図1に、本発明に係るコンデンサを含むデバイスの一例を示している。このデバイス1は、コンデンサ20と、コンデンサ20に接続されたリードフレーム10と、コンデンサ20を収容し表面にリードフレーム10の一部が露出したパッケージ50とを有する。パッケージ50は、コンデンサ20を収容した状態で全体が方形または矩形(直方体)となるように成形された外装用の樹脂(モールド樹脂)59により構成され、表面実装用のコンデンサデバイス1の外観を形成している。以降では、このデバイス1の長手方向を第1の方向X、長手方向Xに直交する短手方向(横方向)を第2の方向Yとして説明する。
図2に、デバイス1のモールド樹脂59を除いた状態を示している。図3に、リードフレーム10と、コンデンサ20とを分離した状態を示している。さらに、図4および図5に、デバイス1のモールド樹脂59を除いた状態の平面図および側面図を示している。デバイス1のリードフレーム10の素材としては、銅系素材、鉄系素材などの機械的強度、電気伝導度、熱伝導度、耐食性などに優れたものが用いられる。リードフレーム10は、第1および第2の陽極端子部(陽極リード)11および12と、第1および第2の陰極端子部(陰極リード、接地電圧用の端子部)15および16とを含む。
コンデンサ20は、第1のコンデンサ素子21と、リードフレーム10を挟んで第1のコンデンサ素子21に積み重なるように配置された第2のコンデンサ素子22とを含む。これらのコンデンサ素子21および22は全体が板状の固体電解コンデンサ(固体電解コンデンサ素子)であり、基本的な構成は共通する。これらのコンデンサ素子21および22は全体として第1の方向Xに長く、第1の方向Xが第2の接続電極(陰極)32に対する第1の接続電極(陽極)31の方向と一致している。また、第1のコンデンサ素子21と第2のコンデンサ素子22とは、第2のコンデンサ素子22の第1の接続電極部31が第1のコンデンサ素子21の第1の接続電極部31に対して第1の方向Xの反対側に配置されるように積層されている。
図6に、第1のコンデンサ素子21の構成を代表して断面により示している。コンデンサ素子21は全体が平板状であり、長方形にカットされた板状または薄膜状の弁作用基体33を有する。弁作用基体33はエッチングなどにより多孔質化(拡面化)が施された第1の面(一方の面、表面)33aおよび第2の面(他方の面、裏面)33bを含む。この例では、リードフレーム10に面した側を第2の面(裏面)33bとして参照している。これらの面33aおよび33bは上下逆転してもよく、左右に面していてもよい。
基体33の表面(一方の面)33aには、誘電体酸化被膜34a、固体電解質層35a、および電極層36aがこの順番に積層されている。基体33の裏面(他方の面)33bにも、同様に、誘電体酸化被膜34b、固体電解質層35b、および電極層36aが順次積層されている。弁作用基体33としては、エッチドアルミニウム箔、タンタル焼結体、ニオブ焼結体またはチタン焼結体があげられる。表面実装用の薄型のデバイス1には、エッチドアルミニウム箔を用いたコンデンサ素子が好適である。
誘電体酸化被膜34aおよび34bは、基体33がエッチドアルミニウム箔であれば、その表面に形成された酸化アルミニウムである。固体電解質層35aおよび35bは、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等の導電性高分子を電解重合、化学重合などにより誘電体酸化被膜34aおよび34bの上にそれぞれ積層させることにより形成できる。電極層36aおよび36bの一例は、固体電解質層35aおよび35bの上にそれぞれ積層された導電性ペーストである。固体電解質層35aおよび35bが実質的な陰極であり、電極層36aおよび36bは導電性を担保するための陰極を構成し、その一部は接続電極部(第2の接続電極部、陰極)32となる。基体33と電極層36aおよび36bとの間に形成される誘電特性を有する、または良好に発揮させるための層は、誘電体酸化被膜34aおよび34b、固体電解質層35aおよび35bに限定されず、接触抵抗を低減させるために固体電解質層35a、電極層36aの間に積層される高導電性のグラファイト層などを含んでいてもよい。
