JP5681483B2 - 望ましくない核酸の溶液を汚染除去する方法 - Google Patents

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Description

本発明は望ましくない核酸の溶液を汚染除去する方法に関する。また、本発明は、上記の処理された溶液の使用に関する。
分子生物学の進歩は、核酸を操作することを可能にした。従って、増幅方法は不可欠なツールになり、それは多数の核酸が比較的短時間に、非常に少ない量の核酸から生産できることを意味する。このような技術の主な欠点は望ましくない核酸の増幅にあり、臨床検査の間違った結果または偽陽性さえ生じる。これは混入と呼ばれる。
この混入は、実験台、スタッフ、環境、器材及びピペット装置の不十分な清掃または未滅菌サンプルという多くの原因に由来しうる。
この混入を制限することを目的とする一定数の提案が呈されてきた。それらは、例えば、サンプルの取扱い(特定の殺菌技術)または実験室装置(物理的に定義された作業面積、換気フードの使用、流れが所望の方向に常に排出されるようにするための、外部と内部との間の気圧勾配など)に関する予防的方法である。
また、混入は先行する増幅に由来するアンプリコン又はサンプル間の交差汚染によってもたらされる。
混入の他の無視できない原因は、増幅反応において使用する出発原料(酵素、試薬)にある。そのため、Corless等(J Clin Microbiol, 38(5), 1747-1752 (2000))は、16S RNAの検出のためのリアルタイムPCR感度における汚染されたtaqポリメラーゼによって生じる問題を述べている。
増幅に不可欠な酵素の混入を改善する第1の方法には、酵素による汚染除去方法にある。
そのため、米国特許US-A5-418149は、酵素を産生する細胞に由来する核酸を分解することができる、ウラシル−DNA−グリコシラーゼを使用する方法を記載する。その技術は、ウラシル−DNA−グリコシラーゼ及びデオキシウリジン・トリホスファターゼ(dUTPase)が不足している大腸菌細胞における所望のタンパク質(この場合ポリメラーゼ)の過剰発現を利用する。UNG欠乏のため、細胞は、取り込まれたデオキシ・ウラシル塩基を除去しない。dUTPaseの欠乏のため、細胞でデオキシウリジンの貯留が増える。そのため、培養培地は、所望のタンパク質(ポリメラーゼ)の生産及び核酸へのデオキシウリジンの取込みを可能にする。次に、合成されたタンパク質は、標準的な精製技術を用いて、残存核酸のウラシル残基を断片化するウラシル−DNA−グリコシラーゼによる処理によって精製される。次に、グリコシラーゼは、増幅反応の間、標的DNAの破壊を妨げるために、熱によって不活性化される。
その方法は組換えタンパク質の生産に特異的であり、したがって、その主な欠点はその使用による。更に、汚染除去はウラシルを含む核酸に限られている。最後に、他のあり得る欠点は、熱処理がウラシル−DNA−グリコシラーゼの部分的な失活のみ誘発することである。タンパク質と接触させられる標的DNAは、そのためにおそらくは破壊される。
Ashkenas等(Biotechniques; Jul 2005; 39(1): 69-73)によって記載された他の酵素的方法は、増幅のために不可欠な全ての成分を含む溶液を汚染除去することから成る。この場合、制限酵素の混合がRT−PCRの場面において使われる。それらの酵素は、増幅される標的RNAを含む増幅反応媒体中に存在する二本鎖DNAを分解する。次に、逆転写が起こる場合、それらは熱によって不活性化される。また、その方法のPCR適用のための変形例、すなわち二本鎖標的DNAがある場合が、記載されているが、それは単一種類の制限酵素(type IIS RE)の使用に限定される。しかしながら、制限酵素の使用は、二本鎖核酸のみを切断し、加えてそれが認識部位を有しなければならない欠点で劣っている。このために、一本鎖の形状および/または当該部位を少数しか持たないかまたは有しない汚染物は、これにより除去されない。
他の酵素による汚染除去方法は、標的核酸と接触させる前に溶液から望ましくない核酸を除去することから成る。特許出願WO-A-99/07887は、標的核酸と接触させる前に反応媒体に含まれる二本鎖核酸を分解させることができる熱不安定性のDNAseの使用を記載する。次に、酵素は熱によって失活される。
その技術の主な欠点は、この酵素がRNA、一本鎖DNAまたはRNA/DNAヘテロ二重鎖の形の汚染物を分解することができないということである。
更に、反応媒体中の熱によるその酵素の失活は、耐熱性ポリメラーゼの使用を必要とする。
また、従来技術も非酵素的な方法で処理する。
したがって、Mohammadi等(J Clin Microbiol, Oct 2003; 41(10): 4796-8)は、抽出試薬のカラム濾過、及び任意に増幅前にPCR試薬を制限酵素、Sau3AI、によって消化することからなる技術を記載する。濾過技術の欠点は、この技術が濃度あるいは特性を変えることなしに複合媒体に適用できないという事実にある。更に、このような補足的な濾過工程は、それ自身が混入の原因となりうる。
特許出願WO-A-94/12515は、Taqポリメラーゼ及び核酸が潜在的に混入している核酸を含む溶液の光反応性化合物による処理方法を記載する。その光反応性化合物、例えばフロクマリン誘導体は、紫外線暴露によって活性化される。その技術による主な欠点は、使用が困難であることの他に、タンパク質への放射線の悪影響である。更に、前記核酸のランダム分解のために、その方法は有効性が低いままであり、おそらくは増幅される断片をも生じる。
Chang等(RNA, May 2005; 11(5): 831-6)によって記載された他の非酵素的な方法は、翻訳を阻害するコバルト錯体を用いる。この錯体は、DNA及びRNAのリン酸ジエステル結合を加水分解する。
この技術による主な欠点は、核酸の不完全な分解及び遅い汚染除去反応(24時間)である。
また、金属錯体は、核酸によって汚染された生体分子を精製するために、特許出願WO-A-2006/034009に記載されている。したがって、銅原子と結合した2つのフェナントロリン分子によって構成された断片化錯体(ビス(1,10−フェナントロリン)/Cu)をtaqポリメラーゼを含む溶液を精製するために用いた。次に、その溶液は混入している核酸および/または断片化分子を除去するために標準クロマトグラフィー技術を使用して精製された。
その方法による主な欠点は、その使用を難しい状態にし、新しい混入のリスクを増す精製工程の存在である。
特許EP-B0-646180は、金属キレートを使用するヌクレオチド配列を不活性化する方法を記載する。ビス(1,10−フェナントロリン)/Cuのような断片化錯体は、増幅工程の後、核酸の全てが存在する溶液を汚染除去するために用いられた。これは、前の増幅反応に由来するアンプリコンによる新規なサンプルの混入を妨げることができる。また、上記文献は、生物学的産物調製物を汚染除去するための断片化分子の使用を記載する。
