以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における車両用制御装置100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両1の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体BFと、その車体BFを支持する複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2を車体BFに独立に懸架する懸架装置4,14と、複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を操舵する操舵装置5とを主に備えて構成されている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の前方側(矢印F方向側)に位置する左右の前輪2FL,2FRと、車両1の後方側(矢印B方向側)に位置する左右の後輪2RL,2RRとを備えている。なお、本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FRは、車輪駆動装置3により回転駆動される駆動輪として構成される一方、左右の後輪2RL,2RRは、車両1の走行に伴って従動される従動輪として構成されている。
また、車輪2は、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRが全て同じ形状および特性に構成され、それら左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRのトレッドの幅(図1左右方向の寸法)が全て同じ幅に構成されている。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FRを回転駆動するための装置であり、後述するように電動モータ3aにより構成されている(図5参照)。また、電動モータ3aは、図1に示すように、デファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに接続されている。
運転者がアクセルペダル61を操作した場合には、車輪駆動装置3から左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力が付与され、それら左右の前輪2FL,2FRがアクセルペダル61の操作量に応じて回転駆動される。なお、左右の前輪2FL,2FRの回転差は、デファレンシャルギヤにより吸収される。
懸架装置4,14は、路面から車輪2を介して車体BFに伝わる振動を緩和するための装置、いわゆるサスペンションとして機能するものであり、伸縮可能に構成され、図1に示すように、懸架装置4が左右の前輪2FL,2FRを、懸架装置14が左右の後輪2RL,2RRを、それぞれ車体BFに懸架する。なお、左右の後輪2RL,2RRを懸架する懸架装置14は、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整するキャンバ角調整機構としての機能を兼ね備えている。
ここで、図2から図4を参照して、懸架装置14の詳細構成について説明する。図2は、懸架装置14の斜視図である。なお、懸架装置14の構成は左右共通であるので、以下においては右の後輪2RRを懸架する懸架装置14についてのみ説明し、左の後輪2RLを懸架する懸架装置14についての説明を省略する。
図2に示すように、懸架装置14は、ダブルウィッシュボーン式サスペンション構造として構成され、車輪2(右の後輪2RR)を回転可能に保持するキャリア部材41と、そのキャリア部材41を車体BFに上下動可能に連結すると共に互いに所定間隔を隔てて上下に配置されるアッパーアーム42及びロアアーム43と、ロアアーム43及びアッパーブラケットUBの間に介装され緩衝装置として機能するコイルスプリングCS及びショックアブソーバSAと、キャリア部材41の上下動を許容しつつ前後方向の変位を規制するトレーリングアーム44と、アッパーアーム42及び車体BFとの間に介装されるキャンバ角調整装置45とを主に備えて構成される。なお、ロアアーム43は2本が配設されている。
このように、本実施の形態では、ダブルウィッシュボーン式サスペンション構造により車輪2を懸架するので、車輪2が車体BFに対して上下動し、懸架装置14が伸縮(サスペンションストローク、以下「サスストローク)と称す)する際のキャンバ角の変化を最小限に抑制することができる。キャンバ角調整装置45がアッパーアーム42に連結されるので、ロアアーム43に連結される場合と比較して、車輪2の接地面側を支点として車輪2のキャンバ角を調整する動作を行うことができるので、かかるキャンバ角を調整するための駆動力を低減することができる。同様に、車体BFの上方側に配設することができるので、その分、路面から跳ね飛ばされた石などを衝突しにくくして、キャンバ角調整装置45が破損することを抑制できる。
図3を参照して、キャンバ角調整装置45の詳細構成を説明する。図3(a)は、キャンバ角調整装置45の上面模式図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線におけるキャンバ角調整装置45の断面模式図である。なお、図3(a)では、一部の構成を部分的に断面視した状態が図示されている。
キャンバ角調整装置45は、車輪2(右の後輪2RR)のキャンバ角を調整するための装置であり、回転駆動力を発生するRRモータ91RRと、そのRRモータ91RRから入力される回転を減速して出力する減速装置92と、その減速装置92から出力される回転駆動力により回転駆動されるクランク部材93と、そのクランク部材93の位相を検出するRRポジションセンサ94RRとを主に備えて構成される。
RRモータ91RRは、DCモータにより構成され、そのRRモータ91RRの回転駆動力は、減速装置92により減速された後、クランク部材93に付与される。クランク部材93は、RRモータ91RRの軸回転運動をアッパーアーム42の往復運動に変換するクランク機構として構成される部位であり、所定間隔を隔てて対向配置される一対のホイール部材93aと、それら一対のホイール部材93aの対向面間を連結するクランクピン93bとを備える。
ホイール部材93aは、軸心O1を有する円盤状に形成され、減速装置92から付与される回転駆動力により軸心O1を回転中心として回転可能な状態で車体BF(図2参照)に配設される。クランクピン93bは、アッパーアーム42の一端側に設けられた連結部42aが回転可能に連結される軸状部材であり、ホイール部材93aの軸心O1に対して偏心して配設されている。
即ち、クランクピン93bの軸心O2は、ホイール部材93aの軸心O1に対して、距離Erだけ偏心して位置する。よって、ホイール部材93aが軸心O1を中心として回転されると、クランクピン93bは、ホイール部材93aの軸心O1を中心とし距離Erを回転半径とする回転軌跡TRに沿って移動される。これにより、クランク部材93が回転されると、クランクピン93bに連結されたアッパーアーム42が車体BF(図2参照)に近接または離間する方向(図3上下方向)へ往復運動される。
RRポジションセンサ94RRは、ホイール部材93aの中央に軸心O1と同軸に連結されるポジション軸94aと、そのポジション軸94aに配設されポジション軸94aの回転角に応じて抵抗値が変化する可変抵抗器(図示せず)とを備える。よって、クランク部材93が回転された場合には、可変抵抗器の抵抗値に基づいて、クランク部材93の回転角(即ち、クランクピン93bの位相)を検出できる。
図4(a)は、第1状態における懸架装置14の正面模式図であり、図4(b)は、第2状態における懸架装置14の正面模式図である。上述したように、アッパーアーム42は、一端側に設けられた連結部42a(図3参照)がクランク軸93bを介してホイール部材93aの軸心O1から偏心した位置(軸心O2)に回転可能に連結される一方、他端側(図4左側)がキャリア部材41の上端側(図4上側)に回転可能に連結される。
よって、RRモータ91RRから付与される回転駆動力によりクランク部材45のホイール部材93aが軸心O1を回転中心として回転されると、クランクピン93bが回転軌跡TRに沿って移動され(図3(b)参照)、アッパーアーム42が往復移動される。これにより、アッパーアーム42を介して、キャリア部材41の上端側(図4上側)が車体BFに対して近接または離間されることで、キャリア部材41に保持される車輪2のキャンバ角が調整される。
ここで、アッパーアーム42の他端側(図4左側)をキャリア部材41の上端側に回転可能に連結する際の回転中心を軸心O3と定義する。本実施の形態では、各軸心O1,O2,O3が、車輪2から車体BFへ向かう方向(図4左から右に向かう方向)において、軸心O3、軸心O2、軸心O1の順に一直線上に並んで位置する第1状態(図4(a)に示す状態)と、軸心O3、軸心O1、軸心O2の順に一直線上に並んで位置する第2状態(図4(b)に示す状態)とのいずれか一方の状態となるように、車輪2のキャンバ角を調整する。
なお、本実施の形態では、図4(b)に示す第2状態において、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(車輪2の中心線が垂直線に対して車体BF側に傾いた状態)の所定角度(本実施の形態では−3°、以下「第2キャンバ角」と称す)に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与される。一方、図4(a)に示す第1状態では、車輪2へのキャンバ角の付与が解除され、そのキャンバ角が0°(以下「第1キャンバ角」と称す)に調整される。
この場合、第1状態および第2状態では、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O2の回転軌跡TR(図3(b)参照)の軸心O2における接線とを直角とすることができるので、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わっても、ホイール部材93aを回転させる力成分が発生せず、ホイール部材93aが回転しないようにすることができる。よって、車輪2のキャンバ角を所定角度(第1キャンバ角または第2キャンバ角)に機械的に維持することができるので、第1状態または第2状態においてRRモータ91RRの駆動力を解除しておくことができる。その結果、車輪2のキャンバ角を所定角度に維持するために必要なRRモータ91RRの消費エネルギーの低減を図ることができる。
なお、請求項1記載の「所定のキャンバ角」としては、本実施の形態では、第1キャンバ角および第2キャンバ角が該当する。また、左右の前輪2FL,2FRに対応して設けられる懸架装置4は、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角を調整する機能が省略されている点(即ち、キャンバ角調整装置45が省略され、アッパーアーム42の一端側が車体BFに回転可能に連結されている点)と、操舵機能を有して構成される点を除き、その他の構成は懸架装置14と同一の構成であるので、その説明を省略する。
図1に戻って説明する。操舵装置5は、運転者によるステアリング63の操作を左右の前輪2FL,2FRに伝えて操舵するための装置であり、いわゆるラック&ピニオン式のステアリングギヤとして構成されている。
この操舵装置5によれば、運転者によるステアリング63の操作(回転)は、まず、ステアリングコラム51を介してユニバーサルジョイント52に伝達され、ユニバーサルジョイント52により角度を変えられつつステアリングボックス53のピニオン53aに回転運動として伝達される。そして、ピニオン53aに伝達された回転運動は、ラック53bの直線運動に変換され、ラック53bが直線運動することで、ラック53bの両端に接続されたタイロッド54が移動する。その結果、タイロッド54がナックル55を押し引きすることで、車輪2に所定の舵角が付与される。
アクセルペダル61及びブレーキペダル62は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル61,62の操作状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3が駆動制御される。ステアリング63は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(ステア角、ステア角速度など)に応じて、操舵装置5により左右の前輪2FL,2FRが操舵される。
車両用制御装置100は、上述したように構成される車両1の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62やステアリング63の操作状態、或いは、サスストロークセンサ装置83の検出結果に応じてキャンバ角調整装置45(図3参照)を作動制御する。
次いで、図5を参照して、車両用制御装置100の詳細構成について説明する。図5は、車両用制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置100は、図5に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図7から図10、図13及び図14に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリである。
RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、キャンバフラグ73a、状態量フラグ73b、走行状態フラグ73c、偏摩耗荷重フラグ73d、第1輪オフ時ストロークフラグ73e1、第1輪オン時ストロークフラグ73e2、第2輪オフ時ストロークフラグ73f1、第2輪オン時ストロークフラグ73f2、第1輪ストロークフラグ73g1、第2輪ストロークフラグ73g2、第1輪ホイールずれフラグ73h1及び第2輪ホイールずれフラグ73h2が設けられている。
キャンバフラグ73aは、車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角が第2キャンバ角に調整された状態にあるか否かを示すフラグであり、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整された場合(即ち、ネガティブキャンバが付与された場合)にオンに切り替えられ、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された場合(即ち、ネガティブキャンバの付与が解除された場合)にオフに切り替えられる。
状態量フラグ73bは、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを示すフラグであり、後述する状態量判断処理(図7参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。なお、本実施の形態における状態量フラグ73bは、アクセルペダル61、ブレーキペダル62及びステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上である場合にオンに切り替えられ、CPU71は、この状態量フラグ73bがオンである場合に、車両1の状態量が所定の条件を満たしていると判断する。
走行状態フラグ73cは、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを示すフラグであり、後述する走行状態判断処理(図8参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。なお、本実施の形態における走行状態フラグ73cは、車両1の走行速度が所定の走行速度以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合にオンに切り替えられ、CPU71は、この走行状態フラグ73cがオンである場合に、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断する。
偏摩耗荷重フラグ73dは、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角の状態、即ち、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行する場合に、車輪2の接地荷重がタイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れのある接地荷重(以下「偏摩耗荷重」と称す)であるか否かを示すフラグであり、後述する偏摩耗荷重判断処理(図9参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。CPU71は、この偏摩耗荷重フラグ73dがオンである場合に、車輪2の接地荷重がタイヤに偏摩耗を引き起こす恐れのある偏摩耗荷重であると判断する。
第1輪オフ時ストロークフラグ73e1は、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態(即ち、ネガティブキャンバの付与が解除された状態)において、第1輪(本実施の形態では右の後輪2RR)を懸架する懸架装置14の伸縮量(以下「サスストローク量」と称す)が所定の閾値(即ち、ROM72に記憶されている「キャンバオフ時閾値(図示せず)」)以上となったか否かを示すフラグであり、後述するサスストローク量判断処理(図14参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。
第1輪オン時ストロークフラグ73e2は、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整された状態(即ち、ネガティブキャンバが付与された状態)において、第1輪(本実施の形態では右の後輪2RR)を懸架する懸架装置14の伸縮量(サスストローク)が所定の閾値(即ち、ROM72に記憶されている「キャンバオン時閾値(図示せず)」)以上となったか否かを示すフラグであり、後述するサスストローク量判断処理(図14参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。
第2輪オフ時ストロークフラグ73f1及び第2輪オン時ストロークフラグ73f2は、第1輪オフ時ストロークフラグ73e1及び第1輪オン時ストロークフラグ73e2にそれぞれ対応するフラグであり、左の後輪2RLを対象とする点を除き、基準とする車輪2の状態や使用する閾値は同一であるので、その説明は省略する。
なお、これら第1輪オフ時ストロークフラグ73e1〜第2輪オン時ストロークフラグ73f2は、所定の閾値を超えた場合にオンに切り替えられ、所定の閾値以下である場合にオフに切り替えられる。CPU71は、各ストロークフラグ73e1〜73f2がオンである場合に、キャンバ角調整装置45の作動角(クランク部材93の位相、図3参照)を補正する。
第1輪ストロークフラグ73g1は、第1輪(本実施の形態では右の後輪2RR)を懸架する懸架装置14の伸縮量(以下「サスストローク量」と称す)が所定の閾値(即ち、ROM72に記憶されている「サスストローク閾値(図示せず)」)以上となったか否かを示すフラグであり、後述するサスストローク量判断処理(図18参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。
第2輪ストロークフラグ73g2は、第1輪ストロークフラグ73g1に対応するフラグであり、左の後輪2RLを懸架する懸架装置14を対象とする点を除き、使用する閾値は同一であるので、その説明は省略する。
なお、両サスストロークフラグ73g1,73g2は、対応する懸架装置14のサスストローク量がサスストローク閾値以上となった場合にオンに切り替えられ、サスストローク量がサスストローク閾値に達していない場合にオフに切り替えられる。CPU71は、図19に示す第2補正処理において、各ストロークフラグ73g1,73g2がオンされている車輪2に対応するキャンバ角調整装置45(RLモータ91RL又はRRモータ91RR)を通電してサーボロック状態とする。
第1輪ホイールずれフラグ73h1は、第1輪(本実施の形態では右の後輪2RR)側のホイール部材93aの回転位置(位相)が、第1状態または第2状態に調整された状態から、外力の作用により回転された(ずれた)場合に、その回転量(ずれ量)が所定の閾値(即ち、ROM72に記憶されている「ホイールずれ閾値(図示せず)」)以上となったか否かを示すフラグであり、後述するホイールずれ量判断処理(図16参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。
第2輪ホイールずれフラグ73h2は、第1輪ホイールずれフラグ73h1に対応するフラグであり、左の後輪2RLを対象とする点を除き、基準とするホイール部材93aの状態や使用する閾値は同一であるので、その説明は省略する。
なお、両ホイールずれフラグ73h1,73h2は、対応するホイール部材93aの回転量(ずれ量)がホイールずれ閾値以上となった場合にオンに切り替えられ、回転量(ずれ量)がホイールずれ閾値に達していない場合にオフに切り替えられる。CPU71は、各ホイールずれフラグ73h1,73h2がオンである場合に、図14に示す補正処理において、対応するキャンバ角調整装置45の作動角(クランク部材93の位相、図3参照)を補正する。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FR(図1参照)を回転駆動するための装置であり、それら左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する電動モータ3aと、その電動モータ3aをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。但し、車輪駆動装置3は、電動モータ3aに限られず、他の駆動源を採用することは当然可能である。他の駆動源としては、例えば、油圧モータやエンジン等が例示される。
キャンバ角調整装置45は、車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を調整するための装置であり、上述したように、各懸架装置14のクランク部材93(図3参照)へ回転駆動力を付与するRLモータ91RL及びRRモータ91RRと、それら各モータ91RL,91RRの回転駆動力により回転されたクランク部材93の位相をそれぞれ検出するRLポジションセンサ94RL及びRRポジションセンサ94RRと、それら各ポジションセンサ94RL,94RRの検出結果を処理してCPU71へ出力する出力回路(図示せず)と、CPU71からの指示に基づいて各モータ91RL,91RRをそれぞれ駆動制御する駆動制御回路とを主に備えている。
ここで、図6を参照して、駆動制御回路について説明する。図6(a)は、RRモータ91RRを駆動制御する駆動制御回路の模式図であり、図6(b)は正回転回路が形成された状態を、図6(c)は逆回転回路が形成された状態を、図6(d)は短絡回路が形成された状態を、それぞれ示す駆動制御回路の模式図である。
なお、RLモータ91RL及びRRモータRRを駆動制御する駆動制御回路は互いに同一の構成であるので、以下においてはRRモータ91RRを駆動制御する駆動制御回路についてのみ説明し、RLモータ91RLを駆動制御する駆動制御回路についての説明を省略する。また、図6では、抵抗の図示が省略されている。