なお、本明細書において陰極として機能するように記載している電極層36aおよび36bは見かけ上の陰極であって、固体電解質層35aおよび35bが真の陰極として機能する役割を担っている。従って、誘電体酸化被膜34aおよび34bが誘電体特性を有する層である。以下においても同様である。また、以降において、電極層36aおよび36bを陰極32として参照する。
さらに、基体33の表面33aには、電極層36aの周縁36cを全周にわたり覆う第1の絶縁層39aが形成されている。また、基体33の裏面33bには、電極層36bの周縁36cを全周にわたり覆う第2の絶縁層39bが形成されている。基体33の表面33aの長手方向Xの一方の端(縁)31は第1の絶縁層39aの外周側に現れ(露出し)、コンデンサ素子21の接続電極部(第1の接続電極部、陽極)31となっている。絶縁層39aおよび39bの一例は、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などの絶縁性の樹脂からなる膜である。裏面33bの絶縁層39bは陽極31の裏側まで伸び、陽極31の裏側をカバーする絶縁層39cとなっている。また、基体33の側面も絶縁層39dにより覆われている。
コンデンサ素子21は、さらに、弁作用基体33を貫通する貫通孔(スルーホール)37を含む。これらの貫通孔37の内周面37aには、弁作用基体33に接する側から誘電体酸化被膜34cおよび固体電解質層35cが順次積層され、さらに、貫通孔37には、銀ペーストなどの導電性ペーストが充填され、貫通電極38が形成されている。貫通孔37の内周面37aであっても、電解重合などの方法により基体33の表面とともに固体電解質層35cを形成でき、コンデンサの容量として寄与させることができる。それとともに、貫通電極38が電極層36aおよび36bとを電気的に接続する接続層として機能する。
コンデンサ素子21および22に設けられる貫通電極38は、2つに限らず1つまたは3つ以上であってもよい。貫通電極38を設けることにより陽極(第1の接続電極部)31および陰極(第2の接続電極部)32の間の電流経路を短縮できる。このため、低ESRおよび低ESLのコンデンサ素子21および22を提供できる。
このデバイス1においては、コンデンサ素子21および22に含まれる誘電体酸化被膜34aおよび34bの厚みは、コンデンサ素子21および22のそれぞれで異なる。第1のコンデンサ素子21の誘電体酸化被膜34aおよび34bの厚みt1は、たとえば、4nmであり、第2のコンデンサ素子22の誘電体酸化被膜34aおよび34bの厚みt2は、たとえば、14nmである。コンデンサ素子の厚みはこれらに限定されない。このような厚みの異なるコンデンサ素子21および22は、誘電体酸化被膜34aおよび34bを形成する際の電圧(基体の化成電圧)を変えることで容易に製造できる。
第1のコンデンサ素子21および第2のコンデンサ素子22は構成が同じであってもよく、この場合は、2つのコンデンサ素子21および22を積層することによりデバイス1の容量を増加できる。一方、コンデンサ素子21および22の誘電体酸化被膜34aおよび34bの厚みを変えることによりコンデンサ素子21および22の容量を変えることができる。コンデンサ素子の容量は概ね面積に比例し、誘電体酸化被膜34aおよび34bの厚みに反比例する。したがって、コンデンサ素子の誘電体酸化被膜34aおよび34bに覆われる表面積と酸化被膜34aおよび34bの厚みを変えることにより容量の差が1:数100程度あるいはそれ以上の複数のコンデンサ素子を1つのデバイス1に組み込むことができる。たとえば、容量200μFの第1のコンデンサ素子21と、容量40μFの第2のコンデンサ素子22とを含むデバイス1を提供できる。
また、コンデンサ素子21および22の誘電体酸化被膜34aおよび34bを変えることによりコンデンサ素子21および22の耐圧(定格電圧)を変えることができる。コンデンサ素子の定格電圧は概ね誘電体酸化被膜34aおよび34bの厚みに反比例する。したがって、定格電圧の差が1:数10程度あるいはそれ以上の複数のコンデンサ素子を1つのデバイス1に組み込むことができる。たとえば、定格電圧2Vの第1のコンデンサ素子21と、定格電圧6.3Vの第2のコンデンサ素子22とがリードフレーム10を挟んで積層されたデバイス1を提供できる。
図2に示すように、リードフレーム10は、第1の陽極端子部(第1の陽極リード、第1のリード部)11と、第2の陽極端子部(第2の陽極リード、第3のリード部)12と、第1および第2の陰極端子部(基準電圧用の接続端子部、陰極リード、第2のリード部)15および16とを含む。
