JP5672167B2 - 熱処理用表面処理鋼板、熱処理鋼材の製造方法、および熱処理鋼材 - Google Patents

熱処理用表面処理鋼板、熱処理鋼材の製造方法、および熱処理鋼材 Download PDF

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Description

本発明は、焼き入れ等の熱処理が施される用途に適した表面処理鋼板と、熱処理鋼材の製造方法と、熱処理鋼材とに関する。
近年、自動車では、環境規制に伴う車体の軽量化による燃費性能や衝突安全性能をさらに向上するため、自動車用鋼材の高強度化による軽量化が推進されている。一般に、鋼材は強度が高くなると加工性が低下する傾向にある。そのため、自動車のシャシーや足回り部品といった部材の高強度化を図るため、それらの素材として高強度の鋼板を用いると、これらの部材の設計の自由度が著しく制限されたり、プレス加工のために高スペックの加工機械を導入する必要が生じたりする。
これに対し、鋼材を所望の形状に加工してから焼入れることによって高強度の部材を製造する技術がある。また、最近は、素材である鋼材を加熱してAc点以上の温度域で熱間加工し、熱間加工とほぼ同時にまたは熱間加工後速やかに、急冷(焼入れ)することによって高強度の熱処理鋼材を製造する技術(熱間加工がプレス成形の場合には、一般に熱間プレス(成形)、ホットプレスあるいはホットスタンプとも称される)が普及しつつある。この熱間プレスでは、加熱によるスケール発生の抑制や部材の耐食性の向上を目的として、加熱前の鋼材として亜鉛系めっき鋼材(主として鋼板)を使用する技術も開発されている。
このような熱処理鋼材は、特に前述の自動車用途においては、例えばスポット溶接により車体に組み立てられた後に、リン酸亜鉛処理等の化成処理を経て電着塗装され、部位によってはさらにスプレー塗装による中塗り、もしくは中塗りおよび上塗りが行われる。このとき、亜鉛系めっき鋼板を熱間プレスすることにより得られる熱処理鋼材では、サイクル腐食試験に供したときに、塗膜に皺状のフクレが発生し易い。
例えば特許文献1〜3には、亜鉛系めっき鋼板を熱間プレスした熱処理鋼材の塗膜密着性や塗装後耐食性を改善する発明が開示されている。
特許文献1には、亜鉛系めっき鋼板を熱間プレスした熱処理鋼材の表面に酸化亜鉛層が厚く形成されると、熱処理鋼材の塗膜密着性や塗装後耐食性に悪影響を及ぼすため、熱処理鋼材にショットブラストを行って酸化亜鉛層を除去するか、または酸化亜鉛層の厚さを低減してから塗装する発明が開示されている。
特許文献1により開示された発明によれば、確かに熱処理鋼材の塗膜密着性や塗装後耐食性を改善することが可能になるが、この発明を実施するためにはショットブラスト工程およびそのための設備が必要になるとともに、熱処理鋼材の形状や部位(例えば管状の部材の内面)によってはショットブラストを行い難いこともある。
特許文献2には、シリコーン樹脂皮膜により表面を被覆された溶融亜鉛めっき鋼板を熱間プレス用鋼板として用いる発明が開示され、また、特許文献3には、PおよびSiを含有するバリア層(Pとしてリン酸塩が例示され、Siとしてコロイダルシリカが例示される)により被覆された溶融亜鉛めっき鋼板を熱間プレス用鋼板として用いる発明が開示されている。
特許文献2、3により開示された発明によれば、亜鉛めっき層が前述の層により被覆されるために亜鉛の蒸発が抑えられ、これにより、中塗り塗膜や上塗り塗膜の密着性や塗装後耐食性が良好であるとされている。
特開2004−323897号公報 特開2007−63578号公報 特開2007−291508号公報
しかしながら、本発明者らが、特許文献2により開示された、シリコーン樹脂皮膜により表面を被覆された溶融亜鉛めっき鋼板を熱間プレス用鋼板として用いて得られる熱処理鋼材を追試したところ、後述するように、乾湿環境を繰り返すサイクル腐食試験での塗装後耐食性は良好であるものの、塩水に浸漬される環境では耐食性が必ずしも良好でないことが判明した。
