JP5686914B2 - 結晶の表面自由エネルギーを指標として評価される結晶及び該結晶を含有してなる医薬組成物 - Google Patents

結晶の表面自由エネルギーを指標として評価される結晶及び該結晶を含有してなる医薬組成物 Download PDF

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本発明は、医薬組成物原体として有用なルリコナゾールの晶癖を有する結晶、及び、該結晶を原体とする医薬組成物に関する。
ルリコナゾールは、真菌に対する作用に優れる抗真菌剤であり、現在足白癬、体部白癬に対する医薬として広く使われ、爪白癬に対しても応用されようとしている。また、アスペルギウスに対して、非常に高い抑制効果があることから、深在性の真菌症に対しても肺炎におけるインハレーションなどの製剤や膣炎における膣剤の形での応用が期待されている。ルリコナゾールの製剤には、SE体あるいはZ体等への立体異性化、塗布直後における結晶析出などが解決されるべき問題として知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3,特許文献4、特許文献5、特許文献6を参照)。この内、異性化においては、SE体についても、Z体についても、製剤成分の影響、pHの影響、温度の影響、湿度の影響、或いは光の影響を受けることを本発明者らは確認している。特に、湿度とpHの影響はZ体の形成に大きな影響を与えるため、この様な状況下において使用される製剤においては、この対策が必要となっている。例えば、錠剤であれば長時間、胃液などの、pHの低い、湿潤条件下で貯留されるはずであるし、膣剤においても高湿度低pH下で貯留されるはずであるし、インハレーションにおいても高湿度条件下での使用となることは疑いのないことである。この作用時間に、Z体が生成することはできうる限り抑制しなければならないことは明らかである。しかしながら、有効な手だてはトライアル&エラーで見つけるしかない状況にあった。一方、結晶などにおいて、表面自由エネルギーは、結晶などの表面の濡れ特性などに影響を与えるファクターであることは知られていたが(例えば、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10を参照)、原体(結晶)のできあがりの状況によってこのものが変化し、該変化が安定性などの指標になることは全く知られていなかった。
即ち、固体状態の結晶において、又、かかる結晶を用いて作製された固体状態の医薬組成物において、湿度、pH、温度などに対して安定性を向上せしめる手段の開発が望まれていた。
Figure 0005686914
Figure 0005686914
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国際公開第2007/102241号パンフレット 国際公開第2007/102242号パンフレット 国際公開第2007/102243号パンフレット 国際公開第2009/031642号パンフレット 国際公開第2009/031643号パンフレット 国際公開第2009/031644号パンフレット 特開2005−223345号公報 特開2007−24735号公報 特開2004−341328号公報 特開2007−147550号公報
本発明は、この様な状況下為されたものであり、湿度や光等の影響でルリコナゾールの異性体が生成するのを抑制し、安定性を向上する手段を提供することを課題とする。
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、湿度や光等の影響でルリコナゾールの異性体が生成するのを抑制する手段を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、表面自由エネルギーが結晶の形態によって異なり、表面自由エネルギーが小さく、表面自由エネルギーにおける極性成分の割合が低いものが湿度や光等の影響を受けにくいことを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
<1> 酢酸エチル−n−ヘキサンの混合溶媒、又はエタノール−水の混合溶媒から選択される溶媒を用いた再結晶によって得られる、ルリコナゾールの結晶であって、
ルリコナゾールの結晶の表面自由エネルギーが28mJ/m2以下であり、表面自由エネルギーにおける極性成分の割合が35%以下であることを指標として、当該結晶が、Z体の生成率が低く、製剤に適した結晶であると評価する工程、及び、
