JP2020509354A - がんの重症度を評価するためのtim−3 - Google Patents

がんの重症度を評価するためのtim−3 Download PDF

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Abstract

本発明は、腫瘍試料中のTIM−3の発現レベルを測定することによって、がんの重症度を評価するための方法に関する。本発明者らは、TIM−3(T細胞免疫グロブリン及びムチン−ドメイン含有−3)の発現が、固形癌を患っている患者の予後及び処置に対する応答性に相関し得ると決定した。本発明者らは、腫瘍内の適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルに対する、TIM−3の発現レベルの特定の比が、患者の生存期間を極めて予測するものであることを特に実証した。したがって、本発明は、固形癌を患っている患者から得られた腫瘍組織試料中の適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルに対するTIM−3の発現レベルの比を決定することによって、該患者の予後を決定するための方法に関する。典型的には、これらの発現レベルは、免疫組織化学的検査によって決定される。

Description

発明の分野
本発明は、腫瘍試料中のTIM−3の発現レベルを測定することによって、がんの重症度を評価するための方法に関する。
発明の背景
処置の開発及びより正確な患者のスクリーニングを可能とする試験の開発における、多くの進展にも関わらず、がんは依然として世界中の死亡の第一原因である。
ここ数年間の間に、いくつかの研究は、腫瘍内免疫微小環境が患者の生存期間に強く相関していることを実証している(Galon et al., Immunity, vol.39, 2013, Issue 1, pages 11-26)。がんの転帰の効率的な予測因子である免疫構成の同定により、がんを患っている患者のより正確な予後予測を可能とする新規な層別化体系が開発された(例えば、欧州特許第1943520号及び欧州特許出願番号第13745117.5号、第12700803.5号又は第13701044.3号を参照)。
これらの進展にも関わらず、国際対がん連合(UICC)は依然としてUICC−TNMシステムを、がんの病期分類のためのゴールドスタンダード法として引用している。TNM(「Tumour-Node-Metastasis」)病期分類システムは、腫瘍にステージ及び転帰を割り当てるために、腫瘍のサイズ、所属リンパ節における腫瘍の有無、及び遠隔転移の有無を使用する。
TNMシステムは、原発部位において小さな腫瘍を有する患者は、より大きなサイズの腫瘍を有する患者よりも良好な予後を有するという観察から開発された。一般的に、原発部位に限局された腫瘍を有する患者は、所属リンパ節に併発している患者よりも良好な予後を有し、所属リンパ節に併発している患者は今度は、ある身体部分から別の身体部分への疾患の遠隔転移を有する患者よりも良好である。したがって、がんは通常、4つのレベルにステージ分類される。ステージIのがんは、リンパ節にがんを全く有さない局所的ながんである。ステージIIのがんは、がんが始まった場所の近くまで広がっている。ステージIIIのがんは、リンパ節まで広がっている。ステージIVのがんは、身体の遠隔部分にまで広がっている。割り当てられたステージは、適切な治療法の選択のための及び予後予測のための基盤として使用される。有用ではあるが、このステージ分類法は不完全であり、がんの信頼性のある予後予測、又は特定の処置に対して患者が応答する確率の正確な予測を可能としない。
したがって、がんの予後予測の、及び公知の処置に対して前記のがんが応答する確率の、正確な評価を可能とする、より信頼性のあるバイオマーカーが依然として必要である。
詳細な説明
本発明者らは、TIM−3(T細胞免疫グロブリン及びムチン−ドメイン含有−3)の発現が、固形癌を患っている患者の予後に相関し得ると決定した。本発明者らは、腫瘍内の適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルに対する、TIM−3の発現レベルの特定の比が、患者の生存期間を極めて予測するものであることを特に実証した。
・腫瘍内のTIM−3/(適応免疫応答のバイオマーカー)の比を測定することによる、がんの予後予測
したがって、第一の態様では、本発明は、固形癌を患っている患者から得られた腫瘍組織試料中において、適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルに対する、TIM−3の発現レベルの比を決定する工程を含む、該患者の予後を決定するための方法に関する。
本発明者らは、
−腫瘍の中心(CT)における、適応免疫応答のバイオマーカーの発現に対する、TIM−3の発現の高い比は、良好な予後に関連し;一方
−腫瘍の浸潤周辺部分(IM)における、適応免疫応答のバイオマーカーの発現に対する、TIM−3の発現の高い比は、悪い予後に関連している
ことを特に決定した。
したがって、本発明は特に、
i)固形癌を患っている患者から得られた腫瘍組織試料中の腫瘍の中心(CT)における、TIM−3の発現レベル及び適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルを決定する工程;
ii)腫瘍の中心における該バイオマーカーの発現レベルに対する、TIM−3の発現レベルの比を決定する工程;
iii)前記の比を、予め決定された基準値と比較する工程;
iv)前記の比が、予め決定された基準値より高い場合に、良好な予後予測を与える工程を含む、該患者の予後を決定するための方法に関する。
本発明はさらに、
i)固形癌を患っている患者から得られた腫瘍組織試料中の浸潤周辺部分(IM)における、TIM−3の発現レベル及び適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルを決定する工程;
ii)腫瘍の浸潤周辺部分における、該バイオマーカーの発現レベルに対する、TIM−3の発現レベルの比を決定する工程;
iii)前記の比を、予め決定された基準値と比較する工程;
iv)前記の比が、予め決定された基準値より高い場合に、悪い予後予測を与える工程
を含む、該患者の予後を決定するための方法に関する。
さらなる態様では、本発明はまた、
i)固形癌を患っている患者から得られた腫瘍組織試料中の腫瘍の中心(CT)及び腫瘍の浸潤周辺部分(IM)における、TIM−3の発現レベル及び適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルを決定する工程;
ii)腫瘍の中心(CT比)及び腫瘍の浸潤周辺部分(IM比)における、該バイオマーカーの発現レベルに対する、TIM−3の発現レベルの比を決定する工程;
iii)前記のCT比及びIM比を、腫瘍の中心(CT基準値)について及び腫瘍の浸潤周辺部分(IM基準値)について決定された基準値とそれぞれ比較する工程;
iv)CT比がCT基準値よりも高く、IM比がIM基準値よりも低い場合に、良好な予後予測を与える工程;
−CT比及びIM比がどちらも、CT基準値及びIM基準値よりもそれぞれ高い場合、又は、CT比及びIM比がどちらもCT基準値及びIM基準値よりもそれぞれ低い場合に、中間の予後予測を与える工程;並びに
−CT比がCT基準値よりも低く、IM比がIM基準値よりも高い場合に、悪い予後予測を与える工程
を含む、該患者の予後を決定するための方法に関する。
TIM−3(T細胞免疫グロブリン及びムチン−ドメイン含有−3)は、HAVCR2(A型肝炎ウイルス細胞受容体2)としても知られるが、これは、自然免疫応答及び適応免疫応答の調節に関与している細胞表面受容体(免疫チェックポイント)である。TIM−3は、ヒトにおいてHAVCR2遺伝子によってコードされている(これは、Hugoヒトゲノム命名法委員会データベースにおいてHGNC参照番号18437を有する)。一般的には免疫応答を負に調節するとして同定されているので、それは一般的には、がんの最中のT細胞疲弊に関連している。
適応免疫応答のバイオマーカーは、腫瘍内における適応免疫応答の作用因子であるか、又は腫瘍内の適応免疫応答の定着に寄与する、細胞によって発現されている任意のバイオマーカーを指す。このようなバイオマーカーは、国際特許公開公報第WO2007/045996号に完全に開示されている。適応免疫応答は、「獲得免疫応答」とも呼ばれるが、これは、抗原依存性のT細胞サブタイプの刺激、B細胞の活性化、及び抗体の産生を含む。適応免疫応答の細胞は、細胞傷害性T細胞、記憶T細胞、Th1細胞及びTh2細胞、並びにB細胞を含むがこれらに限定されない。さらに、活性化マクロファージ、活性化樹状細胞、NK細胞、及びNKT細胞などの追加の細胞も、適応応答を駆動、支持、又は誘発し得、したがって、適応免疫に間接的に関与している。したがって、適応免疫応答を代表するバイオマーカーは、例えば、Th1適応免疫、細胞障害応答、又は記憶応答について共調節されている遺伝子のクラスターから選択され得、T細胞表面マーカー、Th1細胞表面マーカー、インターロイキン(又はインターロイキン受容体)、又はケモカイン、又は(ケモカイン受容体)であり得る。
特定の実施態様では、適応免疫応答のバイオマーカーは、CD3、CD8、CD45RO、CD20、CD103、CD19、及びCD4から選択される。
CD3(表面抗原分類3)は、Tリンパ球によって発現されている細胞表面受容体である。それは、T細胞受容体(TCR)と会合して、T細胞の活性化及び増殖を誘発する。
CD8(表面抗原分類8)は、細胞障害性Tリンパ球によって発現されている細胞表面受容体である。CD8は、T細胞受容体(TCR)の共受容体として作用する。
