JP5669629B2 - テラヘルツ波の測定装置及び測定方法 - Google Patents

テラヘルツ波の測定装置及び測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、テラヘルツ波の測定装置及び測定方法に関し、特には、時間領域でのテラヘルツ波を測定する装置(THz-TDS装置、THz-Time Domain Spectroscopy装置)及び方法に関する。より詳しくは、本発明は、測定装置に存在するオフセット電流を抑制する技術に関する。
テラヘルツ波は、0.03THz以上30THz以下の範囲のうちの任意の周波数帯域の成分を有する電磁波である。この様な周波数帯域には、生体分子を始めとして、様々な物質の構造や状態に由来する特徴的な吸収が多く存在する。この様な特徴を活かして、非破壊にて物質の分析や同定などを行う検査技術が開発されている。また、X線に替わる安全なイメージング技術や高速な通信技術への応用が期待されている。
一方、テラヘルツ波の時間波形は、多くの場合、サブピコ秒のパルス形状である。一般的に、この様なパルスを実時間で取得することは困難である。そのため、THz-TDS装置は、フェムト秒オーダのパルス幅を有する超短パルス光によってサンプリング計測を行っている。このテラヘルツ波のサンプリングは、テラヘルツ波を発生する発生部とテラヘルツ波を検出する検出部とに夫々到達する励起光の時間差を調整することで実現される。例えば、この時間差は、折り返し光学系を有するステージ(本明細書では遅延光学部とも呼ぶ)を励起光の伝搬経路に挿入し、励起光の折り返し量を調整することで取得する(特許文献1参照)。多くの場合、上記発生部又は検出部として、微小間隙を有するアンテナ電極パターンを半導体膜に設けた光伝導素子を用いる。
現在の技術状況では、テラヘルツ波を検出する検出部から出力される信号強度は、極めて微弱である。そのため、測定装置のS/N比を確保するための手法が幾つか検討されている。例えば、測定装置のバックグランドノイズを軽減するため、固体撮像素子にテラヘルツ波が照射された時の信号からテラヘルツ波が遮断された時の信号を差し引いて差分を取得する手法が提案されている。ただし、これは、検出部として光伝導素子ではなく固体撮像素子を用いる例である(特許文献2参照)。
特開2008-20268号公報 特開2007-292600号公報
特許文献2の技術を特許文献1の技術に適用した場合、光伝導素子の出力について、テラヘルツ波が照射された時の信号と、テラヘルツ波が遮断された時の信号(バックグランドノイズに相当)とを夫々取得し、その差分を求める形態になる。光伝導素子の出力は電流信号なので、この信号の検出には電流電圧変換回路(本明細書では電流検出部とも呼ぶ)が多く用いられる。測定装置のS/N比を向上するためには、この電流検出部の電流電圧変換率が高いものを用いることが望ましい。ところが、回路の出力には回路構成に準じた定格があるため、回路の出力は、この定格に制限される。特に、バックグランドノイズ(本明細書では、バックグランドノイズに相当する電流信号をオフセット電流とも呼ぶ)が大きい場合、電流検出部の出力が飽和しない様に、電流電圧変換率を制限する必要が生じる。よって、測定装置のS/N比を更に改善するためには、テラヘルツ波の信号成分(バックグランドノイズを差し引いた信号成分)に対して、回路の定格を越えない範囲でなるべく大きい電流電圧変換率を設定することが望まれている。
上記課題に鑑み、時間領域分光法によりテラヘルツ波の時間波形を測定する本発明のテラヘルツ波測定方法は、次の工程を含む。光伝導素子により、テラヘルツ波に依る電流を含む信号を電流信号として検出する電流検出工程。前記電流検出工程で検出される電流信号を電圧信号として検出する電圧検出工程。前記電流検出工程で検出される電流信号のうち、テラヘルツ波の電界の変化に依らないオフセット電流を、前記電圧検出工程の前段で引き込む引き込み工程。前記電圧検出工程で検出される電圧信号に基づきオフセット電流を監視し、監視結果を受けて前記引き込み工程で引き込むオフセット電流量を調整する調整工程。前記引き込み工程を実行しながら前記電圧検出工程で検出される電圧信号に基づき前記テラヘルツ波の時間波形を取得する取得工程。そして、前記調整工程でのオフセット電流の監視と調整は、前記テラヘルツ波の時間波形の測定を行わない待機中に実行する。
また、上記課題に鑑み、時間領域分光法によりテラヘルツ波の時間波形を測定する本発明のテラヘルツ波測定装置は、次の構成要素を有する。光伝導素子を含み、テラヘルツ波に依る電流を含む信号を電流信号として検出する検出部。前記検出部が出力する電流信号を電圧信号として検出する電流検出部。前記検出部が出力する電流信号のうち、前記検出部に到達するテラヘルツ波の電界の変化に依らないオフセット電流を、前記電流検出部の入力部分で引き込む電流引き込み部。前記電流検出部で検出される電圧信号に基づき前記オフセット電流を監視し、前記電流引き込み部が引き込む電流量を調整する調整部。前記電流検出部から前記調整部に至る信号経路の接続と遮断との間で選択を行う切替部。前記電流検出部で検出される電圧信号に基づき前記テラヘルツ波の時間波形を取得する処理部。そして、前記切替部は、前記処理部が前記時間波形の取得を行わない当該装置の待機中に前記信号経路を接続し、前記処理部が前記時間波形の取得を行うときに前記信号経路を遮断する。
