以下に説明する、発明を実施するための形態(以下実施例と記す)に記載の熱式流量計は、被計測気体の流量計測において高い計測精度を維持できる。この点に付いては以下の実施例で詳述するが、その概要について次に説明する。
以下に記載の実施例では、熱式流量計は主通路を流れる被計測気体の一部を取り込んで流す副通路を備えている。前記副通路は入口と出口を備えており、前記入口と前記出口との間の副通路に被計測気体の流量を計測するための流量計測通路部が設けられ、前記流量計測通路部において流量計測回路と前記副通路内の被計測気体との間で熱伝達が行われることにより、前記主通路内の順方向および逆方向に流れる前記被計測気体の流量が計測される。
順方向に流れる前記被計測気体により前記出口の下流に渦が発生する。前記被計測気体の流れの方向が順方向から逆方向に切り替わったときに、前記出口の下流の前記渦が前記出口から前記副通路内に取り込まれると、前記流量計測通路部での計測に悪影響を及ぼし、計測精度が低下する。以下の実施例では、前記流量計測通路部から前記出口に繋がる出口側副通路の副通路軸の上に、前記渦の取り込みを抑制する渦流入抑制部を設ける。一方前記出口を前記出口側副通路の副通路軸から外れた位置に設け、前記出口の奥に流れを変えるためのガイド、例えば流れの方向を変えるための壁を設ける。前記出口から逆流する被計測気体が流れ込むと前記渦が逆流する被計測気体と共に前記出口から流れ込む。流れ込んだ前記渦が流れの方向を変えるガイド、例えば前記壁によりその進路が変えられて前記出口側副通路に入り込むため、前記渦が減衰し、前記渦が前記流量計測通路部での計測に及ぼす影響が大きく低減される。
以下の実施例では、前記出口から逆流する被計測気体が流れ込むと共に、逆流する被計測気体の動圧が前記出口の内部にまで作用し、逆流する被計測気体を多く副通路に取り込むことができ、高い精度で前記逆流する被計測気体の流量を計測することができる。
以下の実施例では、主通路を逆流する流れを横切る方向に前記出口の開口が形成されているので逆流する被計測気体を多く取り込むことができる。このため順方向に流れる被計測気体の流量だけでなく、逆方向に流れる被計測気体の流量も高い精度で計測できる。
以下に記載の実施例について以下で詳述するが、前記実施例は、実際の製品として望まれている色々な課題を解決している。特に車両の吸入空気量を計測する計測装置として以下の実施例の熱式流量計が使用される場合に、熱式流量計に望まれる色々な課題が考慮され、解決されている。また実施例の熱式流量計は色々な効果を奏している。下記実施例が解決している色々な課題の内の一つが、上述した発明が解決しようとする課題の欄に記載した内容であり、また下記実施例が奏する色々に効果の内の一つが、発明の効果の欄に記載された効果である。
下記実施例が解決している色々な課題について、さらに下記実施例により奏される色々な効果について、下記実施例の説明の中で述べる。従って下記実施例の中で述べる、実施例が解決している課題や効果には、発明が解決しようとする課題の欄や発明の効果の欄の内容以外の内容も含まれている。
以下の実施例で、同一の参照符号は、図番が異なっていても同様の構成を示しており、略同じ作用効果を成す。既に説明済みの構成について、図に参照符号のみを付し、説明を省略する場合がある。
1. 内燃機関制御システムに本発明に係る熱式流量計を使用した場合の一実施例
1.1 内燃機関制御システムの構成
図1は、電子燃料噴射方式の内燃機関制御システムに、本発明に係る熱式流量計を使用した一実施例を示すシステム図である。エンジンシリンダ112とエンジンピストン114を備える内燃機関110の動作に基づき、吸入空気が被計測気体30としてエアクリーナ122から吸入され、主通路124である例えば吸気ボディ、スロットルボディ126、吸気マニホールド128を介してエンジンシリンダ112の燃焼室に導かれる。前記燃焼室に導かれる吸入空気である被計測気体30の流量は本発明に係る熱式流量計300で計測され、計測された流量に基づいて燃料噴射弁152より燃料が供給され、吸入空気である被計測気体30と共に混合気の状態で燃焼室に導かれる。なお、本実施例では、燃料噴射弁152は内燃機関の吸気ポートに設けられ、吸気ポートに噴射された燃料が吸入空気である被計測気体30と共に混合気を成形し、吸入弁116を介して燃焼室に導かれ、燃焼して機械エネルギを発生する。
近年、多くの車では排気浄化や燃費向上に優れた方式として、内燃機関のシリンダヘッドに燃料噴射弁152を取り付け、燃料噴射弁152から各燃焼室に燃料を直接噴射する方式が採用されている。熱式流量計300は、図1に示す内燃機関の吸気ポートに燃料を噴射する方式だけでなく、各燃焼室に燃料を直接噴射する方式にも同様に使用できる。両方式とも熱式流量計300の使用方法を含めた制御パラメータの計測方法および燃料供給量や点火時期を含めた内燃機関の制御方法の基本概念は略同じであり、両方式の代表例として吸気ポートに燃料を噴射する方式を図1に示す。
燃焼室に導かれた燃料および空気は、燃料と空気の混合状態を成しており、点火プラグ154の火花放電により着火され、爆発的に燃焼し、機械エネルギを発生する。燃焼後の気体は排気弁118から排気管に導かれ、排気ガス24として排気管から車外に排出される。前記燃焼室に導かれる吸入空気である被計測気体30の流量は、アクセルペダルの操作に基づいてその開度が変化するスロットルバルブ132により制御される。前記燃焼室に導かれる吸入空気の流量に基づいて燃料供給量が制御され、運転者はスロットルバルブ132の開度を制御して前記燃焼室に導かれる吸入空気の流量を制御することにより、内燃機関が発生する機械エネルギを制御することができる。
1.2 内燃機関制御システムの制御の概要と熱式流量計300の働き
エアクリーナ122から取り込まれ主通路124を流れる吸入空気である被計測気体30の流量および温度が、熱式流量計300により計測され、熱式流量計300から吸入空気の流量および温度を表す電気信号が制御装置200に入力される。また、スロットルバルブ132の開度を計測するスロットル角度センサ144の出力が制御装置200に入力され、さらに内燃機関のエンジンピストン114や吸入弁116や排気弁118の位置や状態、さらに内燃機関の回転速度を計測するために、回転角度センサ146の出力が、制御装置200に入力される。前記内燃機関の排気管には排気ガス24の状態から燃料量と空気量との混合比の状態を計測するための酸素センサ148が設けられ、酸素センサ148の出力が制御装置200に入力される。
被計測気体30として記載する前記内燃機関へ導かれる吸入空気は、熱式流量計300により計測される。前記内燃機関はアイドル運転状態から高速回転状態まで運転状態が広範囲に変化する。特定の運転状態で、前記内燃機関へ導かれる被計測気体30は脈動し、さらに逆流が発生する。この被計測気体30の脈流や逆流は前記内燃機関のエンジンピストン114や吸入弁116などの動作に起因すると考えられる。前記内燃機関へ導かれる被計測気体30が逆流する運転領域で前記内燃機関へ導かれる被計測気体30の流量を正確に求めるには、順方向に流れる被計測気体30の流量を計測するだけでなく、前記内燃機関側からエアクリーナ122の方に向かって流れる逆流する流量をも正確に計測することが望ましい。例えば順方向に流れる被計測気体30の流量の合計から逆流する被計測気体30の流量の合計を減算する考え方により、実際に前記内燃機関に供給された被計測気体30の流量の合計を求めることができる。この実際に前記内燃機関に供給された被計測気体30の合計流量に基づいて、燃料供給量や点火時期を制御することができる。
制御装置200は、熱式流量計300の出力である吸入空気の流量、および回転角度センサ146の出力に基づき計測された内燃機関の回転速度、に基づいて燃料噴射量や点火時期を演算する。これら演算結果に基づいて、燃料噴射弁152から供給される燃料量、また点火プラグ154により点火される点火時期が制御される。燃料供給量や点火時期は、実際にはさらに熱式流量計300で計測される吸気温度やスロットル角度の変化状態、エンジン回転速度の変化状態、酸素センサ148で計測された空燃比の状態に基づいて、きめ細かく制御される。制御装置200はさらに内燃機関のアイドル運転状態において、スロットルバルブ132をバイパスする空気量をアイドルエアコントロールバルブ156により制御し、アイドル運転状態での内燃機関の回転速度を制御する。
1.3 熱式流量計の搭載環境と計測精度の向上
内燃機関の主要な制御量である燃料供給量や点火時期はいずれも熱式流量計300の出力を主パラメータとして定められる。また必要に応じて吸入空気の温度に基づいて制御パラメータの補正などが行われ、あるいは前記内燃機関に供給される燃料供給量や点火時期の補正が行われる。熱式流量計300の計測精度の向上や経時変化の抑制、信頼性の向上が、前記内燃機関を搭載する車両の制御精度の向上や信頼性の確保においてたいへん重要である。特に近年、車両の省燃費に関する要望が非常に高く、また排気ガス浄化に関する要望が非常に高い。これらの要望に応えるには熱式流量計300により計測される吸入空気である被計測気体30の流量の計測精度を向上させることが極めて重要である。また熱式流量計300が高い信頼性を維持していることも大切である。
車両用の内燃機関はその運転領域が広く、特定の運転領域で前記内燃機関に導かれる吸入空気である被計測気体30が大きく脈動し、さらに被計測気体30の逆流現象が発生する。被計測気体30の流量を正確に計測するためには、使用される熱式流量計300が被計測気体30の順方向の流れの流量だけでなく、被計測気体30が逆流する状態の流量も正確に計測できることが望ましい。以下の実施例の流量計測回路は、被計測気体30を加熱する発熱体に対して被計測気体30の流れにおける両側に感熱素子として作用する抵抗を配置している。従って前記流量計測回路は順方向に流れる被計測気体30の流量も逆流する被計測気体30の流量も計測できる。
さらに逆流する被計測気体30の流量の計測精度を向上するために、計測誤差の原因となる熱式流量計300の下流側に発生する渦の影響を低減する構造を備えている。これらの構造及び作用について以下に詳述する。
車に搭載される熱式流量計300は内燃機関からの発熱の影響を受ける吸気管である主通路124を流れる被計測気体30の流量を計測するために、前記吸気管に装着される。このため内燃機関の発熱が主通路124である吸気管を介して、熱式流量計300に伝わる。熱式流量計300は、被計測気体と熱伝達を行うことにより被計測気体の流量を計測する方式であり、外部からの熱の影響をできるだけ抑制することが重要である。以下に記載の実施例では、吸気管である主通路124からの熱の影響を低減できる構造を有している。これについては以下で説明する。
車に搭載される熱式流量計300は、以下で説明するように、単に発明が解決しようとする課題の欄に記載された課題を解決し、発明の効果の欄に記載された効果を奏するのみでなく、以下で説明するように、上述した色々な課題を十分に考慮し、製品として求められている色々な課題を解決し、色々な効果を奏している。熱式流量計300が解決する具体的な課題や奏する具体的な効果は、以下の実施例の記載の中で説明する。
2. 熱式流量計300の構成
2.1 熱式流量計300の外観構造
図2および図3、図4は、熱式流量計300の外観を示す図であり、図2(A)は熱式流量計300の左側面図、図2(B)は正面図、図3(A)は右側面図、図3(B)は背面図、図4(A)は平面図、図4(B)は底面図である。熱式流量計300はケース301を有し、ケース301はハウジング302と表カバー303と裏カバー304とを備えている。ハウジング302は、熱式流量計300を主通路124である吸気ボディに固定するためのフランジ312と、外部機器との電気的な接続を行うための外部端子306を有する外部接続部305と、流量等を計測するための計測部310を備えている。計測部310の内部には、副通路を作るための副通路溝が設けられており、さらに計測部310の内部には、主通路124を流れる被計測気体30の流量を計測するための流量検出部602(図20参照)や主通路124を流れる被計測気体30の温度を計測するための温度検出部452を備える回路パッケージ400が設けられている。これらについては後述する。
熱式流量計300はフランジ312を挟んで一方側に前記外部接続部305を有しており、他方側に計測部310を有している。計測部310は略長方形の形状をしており、計測部310においてフランジ312の反対側である、計測部310の先端側に被計測気体30を取り込むための入口350や取り込んだ被計測気体30を排出する出口352が設けられている。
図2(B)の正面図に記載の熱式流量計300の表面や図3(B)の背面図に記載の熱式流量計300の裏面は略平らな形状を成し、熱式流量計300の前記表面と前記裏面との間である、前記熱式流量計300の厚みは図2(A)や図3(A)に記載のように薄く作られている。このため主通路124である吸気管に形成された孔は長四角の形状となる。熱式流量計300の計測部310の部分が吸気管に設けられた前記孔から挿入され、フランジ312により前記吸気管に固定される。熱式流量計300の計測部310の前記表面や前記裏面が吸気管である主通路124の被計測気体30の流れに沿うように置かれることにより、熱式流量計300の前記厚みが薄いので、流体抵抗を小さくできる効果がある。
2.2 熱式流量計300の外観構造とそれに基づく効果
図1および図2、図3において、主通路124を流れる被計測気体30の一部を取り込むための熱式流量計300の副通路の入口350が、フランジ312から主通路124の中心方向に向かって延びる計測部310の先端側に設けられている。このため、主通路124の内壁面近傍ではなく、内壁面から離れた中央部に近い部分の被計測気体30を前記副通路に取り込むことができる。このため熱式流量計300は主通路124の内壁面から離れた部分の被計測気体30の流量や温度を測定することができ、熱などの影響による計測精度の低下を抑制できる。主通路124の内壁面近傍では、主通路124の温度の影響を受け易く、気体の本来の温度に対して被計測気体30の温度が異なる状態となり、主通路124内を流れる被計測気体30の平均的な状態と異なることになる。特に主通路124がエンジンの吸気ボディである場合は、エンジンからの熱の影響を受け、高温に維持されていることが多い。このため主通路124の内壁面近傍の気体は、主通路124の本来の気温に対して高いことが多い。主通路124の内壁面近傍の気体を計測することは、主通路124の平均的な状態の気体とは異なる気体の流量や温度を計測することとなり、計測精度を低下させる要因となる。
主通路124の内壁面近傍では流体抵抗が大きく、主通路124の平均的な流速に比べ、流速が低くなる。このため主通路124の内壁面近傍の気体を被計測気体30として副通路に取り込むと、主通路124の平均的な流速に対し流速の遅い被計測気体30を平均的な気体として計測することとなり、このことが計測誤差の要因となる恐れがある。図2乃至図4に示す熱式流量計300では、フランジ312から主通路124の中央に向かって延びる薄くて長い計測部310の先端部に入口350が設けられているので、内壁面近傍の流速が低下した被計測気体30を取り込むことにより生じる計測誤差を低減できる。また、図2乃至図4に示す熱式流量計300では、フランジ312から主通路124の中央に向かって延びる計測部310の先端部に入口350が設けられているだけでなく、副通路の出口も計測部310の先端部に設けられているので、さらに計測誤差を低減することができる。
熱式流量計300の計測部310はフランジ312から主通路124の中心方向に向かって長く延びる形状を成し、その先端部には吸入空気などの被計測気体30の一部を副通路に取り込むための入口350と副通路から被計測気体30を主通路124に戻すための出口352が設けられている。計測部310は主通路124の外壁から中央に向かう軸に沿って長く延びる形状を成しているが、幅は、図2(A)や図3(A)に記載の如く、狭い形状を成している。すなわち熱式流量計300の計測部310は、側面の幅が薄く正面が略長方形の形状を成している。これにより、熱式流量計300は十分な長さの副通路を備えることができ、被計測気体30に対しては流体抵抗を小さい値に抑えることができる。実施例に記載の熱式流量計300は、流体抵抗を小さい値に抑えられると共に高い精度で被計測気体30の流量を計測することが可能である。
2.3 計測部310の構造とそれに基づく効果
主通路124を流れる被計測気体30の流れの方向において、熱式流量計300を構成する計測部310の上流側側面と下流側側面にそれぞれ上流側突起317と下流側突起318とが設けられている。上流側突起317と下流側突起318は根元に対して先端に行くに従い細くなる形状を成しており、主通路124内を流れる被計測気体30の流体抵抗を低減できる。熱絶縁部315と入口343との間に上流側突起317が設けられている。上流側突起317は断面積が大きく、フランジ312あるいは熱絶縁部315からの熱伝導が大きいが、入口343の手前で上流側突起317が途切れており、さらに上流側突起317の温度検出部452側から温度検出部452への距離が、後述するようにハウジング302の上流側外壁の窪みにより、長くなる形状を成している。このため温度検出部452の支え部分への熱絶縁部315からの熱伝導が抑制される。高い計測精度を維持するのに貢献している。
被計測気体30の温度を計測するために、被計測気体30の一部が入口343から取り込まれ、取り込まれた被計測気体30は、温度検出部452でその温度が計測され、後述するハウジング302の外壁窪み部366(図5参照)により生じた測温用流路を流れ、表側出口344あるいは裏側出口345から主通路124に排出される。前記冷却通路溝により、温度検出部452を有する突出部424(図11参照)に沿って、入口343から導入された被計測気体30を導くため、温度検出部452だけでなく突出部424を被計測気体30の温度に近づける作用をする。このため他の発熱部分から突出部424に伝達されてくる熱の影響を低減でき、被計測気体30の温度計測精度の向上に繋がる。
またフランジ312あるいは熱絶縁部315と温度検出部452との間に、後述する端子接続部320および端子接続部320を含む空隙382が作られている。このためフランジ312あるいは熱絶縁部315と温度検出部452との間が長くなっており、この長い部分に表カバー303や裏カバー304が設けられ、この部分が冷却面として作用している。従って主通路124の壁面の温度が温度検出部452に及ぼす影響を低減できる。またフランジ312あるいは熱絶縁部315と温度検出部452との間が長くなることにより、副通路に導く被計測気体30の取り込み部分を主通路124の中央に近づけることができる。主通路124の壁面に関係する計測精度の低下を抑制できる。
図2(B)や図3(B)に示すように、主通路124内に挿入される計測部310は、その両側面が大変狭く、さらに下流側突起318や上流側突起317が空気抵抗を低減する根元に対して先端が狭い形状を成している。このため、熱式流量計300を主通路124に挿入したことによる流体抵抗の増大を抑制できる。また下流側突起318や上流側突起317が設けられている部分では、表カバー303や裏カバー304の両側部より、上流側突起317や下流側突起318が両サイドに突出する形状をしている。上流側突起317や下流側突起318は樹脂モールドで作られるので、空気抵抗の少ない形状に成形し易く、一方表カバー303や裏カバー304は広い冷却面を備える形状を成している。このため熱式流量計300は、空気抵抗が低減され、さらに主通路124を流れる被計測気体により冷却されやすい効果を有している。
2.4 フランジ312の構造と効果