第1の使用の場合、その方法の主な欠点は、前の増幅反応に由来するアンプリコン以外の混入している核酸の全てを分解させることができるというわけでないということである。第2の場合、主な欠点は、その使用を難しい状態にし、新しい混入のリスクを増やす精製工程(限外ろ過、沈殿、クロマトグラフィー)の存在である。
従来技術の欠点を考慮して、発明者は、望ましくない核酸の溶液を汚染除去するために単純で迅速な新規方法を提案する。
これに関連して、第1の態様において、本発明は方法を溶液に存在する任意の核酸を前記溶液から汚染除去する方法であって、
・充分な時間、溶液を、断片化によって核酸を分解させる特性を有する少なくとも一種類の分子(断片化分子と呼ぶ)の作用に、前記核酸(混入している核酸と呼ぶ)が完全に分解するまで供すること;及び
・断片化分子の活性を止める工程を
含む方法を提供する。
本発明の利点の1つは、この汚染除去方法が断片化分子を除去するための精製工程を必要としないということである。
処理される核酸は、一本鎖または二本鎖形態のRNAまたはDNAであり、並びにRNA/DNAヘテロ二重鎖である。
この方法は、特に出発材料、例えばバクテリアのような天然源由来の酵素を汚染除去するために有用である。これらの酵素は、前記バクテリアに由来する天然核酸によって非常に汚染される。
別の態様においては、本発明は興味の核酸と混入している核酸とを含む溶液を汚染除去する方法であって、上記の工程、すなわち:
・充分な時間、溶液を、断片化によって核酸を分解させる特性を有する少なくとも一種類の分子(断片化分子と呼ぶ)の作用に、前記混入している核酸が解するまで供し、一方で興味のある核酸を保護すること;
・断片化分子の活性を止める工程を
含む方法を提供する。
混入している核酸はヒトゲノムDNAであってもよく、興味の核酸は非常に少ない量で混合物に存在するウイルスまたはバクテリアの核酸であってもよい。前記興味の核酸は、断片化分子の作用から保護されることができる。例えば、それらは外殻(キャプシド、細菌壁など)によって自然に保護されていてもよいが、混入している核酸はそうでない。
本発明のある有利な実施態様において、断片化分子の活性を止めた後に、方法は増幅反応を含む追加工程を含む。
好ましくは、本発明の汚染除去方法は、使用する断片化分子が、混入している核酸のリン酸ジエステル結合を無作為に加水分解する特性を有することを特徴とする。
ある実施態様によれば、断片化分子は、ビス(1,10−フェナントロリン)/金属錯体を形成する金属原子と結合した1,10−フェナントロリンの2分子によって構成された錯体である。好ましくは、金属は、銅、ルテニウム、ニッケル、鉄、亜鉛、ロジウム、コバルトまたはマンガンなどの遷移金属である。
有利には、断片化分子の2つのフェナントロリン核は、結合アームを介して互いに結合し、ClipPhen分子を形成する。
ClipPhen分子は、文献に広く記載されている。さまざまな結合アームは、2つのフェナントロリン核を結合する。有利には、2つのフェナントロリン核間の結合アームは、3つの連続した炭素原子の鎖によって構成され、その中心位置の炭素原子が置換され、各々の末端炭素原子が酸素原子を介してフェナントロリン核に結合している(例えば、セリノール)。好ましくは、中心位置の炭素原子は-NHまたは-NH-CO-CHによって置換され、各々の末端炭素原子は前記核の位置2または3において酸素原子を介してフェナントロリン核に結合している。
例えば、多くの他の結合は、ジアミノシクロヘキサン(Chemistry Letters, vol 33, no. 6, p 684-985, Hayashi等)またはエタンジオール、プロパンジオールまたはペンタンジオール(Synlett 2001, no. 10, 1629-1631, Boldron等)であってもよい。
また、金属と結合したClipPhen分子の断片化活性は、当業者に知られている(Chemical Review, 1993, 93, 2295-2316, D Sigman等; J Chem Soc 1961, 2007-2019, James等)。この分子は、その加水分解特性を改善する目的で、多くの研究で調べられている。それは、全ての核酸、すなわち一本鎖または二本鎖形態のDNA及びRNA、並びにRNA/DNAヘテロ二重鎖を分解させる利点がある。したがって、2−ClipPhen/金属((1,3−ビス(1,10−フェナントロリン−2−イルオキシ)プロパン−2−アミン)/金属)及び3−ClipPhen/金属((1,3−ビス(1,10−フェナントロリン−3−イルオキシ)プロパン−2−アミン)/金属)は、ビス(1,10−フェナントロリン)/金属錯体と比較して非常に増大されたヌクレアーゼ活性を呈した(Inorganic Chemistry 1998, 3486-3489, Pitie等; Chem Commun 1998, 2597-2598, Pitie等; Eur J Inorg Chem 2003, 528-540, Pitie等及び Bioconjugate Chemistry 2000, 11, 892-900, Pitie M 等)。同様に、銅と錯体を形成したClipPhen分子は、DNAまたはRNAのリン酸ジエステル結合を、非常に効果的に無作為に加水分解することができる。Jame等(J Chem Soc 1961, 2007-2019)の文献に開示されているように、銅原子と錯体を形成し、酸化状態IまたはIIで錯体を形成する。分子2−ClipPhen−Cu及び3−ClipPhen−Cuを下に示す:
Figure 0005681483
したがって、本発明は、また、溶液を、混入している核酸が完全に分解するまでの充分な時間、ClipPhen/金属分子の作用に供することからなる、溶液に存在する任意の核酸を前記溶液から汚染除去する方法に関する。
更なる態様において、本発明は、混入している核酸が解するまでの充分な時間、ClipPhen/金属分子の作用に供し、一方で興味の核酸を保護することからなる、興味の核酸と混入している核酸とを含む溶液を汚染除去する方法にある。
本発明のある実施態様によれば、断片化分子の断片化活性は、過剰の有機還元剤を加えることによって止められる。有機還元剤がチオールによって構成される場合、片化分子と反応を止める有機還元剤との間の比率は1:100を超え、好ましくは1:1000を超える。
この実施態様の1つ利点は、断片化分子がインサイツで不活性化させられることである。したがって、これらの分子は溶液から除去される必要はない。後者は、例えば増幅のようなさまざまな適用において使用できる。
したがって、ある有機還元剤の濃度に依存して、断片化分子は活性化または不活性化されてもよい。
本発明の他の実施態様によれば、断片化分子の断片化活性を、EDTAのようなも錯化剤(CA)、またはClipPhenよりも金属に親和性を有する他の任意の錯化剤であって、平衡:
Figure 0005681483
を移動させることができる錯化剤を加えることによって停止させる。