本発明に依れば、検出部に到達するテラヘルツ波の電界の変化に依らないオフセット電流を測定待機中に求める。そして、測定時に、電流検出部に入力する電流信号のうち、オフセット電流を引いて、テラヘルツ波の電界の変化に依る信号成分だけを検出する。この結果、測定のS/N比の改善が可能となる。
本発明に係る測定装置の一例の概略構成図。 電流引き込み部の構成例を説明する図。 電流引き込み部の構成例を説明する図。 実施形態1の補正動作を説明する図。 実施形態2の補正動作を説明する図。 実施形態3の補正動作を説明する図。 実施形態4の補正動作を説明する図。 実施形態5の補正動作を説明する図。 実施例1の測定例を説明する図。
時間領域分光法によりテラヘルツ波の時間波形を取得する本発明の装置及び方法では、光伝導素子を用いて検出される電流信号のうち、テラヘルツ波の電界の変化に依らないオフセット電流を、電流信号を電圧信号として検出する前段ないし入力部分で引き込む。引き込むオフセット電流量は、電圧信号に基づくオフセット電流の監視結果に基づいて調整され、オフセット電流の引き込みをしながら、電圧信号に基づきテラヘルツ波の時間波形を取得する。そして、オフセット電流の監視と調整は、テラヘルツ波の時間波形の測定を行わない待機中に実行されることを特徴とする。この考え方に基づき、時間領域分光法によりテラヘルツ波の時間波形を取得するための本発明の装置及び方法の基本的な構成は、上述した構成を有する。
本発明の思想を実施し得る形態について、図面を参照して説明する。本発明は、後述する検出部102が出力するオフセット電流を抑制し、構築されるテラヘルツ波時間波形のベースラインを補正することが特徴である。ここで、本発明におけるオフセット電流とは、テラヘルツ波が遮断された、若しくは遮断されるとみなされた状態で検出部102が出力する信号である。オフセット電流は、テラヘルツ波の時間波形に関連が薄いことから、バックグランドノイズの一種とみなすことができる。検出部102として後述する光伝導素子を適用する場合、オフセット電流は、光伝導素子に照射する励起光によって定常的に発生するキャリヤに起因する信号である。オフセット電流を抑制した状態でテラヘルツ波の電界変動に起因する電流変化を検出すると、後述する電流検出部104は、高い電流電圧変換率の回路が適用でき、装置のS/N比を高めることができる。従来技術の考え方に依れば、テラヘルツ波の照射、非照射の信号を個々に検出し差動増幅を行う形態となり、オフセット電流を加味して電流信号を電圧に変換しなくてはならない。具体的には、オフセット電流が大きいと、電流検出部104の出力が飽和しない様に、電流電圧変換率を制限する必要性があり、装置のS/N比が本発明の形態に比べ制限されるという点が大きく異なる。より詳しくは、従来技術の考え方では、信号を検出する段階でオフセット電流を含んでいる信号を扱うが、本発明は、信号を検出する段階で、すでにオフセット電流が抑制されている信号を扱うという点が異なる。
図1は、本発明のテラヘルツ波時間波形測定装置の一例の概略構成図である。図1の装置は、THz-TDS装置の基本構成を踏襲しており、時間領域でテラヘルツ波の時間波形を測定する装置である。図1に示す本装置の従来の構成を踏襲する部分は、発生部101、検出部102、遅延光学部103、電流検出部104、処理部105、バイアス印加部106、レーザ源110である。そして、本発明の特徴であるオフセット電流の補正を担う部分は、電流引き込み部107、調整部108、切替部109である。
まず、従来の構成を踏襲する部分の説明をする。
発生部101は、テラヘルツ波を発生する部分である。発生部101における発生原理として、瞬時電流を利用する手法と、キャリヤのバンド間遷移を利用する手法がある。瞬時電流を利用する手法としては、半導体や有機結晶の表面に励起光を照射してテラヘルツ波を発生する手法がある。この手法として、金属電極でアンテナパターンを半導体薄膜上に形成した素子(光伝導素子)に電界を印加した状態で励起光を照射する手法がある。また、PINダイオードが適用できる。また、利得構造におけるキャリヤのバンド間遷移を利用する手法としては、半導体量子井戸構造を用いる手法が適用できる。
検出部102は、テラヘルツ波の電界強度を検出する部分である。検出部102における検出原理として、励起光照射時の光伝導性の変化より、テラヘルツ波の電界強度に対応した電流を検出する手法がある。この様な光伝導性の変化より電流を検出する手法において、上述した光伝導素子が適用できる。
