JP5674082B2 - Nkt細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の有効性の予測方法 - Google Patents

Nkt細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の有効性の予測方法 Download PDF

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Description

本発明は、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の有効性を予測する方法、及びそれに使用するキットに関する。
非小細胞肺癌(NSCLC)は、肺癌症例の80%超を占め、患者の大部分が、局所進行性であるか、転移症例である。肺癌の予後は未だに暗澹たるものであり、5年生存率が15%を下回る。プラチナベースの化学療法が進行したNSCLCに対する標準的な第一選択治療(first-line therapy)である(非特許文献1)。第一選択治療後の不応答症例や再発症例は、治療をすることがより一層困難であると考えられている(非特許文献2〜4)。後期NSCLCの患者は、しばしば症候性であって、標準的な化学療法は好ましくない合併症を引き起こすので、免疫療法のような毒性の低い新たな治療法の確立が強く望まれている。
非多様性ナチュラルキラーT(iNKT)細胞は、リンパ球のユニークな亜群であり、幅広い免疫反応を制御する(非特許文献5〜7)。iNKT細胞は非古典的MHC分子であるCD1dにより提示された糖脂質抗原を認識する。α−ガラクトシルセラミド(α−GalCer;KRN7000)は、もともとは海綿から抽出されたものであり、iNKT細胞についての最初の糖脂質リガンドとして見出された(非特許文献8)。α−GalCerへの反応において、iNKT細胞は有効量のインターフェロンγ(IFN−γ)のようなサイトカインを産生し、樹状細胞(DCs)、NK細胞及びCD8T細胞を含む他のエフェクター細胞に対してアジュバント効果を発揮する。また、iNKT細胞はインビトロ及びインビボの双方において、悪性腫瘍に対する強力で直接的な抗腫瘍活性を有する(非特許文献9〜13)。
iNKT細胞の強力な抗腫瘍活性を臨床分野に適用するため、最近、内在性のiNKT細胞を活性化するようにデザインされたα−GalCerパルスDCの第1相臨床試験を、標準治療に不応答なNSCLCの患者で行った(非特許文献14)。この細胞療法は、注入細胞の最大用量で、3例全てにおいて明らかな免疫反応を誘導した。結果的に、進行性又は再発性のNSCLCの患者17名についてα−GalCerパルスDC投与の第I〜II相試験を行った。その結果、PBMCにおける上昇したIFNγ産生と、延長した生存期間の中央値との間の相関が認められ、即ち、IFNγ良好応答者群(10例)の生存期間中央値(MST:19.1月)は低応答者群(7例)のそれ(9.5月)よりも長かった(p=0.0046)(非特許文献15)。
ロイコトリエンB4 12−ヒドロキシデヒドロゲナーゼ(LTB4DH)は、亜鉛非依存的な中鎖デヒドロゲナーゼ/レダクターゼ(MDR)ファミリーの一員であり、生物学的活性の高い3つの全てのエイコサノイドを除去するためのその非可逆的分解における鍵となる酵素である(非特許文献16)。Schultzらは、腫瘍組織におけるLTB4DH発現が、早期段階の尿路上皮細胞カルシノーマにおける再発の予測マーカーとなり得ることを報告している(非特許文献17)。
ジヒドロピリミジネース・ライク3(DPYSL3)は、TUC(TOAD-64/Ulip/CRMP)ファミリーの一員であり、コラプシン・レスポンス・メディエーター・プロテイン−4(CRMP−4)又はTUC−4としても知られており、神経の可塑性及び神経突起伸展や伸長に寄与している(非特許文献18)。DPYSL3はチュブリン、アクチン及びコンドロイチン硫酸プロテオグリカン等の構造蛋白質と相互作用することから、このタンパク質は、細胞骨格系の組織化の制御において重要な役割を果たしていることが示唆されている。Knudenらは、抗DPYSL3抗体が、胸腺腫及び亜急性の辺縁系脳炎と関連することを記載している(非特許文献19)。
クロモソーム13 オープン・リーディング・フレーム15(C13orf15)は、細胞周期進行を制御すると考えられており、DNA損傷に応答してp53により誘導され、あるいは溶解性を下回るレベルの補体系タンパク質により誘導される。レスポンス・ジーン・トゥ・コンプレメント32(RGC32)は、C13orf15の別名であり、そのアライメントから、この遺伝子の機能として、サイクリン依存的キナーゼ2(CDC2)のレギュレーターの基質ということが示唆されている。C13orf15を過剰発現させると、細胞周期進行を活性化するか抑制することが示されている(非特許文献20及び21)。RGC−32タンパク質の過剰発現が、結腸腫瘍、前立腺腫瘍、膀胱腫瘍、乳線腫瘍、肺腫瘍、他の消化管腫瘍及び皮膚性のT細胞リンパ腫において見出されている(非特許文献22及び23)。
近年、癌の検出、予後の予測又は治療の評価のための、多くの分子バイオマーカーが、開発されてきている(非特許文献24及び25)。過去の報告における知見によれば、CEA、SCC及びCYFRA等の通常の腫瘍マーカーに加えて、NSCLCの予後のバイオマーカーとして、14−3−3ζ(非特許文献26)、クラステリン(非特許文献27)、及びKIF4A(非特許文献28)が、cDNAマイクロアレイ解析に基づき同定されている。Wangらは、L523Sタンパク質が、肺癌の治療標的であることを報告している(非特許文献29)。
しかしながらα−GalCerパルス樹状細胞療法の有効性を容易に予測する方法は未だ開発されていない。
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本発明の目的はNKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の有効性を予測する方法を提供することである。
本発明者らはα−GalCerパルス樹状細胞注入を行っている肺癌患者の末梢血NK細胞及びT細胞について、cDNAマイクロアレイベースの遺伝子発現解析を行った。その結果、この免疫療法に対する応答性に、発現量が相関する遺伝子としてLTB4DH、DPYSL3及びC13orf15を同定し、これらの遺伝子の発現量がα−GalCerパルスDC療法の有効性についての良好な指標となり得ることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は以下に関する。
[1]NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の有効性を予測するための方法であって、
(1)対象患者へのNKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の適用による、
(a)対象患者から単離されたT細胞におけるLTB4DHの発現レベル、
(b)対象患者から単離されたNK細胞におけるDPYSL3の発現レベル、及び
(c)対象患者から単離されたNK細胞におけるC13orf15の発現レベル
からなる群から選択される少なくとも1つの発現レベルの変化を測定すること;並びに
(2)(1)において測定した発現レベルの変化と、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療の有効性とを相関付けること
を含む、方法。
[2]NKT細胞リガンドがα−ガラクトシルセラミドである、[1]記載の方法。
[3]NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の有効性を予測するためのキットであって、
(a)LTB4DHをコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー或いはLTB4DHを特異的に認識し得る抗体、及びT細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体、
(b)DPYSL3をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー或いはDPYSL3を特異的に認識し得る抗体、及びNK細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体、並びに
