JP5672924B2 - 高温焼成蛍光体の製造方法と蛍光体 - Google Patents

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本発明は蛍光体の製造方法に関し、特に好適には、1700℃以上で焼成する窒化物系蛍光体の製造方法に関する。
近年、蛍光体の焼成温度は、蛍光体の結晶性の向上による耐久性や輝度特性をより向上させるため、上昇する傾向に有る。特に、窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体(以下これらを合わせて窒化物系蛍光体という)においては、焼成温度の上昇が顕著であり、1500℃以上、特に高いものでは1700℃以上、最高2300℃程度での焼成が行われている。例えば特許文献1に記載のβサイアロン蛍光体は、1820℃以上での焼成が必須とされている。
特開2005−255895号公報
かかる高温での焼成においては、エネルギーの使用量が大きくなること、そしてまた一方、廃熱の処理もまた大きな問題となる。
また、高温での焼成が必要となる蛍光体においては、少量試作品に対し、量産品の特性がかなり低くなることが、生じているという問題もあった。
そこで本発明者は、鋭意検討の結果、かかる蛍光体特性の顕著な低下が、同一焼成ロット内に、特性の悪い部分が存在すること、そしてそのロット内の特性の偏りが、高温での焼成が必要とされる蛍光体で顕著なこと、そしてその特性の偏りが炉内の場所に依存し、特に雰囲気ガスの導入位置に近いるつぼから得られた蛍光体特性が劣っていること、そしてその蛍光体特性が、焼成温度を変えたときに見られる特性変化によく似た挙動を取ることに着目し、かかる蛍光体特性の偏りは、炉内の温度の偏りに起因し、主に導入される雰囲気ガスの上流側に、温度を下げた場合に生じると考えられる特性の低下が生じること、そしてこの現象を解決するために、雰囲気ガスの導入位置、更には雰囲気ガスの外部からの供給方法を工夫することにより、かかる蛍光体特性の偏りの発生を減らせるのみならず、更には、エネルギーの使用量や廃熱の削減も可能なことを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の目的は、ロット内の蛍光体特性の偏りが少なく、エネルギーの節約が可能な蛍光体の製造方法を提供することに有り、かかる課題は、加熱した雰囲気ガスを炉内に導入しながら、1700℃以上で蛍光体原料を加熱、焼成する蛍光体の製造方法であって、炉内に導入される前の雰囲気ガスを、炉に設置した断熱材の内部に配設された流路を通すことにより、雰囲気ガスと断熱材との間で熱交換させて加熱することを特徴とする蛍光体の製造方法、より好ましくは、雰囲気ガスの炉内への導入箇所が、複数箇所存在することを特徴とする前述の蛍光体の製造方法、更に好ましくは、雰囲気ガスの炉内への導入が、多孔質断熱材の内部に導入されることにより行われる前述のいずれかの蛍光体の製造方法、そして焼成が加圧炉で行われる前述のいずれかの蛍光体の製造方法と、これらいずれかの製造方法で製造された蛍光体、により容易に達成される。
本発明により、蛍光体焼成時のエネルギーが節約でき、断熱材のダメージも少なく、か
つ同一焼成ロット内における蛍光体の特性のばらつきを抑えることが出来る。
図1は、本発明の製造方法における複数箇所からの雰囲気ガス供給の概念図である。 図2は、従来の方法の概念図である。
以下、本発明をより詳細に説明する。
(熱交換について)
本発明の製造方法の特徴のひとつは、雰囲気ガスを炉内に導入する際に、炉の断熱材の内部で熱交換を行うことであり、これにより断熱材の冷却時に発生する廃熱の除去を容易にすると同時に、炉内に導入される雰囲気ガスの温度を、大量のエネルギーをそのために使用することなく、上げることが出来、エネルギーの節約が可能である。すなわち炉の外部より導入される雰囲気ガスの流路を断熱材の内部に設けることにより、導入される雰囲気ガスと断熱材の間で熱交換が行われる。これにより断熱材は冷却され、導入される雰囲気ガスは加熱されることになる。