本実施形態において、レーザ源110は、超短パルスレーザを出力する部分である。上述した発生部101と検出部102は、この超短パルスレーザの照射により、キャリヤを半導体薄膜に励起することで動作する。このことから、本明細書では、この超短パルスレーザを励起光とも呼ぶ。図1に示す様に、励起光は、L1とL2の二つの光路に分岐される。ここでは、光路L1を通る励起光は発生部101に照射される。光路L2を通る励起光は、後述する遅延光学部103を介して検出部102に照射される。
テラヘルツ波の時間波形は、多くの場合ピコ秒以下のパルス波形であるため、実時間での取得が困難である。そのため、上述した励起光によって、テラヘルツ波の時間波形をサンプリング計測する。発生部101のテラヘルツ波発生時と検出部102のテラヘルツ波検出時との間の遅延時間を調整する遅延部である遅延光学部103は、テラヘルツ波の時間波形を構成するデータについて、このサンプリングする位置を調整する部分である。具体的には、発生部101に照射する励起光に対し、検出部102に照射する励起光の到達時間を遅延させる。この発生部101と検出部102に夫々到達する励起光の時間差の調整手法は、励起光が伝搬する光路長を直接調整する手法と実効的な光路長を調整する手法がある。光路長を直接調整する手法としては、励起光を折り返す折り返し光学系とこの光学系を折り返し方向に動かす可動部を用いる手法がある。実効的な光路長を調整する手法としては、励起光が伝搬する光路中の時定数(屈折率)を変化させる手法がある。図1は、1段の折り返し光学系と可動部としての直動ステージとを用いる例を示している。可動部によって折り返し光学系の位置を調整することで、レーザ源110から検出部102に至る光路長L2が変化する。この光路長の変化を利用して、発生部101と検出部102とに夫々到達する励起光の時間差を、光路長差L2-L1より換算して調整する。この可動部の駆動速度が速ければ、テラヘルツ波の時間波形の取得時間は短くなる。
バイアス印加部106は、発生部101を駆動するためのバイアスを供給する部分である。発生部101として光伝導素子を用いる場合、アンテナパターンを含む金属電極に電圧を印加する。特に、後述する電流検出部104がロックイン検出系を含む場合、バイアス印加部106が供給する電圧は、ロックイン検出系の参照信号と同等の周波数で変調させる。ロックイン検出を行う場合、変調方法は、バイアス印加部106によりバイアスを変調する態様だけでなく、光チョッパーを用いて励起光を変調する態様も採用可能である。後者の態様のときは、バイアス印加部106は、直流バイアスを光伝導素子に印加する。
電流検出部104は、電流信号を測定可能なレベルの電圧信号に変換する部分である。検出部102として光伝導素子を用いる場合、電流検出部104は、検出部102から出力される電流信号を電圧信号に変換する。この電流信号を電圧信号に変換する変換率を電流電圧変換率と呼ぶ。電流電圧変換率は、電流検出部104に入力される電流信号に対する電流検出部104の出力が回路の定格を越えて飽和しない範囲で選択される。測定装置のS/N比を向上させるためには、この電流電圧変換率は大きい程良い。前述した様に、検出部102から出力される信号が微小な場合、電流検出部104は、ロックイン検出系を含むことがある。具体的には、電流電圧変換を担う回路の後段にロックイン検出系が配置される。ロックイン検出系を含む場合、電流電圧変換を担う部分の回路の出力は、ロックイン検出系の入力定格を超えない範囲に調整する。
処理部105は、テラヘルツ波の時間波形を構築し測定データを作成する部分である。遅延光学部103に依る光路長の変化量と電流検出部104の出力を参照し、時間波形を構築する。より詳細には、光路長の所定の変化量毎に電流検出部104の出力をプロットして時間波形を構築する。この光路長の変化量が、測定データの時間間隔tに相当する。そして、測定データの強度データ列として、時間間隔tでプロットされたデータが格納される。測定装置のS/N比を改善するために、測定点毎に、遅延光学部103を構成する直動ステージの位置を止め(或いは、止まっているとみなせるくらい直動ステージを低速駆動し)、電流検出部104の出力を平均化し、時間波形を構築する手法がある。この手法は、ステップスキャン方式とも呼ばれる。また、遅延光学部103を構成する直動ステージを高速駆動し、時間波形を複数回取得し、処理部105で測定データの強度データ列の各要素を平均化して時間波形を平均化する手法がある。この手法は、ラピッドスキャン方式とも呼ばれる。