(c)C13orf15をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー或いはC13orf15を特異的に認識し得る抗体、及びNK細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体
からなる群から選択される少なくとも1つを含む、キット。
[4]以下の(A)〜(C)を含むキット:
(A)NKT細胞リガンド、
(B)GM−CSF、及び
(C)(a)LTB4DHをコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー或いはLTB4DHを特異的に認識し得る抗体、及びT細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体、
(b)DPYSL3をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー或いはDPYSL3を特異的に認識し得る抗体、及びNK細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体、並びに
(c)C13orf15をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー或いはC13orf15を特異的に認識し得る抗体、及びNK細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体
からなる群から選択される少なくとも1つ。
本発明によれば、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の有効性を容易に予測することが可能となる。本発明の方法を用いれば、治療の有効性を確認しながら、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法を実施することが可能となる。その結果、例えば、当該療法が有効な患者に対しては、その療法を続行し、有効性が認められない患者に対しては治療方針を変更する等、治療方針の選択判断が可能となる。
遺伝子発現解析の研究デザイン α−GalCerパルスDC治療前及び該治療後の凍結保存したPBMC試料を解凍した。CD56NK細胞及びCD56CD3T細胞を磁性ビーズ及びAuto−MACSソーターを用いて精製した。NK細胞及びT細胞からメッセンジャーRNAを抽出し、良好応答群からの3人の患者及び低応答群からの3人の患者を含む6人の患者についてマイクロアレイ解析を実施した。マイクロアレイデータから同定した候補遺伝子について、定量的リアルタイムPCR(qRT−PCR)により検証した。 T細胞及びNK細胞における、治療前と治療後との間での示差的遺伝子発現解析 遺伝子発現レベルを標準化し、log2変換をし、平均値を算出することにより、相対的な値を得た。各カラムは、3人の異なる患者(良好応答者群;#00, #10, #04、低応答者群;#01, #16, #24)から集められた試料を表す。いくつかの遺伝子は、多重のアフィメトリクスプローブセットを有する。上昇制御された遺伝子を赤字で、下方制御された遺伝子を青字で示す。色付きのバー(底辺)は遺伝子発現の差異の強度に関する。(A)良好応答者群のNK細胞及び(C)良好応答者群のT細胞で上方制御された遺伝子。(B)低応答者群のNK細胞及び(D)低応答者群のT細胞において上方制御された遺伝子。3つの試料のうち2つにおいて他の群と比較して2倍を超えて変化しなかった遺伝子を除去することにより、四角で囲んだ遺伝子を抽出した。尚、本図面は本来カラー図面である。 LTB4DH、DPYSL3及びC13orf15の発現レベルの変化 治療前及び治療後の試料におけるGAPDH発現に相当する転写をqRT−PCRにより定量した。検証例(明るいグレイ)についてqRT−PCRを行った(n=8;5つの試料は良好応答者群の患者由来であり、3つの試料は、低応答者群の患者由来である)。検証例に加えて、マイクロアレイアッセイでPBMC試料を調べた6つの症例についてもqRT−PCRにより解析した(n=14)。*, p<0.05; ウィルコクソン検定。(A)CD56CD3T細胞、LTB4DHが良好応答者群において上昇したが(p=0.0431;検証例、p=0.0251;全例)、低応答者群では上昇していなかった。(B)CD56NK細胞、DPYSL3が良好応答者において上昇制御されたが(p=0.0431;検証例、p=0.0117;全例)、低応答者群では上昇制御されていなかった。(C)CD56NK細胞、C13orf15の発現レベルが、全ての低応答者群の試験した症例において上昇していた(p=0.0431)が、良好応答者群においては上昇していなかった。
1.NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の有効性を予測する方法
本発明は、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の有効性を予測する方法であって、
(1)対象患者へのNKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の適用による、
(a)対象患者から単離されたT細胞におけるLTB4DHの発現レベル、
(b)対象患者から単離されたNK細胞におけるDPYSL3の発現レベル、及び
(c)対象患者から単離されたNK細胞におけるC13orf15の発現レベル
からなる群から選択される少なくとも1つの発現レベルの変化を測定すること;並びに
(2)(1)において測定した発現レベルの変化と、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療の有効性とを相関付けること
を含む、方法を提供するものである。
NKT細胞は、T細胞受容体(TCR)とNK受容体の2つの抗原レセプターを発現しているリンパ球の一つである。NKT細胞は、当該細胞上のT細胞受容体がCD1(例えばCD1d)分子上に提示された下記の「NKT細胞リガンド」を認識する。このような性質を有するNKT細胞を、特にCD1(例えばCD1d)拘束性NKT細胞という。通常のT細胞とは異なり、NKT細胞上のT細胞受容体のレパートリーは非常に限られている。例えばマウスNKT細胞(Vα14NKT細胞という場合がある)上のT細胞受容体のα鎖は、非多型性のVα14及びJα281遺伝子セグメントによりコードされており(Proc Natl Acad Sci USA, 83, p.8708-8712, 1986; Proc Natl Acad Sci USA, 88, p.7518-7522, 1991; J Exp Med, 180, p.1097-1106, 1994)、β鎖の90%以上はVβ8であり、他にVβ7やVβ2という限られたレパートリーが含まれ得る。また、ヒトNKT細胞上のT細胞受容体は、マウスのVα14と相同性の高い非多型性のVα24、及びVβ8.2に近縁のVβ11の組み合わせであることが知られている。
本明細書中、「NKT細胞リガンド」とは、CD1分子上に提示されたときに、NKT細胞上のT細胞受容体により特異的に認識され、NKT細胞を特異的に活性化させ得る化合物をいう。本発明において使用される「NKT細胞リガンド」としては、例えば、α−グリコシルセラミド、イソグロボトリヘキソシルセラミド(Science, 306, p.1786-1789, 2004)、OCH(Nature 413:531, 2001)等を挙げることができる。α−グリコシルセラミドは、ガラクトース、グルコースなどの糖類とセラミドとがα配位にて結合したスフィンゴ糖脂質であり、WO93/05055、WO94/02168、WO94/09020、WO94/24142、およびWO98/44928、Science, 278, p.1626-1629, 1997 等に開示されているものを挙げることができる。中でも、(2S,3S,4R)−1−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−2−ヘキサコサノイルアミノ−1,3,4−オクタデカントリオール(本明細書中、α−ガラクトシルセラミド又はα−GalCerと称する)が好ましい。
本明細書中、「NKT細胞リガンド」は、その塩をも含む意味として用いられる。NKT細胞リガンドの塩としては生理学的に許容される酸(例:無機酸、有機酸)や塩基(例:アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが挙げられる。
