JP5681370B2 - 西洋芝地に発生するメヒシバの防除方法 - Google Patents

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Description

本発明は、西洋芝地内に発生する1年生イネ科雑草のメヒシバに対し、2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリド(エトベンザニド)を用いることにより、西洋芝に対する影響がなく、該メヒシバを完全防除する方法に関する。
メヒシバ(メヒシバ、アキメヒシバ、コメヒシバなど)は、農耕地および芝生地などに、春先から8月下旬にかけてしばしば発生する1年生イネ科の雑草だが、近年ゴルフ場などの西洋芝地においても発生・生育し、問題となっている。
芝生地を形成し、メヒシバの発生がしばしば見られる西洋芝としては、ベントグラスやブルーグラスなどが挙げられる。
ベントグラスは、ゴルフ場などのグリーン部分を形成する芝種として広く用いられ、そうした場所で生育盛期には、慣行的な管理として毎日刈り込まれることによるストレスを受け続けている。そうした管理条件にも起因して、ベントグラスへの薬剤散布に関し、生育阻害を引き起こす薬剤種が多く、ベントグラス中に発生する1年生イネ科雑草のメヒシバを防除することは非常に難しいことが知られている。
一方、2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリドは、水稲作地除草剤として知られており(たとえば特許文献1〜5)、イネとノビエ間に優れた選択性を有することが知られている除草剤である。
また、水稲作地以外では、特許文献6に、2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリドをトウモロコシやコムギなどの畑作、またノシバなど芝生に対して適用した例が報告されている。しかし、いずれも2−クロロ−4−エチルアミノ−6−イソプロピルアミノ−1,3,5−トリアジンや2−(4−クロロ−6−エチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノ−2−メチルプロピオンニトリルとの組合せで施用して、メヒシバへの効果を確認している。2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリド単独での施用は、トウモロコシに対するもののみが記載されており、芝生への単独施用の記載はない。また、そのトウモロコシに対する単独施用も、メヒシバに対する効果はほとんど無かったことが報告されている。
特開昭56−73055号公報 特開2005−60312号公報 特開2005−126415号公報 特開2007−16023号公報 特開2007−161603号公報 特開平7−25709号公報
本発明は、ベントグラスなどの西洋芝地に発生する、発生前から生育期にかけてのメヒシバを防除し、かつ機械等による刈り込みおよび踏圧によるストレスが与え続けられているベントグラスなどの西洋芝に対して影響のない、メヒシバの防除方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリドを用いることにより、ゴルフ場等で管理されたベントグラスなどの西洋芝に対する影響が全くなく、発生前から生育期にかけてのメヒシバに対し、強い殺草力を示してこれを防除することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の構成を有する。
[1]
西洋芝の芝生内において、2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリドを用いて発生前のメヒシバおよび生育期のメヒシバを防除する方法。
[2]
前記メヒシバの発生前に、2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリドの水和剤、顆粒水和剤または水性懸濁製剤を散布して、該メヒシバの発生を抑えることを特徴とする[1]に記載のメヒシバを防除する方法。
[3]
前記メヒシバの生育期に、2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリドの水和剤、顆粒水和剤または水性懸濁製剤を散布して、該メヒシバを枯殺することを特徴とする[1]に記載のメヒシバを防除する方法。
[4]
前記メヒシバの生育期が発芽期ないし2葉期であることを特徴とする[3]に記載のメヒシバを防除する方法。
[5]
前記2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリド0.1部ないし0.4部を有効成分として含む水和剤、顆粒水和剤または水性懸濁製剤を、西洋芝の芝生内に散布することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一つに記載のメヒシバを防除する方法。
[6]
西洋芝がベントグラスであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一つに記載のメヒシバを防除する方法。
