JP5676515B2 - 不溶性金属電極、電解装置、および、めっき方法 - Google Patents

不溶性金属電極、電解装置、および、めっき方法 Download PDF

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Description

本発明は、めっき処理に使用される電解装置に設けられる不溶性金属電極、この不溶性金属電極を備えた電解装置、および、この不溶性金属電極を使用しためっき方法に関する。
不溶性金属電極を用いて行われる電気分解法においては、陽極面から発生する酸素による電解液中の有機性物質の酸化分解を防止するために、隔膜と呼ばれるイオン交換樹脂の膜で陽極室と陰極室とを隔離する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平1−297884号公報
陽極室と陰極室を隔離する方法として、例えば、図2(b)に示す電解装置30のように、ポリ塩化ビニル(PVC)などの樹脂製の箱(隔膜ボックス39)を用いて陽極32の隔離を行う手法がある。この手法では、隔膜ボックスの一部に開口窓を設け、当該開口窓に、隔膜材として機能するイオン交換膜39aを額縁のような構造で挟み込み固定している。このような箱型の隔膜室を用いて電気分解を行った場合、図2(b)に示すように、陽極表面に発生した酸素の微小な気泡が箱内に充満し、酸素の気泡で電流の流れを阻害し、めっき処理等の効率が低下することが問題となる。また、このような構成の電解装置においては、箱内に微小な気泡が充満することで陽極の抵抗値が上昇し、消費電力が増加するという欠点もある。さらに、このような構成の電解装置においては、電解槽内にさらに箱が設けられ、その内部に陽極が設けられるという構造となっているため、電解槽のサイズを箱の分だけ大きくしなければならないという欠点があった。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、電気分解に使用される電解槽内の有機性物質の酸化分解を抑制することのできる電解装置において、該電解装置の小型化を図ることのできる陽極(すなわち、不溶性金属電極)の構造を提供することを目的とする。
本発明にかかる不溶性金属電極は、上記の課題を解決するために、
チタン、タンタル、ニオブ、および、これらの合金のうちのいずれかから成る基体と、該基体上に積層された、白金族金属およびその酸化物の少なくとも何れかを含む陽極材層と、該陽極材層の表面に形成されたフッ素樹脂被膜と、を有することを特徴としている。
本発明の不溶性金属電極では、上記のように陽極材層の表面にフッ素樹脂の被膜が形成されている。このような構成を有することで、本発明の不溶性金属電極を電解装置の陽極として備えることによって、電解反応中に陽極表面から発生する酸素の微小な気泡の発生を抑え、比較的大粒の気泡として大気中に放出させることができる。したがって、本発明の不溶性金属電極を電解装置の陽極として使用することで、電解装置の電解槽内に拡散する酸素の量を減らすことができ、電解液中に溶解している有機物成分が酸化分解されることを抑制することができるという効果が得られる。
また、本発明の不溶性金属電極は、上記のように陽極材層の表面にフッ素樹脂被膜を形成することで微小な気泡の発生を抑えているため、電極から発生する酸素ガスを遮断するための隔膜ボックスなどを別部材として設ける必要がない。そのため、本発明の不溶性金属電極を電解装置の陽極に使用すれば、装置の小型化を図ることが可能となるとともに、装置の部品点数を減らすことも可能となるという効果が得られる。
本発明の不溶性金属電極において、前記フッ素樹脂被膜は、陽極材層の表面に形成された後、325℃〜400℃の温度で加熱されものであるフッ素樹脂被膜を325℃〜400℃の温度で加熱することにより、フッ素樹脂を一旦溶融させた後に被膜が形成される。これにより、フッ素樹脂を溶融させない場合と比較して、電極表面からの酸素の微小な気泡の発生をより抑えることができる。