そして本発明の蛍光体の製造方法の好ましい態様としては、熱交換を行った後の導入される雰囲気ガスを、複数箇所から導入することである。この複数箇所の数については、炉の大きさや構造の影響を受けるので、特に限定されないが、2箇所以上、特に好ましくは10箇所以上である。前述のように、本発明においては、この導入される雰囲気ガスの加熱は、炉の断熱材の排熱を兼ねているため、断熱材内部に多数の導入される雰囲気ガスの流路を形成することが好ましい。そして多数の導入される雰囲気ガスの流路がある構造であるため、容易に炉内の複数箇所への加熱された導入される雰囲気ガス供給が可能になる。このような構造の模式図として、図1に概念図を示す。導入される雰囲気ガス10は、焼成炉1の外部より、雰囲気ガス導入口3から炉内に導入される。導入される雰囲気ガスは断熱材2(図中の網掛け部分)の内部に、断熱材2の内部を焼成炉1の外部から炉の内部7に通じる最短距離にならないよう設けられた配管6に沿って流れ、熱交換を行う。図1では、判りやすいように、断熱材2内部を通り、炉内を半周するような配管6を書いているが、本発明はこの構造に限られるものではなく、断熱材2の内部にある程度の時間、滞留することが出来るように流路を工夫することにより、断熱材2と導入される雰囲気ガスの熱交換が十分に行われるようにすればよい。具体的には、雰囲気ガスの断熱材2内部の平均流路の長さが、断熱材内部を最短距離(つまり断熱材の厚さ方向の厚さ)で通過する場合の流路の長さより長いことが必要であり、好ましくは1.4倍以上(例えば断熱材の厚さ方向に対し約45度以上の角度を持っている場合に相当する)、より好ましくは2倍以上である。こうして熱交換が十分に行われ、加熱された導入される雰囲気ガス11を、炉の内部7に、導入口4から供給し、蛍光体原料の入ったるつぼ5の周辺に供給される。このとき導入口4は、複数箇所設けることが好ましい。そしてより好ましくは、断熱材2を多孔質として、この断熱材2の内部に、導入される雰囲気ガスを導入し、断熱材2自体が配管6と導入口4を兼ねた構造にすることである。図1には導入口4を指し示す線が3箇所にしか引かれていないが、これは、全ての導入口4に線を引くと煩雑になるため省略したものである。
尚、図1は、あくまで一例であって、実際には導入される雰囲気ガスを供給する管に多数の孔を空ける等の方法を行ってもよいし、前述のように、断熱材が多孔質のものであれば、断熱材内部に導入される雰囲気ガスを放出し、導入される雰囲気ガスが断熱材の内部を拡散しながらるつぼ近傍に供給されるような構造でもよい。このような多孔質の断熱材内部に導入される雰囲気ガスを放出する場合には、断熱材として使用できる構造であれば、十分な熱交換が可能である。
かかる断熱材としては、特に限定されないが、窒化物系蛍光体を焼成することを考えると、雰囲気を還元性に保ちやすく、また多少の酸素の混入を二酸化炭素となって排除することが出来る炭素製の断熱材が好ましく、特に好ましくは、多孔質の炭素質断熱材である。
尚、本発明においては、断熱材中での熱交換以外に、導入される雰囲気ガスの加熱手段を別途備えている態様を排除するものではない。むしろ導入される雰囲気ガスの量が多い場合には、それにある程度の過熱を行った後、焼成炉内に導入し、断熱材中での熱交換を行う方法が、より好ましいこともある。
参考のため、図2に従来法の典型として1箇所からガス供給を行う場合の一例を示した
図を示す。従来の炉は、配管6が、断熱材2内部を、実質的に最短距離で貫通し、実質的に熱交換することなく導入される雰囲気ガス12は、十分温度が上がる前に、るつぼ5周辺に到達していたと考えられる。
(焼成温度について)
本発明の蛍光体の製造方法は、その焼成工程中の最高温度が1700℃以上の蛍光体の製造方法である。もちろんこれ以下の温度であっても、同一ロット内ばらつきの低減や、エネルギーの節約という本発明の効果が得られるが、焼成工程中の最高温度が1700℃以上の場合にその効果が著しいため好ましく、より好ましくは1800℃以上、特に好ましくは1900℃以上である。
(焼成時の雰囲気ガス圧について)
また、本発明の製造方法は、焼成時の雰囲気ガス圧が、大気圧ではない場合に効果的である。大気圧より低い状態で焼成する場合には、内部のガス量が低いため、導入ガスの量が相対的に大きくなり、影響が大きくなりやすい。その一方、本発明の効果がより大きいのは加圧して焼成する場合であり、この場合導入するガスも高圧のものとなり、流量が大きくなって、温度ムラ等の問題を生じやすいためである。より好ましくは0.15MPa