本発明のある特定の実施態様において、断片化分子は、過酸化水素(H)、場合によっては他の還元剤(好ましくは有機)と結合した銅(I)錯体である。好ましくは、断片化分子はClipPhen/Cu I分子である。
銅(I)錯体の場合、ヌクレアーゼ活性は、2段階で進行する:
a) 正に荷電した銅錯体が核酸と錯体を形成する;
b) 核酸は、HによるCu−oxoまたはCu−OH中間体の形成によって酸化され、一連の反応の後、核酸の切断に結果としてなる。
他の実施態様によれば、分子は他の還元剤と結合した銅(II)錯体であり、好ましくは有機的である。この場合、過酸化水素は、空気の作用と還元剤のもとで、インサイツに生じる。さらに好ましくは、断片化分子はClipPhen/Cu(II)分子である。
他の有機還元剤がカルボキシル酸またはその酸の誘導体である場合、断片化分子と有機還元剤との比率は1:1と1:100の間の範囲にある。
上記の実施態様に関して、有機還元剤は、
・ジチオスレイトール(DTT)のようなチオール、メルカプトプロピオン酸のようなチオ酸;または
・カルボキシル酸;または
・アスコルベートのようなカルボキシル酸の誘導体;または
・トリカルボキシエチルホスフィン(TCEP)のようなホスフィン
によって構成される。
特定の実施態様において、断片化分子および/または還元剤は、固体支持体に固定される。この固体支持体は、ラテックス(場合により磁性)、ガラス(CPG)、シリカ、ポリスチレン、アガロース、セファロース、ナイロンなどの粒子であってもよい。また、それはフィルタ、膜、ストリップまたはフィルムであってもよい。
断片化分子および/または還元剤が固定された固体支持体が溶液から取り除かれた場合も、断片化分子の断片化活性は、止められうる。
断片化分子は、検討される支持体上に、共有結合形成によって又は吸着によって、固定されてもよい。支持する試薬に関する多くの文献が存在し;特にLaurent等(Tetrahedron Letters 45, 8883-8887, 2004)を参照することができる。
本発明が従来技術に勝る他の利点は、核酸が受ける反応の速度である。処理期間は、5分から60分の範囲の間であり、好ましくは10分から30分の間であり、ClipPhen/金属分子の濃度は1nMから100μMの範囲である。
本発明の好適な態様において、溶液は、核酸を除いた増幅反応のために必要な全ての成分、すなわち標的、増幅プライマー及び検出プローブを含む。
また、本発明は、本発明に従って処理された溶液の使用であって、有機還元剤の存在下で、前記溶液を、増幅される標的核酸を含む生物試料、更に標的核酸に特異的な増幅プライマー及び検出プローブと混合し、それにより断片化分子の作用を止める有機還元剤の過剰が作成される、使用に関する。
断片化分子の作用を止める有機還元剤は、断片化分子のヌクレアーゼ反応を活性化するために加えられた他の有機還元剤と同一でも異なっていてもよい。
(定義)
「核酸」なる用語は、少なくとも2つのデオキシヌクレオチド又はリボヌクレオチドの連なりを意味する。
核酸は天然または合成、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸断片、ゲノムDNA、リボソームRNA、メッセンジャーRNA、トランスファーRNAまたは以下のような酵素による増幅技術によって得られる核酸でもよい:
・特許US-A4-683195、US-A4-683202及びUS-A4-800159に記載のPCR(ポリメラーゼ鎖反応)、及びその派生的なRT−PCR(逆転写PCR)であって、特に特許EP-B0-569272に記載のワンステップ型のもの;
・例えば特許出願EP-A0-201184号に記載のLCR(ライゲーズ鎖反応);
・例えば特許出願WO-A-90/01069に記載のRCR(修復鎖反応);
・特許出願WO-A-90/06995の3SR(自己維持配列増幅法);
・特許出願WO-A-91/02818のNASBA(核酸ベース増幅法);および
・特許US-A5-399491のTMA(転写仲介増幅法)。
「アンプリコン」なる用語は、酵素増幅技術によって作成される核酸を意味するために使用する。
「任意の核酸」なる用語は、一本鎖または二本鎖形態のRNAまたはDNA、並びにRNA/DNAヘテロ二重鎖を意味する。
「断片化分子の活性を止める」なる用語は:
・過剰の有機還元剤を加えること;または
・錯化剤を加えることを意味する。
「分解」なる用語は、混入している核酸の少なくとも90%の分解または断片化を意味する。好ましくは、分解は「完全な」と呼ばれ、それは、DNAまたはRNAの分解によって、好ましくはリン酸ジエステル結合の加水分解によって、「増幅可能でない」核酸配列の形成を生じることを意味する。
「増幅可能でない」核酸なる用語は、少なくとも10ヌクレオチドの好適なサイズを有するプライマーの存在下で増幅できない核酸を意味する。したがって、これらの「増幅可能でない」核酸のサイズは、20ヌクレオチド未満であり、好ましくは10ヌクレオチドより少ない。
「溶液」なる用語は、均質であるか不均一な水溶液を意味する。酵素、有機分子(3リン酸ヌクレオシド、糖類、単糖類、多糖類、有機小分子など)、無機分子(塩類など)を混合物またはその他としてを含む複合溶液(a complex solution)であってもよい。また、溶液は、ラテックス(場合により磁性)、ガラス(CPG)、シリカ、ポリスチレン、アガロース、セファロース、ナイロンなどから形成されうる粒子のような固体支持体を含んでもよい。また、フィルター、フィルム、膜またはストリップであってもよい。
また、溶液は、プラスチックチューブ(エッペンドルフ型)のような固体表面と接触している溶液によって構成されてもよく、それにより、前記表面の汚染除去が可能となる。
添付の図と実施例は、特定の実施態様を示すものであり、本本発明の範囲を制限するために考慮されるべきでない。
37℃で1時間のClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の作用に供した1080塩基の転写産物(野生型サルモネラ)の分解のバイオアナライザー研究(Agilent, RNA 6000 Pico Kit, USA)。カラム2、3、4、6及び7の31秒に位置する黒いバンドは、1080塩基の転写産物に対応する。カラム1:ヌクレオチド・サイズスケール。バイオアナライザー検出器の前を通過する時間を関数として、分析核酸のサイズの定量及び計算を可能にする、一連の増加するRNAサイズの注入。縦軸上の測定単位は1秒である。通過時間と核酸の質量の間の変換は、バイオアナライザー・ソフトウェアによって行われる。カラム2:5μM(マイクロモル)のClipPhen−Cuの存在下における5nM(ナノモル)転写産物。カラム3:500nMのClipPhen−Cuの存在下における5nM転写産物。カラム4:50nMのClipPhen−Cuの存在下における5nM転写産物。カラム5:500μMのアスコルベートを添加した同上のカラム2。