このため、特許文献2により開示される発明によって得られる熱処理鋼材は、例えば、構造上水が溜まり易い部位や部材(例えば、ドアー下部の袋状構造部位やエンジンコンパートメント内の閉断面部材等)にそのまま用いることには適しておらず、この熱処理鋼材をこれらの部位や部材に適用するためには、水が溜まらないように設計上の工夫が必要になる。
本発明は、素地鋼板の上に亜鉛系めっき層を備え、さらにその上に、粒状のシリカを不揮発分の60%以上(本明細書では特に断りがない限り「%」は「質量%」を意味する)含有し、更にシランカップリング剤を含有する処理液から形成された、付着量0.4〜2g/mの表面処理層を備えることを特徴とする熱処理用表面処理鋼板である。
また、本発明は、この本発明に係る熱処理用表面処理鋼板を、(i)所定の温度域で熱間加工して所定の形状に成形し、熱間加工と同時にまたは熱間加工の後に、熱処理することによって、熱処理鋼材を製造すること、または(ii)所定の形状に成形して成形部材とした後に、この成形部材を所定の温度で熱処理することによって熱処理鋼材を製造すること、を特徴とする熱処理鋼材の製造方法である。
さらに、本発明は、前記(i)または(ii)に記載された熱処理鋼材の製造方法により製造される熱処理鋼材であって、素地鋼材の上に形成された酸化亜鉛皮膜と、この酸化亜鉛皮膜の上に形成された、微細な欠損部を有するSi含有被膜と備え、欠損部を通じて酸化亜鉛皮膜に由来する亜鉛酸化物がSi含有皮膜の表面に現れていることを特徴とする熱処理鋼材である。本発明に係る熱処理鋼材は、望ましくは、上述した本発明に係る製造方法により製造される。
本発明により、乾湿を繰り返す環境のみならず塩水に浸漬される環境においても、良好な耐食性を有する熱処理鋼材を得るための熱処理用表面処理鋼板と、この熱処理用表面処理鋼板を用いた熱処理鋼材の製造方法と、これにより得られる熱処理鋼材とを提供することができる。
図1は、実施例における熱処理鋼材の表面SEM像(BSE像)および表面近傍の断面SEM像である。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
1.熱処理用表面処理鋼板
本発明に係る熱処理用表面処理鋼板は、素地鋼板の上に亜鉛系めっき層を備え、さらにその上に、粒状のシリカを不揮発分の60%以上含有し、更にシランカップリング剤を含有する処理液から形成された、付着量0.4〜2g/mの表面処理層を備える。
(1)素地鋼板
素地鋼板の化学組成は、特に限定されないが、焼き入れによって高強度を得られる化学組成であることが好ましい。例えば、引張強度が980Mpaの熱処理鋼材を得ようとする場合には、素地鋼板が、C:0.1%以上0.3%以下、Si:0.01%以上0.5%以下、Mn:0.5%以上3.0%以下、P:0.003%以上0.05%以下、S:0.05%以下、Cr:0.1%以上0.5%以下、Ti:0.01%以上0.1%以下、Al:1%以下、B:0.0002%以上0.004%以下、N:0.01%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなり、必要に応じて、Cu:1%以下、Ni:2%以下、Mo:1%以下、V:1%以下、およびNb:1%以下から選ばれた1種または2種以上を含有する化学組成を有する焼入用鋼からなることが例示される。
(2)亜鉛系めっき
素地鋼板の上に形成される亜鉛系めっき層は、純亜鉛めっきでも合金系のめっきでも構わない。また、めっき手法も、電気めっきや溶融めっき等のいずれの方法でも構わない。好ましくは、加熱による亜鉛の蒸発や流動が少なくて済むように、溶融めっき法であれば、純亜鉛系(通常Alを少量含む)の溶融亜鉛めっき鋼板(GI)よりも合金化溶融亜鉛めっき鋼板のほうが好ましく、また電気めっき法によるものでもよい。
(3)表面処理層
亜鉛めっき層の上には、さらに粒状のシリカを含有する処理液から形成される表面処理層を備える。
ここで、「粒状のシリカ」とは、シランカップリング剤などのように処理液中に溶解した状態で存在するのではなく、一次粒径として数nm以上の固体として処理液中に分散した状態で存在する、Siの酸化物を主体とする物質を意味する。このような固体状態で処理液中に分散するシリカを用いることにより、シランカップリング剤などのように溶解状態でSi成分を供給する場合に比べて、塩水に浸漬された環境での耐久性に優れる熱処理鋼材を提供することができる。