発明の不溶性金属電極において、前記フッ素樹脂被膜は、0.1〜10μmの厚さを有していてもよい。
また、本発明にかかる不溶性金属電極の製造方法は、
チタン、タンタル、ニオブ、および、これらの合金のうちのいずれかから成る基体と、該基体上に積層された、白金族金属およびその酸化物の少なくとも何れかを含む陽極材層と、該陽極材層の表面に形成されたフッ素樹脂被膜と、を有する不溶性金属電極の製造方法であって、前記基体上に、前記陽極材層を積層し、該陽極材層の表面に前記フッ素樹脂被膜を形成する工程と、前記フッ素樹脂被膜を形成した後に、325℃〜400℃の温度で前記不溶性金属電極を加熱する工程と、を含むことを特徴と
本発明の製造方法では、フッ素樹脂被膜を325℃〜400℃の温度で加熱することにより、フッ素樹脂を一旦溶融させた後にフッ素樹脂被膜が形成される。これにより、フッ素樹脂を溶融させない場合と比較して、電極表面からの酸素の微小な気泡の発生をより抑えることができる不溶性金属電極を製造することができる。
また、本発明にかかる電解装置は、上述の何れかの構成を有する本発明の不溶性金属電極で形成された陽極と、陰極とを備えていることを特徴としている。
本発明の電解装置は、本発明の不溶性金属電極を陽極として備えることによって、電解反応中に陽極表面から発生する酸素の微小な気泡の発生を抑え、比較的大粒の気泡として大気中に放出させることができる。したがって、電解装置の電解槽内に拡散する酸素の量を減らすことができ、電解液中に溶解している有機物成分が酸化分解されることを抑制することができる。また、本発明の電解装置では、陽極の表面にフッ素樹脂被膜を形成することで微小な気泡の発生を抑えているため、隔膜ボックスを別部材として設ける必要がない。そのため、装置の小型化を図ることが可能となるとともに、装置の部品点数を減らすことも可能となる。
また、本発明にかかるめっき方法は、本発明の電解装置を使用して水溶性金属電気めっきを行うものである。本発明のめっき方法によれば、電解反応中に陽極表面から発生する酸素の微小な気泡の発生を抑えることができるため、めっき液中に含まれるめっきに必要な有機物成分の酸化分解を抑制しながらめっき被膜を形成することができる。
本発明によれば、不溶性金属電極から発生される酸素ガスで電解装置内の有機物成分が酸化分解されることを抑制しつつ、電解装置の小型化を実現することができる。
本発明の一実施形態の電解装置の構成を示す図である。 (a)は、従来型の電解装置の構成を示す図であり、(b)は、隔膜式の従来型の電解装置の構成を示す図である。 (a)は、本実施の形態の電解装置を使用してめっき処理(電解反応)を行った場合の気泡の発生状態を示す模式図であり、(b)は、図2(a)に示す従来型の電解装置を使用してめっき処理(電解反応)を行った場合の気泡の発生状態を示す模式図である。
以下に、本発明について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で任意に変形して実施することができる。
本実施の形態では、水溶性金属電気めっきなどの電気分解法において陽極電極として使用される不溶性金属電極、およびその製造方法について説明する。また、本実施の形態では、本実施の形態の不溶性金属電極を陽極として備え、めっき対象物を陰極として備える電解装置、この電解装置を使用して水溶性金属電気めっきを行うめっき方法について説明する。
(1)不溶性金属電極およびその製造方法
本実施の形態では、本発明の不溶性金属電極の一例として、図1に示す電解装置10内に陽極2として備えられた不溶性金属電極を挙げて説明する。図1に示す電解装置10は、電解槽1、陽極2、及び陰極3を備えている。また、電解槽1内は、電解液4で満たされている。