前記工程で、ルリコナゾールの結晶の表面自由エネルギーが28mJ/m2以下であり、表面自由エネルギーにおける極性成分の割合が35%以下であり、Z体の生成率が低く、製剤に適した結晶であると評価された結晶を選択する工程、
を含む、ルリコナゾールの結晶の製造方法により製造された結晶。
<2> 前記評価する工程において固体製剤に適した結晶であると評価された、<1>に記載の結晶。
<3> 酢酸エチル−n−ヘキサンの混合溶媒、又はエタノール−水の混合溶媒から選択される溶媒を用いた再結晶によって得られる、ルリコナゾールの結晶であって、以下の1〜4の条件を備えた、<1>又は<2>に記載の結晶。
1.結晶の表面自由エネルギーにおける極性成分の割合が31%以下であること。
2.結晶の表面自由エネルギーにおける分散成分が18mJ/m2以上であること。
3.結晶の表面自由エネルギーにおける極性成分が8.2mJ/m2以下であること。
4.結晶の表面自由エネルギーが、27.4mJ/m2以下であること。
<4> 80℃6時間、水懸濁及び曝光条件保存後の、ルリコナゾールの結晶におけるZ体の生成率が、ルリコナゾールの結晶の0.11質量%未満である、<1>〜<3>のいずれかに記載の結晶。
<5> <1>〜<4>のいずれかに記載の結晶を含む、ルリコナゾール含有医薬組成物。
<6> 固体製剤である、<5>に記載のルリコナゾール含有医薬組成物。
<7> 酢酸エチル−n−ヘキサンの混合溶媒、又はエタノール−水の混合溶媒から選択される溶媒を用いた再結晶によって得られる、ルリコナゾールの結晶を、ルリコナゾールの結晶の表面自由エネルギーが28mJ/m2以下であり、表面自由エネルギーにおける極性成分の割合が35%以下であることを指標として、当該結晶が、Z体の生成率が低く、製剤に適した結晶であると評価する工程、及び
前記工程で、ルリコナゾールの結晶の表面自由エネルギーが28mJ/m2以下であり、表面自由エネルギーにおける極性成分の割合が35%以下であり、Z体の生成率が低く、製剤に適した結晶であると評価された結晶を配合する工程、
を含む、ルリコナゾール含有医薬組成物の製造方法。
<8> 酢酸エチル−n−ヘキサンの混合溶媒、又はエタノール−水の混合溶媒から選択される溶媒を用いた再結晶によって得られる、ルリコナゾールの結晶であって、
ルリコナゾールの結晶の表面自由エネルギーが28mJ/m2以下であり、表面自由エネルギーにおける極性成分の割合が35%以下であることを指標として、当該結晶が、Z体の生成率が低く、製剤に適した結晶であると評価する工程、及び、
前記工程で、ルリコナゾールの結晶の表面自由エネルギーが28mJ/m2以下であり、表面自由エネルギーにおける極性成分の割合が35%以下であり、Z体の生成率が低く、製剤に適した結晶であると評価された結晶を選択する工程、
を含む、ルリコナゾールの結晶の製造方法。
<9> ルリコナゾールの結晶の差異評価方法であって、
ルリコナゾールの結晶の表面自由エネルギー及び表面自由エネルギーにおける極性成分の割合を指標とし、表面自由エネルギーが小さく、極性成分の割合が低いほど、結晶が安定であると評価する方法。
<10> 前記方法において、表面自由エネルギーは28mJ/m2以下である、<9>に記載の方法。
<11> 前記方法において、表面自由エネルギーにおける極性成分の割合は35%以下である、<9>又は<10>に記載の方法。
<12> 固体製剤に適した結晶か否かを評価する、<9>〜<11>の何れかに記載の方法。
<13> <9>〜<12>の何れかに記載の方法において、結晶が安定であるとされた結晶。
<14> 以下の1〜4の条件を備えたルリコナゾールの結晶。
1.結晶の表面自由エネルギーにおける極性成分の割合が31%以下であること。
2.結晶の表面自由エネルギーにおける分散成分が18mJ/m2以上であること。
3.結晶の表面自由エネルギーにおける極性成分が8.2mJ/m2以下であること。
4.結晶の表面自由エネルギーが、27.4mJ/m2以下であること
<15> <13>又は<14>に記載の結晶を含む、ルリコナゾール含有医薬組成物。<16> 固体製剤である、<15>に記載のルリコナゾール含有医薬組成物。
<17> 結晶の安定化に好ましい製剤成分を含有することを特徴とする、<15>又は<16>に記載のルリコナゾール含有医薬組成物。
<18> <9>〜<12>の何れかに記載の方法において、結晶が安定であるとされた結晶を配合する工程を含む、ルリコナゾール含有医薬組成物の製造方法。
<19> <18>に記載の製造方法により製造された、ルリコナゾール含有医薬組成物。
