JP5673252B2 - 樹脂モールドコイル - Google Patents

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本発明は、モールド変圧器,計器用変圧器(PT),計器用変流器(CT)などの電気機器に適用される樹脂モールドコイルに関するものである。
(イ)周知のようにモールド変圧器は、巻線導体などの通電部をエポキシ樹脂(難燃性の絶縁樹脂)などの固体絶縁材料でモールドして構成するものであり、昨今では環境、防災面から屋内の高圧受配電設備などに設置する特別高圧級の変圧器としても多く採用されている。
モールド変圧器に適用される従来の樹脂モールドコイルの構成例を図10に示す。図10において、51は一次側(高圧側)の樹脂モールドコイル、1はコイル軸方向に複数個配列されたセクションコイル(以下「単位コイル」とも称する)、3はエポキシ樹脂などの樹脂モールド層、7は樹脂モールド層3から外部に引出したリード端子であり、樹脂モールドコイル51は全体が略円筒形の形状になり、一次側(高圧側)コイルと同様な樹脂モールド構造の二次側(低圧側)コイル,鉄心と組み合わせてモールド変圧器を構成している。この樹脂モールドコイル51においては、各セクションコイル1,およびリード端子7に通じるリード線8が、樹脂モールド層3,および該樹脂モールド層3の周面から側方に突き出して一体成形したブッシング部3aで囲われており、樹脂モールド層3が、各セクションコイル1を直列接続してなる巻線部に印加される高電圧の対地絶縁を分担している。なお、この樹脂モールドコイル51の大きさは変圧器の容量にもよるが、大電力を変換するための大容量のモールド変圧器では、高さが1m以上であって、質量が100Kgを超えるものもある。
(ロ)樹脂モールドコイルにおけるモールド用の固体絶縁材料としては、通常エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられる。エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂自体は固体絶縁材料として高い絶縁耐力を有しているが、樹脂モールドコイルを作製する際のモールド工程では、成形後の樹脂モールドコイルの内部にボイド(以下「微小空隙」とも称する)が残存していると、巻線部に高電圧を印加した際に樹脂モールド層内に部分放電が発生して絶縁性能が低下する原因となる。なお、特に大容量のモールド変圧器では、樹脂モールドコイルにおける樹脂内部の巻線部も大形で大質量となることにより、樹脂モールドコイルを作製する際のモールド前の段階で金型に対して巻線部の質量を支えておくための支持絶縁部材、例えばコイル軸方向に複数個配列される各セクションコイル間に介装する支持絶縁部材などが必要であり、支持絶縁部材も含めてモールドすることになる。このような場合、巻線部と支持絶縁部材と間の狭い隙間には樹脂が侵入しにくいことによりボイドが残存し易いため、絶縁欠陥がより生じ易くなる。
このように、ボイドによって生じる主要な障害としては上述のように部分放電があり、部分放電による化学的な反応によって絶縁物の劣化が進行するので、部分放電の発生の要因となるボイドの生成を抑止することは、例えばモールド変圧器などの電気機器の信頼性上極めて重要である。
このため、樹脂モールドコイルの作製の際、通常は真空成形法により巻線導体を巻回した各セクションコイルの内部、および樹脂モールド層内にボイドが生じないように細心の注意を払って成形を行うようにしている。
(ハ)なお、特に大容量のモールド変圧器では、上述のように絶縁欠陥であるボイドがより生じ易いことも考慮し、絶縁構造として十分な絶縁距離の空気絶縁部分を設け、樹脂モールド層の固体絶縁部分よりも空気絶縁部分の方に、より大きな電圧を分担させるように構成する場合もある。このような、空気絶縁部分に主として電圧を分担させる絶縁構造では、固体絶縁部分の内部におけるボイドなどの絶縁欠陥に起因する部分放電が生じにくく、例えばエポキシ樹脂などの固体絶縁物の経年劣化が少ないという利点がある。
しかしながら、空気の絶縁耐力は固体絶縁物のそれに比べて一桁以上小さいため、空気絶縁部分において大きな絶縁距離を要する。絶縁耐力の代表的な値としては、1cm当たりの絶縁破壊電圧は、空気では約30kVであるのに対して、エポキシ樹脂では約400kV程度の値が短時間の絶縁破壊電圧となる。ただし、エポキシ樹脂内部にボイドやクラック、電極面との界面の剥離、局部的な電界集中などがあると、部分放電は10kV程度でも生じてしまい、これにより長時間の使用電圧は低い限界値に抑えられる。
(ニ)一方、固体絶縁物に主として電圧を分担させる高電圧機器としては例えば次のようなものがある。
(a)まず、高圧回転機のコイル絶縁はマイカなどの無機絶縁物をエポキシ樹脂などの有機絶縁物で固定した構造となっており、元々酸化物である無機絶縁物は部分放電が発生しても化学的な反応を生じないため長い寿命を有する。
(b)また、GIS(ガス絶縁開閉装置)の絶縁スペーサでは絶縁物としてエポキシ樹脂が用いられる。高電圧側の電極と接地側の電極とが所定の距離を隔てて対向した構造の絶縁スペーサでは、エポキシ樹脂の注型時に電極は金型の外部から堅固に支持することができるので、電極間には注型される樹脂以外の部材は介在しない。このため、電極の表面と樹脂との接着性を向上させる処理により剥離を防止すること、電極を電界の集中しない形状とすること、および樹脂の注型を真空中で行い泡の混入を防止することにより、部分放電の発生の要因となるボイドなど絶縁欠陥の生成を比較的容易に抑止することができる。
(ホ)このように、固体絶縁構造の信頼性を向上させる上では、例えば、部分放電が生じたときに劣化しない絶縁材料を使用すること、固体絶縁物の内部においてボイドやクラック、電極面との界面の剥離、局部的な電界集中などの絶縁欠陥を生じないように製作することなどが有効かつ重要な対策となっている。この点において、モールド変圧器などに適用される樹脂モールドコイルの場合には、コイルの巻線部が樹脂内部に埋め込まれる構造であるため、上述のように樹脂の注型時に巻線部が金型に対して支持絶縁部材を介して支持されることになり、支持絶縁部材と注型樹脂との界面には絶縁欠陥ができやすい。
( ヘ)次に、コイル用巻線導体の端部は電界集中を招きやすいため、これを緩和するためのシールドが必要となる。特にコイル用巻線導体として箔導体を用いる場合、箔導体の断面形状としてその端部には箔の厚さ以上の丸みを持たせることはできないため、箔導体をドーナツ状(パンケーキ状)に巻回したコイルの外周側および内周側の角部にはほぼ直角のエッジが存在することになる。よく知られているように、導体部に直角のエッジがある場合、その部分の電界は理論的には無限大となる。この電界は工学的にはある程度の有限な電界となるが、印加電圧をギャップ長で割った値である平均電界に比べ、例えば10倍以上の電界集中を招くことになる。このため、箔導体をドーナツ状に巻回したコイルでは、そのコイルの外周側および内周側の角部における電界集中を緩和するシールド構造を設ける必要がある。
(ト)モールド変圧器に適用される樹脂モールドコイルにおけるシールド構成の従来例を以下に示す。
(a)シールド構成の従来例1:
例えば特許文献1には、モールド変圧器の一次コイルと二次コイルとの間に介在させる埋め込みシールドの例として、コイルと同軸に設ける筒状シールド部の軸方向両端部に例えば断面円弧状に膨出するコロナリング(以下「環状シールド部」とも称する)を設けて、筒状シールド部の軸方向両端部における丸め処理を行なうことにより、筒状シールド部の軸方向両端部でのエッジ部分によるコロナ放電(部分放電)の発生を抑止するようにしたシールド構成が示されている。また、特許文献1には、上記シールド構成により高圧の二次コイルの角部(特許文献1の図9(3)に示される二次コイル2の軸方向両端の角部)に対するシールド効果が奏されることも述べられている。
図11は、従来の樹脂モールドコイルの異なる構成例を示す模式図であって、特許文献1に記載のシールド構成を、複数個のセクションコイルからなる巻線部を備えた樹脂モールドコイルに適用した場合の構成を示している。すなわち、図11に示す樹脂モールドコイル52において、複数個のセクションコイル1(S1〜S4)を軸方向に配列した巻線部が樹脂モールド層3でモールドされているとともに、上記巻線部の内周側および外周側にそれぞれ筒状シールド部2が同軸に配設され、筒状シールド部2の軸方向両端部には例えば断面円弧状に膨出する環状シールド部2aが設けられている。なお、図11では図示していないが、複数個のセクションコイル1(S1〜S4)は直列接続されている。
