JP5677116B2 - 高温超電導コイル - Google Patents
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図10に示す超電導線材200は、テープ状の金属基材201上に中間層202とキャップ層203を介し成膜法により酸化物超電導層204を積層し、AgやCuなどの安定化層205、206を被覆した積層構造とされる。そのため、図9に示す構造のBi系の超電導線材100のように厚さ方向に対称的な構造ではなく、希土類系の超電導線材200を用いて超電導コイルとするには、曲げや捻回などの方向性を考慮して設計する必要がある。
高温超電導コイルの電極部については、曲げ応力を発生せず、発熱を抑えることができる構造として、特許文献1に記載の構造が提案されている。
また、本発明によれば、超電導線材の安定化層側を外側として巻回してコイル体とし、このコイル体端部の超電導線材を外径方向に折り曲げる構成であるので、超電導線材端部の折り曲げ部では、基材側を外側として折り曲げる構成となる。そのため、高温超電導層に圧縮応力が働くため、折り曲げ部において超電導特性が劣化することを抑制できる。
この場合、電極接続部の折り曲げ部における超電導特性の劣化をより確実に防ぐことができる。
この場合、電極の周側部と延出部の両方が超電導線材の安定化層に半田付けされているため、超電導線材巻回終端部の折り曲げ部分を電極で補強した構造とすることができる。
従って、高温超電導コイルへの通電時に生じる可能性のある振動などにより電極が位置ずれすることがない。また、接合部分の強度が強いので、他の端子との接続の作業性が向上する。
この場合、コイル体径方向に隣接する各超電導線は被覆層により保護される。また、巻回終端部で被覆層から超電導線材を引き出して、この引き出した部分の安定化層上に電極を設けるため、巻回終端部において電極と超電導線材を確実に電気的に接続できる。
図1は本発明の高温超電導コイルの一例構造を示す概略模式図であり、図2は図1に示す高温超電導コイルが備える超電導線材の一例構造を示す概略斜視図であり、図3は図1に示す超電導コイルの電極接続部の構造を模式的に示す上面図である。なお、図3では、説明を簡単にするため、超電導線材の一部の層を省略して示している。
本実施形態の高温超電導コイル10は、第1のコイル体6Aと第2のコイル体6Bとが、同軸的に上下に積層されて構成されている。
第1のコイル体6Aは、後述する超電導線材が安定化層側を外側にして同心円状、時計回りに多数回巻回されて構成されたパンケーキ型のコイル体である。第2のコイル体6Bは、後述する超電導線材が安定化層側を外側にして同心円状、反時計回りに多数回巻回されて構成されたパンケーキ型のコイル体である。
各コイル体の内側に位置する第1のコイル体6Aの巻回始端と第2のコイル体6Bの巻回始端とは、互いに隣接するように配されており、良導電性の接続板(図示略)により、電気的および機械的に接続されている。また、各コイル体6A、6Bの最外周側に位置する巻回終端には、後述の如く電極5が接合されている。
なかでも、市販品であれば、ハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)が好適であり、ハステロイとして、モリブデン、クロム、鉄、コバルト等の成分量が異なる、ハステロイB、C、G、N、W等のいずれの種類も使用できる。基材11の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は、10〜500μmである。
このように基材11とベッド層12との間に拡散防止層を介在させることにより、後述する中間層15やキャップ層16および高温超電導層17等の他の層を形成する際に、必然的に加熱されたり、熱処理される結果として熱履歴を受ける場合に、基材11の構成元素の一部がベッド層12を介して高温超電導層17側に拡散することを抑制できる。拡散防止層とベッド層12の2層構造とすることで、基材11側からの元素拡散を効果的に抑制することができる。基材11とベッド層12との間に拡散防止層を介在させる場合の例としては、拡散防止層としてAl2O3、ベッド層12としてY2O3を用いる組み合わせを例示することができる。
この中間層15をイオンビームアシスト蒸着法(IBAD法)により良好な結晶配向性(例えば結晶配向度15゜以下)で成膜するならば、その上に形成するキャップ層16の結晶配向性を良好な値(例えば結晶配向度5゜前後)とすることができ、これによりキャップ層16の上に成膜する高温超電導層17の結晶配向性を良好なものとして優れた超電導特性を発揮できるようにすることができる。