また、本明細書中、「NKT細胞リガンド」は、その溶媒和物(水和物等)をも含む意味として用いられる。
抗原提示細胞とは、抗原をリンパ球に提示してリンパ球の活性化を促す細胞をいう。通常、抗原提示細胞は、T細胞やNKT細胞に抗原を提示し得る樹状細胞又はマクロファージである。特に、樹状細胞は、強力な抗原提示能力を有しており、細胞表面上に発現されたMHC ClassI、MHC ClassI様分子(CD1等)、MHC ClassII等を介して抗原を提示し、T細胞又はNKT細胞を活性化させ得るので、好ましい。抗原提示細胞は、NKT細胞リガンドをNKT細胞に確実に提示し得るように、CD1(例えばCD1d)発現細胞であることが好ましい。
本明細書中、抗原提示細胞は、任意の哺乳動物由来のものを意味する。哺乳動物としては、ヒト及びヒトを除く哺乳動物を挙げることが出来る。ヒトを除く哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、サル、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類を挙げることが出来る。抗原提示細胞は、好ましくは、ヒト抗原提示細胞である。
抗原提示細胞は自体公知の方法によって、上述の哺乳動物の組織(例えばリンパ節、脾臓、末梢血等)から単離することが可能である。例えば抗原提示細胞上に特異的に発現する細胞表面マーカーに対する抗体を用いて、セルソーター、パニング、抗体磁気ビーズ法等により樹状細胞を単離することができる。抗原提示細胞として樹状細胞を単離する場合には、樹状細胞上に特異的に発現する細胞表面マーカーとして、例えば、CD11c、MHC ClassI、MHC ClassI様分子(CD1等)、MHC ClassII、CD8α、CD85k、CD86、FDL−M1、DEC−205等を挙げることが出来る。
また、抗原提示細胞は、上述の哺乳動物の骨髄細胞や単核球等を適切な抗原提示細胞分化条件で培養することにより製造することもできる。例えば、骨髄細胞はGM−CSF(場合によっては更にIL−4)の存在下で約6日間程度培養されることにより、樹状細胞(骨髄由来樹状細胞:BMDC)へと分化する(Nature, 408, p.740-745, 2000)。また、末梢血液中の単核球(特に単球、マクロファージ等)をGM−CSF(場合によっては更にIL−2及び/又はIL−4)の存在下で培養することにより、樹状細胞を得ることが出来る(文献名:Motohasi S, Kobayashi S, Ito T, Magara KK, Mikuni O, Kamada N, Iizasa T, Nakayama T, Fujisawa T, Taniguchi M., Preserved IFN-alpha production of circulating Valpha24 NKT cells in primary lung cancer patients., Int J Cancer, 2002, Nov.10; 102(2):159-165. Erratum in :Int J Cancer. 2003, May 10; 104(6):799)。
「抗原提示細胞へのNKT細胞リガンドのパルス」とは、NKT細胞リガンドを抗原提示細胞表面に、該リガンドがNKT細胞へ提示され得るように、配置することをいう。より具体的には、NKT細胞リガンドを、抗原提示細胞表面に発現されたCD1分子上に提示させることを意味する。抗原提示細胞へのNKT細胞リガンドのパルスは、NKT細胞リガンドを抗原提示細胞へ接触させることにより達成することが出来る。例えばNKT細胞リガンドを含有する生理的な培養液中で抗原提示細胞が培養される。この場合、培養液中のNKT細胞リガンドの濃度は、NKT細胞リガンドの種類により適宜設定することが可能であるが、例えば、1〜10000ng/ml好ましくは10〜1000ng/mlである。また、培養液としては、例えば、適切な添加物(血清、アルブミン、緩衝剤、アミノ酸等)を含んでいてもよい基礎培地(最少必須培地(MEM)、ダルベッコ改変最少必須培地(DMEM)、RPMI1640培地、199培地)などを挙げることが出来る。培養液のpHは通常約6〜8であり、培養温度は通常約30〜40℃であり、培養時間は通常4〜14日間、好ましくは6〜14日間である。更に、培養後に抗原提示細胞を、NKT細胞リガンドを含まない培養液や生理的な水溶液で洗浄し、フリーのNKT細胞リガンドを除去することにより、NKT細胞リガンドをパルスされた抗原提示細胞が単離される。
NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による治療の対象となる腫瘍の種類としては、NKT細胞リガンドが治療的に有効な腫瘍であれば特に限定されない。腫瘍としては、例えば、肺癌(小および/または非小細胞)、脳腫瘍、胃癌、食道癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、精巣癌、皮膚癌、骨肉腫、結腸直腸癌、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、急性非リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ACTH生成腫瘍、副腎皮質癌、皮膚T細胞性リンパ腫、子宮内膜癌、ユーイング肉腫、胆嚢癌、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、メラノーマ、中皮腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、卵巣(胚細胞)癌、陰茎癌、前立腺癌、網膜芽腫、軟組織肉腫、扁平上皮細胞癌、甲状腺癌、栄養膜新生物、膣癌、外陰癌、ウィルムス腫瘍等を挙げることが出来る。腫瘍は、好ましくは肺癌であり、より好ましくは非小細胞肺癌である。
NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の対象患者は、通常、ヒト及び非ヒト哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の有効性とは、IFNγ産生を誘導し、生存期間を延長するという、該抗腫瘍療法の効果の程度又は有無をいう。
本発明の方法においては、対象患者へのNKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の適用による、
(a)対象患者から単離されたT細胞におけるLTB4DHの発現レベル、
(b)対象患者から単離されたNK細胞におけるDPYSL3の発現レベル、及び
(c)対象患者から単離されたNK細胞におけるC13orf15の発現レベル
からなる群から選択される少なくとも1つの発現レベルの変化を測定する。
NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の適用による各遺伝子の発現レベルの変化は、当該抗腫瘍療法を適用する前における遺伝子発現レベルと、当該抗腫瘍療法を適用した後における遺伝子発現レベルとを比較することにより測定することが出来る。発現レベルの比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行われる。
NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法においては、少なくとも1回、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞を患者へ投与(注入)する。通常は、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞を、複数回(例えば3〜10回)、5日〜50日(好ましくは7日〜28日)間隔で、患者へ注入する。NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の詳細については、例えば、Motohashi S et al., J Immunol 2009;182:2492-501を参照のこと。NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法を適用する前とは、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞の第1回目の投与より前を意味する。NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法を適用した後とは、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞を少なくとも1回投与した後を意味する。「NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法を適用した後」の時点は、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞を最後に投与してから、遅くとも3ヶ月以内、好ましくは2ヶ月以内、より好ましくは1ヶ月以内(例えば、最終投与から3〜4週間後)である。