カラム6:50μMのアスコルベートを添加した同上のカラム3。カラム7:5μMのアスコルベートを添加した同上のカラム4。 DTT濃度の増加(0から16mM)よる核酸の断片化の阻害。曲線Aは、0mMのDTTに対応する。曲線Bは、1mMのDTTに対応する。曲線Cは、3mMのDTTに対応する。曲線Dは、5mMのDTTに対応する。曲線Eは、10mMのDTTに対応する。曲線Fは、16mMのDTTに対応する。曲線Gは、コントロール:0mMのDTTと0mMのアスコルベートに対応する。 混合物のDTTの濃度に応じたモデル蛍光性オリゴヌクレオチドの断片化の比率(分ごとの相対的蛍光単位(RFU)) 核酸を含む水溶液上のClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の効果(100細胞当量/μlのセレウス菌(B cereus)のトータルRNA)。曲線Aは、何の処理も受けなかった増幅コントロールに対応する(+コントロール)。曲線Bは、50μMのClipPhenCu/500μMのアスコルベート混合物であって、その活性が17mMのDTTの添加によって直ちに阻害され、そして30分間インキュベートされたものに対応する。曲線Cは30分間インキュベートされ、この時間の後にDTTで断片化を止めた50μMのClipPhenCu/500μMのアスコルベート混合物に対応する。 ClipPhen−Cu(アスコルベートを有するものと有しないもの)によるDNAまたは一本鎖RNAの断片化の比較。曲線は1に正規化した。曲線a:ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の作用に供した蛍光性オリゴヌクレオチド(DNA)No.16025。曲線b:ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の作用に供した蛍光性オリゴヌクレオチド(RNA)No.16027。曲線c:実験a:ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の作用に供した蛍光性オリゴヌクレオチド(DNA)No.16025のためのネガティブコントロール。曲線d:実験bのClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の作用に供した蛍光性オリゴヌクレオチド(RNA)No.16027のためのネガティブコントロール ClipPhen−Cu混合物(アスコルベートを有するものと有しないもの)による一本鎖のまたは二本鎖DNA断片化の比較。曲線は、分ごとの蛍光の増加(RFU/分)に対応する断片化速度を表す。曲線a:ClipPhen−Cu混合物の作用に供した蛍光性オリゴヌクレオチド(DNA)No.16025/相補DNA標的(No.16026)二重鎖(ネガティブコントロール)。曲線b:ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の作用に供した蛍光性オリゴヌクレオチド(DNA)No.16025/相補DNA標的(No.16026)二重鎖。曲線c:ClipPhen−Cu混合物の作用に供した蛍光性オリゴヌクレオチド(DNA)No.16025(ネガティブコントロール)。曲線d:ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の作用に供した蛍光性オリゴヌクレオチド(DNA)No.16025。 ClipPhen−Cu(アスコルベートを有するものと有しないもの)によるDNAまたはRNA二重鎖、RNA/DNAヘテロ二重鎖の断片化の比較。曲線は1に正規化した。曲線a:ClipPhen−Cu混合物の作用に供した蛍光性オリゴヌクレオチド(DNA)No.16025/相補DNA標的(No.16026)二重鎖(ネガティブコントロール)。曲線b:ClipPhen−Cu混合物の作用に供した蛍光性オリゴヌクレオチド(RNA)No.16027/相補RNA標的(No.16028)二重鎖(ネガティブコントロール)。曲線c:ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の作用に供した蛍光性オリゴヌクレオチド(DNA)No.16025/相補DNA標的(No.16026)二重鎖。曲線d:ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の作用に供した蛍光性オリゴヌクレオチド(RNA)No.16027/相補DNA標的(No.16028)二重鎖。曲線e:ClipPhen−Cu混合物の作用に供した蛍光性オリゴヌクレオチド(RNA)No.16027/相補DNA標的(No.16026)ヘテロ二重鎖(ネガティブコントロール)。曲線f:ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の作用に供した蛍光性オリゴヌクレオチド(RNA)No.16027/相補DNA標的(No.16026)ヘテロ二重鎖。 5mMのアスコルベートの存在下における、Tentagelビーズに固定されたClipPhen−Cuによる16s RNA(13ng/μL)の切断のバイオアナライザー(Agilent)による計測。電気泳動図A:水中の分解の前のRNA標的。電気泳動図B:アスコルベートの存在下における、分解前のRNA標的。電気泳動図C:Tentagel樹脂に固定されたClipPhen−Cuおよびアスコルベートの存在下における、分解されたRNA標的(1ビーズのTentagel、30分)。
実施例1:ClipPhen−Cu分子による転写産物の加水分解とアスコルベートの開始剤効果
(目的)
この実施例は、モデル核酸(サルモネラRNA転写産物:1080塩基)上のClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の断片化作用を示す。また、断片化反応の開始におけるアスコルベートの効果を示す。転写産物は、さまざまな濃度のClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の作用に供された。また、コントロールは、アスコルベートの非存在下でClipPhen−Cuの作用を受けた。
次に、断片は、Agilent社のバイオアナライザーを使用して分析された(図1)。
(操作の手順)
転写産物の溶液(サルモネラ野生型、1080塩基)は、2μlの1μM濃度の転写産物水溶液と18μlの80mM(ミリモル)のリン酸バッファー(100mMのNaCl、20mMのMgCl、pH7.2)から構成された。70℃で2分間加熱し、次に氷に入れた。
次に、この溶液の5μlに、1μlのClipPhen−Cu(500、50及び5μM)と上で使用したバッファーを4μl加えた。得られた溶液2は37℃に1時間置いた。
次に、5μlの溶液2を取り、42.5μlのバッファー及び2.5μlの新しく調製したアスコルベート溶液([ClipPhen−Cu]につき100eq)を加え、コントロールの場合は水を加えた。