図6(a)に示すように、駆動制御回路は、RRモータ91RRへ所定の電圧を印加する電源PWと、4個のスイッチSW1〜SW4とを備え、RRモータ91RRの両端子を短絡する短絡回路を形成している。即ち、駆動制御回路は、電源PWの出力端子が、スイッチSW1の一端と、スイッチSW2の一端とに接続され、スイッチSW1の他端は、RRモータ91RRの両端子の一方と、スイッチSW3の一端とに接続され、スイッチSW2の他端は、RRモータ91RRの両端子の他方と、スイッチSW4の他端とに接続されている。また、スイッチSW4の他端は、スイッチSW3の他端と、電源PWのグランド端子に接続されている。
この駆動制御回路によれば、図6(b)に示すように、スイッチSW1及びスイッチSW4を閉じ、かつ、スイッチSW2及びスイッチSW3を開くことで、正回転回路を形成することができる。これにより、RRモータ91RRに正回転方向への電圧を印加して、RRモータ91RRを正回転させることができる。一方、図6(c)に示すように、スイッチSW2及びスイッチSW3を閉じ、かつ、スイッチSW1及びスイッチSW4を開くことで、逆回転回路を形成して、RRモータ91RRへ印加される電圧極性を反転させることができる。これにより、RRモータ91RRに逆回転方向への電圧を印加して、RRモータ91RRを逆回転させることができる。
一方、図6(d)に示すように、スイッチSW1及びスイッチSW2を開き、かつ、スイッチSW3及びスイッチSW4を閉じることで、RRモータ91RRの両端子が短絡された短絡回路を形成することができる。これにより、RRモータ91RRが外力により回転された場合には、RRモータ91RRにより発電された電流を短絡回路に流し、その発電電流によりRRモータ91RRの回転に制動をかけることができる。
なお、本実施の形態では、車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角が第1キャンバ角または第2キャンバ角に調整され、キャンバ角調整装置45(図3参照)が第1状態または第2状態となった場合に、上述した短絡回路が形成される。これにより、アッパーアーム42からクランク部材93(即ち、クランクピン93bを介してホイール部材93a)へ力が加わり、ホイール部材93aが回転される場合に、そのホイール部材93aの回転に制動をかけることができる。よって、例えば、車輪2が段差を乗り越えた場合など、キャリア部材41の上下動として比較的短時間に大きな変位(即ち、懸架装置14のサスペンションストローク)が入力され、後述する補正処理(図14参照)による各モータ91RL,91RRの作動が間に合わないような場合に、ホイール部材93aに短絡回路による制動をかけることができ、その結果、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角または第2キャンバ角から変化することを抑制することができる。
なお、各モータ91RL,91RRは、電動のサーボモータとして構成される。即ち、キャンバ角調整装置45は、各ポジションセンサ94RL,94RRにより検出した各モータ91RL,91RRの状態(位相)をフィードバックし、現在位置と目標位置との差分を減少させることで、各モータ91RL,91RRの位置制御を行う。
また、駆動制御回路は、RLモータ91RL及びRRモータ91RRの回転軸を電気的にロック(規制)するサーボロック回路を備えており、RLモータ91RL及びRRモータ91RRのサーボロックをオンすることで、各ホイール部材93aの回転をそれぞれ独立して規制可能に構成されている。
図5に戻って説明する。加速度センサ装置80は、車両1の加速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後方向加速度センサ80a及び左右方向加速度センサ80bと、それら各加速度センサ80a,80bの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
前後方向加速度センサ80aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図1矢印F−B方向)の加速度、いわゆる前後Gを検出するセンサであり、左右方向加速度センサ80bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1矢印L−R方向)の加速度、いわゆる横Gを検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ80a,80bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
また、CPU71は、加速度センサ装置80から入力された各加速度センサ80a,80bの検出結果(前後G、横G)を時間積分して、2方向(前後方向および左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車両1の走行速度を取得することができる。
ヨーレートセンサ装置81は、車両1のヨーレートを検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の重心を通る鉛直軸(図1矢印U−D方向軸)回りの車両1(車体フレームBF)の回転角速度を検出するヨーレートセンサ81aと、そのヨーレートセンサ81aの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ロール角センサ装置82は、車両1のロール角を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の重心を通る前後軸(図1矢印F−B方向軸)回りの車両1(車体フレームBF)の回転角を検出するロール角センサ82aと、そのロール角センサ82aの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、本実施の形態では、ヨーレートセンサ81a及びロール角センサ82aがサニャック効果により回転角速度および回転角を検出する光学式ジャイロセンサにより構成されている。但し、他の種類のジャイロセンサを採用することは当然可能である。他の種類のジャイロセンサとしては、例えば、機械式や流体式などのジャイロセンサが例示される。
サスストロークセンサ装置83は、左右の前輪2FL,2FRを車体BFに懸架する各懸架装置4の伸縮量および左右の後輪2RL,2RRを車体BFに懸架する各懸架装置14の伸縮量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各懸架装置4,14の伸縮量をそれぞれ検出する合計4個のFLサスストロークセンサ83FL、FRサスストロークセンサ83FR、RLサスストロークセンサ83RL及びRRサスストロークセンサ83RRと、それら各サスストロークセンサ83FL〜83RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
本実施の形態では、各サスストロークセンサ83FL〜83RRがひずみゲージとして構成されており、これら各サスストロークセンサ83FL〜83RRは、各懸架装置4,14のショックアブソーバ(図示せず)にそれぞれ配設されている。
なお、CPU71は、サスストロークセンサ装置83から入力された各サスストロークセンサ83FL〜83RRの検出結果(伸縮量)に基づいて、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRの接地荷重を取得することもできる。即ち、車輪2の接地荷重と懸架装置4,14の伸縮量とは比例関係を有しているので、懸架装置4,14の伸縮量をXとし、懸架装置4,14の減衰定数をkとすると、車輪2の接地荷重Fは、F=kXとなる。
接地荷重センサ装置84は、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2の接地荷重をそれぞれ検出する合計2個のRL,RR接地荷重センサ84RL,84RRと、それら各接地荷重センサ84RL,84RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各接地荷重センサ84RL,84RRがピエゾ抵抗型の荷重センサとして構成されており、これら各接地荷重センサ84RL,84RRは、各懸架装置14のショックアブソーバSA(図2参照)にそれぞれ配設されている。
サイドウォール潰れ代センサ装置85は、左右の後輪2RL,2RRのタイヤサイドウォールの潰れ代を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代をそれぞれ検出する合計2個のRL,RRサイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRと、それら各サイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各サイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRがひずみゲージとして構成されており、これら各サイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRは、各車輪2内にそれぞれ配設されている。
ナビゲーション装置86は、GPSを利用して車両1の現在位置を取得すると共に、車両1の走行予定経路における道路状況を取得するための装置であり、GPS衛星から電波を受信して車両1の現在位置を取得する現在位置取得部(図示せず)と、特定情報(道路状況など)を地図データ等に対応付けて記憶する情報記憶部(図示せず)と、それら現在位置取得部により取得された車両1の現在位置および情報記憶部から取得された特定情報を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。CPU71は、ナビゲーション装置86から入力された車両1の現在位置および特定情報に基づいて、車両1の走行予定経路における状況を取得することができる。
なお、ナビゲーション装置86の情報記憶部に地図データ等に対応づけて記憶される特定情報としては、例えば、路面の段差、路面のわだち、路面の凹凸、路面の種類(舗装路または未舗装路)カーブ、傾斜路、踏み切り、駐車場、工事現場、料金所、高速道路の合流分岐路、標識、信号、横断歩道などが例示される。これらの情報には、例えば、段差、わだち、凹凸については、その大きさの情報が含まれ、カーブ、傾斜路については、その半径や傾斜角度の情報が含まれ、踏み切り、駐車場、工事現場については、段差やわだち、凹凸の有無を示す情報と共にそれら段差等の大きさの情報が含まれ、標識については、その表示内容についての情報が含まれる。
ここで、本実施の形態では、CPU71は、ナビゲーション装置86の情報記憶部から、車両1の現在位置とその現在位置から走行予定経路に沿って所定距離(例えば、約30m)前方となる位置との間の区間における特定情報を、少なくとも取得する。この区間における特定情報をCPU71が取得することで、車両1に大きなサスストロークを生じさせる可能性のある地点が走行予定経路に存在する場合には、その地点に車両1が到達する前に事前にキャンバ角調整装置45をサーボロック状態としておくことで、車輪2のキャンバ角の変化を確実に抑制できる一方、そのような可能性のある地点を通過した後は、サーボロック状態を速やかに解除することで、消費エネルギーの低減を図ることができる。
ナビゲーション装置86は、目的地が指定された場合には、車両1の現在位置から目的地までの経路を設定し、その設定した経路を表示装置(図示せず)に出力して、目的地までの経路誘導を行う。この場合、上述した「走行予定経路」とは、車両1がナビゲーション装置86による経路誘導が行われている場合には、その経路を意味するが、ナビゲーション装置86による経路誘導が行われていない場合には、車両1が走行する道路(現在位置取得部により取得された車両1の現在位置を含む道路)に沿った経路を意味する。車両1が道路でない箇所(例えば、駐車場内など)を走行している場合は、車両1の進行方向における所定距離(例えば、約30m)前方の領域を意味する。なお、これは以下および特許請求の範囲においても同様の趣旨である。
また、本実施の形態におけるナビゲーション装置86は、情報記憶部がHDD(書き換え可能な磁気ディスク)として構成されるが、この情報記憶部に代えて或いは加えて、各種情報が地図データ等に対応付けて記憶された記憶媒体から各種情報を取得する情報読取部を設け、或いは、各種情報が地図データ等に対応付けて記憶されたサーバ等の記憶手段からネット回線またはその他の情報通信手段を用いて各種情報を取得する情報通信部を設け、それら情報読取部または情報通信部から取得した各種情報をCPU71に出力するように構成しても良い。
カメラ装置87は、車両1の周囲(特に、前方および後方)を撮像可能なCCDカメラ(図示せず)と、そのCCDカメラにより撮像された撮像画像データを処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。CCDカメラは、車両1の前方向(矢印F方向、図1参照)を撮像する位置と、車両1の後方向(矢印B方向、図1参照)を撮像する位置と、車両1の前方向における路面を撮像する位置と、車両1の後方向における路面を撮像する位置との少なくとも4ヶ所に配設される。
なお、CPU71は、カメラ装置87から入力された撮像画像データを画像解析し、車両1に大きなサスストロークを生じさせる地点を決定する。なお、画像解析して得られる情報としては、例えば、路面の段差、路面のわだち、路面の凹凸、路面の種類(舗装路、未舗装路、積雪路)、路面上の障害物、路面のカーブ、路面の傾斜、車両、歩行者、自転車等を利用した走行者、標識、信号、横断歩道、踏み切りなどが例示される。CPU71は、画像解析により、上記例示した段差等の存否のみでなく、寸法(例えば、段差の高さ、カーブの半径、或いは、傾斜の角度)、対象物(例えば、歩行者や他の車両)との間の離間距離、表示内容(例えば、文字認識(OCR)による標識の指示内容、彩度や色の認識による信号の指示内容)なども得ることができる。
レーダ装置88は、ミリ波(例えば、30GHz〜300GHz程度の電磁波)を発信する発信部(図示せず)と、その発信部から発信され対象物で反射した電磁波を受信する受信部(図示せず)と、その受信部で受信した電磁波を処理(即ち、発信信号との周波数差を計測)してCPU71へ出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
レーダ装置88は、車両1の前方向(矢印F方向、図1参照)に位置するものを対象物とする位置と、車両1の後方向(矢印B方向、図1参照)に位置するものを対象物とする位置と、車両1の前方向における路面を対象物とする位置と、車両1の後方向における路面を対象物とする位置との少なくとも4ヶ所に配設される。
CPU71は、レーダ装置88から入力された結果に基づき、例えば、対象物(例えば、路面の段差、路面のわだち、路面の凹凸、路面の落下物、歩行者、自転車等を利用した走行者、他の車両)の存否およびその寸法だけでなく、それらとの間の相対的な位置関係(例えば、離間距離および相対速度)を得ることができる。
雪センサ装置89は、路面への積雪の有無を検出する積雪センサ(図示せず)と、その積雪センサの検出結果を処理してCPU71へ出力する出力回路(図示せず)とを備えている。なお、本実施の形態では、積雪センサが、路面へ照射した赤外線の反射率を計測するセンサとして構成される。
よって、降雪の有無ではなく、路面の積雪を検出できる。即ち、雪は降っているが、路面には雪が積もっていない場合に、キャンバ角調整装置45が不必要にサーボロック状態とされることを抑制できる一方、雪は降っていないが、路面に雪が積もっている場合に、キャンバ角調整装置45がサーボロック状態とされないことを抑制できる。なお、雪センサ装置89は、車両1の前方向における路面を検出対象とする位置と、車両1の後方向における路面を検出対象とする位置との少なくとも2ヶ所に配設される。
なお、本実施の形態では、カメラ装置87、レーダ装置88及び雪センサ装置89による対象物の検出可能範囲が、車両1の現在位置とその現在位置から走行予定経路に沿って所定距離(例えば、約30m)前方となる位置との間の区間とされる。このように検出可能区間を設定することで、上述したナビゲーション装置86の場合と同様に、サーボロック状態を設定または解除するタイミングを適切として、車輪2のキャンバ角の変化の抑制および消費エネルギーの低減を両立させることができる。
アクセルペダルセンサ装置61aは、アクセルペダル61の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル61の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ブレーキペダルセンサ装置62aは、ブレーキペダル62の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル62の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ステアリングセンサ装置63aは、ステアリング63の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング63のステア角を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。また、CPU71は、各センサ装置61a,62a,63aから入力された各角度センサの検出結果(操作量)を時間微分して、各ペダル61,62の踏み込み速度およびステアリング63のステア角速度を取得することができる。更に、CPU71は、取得したステアリング63のステア角速度を時間微分して、ステアリング63のステア角加速度を取得することができる。
図5に示す他の入出力装置90としては、例えば、GPSを利用して車両1の現在位置を取得すると共にその取得した車両1の現在位置を道路に関する情報が記憶された地図データに対応付けて取得するナビゲーション装置などが例示される。
次いで、図7を参照して、状態量判断処理について説明する。図7は、状態量判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両1の状態量が所定の条件を満たすかを判断する処理である。
CPU71は、状態量判断処理に関し、まず、アクセルペダル61の操作量(踏み込み量)、ブレーキペダル62の操作量(踏み込み量)及びステアリング63の操作量(ステア角)をそれぞれ取得し(S1、S2、S3)、それら取得した各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する(S4)。なお、S4の処理では、S1〜S3の処理でそれぞれ取得した各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量と、それら各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量にそれぞれ対応してROM72に予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角の状態で車両1が加速、制動または旋回する場合に、車輪2がスリップする恐れがあると判断される限界値)とを比較して、現在の各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。
その結果、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であると判断される場合には(S4:Yes)、状態量フラグ73bをオンして(S5)、この状態量判断処理を終了する。即ち、この状態量判断処理では、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上である場合に、車両1の状態量が所定の条件を満たすと判断する。
一方、S4の処理の結果、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量のいずれもが所定の操作量より小さいと判断される場合には(S4:No)、状態量フラグ73bをオフして(S6)、この状態量判断処理を終了する。
次いで、図8を参照して、走行状態判断処理について説明する。図8は、走行状態判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断する処理である。
CPU71は、走行状態判断処理に関し、まず、車両1の走行速度を取得し(S11)、その取得した車両1の走行速度が所定の速度以上であるか否かを判断する(S12)。なお、S12の処理では、S11の処理で取得した車両1の走行速度と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の車両1の走行速度が所定の速度以上であるか否かを判断する。
その結果、車両1の走行速度が所定の速度より小さいと判断される場合には(S12:No)、走行状態フラグ73cをオフして(S16)、この走行状態判断処理を終了する。
一方、S12の処理の結果、車両1の走行速度が所定の速度以上であると判断される場合には(S12:Yes)、ステアリング63の操作量(ステア角)を取得し(S13)、その取得したステアリング63の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S14)。なお、S14の処理では、S13の処理で取得したステアリング63の操作量と、ROM72に予め記憶されている閾値(本実施の形態では、図7に示す状態量判断処理において、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断するためのステアリング63の操作量より小さい値)とを比較して、現在のステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。
その結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S14:Yes)、走行状態フラグ73cをオンして(S15)、この走行状態判断処理を終了する。即ち、この走行状態判断手段では、車両1の走行速度が所定の速度以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合に、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断する。
一方、S14の処理の結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S14:No)、走行状態フラグ73cをオフして(S16)、この走行状態判断処理を終了する。
次いで、図9を参照して、偏摩耗荷重判断処理について説明する。図9は、偏摩耗荷重判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行する場合に、車輪2の接地荷重がタイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れのある偏摩耗荷重であるか否かを判断する処理である。