中間層15は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法等の物理的蒸着法、化学気相成長法(CVD法)、塗布熱分解法(MOD法)、溶射等、酸化物薄膜を形成する公知の方法で積層できる。特に、IBAD法で形成された前記金属酸化物層は、結晶配向性が高く、高温超電導層17やキャップ層16の結晶配向性を制御する効果が高い点で好ましい。IBAD法とは、蒸着時に、下地の蒸着面に対して所定の角度でイオンビームを照射することにより、結晶軸を配向させる方法である。通常は、イオンビームとして、アルゴン(Ar)イオンビームを使用する。例えば、Gd2Zr2O7、MgO又はZrO2−Y2O3(YSZ)からなる中間層15は、IBAD法における結晶配向度を表す指標であるΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、特に好適である。
キャップ層16の材質は、上記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、CeO2、Y2O3、Al2O3、Gd2O3、Zr2O3、Ho2O3、Nd2O3等が例示できる。キャップ層の材質がCeO2である場合、キャップ層16は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。
キャップ層16の膜厚は、50nm以上であればよいが、十分な配向性を得るには100nm以上が好ましく、500nm以上であれば更に好ましい。但し、厚すぎると結晶配向性が悪くなるので、500〜1000nmとすることが好ましい。
高温超電導層17の厚みは、0.5〜5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。
高温超電導層17は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法等の物理的蒸着法、化学気相成長法(CVD法)、塗布熱分解法(MOD法)等で積層することができる。
安定化層19を構成する金属材料としては、良導電性を有するものであればよく、特に限定されないが、銅、黄銅(Cu−Zn合金)等の銅合金、ステンレス等の比較的安価なものを用いるのが好ましく、中でも高い導電性を有し、安価であることから銅がより好ましい。銅を用いることにより、材料コストを低く抑えながら安定化層19を厚膜化することが可能となり、事故電流に耐える超電導線材を安価に得ることができる。
安定化層19の厚さは10〜300μmとすることが好ましい。安定化層19は、公知の方法で形成することができ、めっき法、スパッタ法あるいは銅などの金属テープを安定化基層18上に半田付けする方法などにより形成することができる。
電極接合部7の超電導線材本体部1Aの安定化層19表面上には、超電導線材本体部1Aと折り曲げ形状を略同一とした電極5が接合されている。電極5は超電導線材本体部1Aの形状に沿って超電導線材本体部1Aの巻回終端部と一体化されており、コイル体周方向に沿う周側部5Sとコイル体径方向外側に延出された延出部5Eとで構成されている。電極5は折り曲げ部5Kにおいて曲げ半径Rで折り曲げられた構造となっている。
超電導線材1Aの周側部1Sの安定化層19と、電極5の周側部5Sは、半田等の電気的接合材により接合されている。また、超電導線材1Aの延出部1Eの安定化層19と、電極5の延出部5Eは、半田等の電気的接合材により接合されている。
電極5は、電極材料として従来公知の材料を用いることが可能であり、高い導電性を有する金属、例えば、銅、銀、金、白金、またはこれらの金属を少なくとも1種含む合金が挙げられ、中でも安価で導電率の優れた銅が好ましい。また、電極5はめっき銅より形成されていてもよい。電極5の寸法は第1のコイル体6Aの寸法に合わせて適宜調整される。電極5の幅方向の寸法は、接続抵抗を抑えることができるため、超電導線材1の幅と略同一とされることが好ましい。電極5の厚さは、特に制限されないが、折り曲げが可能な程度の厚さ、例えば、1〜3mm程度とされる。
また、電極5の周側部5Sと延出部5Eの両方が超電導線材本体部1Aの安定化層に半田付けされている場合、超電導線材1の巻回終端部の折り曲げ部分を電極5で補強した接合構造とすることができる。従って、高温超電導コイル10への通電時に生じる可能性のある振動などにより電極5が位置ずれすることがない。また、接合部分の強度が高いので、他の端子との接続の作業性が向上する。
さらに、電極5の曲げ半径Rが小さすぎる場合、超電導線材本体部1Aと電極5との半田付けによる接合が難しくなり、折り曲げ部1K、5K間が充分に接続されないおそれがあるが、電極5の曲げ半径Rを前記範囲とすることにより電極5と超電導線材本体部1Aを充分に接合することができる。さらにまた、前記の如く基材11の厚さが0.1mmの場合に曲げ半径を最小5mmまで小さくできるため、電極接続部の設計の自由度が高い。