したがって、一連のチューブは、それぞれ5nMの転写産物、(5μM、500nM及び50nM)のClipPhen−Cu、(500、50及び5μM)のアスコルベート、または対照ための水を含んで成るように、調製された。
直ちに、1μlの6つの溶液は、断片化産物を測定するために、RNA6000 Pico chip(参照番号5067-1512にて市販されるキット、Agilent社、米国、バイオアナライザーシステムで使用される)に注入された。
(結果と結論)
転写産物、カラム5から7、における断片化の効果は、20ヌクレオチド(右側20秒上の矢)より下の、さまざまなサイズを有するバンドの出現により観察された。したがって、ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物による処理を受けた転写産物は、ClipPhen−Cuの濃度に応じて、部分的にまたは完全に分解した。5μMと0.5μMとの間の当初バンドの消失が観察された。全てのアンプリコンの完全な分解を得るための反応時間は、5nMの転写産物、5μMのClipPhen−Cu及び500μMのアスコルベートについて、30−60分のオーダーであった。転写産物の完全分解のためのClipPhen−Cuの量は、マイクロモル濃度のオーダーであった(カラム5)。
対照的に、アスコルベートなしで行われた同じ実験(カラム2)は、完全なバンドをはっきりと示した。
したがって、これは、アスコルベートが添加されなかった場合、ClipPhen−Cu混合物が活性を有しないことを証明する(1−100等価量のオーダーの過剰)。
実施例2:還元剤によるClipPhen−Cu分子の阻害
(目的)
この実施例は、DTTのような還元剤の過剰量を添加することによって、ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物による核酸の分解が完全に阻害できることを示すことを目的とする。
モデルの蛍光性オリゴヌクレオチド(Eurogentec(リェージェ、ベルギー)によって合成された配列16025:5’(6−FAM)TGT AAT GAT GAG GGT GTC ACT GCG GTT(TAMRA))はClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の作用に供した。断片化によって、FAMフルオロフォアがTAMRA蛍光エクスティングウィッシャーから物理的に離れていたので、蛍光が520nMに出現した。蛍光の出現は、蛍光光度計(NucliSens EasyQアナライザー、Nasba Diagnostic、ビオベリュー、Boxtel(NL))を使用して、時間で測定された。
実験は、放出された蛍光の弱化によって、DTTにより与えられた阻害を測定するために、ClipPhen−Cu/アスコルベートの固定濃度に対しDTTの濃度を増加させて実施した。
(操作の手順)
下記の成分を含む一連のチューブは、37℃で5分間インキュベートした:
・蛍光性オリゴヌクレオチド16025、10nM(1μlから200nM);
・DTT(最終濃度の1から16mMのシリーズを作成するため濃度を1μl);及び
・17μlの80mMのリン酸バッファー(pH7.2、20mMのMgCl、100mMのNaCl)。
次に、以下の通りに調製された1μlのClipPhen−Cu/アスコルベート混合物を添加した:200μMのClipPhen及び200μMのCuCl21MのDMF/水(50/50)溶液、及び20mMのアスコルベート水溶液を、(10mMのClipPhen−Cu及び1Mのアスコルベート濃縮液から)即座に調製した。
最終的に、20μlの溶液は:10nMの蛍光性オリゴヌクレオチド、10μMのClipPhen+Cu2、1mMのアスコルベートと0/1/3/5/10/16mMのDTTを含む。
また、コントロールは、アスコルベート無し及びClipPhen−Cu無しで作成した。次に、放出された蛍光は、60分以上測定された(図2)。条件は、以下の通りだった:exc/emフィルター(485/518nM)、時間間隔(1分)、積分時間(100ミリ秒)。
得られた曲線を使用して、反応の最初の2分にわたる断片化反応速度を測定し、DTT濃度に応じた断片化速度を表すグラフ(図3)をトレースした。
(結果と結論)
DTTの濃度が増大した場合の、蛍光が10mMからもはや出現しなかったことが分かる(図2及び3)。これは、ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の活性が過剰な還元剤によって完全に止められることを意味する。この実験は、核酸/ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物への10−16mMのDTTの添加が反応を止め、この混合物が増幅反応における将来的な使用に適合する状態になることを証明する。
実施例3:水溶液中のClipPhenの除去効果:
(目的)
30分間のClipPhen−Cu/アスコルベート混合物(50μM/500μM)の作用に供した、200細胞当量/μlの量のセレウス菌(B cereus)のトータルRNAが混入した水溶液の汚染除去。次に、ClipPhen−Cuの活性は、10mM量のDTTの添加によって、完全に止められた。次に、NASBA増幅反応(Nuclisens Basic Kit V2、ビオメリュー、参照60079136、Boxtel(NL))を、断片化効率を評価し、増幅可能な核酸の欠如を示すために実行された。この混合物の増幅の前に精製を実行する必要はなかった。後者の任意の阻害効果を測定するために、ClipPhen−Cuの活性がt0から阻害されたコントロールを作成した。この目的において、DTTは、標的RNAを加える前に、十分条件(10mM)で添加され、30分間インキュベートされた。
(操作の手順)
[トータルRNAについて濃縮された水溶液のClipPhen−Cu/アスコルベート混合物による汚染除去]
10μlのClipPhen−Cu(250μMの水/DMF(50/50)溶液)、20μlの水及び10μlの2.5mM濃度アスコルベート水溶液をセレウス菌由来のRNAのトータルRNA溶液に加えた(5μlの2000細胞当量/μlの水溶液)。
汚染除去されるこの溶液は、周囲温度で30分間インキュベートされた。

[ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の断片化活性の停止]
5μlの173.7mmのDTT(最終DTT濃度:17.3mm)を加水分解反応を止めて、ClipPhenを失活させるために、前記溶液に加えた。溶液Aを得た。

[ClipPhen−Cu/アスコルベート/DTT混合物が断片化活性を有しないこと及びDTTの添加によって断片化活性が直ちに停止されるならばNASBAを阻害しないことを示すコントロール]