CD45ROは、CD45の最も短いアイソフォームである(表面抗原分類45、プロテインチロシンホスファターゼ、受容体型C[PTPRC]としても知られている)。それは、記憶T細胞によって発現されている膜貫通タンパク質であり、それはT細胞の活性化を促進する。
CD20(表面抗原分類20)は、Bリンパ球表面分子(B細胞バイオマーカー)である。CD20は、ヒトにおいてMS4A1遺伝子によってコードされている(これは、アンサンブル遺伝子参照番号ENSG00000156738に相当する)。その機能は、特にT細胞に非依存性の抗原に対するB細胞の免疫応答を可能とすることである。
CD103(表面抗原分類103)は、インテグリンαE(ITGAE)としても知られているが、これはヒトにおいてITGAE遺伝子によってコードされているインテグリンタンパク質である(これは、アンサンブル遺伝子参照番号ENSG00000083457に相当する)。CD103はβ7インテグリンと会合して、ヒト粘膜リンパ球−1抗原として知られるE−カドヘリン結合インテグリンを形成する。
CD19(表面抗原分類19)は、B細胞及び濾胞樹状細胞上に発現している細胞表面分子である。それは、CD19遺伝子(アンサンブル参照番号ENSG00000177455)によってコードされている。CD19はB細胞受容体と会合して、抗原受容体依存性刺激の閾値を減少させる。
CD4(表面抗原分類4)は、ヘルパーT細胞、単球、マクロファージ、及び樹状細胞などの免疫細胞の表面上に見られる糖タンパク質である。それは、抗原提示細胞との情報交換においてT細胞受容体を補助する共受容体である。
1つの実施態様では、適応免疫応答の1つのバイオマーカーの発現レベルが測定される。しかしながら、別の実施態様では、適応免疫応答の1、2、3、4、5、6、又は7つのバイオマーカー(群)の発現レベルが測定されてもよい。
TIM−3の発現レベル及び適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルは、当業者には日常的であるいくつかの技術によって測定され得る。
1つの実施態様では、TIM−3の発現レベル及び適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルは、これらの分子を発現している細胞の密度を決定することによって、すなわち、TIM−3+細胞の密度及び該バイオマーカーを発現している細胞(例えば適応免疫応答のバイオマーカーがCD3である場合、CD3+細胞など)の密度を測定することによって測定される。
典型的には、これらの細胞の密度を測定するための方法は、腫瘍組織試料を、TIM−3と、又は適応免疫応答の選択されたバイオマーカーと、選択的に相互作用することのできる少なくとも1つの選択的結合物質と接触させる工程を含む。選択的結合物質は、ポリクローナル抗体若しくはモノクローナル抗体、抗体断片、合成抗体、又は他のタンパク質特異的物質、例えば核酸若しくはペプチドアプタマーであり得る。
当業者は、TIM−3、CD3、CD8、又は本発明に記載の任意の他のバイオマーカーに対して特異的であるいくつかの抗体を知っている。これらの中の多くの抗体は市販されている。顕微鏡によって又は自動分析システムによって検出されるために、抗体は、酵素、発色原、若しくは蛍光プローブなどの検出可能な標識で直接的にタグ化されていても、又は、検出可能な標識とコンジュゲートさせた二次抗体を用いて間接的に検出されてもよい。
免疫組織化学的検査は、本発明に記載の方法を実施するのに特に適している。典型的には、組織腫瘍試料をまず、TIM−3に対して及び/又は本発明に記載の適応免疫応答のバイオマーカーに対して指向された標識された抗体と共にインキュベートする。洗浄後、これらのマーカーに結合した標識された抗体は、標識された抗体によって生じる標識の種類、例えば放射性標識、蛍光標識、又は酵素標識の種類に応じて、適切な技術によって明らかとなる。複数の標識を同時に行なってもよい。あるいは、本発明の方法は、増幅システム(染色シグナルを増強するための)及び酵素分子に結合させた二次抗体を使用してもよい。このような結合した二次抗体は、例えばダコ社、エンビジョンシステム社などから市販されている。対比染色、例えばH&E、DAPI、ヘキストなどを使用してもよい。他の染色法も、当業者には明らかであろうような、任意の適切な方法又はシステム、例えば自動システム、半自動システム、又は手動システムを使用して成し遂げられ得る。
TIM−3+細胞の密度及び本発明に記載のバイオマーカーを発現している細胞の密度は、組織試料の表面積1単位あたりに計数される、これらの細胞の数として、例えば、腫瘍組織試料の表面積1cm又は1mmあたりに計数されるTIM−3+細胞、CD3+細胞、CD8+細胞、CD45RO+細胞(など)の数として表現され得る。それはまた、試料の1体積単位あたりのTIM−3+細胞、CD3+細胞、CD8+細胞、CD45RO+細胞(など)の数として、例えば、腫瘍組織試料1cmあたりのこれらの細胞の数として表現されてもよい。TIM−3+細胞の密度、及び例えばCD3+細胞、CD8+細胞、CD45RO+細胞の密度はまた、全細胞あたりTIM−3+細胞、CD3+細胞、CD8+細胞、CD45RO+細胞の比率からなり得る。
密度は、「コールドスポット」で、すなわち、密度が最も低い場所である腫瘍試料の領域内において、又は、最も低い密度を有する2〜10個の領域に相当する、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の「コールドスポット」において測定され得る。
密度はまた「ホットスポット」で、すなわち、密度が最も高い場所である領域において、又は、最も高い密度を有する2〜10個の領域に相当する、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の「ホットスポット」において測定され得る。
また、腫瘍全体の試料上での平均密度を決定してもよい。
別の実施態様では、TIM−3+細胞の密度及び本発明に記載のバイオマーカーを発現している細胞の密度はまた、腫瘍試料の「標的」部分(例えば、腫瘍の中心)におけるTIM−3の発現レベル及び適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルを測定することによって、並びに試料中に存在する細胞の数の関数の結果を標準化することによって決定され得る。当業者は、遺伝子の発現レベルの決定を可能とするいくつかの技術を知っている(以下を参照)。
したがって、別の実施態様では、TIM−3の発現レベル及び本発明に記載のバイオマーカーの発現レベルは、これらの分子をコードしている遺伝子の発現レベルを測定することによって決定される。
典型的には、遺伝子の発現レベルは、この遺伝子によって産生されるmRNAの量を決定することによって評価される。mRNAの量を決定するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、試料中に含有される核酸(例えば、患者から調製される細胞又は組織)をまず、標準的な方法に従って、例えば、溶解酵素若しくは化学溶液を使用して抽出するか、又は、製造業者の説明書に従って核酸結合性樹脂によって抽出する。このようにして抽出されたmRNAを次いで、ハイブリダイゼーション(例えばノザンブロット分析)及び/又は増幅(例えばRT−PCR)によって検出する。好ましくは、定量又は半定量RT−PCRが好ましい。リアルタイム定量又は半定量RT−PCRが特に有利である。
他の増幅法としては、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写媒介増幅法(TMA)、鎖置換増幅法(SDA)、及び核酸配列ベース増幅法(NASBA)、定量的次世代RNAシークエンス(NGS)が挙げられる。
少なくとも10個のヌクレオチドを含みかつ関心対象のmRNAに対して配列相補性又は相同性を示す、核酸(ポリヌクレオチド)は本明細書において、ハイブリダイゼーションプローブ又は増幅プライマーとしての有用性を見い出す。このような核酸は完全に同一である必要はないが、典型的には同等なサイズの相同領域に対して少なくとも約80%同一、より好ましくは85%同一、さらにより好ましくは90〜95%同一であることが理解されている。特定の実施態様では、ハイブリダイゼーションを検出するための検出可能な標識などの適切な手段と組み合わせて核酸を使用することが有利であろう。多種多様な適切な指示薬が当技術分野において公知であり、これには、蛍光リガンド、放射性リガンド、酵素リガンド、又は他のリガンド(例えばアビジン/ビオチン)が含まれる。プローブは、10〜1000、典型的には20〜500ヌクレオチドの一本鎖核酸を含む。プライマーは典型的には、増幅しようとする関心対象の核酸と完全に又はほぼ完全に一致するように設計された、10〜25ヌクレオチド長のより短い一本鎖の核酸である。プローブ及びプライマーは、それらがハイブリダイズする核酸に対して「特異的」であり、すなわち、それらは好ましくは、高ストリンジェンシーなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする(最も高い融点Tm、例えば50%ホルムアミド、5×又は6×SCCに相当する。SCCは、0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウムである)。
特定の実施態様では、本発明の方法は、腫瘍試料の中心に由来するか又は浸潤周辺部分に由来する細胞から抽出された完全RNAを準備する工程、及びより特定すると定量又は半定量RT−PCRを用いて、RNAを増幅及び特異的なプローブに対するハイブリダイゼーションにかける工程を含む。