本発明によれば、湿度や光等の影響でルリコナゾールの異性体が生成するのを抑制する手段を提供することができる。すなわち、安定性を向上する手段を提供することができる。
粉末X線回折測定の結果を示す図である。 DSC(示差走査熱測定)の結果を示す図である。 表面張力の概念を示す図である。 実施例1の接触角θを計測する装置を示す図である。
本明細書において用いた略号を説明する。
γs:表面自由エネルギー
γsd:表面自由エネルギーにおける分散成分
γsP:表面自由エネルギーにおける極性成分
γsP/γs:表面自由エネルギーにおける極性成分の割合
<1>差異評価方法
本発明に用いる差異評価方法は、ルリコナゾールの結晶の安定性の差異評価方法であって、ルリコナゾールの結晶の表面自由エネルギーを計測し、その大小及び表面自由エネルギーにおける極性成分の割合を以て、安定性の低い、高いを評価することを特徴とする。かかる差異評価における安定性としては、ルリコナゾールの異性体及び類縁体の含有量の変化、より詳細には、その含有量の増分が指標となる。ルリコナゾールの異性体としては、前記のごとくSE体、及びZ体が好ましく例示できる。また、本発明者等は、ルリコナゾール製剤において、選択する溶剤の種類によって出現する、SE体あるいはZ体とは異なる類縁体であるアミド体を知見した。アミド体も活性の低下という観点から好ましくないため、前記差異評価における安定性の指標となる。
Figure 0005686914
本発明に用いる差異評価方法の対象となるルリコナゾールは、結晶からなる原体であって、該結晶の構造は、単結晶X線構造解析によれば、その結晶系、空間群、格子定数及びR因子が実質的に次に示す値のものである。ルリコナゾールにおいては、かかる結晶系以外に他の形態は現在のところ認められず、多形は存しないものと推定されている。
結晶系:単斜晶 ;空間群:P21 ;格子定数 a=9.0171(9) Å、b=8.167(1) Å、c=10.878(1) Å、β=95.917(9)° ;R因子 R=0.046、Rw=0.047
ルリコナゾールのこの様な単一の結晶系において、その製造方法によって、安定性、特に、Z体、SE体、アミド体の経時変化が異なることについて、本発明者らは知見している。この製造方法による安定性の違いが何に由来するのかを、鋭意検討したところ、驚くべきことに、製造方法や条件の微妙な違いにより、結晶の表面自由エネルギーが異なることを見出した。本発明は、このような知見に基づき、なされたものである。
結晶における表面自由エネルギーの測定は、常法に従って行えばよい。例えば、表面自由エネルギー、表面自由エネルギーにおける分散成分、表面自由エネルギーにおける極性成分が既に知られている幾つかの溶剤を用いて、液体浸透速度測定(装置機種名:Processor Tensiometer K12、製造会社名:KRUSS GmbH)により結晶との接触角を計測し、これより、Owens、Wendt、Rabel、及びKaelbleのモデルを適用して算出することができる。この方法における好ましい測定溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、テトラクロロエタン、ベンゼン、ニトロベンゼン、1−ニトロプロパン、水などが好適に例示できる。この様な方法は、例えば、特開2010-183064号公報に記載の方法などが参考にできる。
即ち、後記の実施例によれば、ルリコナゾールの結晶の表面自由エネルギーにおける、極性成分の割合(%)と加湿条件下でのZ体の生成率の間には、相関係数0.9でy=0.017x+0.03の直線回帰の関係が存する。また、表面自由エネルギーにおける極性成分の割合において、44%と31%の間には如実なZ体の発生率の差が存し、極性成分の割合が35%以下であることが好ましく、31%以下であることがより好ましいことが示されている。
また、表面自由エネルギーにおける分散成分とZ体の生成率の間にも、相関係数0.9でy=−0.009x+0.25の直線回帰の関係が存し、18.4mJ/m2と16.1mJ/m2の間に如実なZ体の生成率の差が存し、この値としては17mJ/m2以上であることが好ましく、18mJ/m2以上であることがより好ましい。
極性成分とZ体の生成率の間にも、相関係数0.9でy=0.006X+0.03の直線回帰の関係が存し、この値が8.2mJ/m2と12.7mJ/m2の間に如実なZ体の生成率の差が存し、この値が8.5mJ/m2以下であることが好ましく、8.2mJ/m2以下であることがより好ましい。