図1に示すように、陽極2(不溶性金属電極)は、基体5、基体5上に積層された陽極材層6、及び、陽極材層6の表面に形成されたフッ素樹脂被膜7を含んで構成されている。基体5の材料は、耐薬品性を有するものであれば特に限定はされないが、例えば、チタン、タンタル、ニオブ、および、これらの合金などの弁金属であることが好ましく、これらの中でもチタンがより好ましい。なお、ここで耐薬品性を有するとは、硫酸酸性水溶液などの化学薬品を含む電解液内に置かれた場合に、容易に酸化溶解するなどの化学変化を受け難い性質を有することを意味する。
陽極材層6は、電解液に対して安定に電流を供給できる陽極物質であり、白金族金属またはその酸化物で形成される。白金族金属としては、イリジウム、ルテニウム、白金、パラジウム、ロジウムなどが挙げられる。これらの中でも、酸化イリジウム、白金、酸化ルテニウムを使用することが好ましく、これらの金属または金属酸化物を陽極材層6に用いることによって、長期間にわたり安定に電解反応を行えるという効果が得られる。また、上記の例示した各種金属は、単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。基材5上に陽極材層6を形成する方法については、従来公知の方法を用いて行うことができる。
フッ素樹脂被膜7は、陽極2において陽極材層6が形成されている領域に該陽極材層6の表面を覆うように形成されている。フッ素樹脂被膜7の材料としては、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂に分類されるものであれば特に限定はされないが、例えば、テフロン(登録商標)を用いることができる。
フッ素樹脂被膜7の膜厚は、0.1μmから10μmの範囲内であることが好ましい。フッ素樹脂被膜7の膜厚が0.1μm未満となると、陽極から発生する酸素がフッ素樹脂被膜を通過してしまう可能性がある。また、フッ素樹脂被膜7の膜厚が10μmよりも大きくなると、電気抵抗が高くなってしまうため好ましくない。また、フッ素樹脂被膜7の膜厚が10μmよりも大きくなるのは、経済的な面からも好ましくない。
また、陽極材層6上にフッ素樹脂被膜7を形成する場合には、フッ素樹脂コーティング剤液に陽極材層6が形成された基材5を浸漬した後、乾燥させてフッ素樹脂被膜7を形成する。この浸漬と乾燥を繰り返し行って、フッ素樹脂被膜7を所望の膜厚に形成することができる。さらに、本実施の形態においては、フッ素樹脂被膜7を形成した後に、陽極2を電気大気炉中で325℃〜400℃の温度範囲で加熱することが好ましい。フッ素樹脂の融点は325℃であるため、このような加熱工程を行うことによって、フッ素樹脂被膜7は、一旦溶融された後に再び凝固されることになる。このようにしてフッ素樹脂を一旦溶融させた後に被膜の形成を行うことにより、フッ素樹脂を溶融させない場合と比較して、電気分解反応時に陽極2から発生する酸素の気泡をより大きなものとすることができ、微小な気泡の発生をより抑えることができる。したがって、電解槽4中に酸素が広く拡散することをより確実に抑えることが可能となる。また、フッ素樹脂被膜7の加熱温度を400℃以下とすれば、安定なフッ素樹脂被膜の層を得ることができるという効果が得られる。また、フッ素樹脂被膜の加熱温度を400℃よりも高くすると、フッ素樹脂被膜自体が燃焼してしまうため、フッ素樹脂被膜の効果が得られない。
但し、本発明の不溶性金属電極の作製する場合には、上記のような加熱工程は必ずしも含まれていなくてもよい。フッ素樹脂コーティング剤液中への浸漬と乾燥とを繰り返して形成されたフッ素樹脂被膜であっても、フッ素樹脂被膜が形成されていない場合と比較して微小な気泡の発生を抑えることができる。
(2)電解装置