以上、更に好ましくは0.5MPa以上である。上限値については効果の点では特に上限値は無いと考えられるが、実際の蛍光体の焼成条件を考えると、通常300MPa以下がよい。
(雰囲気ガスの種類について)
本発明に用いられる雰囲気ガスの種類は特に限定されないが、高温での焼成が必要になる蛍光体としては窒化物系蛍光体が多いため、窒素雰囲気あるいはアルゴン雰囲気が好ましい。また、窒素に一部水素を混合したガスやアンモニアとの混合ガスも好ましく用いることが出来る。
(好適な蛍光体)
本発明の蛍光体の製造方法が適用される蛍光体は、特に限定されないが、高温での焼成が必要となる蛍光体であり、窒化物系蛍光体が好ましい。特に好ましい蛍光体としては、JEM蛍光体、αサイアロン蛍光体、βサイアロン蛍光体、CASN系蛍光体(例えばMAlSiN3:Eu:Mは2価の金属元素)、SION系蛍光体、258系蛍光体(M2
58:Eu:Mは2価の金属元素)などに好適に使用できる。特に好適には、例示の中
で最も高温焼成をすることが一般的であるβサイアロン蛍光体である。これら各蛍光体の一般的製造方法は、例えば“PHOSPHOR HANDBOOK second Edition”のP331−338に記載があり、当業者に明らかで有ると思われるため、本明細書では、特許文献1(特開2005-255895号公報)に記載された、βサイアロン蛍光
体の例を持って説明する。しかしながら以下のβサイアロン蛍光体の製造方法は、あくまで例示であり、本発明の製造方法は、その要旨を越えない限り、βサイアロン蛍光体や、あるいは以下に記載の製造方法に限定されるものではない。
(蛍光体の製造方法の具体例による説明)
βサイアロン蛍光体の製造方法は、一例として次の方法を挙げることができる。
金属化合物の混合物であって、焼成することによりβサイアロン蛍光体(Si6-zAlz8-z:M)を構成しうる原料混合物を、窒素雰囲気中において焼成する。最適焼成温度は組成により異なるので一概に規定できないが、一般的には1820℃以上2200℃以下の温度範囲で、安定して緑色の蛍光体が得られる。焼成温度が1820℃より低いと、発光中心となる元素Mがβ型Si34結晶構造を持つ窒化物または酸窒化物の結晶中に固溶することなく酸素含有量が高い粒界相中に残留するため、酸化物ガラスをホストとする発光となって、青色などの低波長の発光となり、緑色の蛍光は得られない。また、焼成温度が2200℃以上では特殊な装置が必要となり工業的に好ましくない。発光中心となる元素Mの中でもEuが高い輝度が得られるため好ましい。
金属化合物の混合物は、Mの金属、酸化物、炭酸塩、窒化物、または酸窒化物から選ばれるMを含む金属化合物と、窒化ケイ素と、窒化アルミニウムとの混合物がよい。これらは、反応性に富み、高純度な合成物を得ることができることに加えて、工業原料として生産されており入手しやすい利点がある。また、酸素量を所望の量とするため、窒化ケイ素あるいは窒化アルミニウムの一部を酸化物に置き換えてもよい。
焼成時の反応性を向上させるために、必要に応じて金属化合物の混合物に、焼成温度以下の温度で液相を生成する無機化合物を添加することができる。無機化合物としては、反応温度で安定な液相を生成するものが好ましく、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Baの元素のフッ化物、塩化物、ヨウ化物、臭化物、あるいはリン酸塩が適している。さらに、これらの無機化合物は、単体で添加するほか2種以上を混合してもよい。なかでも、フッ化カルシウムは合成の反応性を向上させる能力が高いため適している。無機化合物の添加量は特に規定しないが、出発原料である金属化合物の混合物100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下で、特に効果が大きい。0.1重量部より少ないと反応性の向上が少なく、10重量部を越えると蛍光体の輝度が低下する。これらの無機化合物を添加して焼成すると、反応性が向上して、比較的短い時間で粒成長が促進されて粒径の大きな単結晶が成長し、蛍光体の輝度が向上する。さらに、焼成後に無機化合物を溶解する溶剤で洗浄することにより、焼成により得られた反応物中に含まれる無機化合物の含有量を低減すると、蛍光体の輝度が向上する。このような溶剤としては、水、エタノール、硫酸、フッ化水素酸、硫酸とフッ化水素酸の混合物を挙げることができる。