開示された方法に従って作製されたプローブは、インサイツハイブリダイゼーション(ISH)手順(例えば、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)、発色インサイツハイブリダイゼーション(CISH)、及び銀インサイツハイブリダイゼーション(SISH))又は比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)などにおける、核酸の検出のために使用され得る。ISH、FISH、CISH、及びSISHのための数多くの手順が当技術分野において公知である。例えば、FISHを実施するための手順は、米国特許第5,447,841号;5,472,842号;及び第5,427,932号;及び例えば、Pinkel et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 83:2934-2938, 1986; Pinkel et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 85:9138-9142, 1988;及びLichter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 85:9664-9668, 1988に記載されている。CISHは、例えば、Tanner et al., Am. J. Pathol. 157:1467-1472, 2000及び米国特許第6,942,970号に記載されている。追加の検出法は、米国特許第6,280,929号に提供されている。
数多くの試薬及び検出スキームを、FISH手順、CISH手順、及びSISH手順と共に使用することにより、感度、分解能、又は他の所望の特性を改善することができる。フルオロフォア(蛍光色素及び量子ドット(登録商標)を含む)で標識されたプローブは、FISHを実施した場合、直接光学的に検出され得る。あるいは、プローブは、非蛍光分子、例えばハプテン(例えば、以下の非限定的な例:ビオチン、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール、及び様々なオキサゾール、ピラゾール、チアゾール、ニトロアリール、ベンゾフラザン、トリテルペン、尿素、チオ尿素、ロテノン、クマリン、クマリンに基づいた化合物、ポドフィロトキシン、ポドフィロトキシンに基づいた化合物、及びその組合せなど)、リガンド、又は他の間接的に検出可能な部分を用いて標識されていてもよい。このような非蛍光分子を用いて標識されたプローブ(及びそれらが結合する標的核酸配列)は次いで、試料(例えば、プローブが結合する細胞又は組織試料)を、標識された検出試薬、例えば選択されたハプテン若しくはリガンドに対して特異的な抗体(又は受容体、又は他の特異的結合対)と接触させることによって検出され得る。検出試薬は、フルオロフォア(例えば量子ドット(登録商標))を用いて若しくは別の間接的に検出可能な部分を用いて標識されていても、又は、フルオロフォアで標識されていてもよい1つ以上の追加の特異的結合物質(例えば、二次抗体又は特異的抗体)と接触させてもよい。
他の実施態様では、蛍光発生組成物又は発色性組成物を検出可能な蛍光シグナル、着色シグナル、又は別様の検出可能なシグナル(例えば、SISHにおける検出可能な金属粒子の沈着におけるような)へと変換することのできる酵素を用いて、プローブ又は特異的結合物質(例えば、抗体、例えば一次抗体、受容体、又は他の結合物質)を標識する。
標識されたプローブ特異的な結合物質の対を適切に選択することによって、複数の検出スキームを作成して、1回のアッセイで(例えば、1つの細胞試料若しくは組織試料、又は1つを超える細胞試料若しくは組織試料において)複数の標的核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)の検出を促進することができることが当業者によって理解されるだろう。例えば、第一の標的配列に対応する第一のプローブを、ビオチンなどの第一のハプテンで標識し得、一方、第二の標的配列に対応する第二のプローブを、ジニトロフェノールなどの第二のハプテンで標識し得る。試料をプローブに曝した後、試料を第一の特異的な結合物質(この場合、第一のフルオロフォア、例えば、585nmで発光する、例えば第一のスペクトル的に明確に異なる量子ドット(登録商標)で標識されているアビジン)及び第二の特異的な結合物質(この場合、第二のフルオロフォア(例えば、705nmで発光する、例えば第二のスペクトル的に明確に異なる量子ドット(登録商標))で標識された抗DNP抗体、又は抗体断片)と接触させることによって、結合したプローブを検出することができる。追加のプローブ/結合物質の対は、他のスペクトル的に明確に異なるフルオロフォアを使用する複数の検出スキームに加えられてもよい。直接的及び間接的(1工程、2工程、又はそれ以上)な数多くの変法が想定され得、その全てが開示されたプローブ及びアッセイの脈絡において適切である。
遺伝子の発現レベルは、絶対発現レベル又は標準化発現レベルとして表現され得る。両方の種類の数値を本発明の方法に使用し得る。遺伝子の発現レベルは好ましくは、定量PCRが発現レベルの評価法として使用される場合には、標準化発現レベルとして表現される。なぜなら、実験開始時の小さな差異が、多数のサイクルの後には巨大な差異をもたらす可能性があるからである。
典型的には、発現レベルは、その発現を、患者の予後を決定する上で関連性のない遺伝子、例えば構成的に発現されているハウスキーピング遺伝子の発現と比較することによって、遺伝子の絶対発現レベルを補正することによって標準化される。標準化のために適した遺伝子としては、アクチン遺伝子ACTB、リボソーム18S遺伝子、GUSB、PGK1、及びTFRCなどのハウスキーピング遺伝子が挙げられる。この標準化により、1つの試料、例えば患者の試料の発現レベルを、別の試料の発現レベルと比較することが可能となるか、又は、異なる入手源に由来する試料を比較することが可能となる。
さらなる実施態様では、標的遺伝子の発現レベルは、「デジタル遺伝子発現アッセイ」(ナノストリング・テクノロジーズ社)によって測定され得る。この技術は、遺伝子発現の直接的なマルチプレックス測定に基づいた、デジタルカラーコード化バーコード技術を利用する。それは、1回の反応で転写物を検出及び計数するために、分子「バーコード」及び単一分子イメージングを使用する(例えば、Geiss et al., Nat Biotechnol. 2008 Mar;26(3):317-25を参照)。
特許請求された本発明は、腫瘍試料中で決定された適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルに対するTIM−3+の発現レベルの比を、予め決定された基準値と比較する工程を意味する。本出願は、「基準値」の決定法及びそれを本発明に従って使用する方法を開示した例を含む。
このような予め決定された基準値は、本明細書において以下に記載されているように決定され得る「カットオフ」値からなり得る。カットオフ値は、
a)がん患者に由来する腫瘍組織試料の収集物を準備する工程;
b)工程a)で準備された各腫瘍組織試料について、対応するがん患者についての実際の予後に関連した情報(すなわち、無病生存期間(DFS)又は全生存期間(OS))を準備する工程;
c)一連の任意の定量値を準備する工程;
d)工程a)で準備された収集物に含有されている各腫瘍組織試料について腫瘍全体、又は腫瘍の浸潤周辺部分、又は腫瘍の中心における、TIM−3/(適応免疫応答のバイオマーカー)の比を決定する工程;
e)工程c)で準備された1つの特定の任意の定量値で、該腫瘍組織試料を2つの群にそれぞれ分類する工程:(i)前記の一連の定量値に含まれる前記の任意の定量値よりも低い前記の比に関する定量値を示す、組織腫瘍試料を含む第一の群;(ii)前記の一連の定量値に含まれる前記の任意の定量値よりも高い前記の比に関する定量値を示す、腫瘍組織試料を含む第二の群;それによって、前記の特定の定量値により、2つの群の腫瘍組織試料が得られ、ここでの各群の腫瘍組織試料は別々に列挙されている;
f)(i)工程e)で得られた定量値と、(ii)工程f)で定義された第一の群及び第二の群に含まれる腫瘍組織試料が由来する患者の実際の臨床転帰との間の統計学的有意性を計算する工程;
g)工程d)で得られたあらゆる任意の定量値が試験されるまで、工程f)及びg)を反復する工程;
h)最も高い統計学的有意性(最も有意)が工程g)で計算された任意の定量値からなるとして、前記の予め決定された基準値(「カットオフ値」)を設定する工程
を含む方法を実施することによって予め決定され得る。
上記に開示されているように、前記方法は、悪い予後と良好な予後との識別を可能とする1つの「カットオフ」値の設定を可能とする。実際に、本明細書の実施例に開示されているように、統計学的に有意性の高い数値(例えば低いP値)は一般的に、1つの任意の定量値だけでなく、一連の連続した任意の定量値で得られる。したがって、上記の「カットオフ」値を決定する方法の1つの代替的な実施態様では、統計学的に有意である最小の数値(有意性がある最小の閾値、例えば、最大閾値のP値)が任意に設定され、工程g)で計算された統計学的に有意な数値がより高い(より有意である、例えばより低いP値)任意の定量値の範囲が保持され、これにより、一連の定量値が提供される。前記の定量値の範囲は、本発明に記載の「カットオフ」値からなる。「カットオフ」値のこの特定の実施態様によると、工程i)で決定されたTIM−3/(適応免疫応答のバイオマーカー)の比を、前記「カットオフ」値を区切る数値の範囲と比較することによって、悪い予後又は良好な予後が決定され得る。特定の実施態様では、一連の定量値からなるカットオフ値は、統計学的に有意な最も高い数値が見られる定量値(例えば、一般的には最小P値が見られる)を中心とした一連の数値からなる。
