JP5675500B2 - 電極触媒用触媒微粒子の製造方法、及び電極触媒用カーボン担持触媒微粒子の製造方法 - Google Patents

電極触媒用触媒微粒子の製造方法、及び電極触媒用カーボン担持触媒微粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、燃料電池用電極触媒等の各種電気化学反応を応用した電池に用いられる触媒微粒子、自動車排ガス処理用触媒等の産業及び環境問題に対するニーズに応えた各種化学反応に用いられる触媒微粒子、燃料電池用ガス拡散電極に用いられる触媒微粒子、金属空気電池用ガス拡散電極に用いられる触媒微粒子、食塩電解用ガス拡散電極に用いられる触媒微粒子、及び、電気分解用等のガス拡散電極に用いられる触媒微粒子等の製造方法、並びに当該触媒微粒子を担体に担持せしめてなる担持触媒の製造方法に関する。
エネルギー変換や物質変換を司る各種電極触媒及びガス拡散電極触媒としては、一般に、カーボン等の導電性担体に金属成分を担持してなる金属微粒子担持触媒が用いられる。特に、燃料と酸化剤を電気的に接続された2つの電極に供給し、電気化学的に燃料の酸化を起こさせることで化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換するエネルギー変換デバイスである燃料電池においては、アノード及びカソードの電極触媒として担持白金微粒子及び担持白金合金微粒子が採用されている。これは、燃料電池のアノード及びカソードの電極触媒として、高い燃料酸化活性、及び、酸化剤である酸素の還元反応に対して高い触媒活性を有し、且つ、アノード及びカソードの電極触媒として溶解等に対し高い耐久性を有する元素が、白金を代表とする貴金属以外には未だ見出されていないことに起因する。
これまで、燃料電池用ガス拡散電極やその他の電気化学デバイスに用いられるガス拡散電極のアノード及びカソードの電極触媒としては、担持貴金属や、貴金属を含む合金系材料が用いられてきた。しかし、白金を代表とする貴金属を含む触媒に依存することは、埋蔵量や採掘量等の資源量の問題、比較的希少であることに起因する価格の問題、及び産出地域が遍在しているため国際情勢の影響を受けやすく、大きな価格変動を起こしやすいという問題等を孕む。したがって、白金をより安価且つ安定な材料と組み合わせて新規電極触媒として用いる研究開発が、従来から行われてきた。
本発明者らは、有機溶媒中に溶解分散させた界面活性剤と水溶液によって形成される逆ミセルを反応場として、酸化物からなる微粒子を内包する逆ミセルに還元剤を添加し酸化物を部分還元して酸素欠陥を生じさせ、部分還元されて酸素欠陥を生じせしめた酸化物表面に、更に白金イオンを添加して還元剤を添加するかあるいは光照射によって原子層レベルで(荷電していない金属状態の)白金を還元析出させることによって、白金を被覆した酸化物微粒子の製造方法、及び当該方法により製造された触媒微粒子を発明し、特許出願を行った(特許文献1)。
特願2010−228632号
特許文献1には、還元剤や光照射による還元方法が記載されているが、商品化を視野に入れた大量合成においては、更なる工程短縮、及び製造時間短縮が望まれる。
本発明は、上記実情を鑑みて鋭意研究した結果成し遂げられたものであり、優れた触媒活性を有する触媒微粒子の製造方法、及びカーボン担持触媒微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の電極触媒用触媒微粒子の製造方法は、内部粒子と、白金を含み当該内部粒子を被覆する最外層とを備える電極触媒用触媒微粒子の製造方法であって、酸素欠陥を有しない第1の金属酸化物からなる微粒子を含む逆ミセルの分散液を準備する工程、白金イオンを含む逆ミセルの分散液を準備する工程、並びに、少なくとも、前記第1の金属酸化物からなる微粒子を含む逆ミセルの分散液、前記白金イオンを含む逆ミセルの分散液、及び犠牲剤を混合し、当該混合物にマイクロ波を照射することにより、前記第1の金属酸化物からなる微粒子の少なくとも表面を、酸素欠陥を有する第2の金属酸化物に還元し、且つ、当該第2の金属酸化物上に、前記白金イオンが還元されてなる白金を含む最外層を形成する還元工程を有することを特徴とする。
本発明の電極触媒用触媒微粒子の製造方法においては、前記還元工程後の混合物にアルコールを添加する工程を有していてもよい。
本発明の電極触媒用触媒微粒子の製造方法においては、前記第1の金属酸化物からなる微粒子を含む逆ミセルの分散液及び前記白金イオンを含む逆ミセルの分散液の少なくともいずれか一方は、前記第1の金属酸化物からなる微粒子の水溶液若しくは水分散液又は前記白金イオンの水溶液と、界面活性剤の有機溶媒溶液とを混合することにより得られることが好ましい。
本発明の電極触媒用触媒微粒子の製造方法においては、前記第1の金属酸化物が、酸化チタン(IV)(TiO)、酸化スズ(IV)(SnO)、酸化ニオブ(V)(Nb)、及び酸化タンタル(V)(Ta)からなる群より選ばれる金属酸化物であることが好ましい。
本発明の電極触媒用触媒微粒子の製造方法においては、前記還元工程により、前記第1の金属酸化物からなる微粒子の表面に、前記第2の金属酸化物を含有する中間層を形成し、且つ、当該中間層上に前記最外層を形成することが好ましい。
本発明の電極触媒用カーボン担持触媒微粒子の製造方法は、上記製造方法により得られる電極触媒用触媒微粒子をカーボン担体に担持させた、電極触媒用カーボン担持触媒微粒子の製造方法であって、前記還元工程において、前記第1の金属酸化物からなる微粒子を含む逆ミセルの分散液、前記白金イオンを含む逆ミセルの分散液、犠牲剤、及びカーボン担体を混合し、当該混合物にマイクロ波を照射することを特徴とする。
本発明の電極触媒用カーボン担持触媒微粒子の製造方法においては、前記カーボン担体は、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラック、活性炭、メゾフェースカーボン及び黒鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種類のカーボン材料からなる担体であることが好ましい。
本発明によれば、マイクロ波を照射することにより、白金イオンから白金への還元と、第1の金属酸化物から第2の金属酸化物への還元を、従来よりも短時間で、且つほぼ同時に行うことができる。また、本発明によれば、第2の金属酸化物に含まれる還元された低原子価状態の構成金属原子と、白金原子との結合を、従来よりも短時間で形成することができる。
第1の金属酸化物からなる微粒子の分散液を準備する工程から、還元工程までの、逆ミセルの断面の構造を示した模式図である。 白金−チタン間に形成された結合について説明するための模式図である。 本発明により得られるカーボン担持触媒微粒子の第1及び第2の典型例を、模式的に示した断面図である。 逆ミセルの断面模式図である。 光照射を行った装置の模式図である。
1.触媒微粒子の製造方法
本発明の触媒微粒子の製造方法は、内部粒子と、白金を含み当該内部粒子を被覆する最外層とを備える触媒微粒子の製造方法であって、酸素欠陥を有しない第1の金属酸化物からなる微粒子を含む逆ミセルの分散液を準備する工程、白金イオンを含む逆ミセルの分散液を準備する工程、並びに、少なくとも、前記第1の金属酸化物からなる微粒子を含む逆ミセルの分散液、前記白金イオンを含む逆ミセルの分散液、及び犠牲剤を混合し、当該混合物にマイクロ波を照射することにより、前記第1の金属酸化物からなる微粒子の少なくとも表面を、酸素欠陥を有する第2の金属酸化物に還元し、且つ、当該第2の金属酸化物上に、前記白金イオンが還元されてなる白金を含む最外層を形成する還元工程を有することを特徴とする。