なお、例えばGIS(ガス絶縁開閉装置)などにおける断路部の電極,高圧導体を絶縁支持する樹脂モールド形のブッシング、絶縁スペーサとして、棒状の電極,高圧導体を包囲したモールド樹脂層内の表面近くに接地電位のシールド部材を埋設して電界緩和を図るように構成したものが従来から製作されているが、このようなGIS用のブッシング,絶縁スペーサにおける埋め込みシールドにも、上述のような端部の丸め処理が従来から施されている。
(b)シールド構成の従来例2:
例えば特許文献2には、モールド変圧器の例えば高圧コイルに設けられる埋め込みシールドの例として、軸方向に複数個配列して直列接続された各セクションコイル毎にセクションコイルを個別に囲う静電シールドを設けて、絶縁欠陥の生じ易いセクションコイルの表面付近の電界を緩和するようにしたシールド構造が示されている。
図12は、従来の樹脂モールドコイルのさらに異なる構成例を示す模式図であって、特許文献2に記載のシールド構成を適用した樹脂モールドコイルの構成を示している。すなわち、図12に示す樹脂モールドコイル53において、複数個のセクションコイル1(S1〜S4)を軸方向に配列した巻線部が樹脂モールド層3でモールドされているとともに、複数個のセクションコイル1毎に、各セクションコイル1をそれぞれ個別に囲うように形成されたシールド4が設けられている。なお、図12では図示していないが、複数個のセクションコイル1(S1〜S4)は直列接続されている。
なお、特許文献2と同様な、軸方向に配列された複数のセクションコイルを個別に囲うシールドを設けたシールド構造は特許文献3にも示されている。
特開2004−335696号公報 特開2007−149944号公報 特開2010−251543号公報
(課題1)
(イ)本課題は『軸方向に配列されたセクションコイルに対する電界緩和』に関するものである。
(ロ)上述の図11において、特許文献1に記載のシールド構成を、複数のセクションコイルからなる巻線部を備えた樹脂モールドコイルに適用した場合の構成を示したが、このような構成では、樹脂モールドコイル52の巻線部における軸方向上下端のセクションコイルS1,S4については十分な電界緩和ができるが、軸方向中間部のセクションコイルS2,S3については電界緩和の効果が低く十分ではない。
(課題2)
(イ)本課題は『セクションコイル間の渡り導体に対する電界緩和』などに関するものである。
(ロ)例えば上述の図11〜図12に示したような、巻線導体を巻回したセクションコイルを複数個軸方向に配列して直列接続してなる巻線部を備えた樹脂モールドコイルにおいて、セクションコイル間を渡り接続する方式としては、図13に示す“N”接続と“U”接続とがある。図13は、樹脂モールドコイルにおける箔巻きセクションコイル間の接続方式を示す模式断面図であって、箔導体を巻回したセクションコイル間の渡り接続方式を示すものであり、図13(a)が“N”接続を示し、図13(b)が“U”接続を示している。これらの接続方式では、いずれもセクションコイル間の渡り部分に絶縁上の弱点が存在する。なお、図13(a),図13(b)は、それぞれ円筒型の樹脂モールドコイル54,55の中心軸を含む断面の片側部分を示しており、図13(a),図13(b)の左側は円筒型の樹脂モールドコイル54,55の内周側、右側は同じく外周側である。
(ハ)以下、図13に示した接続方式について説明する。セクションコイルS1〜S4からなる巻線部において、“N”接続では、図13(a)に示すように、セクションコイルS1からセクションコイルS2への渡り接続としては、セクションコイルS1の最も内径側に位置する最内径側導体部S1bからセクションコイルS2の最も外径側に位置する最外径側導体部S2aへと接続される。セクションコイルS2からセクションコイルS3への渡り接続、セクションコイルS3からセクションコイルS4への渡り接続もセクションコイルS1からセクションコイルS2への渡り接続と同様である。このように、図13(a)に示される“N”接続では、全ての渡り接続部において、当該セクションコイルの最内径側導体部から次のセクションコイルの最外径側導体部へと接続される。そして、各セクションコイル内で巻回される巻線導体を「〜」で示すとともにセクションコイル間の渡り導体を「=」で示す場合、図13(a)に示される“N”接続方式は、S1a〜S1b=S2a〜S2b=S3a〜S3b=S4a〜S4bと表わすことができる。
なお、“N”接続方式としては、図13(a)に示した構成とは逆に、全ての渡り接続部において、当該セクションコイルの最外径側導体部から次のセクションコイルの最内径側導体部へと接続される構成、すなわち、S1b〜S1a=S2b〜S2a=S3b〜S3a=S4b〜S4aなる構成とすることもできる。
(ニ)一方、“U”接続では、図13(b)に示すように、セクションコイルS1からセクションコイルS2への渡り接続としては、セクションコイルS1の最内径側導体部S1bからセクションコイルS2の最内径側導体部S2bへと接続される。また、セクションコイルS2からセクションコイルS3への渡り接続としては、セクションコイルS2の最外径側導体部S2aからセクションコイルS3の最外径側導体部S3aへと接続される。そして、セクションコイルS3からセクションコイルS4への渡り接続は、セクションコイルS1からセクションコイルS2への渡り接続と同様に行なわれる。このように、図13(b)に示される“U”接続では、奇数番目のセクションコイルから次の偶数番目のセクションコイルへの渡り接続では、奇数番目の該セクションコイルの最内径側導体部から次の偶数番目のセクションコイルの最内径側導体部へと接続されるとともに、偶数番目のセクションコイルから次の奇数番目のセクションコイルへの渡り接続では、偶数番目の該セクションコイルの最外径側導体部から次の奇数番目のセクションコイルの最外径側導体部へと接続される。そして、各セクションコイル内で巻回される巻線導体を「〜」で示すとともにセクションコイル間の渡り導体を「=」で示す場合、図13(b)に示される“U”接続方式は、S1a〜S1b=S2b〜S2a=S3a〜S3b=S4b〜S4aと表わすことができる。
なお、“U”接続としては、図13(b)に示した構成とは逆に、奇数番目のセクションコイルから次の偶数番目のセクションコイルへの渡り接続では、奇数番目の該セクションコイルの最外径側導体部から次の偶数番目のセクションコイルの最外径側導体部へと接続されるとともに、偶数番目のセクションコイルから次の奇数番目のセクションコイルへの渡り接続では、偶数番目の該セクションコイルの最内径側導体部から次の奇数番目のセクションコイルの最内径側導体部へと接続される構成、すなわち、S1b〜S1a=S2a〜S2b=S3b〜S3a=S4a〜S4bなる構成とすることもできる。
(ホ)通常のモールド変圧器に適用される樹脂モールドコイルにおいては、巻き線パターンとして各セクションコイル毎に反復性のある“N”接続が主に用いられている。この理由としては以下の2点が挙げられる。
(a)巻き線機を用いて巻き線を行う場合には、“N”接続においては、すべてのセクションコイルの巻き線が同一の巻き方向であるため設備の簡略化を図ることができるという利点がある。一方、“U”接続においては、例えばセクションコイルS1,S3の巻き方向がコイル軸方向の上側から見て「右巻き」方向である場合、セクションコイルS2,S4の巻き方向はコイル軸方向の上側から見て「左巻き」方向であって、セクションコイルS1,S3の巻き方向とは逆方向となる。このように、“U”接続においては、例えばセクションコイルS1→セクションコイルS2→セクションコイルS3→セクションコイルS4と巻き進む場合、セクションコイルごとに逆方向の巻き線を必要とするため、セクションコイルごとに巻き線機の巻き線方向を逆転させる処理が必要となる。
(b)また、セクションコイル間の絶縁を考慮すると、“N”接続では、図13(a)における軸方向で対向する導体部S1aと導体部S2aとの間の電圧差は、導体部S1bとS2bとの間の電圧差と同じであり、セクションコイル単位の巻き数(ターン数)に応じた電圧となるのに対して、“U”接続では、図13(b)における軸方向で対向する導体部S1aとS2aとの間の電圧差はセクションコイル単位の巻き数(ターン数)の2倍に相当する電圧となり、絶縁的に不利であるとされている。
(ヘ)一方、“N”接続の絶縁構造では、セクションコイル間の渡り導体が内周側から外周側,または,外周側から内周側に引き回されることにより、図13(a)において矢印g1,g2で示されるように渡り導体とセクションコイルとの間の絶縁距離が“U”接続の絶縁構造より小さくなる。このような渡り導体とセクションコイルとの間の絶縁ギャップg1,g2は、「楔型ギャップ」と呼ばれ、“N”接続に特有な絶縁上の弱点となる。このため、“N”接続方式を適用した実際の製品では、引き回される渡り導体を適正な形状に調整することなどにより絶縁上の問題が生じないように製造している。
