JP5671951B2 - 車輪用転がり軸受装置 - Google Patents
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Description
図10に図示されるように、この特許文献1に示す車輪用転がり軸受装置510の構成は次の通りである。ハブホイール520のハブ軸523の外周面に、内輪531、外輪540及び玉(転動体)551、552を備えた転がり軸受としての複列のアンギュラ玉軸受530が組み付けられている。一方、駆動軸561の端部が連結される等速ジョイント560の継手外輪570にはその外輪筒部571の端面572から外輪軸部573が一体に突出されている。また、ハブホイール520のハブ軸523の内孔の内周面には内歯スプライン524が形成され、この内歯スプライン524に噛み合う外歯スプライン574が外輪軸部573の外周面に形成されている。そして、内外歯のスプライン524、574が相互に噛み合わされながらハブホイール520のハブ軸523の内孔に外輪軸部573が嵌挿され、外輪軸部573の先端から突出された雄ねじ部575に締付ナット576が締め付けられることで、ハブホイール520と等速ジョイント560とがトルク伝達可能に結合されている。
また、等速ジョイント660とハブ軸623とのトルク伝達の構成は、ハブホイール620と複列の転がり軸受とを分離不可にユニット化する連結部材690が構成されており、等速ジョイント660と接する面に外歯スプライン692が形成されており、等速ジョイント660の継手外輪670に形成した内歯スプライン662と係合することで達成される。このような構成によれば、等速ジョイント660の継手外輪670に構成されていた外輪軸部を省略することができ、加工コストの抑制と等速ジョイント660の軽量化を図ることができる。
ここで、既存のワッシャにおけるボルト締結の緩み対策は、ボルト680、ハブ軸623の間に介挿されたワッシャによる相互の摩擦力によって図るものである。そのため、ボルト締結の緩みがワッシャの厚みを超えると、上述した摩擦力が発生せずワッシャとしての緩み対策は有効に機能しない。結果、ボルト締結の緩みが進行し最終的には等速ジョイント660が抜け落ちてしまうという問題がある。
また、上記した特許文献2の車輪用転がり軸受装置610における等速ジョイント660とハブ軸623とのトルク伝達の構成においては、等速ジョイント660とハブ軸623の間の内外歯のスプライン662、692の係合する量は少ない構成とされている。すなわち、図10に示されるように従来の特許文献1のようなハブ軸523の内孔の内周面における内歯スプライン524と、等速ジョイント560の継手外輪570に構成される外輪軸部573における外歯スプライン574との係合する長さに比して少ない長さの係合となっている。そのため、等速ジョイント660とハブ軸623の間の内外歯のスプライン662、692が係合が外れるとボルト締結の緩みの進行が著しくなるおそれが大きい。そのため、かかるボルト締結の緩み対策は更なる改善余地がある。
先ず、第1の発明に係る車輪用転がり軸受装置は、ハブホイールのハブ軸と等速ジョイントがトルク伝達可能に連結された車輪用転がり軸受装置であって、前記ハブ軸の外周面の一部には複列の転がり軸受の内側軌道面の一方が構成されており、該ハブ軸の外周面には前記複列の転がり軸受の内側軌道面の他方が構成される環状の内輪が配設されており、前記内側軌道面の外周側には、前記内側軌道面に対応して、その内周面に前記複列の転がり軸受の外側軌道面が構成される外輪が配設されており、前記ハブ軸及び内輪に形成される内側軌道面と外輪に形成される外側軌道面との間には転動体が組みつけられて転がり軸受を構成しており、前記ハブホイールのハブ軸と等速ジョイントとの間のトルク伝達可能とする連結手段は、等速ジョイントの継手外輪とハブホイールのハブ軸との連結部位間に両者の軸方向の相対的離反移動によりトルク伝達がされなくなる係合手段により連結される構成とされており、前記ハブホイールのハブ軸は、軸方向に貫通孔が形成されており、前記等速ジョイントの継手外輪の端面には、前記ハブ軸の貫通孔に向かって突出形成されると共にネジ孔が形成される連結軸部位が構成されており、前記連結軸部位は、前記ハブ軸の貫通孔の一端側から挿入され、前記ハブ軸の貫通孔の他端側からボルトを締結することにより前記ハブ軸と連結軸部位とを結合し、前記ボルトの頭部と前記連結軸部位との間には、前記ボルトの締結緩みを防止するバネ部材が圧縮して介挿されており、該圧縮して介挿されるバネ部材はその圧縮されて機能するバネ機能が前記等速ジョイントの継手外輪とハブホイールのハブ軸との連結部位間に配設される係合手段による前記両者の軸方向の相対的離反移動によりトルク伝達がされなくなるまでは機能する構成として介挿されていることを特徴とする。