典型的には、予め決定された基準値は、悪い予後(例えば、短い無病生存時間)に相関したTIM3/(適応免疫応答のバイオマーカー)値からなり得るか、又は、対照的には良好な予後(例えば長い無病生存時間)に相関したTIM−3/(適応免疫応答のバイオマーカー)値からなり得る。
「腫瘍試料」は、患者の腫瘍に由来する任意の組織試料から得ることができる。組織試料は、インビトロにおける評価のために得られる。試料は、新鮮であっても、凍結されていても、固定(例えばホルマリンで固定)されていても、又は包埋(例えばパラフィンで包埋)されていてもよい。特定の実施態様では、試料は、患者の腫瘍試料で実施された生検材料から得られる。一例は、結腸直腸癌を患っている患者の腸で実施された内視鏡生検材料である。
腫瘍組織試料は、「完全な」腫瘍組織試料であっても、又は代替的には、腫瘍の中心(CT)から、若しくは腫瘍を直接囲んでいる組織(すなわち、腫瘍の浸潤周辺部分[IM])から得られた組織のいずれかであってもよい。
典型的には、本発明の脈絡において、がんを患っている患者はヒトである。
典型的には、本発明の方法は、がんの発生源である様々な臓器(例えば、乳房、大腸、直腸、肺、頭頸部、膀胱、卵巣、前立腺)及びまた様々ながん細胞の種類(腺癌、扁平上皮細胞癌、大細胞癌、黒色腫など)に適用する。
特定の実施態様では、患者は、副腎皮質癌、肛門癌、胆管癌(例えば、肝門部領域胆管癌、遠位胆管癌、肝内胆管癌)、膀胱癌、骨癌(例えば、骨芽細胞腫、骨軟骨腫、血管腫、軟骨粘液線維腫、骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、骨巨細胞腫、脊索腫、リンパ腫、多発性骨髄腫)、肉腫、例えば脂肪肉腫及び軟組織肉腫、脳及び中枢神経系の癌(例えば髄膜腫、星状細胞腫、乏突起神経膠腫、上皮腫、神経膠腫、髄芽腫、神経節膠腫、シュワン腫、胚細胞腫、頭蓋咽頭腫)、乳癌(例えば、非浸潤性乳管癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性小葉癌、女性化乳房)、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌(例えば、子宮内膜腺癌、腺類癌、乳頭状漿液性腺癌、明細胞)、食道癌、胆嚢癌(粘液性腺癌、小細胞癌)、消化管カルチノイド腫瘍(例えば、絨毛癌、破壊性絨毛腺腫)、腎臓癌(例えば腎臓細胞癌)、咽頭癌及び下咽頭癌、肝臓癌(例えば、血管腫、肝腺腫、限局性結節性過形成、肝細胞癌)、肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌)、中皮腫、鼻腔癌及び副鼻腔癌(例えば、感覚神経芽腫、正中肉芽腫)、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌及び中咽頭癌、卵巣癌、膵癌、陰茎癌、下垂体癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫(例えば胎児性横紋筋肉腫、胞巣状横紋筋肉腫、多形性横紋筋肉腫)、唾液腺癌、皮膚癌(例えば黒色腫、非黒色腫皮膚癌)、胃癌、精巣癌(例えばセミノーマ、非セミノーマ胚細胞癌)、胸腺癌、甲状腺癌(例えば濾胞性癌、未分化癌、低分化癌、甲状腺髄様癌、甲状腺リンパ腫)、膣癌、外陰癌、及び子宮癌(例えば子宮平滑筋肉腫)からなる群より選択された固形癌を患う。
より特定の実施態様では、がんは結腸直腸癌である。
本発明はまた、本発明の方法を実施するためのキットに関し、ここでの該キットは、TIM−3の発現レベル及び本発明に記載の適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルを具体的に測定するための手段を含む。「手段」は、TIM−3に対して及び前記の適応免疫応答のバイオマーカーに対して指向される抗体であり得、TIM−3及び/又は該バイオマーカーを発現している細胞の検出を可能とするためにさらに標識されている。1つの実施態様では、該抗体は、CD3、CD8、CD45RO、CD4、CD20、CD19、又はCD103に対して指向され、TIM−3+、CD3+、CD8+、CD45RO+、CD4+、CD20+、CD19+、又はCD103+細胞の検出を可能とするために標識されている。
・TIM−3のみが、固形癌の転帰の決定、及び処置に対する応答の予測を可能とする。
驚くべきことに、本発明者らは、一般的に信じられていることとは対照的に、腫瘍内の高い密度のTIM−3が、良好な予後に一般的に関連していることをさらに観察した。
したがって、さらなる態様では、本発明は、
i)固形癌を患っている患者から得られた腫瘍組織試料中の、TIM−3の発現レベルを測定する工程;
ii)前記のTIM−3の発現レベルを、予め決定された基準値と比較する工程;
iii)TIM−3の発現レベルが、予め決定された基準値よりも高い場合に、良好な予後予測を与える工程
を含む、該患者の予後を決定するための方法に関する。
特定の実施態様では、TIM−3の発現レベルは、腫瘍の中心において測定される。
典型的には、発現レベル及び基準レベルは、上記に説明されている通りに決定される。
さらなる実施態様では、前記患者の予後は、TIM−3の発現レベルを測定することによって、及び上記に開示されているような適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルをさらに測定することによって決定される。このようなバイオマーカーは、例えば、CD3、CD8、CD45RO、CD4、CD19、CD20、及びCD103から選択される。
したがって、特定の実施態様によると、本発明はさらに、
i)固形癌を患っている患者から得られた腫瘍組織試料中の、TIM−3の発現レベル及び適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルを測定する工程;
ii)前記TIM−3の発現レベル及び前記バイオマーカーの発現レベルを、予め決定された基準値と比較する工程;
iii)TIM−3の発現レベル及びバイオマーカーの発現レベルがどちらも、それらの予め決定された基準値よりも高い場合、良好な予後予測を与える工程
を含む、該患者の予後を決定するための方法に関する。
本発明者らはさらに、適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルと組み合わせたTIM−3の発現レベルが、患者が、抗癌処置に対して応答する感受性があるかどうか、すなわち、患者が抗癌処置を有利に受けるであろうかどうかを決定することを可能とすることを実証した。本発明者らは特に、腫瘍内に高いTIM−3発現レベル及び腫瘍内に高い適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルを呈する患者は、患者の腫瘍内にTIM−3の高い発現レベル及び該バイオマーカーの高い発現レベルを呈しない患者よりも、処置後の全生存期間は有意に延長していたことを実証した。
したがって、本発明はさらに、固形癌を患っている患者が、抗癌処置を有利に受けるであろうかどうかを決定するための方法を提供し、該方法は、
i)該患者から得られた腫瘍組織試料中において、TIM−3の発現レベル及び適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルを測定する工程;
ii)前記TIM−3発現レベル及び前記バイオマーカー発現レベルを、予め決定された基準値と比較する工程;
iii)TIM−3の発現レベル及び該バイオマーカーの発現レベルのどちらも、それらの予め決定された基準値よりも高い場合に、該患者は抗癌処置を有利に受けるであろうことを評価する工程
を含む。
適応免疫応答のバイオマーカーは、上記に開示されている通りである。
抗癌処置は、放射線療法、化学療法、又は免疫療法からなり得る。処置は、補助療法(すなわち、原発性腫瘍の内科外科的切除後の処置)又は術前補助療法(すなわち、原発性腫瘍の内科外科的切除前の処置)からなり得る。上記の方法は、これら全ての種類の処置に対する応答の予測を可能とする。なぜなら、それは、腫瘍の免疫構成の決定を可能とし、したがって、処置の種類に関係なく、処置される予定の腫瘍の感受性の決定を可能とするからである。
それ故、本発明は、固形癌を患っている患者(該患者は、上記の本発明の方法による抗癌処置を有利には受けるだろうと判断されている)の処置に使用するための、化学療法剤、放射線療法剤、又は免疫療法剤、好ましくは後者に関する。