図4および図5に示すように、このデバイス1(コンデンサ20)においては、第1のコンデンサ素子21の陽極31が、金線、銅線、アルミニウム線などの導電性の金属ワイヤー(第1のボンディングワイヤ)41によりリードフレーム10の第1の陽極リード11に電気的に接続され、第2のコンデンサ素子22の陽極31が第2のボンディングワイヤ42により第2の陽極リード12に電気的に接続されている。これらのボンディングワイヤ41および42は、実質的に長手方向(第1の方向、縦方向)Xではなく、直交する方向(第2の方向、短手方向、幅方向、横方向)Yに延びている。
一方、リードフレーム10の陰極リード15および16は、第1のコンデンサ素子21の裏面33bの陰極32と第2のコンデンサ素子22の裏面33bの陰極32とに挟まれ、これらのコンデンサ素子21および22に電気的および機械的に接続されている。陰極リード15および16は、通常、回路の接地側(接地回路)に接続され、基準電圧(接地電圧)が印加される。
第1および第2の陽極リード11および12は、それぞれ、長手方向Xに延びた第1の部分11aおよび12aと、横方向Yに延びた第2の部分11bおよび12bとを含み、L型またはT型に近い形状となっている。横方向Yに延びた第2の部分11bおよび12bは、コンデンサ素子21および22から外側に向かってパッケージ50の外側まで延び、適当な角度で折り畳まれてデバイス1を外部と電気的に接続するために用いられる。
第1の部分11aおよび12aは長手方向Xに細長く延びており、コンデンサ素子21および22の長手方向Xに配置される。第1の部分11aおよび12aの横方向Yの一部11cおよび12cがコンデンサ素子21および22により挟み込まれる。第1の部分11aおよび12aの横方向Yの挟み込まれない部分11dおよび12dは、コンデンサ素子21および22の長手方向Xに沿ってコンデンサ素子21および22の側面から外側に現れ、ボンディングワイヤ41および42をそれぞれに接続できる。第1の部分11aおよび12aのコンデンサ素子21および22により挟み込まれる部分11cおよび12cは、それぞれのコンデンサ素子21および22の絶縁層39bに挟まれ、コンデンサ素子21および22の陰極32には電気的に接触しないようになっている。第1の部分11aおよび12aの挟み込まれる部分11cおよび12cを絶縁コーティングして電気的に接触しないようにしてもよい。
陽極リード11および12の長手方向Xに伸びた第1の部分11aおよび12aの長手方向Xの長さは、コンデンサ素子21および22から長手方向Xに実質的に突出しないようになっている。実際には、コンデンサ素子21および22を陽極リード11および12に機械的に取り付けるときの公差を考慮し、図4などに示しているように、それぞれの第1の部分11aおよび12aの長手方向Xの端11eおよび12eは、コンデンサ素子21および22から若干はみだしても(突出しても)良い設計としている。しかしながら、第1の部分11aおよび12aの長手方向の端11eおよび12eは、ボンディングワイヤ41および42を電気的に接続できる程度まで長く突き出ることがない設計としている。このため、陽極リード11および12は、長手方向に沿ってコンデンサ素子21および22から外側に延び、電気的接続に供する部分は含まない。
陰極リード15および16も、それぞれ、長手方向Xに延びた第1の部分15aおよび16aと、横方向Yに延びた第2の部分15bおよび16bとを含み、L型またはT型に近い形状となっている。横方向Yに延びた第2の部分15bおよび16bは、コンデンサ素子21および22の外側に向かってパッケージ50の外側まで延び、適当な角度で折り畳まれてデバイス1を外部と電気的に接続するために用いられる。