LTB4DH(ロイコトリエンB4 12−ヒドロキシデヒドロゲナーゼ)は、亜鉛非依存的な中鎖デヒドロゲナーゼ/レダクターゼ(MDR)ファミリーの一員であり、生物学的活性の高い3つの全てのエイコサノイドを除去するためのその非可逆的分解における鍵となる公知の酵素である(Hori T et al., J Biol Chem 2004;279:22615-23)。本発明において使用されるLTB4DHは、通常ヒト及び非ヒト哺乳動物のLTB4DHであり、好ましくはヒトLTB4DHである。ヒトLTB4DHのアミノ酸配列(配列番号2)及びcDNA配列(配列番号1)も公知である(cDNAのNCBIアクセッション番号:NM_012212、バージョン:NM_012212.3)。
DPYSL3(ジヒドロピリミジネース・ライク3)は、TUC(TOAD-64/Ulip/CRMP)ファミリーの一員であり、コラプシン・レスポンス・メディエーター・プロテイン−4(CRMP−4)又はTUC−4としても知られており、神経の可塑性及び神経突起伸展や伸長に寄与する公知の遺伝子である(Kowara R et al., Neurosci Lett 2008;430:197-202)。本発明において使用されるDPYSL3は、通常ヒト及び非ヒト哺乳動物のDPYSL3であり、好ましくはヒトDPYSL3である。ヒトDPYSL3のアミノ酸配列(配列番号4)及びcDNA配列(配列番号3)も公知である(cDNAのNCBIアクセッション番号:NM_001387、バージョン:NM_001387.2)。
C13orf15(クロモソーム13 オープン・リーディング・フレーム15)は、DNA損傷に応答してp53により誘導され、あるいは溶解性を下回るレベルの補体系タンパク質により誘導される公知の遺伝子であり、細胞周期進行を制御すると考えられている。レスポンス・ジーン・トゥ・コンプレメント32(RGC32)は、C13orf15の別名であり、そのアライメントから、この遺伝子の機能として、サイクリン依存的キナーゼ2(CDC2)のレギュレーターの基質ということが示唆されている。C13orf15を過剰発現させると、細胞周期進行を活性化するか抑制することが示されている(Badea T et al., J Biol Chem 2002;277:502-8、Saigusa K et al., Oncogene 2007;26:1110-21)。本発明において使用されるC13orf15は、通常ヒト及び非ヒト哺乳動物のC13orf15であり、好ましくはヒトC13orf15である。ヒトC13orf15のアミノ酸配列(配列番号6)及びcDNA配列(配列番号5)も公知である(cDNAのNCBIアクセッション番号:NM_014059、バージョン:NM_014059.2)。
「細胞の単離」とは、目的とする細胞以外の細胞を除去する操作がなされていることを意味する。「単離された細胞」における目的とする細胞の純度は通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは実質的に100%である。T細胞は、例えば、末梢血から、T細胞マーカー(即ち、T細胞上に特異的に発現する細胞表面マーカー)を特異的に認識する抗体を用いて、セルソーター、パニング、抗体磁気ビーズ法等により単離することができる。T細胞マーカーは当該技術分野において周知であり、例えば、CD3、CD2、TCR、CD4、CD8、Thy−1等を挙げることが出来る。同様に、NK細胞は、例えば、末梢血から、NK細胞マーカー(即ち、NK細胞上に特異的に発現する細胞表面マーカー)を特異的に認識する抗体を用いて、セルソーター、パニング、抗体磁気ビーズ法等により単離することが出来る。NK細胞マーカーは、当該技術分野において周知であり、例えば、CD56、CD16、CD57、CD94、CD158a等を挙げることが出来る。ヒトT細胞は、通常、CD3CD56である。ヒトNK細胞は、通常、CD3CD56である。なお、ヒトにおいてはCD3CD56細胞(即ちNKT細胞)のポピュレーションが非常に小さいので、CD56細胞をNK細胞と近似して用いてもよい。
各遺伝子の発現レベルは、各遺伝子の翻訳産物(即ち、タンパク質)を特異的に認識する抗体を用いて、免疫学的手法により、該翻訳産物量を定量することにより測定することができる。免疫学的手法としては、フローサイトメトリー解析、放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA法(Methods in Enzymol. 70: 419-439 (1980))、ウェスタンブロッティング、免疫組織染色等を挙げることができる。
抗体による抗原Xの「特異的な認識」とは、抗原抗体反応における、抗体の抗原Xに対するアフィニティが、抗原X以外の抗原に対するアフィニティよりも強いことを意味する。
各遺伝子の翻訳産物を特異的に認識する抗体は、該翻訳産物やその抗原性を有する部分ペプチドを免疫原として用い、既存の一般的な製造方法によって製造することができる。本明細書において、抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)等の天然型抗体、遺伝子組換技術を用いて製造され得るキメラ抗体、ヒト化抗体や一本鎖抗体、およびこれらの結合性断片が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又はこれらの結合性断片である。結合性断片とは、特異的結合活性を有する前述の抗体の一部分の領域を意味し、具体的には例えばF(ab')2、Fab'、Fab、Fv、sFv、dsFv、sdAb等が挙げられる(Exp. Opin. Ther. Patents, Vol.6, No.5, p.441-456, 1996)。抗体のクラスは、特に限定されず、IgG、IgM、IgA、IgDあるいはIgE等のいずれのアイソタイプを有する抗体をも包含する。好ましくは、IgG又はIgMであり、精製の容易性等を考慮するとより好ましくはIgGである。
各遺伝子の発現レベルは、また、各遺伝子の転写産物(即ち、各遺伝子をコードするmRNA)やcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマーを用いて、自体公知の方法により測定することが出来る。該測定方法としては、例えば、cDNAアレイ、RT−PCR、ノザンブロッティング、in situ ハイブリダイゼーション等を挙げることができる。
LTB4DHをコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブとしては、配列番号1で表されるヌクレオチド配列に含まれる、約15塩基以上、好ましくは約18〜約500塩基、より好ましくは約18〜約200塩基、いっそう好ましくは約18〜約50塩基の連続したヌクレオチド配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドを挙げることが出来る。
LTB4DHをコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プライマーは、配列番号1で表されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの一部又は全部の領域を特異的に増幅し得るように設計されたものであればいかなるものであってもよい。例えば、上記ヌクレオチド配列の相補配列の一部にハイブリダイズする、約15〜約50塩基、好ましくは約18〜約30塩基のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、このハイブリダイゼーション部位より3’側の上記ヌクレオチド配列の一部にハイブリダイズする、約15〜約50塩基、好ましくは約18〜約30塩基のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとの組み合わせであり、それらによって増幅される核酸の断片長が約50〜約1,000塩基、好ましくは約50〜約500塩基、より好ましくは約50〜約200塩基である、一対のポリヌクレオチドが挙げられる。