すなわち、電極5の曲げ半径R(mm)は、超電導線材1の基材11の厚さt(mm)としたとき、t/R≦0.02とすることが好ましく、0.00625≦t/R≦0.0167の範囲とすることがより好ましい。このような関係を満たすように、基材11の厚さtに対して曲げ半径Rを設定することにより、折り曲げによる超電導特性の低下を抑制できる。
図4に示す超電導線材1Bは、安定化層19bが、基材11とベッド層12と中間層15とキャップ層16と高温超電導層17と安定化基層18が順次積層された積層体S1の外周全面に設けられている点で図2に示す超電導線材1とは異なっている。安定化層19bは銅などの良導電性の金属材料からなり、めっき法により形成され、その厚さは10〜300μmとされる。
図4に示す構成の超電導線材1Bを本発明に係る高温超電導コイル10に適用する場合、基材11側を内側(すなわち、安定化基層18側を外側)として超電導線材1Bを巻回して超電導コイルとし、その巻回終端側において、安定化基層18上に形成された安定化層19b上に電極5を接合する構成とする。このような構成とすることにより、上記した実施形態と同様の効果を奏することができる。
(実施例1)
幅10mm、厚さ0.1mmのテープ状のハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)製の基材上に、イオンビームアシストスパッタ法(IBAD法)により1.2μm厚のGd2Zr2O7(GZO;中間層)を形成した上に、パルスレーザー蒸着法(PLD法)により1.0μm厚のCeO2(キャップ層)を成膜した。次いでCeO2層上にPLD法により1.0μm厚のGdBa2Cu3O7(高温超電導層)を形成し、さらに超電導層上にスパッタ法により10μmの銀層(安定化基層)を形成した。その後、0.1mm厚の銅層(安定化層)を半田により銀層上に積層して超電導線材を作製した。続いて、得られた超電導線材に厚さ12.5μmのポリイミドテープを巻回テープの幅方向端部同士が重ならずに隙間無く接するように巻き付けた後、さらに、巻回位置を線材の長手方向にテープ幅の1/2だけずらして、厚さ12.5μmのポリイミドテープを巻回テープの幅方向端部同士が重ならずに隙間無く接するように巻き付けた。
次いで、得られたポリイミドテープ付きの超電導線材を安定化層側が外側となるように、内径70mmとして同心円状に35回巻回させてパンケーキコイルを作製した。次に、同様の手順でパンケーキコイルをもう1個作製し、2個のパンケーキコイルを同軸的に積層させて高さ21mm、ターン数70ターン(35ターン×2)のダブルパンケーキコイルを作製した。
安定化層を0.3mm厚の銅層とした以外は、実施例1と同様にして超電導コイルを作製した。
(実施例3)
実施例1と同様にして、基材と中間層とキャップ層と高温超電導層と安定化基層の積層体を形成した後、この積層体の外周面に厚さ20μmの銅層(安定化層)を形成して図4に示す構造の超電導線材とし、得られた超電導線材に実施例1と同様にしてポリイミドテープを巻きつけた。次いで、得られたポリイミドテープ付き超電導線材を、基材側を内側(銀層上の銅層側が外側)となるようにし、実施例1と同様の手順でダブルパンケーキコイルを作製した。
次に、各パンケーキコイルの巻回終端部のポリイミドテープを除去し、超電導線材本体部の端部から約100mmの部分を露出させた。露出させた超電導線材の銀層上の安定化層(銅層)上に、厚さ2mm、幅10mm、折り曲げ部の曲げ半径R=15mm、周側部の長さ50mm、延出部の長さ30mmの無酸素銅製の電極を半田付けし、超電導線材端部と電極が一体に折り曲げられた構造の電極接続部として、超電導コイルを作製した。
実施例1と同様にして作製したポリイミドテープ付き超電導線材を、基材層側が外側となるように、内径70mmとして同心円状に35回巻回させてパンケーキコイルを作製した。次に、同様の手順でパンケーキコイルをもう1個作製し、2個のパンケーキコイルを同軸的に積層させて高さ21mm、ターン数70ターン(35ターン×2)のダブルパンケーキコイルを作製した。
安定化層を0.3mm厚の銅層とした以外は、比較例1と同様にして超電導コイルを作製した。
(比較例3)
実施例1と同様にして、基材と中間層とキャップ層と高温超電導層と安定化層の積層体を形成した後、この積層体の外周面に厚さ20μmの銅層(安定化層)を形成して図4に示す構造の超電導線材とし、得られた超電導線材に実施例1と同様にしてポリイミドテープを巻きつけた。次いで、得られたポリイミドテープ付き超電導線材を、基材側を外側(銀層上の銅層側が内側)となるようにし、比較例1と同様の手順でダブルパンケーキコイルを作製した。