(ト)また、セクションコイルの巻線導体が箔導体のような薄い導体からなる場合、渡り導体もほぼ直角のエッジが存在するような端部を有する導体となることにより、その部分での電界集中が生じるため、絶縁的に弱点となるが、この弱点は“N”接続および“U”接続に共通する弱点である。
(チ)このように、セクションコイル間の渡り部分には絶縁上の弱点が存在し、この渡り部分でも電界緩和を行う必要がある。
(課題3)
(イ)本課題は『電界緩和シールドの製造工数』に関するものである。
(ロ)特許文献2に記載のシールド構成では、上述の図12に示すように、セクションコイル1毎に矩形断面を持つドーナツ型のシールド4がセクションコイル1の全面、すなわち内周面,外周面および軸方向両端面の全てを囲うように設けられる構成となっているため、以下に述べるような製造上の問題点がある。
(a)例えば通常の樹脂モールド変圧器に適用される樹脂モールドコイルの場合、図12におけるシールド4のドーナツ型構造は、その直径が数10cm以上となる。このようなドーナツ型構造の直径が数10cm以上あるものを、あらかじめドーナツ型に成型することはできないため、順次、内周面の円筒部、外周面の円筒部、軸方向両端面の円板部を組み上げていくことになるので、シールド4の構造は極めて複雑になるとともにその製作には多大な製造工数を要することになる。
(b)また、特にモールド変圧器に適用される樹脂モールドコイルの場合、シールド4のリング状部には1ターン短絡を防ぐためのスリット(以下では「切れ目」または「縁切り」とも称する)を設けて周方向の一部が電気的に絶縁されるようにしておくことが必要であるが、このようなスリットを設ける場合、シールド4の構造は更に複雑になるとともにその製造工数も更に多くなる。
(課題4)
(イ)本課題は『渡り導体の引き出し部でのエッジ発生』に関するものである。
(ロ)特許文献2に記載のシールド構造では、上述の図12に示すように、セクションコイル1毎に矩形断面を持つドーナツ型のシールド4がセクションコイル1の全面、すなわち内周面,外周面および軸方向両端面の全てを囲うように設けられる構成となっているが、この場合、特にセクションコイル1の内周面および外周面がシールド4に導電接続されない構成では、セクションコイル1間で渡り接続していく上で、ドーナツ型のシールド4の一部に切り込みを入れて渡り導体を引き出す必要があり、その切り込み部においてエッジが生じ、このエッジでの電界集中が問題となる。
(課題5)
(イ)本課題は『インパルス電圧印加時のコイル・シールド間電位差』に関するものである。
(ロ)上述の図12の樹脂モールドコイル53では、その具体的なシールド構成を、例えば図14のような構成とする場合がある。図14は、U接続を適用した従来の樹脂モールドコイルの構成例における各部の電位を示す模式断面図であって、図12の樹脂モールドコイル53におけるシールド構成の具体例を示すものであり、例えば特許文献3に開示されているものである。図14の左側は筒型の樹脂モールドコイル56の内周側、右側は同じく外周側である。図14において、巻線導体として箔導体を巻回したセクションコイルS1〜S4をそれぞれ個別に囲うように形成されるシールドE1〜E4は、高抵抗を有するシールド層として形成されたものであって、セクションコイルS1〜S4とはそれぞれセクションコイルS1〜S4の内周面および外周面で導電接続されるとともにセクションコイルS1〜S4の軸方向両端面では電気的に非接続とされており、シールドE1〜E4とセクションコイルS1〜S4の軸方向両端面との間隔にはモールド樹脂が充填されている。
このような図14に示されるシールド構成では、シールドE1〜E4が高抵抗を有するシールド層として形成されていることにより、シールドE1〜E4のコイル軸方向両端の端面部では、コイル半径方向に沿って高抵抗により電位が分担される。
そして、図14に示すように、コイル始端(セクションコイルS1の最外径側導体部S1a)およびコイル終端(セクションコイルS4の最外径側導体部S4a)の電位をそれぞれV,0とした場合、渡り導体T1,T2,T3の電位はそれぞれ3V/4,V/2,V/4となる。また、シールドE1のコイル始端側,渡り導体T1側の各端部の電位はそれぞれV,3V/4であり、シールドE2の渡り導体T1側,渡り導体T2側の各端部の電位はそれぞれ3V/4,V/2であり、シールドE3の渡り導体T2側,渡り導体T3側の各端部の電位はそれぞれV/2,V/4であり、シールドE4の渡り導体T3側,コイル終端側の各端部の電位はそれぞれV/4,0となる。
ここで、シールドE1〜E4の電位については、シールドE1ではコイル始端側端部から渡り導体T1側端部にわたってV〜3V/4の範囲で電位分担され、シールドE2では渡り導体T1側端部から渡り導体T2側端部にわたって3V/4〜V/2の範囲で電位分担され、シールドE3では渡り導体T2側端部から渡り導体T3側端部にわたってV/2〜V/4の範囲で電位分担され、シールドE4では渡り導体T3側端部からコイル終端側端部にわたってV/4〜0の範囲で電位分担される。また、商用周波数の正常な交流電圧が印加されている状態において、シールドE1〜E4の巻線導体はそれぞれターン数で電位分担する。これにより、例えばセクションコイルS1における各ターンの巻線導体の電位と、シールドE1における当該ターンの巻線導体の近くの部分の電位はほぼ等しくなる。
しかしながら、図14の樹脂モールドコイルでは、商用周波数の正常な交流電圧が印加されている状態においてはセクションコイルにおける各ターンの巻線導体とシールドにおける当該ターンの巻線導体の近くの部分との間で上述のように電位をほぼ一致させることができるとしても、インパルス電圧やサージ電圧に対してはシールドと巻線導体との間の電位差をなくすことはできない。すなわち、例えば雷インパルス電圧に対してはモールド変圧器自体でも急峻なインパルス電圧に対して強い絶縁構造としておくことが必要であり、その規格試験においてはインパルス電圧の印加が行なわれる。また、モールド変圧器が接続された電源回路における遮断動作やインバータ駆動によりサージ電圧が発生する。例えばモールド変圧器にインパルス電圧が印加された場合には、樹脂モールドコイルにおける巻線部の各ターンで分担される電圧は均等でなくなり、例えばコイル始端およびコイル終端をそれぞれ線路端および中性点端とすると、コイル始端に近いターンほどより大きな電圧を分担する不平等な電位分布パターンになるため、このような場合、セクションコイルにおける各ターンの巻線導体とシールドにおける当該ターンの巻線導体の近くの部分との間で大きな電位差が生じることになる。そして、このような大きな電位差が生じることは、セクションコイルとシールドとの間の絶縁を確保する上で問題となる。
(課題6)
(イ)本課題は『ボイド発生の防止』などに関するものである。
(ロ)上述の特許文献1〜3には示されていないが、樹脂モールドコイルの内部に設けられるシールドには、樹脂内部に埋め込まれる部材として特有な特性を備えたものであることが必要とされる。
(ハ)すなわち、樹脂内部のシールドとして金属材料からなるシールドを設けた場合、温度変化による樹脂の収縮,膨張に対し、樹脂と金属との線膨張率の差異により、樹脂とシールドとの間に隙間が発生し、この隙間は部分放電の発生要因であるボイドになる。このため、樹脂内部のシールドとしては、上述のような温度変化による樹脂の収縮,膨張に対してもボイドが発生しないような特性を備えたものとすることが必要である。
(本発明の目的)
このため、本発明は、巻線導体を巻回したセクションコイルを複数個軸方向に配列して直列接続してなる巻線部と、この巻線部をモールドする樹脂モールド層とを備えた樹脂モールドコイルにおいて、上述の課題を解決し、軸方向に配列された全てのセクションコイルの角部およびセクションコイル間の渡り導体についての電界緩和を可能とすること、更には電界緩和シールドと樹脂との隙間の発生をなくしボイドの生成を抑制できるようにすることなどを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明によれば、樹脂モールドコイルとして、巻線導体を巻回したセクションコイルを複数個軸方向に配列して直列接続してなる巻線部と、この巻線部をモールドする樹脂モールド層とを備えた樹脂モールドコイルにおいて、軸方向に隣接する2つのセクションコイルの内径側同士または外径側同士を互いに同電位となるように渡り導体で導電接続し、軸方向に隣接する2つのセクションコイルの同電位側に導電接続されるとともに両セクションコイルに跨るように構成された電界緩和シールドをそれぞれ設け、かつ、前記各電界緩和シールドはそれぞれ互いに独立させてなる構成とする(請求項1の発明)。