フランジ312には、その下面である主通路124と対向する部分に、窪み314が複数個設けられており、主通路124との間の熱伝達面を低減し、熱式流量計300が熱の影響を受け難くしている。フランジ312のねじ孔313は熱式流量計300を主通路124に固定するためのもので、これらのねじ孔313の周囲の主通路124に対向する面が主通路124から遠ざけられるように、各ねじ孔313の周囲の主通路124に対向する面と主通路124との間に空間が成形されている。このようにすることで、熱式流量計300に対する主通路124からの熱伝達を低減し、熱による測定精度の低下を防止できる構造をしている。さらにまた前記窪み314は、熱伝導の低減効果だけでなく、ハウジング302の成形時にフランジ312を構成する樹脂の収縮の影響を低減する作用をしている。
フランジ312の計測部310側に熱絶縁部315が設けられている。熱式流量計300の計測部310は、主通路124に設けられた取り付け孔から内部に挿入され、熱絶縁部315は主通路124の前記取り付け孔の内面に対向する。主通路124は例えば吸気ボディであり、主通路124が高温に維持されていることが多い。逆に寒冷地での始動時には、主通路124が極めて低い温度であることが考えられる。このような主通路124の高温あるいは低温の状態が温度検出部452や後述する流量計測に影響を及ぼすと、計測精度が低下する。このため主通路124の孔内面と接触する熱絶縁部315には、窪み316が複数個並べて設けられており、近接する窪み316間の前記は孔内面と近接する熱絶縁部315の幅は極めて薄く、窪み316の流体の流れ方向の幅の3分の1以下である。これにより温度の影響を低減できる。また熱絶縁部315の部分は樹脂が厚くなる。ハウジング302の樹脂モールド時に、樹脂が高温状態から低温に冷えて硬化する際に体積収縮が生じ、応力の発生による歪が生じる。熱絶縁部315に窪み316を成形することで体積収縮をより均一化でき、応力集中を低減できる。
熱式流量計300の計測部310は、主通路124に設けられた取り付け孔から内部に挿入され、熱式流量計300のフランジ312によりねじで主通路124に固定される。主通路124に設けられた取り付け孔に対して所定の位置関係で熱式流量計300が固定されることが望ましい。フランジ312に設けた窪み314を、主通路124と熱式流量計300との位置決めに使用できる。主通路124に凸部を成形することで、前記凸部と窪み314とが嵌め込みの関係を有する形状とすることが可能となり、熱式流量計300を正確な位置で主通路124に固定できる。
2.5 外部接続部305およびフランジ312の構造と効果
図4(A)は熱式流量計300の平面図である。外部接続部305の内部に4本の外部端子306と補正用端子307が設けられている。外部端子306は熱式流量計300の計測結果である流量と温度を出力するための端子および熱式流量計300が動作するための直流電力を供給するための電源端子である。補正用端子307は生産された熱式流量計300の計測を行い、それぞれの熱式流量計300に関する補正値を求めて、熱式流量計300内部のメモリに補正値を記憶するのに使用する端子であり、その後の熱式流量計300の計測動作では上述のメモリに記憶された補正値を表す補正データが使用され、この補正用端子307は使用されない。従って外部端子306が他の外部機器との接続において、補正用端子307が邪魔にならないように、補正用端子307は外部端子306とは異なる形状をしている。この実施例では外部端子306より補正用端子307が短い形状をしており、外部端子306に接続される外部機器への接続端子が外部接続部305に挿入されても、接続の障害にならないようになっている。また外部接続部305の内部には外部端子306に沿って複数個の窪み308が設けられており、これら窪み308は、フランジ312の材料である樹脂が冷えて固まる時の樹脂の収縮による応力集中を低減するためのものである。
熱式流量計300の計測動作中に使用する外部端子306に加えて、補正用端子307を設けることで、熱式流量計300の出荷前にそれぞれについて特性を計測し、製品のばらつきを計測し、ばらつきを低減するための補正値を熱式流量計300内部のメモリに記憶することが可能となる。上記補正値の設定工程の後、補正用端子307が外部端子306と外部機器との接続の邪魔にならないように、補正用端子307は外部端子306とは異なる形状に作られている。このようにして熱式流量計300はその出荷前にそれぞれについてのばらつきを低減でき、計測精度の向上を図ることができる。
2.6 熱式流量計300の出口352の構造とその効果
図2(A)及び図2(B)において、入口350から主通路124を流れる被計測気体30の一部が取り込まれ、計測部310で取り込まれた被計測気体30の流速が計測され、これに基づいて主通路124を流れる被計測気体30の流量が計測され、図4(A)に示す外部端子306から流量を表す電気信号が出力される。前記取り込まれた被計測気体30は図3(A)や図3(B)に示す出口352から主通路124に排出される。熱式流量計300は流体抵抗を少なくするために図2(A)や図3(A)に示す如く、表カバー303と裏カバー304の間の長さである幅が薄く作られている。また下流側突起318が設けられており、熱式流量計300の下流側での渦の発生が低減されているが、それでも熱式流量計300の表カバー303や裏カバー304に沿って流れる主通路124の被計測気体30により、出口352の下流側に渦が発生する。
主通路124を流れる被計測気体30の逆流状態での流量を正確に計測するためには、逆流が発生した場合に、逆流する被計測気体30の一部を出口352から副通路内に取り込み、計測部310で流量を計測し、計測された後、被計測気体30を入口350から主通路124内に排出する。すなわち順方向状態の被計測気体30の熱式流量計300内での流れと逆の流れを作り、逆流する被計測気体30の流量を計測する。
以下で図11を使用して説明するが、被計測気体30が主通路124内を順方向に流れている状態で、出口352の下流側に発生する渦を、被計測気体30が主通路124内を逆流した状態で、副通路内に取り込むと、取り込まれた渦により計測誤差が生じる。取り込まれた渦が副通路内に入り込むのを防止するために、副通路の出口側に対向する位置に、図3(A)に示す渦導入抑制部4214として設けられている。この実施例では渦流入抑制部4214は、副通路の出口側に対向する位置に設けられ、副通路の流路軸上に出口開口が生じないように、副通路の流路軸を塞ぐ位置に設けられた板である。この板が渦の副通路への浸入を阻止する構造となっている。一方逆流する被計測気体30をできるだけ多く取り込むことが計測精度の向上に繋がるので、入口側副通路の下流側に出口開口4222を設け、出口開口4222から逆流する被計測気体30を取り込む構造としている。出口開口4222から取り込まれた被計測気体30に前記計測誤差の原因となる渦が加わっているので、出口開口4222から取り込まれた被計測気体30をそのまま副通路に導くのではなく、以下で図10により再度説明するが、取り込まれた被計測気体30を先ず出口側室4216に導き、出口側室4216の奥に設けた、被計測気体30の進路方向を変えるためのガイドにより、導入された被計測気体30の進路を変える。この実施例では前記ガイドは裏カバー304に設けられた突起3042である。導入された被計測気体30の進路を突起3042によって変えることにより、被計測気体30と共に入り込んだ渦を急激に減衰することができる。これにより流量計測への渦による悪影響を低減できる。より具体的には図10を用いて以下で説明する。
3. ハウジング302の全体構造とその効果
3.1 副通路と流量検出部の構造とその効果
熱式流量計300から表カバー303および裏カバー304を取り外したハウジング302の状態を図5および図6に示す。図5(A)はハウジング302の左側面図であり、図5(B)はハウジング302の正面図であり、図6(A)はハウジング302の右側面図であり、図6(B)はハウジング302の背面図である。ハウジング302はフランジ312から計測部310が主通路124の中心方向に延びる構造を成しており、その先端側に副通路を成形するための副通路溝が設けられている。この実施例ではハウジング302の表裏両面に副通路溝が設けられており、図5(B)に表側副通路溝332を示し、図6(B)に裏側副通路溝334を示す。副通路の入口350を成形するための入口溝351と出口352を成形するための出口溝353が、ハウジング302の先端部に設けられているので、主通路124の内壁面から離れた部分の気体を、言い換えると主通路124の中央部分に近い部分を流れている気体を被計測気体30として入口350から取り込むことができる。主通路124の内壁面近傍を流れる気体は、主通路124の壁面温度の影響を受け、被計測気体30などの主通路124を流れる気体の平均温度と異なる温度を有することが多い。また主通路124の内壁面近傍を流れる気体は、主通路124を流れる気体の平均流速より遅い流速を示すことが多い。実施例の熱式流量計300ではこのような影響を受け難いので、計測精度の低下を抑制できる。
上述した表側副通路溝332や裏側副通路溝334で作られる副通路は外壁窪み部366や上流側外壁335や下流側外壁336によりフランジ312の熱絶縁部315に繋がっている。また上流側外壁335には上流側突起317が設けられ、下流側外壁336には下流側突起318が設けられている。このような構造により、フランジ312で熱式流量計300が主通路124に固定されることにより、回路パッケージ400を有する計測部310が高い信頼性を持って主通路124に固定される。
この実施例ではハウジング302に副通路を成形するための副通路溝を設けており、カバーをハウジング302の表面および裏面にかぶせることにより、副通路溝とカバーとにより副通路が完成する構成としている。このような構造とすることで、ハウジング302の樹脂モールド工程でハウジング302の一部としてすべての副通路溝を成形することができる。またハウジング302の成形時にハウジング302の両面に金型が設けられるので、この両方の金型を使用することにより、表側副通路溝332と裏側副通路溝334の両方をハウジング302の一部として全て成形することが可能となる。ハウジング302の両面に表カバー303と裏カバー304を設けることでハウジング302の両面の副通路を完成させることができる。金型を利用してハウジング302の両面に表側副通路溝332と裏側副通路溝334を成形することで高い精度で副通路を成形できる。また高い生産性が得られる。
図2および図3、さらに図5および図6から分かるように、ハウジング302の表側および裏側から表側方向および裏側方向に突出している上流側外壁335や下流側外壁336、さらにこれら上流側外壁335や下流側外壁336の熱絶縁部315に沿ったつながり部分、裏側副通路内周壁391や裏側副通路外周壁392、表側副通路内周壁393や表側副通路外周壁394の頂上部分が表カバー303あるいは裏カバー304と密着しており、ハウジング302と表カバー303あるいは裏カバー304とで密閉された空間および副通路が形成されている。
前記密閉された空間には以下で詳述する如く回路パッケージ400が設けられると共に、空隙382が形成されている。前記ハウジング302と表カバー303あるいは裏カバー304との接着は、レーザ溶着等で行われる。ただし、前記ハウジング302と表カバー303あるいは裏カバー304とで完全に密閉すると温度変化による気体の膨張などが問題となるため、密閉はするが呼吸できる構造を備えている。前記呼吸できる構造を介して密閉空間内の温度変化に基づく外部との差圧の増大を低減している。
図6(B)において主通路124を流れる被計測気体30の一部が入口350を成形する入口溝351から裏側副通路溝334内に取り込まれ、裏側副通路溝334内を流れる。裏側副通路溝334は進むにつれて深くなる形状をしており、溝に沿って流れるにつれ表側の方向に被計測気体30は徐々に移動する。特に裏側副通路溝334は孔342の手前で急激に深くなる急傾斜部347が設けられていて、質量の小さい空気の一部は急傾斜部347に沿って移動し、孔342から図5(B)に記載の計測用流路面430の方を流れる。一方質量の大きい異物は急激な進路変更が困難なため、図6(B)に示す計測用流路面裏面431の方を移動する。その後孔341を通り、図5(B)に記載の計測用流路面430の方を流れる。
図5(B)に記載の表側副通路溝332において、上述の孔342から表側副通路溝332側に移動した被計測気体30である空気は、計測用流路面430に沿って流れ、計測用流路面430に設けられた熱伝達面露出部436を介して流量を計測するための流量検出部602との間で熱伝達が行われ、流量の計測が行われる。計測用流路面430を通過した被計測気体30や孔341から表側副通路溝332に流れてきた空気は共に表側副通路溝332に沿って流れ、出口352を成形するための出口溝353から主通路124に排出される。
被計測気体30に混入しているごみなどの質量の大きい物質は慣性力が大きく、溝の深さが急激に深まる図6(B)に示す、急傾斜部347の部分の表面に沿って、溝の深い方向に急激に進路を変えることが困難である。このため質量の大きい異物は計測用流路面裏面431の方を移動し、異物が熱伝達面露出部436の近くを通るのを抑制できる。この実施例では気体以外の質量の大きい異物の多くが、計測用流路面430の背面である計測用流路面裏面431を通過するように構成しているので、油分やカーボン、ごみなどの異物による汚れの影響を低減でき、計測精度の低下を抑制できる。すなわち主通路124の流れの軸を横切る軸に沿って被計測気体30の進路を急に変化させる形状を有しているので、被計測気体30に混入する異物の影響を低減できる。
この実施例では、裏側副通路溝334で構成される流路は曲線を描きながらハウジング302の先端部からフランジ方向に向かい、最もフランジ側の位置では副通路を流れる気体は主通路124の流れに対して逆方向の流れとなり、この逆方向の流れの部分で一方側である裏面側の副通路が、他方側である表面側に成形された副通路につながる。このようにすることで、回路パッケージ400の熱伝達面露出部436の副通路への固定が容易となり、さらに被計測気体30を主通路124の中央部に近い位置で取り込むことが容易となる。
この実施例では、流量を計測するための計測用流路面430の流れ方向における前後に裏側副通路溝334と表側副通路溝332とに貫通する孔342と孔341が設けられている。この貫通する孔342と孔341を設けてハウジング302の一方面に成形した裏側副通路溝334からハウジング302の他方の面に成形した表側副通路溝332へ被計測気体30が移動する形状で副通路を成形している。このようにすることで、1回の樹脂モールド工程でハウジング302の両面に副通路溝を成形でき、また両面を繋ぐ構造を合わせて成形することが可能となる。
また回路パッケージ400に成形された計測用流路面430の両側に孔342と孔341を設けることで、これらに孔342と孔341を成形する金型を利用して、計測用流路面430に成形された熱伝達面露出部436への樹脂の流れ込みを防ぐことができる。また計測用流路面430の上流側と下流側の孔342や孔341の成形を利用し、回路パッケージ400をハウジング302に樹脂モールドにより固定するときに、これらの孔を利用して金型を配置し、この金型により回路パッケージ400を位置決めし固定することができる。
この実施例では、裏側副通路溝334と表側副通路溝332とに貫通する孔として二つの孔、孔342と孔341が設けられている。しかし、孔342と孔341からなる二つの孔を設けなくても、どちらか一方の孔で、裏側副通路溝334と表側副通路溝332とをつなぐ副通路形状を一つの樹脂モールド工程で成形することが可能である。
なお、裏側副通路溝334の両側には裏側副通路内周壁391と裏側副通路外周壁392が設けられ、これら裏側副通路内周壁391と裏側副通路外周壁392のそれぞれの高さ方向の先端部と裏カバー304の内側面とが密着することで、ハウジング302の裏側副通路が成形される。また表側副通路溝332の両側には表側副通路内周壁393と表側副通路外周壁394が設けられ、これら表側副通路内周壁393と表側副通路外周壁394の高さ方向の先端部と裏カバー304の内側面とが密着することで、ハウジング302の表側副通路が成形される。
この実施例では、計測用流路面430とその背面の両方に分かれて被計測気体30が流れ、一方側に流量を計測する熱伝達面露出部436を設けているが、被計測気体30を二つの通路に分けるのではなく、計測用流路面430の面側のみを通過するようにしても良い。主通路124の流れ方向の第1軸に対してこれを横切る方向の第2軸に沿うように副通路を曲げることにより、被計測気体30に混入する異物を、第2軸の曲りの小さい片側に寄せることができ、第2軸の曲りの大きい方に計測用流路面430および熱伝達面露出部436を設けることにより、異物の影響を低減できる。
またこの実施例では表側副通路溝332と裏側副通路溝334の繋ぎの部分に計測用流路面430および熱伝達面露出部436を設けている。しかし表側副通路溝332と裏側副通路溝334の繋ぎの部分ではなく、表側副通路溝332にあるいは、裏側副通路溝334に設けても良い。
計測用流路面430に設けられた流量を計測するための熱伝達面露出部436の部分に絞り形状が成形されており、この絞り効果により流速が早くなり、計測精度が向上する。また仮に熱伝達面露出部436の上流側で気体の流れに渦が発生していたとしても上記絞りにより渦を消滅あるいは低減でき、計測精度が向上する。
図5および図6で、上流側外壁335が温度検出部452の根元部で下流側に窪む形状を成す、外壁窪み部366を備えている。この外壁窪み部366により、温度検出部452と外壁窪み部366との間の距離が長くなり、上流側外壁335を介して伝わってくる熱の影響を低減できる。
温度検出部452の根元部に外壁窪み部366が設けられ、これによりフランジ312あるいは熱絶縁部315から上流側外壁335を介して伝わってくる熱の影響を低減できる。さらに上流側突起317と温度検出部452との間の切欠きにより成形された測温用の外壁窪み部366が設けられている。この外壁窪み部366により上流側突起317を介して温度検出部452にもたらされる熱の伝わりを低減できる。これにより温度検出部452の検出精度が向上する。特に上流側突起317はその断面積が大きいので熱が伝わり易く、熱の伝わりを阻止する作用をする外壁窪み部366の働きは重要である。
3.2 副通路の構造と流量計測通路部
上述したように被計測気体30を取り込むための入口350と取り込んだ被計測気体30を主通路124に排出するための出口352との間に、計測用流路面430および熱伝達面露出部436を設けており、計測用流路面430に設けられた熱伝達面露出部436で副通路内の被計測気体30との間で熱伝達を行うことで、主通路124を流れる被計測気体30の流量が計測される。
この実施例では上記副通路における入口350と計測用流路面430との間の入口側副通路4232と、上記副通路における計測用流路面430と出口352近傍の出口側室4216との間の出口側副通路4234とが設けられており、入口側副通路4232はハウジング302の裏側に形成され、出口側副通路4234がハウジング302の表側に形成されている。主通路124を被計測気体30が順方向に流れている場合には、入口350から導入された被計測気体30は入口側副通路4232から計測用流路面430に導かれ、流量が計測され、その後、出口側副通路4234及び出口側室4216を通り、主通路124に排出される。この状態では主通路124を流れる順方向の被計測気体30の流量が計測される。
一方、主通路124を被計測気体30が逆流状態で流れている場合には、主通路124を逆流する被計測気体30の流量を計測するために、逆流状態の被計測気体30の一部が出口352から取り込まれ、出口側室4216を介して出口側副通路4234に導入され、計測用流路面430に導かれる。計測用流路面430で逆流する被計測気体30の計測が行われ、主通路124を逆流する被計測気体30の流量が計測される。計測用流路面430で計測された被計測気体30は入口側副通路4232を介して入口350から主通路124に排出される。