CPU71は、偏摩耗荷重判断処理に関し、まず、各懸架装置14の伸縮量が所定の伸縮量以下であるか否かを判断する(S21)。なお、S21の処理では、サスストロークセンサ装置83により各懸架装置14の伸縮量を検出すると共に、その検出された各懸架装置14の伸縮量と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の各懸架装置14の伸縮量が所定の伸縮量以下であるか否かを判断する。
その結果、各懸架装置14の内の少なくとも1の懸架装置14の伸縮量が所定の伸縮量(即ち、ROM72に記憶されている閾値)より大きいと判断される場合には(S21:No)、その伸縮量の大きい懸架装置14に対応する車輪2(左右の後輪2RL,2RR)の接地荷重が所定の接地荷重より大きく、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S21の処理の結果、各懸架装置14の伸縮量が所定の伸縮量以下であると判断される場合には(S21:Yes)、車両1の前後Gが所定の加速度以下であるか否かを判断する(S22)。その結果、車両1の前後Gが所定の加速度より大きいと判断される場合には(S22:No)、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の接地荷重より大きい可能性があると推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S22の処理の結果、車両1の前後Gが所定の加速度以下であると判断される場合には(S22:Yes)、車両1の横Gが所定の加速度以下であるか否かを判断する(S23)。その結果、車両1の横Gが所定の加速度より大きいと判断される場合には(S23:No)、左の後輪2RL又は右の後輪2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S23の処理の結果、車両1の横Gが所定の加速度以下であると判断される場合には(S23:Yes)、車両1のヨーレートが所定のヨーレート以下であるか否かを判断する(S24)。その結果、車両1のヨーレートが所定のヨーレートより大きいと判断される場合には(S24:No)、左の後輪2RL又は右の後輪2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S24の処理の結果、車両1のヨーレートが所定のヨーレート以下であると判断される場合には(S24:Yes)、車両1のロール角が所定のロール角以下であるか否かを判断する(S25)。その結果、車両1のロール角が所定のロール角より大きいと判断される場合には(S25:No)、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の接地荷重より大きい可能性があると推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S25の処理の結果、車両1のロール角が所定のロール角以下であると判断される場合には(S25:Yes)、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の接地荷重以下であるか否かを判断する(S26)。なお、S26の処理では、接地荷重センサ装置84により検出された左右の後輪2RL,2RRの接地荷重と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の接地荷重以下であるか否かを判断する。
その結果、左右の後輪2RL,2RRの内の少なくとも1の車輪2の接地荷重が所定の接地荷重より大きいと判断される場合には(S26:No)、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S26の処理の結果、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の荷重以下であると判断される場合には(S26:Yes)、左右の後輪2RL,2RRのタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代以下であるか否かを判断する(S27)。なお、S27の処理では、サイドウォール潰れ代センサ装置85により検出された左右の後輪2RL,2RRのタイヤサイドウォールの潰れ代と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の左右の後輪2RL,2RRのタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代以下であるか否かを判断する。
その結果、左右の後輪2RL,2RRの内の少なくとも1の車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代より大きいと判断される場合には(S27:No)、その潰れ代の大きい車輪2の接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S27の処理の結果、左右の後輪2RL,2RRのタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代以下であると判断される場合には(S27:Yes)、アクセルペダル61の操作量(踏み込み量)が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S28)。その結果、アクセルペダル61の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S28:No)、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S28の処理の結果、アクセルペダル61の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S28:Yes)、ステアリング63の操作量(ステア角)が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S30)。その結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S30:No)、左の後輪2RL又は右の後輪2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S30の処理の結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S30:Yes)、ステアリング63の操作速度(ステア角速度)が所定の速度以下であるか否かを判断する(S31)。その結果、ステアリング63の操作速度が所定の速度より大きいと判断される場合には(S31:No)、左の後輪2RL又は右の後輪2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S31の処理の結果、ステアリング63の操作速度が所定の速度以下であると判断される場合には(S31:Yes)、ステアリング63の操作加速度(ステア角加速度)が所定の加速度以下であるか否かを判断する(S32)。その結果、ステアリング63の操作加速度が所定の加速度より大きいと判断される場合には(S32:No)、左の後輪2RL又は右の後輪2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S32の処理の結果、ステアリング63の操作加速度が所定の加速度以下であると判断される場合には(S32:Yes)、偏摩耗フラグ73dをオフして(S34)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
次いで、図10を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図10は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を調整する処理である。
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、状態量フラグ73bがオンであるか否かを判断し(S41)、状態量フラグ73bがオンであると判断される場合には(S41:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S42)。その結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S42:No)、RL,RRモータ91RL,91RRを作動させて、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、各車輪2にネガティブキャンバを付与すると共に(S43)、キャンバフラグ73aをオンして(S44)、補正処理(S80)を実行した後、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両1の状態量が所定の条件を満たす場合、即ち、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であり、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角の状態で車両1が加速、制動または旋回すると車輪2がスリップする恐れがあると判断される場合には、車輪2にネガティブキャンバを付与することで、車輪2に発生するキャンバスラストを利用して、車両1の走行安定性を確保することができる。
一方、S42の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S42:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されているので、S43及びS44の処理をスキップして、補正処理(S80)を実行した後、このキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S41の処理の結果、状態量フラグ73bがオフであると判断される場合には(S41:No)、走行状態フラグ73cがオンであるか否かを判断し(S45)、走行状態フラグ73cがオンであると判断される場合には(S45:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S46)。その結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S46:No)、RL,RRモータ91RL,91RRを作動させて、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、各車輪2にネガティブキャンバを付与すると共に(S47)、キャンバフラグ73aをオンして(S48)、S49の処理を実行する。
これにより、車両1の走行状態が所定の直進状態である場合、即ち、車両1の走行速度が所定の速度以上であると共にステアリング63の操作量が所定の操作量以下であり、車両1が比較的高速で直進している場合には、車輪2にネガティブキャンバを付与することで、車輪2の横剛性を利用して、車両1の直進安定性を確保することができる。
一方、S46の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S46:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されているので、S47及びS48の処理をスキップして、偏摩耗荷重フラグ73dがオンであるか否かを判断する(S49)。その結果、偏摩耗荷重フラグ73dがオンであると判断される場合には(S49:Yes)、RL,RRモータ91RL,91RRを作動させて、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、各車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S50)、キャンバフラグ73aをオフして(S51)、補正処理(S80)を実行した後、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重である場合、即ち、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行すると、タイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れがある場合には、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。
一方、S49の処理の結果、偏摩耗荷重フラグ73dがオフであると判断される場合には(S49:No)、車輪2の接地荷重は偏摩耗荷重ではなく、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行しても、タイヤ(トレッド)が偏摩耗する恐れはないと判断されるので、S50及びS51の処理をスキップして、補正処理(S80)を実行した後、このキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S45の処理の結果、走行状態フラグ73cがオフであると判断される場合には(S45:No)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S52)。その結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S52:Yes)、RL,RRモータ91RL,91RRを作動させて、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、各車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S53)、キャンバフラグ73aをオフして(S54)、補正処理(S80)を実行した後、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両1の状態量が所定の条件を満たしておらず車両1の走行状態が所定の直進状態でない場合、即ち、車両1の走行安定性を優先して確保する必要がない場合には、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、キャンバスラストの影響を回避して、省燃費化を図ることができる。
一方、S52の処理の結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S52:No)、車輪2のキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S53及びS54の処理をスキップして、補正処理(S80)を実行した後、このキャンバ制御処理を終了する。
このように、キャンバ制御処理を実行することで、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合に、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角(第2キャンバ角よりも絶対値が小さいキャンバ角)に調整され、車輪2へのネガティブキャンバの付与が解除されるので、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。即ち、車輪2の接地荷重が大きいほどタイヤの摩耗が進行し易いので、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上である場合には、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。その結果、タイヤの寿命を向上させることができる。また、タイヤの偏摩耗を抑制することで、タイヤの接地面が不均一となるのを防止して、車両1の走行安定性を確保することができる。更に、タイヤの偏摩耗を抑制できるので、その分、省燃費化を図ることができる。
また、車両1の状態量が所定の条件を満たすと判断される場合に、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車輪2に発生するキャンバスラストを利用して、車両1の走行安定性を確保することができる。また、車両1の状態量が所定の条件を満たしていないと判断され、且つ、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合には、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角(第2キャンバ角よりも絶対値が小さいキャンバ角)に調整され、車輪2へのネガティブキャンバの付与が解除されるので、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。よって、走行安定性の確保とタイヤの偏摩耗の抑制との両立を図ることができる。
また、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断される場合に、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車輪2の横剛性を利用して、車両1の直進安定性を確保することができる。また、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断され、且つ、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合には、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角(第2キャンバ角よりも絶対値が小さいキャンバ角)に調整され、車輪2へのネガティブキャンバの付与が解除されるので、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。よって、直進安定性の確保とタイヤの偏摩耗の抑制との両立を図ることができる。
次いで、図11から図13を参照して、キャリア部材41の上下動(即ち、懸架装置14の伸縮)に対するキャンバ角調整装置45の状態変化について説明する。なお、図11から図13では、キャリア部材41がバウンド方向へ変位して、懸架装置14が短縮される場合を説明するが、キャリア部材41がリバウンド方向へ変位して、懸架装置14が伸長される場合も考え方は短縮される場合と同様であるので、その説明は省略する。
図11(a)は、第1状態における懸架装置14を模式的に図示する模式図であり、図11(b)は、第2状態における懸架装置14を模式的に図示する模式図である。なお、図11では、懸架装置14が短縮される前の状態(即ち、車両1の重量以外の外力が作用しないしていない通常走行状態)が実線により、懸架装置14が短縮された状態(例えば、段差の通過などでキャリア部材41をバウンド方向へ移動させる変位が懸架装置14に入力された状態)が破線により、それぞれ図示されている。
また、図12(a)及び図13(a)は、図11(a)の部分拡大図であり、図12(b)及び図13(b)は、図11(b)の部分拡大図である。但し、図12(a)及び図12(b)では、懸架装置14が短縮された図11(a)及び図11(b)に対応する状態(即ち、ホイール部材93aが外力の作用により回転される(回転位置がずれる)前の状態)が実線により、その状態から外力の作用により回転された(回転位置がずれた)後の状態が破線により、それぞれ図示されている。即ち、図11(a)及び図11(b)の破線で図示される状態が、図12(a)及び図12(b)では実線で図示されている。また、図13(a)及び図13(b)では、懸架装置14が短縮された図11(a)及び図11(b)に対応する状態(即ち、補正前の状態)が破線により、その状態から後述する第1補正処理(図16参照)により補正された後の状態が実線により、それぞれ図示されている。
図11(a)に示すように、第1状態(左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角が第1キャンバ角(=0°)に調整された状態、図4(a)参照)では、ホイール部材93aの軸心O1、クランクピン93b及びアッパーアーム42の連結軸となる軸心02、及び、アッパーアーム42及びキャリア部材41の連結軸となる軸心O3が、車輪2から車体BFへ向かう方向(図11(a)左から右に向かう方向)において、軸心O1、軸心O2、軸心O3の順に一直線上に並んで位置する。
よって、上述したように、第1状態では、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O2の回転軌跡TR(図3(b)参照)の軸心O2における接線とが直角となるため、例えば、路面からの外力が車輪2に作用するによって、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わっても、ホイール部材93aを回転させる力成分が発生せず、ホイール部材93aの回転が規制される。従って、RL,RRモータ91RL,91RRの駆動力を解除しても、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に機械的に維持可能とできる。その結果、車輪2のキャンバ角を所定角度に維持するために必要なRL,RRモータ91RL,91RRの消費エネルギーの低減を図ることができる。
この場合、キャリア部材41をバウンド方向(図11(a)上方)へ移動させる変位が懸架装置14に入力されると、図11(a)に破線で示すように、かかるキャリア部材41の変位に伴い、アッパーアーム42が軸心O2を回転中心として回転される。これにより、図12(a)に実線で示すように、軸心O1、軸心O2及び軸心O3が一直線上に並ばなくなり、軸心O1及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線とが所定の角度を有する。
よって、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、回転軌跡TRの軸心O2における接線とが直角をなさなくなる。そのため、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わると、ホイール部材93aを回転させる力成分が発生して、ホイール部材93aが回転し、その結果、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角から変化してしまう。
即ち、図12(a)に実線で示す状態から、アッパーアーム42をホイール部材93aへ押し付ける方向への外力が、アッパーアーム42からホイール部材93aへ作用されると、軸心O2を図12(a)下方へ移動させる方向の力成分が発生して、その力成分により、ホイール部材93aが図12(a)時計回りに回転される。一方、アッパーアーム42をホイール部材93aから離間させる方向への外力が、アッパーアーム42からホイール部材93aへ作用されると、軸心O2を図12(a)上方へ移動させる方向の力成分が発生して、その力成分により、ホイール部材93aが図12(a)反時計回りに回転される。その結果、図12(a)に破線で示すように、ホイール部材93aの回転位置がずれた状態となり、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角から変化する。