表面自由エネルギーとZ体生成率の間には、相関係数0.9でy=0.012x−0.255の直線回帰の関係が存し、この値において、27.4mJ/m2と28.8mJ/m2の間には如実なZ体の生成率の差が存し、この値が28mJ/m2以下であることが好ましく、27.4mJ/m2以下であることがより好ましい。
即ち、結晶における表面自由エネルギーにおいては、表面自由エネルギーそのもの、表面自由エネルギーの分散成分、表面自由エネルギーの極性成分及び表面自由エネルギーにおける極性成分の割合の何れもが指標として用いることができ、これらを全て勘案して評価することがより好ましい。
即ち、結晶の安定性上、特に、固体製剤の為の結晶の安定性上、好ましい条件は、以下の1〜4であり、これらを全て充足する場合が特に好ましいと評価される。
1.結晶の表面自由エネルギーにおける極性成分の割合が31%以下であること。
2.結晶の表面自由エネルギーにおける分散成分が18mJ/m2以上であること。
3.結晶の表面自由エネルギーにおける極性成分が8.2mJ/m2以下であること。
4.結晶の表面自由エネルギーが、27.4mJ/m2以下であること。
また、この様な表面エネルギーの性状を有するルリコナゾールの結晶は、本発明に用いる差異評価方法を行った結果選択されたものであると推認することができる。
この様な、結晶における表面自由エネルギーの状況は同一再結晶溶媒であっても、結晶のさせ方などで大きく異なるため、結晶ごとに計測し、医薬原体としての使用に適か不適かを判別することが好ましい。また、再結溶媒の差は明確に存するが、それ以外の要因も大きい。
すなわち、本発明の医薬組成物の好ましい製造方法としては、本発明に用いる差異評価方法により結晶を評価し、安定性が高いとされた結晶を配合することにより、製造することが挙げられる。
<2>本発明の結晶
本発明の結晶は、ルリコナゾールの結晶であって、前記本発明に用いる差異評価方法において、安定性が高いと評価された結晶を選択したものであることを特徴とする。
本発明の結晶として好ましいものは、次の何れかの条件を満たしたものであり、これらを全て充足したものが本発明として、特に好ましいものである。
1.結晶の表面自由エネルギーにおける極性成分の割合が31%以下であること。
2.結晶の表面自由エネルギーにおける分散成分が18mJ/m2以上であること。
3.結晶の表面自由エネルギーにおける極性成分が8.2mJ/m2以下であること。
4.結晶の表面自由エネルギーが、27.4mJ/m2以下であること。
この様な条件を充足する、本発明の結晶は、固体状態で保存する場合、高湿度の場合であっても、異性体であるZ体の生成率が低く、安定性が高い特性を示す。ここで、Z体の生成率が低いとは、例えば、80℃6時間、水懸濁(浸潤条件又は加湿条件)及び6000lxの曝光条件保存後の、ルリコナゾールの結晶におけるZ体の生成率が、ルリコナゾールの結晶の0.2質量%以下、好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.11質量%未満であることである。
本発明の結晶は、固体状態であって、高湿度下にさらされる製剤の原体として好適である。固体状態であって高湿度下にさらされる製剤としては、例えば、錠剤、粉末剤、カプセル剤或いは顆粒剤などの経口投与製剤、インハレーション製剤、膣錠製剤、膣座剤製剤などが好適に例示できる。
<3>本発明の医薬組成物
本発明の医薬組成物は、前記本発明の結晶を含有することを特徴とする。本発明の医薬
組成物において、固体製剤であれば、本発明の結晶の好ましい含有量は、5〜95質量%であり、より好ましくは10〜90質量%であり、更に好ましくは、20〜80質量%である。又、本発明の医薬組成物は、その特性より、固体製剤であることが好ましい。液体製剤であっても、製造までの保存期間が安定に維持できるので好ましいが、固体製剤であることにより、製剤としての安定性も向上するためである。
本発明の医薬組成物においては、前記本発明の結晶以外に、通常医薬品で使用される任意成分を含有することができる。この様な任意成分としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、矯味矯臭剤、増量剤、被覆剤、可塑剤、滑沢剤等が好適に例示できる。これらの必須成分及び任意成分を常法に従って処理することによって、本発明の医薬組成物は製造できる。例えば、顆粒剤の形態の医薬組成物であれば、本発明の結晶と、賦形剤、矯味矯臭剤、結合剤等を流動層造粒し、篩過して整粒し、包装すればよいし、錠剤であれば、整粒した顆粒を打錠すればよい。
本発明の医薬組成物には、安定化をさらに向上させる観点から、結晶の安定化に好ましい製剤成分を含有させてよい。