ハウジング302には、入口側副通路4232を形成するための裏側副通路溝334や出口側副通路4234を形成するための表側副通路溝332が成形されている。このためハウジング302に表カバー303や裏カバー304を固定することで、入口側副通路4232や出口側副通路4234が形成される。
計測用流路面430は順方向および逆方向の被計測気体30の流量を計測するための流量計測通路部として作用している。
3.3 副通路の流量計測通路部の構造とそれに基づく効果
図7は、回路パッケージ400の計測用流路面430が副通路溝の内部に配置されている状態を示す部分拡大図であり、図6のA−A断面図である。なお、この図は概念図であり、図5や図6に示す詳細形状に対して、図7では細部の省略および単純化を行っており、細部に関して少し変形している。図7の左部分が裏側副通路溝334の終端部であり、右側部分が表側副通路溝332の始端部分である。図7では明確に記載していないが、計測用流路面430を有する回路パッケージ400の左右両側には、孔342と孔341とが設けられていて、計測用流路面430を有する回路パッケージ400の左右両側で裏側副通路溝334と表側副通路溝332とが繋がっている。
入口350から取り込まれ、裏側副通路溝334により構成される裏側副通路を流れた被計測気体30は、図7の左側から導かれ、被計測気体30の一部は、孔342を介して、回路パッケージ400の計測用流路面430の表面と表カバー303に設けられた突起部356で作られる流路386の方を流れ、他の被計測気体30は計測用流路面裏面431と裏カバー304で作られる流路387方を流れる。その後、流路387を流れた被計測気体30は、孔341を介して表側副通路溝332の方に移り、流路386を流れている被計測気体30と合流し、表側副通路溝332を流れ、出口352から主通路124に排出される。なお、流路387には裏カバー304に設けられた突起部358が計測用流路面裏面431に向かって突出している。
裏側副通路溝334から孔342を介して流路386に導かれる被計測気体30の方が、流路387に導かれる流路よりも曲りが大きくなるように、副通路溝が成形されているので、被計測気体30に含まれるごみなどの質量の大きい物質は、曲りの少ない流路387の方に集まる。このため流路386への異物の流入はほとんど無い。
流路386では、表側副通路溝332の最先端部に連続して、表カバー303に設けられ突起部356が計測用流路面430の方に徐々に突出することにより、絞りが成形される構造を成している。流路386の絞り部の一方側に計測用流路面430が配置され、計測用流路面430には流量検出部602が被計測気体30との間で熱伝達を行うための熱伝達面露出部436が設けられている。流量検出部602の計測が高精度で行われるためには、熱伝達面露出部436の部分で被計測気体30が渦の少ない層流であることが望ましい。また流速が速い方が計測精度が向上する。このために計測用流路面430に対向して表カバー303に設けられた突起部356が計測用流路面430に向かって滑らかに突出することにより絞りが成形される。この絞りは、被計測気体30の渦を減少させて層流に近づけている作用をする。さらに絞り部分では流速が早くなり、この絞り部分に流量を計測するための熱伝達面露出部436が配置されているので、流量の計測精度が向上している。
計測用流路面430に設けた熱伝達面露出部436に対向するようにして突起部356を副通路溝内に突出させることで絞りを成形して、計測精度を向上することができる。絞りを成形するための突起部356は、計測用流路面430に設けた熱伝達面露出部436に対向する方のカバーに設けることになる。図7では計測用流路面430に設けた熱伝達面露出部436に対向する方のカバーが表カバー303であるので表カバー303に熱伝達面露出部436を設けているが、表カバー303あるいは裏カバー304の内の計測用流路面430に設けた熱伝達面露出部436に対向する方のカバーに設ければ良い。回路パッケージ400における計測用流路面430および熱伝達面露出部436を設ける面がどちらになるかにより、熱伝達面露出部436に対向する方のカバーがどちらになるかが変わる。
流路386と流路387との被計測気体30の配分なども高精度の計測にとって関係があり、裏カバー304に設けられた突起部358を流路387に突出させることにより、流路386と流路387との被計測気体30の配分などの調整を行っている。また流路387に絞り部を設けることで流速を早くし、ごみなどの異物を流路387に引き込む作用も成している。この実施例では、流路386と流路387の色々な調整の手段の一つとして突起部358による絞りを利用しているが、計測用流路面裏面431と裏カバー304の間の幅などの調整により、上述した流路386と流路387との流量の配分等の調整を行っても良い。この場合は裏カバー304に設けられた突起部358は不要となる。
図5および図6において、計測用流路面430に設けられた熱伝達面露出部436の裏面である計測用流路面裏面431に、回路パッケージ400の樹脂モールド工程で使用された金型の押さえ跡442が残っている。押さえ跡442は特に流量の計測の障害となるものではなく、そのまま押さえ跡442が残っていても問題ない。また後述するが、回路パッケージ400を樹脂モールドで成形する際に、流量検出部602が有する半導体ダイヤフラムの保護が重要となる。このために熱伝達面露出部436の裏面の押さえが重要である。また熱伝達面露出部436に回路パッケージ400を覆う樹脂が流れ込まないようにすることが大切である。このような観点から、熱伝達面露出部436を含む計測用流路面430を金型で囲い、また熱伝達面露出部436の背面を他の金型で押さえつけ、樹脂の流入を阻止する。回路パッケージ400はトランスファーモールドで作られるので、樹脂の圧力が高く、熱伝達面露出部436の背面からの押さえが重要である。また流量検出部602には半導体ダイヤフラムが使用されており、半導体ダイヤフラムにより作られる空隙の通気用通路を成形することが望まれる。通気用通路を成形するためのプレートなどを保持固定するために、熱伝達面露出部436の裏面からの押さえは重要である。
3.4 熱式流量計300のカバーの形状とそれに基づく効果
図8は表カバー303の外観を示す図であり、図8(A)は左側面図、図8(B)は正面図、図8(C)は平面図である。図9は裏カバー304の外観を示す図であり、図9(A)は左側面図、図9(B)は正面図、図9(C)は平面図である。図8および図9において、表カバー303や裏カバー304は、ハウジング302の表面および裏面に設けられ、図5および図6に示す、ハウジング302の外壁である上流側外壁335や下流側外壁336の頂辺、すなわち表側および裏側において最も外側である高さ方向の先端部と密着し、また固定部3721の同じく表側および裏側において最も外側である高さ方向の先端部と密着し、さらにフランジ312側においても密着しており、内部に密閉された空隙382を形成している。さらに表カバー303や裏カバー304は、ハウジング302の副通路溝を塞ぐことにより、副通路を作るのに使用される。また突起部356が備え絞りを作るのに使用される。このため成形精度が高いことが望ましい。表カバー303や裏カバー304は金型に熱可塑性樹脂を注入する樹脂モールド工程により、作られるので、高い成形精度で作ることができる。
図8や図9に示す表カバー303や裏カバー304には、表保護部322や裏保護部325が成形されている。図2や図3に示すように入口343の表側側面に表カバー303に設けられた表保護部322が配置され、また入口343の裏側側面に、裏カバー304に設けられた裏保護部325が配置されている。入口343内部に配置されている温度検出部452が表保護部322と裏保護部325で保護され、生産中および車への搭載時に温度検出部452が何かとぶつかることなどによる温度検出部452の機械的な損傷を防止できる。
表カバー303の内側面には突起部356が設けられ、図7に示す如く、突起部356は計測用流路面430に対向して配置され、副通路の流路の軸に沿う方向に長く延びた形状をしている。計測用流路面430と突起部356とにより上述した流路386に絞りが成形され、被計測気体30に生じている渦を減少させ、層流に生じさせる作用をする。この実施例では、絞り部分を有する副流路を、溝の部分と溝を塞いで絞りを備えた流路を完成する蓋の部分とにわけ、溝の部分を、ハウジング302を成形するための第2樹脂モールド工程で作り、次に突起部356を有する表カバー303を他の樹脂モールド工程で成形し、表カバー303を溝の蓋として溝を覆うことにより、副通路を作っている。ハウジング302を成形する第2樹脂モールド工程で、計測用流路面430を有する回路パッケージ400のハウジング302への固定も行っている。このように形状の複雑な溝の成形を樹脂モールド工程で行い、絞りのための突起部356を表カバー303に設けることで、高い精度で図7に示す流路386を成形することができる。また溝と計測用流路面430や熱伝達面露出部436の配置関係を高い精度で維持できるので、量産品においてのばらつきを小さくでき、結果として高い計測結果が得られる。また生産性も向上する。
裏カバー304と計測用流路面裏面431による流路387の成形も同様である。流路386の溝部分と蓋部分とに分け、ハウジング302を成形する第2樹脂モールド工程で前記溝部分を作り、次に突起部358を有する裏カバー304で溝を覆うことにより、流路387を成形している。流路387をこのようにして作ることにより、流路386を高精度で作ることができ、生産性も向上する。なおこの実施例では流路387に絞りを設けているが、突起部358を用いない、絞りの無い流路387を使用することも可能である。
図8(B)において、表カバー303の先端側には、出口352を成形するための切欠き323が設けられている。図2(B)に示す如く、出口352はハウジング302の右側面だけでなく、この切欠き323により出口352がハウジング302の正面側にも広がっている。このことにより、副通路全体の流体抵抗が減少し、入口350から副通路内に導かれる被計測気体30が増大する。このことにより、流量の計測精度が向上する。
裏カバー304には突起3042が設けられている。この突起3042は後述する出口側室4216の壁3044として作用する。主通路124を流れる被計測気体30が逆流している状態では、被計測気体30が順方向に流れていた状態で出口352の下流側に発生した渦を出口352から取り込む問題がある。取り込まれた渦が出口側副通路4234に入り込まないように、突起3042は取り込まれた渦を含む被計測気体30の進路を変え、前記取り込まれた渦を減衰させる働きをする。この作用については次に図10や図11を用いて説明する。
4. 逆流する被計測気体30の計測とその計測誤差の要因
4.1 計測誤差の要因
図10は図2(B)のC−C断面を示す。熱式流量計300は表カバー303と裏カバー304との間の長さである幅が薄く作られているがそれでも、主通路124を順方向に流れる被計測気体30により、熱式流量計300の出口352の下流側に渦4242が発生する。図11は熱式流量計300を内燃機関の吸入空気量の計測に使用した場合の特定運転領域における吸入空気量の変動を示す。実際の流量の変動波形を波形4914で示す。前記内燃機関の動作に同期して実際に前記内燃機関に供給される吸入空気量の流量は波形4914で示す如く変動している。図11に示す例では、時間t1と時間t2との間で、被計測気体30である吸入空気が逆流している。順方向に流れる被計測気体30の流量だけでなく、時間t1と時間t2との間の逆流する被計測気体30の流量を正確に計測することで、実際に内燃機関に取り込まれた空気量を高い精度で計測できる。
この明細書で特別に明記した場合を除き、単に上流側および下流側と記す場合は、被計測気体30が順方向に流れている状態での流れに基づいて表現している。従って被計測気体30が逆流している場合とは、特別な明記が無い場合は、順流方向の下流側から上流側に流れていることを示す。
4.2 計測誤差の要因への対応
図10に示す如く、被計測気体30の脈動状態における順方向の流れの状態で、熱式流量計300の下流側に渦4242が発生する。この後、時間t1から時間t2の間は被計測気体30が逆流状態になり、この渦4242は逆流する被計測気体30により上流方向に移動する。図10に示す構造においてもし渦流入抑制部4214が設けられていない状態で、渦流入抑制部4214の部分に開口が形成されていると仮定すると、被計測気体30の逆流状態で渦4242は、渦流入抑制部4214の代わりに渦流入抑制部4214の位置に設けられている開口から入り込み出口側副通路4234を逆流して、図5(B)に示す計測用流路面430に到達する。このとき、熱伝達面露出部436は渦4242の影響を受け、被計測気体30の流量変動を示す波形4914よりも過剰な逆流を検出し波4916のような変動を示す。これにより、図11に示す最適値Cに比べ平均値が減少、正しく流量を検出しない(脈動誤差A)。
一方、渦4242が入り込むのを防止するために下流側に開口する出口開口4222を無くし、主通路124の被計測気体30の流れを横切る方向に開口する出口開口4226のみとすると、図11の波形4912の如き出力となり、計測された逆流する流量は実際の流量より小さい値となる。この理由は、主通路124の被計測気体30の流れを横切る方向に開口する出口開口4226のみとすることで、逆流する被計測気体30の動圧が作用しないために、時間t1から時間t2の間に発生する逆流時に副通路内に導かれる被計測気体30が減少することにより、流量計測通路部での流速が遅くなるためである。
このため波形4912に相当する流量計測通路部での被計測気体30の流速は波形4914に相当する流量計測通路部での被計測気体30の流速に比べてt1からt2の逆流が発生しているあいだ遅くなり、脈動誤差を発生する。
望ましくは、主通路124を逆流する被計測気体30の動圧が出口開口から取り込まれるようにすることである。出口開口4222は逆流する被計測気体30の流れである被計測気体30の逆流3030を取り込むことができる。ただし、被計測気体30の逆流3030には渦4242が乗っており、出口開口4222から被計測気体30の逆流3030と共に渦4242が取り込まれる。出口開口4222から渦4242と共に取り込まれた逆流3030は、壁3044に遮られ進路を変更する。取り込まれた逆流3030が壁3044によってその進路を変更することにより、取り込まれた渦4242が減衰あるいは消滅して、渦の悪影響が低減される。
図10の構造では、出口側副通路4234の流れの軸である流れ軸4235を渦流入抑制部4214で塞ぎ、出口開口から取り込まれた渦4242が出口側副通路4234に直接入り込むのを阻止している。一方出口側副通路4234の出口側に出口側室4216が形成され、出口開口4222から取り込まれた逆流3030の動圧が出口側室4216内に作用する構造としている。このため被計測気体30の逆流3030が勢い良く出口側室4216に入り込み、図11の波形4912で示される、逆流する被計測気体30の取り込み不足に起因する誤差を抑制できる。
出口側室4216には出口開口4222から渦4242が入り込むが、出口側室4216に入り込んだ渦4242は、進路を変更するガイドとして作用する壁3044にて逆流3030の進路が大きく変えられ、このために入り込んだ渦4242が大きく減衰する。このようにして図11の波形4916で示す誤差も低減できる。
以上説明した如く、図10の構成で、二つの誤差の要因を解決することができ、計測精度が大幅に向上する。なお、この実施例ではガイドとして作用する壁3044を裏カバー304に設けている。裏カバー304に設けられた壁3044の代わりに入口側副通路4232の壁4217を使用しても良い。入口側副通路4232の壁4211は入口側副通路4232と出口側副通路4234とを分ける働きを成している。
さらに、出口開口4226は出口側副通路4234を出入りする被計測気体30の流体抵抗を低減するためである。
5. 回路パッケージ400のハウジング302による固定
5.1 回路パッケージ400をハウジング302に固定する固定構造
図5および図6を用いて回路パッケージ400をハウジング302に固定する固定構造を説明する。主通路124を流れる被計測気体30の流量を計測する流量計測回路601(図20参照)を内蔵する回路パッケージ400が、副通路溝を有するハウジング302に固定されている。この実施例では、フランジ312と前記副通路溝332,334とが上流側外壁335と下流側外壁336とにより繋がれ、前記副通路溝332および前記副通路溝334を成形している部分が上流側外壁335と下流側外壁336とを介してフランジ312により支持されている。なお、上流側外壁335は主通路124を流れる被計測気体30の流れにおける上流側に位置し、下流側外壁336は下流側に位置している。固定部3721は上流側外壁335と下流側外壁336と繋ぐように設けられ、固定部3721で回路パッケージ400を全周に渡って包むことにより、回路パッケージ400をハウジング302に固定している。さらに固定部3721のフランジ側には、上流側外壁335や下流側外壁336、フランジ312で囲まれた空隙382が形成されている。固定部3721のフランジ側とは逆の副通路側には副通路溝332,334が成形されており、この副通路溝332,334には被計測気体30が流れる構造に成っている。固定部3721は前記空隙の副通路側の気密を維持する作用を為す。
上流側外壁335に設けられた外壁窪み部366を、さらに固定部3723として用いることにより、さらに回路パッケージ400を強固に固定することができる。上述の固定部3721は上流側外壁335と下流側外壁336とを繋ぐように、この実施例では被計測気体30の流れ軸に沿う方向、すなわち計測用流路面430の長軸に沿う方向に、回路パッケージ400を包含している。一方上流側外壁335の外壁窪み部366は被計測気体30の流れ軸を横切る方向に回路パッケージ400を包含している。すなわち固定部3721に対して、固定部3723は回路パッケージ400を包含する方向が異なるように成形されて、回路パッケージ400を包含している。これらは互いに異なる方向で回路パッケージ400を包含して固定しているので、より強固に回路パッケージ400をハウジング302に固定できる。
この実施例では、外壁窪み部366は上流側外壁335の一部で構成されているが、固定する力を増大するためであれば、上流側外壁335の代わりに下流側外壁336で、固定部3721と異なる方向に回路パッケージ400を包含する固定部を設けても良い。例えば、下流側外壁336で回路パッケージ400の端部を包含するとか、あるいは下流側外壁336に上流方向に窪む窪みを成形する、あるいは下流側外壁336から上流方向に突出する突出部を設けてこの突出部で回路パッケージ400を包含するようにしても良い。この実施例で、上流側外壁335に外壁窪み部366を設けて回路パッケージ400を包含したのは、回路パッケージ400の固定に加えて、温度検出部452と上流側外壁335との間の熱抵抗を増大する作用を持たせたためである。また温度検出部452を有する回路パッケージ400の突出部424(図12参照)の根元を外壁窪み部366が包含し、支持しているので、温度検出部452を有する突出部424(図12参照)の保護の作用も為している。