DPYSL3をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブとしては、配列番号3で表されるヌクレオチド配列に含まれる、約15塩基以上、好ましくは約18〜約500塩基、より好ましくは約18〜約200塩基、いっそう好ましくは約18〜約50塩基の連続したヌクレオチド配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドを挙げることが出来る。
DPYSL3をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プライマーは、配列番号3で表されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの一部又は全部の領域を特異的に増幅し得るように設計されたものであればいかなるものであってもよい。例えば、上記ヌクレオチド配列の相補配列の一部にハイブリダイズする、約15〜約50塩基、好ましくは約18〜約30塩基のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、このハイブリダイゼーション部位より3’側の上記ヌクレオチド配列の一部にハイブリダイズする、約15〜約50塩基、好ましくは約18〜約30塩基のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとの組み合わせであり、それらによって増幅される核酸の断片長が約50〜約1,000塩基、好ましくは約50〜約500塩基、より好ましくは約50〜約200塩基である、一対のポリヌクレオチドが挙げられる。
C13orf15をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブとしては、配列番号5で表されるヌクレオチド配列に含まれる、約15塩基以上、好ましくは約18〜約500塩基、より好ましくは約18〜約200塩基、いっそう好ましくは約18〜約50塩基の連続したヌクレオチド配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドを挙げることが出来る。
C13orf15をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プライマーは、配列番号5で表されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの一部又は全部の領域を特異的に増幅し得るように設計されたものであればいかなるものであってもよい。例えば、上記ヌクレオチド配列の相補配列の一部にハイブリダイズする、約15〜約50塩基、好ましくは約18〜約30塩基のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、このハイブリダイゼーション部位より3’側の上記ヌクレオチド配列の一部にハイブリダイズする、約15〜約50塩基、好ましくは約18〜約30塩基のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとの組み合わせであり、それらによって増幅される核酸の断片長が約50〜約1,000塩基、好ましくは約50〜約500塩基、より好ましくは約50〜約200塩基である、一対のポリヌクレオチドが挙げられる。
核酸プローブ及び核酸プライマーは、特異的検出に支障を生じない範囲で付加的配列(検出対象のポリヌクレオチドと相補的でないヌクレオチド配列)を含んでいてもよい。
また、核酸プローブ及び核酸プライマーは、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、3H、14C等)、酵素(例:β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)などで標識されていてもよい。あるいは、蛍光物質(例:FAM、VIC等)の近傍に該蛍光物質の発する蛍光エネルギーを吸収するクエンチャー(消光物質)がさらに結合されていてもよい。かかる実施態様においては、検出反応の際に蛍光物質とクエンチャーとが分離して蛍光が検出される。
核酸プローブ及び核酸プライマーは、DNAであってもRNAであってもよく、また、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。二本鎖の場合は二本鎖DNA、二本鎖RNA、DNA/RNAハイブリッドのいずれであってもよい。従って、本明細書においてあるヌクレオチド配列を有する核酸について記載する場合、特に断らない限り、該ヌクレオチド配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド、該ヌクレオチド配列と相補的な配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド、それらのハイブリッドである二本鎖ポリヌクレオチドをすべて包含する意味で用いられていると理解されるべきである。
上記核酸プローブ及び核酸プライマーは、例えば、本明細書に記載されたヌクレオチド配列の情報に基づいて、DNA/RNA自動合成機を用いて常法に従って合成することができる。
次に、工程(1)において測定した発現レベルの変化と、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療の有効性とが相関付けられる。
(a)T細胞におけるLTB4DHの発現レベルを測定する場合
後述の実施例に示すように、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療に対する応答が良好な患者においては、T細胞におけるLTB4DHの発現レベルが治療後において有意に上昇しているが、低応答者では発現レベルの上昇が認められない。即ち、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療の適用によるT細胞におけるLTB4DH発現レベルの上昇と、当該抗腫瘍治療の有効性との間の正の相関に基づき、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療の有効性が予測される。
例えば、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療により、T細胞におけるLTB4DHの発現レベルが上昇した場合には、対象患者はNKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療に対して応答が良好であり、当該治療が有効である可能性が高いと判定することが出来る。逆に、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療を施しても、T細胞におけるLTB4DHの発現レベルの上昇が認められない場合には、対象患者はNKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療に対する応答が弱く、当該治療が無効である可能性が高いと判定することが出来る。
(b)NK細胞におけるDPYSL3の発現レベルを測定する場合
後述の実施例に示すように、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療に対する応答が良好な患者においては、NK細胞におけるDPYSL3の発現レベルが治療後において有意に上昇しているが、低応答者では発現レベルの上昇が認められない。即ち、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療の適用によるNK細胞におけるDPYSL3発現レベルの上昇と、当該抗腫瘍治療の有効性との間の正の相関に基づき、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療の有効性が予測される。
例えば、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療により、NK細胞におけるDPYSL3の発現レベルが上昇した場合には、対象患者はNKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療に対して応答が良好であり、当該治療が有効である可能性が高いと判定することが出来る。逆に、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療を施しても、NK細胞におけるDPYSL3の発現レベルの上昇が認められない場合には、対象患者はNKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療に対する応答が弱く、当該治療が無効である可能性が高いと判定することが出来る。