そこで、本実施の形態では、車両1の運動状態が所定の運動状態よりも緩やかである場合には、第1補正処理(図16参照)を実行する。即ち、第1状態から懸架装置14が短縮した場合には、図13(a)に示すように、キャンバ角調整装置45によりホイール部材93aを角度θoffだけ回転させる補正処理を実行することで、各軸心を軸心O1、軸心O2、軸心O3の順に一直線上に並ばせる。これにより、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わっても、ホイール部材93aの回転を規制して、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に機械的に維持可能とすることで、RL,RRモータ91RL,91RRの消費エネルギーの低減を図る。
一方、車両1の運動状態が所定の運動状態よりも緩やかではない場合には、第2補正処理(図17参照)を実行する。即ち、ホイール部材93aを第1状態に設定する設定動作が終了されると、キャンバ角調整装置45(RLモータ91RL,RRモータ91RR)をサーボロック状態として、ホイール部材93aの回転を規制する。これにより、外力の作用によってホイール部材93aが回転される(回転位置がずれる)ことを抑制して、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角から変化することを抑制する。また、このように、ホイール部材93aが第1状態にある状態で、各モータ91RL,91RRをサーボロック状態とすることで、ホイール部材93aの回転の規制に、機械的な摩擦力を利用しやすくできるので、その分、各モータ91RL,91RRの消費エネルギーの低減を図ることができる。
一方、第2状態(左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角が第2キャンバ角(=−3°)に調整された状態、図4(b)参照)では、図11(b)に示すように、軸心O1、軸心O2及び軸心O3が一直線上に並んで位置するため、第1状態の場合と同様に、ホイール部材93aの回転を規制でき、RL,RRモータ91RL,91RRの駆動力を解除しても、車輪2のキャンバ角を第2キャンバ角に機械的に維持できる。
この場合も、キャリア部材41をバウンド方向(図11(b)上方)へ移動させる変位が懸架装置14に入力されると、第1状態の場合と同様に、アッパーアーム42が軸心O2を回転中心として回転され、図12(b)に実線で示すように、軸心O1及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線とが所定の角度を有する。そのため、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、回転軌跡TRの軸心O2における接線とが直角をなさなくなり、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わると、ホイール部材93aが回転して、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角から変化する。
即ち、図12(b)に実線で示す状態から、アッパーアーム42をホイール部材93aへ押し付ける方向への外力が、アッパーアーム42からホイール部材93aへ作用されると、軸心O2を図12(b)下方へ移動させる方向の力成分が発生して、その力成分により、ホイール部材93aが図12(b)反時計回りに回転される。一方、アッパーアーム42をホイール部材93aから離間させる方向への外力が、アッパーアーム42からホイール部材93aへ作用されると、軸心O2を図12(b)上方へ移動させる方向の力成分が発生して、その力成分により、ホイール部材93aが図12(b)時計回りに回転される。その結果、図12(b)に破線で示すように、ホイール部材93aの回転位置がずれた状態となり、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角から変化する。
本実施の形態では、この場合も、第1状態の場合と同様に、車両1の運動状態が所定の運動状態よりも緩やかである場合には、第1補正処理(図16参照)を実行する。即ち、第2状態から懸架装置14が短縮した場合には、図13(b)に示すように、キャンバ角調整装置45によりホイール部材93aを角度θonだけ回転させる補正処理を実行することで、各軸心を軸心O2、軸心O1、軸心O3の順に一直線上に並ばせる。これにより、第1状態の場合と同様に、ホイール部材93aの回転を規制して、車輪2のキャンバ角を第2キャンバ角に機械的に維持可能とすることで、RL,RRモータ91RL,91RRの消費エネルギーの低減を図る。
一方、車両1の運動状態が所定の運動状態よりも緩やかではない場合には、第1状態の場合と同様に、第2補正処理(図17参照)を実行する。即ち、ホイール部材93aを第2状態に設定する設定動作が終了されると、キャンバ角調整装置45(RLモータ91RL,RRモータ91RR)をサーボロック状態として、ホイール部材93aの回転を規制することで、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角から変化することを抑制する。なお、この場合も、ホイール部材93aが第2状態にある状態で、各モータ91RL,91RRをサーボロック状態とすることで、ホイール部材93aの回転の規制に、機械的な摩擦力を利用しやすくして、各モータ91RL,91RRの消費エネルギーの低減を図ることができる。
ここで、懸架装置14の伸縮量(サスストローク)とホイール部材93aの補正の角度θoff,θonとの関係について説明する。図11(a)及び図11(b)に示すように、懸架装置14のサスストロークを距離B、アッパーアーム42の両端の軸心O2,03間の距離を距離Luと定義する。なお、上述したように、軸心O1及び軸心O2間の距離は距離Erである。
図11及び図13に示す懸架装置14が伸縮する前後における各距離B,Lu,Erの幾何学的な関係より、第1状態における補正の角度θoffの値は(図13(a)参照)、tan−1(B/(Lu+Er))と近似することができ、第2状態における補正の角度θonの値は(図13(b)参照)、tan−1(B/(Lu−Er))と近似することができる。よって、距離Lu及び距離Erは固定値としてRAM72に予め記憶されているので、CPU71は、懸架装置14のサスストロークである距離Bをサスストロークセンサ装置83から取得することで(図5参照)、これら各距離B,Lu,Erに基づいて、角度θoff,θonの値を算出することができる。
なお、第2状態における補正の角度θonは、上述した近似式より、第1状態における補正の角度θoffよりも大きな値となる(θoff<θon)。よって、懸架装置14のサスストロークである距離Bが同じであれば、第2状態の場合の方が、第1状態の場合よりも、補正に要する角度が大きいこととなる。
言い換えれば、懸架装置14が同じ距離Bだけサスストロークした場合でも、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、回転軌跡TRの軸心O2における接線とのなす角度が、第2状態の場合の方が、第1状態の場合よりも、小さな角度(即ち、直角から離れる)となるため、アッパーアーム42からホイール部材93aへ同じ力が加わったとしても、ホイール部材93aを回転させる力成分が大きくなるため、ホイール部材93aが回転され易くなる。
よって、機械的な摩擦力でホイール部材93aの回転を規制するために許容できる懸架装置14のサスストローク量(「キャンバオフ時閾値」及び「キャンバオン時閾値」)は、第2状態の場合の方が、第1状態の場合よりも小さくなる。即ち、第2状態における「キャンバオン時閾値」の値が、第1状態における「キャンバオフ時閾値」の値よりも小さい値となる。
なお、請求項1記載の「第1回転位置」とは、本実施の形態では、第1状態または第2状態となる初期位置が該当する。
次いで、図14を参照して、サスストローク量判断処理について説明する。図14は、サスストローク量判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、左右の後輪2RL,2RRを懸架する懸架装置14の伸縮量(サスストローク)が所定の閾値を超えたか否かを判断する処理である。
CPU71は、サスストローク量判断処理に関し、まず、RAM73に設けられた値n(図示せず)にn=1を書き込み(S61)、第n輪のサスストローク量を取得する(S62)。なお、サスストローク量判断手段では、説明の便宜上、第1輪(n=1)を右の後輪2RRと、第2輪(n=2)を左の後輪2RLと、それぞれ定義する。
次いで、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S63)。その結果、S63の処理において、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S63:Yes)、第n輪を懸架する懸架装置14のサスストローク量がキャンバオン時閾値以上であるかを判断する一方(S64)、S63の処理において、キャンバフラグ73aがオンではない(即ち、オフである)と判断される場合には(S63:No)、第n輪を懸架する懸架装置14のサスストローク量がキャンバオフ時閾値以上であるかを判断する(S65)。
ここで、「キャンバオフ時閾値」とは、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角(=0°)に設定された第1状態で、懸架装置14が伸縮した場合に(図11(a)及び図12(a)参照)、キャンバ角調整装置45による角度θoffの補正処理を実行しなくても、アッパーアーム42からの力に対してホイール部材93aの回転を機械的な摩擦力により規制できる懸架装置14の伸縮量の限界値である。
同様に、「キャンバオン時閾値」とは、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角(=−3°)に設定された第2状態で、懸架装置14が伸縮した場合に(図11(b)及び図12(b)参照)、キャンバ角調整装置45による角度θonの補正処理を実行しなくても、アッパーアーム42からの力に対してホイール部材93aの回転を機械的な摩擦力により規制できる懸架装置14の伸縮量の限界値である。
よって、第1状態または第2状態において、懸架装置14のサスストローク量がキャンバオフ閾値またはキャンバオン時閾値に達していない状態であれば、車輪2に想定最大外力が作用しても、ホイール部材93aの回転は機械的な摩擦力により規制される(各モータ91RL,91RRによる回転駆動力が解除されていてもホイール部材93aが回転されない)。
なお、これらキャンバオフ時閾値およびキャンバオン時閾値は、実車を用いた試験(第1状態および第2状態において、車輪2に想定最大外力を作用させた際に、ホイール部材93aが回転される限界のサスストロークを求める試験)により測定値として求められており、これら各測定値は、RAM72に事前に記憶されている。また、上述したように、第2状態における「キャンバオン時閾値」の値が、第1状態における「キャンバオフ時閾値」の値よりも小さい値となる。
S64の処理において、第n輪のサスストローク量がキャンバオン時閾値以上であると判断された場合には(S64:Yes)、第n輪が第2状態にある懸架装置14のサスストローク量が限界値を超えているということなので、第n輪オン時ストロークフラグ(第1輪オン時ストロークフラグ73e2又は第2輪オン時ストロークフラグ73f2の内の第n輪に対応するフラグ)をオンし(S66)、かつ、第n輪オフ時ストロークフラグ(第1輪オフ時ストロークフラグ73e1又は第2輪オフ時ストロークフラグ73f1の内の第n輪に対応するフラグ)をオフした後(S67)、S71の処理へ移行する。
一方、S65の処理において、第n輪のサスストローク量がキャンバオフ時閾値以上であると判断された場合には(S65:Yes)、第n輪が第1状態にある懸架装置14のサスストローク量が限界値を超えているということなので、第n輪オン時ストロークフラグ(第1輪オン時ストロークフラグ73e2又は第2輪オン時ストロークフラグ73f2の内の第n輪に対応するフラグ)をオフし(S68)、かつ、第n輪オフ時ストロークフラグ(第1輪オフ時ストロークフラグ73e1又は第2輪オフ時ストロークフラグ73f1の内の第n輪に対応するフラグ)をオンした後(S69)、S71の処理へ移行する。
また、S64の処理において、第n輪のサスストローク量がキャンバオン時閾値以上ではない(即ち、キャンバオン時閾値に達していない)と判断された場合(S64:No)、及び、S65の処理において、第n輪のサスストローク量がキャンバオフ時閾値以上ではない(即ち、キャンバオフ時閾値に達していない)と判断された場合(S65:No)には、第n輪が第1状態にある懸架装置14、及び、第n輪が第2状態にある懸架装置14のいずれのサスストローク量も限界値に達していないということなので、第n輪オン時ストロークフラグ(第1輪オン時ストロークフラグ73e2又は第2輪オン時ストロークフラグ73f2の内の第n輪に対応するフラグ)、及び、第n輪オフ時ストロークフラグ(第1輪オフ時ストロークフラグ73e1又は第2輪オフ時ストロークフラグ73f1の内の第n輪に対応するフラグ)を共にオフした後(S70)、S71の処理へ移行する。
S71の処理では、RAM73に設けられた値nが2に達したか否かを判断する(S71)。その結果、値nが2に達していない(即ち、n=1である)場合には(S71:No)、第2輪(左の後輪2RL)についての各処理S62〜S69が未実行であるということなので、第2輪についてもこれら各処理を実行するべく、値nにn=n+1を書き込んだ後(S72)、S62の処理へ移行する。一方、値nが2に達している(即ち、n=2である)場合には(S71:Yes)、第1輪および第2輪(即ち、左右の後輪2RL,2RR)に対する各処理S62〜S69の実行が完了しているということであるので、このサスストローク量判断処理を終了する。
次いで、図15を参照して、補正方法決定処理について説明する。図15は、補正方法決定処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、キャンバ角調整装置45の補正方法を車両1の運動状態に応じて決定し、実行する処理である。
CPU71は、補正方法決定処理に関し、まず、ナビゲーション装置86、カメラ装置87、レーダ装置88及び雪センサ装置89から各種情報を取得し(S101、S102、S103及びS104)、次いで、それら各ステップで取得した各種情報から車両1の走行予定経路における状況を判断すると共にその判断結果に基づいて(S105〜S119)、キャンバ角調整装置45の補正方法(S120又はS121)を決定する。
なお、上述したように、S101〜S104の各処理において各装置86〜89から取得される各種情報は、車両1の現在位置とその現在位置から走行予定経路に沿って所定距離(例えば、約30m)前方となる位置との間の区間における情報である。即ち、CPU71は、かかる区間における情報に基づいて、S105以降の処理を実行する。
まず、S105の処理では、走行予定経路における路面に所定値以上の凹凸が存在するかを判断する(S105)。その結果、走行予定経路における路面に凹凸があり、かつ、その凹凸の大きさ(高さ)が所定値以上であると判断される場合には(S105:Yes)、走行予定経路における路面の凹凸を通過することに伴い、車両1に大きなサスストロークが生じると推定される。サスストロークが大きな状態では、車輪2へ作用する外力が小さくても、かかる車輪2のキャンバ角が所定角度から変化しやすいので、凹凸の通過前にキャンバ角調整装置45をサーボロック状態としておくべく、第2補正処理(S121)を実行して、この補正方法決定処理を終了する。
なお、この路面の凹凸には、段差やわだちも含まれる。段差には、路面(例えば、アスファルト路)自体が変形して形成される段差のみでなく、キャッツアイなどの路面上に設置される構造物、他車から落下した等により路面に放置された障害物、或いは、路面を保護するために敷設された鉄板の敷設物など、路面上に置かれたものにより形成される段差も含まれる。わだちについても、同様であって、路面自体が変形して形成されるものだけでなく、路面(例えば、アスファルト路)上に積もった雪や土が形成するわだちも含まれる。
また、本実施の形態では、ナビゲーション装置86からの情報(S101)、カメラ装置87からの情報(S102)、又は、レーダ装置88の情報(S103)の内のいずれか1の情報がS105をYesに分岐させるもの(「路面に凹凸があり、かつ、その寸法(高さ)が所定値以上である」ことを示すもの)であれば、S105の処理をYesで分岐させる。
これにより、例えば、ナビゲーション装置86の情報記憶部が古い情報のまま更新されていない、雨や霧の影響でカメラ装置87の検出精度が低下した、或いは、マンホールなど走行上の障害とはならないものからの反射を受けてレーダ装置88の誤作動が発生したことなどを原因として、路面の凹凸を検出できなかった場合であっても、キャンバ角調整装置45をロック状態に設定し、車輪2のキャンバ角が所定角度から変化することを確実に抑制することができる。
一方、S105の処理の結果、走行予定経路における路面に所定値以上の寸法の凹凸は存在しないと判断される場合には(S105:No)、走行予定経路に所定値以上の寸法の凹凸が存在しないか、或いは、凹凸を既に車両1が通過したということであるので、次いで、走行予定経路に踏み切りが存在するかを判断する(S106)。踏み切りは、レールを横断して通過する必要があるところ、レール近傍には比較的大きな凹凸が形成されている。そのため、走行予定経路に踏み切りが存在すると判断される場合には(S106:Yes)、車輪2がレールを横断することに伴い、車両1に大きなサスストロークが生じると推定されるので、踏み切りへの進入前にキャンバ角調整装置45をサーボロック状態としておくべく、第2補正処理(S121)を実行して、この補正方法決定処理を終了する。
なお、本実施の形態では、S105の処理の場合と同様に、ナビゲーション装置86からの情報(S101)、カメラ装置87からの情報(S102)、又は、レーダ装置88の情報(S103)の内のいずれか1の情報がS106をYesに分岐させるもの(「走行予定経路に踏み切りがある」ことを示すもの)であれば、S106の処理をYesで分岐させる。これにより、各装置101〜103のいずれかの検出精度が低下したことなどを原因として、踏み切りを検出できなかった場合であっても、キャンバ角45をロック状態に設定して、車輪2のキャンバ角が所定角度から変化することを確実に抑制することができる。
このS105及びS106において説明した判断方法は、S107からS119の各処理においても、同一であるので、以下の各処理においては、その説明を省略する。なお、S109の処理では、雪センサ装置104から取得される情報が追加されるが、その情報数が増加する点を除き、その他の判断方法はS105及びS106の場合と同一であるので、その説明は省略する。
一方、S106の処理の結果、走行予定経路において踏み切りは存在しないと判断される場合には(S105:No)、走行予定経路に踏み切りが存在しないか、或いは、踏み切りを既に車両1が通過したということであるので、次いで、走行予定経路に駐車場が存在するかを判断する(S107)。例えば、国道を走行中に、その国道沿いの店舗駐車場へ進入する場合には、その進入時に段差を伴う可能性が高い。そのため、走行予定経路に駐車場が存在すると判断される場合には(S107:Yes)、走行予定経路における路面に段差があり、その段差を通過することに伴い、車両1に大きなサスストロークが生じると推定されるので、段差の通過前にキャンバ角調整装置45をサーボロック状態としておくべく、第2補正処理(S121)を実行して、この補正方法決定処理を終了する。
一方、S107の処理の結果、走行予定経路に駐車場は存在しないと判断される場合には(S107:No)、走行予定経路に駐車場が存在しないか或いは既に通過したということであるので、次いで、走行予定経路に未舗装路が存在するかを判断する(S108)。未舗装路は路面が荒れており、凹凸や路面のうねり、石などの障害物が存在する可能性が高い。そのため、走行予定経路に未舗装路が存在すると判断される場合には(S108:Yes)、車輪2が凹凸や障害物を通過する際や路面のうねりに伴い、車両1に大きなサスストロークが生じると推定されるので、未舗装路への進入前にキャンバ角調整装置45をサーボロック状態としておくべく、第2補正処理(S121)を実行して、この補正方法決定処理を終了する。
一方、S108の処理の結果、走行予定経路に未舗装路は存在しないと判断される場合には(S107:No)、走行予定経路に駐車場が存在しないか或いは既に通過したということであるので、次いで、走行予定経路に積雪路が存在するかを判断する(S109)。積雪路はわだちが積雪により形成されている可能性が高い。そのため、走行予定経路に積雪路が存在すると判断される場合には(S109:Yes)、車輪2がわだちに乗り上げた際やわだちを横断する際に、車両1に大きなサスストロークが生じると推定されるので、積雪路への進入前にキャンバ角調整装置45をサーボロック状態としておくべく、第2補正処理(S121)を実行して、この補正方法決定処理を終了する。
なお、本実施の形態では、S105の処理の場合と同様に、ナビゲーション装置86からの情報(S101)、カメラ装置87からの情報(S102)、又は、レーダ装置88の情報(S103)の内のいずれか1の情報がS106をYesに分岐させるもの(「走行予定経路に踏み切りがある」ことを示すもの)であれば、S106の処理をYesで分岐させる。これにより、各装置101〜103のいずれかの検出精度が低下したことなどを原因として、踏み切りを検出できなかった場合であっても、キャンバ角45をロック状態に設定して、車輪2のキャンバ角が所定角度から変化することを確実に抑制することができる。
一方、S109の処理の結果、走行予定経路に積雪路は存在しないと判断される場合には(S109:No)、走行予定経路に積雪路が存在しないか或いは既に通過したということであるので、次いで、走行予定経路に工事現場が存在するかを判断する(S110)。工事現場は、路面の一部でアスファルトが剥がされ未舗装が形成されることで、舗装路の間に段差が形成されたり、未舗装路自体に凹凸が形成されている、或いは、路面に散乱する石などの障害物や路面を保護するために敷設された鉄板によって段差が形成されている可能性が高い。そのため、走行予定経路に工事現場が存在すると判断される場合には(S110:Yes)、車輪2が凹凸や段差を通過する際に、車両1に大きなサスストロークが生じると推定されるので、工事現場への進入前にキャンバ角調整装置45をサーボロック状態としておくべく、第2補正処理(S121)を実行して、この補正方法決定処理を終了する。
一方、S110の処理の結果、走行予定経路に工事現場は存在しないと判断される場合には(S110:No)、走行予定経路に工事現場が存在しないか或いは既に通過したということであるので、次いで、S111の処理を実行する。