周波数スペクトルを出力する場合、処理部105は、測定データを参照し、テラヘルツ波の時間波形をフーリエ変換してスペクトルデータを取得する。THz-TDS装置を分析装置として用いる場合は、サンプル(検体)にテラヘルツ波を照射した時の時間波形の変化を求める。すなわち、発生部101で発生されたテラヘルツ波を検体に照射し、検体を透過或いは該検体を反射したテラヘルツ波を検出部102で検出し、得られた時間波形を用いて検体の情報を取得する。また、処理部105は、サンプルと該サンプルに照射されるテラヘルツ波の相対的な位置をモニタすることで、サンプルの画像を取得することができる。以上の様な構成によって、THz-TDS装置は、遅延光学部103に依る励起光の光路長変化と、それに伴う電流検出部104の出力の変化をモニタし、検出部102に照射されるテラヘルツ波の時間波形を構築する。
以上の構成は、THz-TDS装置として知られる一般的な構成である。本実施形態の測定装置は、この構成に加え、検出部102から出力されるオフセット電流の補正を担う部分を備えることが特徴である。
本実施形態を含む本発明におけるオフセット電流の補正とは、テラヘルツ波の時間波形のベースラインを、測定装置の基準電位に近似ないし最も近づけることを指す。例えば、測定装置の基準電位は、図2(a)の「COM」で表記されている様に、電流検出部104を構成する回路の基準電位である。ベースラインはこの基準電位に近似され、図4(b)の様に、検出部102に照射されるテラヘルツ波の電界変動は、処理部105においてベースラインを基準に構築される。特に、本発明では、このベースラインの補正は、オフセット電流を抑制することで実現するが、抑制するオフセット電流の電流量としては、測定装置の待機中に予め監視した値を用いる。測定装置の待機中とは、測定装置がテラヘルツ波時間波形の測定を行ってない期間を指す。例えば、測定開始に至る準備期間や、意図的に設けられた待機期間を指す。これは、テラヘルツ波時間波形の測定中にベースラインを不用意に変化させ、結果として、検出部102に照射されるテラヘルツ波の電界変動と異なる時間波形が、テラヘルツ波の時間波形に重畳することを防止するためである。
このオフセット電流の補正を担う部分の説明をする。上述した様に、この部分は、電流引き込み部107、調整部108、切替部109で構成する。図2と図3は、電流引き込み部107と調整部108の構成例を示したものである。電流引き込み部107は、オフセット電流に相当する電流量を引き込む部分である。調整部108は、この引き込む電流量を調整する部分である。この引き込む電流量を調整するために、調整部108は、電流検出部104の出力を監視する機能も有する。図2(a)は、電流引き込み部107として、可変抵抗部210と引き込み用バイアス印加部211で構成する例を示したものである。図2(b)は、電流引き込み部107として、抵抗部215と引き込み用バイアス印加調整部216で構成する例を示したものである。図2(a)の構成は、抵抗(可変抵抗部210)に流れる電流量を、調整部108に繋がる接触子を可変抵抗部210に沿って移動させることで抵抗値を調整部108により変化させて調整する形態である。図2(b)の構成は、抵抗(抵抗部215)に流れる電流量を、抵抗のバイアス印加調整部216に印加するバイアスを調整部108で変化させて調整する形態である。また、図3は、電流引き込み部107として、電流シンク回路317と引き込み用バイアス印加部211で構成する例を示したものである。電流シンク回路317は、トランジスタ等の半導体素子で構成する。この場合、調整部108は半導体素子のバイアス関係(バイアス電圧やバイアス電流)を変化させて、電流引き込み部107に引き込む電流量を調整する。こうした構成に依れば、オフセット電流値を求める際、調整部108は、電流検出部104と電流引き込み部107と共にループを形成し、電流検出部104の出力を監視している。つまり、調整工程でのオフセット電流の監視と調整は、待機中に、電圧検出と引き込みと共にループを形成し、電圧検出工程で検出される電圧信号の出力を電圧検出工程における基準電位に近似した値にする様な引き込み電流量を求めることで行われる。この様に信号のループを形成することで、精度の高いオフセット電流値が得られ、測定の補正の精度が高まる。
上述した様に、図2と図3において、検出部102は光伝導素子で構成する。具体的には、検出部102は、光伝導膜213とアンテナ電極212を含み構成される。光伝導膜213は、励起光の照射によりキャリヤを生成し、テラヘルツ波の電界変動によってキャリヤが電流δiとして出力される。これらの動作は、アンテナ電極212における微小間隙を含む部分(励起光照射領域214)で行われる。実際には、検出部102が出力する電流信号としては、このテラヘルツ波の電界変動に依る電流(以後テラヘルツ波電流と呼ぶ)δiの他に、励起光の照射により発生した直流に近い電流Iが出力される。この電流Iがオフセット電流であり、テラヘルツ波電流δiは、この電流Iを基準に増減する形I+δiで検出部102より出力される。