βサイアロン蛍光体の場合、雰囲気ガスとしては窒素又はアルゴン雰囲気が好ましい。そして雰囲気ガス圧としては、0.1MPa以上300MPa以下の圧力範囲がよい。より好ましくは、0.5MPa以上10MPa以下がよい。窒化ケイ素を原料として用いる場合、1820℃以上の温度に加熱した場合、窒素ガス雰囲気が0.1MPaより低いと、原料が熱分解するので好ましくない。0.5MPaより高いとほとんど分解しない。10MPaあれば十分であり、300MPa以上となると特殊な装置が必要となり、工業生産に向かない。
粉体または凝集体形状の金属化合物を、嵩密度40%以下の充填率に保持した状態で容器に充填した後に焼成する方法によれば、特に高い輝度が得られる。
粒径数μmの微粉末を出発原料とする場合、混合工程を終えた金属化合物の混合物は、粒径数μmの微粉末が数百μmから数mmの大きさに凝集した形態をなす(粉体凝集体と呼ぶ)。本発明では、粉体凝集体を嵩密度40%以下の充填率に保持した状態で焼成する。すなわち、通常のサイアロンの製造ではホットプレス法や金型成形後に焼成を行なっており粉体の充填率が高い状態で焼成されているが、本発明では、粉体に機械的な力を加えることなく、また予め金型などを用いて成形することなく、混合物の粉体凝集体の粒度を
そろえたものを、そのままの状態で容器などに嵩密度40%以下の充填率で充填する。必要に応じて、該粉体凝集体を、ふるいや風力分級などを用いて、平均粒径500μm以下に造粒して粒度制御することができる。また、スプレードライヤなどを用いて直接的に500μm以下の形状に造粒してもよい。また、容器は窒化ホウ素製を用いると蛍光体との反応が少ない利点がある。
嵩密度を40%以下の状態に保持したまま焼成するのは、原料粉末の周りに自由な空間がある状態で焼成すると、反応生成物が自由な空間に結晶成長することにより結晶同士の接触が少なくなり、表面欠陥が少ない結晶を合成することが出来るためである。これにより、輝度が高い蛍光体が得られる。嵩密度が40%を超えると焼成中に部分的に緻密化が起こって、緻密な焼結体となってしまい結晶成長の妨げとなり蛍光体の輝度が低下する。また微細な粉体が得られない。また、粉体凝集体の大きさは500μm以下が、焼成後の粉砕性に優れるため特に好ましい。
次に、充填率40%以下の粉体凝集体を前記条件で焼成する。焼成に用いる炉は、焼成温度が高温であり焼成雰囲気が窒素であることから、金属抵抗加熱方式または黒鉛抵抗加熱方式であり、炉の高温部の材料として炭素を用いた電気炉が好適である。焼成の手法は、常圧焼結法やガス圧焼結法などの外部から機械的な加圧を施さない焼結手法が、嵩密度を高く保ったまま焼成するために好ましい。
ここで本発明の特徴のひとつである、導入される雰囲気ガスを断熱材中で加熱することにより、導入される雰囲気ガスと炉内の雰囲気ガスとの温度差を出来る限り小さくすると共に、断熱材の排熱(冷却)を行う。
断熱材の内部に導入される雰囲気ガスを通す方法としては、前述の熱交換の説明部分でも説明したように断熱材内部に配管を通し、例えば炉内を半周させるなどの方法により、上述の導入される雰囲気ガスの加熱と断熱材の排熱(冷却)を行う。こうして得られた加熱された導入される雰囲気ガスを炉内に導入することにより、導入される雰囲気ガス加熱のために別エネルギーを使用することなく、炉内の温度が導入される雰囲気ガスの方向のみ低くなる温度分布の問題を、小さくすることが出来る。
そして炉内の温度分布の問題をより小さくするためには、導入される雰囲気ガスの炉内への導入箇所が、複数箇所存在することが好ましい。
そしてより効率的な方法は、断熱材自体を多孔質とし、その内部に導入される雰囲気ガスを導入することが、簡易でかつ、導入箇所が無数に存在することに相当し、仮に多少炉内の雰囲気ガス温度と導入される雰囲気ガスに温度差があっても、その影響が均一化されるため、焼成温度を上げるなどの対策が取りやすいので好ましい。導入される雰囲気ガスの導入箇所が1箇所しかない場合には、温度を上げると焼成温度が上がりすぎる場所が出来てしまうため、このように焼成温度を上げて特性を向上させることは困難である。