なお、本実施の形態では、S106からS110の各処理において、走行予定経路に凹凸を有する可能性が高い特定の場所(踏み切りなど)が存在すれば、その場所における路面の凹凸等の実際の寸法に関わらず、第2補正処理(S121)を実行する。これにより、S105の処理において、例えば、各装置86〜88の検出精度の低下などに起因して、路面の凹凸等を検出できなかった場合であっても、S106からS110の各処理により、車両1が特定の場所へ進入する前に、キャンバ角調整装置45をサーボロック状態に設定しておくことができ、その結果、車輪2のキャンバ角が所定角度から変化することを確実に抑制できる。
S111の処理では、走行予定経路に所定値以上の勾配(傾斜角)を有する傾斜路が存在するかを判断する(S111)。傾斜路では、下降傾斜側(車両1の重心よりも下側)のサスペンション(懸架装置4,14)は短縮される一方、上昇傾斜側(車両1の重心よりも上側)のサスペンションは伸長される。そのため、走行予定経路に所定値以上の勾配を有する傾斜路が存在すると判断される場合には(S111:Yes)、その傾斜路の走行する際に、車両1に大きなサスストロークが生じると推定されるので、傾斜路への進入前にキャンバ角調整装置45をサーボロック状態としておくべく、第2補正処理(S121)を実行して、この補正方法決定処理を終了する。
一方、S111の処理の結果、走行予定経路に傾斜路は存在しないと判断される場合には(S111:No)、走行予定経路に傾斜路が存在しないか或いは既に通過したということであるので、次いで、走行予定経路に所定条件を満たすカーブが存在するかを判断する(S112)。車両1がカーブを走行する旋回時は、車両1のロールに伴い、旋回外輪側のサスペンション(懸架装置4,14)は短縮される一方、旋回内輪側のサスペンションは伸長される。そのため、走行予定経路に所定条件を満たすカーブが存在すると判断される場合には(S112:Yes)、そのカーブを走行する際(旋回時)に、車両1に大きなサスストロークが生じると推定されるので、カーブへの進入前にキャンバ角調整装置45をサーボロック状態としておくべく、第2補正処理(S121)を実行して、この補正方法決定処理を終了する。
ここで、S112の処理における所定条件は、車両1の走行速度と、カーブの半径とに基づいて決定される。即ち、カーブの半径が小さくても、車両1の走行速度が低速であれば、車両1はロールし難く、サスストロークは小さい一方、カーブの半径が大きくても、車両1の走行速度が高速であれば、車両1はロールし易く、サスストロークは大きくなる。本実施の形態では、車両1の走行速度に対して、許容されるカーブの半径の最小値が規定された図示しないマップが、ROM72(図5参照)に記憶されており、そのマップを参照することで、所定条件を満たすカーブであるか否かが判断される。
このように、カーブの半径と車両1の走行速度とに基づいて、車両1に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があるかの判断を行うことで、かかる判断をより正確に行うことができる。その結果、車輪2のキャンバ角が所定角度から変化することの抑制と、消費エネルギーの低減との両立を図ることができる。なお、車両1の走行速度は、上述したように、加速度センサ装置80の検出結果から得ることができる。
一方、S112の処理の結果、走行予定経路に所定条件を満たすカーブは存在しないと判断される場合には(S111:No)、走行予定経路にカーブは存在しないか、存在しても所定条件を満たすものではなく、或いは、車両1が既にカーブを通過したということであるので、次いで、走行予定経路に横断歩道が存在するかを判断する(S113)。横断歩道では、歩行者を横断させるために車両1を停車させる可能性が高く、仮に、歩行者が存在しなくても、歩行者の飛び出しを予測して、運転者が車両1を減速させる可能性が高い。減速時には、車両1のピッチングに伴い、進行方向前方側のサスペンション(懸架装置4,14)は短縮される一方、進行方向後方側のサスペンションは伸長される。そのため、走行予定経路に横断歩道が存在すると判断される場合には(S113:Yes)、横断歩道での減速に伴い、車両1に大きなサスストロークが生じると推定されるので、横断歩道に到達する前にキャンバ角調整装置45をサーボロック状態としておくべく、第2補正処理(S121)を実行して、この補正方法決定処理を終了する。
一方、S113の処理の結果、走行予定経路に横断歩道は存在しないと判断される場合には(S113:No)、走行予定経路に横断歩道が存在しない或いは車両1が既に横断歩道を通過したということであるので、次いで、前車との間の車間距離が所定値未満であるかを判断する(S114)。前車との間の車間距離が不十分な状態になると、前車との衝突を回避するために運転者が車両1を減速させる可能性が高い。減速時には、上述したように、サスペンション(懸架装置4,14)のストロークが発生する。そのため、前車との間の車間距離が所定値未満であると判断される場合には(S114:Yes)、減速に伴い、車両1に大きなサスストロークが生じると推定されるので、車両1の減速が開始される前にキャンバ角調整装置45をサーボロック状態としておくべく、第2補正処理(S121)を実行して、この補正方法決定処理を終了する。
一方、S114の処理の結果、前車との間の車間距離が所定値未満ではない判断される場合には(S114:No)、前車との間の車間距離が所定値以上であるか或いは前車が存在しないということであるので、次いで、走行予定経路に歩行者が存在するかを判断する(S115)。走行予定経路に歩行者が存在する場合、その歩行者との接触を回避するために、運転者が車両1を減速させる或いは旋回させる可能性が高い。減速時および旋回時には、上述したように、サスペンション(懸架装置4,14)のストロークが発生する。そのため、走行予定経路に歩行者が存在すると判断される場合には(S115:Yes)、減速または旋回に伴い、車両1に大きなサスストロークが生じると推定されるので、車両1の減速または旋回が開始される前にキャンバ角調整装置45をサーボロック状態としておくべく、第2補正処理(S121)を実行して、この補正方法決定処理を終了する。
なお、歩行者は例示であり、例えば、自転車や車椅子を利用した走行者も含まれる。また、犬などの生物も含まれる。即ち、S115の処理において、歩行者とは、走行予定経路に存在するものであって、接触を回避するために、車両1が減速または旋回する必要があるものを意味する。また、走行予定経路に歩行者が存在するとは、車両1が走行する走行路上に歩行者が存在することを要求するものではなく、走行予定経路の沿道およびその周辺(即ち、カメラ装置87やレーダ装置88による検出可能範囲)に歩行者が存在することを含む趣旨である。
一方、S115の処理の結果、走行予定経路に歩行者は存在しない判断される場合には(S115:No)、次いで、走行予定経路に所定情報を示す標識が存在するかを判断する(S116)。走行予定経路に所定情報を示す標識が存在する場合、その標識の表示内容に基づいて、運転者が車両1を減速させる可能性が高い。また、標識の表示内容を視認するために、車両1を減速させる可能性もある。減速時には、上述したように、サスペンション(懸架装置4,14)のストロークが発生する。そのため、走行予定経路に所定情報を示す標識が存在すると判断される場合には(S116:Yes)、減速に伴い、車両1に大きなサスストロークが生じると推定されるので、車両1の減速が開始される前にキャンバ角調整装置45をサーボロック状態としておくべく、第2補正処理(S121)を実行して、この補正方法決定処理を終了する。
ここで、所定情報を示す標識としては、例えば、道路利用者に目的地あるいは通過地への方向・距離などの情報を提供する案内標識、道路および沿道における注意を予告し減速等を運転者に促す警戒標識、運転者に対して通行の禁止や制限等の規制を行う規制標識などが例示される。
一方、S116の処理の結果、走行予定経路に所定情報を示す標識が存在しないと判断される場合には(S116:No)、走行予定経路に所定情報を示す標識が存在しないか或いは車両1がその標識を既に通過しているということであるので、次いで、走行予定経路に料金所が存在するか、即ち、車両1がその料金所へ進入するかを判断する(S117)。車両1が料金所へ進入する場合、運転者により車両1が減速される可能性が高い。減速時には、上述したように、サスペンション(懸架装置4,14)のストロークが発生する。そのため、走行予定経路に料金所が存在し、車両1がその料金所へ進入すると判断される場合には(S117:Yes)、減速に伴い、車両1に大きなサスストロークが生じると推定されるので、車両1の減速が開始される前にキャンバ角調整装置45をサーボロック状態としておくべく、第2補正処理(S121)を実行して、この補正方法決定処理を終了する。
なお、料金所は、高速道路の料金所に限られず、料金の支払い或いはチケットの所得を行う場所を含む趣旨である。たとえば、施設や駐車場へ入退場する際の発券または料金徴収を行う発券装置または料金徴収装置の設置場所などが例示される。
一方、S117の処理の結果、走行予定経路に歩行者は存在しない判断される場合には(S117:No)、次いで、走行予定経路に高速道路への合流が存在するかを判断する(S118)。走行予定経路に高速道路への合流が存在する場合、運転者が車両1を加速させる可能性が高い。加速時には、減速時とは逆向きの車両1のピッチングに伴い、進行方向前方側のサスペンション(懸架装置4,14)は伸長される一方、進行方向後方側のサスペンションは短縮される。また、高速道路への合流は、その前半部分がカーブであることが多い。旋回時には、上述したように、サスペンションのストロークが発生する。そのため、走行予定経路に高速道路への合流が存在すると判断される場合には(S118:Yes)、旋回および加速に伴い、車両1に大きなサスストロークが生じると推定されるので、車両1の旋回および加速が開始される前にキャンバ角調整装置45をサーボロック状態としておくべく、第2補正処理(S121)を実行して、この補正方法決定処理を終了する。
一方、S118の処理の結果、走行予定経路に高速道路への合流が存在しないと判断される場合には(S118:No)、走行予定経路に高速道路への合流が存在しないか或いは車両1が既に通過しているということであるので、次いで、走行予定経路に高速道路からの分岐が存在するかを判断する(S119)。走行予定経路に高速道路からの分岐が存在する場合、運転者が車両1を減速させる可能性が高い。また、高速道路からの分岐は、その経路の後半がカーブであることが多い。減速時および旋回時には、上述したように、サスペンションのストロークが発生する。そのため、走行予定経路に高速道路からの分岐が存在すると判断される場合には(S119:Yes)、旋回および減速に伴い、車両1に大きなサスストロークが生じると推定されるので、車両1の旋回および減速が開始される前にキャンバ角調整装置45をサーボロック状態としておくべく、第2補正処理(S121)を実行して、この補正方法決定処理を終了する。
一方、S119の処理の結果、走行予定経路に高速道路からの分岐が存在しないと判断される場合には(S119:No)、走行予定経路に高速道路からの分岐が存在しないか或いは車両1が既に通過しているということであり、
車両1に大きなサスペンションストロークが生じる可能性が少ないと推定され、外力の作用に対して機械的な摩擦力で対抗し得ると推定され、かつ、キャンバ角調整装置45の補正に高応答性は比較的要求されないと推定されるので、この場合には(S105〜S119:No)、第1補正処理(S120)を実行して、この補正方法決定処理を終了する。
このように、補正方法決定処理では、キャンバ角調整装置45の補正を行うに際し、車両1に大きなサスストロークが生じないと判断される場合には(S105〜S119:No)、外力の作用に対して、キャンバ角調整装置45における機械的な摩擦力を有効利用して、消費エネルギーを低減するべく、第1補正処理(S120)を実行する一方、車両1に大きなサスストロークが生じると判断される場合には(S105〜S119のいずれか1の処理がYes)、キャンバ角調整装置45を事前にサーボロック状態としておくことで、車輪2のキャンバ角が所定角度から変化することを確実に抑制するべく、第2補正処理(S121)を実行する。
次いで、図16を参照して、第1補正処理(S120)について説明する。図16は、第1補正処理を示すフローチャートである。この処理は、上述した補正方法決定処理(図15参照)内で実行される処理であり、各懸架装置14のサスストローク量に応じて、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)におけるホイール軸(ホイール部材93の軸心O1)の角度を補正する処理である。
CPU71は、第1補正処理(S120)に関し、まず、キャンバ角の設定動作中であるか否か、即ち、左右の後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与(キャンバ角を第1キャンバ角(0°)から第2キャンバ角(−3°)に変更)する動作中または左右の後輪2RL,2RRへのネガティブキャンバの付与を解除(キャンバ角を第1キャンバ角(0°)から第2キャンバ角(−3°)に変更)する動作中であるか否かを判断する(S80)。
S80の処理の結果、キャンバ角の設定動作中であると判断される場合には(S80:Yes)、たとえ軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置しなくなっているとしても、上述したキャンバ角の設定動作により第1状態または第2状態に復帰するため、S81移行の処理により補正処理を行うことが無駄となる。よって、この場合には(S80:Yes)、S81移行の処理をスキップして、この補正処理を終了する。
一方、S80の処理の結果、キャンバ角の設定動作中ではないと判断される場合には(S80:No)、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置しない状態となっている場合に、かかる状態を軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置する状態とするべく、S81以降の処理を実行する。
即ち、まず、RAM73に設けられた値m(図示せず)にm=1を書き込む(S81)。なお、補正処理では、説明の便宜上、第1輪(m=1)を右の後輪2RRと、第2輪(m=2)を左の後輪2RLと、それぞれ定義する。
次いで、第m輪オン時サスストロークフラグ(第1輪オン時ストロークフラグ73e2又は第2輪オン時ストロークフラグ73f2の内の第m輪に対応するフラグ)がオンであるか否かを判断する(S82)。その結果、S82の処理において、第m輪オン時サスストロークフラグがオンであると判断される場合には(S82:Yes)、第m輪が第2状態(車輪2にネガティブキャンバが付与された状態)にある懸架装置14のサスストローク量が限界値(キャンバオン時閾値)以上になっているということであるので、かかる第m輪を懸架する側におけるキャンバ角調整装置45の補正角(角度θon、図11(b)及び図13(b)参照)を算出し(S83)、その算出した角度θon分だけホイール部材93aをキャンバ角調整装置45により回転させることで、第m輪におけるホイール軸(ホイール部材93の軸心O1)の角度を補正した後(S84)、S88の処理へ移行する。
これにより、第m輪を懸架するキャンバ角調整装置45において、各軸心を軸心O2、軸心O1、軸心O3の順に一直線上に並ばせることができるので(図13(b)参照)、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わっても、ホイール部材93aの回転を規制して、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に機械的に維持可能とすることができる。よって、RL,RRモータ91RL,91RRの回転駆動力を解除することができるので、その消費エネルギーの低減を図る。
一方、S82の処理において、第m輪オン時サスストロークフラグがオンではない(即ち、オフである)と判断される場合には(S82:No)、第m輪オフ時サスストロークフラグ(第1輪オフ時ストロークフラグ73e1又は第2輪オフ時ストロークフラグ73f1の内の第m輪に対応するフラグ)がオフであるか否かを判断する(S85)。
その結果、S82の処理において、第m輪オフ時サスストロークフラグがオンであると判断される場合には(S85:Yes)、第m輪が第1状態(車輪2に付与されたネガティブキャンバが解除された状態)にある懸架装置14のサスストローク量が限界値(キャンバオフ時閾値)以上になっているということであるので、かかる第m輪を懸架する側におけるキャンバ角調整装置45の補正角(角度θoff、図11(a)及び図13(a)参照)を算出し(S86)、その算出した角度θoff分だけホイール部材93aをキャンバ角調整装置45により回転させることで、第m輪におけるホイール軸(ホイール部材93の軸心O1)の角度を補正した後(S87)、S88の処理へ移行する。
これにより、第m輪を懸架するキャンバ角調整装置45において、各軸心を軸心O1、軸心O2、軸心O3の順に一直線上に並ばせることができるので(図13(a)参照)、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わっても、ホイール部材93aの回転を規制して、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に機械的に維持可能とすることができる。よって、RL,RRモータ91RL,91RRの回転駆動力を解除することができるので、その消費エネルギーの低減を図る。
ここで、第1状態の場合と第2状態の場合とでは(図11参照)、懸架装置14のサスストローク量が同一であっても、機械的な摩擦力でホイール部材93aの回転を規制するために許容できる懸架装置14のサスストローク量が異なる。そのため、第1状態と第2状態とで同じ閾値に基づいて行われたのでは、第1状態では、機械的な摩擦力でホイール部材93aの回転を規制できる範囲であるのに、各モータ91RL,91RRが無駄に作動されることで、消費エネルギーが増加する一方、第2状態では、機械的な摩擦力でホイール部材93aの回転を規制できる範囲を越えているのに、各モータ91RL,91RRによる補正処理がなされず、アッパーアーム42から受ける力によりホイール部材93aが回転されることで、車輪2のキャンバ角の変化を招く。
これに対し、本実施の形態では、第1状態の場合と第2状態の場合とのそれぞれに対して異なる閾値(キャンバオフ時閾値およびキャンバオン時閾値)を設定しておき、それら各閾値に基づいて、各懸架装置14のサスストローク量が限界値を超えているかの判断を行う(各フラグのオン・オフを行う)ので(図13参照)、各車輪2のキャンバ角の補正を第1状態と第2状態とにそれぞれ適したタイミングで行うことができる。その結果、各モータ91RL,91RRの無駄な作動を抑制して、消費エネルギーを効率的に低減することができると共に、アッパーアーム42から受ける力によりホイール部材93aが回転して、車輪2のキャンバ角が変化することを効率的に抑制できる。
特に、本実施の形態では、第2状態の場合の閾値(キャンバオン時閾値)の値が、第1状態における閾値(キャンバオフ時閾値)の値よりも小さな値に設定されているので、懸架装置14のサスストローク量の限界値が低い第2状態においては、機械的な摩擦力でホイール部材93aの回転を規制できる範囲を越える前に、各モータ91RL,91RRを作動させて角度θonの補正を行い、アッパーアーム42から受ける力によるホイール部材93aの回転を確実に規制することができる。その結果、キャンバ角の変化を確実に抑制することができる。一方、懸架装置14のサスストローク量の限界値が高い第1状態においては、アッパーアーム42から受ける力に対して機械的な摩擦力でホイール部材93aの回転を規制できる範囲であるのに、各モータ91RL,91RRが無駄に作動されることを抑制して、消費エネルギーの低減を図ることができる。
なお、S84及びS87の各処理において、各車輪2におけるホイール軸(ホイール部材93の軸心O1)の角度の補正は、各軸O1〜O3が一直線上に並ぶように、ホイール部材93aを回転させるので、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わっても、ホイール部材93aが回転することを確実に規制することができる。よって、その後に、懸架装置14のサスストロークが発生した場合でも、かかる補正の再実行を最小限とすることができる。その結果、車輪2のキャンバ角が変化することを抑制しつつ、各モータ91RL,91RRの作動を効率的に抑制して、消費エネルギーを低減することができる。
S85の処理において、第m輪オフ時サスストロークフラグがオンではない(即ち、オフである)と判断される場合には(S85:No)、第1状態または第2状態によらず、第m輪を懸架する懸架装置14のサスストローク量が未だ限界値(即ち、キャンバオフ時閾値およびキャンバオン時閾値)に達していないということであり、かかる第m輪のキャンバ角調整装置45によるキャンバ角の補正を行う必要がないので、S83、S84、S86及びS87の各処理を実行せず、S88の処理へ移行する。
このように、懸架装置14のサスストロークの値が所定の閾値(キャンバオフ時閾値およびキャンバオン時閾値)に達していないと判断される場合(即ち、アッパーアーム42から作用する力の内のホイール部材93aを回転させる力成分よりも、機械的な摩擦力が上回り、かかる機械的な摩擦力によりホイール部材93aの回転を規制できる場合)には、キャンバ角調整装置45によるキャンバ角の補正(S83、S84、S86及びS87)を行わないので、各モータ91RL,91RRの無駄な作動を抑制して、その消費エネルギーを低減することができる。
S88の処理では、RAM73に設けられた値mが2に達したか否かを判断する(S88)。その結果、値mが2に達していない(即ち、m=1である)場合には(S88:No)、第2輪(左の後輪2RL)についての各処理S82〜S87が未実行であるということなので、第2輪についてもこれら各処理を実行するべく、値mにm=m+1を書き込んだ後(S89)、S82の処理へ移行する。一方、値mが2に達している(即ち、m=2である)場合には(S88:Yes)、第1輪および第2輪(即ち、左右の後輪2RL,2RR)に対する各処理S82〜S87の実行が完了しているということであるので、この補正処理を終了する。
次いで、図17を参照して、第2補正処理(S121)について説明する。図17は、第2補正処理を示すフローチャートである。この処理は、上述した補正方法決定処理(図15参照)内で実行される処理であり、ホイール部材93aの回転を規制して、車輪2のキャンバ角の変化を抑制するための処理である。
CPU71は、第2補正処理(S121)に関し、まず、キャンバ角の設定動作中であるかを判断する(S91)。即ち、左右の後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与(キャンバ角を第1キャンバ角(0°)から第2キャンバ角(−3°)に変更)する、或いはその逆に、左右の後輪2RL,2RRへのネガティブキャンバの付与を解除(キャンバ角を第1キャンバ角(0°)から第2キャンバ角(−3°)に変更)するために、キャンバ角調整機構45の各モータ91RL,91RRを回転駆動させ、その駆動力によりホイール部材93aを回転させている状態であるかを判断する(S91)。