例えば、光伝導膜213として低温成長させたガリウムヒ素(LT-GaAs)を用いた場合、オフセット電流Iは数nAのオーダとなり、テラヘルツ波電流δiは数100nAのオーダとなることが多い。この場合、オフセット電流に比べテラヘルツ波電流は十分大きいので、電流検出部104の電流電圧変換率はテラヘルツ波電流を標的として選択すればよい。言い換えると、オフセット電流の影響は小さいと言える。ところが、光伝導膜213として、低温成長させたインジウムガリウムヒ素(LT-InGaAs)を適用した場合、オフセット電流Iは数100μAのオーダとなり、テラヘルツ波電流δiは数100nAのオーダとなることが多い。この場合、オフセット電流に比べテラヘルツ波電流は数桁小さいので、電流検出部104の電流電圧変換率は、回路の定格を越えない様にオフセット電流に律則される。つまり、テラヘルツ波電流に対しては小さい電流電圧変換率しか適用できず、測定装置のS/N比は制限されてしまう。このことから、検出部102の出力からオフセット電流Iを引き、電流検出部104では、テラヘルツ波電流δiに対して大きい電流電圧変換率を適用することが重要となる。尚、上述したオフセット電流やテラヘルツ波電流の値は、光伝導膜の特性や励起光の光量などの条件によって変動する。
図1の説明に戻って、切替部109は、電流検出部104から調整部108に至る信号経路に配置される。そして、切替部109は、測定装置の待機中に電流検出部104と調整部108を接続し、調整部108は電流検出部104の出力を監視する。また、測定装置がテラヘルツ波の時間波形を測定している時は、切替部109は、電流検出部104と調整部108の接続を解除する。この時、調整部108は、待機中での監視結果を参照し、電流引き込み部107が引き込む電流量を調整する。この結果、検出部102から出力されるオフセット電流Iは電流引き込み部107に引き込まれ、電流検出部104には、テラヘルツ波電流δiが入力される。本発明では、このオフセット電流を引く工程を補正と呼び、本発明の測定装置はこの状態でテラヘルツ波時間波形の測定を行う。
以上の様な構成によって、テラヘルツ波時間波形測定装置は、オフセット電流を抑制し、時間波形の補正を行う。この結果、より検出感度の高い(すなわち電流電圧変換率が高い)電流検出部104を選択でき、測定装置のS/N比の改善ができる。また、本測定装置は、逐次オフセット電流を測定し装置の補正を行う態様ではなく、測定待機中に予め求められたオフセット電流値を用いて装置の補正を行う態様である。この態様によって、時間波形の測定及び構築中に、テラヘルツ波時間波形のベースラインの位置が変動し、検出部102に到達するテラヘルツ波との関連がない擬似的な信号が混入することを抑止する。この結果、測定結果の信頼性が向上する。また、高い電流電圧変換率を有する電流検出部104を適用することで、信号強度が十分確保できる。この結果、これまで汎用的に用いられてきたロックイン検出系を省略した装置構成の提供が容易になり、装置の小型化にも寄与することができる。
次に、より具体的な測定装置及び方法の実施形態と実施例を以下に述べる。
(実施形態1)
実施形態1を説明する。これまでの説明と共通する部分の説明は省略する。本実施形態の測定技術は、上述したステップスキャン方式とラピッドスキャン方式のいずれの方式にも適用できる。本実施形態の待機中とは、測定開始に至る準備期間である。詳細には、待機中とは、テラヘルツ波の時間波形測定を行う直前の状態で、測定装置が測定開始に相当するトリガを待ち受けている状態である。特に、本実施形態の場合、この待機中において、検出部102に到達するテラヘルツ波パルスよりも早いタイミングで励起光L2が検出部102に照射される様に、遅延光学部103によって励起光の光路長が調整されている。つまり、待機中において、テラヘルツ波は遮断されているとみなせる位置で、測定装置の補正を行うものである。
図4(a)は、本実施形態の測定の動作フローを示した図であり、図4(b)は、動作イメージを示した図である。動作の説明では、図1を併用する。図4(a)に依ると、測定装置は、待機中であるかどうかを確認する(S401)。上述した様に、待機中とは、測定装置が測定開始に相当するトリガを待ち受けている状態である。測定装置が待機中である場合、測定装置は切替部109を「ON」にする(S402)。そして、切替部109は、電流検出部104と調整部108を接続する。この接続によって、測定装置は、調整部108が電流検出部104の出力を監視することを許可する。切替部109が「ON」の時、調整部108は、電流検出部104の出力を参照し、オフセット電流を測定する(S403)。そして、調整部108は、このオフセット電流がなくなる様に、電流引き込み部107によって引き込まれる電流量を調整する。