同時に、5μlのDTT(173.7mM)、10μlのClipPhen−Cu(250μMの水/DMF(50/50)溶液)、20μlの水及び10μlのアスコルベート(2.5mM)水溶液の存在下でインキュベートされたセレウス菌由来のRNAのトータルRNA溶液(5μlの2000細胞当量/μl水溶液)において、コントロール実験を実施した。ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物が直ちに不活性化されたこの溶液は、周囲温度で30分間インキュベートされた。
この実験は、ClipPhen−Cu/アスコルベート/DTT混合物による増幅反応の何らかの阻害を測定するかもしれない。これは溶液Bである。

[汚染除去後に溶液Aに残存する核酸及び溶液Bに依然として存在する核酸の増幅]
次に、5μlの溶液A又はBを、10μlの「反応ミックス:REAG」(NucliSens EasyQ Basic Kit、ビオメリュー、取引参照番号285006、Boxtel(NL))に取った。この混合物は、増幅のために必要な試薬、2つのプライマー、増幅の検出のために必要なプローブを含んでいた。また、この溶液も、ClipPhenの再活性化を妨げるために、充分なDTT(6mM)を含んでいた。したがって、混合物の最終濃度は、10mMのDTTであった。溶液は、65℃で2分間、それから41℃で2分間、インキュベートされた。
次に、NucliSens EasyQ Basic Kit(ビオメリュー)の5μlの「酵素ミックス:ENZ」混合物を、増幅を開始するために、前記溶液に加えた。反応媒体は、ビオメリューの「Nuclisens EasyQ」蛍光計に、41℃で1時間30分間、保持した。蛍光測定は記録され、曲線がトレースされた(図4)。
(結果と結論)
ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の作用に供されて、DTT溶液の添加によって直ちに阻害されたコントロールに対応する曲線Bで、わずかな遅延が観察された。増幅開始の傾斜が同じ振幅の中にあるので、増幅におけるこの遅延は全くテストの感受性を変えない。それは、ポジティブコントロール(曲線A)に対するDTTの濃度の増加による。この場合、ClipPhen−Cu/アスコルベート/DTT混合物がNASBAに影響を及ぼさないこと、及びこの増幅反応のための酵素がこの化合物の混合物に影響されないことが示された。更に、また、充分なDTTが添加された場合は、少しの分解活性も記録されなかったので、DTTがClipPhen−Cuの断片化活性の阻害を可能にすることが示された。
曲線Cは、ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の活性が30分間維持されて、次にDTT(17mM)の添加により停止されるが、断片化は増幅曲線がもはや遅延しないということを示す。
錯体混合物(ClipPhen−Cu/アスコルベート)が核酸を分解するために使用できること、この活性が過剰量のDTTの添加によって停止できること、及びこの溶液(精製なし)は続く酵素による増幅に使用できることが証明された。したがって、この技術は、核酸による混入に関する問題を容易に解決することができる。
実施例4:RNA以外の核酸のClipPhen−Cuによる断片化;一本鎖DNA、二本鎖DNAと二本鎖RNAに対するとRNA/DNAヘテロ二重鎖に対する適用:
(目的)
この実施例は、ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物が一本鎖RNAまたはDNA、並びに対応する二重鎖またはヘテロ二重鎖を分解できることを証明する。
(操作の手順)
下の表に示す溶液は、Eurogentec社から注文した蛍光性オリゴヌクレオチド(プローブ)と相補標的から調製された(表1)。
表1
Figure 0005681483
蛍光性オリゴヌクレオチドの原液は、200nM濃度の水溶液であり、それは、18μlの80mMリン酸バッファー(pH7.2、20mMのMgCl、100mMのNaCl)に、10nM(1μl)で希釈された。相補標的は、このケースに応じて、同じ濃度で加えられた。それから、溶液は変性され、2つの鎖がハイブリザイズすることを可能にするために、37℃で1時間に置いた。次に、ClipPhen−Cuの溶液(1μlの20μMの水/DMF溶液、[最終ClipPhen−Cu]=1μM)、次にアスコルベートの溶液(1μlの2μM水溶液[最終アスコルベート]=100μM)を、コントロールを除いて、EasyQ(ビオメリュー、実施例1を参照)を使用して、蛍光測定を開始する前に、37℃で120分間、加えられた。これらの測定は、アスコルベートを含んでいない対応するコントロール実験とともに、4回実行した。平均値のみを、図5、6及び7に示す。
表2
Figure 0005681483
(結果と結論)
図5は、ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の作用に供した一本鎖蛍光性DNA(16025、曲線a)又は蛍光性RNA(16027、曲線b)の、時間にわたる蛍光測定の結果を示す。いずれの場合においても、蛍光の非常に明確な増加が、コントロール(曲線cとd)と比較して観察された。この蛍光の出現は、DNA及びRNAの両方が断片化され、反応の初めの瞬間の間は同程度の速度であったことを証明する。
図6は、DNA/DNA二重鎖の断片化を示す。DNA/DNA二重鎖(曲線aとb)の形成の間、蛍光のレベルが一本鎖コントロール(曲線cまたはd)と比較して6倍に増加することが観察される。この増加は、ClipPhen−Cuによるものではなく、2つの鎖の間のハイブリダイゼーションによる。アスコルベートが添加される瞬間から、曲線bの蛍光の減少が観察され、それは完全に切断された一本鎖によって放出される蛍光に対応する曲線dの蛍光のレベルに合う。コントロールと比較した蛍光の変化は、一本鎖DNAと二本鎖DNA/DNAが完全に同程度の様式で切断されることを明確に示す。
最後に、我々は、断片化される核酸が二本鎖RNA又はDNA又はRNA/DNAヘテロ二重鎖であるかどうかに関する、断片化速度の違いを評価した(図7)。この場合では、3つのコントロールに対し、図6に示すように、アスコルベートの添加によって誘導された断片化の間、二重鎖の形成に由来する蛍光の増加、次に完全に切断された一本鎖の蛍光のレベルに合う蛍光の減少が観察される。
全ての場合において、ハイブリッドの性質に関係なく、断片化が起こり、ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物が任意の種類の核酸の分解に完全に適していることを示す。
実施例5:固体支持体に固定された断片化分子の汚染除去効果
(目的)
ClipPhenを固体支持体上に固定すること、及びその活性がTentagelポリスチレンビーズ(取引参照番号MB 250 002、Rapp Polymers、ドイツ)上に固定化の後に維持されることを証明すること。
(操作の手順)