S91の処理の結果、キャンバ角の設定動作中ではないと判断される場合には(S91:No)、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第1キャンバ角または第2キャンバ角に設定する設定動作が終了しており、ホイール部材93aは既に停止されている(即ち、第1状態または第2状態に設定されている)ので、かかるホイール部材93aが外力の作用により回転する(回転位置がずれる)ことを抑制するために、キャンバ角調整装置45(RLモータ91RL,RRモータ91RR)のサーボロックをオンした後(S92)、この第2補正処理(S121)を終了する。
これにより、キャンバ角調整装置45(RLモータ91RL,RRモータ91RR)をサーボロック状態として、ホイール部材93aの回転を規制することができる。よって、車輪2(左右の後輪2RL,2RR)からアッパーアーム42を介してホイール部材93aに入力された外力に対して、ホイール部材93aが第1状態または第2状態から回転される(回転位置がずれる)ことを抑制して、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角または第2キャンバ角から変化することを抑制できる。
この場合、ホイール部材93aは、第1状態または第2状態にあるので、通常走行状態では、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O2の回転軌跡TR(図3(b)参照)の軸心O2における接線とを直角に近づけることができる。よって、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わった場合でも、ホイール部材93aを回転させる力成分の発生を抑制できるので、機械的な摩擦力によってもホイール部材93aの回転を規制できる。このように、ホイール部材93aの回転を、サーボロックによる回転規制に加え、機械的な摩擦力によっても、規制することができるので、その分、サーボロックのために消費される各モータ91RL,91RRの消費エネルギーを抑制することができる。
一方、S91の処理において、キャンバ角の設定動作中であると判断される場合には(S91:Yes)、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第1キャンバ角または第2キャンバ角に設定する設定動作が阻害されることを回避するべく、キャンバ角調整装置45(RLモータ91RL,RRモータ91RR)のサーボロックをオフした後(S93)、この第2補正処理を終了する。
なお、第2補正処理(S121)では、キャンバ角調整装置45(RLモータ91RL,RRモータ91RR)をサーボロック状態とすることによるホイール部材93aの回転の規制を、キャンバ角の設定動作が完了したと判断される場合に常時行うので、外力の作用によりホイール部材93aが回転されることを未然に防止して、車輪2のキャンバ角が変化することを確実に抑制することができる。
また、キャンバ角調整装置45(RLモータ91RL,RRモータ91RR)をサーボロック状態とすることで、ホイール部材93aの回転を規制する構成なので、かかるキャンバ角調整装置45に、キャンバ角を調整するためにホイール部材93aを回転させるアクチュエータとしての役割と、キャンバ角の変化を抑制するためにホイール部材93aの回転を規制するアクチュエータとしての役割とを兼用させることができる。即ち、キャンバ角を調整するための既存のアクチュエータを利用して、ホイール部材93aの回転を規制して、キャンバ角の変化を抑制することもできるので、ホイール部材93aの回転を規制するための他の構成(例えば、機械的なブレーキ装置など)を別途設けることを不要として、製品コストの低減と軽量化とを図ることができる。また、サーボロックを利用して、ホイール部材93aの回転を規制する構成なので、高応答性を得ることができる。よって、指令を受けてからホイール部材93aの回転を規制するまでの応答時間を短縮することができるので、車輪2のキャンバ角の変化をより確実に抑制することができる。
次いで、図18及び図19を参照して、第2実施の形態における車両用制御装置について説明する。第1実施の形態では、第2補正処理において、キャンバ角の設定動作が完了した後はRL,RRモータ91RL,91RRのサーボロックを常時オンする場合を説明したが、第2実施の形態では、第2補正処理において、キャンバ角の設定動作が完了し、かつ、サスストローク量が閾値以上となった場合に、RL,RRモータ91RL,91RRのサーボロックがオンされる。
なお、第2実施の形態における車両用制御装置は、第1実施の形態で説明した車両1を制御対象とし、車両用制御装置100と同じ構成を備える。また、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
ここで、本実施の形態における車両用制御装置は、第1実施の形態の場合と同様に、図6に示す駆動制御回路を備える。即ち、車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角が第1キャンバ角または第2キャンバ角に調整されキャンバ角調整装置45(図3参照)が第1状態または第2状態に設定されると、上述した短絡回路が形成される。また、サーボロックをオン(図19のS264参照)する際には短絡回路の形成が解除され、サーボロックのオフ(図19のS265参照)に伴い、短絡回路が形成される。これにより、第1実施の形態の場合と同様に、ホイール部材93aの回転に制動をかけることができる。
図18は、第2実施の形態におけるサスストローク量判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、左右の後輪2RL,2RRを懸架する懸架装置14の伸縮量(サスストローク)が所定の閾値を超えたか否かを判断する処理である。
CPU71は、サスストローク量判断処理に関し、まず、RAM73に設けられた値y(図示せず)にy=1を書き込み(S201)、第y輪のサスストローク量を取得する(S202)。なお、サスストローク量判断処理では、説明の便宜上、第1輪(y=1)を右の後輪2RRと、第2輪(y=2)を左の後輪2RLと、それぞれ定義する。
次いで、第y輪を懸架する懸架装置14のサスストローク量がサスストローク閾値以上であるかを判断する(S203)。ここで、「サスストローク閾値」とは、懸架装置14が伸縮した場合に(図11及び図12参照)、アッパーアーム42から入力される外力に対してホイール部材93aの回転を機械的な摩擦力により規制できる懸架装置14の伸縮量の限界値である。
よって、懸架装置14のサスストローク量がサスストローク閾値に達していない状態であれば、車輪2に想定最大外力が作用しても、ホイール部材93aの回転は機械的な摩擦力により規制される(各モータ91RL,91RRによる回転駆動力が解除されていてもホイール部材93aが回転されない)。なお、サスストローク閾値は、実車を用いた試験(車輪2に想定最大外力を作用させた際に、ホイール部材93aが回転される限界のサスストロークを求める試験)により測定値として求められており、ROM72に事前に記憶されている。
S203の処理において、第y輪のサスストローク量がサスストローク閾値以上であると判断された場合には(S203:Yes)、第y輪を懸架する懸架装置14のサスストローク量が限界値を超えているということなので、第y輪ストロークフラグ(第1輪ストロークフラグ73g1又は第2輪ストロークフラグ73g2の内の第y輪に対応するフラグ)をオンし(S204)、S206の処理へ移行する。
一方、S203の処理において、第y輪のサスストローク量がサスストローク閾値以上ではない(即ち、サスストローク閾値に達していない)と判断される場合(S203:No)には、第y輪を懸架する懸架装置14のサスストローク量が限界値に達していないということなので、第y輪ストロークフラグ(第1輪ストロークフラグ73g1又は第2輪ストロークフラグ73g2の内の第y輪に対応するフラグ)をオフした後(S205)、S206の処理へ移行する。
S206の処理では、RAM73に設けられた値yが2に達したか否かを判断する(S206)。その結果、値yが2に達していない(即ち、y=1である)場合には(S206:No)、第2輪(左の後輪2RL)についての各処理S202〜S205が未実行であるということなので、第2輪についてもこれら各処理を実行するべく、値yにy=y+1を書き込んだ後(S207)、S202の処理へ移行する。一方、値yが2に達している(即ち、y=2である)場合には(S206:Yes)、第1輪および第2輪(即ち、左右の後輪2RL,2RR)に対する各処理S202〜S205の実行が完了しているということであるので、このサスストローク量判断処理を終了する。
次いで、図19を参照して、第2補正処理について説明する。図19は、第2補正処理を示すフローチャートである。この処理は、上述した補正方法決定処理(図15参照)内で実行される処理であり、各懸架装置14のサスストローク量に応じて、RL,RRモータ91RL,91RRのサーボロック状態を切り替える処理である。
CPU71は、第2補正処理に関し、まず、RAM73に設けられた値z(図示せず)にz=1を書き込む(S261)。なお、第2補正処理では、説明の便宜上、第1輪(z=1)を右の後輪2RRと、第2輪(z=2)を左の後輪2RLと、それぞれ定義する。
S261の処理の後は、次いで、キャンバ角の設定動作中であるかを判断する(S262)。即ち、左右の後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与(キャンバ角を第1キャンバ角(0°)から第2キャンバ角(−3°)に変更)する、或いはその逆に、左右の後輪2RL,2RRへのネガティブキャンバの付与を解除(キャンバ角を第1キャンバ角(0°)から第2キャンバ角(−3°)に変更)するために、キャンバ角調整機構45の各モータ91RL,91RRを回転駆動させ、その駆動力によりホイール部材93aを回転させている状態であるかを判断する(S262)。
S262の処理の結果、キャンバ角の設定動作中ではないと判断される場合には(S262:No)、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第1キャンバ角または第2キャンバ角に設定する設定動作が終了しており、ホイール部材93aは既に停止されている(即ち、第1状態または第2状態に設定されている)。
よって、この場合には(S262:No)、第z輪ストロークフラグ(第1輪ストロークフラグ73g1又は第2輪ストロークフラグ73g2の内の第z輪に対応するフラグ)がオンであるかを判断し(S263)、かかる第z輪ストロークフラグがオンであると判断される場合には(S263:Yes)、第z輪に対応するキャンバ角調整装置45(RLモータ91RL又はRRモータ91RR)のサーボロックをオンして(S264)、S266の処理へ移行する。これにより、ホイール部材93aが外力の作用により回転する(回転位置がずれる)ことを抑制しつつ、RLモータ91RL又はRRモータ91RRの無駄な作動を抑制して、消費エネルギーを低減することができる。
即ち、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置する状態から、キャリア部材41の上下動に伴う懸架装置45のサスストロークにより、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置しない状態になると、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線と、軸心O2の回転軌跡TRの軸心O2における接線とが直角ではなくなるが(図11及び図12参照)、キャリア部材41の上下動に伴う懸架装置45のサスストローク量が比較的小さな場合には、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線と軸心O2の回転軌跡TRの軸心O2における接線とのなす角度の変化量は比較的小さいため、アッパーアーム42からホイール部材93aへ加わる力の内、ホイール部材93aを回転させる力成分も比較的小さくなる。そのため、ホイール部材93aを回転させる力成分よりも、機械的な摩擦力が上回り、ホイール部材93aの回転を規制状態(外力に抗する状態)に維持することができる。よって、このような場合にも、RLモータ91RL又はRRモータ91RRを駆動してホイール部材93aの回転の規制を行うことは、かかるRLモータ91RL又はRRモータ91RRの作動を無駄に行うことになる。
そこで、本実施の形態では、キャリア部材41の上下動に伴う懸架装置45のサスストローク量の値がサスストローク閾値以上であると判断された場合(即ち、第z輪ストロークフラグがオンされた場合であって、所定の外力が入力された際に、機械的な摩擦力ではホイール部材93aの回転を規制できない程度にキャリア部材41の変位量(サスストローク量)が大きいと判断される場合)に(S263:Yes)、サーボロックをオンして(S264)、ホイール部材93aの回転の規制を行うので、RLモータ91RL又はRRモータ91RRの無駄な作動を抑制して、消費エネルギーを低減することができる。
また、このように、キャリア部材41の上下動に伴う懸架装置45のサスストローク量の値がサスストローク閾値以上であると判断された場合には(S263:Yes)、サーボロックをオンして(S264)、ホイール部材93aの回転の規制を行っておくことで、外力の作用によりホイール部材93aが回転される(回転位置がずれる)ことを未然に防止して、車輪2のキャンバ角が変化することをより確実に抑制することができる。
一方、S262の処理の結果、キャンバ角の設定動作中であると判断される場合には(S262:Yes)、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第1キャンバ角または第2キャンバ角に設定する設定動作が阻害されることを回避するべく、キャンバ角調整装置45(RLモータ91RL,RRモータ91RR)のサーボロックをオフした後(S265)、S266の処理へ移行する。
また、S263の処理において、第z輪ストロークフラグがオンではない、即ち、オフであると判断される場合には(S263:No)、キャリア部材41の上下動に伴う懸架装置45のサスストローク量が比較的小さく、機械的な摩擦力によって、ホイール部材93aの回転を規制状態(外力に抗する状態)に維持することができると考えられるため、RLモータ91RL又はRRモータ91RRの作動を無駄に行うことを回避するべく、キャンバ角調整装置45(RLモータ91RL,RRモータ91RR)のサーボロックをオフした後(S265)、S266の処理へ移行する。
S266の処理では、RAM73に設けられた値zが2に達したか否かを判断する(S266)。その結果、値zが2に達していない(即ち、z=1である)場合には(S266:No)、第2輪(左の後輪2RL)についての各処理S262〜S265が未実行であるということなので、第2輪についてもこれら各処理を実行するべく、値zにz=z+1を書き込んだ後(S267)、S262の処理へ移行する。一方、値zが2に達している(即ち、z=2である)場合には(S266:Yes)、第1輪および第2輪(即ち、左右の後輪2RL,2RR)に対する各処理S262〜S265の実行が完了しているということであるので、この第2補正処理を終了する。
次いで、図20及び図21を参照して、第3実施の形態における車両用制御装置について説明する。第1実施の形態では、第2補正処理において、キャンバ角の設定動作が完了した後はRL,RRモータ91RL,91RRのサーボロックを常時オンする場合を説明したが、第3実施の形態では、第2補正処理において、キャンバ角の設定動作が完了し、かつ、外力の作用によるホイール部材93aの回転量(ずれ量)が閾値以上となった場合に、RL,RRモータ91RL,91RRのサーボロックがオンされる。
なお、第3実施の形態における車両用制御装置は、第1実施の形態で説明した車両1を制御対象とし、車両用制御装置100と同じ構成を備える。また、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
ここで、本実施の形態における車両用制御装置は、第1実施の形態の場合と同様に、図6に示す駆動制御回路を備える。即ち、車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角が第1キャンバ角または第2キャンバ角に調整されキャンバ角調整装置45(図3参照)が第1状態または第2状態に設定されると、上述した短絡回路が形成される。また、サーボロックをオン(図21のS364参照)する際には短絡回路の形成が解除され、サーボロックのオフ(図21のS365参照)に伴い、短絡回路が形成される。これにより、第1実施の形態の場合と同様に、ホイール部材93aの回転に制動をかけることができる。
図20は、第3実施の形態におけるホイールずれ量判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、外力の作用によるホイール部材93aの回転量(ずれ量)が所定の閾値を超えたか否かを判断する処理である。
CPU71は、ホイールずれ量判断処理に関し、まず、RAM73に設けられた値q(図示せず)にq=1を書き込み(S301)、第q輪を懸架する懸架装置14におけるホイール部材93aのホイールずれ量を取得する(S302)。ここで、ホイールずれ量とは、ホイール部材93aの回転位置(位相)が、第1状態または第2状態に調整された状態を初期位置とし、外力の作用によりホイール部材93aが回転された(ずれた)場合の初期位置からの回転量である。なお、ホイールずれ量判断処理では、説明の便宜上、第1輪(q=1)を右の後輪2RRと、第2輪(q=2)を左の後輪2RLと、それぞれ定義する。
次いで、第q輪を懸架する懸架装置14におけるホイール部材93aのホイールずれ量が、ホイールずれ閾値以上であるかを判断する(S303)。ここで、「ホイールずれ閾値」とは、懸架装置14がサスストロークしていない状態(即ち、車両1の重量以外の外力が作用していない通常走行状態)において、ホイール部材93aに対して、所定の大きさの外力(基準外力)をアッパーアーム42から入力した場合に、ホイール部材93aの回転を機械的な摩擦力により規制できるホイール部材93aのホイールずれ量の限界値である。
よって、ホイール部材93aのホイールずれ量がホイールずれ閾値に達していない状態であれば、車輪2に基準外力が作用しても、ホイール部材93aの回転は機械的な摩擦力により規制される(各モータ91RL,91RRによる回転駆動力が解除されていてもホイール部材93aが回転されない)。なお、ホイールずれ閾値は、実車を用いた試験(車輪2に基準外力を作用させた際に、ホイール部材93aが回転される限界のホイールずれ量を求める試験)により測定値として求められており、ROM72に事前に記憶されている。
S303の処理において、第q輪のホイールずれ量がホイールずれ閾値以上であると判断された場合には(S303:Yes)、第q輪を懸架する懸架装置14におけるホイール部材93aのホイールずれ量が限界値を超えているということなので、第q輪ホイールずれフラグ(第1輪ホイールずれフラグ73h1又は第2輪ホイールずれフラグ73h2の内の第q輪に対応するフラグ)をオンし(S304)、S306の処理へ移行する。
一方、S303の処理において、第q輪のホイールずれ量がホイールずれ閾値以上ではない(即ち、ホイールずれ閾値に達していない)と判断される場合(S203:No)には、第q輪を懸架する懸架装置14におけるホイール部材93aのホイールずれ量が限界値に達していないということなので、第q輪ホイールずれフラグ(第1輪ホイールずれフラグ73h1又は第2輪ホイールずれフラグ73h2の内の第q輪に対応するフラグ)をオフした後(S305)、S306の処理へ移行する。
S306の処理では、RAM73に設けられた値qが2に達したか否かを判断する(S306)。その結果、値qが2に達していない(即ち、q=1である)場合には(S306:No)、第2輪(左の後輪2RL)についての各処理S302〜S305が未実行であるということなので、第2輪についてもこれら各処理を実行するべく、値qにq=q+1を書き込んだ後(S307)、S302の処理へ移行する。一方、値qが2に達している(即ち、q=2である)場合には(S306:Yes)、第1輪および第2輪(即ち、左右の後輪2RL,2RR)に対する各処理S302〜S305の実行が完了しているということであるので、このサスストローク量判断処理を終了する。
次いで、図21を参照して、第2補正処理について説明する。図21は、第2補正処理を示すフローチャートである。この処理は、上述した補正方法決定処理(図15参照)内で実行される処理であり、各懸架装置14におけるホイール部材93aのホイールずれ量に応じて、RL,RRモータ91RL,91RRのサーボロック状態を切り替える処理である。
CPU71は、第2補正処理に関し、まず、RAM73に設けられた値r(図示せず)にr=1を書き込む(S361)。なお、第2補正処理では、説明の便宜上、第1輪(r=1)を右の後輪2RRと、第2輪(r=2)を左の後輪2RLと、それぞれ定義する。
S361の処理の後は、次いで、キャンバ角の設定動作中であるかを判断する(S362)。即ち、左右の後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与(キャンバ角を第1キャンバ角(0°)から第2キャンバ角(−3°)に変更)する、或いはその逆に、左右の後輪2RL,2RRへのネガティブキャンバの付与を解除(キャンバ角を第1キャンバ角(0°)から第2キャンバ角(−3°)に変更)するために、キャンバ角調整機構45の各モータ91RL,91RRを回転駆動させ、その駆動力によりホイール部材93aを回転させている状態であるかを判断する(S362)。
S362の処理の結果、キャンバ角の設定動作中ではないと判断される場合には(S362:No)、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第1キャンバ角または第2キャンバ角に設定する設定動作が終了しており、ホイール部材93aは既に停止されている(即ち、第1状態または第2状態に設定されている)。
よって、この場合には(S362:No)、第r輪ホイールずれフラグ(第1輪ホイールずれフラグ73h1又は第2輪ホイールずれフラグ73h2の内の第r輪に対応するフラグ)がオンであるかを判断し(S363)、かかる第r輪ホイールずれフラグがオンであると判断される場合には(S363:Yes)、第r輪に対応するキャンバ角調整装置45(RLモータ91RL又はRRモータ91RR)のサーボロックをオンして(S364)、S366の処理へ移行する。これにより、ホイール部材93aが外力の作用により回転する(回転位置がずれる)ことを抑制しつつ、RLモータ91RL又はRRモータ91RRの無駄な作動を抑制して、消費エネルギーを低減することができる。