具体的には、電流検出部104の出力が測定装置の基準電位に近似する様に、引き込む電流量を調整する。調整部108は、サンプルホールド回路、又はこれに相当する記憶部を有しており、調整量が保持されている。これらS401からS403に至る一連の動作は、測定装置が待機中である限り、繰り返される。図4(b)の動作イメージを見ると、テラヘルツ波時間波形の最初の箇所で、測定装置は、オフセット電流を抑制し、ベースラインを探っていることに相当する。ただし、この箇所は、テラヘルツ波時間波形の最初の箇所とは限らない。測定装置の設定によっては、遅延光学部103で調整されるベースラインを探る位置と測定が開始される位置とが異なることもある。
測定装置が測定開始に相当するトリガを検知すると(S401)、測定装置は切替部109を「OFF」にする(S404)。そして、切替部109は、電流検出部104と調整部108の接続を解除する。この接続解除によって、測定装置は、調整部108が電流検出部104の出力を監視する作業を停止する。切替部109が「OFF」の時、調整部108は、工程S403で求められたオフセット電流量を参照して、電流引き込み部107が引き込む電流量を調整する(S405)。この状態がベースラインの補正を行った状態であり、測定装置は、この補正状態でテラヘルツ波時間波形の測定を行う(S406)。この時、電流検出部104は、オフセット電流を差し引いたテラヘルツ波電流を検出している。図4(b)の動作イメージを見ると、ベースラインの補正を行った後に、この補正状態を保ったまま、測定装置は時間波形の測定を行っている。ラピッドスキャン方式の様に、複数の時間波形の測定が必要な場合、測定装置は、工程をS401に戻す。複数の時間波形の補正を対象とする場合、時間波形毎に再補正を行ってもよいし、時間波形の群毎(例えば、10回の時間波形の測定を1群とする)に再補正を行う形態でもよい。測定を終了する場合、測定動作を終了する(S407)。本実施形態でも、上記実施形態で述べた効果が奏される。
(実施形態2)
実施形態2は、実施形態1の変形例である。具体的には、実施形態1の動作フローにおいて、待機中の定義が異なり、待機中にテラヘルツ波を遮断する動作が加わる点が異なる。同じく、これまでの説明と共通する部分の説明は省略する。本実施形態の待機中とは、意図的に設けられた待機期間であり、時間波形の測定中に待機期間を挿入する。この時、検出部102の照射されるテラヘルツ波は遮断され、テラヘルツ波が遮断された状態で測定の補正を行うものである。待機中に、検出部に到達するテラヘルツ波を遮断する手法は、他の実施形態でも採用することができる。
図5(a)は、本実施形態の測定の動作フローを示し、図5(b)は、動作イメージを示す。ここでも、図1を併用して説明する。図5(a)に依ると、測定装置は、待機中であるかどうかを確認した後(S501)、測定装置が待機中である場合、測定装置は、切替部109を「ON」にする(S502)。切替部109が「ON」の時、測定装置は、検出部102に照射されるテラヘルツ波を遮断する。本実施形態の場合、測定装置は、バイアス印加回路106によって発生部101から発生するテラヘルツ波を止める。ただし、検出部102に照射されるテラヘルツ波を遮断する目的を達成する手段であれば、この形態に限らない。例えば、テラヘルツ波の伝搬経路に、物理的にテラヘルツ波を遮断する機構を用いてもよい。また、発生部101に照射される励起光L1を遮断する機構を用いてもよい。その後、調整部108は、オフセット電流を測定し、電流引き込み部107によって引き込まれる電流量を調整する(S504)。
測定装置が測定開始に相当するトリガを検知すると(S501)、測定装置は切替部109を「OFF」にする(S505)。そして、テラヘルツ波の遮断状態を解除し(S506)、測定装置は、ベースラインの補正を行う(S507)。その後、測定装置は、遅延光学部103に依る光路長の変化量と電流検出部104の出力をプロットする(S508)。定められた時間長の時間波形が構築できてない、若しくは、更に時間波形の構築が必要な場合(S509)、測定装置は、遅延光学部103によって測定点を移動する(S510)。そして、測定装置は、工程をS501に戻す。測定を終了する場合、測定動作を終了する(S509)。
図5(b)の動作イメージを見ると、測定点毎にベースラインの補正を行い、この補正状態を保ったまま、測定装置は時間波形の測定を行っている。これまでの説明では、測定点毎にベースラインの補正を行ったが、測定点の群毎(例えば、10点の強度測定を1群とする)に再補正を行う形態でもよい。本実施形態は、ステップスキャン方式とラピッドスキャン方式のいずれにも適用できるが、好適には、ステップスキャン方式に適用する。
この様に、本実施形態における測定では、オフセット電流を求める際に、検出部102に到達するテラヘルツ波を遮断する。この結果、実施形態1の効果に加え、電流検出部104の出力からテラヘルツ波の電界の影響を確実に除外することができるので、オフセット電流の測定精度が向上する。
(実施形態3)