具体的には、粒状のシリカの粒径は10nm以上500nm以下であることが好ましい。塗装後耐食性の面からはシリカ粒径はより小さいほうが有利であるが、粒子径が10nm未満のものは入手し難くコスト面で不利である。シリカの好ましい粒径は10nm以上30nm以下である。
本発明に係る熱処理用表面処理鋼板が備える表面処理層は、全不揮発分に対して粒状のシリカを60%以上含有する処理液から形成されるものであって、この表面処理層の付着量は0.4g/m以上2g/m以下である。すなわち、本発明に係る表面処理層は、付着量が0.4g/m以上2g/m以下であって、この表面処理層における粒状のシリカに基づくシリカ成分の含有量は60%以上である。
この表面処理層の付着量が0.4g/m未満であると、酸化亜鉛層の成長を十分に抑制できず、塗装後の表面処理鋼材の性能に悪影響を及ぼすおそれがある。一方、表面処理層の付着量が2g/mを超えるとコストが上昇するとともに、表面処理層の凝集力が弱くなり、この上に形成される塗膜が剥離し易くなると考えられる。このため、表面処理層の付着量は0.4g/m以上2g/m以下とする。
粒状のシリカを含有する処理液としては、代表的にはコロイダルシリカが例示され、具体的な市販製品としては日産化学(株)製のスノーテックス(登録商標)シリーズが例示される。
表面処理層の形成には、コロイダルシリカをそのままを亜鉛めっき鋼板上に塗布してもよいが、処理液の安定性や表面処理層の密着性を改善させるために、樹脂やシランカップリング剤と混合した処理液とすることが好ましい。また、粒状のシリカを含有することに基づく本発明の効果を阻害しない限り、処理液は、例えばカーボンブラック等の顔料やアルミナやジルコニア等の微粒子を含有してもよい。この場合、粒状のシリカは、上記のとおり処理液中の不揮発分(すなわち表面処理層中)の60%以上とする。なお、環境保護に対する配慮が強く求められる近時の傾向に鑑み、本発明に係る表面処理層は、6価クロムを含有しないことはもちろん、3価クロムも含めたクロム分を含有しないこと、すなわちクロムフリーであることが好ましい。
表面処理層の形成方法は、粒状のシリカを含有する処理液を亜鉛めっき鋼板表面に塗布して、乾燥、焼付すればよい。
塗布方法は、特定の方法に限定する必要はなく、素地鋼板を処理液に浸漬するか、または素地鋼板の表面に処理液をスプレーしてから、所定付着量となるようロールやガス吹き付けにより付着量を制御する方法や、ロールコータやバーコータで塗布する方法が例示される。
乾燥、焼付方法も、分散媒(主として水)を揮発させることができる方法であればよく、特定の方法には限定されない。過度に高温で加熱すると表面処理層の均一性が低下することが懸念され、逆に過度に低温で加熱すると生産性の低下が懸念される。したがって、優れた特性を有する本発明に係る熱処理用表面処理鋼板を安定的にかつ効率的に製造するためには、100℃程度の温度で10秒間程度加熱することが好ましい。
また、表面処理層の形成は、めっき鋼板の製造ラインにおいてインラインで行われることが経済的であり好ましいが、別ラインで形成してもよいし、あるいは成形のためのブランキングをしてから形成してもよい。
2.熱処理鋼材の製造方法
次に、上記の本発明に係る熱処理用表面処理鋼板を用いて熱処理鋼材を製造する方法を説明する。本発明に係る製造方法は、典型的には焼入れによる熱処理鋼材の高強度化を目的とするため、以降の説明では熱処理が焼入れである場合を例にとるが、本発明は焼入れに限定されるものではなく、熱処理が焼鈍し等の加熱後除冷であってもよい。
本発明に係る熱処理鋼材の製造方法は、
(A)本発明に係る熱処理用表面処理鋼板を所定の形状の部材へ冷間加工(または温間加工)してからAc点以上の所定温度に加熱して焼入れする方法
(B)本発明に係る熱処理用表面処理鋼板を、所定の温度域で熱間加工し、熱間加工と同時に、または熱間加工後速やかに焼入れする方法
のいずれの方法も含み、さらには、
(C)本発明に係る熱処理用表面処理鋼板を、最終の形状の途中の形状まで冷間加工した後、最終の形状への加工を熱間で成形する方法