「化学療法剤」という用語は、腫瘍増殖を抑制するのに効果的である化合物を指す。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミド;アルキルスルホネート類、例えばブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン;アジリジン類、例えばベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ;エチレンイミン類及びメチルメラミン類、例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド(triethylenethiophosphaorarnide)、及びトリメチロールメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(carnptothecin)(合成類似体のトポテカンなど);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(例えば、そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(例えば合成類似体、KW−2189及びCBI−TMIなど);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン(estrarnustine)、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベンビシン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えばカリケアミシン、特にカリケアミシン(11及びカリケアミシン211、例えばAgnew Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186(1994)参照);ダイネミシン、例えばダイネミシンA;エスペラミシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連したクロモプロテイン系エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン、カルミノマイシン(canninomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン(例えばモルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン(idanrbicin)、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン(nogalarnycin)、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン(streptomgrin)、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬、例えばメトトレキサート及び5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジン、5−FU;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎薬、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充物質、例えばフォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophospharnide glycoside);アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エフロルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;メイタンシノイド、例えばメイタンシン及びアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲンナニウム(spirogennanium);テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン(2,2',2"-trichlorotriethylarnine);トリコテセン(特にT−2毒素、ベルカリンA(verracurin A)、ロリジンA、及びアンギジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール(mitobromtol);ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、プリンストン、N.J.州)及びドセタキセル(doxetaxel)(タキソテール(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer、アントニー、フランス);クロラムブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロナート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン;並びに、上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体が挙げられる。またこの定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用するホルモン拮抗剤、例えばエストロゲン拮抗薬、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(フェアストン);並びにアンドロゲン拮抗薬、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びに、上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体も含まれる。
本明細書において使用する「免疫療法剤」という用語は、癌細胞に対する生体の免疫応答を間接的に若しくは直接的に増強、刺激、若しくは増大させ、及び/又は、他の抗癌療法の副作用を低減する化合物、組成物、又は処置を指す。したがって、免疫療法は、癌細胞に対する免疫系の応答を直接的に若しくは間接的に刺激若しくは増強させ、及び/又は、他の抗癌剤によって引き起こされ得る副作用を和らげる療法である。免疫療法はまた、当技術分野において免疫学的療法、生物学的療法、生体応答調節剤療法、及び生物療法とも呼ばれる。当技術分野において公知である一般的な免疫療法剤の例としては、サイトカイン、癌ワクチン、モノクローナル抗体、及び非サイトカインアジュバントが挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、免疫療法処置は、ある量の免疫細胞(T細胞、NK細胞、樹状細胞、B細胞など)を被験者に投与することからなり得る。
免疫療法剤は非特異的であってもよく、すなわち、免疫系を全般的にブーストし、よってヒト生体が癌細胞の増殖及び/又は蔓延に対して戦うのにより効果的となるか、あるいは、それらは特異的であってもよく、すなわち、癌細胞それ自体に標的化されてもよく、免疫療法計画は、非特異的な免疫療法剤と特異的な免疫療法剤を併用してもよい。
非特異的免疫療法剤は、免疫系を刺激するか又は間接的に増大させる物質である。非特異的免疫療法剤は、癌の処置のための主要な療法として単独で使用されているだけでなく、主要な療法に付加して使用され、この場合には、非特異的免疫療法剤は、他の療法(例えば癌ワクチン)の効力を増強させるアジュバントとして機能する。非特異的免疫療法剤はまた、この後者の状況において、他の療法の副作用、例えば特定の化学療法剤によって誘発された骨髄抑制などを低減させるように機能することができる。非特異的免疫療法剤は、重要な免疫系の細胞に対して作用することができ、そして二次応答、例えばサイトカイン及び免疫グロブリンの増加した産生を引き起こすことができる。あるいは、該薬剤は、それ自体、サイトカインを含んでいてもよい。非特異的免疫療法剤は、一般的に、サイトカイン又は非サイトカインアジュバントとして分類される。
多くのサイトカインが、免疫系をブーストさせるように設計された一般的な非特異的免疫療法剤として、又は、他の療法と共に施されるアジュバントとしてのいずれかとして癌の処置に適用を見出す。適切なサイトカインとしては、インターフェロン、インターロイキン、及びコロニー刺激因子が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明によって考えられるインターフェロン(IFN)としては、一般的な種類のIFN、IFN−アルファ(IFN−α)、IFN−ベータ(IFN−β)、及びIFN−ガンマ(IFN−γ)が挙げられる。IFNは、例えば、癌細胞の増殖を減速させることによって、癌細胞からより正常な行動を有する細胞への発達を促進することによって、及び/又は、癌細胞による抗原の産生を増加させて免疫系が癌細胞をより容易に認識し破壊できるようにすることによって、癌細胞に対して直接的に作用することができる。IFNはまた、例えば、血管新生を減速させることによって、免疫系をブーストすることによって、並びに/又はナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞及びマクロファージを刺激することによって、癌細胞に対して間接的に作用することもできる。組換え型IFN−αは、ロフェロン(ロシュ製薬)及びイントロンA(シェリング社)として市販されている。単独で、又は他の免疫療法剤と若しくは化学療法剤と組み合わせたIFN−αの使用は、黒色腫(転移性黒色腫を含む)、腎臓癌(転移性腎臓癌を含む)、乳癌、前立腺癌、及び子宮頸癌(転移性子宮頸癌を含む)をはじめとする様々な癌の処置に有効性を示した。
本発明によって考えられるインターロイキンとしては、IL−2、IL−4、IL−11及びIL−12が挙げられる。市販されている組換え型インターロイキンの例としては、プロロイキン(登録商標)(IL−2;カイロン社)及びニューメガ(登録商標)(IL−12;ワイス製薬)が挙げられる。ザイモジェネティクス社(シアトル、ワシントン州)は、組換え型IL−21を現在試験中であり、これもまた本発明の合剤への使用に考えられる。単独で、又は他の免疫療法剤と若しくは化学療法剤と組み合わせたインターロイキンは、腎臓癌(転移性腎臓癌を含む)、黒色腫(転移性黒色腫を含む)、卵巣癌(再発性卵巣癌を含む)、子宮頸癌(転移性子宮頸癌を含む)、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、脳癌、及び前立腺癌をはじめとする様々な癌の処置に有効性を示した。