61.5mgのTentagel NHマクロビーズ(取引参照番号MB250 002、Rapp Polymers、ドイツ)をスナップフィットカラム(ABI、米国)またはHandee遠心カラム(参照番号69705、Pierce、米国)中に置いた。すなわちn=16.6μmol。ビーズは、水の考えられる何らかのトレースを取り除くために、無水のジメチルスルホキシド(DMSO)によって洗われた。DMSOは抽出された。それは、アルゴン流れ中に置かれた。600μlの無水DMSO(1分)中の14μlのトリエチルアミン(6eq、99μmol、約150mM)は、浸透された。この工程は、アミン基が適切にNH形態であって、NH 形態でないことを確かにする。溶液はトリエチルアミンによって抽出された。36.4mgのスベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)(6等価物、99μl、約250mM、Pierce)は400μlの無水DMSO(10分)に、浸透された。過剰量のDSSを含む溶液は、抽出された。
ニンヒドリン試験は、全てのアミン基がリンカーと反応したことを確かめるために、反応のこの段階で、取り出した数個のビーズについて実行された。上記と異なる場合、ビーズは青色に変わる。
以下を含む反応混合物は、周囲温度で最低1時間(1時間15分−1時間30分)、浸透された:3−ClipPhen(2.8eq、45μmol、56mM)、4−ジメチルアミノピリジン(2.8eq、45μmol、56mM)、800μlのDMSO中の6.3μlのトリエチルアミン(2.8eq、45μmol、56mM)。
328nmのUV下で差異アッセイによって、ビーズの機能付与の程度を決定するために、反応の前後で数μlの反応混合物を除去することは可能である。反応混合物は、3−ClipPhenによる茶色の呈色を有した。洗浄溶液の茶色の呈色が消えるまで、無水DMSOによる洗浄が実施された。
最初に黄色がかったビーズは、反応の後、わずかにより暗い黄色を有した。800μlの無水DMSO中の5.9μlのエタノールアミン(10eq、99μmol、130mM)は、反応しなかった全てのNHS基を失活させるために加えられた。それは、10分間、作用させた。ビーズは、1mlのDMSOにより5回洗浄され、DMSOにより抽出された。同じ操作は、(ビーズを乾燥させることを可能にするために)アセトニトリルで繰り返された。アルゴンによって洗い流され、それから回転乾燥機によって蒸発させた。
[銅による錯体生成]
1MのCuCl2のDMSO/水(50/50 )溶液の1mlを、(55mgのビーズ、すなわち機能付与の程度に関して145等価量に)10分間浸透させた。(最初のCuCl2溶液が有色だった場合)洗浄溶液が無色になるまで、DMSOと水によって洗われ、次にそれからアセトニトリルで洗浄された。それは、アルゴンによって洗い流された。それは、回転乾燥機によって乾燥された。
[切断テスト]
切断テストは、以下の通りに実施された:樹脂の所望量、1mgと単一のビードの間、すなわちTentagelに対し125nmol/12.5mMの導入されるClipPhen量(すなわち導入されるClipPhen量は1.25nmolから2.5nmol/125μMから250μM)を、エッペンドルフチューブ(最大容量200μL)に入れた。標的RNA(1600塩基の16sRNA転写産物、実験に応じて6と70ng/μlとの間の濃度)を樹脂に加え、同様に所望の濃度(5mM)のアスコルベート(5mM)を加えた。サンプルは、総体積10μlを有した;使用するバッファーは、pH7.4のトリスバッファー(最終濃度20mM)であった。
単一のビーズのTentagel樹脂は、切断を観察するために充分だった。ClipPhen−Cu錯体コントロール試料と結合した「標的単独」(図8の電気泳動図A)、「アスコルベート存在下の標的」(電気泳動図B)、「樹脂存在下の標的」を作成した。「アスコルベート存在下の標的」コントロールは、使用するアスコルベートの量が蛍光に影響を及ぼさないという事実が確認できることを意味した。調製されたサンプルは、使用する標的により、Agilent RNA 6000 Nano chip(取引参照番号5067−1512の市販キット、Agilent)に置く前に、周囲温度(1000rpm)で30分間攪拌した。1μlの上清は、バイオアナライザー(Agilent、米国)上の解析に充分だった。
(結果と結論)
図8(電気泳動図C)に示される、得られた結果は、標的の切断が、最小量の樹脂(Tentagelのちょうど1ビーズ、すなわち、1mgの樹脂が50から100ビーズを含むと仮定すると、1.25から2.5nmolの範囲の担持されたClipPhenの量、すなわち125から250μMの範囲の濃度)に対し、アスコルベートの存在下においてのみ、30分以内に実際に起こったことをしめす。
生じた断片が電気泳動図上に見えるので、この切断はRNAモデルでは非常に容易に観察可能だった(電気泳動図C)。
したがって、固定されたClipPhenが依然として機能的であって、核酸分解の特性を保持することが証明された。
実施例6:興味の核酸と混入している核酸とを含む溶液の汚染除去の例証
(目的)
興味の標的の特異的な増幅を阻害することなしに、細胞DNAから生じる非特異的増幅を減じる目的で、より少ない量で存在し、ウイルス・カプシドによって保護されているウイルス核酸を分解させることなしに、ウイルス培養株の上清にある「ゲノム細胞DNA」混入物を除去すること。
このために、ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の作用の前後で、上清中のゲノム18S DNAの濃度は、希釈の範囲を作成するために、分析された(サーチLC +ゲノムDNA、市販のアッセイキット、プロメガ、参照番号G3041、米国)。同時に、ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物の作用の前後のウイルスRNAの濃度は、特異的プライマーを用いたPCRによって分析され、ライトサイクラー、SybrGreen(ロシュ、米国)によって分析された。
(操作の手順)
ウイルスに感染している細胞は培養された。コントロール実験において、上清に残存するゲノムDNA(18S)は、キット・サーチLCを用いて分析された(下記の表のエントリーB)。また、ウイルスに対応する核酸の量は、ライトサイクラー(ロシュ)を使用して測定された(特異的プライマーを使用する増幅技術)(下記の表のエントリーB)。
別の実験(下記の表のエントリーA)において、上清は30分間、ClipPhen−Cu/アスコルベート混合物(100μMのClipPhen−Cu、50mMのアスコルベート、30分、最終2.5MによるDTT失活)の作用に供され、次に残存するゲノムDNA(18S)の量とウイルスに対応する核酸の量は測定された。
Figure 0005681483
(結果と結論)
上清が切断剤で処理された場合において、ウイルス核酸の濃度が実質的に影響を受けずに、ゲノムDNAの濃度が10倍低いことが観察された(エントリーA)。