(c)NK細胞におけるC13orf15の発現レベルを測定する場合
後述の実施例に示すように、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療に対する応答が低い患者においては、NK細胞におけるC13orf15の発現レベルが治療後において有意に上昇しているが、良好応答者では発現レベルの上昇が認められない。即ち、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療の適用によるNK細胞におけるC13orf15発現レベルの上昇と、当該抗腫瘍治療の有効性との間の負の相関に基づき、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療の有効性が予測される。
例えば、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療により、NK細胞におけるC13orf15の発現レベルが上昇した場合には、対象患者はNKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療に対する応答が弱く、当該治療が無効である可能性が高いと判定することが出来る。逆に、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療を施しても、NK細胞におけるC13orf15の発現レベルの上昇が認められない場合には、対象患者はNKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療に対して応答が良好であり、当該治療が有効である可能性が高いと判定することが出来る。
尚、本発明の方法においては、(a)T細胞におけるLTB4DHの発現レベル、(b)NK細胞におけるDPYSL3の発現レベル、及び(c)NK細胞におけるC13orf15の発現レベルからなる群から選択される少なくとも1つの発現レベルの変化を測定すれば足りるが、これらのうちの2つ((a)及び(b)、(a)及び(c)、又は(b)及び(c))、又は3つ全ての発現レベルの変化を測定し、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療の有効性と相関付けることにより、より精度の高い予測が可能となる。
例えば、3つ全ての遺伝子の発現レベルの変化を測定する場合、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療により、T細胞におけるLTB4DHの発現レベルが上昇し、NK細胞におけるDPYSL3の発現レベルが上昇し、且つNK細胞におけるC13orf15の発現レベルの上昇が認められない場合には、対象患者はNKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療に対して応答が良好であり、当該治療が有効である可能性が高いと判定することが出来る。逆に、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療を施しても、T細胞におけるLTB4DHの発現レベルの上昇が認められず、NK細胞におけるDPYSL3の発現レベルの上昇が認められず、且つNK細胞におけるC13orf15の発現レベルが上昇した場合には、対象患者はNKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍治療に対する応答が弱く、当該治療が無効である可能性が高いと判定することが出来る。
2.キット
本発明は、
(a)LTB4DHをコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー或いはLTB4DHを特異的に認識し得る抗体、及びT細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体、
(b)DPYSL3をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー或いはDPYSL3を特異的に認識し得る抗体、及びNK細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体、並びに
(c)C13orf15をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー或いはC13orf15を特異的に認識し得る抗体、及びNK細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体
からなる群から選択される少なくとも1つを含む、キット(即ち、組み合わせ物)を提供するものである。本発明のキットは、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の有効性を予測するためのものであり得る。本発明のキットを用いれば、上記本発明の方法により、容易にNKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の有効性を予測することが可能となる。
本発明のキットは、(a)〜(c)からなる群から選択される2つ((a)及び(b)、(a)及び(c)、又は(b)及び(c))を含んでいてもよく、3つ全てを含んでいてもよい。
(a)には、T細胞へのNK細胞の混入を除去するために、NK細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体が更に含まれていてもよい。(b)には、NK細胞へのT細胞の混入を除去するために、T細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体が更に含まれていてもよい。(c)には、NK細胞へのT細胞の混入を除去するために、T細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体が更に含まれていてもよい。
本発明のキットに含まれる各構成要素は、各々別個に(あるいは可能であれば混合した状態で)水もしくは適当な緩衝液(例:TEバッファー、PBSなど)中に適当な濃度となるように溶解されるか、あるいは凍結乾燥された状態で、適切な容器中に収容される。
本発明のキットは、LTB4DH、DPYSL3又はC13orf15の発現レベルの測定方法に応じて、当該方法の実施に必要な他の成分を構成としてさらに含んでいてもよい。
例えば、本発明のキットが、各遺伝子の翻訳産物を特異的に認識する抗体を含むものであれば、免疫学的手法により各遺伝子の発現レベルを測定することにより、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の有効性を予測することができる。この場合、本発明のキットは、標識二次抗体、発色基質、ブロッキング液、洗浄緩衝液、ELISAプレート、ブロッティング膜等をさらに含むことができる。
本発明のキットが、各遺伝子をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマーを含むものであれば、RT-PCR、ノザンブロッティング、in situ ハイブリダイゼーション、cDNAアレイ等により各遺伝子の発現レベルを測定することにより、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の有効性を予測することができる。RT-PCRを測定に用いる場合には、本発明のキットは、10×PCR反応緩衝液、10×MgCl2水溶液、10×dNTPs水溶液、Taq DNAポリメラーゼ(5U/μL)、逆転写酵素等をさらに含むことができる。ノザンブロッティングやcDNAアレイを測定に用いる場合には、本発明のキットは、ブロッティング緩衝液、標識化試薬、ブロッティング膜等をさらに含むことができる。in situ ハイブリダイゼーションを測定に用いる場合には、本発明のキットは、標識化試薬、発色基質等をさらに含むことができる。