続いて、図1を参照しながら本実施の形態の電解装置10について説明する。電解装置10は、水溶性金属電気めっきなどのめっき処理に使用される電解装置であり、本実施の形態の不溶性金属電極を陽極として備え、めっき対象物を陰極として備えている。すなわち、電解装置10は、図1に示すように、電解槽1、陽極2、及び陰極3を備えている。電解槽1内には、電解液4が入っている。陽極2の構成は、上記(1)で説明した通りである。電解槽1については、水溶性金属電気めっきなどのめっき処理に一般に使用される電解槽1を用いることができる。陰極3については、めっき対象となる部材(例えば、接点部品、プリント配線基板、ウエハなどの電子部品)を用いる。また、電解液4については、陰極3を構成するめっき対象となる部材にどのようなめっきを施すかによって、その組成は適宜変更される。例えば、めっき対象物に銅めっきを施す場合には、電解液4には硫酸銅めっき液が含まれる。また、電解液4中には、様々な有機物成分も含まれている。この有機物成分としては、例えば、光沢剤、レベリング剤、安定剤などの有機性薬剤が挙げられる。光沢剤は、めっき対象物の表面に形成されるめっき被膜の表面平滑性を保つために使用される。
ここで、比較のために従来型の電解装置の概略構成について、図2(a)および図2(b)を参照しながら説明する。
図2(a)には、従来型の電解装置20の構成を示す。電解装置20は、電解槽1、陽極22、および、陰極3を備えている。また、電解槽1内は、電解液4で満たされている。陽極22を除く各構成要素については、本実施形態の電解装置10とほぼ同様である。陽極22の構成は、陽極2とは異なっており、基体25上に陽極材層26が形成されており、該陽極材層26上にフッ素樹脂被膜は形成されておらず電解液4に露出している。
そのため、電解装置20を用いて水溶性金属電気めっきなどのめっき処理(電解反応)を行うと、図3(b)に示すように、陽極面から発生した酸素が微小な気泡の状態で電解液中に拡散する。そして、めっき処理を行う場合に電解液中に含まれる有機性物質は、陽極面から発生した酸素によって酸化分解されてしまう。この結果、電解液中に含まれる有機性物質の量は減少してしまう。したがって、電解装置20の構成では、めっき処理に必要とされる有機性物質の消耗量が増えてしまい、めっき処理のコストアップにつながる。
これに対して、本実施の形態の電解装置10では、陽極材層6上にフッ素樹脂被膜7が形成されて陽極材層6上を被覆している。これにより、微小な気泡は電解液4に放出されにくくなり、比較的大きな気泡となった状態で電解液4中に放出される。これは、陽極材層6の表面に発生した微小な気泡が、その上層に設けられたフッ素樹脂被膜7によって閉じ込められた状態となっているためであると考えられる。そして、比較的大きな気泡が電解液4に放出される際には、図1および図3(a)に示すように、放出後の早い段階で上昇し、液面から大気中へ放出される。したがって、電解液4中に酸素が広く拡散されることを抑えることができる。
また、図2(b)には隔膜式の従来型の電解装置30の構成を示す。電解装置30は、電解槽1、陽極32、及び、陰極3を備えている。また、電解槽1内は、電解液4で満たされている。これらの各構成要素については、従来型の電解装置20とほぼ同様である。但し、電解装置30内には隔膜ボックス39がさらに設けられており、陽極32は隔膜ボックス39の内部に配置されている。隔膜ボックス39の一部には開口部が設けられており、該開口部には隔膜材39aとして不織布が張られている。この構成によれば、陽極32の構成自体は、従来型の電解装置20と同じであるため、陽極32の表面には微小な気泡が発生し、それが電解液4中に拡散されることとなる。
しかし、電解装置30では、隔膜ボックス39内に陽極32が配置されていることで、陽極32表面に発生する微小な気泡を隔膜ボックス39内に閉じ込めることができ、陰極3側へ気泡が広く拡散することを抑えられる。但し、電解装置30では、電解槽1内にさらに隔膜ボックス39が設けられ、その内部に陽極32が設けられるという構造となっているため、電解槽1のサイズが大きくなってしまうという問題が生じる。また、電解装置10と比較して、隔膜ボックス39という部材を別途必要とするため、部品点数が増えてしまうという問題も生じる。