本発明に係る製造方法は、(1)第1の金属酸化物からなる微粒子の分散液を準備する工程、(2)白金イオンの分散液を準備する工程、及び、(3)還元工程を有する。本発明は、必ずしも上記3工程のみに限定されることはなく、上記3工程以外にも、例えば、後述するようなアルコール添加工程、ろ過・洗浄工程、乾燥工程、粉砕工程等を有していてもよい。
以下、上記工程(1)〜(3)並びにその他の工程について、順に説明する。
1−1.第1の金属酸化物からなる微粒子の分散液を準備する工程
本工程は、酸素欠陥を有しない第1の金属酸化物からなる微粒子を含む逆ミセルの分散液を準備する工程である。ここでいう酸素欠陥とは、酸化物中の、酸素原子と酸素原子以外の原子との連続した化学構造において、一部の酸素原子が脱落し、化学構造が途切れた部分のことをいう。酸素欠陥の近傍における、酸素原子以外の原子の酸化数は、電荷補償のため、酸素欠陥から離れた部分の当該原子の酸化数よりも低いことが多い。
チタン−水系の、25℃におけるpH−電位線図を参照すると分かるように、燃料電池の通常の運転環境下におけるpH−電位条件(pH=0〜2、電位=0.4〜1.2V)下においては、チタンは酸化チタン(IV)(TiO)の状態で存在する。したがって、TiOを第1の金属酸化物に用いて触媒微粒子を製造した場合、燃料電池の通常の運転環境においては、内部粒子が溶出するおそれはない。スズ−水系、ニオブ−水系、及びタンタル−水系の、25℃におけるpH−電位線図についても同様である。すなわち、酸化スズ(IV)(SnO)、酸化ニオブ(V)(Nb)、又は酸化タンタル(V)(Ta)を第1の金属酸化物に用いて触媒微粒子を製造した場合においても、燃料電池の通常の運転環境においては、内部粒子が溶出するおそれはない。
以上より、第1の金属酸化物は、Ti、Sn、Nb、又はTaを含むことが好ましい。また、第1の金属酸化物は、TiO、SnO、Nb、又はTaであることが好ましい。特にTiO、SnO、Nb及びTaは、イオン性の化合物である。したがって、TiO、SnO、Nb及びTaは、それぞれの結晶表面及び結晶内部にイオン性の酸素欠陥を生じさせ、生じた酸素欠陥に最外層として配置される触媒である白金を配置させることで高い触媒能を発現することができる。
TiO、SnO、Ta及びNbについては、安定性の面で優劣はほとんどない。しかし、触媒活性の観点、酸素欠陥に配置された触媒元素への電子供与のしやすさの観点、及びコストの観点から、TiO及びSnOが、Ta又はNbに比べてさらに好ましく、さらに埋蔵量、産出量、人体への安全性、及び金属酸化物微粒子分散系(酸化物ゾル)の調製法が確立されているため安定供給が可能といった観点からも、TiO及びSnOがさらに好ましい。
以上より、第1の金属酸化物は、Ti又はSnを含むことがさらに好ましい。また、第1の金属酸化物は、TiO又はSnOであることがさらに好ましい。
特に、第1の金属酸化物としてTiOを選択することは、内部粒子としてPd粒子を選ぶよりも、コスト面で大幅に有利である(Pd:700〜1000円/g、TiO:100円/kg)。
図2は、白金原子−チタン原子間に形成された結合について説明するための模式図である。図2の矢印11は、III価のチタンから白金への電子の流れを表す矢印である。
Strong Metal Support Interaction(以下、SMSIと称する)理論に基づくメカニズムによると、以下のことが分かる。すなわち、白金原子とチタン原子とが結合を形成する際、チタンが不安定なIII価から安定なIV価に価数変化するために、白金に電子を供与する。その結果、白金の電子状態が変化して、より金属状態を保ちやすくなり、白金への酸素の吸着を抑制することができる。
このように、酸素欠陥を電荷補償するためには、金属酸化物中の金属イオンの価数変化が小さいものがより好ましい。
下記表1は、チタン(Ti)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、又はタンタル(Ta)の価数変化に伴う、SMSI理論に基づく白金の活性の順位(以下、SMSI順位と称する)、及び、第一原理計算結果に基づく白金の活性の順位(以下、第一原理計算順位と称する)をまとめた表である。なお、下記表1のSMSI順位は、X線光電子分光(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)の電子束縛エネルギー(Eb値)の差から、安定性について順位をつけたものである。また、スズの第一原理計算は実施しなかったものの、実験による白金の比活性は、チタンを用いたときの方が、スズを用いたときよりも大きい。
Figure 0005675500
上記表1から、SMSI順位と、第一原理計算順位とは、ほぼ一致していることが分かる。したがって、第1の金属酸化物に含まれる元素としては、Ti、Sn、Nb、Taの順に好ましい。また、第1の金属酸化物は、TiO、SnO、Nb、Taの順に好ましい。
第1の金属酸化物からなる微粒子は、結晶性微粒子であってもよく、アモルファスの微粒子であってもよい。ただし、結晶性微粒子を用いる場合であっても、特にTiO微粒子の場合には、アナターセ型結晶微粒子がより好ましいが、ルチル型又はブルッカイト型結晶微粒子でもよい。
第1の金属酸化物からなる微粒子の平均粒径は、後述する所望の平均粒径の触媒微粒子が得られるという観点から、2〜20nmであることが好ましく、4〜10nmであることがより好ましい。
本発明における粒子の平均粒径は、常法により算出される。粒子の平均粒径の算出方法の例は以下の通りである。まず、400,000倍又は1,000,000倍のTEM(透過型電子顕微鏡)画像において、ある1つの粒子について、当該粒子を球状と見なした際の粒径を算出する。このようなTEM観察による平均粒径の算出を、同じ種類の200〜300個の粒子について行い、これらの粒子の平均を平均粒径とする。
逆ミセルとは、油溶性の界面活性剤が、炭化水素等の油の中で、親水基を内側、親油基を外側にして作る会合体を指す。逆ミセル内に閉じ込められた水をナノ反応場として利用することにより、第1の金属酸化物からなる微粒子の少なくとも表面における酸素欠陥の生成、白金イオンの還元、白金と酸素欠陥との結合を、同時に行うことができる。
第1の金属酸化物からなる微粒子を含む逆ミセルの分散液は、例えば、第1の金属酸化物からなる微粒子と界面活性剤とを混合することにより得ることができる。
逆ミセル構造そのものは安定である。しかし、(1)界面活性剤の種類、(2)溶媒の種類、(3)逆ミセル中の水分量、のいずれかのパラメータが少しでも異なるものであったり、或いは、逆ミセルを構成する材料の投入順序が異なったりするだけでも、逆ミセル構造を形成することはできない。
逆ミセルの形成に使用できる界面活性剤は、油溶性、又は両親媒性のものであれば、特に限定されない。逆ミセルを形成する界面活性剤の種類は、カチオン性、アニオン性、ノニオン性のいずれにも特に限定されないが、系中のpH、温度及び各種化学薬品に対して耐性が高く、安定な逆ミセルを維持できる界面活性剤が好ましい。また、逆ミセル内で行う白金塩のマイクロ波による還元反応によって逆ミセルが崩壊せず、且つ逆ミセル内で起こる反応を阻害しない界面活性剤がより好ましい。特に、マイクロ波による還元反応に不活性であることが、プロセスの簡素化には好ましい。さらに好ましくは、界面活性剤の除去が容易なイオン性で、且つ、親油基が比較的短鎖の界面活性剤である。また、逆ミセルを安定化あるいは不安定化させる目的で、2種類以上の界面活性剤を混合して用いることもできる。