本発明のキットには、更に、NKT細胞リガンド、及び抗原提示細胞を取得するための試薬(例えば、GM−CSF(場合によっては更にIL−2及び/又はIL−4))を含めることができる。当該キットは、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による腫瘍治療用キットであり得る。当該キットを使用することにより、治療の有効性を上記本発明の方法に従いモニターしながら、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による腫瘍治療を実施することが可能となる。
当該キットには、更に、樹状細胞マーカーを特異的に認識する抗体、抗原提示細胞を培養するための培養液等を更に加えることが出来る。
本発明のキットに係る各用語の定義は、「1.NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の有効性を予測する方法」の項で述べた通りである。
本明細書中で挙げられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(材料及び方法)
臨床プロトコール及び患者試料
以前記載したように(Motohashi S et al., J Immunol 2009;182:2492-501)、全部で17人の非小細胞肺癌患者が、4回のα−GalCerパルスDCの静脈内投与を受けた。即ち、末梢単核球をGM−CSF及びIL−2の存在下で培養することにより製造した樹状細胞へα−GalCerをパルスし、これを患者へ4回静脈内投与した(1×10/m)。投与は、患者からアフェレシスによりPBMCを採取した時点を0週として、1週、2週、7週及び8週に行った。免疫モニタリングのために、末梢血単核球細胞(PBMC)を週に1回、3ヶ月の観察期間に亘り採取した。治療前(pre-treatment)及び第1回のDC注入から3ヵ月後(post-treatment)の2回の時点の試料を、マイクロアレイ解析に使用した。α−GalCerパルスDC治療後のインターフェロン産生能が、全生存期間と有意に相関するので、良好応答者群は、IFN−γ産生能力が2倍以上上昇した患者として定義し、17人中10人の患者がこれに該当した。逆に、IFN−γ産生能力の上昇が2倍を下回った患者を低応答者群に分類し、7人の患者がこれに該当した。
このプロトコールは、千葉大学の治験倫理委員会(No.181)により承認されたものであり、全ての患者及びその家族からインフォームドコンセントを取得している。
MACS分離及びフローサイトメトリー解析
試験の手順を図1に簡潔に示す。保管した試料を解凍し、PBSにより3回洗浄し、10% FBS、0.01mM 2−ME及び50U/ml ペニシリン−ストレプトマイシンを添加したRPME−1640中で37℃にて6時間プレインキュベートした。次に、CD56NK細胞及びCD56CD3T細胞を得るために、製造者のプロトコールに従って、autoMACS(Miltenyi Biotec Inc. CA, USA)を使用した。CD56NK細胞を、CD56マイクロビーズ(20 μl/107個; Miltenyi Biotec Inc. CA, USA)を用いてPOSSEL_sプロトコールによりトラップした。CD56細胞画分から、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合抗CD3 mAb(BD-pharmingen; clone-UHCT1)及びFICTマイクロビーズ(20 μl/107個; Miltenyi Biotec Inc. CA, USA)を用いてPOSSEL_sプロトコールにより、CD56CD3T細胞を獲得した。これらの細胞を分離した後、FACScaliber (BD biosciences)及びFlowjoソフトウェア (Tree Star, Inc)により純度を測定した。使用したモノクローナル抗体は、フィコエリスリン(PE)結合抗CD56mAb(BD-pharmingen; clone-B159)であり、アイソタイプコントロールとして、FITC−及びPE−結合マウスIgG1 Ab(BD-pharmingen)を使用した。
cDNAマイクロアレイ
分離した細胞から、TRIzol試薬(Invitrogen Japan, Tokyo, Japan)を用いて、全RNAを単離した。オリゴ(dT)プライマー及びSuperscript II RT(Invitrogen)を用いてcDNAを合成した。cDNAマイクロアレイを、理研免疫・アレルギー科学総合研究センター(横浜、日本)において行った。RNAインテグリティーナンバーが7.0を上回る試料をマイクロアレイ解析によるmRNAプロファイリングに使用した。cDNA合成、cRNA増幅、ビオチン化及び断片化は、One-Cycle Target Labelling Kit (Affymetrix, Santa Clara, CA, USA)により行った。20μgの標識化標的RNAをヒトゲノムU133 Plus 2.0 (HG-U133_Plus2) GeneChip発現アレイ(Affymetrix)と45℃にて16時間、製造者の指示書に従いハイブリダイズした。洗浄及びストレプトアビジン−フィコエリスリン染色をGeneChip Fluidics Station (Affymetrix)を用いて行った。次に、チップをGeneChip Scanner 3000 (Affymetrix)を用いてスキャンした。アレイデータを、MAS5(非特許文献16)又はgcRMA(非特許文献17)のいずれかのアルゴリズムを用いて標準化した。
定量的RT−PCR(qRT−PCR)
定量的RT−PCRをABI Prism 7000 Sequence Detection System (Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて行った。Universal ProbeLibrary (Roche Diagnostics K.K., Tokyo, Japan) (Kruhoffer M et al., Br J Cancer 2005;92:2240-8)による定量をTaqMan Universal PCR Master mix (Applied Biosystems, Foster City, CA)及びABI Prism 7000 sequence Detection Systemにより行った。本試験において使用したプライマー及びプローブを表1に列挙している。
*ユニバーサル・プローブライブラリー(Roche applied Science)からの適切なプローブ(#1-#165)を使用した。bp:ベース・ペア。
GAPDHのプライマーを作成し、データ標準化の目的で、この遺伝子を全てのリアルタイムRT−PCR解析に含めた。各試料のコピー数を閾値サイクル(Ct)及び標準曲線から推量した。
統計学的解析
試料中の各遺伝子及びGAPDH mRNAの発現は、プラスミド標準曲線を用いて算出した。濃度は、mRNAコピー数で表現し、平均値±SDとして記載した。相対的な遺伝子発現量を標的遺伝子(コピー)/GAPDH(コピー)の比として表現し、2つの異なる時点(治療前及び治療後)におけるmRNA発現の差異を、ウィルコクソン検定を用いて解析した。0.05を下回るP値を統計学的に有意であると解釈した。
(結果)
患者の特徴
全部で14人の患者を本試験において解析した。8人の患者(#00, #03, #04, #05, #08, #10, #13 and #25)が良好応答者であり、6人の患者(#01, #12, #16, #22, #23 and #24)が低応答者であった。6人の患者(#00, #01, #04, #10, #16 and #24)からのPBMCをマイクロアレイで解析した。残りの8人の患者からのPBMCについては、マイクロアレイデータの結果を検証するためにqRT−PCRにより解析した。患者の特徴を表2に示す。
マイクロアレイ、マイクロアレイ解析を行った症例(n=6);検証、定量的RT−PCRのみで解析した症例(n=8);良好、良好応答者群;低い、低応答者群;M、男性;F、女性;rec、完全な外科的切除後に再発;IIIB、c−ステージIIIB;IV、c−ステージIV;Ad、腺癌;Sq、扁平上皮癌。
CD56NK細胞及びCD56CD3T細胞
PBMCからCD56NK細胞及びCD56CD3T細胞を単離した。良好応答者と低応答者との間に当該純度に差異はなかった。
α−GalCerパルスDC治療前及び治療後のNK細胞及びT細胞についてのcDNAマイクロアレイ解析