固定部3721や固定部3723は、回路パッケージ400に加わる応力を低減するめに、厚肉部と薄肉部とを有している。図5(A)や図5(B)に示すように、固定部3721は厚肉部4714と薄肉部4710を有している。薄肉部4710は回路パッケージ400方向への窪みを設けることで、回路パッケージ400を包含する樹脂の厚みが薄く成形されることにより作られる。薄肉部4710のフランジ側にはさらに薄肉部が成形されているが、薄肉部4710のフランジ側に設けられたこの薄肉部は、厚肉部4714より回路パッケージ400を包含する樹脂厚さが薄い形状を成しているが、薄肉部4710より回路パッケージ400を包含する樹脂厚さが少し厚い形状を成している。このように厚肉部4714に対して薄肉部4710やさらにそのフランジ側に薄肉部を設けることで、固定部3721が回路パッケージ400を包含するための所定の広さの面積を確保しつつ、固定部3721により回路パッケージ400に加わる応力を前記面積の広さに対して低減できる効果を有している。
図5(B)の裏面である図6(B)では、固定部3721は厚肉部4714と窪み373により作られる薄肉部とを有している。上述したように薄肉部を設けることで、固定部3721が回路パッケージ400を包含するための所定の広さの面積を確保しつつ、回路パッケージ400に加わる応力を前記面積の広さに対して低減できる効果を有している。このように厚肉部と薄肉部とで固定部3721を構成する構造により、回路パッケージ400の固定に係る信頼性が向上する。すなわち回路パッケージ400と固定部3721との間の気密性が維持される。また樹脂モールド工程において、固定部3721が冷却されて固まる際の体積収縮に伴う、固定部3721から回路パッケージ400に加えられる応力を低減できる。また薄肉部を設けることで、樹脂モールド工程において樹脂の移動が抑制されて樹脂の温度低下が緩やかとなり、樹脂が硬化するのに要する時間が長くなる。回路パッケージ400の表面の凹凸に固定部3721の樹脂が流れ込み易くなり、回路パッケージ400と固定部3721との間の気密性を高める効果がある。
また、固定部3721の副通路側は、被計測気体30が流れており、回路パッケージ400と固定部3721との間の気密が破れるとハウジング302の内部の空隙382に水分などが入り込む恐れが生じる。薄肉部を設けることにより、固定部3721と回路パッケージ400の樹脂との接触面積を増やすことが可能となり、気密性が向上し、ハウジング302の内部の前記空隙382への水分などの浸入をより防止できる効果がある。
図5(B)や図6(B)において、上流側外壁335が外壁窪み部366を有している。外壁窪み部366は回路パッケージ400をハウジング302に固定する固定部3723として作用する。固定部3723は厚肉部4715と薄肉部4716とを有している。固定部3721と同様、固定部3723は回路パッケージ400との間で広い接触面積を確保できる。しかも薄肉部4716は回路パッケージ400に与える応力が小さいので、固定部3723が回路パッケージ400に与える応力の影響を低減できる。固定部3723の上流側は被計測気体30が流れており、固定部3723と回路パッケージ400との間の気密性を保つことが重要であり、薄肉部4716と厚肉部4715とにより、固定部3723と回路パッケージ400との間の気密性を確保し易くなる。
5.2 樹脂モールドにより成形されたハウジング302の構造
次に再び図5および図6を参照して、回路パッケージ400のハウジング302への樹脂モールド工程による固定について説明する。副通路を成形する副通路溝の所定の場所、例えば図5および図6に示す実施例では、表側副通路溝332と裏側副通路溝334のつながりの部分に、回路パッケージ400の表面に成形された計測用流路面430が配置されるように、回路パッケージ400がハウジング302に配置され固定されている。回路パッケージ400をハウジング302に樹脂モールドにより埋設して固定する部分が、副通路溝より少しフランジ312側に設けられている。回路パッケージ400は、図17を用いて以下で説明するが、第1樹脂モールド工程で作られる。第1樹脂モールド工程で作られた回路パッケージ400は、第2樹脂モールド工程で副通路を備えるハウジング302を成形する際に、固定部3721を成形し、固定部3721は第1樹脂モールド工程により成形された回路パッケージ400の外周を覆うようにして、回路パッケージ400を保持し、固定する。
図5(B)に示す如く、固定部3721の表側面には、窪み376や窪み形状の薄肉部4710が設けられている。また図6(B)に示す如く、固定部3721の裏側面には薄肉部として作用する窪み373が成形されている。これら窪みにより、固定部3721の成形時に樹脂の温度が冷え、体積が収縮する収縮量を低減することができる。このことにより回路パッケージ400に加わる応力を低減できる。さらに上述の窪みを成形するための金型により樹脂の流れが制限されることにより、樹脂温度の低下速度を緩やかにし、回路パッケージ400の表面に設けられた凹凸に奥まで、固定部3721を構成する樹脂を入り込み易くすることができる。
また回路パッケージ400の全面を、ハウジング302を成形する樹脂で覆うのではなく、固定部3721のフランジ312側に、回路パッケージ400の外壁が露出する部分を設けている。この図5および図6の実施例では、回路パッケージ400の外周面の内のハウジング302の樹脂に包含される部分の面積より、ハウジング302の樹脂に包含されないでハウジング302の樹脂から露出している面積の方が広くなっている。また回路パッケージ400の計測用流路面430の部分も、ハウジング302を形成している樹脂から露出している。
回路パッケージ400の外壁を帯状に全周にわたって覆っている固定部3721の表面や裏面にそれぞれ窪みを成形することで、ハウジング302を成形するための第2樹脂モールド工程において、回路パッケージ400の周囲を包含するようにして固定部3721を硬化させる過程での体積収縮による過度な応力の集中を低減している。過度な応力の作用は回路パッケージ400に対しても悪影響を及ぼす可能性がある。
5.3 ハウジング302と回路パッケージ400の密着度の向上
また回路パッケージ400の外周面の内のハウジング302の樹脂に包含される部分の面積を少なくして、少ない面積で、より強固に回路パッケージ400を固定するには、固定部3721における回路パッケージ400の外壁との密着性を高めることが望ましい。ハウジング302を成形する趣旨として熱可塑性樹脂を使用する場合には、熱可塑性樹脂の粘性が低い状態すなわち温度が高い状態で回路パッケージ400の表面の細かい凹凸に入り込み、前記表面の細かい凹凸に入り込んだ状態で、熱可塑性樹脂が硬化することが望ましい。ハウジング302を成形する樹脂モールド工程において、熱可塑性樹脂の入口を固定部3721にあるいはその近傍に設けることが望ましい。熱可塑性樹脂は温度の低下に基づいて粘性が増大し、硬化する。従って高温状態の熱可塑性樹脂を固定部3721にあるいはその近傍から流し込むことで、粘性の低い状態の熱可塑性樹脂を回路パッケージ400の表面に密着させ、硬化させることができる。また、固定部3721に窪み376や窪みである薄肉部4710、窪み373を成形することで、これら窪みを作るための金型により、熱可塑性樹脂の流れを制限する障害部が作られ、固定部3721での熱可塑性樹脂の移動速度が低下する。このことにより熱可塑性樹脂の温度低下が抑えられ、低粘性状態を長引かせ、回路パッケージ400と固定部3721との密着性を向上することができる。
回路パッケージ400の表面を粗くすることにより回路パッケージ400と固定部3721との密着性を向上することができる。回路パッケージ400の表面を粗くする方法として、回路パッケージ400を第1樹脂モールド工程で成形後に、例えば梨地処理といわれる処理方法のように、回路パッケージ400の表面に細かい凸凹を成形する粗化方法がある。回路パッケージ400の表面に細かい凸凹加工を施す粗化方法としてさらに、例えばサンドブラストにより粗化することができる。さらにレーザ加工により粗化することができる。
また他の粗化方法としては、第1樹脂モールド工程に使用する金型の内面に凹凸の付いたシートを張り付け、前記シートを表面に設けた金型に樹脂を圧入する。このようにしても回路パッケージ400の表面に細かい凸凹を成形して粗化することができる。さらに回路パッケージ400を成形する金型の内部に直に凹凸をつけておき、回路パッケージ400の表面を粗化することができる。このような粗化を行う回路パッケージ400の表面部分は、少なくとも固定部3721が設けられる部分である。さらに加えて外壁窪み部366が設けられる回路パッケージ400の表面部分を粗化することでさらに密着度を改善することができる。
また溝の深さは、上述のシートを利用して回路パッケージ400の表面を凹凸加工する場合は前記シートの厚さに依存する。前記シートの厚みを厚くすると第1樹脂モールド工程でのモールドが難しくなるので、前記シートの厚みに限界があり、前記シートの厚みが薄いと前記シートにあらかじめ設けておく凹凸の深さに限界がでる。このため前記シートを使用する場合は、凹凸の底と頂点との間である凹凸の深さが10μm以上で20μm以下であることか望ましい。10μmより少ない深さでは、密着の効果が弱い。20μmより大きい深さは、前記シートの厚みから困難である。
前記シート以外の粗化方法の場合には、回路パッケージ400を成形している第1樹脂モールド工程での樹脂の厚さが2mm以下であることが望ましいとの理由から、凹凸の底と頂点との間である凹凸の深さを1mm以上とすることが困難である。概念的には、回路パッケージ400の表面の凹凸の底と頂点との間である凹凸の深さを大きくすると、回路パッケージ400を覆う樹脂とハウジング302を成形する樹脂との間の密着度が増す、と考えられるが、前記理由により、凹凸の底と頂点との間である凹凸の深さは1mm以下が良い。すなわち10μm以上で1mm以下の範囲の凹凸を回路パッケージ400の表面に設けることで、回路パッケージ400を覆う樹脂とハウジング302を成形する樹脂との間の密着度を増加させることが望ましい。
回路パッケージ400を成形する熱硬化性樹脂と固定部3721を備えるハウジング302を成形する熱可塑性樹脂とでは、熱膨張係数に差があり、この熱膨張係数差に基づいて生じる過度な応力が回路パッケージ400に加わらないようにすることが望ましい。上述した窪み373や窪みである薄肉部4710、窪み376を設けることで、回路パッケージ400に加わる応力を低減できる。
さらに回路パッケージ400の外周を包含する固定部3721の形状を帯状とし、帯の幅を狭くすることにより、回路パッケージ400に加わる熱膨張係数差による応力を低減できる。固定部3721の帯の幅を10mm以下に、好ましくは8mm以下にすることが望ましい。本実施例では回路パッケージ400を固定部3721だけでなく、ハウジング302の上流側外壁335の一部である外壁窪み部366でも回路パッケージ400を包含し回路パッケージ400を固定しているので、固定部3721の帯の幅をさらに細くすることができる。例えば3mm以上の幅があれば回路パッケージ400を固定できる。
回路パッケージ400の表面に、熱膨張係数差による応力を低減するなどの目的のため、ハウジング302を成形する樹脂で覆う部分と覆わないで露出させる部分とを設けている。これら回路パッケージ400の表面がハウジング302の樹脂から露出する部分を、複数個設け、この内の一つは先に説明した熱伝達面露出部436を有する計測用流路面430であり、また他に、固定部3721よりフランジ312側の部分に露出する部分を設けている。さらに外壁窪み部366を成形し、この外壁窪み部366より上流側の部分を露出させ、この露出部を、温度検出部452を支える支持部としている。回路パッケージ400の外表面の固定部3721よりフランジ312側の部分は、その外周、特に回路パッケージ400の下流側からフランジ312に対向する側にかけて、さらに回路パッケージ400の端子に近い部分の上流側にかけて、回路パッケージ400を取り巻くように空隙が成形されている。このように回路パッケージ400の表面が露出している部分の周囲に空隙が成形されていることで、主通路124からフランジ312を介して回路パッケージ400に伝わる熱量を低減でき、熱の影響による計測精度の低下を抑制している。
回路パッケージ400とフランジ312との間に空隙が成形され、この空隙部分が端子接続部320として作用している。この端子接続部320で回路パッケージ400の接続端子412と外部端子306のハウジング302側に位置する外部端子内端361とがそれぞれスポット溶接あるいはレーザ溶接などにより電気的に接続される。端子接続部320の空隙は上述したようにハウジング302から回路パッケージ400への熱伝達を抑制する効果を奏すると共に、回路パッケージ400の接続端子412と外部端子306の外部端子内端361との接続作業のために使用可能なスペースが確保されている。
5.4 第2樹脂モールド工程によるハウジング302成形と計測精度の向上
上述した図5および図6に示すハウジング302において、流量検出部602や処理部604を備える回路パッケージ400を第1樹脂モールド工程により製造し、次に、被計測気体30を流す副通路を成形する例えば表側副通路溝332や裏側副通路溝334を有するハウジング302を、第2樹脂モールド工程にて製造する。この第2樹脂モールド工程で、前記回路パッケージ400をハウジング302の樹脂内に内蔵して、ハウジング302内に樹脂モールドにより固定する。このようにすることで、流量検出部602が被計測気体30との間で熱伝達を行って流量を計測するための熱伝達面露出部436と副通路、例えば表側副通路溝332や裏側副通路溝334の形状との関係、例えば位置関係や方向の関係を、極めて高い精度で維持することが可能となる。回路パッケージ400の生産毎に生じる誤差やばらつきを非常に小さい値に抑え込むことが可能となる。また第2樹脂モールド工程で回路パッケージ400と被計測気体30を流す副通路との関係が固定されると、その後はこの関係が変わらない。従来のように弾性接着剤などで固定すると、生産後もこれらの関係が微妙に変わる。本実施例のように、回路パッケージ400と被計測気体30を流す副通路との関係が変わらない場合には、生産後にばらつきを補正すれば、その後は非常に高い精度が維持可能となる。結果として回路パッケージ400の計測精度を大きく改善できる。例えば従来の接着剤を使用して固定する方式に比べ、計測精度を2倍以上向上することができる。熱式流量計300は量産により生産されることが多く、個々の生産過程で厳密な計測を行いながら接着剤で接着することが困難であり、計測精度の向上に関して限界がある。しかし、本実施例のように第1樹脂モールド工程により回路パッケージ400を製造し、その後被計測気体30を流す副通路を成形する第2樹脂モールド工程にて副通路を成形すると同時に回路パッケージ400と前記副通路とを固定することで、計測精度のばらつきを大幅に低減でき、各熱式流量計300の計測精度を大幅に向上することが可能となる。このことは、図5や図6に示す実施例だけでなく、図7に示す実施例など以下の実施例でも、同様である。
例えば図5や図6に示す実施例でさらに説明すると、表側副通路溝332と裏側副通路溝334と熱伝達面露出部436との間の関係が、規定の関係となるように高い精度で回路パッケージ400をハウジング302に固定できる。このことにより量産される熱式流量計300においてそれぞれ、各回路パッケージ400の熱伝達面露出部436と副通路との位置関係や形状などの関係を、非常に高い精度に維持することが可能となる。回路パッケージ400の熱伝達面露出部436を固定した副通路溝、例えば表側副通路溝332と裏側副通路溝334とが非常に高い精度で成形できる。この副通路溝から副通路を成形するには、表カバー303や裏カバー304でハウジング302の両面を覆う作業が必要となる。この作業は大変シンプルで、計測精度を低下させる要因が少ない作業工程である。また表カバー303や裏カバー304は成形精度の高い樹脂モールド工程により生産される。従って回路パッケージ400の熱伝達面露出部436と規定の関係で設けられる副通路を高い精度で完成することが可能である。このような方法により、計測精度の向上に加え、高い生産性が得られる。
これに対して従来は、副通路を製造し、次に副通路に流量を計測するための計測部を接着剤で接着することにより、熱式流量計を生産していた。このように接着剤を使用する方法は、接着剤の厚みのばらつきが大きく、また接着位置や接着角度が製品毎にばらつく。このため計測精度を上げることには限界があった。さらにこれらの作業を量産工程で行う場合に、計測精度の向上がたいへん難しくなる。
本発明に係る実施例では、先ず、流量検出部602を備える回路パッケージ400を第1樹脂モールドにより生産し、次に回路パッケージ400を樹脂モールドにより固定すると共に同時に前記樹脂モールドで副通路を成形するための副通路溝を第2樹脂モールドにより、成形する。このようにすることにより、副通路溝の形状、および前記副通路溝に極めて高い精度で流量計測回路601の流量検出部602(図20参照)を固定できる。
流量の計測に関係する部分、例えば流量検出部602の熱伝達面露出部436や熱伝達面露出部436が取り付けられる計測用流路面430を、回路パッケージ400の表面に成形する。その後、計測用流路面430と熱伝達面露出部436はハウジング302を成形する樹脂から露出させる。すなわち熱伝達面露出部436および熱伝達面露出部436周辺の計測用流路面430を、ハウジング302を成形する樹脂で覆わないようにする。回路パッケージ400の樹脂モールドで成形した計測用流路面430や熱伝達面露出部436を、そのままハウジング302の樹脂モールド後も利用し、熱式流量計300の流量計測や温度計測に使用する。このようにすることで計測精度が向上する。
本発明に係る実施例では、回路パッケージ400をハウジング302に一体成形することにより、副通路を有するハウジング302に回路パッケージ400を固定しているので、少ない固定面積で回路パッケージ400をハウジング302に固定できる。すなわち、ハウジング302に接触していない回路パッケージ400の表面積を多く取ることができる。前記ハウジング302に接触していない回路パッケージ400の表面は、例えば空隙に露出している。吸気管の熱はハウジング302に伝わり、ハウジング302から回路パッケージ400に伝わる。ハウジング302で回路パッケージ400の全面あるいは大部分を包含するのではなく、ハウジング302と回路パッケージ400との接触面積を小さくしても、高精度でしかも高い信頼性を維持して、回路パッケージ400をハウジング302に固定できる。このためハウジング302から回路パッケージ400への熱伝達を低く抑えることが可能となり、上述の熱伝達による計測精度の低下を抑制できる。
図5や図6に示す実施例では、回路パッケージ400の露出面の面積Aを、ハウジング302の成形用モールド材で覆われている面積Bと同等あるいは、面積Aを面積Bより多くすることが可能である。実施例では面積Aの方が面積Bより多くなっている。このようにすることにより、ハウジング302から回路パッケージ400への熱の伝達を抑制できる。また回路パッケージ400を成形している熱硬化性樹脂の熱膨張係数とハウジング302を成形している熱可塑性樹脂の膨張係数の差による応力を低減できる。
5.5 第2樹脂モールド工程による回路パッケージ400の固定とそれに基づく効果
図12で斜線の部分は、第2樹脂モールド工程において、ハウジング302に回路パッケージ400を固定するために、第2樹脂モールド工程で使用する熱可塑性樹脂で回路パッケージ400を覆うための、固定面432および固定面434を示している。図5や図6を用いて説明したとおり、計測用流路面430および計測用流路面430に設けられている熱伝達面露出部436と副通路の形状との関係が、規定の関係となるように、高い精度で維持されることが重要である。第2樹脂モールド工程において、副通路を成形すると共に同時に副通路を成形するハウジング302に回路パッケージ400を固定するので、前記副通路と計測用流路面430および熱伝達面露出部436との関係を極めて高い精度で維持できる。すなわち、第2樹脂モールド工程において回路パッケージ400をハウジング302に固定するので、副通路を備えたハウジング302を成形するための金型内に、回路パッケージ400を高い精度で位置決めして固定することが可能となる。この金型内に高温の熱可塑性樹脂を注入することで、副通路が高い精度で成形されると共に、回路パッケージ400が高い精度で、固定部3721や固定部3723により固定される。