本発明によれば、刈り込みなどのストレスが継続的にかけられている西洋芝に2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリドを有効成分とする薬剤を全面散布することにより、メヒシバに対し優れた殺草力を示し、西洋芝に対しては影響の無い防除方法を提供することができる。
本発明の除草剤成分としては、有効成分として2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリドを含み、水に希釈して施用面に散布できるものであればよい。
除草剤の製剤形態としては、特に限定されないが、水和剤、水性懸濁製剤または顆粒水和剤が挙げられる。
処理方法としては、特に限定されないが、全面散布方法が挙げられる。
水和剤および顆粒水和剤の担体としては、珪藻土、乾式クレー、湿式クレー、タルク、ゼオライト、珪石、珪砂、炭酸カルシウム、オリビンサンド、シラスアタパルジャナイト、蝋石、酸性白土、活性白土、フライアッシュ等が挙げられ、これらより選ばれる1種類または2種類以上を組合せたものを使用することができる。
水和剤、水性懸濁製剤および顆粒水和剤に混合する界面活性剤として、陰イオン系では、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、リン酸エステル型、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などを使用することができる。
非イオン系では、ポリオキチエチレンアルキルエテール型、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル型、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル型などを使用することができる。
界面活性剤の添加量は、特に限定されないが、上記より選ばれる1種類、あるいは2種類以上の組合せで、その添加量は0.5〜10部である。
防除の対象となる、西洋芝に発生するメヒシバは、メヒシバ(Digitaria ciliaris)、アキメヒシバ(D.violascens)、コメヒシバ(D.timorensis)などである。
本発明の実施に際しては、西洋芝に関する慣行的な管理である、芝地面に対する十分量の散水を行うことが望ましい。西洋芝に対する、本願発明による2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリドの施用と、散水との順番は、特に限定する必要は無いが、2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリドを散布した直後に散水するのが好ましい。
前述のとおり、畑作のトウモロコシに関しては、2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリドを用いてもメヒシバの防除が認められなかったとの報告があるが、これは、同剤のもともとの適用対象である水稲と、畑作トウモロコシとの施水条件の差にも起因するものと考えられる。ゴルフ場のグリーンなどに用いられるベントグラスなどの西洋芝の場合、その望ましい管理として毎日十分量の散水が行われ、施水条件としては畑作トウモロコシなどよりも水稲に近いため、メヒシバに対する2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリドの効果が発現するものと考えられる。
なお、本願発明の2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリドは、他の殺菌剤や殺虫剤と混用または近接散布しても問題ない。また、西洋芝に対する液肥等と混用または近接散布しても問題ない。
[水性懸濁製剤の作製]
HW−52原体(2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリド、純度95%、保土谷化学工業(株)製)36.85部、エチレングリコール(凍結防止剤)5部、ビーガム(沈降防止剤)0.3部、キサンタンガム(沈降防止剤)0.1部、Proxel GXL(防腐剤)0.02部、プロナールEX−300(消泡剤)0.5部、Sorpol3742(アルキルアリルエーテルサルフェート、東邦化学工業(株)製)7部、水50.2’,3’部をホモジナイザイーで均一に攪拌し、分散液を調製した。さらに、その分散液を湿式粉砕機に投入し、均一なスラリー溶液を調製し、HW−52の35%水性懸濁製剤を得た。
[水和剤の作製]
予めジェットミル式粉砕機(コジェットシステムα、セイシン企業(株)製)で粉砕し微粉化したHW−52原体(2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリド、純度95%、保土谷化学工業(株)製)73.7部、Sorpol5029−O(アルキルサルフェート、東邦化学工業(株)製)10部、クレー(勝光山クレー、(株)勝光山鉱業所製)16.3部を、混合機を用い均一に混合し、HW−52の70%水和剤を得た。
[顆粒水和剤の作製]