上記請求項1の発明によれば、軸方向に配列された全てのセクションコイルに対して共通の電界緩和シールドを設けるのではなく、軸方向に隣接する2つのセクションコイルの同電位側に導電接続される電界緩和シールドを両セクションコイルに跨るように設けるため、軸方向中間部のセクションコイルについても当該セクションコイルに対応して設けられた電界緩和シールドで電界緩和できるので、軸方向に配列された全てのセクションコイルの角部について電界緩和を行なうことができるようになる。このように、上記請求項1の発明によれば、『軸方向に配列されたセクションコイルに対する電界緩和』に関する上述の「課題1」を解決することができる。
また、上記請求項1の発明によれば、軸方向に隣接する2つのセクションコイルの内径側同士または外径側同士を互いに同電位となるように渡り導体で導電接続し、軸方向に隣接する2つのセクションコイルの同電位側に導電接続される電界緩和シールドを両セクションコイルに跨るように設けるため、セクションコイル間の渡り導体についても電界緩和を行なうことができるようになる。また、更に、上記請求項1の発明によれば、セクションコイル間の渡り接続方式として、軸方向に隣接する2つのセクションコイルの内径側同士または外径側同士を互いに同電位となるように渡り導体で導電接続する構成、すなわち図13(b)の“U”接続としているため、渡り導体とセクションコイルとの間の部分が絶縁上の弱点になることもない。このように、上記請求項1の発明によれば、『セクションコイル間の渡り導体に対する電界緩和』などに関する上述の「課題2」も解決することができる。なお、上述の課題2で述べたように、図13(b)に示す“U”接続は、図13(a)の“N”接続に比べて、セクションコイル間の電圧差という点では不利であるが、この点はセクションコイル間に十分な絶縁距離を確保することで対応可能である。
また、上記請求項1の発明によれば、電界緩和シールドを、セクションコイルの全面、すなわち内周面,外周面および軸方向の両端面の全てを囲う構造とするのではなく、軸方向に隣接する2つのセクションコイルの同電位側に導電接続されるとともに両セクションコイルに跨るように構成された各電界緩和シールドをそれぞれ互いに独立させているため、各セクションコイルにおける内径側の電界緩和シールドと外径側の電界緩和シールドとが互いに独立した構造となるので、各電界緩和シールドの構造は簡素なものとなり、電界緩和シールドの製造工数を少なくすることができるようになる。このように、上記請求項1の発明によれば、『電界緩和シールドの製造工数』に関する上述の「課題3」も解決することができる。
また、上記請求項1の発明によれば、軸方向に隣接する2つのセクションコイルの内径側同士または外径側同士を互いに同電位となるように渡り導体で導電接続し、軸方向に隣接する2つのセクションコイルの同電位側に導電接続される電界緩和シールドを両セクションコイルに跨るように設けるため、セクションコイルから渡り導体を引き出す上で、エッジ発生の点で問題となる切れ目を電界緩和シールドに設ける必要がなくなる。このように、上記請求項1の発明によれば、『渡り導体の引き出し部でのエッジ発生』に関する上述の「課題4」も解決することができる。
次に、上記請求項1に記載の樹脂モールドコイルにおいて、前記セクションコイルは、巻線導体として箔状の導体を巻回したものである構成とすることができる(請求項2の発明)。
上記請求項2の発明のように、セクションコイルが巻線導体として特に「箔状の導体」を巻回したものである場合、「箔状の導体」の断面形状としてその端部には箔の厚さ以上の丸みを持たせることはできないため、セクションコイルの外周側および内周側の角部にはほぼ直角のエッジが存在することになり、セクションコイルの外周側および内周側の角部での電界集中が特に大きくなるが、本発明によるシールド構成を適用することにより、上記の電界集中を効果的に緩和することができる。
また、請求項1または2に記載の樹脂モールドコイルにおいて、前記電界緩和シールドは、筒状シールド部のコイル軸方向両端に,セクションコイル側に向けて断面円弧状もしくは略円弧状に膨出する環状シールド部を設けたものである構成とすることができる(請求項3の発明)。
上記請求項3の発明によれば、電界緩和シールドの軸方向両端部が断面円弧状もしくは略円弧状に形成されるので、セクションコイル同士間の電界緩和が十分なものとなり、さらに樹脂モールド層の外表面に接地層が形成されている場合には接地層と電界緩和シールドとの間の電界緩和も十分なものとなり、モールド樹脂の絶縁劣化や絶縁破壊を的確に防止することができるようになる。
また、上記請求項3の発明によれば、上記請求項1の発明のように、軸方向に隣接する2つのセクションコイルの同電位側に導電接続されるとともに両セクションコイルに跨るように構成された各電界緩和シールドをそれぞれ互いに独立させ、各セクションコイルにおける内径側の電界緩和シールドと外径側の電界緩和シールドとが互いに独立した構造としていることに加えて、各電界緩和シールドは、筒状シールド部のコイル軸方向両端に,セクションコイル側に向けて断面円弧状もしくは略円弧状に膨出する環状シールド部を設けたものとしている。このため、電界緩和シールドを、セクションコイルの全面、すなわち内周面,外周面および軸方向の両端面の全てを囲う構造としたシールド構造とは異なり、上記請求項3の発明によるシールド構造は、セクションコイルの内径側から外径側にわたって連続してシールド層が形成された構成ではなく、セクションコイルにおける、内径側および外径側の各端部領域,すなわち上記環状シールド部が配設されるコイル半径方向領域を除く、コイル半径方向中間部のターンの巻線導体に対して軸方向で対向するシールド層は存在しない。また、セクションコイルにおける最内径側および最外径側のターンの巻線導体に対してはそれぞれ内周側および外周側の電界緩和シールドが導電接続されている。したがって、例えばインパルス電圧印加時に、樹脂モールドコイルにおける巻線部の各ターンで分担される電圧が均等でなくなり、コイル始端(線路端)に近いターンほどより大きな電圧を分担する不平等な電位分布パターンになった場合でも、図14の樹脂モールドコイルにおけるようなセクションコイルと電界緩和シールドとの間の電位差の問題は生じない。このように、上記請求項3の発明によれば、『インパルス電圧印加時のコイル・シールド間電位差』に関する上述の「課題5」も解決することができる。
また、請求項3に記載の樹脂モールドコイルにおいて、前記電界緩和シールドのコイル周方向の1箇所に前記筒状シールド部および前記環状シールド部の全体にわたってスリットを設けるとともに、前記筒状シールド部の前記スリットに面する両開放端をそれぞれ断面円弧状もしくは略円弧状に膨出する形状の端面に形成してなり、かつ、前記環状シールド部の前記スリットに面する両開放端をそれぞれ球面状もしくは略球面状に膨出する形状の端面に形成してなる構成とすることができる(請求項4の発明)。
上記請求項4の発明によれば、筒状シールド部のスリットに面する両開放端をそれぞれ断面円弧状もしくは略円弧状に膨出する形状の端面に形成していることにより、環状シールド部の開放端(縁切り部)でのエッジをなくすことができるとともに、環状シールド部のスリットに面する両開放端をそれぞれ球面状もしくは略球面状に膨出する形状の端面に形成していることにより、環状シールド部の開放端(縁切り部)でのエッジをなくすことができ、これにより、電界緩和シールドのスリットに面する開放端(縁切り部)での電界集中を十分に防ぐことができるようになる。
また、請求項3または4に記載の樹脂モールドコイルにおいて、前記筒状シールド部は、複数の貫通穴を有する金属板で形成してなる構成とすることができる(請求項5)。
上記請求項5の発明によれば、筒状シールド部を、複数の貫通穴を有する金属板で形成していることにより、電界緩和シールドは全体構造として可とう性の大きい(剛性の低い)ものとなるため、温度変化による樹脂の収縮,膨張に対して、樹脂と金属との線膨張率の差異による樹脂と電界緩和シールドとの間における隙間の発生を防止することができ、これによりボイドの生成を防ぐことができる。このように、上記請求項5の発明によれば、『ボイド発生の防止』などに関する上述の「課題6」を解決することができる。