この実施例では、回路パッケージ400の全面を、ハウジング302を成形する樹脂で覆う固定面432とするのではなく、回路パッケージ400の接続端子412側に表面が露出する、すなわちハウジング302用樹脂で覆われない部分を設けている。図12に示す実施例では、回路パッケージ400の表面の内、ハウジング302用樹脂に包含される固定面432および固定面434の面積より、ハウジング302の樹脂に包含されないでハウジング302用樹脂から露出している面積の方が広くなっている。
回路パッケージ400を成形する熱硬化性樹脂と固定部3721を備えるハウジング302を成形する熱可塑性樹脂とでは熱膨張係数に差があり、この熱膨張係数差に基づく応力が回路パッケージ400にできるだけ加わらないようにすることが望ましい。回路パッケージ400の表面の固定面432を少なくすることで、熱膨張係数の差に基づく影響を低減できる。例えば幅Lの帯状とすることにより、回路パッケージ400の表面の固定面432を少なくすることができる。また、上述したように固定面432を覆う固定部3721や固定部3723に厚肉部と薄肉部とを設けることにより、薄肉部に基づいて回路パッケージ400の表面に作用する応力を抑制でき、回路パッケージ400に大きな応力が加わるのを低減できる。比較的固定面432を幅広として、固定部3723と回路パッケージ400の固定面432との間の気密性を高めても、薄肉部による応力の抑制により、回路パッケージ400への応力の影響を低減できる。回路パッケージ400には、流量計測回路601が内蔵されており、回路パッケージ400に大きな応力が加わると、流量計測回路601に悪影響を及ぼし、流量の計測精度の低下や場合によっては動作そのものに障害が発生する恐れがある。このような影響を低減できる。
また突出部424の根元に固定面432を設けることで、突出部424の機械的強度を増すことができる。回路パッケージ400の表面において、被計測気体30が流れる軸に沿う方向に帯状の固定面を設け、さらに被計測気体30が流れる軸と交差する方向の固定面を設けることで、より強固に回路パッケージ400とハウジング302とを互いに固定することができる。固定面432において、計測用流路面430に沿って幅Lで帯状に回路パッケージ400を取り巻いている部分が上述した被計測気体30の流れ軸に沿う方向の固定面であり、突出部424の根元を覆う部分が、被計測気体30の流れ軸を横切る方向の固定面である。これら両固定面は、厚肉部と薄肉部とを有する固定部3721あるいは固定部3723により、包含されてハウジング302に固定される。
図12において、回路パッケージ400は上述のように、第1樹脂モールド工程で作られる。回路パッケージ400の外観上に記載した斜線部分は、第1樹脂モールド工程で回路パッケージ400を製造した後に、第2樹脂モールド工程でハウジング302を成形する際に第2樹脂モールド工程で使用される樹脂により回路パッケージ400が覆われる固定面432および固定面434を示す。図12(A)は回路パッケージ400の左側面図、図12(B)は回路パッケージ400の正面図、図12(C)は回路パッケージ400の背面図である。回路パッケージ400は、後述する流量検出部602や処理部604を内蔵し、熱硬化性樹脂でこれらがモールドされ、一体成形される。図12(B)に示す回路パッケージ400の表面には、被計測気体30を流すための面として作用する計測用流路面430が被計測気体30の流れ方向に長く伸びる形状で成形されている。この実施例では計測用流路面430は、被計測気体30の流れ方向に長く伸びる長方形を成している。この計測用流路面430は、図12(A)に示す如く、他の部分より薄く作られていて、その一部に熱伝達面露出部436が設けられている。内蔵されている流量検出部602は、熱伝達面露出部436を介して被計測気体30と熱伝達を行い、被計測気体30の状態、例えば被計測気体30の流速を計測し、主通路124を流れる流量を表す電気信号を出力する。
内蔵されている流量検出部602(図20および図21参照)が高精度で被計測気体30の状態を計測するには、熱伝達面露出部436の近傍を流れる気体が層流であり乱れが少ないことが望ましい。このため熱伝達面露出部436の流路側面と気体を導く計測用流路面430の面との段差はない方が好ましい。このような構成により、流量計測精度を高精度に保ちつつ、流量検出部602に不均等な応力および歪が作用するのを抑制することが可能となる。なお、上記段差は流量計測精度に影響を与えない程度の段差であれば設けてもよい。
熱伝達面露出部436を有する計測用流路面430の裏面には、図12(C)に示す如く、回路パッケージ400の樹脂モールド成形時に内部基板あるいはプレートを支持する金型の押さえの押さえ跡442が残っている。熱伝達面露出部436は被計測気体30との間で熱のやり取りを行うために使用される場所であり、被計測気体30の状態を正確に計測するためには、流量検出部602と被計測気体30との間の熱伝達が良好に行われることが望ましい。このため、熱伝達面露出部436の部分が第1樹脂モールド工程での樹脂で覆われるのを避けなければならない。熱伝達面露出部436とその裏面である計測用流路面裏面431の両面に金型を当て、この金型により熱伝達面露出部436への樹脂の流入を防止する。熱伝達面露出部436の裏面に凹部形状の押さえ跡442が成形されている。この部分は、流量検出部602等を構成する素子が近くに配置されており、これら素子の発熱をできるだけ外部に放熱することが望ましい。成形された凹部は、樹脂の影響が少なく、放熱し易い効果を奏している。
熱伝達面露出部436の内部には流量検出部602を構成する半導体ダイヤフラムが配置されていて、半導体ダイヤフラムの裏面には空隙が成形されている。前記空隙を密閉すると温度変化による前記空隙内の圧力の変化により、半導体ダイヤフラムが変形し、計測精度が低下する。このためこの実施例では、半導体ダイヤフラム裏面の空隙と連通する開口438を回路パッケージ400の表面に設け、半導体ダイヤフラム裏面の空隙と開口438とを繋ぐ連通路を回路パッケージ400内部に設けている。なお、前記開口438は、第2樹脂モールド工程で、樹脂により塞がれることがないように、図12に示す斜線が記載されていない部分に設けられている。
第1樹脂モールド工程で前記開口438が成形される。開口438の部分とその裏面とに金型を当て、表裏両面を金型で押すことにより、開口438の部分への樹脂の流入を阻止し、開口438を成形する。開口438および半導体ダイヤフラムの裏面の空隙と開口438とを繋ぐ連通路の成形については、後述する。
回路パッケージ400において、熱伝達面露出部436が形成されている回路パッケージ400の裏面に、押さえ跡442が残っている。第1樹脂モールド工程において、熱伝達面露出部436への樹脂の流入を防止するために熱伝達面露出部436の部分に金型、例えば入れ駒を当て、さらにその反対面の押さえ跡442の部分に金型を当て、両金型により熱伝達面露出部436への樹脂の流入を阻止する。このようにして熱伝達面露出部436の部分を成形することにより、極めて高い精度で、被計測気体30の流量を計測できる。また押さえ跡442の部分は第2樹脂モールド工程での樹脂が全くあるいはほとんどないので、放熱効果が大きい。第2プレート536してリードを使用した場合には、リードを介して隣接する回路での発熱を、放熱できる効果がある。
6. 回路パッケージへの回路部品の搭載
6.1 回路パッケージのフレーム枠と回路部品の搭載
図13に回路パッケージ400のフレーム枠512およびフレーム枠512に搭載された回路部品516のチップの搭載状態を示す。なお、破線部508は、回路パッケージ400のモールド成形時に用いられる金型により覆われる部分を示す。フレーム枠512にリード514が機械的に接続されており、フレーム枠512の中央に、プレート532が搭載され、プレート532にチップ状の流量検出部602およびLSIとして作られている処理部604が搭載されている。流量検出部602にはダイヤフラム672が設けられており、以下に説明する流量検出部602の各端子と処理部604とがワイヤ542で電気的に接続されている。さらに処理部604の各端子と対応するリード514とがワイヤ543で接続されている。また回路パッケージ400の接続端子となる部分とプレート532との間に位置するリード514は、それらの間にチップ状の回路部品516が接続されている。
このように回路パッケージ400として完成された場合の最も先端側に、ダイヤフラム672を有する流量検出部602を配置し、前記流量検出部602に対して接続端子となる方に処理部604がLSIの状態で配置され、さらに処理部604の端子側に接続用のワイヤ543が配置されている。このように回路パッケージ400の先端側から接続端子の方向に順に、流量検出部602、処理部604、ワイヤ543、回路部品516、接続用のリード514と配置することで、全体がシンプルとなり、全体が簡潔とした配置となる。
プレート532を支えるために、太いリードが設けられており、このリードはリード556やリード558により枠512に固定されている。なお、プレート532の下面には上記太いリードと接続されるプレート532と同等の面積の図示しないリード面が設けられており、プレート532がこのリード面上に搭載される。これらリード面はグランド接地されている。これによって、上記流量検出部602や処理部604の回路内の接地を共通して上記リード面を介して行うことでノイズを抑えることができ、被計測気体30の計測精度を向上している。またプレート532から流路の上流側の方に、すなわち上述した流量検出部602や処理部604回路部品516の軸を横切る方向の軸に沿って突出するようにして、リード544が設けられている。このリード544には温度検出素子518、例えばチップ状のサーミスタが、接続されている。さらに前記突出部の根元である処理部604に近い方に、リード548が設けられ、リード544とリード548とは細い接続線546で電気的に接続されている。リード548とリード544とを直接接続すると、熱がこれらリード548とリード544とを介して温度検出素子518に伝わり、正確に被計測気体30の温度を計測することができなくなる。このため断面積の小さい線である熱抵抗の大きい線で接続することにより、リード548とリード544との間の熱抵抗を大きくできる。これにより、熱の影響が温度検出素子518に及ばないようにし、被計測気体30の温度の計測精度を向上している。
またリード548はリード552やリード554により、枠512に固定されている。これらリード552やリード554と枠512との接続部分は、前記突出している温度検出素子518の突出方向に対して傾斜した状態で枠512に固定されており、金型もこの部分で斜めの配置となる。第1樹脂モールド工程でモールド用樹脂がこの斜めの状態に沿って流れることにより、温度検出素子518が設けられた先端部分に、第1樹脂モールド工程のモールド用樹脂がスムーズに流れ、信頼性が向上する。
図13に樹脂の圧入方向を示す矢印592を示している。回路部品を搭載したリードフレームを金型で覆い、金型に樹脂注入用の圧力孔590を丸印の位置に設け、前記矢印592の方向から熱硬化性樹脂を前記金型内に注入する。前記圧力孔590から矢印592の方向に、回路部品516や温度検出素子518があり、温度検出素子518を保持するためのリード544がある。さらに矢印592の方向と近い方向にプレート532や処理部604、流量検出部602が設けられている。このように配置することで、第1樹脂モールド工程で樹脂がスムーズに流れる。第1樹脂モールド工程では、熱硬化性樹脂を使用しており、硬化する前に樹脂を全体に行き渡らせることが重要である。このためリード514における回路部品や配線の配置と、圧力孔590や圧入方向の関係がたいへん重要となる。
6.2 ダイヤフラム裏面の空隙と開口とを繋ぐ構造とそれに基づく効果
図14は、図13のC−C断面の一部を示す図であり、ダイヤフラム672および流量検出部(流量検出素子)602の内部に設けられた空隙674と孔520とを繋ぐ連通孔676を説明する、説明図である。後述するように被計測気体30の流量を計測する流量検出部602にはダイヤフラム672が設けられており、ダイヤフラム672の背面には空隙674が設けられている。ダイヤフラム672には図示していないが被計測気体30と熱のやり取りを行い、これによって流量を計測するための素子が設けられている。ダイヤフラム672に成形させている素子間に、被計測気体30との熱のやり取りとは別に、ダイヤフラム672を介して素子間に熱が伝わると、正確に流量を計測することが困難となる。このためダイヤフラム672は熱抵抗を大きくすることが望ましく、ダイヤフラム672はできるだけ薄く作られている。
流量検出部(流量検出素子)602は、ダイヤフラム672の熱伝達面437が露出するように、は、第1樹脂モールド工程により成形された回路パッケージ400の熱硬化性樹脂に埋設されて固定されている。ダイヤフラム672の表面は図示しない前記素子が設けられ、前記素子は、ダイヤフラム672に相当する熱伝達面露出部436において素子表面の熱伝達面437を介して図示していない被計測気体30と互いに熱の伝達を行う。熱伝達面437は各素子の表面で構成しても良いし、その上に薄い保護膜を設けても良い。素子と被計測気体30との熱伝達がスムーズに行われ、一方素子間の直接的な熱伝達ができるだけ少ない方が望ましい。
流量検出部(流量検出素子)602の前記素子が設けられている部分は、計測用流路面430の熱伝達面露出部436に配置されていて、熱伝達面437が計測用流路面430を成形している樹脂から露出している。流量検出部(流量検出素子)602の外周部は計測用流路面430を成形している第1樹脂モールド工程で使用された熱硬化性樹脂で覆われている。仮に流量検出部(流量検出素子)602の側面のみが前記熱硬化性樹脂で覆われ、流量検出部(流量検出素子)602の外周部の表面側が熱硬化性樹脂で覆われていないとすると、計測用流路面430を成形している樹脂に生じる応力をダイヤフラム672の側面のみで受けることとなり、ダイヤフラム672に歪が生じ、特性が劣化する恐れがある。図14に示すように流量検出部(流量検出素子)602の表側外周部も前記熱硬化性樹脂で覆われる状態とすることにより、ダイヤフラム672の歪が低減される。一方熱伝達面437と被計測気体30が流れる計測用流路面430との段差が大きいと、被計測気体30の流れが乱れ、計測精度が低下する。従って熱伝達面437と被計測気体30が流れる計測用流路面430との段差Wが小さいことが望ましい。
ダイヤフラム672は各素子間の熱伝達を抑制するために非常に薄く作られていて、流量検出部(流量検出素子)602の裏面に空隙674が形成されている。この空隙674を密閉すると温度変化により、ダイヤフラム672の裏面に形成されている空隙674の圧力が温度に基づき変化する。空隙674とダイヤフラム672の表面との圧力差が大きくなると、ダイヤフラム672が圧力を受けて歪を生じ、高精度の計測が困難となる。このため、プレート532には外部に開口する開口438(図12および図16参照)に繋がる孔520が設けられ、この孔520と空隙674とを繋ぐ連通孔676が設けられている。この連通孔676は例えば第1プレート534と第2プレート536の2枚のプレートで作られる。第1プレート534には孔520と孔521が設けられ、さらに連通孔676を作るための溝が設けられている。第2プレート536で溝および孔520と孔521を塞ぐことで、連通孔676が作られる。この連通孔676と孔520とにより、ダイヤフラム672の表面および裏面に作用する気圧が略等しくなり、計測精度が向上する。
上述のとおり、第2プレート536で溝および孔520と孔521を塞ぐことにより、連通孔676を作ることができるが、他の方法として、リードフレームを第2プレート536として使用することができる。図13に記載のように、プレート532の上にはダイヤフラム672および処理部604として動作するLSIが設けられている。これらの下側には、ダイヤフラム672および処理部604を搭載したプレート532を支えるためのリードフレームが設けられている。従ってこのリードフレームを利用することにより、構造がよりシンプルとなる。また前記リードフレームをグランド電極として使用することができる。このように第2プレート536の役割を前記リードフレームに持たせ、このリードフレームを用いて、第1プレート534に成形された孔520と孔521を塞ぐと共に第1プレート534に成形された溝を前記リードフレームで覆うようにして塞ぐことにより連通孔676を形成することで、全体構造がシンプルとなるのに加え、リードフレームのグランド電極としての作用により、ダイヤフラム672および処理部604に対する外部からのノイズの影響を低減できる。
図12に示す回路パッケージ400において、熱伝達面露出部436が形成されている回路パッケージ400の裏面に、押さえ跡442が残っている。第1樹脂モールド工程において、熱伝達面露出部436への樹脂の流入を防止するために熱伝達面露出部436の部分に金型、例えば入れ駒を当て、さらにその反対面の押さえ跡442の部分に金型を当て、両金型により熱伝達面露出部436への樹脂の流入を阻止する。このようにして熱伝達面露出部436の部分を成形することにより、極めて高い精度で、被計測気体30の流量を計測できる。
図15は第1樹脂モールド工程により図13に示すフレーム枠を熱硬化性樹脂でモールドし、熱硬化性樹脂で覆われた状態を示す。このモールド成形により、回路パッケージ400の表面に計測用流路面430が成形され、熱伝達面露出部436が計測用流路面430に設けられている。また熱伝達面露出部436の内部に配置されたダイヤフラム672の裏面の空隙674は開口438とつながる構成となっている。突出部424の先端部に被計測気体30の温度を計測するための温度検出部452が設けられており、内部に温度検出素子518(図13参照)が内蔵されている。図13に示すように、突出部424の内部では、熱伝達を抑制するために、温度検出素子518の電気信号を取り出すためのリードが分断され、熱抵抗の大きい接続線546が配置されている。これにより、温度検出部452への突出部424の根元からの熱伝達が抑制され、熱による影響が抑制される。
さらに図15で、突出部424の根元に傾斜部594や傾斜部596が作られている。第1樹脂モールド工程での樹脂の流れがスムーズになると共に、車に装着されて動作している状態で、傾斜部594や傾斜部596により、温度検出部452で計測された被計測気体30が突出部424からその根元の方にスムーズに流れ、突出部424の根元が冷却され、温度検出部452への熱の影響を低減できる効果がある。この図15の状態の後、リード514が端子毎に切り離され、接続端子412や端子414となる。
第1樹脂モールド工程において、熱伝達面露出部436や開口438への樹脂の流れ込みを防ぐことが必要である。このため、第1樹脂モールド工程では、熱伝達面露出部436や開口438の位置に、樹脂の流れ込みを阻止する、例えばダイヤフラム672より大きい入れ駒を当て、その裏面に押さえを当て、両面から挟み込む。図12(C)には、図15の熱伝達面露出部436や開口438あるいは図12(B)の熱伝達面露出部436や開口438と対応する裏面に、押さえ跡442や押さえ跡441が残っている。