かかる焼成により、蛍光体粉体が得られる。得られた粉体が凝集し固く固着している場合は、例えばボールミル、ジェットミル等の工業的に通常用いられる粉砕機により粉砕する。なかでも、ボールミル粉砕は粒径の制御が容易である。このとき使用するボールおよびポットは、窒化ケイ素焼結体またはサイアロン焼結体製が好ましい。特に好ましくは、製品となる蛍光体と同組成のセラミックス焼結体製が好ましい。粉砕は平均粒径20μm以下となるまで施す。特に好ましくは平均粒径20nm以上5μm以下である。平均粒径が20μmを超えると粉体の流動性と樹脂への分散性が悪くなり、発光素子と組み合わせて発光装置を形成する際に部位により発光強度が不均一になる。20nm以下となると、粉体を取り扱う操作性が悪くなる。粉砕だけで目的の粒径が得られない場合は、分級を組み合わせることができる。分級の手法としては、篩い分け、風力分級、液体中での沈殿法などを用いることができる。
粉砕分級の一方法として酸処理を行っても良い。焼成して得られた粉体凝集体は、多くの場合、β型Si34結晶構造を持つ窒化物または酸窒化物の単結晶が微量のガラス相を主体とする粒界相で固く固着した状態となっている。この場合、特定の組成の酸に浸すとガラス相を主体とする粒界相が選択的に溶解して、単結晶が分離する。これにより、それぞれの粒子が単結晶の凝集体ではなく、β型Si34結晶構造を持つ窒化物または酸窒化物の単結晶1個からなる粒子として得られる。このような粒子は、表面欠陥が少ない単結晶から構成されるため、蛍光体の輝度が特に高くなる。
この処理に有効な酸として、フッ化水素酸、硫酸、塩酸、フッ化水素酸と硫酸の混合物を挙げることができる。中でも、フッ化水素酸と硫酸の混合物あるいはフッ化水素酸と硝酸の混合物はガラス相の除去効果が高い。
以上の工程での微細な蛍光体粉末が得られるが、輝度をさらに向上させるには熱処理が効果的である。この場合は、焼成後の粉末、あるいは粉砕や分級により粒度調整された後の粉末を、1000℃以上で焼成温度以下の温度で熱処理することができる。1000℃より低い温度では、表面の欠陥除去の効果が少ない。焼成温度以上では粉砕した粉体どうしが再度固着するため好ましくない。熱処理に適した雰囲気は、蛍光体の組成により異なるが、窒素、空気、アンモニア、水素から選ばれる1種又は2種以上の混合雰囲気中を使用することができ、特に窒素雰囲気が欠陥除去効果に優れるため好ましい。
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、実施例に限定されるものではない。
原料として、Si(宇部興産社製、SN−E10グレード)を95.25重量%、Eu(信越化学社製、RUグレード)を1.06重量%、AlN(トクヤマ社製、Fグレード)を3.29重量%、Al(大明化学社製、TM―DARグレード)を0.40重量%、秤量した。原料組成から予想される蛍光体組成は、Si5.75Al0.257.940.06:Eu0.017で表されるβサイアロン蛍光体である。
上述の原料を目開き100μmのナイロン製篩に全通させ、振動ミール(中央加工機社製MB―1型)を用いて60分間振動混合した。更に目開き100μmのナイロン製篩に全通させた。
得られた蛍光体原料混合物を、外径9cm高さ10cmの窒化ホウ素製ルツボに200g充填し、加圧窒化炉を用い窒素圧0.92MPaの雰囲気下で、2000℃で12時間保持することにより焼成した。この際、焼成物への窒素ガスは、断熱材を介して複数の場所より供給した。焼成後得られた焼成粉体を、ナイロンメッシュ(N―No.305T,
目開き48um)をパスさせた。
その後、得られた粉体を、外径6cm高さ3.5cmの窒化ホウ素製ルツボに入れて管状炉に設置し、アルゴンガスを0.5L/分で流しながら、1450℃で8時間加熱することにより、熱処理を行った。
前記熱処理により得られた粉体を、ナイロンメッシュ(N―No.305T,目開き48um)に全量通した。