本発明に使用できる界面活性剤としては、例えば、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ラウリン酸マグネシウム、カプリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ナトリウムフェニルステアレート、アルミニウムジカプリレート、テトライソアミルアンモニウムチオシアネート、n−オクタデシルトリn−ブチルアンモニウム蟻酸塩、n−アミルトリn−ブチルアンモニウムヨウ化物、ナトリウムジノニルナフタレンスルホネート、カルシウムセチルサルフェート、ドデシルアミンオレイン酸塩、ドデシルアミンプロピオン酸塩、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムクロライド、(2−オクチルオキシ−1−オクチルオキシメチル)ポリオキシエチレンエチルエーテル等が挙げられる。
逆ミセルの形成に使用できる溶媒は、n−ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン等の有機溶媒、及び、水である。アルコールのように、水と有機溶媒のいずれにも親和性がある溶媒は、逆ミセルの形成に使用することができない。
図4は、逆ミセル構造の断面模式図である。逆ミセル構造200は、親水基31及び親油基32からなる界面活性剤33が、水相40を取り囲んで略放射状に配置された構造である。逆ミセル構造の外部は油相である。逆ミセル径41は、使用する結晶性TiOの粒径、又は、合成するアモルファスの粒径に応じて決定される。
逆ミセルを構成する材料の投入順序は、デカン等の有機溶媒と、AOT等の界面活性剤とを混合した後、水溶液又は水分散液を加える順序であることが好ましい。逆ミセルの安定性を考慮すると、界面活性剤を有機溶媒に溶解させる際に、室温以下に冷却し、泡立たないよう攪拌することが好ましい。
例えば、TiO微粒子を含む逆ミセルの分散液は、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン等の有機溶媒にAOT等の界面活性剤を加えた溶液に、上述したアモルファス微粒子の分散液若しくは結晶性微粒子の分散液、又はTiO微粒子の水溶液を加えることにより得られる。なお、先にチタンイオンを閉じ込めた逆ミセルを作製し、逆ミセルのナノ反応場を利用して、水酸化ナトリウム(NaOH)や、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド((CHNOH:TMAH)等を用いたアルカリ加水分解によりTiO微粒子を合成し、TiO微粒子を含む逆ミセルの分散液を調製してもよい。
1−2.白金イオンの分散液を準備する工程
本工程は、白金イオンを含む逆ミセルの分散液を準備する工程である。白金イオンを含む逆ミセルの分散液は、例えば、白金イオンと界面活性剤とを混合することにより得ることができる。界面活性剤、及び分散媒については、上述した第1の金属酸化物からなる微粒子を含む逆ミセルの場合と同様のものを使用することができる。
白金イオンを含む逆ミセルの分散液は、例えば、n−ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン等の有機溶媒にAOT等の界面活性剤を加えた溶液に、白金イオンの水溶液を加えることにより得られる。白金イオンの水溶液は、塩化白金酸(HPtCl・6HO)等の白金塩を、必要であれば水で希釈することにより得られる。
1−3.還元工程
本工程は、少なくとも、第1の金属酸化物からなる微粒子を含む逆ミセルの分散液、白金イオンを含む逆ミセルの分散液、及び犠牲剤を混合し、当該混合物にマイクロ波を照射することにより、第1の金属酸化物からなる微粒子の少なくとも表面を、酸素欠陥を有する第2の金属酸化物に還元し、且つ、当該第2の金属酸化物上に、白金イオンが還元されてなる白金を含む最外層を形成する還元工程である。
第2の金属酸化物とは、酸素欠陥を有し、且つ、第1の金属酸化物に含まれる酸素以外の元素と共通の元素を含む金属酸化物のことである。
上述した第1の金属酸化物と同様の理由により、第2の金属酸化物は、Ti、Sn、Nb、又はTaを含むことが好ましく、Ti又はSnを含むことがさらに好ましい。また、上述した第1の金属酸化物と同様の理由により、第2の金属酸化物は、TiO(ただし、pは実数、且つ、0<p<2)、SnO(ただし、qは実数、且つ、0<q<2)、Nb(ただし、sは実数、且つ、0<s<5)、又はTa(ただし、rは実数、且つ、0<r<5)であることが好ましく、TiO又はSnO(p及びqは、いずれも上記と同様の実数である。)であることがさらに好ましい。
本工程においては、第1の金属酸化物からなる微粒子の表面を、酸素欠陥を有する第2の金属酸化物に還元してもよいし、第1の金属酸化物からなる微粒子の全体を、第2の金属酸化物のみからなる微粒子へ変換してもよい。このうち、第1の金属酸化物からなる微粒子の表面を第2の金属酸化物へ還元する例としては、第1の金属酸化物からなる微粒子の表面に、第2の金属酸化物を含有する中間層を形成する場合が挙げられる。この場合は、当該中間層上に、白金を含む最外層が形成される。
マイクロ波は、通常、誘電率の大きな分子に吸収されて熱に変換される。すなわち、ナノレベルの大きさで水を内包する逆ミセルにマイクロ波を照射した場合、逆ミセル内の水分子はマイクロ波を吸収して加熱されるのに対して、その周囲の非極性溶媒は逆ミセル内部からの伝熱による以外には加熱されない。そのため、逆ミセル内部のみ選択的に加熱できる。
マイクロ波照射によって促進される化学反応が逆ミセル内部で起こる場合は、その反応のみを微小空間で促進させることが可能になる。特に、実験系が特殊な閉鎖系でない限り、逆ミセル内部の水を加熱蒸発させることができ、水に溶解させた成分を析出させることもできる。また、一般にTiOの酸素欠陥は特異的にマイクロ波を吸収することが知られている。したがって、本工程のマイクロ波照射では、TiO自体、特にTiOの酸素欠陥部位が加熱され、それに起因して効率的に白金イオンの還元、並びに、TiOの酸素欠陥及び白金の結合形成をいずれも促進することができると考えられる。
本工程においては、マイクロ波照射により、逆ミセル内部において、犠牲剤の酸化に伴い第1の金属酸化物を含む粒子全体又は少なくとも表面に酸素欠陥を生じさせると同時に、白金イオンを還元することができる。その結果、金属酸化物を含む内部粒子の最表面が部分的あるいは全体的に、内部粒子表面の形状に沿って数原子層以内の厚さの白金層により覆われた金属酸化物コア−貴金属シェル触媒微粒子が、従来よりも短時間で簡便に調製できる。また、本発明においては、上記還元と同時にマイクロ波照射による加熱も起こるため、従来、金属酸化物コアへの貴金属シェル被覆に必要であった熱処理を経ることなく、金属酸化物コア−貴金属シェル構造の構築が可能となる。
本発明におけるマイクロ波照射は、マイクロ波発生装置等により行うことができる。マイクロ波発生装置は、実験用マイクロ波発生装置、業務用マイクロ波発生装置でもよいし、いわゆる電子レンジ等の家庭用マイクロ波発生装置を用いることもできる。家庭用マイクロ波発生装置であっても、製造スケールにもよるが、1〜20分程度で金属酸化物コア−貴金属シェル構造の構築が完了し、望みの触媒微粒子が得られる。