即ち、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置する状態から、外力の作用によりホイール部材93aが回転され(回転位置がずれ)、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置しない状態になると、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線と、軸心O2の回転軌跡TRの軸心O2における接線とが直角ではなくなるが、そのホイール部材93aのホイールずれ量が比較的小さな場合には、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線と軸心O2の回転軌跡TRの軸心O2における接線とのなす角度の変化量は比較的小さいため、アッパーアーム42からホイール部材93aへ加わる力の内、ホイール部材93aを回転させる力成分も比較的小さくなる。そのため、ホイール部材93aを回転させる力成分よりも、機械的な摩擦力が上回り、ホイール部材93aの回転を規制状態(外力に抗する状態)に維持することができる。よって、このような場合にも、RLモータ91RL又はRRモータ91RRを駆動してホイール部材93aの回転の規制を行うことは、かかるRLモータ91RL又はRRモータ91RRの作動を無駄に行うことになる。
そこで、本実施の形態では、外力の作用によるホイール部材93aのホイールずれ量の値がホイールずれ閾値以上であると判断された場合(即ち、第r輪ホイールずれフラグがオンされた場合であって、所定の外力が入力された際に、機械的な摩擦力ではホイール部材93aの回転を規制できない程度に、ホイール部材93aのホイールずれ量が大きいと判断される場合)に(S363:Yes)、サーボロックをオンして(S364)、ホイール部材93aの回転の規制を行うので、RLモータ91RL又はRRモータ91RRの無駄な作動を抑制して、消費エネルギーを低減することができる。
一方、S362の処理の結果、キャンバ角の設定動作中であると判断される場合には(S362:Yes)、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第1キャンバ角または第2キャンバ角に設定する設定動作が阻害されることを回避するべく、キャンバ角調整装置45(RLモータ91RL,RRモータ91RR)のサーボロックをオフした後(S365)、S366の処理へ移行する。
また、S363の処理において、第r輪ホイールずれフラグがオンではない、即ち、オフであると判断される場合には(S363:No)、ホイール部材93aのホイールずれ量が比較的小さく、機械的な摩擦力によって、ホイール部材93aの回転を規制状態(外力に抗する状態)に維持することができると考えられるため、RLモータ91RL又はRRモータ91RRの作動を無駄に行うことを回避するべく、キャンバ角調整装置45(RLモータ91RL,RRモータ91RR)のサーボロックをオフした後(S365)、S366の処理へ移行する。
S366の処理では、RAM73に設けられた値rが2に達したか否かを判断する(S366)。その結果、値rが2に達していない(即ち、r=1である)場合には(S366:No)、第2輪(左の後輪2RL)についての各処理S362〜S365が未実行であるということなので、第2輪についてもこれら各処理を実行するべく、値rにr=r+1を書き込んだ後(S367)、S362の処理へ移行する。一方、値rが2に達している(即ち、r=2である)場合には(S366:Yes)、第1輪および第2輪(即ち、左右の後輪2RL,2RR)に対する各処理S362〜S365の実行が完了しているということであるので、この第2補正処理を終了する。
次いで、図22から図24を参照して、第4実施の形態における車両用制御装置について説明する。第1実施の形態では、第2補正処理において、キャンバ角の設定動作が完了した後はRL,RRモータ91RL,91RRのサーボロックをオンすることで、ホイール部材93aの回転を規制する場合を説明したが、第4実施の形態では、第2補正処理において、キャンバ角の設定動作が完了し、かつ、外力の作用によるホイール部材93aの回転量(ずれ量)が閾値以上となった場合に、ホイール部材93aの回転位置を初期位置に回転させる。
なお、第4実施の形態における車両用制御装置は、第1実施の形態で説明した車両1を制御対象とし、車両用制御装置100と同じ構成を備える。また、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
ここで、本実施の形態における車両用制御装置は、第1実施の形態の場合と同様に、図6に示す駆動制御回路を備える。即ち、車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角が第1キャンバ角または第2キャンバ角に調整されキャンバ角調整装置45(図3参照)が第1状態または第2状態に設定されると、上述した短絡回路が形成される。また、キャンバ角調整装置45の作動による補正時(図24のS485及びS486参照)に短絡回路の形成が解除され、その補正動作の終了に伴い、短絡回路が形成される。これにより、第1実施の形態の場合と同様に、ホイール部材93aの回転に制動をかけることができる。
図22は、第4実施の形態における懸架装置14を模式的に図示する模式図であり、図22(a)は、第1状態における懸架装置14を、図22(b)は、第2状態における懸架装置14を、それぞれ模式的に図示する。なお、図22(a)及び図22(b)では、懸架装置14が短縮された図11(a)及び図11(b)に対応する状態(即ち、ホイール部材93aが外力の作用により回転される(回転位置がずれる)前の状態)が実線により、その状態から外力の作用により回転された(回転位置がずれた)後の状態が破線により、それぞれ図示されている。即ち、図11(a)及び図11(b)の破線で図示される状態が、図22(a)及び図22(b)では実線で図示されている。
上述したように、キャリア部材41をバウンド方向へ移動させる変位が懸架装置14に入力されると、かかるキャリア部材41の変位に伴い、アッパーアーム42が軸心O2を回転中心として回転される(図11(a)参照)。これにより、図22(a)に実線で示すように、軸心O1、軸心O2及び軸心O3が一直線上に並ばなくなり、軸心O1及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線とが所定の角度を有する。
よって、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、回転軌跡TRの軸心O2における接線とが直角をなさなくなる。そのため、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わると、ホイール部材93aを回転させる力成分が発生して、ホイール部材93aが回転し、その結果、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角から変化してしまう。
即ち、図22(a)に実線で示す状態から、アッパーアーム42をホイール部材93aへ押し付ける方向への外力が、アッパーアーム42からホイール部材93aへ作用されると、軸心O2を図22(a)下方へ移動させる方向の力成分が発生して、その力成分により、ホイール部材93aが図22(a)時計回りに回転される。一方、アッパーアーム42をホイール部材93aから離間させる方向への外力が、アッパーアーム42からホイール部材93aへ作用されると、軸心O2を図22(a)上方へ移動させる方向の力成分が発生して、その力成分により、ホイール部材93aが図22(a)反時計回りに回転される。その結果、図22(a)に破線で示すように、ホイール部材93aの回転位置がずれた状態となり、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角から変化する。
そこで、本実施の形態では、外力の作用によりホイール部材93aの回転位置がずれた場合には、第2補正処理(図24参照)において、ホイール部材93aを、図22(a)に矢印で示すように、外力の作用によりずれた方向とは逆方向へ回転させ、初期位置(即ち、第1状態となる位置)へ戻す補正処理を実行する。これにより、ホイール部材93aを機械的な摩擦力による回転規制を利用し易い位置に配置して、RL,RRモータ91RL,91RRの消費エネルギーの低減を図ることができる。また、かかる初期位置(第1状態となる位置)へのホイール部材93aの回転は、特に、懸架装置14が伸縮されていない状態(即ち、車両1の重量以外の外力が作用しないしていない通常走行状態)では、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O2の回転軌跡TRの軸心O2における接線とを直角に近づける方向への回転であるため、その回転に必要なRL,RRモータ91RL,91RRの駆動力を小さくすることができ、この点からも、消費エネルギーの低減を図ることができる。
一方、第2状態の場合も、キャリア部材41をバウンド方向へ移動させる変位が懸架装置14に入力されると、第1状態の場合と同様に、アッパーアーム42が軸心O2を回転中心として回転され(図11(b)参照)、図22(b)に実線で示すように、軸心O1及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線とが所定の角度を有する。そのため、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、回転軌跡TRの軸心O2における接線とが直角をなさなくなり、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わると、ホイール部材93aが回転して、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角から変化する。
即ち、図22(b)に実線で示す状態から、アッパーアーム42をホイール部材93aへ押し付ける方向への外力が、アッパーアーム42からホイール部材93aへ作用されると、軸心O2を図22(b)下方へ移動させる方向の力成分が発生して、その力成分により、ホイール部材93aが図22(b)反時計回りに回転される。一方、アッパーアーム42をホイール部材93aから離間させる方向への外力が、アッパーアーム42からホイール部材93aへ作用されると、軸心O2を図22(b)上方へ移動させる方向の力成分が発生して、その力成分により、ホイール部材93aが図22(b)時計回りに回転される。その結果、図22(b)に破線で示すように、ホイール部材93aの回転位置がずれた状態となり、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角から変化する。
本実施の形態では、この場合も、第1状態の場合と同様に、第2補正処理(図24参照)において、ホイール部材93aを、図22(b)に矢印で示すように、外力の作用によりずれた方向とは逆方向へ回転させ、初期位置(即ち、第2状態となる位置)へ戻す補正処理を実行し、ホイール部材93aの回転を規制しつつ、消費エネルギーの低減を図る。
図23は、ホイールずれ量判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、外力の作用によるホイール部材93aの回転量(ずれ量)が所定の閾値を超えたか否かを判断する処理である。
CPU71は、ホイールずれ量判断処理に関し、まず、RAM73に設けられた値s(図示せず)にs=1を書き込み(S471)、第s輪を懸架する懸架装置14におけるホイール部材93aのホイールずれ量を取得する(S472)。ここで、ホイールずれ量とは、ホイール部材93aの回転位置(位相)が、第1状態または第2状態に調整された状態を初期位置とし、外力の作用によりホイール部材93aが回転された(ずれた)場合の初期位置からの回転量である。なお、ホイールずれ量判断処理では、説明の便宜上、第1輪(s=1)を右の後輪2RRと、第2輪(s=2)を左の後輪2RLと、それぞれ定義する。
次いで、第s輪を懸架する懸架装置14におけるホイール部材93aのホイールずれ量が、ホイールずれ閾値以上であるかを判断する(S473)。ここで、「ホイールずれ閾値」とは、懸架装置14がサスストロークしていない状態(即ち、車両1の重量以外の外力が作用していない通常走行状態)において、ホイール部材93aに対して、所定の大きさの外力(基準外力)をアッパーアーム42から入力した場合に、ホイール部材93aの回転を機械的な摩擦力により規制できるホイール部材93aのホイールずれ量の限界値である。
よって、ホイール部材93aのホイールずれ量がホイールずれ閾値に達していない状態であれば、車輪2に基準外力が作用しても、ホイール部材93aの回転は機械的な摩擦力により規制される(各モータ91RL,91RRによる回転駆動力が解除されていてもホイール部材93aが回転されない)。なお、ホイールずれ閾値は、実車を用いた試験(車輪2に基準外力を作用させた際に、ホイール部材93aが回転される限界のホイールずれ量を求める試験)により測定値として求められており、ROM72に事前に記憶されている。
S473の処理において、第s輪のホイールずれ量がホイールずれ閾値以上であると判断された場合には(S473:Yes)、第s輪を懸架する懸架装置14におけるホイール部材93aのホイールずれ量が限界値を超えているということなので、第s輪ホイールずれフラグ(第1輪ホイールずれフラグ73h1又は第2輪ホイールずれフラグ73h2の内の第s輪に対応するフラグ)をオンし(S474)、S476の処理へ移行する。
一方、S473の処理において、第s輪のホイールずれ量がホイールずれ閾値以上ではない(即ち、ホイールずれ閾値に達していない)と判断される場合(S473:No)には、第s輪を懸架する懸架装置14におけるホイール部材93aのホイールずれ量が限界値に達していないということなので、第s輪ホイールずれフラグ(第1輪ホイールずれフラグ73h1又は第2輪ホイールずれフラグ73h2の内の第s輪に対応するフラグ)をオフした後(S475)、S476の処理へ移行する。
S476の処理では、RAM73に設けられた値sが2に達したか否かを判断する(S476)。その結果、値sが2に達していない(即ち、s=1である)場合には(S476:No)、第2輪(左の後輪2RL)についての各処理S472〜S475が未実行であるということなので、第2輪についてもこれら各処理を実行するべく、値sにs=s+1を書き込んだ後(S477)、S472の処理へ移行する。一方、値sが2に達している(即ち、s=2である)場合には(S476:Yes)、第1輪および第2輪(即ち、左右の後輪2RL,2RR)に対する各処理S472〜S475の実行が完了しているということであるので、このサスストローク量判断処理を終了する。
図24は、第2補正処理を示すフローチャートである。この処理は、上述した補正方法決定処理(図15参照)内で実行される処理であり、各懸架装置14におけるホイール部材93aのホイールずれ量に応じて、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)におけるホイール軸(ホイール部材93の軸心O1)の角度を補正する処理である。
CPU71は、第2補正処理に関し、まず、RAM73に設けられた値t(図示せず)にt=1を書き込む(S481)。なお、第2補正処理では、説明の便宜上、第1輪(t=1)を右の後輪2RRと、第2輪(t=2)を左の後輪2RLと、それぞれ定義する。
S481の処理の後は、次いで、キャンバ角の設定動作中であるかを判断する(S482)。即ち、左右の後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与(キャンバ角を第1キャンバ角(0°)から第2キャンバ角(−3°)に変更)する、或いはその逆に、左右の後輪2RL,2RRへのネガティブキャンバの付与を解除(キャンバ角を第1キャンバ角(0°)から第2キャンバ角(−3°)に変更)するために、キャンバ角調整機構45の各モータ91RL,91RRを回転駆動させ、その駆動力によりホイール部材93aを回転させている状態であるかを判断する(S482)。
S482の処理の結果、キャンバ角の設定動作中ではないと判断される場合には(S482:No)、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第1キャンバ角または第2キャンバ角に設定する設定動作が終了しており、ホイール部材93aは既に停止されている(即ち、第1状態または第2状態に設定されている)ので、次いで、第t輪ホイールずれフラグ(第1輪ホイールずれフラグ73h1又は第2輪ホイールずれフラグ73h2の内の第t輪に対応するフラグ)がオンであるかを判断する(S483)。
S483の処理の結果、第t輪ホイールずれフラグがオンであると判断される場合には(S483:Yes)、外力の作用によりホイール部材93aが回転され(回転位置がずれ)、そのホイール部材93aの回転位置を補正する必要があるということである。よって、この場合には(S483:Yes)、ホイール部材93aを第1状態か第2状態のいずれの状態へ補正するかを決定するべく(図12参照)、キャンバフラグ73aがオンであるかを判断する(S484)。
S484の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S484:Yes)、外力の作用によりホイール部材93aの回転(回転位置のずれ)が発生する前においては、車輪2のキャンバ角は第2キャンバ角に調整されており、ホイール部材93aは第2状態にあったということなので、第t輪に対応するホイール部材93aを図12(b)に矢印で示すように初期位置(即ち、第2状態となる位置)に補正して(S485)、S487の処理へ移行する。
一方、S484の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンではない、即ち、オフであると判断される場合には(S484:No)、外力の作用によりホイール部材93aの回転(回転位置のずれ)が発生する前においては、車輪2のキャンバ角は第1キャンバ角に調整されており、ホイール部材93aは第1状態にあったということなので、第t輪に対応するホイール部材93aを図12(a)に矢印で示すように初期位置(即ち、第1状態となる位置)に補正して(S486)、S487の処理へ移行する。
これにより、ホイール部材93aを、機械的な摩擦力によって回転を規制し易い初期位置(即ち、第1状態または第2状態となる位置)に位置させる(戻す)ことができる。即ち、ホイール部材93aの回転位置が初期位置に戻ることで、機械的な摩擦力による回転規制を再度利用することができるので、RL,RRモータ91RL,91RRの駆動力を解除することができ、その結果、消費エネルギーの低減を図ることができる。
また、このように、初期位置(第1状態または第2状態となる位置)へのホイール部材93aの回転は、特に、懸架装置14が伸縮されていない状態(即ち、車両1の重量以外の外力が作用しないしていない通常走行状態)では、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O2の回転軌跡TRの軸心O2における接線とを直角に近づける方向への回転であるため、その回転に必要なRL,RRモータ91RL,91RRの駆動力を小さくすることができ、この点からも、消費エネルギーの低減を図ることができる。
なお、この場合の補正の方法として、次の方法も考えられる。即ち、キャリア部材41の上下動に伴うアッパーアーム42の変位(軸心O2を回転中心とする回転)に追従させ、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置するようにホイール部材93aを回転させる補正によっても、機械的な摩擦力によりホイール部材93aの回転を規制することができる。しかしながら、この補正の方法では、アッパーアーム42の変位に追従させてホイール部材93aを回転させる必要があるため、RL,RRモータ91RL,91RRの駆動に高応答性が要求されると共にその駆動時間も長くなり、消費エネルギーの増加を招く。
これに対し、本実施の形態では、アッパーアーム42の変位にホイール部材93aの回転を追従させる必要がないので、RL,RRモータ91RL,91RRの駆動に対する応答性の要求を低くしつつ、その駆動時間も短縮することができ、その分、消費エネルギーの低減を図ることができる。
ここで、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置する状態から、外力の作用によりホイール部材93aが回転され(回転位置がずれ)、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置しない状態になると(図12参照)、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線と、軸心O2の回転軌跡TRの軸心O2における接線とが直角ではなくなるが、そのホイール部材93aのホイールずれ量が比較的小さな場合には、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線と軸心O2の回転軌跡TRの軸心O2における接線とのなす角度の変化量は比較的小さいため、アッパーアーム42からホイール部材93aへ加わる力の内、ホイール部材93aを回転させる力成分も比較的小さくなる。そのため、ホイール部材93aを回転させる力成分よりも、機械的な摩擦力が上回り、ホイール部材93aの回転を規制状態(外力に抗する状態)に維持することができる。よって、このような場合にも、RLモータ91RL又はRRモータ91RRを駆動して、ホイール部材93aの回転位置を初期位置へ戻す補正を行うことは、かかるRLモータ91RL又はRRモータ91RRの作動を無駄に行うことになる。
そこで、本実施の形態では、外力の作用によるホイール部材93aのホイールずれ量の値がホイールずれ閾値以上であると判断された場合に(S484:Yes)、RLモータ91RL又はRRモータ91RRを駆動して、ホイール部材93aの回転位置を初期位置へ戻す補正を行うので(S485又はS486)、RLモータ91RL又はRRモータ91RRの無駄な作動を抑制して、消費エネルギーを低減することができる。
S487の処理では、RAM73に設けられた値tが2に達したか否かを判断する(S487)。その結果、値tが2に達していない(即ち、t=1である)場合には(S487:No)、第2輪(左の後輪2RL)についての各処理S482〜S486が未実行であるということなので、第2輪についてもこれら各処理を実行するべく、値tにt=t+1を書き込んだ後(S488)、S482の処理へ移行する。一方、値tが2に達している(即ち、t=2である)場合には(S487:Yes)、第1輪および第2輪(即ち、左右の後輪2RL,2RR)に対する各処理S482〜S486の実行が完了しているということであるので、この第2補正処理を終了する。
なお、図10に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項1記載のキャンバ角設定手段としてはS43,S47,S50及びS53の処理が、図15に示すフローチャート(補正方法決定処理)において、請求項1記載の特定地点取得処理としてはS101からS104の処理が、車両状態判断処理としてはS105からS119の処理が、図16に示すフローチャート(第1補正処理)において、請求項3記載の補正手段としてはS84及びS87の処理が、図17に示すフローチャート(第2補正処理)において、請求項1記載の維持手段としてはS92及びS93の処理が、図19に示すフローチャート(第2補正処理)において、請求項1記載の維持手段としてはS264及びS265の処理が、図21に示すフローチャート(第2補正処理)において、請求項1記載の維持手段としてはS364及びS365の処理が、それぞれ該当する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記各実施の形態で説明した第1キャンバ角および第2キャンバ角の値は任意に設定することができる。