また、請求項3または4に記載の樹脂モールドコイルにおいて、前記筒状シールド部は、金網で形成してなる構成とすることができる(請求項6)。
上記請求項6の発明によれば、筒状シールド部を、金網で形成していることにより、電界緩和シールドは全体構造として可とう性の大きい(剛性の低い)ものとなるため、温度変化による樹脂の収縮,膨張に対して、樹脂と金属との線膨張率の差異による樹脂と電界緩和シールドとの間における隙間の発生を防止することができ、これによりボイドの生成を防ぐことができる。このように、上記請求項6の発明によっても、『ボイド発生の防止』などに関する上述の「課題6」を解決することができる。
本発明によれば、軸方向に配列された全てのセクションコイルの角部およびセクションコイル間の渡り導体についての電界緩和が可能となり、更には電界緩和シールドと樹脂との隙間の発生をなくしボイドの生成を抑制できるようになる。
本発明の実施例1による樹脂モールドコイルの構成を示す模式断面図である。 本発明の実施例1による樹脂モールドコイルにおける各部の電位を示す模式断面図である。 本発明の実施例1による樹脂モールドコイルの一部の詳細構造を示す模式断面図である。 本発明の実施例1による樹脂モールドコイルの異なる一部の詳細構造を示す模式断面図である。 本発明の実施例1による樹脂モールドコイルにおける電界緩和シールドの構造を例示する模式図である。 本発明の実施例2による樹脂モールドコイルの構成を示す模式断面図である。 本発明の実施例2による樹脂モールドコイルにおける電界緩和シールドの構造を例示する模式図である。 本発明の実施例3による樹脂モールドコイルの構成を示す模式断面図である。 本発明の実施例3による樹脂モールドコイルにおける電界緩和シールドの構造を例示する模式図である。 従来の樹脂モールドコイルの構成例を示す模式図である。 従来の樹脂モールドコイルの異なる構成例を示す模式図である。 従来の樹脂モールドコイルのさらに異なる構成例を示す模式図である。 樹脂モールドコイルにおける箔巻きセクションコイル間の接続方式を示す模式断面図である。 U接続を適用した従来の樹脂モールドコイルの構成例における各部の電位を示す模式断面図である。
以下、本発明の実施形態を図1〜図9に示す実施例に基づいて説明する。同一の構成要素については、同一の符号を付け、重複する説明は省略する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。
[本発明の実施形態]
(イ)図1は、本発明の実施例1による樹脂モールドコイルの構成を示す模式断面図であって、円筒型の樹脂モールドコイル50の中心軸を含む断面の片側部分を示しており、図1の左側は円筒型の樹脂モールドコイル50の内周側、右側は同じく外周側である。なお、樹脂モールドコイル50は例えばモールド変圧器における高圧コイルとして用いられるものである。
図1において、樹脂モールドコイル50は、巻線導体を巻回したセクションコイル1を4個コイル軸方向に配列し直列接続してなる巻線部と、この巻線部を例えばエポキシ樹脂などのモールド樹脂でモールドしてなる樹脂モールド層3とを備えており、樹脂モールド層3の外表面には導電性部材からなる接地層40が形成されている。ここで、樹脂モールド層3を形成するモールド樹脂としてはエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂も適用可能である。なお、以下では、図1における4個のセクションコイル1を、図1の上から順にセクションコイルS1,S2,S3,S4とも称する。
また、図1において、セクションコイルS1,S2の最内径側に位置する最内径側導体部S1b,S2b同士、セクションコイルS2,S3の最外径側に位置する最外径側導体部S2a,S3a同士、セクションコイルS3,S4の最内径側導体部S3b,S4b同士は、それぞれ渡り導体11により渡り接続されている。そして、セクションコイルS1,S4の最外径側導体部S1a,S4aは、それぞれ樹脂モールドコイル50としての図示されないリード導体に接続されている。
また、図1において、セクションコイルS1,S2の内周側およびセクションコイルS3,S4の内周側にはそれぞれ電界緩和シールド21が設けられるとともに、セクションコイルS2,S3の外周側には電界緩和シールド23が設けられており、さらに、セクションコイルS1の外周側およびセクションコイルS4の外周側にはそれぞれ電界緩和シールド22が設けられている。
また、図1において、電界緩和シールド21〜23は、導電性部材からなるものであって、全体形状としては円筒状の構造とされており、筒状シールド部のコイル軸方向の両端には、セクションコイル側に向けて断面が例えば半円などの円弧状もしくは略円弧状に膨出する形状に形成された環状シールド部を備えている。電界緩和シールド21〜23が上記環状シールド部を備えているため、電界緩和シールド21〜23の軸方向両端部が断面円弧状もしくは略円弧状に形成されるので、セクションコイル1同士間の電界緩和が十分なものとなり、さらに、樹脂モールド層3の外表面に形成される接地層40と電界緩和シールド21〜23との間の電界緩和も十分なものとなり、モールド樹脂の絶縁劣化や絶縁破壊を的確に防止することができるようになる。
電界緩和シールド21〜23を構成する導電性部材としては、銅,アルミニウムなどの良導電性金属が好適である。そして、電界緩和シールド21の環状シールド部は外周側に膨出した構造とされており、電界緩和シールド22,23の環状シールド部は内周側に膨出した構造とされている。
なお、電界緩和シールド21〜23の環状シールド部(コロナリング)における膨出部断面形状のコイル半径方向寸法a(図1における寸法a)は、環状シールド部の製作時における曲げ易さと、電界強度との両方を考慮して決めることが必要である。すなわち、膨出部断面形状のコイル半径方向寸法aが小さい場合、筒状シールド部の筒形状に合わせて環状に曲げるときの曲げ加工はし易いが、電界強度は高くなり、一方、膨出部断面形状のコイル半径方向寸法aが大きい場合には、電界強度は低くなるが、環状に曲げるときの曲げ加工はし難くなるので、これらの点を考慮して、膨出部断面形状のコイル半径方向寸法aを決める。なお、環状シールド部を例えば棒状の銅材で形成する場合には、銅材の直径が12mm程度以下であれば、環状に曲げるときの曲げ加工は容易である。また、電界強度については、環状シールド部(コロナリング)の局所電界(リング局所電界)がシールド−接地面間(電界緩和シールド21〜23と接地層40との間)における平等電界に対して過大にならないようにする必要があり、電界集中度(=リング局所電界/平等電界)が少なくとも2以下になるようにすることが適当である。
また、内径側および外径側に設けられる各電界緩和シールド(後述の図2における電界緩和シールドF1〜F5)はそれぞれ互いに独立した構造となっている。すなわち、軸方向で隣接する電界緩和シールド同士で互いに独立しているとともに、半径方向で対向する電界緩和シールド同士でも互いに独立している。そして、各セクションコイルにおける内径側の電界緩和シールド(例えば後述の図2における電界緩和シールドF2)と外径側の電界緩和シールド(例えば後述の図2における電界緩和シールドF3)とが当該セクションコイル(例えば後述の図2におけるセクションコイルS2)を介さないで半径方向で直接対向する部分同士の間には樹脂モールド層3の樹脂を介在させている。また、軸方向に沿って隣接する電界緩和シールド同士(例えば後述の図2における電界緩和シールドF2およびF4)の間にも樹脂モールド層3の樹脂を介在させている。また、後述の図5で説明するように、電界緩和シールド21〜23にはそれぞれ周方向の一部に1ターン短絡を防ぐためのスリット(図5における113)が形成されており、周方向の一部が電気的に絶縁されている。
本発明の実施例1による樹脂モールドコイルでは、上述のように、電界緩和シールドを、セクションコイルの全面、すなわち内周面,外周面および軸方向の両端面の全てを囲う構造とするのではなく、各セクションコイルにおける内径側の電界緩和シールドと外径側の電界緩和シールドとを互いに独立した構造としているため、各電界緩和シールドの構造は簡素なものとなり、電界緩和シールドの製造工数を少なくすることができ、この点でも好適な構成となっている。
また、図1において、接地層40は、導電性塗料の塗布により形成することができるが、樹脂モールド層3の表面部分をアルミニウム等の導電性金属でメタリコン加工することにより形成することもできる。また、さらに、接地層40は、樹脂モールド層3の表面層部分にアルミニウム等の導電性金属よりなるエキスパンドメタル(金属薄板に千鳥状の切れ目を入れ、更にそれを拡張して菱形状などの網目状シートに加工したもの)を埋め込むことにより形成することもできる。なお、上記エキスパンドメタルは、モールド樹脂の浸透を良くする上で好適な部材である。