これによれば、バネ部材は、圧縮介挿されることにより備えるバネ機能が、等速ジョイントの継手外輪とハブホイールのハブ軸との連結部位間に配設される係合手段による両者の軸方向の相対的離反移動によりトルク伝達がされなくなる状態(等速ジョイントとハブ軸の間のトルク伝達可能な連結構成が解除状態)となった後においてもバネ機能を発揮する構成であるためボルト締結力を保持する作用を得ることができる。そのため、ボルト締結緩みの進行速度を緩和することができ、等速ジョイントが抜け落ちてしまう前にハブ軸へトルク伝達しないで空転させる状態とすることができる。
図1及び図2に図示されるように、この実施例1の車輪用転がり軸受装置10は、概略、ハブホイール20と、転がり軸受としての複列のアンギュラ玉軸受30と、等速ジョイント60と、座付きボルト80と、コイルスプリング90とを備えて構成されている。
図1及び図2に図示されるように、ハブホイール20は、円筒状をなすハブ軸23と、ハブ軸23の一端部寄り外周面に形成されたフランジ21とを一体に有している。そして、フランジ21には、ブレーキロータ(図示しない)を間に挟んで車輪(図示しない)を取り付けるための複数本のハブボルト22が所定ピッチでかつ圧入によって固定されている。
ハブ軸23の外周には、外輪40、内輪31、転動体としての複数の玉51、52及び保持器55、56を備えた複列のアンギュラ玉軸受30が組み付けられている。
さらに、外輪40の他方の外側軌道面42に対応する内側軌道面33が外周面に形成された内輪31がハブ軸23の小径軸部26の外周面に嵌込まれた後、小径軸部26の先端部をかしめて拡開した拡開かしめ部27が形成されることによって、内輪31が段差部と拡開かしめ部27との間に固定されている。
また、ハブホイール20のフランジ21が形成される側の端部は、車輪が嵌合される嵌合部35が形成されている。また、ハブ軸23の軸中心には軸方向に貫通する貫通孔34が形成されている。また、ハブ軸23の端部のうち嵌合部35が構成される側の貫通孔34の図1で見て左端面には座付きボルト80の頭部81と対向するボルト座面36が構成されている。
なお、本実施例における等速ジョイント60と対向する小径軸部26側が本発明における「ハブ軸の貫通孔の一端側」に相当し、ハブ軸23の貫通孔34のうちボルト座面36が構成されている側が本発明における「ハブ軸の貫通孔の他端側」に相当する。
図1及び図2に図示されるように、等速ジョイント60は、周知のツェッパー型、バーフィールド型と呼ばれている等速ジョイントが使用されており、駆動軸61の一端に一体状に連結された継手内輪62と、継手外輪70と、これら継手内輪62、継手外輪70の間に配設された複数のボール63と、これら複数のボール63を保持する保持器64を備えて構成されている。等速ジョイント60の継手外輪70は、椀形状の外輪筒部71と、外輪筒部71外周の端面72の中心部から一体に突出された連結軸部位73とを備え、連結軸部位73の先端には孔部が形成されており、内周面に雌ねじ部75が形成されている。
図1及び図2に図示されるように、連結軸部位73は、ハブ軸23の貫通孔34のうち小径軸部26側から挿入される。一方、ハブ軸23の貫通孔34のうちボルト座面36が構成されている側から後述する座付きボルト80を挿入して、連結軸部位73の雌ねじ部75と締結することによりハブ軸23と連結軸部位73とを結合する。
ハブ軸23の端面(拡開かしめ部27の端面)と、この端面に突き合わされる等速ジョイント60の継手外輪(外輪筒部71)70の端面72との相互には、環状部分が設けられている。そして、環状部分が相互に噛み合うことでハブホイール20と等速ジョイント60とをトルク伝達可能に連結するサイドフェーススプライン28、78がそれぞれ形成されている。これにより、ハブホイール20と等速ジョイント60とがトルク伝達可能に結合される。
また逆に、等速ジョイント60の継手外輪70の端面72とハブホイール20のハブ軸23の端面(拡開かしめ部27の端面)との連結部位間におけるサイドフェーススプライン28、78の相互に噛み合わされる係合状態が、両者の軸方向の相対的離反移動により係合されない状態となると、等速ジョイント60とハブホイール20とはトルク伝達がされなくなる。