インターロイキンはまた、様々な癌の処置においてIFN−αと組み合わせて良好な活性を示した(Negrier et al., Ann Oncol. 2002 13(9):1460-8 ; Touranietal, J. Clin. Oncol. 2003 21(21):398794)。
本発明によって考えられるコロニー刺激因子(CSF)としては、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF又はフィルグラスチム)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF又はサルグラモスチム)及びエリスロポエチン(エポエチンアルファ、ダルベポエチン)が挙げられる。1つ以上の増殖因子を用いての処置は、従来の化学療法を受けている患者において新たな血球の生成を刺激するのに役立ち得る。したがって、CSFを用いての処置は、化学療法に伴う副作用を低減させるのに役立ち得、またより高用量の化学療法剤の使用を可能とし得る。様々な組換え型コロニー刺激因子、例えば、ニューポジェン(登録商標)(G−CSF;アムジェン社)、ニューラスタ(ペグフィルグラスチム(pelfilgrastim);アムジェン社)、ロイキン(GM−CSF;バーレックス社)、プロクリット(エリスロポエチン;オーソバイオテック社)、エポジェン(エリスロポエチン;アムジェン社)、アラネスプ(Arnesp)(エリスロポエチン)が市販されている。コロニー刺激因子は、黒色腫、結腸直腸癌(転移性結腸直腸癌を含む)、及び肺癌をはじめとする癌の処置において有効性を示した。
本発明の合剤に使用するのに適した非サイトカインアジュバントとしては、レバミソール、水酸化アルミニウム(ミョウバン)、カルメットゲラン桿菌(ACG)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、QS−21、DETOX、キーホールリムペットヘモシアニン(KLH)、及びジニトロフェニル(DNP)が挙げられるがこれらに限定されない。他の免疫療法剤及び/又は化学療法剤と組み合わせた非サイトカインアジュバントは、例えば、大腸癌及び結腸直腸癌(レバミソール(Levimasole));黒色腫(BCG及びQS−21);腎臓癌、及び膀胱癌(BCG)をはじめとする様々な癌に対して有効性を実証した。
特異的標的又は非特異的標的を有することに加えて、免疫療法剤は能動的であってもよく、すなわち、生体自身の免疫応答を刺激することができるか、又はそれらは受動的であってもよく、すなわち、生体にとって外的に発生した免疫系成分を含んでいてもよい。
受動的特異的免疫療法は典型的には、癌細胞の表面上に見られる特定の抗原に対して特異的であるか、又は特定の細胞増殖因子に対して特異的である、1つ以上のモノクローナル抗体の使用を含む。モノクローナル抗体は、癌の処置に、多くの方法で使用され得、これにより、例えば、特定の種類の癌に対する被験者の免疫応答を増強し得るか、血管新生に関与する細胞増殖因子などの特定の細胞増殖因子を標的化することによって、又は化学療法剤、放射性粒子若しくは毒素などの物質と連結若しくはコンジュゲートさせた場合に、癌細胞への他の抗癌剤の送達を増強することによって、癌細胞の増殖を妨害し得る。
本発明の合剤に包含させるのに適した癌免疫療法剤として現在使用されているモノクローナル抗体としては、リツキシマブ(リツキサン(登録商標))、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、イブリツモマブチウキセタン(ゼバリン(登録商標))、トシツモマブ(ベキサール(登録商標))、セツキシマブ(C−225、アービタックス(登録商標))、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ(登録商標))、アレムツズマブ(キャンパス(登録商標))、及びBL22が挙げられるがこれらに限定されない。モノクローナル抗体は、乳癌(進行転移性乳癌を含む)、結腸直腸癌(進行性及び/又は転移性結腸直腸癌を含む)、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、子宮頸癌、黒色腫、及び脳腫瘍をはじめとする多種多様な癌の処置に使用される。他の例としては、抗CTLA4抗体(例えばイピリムマブ)、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、抗TIMP3抗体、抗LAG3抗体、抗B7H3抗体、抗B7H4抗体、又は抗B7H6抗体、抗TIM−3抗体が挙げられる。
特定の実施態様では、免疫療法剤は抗TIM−3抗体である。
モノクローナル抗体は、単独で、又は免疫療法剤若しくは化学療法剤と組み合わせて使用され得る。
能動的で特異的な免疫療法は典型的には、癌ワクチンの使用を含む。癌細胞全体、癌細胞の一部、又は癌細胞に由来する1つ以上の抗原を含む、癌ワクチンが開発されている。癌ワクチンは、単独で、又は1つ以上の免疫療法剤若しくは化学療法剤と組み合わせて、黒色腫、腎臓癌、卵巣癌、乳癌、結腸直腸癌、及び肺癌をはじめとするいくつかの種類の癌の処置において調査されている。非特異的な免疫療法剤は、生体の免疫応答を増強するために癌ワクチンと組み合わせると有用である。
免疫療法剤による処置は、Nicholas P. Restifo、Mark E. Dudley及びSteven A. Rosenberg “Adoptive immunotherapy for cancer: harnessing the T cell response, Nature Reviews Immunology, Volume 12, April 2012によって記載されているような養子免疫療法からなり得る。養子免疫療法では、患者の循環中のリンパ球、又は腫瘍浸潤リンパ球をインビトロで単離し、IL−2などのリンホカインによって活性化させるか、又は腫瘍壊死のための遺伝子を用いて形質導入し、再投与する(Rosenberg et al., 1988; 1989)。活性化リンパ球は最も好ましくは、血液又は腫瘍試料から事前に単離し、そしてインビトロで活性化(又は「増殖」)させた、患者自身の細胞である。この形式の免疫療法は、黒色腫及び腎細胞癌の退縮のいくつかの症例をもたらした。
本明細書において使用する「放射線療法剤」という用語は、癌(これに限定されない)を処置又は寛解するのに効果的であることが当業者に公知である任意の放射線療法剤を指すことを意図する。例えば、放射線療法剤は、密封小線源療法又は放射性核種療法において投与される薬剤などの薬剤であり得る。このような方法は場合によりさらに、化学療法及び/又は別の放射線療法などであるがこれらに限定されない、1つ以上の追加の癌療法の投与を含んでいてもよい。
本発明は、以下の実施例においてさらに説明されるだろう。
TIM−3+細胞を免疫組織化学的検査によってインサイツで定量した。TIM−3特異的免疫組織化学的検査を実施し、陽性細胞(茶色のDAB陽性細胞)を定量し、その密度を記録した(細胞/mm2)。腫瘍の中心(CT)(A、C)及び腫瘍の浸潤周辺部分(IM)(B、D)において測定を行なった。腫瘍の中心又は腫瘍の浸潤周辺部分において定量されたTIM−3の高い発現は、良好な臨床転帰(A、B)と相関していた。PFS(無進行生存期間)、DFS(無病生存期間)、及びOS(全生存期間)について類似した結果。CD3陽性細胞を同じように免疫組織化学的検査によって定量し、CD3+細胞の密度を記録した。腫瘍の中心におけるCD3に対するTIM−3の高い比は、良好な生存期間(C)と関連している。対照的に、腫瘍の浸潤周辺部分におけるCD3に対するTIM−3の高い比は、悪い生存期間(D)に関連している。 大腸癌患者のステージI〜IV(n=70)を、CD8A及びTIM−3(HAVR2)の発現レベルに基づいて2つの群に分類した。無病生存期間のカプランマイヤー曲線が示されている。細胞障害性T細胞遺伝子(CD8A)及びTIM−3遺伝子(HAVCR2)の発現を測定し、最適なPカットオフ値を使用して高い発現(Hi)又は低い発現(Lo)に分類した。CD8A及びHAVCR2の両方の高い発現レベルを有する患者を(HiHi)に分類し、他の全ての患者を(その他)に分類した。CD8A及びHAVCR2の高い発現レベルを有する患者(HiHi)は、良好な予後を示した(P<0.05)。 大腸癌患者のステージI〜IV(n=145)を、CD8A及びTIM−3(HAVR2)の発現レベルに基づいて2つの群に分類した。無病生存期間のカプランマイヤー曲線が示されている。細胞障害性T細胞遺伝子(CD8A)及びTIM−3遺伝子(HAVCR2)の発現を測定し、最適なPカットオフ値を使用して高い発現(Hi)又は低い発現(Lo)に分類した。CD8A及びHAVCR2の両方の高い発現レベルを有する患者を(HiHi)に分類し、他の全ての患者を(その他)に分類した。CD8A及びHAVCR2の高い発現レベルを有する患者(HiHi)は、良好な予後を示した(P<0.05)。 乳癌患者(家族性乳癌)(n=183)を、CD8A及びTIM−3(HAVR2)の発現レベルに基づいて2つの群に分類した。無病生存期間のカプランマイヤー曲線が示されている。細胞障害性T細胞遺伝子(CD8A)及びTIM−3遺伝子(HAVCR2)の発現を測定し、最適なPカットオフ値を使用して高い発現(Hi)又は低い発現(Lo)に分類した。CD8A及びHAVCR2の両方の高い発現レベルを有する患者を(HiHi)に分類し、他の全ての患者を(その他)に分類した。CD8A及びHAVCR2の高い発現レベルを有する患者(HiHi)は、良好な予後を示した(P<0.05)。 乳癌患者(初期段階で浸潤性)(n=241)を、CD8A及びTIM−3(HAVR2)の発現レベルに基づいて2つの群に分類した。