(D)本発明に係る熱処理用表面処理鋼板を管状に冷間加工して鋼管とし、この鋼管を熱間で曲げ加工し、加工後に速やかに焼入れる方法
をも含む。
これらの方法における加熱は、熱処理鋼材全体を高強度化したい場合には、対象となる部材あるいは、成形前の熱処理用表面処理鋼材からなるブランクを加熱すればよいし、熱処理鋼材を部分的に高強度化したい場合には、誘導加熱や電子ビーム等によって対象となる部材あるいは、成形前の熱処理用表面処理鋼材からなるブランクを部分的に加熱すればよい。
なお、加熱時の雰囲気も特に制限する必要はなく、例えば大気中で加熱すればよい。
3.熱処理鋼材
このようにして得られる本発明に係る熱処理鋼材は、水洗とリン酸塩処理等の化成処理とが施された後、電着塗装および焼付けが施され、部位に応じてさらに、中塗り塗装および焼付け、もしくは、中塗り塗装および焼付けと上塗り塗装および焼付けが施される。
本発明に係る熱処理鋼材は、塗装後の耐食性が良好である。
なお、本発明に係る製造方法により得られる熱処理鋼材の、リン酸亜鉛処理後の外観を観察すると、熱処理鋼材の表面に、いわゆるスケと呼ばれるような部分的に化成結晶の付き方が薄くなる現象が生じ、化成結晶が必ずしも均一に形成されないことがあった。しかしながら、このような熱処理鋼材であってもその塗装後耐食性は良好であった。この理由は、必ずしも明確ではないが、次のように推定される。
熱処理によって熱処理鋼材の表面に酸化亜鉛が厚く成長すると、酸化亜鉛層自体が脆く、あるいはポーラスな形状であると考えられ、腐食環境下では水分等が侵入して塗膜下腐食が進行し、塗膜が剥離し易い状況にあると考えられる。
これに対し、粒状のシリカに基づくシリカ成分を含有する表面処理層を備える本発明の熱処理用鋼板を用いた場合、表面処理層が加熱時に熱処理鋼材表面の酸化亜鉛が厚く成長することを抑制するため、上述した状況の発生を有利に抑制できると考えられる。
さらに、熱処理後の表面処理層は微細な欠損部を有し、この欠損部を通じて、表面処理層の下部の酸化亜鉛皮膜に由来する酸化亜鉛が部分的に成長して表面処理層の表面に現れる。この微細な欠損部は、各皮膜層の熱膨張係数の違いや硬化や熱収縮に起因すると想像されるクラックや被膜中の樹脂分の燃焼等による被膜欠損によるものと考えられる。酸化亜鉛はリン酸亜鉛液との反応性が比較的良好なので、熱処理鋼材の表面全体として見れば化成結晶の付き方が不均一であっても、クラックによるアンカー効果と相まって、塗膜の密着性が良好であったと考えられる。
このように、本発明に係る表面処理鋼材は、表面にSi酸化物を主体とし微細なクラックを有する被膜が形成され、このクラックを通じて亜鉛酸化物が表面に現れている。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以降の実施例によって制限を受けるものではなく、本明細書に記載した主旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
(I)熱処理用表面処理鋼板の製造
熱間プレス用鋼板として、C:0.2%、Si:0.3%、Mn:1.3%、P:0.01%、S:0.002%、sol.Al:0.044%、Cr:0.2%、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有するとともに厚さが1.6mmである冷延鋼板を素地鋼板とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板(めっき付着量:片面あたり50g/m、めっき層中Fe含有量:12%)の一方の面(この面を評価面とする。)に、表1に示される処理液をバーコータで塗布し、最高到達温度100℃で8秒間保持されるような条件でオーブンを用いて乾燥することによって、熱処理用表面処理鋼板を製造した。処理液の付着量は、処理液中の不揮発分の全付着量が表1に示される数値になるようにバーコータの番手により調整した。
なお、表1における「シリカ等含有量」の欄に表示される数値は、処理液中における全不揮発分に対する下記「(i)シリカ等」の不揮発分の比率(単位:質量%)である。