次に、各パンケーキコイルの巻回終端部のポリイミドテープを除去し、超電導線材本体部の端部から約100mmの部分を露出させた。露出させた超電導線材の銀層上の安定化層(銅層)上に、厚さ2mm、幅10mm、折り曲げ部の曲げ半径R=15mm、周側部の長さ50mm、延出部の長さ30mmの無酸素銅製の電極を半田付けし、超電導線材端部と電極が一体に折り曲げられた構造の電極接続部として、超電導コイルを作製した。
実施例1と同様にしてダブルパンケーキコイルを作製した後、各パンケーキコイルの巻回終端部のポリイミドテープを除去し、超電導線材本体部の端部から約100mmの部分を露出させた。露出させた超電導線材本体部の安定化層上に、超電導線材本体部は折り曲げずに、厚さ2mm、幅10mm、折り曲げ部の曲げ半径R=15mm、周側部の長さ50mm、延出部の長さ30mmの無酸素銅製の電極を半田付けし、図5(b)に示す構造の電極接続部として、超電導コイル40を作製した。
また、実施例1〜3及び比較例1〜3の各超電導コイルについて液体窒素温度における臨界電流値Icを測定し、曲げ半径R=15mmの電極の替わりに折り曲げ部を有さない扁平形状の電極を用いた場合の液体窒素温度における臨界電流値Ic0に対する変化率(Ic/Ic0)を求めた。各超電導コイルにおいて、Ic/Ic0≧0.9のものを「○」、Ic/Ic0<0.9のものを「△」と判定した。結果を表1に併記した。なお、電極接続部の半田付け部分は、半田付け温度である250〜300℃程度の温度から液体窒素温度(77K)の間の熱履歴を受けている。
電極の折り曲げ部の曲げ半径R=10mm、8mm、5mm、4mmと変えた以外は、実施例1と同様にして超電導コイルを作製した。
(実施例5)
電極の折り曲げ部の曲げ半径R=10mm、8mm、5mmと変えた以外は、実施例2と同様にして超電導コイルを作製した。
(実施例6)
電極の折り曲げ部の曲げ半径R=10mm、8mm、5mm、4mmと変えた以外は、実施例3と同様にして超電導コイルを作製した。
電極の折り曲げ部の曲げ半径R=10mm、8mm、5mm、4mmと変えた以外は、比較例1と同様にして超電導コイルを作製した。
(比較例6)
電極の折り曲げ部の曲げ半径R=10mm、8mm、5mm、4mmと変えた以外は、比較例2と同様にして超電導コイルを作製した。
(比較例7)
電極の折り曲げ部の曲げ半径R=10mm、8mm、5mm、4mmと変えた以外は、比較例3と同様にして超電導コイルを作製した。
一方、比較例5〜7の超電導コイルでは、電極接続部で超電導線材本体部がその基材側を内側として折り曲げられた構造であるため、高温超電導層に引張応力がかかり、電極のげ半径が小さくなるに従い、超電導特性が低下していた。
(1) 超電導線材の作製
以下の手順で、サンプル1、サンプル2の超電導線材を作製した。
「サンプル1の超電導線材の作製」
幅10mm、厚さ0.1mmのテープ状のハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)製の基材上に、イオンビームアシストスパッタ法(IBAD法)により1.2μm厚のGd2Zr2O7(GZO;中間層)を形成した上に、パルスレーザー蒸着法(PLD法)により1.0μm厚のCeO2(キャップ層)を成膜した。次いでCeO2層上にPLD法により1.0μm厚のGdBa2Cu3O7(高温超電導層)を形成し、さらに超電導層上にスパッタ法により10μmの銀層(安定化基層)を形成した。その後、0.1mm厚の銅層(安定化層)を半田により銀層上に積層してサンプル1の超電導線材を作製した。さらに、サンプル1の超電導線材に、厚さ12.5μmのポリイミドテープを巻回テープの幅方向端部同士が重ならずに隙間無く接するように巻き付けた後、さらに、巻回位置を線材の長手方向にテープ幅の1/2だけずらして、厚さ12.5μmのポリイミドテープを巻回テープの幅方向端部同士が重ならずに隙間無く接するように巻き付けた。
サンプル1と同様にして、基材と中間層とキャップ層と高温超電導層と安定化基層の積層体を形成した後、この積層体の外周面に厚さ20μmの銅層(安定化層)を電気めっきにより形成してサンプル2の超電導線材を作製した。さらに、サンプル2の超電導線材に、厚さ12.5μmのポリイミドテープを巻回テープの幅方向端部同士が重ならずに隙間無く接するように巻き付けた後、さらに、巻回位置を線材の長手方向にテープの幅1/2だけずらして、厚さ12.5μmのポリイミドテープを巻回テープの幅方向端部同士が重ならずに隙間無く接するように巻き付けた。