好ましいマイクロ波照射条件は以下のとおりである。
一般的なマイクロ波加熱に用いられる周波数は、国際規格で2.45GHzに統一されている。しかし、本発明においては、逆ミセル内の水を含む化学物質が誘電損失によって熱エネルギーに変換される周波数であれば、周波数帯は特に限定されない。ただし、本発明者らの検討によれば、2.45GHzを含む周波数帯が好ましい。
マイクロ波照射時間は、上述したように、製造スケールによって異なるが、マイクロ波照射にかかる電力コストの観点及び製造時間の短縮の観点から、好ましくは1〜30分であり、より好ましくは1〜20分であり、さらに好ましくは1〜10分である。
後述する実施例において示すように、本工程におけるマイクロ波照射は、逆ミセルを用いた化学還元法や光還元法と比較して、工程が簡便で、且つ白金の還元速度が速いという利点がある。また、本発明におけるマイクロ波照射により、還元剤を用いた化学還元工程や、光照射を用いた光還元工程、及び、焼成工程等を省略することができ、製造工程を簡略化することもできる。また、本発明におけるマイクロ波照射は、逆ミセルを用いた化学還元法や光還元法と比較して、金属酸化物上の酸素欠陥と、白金との結合形成を効果的に促進できる。
本工程において使用できる犠牲剤としては、マイクロ波照射により第1の金属酸化物からなる微粒子の表面において酸化されるものであれば特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、アスコルビン酸等の多価アルコール;ヘキサノール、デカノール等の高級脂肪酸アルコール;ソルビトール、グルコース等の還元性を有し親水性の高い糖類;等を用いることができる。
本工程においては、還元剤を併用してもよい。還元剤の使用時期は、マイクロ波照射前、マイクロ波照射と同時、及びマイクロ波照射後のいずれの時期であってもよい。
逆ミセルを用いず、還元剤を単に金属酸化物微粒子及び白金イオンの混合物の分散液に加えた場合には、還元剤は液内に万遍なく分散してしまい、第1の金属酸化物からなる微粒子の表面を効率よく還元することができない。逆ミセル分散液にさらに還元剤を混合することによって、還元剤を逆ミセル内のナノオーダーの水滴の中に局所的に集合させ、第1の金属酸化物からなる微粒子表面のナノ構造を制御することができる。
還元剤の使用時期としては、第1の金属酸化物からなる微粒子の表面を予め還元剤によって還元した後、白金イオン及び犠牲剤を当該第1の金属酸化物からなる微粒子と混合して、当該混合物にマイクロ波を照射することが好ましい。また、第1の金属酸化物からなる微粒子、白金イオン及び犠牲剤を混合した後、当該混合物に還元剤をさらに混合して、当該混合物にマイクロ波を照射してもよい。さらに、第1の金属酸化物からなる微粒子、白金イオン及び犠牲剤を混合して、当該混合物にマイクロ波を照射した後、当該混合物に還元剤をさらに混合してもよい。要するに、第1の金属酸化物からなる微粒子、白金イオン及び犠牲剤の混合物にマイクロ波を照射する工程を設けていれば、他のどの段階において還元剤を用いてもよい。ただし、白金イオンのみに還元剤を用いることは、白金微粒子が単独で生成してしまうという観点から好ましくない。
本工程において使用できる還元剤としては、還元力の強い還元剤であれば特に限定されず、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、水素、ヒドラジン、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、ホルムアルデヒド等が挙げられる。
第1の金属酸化物としてTiOを用いた場合の、本還元工程の典型例について説明する。
まず、結晶性TiO微粒子を含む逆ミセルの分散液、及び白金イオンを含む逆ミセルの分散液をそれぞれ調製し、これら2種類の分散液を混合する。次に、当該混合液に犠牲剤としてエチレングリコールをさらに混合する。カーボンに担持させる場合はこの後にカーボンを投入して分散させ、続いて、当該混合液に周波数2450MHzのマイクロ波を1〜10分間照射し、TiO表面上のみで白金を還元する結果、触媒微粒子が得られる。
第1の金属酸化物としてTiOを用いた場合の、本還元工程の変形例について説明する。
まず、結晶性TiO微粒子を含む逆ミセルの分散液に、強還元剤である水素化ホウ素ナトリウムを投入し、TiO微粒子を部分還元して当該微粒子に酸素欠陥を形成する。次に、白金イオンを含む逆ミセルの分散液を、部分還元処理を行ったTiO微粒子を含む逆ミセルの分散液に混合する。続いて、当該混合液に犠牲剤としてエチレングリコールを加え、カーボンに担持させる場合はこの後にカーボンを投入して分散させ、周波数2450MHzのマイクロ波を1〜10分間照射し、TiO表面上のみで白金を還元する結果、触媒微粒子が得られる。
還元工程後の混合物に、アルコールを添加する工程を設けてもよい。
還元が終了し、第1の金属酸化物からなる微粒子の表面に白金を含む最外層が形成された後には、反応混合物にアルコールを加え、逆ミセル構造を破壊する。逆ミセル構造を破壊しない場合には、AOT等の界面活性剤が触媒微粒子近傍に残存する。その結果、本製造方法により得られる触媒微粒子を電池等に使用する際には、界面活性剤により電気化学反応が阻害されるおそれがある。また、残存する界面活性剤は、最外層と内部粒子との間や、触媒微粒子と後述するカーボン担体との間に入り込むおそれがあり、最外層の形成や、触媒微粒子のカーボン担体への担持が完了しないおそれがある。
逆ミセル構造の破壊に使用できるアルコールは、親水性及び親油性をいずれも備えるアルコールであることが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールが挙げられる。
1−4.その他の工程
還元工程後には、触媒微粒子のろ過・洗浄、乾燥、粉砕及び加熱を行ってもよい。
触媒微粒子のろ過・洗浄は、製造された微粒子の層構造を損なうことなく、不純物を除去できる方法であれば特に限定されない。当該ろ過・洗浄の例としては、純水を溶媒にして、ろ紙(Whatman社製、#42)等を用いて吸引ろ過して分離する方法が挙げられる。
触媒微粒子の乾燥は、溶媒等を除去できる方法であれば特に限定されない。当該乾燥の例としては、60〜100℃の温度条件下、10〜20時間真空乾燥する方法が挙げられる。
触媒微粒子の粉砕は、固形物を粉砕できる方法であれば特に限定されない。当該粉砕の例としては、乳鉢等を用いた粉砕や、ボールミル、ターボミル、メカノフュージョン、ディスクミル等のメカニカルミリングが挙げられる。
以下、図を用いて本発明の製造方法を説明する。図1は、第1の金属酸化物からなる微粒子の分散液を準備する工程から、還元工程までの、逆ミセルの断面の構造を示した模式図である。ただし、この図は、あくまでも本製造方法の1つの態様を示すものである。
図1(a)は、第1の金属酸化物からなる微粒子を含む逆ミセル100aの断面の構造を示した模式図である。逆ミセル100aは、親水基1及び親油基2からなる界面活性剤3が、水相4を取り囲んで略放射状に配置され、且つ、水相4の内部に第1の金属酸化物からなる微粒子5を含む構造である。逆ミセル構造の外部は油相である。