本発明の医薬組成物は、ルリコナゾールの特性を利用し、真菌による疾病の治療又は悪化の予防に用いることが好ましい。真菌による疾病としては、真菌による肺炎、膣炎のような深在性の真菌症、水虫のような足部白癬症、カンジダ、デンプウのような体部白癬症、爪白癬のようなハードケラチン部分の白癬症が例示できる。かかる本発明の医薬組成物の好ましい用量用法については、投与経路であれば、経口投与、膣内投与、気管を介しての吸入投与、注射による投与などが好適に例示でき、用量では、1日あたり10〜10000mgが好適である。用量は投与経路により異なる場合がある。また、真菌による疾病に通常使用されているルリコナゾールの使用量を参考にすることができる。
斯くして得られた本発明の医薬組成物は、高湿度下にさらされても、Z体の生成率が低く、安定である特徴を有する。
以下、実施例を示しながら、更に詳細に本発明について説明を加えるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
ルリコナゾールをいろいろな条件で再結晶し、状態の異なる結晶を得た。これらの粉末X線回折測定(装置機種名:XRD‐DSCII、製造会社名:リガク、条件:X線源:CuKα、測定温度:室温、管電圧:40kV、管電流:40mA、2θ:5〜35°、ステップ角:0.05°)を行ったところ、回折ピークの回折角2θの位置は全て同じであった。(図1を参照)又、DSC(装置機種名:DSC7、製造会社名:パーキンエルマー)においてもピークは単一であり、融点が149℃付近に観測された。(図2を参照:上から25%含水エタノールで再結晶した結晶、50%含水エタノールで再結晶した結晶、75%含水エタノールで再結晶した結晶、酢酸エチル/n−ヘキサンで再結晶した結晶を示す。)これらより、これらの結晶形は同一であり、溶媒和も存しないことが判る。
表面自由エネルギーに関しては、液体浸透速度測定(装置機種名:Processor
Tensiometer K12、製造会社名:KRUSS GmbH)により得られた液体の粉体への浸透速度から、Washburnの式より、接触角θを算出する。表面自由エネルギーに関しては、図3に示すYoungの式の概念が存し、これを利用して、図4に示すチェンバーチューブを用いて、チェンバー内の液体の粉体への浸透速度を測定し、これより接触角を算出できる。Washburnの式は次の式1の通りである。
Figure 0005686914
この式を単位時間当たりに粉体に浸透する溶媒の重量に変換すると、式2に示すようになる。
Figure 0005686914
液体の表面張力(γL)、密度(ρ)、粘度(η)が既知の溶媒を用いて、浸透速度を計測することにより、接触角θが求まる。斯くして求めたθを用いて、Owens-Wendt-Rabel-Kaelble法にて、表面自由エネルギーにおける極性成分と分散成分を算出する。即ち、表面自由エネルギーを非極性の分散成分γdと極性成分γpから成ると仮定すると、以下の式で表される。
Figure 0005686914
これらを液体の表面張力、固体の表面張力、及び固液界面張力との間に成り立つYoungの式に代入すると以下のようになる。
Figure 0005686914
この式を利用して、γL、γL d、γL pが既知の溶媒数種を用いて接触角θを求めプロットすることで、傾きからγS p、切片からγS dを求めることができる。既知の溶媒としては、n−ヘキサン、テトラクロロメタン、ベンゼン、1−ニトロプロパン、水を用いた。これらのγL、γL d、γL pの値は以下の表1に示す。
Figure 0005686914
これらを利用して、次の方法で作製した検体について、表面自由エネルギー、表面自由エネルギーの分散成分、表面自由エネルギーの極性成分、極性成分の表面自由エネルギーにおける比率(%)を算出した。
<製造例1>
ルリコナゾールをエタノールに加熱溶解し、これにエタノールの1/3量の水を徐々に加え、緩やかに冷却し、結晶1(エタ/水(75:25)未粉砕)を得た。
<製造例2>
結晶1を3分間メノウ乳鉢で粉砕し、結晶2(エタ/水(75:25)3分粉砕)を得た。
<製造例3>
ルリコナゾールをエタノールに加熱溶解し、これにエタノールと同量の水を速やかに加え、急速冷却し、結晶3(エタ/水(50:50))を得た。
<製造例4>
ルリコナゾールを酢酸エチルに加熱溶解し、これに酢酸エチルと同量のn−ヘキサンを速やかに加え、急速冷却し、結晶4(酢エチ/n−ヘキサン)を得た。