表1中の各成分(記号)は、以下のとおりである。後述するように、シリカ以外の粒状物質としてアルミナ(ゾル)を含有する処理液も検討したが、この場合はアルミナを「(i)シリカ等」とみなした。
(i)シリカ等:シリカ/アルミナ
ST−C:コロイダルシリカ(日産化学(株)スノーテックス(登録商標)C)、粒径10〜20nm(カタログ値)
ST−S:コロイダルシリカ(日産化学(株)スノーテックス(登録商標)S)、粒径8〜11nm(カタログ値)
ST−20L:コロイダルシリカ(日産化学(株)スノーテックス(登録商標)20L)、粒径40〜50nm(カタログ値)ならびに
ST−O:コロイダルシリカ(日産化学(株)スノーテックス(登録商標)O)、粒径10〜20nm(カタログ値)
ST−OS:コロイダルシリカ(日産化学(株)スノーテックス(登録商標)OXS)、粒径8〜11nm(カタログ値)
ST−OL:コロイダルシリカ(日産化学(株)スノーテックス(登録商標)OXL)、粒径40〜50nm(カタログ値)
アルミナゾル200:アルミナゾル(日産化学(株)アルミナゾル200)
(ii)カーボンブラック:三菱化学(株)三菱(登録商標)カーボンブラック#1000
(iii)シランカップリング剤:チッソ(株)サイラエースS510
(iv)樹脂
A:ウレタン系樹脂エマルション(第一工業製薬(株)スーパーフレックス(登録商標)150)
B:シリコーン樹脂(信越化学(株)ストレートシリコーンワニスKR282)
(v)クロム酸:CrO(工業試薬)
処理液中では、還元剤(エチレングリコール)により一部還元されている。
(II)熱処理方法
酸化雰囲気(空燃比1.1)で900℃に設定されたガス炉内に前述の熱処理用表面処理鋼板を4分間保持して該鋼板の温度をほぼ900℃に到達させた後、この鋼板を大気中に取り出し、直ちに水冷金型で挟み込んで急冷することにより、熱処理鋼材を製造した。
このようにして得られた熱処理鋼材について、以下に列記する手法で、表面抵抗を測定するとともに塗膜密着性および塗装後耐食性を調査した。参考例として、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(表2の符号:GA)を加熱しないで同様の調査を行った。
(i)酸化亜鉛皮膜層
X線回折装置を用い、熱処理鋼材を表面からX線回折した際に、ZnOのピーク(CoKα線の場合、2θ=37°近傍)のピーク強度を測定し、同カウントで測定したGA無処理材(GA)を基準とした際の、ZnO強度が、25%未満を◎、25%以上50%未満のものを○、基準材の50%以上90%未満を△、基準材と同等または同等以上のものと×とした。
(ii)塗膜密着性、塗装後耐食性
熱処理鋼材に、下記に記載の条件で脱脂および表面調整を行い、続いて、リン酸亜鉛処理および電着塗装をこの順に、以下の条件で行った。
・脱脂条件
ファインクリナー4380(日本パーカライジング製)200g/L液(50℃)に2分間浸漬後に水洗する。
・表面調整条件
パーコレンZ(日本パーカライジング製)1g/L液(常温)に10秒間浸漬する。
・化成処理
PB−L3080(日本パーカライジング製)液温43℃で2分間スプレーする。
・電着塗装
塗料:エポキシ樹脂系カチオン電着塗料
電圧:200V
焼き付け条件:170℃のオーブンで20分間焼き付ける。
塗膜厚さ:15μm
電着塗装まで施したサンプルの塗膜密着性および塗装後耐食性を、以下の3種類の試験で調査した。
(ii−1)塗膜密着性;一次密着性
評価面の塗膜に碁盤目を付与し、ニチバン(株)製テープ(CT405A−24)を貼付けて剥がし、塗膜剥離が全く認められないものを○(良)とし、一マスでも剥離が認められるものを×(不良)と評価した。
(ii−2)塗装後耐食性1;温塩水浸漬試験
評価面の塗装にカッターナイフ(荷重500gf)で切れ目を入れたサンプルを、5%NaCl水溶液(50℃)中に240時間浸漬した。その後、試料を取り出し、切れ目上に、ニチバン(株)製テープ(CT405A−24)を貼付けて剥がし、カット部からの塗膜ハクリ巾を測定した。ハクリ巾が1mm未満を○(優)とし、1mm以上2mm未満を△(良)とし、2mm以上を×(不良)とした。