得られた蛍光体粉体1gに対し、NaF(和光純薬工業社製、純度99%)0.5gを純水9mlに溶解させた水溶液と、硝酸(和光純薬工業社製、68〜70重量%)4mlの比率で混合した水溶液に入れて、6時間、スターラーを用いて攪拌することにより、洗浄した。洗浄した粉体を、電気伝導度が10μS/cm以下になるまで通常のろ過、水洗を繰り返した後、150℃で2時間乾燥して実施例の蛍光体を得た。
実施例1の蛍光体を室温(25℃)において、日立製作所製蛍光分光光度計F−4500を用いて相対輝度を測定した。より具体的には、波長455nmの励起光を上記製造した蛍光体に照射し、480nm以上800nm以下の波長範囲内の発光スペクトルを得た。
上述の方法で得られた可視領域における発光スペクトルから励起波長域を除いた範囲で、JIS Z8724に準拠して算出したXYZ表色系における刺激値Yから、同様に波長455nmの励起光で化成オプトニクス株式会社(現三菱化学株式会社)製の黄色蛍光体YAl12:Ce(製品番号:P46−Y3)を励起して得られた発光スペクトルから励起波長を除いた範囲で同様に求めた刺激値Yの値を100%とした相対値を相対輝度として算出した(以下、単に「輝度」と称する場合がある。)なお輝度は、波長455nmの励起光で化成オプトニクス株式会社(現三菱化学株式会社)製の黄色蛍光体YAl12:Ceを100%とした。
この実施例の蛍光体の輝度は、坩堝を置いた場所による輝度のバラツキが小さく、焼成したどの坩堝の蛍光体も輝度は120〜124の範囲であった。また色度xおよびyはそれぞれ0.341〜0.342、0.627〜0.628の範囲であり、よく安定していた。
(比較例)
焼成の際、焼成物への窒素ガスを、断熱材を介さず1箇所より供給した以外は実施例と同様にして比較例の蛍光体を得た。この比較例の蛍光体を実施例と同様にして輝度を測定した。その結果坩堝を置いた場所により輝度にバラツキがあり、以下の通りであった。
ガス供給部近傍に置いた坩堝の蛍光体の輝度は94、色座標x=0.325 y=0.634。ガス供給部から少し離れたところにおいた坩堝の蛍光体の輝度は104、色座標x=0.331 y=0.633。ガス供給から離れたところに置いた坩堝の蛍光体の輝度は121、色座標x=0.342 y=0.627であった。
この結果から明らかなように、比較例のガス供給口から離れた位置で焼成した蛍光体は、実施例の蛍光体と同様の色輝度を有しているのに対し、ガス供給口近くの蛍光体は、輝度が低く、かつ色座標から明らかなように発光波長が短波側にシフトしており、焼成温度が低い場合に相当する変化を生じてしまっている。このような蛍光体を一括して処理すれば、これらの発光特性を持つ粒子が混合され、実施例に比べ輝度が下がり、色度点もずれた蛍光体になることは明らかである。
これらの結果より、本発明の製造方法を用いることにより、均一で高輝度な蛍光体を量産することができた。
本発明は特に高温での焼成を行う、窒化物蛍光体の製造方法に関し、特に好適には1700℃以上で焼成する窒化物系蛍光体の製造方法において、エネルギーの節約と、蛍光体特性を向上させることができる。
1:焼成炉
2:断熱材
3:雰囲気ガス導入口
4:導入口
5:るつぼ
6:配管
7:炉の内部
10:導入される雰囲気ガス
11:加熱された導入される雰囲気ガス
12:実質的に熱交換することなく導入される雰囲気ガス

Claims (5)

  1. 加熱した雰囲気ガスを炉内に導入しながら、1700℃以上で蛍光体原料を加熱、焼成する蛍光体の製造方法であって、炉内に導入される前の雰囲気ガスを、炉に設置した断熱材の内部に配設された流路を通すことにより、雰囲気ガスと断熱材との間で熱交換させて加熱することを特徴とする蛍光体の製造方法。
  2. 雰囲気ガスの炉内への導入箇所が、複数箇所存在することを特徴とする請求項1記載
    の蛍光体の製造方法。
  3. 雰囲気ガスの炉内への導入が、多孔質断熱材の内部に導入されることにより行われる請求項1又は2記載の蛍光体の製造方法。
  4. 焼成が加圧炉で行われる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の製造方法で製造された蛍光体。
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