また、電解装置30の構成では、隔膜ボックス39内に酸素ガスを閉じ込めることは可能であるが、隔膜ボックス39内には多量の酸素ガスが充満することになる。したがって、隔膜ボックス39内では、充満した酸素の気泡で電流の流れが阻害され、電流値が不安定となってしまう可能性がる。
これに対して、本実施の形態の電解装置10では、陽極材層6上にフッ素樹脂被膜7が形成されて陽極材層6上を被覆するという比較的簡単な構成で、微小な気泡の発生を抑えることができる。すなわち、本実施の形態の電解装置10によれば、装置の大型化を抑えつつ、電解液4中への酸素の拡散を抑えることができる。さらに、陽極2の周辺に微小な酸素ガスが充満することもないため、電流値を安定化させることが可能となる。
(3)めっき方法
本発明のめっき方法は、本発明の電解装置を使用して、水溶性金属塩を含むめっき液中で水溶性金属電気めっきを行うという方法である。なお、本発明のめっき方法では、本発明の電解装置を使用して行うこと以外は従来公知のめっき方法を適用することができる。従来公知のめっき方法としては、例えば、特許文献1(特開平1−297884号公報)、特許文献2(特開2000−256898号公報)に記載のめっき方法が挙げられる。
本発明のめっき方法の一例としては、図1に示す電解装置10を使用して、電解液4として硫酸銅めっき液を使用して、めっき対象であるプリント配線基板を陰極3として、プリント配線基板に銅配線をめっき形成するというものが挙げられる。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例について説明する。
本実施例では、上述の実施形態での製造方法にしたがって不溶性金属電極を製造し、該不溶性金属電極を使用して電気分解を行い、酸素ガスの発生状況などを調査した。その結果について、以下に説明する。
〔実施例1〕
先ず、以下の手順で各種の不溶性金属電極(試料A,B、比較試料C)を作製した。
市販のチタニウム基体(縦150mm、横50mm、厚さ2mm)に、定法により、酸化イリジウムを20g/m2となるように塗布した後焼成を行うという工程を繰り返し行い、チタニウム基体に酸化イリジウムが陽極材層として積層された不溶性金属電極を作製した。この試料を、比較試料Cとした。
続いて、チタニウム基体に酸化イリジウム層が積層された比較試料Cの不溶性金属電極に対して、フッ素樹脂被膜をコーティングした。具体的には、以下の2つの方法によってフッ素樹脂被膜のコーティングを行った。
1つ目の方法では、比較試料Cの不溶性金属電極を、フッ素樹脂コーティング液(商品名「フロロサーフ」、株式会社フロロテクノロジー社製)に浸漬させた後乾燥するという工程を繰り返し行い、厚さ1μmとなるようにフッ素樹脂被膜を形成した。この方法で得られた試料を試料Aとした。
2つ目の方法では、上記の1つ目の方法と同じ方法で厚さ1μmのフッ素樹脂被膜が形成された不溶性金属電極を、電気大気炉中で350℃、20分間加熱した。この加熱工程によって、一旦フッ素樹脂被膜を溶融させた後、再び固化させて、表面にフッ素樹脂被膜が形成された不溶性金属電極を作製した。この方法で得られた試料を試料Bとした。
以上の手順で作製した試料A,B、および、比較試料Cを、上述の実施形態で説明した電解装置の陽極として使用し、陰極の被めっき品に対して銅めっきの処理を行った。電解液としては、市販の硫酸銅めっき液を使用し、さらに、硫酸銅めっき液に対して市販の有機光沢剤を添加した。本実施例では、硫酸銅めっき液中に添加した有機光沢剤の分解量(消耗量)の測定を行った。
以下の表1には、使用した硫酸銅めっき液の組成と、使用した有機光沢剤の添加量を示す。なお、有機光沢剤には、奥野製薬工業株式会社製のトップルチナHV(商品名)を用いた。
本実施例におけるめっき条件は、以下の通りである。
(めっき条件)
めっき浴槽(電解槽):ハーリングセル(1.5L)(山本鍍金試験器株式会社製)
電流密度(DA):0.9A/dm2
めっき時間:40分
液温度:25℃
攪拌:エアー攪拌2.0L/min.