図15で枠512から切り離されたリードの切断面が、樹脂面から露出することにより、リードの切断面から水分などが使用中に内部に侵入する恐れがある。このようなことがないようにすることが耐久性向上の観点や信頼性向上の観点で重要である。例えば図15の固定面434の部分は第2樹脂モールド工程で樹脂により覆われ、切断面が露出しない。また傾斜部594や傾斜部596のリード切断部が第2樹脂モールド工程で樹脂により覆われ、図13に示すリード552やリード554の枠512との切断面が、前記樹脂により覆われる。このことによりリード552やリード554の切断面の腐食や切断部からの水の侵入が防止される。リード552やリード554の切断面は温度検出部452の電気信号を伝える重要なリード部分と近接している。従って切断面を第2樹脂モールド工程で覆うことが望ましい。
6.3 回路パッケージ400の他の実施例とその効果
図16は回路パッケージ400の他の実施例であり、図16(A)は回路パッケージ400の正面図、図16(B)は背面図である。他の図に示されている符号と同じ符号は同じ作用をする構成であり、煩雑さを避けるため一部についてのみ説明する。先に説明した図12に示す実施例では、回路パッケージ400は、接続端子412と端子414とが回路パッケージ400の同じ辺に設けられている。これに対して図16に示す実施例では、接続端子412と端子414は異なる辺に設けられている。端子414は、熱式流量計300が有する外部との接続端子に接続されない端子である。このように、熱式流量計300が有する外部に接続する接続端子412と外部に接続しない端子414とを異なる方向に設けることにより、接続端子412の端子間を広くでき、その後の作業性が向上する。また端子414を接続端子412と異なる方向に延びるようにすることで、図13の枠512内のリードが一部分に集中するのを低減でき、枠512内でのリードの配置が容易となる。とくに接続端子412に対応するリードの部分には、回路部品516であるチップコンデンサなどが接続される。これら回路部品516を設けるにはやや広いスペースが必要となる。図16の実施例では、接続端子412に対応するリードのスペースを確保し易い効果がある。
図16に示す回路パッケージ400も図12に示す回路パッケージ400と同様に、パッケージ本体422から突出する突出部424の根元部に、太さがなだらかに変わる傾斜部462や傾斜部464が形成されている。これらによる効果は図12で説明したのと同様の効果がある。すなわち、図16において、パッケージ本体422の側面から突出部424が被計測気体30の上流方向に延びる形状で突出している。突出部424の先端部に温度検出部452が設けられ、温度検出部452の内部に温度検出素子518が埋設されている。突出部424とパッケージ本体422とのつながり部には、傾斜部462および464が設けられている。この傾斜部462あるいは傾斜部464により突出部424の根元を太くし、先端方向に進むにつれて徐々に細くなる形状が突出部424の根元部に作られる。すなわち突出方向を軸とした場合に前記突出方向の軸を横切る断面積が突出部424の先端に向かうにつれて徐々に減少する形状が、突出部424の根元部に設けられている。
このような形状を有することにより、回路パッケージ400を樹脂モールドにより成形する場合に、素子の保護などの目的で金型の内部にシートをあてて樹脂を流す方法を使用でき、シートと金型内面との密着性が良くなり、出来上がった回路パッケージ400の信頼性が向上する。また、突出部424は機械的な強度が弱く、根元で折れ易い。突出部424の根元を太くし、先端方向に進むにつれて徐々に細くなる形状により、根元への応力の集中を緩和でき、機械的な強度に優れる。また樹脂モールドで突出部424を作る場合に、樹脂が固まるときの体積変化などの影響で、反りなどが生じやすい。このような影響を低減できる。被計測気体30の温度をできるだけ正確に検出するためには突出長さを長くすることが望ましい。温度検出部452に設けられた温度検出素子518へのパッケージ本体422からの熱伝達が、突出部424の突出長さを長くすることにより、低減し易くなる。
図12(B)や図12(C)に示す如く、図16に示す他の実施例において、突出部424の根元を太くし、突出部424の前記根元をハウジング302で取り巻くようにして、回路パッケージ400をハウジング302に固定する。このように、突出部424の根元をハウジング302の樹脂で覆うことにより、機械的な衝撃により、突出部424が破損するのを防止できる。この他にも図12で説明した色々な効果を奏している。
図16における開口438や熱伝達面露出部436、計測用流路面430、押さえ跡441、押さえ跡442についての説明は、上述の内容と略同じであり、同じ作用効果を奏する。具体的な説明は、説明の繰り返しとなるので、省略する。
7. 熱式流量計300の生産工程
7.1 回路パッケージ400の生産工程
図17は熱式流量計300の生産工程の内の回路パッケージ400の生産工程を示す。図17は熱式流量計300の生産工程を示し、図18は熱式流量計300の生産工程の他の実施例を示す。図17において、ステップ1は図13に示すフレーム枠を生産する工程を示す。このフレーム枠は例えばプレス加工によって作られる。ステップ2では、ステップ1で作られたフレーム枠に、まずプレート532を搭載し、さらにプレート532に流量検出部602や処理部604を搭載し、さらに温度検出素子518、チップコンデンサなどの回路部品を搭載する。またステップ2では、回路部品間や回路部品とリード間、リード同士の電気的な配線を行う。このステップ2において、リード544とリード548の間を、熱抵抗を大きくするための接続線546で接続する。ステップ2では、図13に示す、回路部品がフレーム枠512に搭載され、さらに電気的な接続がなされた電気回路が作られる。
次にステップ3で、第1樹脂モールド工程により、回路部品が搭載されまた電気的な接続がなされた図13に示す電気回路が、熱硬化性樹脂によりモールドされ、回路パッケージ400が生産される。モールドされた状態の回路パッケージ400を図15に示す。また、ステップ3で、接続されているリードをそれぞれフレーム枠512から切り離し、さらにリード間も切り離し、図12や図16に示す回路パッケージ400を完成する。この回路パッケージ400には、図12や図16に示す通り、計測用流路面430や熱伝達面露出部436が成形されている。図16に示す回路パッケージ400の他の実施例に関しても、基本的な生産方法は同じである。
ステップ4で、出来上がった回路パッケージ400の外観検査や動作の検査を行う。ステップ3の第1樹脂モールド工程では、トランスファーモールドがなされる。ステップ2で作られた電気回路を金型内に固定し、金型に高温の樹脂を高い圧力で注入するので、電気部品や電気配線の異常が生じていないかを検査することが望ましい。この検査のために図12や図16に示す接続端子412に加え端子414が使用される。なお、端子414はその後使用されないので、この検査の後、根元から切断しても良い。例えば図16では、使用済みの端子414が根元で切断されている。
7.2 熱式流量計300の生産工程と計測特性の調整
図18では、図17により既に生産されている回路パッケージ400と既に図示しない方法で生産されている外部端子306とが使用される。ステップ5では、第2樹脂モールド工程によりハウジング302が作られる。このハウジング302は樹脂製の副通路溝やフランジ312や外部接続部305が作られると共に、図12に示す回路パッケージ400の斜線部分が第2樹脂モールド工程の樹脂で覆われ、回路パッケージ400がハウジング302に固定される。前記第1樹脂モールド工程による回路パッケージ400の生産(ステップ3)と第2樹脂モールド工程による熱式流量計300のハウジング302の成形との組み合わせにより、流量検出精度が大幅に改善される。ステップ6で繋がっていた各外部端子内端361の切り離しが行われ、接続端子412と外部端子内端361との接続がステップ7で行われる。
先に図5(B)や図6(B)を用いて説明したごとく、回路パッケージ400をハウジング302に固定するための固定部3721や固定部3723は、厚肉部4714や厚肉部4715に加え、薄肉部4710あるいは薄肉部4716を有している。回路パッケージ400を包含する固定部3721や固定部3723を全て厚肉部で構成すると、図18のステップ5における第2樹脂モールド工程において、射出された樹脂の温度が低下することにより生じる樹脂の収縮に起因して、回路パッケージ400の表面に大きい力が加わることになる。この固定部3721あるいは固定部3723を構成する樹脂の収縮により回路パッケージ400の表面に大きい力が加わると、回路パッケージ400に内蔵された図13に示す電気回路に損傷を与える恐れがある。本実施例では、固定部3721あるいは固定部3723を厚肉部だけで構成するのではなく、一部を薄肉形状として、回路パッケージ400の表面を覆う第2樹脂モールド工程で作られる樹脂層の厚さを薄肉部では薄くしている。これにより回路パッケージ400の表面に作用する力が小さくなる。あるいは回路パッケージ400の単位面積当たりに作用する力が小さくなる。このことにより、回路パッケージ400に内蔵された図13に示す電気回路に損傷を与える恐れが低減される。
またハウジング302自身において、ハウジング302の固定部3721あるいは固定部3723の部分が大きく収縮すると、ハウジング302に反りやねじれが生じる恐れがある。特に固定部3721や固定部3723は、副通路とフランジ312とを繋ぐ上流側外壁335あるいは下流側外壁336に繋がっており、固定部3721や固定部3723の収縮による力が上流側外壁335や下流側外壁336に加わる。上流側外壁335や下流側外壁336は細長い形状を成しているので、ねじれや反りが生じ易い。前記薄肉部を設けることで、上流側外壁335や下流側外壁336に加わる力を低減でき、あるいは分散でき、上流側外壁335や下流側外壁336の反りやねじれの発生を抑制できる。
ステップ7によりハウジング302が完成すると次にステップ8で、表カバー303と裏カバー304がハウジング302に取り付けられ、ハウジング302の内部が表カバー303と裏カバー304で密閉されるとともに、被計測気体30を流すための副通路が完成し、熱式流量計300が完成する。さらに、図7で説明した絞り構造が表カバー303あるいは裏カバー304に設けられた突起部356あるいは突起部358により、作られる。なお、この表カバー303はステップ10でモールド成形により作られ、裏カバー304はステップ11でモールド成形によって作られる。また、これら表カバー303と裏カバー304はそれぞれ別工程で作られ、それぞれ異なる金型により成形されて作られる。
ステップ9で、完成した熱式流量計300の副通路に実際に既知量の気体が導入され、被計測気体30に対する流量計測特性の試験が行われる。上述したように副通路と流量検出部の関係が高い精度で維持されているので、前記流量計測特性の試験に基づき正確な計測特性となるように計測特性の補正を行うことで、非常に高い計測精度が得られる。また第1樹脂モールド工程と第2樹脂モールド工程で副通路と流量検出部の関係を左右する位置決めや形状関係の成形が行われるので、長期間使用しても特性の変化が少なく、高精度に加え高信頼性が確保される。
7.3 熱式流量計300の生産工程の他の実施例
図19は熱式流量計300を生産するための他の実施例である。図19で、図17により既に生産された回路パッケージ400と図示しない方法で既に生産された外部端子306とが使用され、第2樹脂モールド工程の前にステップ12で、回路パッケージ400の接続端子412と外部端子内端361との接続が行われる。この際、若しくはステップ12よりも前の工程で各外部端子内端361の切り離しが行われる。ステップ13で第2樹脂モールド工程によりハウジング302がつくられる。このハウジング302は樹脂製の副通路溝やフランジ312や外部接続部305が作られると共に、図12に示す回路パッケージ400の斜線部分が第2樹脂モールド工程の樹脂で覆われ、回路パッケージ400がハウジング302に固定される。前記第1樹脂モールド工程による回路パッケージ400の生産(ステップ3)と第2樹脂モールド工程による熱式流量計300のハウジング302の成形との組み合わせにより、上述した如く、流量検出精度が大幅に改善される。
ステップ13によりハウジング302が完成すると次にステップ8で、表カバー303と裏カバー304がハウジング302に取り付けられ、ハウジング302の内部が表カバー303と裏カバー304で密閉されるとともに、被計測気体30を流すための副通路が完成する。さらに、図7で説明した絞り構造が表カバー303あるいは裏カバー304に設けられた突起部356や突起部358により、作られる。上述したように、なお、この表カバー303はステップ10でモールド成形により作られ、裏カバー304はステップ11でモールド成形によって作られる。また、これら表カバー303と裏カバー304はそれぞれ別工程で作られ、それぞれ異なる金型により成形されて作られる。
ステップ9で、実際に副通路に規定量の気体が導入され、特性の試験が行われる。上述したように副通路と流量検出部の関係が高い精度で維持されているので、特性の試験による特性補正を行うことで、非常に高い計測精度が得られる。また第1樹脂モールド工程と第2樹脂モールド工程で副通路と流量検出部の関係を左右する位置決めや形状関係の成形が行わるので、長期間使用しても特性の変化が少なく、高精度に加え高信頼性が確保される。さらに図18を使用して上述した色々な効果が得られる。
8. 熱式流量計300の回路構成
8.1 熱式流量計300の回路構成の概要
図20は熱式流量計300の流量計測回路601を示す回路図である。なお、先に実施例で説明した温度検出部452に関する計測回路も熱式流量計300に設けられているが、図20では省略している。熱式流量計300の流量計測回路601は、発熱体608を有する流量検出部602と処理部604とを備えている。処理部604は、流量検出部602の発熱体608の発熱量を制御すると共に、流量検出部602の出力に基づいて流量を表す信号を、端子662を介して出力する。前記処理を行うために、処理部604は、Central Processing Unit(以下CPUと記す)612と入力回路614、出力回路616、補正値や計測値と流量との関係を表すデータを保持するメモリ618、一定電圧をそれぞれ必要な回路に供給する電源回路622を備えている。電源回路622には車載バッテリなどの外部電源から、端子664と図示していないグランド端子を介して直流電力が供給される。
流量検出部602には被計測気体30を熱するための発熱体608が設けられている。電源回路622から、発熱体608の電流供給回路を構成するトランジスタ606のコレクタに電圧V1が供給され、CPU612から出力回路616を介して前記トランジスタ606のベースに制御信号が加えられ、この制御信号に基づいて前記トランジスタ606から端子624を介して発熱体608に電流が供給される。発熱体608に供給される電流量は前記CPU612から出力回路616を介して発熱体608の電流供給回路を構成するトランジスタ606に加えられる制御信号により制御される。処理部604は、発熱体608で熱せられることにより被計測気体30の温度が当初の温度より所定温度、例えば100℃、だけ高くなるように発熱体608の発熱量を制御する。
流量検出部602は、発熱体608の発熱量を制御するための発熱制御ブリッジ640と、流量を計測するための流量検知ブリッジ650と、を有している。発熱制御ブリッジ640の一端には、電源回路622から一定電圧V3が端子626を介して供給され、発熱制御ブリッジ640の他端はグランド端子630に接続されている。また流量検知ブリッジ650の一端には、電源回路622から一定電圧V2が端子625を介して供給され、流量検知ブリッジ650の他端はグランド端子630に接続されている。
発熱制御ブリッジ640は、熱せられた被計測気体30の温度に基づいて抵抗値が変化する測温抵抗体である抵抗642を有しており、抵抗642と抵抗644、抵抗646、抵抗648はブリッジ回路を構成している。抵抗642と抵抗646の交点Aおよび抵抗644と抵抗648との交点Bの電位差が端子627および端子628を介して入力回路614に入力され、CPU612は交点Aと交点B間の電位差が所定値、この実施例ではゼロボルト、になるようにトランジスタ606から供給される電流を制御して発熱体608の発熱量を制御する。図20に記載の流量計測回路601は、被計測気体30のもとの温度に対して一定温度、例えば常に100℃、高くなるように発熱体608で被計測気体30を加熱する。この加熱制御を高精度に行えるように、発熱体608で暖められた被計測気体30の温度が当初の温度に対して一定温度、例えば常に100℃、高くなったときに、前記交点Aと交点B間の電位差がゼロボルトとなるように発熱制御ブリッジ640を構成する各抵抗の抵抗値が設定されている。従って図20に記載の流量計測回路601では、CPU612は交点Aと交点B間の電位差がゼロボルトとなるよう発熱体608への供給電流を制御する。
流量検知ブリッジ650は、抵抗652と抵抗654、抵抗656、抵抗658の四つの測温抵抗体で構成されている。これら四つの測温抵抗体は被計測気体30の流れに沿って配置されており、抵抗652と抵抗654は発熱体608に対して被計測気体30の流路における上流側に配置され、抵抗656と抵抗658は発熱体608に対して被計測気体30の流路における下流側に配置されている。また計測精度を上げるために抵抗652と抵抗654は発熱体608までの距離が互いに略同じくなるように配置されており、抵抗656と抵抗658は発熱体608までの距離が互いに略同じくなるように配置されている。
抵抗652と抵抗656との交点Cと、抵抗654と抵抗658との交点Dとの間の電位差が端子631と端子632を介して入力回路614に入力される。計測精度を高めるために、例えば被計測気体30の流れがゼロの状態で、前記交点Cと交点Dとの間の電位差がゼロとなるように流量検知ブリッジ650の各抵抗が設定されている。従って前記交点Cと交点Dとの間の電位差が、例えばゼロボルトの状態では、CPU612は被計測気体30の流量がゼロとの計測結果に基づき、主通路124の流量がゼロを意味する電気信号を端子662から出力する。
被計測気体30が図20の矢印方向に流れている場合、上流側に配置されている抵抗652や抵抗654は、被計測気体30によって冷却され、被計測気体30の下流側に配置されている抵抗656と抵抗658は、発熱体608により暖められた被計測気体30により暖められ、これら抵抗656と抵抗658の温度が上昇する。このため、流量検知ブリッジ650の交点Cと交点Dとの間に電位差が発生し、この電位差が端子631と端子632を介して、入力回路614に入力される。CPU612は流量検知ブリッジ650の交点Cと交点Dとの間の電位差に基づいて、メモリ618に記憶されている前記電位差と主通路124の流量との関係を表すデータを検索し、主通路124の流量を求める。このようにして求められた主通路124の流量を表す電気信号が端子662を介して出力される。なお、図20に示す端子664および端子662は新たに参照番号を記載しているが、先に説明した図5や図6に示す接続端子412に含まれている。
熱式流量計300が図1に記載のように、内燃機関の吸気管に搭載されて内燃機関の吸入空気量を測定するのに使用される。内燃機関の特定の運転状態において、吸気管を流れる吸入空気は脈動し、さらに内燃機関の吸気弁に向かって流れるだけでなく、逆流する現象が生じる。図20において、上述の逆流状態では被計測気体30の矢印で示す方向に対して負の流れ、すなわち逆向きの流れが生じる。この逆流では、抵抗652や抵抗654は、発熱体608により暖められた被計測気体30により暖められ、一方抵抗656と抵抗658は、逆流する被計測気体30によって冷却される。このように、被計測気体30の流れの順方向の動作と逆の動作となり、交点Cと交点Dとの間に順方向の流量に対して逆極性の電位差が発生する。端子631と端子632を介して検出される電圧の極性から被計測気体30の流れの方向を検知でき、検出された順方向の流量から検出された逆方向の流量を減ずることにより、内燃機関に実際に取り込まれた吸気流量を演算することが可能となる。