第1の部分15aおよび16aは、コンデンサ素子21および22の陰極32に接触する部分で繋がり、陰極32との接続電極19が形成されている。接続電極19の面積はコンデンサ素子21および22の陰極32の面積よりも小さく、接続電極19をコンデンサ素子21および22により挟み込んだときに接続電極19が陰極32の範囲に収まり、接続電極19がコンデンサ素子21および22の外側にはみ出さないようになっている。したがって、コンデンサ素子21および22により接続電極19を挟み込み、これらを導電ペーストなどでコンデンサ素子21および22の陰極32を電気的および機械的に接続することにより、コンデンサ素子21および22がリードフレーム10の陰極リード15および16に電気的に並列に接続され、さらにコンデンサ素子21および22が陰極リード15および16に機械的に接続されたデバイス1(コンデンサ20)を提供できる。陰極リード15および16の長手方向Xに延びた第1の部分15aおよび16aは分離されていてもよい。
このデバイス1においては、コンデンサ素子21および22、ボンディングワイヤ41および42、およびリードフレーム10が外装用の樹脂(モールド樹脂)59により覆われ、パッケージングされる。ただし、リードフレーム10の外部接続に要する部分はモールド樹脂59では覆われない。モールド樹脂59としては、エポキシ樹脂などの封止樹脂があげられる。モールド樹脂によるパッケージ50の外側にはリードフレーム10の陽極リード11および12、陰極リード15および16の外部接続部分が現れる。パッケージ50の外側に現れるリード11および12、15および16の端は、パッケージ50に沿って下側(裏側)に曲げられており、デバイス1は回路基板などに搭載する表面実装用のデバイスとして使用される。
このデバイス1においては、図4に示すように、パッケージ50が矩形(直方体)であり、陽極リード11および12がパッケージ50の長手方向Xに延びた一方の辺51に並んで形成され、接地用の陰極リード15および16がパッケージ50の長手方向Xに延びた他方の辺52に並んで形成されている。また、ボンディングワイヤ41および42が横方向Yに延び、リードフレーム10は長手方向Xに電気的接続に供する部分を含まない。すなわち、陽極リード11および12、および陰極リード15および16は横方向Yに沿ってコンデンサ素子21および22から外側に向かって延びた電気的接続に供する部分11b、12b、15b、16bをそれぞれ含み、長手方向Xに沿ってコンデンサ素子21および22から外側に向かって延びた電気的接続に供する部分を含まない。したがって、リードフレーム10の長手方向Xの長さを短縮でき、リードフレーム10を含めてパッケージングするパッケージ50の長手方向Xの長さを短縮できる。このため、コンパクトで容量の大きなコンデンサデバイス1を提供できる。
また、コンデンサ素子21および22の長手方向Xの長さに対して陽極リード11および12と陰極リード15および16との距離を縮めることが可能となる。このため、大容量で、よりESLの低いコンデンサデバイス1を提供できる。特に、コンデンサ素子21および22が長手方向Xに長く、横方向Yに短い素子の場合は、コンデンサ素子21および22の容量に対して、陽極リード11および12と陰極リード15および16の距離を縮めやすい。したがって、コンパクトで容量が大きく、さらにより低ESLのコンデンサデバイス1を提供できる。
1つのコンデンサ素子41を有するデバイスにおいても、ボンディングワイヤ41を横方向Yに延ばし、リードフレーム10が長手方向Xにコンデンサ素子21の外側に延びた部分であって、ボンディングワイヤ41などとの電気的接続に供する部分を含まないようにすることにより、上記と同様にコンパクトで容量が大きく、低ESLのコンデンサデバイス1を提供できる。このデバイス1においては、第1および第2のコンデンサ素子21および22を、リードフレーム10を挟んで重ね合わせることにより、コンデンサ容量をさらに増加できる。また、第1のコンデンサ素子21および第2のコンデンサ素子22の容量および/または耐電圧を変えることにより、以下で詳述するように広い周波数帯でインピーダンスをさらに低減したり、多電源電圧の基板に対応するなどの機能が融合したデバイス1を提供できる。
さらに、このコンデンサデバイス1では、長手方向Xが各コンデンサ素子21および22において、陰極32に対する陽極31の方向と一致しており、横方向Yにボンディングワイヤ41および42を延ばすことは、ボンディングワイヤ41および42を陰極32に対する陽極31の方向と直交する方向に延ばすことになり、コンデンサの容量を増加するとともに、ESRを低減できる。横方向Yが陰極32に対する陽極31の方向となるコンデンサ素子を含むデバイスにおいては、コンデンサの容量を増加することは難しいことが多い。これに対し、陰極32に対する陽極31の方向Yと直交する方向、すなわち、長手方向Xにボンディングワイヤを延ばすことにより、コンデンサ容量を増すことができ、さらに、低ESR化することができる。