無病生存期間のカプランマイヤー曲線が示されている。細胞障害性T細胞遺伝子(CD8A)及びTIM−3遺伝子(HAVCR2)の発現を測定し、最適なPカットオフ値を使用して高い発現(Hi)又は低い発現(Lo)に分類した。CD8A及びHAVCR2の両方の高い発現レベルを有する患者を(HiHi)に分類し、他の全ての患者を(その他)に分類した。CD8A及びHAVCR2の高い発現レベルを有する患者(HiHi)は、良好な予後を示した(P<0.05)。 大腸癌患者(n=589)を4つの群に分類した。無病生存期間のカプランマイヤー曲線が示されている。補助化学療法を用いて処置された患者(YES)又は補助化学療法を用いて処置されていない患者(NO)、並びに、CD8A及びTIM−3(HAVR2)の発現レベルに基づいて分類された患者。細胞障害性T細胞遺伝子(CD8A)及びTIM−3遺伝子(HAVCR2)の発現を測定し、最適なPカットオフ値を使用して高い発現(Hi)又は低い発現(Lo)に分類した。CD8A及びHAVCR2の両方の高い発現レベルを有する患者を(HiHi)に分類し、他の全ての患者を(その他)に分類した。CD8A及びHAVCR2の高い発現レベルを有する患者(HiHi)は、補助化学療法に対して良好な応答を示した(P<0.05)。 大腸癌患者(n=37)を4つの群に分類した。全生存期間のカプランマイヤー曲線が示されている。補助化学療法を用いて処置された患者(YES)又は補助化学療法を用いて処置されていない患者(NO)、並びに、CD8A及びTIM−3(HAVR2)の発現レベルに基づいて分類された患者。細胞障害性T細胞遺伝子(CD8A)及びTIM−3遺伝子(HAVCR2)の発現を測定し、最適なPカットオフ値を使用して高い発現(Hi)又は低い発現(Lo)に分類した。CD8A及びHAVCR2の両方の高い発現レベルを有する患者を(HiHi)に分類し、他の全ての患者を(その他)に分類した。CD8A及びHAVCR2の高い発現レベルを有する患者(HiHi)は、補助化学療法に対して良好な応答を示した(P<0.05)。
実施例
実施例1:CD3、CD8、CD45RO、又はCD4の発現レベルに対する、TIM−3の発現レベルの比は、患者の予後を予測する
結腸直腸腫瘍(n=107)の中心(CT)及び浸潤周辺部分(IM)の組織マイクロアレイを構築した。浸潤周辺部分領域の評価を、標準的なパラフィン切片に対して実施し、これは組織の組織形態学的変化に基づいていた。浸潤周辺部分は、1mmの範囲で、悪性の腺から宿主組織を隔てている境界を中心とした領域として定義された。TMA切片をCD3及びTIM3に対するモノクローナル抗体と共にインキュベートした(60分間、室温)。Envision+システム(二次抗体に結合させた酵素結合ポリマー骨格)(ダコ社、グロストラップ、デンマーク)及びDAB色素原を適用した(ダコ社、グロストラップ、デンマーク)。二重染色を、リン酸にコンジュゲートさせた二次抗体及びファストブルー色素原を用いて明らかとした。単一染色では、組織切片を、ハリス・ヘマトキシリン(シグマ・アルドリッチ社、セントルイス、ミズーリ州)を用いて対比染色した。アイソタイプの一致したマウスモノクローナル抗体を、陰性対照として使用した。スライドを、画像分析ワークステーション(Spot Browser、Excilone社、エランクール、フランス)を使用して分析した。多色で高分解能の局所画像(740×540ピクセル、1.181μm/ピクセルの分解能)が得られた(200倍の拡大率)。密度は、組織表面積1単位あたりの陽性細胞の数として記録された。
CD3及びTIM3の密度は、腫瘍の中心(CT)及び浸潤周辺部分(IM)において定量された。高い(Hi)TIM3(最適なカットオフ値において)を有する患者の生存期間を、低い(Lo)TIM3患者と比較した(無病生存期間についてのカプランマイヤー(KM)曲線)。さらに、CD3に対するTIM3の比を、各患者について計算した。高い(Hi)TIM3/CD3の比(最適なカットオフ値において)を有する患者の生存期間を、低い(Lo)TIM3/CD3の比の患者と比較した(無病生存期間についてのカプランマイヤー(KM)曲線)。0.05よりも小さなログランクp値を有意と判断した。
本発明者らは、腫瘍組織試料における適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルに対するTIM−3の発現レベルの比が、癌の転帰と強く相関することを実証する。
この実施例では、TIM−3+細胞を、免疫組織化学的検査によってインサイツで定量した。TIM−3特異的免疫組織化学的検査を実施し、陽性細胞(茶色のDAB陽性細胞)を定量し、その密度を記録した(細胞/mm2)。測定は、腫瘍の中心(CT)及び腫瘍の浸潤周辺部分(IM)において実施された。CD3陽性細胞を、同じように免疫組織化学的検査によって定量し、CD3+細胞の密度を記録した。
図1に示されているように、CT又はIMにおいて定量されたTIM−3の高い発現は、良好な臨床転帰(A、B)と相関していた。PFS(無進行生存期間)、DFS(無病生存期間)及びOS(全生存期間)について類似した結果。CTにおけるCD3に対するTIM−3の高い比は、良好な生存期間(C)に関連している。これに対し、IMにおけるCD3に対するTIM−3の高い比は、悪い生存期間(D)に関連している。
実施例2:単独の、又は適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルと組み合わせたTIM−3の発現レベルは、患者の予後を予測する。
1)遺伝子発現のための材料、方法(アフィメトリックスヒトゲノムU133プラス2.0アレイ)。組織試料材料(n=105)を手術後15分以内に瞬間凍結させ、液体窒素中に保存した。凍結した腫瘍標本を、RNA抽出のために無作為に選択した。全RNAを、RNeasy単離キット(キアゲン社、バレンシア、カリフォルニア州)を用いたホモジナイズによって単離した。バイオアナライザ(アジレント・テクノロジーズ社、パロアルト、カリフォルニア州)を使用して、RNAの完全性及び量を評価した。このRNAから、110個のアフィメトリックス遺伝子チップを、HG−U133A GeneChip3’ IVT Expressキットを使用してImmunomeと同じプラットフォーム(HG−U133Aプラス)上で実施した。生データを、GCRMAアルゴリズムを使用して標準化した。最後に、遺伝子発現データのlog2強度をさらなる分析のために使用した。
患者を、CD8A発現レベルに基づいて選別し、高い(Hi)及び低い(Lo)発現患者群を規定した(最適なカットオフ値)。同じように、Hi及びLo患者群を、TIM3(HAVR2)発現に基づいて規定した。CD8A及びTIM3の両方の遺伝子の発現が高い患者(HiHi)の生存期間を、残りの集団と比較した(無病生存期間についてのカプランマイヤー(KM)曲線)。0.05よりも小さなログランクp値を有意と判断した。
2)さらに、遺伝子発現オムニバスのレポジトリ(Subramanian A et al., 2005)を公共で入手可能な癌データについてスクリーニングした。大腸癌遺伝子発現データマトリックス(アフィメトリックスヒトゲノムU133プラス2.0アレイ)及びデータセットGSE17536からの臨床情報(Smith JJ et al 2010; Freeman TJ et al., 2012)をダウンロードした。患者(n=177)を、CD8A発現レベルに基づいて選別し、高い(Hi)及び低い(Lo)発現の患者群を規定した(最適なカットオフ値)。同じように、Hi及びLo患者群を、TIM3(HAVR2)発現に基づいて規定した。CD8A及びTIM3の両方の遺伝子の発現が高い患者(HiHi)の生存期間を、残りの集団と比較した(無病生存期間についてのカプランマイヤー(KM)曲線)。0.05より小さなログランクp値を有意と判断した。
同じように、データセット:GSE24450(家族性乳癌、n=183、Heikkinen T et al. 2011; Muranen TA et al. 2011)及びGSE21653(浸潤性初期乳腺癌、n=266、Sabatier R et al. 2011; Sabatier R et al. 2011)に保存された乳癌腫瘍に由来する遺伝子発現マトリックスを分析した。Smith JJ et al. Experimentally derived metastasis gene expression profile predicts recurrence and death in patients with colon cancer. Gastroenterology 2010 Mar;138(3):958-68. PMID: 19914252。Freeman TJ et al. Smad4-mediated signaling inhibits intestinal neoplasia by inhibiting expression of β-catenin. Gastroenterology 2012 Mar;142(3):562-571.e2. PMID: 22115830。Heikkinen T et al. Variants on the promoter region of PTEN affect breast cancer progression and patient survival. Breast Cancer Res 2011;13(6):R130. PMID: 22171747。Muranen TA et al. Breast tumors from CHEK2 1100delC-mutation carriers: genomic landscape and clinical implications. Breast Cancer Res 2011 Sep 20;13(5):R90. PMID: 21542898。Sabatier R et al. A gene expression signature identifies two prognostic subgroups of basal breast cancer. Breast Cancer Res Treat 2011 Apr;126(2):407-20. PMID: 20490655。Sabatier R et al. Down-regulation of ECRG4, a candidate tumor suppressor gene, in human breast cancer. PLoS One 2011;6(11):e27656. PMID: 22110708。