また、並行して、端面をポリエステルテープでシールしたサンプルを、前述の条件と同条件で温水(塩水)に浸漬した。その後、試料を取り出し、上記(ii−1)と同様に評価面の塗装に碁盤目を付与してその剥離状況で調査した。
(ii−3)塗装後耐食性2;サイクル腐食試験
評価面の塗装にカッターナイフ(荷重500gf)で切れ目を入れ、下記サイクル条件のサイクル腐食試験180サイクルを実施した。
[サイクル条件]
SST(5%NaCl、35℃雰囲気)2hr→乾燥(60℃)2hr→湿潤(50℃、98%RH)4hrを1サイクルとして実施した。
その後、カット部から1cm幅程度の領域で発生する皺状のフクレ(写真掲載)の有無を観察し、フクレ無しを○(良)とし、フクレ有りを×(不良)とした。
結果を表2にまとめて示す。
表2に示すように、本発明に係るサンプル(符号Si1〜Si10)は、一次密着性および塗装後耐食性が良好であり、加熱をしないGAに近いまたは同等の性能を示した。
これに対し、シリカに代えてアルミナを含有するもの(符号Al)やシリカを含まないクロメート処理をしたものは(符号Cr1〜3)は、良好な塗装後耐食性が得られなかった。
シリカを含まないウレタン系樹脂を塗布したもの(符号U)は、温塩水浸漬試験では性能良好だったが、サイクル腐食試験ではフクレが発生した。
シリカを含有するクロメート処理をしたもの(符号Cr−Si1〜3)およびシリコーン樹脂を塗布したもの(符号S)は、GAの弱点であったサイクル腐食試験における塗装後耐食性は良好だったが、温塩水浸漬試験での性能が不芳であった。
さらに、一部の熱処理鋼材については、鋼材表面近傍の構成について調査した。図1は、それら熱処理鋼材の表面SEM像(BSE像)および表面近傍の断面SEM像である。
本発明に係る熱処理鋼材Si3の表面は、断面から見ると、下層:酸化亜鉛被膜−上層:シリコン含有皮膜の二層構造になっていた。
さらにこれを表面から観察すると、Si含有皮膜は多数のクラックを有し、そのクラックから下層の酸化亜鉛被膜が観察された。すなわち、表面処理層には、硬化や熱収縮に起因すると想像される微細なクラックが多数形成され、これら微細なクラックを通じて、表面処理層の下部の酸化亜鉛皮膜に由来する酸化亜鉛が部分的に成長して表面処理層の表面に現れていた。
また、本発明に係る熱処理鋼材Si10の表面は、酸化亜鉛層が面的に露出していた。この機構の詳細は不明であるが、Si含有皮膜のクラックから酸化亜鉛が噴き出したか、あるいはSi含有皮膜自体にクラックというよりも微細な面的欠陥が存在することによると考えられる。
このようなSi含有皮膜におけるクラックや微細な面的欠陥、すなわち微細な欠損部は、上述した熱処理鋼材Si3、10以外の熱処理鋼材Si1、2、4〜9にも存在していた。
これに対し、熱処理鋼材Sでは、熱処理前のシリコーン樹脂皮膜に由来すると考えられるシリコン含有皮膜が全面を覆っていた。一方、熱処理鋼材C、U、GAでは、表面に厚い酸化亜鉛皮膜が形成されていた。

Claims (4)

  1. 素地鋼板の上に亜鉛系めっき層を備え、さらにその上に、粒状のシリカを不揮発分の60質量%以上含有し、更にシランカップリング剤を含有する処理液から形成された、付着量0.4〜2g/mの表面処理層を備えることを特徴とする熱処理用表面処理鋼板。
  2. 請求項1に記載された熱処理用表面処理鋼板を、所定の温度域で熱間加工して所定の形状に成形し、前記熱間加工と同時にまたは前記熱間加工の後に、熱処理することを特徴とする熱処理鋼材の製造方法。
  3. 請求項1に記載された熱処理用表面処理鋼板を所定の形状に成形して成形部材とした後に、該成形部材を所定の温度域で熱処理することを特徴とする熱処理鋼材の製造方法。
  4. 請求項2または請求項3に記載された熱処理鋼材の製造方法により製造される熱処理鋼材であって、素地鋼材の上に形成された酸化亜鉛皮膜と、該酸化亜鉛皮膜の上に形成された、微細な欠損部を有するSi含有被膜と備え、前記欠損部を通じて前記酸化亜鉛皮膜に由来する亜鉛酸化物が前記Si含有皮膜の表面に現れていることを特徴とする熱処理鋼材。
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