図7に従来の固体電解コンデンサ素子を含むデバイスとの比較を模式的に示している。図7(a)は、従来の固体電解コンデンサ素子75の一例を示している。この素子75は全体が長方形(直方体)であり、陽極71が長手方向Xの一方の端に現れており、陽極端子73および陰極74は長手方向Xに対峙している。したがって、陰極72をアレンジするために素子75の長手方向Xの長さ(L寸法)を利用でき、陰極72の面積を大きく確保できる。このため、大容量のコンデンサ素子75を得ることができる。陽極端子73および陰極端子74も長手方向Xに対峙して配置されている。素子75の陽極71と陽極端子73とはリードまたはボンディングワイヤ79により電気的に接続され、陰極72と陰極端子74とは直に、または導電性ペーストにより電気的に接続される。この素子75においては、素子75の長手方向Xが電流経路となる。
素子75を低ESL化する1つの方法は、接続時に電流がループするループ長を短縮することである。したがって、電流経路を長手方向Xから横方向(短手方向)Yにすることが好ましい。図7(b)に示した固体電解コンデンサ素子76においては、陽極71および陰極72と、陽極端子73および陰極端子74とをともに短手方向Yに(対峙するように)配置している。この素子76においては、電流経路が横方向Yになり、電流が流れる距離(ループ長)が素子76のL寸法からW寸法に短縮される。したがって、低ESLのデバイスを提供できる。しかしながら、ボンディングワイヤ79は、陰極72に対して陽極71の方向に延び、陰極72および誘電体層をアレンジするために利用できる距離が横方向YのW寸法になり、陰極72および誘電体層の面積が縮小される。したがって、コンデンサ容量は減る傾向となり、デバイスの低ESR化が難しい。
図7(c)に示した固体電解コンデンサ素子77においては、陽極端子73および陰極端子74を横方向Yに(対峙するように)配置し、陽極71および陰極72を長手方向Xに(対峙するように)配置している。この素子77においては、電流経路が横方向Yになり、電流が流れる距離(ループ長)が素子77のL寸法からW寸法に短縮される。したがって、ESLを低減できる。さらに、ボンディングワイヤ79が陰極72に対する陽極71の方向とは直交する方向に延び、陰極72および誘電体層をアレンジするために利用できる距離が長手方向XのL寸法になる。このため、陰極72および誘電体層の面積を拡大できる。したがって、コンデンサ容量は大きくでき、低ESR化も実現できる。このように、ボンディングワイヤ79の接続方向を変え、固体電解コンデンサの接続方向のみを長手方向Xから短手方向Yに変換し、接続方向をL方向からW方向に反転することにより、さらにESLおよびESRの低いデバイスを提供できる。
図8に、異なるデバイスの例を示している。図8は、デバイス1aを、パッケージ50を省いて示す斜視図である。このデバイス1aの基本的な構成は上述したデバイス1と同じであり、コンデンサ20とリードフレーム10とを有する。このデバイス1aは、リードフレーム10を挟んで積層された第1のコンデンサ素子21および第2のコンデンサ素子22に加え、大容量の第1のコンデンサ素子21の上に積み重ねられた小容量の第3のコンデンサ素子23を有する。したがって、デバイス1aは、積層配置されたコンデンサ素子21〜23を有し、これら複数のコンデンサ素子21〜22が電気的に並列に接続されている。第3のコンデンサ素子23は、陰極32に対する陽極31の向きが横方向Yになるように、下側の大容量の第1のコンデンサ素子21の陽極31を除いた部分に積み重ねられている。第3のコンデンサ素子23も固体電解コンデンサであり、基本的な構成は他のコンデンサ素子21および22と共通する。
リードフレーム10は、第1〜第3の陽極リード11〜13と、第1〜第3の陰極リード15〜17とを有する。第1のコンデンサ素子21の陽極31は第1の陽極リード11と第1のボンディングワイヤ41により接続され、第2のコンデンサ素子22の陽極31は第2の陽極リード12と第2のボンディングワイヤ42により接続され、第3のコンデンサ素子23の陽極31は第3の陽極リード13と第3のボンディングワイヤ43により接続されている。これらのボンディングワイヤ41〜43は、実質的に横方向Yに延びている。