大腸癌ステージI〜IVの患者を、CD8A及びTIM−3(HAVR2)の発現レベルに基づいて2つの群に分類した。細胞障害性T細胞遺伝子(CD8A)及びTIM−3遺伝子(HAVCR2)の発現を測定し、最適なPカットオフ値を使用して高い発現又は低い発現に分類した。カプランマイヤー曲線を決定した(図2〜3参照)。図2及び3に示されているように、大腸癌を患いかつCD8A及びHAVCR2の両方の高い発現レベルを有する患者は、良好な予後を示した(P<0.05)。
乳癌(家族性乳癌又は初期段階の浸潤性乳癌)患者を、CD8A及びTIM−3(HAVR2)の発現レベルに基づいて2つの群に分類した。細胞障害性T細胞遺伝子(CD8A)及びTIM−3遺伝子(HAVCR2)の発現を測定し、最適なPカットオフ値を使用して高い発現(Hi)又は低い発現(Lo)に分類した。無病生存期間のカプランマイヤー曲線を決定した(図4〜5参照)。図4及び5に示されているように、乳癌を患いかつCD8A及びHAVCR2の両方の高い発現レベルを有する患者は、良好な予後を示した(P<0.05)。
実施例3:単独で、又は適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルと組み合わせたTIM−3の発現レベルは、抗癌処置に対する患者の応答を予測する
遺伝子発現オムニバスのレポジトリ(Subramanian A et al., 2005)を、公共的に入手可能な癌データについてスクリーニングした。大腸癌遺伝子発現データマトリックス(アフィメトリックスヒトゲノムU133プラス2.0アレイ)及びデータセットGSE40967(Marisa L et al. 2013、n=589)及びGSE31595(n=37)からの臨床情報をダウンロードした。患者を、CD8A発現レベルに基づいて選別し、高い(Hi)及び低い(Lo)発現の患者群を規定した(最適なカットオフ値)。同じように、Hi及びLo患者群を、TIM3(HAVR2)発現に基づいて規定した。補助化学療法を受けたCD8A及びTIM3の両方の遺伝子の発現が高い患者(YESHiHi)の生存期間を、これらの遺伝子の発現が高い処置を受けていない患者(NOHiHi)及び残りの集団と比較した(無病生存期間についてのカプランマイヤー(KM)曲線)。0.05より小さなログランクp値を有意と判断した。
Marisa L et al. Gene expression classification of colon cancer into molecular subtypes: characterization, validation, and prognostic value. PLoS Med 2013;10(5):e1001453. PMID:23700391。
大腸癌患者を、4つの群に分類した:補助化学療法を用いて処置された患者又は補助化学療法を用いて処置されていない患者、並びに、CD8A及びTIM−3(HAVR2)の発現レベルに基づいて分類された患者。細胞障害性T細胞遺伝子(CD8A)及びTIM−3遺伝子(HAVCR2)の発現を測定し、最適なPカットオフ値を使用して高い発現(Hi)又は低い発現(Lo)に分類した。無病生存期間のカプランマイヤー曲線を示した(図6及び7参照)。図6及び7に示されているように、CD8A及びHAVCR2の両方の高い発現レベルを有する患者は、補助化学療法に対してより良好な応答を示した(P<0.05)。
フローサイトメトリー実験を、新鮮な腫瘍試料(n=30人の患者)に対して実施した。腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、正常な隣接する大腸浸潤性リンパ球(NIL)、及び末梢血単核細胞(PBMC)を調べた(データは示されていない)。より高い比率のTILが、NIL及びPBMCと比較してTIM3及びPD1を共発現していた(データは示されていない)。共発現は、ヘルパーT細胞及び細胞障害性T細胞の両方の区画に観察された。ヘルパーT細胞CD4+細胞の20%は、TIM3及びPD1を共発現し、これに対して、NILでは3.8%、PBMCでは0.1%であった。共発現の比率は、細胞障害性CD8+T細胞区画においてさらにより高く、ここでは、TILの30%超がTIM3及びPD1を共発現していた。細胞障害性PBMC及びNILの僅か0.4%及び2%しか、それぞれTIM3及びPD1を共発現していなかった。

Claims (7)

  1. 固形癌を患っている患者から得られた腫瘍組織試料中において、適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルに対するTIM−3の発現レベルの比を決定する工程を含む、該患者の予後を決定するための方法。
  2. 前記方法が、以下の工程:
    i)前記患者から得られた腫瘍組織試料の腫瘍の中心(CT)におけるTIM−3の発現レベルと、適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルを決定する工程;
    ii)腫瘍の中心における該バイオマーカーの発現レベルに対する、TIM−3の発現レベルの比を決定する工程;
    iii)前記の比を、予め決定された基準値と比較する工程;
    iv)前記の比が、予め決定された基準値よりも高い場合、良好な予後予測を与える工程
    を含む、請求項1記載の方法。
  3. 前記方法が、以下の工程:
    i)前記患者から得られた腫瘍組織試料中の浸潤周辺部分(IM)におけるTIM−3の発現レベルと、適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルを決定する工程;
    ii)腫瘍の浸潤周辺部分における該バイオマーカーの発現レベルに対する、TIM−3の発現レベルの比を決定する工程;
    iii)前記の比を、予め決定された基準値と比較する工程;
    iv)前記の比が、予め決定された基準値よりも高い場合、悪い予後予測を与える工程
    を含む、請求項1記載の方法。
  4. i)固形癌を患っている患者から得られた腫瘍組織試料中において、TIM−3の発現レベルを測定する工程;
    ii)前記TIM−3発現レベルを、予め決定された基準値と比較する工程;
    iii)TIM−3の発現レベルが予め決定された基準値よりも高い場合、良好な予後予測を与える工程
    を含む、該患者の予後を決定するための方法。
  5. 工程i)において適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルをさらに測定し、工程ii)において前記TIM−3発現レベル及び前記バイオマーカー発現レベルを、予め決定された基準値と比較し、TIM−3の発現レベル及びバイオマーカーの発現レベルの両方が、それらの予め決定された基準値よりも高い場合に、良好な予後予測を与える、請求項4記載の方法。
  6. 固形癌を患っている患者が、抗癌処置を有利に受けるであろうかどうかを決定するための方法であって、該方法は、
    i)該患者から得られた腫瘍組織試料中において、TIM−3の発現レベル及び適応免疫応答のバイオマーカーの発現レベルを測定する工程;
    ii)前記TIM−3発現レベル及び前記バイオマーカー発現レベルを、予め決定された基準値と比較する工程;
    iii)TIM−3の発現レベル及び該バイオマーカーの発現レベルの両方が、それらの予め決定された基準値よりも高い場合に、該患者が、抗癌処置を有利に受けるであろうと評価する工程
    を含む、方法。
  7. 前記抗癌処置が免疫療法剤である、請求項6記載の方法。
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GAO, X. ET AL.: "TIM-3 Expression Characterizes Regulatory T Cells in Tumor Tissues and Is Associated with Lung Cance", PLOS ONE, vol. Vol.7, No.2, e30676, JPN6021042810, February 2012 (2012-02-01), pages 1 - 8, ISSN: 0004631537 *
SHAN, B. ET AL.: "TIM-3 promotes the metastasis of esophageal squamous cell carcinoma by targeting epithelial-mesenchy", ONCOLOGY REPORTS, vol. 36, no. 3, JPN6021042809, 14 July 2016 (2016-07-14), pages 1551 - 1561, ISSN: 0004631538 *

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