予めジェットミル式粉砕機(コジェットシステムα、セイシン企業(株)製)で粉砕し微粉化したHW−52原体(2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリド、純度95%、保土谷化学工業(株)製)36.85部、Sorpol5115(アルケニルスルホネート、東邦化学工業(株)製)5部、Sorpol9047K(リグニンスルホン酸ナトリウム塩、東邦化学工業(株)製)5部、クレー(勝光山クレー、(株)勝光山鉱業所製)53.15部を加え、均一に混合した。その後、加水混練し、孔径0.7mmのスクリーンを装着した押出造粒機を用いて造粒した。その後、60℃5時間乾燥し篩分けして微粉を除去した後にHW−52の35%顆粒水和剤を得た。
[メヒシバ発生前処理による除草効果およびベントグラスに対する影響の検討]
4月上旬に栃木県佐野市にあるゴルフ場において、慣行の生育管理を行っているベントグラス(品種:ペンクロスベントグラス)圃場内に、1m×1mの試験区を複数設定した。
なお、薬剤散布時において、メヒシバの発芽は観察されなかった。
実施例1、2および3に準じた方法により調製した水和剤、水性懸濁製剤および顆粒水和剤を水道水にて希釈し、散布水量200L/10aの全面処理を行った。
薬剤散布には、小型電池式噴霧器(品番:IR−N3000アイリスオオヤマ製)を用いた。
調査は、薬剤処理30、60日後にメヒシバに対する防除効果およびベントグラスに対する薬害程度を観察調査し、薬剤処理前のメヒシバに対する除草効果の有効性を調査した。
以下、芝地内の雑草に対する除草効果は、次の観察基準に従い行った。
0:無処理区同様除草効果は観察されない。
2:無処理区に対し20%程度の防除効果を示す。
4:無処理区に対し40%程度の防除効果を示す。
6:無処理区に対し60%程度の防除効果を示す。
8:無処理区に対し80%程度の防除効果を示す。
10:完全枯死
以下、ベントグラスに対する薬害程度の調査は、次の観察基準に従い行った。
0:無処理区同様(影響なし)
2:僅かな薬害症状有り
4:薬害症状が観察されるが実用上問題ないと判断される程度
6:薬害症状が観察されるが実用できないと判断される程度
8:薬害症状は甚大であり実用できないと判断される程度
10:薬害症状により完全に枯死している程度
結果を、表1に示す。
Figure 0005681370
[メヒシバ2葉期処理による除草効果およびベントグラスに対する影響の検討]
5月上旬に栃木県佐野市にあるゴルフ場において、慣行の生育管理を行っているベントグラス(品種:ペンクロスベントグラス)圃場内に、1m×1mの試験区を複数設定した。
なお、薬剤散布時のメヒシバは、1葉期から2葉期までに生育している状態であった。
実施例1、2および3に準じた方法により調製した水和剤、水性懸濁製剤および顆粒水和剤を水道水にて希釈し、散布水量200L/10aの全面処理を行った。
薬剤散布には、小型電池式噴霧器(品番:IR−N3000アイリスオオヤマ製)を用いて全面散布を行った。
調査は、薬剤処理30、60日後にメヒシバに対する防除効果およびベントグラスに対する薬害程度を観察調査し、薬剤処理前のメヒシバに対する除草効果の有効性を調査した。
結果を、表2に示す。
Figure 0005681370
継続的に刈り込みや踏圧などによりストレスを受けているベントグラスなどの西洋芝地内に発生するメヒシバを、その発生前から生育期に対して2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリドを用い、西洋芝に対する薬害無しに完全防除する防除方法を提供する。

Claims (6)

  1. 西洋芝の芝生内において、単独の有効成分として2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリドを用いて発生前のメヒシバおよび生育期のメヒシバを防除する方法。
  2. 前記メヒシバの発生前に、2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリドの水和剤、顆粒水和剤または水性懸濁製剤を散布して、該メヒシバの発生を抑えることを特徴とする請求項1に記載のメヒシバを防除する方法。
  3. 前記メヒシバの生育期に、2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリドの水和剤、顆粒水和剤または水性懸濁製剤を散布して、該メヒシバを枯殺することを特徴とする請求項1に記載のメヒシバを防除する方法。
  4. 前記メヒシバの生育期が発芽期ないし2葉期であることを特徴とする請求項3に記載のメヒシバを防除する方法。
  5. 前記2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンズアニリド0.1部ないし0.4部を有効成分として含む水和剤、顆粒水和剤または水性懸濁製剤を、西洋芝の芝生内に散布することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載のメヒシバを防除する方法。
  6. 西洋芝がベントグラスであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載のメヒシバを防除する方法。
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