(ロ)図1に示されるように、セクションコイルS1〜S4からなる巻線部の巻線構成、すなわち、各セクションコイルの巻回およびセクションコイル間の渡り接続の構成としては、上述の“U”接続の方式(図13(b)参照)を適用している。すなわち、例えばセクションコイルS1,S3の巻き方向をコイル軸方向の上側から見て「右巻き」方向とするとともに、セクションコイルS2,S4の巻き方向をコイル軸方向の上側から見て「左巻き」方向、すなわちセクションコイルS1,S3の巻き方向とは逆方向とし、セクションコイルS1,S4の各最外径側導体部S1a,S4aに図示されないリード導体が接続された構成とする。セクションコイルS1とセクションコイルS2とが互に逆巻きされたコイルであることに対応して、セクションコイルS1,S2間の渡り接続はセクションコイルS1,S2の最内径側導体部S1b,S2b同士を接続する“U”接続とする。また、セクションコイルS2とS3とが互に逆巻きされたコイルであることに対応して、セクションコイルS2,S3間の渡り接続はセクションコイルS2,S3の最外径側導体部S2a,S3a同士を接続する“U”接続とする。また、セクションコイルS3,S4間の渡り接続はセクションコイルS1,S2間と同様に最内径側導体部S3b,S4b同士を接続する“U”接続とする。このように、本発明の実施例1による樹脂モールドコイルでは、セクションコイル間の渡り接続方式として“U”接続を適用しているため、渡り導体とセクションコイルとの間の部分が絶縁上の弱点にならない。
そして、上記のような“U”接続方式で構成された巻線部において、互に同電位となるように接続されたセクションコイルS1,S2の内周側には電界緩和シールド21をセクションコイルS1,S2の両方に跨るように設けるとともに、互に同電位となるように接続されたセクションコイルS3,S4の内周側にも電界緩和シールド21をセクションコイルS3,S4の両方に跨るように設ける。また、互に同電位となるように接続されたセクションコイルS2,S3の外周側には電界緩和シールド23をセクションコイルS2,S3の両方に跨るように設ける。また、コイル軸方向の両端部に配列されたセクションコイルS1,S4の外周側には電界緩和シールド22,22をそれぞれ1つのセクションコイルの外周側のみを覆うように設ける。
(ハ)図2は、本発明の実施例1による樹脂モールドコイルにおける各部の電位を示す模式断面図である。図2に示すように、コイル始端(セクションコイルS1の最外径側導体部S1a)およびコイル終端(セクションコイルS4の最外径側導体部S4a)の電位をそれぞれV,0とした場合、渡り導体T1,T2,T3の電位はそれぞれ3V/4,V/2,V/4となり、電界緩和シールドF1,F2,F3,F4,F5の電位はそれぞれV,3V/4,V/2,V/4,0となる。なお、電界緩和シールドF2,F4が図1の電界緩和シールド21に対応し、電界緩和シールドF1,F5が図1の電界緩和シールド22に対応し、電界緩和シールドF3が図1の電界緩和シールド23に対応している。
そして、図14の樹脂モールドコイルにおけるような、セクションコイルS1〜S4をそれぞれ個別に包囲するように高抵抗を有するシールド層として形成されたシールドE1〜E4を設けた構成とは異なり、本発明の実施例1による樹脂モールドコイルは、上述のように、各セクションコイルにおける内径側の電界緩和シールドと外径側の電界緩和シールドとを互いに独立した構造としていることに加えて、各電界緩和シールドは、筒状シールド部のコイル軸方向両端に,セクションコイル側に向けて断面円弧状もしくは略円弧状に膨出する環状シールド部を設けたものとしている。このため、本発明の実施例1による樹脂モールドコイルのシールド構造は、セクションコイルの内径側から外径側にわたって連続してシールド層が形成された構成ではなく、セクションコイルにおける、内径側および外径側の各端部領域,すなわち上記環状シールド部が配設されるコイル半径方向領域を除く、コイル半径方向中間部のターンの巻線導体に対して軸方向で対向するシールド層は存在しない。また、セクションコイルにおける最内径側および最外径側のターンの巻線導体に対してはそれぞれ内周側および外周側の電界緩和シールドが導電接続されている。このため、本発明の実施例1による樹脂モールドコイルでは、モールド変圧器にインパルス電圧が印加され、樹脂モールドコイルにおける巻線部の各ターンで分担される電圧が均等でなくなり、コイル始端(線路端)に近いターンほどより大きな電圧を分担する不平等な電位分布パターンになった場合でも、図14の樹脂モールドコイルにおけるようなセクションコイルと電界緩和シールドとの間の電位差の問題は生じることがなく、この点で好適な構成となっている。
また、図14の樹脂モールドコイルでは、高抵抗を有するシールド層として形成されたシールドがセクションコイルの全面を囲うとともにセクションコイルの内周面および外周面と導電接続されており、セクションコイルにおいて電位差の有る最内径側導体部と最外径側導体部とが高抵抗を有するシールド層によって接続された構成となっているため、この部分のシールド層に僅かではあるが電流が流れ、銅損が生じることになる。この点に関し、本発明の実施例1による樹脂モールドコイルでは、上述のようにセクションコイルの内径側から外径側にわたって連続してシールド層が形成される構成ではないため、上記のような銅損が生じることがなく、この点でも好適な構成となっている。
(ニ)本発明の実施例1による樹脂モールドコイルでは、軸方向に配列された全てのセクションコイルS1〜S4に対して共通の電界緩和シールドを設けるのではなく、上述のように軸方向に隣接する2つのセクションコイル(例えば図2におけるS1,S2)の同電位側に導電接続される電界緩和シールド(例えば図2におけるF2)を両セクションコイルに跨るように設けるため、軸方向中間部のセクションコイル(例えば図2におけるS2)についても当該セクションコイルに対応して設けられた電界緩和シールド(例えば図2におけるF2)で電界緩和できるので、軸方向に配列された全てのセクションコイルS1〜S4の角部について電界緩和を行なうことができる。
また、本発明の実施例1による樹脂モールドコイルでは、軸方向に隣接する2つのセクションコイルの内径側同士または外径側同士を互いに同電位となるように渡り導体で導電接続し、軸方向に隣接する2つのセクションコイルの同電位側に導電接続される電界緩和シールドを両セクションコイルに跨るように設けるため、セクションコイル間の渡り導体についても電界緩和を行なうことができるとともに、セクションコイルから渡り導体を引き出す上で、エッジ発生の点で問題となる切れ目を電界緩和シールドに設ける必要がなく、この点でも好適な構成となっている。
(ホ)図3は、本発明の実施例1による樹脂モールドコイルの一部の詳細構造を示す模式断面図であり、図1におけるセクションコイルS1,S2の内周側に電界緩和シールド21が設けられた部分の構造を示している。図3に示されるように、セクションコイルS1,S2は、箔状の巻線導体5を複数層半径方向に重ね巻きして構成されるものである。箔状の巻線導体5としては例えばアルミニウム箔よりなる箔導体を用いることができる。重ね巻きされる箔状の巻線導体5同士の間には、絶縁耐力を持たせるため、絶縁フィルム等の絶縁材6が挿入される。なお、セクションコイルS3,S4の構成も、セクションコイルS1,S2と同様である。
セクションコイルS1〜S4が上述のように箔状の巻線導体5を巻回したものである場合、箔状の巻線導体5の断面形状としてその端部には箔の厚さ以上の丸みを持たせることはできないため、セクションコイルS1〜S4の外周側および内周側の角部にはほぼ直角のエッジが存在することになり、セクションコイルS1〜S4の外周側および内周側の角部での電界集中が特に大きくなるが、本発明の実施例1によるシールド構成を適用することにより、上記の電界集中を効果的に緩和することができる。
また、図3に示されるように、セクションコイルS1の最内径側の巻線導体5(最内径側導体部S1b)とセクションコイルS2の最内径側の巻線導体5(最内径側導体部S2b)とが渡り導体11(図2におけるT1)により導電接続されている。渡り導体11としては例えば巻線導体5と同様なアルミニウム箔などよりなる箔導体を用いることができ、巻線導体5と渡り導体11との接合は例えば半田付け、ロウ付け、圧接、圧着などにより行なうことができるが、渡り導体11の材料、および、巻線導体5と渡り導体11との接合方法は上記構成に限定されるものではない。なお、セクションコイルの巻き始め部または巻き終わり部の巻線導体を直角に折り曲げて隣接する他のセクションコイルに向けて引き伸ばしたものを渡り導体11とすることもできる。