このデバイス1aにおいてもリードフレームの陽極リード11〜13、および陰極リード15〜17は横方向Yに沿ってコンデンサ素子21〜23から外側に向かって延びた電気的接続に供する部分をそれぞれ含み、長手方向Xに沿ってコンデンサ素子21〜23から外側に向かって延びた電気的接続に供する部分を含まない。したがって、リードフレーム10の長手方向Xの長さを短縮でき、リードフレーム10を含めてパッケージングするパッケージ50の長手方向Xの長さを短縮できる。このため、コンパクトで容量の大きなコンデンサデバイス1を提供できる。また、リードフレームの陽極リード11〜13、および陰極リード15〜17は長手方向Xに沿ってコンデンサ素子21〜23から外側に露出した部分(突き出た部分)を含まない。したがって、このデバイス1aは、さらにコンパクトな表面実装デバイスとなっている。
また、コンデンサ素子21〜23の長手方向Xの長さに対して陽極リード11〜13と陰極リード15〜17との距離を縮めることが可能となる。このため、大容量で、コンパクトであり、より低ESLのコンデンサデバイス1aを提供できる。
第3のコンデンサ素子23は、第1のコンデンサ素子21の上に重ねて設置されることにより、第3のコンデンサ素子23の陰極32となる裏面の電極36bが、第1のコンデンサ素子21の陰極32となる表面の電極36aと直に、または導電ペーストを介して電気的に接続できる。したがって、第3のコンデンサ素子23の陰極32は第1のコンデンサ素子21の陰極32を介してリードフレーム10の第1〜第3の陰極リード15〜17と電気的に接続される。第3のコンデンサ素子23の陰極32、誘電体層34aおよび34bの面積は他のコンデンサ素子21および22のそれらの面積に対して小さく、容量は小さい。一方、第3のコンデンサ素子23の誘電体層34aおよび34bの厚みは他のコンデンサ素子21および22のそれらの厚みに対して厚い。したがって、デバイス1aは、接地側が並列に接続された容量および耐電圧の異なる3つのコンデンサ素子21〜23を含む。たとえば、定格電圧2Vで容量200μFの第1のコンデンサ素子21と、定格電圧6.3Vで容量40μFの第2のコンデンサ素子22と、定格電圧25Vで容量1μFの第3のコンデンサ素子23とを含むデバイス1を提供できる。これらの数値は一例に過ぎない。
図9に、デバイス1aが搭載されたプリント配線板の一部を模式的に示している。また、図10は、デバイス1aを含む電源回路のブロック図である。プリント配線板(プリント基板)9は、たとえば、パーソナルコンピュータなどの電子機器のマザーボードである。プリント配線板9にはCPU3と電源ブロック(図9には不図示)2とが搭載され、接地回路5と、電源ブロック2からCPU3とを接続する電源回路4との間にデバイス1aが並列に接続されている。このデバイス1aはデカップリングコンデンサあるいはバイパスコンデンサとして機能する。
このデバイス1aの並列に接続された3つのコンデンサ素子21〜23の静電容量(コンデンサ容量)C1、C2およびC3は異なる。さらに、それぞれのコンデンサ素子21〜23は表面33aおよび裏面33bの陰極32が貫通電極38により接続されており、陽極31から陰極32に至る電流経路が短く、また、電流の流れる方向が多様になる。したがって、それぞれのコンデンサ素子21〜23は低ESRおよび低ESLである。このため、デバイス1aの陽極端子(陽極リード)11、12および13を電源回路4に接続し、陰極端子15、16および17を接地回路5に接続することにより、低ESRおよび低ESLの容量の異なる素子21〜23が並列に接続される。したがって、デバイス1aを電源回路に採用することにより、広い周波数帯域でインピーダンスを低くすることができ、広範囲の周波数のノイズを除去することができる。
図11(a)〜(c)に広い周波数帯で低インピーダンスが実現される様子を模式的に示している。図11(a)に示すような大容量の第1のコンデンサ素子21の容量C1のインピーダンスカーブ61と、中容量の第2のコンデンサ素子22の容量C2のインピーダンスカーブ62と、小容量の第3のコンデンサ素子23の容量C3のインピーダンスカーブ63が合成され、図11(b)に示すような広い周波数帯でブロードな低いインピーダンスをもったインピーダンスカーブ64を再現できる。