上記メモリ618には、上記交点Cと交点Dとの電位差と主通路124の流量との関係を表すデータが逆流状態も含め記憶されている。さらに熱式流量計300の生産後に、気体の実測値に基づいて求められた、ばらつきなどの測定誤差の低減のための補正データが記憶されている。なお、熱式流量計300の生産後の気体の実測およびそれに基づく補正値のメモリ618への書き込みは、図4に示す外部端子306や補正用端子307を使用して行われる。本実施例では、被計測気体30を流す副通路と計測用流路面430との配置関係や、被計測気体30を流す副通路と熱伝達面露出部436との配置関係が、高精度に非常にばらつきが少ない状態で、熱式流量計300が生産されているので、前記補正値による補正で、極めて高い精度の計測結果が得られる。
8.2 流量計測回路601の構成
図21は、上述した図20の流量検出部602の回路配置を示す回路構成図である。流量検出部602は矩形形状の半導体チップとして作られており、図21に示す流量検出部602の左側から右側に向って、矢印の方向に、被計測気体30が流れる。ただし、逆流が発生した状態では、前記矢印の方向に負の流れ、すなわち逆向きの流れが生じる。図21に示す流量検出部602は、被計測気体30との間で熱伝達を行うことで、順方向の流れの流量だけでなく逆方向の流れの状態における流量も検出できる。流量検出部602には、矩形形状のダイヤフラム672が成形されて、このダイヤフラム672には、半導体チップの厚さを薄くした破線で示す薄厚領域603が設けられている。この薄厚領域603は裏面側に空隙が成形されており、前記空隙が図12や図5、などに示す開口438に連通し、前記空隙内の気圧は開口438から導かれる気圧に依存する。
ダイヤフラム672の薄厚領域603は厚さを薄くすることで、熱伝導率が低くなっており、薄厚領域603に設けられた抵抗652や抵抗654、抵抗658、抵抗656へのダイヤフラム672を介しての熱伝達が抑えられ、被計測気体30との熱伝達により、これらの抵抗の温度が略定まる。
ダイヤフラム672の薄厚領域603の中央部には、発熱体608が設けられており、この発熱体608の周囲に発熱制御ブリッジ640を構成する抵抗642が設けられている。そして、薄厚領域603の外側に発熱制御ブリッジ640を構成する抵抗644、646、648が設けられている。このように成形された抵抗642、644、646、648によって発熱制御ブリッジ640が構成される。
また、発熱体608を挟むように、上流測温抵抗体である抵抗652、抵抗654と下流測温抵抗体である抵抗656、抵抗658が配置されており、発熱体608に対して被計測気体30が流れる矢印方向の上流側に、上流測温抵抗体である抵抗652、抵抗654が配置され、発熱体608に対して被計測気体30が流れる矢印方向の下流側に下流測温抵抗体である抵抗656、抵抗658が配置されている。このようにして、薄厚領域603に配置されている抵抗652、抵抗654と抵抗656、抵抗658とにより流量検知ブリッジ650が成形される。なお、上述の説明は被計測気体30が順方向に流れている状態を前提として説明としており、逆流が生じている場合は実際の被計測気体30の流れは、下流から上流に向かって流れていることとなる。
また、上記発熱体608の双方の端部は、図21の下側に記載した端子624および629にそれぞれ接続されている。ここで、図20に示すように、端子624にはトランジスタ606から発熱体608に供給される電流が加えられ、端子629はグランドとして接地される。
発熱制御ブリッジ640を構成する抵抗642、抵抗644、抵抗646、抵抗648は、それぞれ接続されて、端子626と630に接続される。図20に示すように、端子626には電源回路622から一定電圧V3が供給され、端子630はグランドとして接地される。また、上記抵抗642と抵抗646との間、抵抗646と抵抗648との間の接続点は、端子627と端子628に接続される。図21に記載の如く、端子627は抵抗642と抵抗646との交点Aの電位を出力し、端子627は抵抗644と抵抗648との交点Bの電位を出力する。図20に示すように、端子625には、電源回路622から一定電圧V2が供給され、端子630はグランド端子として接地グランドされる。また、上記抵抗654と抵抗658との接続点は端子631に接続され、端子631は図20の点Bの電位を出力する。抵抗652と抵抗656との接続点は端子632に接続され、端子632は図20に示す交点Cの電位を出力する。
図21に示すように、発熱制御ブリッジ640を構成する抵抗642は、発熱体608の近傍に成形されているので、発熱体608からの発熱で暖められた気体の温度を精度良く計測することができる。一方、発熱制御ブリッジ640を構成する抵抗644、646、648は、発熱体608から離れて配置されているので、発熱体608からの発熱の影響を受け難い構成に成っている。抵抗642は発熱体608で暖められた気体の温度に敏感に反応するように構成されており、抵抗644や抵抗646、抵抗648は発熱体608の影響を受けにくい構成となっている。このため、発熱制御ブリッジ640による被計測気体30の検出精度が高く、被計測気体30をその初期温度に対して所定温度だけ高める制御を高精度で行うことができる。
この実施例では、ダイヤフラム672の裏面側に空隙が形成されており、この空隙が図12や図5に記載の開口438に連通しており、ダイヤフラム672の裏面側空隙の圧力とダイヤフラム672の表側の圧力との差が大きくならないようにしている。この圧力差によるダイヤフラム672の歪を抑制できる。このことは流量計測精度の向上に繋がる。
上述したようにダイヤフラム672は薄厚領域603を成形し、薄厚領域603の厚さを非常に薄くしており、ダイヤフラム672を介しての熱伝導を極力抑制している。従って流量検知ブリッジ650や発熱制御ブリッジ640は、ダイヤフラム672を介しての熱伝導の影響が抑制され、被計測気体30の温度に依存して動作する傾向がより強まり、計測動作が改善される。このため高い計測精度が得られる。
9. 被計測気体30の温度計測
9.1 温度検出部452の構造とそれに基づく効果
図2乃至図6に示す如く被計測気体30の温度は熱式流量計300に設けられた温度検出部452によって計測される。温度検出部452はハウジング302から上流側などに向かって外に突出して、被計測気体30に直接触れる構造となっている。このような構造により被計測気体30の温度計測の精度が向上する。また被計測気体30の流れに沿う方向の上流側から入口343に流入する気体の温度が温度検出部452により計測され、さらにその気体が温度検出部452を支える部分である温度検出部452の根元部分に向かって流れることにより、温度検出部452を支える部分の温度を被計測気体30の温度に近づく方向に冷却する作用を為す構造を備えている。このような構造により計測精度が向上する。
主通路124である吸気管の温度は通常被計測気体30よりかなり温度が高くなり、フランジ312あるいは熱絶縁部315から計測部310内の上流側外壁を通って、温度検出部452を支える部分に熱が伝わり、温度の計測精度に影響を与える恐れがある。上述のように、被計測気体30が温度検出部452により計測された後、温度検出部452の支える部分に沿って流れることにより、前記支える部分が冷却される。従ってフランジ312あるいは熱絶縁部315から計測部310内の上流側外壁を通って温度検出部452を支える部分に熱が伝わるのを抑制できる。
特に、温度検出部452の支え部分では、計測部310内の上流側外壁が下流側に向かって凹む形状を成しているので、計測部310内の上流側外壁と温度検出部452との間の距離を長くできる。熱伝達距離が長くなるとともに、被計測気体30による冷却部分の距離が長くなる。従ってフランジ312あるいは熱絶縁部315からもたらされる熱の影響を低減できる。これらのことから計測精度が向上する。
上記上流側外壁が下流側に向かって、すなわちハウジング302の内部に向かって凹む形状を成しているので、ハウジング302の上流側外壁335で固定することができ、回路パッケージ400の固定が容易となる。また温度検出部452を有する突出部424(図12参照)の補強にもなる。
図2および図3により先に説明のとおり、ケース301における被計測気体30の上流側に入口343が設けられ、入口343から導かれた被計測気体30は、温度検出部452の周囲を通り、表側出口344や裏側出口345から主通路124に導かれる。温度検出部452が被計測気体30の温度が計測され、外部接続部305が有する外部端子306から計測された温度を表す電気信号が出力される。熱式流量計300が有するケース301は表カバー303や裏カバー304と、ハウジング302を備えており、ハウジング302は入口343を形成するための窪みを有し、該窪みは外壁窪み部366(図5と図6参照)で作られる。また表側出口344や裏側出口345は、表カバー303や裏カバー304に設けられた孔により、形成される。次に説明するように温度検出部452は突出部424の先端部に設けられており、機械的に弱い。表カバー303や裏カバー304は機械的な衝撃から突出部424を守る働きをしている。
また図8や図9に示す表カバー303や裏カバー304には、表保護部322や裏保護部325が成形されている。図2や図3に示すように入口343の表側側面に表カバー303に設けられた表保護部322が配置され、また入口343の裏側側面に、裏カバー304に設けられた裏保護部325が配置されている。入口343内部に配置されている温度検出部452が表保護部322と裏保護部325で保護され、生産中および車への搭載時に温度検出部452が何かとぶつかることなどによる温度検出部452の機械的な損傷を防止できる。
また図12や図16に示すように温度検出部452を支える突出部424の根元部は、先端に対して根元部が徐々に太くなっており、入口343から入った被計測気体30が徐々に太くなる前記根元部に沿うように流れるので、冷却効果が増大する。突出部424の根元部は流量計測回路に近く、流量計測回路の発熱の影響を受け易い。さらに、温度検出部452に設けられている温度検出素子518を接続するためのリード548が突出部424の根元部に埋設されている。このためリード548を介して熱が伝達される可能性がある。突出部424の根元部を太くして被計測気体30との接触面積を増やすことで、冷却効果を上げることができる。
9.2 温度検出部452および突出部424の成形とそれに基づく効果
回路パッケージ400は、流量を計測するための後述する流量検出部602や処理部604を内蔵している回路パッケージ本体422と突出部424とを有している。図2に示すように回路パッケージ本体422の側面から突出部424が被計測気体30の上流方向に延びている形状で突出している。突出部424の先端部に温度検出部452が設けられ、温度検出部452の内部に、図12に示す如く、温度検出素子518が埋設されている。突出部424と回路パッケージ本体422とのつながり部には、図12や図16に示す如く、傾斜部462および464が設けられている。この傾斜部462あるいは傾斜部464により突出部424の根元を太くし、先端方向に進むにつれて徐々に細くなる形状が突出部424の根元部に作られる。突出方向の軸に対して前記軸を横切る断面積が、突出部424の根元部で、先端方向に進むにつれて減少する形状を有している。
このように、回路パッケージ400の表面と突出部424の表面のつながり部分で徐々に変化する構造で繋がっているので、回路パッケージ400を樹脂モールドにより成形する場合に、素子の保護などの目的で金型の内部にシートをあてて樹脂を流す方法を使用でき、シートと金型内面との密着が良くなり、信頼性が向上する。表面が急激に変化する場合には、前記シートに無理な力が加わり、金型内壁面と前記シートとの接触部にずれなどが生じ、樹脂成型がうまく行われない問題がある。また、突出部424は機械的な強度が弱く、根元で折れ易い。突出部424の根元を太くし、先端方向に進むにつれて徐々に細くなる形状により、根元への応力の集中を緩和でき、機械的な強度に優れる。また樹脂モールドで突出部424を作る場合に、樹脂が固まるときの体積変化などの影響で、反りなどが生じやすい。このような影響を低減できる。被計測気体30の温度をできるだけ正確検出するためには突出長さを長くすることが望ましい。温度検出部452に設けられた温度検出素子518への回路パッケージ本体422からの熱伝達を、突出部424の突出長さを長くすることにより、低減し易くなる。
図12(B)や図12(C)に示す如く突出部424の根元を太くし、突出部424の前記根元をハウジング302の樹脂で取り巻くようにして、回路パッケージ400をハウジング302に固定する。このように、突出部424の根元をハウジング302の樹脂で覆うことにより、機械的な衝撃により、突出部424が破損するのを防止できる。
高精度に被計測気体30の温度を検出するには、被計測気体30以外部分との熱の伝達をできるだけ少なくすることが望ましい。温度検出部452を支持する突出部424は、その根元より、先端部分が細い形状を成し、その先端部分に温度検出部452を設けている。このような形状により、温度検出部452への突出部424の根元部からの熱の影響が低減される。
また温度検出部452で被計測気体30の温度が検出された後、被計測気体30は突出部424に沿って流れ、突出部424の温度を被計測気体30の温度に近づける作用を為す。このことにより、突出部424の根元部の温度が温度検出部452に及ぼす影響が抑制されている。特にこの実施例では、温度検出部452を備える突出部424の近傍が細く、突出部424の根元に行くに従って太くなっている。このため被計測気体30がこの突出部424の形状に沿って流れ、突出部424を効率的に冷却する。
図12で、突出部424の根元部で斜線部は第2樹脂モールド工程でハウジング302を成形する樹脂により覆われる固定面432である。突出部424の根元部の斜線部に窪みが設けられている。これは、ハウジング302の樹脂に覆われない窪み形状の部分が設けられていることを示している。このように突出部424の根元部ハウジング302の樹脂に覆われない窪み形状の部分を作ることにより、被計測気体30により突出部424がさらに冷却し易くしている。図16では斜線部の表示を省略しているが、図12と同様である。
回路パッケージ400には、内蔵する流量検出部602や処理部604を動作させるための電力の供給、および流量の計測値や温度の計測値を出力するために、接続端子412が設けられている。さらに、回路パッケージ400が正しく動作するかどうか、回路部品やその接続に異常が生じていないかの検査を行うために、端子414が設けられている。この実施例では、第1樹脂モールド工程で流量検出部602や処理部604を、熱硬化性樹脂を用いてトランスファーモールドすることにより回路パッケージ400が作られる。トランスファーモールド成形を行うことにより、回路パッケージ400の寸法精度を向上することができるが、トランスファーモールド工程では、流量検出部602や処理部604を内蔵する密閉した金型の内部に加圧した高温の樹脂が圧入されるので、出来上がった回路パッケージ400について、流量検出部602や処理部604およびこれらの配線関係に損傷が無いかを検査することが望ましい。この実施例では、検査のための端子414を設け、生産された各回路パッケージ400についてそれぞれ検査を実施する。検査用の端子414は計測用には使用されないので、上述したように、端子414は外部端子内端361には接続されない。なお各接続端子412には、機械的弾性力を増すために、湾曲部416が設けられている。各接続端子412に機械的弾性力を持たせることで、第1樹脂モールド工程による樹脂と第2樹脂モールド工程による樹脂の熱膨張係数の相違に起因して発生する応力を吸収することができる。すなわち、各接続端子412は第1樹脂モールド工程による熱膨張の影響を受け、さらに各接続端子412に接続される外部端子内端361は第2樹脂モールド工程による樹脂の影響を受ける。これら樹脂の違いに起因する応力の発生を吸収することができる。
9.3 突出部424の根元部に成形された傾斜部462,464の作用とその効果
図12や図15、図16に基づいて先に説明したごとく、突出部424の根元部に傾斜部462および464が設けられている。この傾斜部462あるいは傾斜部464により突出部424の根元を太くし、先端方向に進むにつれて徐々に細くなる形状が突出部424の根元部に作られる。すなわち突出方向を軸とした場合に前記突出方向の軸を横切る断面積が徐々に減少する形状が、突出部424の根元部に設けられている。
回路パッケージ400を樹脂モールドにより成形する場合に、素子の保護などの目的で金型の内部にシートをあてて樹脂を流す場合に、シートと金型内面との密着が良くなり、信頼性が向上する。また、突出部424は機械的な強度が弱く、根元で折れ易い。突出部424の根元を太くし、先端方向に進むにつれて徐々に細くなる形状により、根元への応力の集中を緩和でき、機械的な強度に優れる。また樹脂モールドで突出部424を作る場合に、樹脂が固まるときの体積変化などの影響で、反りなどが生じやすい。このような影響を低減できる。被計測気体30の温度をできるだけ正確に検出するためには突出長さを長くすることが望ましい。温度検出部452に設けられた温度検出素子518への回路パッケージ本体422からの熱伝達を、突出部424の突出長さを長くすることにより、低減し易くなる。
図12(B)や図12(C)に示す如く突出部424の根元を太くし、突出部424の前記根元をハウジング302で取り巻くようにして、回路パッケージ400をハウジング302に固定する。このように、突出部424の根元をハウジング302の樹脂で覆うことにより、機械的な衝撃により、突出部424が破損することを防止できる。
突出部424の根元に傾斜部463を設けることにより、突出部424の根元を太くでき、先端方向に進むにつれて徐々に細くなる形状を、突出部424の根元部に設けることができる。このような形状を有することにより、回路パッケージ400を樹脂モールドにより成形する場合に、素子の保護などの目的で金型の内部にシートをあてて樹脂を流す方法を利用でき、シートと金型内面との密着が良くなり、信頼性が向上する。また、突出部424は機械的な強度が弱く、根元で折れ易い。突出部424の根元を太くし、先端方向に進むにつれて徐々に細くなる形状により、根元への応力の集中を緩和でき、機械的な強度に優れる。また樹脂モールドで突出部424を作る場合に、樹脂が固まるときの体積変化などの影響で、反りなどが生じやすい。このような影響を低減できる。被計測気体30の温度をできるだけ正確に検出するためには突出長さを長くすることが望ましい。温度検出部452に設けられた温度検出素子518への回路パッケージ本体422からの熱伝達を、突出部424の突出長さを長くすることにより、低減し易くなる。
図12や図16において、突出部424の根元を太くし、突出部424の前記根元をハウジング302の固定部3723で取り巻くようにして副通路を成形するハウジング302の樹脂で覆うことにより、機械的な衝撃に対して強くなり、突出部424が破損するのを防止できる。なお図12で、回路パッケージ400の外観上に記載した斜線部分は、第1樹脂モールド工程で回路パッケージ400を製造した後に、第2樹脂モールド工程でハウジング302を成形する際に第2樹脂モールド工程で使用される樹脂により回路パッケージ400が覆われる固定面432、固定部3723および固定面434を示す。すなわち、これら固定面により回路パッケージ400の機械的強度が増し、特に固定面432によって突出部424の根元の機械的強度を向上することができる。このほかにも図12で説明した色々な効果を奏している。