実施形態3も、実施形態1の変形例である。具体的には、実施形態1の動作フローにおいて、待機中の定義が異なる。同じく、これまでの説明と共通する部分の説明は省略する。本実施形態の待機中とは、測定開始に至る準備期間である。詳細には、待機中とは、遅延光学部103が、第1の時間波形の測定が終了する位置から、第2の時間波形の測定を開始する位置へと移動するのに要する期間である。この期間に電流検出部104が出力する信号を利用して、本実施形態では、測定装置の補正を行う。
図6(a)は、本実施形態の測定の動作フローを示し、図6(b)は、オフセット電流を求める際の測定装置の動作イメージを示し、図6(c)は、測定装置が時間波形を測定する際の動作イメージを示す。尚、図6において、時間波形の測定に伴う遅延光学部103の移動方向を正方向、時間波形の終了位置から開始位置に至る遅延光学部103の移動方向を負方向と定義する。つまり、本実施形態では、遅延光学部103が負方向に移動している時に、補正のための情報を取得する。
図6(a)に依ると、測定装置は、待機中であるかどうかを確認する(S601)。本実施形態では、遅延光学部103が時間波形の測定終了位置か開始位置にいるかを確認する。遅延光学部103が測定終了位置にいる場合、測定装置は待機中であるとみなす。測定装置が待機中である場合、測定装置は切替部109を「ON」にする(S602)。そして、測定装置は、遅延光学部103を負方向に駆動する(S603)。本実施形態の場合、遅延光学部103が正方向に移動する速度と負方向に移動する速度は同じと仮定している。遅延光学部103を負方向に駆動する場合、検出部102には、テラヘルツ波と励起光L2が照射されるので、電流検出部106は図6(b)の様な信号を出力する。図6(b)は、ベースラインに対して、オフセット電流分だけオフセットしたテラヘルツ波の波形が検出されている。調整部108は、この信号からローパスフィルタを介して直流信号成分を抽出し、オフセット電流を求める(S604)。そして、調整部108は、このオフセット電流がなくなる様に、電流引き込み部107によって引き込まれる電流量を定める。尚、遅延光学部103が負方向に移動する際、実施形態2で述べた様に、検出部102に照射されるテラヘルツ波を遮断してもよい。
遅延光学部103が時間波形の測定開始位置に到達し、測定装置が、測定開始に相当するトリガを検知すると(S601)、測定装置は切替部109を「OFF」にする(S605)。そして、測定装置は、遅延光学部103が正方向に移動する様に指令を出し(S606)、待機中に定めたオフセット電流量を参照して、電流引き込み部107が引き込む電流量を調整する(S607)。この状態がベースラインの補正を行った状態であり、測定装置は、この補正状態でテラヘルツ波時間波形の測定を行う(S608)。この時、電流検出部104は、オフセット電流を差し引いたテラヘルツ波電流を検出している。図6(c)の動作イメージを見ると、ベースラインの補正を行った後に、この補正状態を保ったまま、測定装置は時間波形の測定を行っている。
本実施形態は、ラピッドスキャン方式の様に、複数の時間波形の測定が必要な場合を想定している。遅延光学部103が測定終了位置に移動し、更に時間波形の測定を必要とする場合、測定装置は、工程をS601に戻す。尚、本実施形態はラピッドスキャン方式に限るものではなく、ステップスキャン方式で複数の時間波形を測定する際にも有効である。測定を終了する場合、測定動作を終了する(S609)。
この様に、本実施形態では、遅延光学部103が時間波形の測定を終了する位置から開始する位置へ移動する間の電流検出部104の出力をモニタし、直流成分を抽出してオフセット電流値を求めている。つまり、電流検出工程が、発生部と検出部とに夫々到達する励起光の時間差を、遅延光学部を用いて、励起光が伝搬する光路長によって調整する工程を含む様にする。そして、調整工程では、測定終了位置から次の測定開始位置への遅延光学部の移動に要する期間を待機中とし、該待機中に、電圧検出工程で検出される電圧信号の出力をモニタし、モニタした信号の直流成分より引き込み電流量を求める。この様に、時間波形の測定に直接関与していない期間を利用して測定装置の補正のための情報を取得することで、作業効率の改善ができる。
(実施形態4)
実施形態4は、実施形態3の変形例である。具体的には、実施形態3の動作フローにおいて、負方向に移動する際の遅延光学部103の駆動速度を正方向と異ならせる。同じく、これまでの説明と共通する部分の説明は省略する。図7(a)は、本実施形態の測定の動作フローを示し、図7(b)は、オフセット電流を求める際の測定の動作イメージを示し、図7(c)は、測定装置が時間波形を測定する際の動作イメージを示す。尚、図7における遅延光学部103の正方向、負方向の定義は、実施形態3で述べたものと同じである。また、図7では、正方向の速度をVとする時、負方向の速度をV’としている。
本実施形態では、遅延光学部103を負方向に移動する際、検出部102の出力信号の変化速度が測定装置の時定数を超える様に、遅延光学部103の駆動速度がV’>Vとなる様に調整する(S604)。その結果、図7(b)の様に、遅延光学部103が負方向に移動する際の電流検出部104の出力が、直流に近似される。測定装置は、この近似された信号より、オフセット電流を求める(S704)。