この座付きボルト80は、先端部に上記した等速ジョイント60の継手外輪70に構成される連結軸部位73に形成された雌ねじ部75と螺合可能な雄ねじ部83が形成されている。また、連結軸部位73に形成された雌ねじ部75と座付きボルト80に形成された雄ねじ部83の螺合する長さは、サイドフェーススプライン28、78の相互に噛み合わされる係合長さより長く設定されている。なお、座付きボルト80が本発明の「ボルト」に相当する。
図1及び図2に図示されるように、このコイルスプリング90は、ハブ軸23と等速ジョイント60を連結する際のボルト締結の締結緩みの進行速度を緩和する役目を果たすものである。なお、本発明の「バネ部材」の実施態様の一例として、実施例1においてコイルスプリング90が適用されている。
図3(a)に図示されるように、コイルスプリング90は、金属製の棒状部材が螺旋状に巻かれて円柱状に形成されており、軸方向にかかった圧縮力に応じて変形し、自然長に戻ろうとする力が弾性力として蓄えられる構成となっている。図2に図示されるように、このコイルスプリング90の円柱形状は座付きボルト80の軸径より大きく、かつハブ軸23の貫通孔34の孔径より小さく形成されている。このコイルスプリング90はハブ軸23の貫通孔34内に挿入される座付きボルト80の軸部と頭部81との間に形成された座面部84と、連結軸部位73との間に圧縮して介挿されている。またコイルスプリング90の圧縮される長さは、サイドフェーススプライン28、78の相互に噛み合わされる係合長さより長く設定されている。
図4に図示されるように、コイルスプリング90が圧縮されて機能するバネ機能は、等速ジョイント60の継手外輪70の端面72とハブホイール20のハブ軸23の端面(拡開かしめ部27の端面)との連結部位間におけるサイドフェーススプライン28、78の相互に噛み合わされる係合状態が、両者の軸方向の相対的離反移動によりトルク伝達がされなくなるまでは機能する構成として介挿されている。そのため、サイドフェーススプライン28、78の相互に噛み合わされる係合状態が解除された以降においても、コイルスプリング90の弾性力が座付きボルト80の頭部81と連結軸部位73とを軸方向において引き離す方向に付勢するため、座付きボルト80のボルト締結力を保持する作用を発生させる。
したがって、車両の走行時等において、駆動軸61のトルクが等速ジョイント60の継手内輪52、複数のボール63及び継手外輪70に順次伝達され、駆動軸61と同方向に継手外輪70が回転される。等速ジョイント60に伝達されたトルクは、ハブホイール20のハブ軸23の端面(拡開かしめ部27の端面)と、等速ジョイント60の継手外輪70の端面72との相互の環状部分のサイドフェーススプライン28、78の噛み合いによってハブホイール20に伝達され、車輪が回転駆動される。
図4に図示されるように、コイルスプリング90は、圧縮介挿されることにより備えるバネ機能が、等速ジョイント60の継手外輪70とハブホイール20のハブ軸23との連結部位間に配設される係合手段による両者の軸方向の相対的離反移動によりトルク伝達がされなくなる状態(等速ジョイント60とハブ軸23の間のトルク伝達可能な連結構成が解除状態)となった後においてもバネ機能を発揮する構成であるため座付きボルト80の締結力を保持する作用を得ることができる。そのため、座付きボルト80の締結緩みの進行速度を緩和することができ、等速ジョイント60が抜け落ちてしまう前にハブ軸23へトルク伝達しないで空転させる状態とすることができる。
この筒状バネ部材92の円筒状の外周面は軸方向に直行して波形状の弾性変形部位93が形成されており、軸方向上に力が加わるとこの弾性変形部位93が圧縮変形する構成となっている。なお、その他の構成は実施例1と同様である。以上より、本実施例2の車輪用転がり軸受装置12は、実施例1と同一の機能を果たし、同一の作用、効果を得ることができる。
また、コイルスプリング90の圧縮される長さは、連結リング277の内外周面に形成される内歯スプライン277a、外歯スプライン277bが相互に噛み合わされる係合長さより長く設定されている。このコイルスプリング90のバネ機能が発揮する構成によって、上記トルク伝達がされなくなる状態となった後においても、座付きボルト80の締結力を保持する作用を得ることができるため、座付きボルト80の締結緩みの進行速度を緩和することができ、等速ジョイント260が抜け落ちてしまう前にハブ軸223へトルク伝達しないで空転させる状態とすることができる。