したがって、バックグラウンドノイズを実質的に減らすことによって、この技術は、ウイルス核酸を分析する感受性を増大することができる。

Claims (26)

  1. 溶液に存在する任意の核酸を前記溶液から汚染除去する方法であって、該方法は
    充分な時間、溶液を、ビス(1,10−フェナントロリン)/金属錯体を形成する、金属原子と結合した1,10−フェナントロリンの2分子によって構成された錯体によって形成された少なくとも一つの断片化分子の作用に、前記核酸が完全に分解するまで供する工程であって、前記金属原子が銅、ルテニウム、ニッケル、鉄、亜鉛、ロジウム、コバルトまたはマンガンから選択される工程;及び
    過剰量の有機還元剤加えることによって、断片化分子の分解作用を停止する工程を含んでなり、
    該方法は断片化分子の分解作用を停止した後に、増幅反応からなる追加の工程を含み、該方法は断片化分子を除去するために精製の工程を必要としない、方法。
  2. 興味の核酸と混入している核酸とを含む溶液を汚染除去する方法であって、該方法は
    充分な時間、溶液を、ビス(1,10−フェナントロリン)/金属錯体を形成する金属原子と結合した1,10−フェナントロリンの2分子によって構成された錯体によって形成された少なくとも一つの断片化分子の作用に、前記混入している核酸が分解するまで供する一方で、興味の核酸をウイルスのキャプシド又は細菌壁により保護し、該興味の核酸を断片化分子の分解作用から守る工程であって、前記金属原子が銅、ルテニウム、ニッケル、鉄、亜鉛、ロジウム、コバルトまたはマンガンから選択される工程;及び
    過剰量の有機還元剤加えることによって、断片化分子の分解作用を停止する工程を含んでなり、
    該方法は断片化分子の分解作用を停止した後に、増幅反応からなる追加の工程を含み、該方法は断片化分子を除去するために精製の工程を必要としない、方法。
  3. 有機還元剤が、
    ・ジチオスレイトール(DTT)またはメルカプトプロピオン酸;または
    ・カルボキシル酸;または
    ・カルボキシル酸の誘導体;または
    ・ホスフィン;または
    ・前記有機還元剤の少なくとも2つの組合せ
    によって構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. カルボキシル酸の誘導体がジチオスレイトール(DTT)である、請求項に記載の方法。
  5. 断片化分子の2つのフェナントロリン核が、ClipPhen分子を形成するために結合アームを介して互いに結合することを特徴とする、請求項1からの何れか一項に記載の方法。
  6. 2つのフェナントロリン核間の結合アームは、3つの連続した炭素原子の鎖によって構成され、その中心位置の炭素原子が置換され、各々の末端炭素原子が酸素原子を介してフェナントロリン核に結合することを特徴とする、請求項に記載の方法。
  7. 中心位置の炭素原子は-NHまたは-NH-CO-CHによって置換され、各々の末端炭素原子はフェナントロリン核の位置2または3において酸素原子を介して前記核に結合することを特徴とする、請求項に記載の方法。
  8. ClipPhen分子が3−ClipPhen(1,3−ビス(1,10−フェナントロリン−3−イルオキシ)プロパン−2−アミン)であることを特徴とする、請求項からの何れか一項に記載の方法。
  9. 断片化分子は、過酸化水素(H)と結合した銅(I)錯体であることを特徴とする、請求項1からの何れか一項に記載の方法。
  10. 断片化分子は銅(II)錯体であることを特徴とする、請求項1からの何れか一項に記載の方法。
  11. 銅(I)錯体又は銅(II)錯体は他の有機還元剤と結合していることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
  12. 前記他の有機還元剤が、
    ・チオール、チオ酸;または
    ・カルボキシル酸;または
    ・カルボキシル酸の誘導体;または
    ・ホスフィン;または
    ・前記有機還元剤の少なくとも2つの組合せ
    によって構成される有機還元剤であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
  13. 前記他の還元剤がカルボキシル酸またはカルボキシル酸の誘導体である、請求項12に記載の方法。
  14. カルボキシル酸の誘導体がアスコルベートであり、前記アスコルベートが断片化分子の分解作用の開始剤である、請求項12又は13に記載の方法。
  15. 断片化分子がClipPhen/銅錯体であり、還元剤がジチオスレイトール(DTT)である、請求項14に記載の方法。
  16. 断片化分子が固体支持体に固定されることを特徴とする、請求項1から15の何れか一項に記載の方法。
  17. 請求項1から10の何れか一項に記載の有機還元剤または請求項11から14の何れか一項に記載の他の有機還元剤が固体支持体に固定されることを特徴とする、請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
  18. 固体支持体が粒子、膜、ストリップ、フィルムまたはフィルターであることを特徴とする、請求項16又は17に記載の方法。
  19. 他の有機還元剤がカルボキシル酸または当該酸の誘導体である場合、断片化分子と前記他の有機還元剤との比率は1:1と1:100との間の範囲にあることを特徴とする請求項11から14の何れか一項に記載の方法。
  20. 前記断片化分子と請求項1から10の何れか一項に記載の有機還元剤の間の比率は1:100を超えており、有機還元剤がチオールによって構成される、請求項1から19の何れか一項に記載の方法。
  21. 溶液は、核酸を除いた増幅反応のために必要な全ての成分、すなわち:
    ・標的;
    ・増幅プライマー;および
    ・検出プローブ
    を含むことを特徴とする、請求項1から20の何れか一項に記載の方法。
  22. 処理される核酸が一本鎖または二本鎖形態のRNAまたはDNA、並びにRNA/DNAヘテロ二重鎖であることを特徴とする、請求項1から21の何れか一項に記載の方法。
  23. 核酸が少なくとも一の断片化分子の作用に供される期間は、5分から60分の範囲の間であり、断片化分子の濃度は1μMから100μMの範囲であることを特徴とする、請求項1から22の何れか一項に記載の方法。
  24. 核酸が少なくとも一の断片化分子の作用に供される期間は、10分から30分の範囲の間であることを特徴とする請求項23に記載の方法。
  25. 前記他の有機還元剤が、請求項1から10の何れか一項に記載の有機還元剤と同一であることを特徴とする、請求項11から24の何れか一項に記載の方法。
  26. 前記他の有機還元剤が、請求項1から10の何れか一項に記載の有機還元剤と異なることを特徴とする、請求項11から24の何れか一項に記載の方法。
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