上記実施の形態では、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角をキャンバ角調整装置45により調整する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これに替えて又はこれに加えて、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角をキャンバ角調整装置45により調整することは当然可能である。
上記実施の形態では、第1状態および第2状態のいずれにおいても、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1状態または第2状態の一方のみにおいて、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置し、第1状態または第2状態の他方においては、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置しないように制御することは当然可能である。
上記実施の形態では、キャンバ角調整機構45が、アッパーアーム42と車体BFとの間に介装される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ロアアーム43と車体BFとの間にキャンバ角調整機構45を介装しても良い。
上記各実施の形態では、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角または第2キャンバ角に設定された後は、図17に示す第2補正処理を除き、第1補正処理または第2補正処理により補正が行われるまでの期間、ホイール部材93aへのRL,RRモータ91RL,91RRからの駆動力が解除される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、かかる期間においても、ホイール部材93aへRL,RRモータ91RL,91RRから駆動力が連続的または断続的に付与されるようにしても良い。
上記第2実施の形態における第2補正処理では、後輪2RL,2RRを懸架する懸架装置14におけるサスストローク量がストローク閾値以上となった場合に、対応するRL,RRモータ91RL,91RRのサーボロックをオンしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、前輪2FL,2FRを懸架する懸架装置4におけるサスストローク量が所定の閾値以上となった場合に、対応するRL,RRモータ91RL,91RR(例えば、右の前輪2FRにおけるサスストローク量が所定の閾値以上となったら、右の後輪2RRにおけるRRモータ91RR)のサーボロックをオンするようにしても良い。例えば、段差などの通過に伴い、前輪がサスストロークした場合には、次いで、後輪も段差を通過する可能性が高いので、このように前輪のサスストローク量に応じて、後輪側をサーボロックすることで、ホイール部材93aの回転規制を事前に行っておけるので、そのホイール部材93aの回転位置のずれをより確実に抑制できる。
上記第1実施の形態では、図15の補正方法決定処理において、車両1に所定のサスストロークを生じさせるかを判断する処理として、S105からS109の各処理を説明したが、これら各処理は例示であり、必ずしもこれに限られるものではない。よって、車両1に所定のサスストロークを生じさせるかを他の処理により判断することは当然可能である。
他の処理としては、例えば、ナビゲーション装置86やカメラ装置87により信号機を検出し、信号機が走行予定経路またはその沿道に存在すると判断される場合に、第2補正処理(S121)を実行する処理が例示される。信号機の存在により、車両1が減速される可能性が高いからである。
なお、この場合には、カメラ装置87により、信号機の指示内容を点灯色または点灯状態から把握し、黄色の点灯による停止または赤色の点灯による進行不可のいずれか一方が指示されていると把握される場合には、第2補正処理(S121)を実行する一方、青色の点灯による通行許可が指示されていると把握される場合には、第1補正処理(S120)を実行するように構成しても良い。車輪2のキャンバ角が所定角度から変化することを抑制しつつ、消費エネルギーの低減を図ることができる。
上記各実施の形態では、レーダ装置88として、ミリ波レーダを使用する装置を例に説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他のレーダ装置によりレーダ装置88を構成することは当然可能である。他のレーダ装置としては、例えば、レーザレーダを使用するレーダ装置、超音波センサを使用するレーダ装置、赤外線センサを使用するレーダ装置が例示される。
上記第1実施の形態では、図15の補正方法決定処理において、S105からS119の各処理を判断する際に、これら各処理の条件に、S101からS104の処理において取得された情報の内のいずれか1の情報が適合すれば、条件を満たしていると判断する(即ち、各処理を「Yes」と判断して第2補正処理(S121)を実行する)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、S105からS119の各処理に対し、その判断にS101からS104の処理において取得されたいずれの情報から使用するかの順序(優先順位)を設けても良い。各処理の判断に適した情報を使用することで、その判断精度の向上を図ることができる。
上記各実施の形態では、請求項に記載の情報記憶手段の一例として、ナビゲーション装置86を例示した。上述したように、ナビゲーション装置86自体が情報記憶部を備えている必要はなく、記憶媒体から各種情報を取得する情報読取部またはサーバ等から各種情報を取得する情報通信部を備えていても良い。即ち、請求項に記載の情報記憶手段とは、外部に記憶された情報を取得できれば足りる趣旨であり、自身が情報を記憶していなくても良い。よって、例えば、VICS(登録商標)情報の受信装置も請求項に記載の情報記憶手段に含まれる。
以下に、本発明の車両用制御装置に加えて、上記実施の形態に含まれる各種発明の概念を示す。請求項1から4のいずれかに記載の車両用制御装置において、前記特定地点取得手段は、前記走行予定経路の道路形状が所定条件に合致する地点を前記特定地点として取得し、前記車両状態判断手段は、前記特定地点取得手段により前記特定地点が少なくとも取得された場合に、前記車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると判断することを特徴とする車両用制御装置A1。
車両用制御装置A1によれば、請求項1から4のいずれかに記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、特定地点取得手段は、走行予定経路の道路形状が所定条件に合致する地点を特定地点として取得し、車両状態判断手段は、特定地点取得手段により特定地点が少なくとも取得された場合に、車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると判断するので、ホイール部材の回転位置を第1回転位置に維持するための維持手段による制御を、道路形状が所定条件に合致する地点(即ち、その道路形状の走行に伴いサスペンションが大きくストロークしやすい地点)に車両が到達する前に確実に実行しておくことができるという効果がある。その結果、外力の作用により車輪のキャンバ角が所定のキャンバ角から変化することを抑制することができる。
車両用制御装置A1において、前記特定地点取得手段は、前記走行予定経路における道路に段差が存在する地点を前記特定地点として取得する段差路取得手段を備え、前記車両状態判断手段は、前記段差路取得手段により取得された前記特定地点の段差が所定高さを超える場合に、前記車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると判断することを特徴とする車両用制御装置A2。
車両用制御装置A2によれば、車両用制御装置A1の奏する効果に加え、特定地点取得手段は、走行予定経路における道路に段差が存在する地点を特定地点として取得する段差路取得手段を備え、車両状態判断手段は、段差路取得手段により取得された特定地点の段差が所定高さを超える場合に、車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると判断するので、ホイール部材の回転位置を第1回転位置に維持するための維持手段による制御を、車両のサスペンションが大きくストロークしやすい段差に車両が到達する前に確実に実行しておくことができるという効果がある。その結果、外力の作用により車輪のキャンバ角が所定のキャンバ角から変化することを抑制することができる。
一方で、車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると車両状態判断手段により判断される(即ち、維持手段による制御が実行される)のは、段差路取得手段により取得された特定地点の段差が所定高さを超える場合なので、段差が低く車両のサスペンションストロークが小さい場合に維持手段による制御が不必要に実行されることを抑制して、消費エネルギーの低減を図ることができるという効果がある。
車両用制御装置A1又はA2において、前記特定地点取得手段は、前記走行予定経路における道路に傾斜が存在する地点を前記特定地点として取得する傾斜路取得手段を備え、前記車両状態判断手段は、前記傾斜路取得手段により取得された前記特定地点の傾斜が所定角度を超える場合に、前記車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると判断することを特徴とする車両用制御装置A3。
車両用制御装置A3によれば、車両用制御装置A1又はA2の奏する効果に加え、特定地点取得手段は、走行予定経路における道路に傾斜が存在する地点を特定地点として取得する傾斜路取得手段を備え、車両状態判断手段は、傾斜路取得手段により取得された特定地点の傾斜が所定角度を超える場合に、車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると判断するので(即ち、道路が傾斜していると、下降傾斜側(車両の重心よりも下側)のサスペンションは短縮される一方、上昇傾斜側(車両の重心よりも上側)のサスペンションは伸長される)、ホイール部材の回転位置を第1回転位置に維持するための維持手段による制御を、車両のサスペンションが大きくストロークしやすい傾斜に到達する前に確実に実行しておくことができるという効果がある。その結果、外力の作用により車輪のキャンバ角が所定のキャンバ角から変化することを抑制することができる。
一方で、車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると車両状態判断手段により判断される(即ち、維持手段による制御が実行される)のは、傾斜路取得手段により取得された特定地点の傾斜が所定角度を超える場合なので、傾斜角度が緩やかで車両のサスペンションストロークが小さい場合に維持手段による制御が不必要に実行されることを抑制して、消費エネルギーの低減を図ることができるという効果がある。
車両用制御装置A1からA3のいずれかにおいて、前記特定地点取得手段は、前記走行予定経路における道路にカーブが存在する地点を前記特定地点として取得するカーブ路取得手段を備え、前記車両状態判断手段は、前記カーブ路取得手段により取得された前記特定地点のカーブが所定半径よりも小さい場合に、前記車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると判断することを特徴とする車両用制御装置A4。
車両用制御装置A4によれば、車両用制御装置A1からA3のいずれかの奏する効果に加え、特定地点取得手段は、走行予定経路における道路にカーブが存在する地点を特定地点として取得するカーブ路取得手段を備え、車両状態判断手段は、カーブ路取得手段により取得された特定地点のカーブが所定半径よりも小さい場合に、車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると判断するので(即ち、旋回時のロールに伴い、旋回外輪側のサスペンションは短縮される一方、旋回内輪側のサスペンションは伸長される)、ホイール部材の回転位置を第1回転位置に維持するための維持手段による制御を、車両のサスペンションが大きくストロークしやすいカーブに到達する前に確実に実行しておくことができるという効果がある。その結果、外力の作用により車輪のキャンバ角が所定のキャンバ角から変化することを抑制することができる。
一方で、車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると車両状態判断手段により判断される(即ち、維持手段による制御が実行される)のは、カーブ路取得手段により取得された特定地点のカーブが所定半径よりも小さい場合なので、旋回半径が大きく車両のサスペンションストロークが小さい場合に維持手段による制御が不必要に実行されることを抑制して、消費エネルギーの低減を図ることができるという効果がある。
車両用制御装置A4において、前記車両の走行速度を取得する車速取得手段を備え、前記車両状態判断手段は、前記車速取得手段により取得された前記車両の走行速度と、前記カーブ路取得手段により取得された前記特定地点のカーブにおける半径とに基づいて、前記車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があるかを判断することを特徴とする車両用制御装置A5。
車両用制御装置A5によれば、車両用制御装置A4の奏する効果に加え、車両の走行速度を取得する車速取得手段を備え、車両状態判断手段は、車速取得手段により取得された車両の走行速度と、カーブ路取得手段により取得された特定地点のカーブにおける半径とに基づいて、車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があるかを判断するので、車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があるか否かの判断をより正確に行うことができるという効果がある。
即ち、カーブの半径が小さくても、車両の走行速度が低速であれば、車両はロールし難く、サスペンションストロークは小さい一方、カーブの半径が大きくても、車両の走行速度が高速であれば、車両はロールし易く、サスペンションストロークは大きくなるところ、車両用制御装置A5のように、車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があるかの判断を、カーブの半径と車両の走行速度とに基づいて行うことで、かかる判断をより正確に行うことができる。その結果、外力の作用により車輪のキャンバ角が所定のキャンバ角から変化することの抑制と、消費エネルギーの低減との両立を図ることができる。
車両用制御装置A1からA5のいずれかにおいて、前記特定地点取得手段は、前記走行予定経路において前記車両を減速させる要因を有する地点を前記特定地点として取得し、前記車両状態判断手段は、前記特定地点取得手段により前記特定地点が少なくとも取得された場合に、前記車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると判断することを特徴とする車両用制御装置A6。
車両用制御装置A6によれば、車両用制御装置A1からA5のいずれかの奏する効果に加え、特定地点取得手段は、走行予定経路において車両を減速させる要因を有する地点を特定地点として取得し、車両状態判断手段は、特定地点取得手段により特定地点が少なくとも取得された場合に、車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると判断するので(即ち、減速時のピッチングに伴い、進行方向前方側のサスペンションは短縮される一方、進行方向後方側のサスペンションは伸長される)、ホイール部材の回転位置を第1回転位置に維持するための維持手段による制御を、車両を減速させる要因を有する地点に車両が到達する前に確実に実行しておくことができるという効果がある。その結果、外力の作用により車輪のキャンバ角が所定のキャンバ角から変化することを抑制することができる。
車両用制御装置A6において、前記特定地点取得手段は、前記走行予定経路に特定物が存在する地点を前記特定地点として取得する特定物取得手段を備え、前記車両状態判断手段は、前記特定物取得手段により前記特定物が少なくとも取得された場合に、前記車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると判断することを特徴とする車両用制御装置A7。
車両用制御装置A7によれば、車両用制御装置A6の奏する効果に加え、特定地点取得手段は、走行予定経路における特定物が存在する地点を特定地点として取得する特定物取得手段を備え、車両状態判断手段は、特定物取得手段により特定物が取得された場合に、車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると判断するので、ホイール部材の回転位置を第1回転位置に維持するための維持手段による制御を、車両のサスペンションが大きくストロークしやすい特定位置に到達する前に確実に実行しておくことができるという効果がある。その結果、外力の作用により車輪のキャンバ角が所定のキャンバ角から変化することを抑制することができる。
一方で、車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると車両状態判断手段により判断される(即ち、維持手段による制御が実行される)のは、特定物取得手段により特定物が取得された場合なので、車両のサスペンションストロークが小さい場合に維持手段による制御が不必要に実行されることを抑制して、消費エネルギーの低減を図ることができるという効果がある。
ここで、車両用制御装置A7において、特定物としては、例えば、歩行者や自転車で走行する者、標識(警戒標識や規制標識など)、信号、横断歩道が例示される。なお、これら特定物が走行予定経路に存在する場合、車両は、歩行者等との接触を回避するため、或いは、特定物に示された情報に基づいて、減速される可能性が高く、かつ、その減速度も大きい可能性が高い。よって、特定物が存在する場合に、事前に維持制御を実行することは、車輪のキャンバ角の変化を抑制する点で有効となる。
車両用制御装置A1からA7のいずれかにおいて、前記特定地点取得手段は、前記走行予定経路において高速道路へ合流または高速道路から分岐する地点を前記特定地点として取得し、前記車両状態判断手段は、前記特定地点取得手段により前記特定地点が少なくとも取得された場合に、前記車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると判断することを特徴とする車両用制御装置A8。
車両用制御装置A8によれば、車両用制御装置A1からA7のいずれかの奏する効果に加え、特定地点取得手段は、走行予定経路において高速道路へ合流または高速道路から分岐する地点を特定地点として取得し、車両状態判断手段は、特定地点取得手段により特定地点が少なくとも取得された場合に、車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると判断するので(即ち、高速道路へ合流する際の加速に伴い、進行方向前方側のサスペンションが伸長される一方、進行方向後方側のサスペンションが短縮される、或いは、高速道路から分岐する際の減速に伴い、進行方向前方側のサスペンションが短縮される一方、進行方向後方側のサスペンションが伸長される)、ホイール部材の回転位置を第1回転位置に維持するための維持手段による制御を、車両のサスペンションが大きくストロークしやすい特定位置に到達する前に確実に実行しておくことができるという効果がある。その結果、外力の作用により車輪のキャンバ角が所定のキャンバ角から変化することを抑制することができる。
一方で、車両に所定のサスペンションストロークを生じさせる可能性があると車両状態判断手段により判断される(即ち、維持手段による制御が実行される)のは、特定地点取得手段により特定地点が取得された場合なので、車両のサスペンションストロークが小さい場合に維持手段による制御が不必要に実行されることを抑制して、消費エネルギーの低減を図ることができるという効果がある。
車両用制御装置A1からA8のいずれかにおいて、前記維持手段は、前記ホイール部材の回転を規制する回転規制手段を備え、その回転規制手段により前記ホイール部材の回転を規制することを特徴とする車両用制御装置A9。
車両用制御装置A9によれば、車両用制御装置A1からA8のいずれかの奏する効果に加え、維持手段は、ホイール部材の回転を規制する回転規制手段を備え、その回転規制手段によりホイール部材の回転を規制する。これにより、車輪から第1サスペンションアームを介して回転駆動手段に入力された外力に対して、ホイール部材を回転し難くできるので、車輪のキャンバ角が所定のキャンバ角から変化することを抑制できるという効果がある。
車両用制御装置A9おいて、前記回転駆動手段は、サーボモータとして構成され、前記回転規制手段は、前記サーボモータをサーボロック状態とすることで、前記ホイール部材の回転を規制することを特徴とする車両用制御装置A10。
車両用制御装置A10によれば、車両用制御装置A9の奏する効果に加え、回転駆動手段がサーボモータとして構成され、回転規制手段は、サーボモータをサーボロック状態とすることで、ホイール部材の回転を規制するので、高応答性を得ることができる。よって、指令を受けてからホイール部材の回転を規制するまでの応答時間を短縮することができるので、車輪のキャンバ角の変化をより確実に抑制することができるという効果がある。
また、回転規制手段は、サーボモータをサーボロック状態とすることで、ホイール部材の回転を規制するので、回転駆動手段に、ホイール部材を回転させるためのアクチュエータとしての役割と、ホイール部材の回転を規制するためのアクチュエータとしての役割とを兼用させることができる。即ち、既存の回転駆動手段を利用して、ホイール部材の回転を規制することができるので、ホイール部材の回転を規制するための他の構成(例えば、機械的なブレーキ装置など)を別途設けることを不要として、製品コストの低減と軽量化とを図ることができるという効果がある。
なお、図17に示すフローチャート(第2補正処理)において、車両用制御装置A9の回転規制手段としてはS92及びS93の処理が、図19に示すフローチャート(第2補正処理)において、車両用制御装置A2の回転規制手段としてはS264及びS265の処理が、図21に示すフローチャート(第2補正処理)において、車両用制御装置A9の回転規制手段としてはS364及びS365の処理が、それぞれ該当する。