その他の構成については実施例1と同様である。以上より、本実施例3の車輪用転がり軸受装置210は、実施例1と同一の機能を果たし、同一の作用、効果を得ることができる。
すなわち、この実施例5は、ハブ軸223の外周に外輪40、内輪31、転動体としての複数の玉51、52及び保持器55、56及び連結リング277を組み付けた後、ハブ軸223の小径軸部26の先端部をかしめて拡開した拡開かしめ部327が形成されてユニット化した構成としたものである。その他の構成は実施例3と同様である。以上より、本実施例5の車輪用転がり軸受装置212は、実施例3と同一の機能を果たし、同一の作用、効果を得ることができる。
例えば、前記実施例1から6においては、複列の転がり軸受として、複列のアンギュラ玉軸受30が採用された場合を例示したが、複列の円すいころ軸受けを用いてもこの発明を実施可能である。
12 車輪用転がり軸受装置
20 ハブホイール
21 フランジ
22 ハブボルト
23 ハブ軸
25 大径軸部
26 小径軸部
27 拡開かしめ部
28 サイドフェーススプライン
30 アンギュラ玉軸受
31 内輪
32 内側軌道面
33 内側軌道面
34 貫通孔
35 嵌合部
36 ボルト座面
40 外輪
41 外側軌道面
42 外側軌道面
45 固定フランジ
51 玉
52 玉
55 保持器
56 保持器
60 等速ジョイント
61 駆動軸
62 継手内輪
63 ボール
64 保持器
70 継手外輪
71 外輪筒部
72 端面
73 連結軸部位
75 雌ねじ部
78 サイドフェーススプライン
80 座付きボルト
81 頭部
82 軸部
83 雄ねじ部
84 座面部
85 凹部
90 コイルスプリング
92 筒状バネ部材
93 弾性変形部位
210 車輪用転がり軸受装置
212 車輪用転がり軸受装置
220 ハブホイール
223 ハブ軸
227 延長軸部
227a 外歯スプライン
260 等速ジョイント
270 継手外輪
277 連結リング
277a 内歯スプライン
277b 外歯スプライン
279 筒状体
279b 内歯スプライン
310 車輪用転がり軸受装置
312 車輪用転がり軸受装置
Claims (1)
- ハブホイールのハブ軸と等速ジョイントがトルク伝達可能に連結された車輪用転がり軸受装置であって、
前記ハブ軸の外周面の一部には複列の転がり軸受の内側軌道面の一方が構成されており、該ハブ軸の外周面には前記複列の転がり軸受の内側軌道面の他方が構成される環状の内輪が配設されており、前記内側軌道面の外周側には、前記内側軌道面に対応して、その内周面に前記複列の転がり軸受の外側軌道面が構成される外輪が配設されており、前記ハブ軸及び内輪に形成される内側軌道面と外輪に形成される外側軌道面との間には転動体が組みつけられて転がり軸受を構成しており、
前記ハブホイールのハブ軸と等速ジョイントとの間のトルク伝達可能とする連結手段は、等速ジョイントの継手外輪とハブホイールのハブ軸との連結部位間に両者の軸方向の相対的離反移動によりトルク伝達がされなくなる係合手段により連結される構成とされており、
前記ハブホイールのハブ軸は、軸方向に貫通孔が形成されており、
前記等速ジョイントの継手外輪の端面には、前記ハブ軸の貫通孔に向かって突出形成されると共にネジ孔が形成される連結軸部位が構成されており、
前記連結軸部位は、前記ハブ軸の貫通孔の一端側から挿入され、前記ハブ軸の貫通孔の他端側からボルトを締結することにより前記ハブ軸と連結軸部位とを結合し、
前記ボルトの頭部と前記連結軸部位との間には、前記ボルトの頭部と前記連結軸部位とを軸方向において引き離す方向に付勢して前記ボルトの締結緩みを防止するバネ部材が圧縮して介挿されており、該バネ部材の圧縮される長さは前記係合手段の係合長さより長く設定されており、該圧縮して介挿されるバネ部材はその圧縮されて機能するバネ機能が前記等速ジョイントの継手外輪とハブホイールのハブ軸との連結部位間に配設される係合手段による前記両者の軸方向の相対的離反移動によりトルク伝達がされなくなる状態となった後においてもバネ機能を発揮する構成として介挿されていることを特徴とする車輪用転がり軸受装置。
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