスクブランク用ガラス基板におけるハーフトーン膜の上に、酸化窒化炭化クロム、窒化クロム、酸窒化炭化クロムの3層積層構造の遮光膜をスパッタリング法により形成し、位相シフトマスクブランクを作製した。
上述の少なくとも132mm角の内側の領域では高さ数十nm程度の凸状欠陥が認められなかった位相シフトマスクブランクス、及び132mm角の内側の領域でも高さ数十nm程度の凸状欠陥が確認された位相シフトマスクブランクス上にレジスト膜を形成し、さらに、レジスト膜をパターニングしてレジストパターンとした。次に、このレジストパターンをマスクにして、遮光膜をドライエッチングによりパターニングした。次に、パターンが形成された遮光膜をマスクにして、ハーフトーン膜をドライエッチングによりパターニングした。さらに、遮光帯用のレジストパターンを形成し、そのレジストパターンをマスクにして、遮光膜をドライエッチングして遮光帯を形成した。以上の工程により、ガラス基板上にハーフトーン膜パターンが形成された位相シフトマスクを作製した。
こうして作製した位相シフトマスクについて、表面欠陥を確認したところ、実施例1〜5の少なくとも132mm角の内側の領域では高さ数十nm程度の凸状欠陥のないガラス基板を使って作製した位相シフトマスクには、位相欠陥は確認されなかったが、比較例1のガラス基板を使って作製した位相シフトマスクに、ガラス基板表面とハーフトーン膜パターンの境界に凸状の表面欠陥が確認され位相欠陥となった。
また、これら位相欠陥が確認された位相シフトマスクを使って露光機により半導体基板上にリソグラフィー技術により微細パターンを形成したところ、位相シフトマスクの位相欠陥要因のパターン欠陥が確認されたが、位相欠陥が確認されなかった位相シフトマスクを使って半導体基板上に微細パターンを形成した場合は、パターン欠陥はなかった。
上述の実施例1〜5、比較例1にかかるマスクブランクス用ガラス基板の製造方法によって製造したガラス基板上に、Mo膜(2.8nm)とSi膜(4.2nm)の積層膜を40周期にわたり形成し、最後にSi膜を4nm形成して多層反射膜を形成した。次に、キャップ層として、RuNb膜を2.5nm形成した。さらに、RuNb膜上にTaBN膜からなる吸収体膜を形成してEUV反射型マスクブランクスを作製した。さらに、TaBN膜上にレジスト膜を形成し、パターニングしてレジストパターンとした後、このレジストパターンをマスクにしてTaBN膜をドライエッチングによりエッチング除去、レジストパターンを除去してEUV反射型マスクを作製した。
上述と同様にしてEUV反射型マスクブランクスの表面欠陥、EUV反射型マスクの位相欠陥、EUV反射型マスクを使ってリソグラフィー技術により作製した半導体基板上に形成された微細パターンのパターン欠陥について調べたところ、実施例1〜5のガラス基板を使った場合、上述の欠陥はなかったが、比較例1のガラス基板を使った場合、EUV反射型マスクブランクス、EUV反射型マスク、半導体装置に上述の欠陥が確認された。
尚、上述の実施例では、遊星歯車方式の両面研磨装置を使って研磨加工を行った例を示したが、これに限らず、他の方式の両面研磨装置や片面ずつ研磨を行う片面研磨装置を使い、コロイダルシリカ砥粒を用いた研磨液により精密研磨しても上述と同様の効果が得られる。また、上述の実施例では、コロイダルシリカ砥粒を含む研磨液による研磨工程(超精密研磨工程)の前に、酸化セリウム砥粒を含む研磨液による粗研磨工程、精密研磨工程を行なった例をあげたが、これに限定されるものではない。コロイダルシリカ砥粒を含む研磨液による研磨工程を行なう前のガラス基板が十分に平坦で平滑であれば、酸化セリウム砥粒による粗研磨工程及び/又は精密研磨工程を行なわなくてもよい。また、粗研磨工程、精密研磨工程を行なう場合であっても、酸化セリウム以外に、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等の研磨砥粒を使用してもかまわない。
本発明は、近年における超LSIデバイスの高密度化、高精度化にも対応できるように基板表面に高さ数十nm程度の凸状欠陥のないマスクブランクス用ガラス基板及びその製造方法、並びに該基板を用いたマスクブランクス、及びその製造方法、並びに、転写マスク及びその製造方法、及び半導体装置の製造方法を得る際等に利用できる。
1 両面研磨装置
2 太陽歯車
3 内歯歯車
4 キャリア
5 被研磨加工物(ガラス基板)
6 研磨パッド
7 上定盤
8 下定盤
9 研磨液供給部

Claims (10)

  1. ガラス基板に対してフッ酸、ケイフッ酸、またはフッ酸及びケイフッ酸を含む洗浄液で処理を行い、前記処理後のガラス基板の表面をθ/2法を用いて測定したときの濡れ性(接触角)が20°未満である状態にする処理工程と、
    前記処理工程によって表面の濡れ性(接触角)が20°未満である状態に処理されたガラス基板に対し、コロイダルシリカ砥粒を含む研磨液を用い、研磨レートが20nm/min以下であり、研磨取り代が片面で100nm以下の条件で両面研磨を行う最終研磨工程と、
    を有することを特徴とするマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
  2. 前記最終研磨工程後のガラス基板を、フッ酸、ケイフッ酸、またはフッ酸及びケイフッ酸を含む洗浄液で処理する工程を有することを特徴とする請求項1に記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
  3. 前記最終研磨工程は、前記処理工程を行ってから300時間以内に行われることを特徴とする請求項1又は2記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
  4. 前記処理工程を行う前のガラス基板に対し、コロイダルシリカ砥粒を含む研磨液を用いて両面研磨を行う超精密研磨工程をさらに有し、
    前記最終研磨工程で用いられる研磨液は、前記超精密研磨工程で用いられる研磨液よりも研磨レートが小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
  5. 前記最終研磨工程で用いられる研磨液のpHが、9.6〜11.0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
  6. 前記最終研磨工程で用いられる研磨液は、テトラメチルアンモニアを添加したものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
  7. 前記ガラス基板は、ArFエキシマレーザー露光用位相シフトマスクブランクス用ガラス基板、F2エキシマレーザー露光用位相シフトマスクブランクス用ガラス基板、又は、EUV反射型マスクブランクス用ガラス基板の何れかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法で製造したマスクブランク用ガラス基板の主表面上に、露光光に対し光学的変化をもたらす薄膜を形成することを特徴とするマスクブランクスの製造方法。
  9. 請求項8に記載のマスクブランクスの製造方法で製造したマスクブランクスにおける前記薄膜をパターニングして、前記ガラス基板上に薄膜パターンを形成することを特徴とする転写マスクの製造方法。
  10. 請求項9に記載の転写マスクの製造方法で製造した転写マスクを用いて、半導体基板上にリソグラフィー技術により微細パターンを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
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