図1(b)は、白金イオンを含む逆ミセル100bの断面の構造を示した模式図である。逆ミセル100bは、上記逆ミセル100a同様に界面活性剤3及び水相4を備え、且つ、水相4の内部に白金イオン6を含む構造である。
図1(c)は、逆ミセル100a及び逆ミセル100bを混合して得られる逆ミセル100cの断面の構造を示した模式図である。逆ミセル100cの水相4内には、第1の金属酸化物からなる微粒子5、及び白金イオン6が含まれる。なお、図の都合上、犠牲剤その他の添加物は省略する。
図1(d)は、逆ミセル100cにマイクロ波を照射して得られる逆ミセル100dの断面の構造を示した模式図である。マイクロ波を照射することにより、逆ミセル100dの水相4が選択的に加熱され、還元反応が促進される結果、第1の金属酸化物からなる微粒子5に、白金からなる最外層7が被覆してなる、触媒微粒子8が生成される。
2.カーボン担持触媒微粒子の製造方法
本発明のカーボン担持触媒微粒子の製造方法は、上記製造方法により得られる触媒微粒子をカーボン担体に担持させた、カーボン担持触媒微粒子の製造方法であって、前記還元工程において、前記第1の金属酸化物からなる微粒子を含む逆ミセルの分散液、前記白金イオンを含む逆ミセルの分散液、犠牲剤、及びカーボン担体を混合し、当該混合物にマイクロ波を照射することを特徴とする。
カーボン担体としては、具体的には、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラック、活性炭、メゾフェースカーボン、黒鉛、チャンネルブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;種々の炭素原子を含む材料を炭化、賦活処理した活性炭;グラファイト化カーボン等のカーボンを主成分とするもの、カーボン繊維、多孔質カーボン微粒子、カーボンナノチューブ、カーボン多孔質体等を使用することができる。BET比表面積は、100〜2000m/gであることが好ましく、より好ましくは200〜1600m/gである。この範囲であれば、触媒微粒子を高分散担持することができる。特に本発明においては、カーボン材料として、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラック、活性炭、メゾフェースカーボン、黒鉛等のカーボンブラックを用いることが好ましい。これらのカーボン材料を含む担体は、触媒微粒子を高分散担持することができるため、高い活性を有する電極触媒が得られる。
これらのカーボン担体は、1種類のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
3.触媒微粒子
本発明により、内部粒子と、白金を含み当該内部粒子をその粒子表面の形状に沿って被覆する最外層とを備える触媒微粒子が製造される。当該内部粒子の少なくとも表面は、酸素欠陥を有する第2の金属酸化物を含む。
以下、本発明により製造される触媒微粒子について、内部粒子、最外層及びその他の事項に分けて、順に説明する。
3−1.内部粒子
内部粒子は、当該粒子の少なくとも表面に、酸素欠陥を有する第2の金属酸化物を含有する。
内部粒子は、第2の金属酸化物を表面に含む粒子であってもよく、第2の金属酸化物のみからなる粒子であってもよい。このうち、内部粒子の表面に第2の金属酸化物が含まれる態様は、内部粒子が粒子形状を保つことができるため好ましい。内部粒子の表面に第2の金属酸化物が含まれる態様の例としては、内部粒子が、さらに核となる中心粒子と、当該中心粒子を被覆する中間層を備え、中間層が、第2の金属酸化物を含有する態様が挙げられる。
内部粒子を、中心粒子と中間層の2層構造からなるものとする態様においては、中間層に酸素欠陥を有する第2の金属酸化物を使用することにより、中間層上に白金を含む最外層を連続層として形成できるという利点がある。また、このような金属酸化物を使用することにより、触媒微粒子の触媒活性と耐久性向上が実現できる。
白金を含む層を中間層上に連続層として形成するためには、白金と、金属Mとの結合が、白金−白金結合、及び、M−M結合よりも安定であることが必要である。金属酸化物上において白金層を形成した例としては、例えば、TiO(110)面上に白金を3次元成長させた例が知られている(U.Diebold et al. Surf.Sci.,331,845−854(1995))。しかし、白金とチタン自身との結合は、必ずしも強いものではない。
本願発明者らは、金属酸化物微粒子の表面から酸素を部分的に除去することにより、白金と、金属Mとの間により強い相互作用が生じ、白金を金属酸化物微粒子の表面に固定できることを発見した。具体的には、金属酸化物微粒子の表面に酸素欠陥を有する中間層を形成することにより、当該中間層上に白金を含む層を連続層として形成できることを見出した。さらに、このように酸素欠陥と結合した白金を含む層は、活性、耐久性共に、従来の白金触媒粒子と比較して高い。
後述する最外層の形成が効率よく行われるという観点から、中心粒子に対する中間層の被覆率が、25〜100%であることが好ましい。仮に、中心粒子に対する中間層の被覆率が25%未満であるとすると、後述する最外層の形成が十分に進行せず、本発明の効果が満足に得られないおそれがある。
本発明のように、金属酸化物を中心粒子に使用する触媒微粒子においては、電気伝導が良ければ、中心粒子に対する中間層の被覆率が低い場合でも、触媒微粒子全体の耐久性には影響が無い。したがって、当該被覆率が低いことによる背反は、例えば、本発明により得られる触媒微粒子を燃料電池の触媒層に配合した場合に、触媒層の厚みが厚くなることのみである。
最外層については、原則として中間層の上、すなわち第2の金属酸化物の上にしか被覆されないので、中心粒子に対する中間層の被覆率が、内部粒子に対する最外層の被覆率(以下、最終被覆率と称する場合がある)となる。一方、燃料電池の触媒層には、1〜20μmという最適な厚みがある。触媒層の厚みは、最終被覆率と触媒微粒子の平均粒径によって変動する。本発明により製造される触媒微粒子の最適平均粒径は3〜10nmなので、例えば、平均粒径が10nmの触媒微粒子における最終被覆率は90%以上、平均粒径が5nmの触媒微粒子における最終被覆率は45%以上、平均粒径が3nmの触媒微粒子における最終被覆率は25%以上であることが好ましい。
3−2.最外層
本発明に使用される最外層は、白金を含み、上述した内部粒子を被覆する層である。
最外層は、白金のみ、又は、イリジウム、ルテニウム、ロジウム及び金からなる群より選ばれる金属材料と白金との合金からなることが好ましい。最外層に白金合金を使用する場合には、合金全体の質量を100質量%としたときの白金の含有割合が80質量%以上100質量%未満であることが好ましい。白金の含有割合が80質量%未満であるとすると、十分な触媒活性及び耐久性が得られないからである。なお、最外層として、PtIrを用いた際に最高比活性を発揮する。
内部粒子の溶出をより抑制できるという観点から、内部粒子に対する最外層の被覆率が、70〜100%であることが好ましい。仮に、内部粒子に対する最外層の被覆率が、70%未満であるとすると、十分に高い触媒活性が得られないおそれがある。