また、有機光沢剤の消耗量の評価は、CVS分析(LAT法)により電解前後の有機光沢剤濃度(トップルチナHV−Bの濃度)を測定し、消耗量(分解量)を算出することにより行った。なお、各試料を使用しためっき処理において、電解前の電解液の組成を同じにするために、電解液(めっき液)の調製は一度に行った。
結果を以下の表2に示す。
硫酸銅めっき液中の有機光沢剤は、電気分解により発生した酸素ガスによって分解され減少する。有機光沢剤が分解されてめっき液中の濃度が減少すると、得られる銅めっき表面が平滑性を無くし、荒れた表面となるため、特にめっき対象物がプリント基板、接点部品などの場合には、商品価値がなくなってしまう。このため、所望とする平滑なめっき表面を得るためには、有機光沢剤の分解量に見合う量の有機光沢剤を補給添加することになる。有機光沢剤は高価であるため、その添加量が増加するとランニングコストの上昇につながる。したがって、有機光沢剤の消耗に伴う補給添加量が少ない程ランニングコストが安くなり、製品コストに大きな影響を与えることになる。
表2に示す本実施例の結果によれば、フッ素樹脂被膜が形成された試料A,Bは、フッ素樹脂被膜が形成されていない比較試料Cと比較して、有機光沢剤の消耗量(分解量)を低く抑えることができることが確認された。さらに、フッ素樹脂被膜を一旦加熱溶融させて形成した試料Bにおいては、有機光沢剤の消耗量をより一層低く抑えることができた。
試料Bと比較試料Cとの有機光沢剤の消耗量の比較では、比較試料Cの消耗量を100とすると、試料Bでは20〜25の消耗量であった。つまり、本発明によるフッ素樹脂被膜がコーティングされた不溶性金属電極によれば、従来の不溶性金属電極と比較して75〜80%の有機物成分の分解を抑えることができ、これらの有機物成分を有効に利用することが可能となるため、コストダウンにつながることがわかる。
また、本実施例では、各試料の電解処理を行う際に、電解中の陽極面からの酸素ガスの発生状況を観察した。その結果を表3に示す。
表3に示すように、フッ素樹脂被膜が形成された試料A,Bでは、フッ素樹脂被膜が形成されていない比較試料Cと比べてガスの発生量を低くすることができた。なお、図3(a)は、試料Bを使用した場合の酸素ガスの発生状況を模式的に表したものであり、図3(b)は、比較試料Cを使用した場合の酸素ガスの発生状況を模式的に表したものである。
図3(a)に示すように、フッ素樹脂被膜で覆った試料Bの電解においては、陽極から発生した酸素ガスは殆んどめっき浴中に浮遊することなく、真っ直ぐ液面に立ち上がることが確認された。比較試料Cでは、細かい気泡がめっき液中に分散しており、この液中に分散した発生初期の酸素によって有機化合物の分解が進行することが判る。
また、試料Aと試料Bとを比較すると、フッ素樹脂被膜を一旦加熱溶融させて形成した試料Bにおいては、試料Aと比較して酸素ガスの発生がより一層抑えられることが確認された。また、試料Aでは、フッ素樹脂被膜が形成されているものの熱処理が施されていないために、電解処理を開始するとフッ素樹脂被膜が剥がれ落ちることも確認された。
〔実施例2〕
上述の実施例1で作製した試料A,B、及び比較試料Cと同等の不溶性金属電極を用いて、白金族金属の代表である光沢パラジウムめっき液でめっき処理を行った。光沢パラジウムめっき液には、めっき液中に有機光沢剤を添加した。そして、めっき処理において、不溶性金属電極である陽極の表面から発生した酸素ガスによってめっき液中の有機光沢剤が消耗される度合いを調べた。具体的には、試料A,Bおよび比較試料Cをそれぞれ陽極とし、真鍮板を陰極として電解装置を構成し、真鍮板に対して厚さ3μmとなるようにパラジウムめっきを行って、真鍮板表面の光沢の度合いを目視によって観察した。光沢の度合いは、「全面光沢」「半光沢」「無光沢」という3つの程度に分類した。これらの各度合いの目安は、以下の通りである。
無光沢:濃度0g/Lの有機光沢剤でめっきを行った場合に相当する光沢度
半光沢:濃度5g/Lの有機光沢剤でめっきを行った場合に相当する光沢度
全光沢:濃度10g/Lの有機光沢剤でめっきを行った場合に相当する光沢度