図12(a)に示すように、従来、このような特性を得るためには複数の容量の異なるコンデンサデバイス29a〜29cを並列に接続することが必要であった。複数の容量の異なるコンデンサデバイス29a〜29cは、サイズが異なり、さらには、タイプが異なるコンデンサ(たとえば、タンタルコンデンサ、セラミックコンデンサなど)の組み合わせになる。このため、容量が異なるだけではなく、ESRおよびESLも異なり、図12(b)に示すようにESLは一致しない。したがって、図12(c)に示すように、合成されたインピーダンスカーブ69は、変曲点が複数発生する。電気的にはLC共振が発生してしまうことになる。
一方、図11(b)に示すように、デバイス1aは、容量特性の異なるコンデンサ素子21〜23を1つのパッケージに収納しているので、容量特性を除く他の特性、すなわち、ESLおよびESRは同じになる。このため、図11(c)に比較して示しているように、インピーダンスカーブ69よりも広域周波数にわたり特性変化の少ない低インピーダンス特性を示すインピーダンスカーブ64が得られる。したがって、LC共振の発生の少ない、フラットなインピーダンス特性を発現するデバイス1aを提供できる。
さらに、1つのデバイス1aで複数の容量特性を備えたデバイスを提供できるので複数の容量特性を得るためのデバイスを実装に要するスペースを縮小でき、従来多数のコンデンサを搭載していた用途を1つまたは数少ないデバイス1aにより置き換えることができる。このため、コンパクト化が進んでいるノート型のパーソナルコンピュータなどの情報処理端末や、携帯電話、PDAなどの携帯型の情報処理端末などの電子機器に好適である。
図13は、デバイス1の異なる用途の幾つかの例を示している。図13(a)は、複数の電圧ラインを備えた半導体3aの電源系統に、1または数少ないデバイス1aでデカップリングコンデンサあるいはバイパスコンデンサとしての機能を付加できることを示している。複数の電源ブロック(スイッチング電源)2a、2bおよび2cを備えた電子機器あるいはプリント配線板において、複数の電圧ライン(電圧回路)4a、4bおよび4cのそれぞれに、デバイス1aのそれぞれのコンデンサ素子21、22および23を接続することが可能である。上述したようにデバイス1aは定格電圧の異なる複数のコンデンサ素子21〜23を含む。したがって、デバイス1aは複数電圧に対応できる。また、同一の電圧ラインであっても、複数の電力を供給させるラインがある場合に、デバイス1aはそれぞれの電力ラインに適応できる。
図13(b)は、π型フィルターに適応した例である。コンデンサ素子を含む既存のπ型フィルターは、デバイス内にコイル成分(インダクタ)を配置しているため回路適応性に乏しいという欠点を含んでいた。これに対し、デバイス1aであれば、直列に配列されるコイル成分L1、L2およびL3をプリント配線板などにおいて実装可能な開放系にできる。このため、コイル成分L1、L2およびL3を回路パターンの配線幅、配線長、あるいはインダクタデバイスにより自由に配置でき、実装される回路に適したπ型フィルター6を構成できる。
図14(a)および(b)に、異なるデバイスの例を示している。図14(a)では、デバイス1bを、パッケージ50を省き、さらに、コンデンサ20を構成する第1のコンデンサ素子21と第2のコンデンサ素子22とを一点鎖線により示している。また、図14(b)では第1のコンデンサ素子21と第2のコンデンサ素子22とを実線で示している。このデバイス1bの基本的な構成は上述したデバイス1と共通し、コンデンサ20とリードフレーム100とを有する。リードフレーム100は、第1の陽極端子部(第1の陽極リード、第1のリード部)11と、第2の陽極端子部(第2の陽極リード、第3のリード部)12と、第1および第2の陰極端子部(基準電圧用の接続端子部、陰極リード、第2のリード部)15および16とを含む。リードフレーム100の陰極リード15および16の側の構成はデバイス1と共通であり、陰極リード15および16が一体となった陰極フレーム105を含む。このデバイス1bにおいては、第1および第2の陽極リード11および12も、それらの長手方向Xに延びた第1の部分11aおよび12aが繋がり、一体となっている。すなわち、デバイス1bの陽極端子部11および12は一体となり、全体がほぼπ字型のフレーム(陽極フレーム)101となっている。