まず、上記で作製したサンプル1およびサンプル2の超電導線材について、直線状態で液体窒素温度(77K)における臨界電流値Ic0を測定した。次に、図6に示す形状のガラスエポキシ製治具の曲面に沿って、サンプル1および2の超電導線材を曲げ半径Rで曲げた状態となるように粘着テープで治具に固定した。この状態の各超電導線材について、液体窒素温度(77K)における臨界電流値Icを測定し、治具に固定前後の臨界電流値の変化率(Ic/Ic0)を求めた。
同様の手順で治具の曲面の曲率および超電導線材の曲げ半径Rを変化させて試験を行った。なお、治具への超電導線材への固定は、図6(a)に示す如く基材側を外側にして曲げる場合と、図6(b)に示す如く基材側を内側にして曲げる場合の2種類の状態として試験を行った。なお、以下の説明において、図6(a)に示す状態では、高温超電導層に圧縮応力がかかるので、この状態を圧縮側曲げ試験状態と称する。また、図6(b)に示す状態では、高温超電導層に引張応力がかかるので、この状態を引張側曲げ試験状態と称する。
各サンプルについて、曲げ半径Rと、治具に固定前後の臨界電流値の変化率(Ic/Ic0)の関係をプロットした結果を図7に示す。図7(a)はサンプル1の超電導線材の圧縮側曲げ試験状態の結果を示し、図7(b)はサンプル2の超電導線材の圧縮側曲げ試験状態の結果を示し、図7(c)はサンプル1の超電導線材の引張側曲げ試験状態の結果を示し、図7(d)はサンプル2の超電導線材の引張側曲げ試験状態の結果を示す。
また、図7(c)および図7(d)に示すように、基材が内側となるように曲げた引張側曲げ試験状態では、サンプル1およびサンプル2の超電導線材はいずれも、曲げ半径R=12.5mm以上の場合に、臨界電流値の変化率Ic/Ic0≧0.9であった。
電極の折り曲げ部の曲げ半径R=3〜16mmの範囲で変化させたこと以外は、実施例1と同様にして超電導コイルを作製した。
得られた超電導コイルについて、液体窒素温度における臨界電流値Icを測定し、上記同様折り曲げ部を有さない扁平形状の電極を用いた場合の液体窒素温度における臨界電流値Ic0に対する変化率(Ic/Ic0)を求めた。得られたIc/Ic0と電極の曲げ半径との関係をプロットしたグラフを図8に示す。
図8の結果より、本発明に係る超電導コイルにおいて、電極の曲げ半径R=5以上とすることによりIc/Ic0≧0.9となり、電極の曲げ半径R=6〜16の範囲とすることにより超電導特性の低下が見られないことが確認された。また、図8の結果から基材厚さ(0.1mm)を曲げ半径Rで除した値で超電導特性を評価すると、t/R=0.02以下の場合にIc/Ic0≧0.9となり、t/R=0.00625〜0.0167の範囲とすることにより、電極部の発熱が抑制され、かつ、超電導特性の低下を効果的に抑制できる超電導コイルとなることがわかる。
Claims (4)
- 基材と、該基材上方に設けられた高温超電導層と、該高温超電導層上方に設けられた安定化層とを備える超電導線材を、前記安定化層側を外側として巻回してなるコイル体と、
このコイル体の前記超電導線材の巻回終端部の前記安定化層上に設けられた電極と、を備え、
前記超電導線材の前記巻回終端部と前記電極とが、前記コイル体の周方向から径方向外側に向かって一体に折り曲げられてなり、前記電極の前記コイル体周面に沿う部分と、該電極の前記コイル体の外側に延出された部分との両方が、前記安定化層と電気的に接続されてなり、
前記超電導線材の折り曲げ部の前記安定化層側が、前記電極の折り曲げ部の外側と電気的に接続されてなることを特徴とする高温超電導コイル。 - 前記基材の厚さをt(mm)、前記電極の折り曲げ部の曲げ半径をR(mm)としたとき、t/R≦0.02を満たすことを特徴とする請求項1に記載の高温超電導コイル。
- 前記電極が、前記コイル体周面に沿って配置される周側部と、前記コイル体の径方向外側に向いて配設された延出部とからなり、
前記周側部が前記コイル体周面側の前記超電導線材の前記安定化層に半田付けされ、前記延出部が前記コイル体径方向外側に延出された前記超電導線材の前記安定化層に半田付けされ、前記超電導線材の折り曲げ部の前記安定化層側が前記電極の折り曲げ部の外側に半田付されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の高温超電導コイル。 - 前記超電導線材が被覆層で被覆されており、巻回終端部において前記被覆層から該超電導線材が引き出され、この引き出された超電導線材の前記安定化層上に前記電極が設けられてなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の高温超電導コイル。
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