なお、ここでいう「内部粒子に対する最外層の被覆率」とは、内部粒子の全表面積を100%としたときの、最外層によって被覆されている内部粒子の表面積の割合のことである。当該被覆率を算出する方法の一例を以下説明する。まず、誘導結合プラズマ質量分析法(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry:ICP−MS)等により、触媒微粒子中の白金含有量(A)を測定する。一方で、透過型電子顕微鏡(TEM)等により、触媒微粒子の平均粒径を測定する。測定した平均粒径から、その粒径の粒子が表面に有する原子の数を推定し、粒子表面の1原子層が白金に置き換わった場合の白金含有量(B)を推定する。白金含有量(A)を白金含有量(B)で除し、さらに100をかけた値が、「内部粒子に対する最外層の被覆率(%)」となる。
最外層の厚さは、単原子層以上、3原子層以下であることが好ましい。このような厚さの最外層を備える触媒微粒子は、4原子層以上の最外層を備える触媒微粒子と比較して、白金1g当たりの表面積が高いという利点、及び、白金の被覆量が少ないため材料コストが低いという利点がある。
触媒表面積を可能な限り広く確保できるという点、及び、電子伝導性の観点から孤立した白金原子がなく、被覆された白金原子が全て有効に触媒能を発揮するという点から、最外層は連続層であることが好ましい。このように安定性及び触媒活性の確保のためには最外層が連続層であり、3原子層以下であることが好ましい。ただし、最外層は必ずしも内部粒子の全表面を覆う必要はない。触媒機能を発現する最外層によって被覆されず、露出した内部粒子表面を、他の安定な元素で覆うこともできる。
3−3.その他
本発明により得られる触媒微粒子の平均粒径は、2〜20nmであることが好ましく、4〜10nmであることがさらに好ましい。触媒微粒子の最外層は上述したように好ましくは3原子層以下であるため、最外層の厚さは、好ましくは0.17〜0.69nmである。したがって、触媒微粒子の平均粒径に対し、最外層の厚さがほぼ無視でき、内部粒子の平均粒径と、触媒微粒子の平均粒径とがほぼ等しいことが好ましい。
本発明の製造方法により得られる触媒微粒子は、還元析出した白金原子の一部が、コアとなる金属酸化物の酸素欠陥近傍に配置されている。当該酸素欠陥近傍では、金属酸化物を構成する酸素以外の金属カチオン、すなわち、酸化チタン(TiO)の場合にはTi4+、酸化スズ(SnO)の場合にはSn4+が、部分還元されてより低い価数の金属カチオン(Ti3+、Sn3+等)として存在する。これらの低い価数のカチオンは、通常、より安定な高い価数となるため、当該酸素欠陥近傍に配置された白金原子に電子を供給しやすくなる。その結果、白金はゼロ価数の金属状態を保ちやすく、たとえ酸化されたとしても、低い価数の金属カチオンから電子が供給されることによりゼロ価に戻ると考えられる。
以上の原理より、酸素欠陥近傍に配置された白金原子、及び当該白金原子を含み且つ縞状構造を形成すると考えられる白金原子薄膜は、通常のバルク白金と比較して、気相中から吸着した酸素との結合が弱いと推定される。したがって、白金原子に吸着した酸素は酸化物イオン(O2−)となりやすく、当該酸化物イオンはプロトン(H)と結合を形成することにより、水(HO)として容易に白金から脱離する。
このように、本発明により得られる触媒微粒子は、特に、燃料電池のカソード極等で起こる酸素の還元反応を促進させる触媒活性が、従来の白金触媒と比較して格段に高いと考えられる。
4.カーボン担持触媒微粒子
本発明により製造されるカーボン担持触媒微粒子は、カーボン担体に、上記触媒微粒子が担持されている。
カーボン担体としては、上述したものを用いることができる。
燃料電池で標準的に使用されている白金担持カーボンについては、コスト面を考慮すると、比活性と耐久性に優れるものの、平均粒径が大きい白金微粒子を使用することはできない。これは、平均粒径を大きくすると白金1g当りの表面積が減少するため、必要な白金表面積を確保しようとすると、より多くの白金が必要になることが原因である。
また、パラジウム等の貴金属を用いたコアシェル構造においては、白金は最表層の1〜3原子層に過ぎないため、白金1g当りの表面積は大きい。しかし、コスト面では内部の貴金属分も考慮しなければならず、白金微粒子と同様に平均粒径を大きくすることには限界がある。パラジウムコアを用いたコアシェル粒子の場合は、コスト面を考慮すると、平均粒径は6nm前後が好適であり、十分な耐久性を有する平均粒径10nmの場合には、コアシェル構造のポテンシャルを十分に発揮できない。
一方、本発明により得られる触媒微粒子では、内部粒子に用いる酸化物が貴金属よりも1000分の1以下のコストで済み、極めて安価である。したがって、本発明により得られる触媒微粒子は、貴金属をコアに用いたコアシェル粒子とは異なり、10nm以上の平均粒径であっても、コアシェル構造のポテンシャルを十分に発揮することが原理的に可能である。
本発明により得られるカーボン担持触媒微粒子の平均粒径は、カーボン担体の平均粒径によって決定される。以下、本発明により得られるカーボン担持触媒微粒子を、燃料電池の触媒層に用いる場合を仮定して説明する。実用的な燃料電池用担体カーボン(例えば、ketjenEC、VulcanXC−72等)の平均粒径は、最大でも30nm程度であり、当該担体カーボンに担持できる触媒粒子の最大平均粒径は10nm程度、担持できる触媒粒子の数は2個である。平均粒径が30nm以上のカーボン粒子であればさらに平均粒径を大きくすることは可能であるが、触媒層の厚みに背反がある。
図3は、本発明により得られるカーボン担持触媒微粒子の第1及び第2の典型例を、模式的に示した断面図である。なお、二重波線は図の省略を意味する。また、図3に描いた中間層、最外層の厚さは、必ずしも実際の層の厚さを反映したものではない。
図3(a)は、本発明により得られるカーボン担持触媒微粒子の第1の典型例の断面模式図である。本第1の典型例のカーボン担持触媒微粒子300aは、触媒微粒子25及びカーボン担体26からなる。触媒微粒子25は、内部粒子21と、当該内部粒子21を被覆する最外層22からなる。本第1の典型例においては、内部粒子21は、さらに、中心粒子23と、当該中心粒子23を被覆する中間層24からなる。中間層24は、中心粒子23を構成する第1の金属酸化物の化学組成よりも、酸素原子の割合が低い化学組成を有する第2の金属酸化物を含む。
図3(b)は、本発明により得られるカーボン担持触媒微粒子の第2の典型例の断面模式図である。本第2の典型例のカーボン担持触媒微粒子300bは、触媒微粒子25及びカーボン担体26からなり、当該触媒微粒子25は、内部粒子21と、当該内部粒子21を被覆する最外層22からなるという点において、上記カーボン担持触媒微粒子300aと同様である。しかし、本典型例においては、内部粒子21は、酸素欠陥を有する第2の金属酸化物のみからなる。
5.本発明の応用例
本発明により製造される触媒微粒子及びカーボン担持触媒微粒子は、燃料電池用触媒の他にも、従来の白金触媒反応及びその応用に用いることができる。本発明により製造される触媒微粒子等は、粒子内部が酸化物からなるため、白金微粒子を用いる従来の場合と比較して白金使用量を低減でき、画期的な低コスト化が図れる。
他の応用例としては、例えば、窒素酸化物(NOx)の分解還元反応への応用、光触媒及びその助触媒としての水の分解反応への応用、酸化還元反応を基礎とする各種化学反応への応用、バイオマス分解触媒、生体触媒等が挙げられる。
以下に、本発明の具体的態様を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
1.カーボン担持触媒微粒子の製造
[実施例1]