この陽極フレーム101の長手方向Xに延びた一部101cがコンデンサ素子21および22により挟み込まれ、挟み込まれない部分101aは、コンデンサ素子21および22の長手方向Xに沿ってコンデンサ素子21および22の側面から外側に現れ、ボンディングワイヤ41および42が接続されている。コンデンサ素子21および22に挟み込まれる部分101cを絶縁コーティングして電気的に接触しないようにしてもよい。
この陽極フレーム101の長手方向Xの長さは、コンデンサ素子21および22の長手方向Xの長さより短く、物理的にコンデンサ素子21および22から突出しないようになっている。したがって、陽極フレーム101の長手方向Xに延び、コンデンサ素子21および22からY方向外側に広がった部分101aが、横方向Yに延びたボンディングワイヤ41および42により、コンデンサ素子21および22と陽極フレーム101とをそれぞれ電気的に接続するために使用される。このため、この陽極フレーム101も、長手方向に沿ってコンデンサ素子21および22から外側に延び、電気的接続に供する部分は含まない。また、陽極フレーム101および陰極フレーム105は、長手方向Xに沿ってコンデンサ素子21および22から外側に露出した部分(突き出た部分)を含まない。したがって、このデバイス1bは、コンパクトな表面実装デバイスとなっている。なお、陽極フレーム101および陰極フレーム105の長手方向Xの長さは、デバイス1のリードフレーム10の陽極リードと同様に、第1および第2のコンデンサ素子21および22の長手方向の長さよりも若干長くしてもよく、それにより取り付けの際の公差を確保することができる。
図15(a)および(b)に、さらに異なるデバイスの例を示している。図15(a)では、デバイス1cを、パッケージ50を省き、さらに、コンデンサ20を構成する第1のコンデンサ素子21と第2のコンデンサ素子22とを一点鎖線により示している。また、図15(b)では第1のコンデンサ素子21と第2のコンデンサ素子22とを実線で示している。このデバイス1cの基本的な構成は上述したデバイス1と共通し、コンデンサ20とリードフレーム110とを有する。リードフレーム110は、第1の陽極端子部(第1の陽極リード、第1のリード部)11と、第2の陽極端子部(第2の陽極リード、第3のリード部)12と、第1および第2の陰極端子部(基準電圧用の接続端子部、陰極リード、第2のリード部)15および16となる陰極フレーム105とを含む。
リードフレーム110の陰極フレーム105は全体的に略Z字型に成型されており、陰極リード15および16の第2の部分15bおよび16bは相互に横方向Yの反対側(180度対称の側)に延びている。陰極リード15および16の長手方向Xに延びた第1の部分15aおよび16aは、コンデンサ素子21および22に挟まれた接続電極19により接続されている。
陽極リード11および12は、それぞれ、長手方向Xに延びた第1の部分11aおよび12aと、横方向Yに延びた第2の部分11bおよび12bとを含み、第1の部分11aおよび12aの一部11cおよび12cがそれぞれ第1および第2のコンデンサ素子21および22に挟みこまれている。一方の陽極リード11は、一方の陰極リード15と横方向Yに対峙するように配置され、他方の陽極リード12は他方の陰極リード16と横方向Yに対峙するように配置されている。したがって、陽極リード11および12は、相互に横方向Yの反対側(180度対称の側)に延びている。
このようなリードフレーム110を含むデバイス1cにおいては、回路基板に実装したときに電源電流が太い破線で示すようにデバイス1cの内部を異なる方向に流れる。すなわち、デバイス1cの内部を透過する電流の方向が異なる。このため、デバイス1cの内部に発生する磁界成分が相殺され、さらに低ESLのコンデンサデバイスを提供できる。
なお、上記において説明したコンデンサデバイスは、本発明の幾つかの例であり、複数の容量の異なるコンデンサ素子の積み重ね方は上記の実施例に限定されない。たとえば、複数のコンデンサ素子を3層以上に積み重ねたデバイスであってもよい。また、本発明に係る表面実装用のデバイスは、CPUとの組み合わせだけではなく、他の回路素子と組み合わせて用いることも可能である。