また、図3に示されるように、渡り導体11には、電界緩和シールド21(図2におけるF2)が導電接続されている。なお、電界緩和シールド21は、セクションコイルS1,S2の内周面(最内径側の巻線導体5の内周面)に導電接続してもよく、セクションコイルS1,S2の内周面および渡り導体11の両方に導電接続してもよく、電界緩和シールド21がセクションコイルS1,S2の内周面と同電位になるような接続構成であればよい。そして、電界緩和シールド21をセクションコイルS1,S2の内周面に導電接続する場合、その導電接続部は、周上の一点だけでもよく、また、周上のスリット(図5における113)以外の全体にわたってもよい。また、セクションコイルS3,S4の内周側と電界緩和シールド21(図2におけるF4)との接続部の構成も、図3に示される構成と同様であり、セクションコイルS2,S3の外周側と電界緩和シールド23(図2におけるF3)との接続部の構成も同様である。
(ヘ)図4は、本発明の実施例1による樹脂モールドコイルの異なる一部の詳細構造を示す模式断面図であり、図1におけるセクションコイルS1の外周側に電界緩和シールド22が設けられた部分の構造を示している。図4に示されるように、セクションコイルS1の外周面(最外径側の巻線導体5の外周面)に電界緩和シールド22(図2におけるF1)が導電接続されている。セクションコイルS1の外周面と電界緩和シールド22との導電接続部は、周上の一点だけでもよく、また、周上のスリット(図5における113)以外の全体にわたってもよく、電界緩和シールド22がセクションコイルS1の外周面と同電位になるような接続構成であればよい。なお、セクションコイルS4の外周側と電界緩和シールド22(図2におけるF5)との接続部の構成も図4に示される構成と同様である。
(ト)図5は、本発明の実施例1による樹脂モールドコイルにおける電界緩和シールドの構造を例示する模式図であって、図1における電界緩和シールド21のシールド構造の一例を示している。そして、図5(a)は電界緩和シールド21の構成図であり、図5(b)は図5(a)に対応する展開図である。図5に示されるように、電界緩和シールド21は、全体形状としては例えば銅板などの金属板112を用いて円筒状の構造に形成されたものである。そして、金属板112からなる筒状シールド部のコイル軸方向の両端には、断面が例えば半円などの円弧状もしくは略円弧状に膨出する形状に形成された環状シールド部111a,111bを備えている。また、電界緩和シールド21の周方向の一部には1ターン短絡を防ぐためのスリット(縁切り部)113が設けられている。また、さらに、環状シールド部111a,111bのスリット113に面する箇所にはそれぞれ例えば銅材などからなる金属球114がはめ込まれている。なお、図1における電界緩和シールド22、23も、図5と同様なシールド構造とすることができる。
上述のように環状シールド部111a,111bのスリット113に面する箇所にそれぞれ金属球114がはめ込まれ、環状シールド部111a,111bの開放端が球面状に膨出する形状の端面に形成されていることにより、上記開放端でのエッジをなくし、上記開放端での電界集中を効果的に防ぐことができる。
図5に示す電界緩和シールド21の製作は例えば次のようにして行うことができる。すなわち、金属板112の上下端に丸め加工により環状シールド部111a,111bを形成し、その後、円筒形状に加工するとともに円筒の一部にスリット(縁切り部)113を形成し、その後、環状シールド部111a,111bのスリット113に面する箇所にそれぞれ金属球114をはめ込み、これにより、図5(a)に示す電界緩和シールド21を構成する。なお、図5に示す電界緩和シールド21の製作方法は、上述の構成に限定されるものではない。
また、図5には示していないが、円筒状に曲げられた金属板112からなる筒状シールド部のスリット113に対応する両開放端も、それぞれ丸め加工により断面円弧状もしくは略円弧状に膨出する形状の端面に形成すれば、上記開放端でのエッジをなくし、筒状シールド部の上記開放端での電界集中も効果的に防ぐことができ、これにより、筒状シールド部および環状シールド部からなる電界緩和シールドのスリットに面する開放端(縁切り部)での電界集中を十分に防ぐことができるようになる。
(イ)図6は、本発明の実施例2による樹脂モールドコイルの構成を示す模式断面図であって、円筒型の樹脂モールドコイル50Aの中心軸を含む断面の片側部分を示しており、図6の左側は円筒型の樹脂モールドコイル50Aの内周側、右側は同じく外周側である。なお、樹脂モールドコイル50Aは、図1の樹脂モールドコイル50と同様に、例えばモールド変圧器における高圧コイルとして用いられるものである。
図6に示される樹脂モールドコイル50Aの構成は、電界緩和シールドとして後述の図7に示す構造の電界緩和シールド21A,22A,23Aを用いている点以外は、図1の樹脂モールドコイル50の構成と同じである。
(ロ)図7は、本発明の実施例2による樹脂モールドコイルにおける電界緩和シールドの構造を例示する模式図であって、図6における電界緩和シールド21Aのシールド構造の一例を示している。そして、図7(a)は電界緩和シールド21Aの構成図であり、図7(b)は図7(a)に対応する展開図である。図7に示されるように、電界緩和シールド21Aは、全体形状としては、複数の貫通穴215が全面にわたって形成された例えば銅板などの金属板212を用いて円筒状の構造に形成されたものである。そして、金属板212からなる筒状シールド部のコイル軸方向の両端には、断面が例えば半円などの円弧状もしくは略円弧状に膨出する形状に形成された環状シールド部211a,211bを備えている。また、電界緩和シールド21Aの周方向の一部には1ターン短絡を防ぐためのスリット(縁切り部)213が設けられている。また、さらに、環状シールド部211a,211bのスリット213に面する箇所にはそれぞれ例えば銅材などからなる金属球214がはめ込まれている。なお、図6における電界緩和シールド22A、23Aも、図7と同様なシールド構造とすることができる。
上述のように環状シールド部211a,211bのスリット213に面する箇所にそれぞれ金属球214がはめ込まれ、環状シールド部211a,211bの開放端が球面状に膨出する形状の端面に形成されていることにより、上記開放端でのエッジをなくし、上記開放端での電界集中を効果的に防ぐことができる。
図7に示す電界緩和シールド21Aの製作は例えば次のようにして行うことができる。すなわち、貫通穴加工を施した金属板212の上下端に丸め加工により環状シールド部211a,211bを形成し、その後、円筒形状に加工するとともに円筒の一部にスリット(縁切り部)213を形成し、その後、環状シールド部211a,211bのスリット213に面する箇所にそれぞれ金属球214をはめ込んで、半田付け,ロウ付け,溶接等により接合し、これにより、図7(a)に示す電界緩和シールド21Aを構成する。なお、図7に示す電界緩和シールド21Aの製作方法は、上述の構成に限定されるものではない。
また、図7には示していないが、円筒状に曲げられた金属板212からなる筒状シールド部のスリット213に対応する両開放端も、それぞれ丸め加工により断面円弧状もしくは略円弧状に膨出する形状の端面に形成すれば、上記開放端でのエッジをなくし、筒状シールド部の上記開放端での電界集中も効果的に防ぐことができ、これにより、筒状シールド部および環状シールド部からなる電界緩和シールドのスリットに面する開放端(縁切り部)での電界集中を十分に防ぐことができるようになる。
なお、本発明の実施例2では、電界緩和シールドにおける筒状シールド部として特に図7のような、複数の貫通穴を有する金属板212が円筒形状に加工された構造を適用していることにより、電界緩和シールドは全体構造として可とう性の大きい(剛性の低い)ものとなるため、温度変化による樹脂の収縮,膨張に対して、樹脂と金属との線膨張率の差異による樹脂と電界緩和シールドとの間における隙間の発生を防止することができ、これによりボイドの生成を防ぐことができる。なお、実施例2では、金属板212における貫通穴の穴径,個数などの選択により筒状シールド部の可とう性を適正に調整することができる。