α−GalCerパルスDC治療の間のNK細胞及びT細胞における遺伝子発現の有意な変化を同定するために、治療前試料の転写レベルを治療後試料のそれと比較した。56000超の遺伝子のなかから、CD56NK細胞について17572個の遺伝子を、CD56CD3T細胞については16873個の遺伝子をHijikataらの方法により抽出した(非特許文献19)。次に、良好応答群及び低応答群の双方において、治療前と比較して発現量が閾値を超えて(4倍超)変化した候補遺伝子を選択した(図2A〜D)。驚くべきことに、治療後において発現量が低下した遺伝子は見出されなかった(表3)。
Good pre;良好応答群におけるαGalCerパルスDC治療前。
Good post;良好応答群におけるαGalCerパルスDC治療後。
Poor pre;低応答群におけるαGalCerパルスDC治療前。
Poor post;低応答群におけるαGalCerパルスDC治療後。
pre>post;治療後に遺伝子発現が低下(4分の1を下回る)。
post>pre;治療後に遺伝子発現が上昇(4倍超)。
次に、良好応答者又は低応答者に特異的な遺伝子を検出するために、良好応答者及び低応答者において同じように動いた遺伝子を選択した。このようにして14個の遺伝子を抽出した(図2A〜D)。3つの試料のうち、少なくとも2つにおいて同じパターンを示さなかった遺伝子は除外した。
選択された遺伝子のリアルタイムPCR定量
最後に、選択された14個の遺伝子を検証するために、8個のマイクロアレイ非依存的検証ケース及び6個のマイクロアレイケースについてリアルタイムPCRを実施した。全ての遺伝子の中で有意に発現が上昇した3つの遺伝子を図3に示す。他の11個の遺伝子については、リアルタイムPCRにおいて、治療前と治療後との間で有意な変化が認められなかった。ロイコトリエンB4 12−ヒドロキシデヒドロゲナーゼ(LTB4DH)の遺伝子発現が、良好応答者の治療後のT細胞において有意に上昇しており(P=0.0117)、低応答者では上昇していなかった(図3A及び表4)。更に、ジヒドロピリミジネース・ライク3(DPYSL3)は良好応答者の治療後NK細胞において上方制御されており(P=0.0117)、これは低応答者では観察されなかった(図3B及び表4)。対照的に、クロモソーム13 オープン・リーディング・フレーム15(C13orf15)の発現が、低応答者の治療後のNK細胞において有意に上昇しており(p=0.0277)、良好応答者では有意な上昇は認められなかった(図3C及び表4)。
FC; 変化倍, FDR; フォールス・ディスカバリー・レート。
これらの遺伝子の予測精度を検証するために、14人の患者からの試料について、定量的RT−PCRによるブラインドテストを行った。全ての試料をマスクし、盲検の仕様で、定量的RT−PCRにより、LTB4DH、DPYSL3及びC13orf15の発現レベルを測定した。DC治療後に遺伝子発現が2倍を超えて上昇したことをポジティブとして評価した。3つの遺伝子を評価した後で、試料プロファイルを開示した。上記試験の結果及び対応する免疫学的データの比較分析を通じた、的中率(predictive value)を示す(表5)。
PPV、ポジティブ的中率(positive predictive value);NPV、ネガティブ的中率(negative predictive value)。
LTB4D、DPYSL3(良好応答者において上昇制御された症例の数/全ての症例を通じて上昇制御された症例の数)及びC13orf15(低応答者において上昇制御された症例の数/全ての症例を通じて上昇制御された症例の数)を含む各遺伝子のポジティブ的中率は、それぞれ77.8%、75.0%及び71.4%であった(表5)。LTB4D及びDPYSL3の発現上昇を示し、C13orf15ではこれを示さない者を良好応答者と決定した場合には、良好応答者のポジティブ的中率は85.7%(7症例のうちの6)であった。C13orf15の発現上昇を示し、LTB4D及びDPYSL3でこれを示さない者を低応答者と決定した場合には、低応答者のポジティブ的中率は100%(3症例のうちの3)であった。
以上の結果から、LTB4DH、DPYSL3及びC13orf15がα−GalCerパルスDC療法の有効性と相関する有用なバイオマーカーであることが示唆された。
本発明によれば、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法の有効性を容易に予測することが可能となる。本発明の方法を用いれば、治療の有効性を確認しながら、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による抗腫瘍療法を実施することが可能となる。その結果、例えば、当該療法が有効な患者に対しては、その療法を続行し、有効性が認められない患者に対しては治療方針を変更する等、治療方針の選択判断が可能となる。

Claims (4)

  1. NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による非小細胞肺癌に対する抗腫瘍療法の有効性を予測するための方法であって、
    (1)該療法の適用の前後において
    (a)対象患者から単離されたT細胞におけるLTB4DHの発現レベル、
    (b)対象患者から単離されたNK細胞におけるDPYSL3の発現レベル、及び
    (c)対象患者から単離されたNK細胞におけるC13orf15の発現レベル
    からなる群から選択される少なくとも1つの発現レベルの変化を測定すること;並びに
    (2)(1)において測定した発現レベルの変化と、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による非小細胞肺癌に対する抗腫瘍治療の有効性とを相関付けること
    を含む、方法。
  2. NKT細胞リガンドがα−ガラクトシルセラミドである、請求項1記載の方法。
  3. 以下の(a)〜(c)からなる群から選択される少なくとも1つを含む、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による非小細胞肺癌に対する抗腫瘍療法の有効性を予測するためのキット
    (a)LTB4DHをコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー或いはLTB4DHを特異的に認識し得る抗体、及びT細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体、
    (b)DPYSL3をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー或いはDPYSL3を特異的に認識し得る抗体、及びNK細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体、並びに
    (c)C13orf15をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー或いはC13orf15を特異的に認識し得る抗体、及びNK細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体。
  4. 以下の(A)〜(C)を含む、NKT細胞リガンドをパルスした抗原提示細胞による非小細胞肺癌に対する抗腫瘍療法の有効性をモニターしながら、該療法を実施するためのキット:
    (A)NKT細胞リガンド、
    (B)GM−CSF、及び
    (C)以下の(a)〜(c)からなる群から選択される少なくとも1つ;
    (a)LTB4DHをコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー或いはLTB4DHを特異的に認識し得る抗体、及びT細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体、
    (b)DPYSL3をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー或いはDPYSL3を特異的に認識し得る抗体、及びNK細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体、並びに
    (c)C13orf15をコードするmRNA又はcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ又は核酸プライマー或いはC13orf15を特異的に認識し得る抗体、及びNK細胞マーカーを特異的に認識し得る抗体。
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