本実施例では、パラジウムめっき液としてマテックス・ジャパン株式会社製の「PD−2」を使用した。また、有機光沢剤はピリジン−2−スルホニルアセトニトリル(C7622S)含有光沢剤を使用した。パラジウムめっき液の組成、および、めっき液に添加した有機光沢剤の濃度を表4に示す。
本実施例におけるめっき条件は、以下の通りである。
(めっき条件)
pH:7.5
液温度:50℃
陰極:真鍮板(縦40mm、横25mm、厚さ0.2mm、表面積約20cm2
攪拌装置:250rpmホッティングスターラー
陰極電流密度(DK):2A/dm2(3μm厚:6mimとした)
陽極電流密度(DA):1A/dm2
本実施例のめっきテスト中、めっき液中のパラジウム濃度が±2g/Lとなるように塩化パラジウムとアンモニア水で調整した。テストは全8回実施し、各テストにおいて、真鍮板に施されたパラジウムめっき厚が3μmになるまでを1サイクルとした。
上記のようなめっき条件でパラジウムめっきを行うと、初期の段階では「全面光沢」のパラジウムめっき品が得られるが、多くのサイクルを経るにしたがってめっき液中の有機光沢剤の濃度が低下するため、得られるパラジウムめっき品の光沢の度合いは、「全面光沢」から「半光沢」となり、最終的には「無光沢」となる。本実施例では、1回のテストにおいて、めっき処理で得られるパラジウムめっき品の表面が「無光沢」の状態になった時点を終点とした。そして、各テストにおいて終点に達するまでに行ったサイクルの回数を測定した。表5には、その結果を示す。
不溶性金属電極の表面にフッ素樹脂被膜をコーティングした試料A,Bでは、陽極面から発生する酸素ガスによるめっき液中の有機物の酸化分解を防ぐことができたため、比較試料Cの場合に比べてめっき液中の有機光沢剤の消耗量を減らすことができた。結果として、表5に示すように、サイクル数を増やすことが可能となった。さらに、フッ素樹脂被膜を加熱処理した試料Bでは、試料Aと比較してかなり多くのサイクルを実施してもめっき表面の光沢を維持することができた。
以上のように、本実施例の結果から、本発明のようなフッ素樹脂被膜のコーティングを施した不溶性金属電極を陽極としてめっき処理を行えば、陽極表面から発生する酸素ガスがめっき液中に拡散することを防止することができ、その結果、めっき液中に含まれる有機物成分である有機光沢剤の分解を抑制することができることが確認された。
1…電解槽、2…陽極(不溶性金属電極)、3…陰極、4…電解液、5…基体、6…陽極材層、7…フッ素樹脂被膜、10…電解装置

Claims (5)

  1. チタン、タンタル、ニオブ、および、これらの合金のうちのいずれかから成る基体と、
    該基体上に積層された、白金族金属およびその酸化物の少なくとも何れかを含む陽極材層と、
    該陽極材層の表面に形成されたフッ素樹脂被膜と、
    を有し、
    前記フッ素樹脂被膜は、前記陽極材層の表面に形成された後、325℃〜400℃の温度で加熱されたものであることを特徴とする不溶性金属電極。
  2. 前記フッ素樹脂被膜は、0.1〜10μmの厚さを有していることを特徴とする請求項1記載の不溶性金属電極。
  3. チタン、タンタル、ニオブ、および、これらの合金のうちのいずれかから成る基体と、
    該基体上に積層された、白金族金属およびその酸化物の少なくとも何れかを含む陽極材層と、
    該陽極材層の表面に形成されたフッ素樹脂被膜と、
    を有する不溶性金属電極の製造方法であって、
    前記基体上に、前記陽極材層を積層し、該陽極材層の表面に前記フッ素樹脂被膜を形成する工程と、
    前記フッ素樹脂被膜を形成した後に、325℃〜400℃の温度で前記不溶性金属電極を加熱する工程と、
    を含むことを特徴とする不溶性金属電極の製造方法。
  4. 請求項1又は2に記載の不溶性金属電極で形成された陽極と、陰極とを備えていることを特徴とする電解装置。
  5. 請求項に記載の電解装置を使用して水溶性金属電気めっきを行うことを特徴とするめっき方法。
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