JP5672924B2 - 高温焼成蛍光体の製造方法と蛍光体 - Google Patents
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また、高温での焼成が必要となる蛍光体においては、少量試作品に対し、量産品の特性がかなり低くなることが、生じているという問題もあった。
つ同一焼成ロット内における蛍光体の特性のばらつきを抑えることが出来る。
(熱交換について)
本発明の製造方法の特徴のひとつは、雰囲気ガスを炉内に導入する際に、炉の断熱材の内部で熱交換を行うことであり、これにより断熱材の冷却時に発生する廃熱の除去を容易にすると同時に、炉内に導入される雰囲気ガスの温度を、大量のエネルギーをそのために使用することなく、上げることが出来、エネルギーの節約が可能である。すなわち炉の外部より導入される雰囲気ガスの流路を断熱材の内部に設けることにより、導入される雰囲気ガスと断熱材の間で熱交換が行われる。これにより断熱材は冷却され、導入される雰囲気ガスは加熱されることになる。
尚、本発明においては、断熱材中での熱交換以外に、導入される雰囲気ガスの加熱手段を別途備えている態様を排除するものではない。むしろ導入される雰囲気ガスの量が多い場合には、それにある程度の過熱を行った後、焼成炉内に導入し、断熱材中での熱交換を行う方法が、より好ましいこともある。
図を示す。従来の炉は、配管6が、断熱材2内部を、実質的に最短距離で貫通し、実質的に熱交換することなく導入される雰囲気ガス12は、十分温度が上がる前に、るつぼ5周辺に到達していたと考えられる。
(焼成温度について)
本発明の蛍光体の製造方法は、その焼成工程中の最高温度が1700℃以上の蛍光体の製造方法である。もちろんこれ以下の温度であっても、同一ロット内ばらつきの低減や、エネルギーの節約という本発明の効果が得られるが、焼成工程中の最高温度が1700℃以上の場合にその効果が著しいため好ましく、より好ましくは1800℃以上、特に好ましくは1900℃以上である。
また、本発明の製造方法は、焼成時の雰囲気ガス圧が、大気圧ではない場合に効果的である。大気圧より低い状態で焼成する場合には、内部のガス量が低いため、導入ガスの量が相対的に大きくなり、影響が大きくなりやすい。その一方、本発明の効果がより大きいのは加圧して焼成する場合であり、この場合導入するガスも高圧のものとなり、流量が大きくなって、温度ムラ等の問題を生じやすいためである。より好ましくは0.15MPa
以上、更に好ましくは0.5MPa以上である。上限値については効果の点では特に上限値は無いと考えられるが、実際の蛍光体の焼成条件を考えると、通常300MPa以下がよい。
本発明に用いられる雰囲気ガスの種類は特に限定されないが、高温での焼成が必要になる蛍光体としては窒化物系蛍光体が多いため、窒素雰囲気あるいはアルゴン雰囲気が好ましい。また、窒素に一部水素を混合したガスやアンモニアとの混合ガスも好ましく用いることが出来る。
本発明の蛍光体の製造方法が適用される蛍光体は、特に限定されないが、高温での焼成が必要となる蛍光体であり、窒化物系蛍光体が好ましい。特に好ましい蛍光体としては、JEM蛍光体、αサイアロン蛍光体、βサイアロン蛍光体、CASN系蛍光体(例えばMAlSiN3:Eu:Mは2価の金属元素)、SION系蛍光体、258系蛍光体(M2S
i5N8:Eu:Mは2価の金属元素)などに好適に使用できる。特に好適には、例示の中
で最も高温焼成をすることが一般的であるβサイアロン蛍光体である。これら各蛍光体の一般的製造方法は、例えば“PHOSPHOR HANDBOOK second Edition”のP331−338に記載があり、当業者に明らかで有ると思われるため、本明細書では、特許文献1(特開2005-255895号公報)に記載された、βサイアロン蛍光
体の例を持って説明する。しかしながら以下のβサイアロン蛍光体の製造方法は、あくまで例示であり、本発明の製造方法は、その要旨を越えない限り、βサイアロン蛍光体や、あるいは以下に記載の製造方法に限定されるものではない。
βサイアロン蛍光体の製造方法は、一例として次の方法を挙げることができる。
金属化合物の混合物であって、焼成することによりβサイアロン蛍光体(Si6-zAlzOzN8-z:M)を構成しうる原料混合物を、窒素雰囲気中において焼成する。最適焼成温度は組成により異なるので一概に規定できないが、一般的には1820℃以上2200℃以下の温度範囲で、安定して緑色の蛍光体が得られる。焼成温度が1820℃より低いと、発光中心となる元素Mがβ型Si3N4結晶構造を持つ窒化物または酸窒化物の結晶中に固溶することなく酸素含有量が高い粒界相中に残留するため、酸化物ガラスをホストとする発光となって、青色などの低波長の発光となり、緑色の蛍光は得られない。また、焼成温度が2200℃以上では特殊な装置が必要となり工業的に好ましくない。発光中心となる元素Mの中でもEuが高い輝度が得られるため好ましい。
粒径数μmの微粉末を出発原料とする場合、混合工程を終えた金属化合物の混合物は、粒径数μmの微粉末が数百μmから数mmの大きさに凝集した形態をなす(粉体凝集体と呼ぶ)。本発明では、粉体凝集体を嵩密度40%以下の充填率に保持した状態で焼成する。すなわち、通常のサイアロンの製造ではホットプレス法や金型成形後に焼成を行なっており粉体の充填率が高い状態で焼成されているが、本発明では、粉体に機械的な力を加えることなく、また予め金型などを用いて成形することなく、混合物の粉体凝集体の粒度を