(イ)図8は、本発明の実施例3による樹脂モールドコイルの構成を示す模式断面図であって、円筒型の樹脂モールドコイル50Bの中心軸を含む断面の片側部分を示しており、図8の左側は円筒型の樹脂モールドコイル50Bの内周側、右側は同じく外周側である。なお、樹脂モールドコイル50Bは、図1の樹脂モールドコイル50と同様に、例えばモールド変圧器における高圧コイルとして用いられるものである。
図8に示される樹脂モールドコイル50Bの構成は、電界緩和シールドとして後述の図9に示す構造の電界緩和シールド21B,22B,23Bを用いている点以外は、図1の樹脂モールドコイル50の構成と同じである。
(ロ)図9は、本発明の実施例3による樹脂モールドコイルにおける電界緩和シールドの構造を例示する模式図であって、図8における電界緩和シールド21Bの構造例を示している。そして、図9(a)は電界緩和シールド21Bの構成図であり、図9(b)は図9(a)に対応する展開図である。図9に示されるように、電界緩和シールド21Bは、全体形状としては、例えば銅材などよりなる金網312を用いて円筒状の構造に形成されたものである。そして、金網312からなる筒状シールド部のコイル軸方向の両端には断面が中実の円形状に形成された環状シールド部311a,311bを備えている。また、電界緩和シールド21Bの周方向の一部には1ターン短絡を防ぐためのスリット(縁切り部)313が設けられている。また、さらに、環状シールド部311a,311bのスリット313に面する両開放端はそれぞれ球面状もしくは略球面状に膨出する形状の端面に形成されている。なお、図8における電界緩和シールド22B、23Bも、図9と同様なシールド構造とすることができる。
上述のように環状シールド部311a,311bのスリット313に面する開放端が球面状もしくは略球面状に膨出する形状の端面に形成されていることにより、上記開放端でのエッジをなくし、上記開放端での電界集中を効果的に防ぐことができる。
図9に示す電界緩和シールド21Bの製作は例えば次のようにして行なうことができる。すなわち、平行に対向配置した例えば銅材よりなる2本の金属丸棒311a,311bの間に、例えば銅材よりなる長方形状の金網312を介在させ、金属丸棒311a,311b間を金網312で編み合わせ、その後、図9(a)に示すような円筒形状に加工するとともに円筒の一部にスリット(縁切り部)313を形成する。その後、スリット313に対応する開放端を有する円環状に曲げられた金属丸棒311a,311bの上記開放端を例えば半球状などの曲面状に丸め加工するとともに、スリット313に対応する開放端を有する円筒状に曲げられた金網312の上記開放端をエッジが生じないように編み合わせ、これにより、図9(a)に示す電界緩和シールド21Bを構成する。なお、スリット313に面する開放端部分では、金属丸棒311a,311bの開放端と金網312の開放端との周方向位置を合わせるようにしておく。
また、図9には示していないが、円筒状に曲げられた金網312からなる筒状シールド部のスリット313に対応する両開放端に沿ってそれぞれコイル軸方向に延在する(金属丸棒311a,311bとは別の)第2の金属丸棒を設けて、これら第2の金属丸棒のそれぞれに金網312をエッジが生じないように編み付けることなどにより、筒状シールド部のスリット313に面する両開放端をそれぞれ断面円弧状もしくは略円弧状に膨出する形状の端面に形成すれば、上記開放端でのエッジをなくし、筒状シールド部の上記開放端での電界集中も効果的に防ぐことができ、これにより、筒状シールド部および環状シールド部からなる電界緩和シールドのスリットに面する開放端(縁切り部)での電界集中を十分に防ぐことができるようになる。
また、上述のように円環状に曲げられた金属丸棒311a,311bの開放端を丸め加工する代わりに、金網312と編み合わせる前であって円環状に曲げられる前の状態の金属丸棒311a,311bの両端部に丸め加工を施しておくようにしてもよい。また、図9に示す電界緩和シールド21Bの製作方法は、上述の構成に限定されるものではない。
なお、本発明の実施例3では、電界緩和シールドにおける筒状シールド部として特に図9のような、金網312が円筒形状に加工された構造を適用していることにより、電界緩和シールドは全体構造として可とう性の大きい(剛性の低い)ものとなるため、温度変化による樹脂の収縮,膨張に対して、樹脂と金属との線膨張率の差異による樹脂と電界緩和シールドとの間における隙間の発生を防止することができ、これによりボイドの生成を防ぐことができる。なお、実施例3では、金網312における線径,メッシュ数などの選択により筒状シールド部の可とう性を適正に調整することができる。
(本発明の適用対象)
(イ)上述の実施形態では、円筒型の樹脂モールドコイルについて説明したが、本発明の対象は、円筒型の樹脂モールドコイルに限定されるものではなく、例えば略角筒型の樹脂モールドコイルであってもよい。
(ロ)また、上述の実施形態では、本発明を、電気機器のうち特にモールド変圧器の高圧コイルとして用いられる樹脂モールドコイルに適用した構成例について説明したが、本発明は、変圧器以外の例えば計器用変圧器(PT)や計器用変流器(CT)など内部に高圧の導体部を持つ電気機器における樹脂モールドコイルにも好適に適用することができる。
1:セクションコイル(単位コイル)
2:筒状シールド部
2a:環状シールド部(コロナリング)
3:樹脂モールド層
4:シールド
5:巻線導体
6:絶縁材
7:リード端子
8:リード線
11:渡り導体
21,21A,21B,22,22A,22B,23,23A,23B:電界緩和シールド
40:接地層
50,50A,50B,51,52,53,54,55,56:樹脂モールドコイル
111a,111b:環状シールド部
112:金属板
113:スリット(縁切り部)
114:金属球
211a,211b:環状シールド部
212:金属板
213:スリット(縁切り部)
214:金属球
215:貫通穴
311a,311b:環状シールド部
312:金網
313:スリット(縁切り部)
a:環状シールド部における膨出部断面形状のコイル半径方向寸法
E1,E2,E3,E4:シールド
F1,F2,F3,F4,F5:電界緩和シールド
g1,g2:渡り導体とセクションコイルとの間の絶縁ギャップ
S1,S2,S3,S4:セクションコイル
S1a,S2a,S3a,S4a:セクションコイルの最外径側導体部
S1b,S2b,S3b,S4b:セクションコイルの最内径側導体部
T1,T2,T3:渡り導体

Claims (6)

  1. 巻線導体を巻回したセクションコイルを複数個軸方向に配列して直列接続してなる巻線部と、この巻線部をモールドする樹脂モールド層とを備えた樹脂モールドコイルにおいて、
    軸方向に隣接する2つのセクションコイルの内径側同士または外径側同士を互いに同電位となるように渡り導体で導電接続し、
    軸方向に隣接する2つのセクションコイルの同電位側に導電接続されるとともに両セクションコイルに跨るように構成された電界緩和シールドをそれぞれ設け、
    かつ、前記各電界緩和シールドはそれぞれ互いに独立させてなる
    ことを特徴とする樹脂モールドコイル。
  2. 請求項1に記載の樹脂モールドコイルにおいて、
    前記セクションコイルは、巻線導体として箔状の導体を巻回したものである
    ことを特徴とする樹脂モールドコイル。
  3. 請求項1または2に記載の樹脂モールドコイルにおいて、
    前記電界緩和シールドは、筒状シールド部のコイル軸方向両端に,セクションコイル側に向けて断面円弧状もしくは略円弧状に膨出する環状シールド部を設けたものである
    ことを特徴とする樹脂モールドコイル。
  4. 請求項3に記載の樹脂モールドコイルにおいて、
    前記電界緩和シールドのコイル周方向の1箇所に前記筒状シールド部および前記環状シールド部の全体にわたってスリットを設けるとともに、
    前記筒状シールド部の前記スリットに面する両開放端をそれぞれ断面円弧状もしくは略円弧状に膨出する形状の端面に形成してなり、
    かつ、前記環状シールド部の前記スリットに面する両開放端をそれぞれ球面状もしくは略球面状に膨出する形状の端面に形成してなる
    ことを特徴とする樹脂モールドコイル。
  5. 請求項3または4に記載の樹脂モールドコイルにおいて、
    前記筒状シールド部は、複数の貫通穴を有する金属板で形成してなる
    ことを特徴とする樹脂モールドコイル。
  6. 請求項3または4に記載の樹脂モールドコイルにおいて、
    前記筒状シールド部は、金網で形成してなる
    ことを特徴とする樹脂モールドコイル。
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