10. 被計測気体30の温度計測のためのカバーの形状
10.1 被計測気体30の温度計測の概要と効果
図2および図3に示す如く上流側に開口した入口343から被計測気体30が導入され、突出部424の先端部に設けられた温度検出部452で導入された被計測気体30の温度が計測される。流量を計測するための回路パッケージ400に温度検出部452が設けられており、熱式流量計300を計測対象例えば吸気管に固定することにより、流量だけでなく被計測気体30の温度も計測できるので、作業性に優れている。また表カバー303や裏カバー304、ハウジング302で周囲が囲まれた入口343の内部に温度検出部452を有する突出部424が配置されているので、安全性も優れている。
被計測気体30の温度を高精度で計測するには、できるだけ多くの被計測気体30が温度検出部452に接触することが望ましい。また他の熱源から温度検出部452へ熱が伝わり難い構造とすることが望ましい。図5や図6を使用して上述した如く、温度検出部452が突出部424の先端側に設けられている。このため上流側に開口した入口343から導入された被計測気体30が温度検出部452に接触し易く、また突出部424が長いので根元から先端の方に熱が伝わり難くなっている。また入口343から導入された被計測気体30が突出部424に沿って流れるので、突出部424の根元から先端の方に伝わる熱が被計測気体30により冷却される構造に成っている。この構造により他の熱源の影響を受けにくくなっている。このような理由で、被計測気体30の温度を高い精度で計測できる。
さらに図13に基づいて先に説明した如く、温度検出部452に設けられた温度を計測するための温度検出素子518の電気信号を、温度を計測するための制御回路である処理部604に伝えるためのリード548と、温度検出素子518が接続されているリード544との間を切断し、熱抵抗の大きい接続線546を介してリード548に温度検出素子518の電気信号が伝えられるように構成している。この構成により、リード548を介して伝わってくる熱の影響を低減できる。このことは計測精度の向上に繋がる。
一方温度検出素子518はリード544に接続されているので、温度検出素子518がリード544により確りと保持されるので、高い信頼性が確保される。図13に示す回路はこの後トランスファーモールドされて、前記突出部424が成形される。温度検出素子518がリード544に固定されているので、前記トランスファーモールド工程により損傷を受ける可能性が低い。このことから生産性においても優れている。
図2や図3に示す如く、表カバー303や裏カバー304には前記突出部424の先端部を保護する表保護部322や裏保護部325が設けられている。これにより突出部424が機械的に保護される。さらに突出部424の根元部に表側出口344や裏側出口345が設けられている。表カバー303や裏カバー304の外側の面が平らであり、表側出口344や裏側出口345の外側を流れる被計測気体30の流速が早く、表側出口344や裏側出口345の内側に比べ圧力が低くなる。このため入口343から導入された被計測気体30は表側出口344や裏側出口345から外部に排出される。また入口343が上流に向かって開口しているので、入口343には被計測気体30の動圧が加わる。これらのことから十分な被計測気体30が入口343から導入され、温度が計測されると共に突出部424を冷却し、表側出口344や裏側出口345から主通路124内に排出される。このようにして高い精度で被計測気体30の温度が計測される。
11. 渦による逆流の流量計測誤差の低減に関する他の実施例
11.1 入口側副通路4232の壁4217を使用した実施例
先に図10及び図11を用いて、主通路124を流れる被計測気体30の逆流状態での流量計測における計測誤差の要因について説明した。またこの計測誤差の要因に対する対応策の概要を、図10を用いて説明した。図10の他の実施例を図22から図26を用いて説明する。図22(A)は熱式流量計300の一部を示す正面図である。また図22(B)は熱式流量計300の一部を示す背面図である。図23(A)および図23(B)は何れも図22(A)の斜視図であり、図23(A)と図23(B)は斜視図における視点の角度を異にしている。すなわち、図23(A)は出口352が表れる視点であるのに対し、図23(B)は入口350が表れる視点になっている。図24(A)はハウジング302の一部を示す正面図、図24(B)はハウジング302の一部を示す背面図である。なお、図24(A)および図24(B)の記載において、特別に格子状の表示を行った部分は、実際は出口側室用孔4215が形成されている。この格子状の表示部分は図10に示す渦4242を減衰させるための出口側室4216を構成するための空間である。特にこの空間を強調するために格子状の表示を行った。図25(A)は図24(A)の斜視図、図25(B)は図24(B)の斜視図である。図26は図22(A)のB−B断面図である。
図22(A)および図23(B)、図25(B)において、主通路124の中を被計測気体30が順方向に流れている場合に、図23(B)に示される入口350から被計測気体30の一部が副通路内に取り込まれる。この入口350の部分は、図24(B)に示されるように、ハウジング302には入口350を形成するための入口溝351が成形されている。この入口溝351と裏カバー304とにより入口350が作られ、入口350から主通路124を流れる被計測気体30の一部が取り込まれる。入口350から取り込まれた被計測気体30は、図24(B)に示す裏側副通路溝334により形成される入口側副通路4232に沿って流れ、図示が省略されている流量計測通路部として作用する計測用流路面430で取り込まれた被計測気体30の流速が計測され、計測された流速から予め保持していたデータに基づいて、主通路124を流れる被計測気体30の流量が出力される。
流量計測通路部として作用する計測用流路面430で計測された後、入口350から取り込まれた被計測気体30は、図24(A)に示す表側副通路溝332で形成される出口側副通路4234を流れ、格子状の表示で表される出口側室4216を形成するための空間に導かれる。出口側室4216はハウジング302に成形された表裏面を貫通する出口側室用孔4215とハウジング302の両面に設けられた表カバー303および裏カバー304で形成される。
図22(A)や図22(B)に示す如く、表カバー303や裏カバー304の出口352近傍の部分には、それぞれ切欠きが成形されており、裏カバー304の入口350近傍の形状と形状を異にしている。裏カバー304はその入口350近傍では、ハウジング302の裏面の端まで覆うように、ハウジング302の側端に沿う形状を成している。一方、表カバー303や裏カバー304の出口352近傍の部分は、それぞれ切欠きが設けられ、これら切欠きのために、表カバー303や裏カバー304の出口352近傍の端部から、ハウジング302が右側面の端部および前記出口側室4216の一部が突出している。従って入口350で取り込まれた被計測気体30は入口側副通路4232を流れ、さらに出口側副通路4234を流れ、その後出口側室4216に導かられる。出口側室4216から被計測気体30は熱式流量計300の表裏両方の前記表カバー303および裏カバー304の切欠きにより形成された出口開口から主通路124に排出される。さらに図23(A)に示す如く熱式流量計300の表裏両側の出口開口だけでなく、出口側室4216の下流方向に形成された出口開口4222からも熱式流量計300の下流側に被計測気体30が排出される。以下で説明する如く、主通路124を被計測気体30が逆流する状態では、出口開口4222に直接逆流する被計測気体30が流れ込み、被計測気体30の逆流する動圧が出口開口4222を介して出口側室4216の内部に作用する。
図25(A)および図25(B)はハウジング302の一部を示す斜視図であり、図25(A)で、出口側副通路4234を構成するための表側副通路溝332に沿って流れた被計測気体30は出口側室4216を構成するための貫通する出口側室用孔4215に導かれる。出口側室用孔4215に導かれた被計測気体30は、熱式流量計300の表裏両面に前記表裏の両カバーの切欠きにより形成された開口及び下流側に形成された開口から主通路124に排出される。
図22(A)のB−B断面を図26に示す。図10に示す実施例と図26に示す実施例との大きな相違点は、出口開口4222から被計測気体30の逆流3030と共に入り込んだ渦4242を減衰させるガイドの作用をする壁4217を、図10に示す実施例では裏カバー304に設けられた突起により形成していたのに対し、図26に示す実施例では入口側副通路4232と出口側室4216とを仕切る壁を利用して形成した点である。裏カバー304にガイドのための突起を設ける必要が無く、図26に示す実施例の方がカバーの樹脂成型性がよく、より寸法精度の高いカバーを形成可能となる。さらにハウジング302を成形する樹脂モールド工程で出口側室4216のための孔や表側副通路溝332、裏側副通路溝334を成形する金型により、形状が決められるので、極めて高い精度で出口形状が成形できる。このため逆流する被計測気体30の流量を極めて高い精度で計測できる。なお、出口側副通路4234の流れの軸上に渦流入抑制部4214が設けられており、渦4242が開口から直接出口側副通路4234に入り込めない構造となっている。このような構造がハウジング302の成形で金型により作られるので、極めて高い成形精度が確保される。前述の如く順方向並びに逆方向の被計測気体30の流量計測を極めて高い精度で行うことが可能となる。
既に図10および図11を用いて説明した如く、図26で、出口側副通路4234の流れの軸である流れ軸4235を遮るように渦流入抑制部4214を設けたことにより、図11の波形4916に示す誤差要因である渦4242の影響を、低減できる。また出口開口4222から被計測気体30の逆流3030が取り込まれる構造とすることで、逆流3030に伴う動圧が出口側室4216に作用する構造となっている。図11の波形4912の誤差要因である逆流する被計測気体30の副通路への取り込み不足に起因する誤差を低減できる。なお、上述したように出口側室4216内で被計測気体30の逆流3030の進路が大きく変えられるので、逆流3030と共に出口側室4216に入り込まれた渦4242を減衰させることができ、この渦に起因する図11の波形4916により示される誤差原因も解決できる。
逆流3030を取り込むための出口開口4222の開口面が、主通路124の被計測気体30の流れの軸4235に垂直であることが好ましいが、これに限ることはなく、傾斜していてもよい。すなわち逆流する被計測気体30を十分に取り込めることが重要であり、被計測気体30の流れの軸に対して垂直より出口開口4222の開口面がある程度傾斜していても、出口開口4222を介して逆流する動圧が出口側室4216の内部に作用する構造であればよい。
出口側室4216は出口開口4222の他に出口開口4224と出口開口4226とを有している。出口開口4224と出口開口4226は出口側室4216から主通路124に排出される被計測気体30の流体抵抗を下げるための作用をする。さらに被計測気体30の逆流時に主通路124から入り込む被計測気体30の流体抵抗を下げる作用をする。
11.2 さらに他の実施例についての説明
図27は図10あるいは図22から図26に記載した実施例の更に他の実施例を示す。主通路124を流れる被計測気体30の逆流状態での流量の計測精度を向上さるためには、逆流する被計測気体30の副通路への取り込み量を多くすることが望ましい。出口開口4222を大きくすることで出口開口4222から取り込むことのできる被計測気体30の逆流3030の量を多くできる。図27は他の実施例に比べ、下流方向に開口する出口開口4222の開口面積を大きくしている。
表カバー303と裏カバー304との間の距離には限界があり、出口開口4222の開口面積をより大きくするために、図27に示す実施例では裏カバー304の出口側を膨らませている。この実施例では、出口開口4222の開口を大きくしているので、出口側副通路4234の出口352の流体抵抗を小さくできる。この場合には、出口側室4216から主通路124への排出に伴う流体抵抗を減少させられるので、あるいは熱式流量計300の下流側の低圧力により出口側室4216から主通路124へ吸い出される被計測気体30の量を増やすことができるので、被計測気体30の逆流状態だけでなく、被計測気体30が順方向に流れている状態での計測精度も向上することができる。また出口開口4222の開口面積を大きくしたことにより、図26に示す出口開口4226や出口開口4224の開口面積を小さくしたり、あるいはこれらを無くしたりすることができる。従ってハウジング302を樹脂モールドにより成形する場合の出口352付近の形状をシンプルにできる効果がある。
出口開口4222を大きくすることで取り込まれる渦4242の影響が大きくなるが、壁4217を設けることで取り込まれた渦4242を十分に減衰することができる。
図28を用いてさらに他の実施例を説明する。図28はハウジング302の表側副通路溝332の部分拡大図である。表側副通路溝332と表カバー303とによってつくられる出口側副通路4234の流れの軸4292は主通路124の被計測気体30の流れの軸4294に対して少し角度を有している。すなわち出口側副通路4234から被計測気体30が主通路124に排出される方向は軸4292に沿っている。一方主通路124内に被計測気体30の逆流が発生し、逆流3030が流れる方向は軸4294に沿っている。出口側副通路4234から被計測気体30が排出される方向を表す軸4292と主通路124内の被計測気体30の逆流状態での流れの軸4294とが一致していなくても、すなわちずれていても出口352から逆流する被計測気体30の動圧を取り込むことができれば、図11に示す波形4912に伴う誤差を抑制できる。従って図26や図27の開口面が逆流する流れの軸に垂直である必要が無く、少し角度を有していても十分な効果を得ることができる。
図29はさらに他の実施例であり、図10や図26、図27では渦4242が入り込むのを阻止する渦流入抑制部4214が板形状である。しかし板形状でなくても渦4242の出口側副通路4234への浸入を阻止することができる。図29では出口側副通路4234の流れ軸4235の上に異なる形状の渦流入抑制部4214を配置している。渦流入抑制部4214の形状は、渦流入抑制部4214自身の下流側形状において図29に示すように徐々に断面積が減少する、言い換えると流線型の形状をしている。渦流入抑制部4214が板形状の場合には、渦流入抑制部4214自身が渦4242の発生を助長する場合がある。図29に示す慶事用では、渦流入抑制部4214自身の下流側が流線型を成しているので、熱式流量計300の下流側に発生する渦を低減できる。
さらに渦流入抑制部4214自身の形状が、その上流側と下流側の両方においてその断面積が徐々に減少する形状をなしている。そのため渦流入抑制部4214がその両側を通過する順方向の被計測気体30の流れ4248、あるいは渦流入抑制部4214の両側を通過する逆方向の被計測気体30の流れに対して、絞りの作用をする。渦流入抑制部4214の両側部を流れる被計測気体30に対して絞りの作用をすることで、順方向に被計測気体30が流れている場合あるいは逆方向に被計測気体30が流れている場合の両方の状態において、渦4242の入り込みを阻止し、また入り込もうとする渦4242を減衰する作用をする。一方渦流入抑制部4214に沿って被計測気体30が流れることにより、渦流入抑制部4214が被計測気体30の出入りを完全に遮断するのではなく、被計測気体30の出入りを可能とすることで、出口352での流体抵抗が低減され、このことが計測精度の向上につながる。すなわち渦流入抑制部4214に絞り形状を形成することで、出口側副通路4234に入り込もうとする渦4242を上記絞り形状で減衰されることができる。また形成された絞り形状で被計測気体30を双方向に流すことが可能となりこのことで、流体抵抗が減少し、被計測気体30の流れの順方向及び逆方向の両方向において流量の計測精度を向上することができ。なお、図29で渦流入抑制部4214をハウジング302に設ける構造とすることで、ハウジング302を成形する樹脂モールド工程で射出成型により高い精度で形成できる。このことにより計測精度を向上することが可能となる。
図30はさらに他の実施例であり、図30(A)はハウジング302の一部を示す正面図、図30(B)は図30(A)のE−E断面図である。出口側室4216で入り込んだ渦4242をできるだけ減衰させるために、出口側室4216に複数の羽根4262が形成されている。複数の羽根4262は出口開口4222から取り込まれた被計測気体30の逆流3030の進路を変更するだけでなく、絞り構造を有し、さらに取り込まれた逆流3030の流路を細かく分断する作用をなすので、入り込んだ渦4242を確実に減衰させると共に、層流状態に近づけて出口側副通路4234に逆流の被計測気体30を導く働きをする。
なお、複数の羽根4262は表カバー303あるいは裏カバー304に設けることで、ハウジング302への表カバー303あるいは裏カバー304の固定により、簡単に出口側室4216内に複数の羽根4262を簡単に配置できる。
図31はさらに他の実施例であり、図10や図26、図27、図29、図30の実施例では、熱式流量計300の表面と裏面との間、すなわち厚み方向に並べて出口開口4222と渦流入抑制部4214とを配置している。前記図10や図26、図27、図29、図30に示す実施例では、熱式流量計300をコンパクトに形成できる効果があるが、図27に記載の如く出口開口4222の開口面積を増大するためには、熱式流量計300の表面と裏面との間を広くすることが必要となる。
図31は熱式流量計300の厚み方向ではなく、熱式流量計300の長手方向に出口開口4222と渦流入抑制部4214とを配置した構造である。出口開口4222と渦流入抑制部4214との配置が異なるが、作用効果は略同じである。熱式流量計300の長手方向において出口開口4222と渦流入抑制部4214との配置を逆にしても良いが、図31では図示を省略したフランジ312側に出口開口4222を配置し、熱式流量計300の長手方向の先端側に渦流入抑制部4214を配置している。このように熱式流量計300の長手方向の先端側に渦流入抑制部4214を配置することで、図26や図29に示す入り込んだ渦4242を減衰させるためのガイドである壁4217をより成形し易くなる。すなわち裏側副通路溝334と表側副通路溝332とを隔てるための壁に前記壁4217を成形しようとした場合に表側副通路溝332を流れる被計測気体30に悪影響を及ぼさないようにして、前記壁4217を成形することが可能となる。さらにこの壁4217はハウジング302を成形する樹脂モールド工程で成形することができる。このため図31の構成は製造し易い構造である。
さらに他の実施例を図32や図33に記載する。図10や図26、図27、図29、図30の実施例では、出口開口4222は、一例として一つの開口で構成されている。しかし、複数個の開口で構成しても良い。図32や図33に示す実施例では、出口開口4222を複数個の開口で構成した例である。図32は代表的な形状である円形あるいは楕円形の孔を多数設けた例である。また図33は多数の四角形の孔4282あるいはスリット4286で出口開口4222を形成した例である。出口開口4222は一つの孔に限るものではなく、複数の孔で構成しても良い。また孔の形状も特定されるものではない。ただ生産性から考えると先に示した如く、大きな穴で構成することがのぞましい。
上述した図29に示す渦流入抑制部4214は図10や図26、図27、図28、図30、図31、図32、図33の実施例に適用できる。図30の羽根4262は同様に図10や図26、図27、図28、図30、図31、図32、図33の実施例に適用できる。