そろえたものを、そのままの状態で容器などに嵩密度40%以下の充填率で充填する。必要に応じて、該粉体凝集体を、ふるいや風力分級などを用いて、平均粒径500μm以下に造粒して粒度制御することができる。また、スプレードライヤなどを用いて直接的に500μm以下の形状に造粒してもよい。また、容器は窒化ホウ素製を用いると蛍光体との反応が少ない利点がある。
断熱材の内部に導入される雰囲気ガスを通す方法としては、前述の熱交換の説明部分でも説明したように断熱材内部に配管を通し、例えば炉内を半周させるなどの方法により、上述の導入される雰囲気ガスの加熱と断熱材の排熱(冷却)を行う。こうして得られた加熱された導入される雰囲気ガスを炉内に導入することにより、導入される雰囲気ガス加熱のために別エネルギーを使用することなく、炉内の温度が導入される雰囲気ガスの方向のみ低くなる温度分布の問題を、小さくすることが出来る。
そしてより効率的な方法は、断熱材自体を多孔質とし、その内部に導入される雰囲気ガスを導入することが、簡易でかつ、導入箇所が無数に存在することに相当し、仮に多少炉内の雰囲気ガス温度と導入される雰囲気ガスに温度差があっても、その影響が均一化されるため、焼成温度を上げるなどの対策が取りやすいので好ましい。導入される雰囲気ガスの導入箇所が1箇所しかない場合には、温度を上げると焼成温度が上がりすぎる場所が出来てしまうため、このように焼成温度を上げて特性を向上させることは困難である。
以上の工程での微細な蛍光体粉末が得られるが、輝度をさらに向上させるには熱処理が効果的である。この場合は、焼成後の粉末、あるいは粉砕や分級により粒度調整された後の粉末を、1000℃以上で焼成温度以下の温度で熱処理することができる。1000℃より低い温度では、表面の欠陥除去の効果が少ない。焼成温度以上では粉砕した粉体どうしが再度固着するため好ましくない。熱処理に適した雰囲気は、蛍光体の組成により異なるが、窒素、空気、アンモニア、水素から選ばれる1種又は2種以上の混合雰囲気中を使用することができ、特に窒素雰囲気が欠陥除去効果に優れるため好ましい。
得られた蛍光体原料混合物を、外径9cm高さ10cmの窒化ホウ素製ルツボに200g充填し、加圧窒化炉を用い窒素圧0.92MPaの雰囲気下で、2000℃で12時間保持することにより焼成した。この際、焼成物への窒素ガスは、断熱材を介して複数の場所より供給した。焼成後得られた焼成粉体を、ナイロンメッシュ(N―No.305T,
目開き48um)をパスさせた。
前記熱処理により得られた粉体を、ナイロンメッシュ(N―No.305T,目開き48um)に全量通した。
上述の方法で得られた可視領域における発光スペクトルから励起波長域を除いた範囲で、JIS Z8724に準拠して算出したXYZ表色系における刺激値Yから、同様に波長455nmの励起光で化成オプトニクス株式会社(現三菱化学株式会社)製の黄色蛍光体Y3Al5O12:Ce(製品番号:P46−Y3)を励起して得られた発光スペクトルから励起波長を除いた範囲で同様に求めた刺激値Yの値を100%とした相対値を相対輝度として算出した(以下、単に「輝度」と称する場合がある。)。なお輝度は、波長455nmの励起光で化成オプトニクス株式会社(現三菱化学株式会社)製の黄色蛍光体Y3Al5O12:Ceを100%とした。
この実施例の蛍光体の輝度は、坩堝を置いた場所による輝度のバラツキが小さく、焼成したどの坩堝の蛍光体も輝度は120〜124の範囲であった。また色度xおよびyはそれぞれ0.341〜0.342、0.627〜0.628の範囲であり、よく安定していた。
焼成の際、焼成物への窒素ガスを、断熱材を介さず1箇所より供給した以外は実施例と同様にして比較例の蛍光体を得た。この比較例の蛍光体を実施例と同様にして輝度を測定した。その結果坩堝を置いた場所により輝度にバラツキがあり、以下の通りであった。
ガス供給部近傍に置いた坩堝の蛍光体の輝度は94、色座標x=0.325 y=0.634。ガス供給部から少し離れたところにおいた坩堝の蛍光体の輝度は104、色座標x=0.331 y=0.633。ガス供給から離れたところに置いた坩堝の蛍光体の輝度は121、色座標x=0.342 y=0.627であった。
2:断熱材
3:雰囲気ガス導入口
4:導入口
5:るつぼ
6:配管
7:炉の内部
10:導入される雰囲気ガス
11:加熱された導入される雰囲気ガス
12:実質的に熱交換することなく導入される雰囲気ガス
Claims (5)
- 加熱した雰囲気ガスを炉内に導入しながら、1700℃以上で蛍光体原料を加熱、焼成する蛍光体の製造方法であって、炉内に導入される前の雰囲気ガスを、炉に設置した断熱材の内部に配設された流路を通すことにより、雰囲気ガスと断熱材との間で熱交換させて加熱することを特徴とする蛍光体の製造方法。
- 雰囲気ガスの炉内への導入箇所が、複数箇所存在することを特徴とする請求項1に記載
の蛍光体の製造方法。 - 雰囲気ガスの炉内への導入が、多孔質断熱材の内部に導入されることにより行われる請求項1又は2に記載の蛍光体の製造方法。
- 焼成が加圧炉で行われる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の製造方法で製造された蛍光体。
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