結晶1〜4について、算出した表面自由エネルギー、表面自由エネルギーの分散成分、表面自由エネルギーの極性成分、極性成分の表面自由エネルギーにおける比率(%)を表2に示す。
Figure 0005686914
結晶1〜4について、苛酷条件付加下保存試験を行った。即ち、各サンプルを水に懸濁(浸潤条件又は加湿条件)させて、80℃で6時間、6000lxの光に曝露させて、濾取、乾燥後、ルリコナゾールのZ体のルリコナゾールの仕込み量に対する割合を計測、算出した。計測はHPLCで行い、HPLC条件は以下に示すとおりであった。
(HPLC条件)
カラム;CHIRALCEL OD−RH 4.6×150mm、カラム温度;35℃、移動相;メタノール/1.8%ヘキサフルオロリン酸カリウム水溶液の混液(83:17、v/v)、流速;0.56mL/min.、検知;295nm)
結果を表3に示す。
Figure 0005686914
このデータを統計的に処理すると、次のことが言える。
1)表面自由エネルギーにおける、極性成分の割合(%)と加湿条件下でのZ体の生成率の間には、相関係数0.9でy=0.017x+0.03の直線回帰の関係が存する。このことは極性成分の割合が高くなるほど、Z体の生成量も多くなることを意味する。
2)分散成分とZ体の生成率の間には、相関係数0.9でy=−0.009x+0.25の直線回帰の関係が存する。このことは、表面自由エネルギーの分散成分が大きくなると、Z体の生成量は減ずることを意味する。
3)極性成分とZ体の生成率の間には、相関係数0.9でy=0.006X+0.03の直線回帰の関係が存する。このことは、表面自由エネルギーの極性成分が大きくなるとZ体の生成量も増えることを意味する。
4)表面自由エネルギーとZ体生成率の間には、相関係数0.9でy=0.012x−0.255の直線回帰の関係が存する。このことは、表面自由エネルギーが大きくなると、Z体の生成量も増えることを意味する。
<実施例2>
実施例1の結晶1(製造例1)と結晶3(製造例3)とを用いて、錠剤1及び錠剤3を作
成した。即ち、処方成分を混合した後、混合物200mgを打錠圧5t/gで直接打錠法により調製した。
Figure 0005686914
錠剤1及び錠剤3を80℃、湿度100%相当、曝光(6000lx)の条件で24時間保存し、苛酷条件付加下保存試験を実施した。苛酷試験実施後、各錠剤のZ体の生成量及びSE体の生成量をHPLCにより定量した。結果を表5に示す。数値は、何れも仕込んだ結晶に対する質量%である。これより、Z体については、結晶と同じ傾向が認められ、表面自由エネルギー或いは表面自由エネルギーの極性成分が大きい結晶を含有する錠剤ほどZ体の生成量が増える傾向が認められた。一方、SE体については、結晶では観察されず、結晶とは異なる傾向が認められ、表面自由エネルギーが大きいほど、或いは、表面自由エネルギーの極性成分が大きい結晶を含有する錠剤ほど、生成が促進されることが判った。
SE体については、Z体と同様にして、結晶における苛酷条件付加下保存試験を行ったところ、結晶の違いによる生成量の違いは見られなかった。すなわち、SE体の傾向は結晶自身では観察されなかったことであり、製剤系の方が結晶そのものであるときより、安定性が阻害される可能性のあることを示すものである。これは、逆に言えば、結晶においてより安定な態様を保つことが、固体製剤においては重要であることを意味するものでもある。
Figure 0005686914
本発明は、医薬に応用できる。

Claims (2)

  1. 酢酸エチル−n−ヘキサンの混合溶媒、又はエタノール−水の混合溶媒から選択される溶媒を用いた再結晶により得られるルリコナゾール結晶が、次に示す表面自由エネルギーの条件を充足するか否かを鑑別する工程、及び、前記工程で表面自由エネルギーの条件を充足した結晶を、製剤適格性があると判別する工程、により、製剤適格性を有すると判断された結晶を準備する第1工程、及び
    第1工程で準備された結晶を配合した医薬組成物を調製する第2工程、
    を含む、ルリコナゾール含有医薬組成物の製造方法。
    (表面自由エネルギーの条件)
    ルリコナゾールの結晶の表面自由エネルギーが28mJ/m 2 以下であり、表面自由エ
    ネルギーにおける極性成分の割合が35%以下である。
  2. 前記第1工程で準備された結晶は、80℃6時間、水懸濁(浸潤条件又は加湿条件)及び6000lxの曝光条件保存後のZ体の生成率が、ルリコナゾールの結晶の0.11質量%未満である、請求項1に記載の方法。
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