まず、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(以下、AOTと称する)をデカン(油相)に溶解させた溶液を2つ調製した。次に、一方のAOT溶液に、中和した0.1Mの塩化白金酸水溶液(2.0mL)を加え、白金イオンを内包した逆ミセル溶液を調製した。続いて、もう一方のAOT溶液に、TiO分散液(多木化学株式会社製、商品名:タイノックM−6)2.0mLを加え、TiOを内包した逆ミセル溶液を調製した。逆ミセル系を決めるRw値(=[H0]/[Surfactant])は6とした。
次にTiOを内包した逆ミセル溶液に、モル比で25倍の水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を加え、14時間攪拌し、TiOの部分還元を行った。続いて、TiOを内包した逆ミセル溶液と、白金イオンを内包した逆ミセル溶液を混合し、さらに1時間攪拌を行った。この混合物に、さらに、白金物質量に対して数モル倍の犠牲剤(ヘキサノール)と、カーボン担体(VXC72R)を加えて1時間攪拌した。攪拌後の混合物に、750Wのマイクロ波(MW)を5分間照射して、攪拌しながら放冷した。マイクロ波照射から30分後、混合物に2−プロパノール及びエタノールの混合溶媒(2−プロパノール:エタノール=4:1)を加えてさらに30分間攪拌して逆ミセルを崩壊させた。その後、混合物をろ過洗浄し、残った残渣を真空乾燥させて、実施例1のカーボン担持触媒微粒子を得た。
[実施例2]
TiOを内包した逆ミセル溶液、及び白金イオンを内包した逆ミセル溶液を混合して1時間攪拌するまでは、実施例1と同様である。この混合物に、さらに、白金物質量に対して数モル倍の犠牲剤(エチレングリコール)と、カーボン担体(VXC72R)を加えて1時間攪拌した。攪拌後の混合物に、750Wのマイクロ波(MW)を5分間照射して、攪拌しながら放冷した。マイクロ波照射から30分後、混合物に2−プロパノール及びエタノールの混合溶媒(2−プロパノール:エタノール=4:1)を加えてさらに30分間攪拌して逆ミセルを崩壊させた。その後、混合物をろ過洗浄し、残った残渣を真空乾燥させて、実施例2のカーボン担持触媒微粒子を得た。
[比較例1]
TiOを内包した逆ミセル溶液、白金イオンを内包した逆ミセル溶液、犠牲剤、及びカーボン担体を混合して1時間攪拌するまでは、実施例1と同様である。攪拌後の混合物に2−プロパノール及びエタノールの混合溶媒(2−プロパノール:エタノール=4:1)を加えてさらに30分間攪拌して逆ミセルを崩壊させた。その後、混合物をろ過洗浄し、残った残渣を真空乾燥させて試料を回収し、以下の条件の下、焼成処理した。
まず、室温下でアルゴンバージを60分間行った。アルゴンの流速は750mL/分、アルゴン純度は99.9999%であった。次に、室温から350℃まで、120分かけて昇温した。350℃の温度条件で60分間保持した後、350℃から700℃まで、60分かけてさらに昇温した。700℃の温度条件で120分間保持した後、室温まで自然冷却した。
焼成後、得られた粉末を80℃の超純水で3回以上洗浄し、乾燥して、比較例1のカーボン担持触媒微粒子を得た。
比較例1においては、実施例1及び実施例2において行ったマイクロ波照射を行わなかった。また、比較例1においては、実施例1及び実施例2において行わなかった焼成処理を行った。
[比較例2]
(a)白金水溶液とTiO水溶液との混合
まず、0.025mol/Lの白金水溶液を50mL調製した。次に、白金水溶液34mLに、1mol/L NaOH水溶液を適宜加えてpH=4に調整した。次に、アナターゼ型結晶性TiOゾル(多木化学株式会社製、商品名:タイノックM−6)35gを、精製水235gで希釈して、TiO水溶液を調製した。
pH=4に調整した白金水溶液約34mLと、TiO水溶液270gとを500mLビーカーに加え、さらにエチレングリコール0.2gを加え、1時間攪拌した。
(b)光還元
図5に、光照射を行った装置の模式図を示す。なお、光照射は暗室内で行った。
容器51内の白金−TiO−エチレングリコール混合溶液をスターラー52で均一に攪拌しながら、当該溶液にUV光照射装置53によってUV波長(350〜430nm)を含む光を均一に照射した。
1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、12時間後、16時間後、18時間後及び24時間後の溶液を観察し、白金還元が完全に進行し、溶液が黒色化した24時間後の時点で照射を終了した。
詳細な光還元条件は以下の通りである。
UV光照射装置:500W用高圧UVランプ(ウシオ電機製、USH−500SC2)
出力:250W
主なUV波長:436nm、405nm、365nm
光源から試料までの距離:1〜5m
(c)カーボン担持
光照射が終了した白金−TiO混合溶液に、カーボン担体としてカーボンブラック(Ketjen)1.511gを加え、6時間攪拌した。その後、溶液からエバポレーターによって溶媒を留去し、80℃の温度条件で18時間真空乾燥した。
(d)焼成(300℃)
上記方法により得られた触媒前駆体の粉末を、下記条件下で焼成した。
・初期条件 室温、アルゴンパージ60分間(Ar:750mL/分、Ar純度:99.9999%)
・昇温条件 室温から300℃まで、120分かけて昇温
・保持条件 300℃のまま60分間保持
焼成後の触媒粉末を80℃精製水で洗浄し、80℃の温度条件下、18時間真空乾燥して、比較例2のカーボン担持触媒微粒子を得た。
2.カーボン担持触媒微粒子、及び電極触媒の物性評価
2−1.触媒微粒子の担持量の測定
実施例1、実施例2、及び比較例1のカーボン担持触媒微粒子について、触媒微粒子の担持量の測定を行った。測定方法の詳細は以下の通りである。
触媒微粒子の担持量の測定には、熱重量分析装置(SIIナノテクノロジー社製 EXSTAR 6000/TG・DTA6300)を用いた。まず、各試料について、熱重量分析装置により、大気圧下、空気中で、室温から1000℃まで10℃/分の速度で昇温させた。昇温後に、カーボン等が燃焼除去されて残存した質量を、その試料の触媒担持量とした。
なお、従来燃料電池の電極触媒として用いられてきたカーボン担持白金触媒(Johnson Matthey社製、HISPEC4000;以下、比較例3の電極触媒と称する。)についても、同様の測定方法により白金担持量の測定を行った。
2−2.全触媒量当たりの有効白金表面積の測定
実施例1、実施例2、及び比較例1のカーボン担持触媒微粒子、並びに比較例3の電極触媒について、全触媒量当たりの有効白金表面積の測定を行った。測定方法の詳細は以下の通りである。
まず、電気化学測定に用いる作用極を準備した。初めに、各試料10mgに、5%ナフィオン分散溶液(Wako 328−86713)を0.15mL混合してペーストを調製した。次に、円柱状のグラッシーカーボンを準備し、当該グラッシーカーボンの下部3cmに当該ペーストを塗布した。続いて、ペースト塗布後のグラッシーカーボンを30℃の高温槽に入れて十分乾燥させたものを作用極とし、電気化学測定に供した。
有効白金表面積は、25℃の0.5M硫酸水溶液中におけるサイクリックボルタモグラムから、+0.4〜+0.05V(vs.NHE)に現れる水素原子吸着波の電気量を、210μC/cmの値を用いて算出した。
下記表2は、実施例1、実施例2、及び比較例1のカーボン担持触媒微粒子、並びに比較例3の電極触媒について測定した、触媒微粒子の担持量及び全触媒量当たりの有効白金表面積をまとめた表である。
Figure 0005675500
まず、比較例1について検討する。上記表2から分かるように、比較例1の触媒微粒子の担持量は18.3質量%である。この結果は、実施例1、実施例2、及び比較例1のカーボン担持触媒微粒子、並びに比較例3の電極触媒の中で、最も少ない担持量である。また、比較例1における、全触媒量当たりの有効白金表面積は33.2m/gである。この結果は、実施例1、実施例2、及び比較例1のカーボン担持触媒微粒子、並びに比較例3の電極触媒の中で、最も小さい値である。以上より、逆ミセルを用いた製造方法においてマイクロ波照射を行わず、且つ焼成を行った比較例1のカーボン担持触媒微粒子は、触媒微粒子の担持量が少ないため、有効白金表面積も小さいことが分かる。
次に、比較例3について検討する。上記表2から分かるように、比較例3の触媒微粒子の担持量は42.9質量%である。この結果は、実施例1、実施例2、及び比較例1のカーボン担持触媒微粒子、並びに比較例3の電極触媒の中で、最も多い担持量である。しかし、比較例3における、全触媒量当たりの有効白金表面積は57.5m/gであり、60m/g未満の値である。以上より、従来燃料電池の電極触媒として用いられてきたカーボン担持白金触媒は、白金担持量が多い一方で、実際に触媒反応に関わる白金表面積が小さいことから、白金表面積当たりのコストが、後述する実施例1及び実施例2に比較して極めて高いことが分かる。
一方、実施例1及び実施例2のカーボン担持触媒微粒子においては、触媒微粒子の担持量は25質量%未満である一方で、全触媒量当たりの有効白金表面積は70m/gを超える。特に、犠牲剤としてエチレングリコールを加えた実施例2においては、触媒微粒子の担持量は22.5質量%であるのに対し、全触媒量当たりの有効白金表面積は82.3m/gと極めて大きい。以上より、逆ミセル法においてマイクロ波照射を行った実施例1及び実施例2の製造方法においては、触媒微粒子の担持量を従来よりも半分程度に低減でき、且つ、全触媒量当たりの有効白金表面積を従来よりも1.3倍以上増大させることができた。
下記表3は、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2のカーボン担持触媒微粒子について、還元方法、及び最外層の被覆に要した時間をまとめた表である。
Figure 0005675500
まず、比較例1について検討する。上記表3から分かるように、比較例1における最外層の被覆時間は6時間である。これは、還元剤(NaBH)の拡散に時間がかかる結果、後述する実施例1及び実施例2と比較して、最外層の被覆時間が長くなることを示す。
次に、比較例2について検討する。上記表3から分かるように、比較例2における最外層の被覆時間は6時間である。これは、逆ミセル内部へのUV光の到達は早い一方で、光還元反応の速度が遅い結果、後述する実施例1及び実施例2と比較して、最外層の被覆時間が長くなることを示す。
一方、実施例1及び実施例2における最外層の被覆時間は5分と短い。これは、逆ミセル法においてマイクロ波照射を行う実施例1及び実施例2においては、逆ミセル内部へのマイクロ波の到達も早く、マイクロ波による逆ミセル内部の昇温も早いことを示す。したがって、実施例1及び実施例2のマイクロ波照射法は、シェルを被覆するまでの時間が、比較例1の化学還元法や、比較例2の光還元法に比べて早く、極めて製造効率の高い方法であることが分かる。
なお、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2のカーボン担持触媒微粒子については、さらに種々の電気化学測定により電極触媒としての特性を評価し、且つ、XRD、TG/DTA、SEM観察等、様々な角度から材料の物性評価を行った。
1 親水基
2 親油基
3 界面活性剤
4 水相
5 第1の金属酸化物からなる微粒子
6 白金イオン
7 白金からなる最外層
8 触媒微粒子
11 3価のチタンから白金への電子の流れを表す矢印
21 内部粒子
22 最外層
23 中心粒子
24 中間層
25 触媒微粒子
26 カーボン担体
31 親水基
32 親油基
33 界面活性剤
40 水相
41 逆ミセル径
51 白金−TiO−エチレングリコール混合溶液を入れた容器
52 マグネチックスターラー
53 UV光照射装置
100a,100b,100c,100d 逆ミセル
200 逆ミセル構造
300a,300b カーボン担持触媒微粒子

Claims (7)

  1. 内部粒子と、白金を含み当該内部粒子を被覆する最外層とを備える電極触媒用触媒微粒子の製造方法であって、
    酸素欠陥を有しない第1の金属酸化物からなる微粒子を含む逆ミセルの分散液を準備する工程、
    白金イオンを含む逆ミセルの分散液を準備する工程、並びに、
    少なくとも、前記第1の金属酸化物からなる微粒子を含む逆ミセルの分散液、前記白金イオンを含む逆ミセルの分散液、及び犠牲剤を混合し、当該混合物にマイクロ波を照射することにより、前記第1の金属酸化物からなる微粒子の少なくとも表面を、酸素欠陥を有する第2の金属酸化物に還元し、且つ、当該第2の金属酸化物上に、前記白金イオンが還元されてなる白金を含む最外層を形成する還元工程を有することを特徴とする、電極触媒用触媒微粒子の製造方法。
  2. 前記還元工程後の混合物にアルコールを添加する工程を有する、請求項1に記載の電極触媒用触媒微粒子の製造方法。
  3. 前記第1の金属酸化物からなる微粒子を含む逆ミセルの分散液及び前記白金イオンを含む逆ミセルの分散液の少なくともいずれか一方は、前記第1の金属酸化物からなる微粒子の水溶液若しくは水分散液又は前記白金イオンの水溶液と、界面活性剤の有機溶媒溶液とを混合することにより得られる、請求項1又は2に記載の電極触媒用触媒微粒子の製造方法。
  4. 前記第1の金属酸化物が、酸化チタン(IV)(TiO)、酸化スズ(IV)(SnO)、酸化ニオブ(V)(Nb)、及び酸化タンタル(V)(Ta)からなる群より選ばれる金属酸化物である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電極触媒用触媒微粒子の製造方法。
  5. 前記還元工程により、前記第1の金属酸化物からなる微粒子の表面に、前記第2の金属酸化物を含有する中間層を形成し、且つ、当該中間層上に前記最外層を形成する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電極触媒用触媒微粒子の製造方法。
  6. 前記請求項1乃至5のいずれか一項に記載の製造方法により得られる電極触媒用触媒微粒子をカーボン担体に担持させた、電極触媒用カーボン担持触媒微粒子の製造方法であって、
    前記還元工程において、
    前記第1の金属酸化物からなる微粒子を含む逆ミセルの分散液、前記白金イオンを含む逆ミセルの分散液、犠牲剤、及びカーボン担体を混合し、当該混合物にマイクロ波を照射することを特徴とする、電極触媒用カーボン担持触媒微粒子の製造方法。
  7. 前記カーボン担体は、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラック、活性炭、メゾフェースカーボン及び黒鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種類のカーボン材料からなる担体である、請求項6に記載の電極触媒用カーボン担持触媒微粒子の製造方法。
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