この様に、本実施形態では、遅延光学部103が時間波形の測定を終了する位置から開始する位置へ移動する速度を調整することで、電流検出部104の出力を、ほぼ直流に近似する。つまり、調整工程では、電流検出工程で検出される電流信号の出力の変化速度が測定装置の時定数を超える速度となる様に、待機中における遅延光学部の移動を行わせる。この結果、電流検出部104の出力から直流成分を抽出するシステムが省略できるので、装置の小型化が容易になる。
(実施形態5)
実施形態5も、実施形態3の変形例である。具体的には、実施形態3の動作フローにおいて、ベースラインの補正を行う際に、一様なオフセット電流を参照するのではなく、オフセット電流波形を参照する点が異なる。また、時間波形を構築する各測定点について、個々に補正を行う点が異なる。同じく、これまでの説明と共通する部分の説明は省略する。図8(a)は、本実施形態の測定の動作フローを示し、図8(b)は、オフセット電流波形を求める際の測定の動作イメージを示し、図8(c)は、測定装置が時間波形を測定する際の動作イメージを示す。図8における遅延光学部103の正方向、負方向の定義は、実施形態3で述べたものと同じである。
これまでの実施形態では、調整部108は、電流検出部104の出力を参照し、オフセット電流値を求めていた。これに対し、本実施形態では、遅延光学部103の光路長調整量と共に、オフセット電流波形を取得する(S804)。本実施形態では、実施形態4で述べた様に、電流検出部104の出力が直流に近似する様に遅延光学部103の負方向の移動速度を調整している。ただし、これに限らず、検出部102に照射されるテラヘルツ波を遮断する手法を用いてもよい。若しくは、検出部102に照射されるテラヘルツ波を遮断しつつ、負方向に移動する遅延光学部103の速度を調整してもよい。要は、調整部108において、直流近似されたオフセット電流波形が取得される形態であればよい。図8(c)の動作イメージの様に、測定装置は、このオフセット電流波形を参照し、遅延光学部103の光路長の調整位置に応じてベースラインの補正値を調整し、時間波形を取得する(S807、S808)。
本実施形態では、テラヘルツ波の時間波形を構成するデータ列のデータ要素毎に、オフセット電流値を設定ないし定義する。つまり、調整工程では、待機中に、電圧検出工程で検出される電圧信号に基づきオフセット電流波形を取得することで、時間波形を構成するデータ列のデータ要素毎にオフセット電流値を定義し、引き込み電流量をデータ要素毎に調整できる様にする。これにより、より厳密な補正が可能となる。その結果、複数のデータ要素を含むデータ列から構築されるテラヘルツ波時間波形の測定精度が向上する。
(その他の実施形態)
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。すなわち、上記実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そこのコンピュータ(又はCPU、MPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。記憶媒体は、コンピュータに実行させるためのプログラムを格納できるものであれば何でもよい。こうした記憶媒体は、上記テラヘルツ波測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを格納した、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体である。
(実施例1)
次に実施例1を説明する。具体的には、実施形態1に対する実施例を説明する。尚、これまでの説明と共通する部分の説明は省略する。本実施例では、図1の発生部101と検出部104として、同じデバイス構造の光伝導素子を用いる。具体的には、光伝導素子の光伝導膜213は、低温成長させたガリウムヒ素(LT-GaAs)を用いる。図2を参照すると、アンテナ電極212は、アンテナ長20μm、アンテナ幅10μmのアンテナパターンと、このアンテナパターンと外部回路を電気的に接続するための電極を含み構成する。アンテナパターンには、6μmの微小間隙が含まれている。また、アンテナパターンと外部回路とを電気的に接続するための電極の幅は5μmである。
図1の遅延光学部103は、1段の折り返し光学系と可動部を用いる構成である。折り返し光学系は、リトロリフレクタを含む光学系である。可動部は直動ステージで、繰り返し位置決め精度は±20nmである。また、遅延光学部103はエンコーダを有しており、直動ステージの位置をモニタしている。このエンコーダの出力を参照して、本実施例の装置は励起光の光路L1とL2の光路長差を取得する。電流検出部104は、図2で示すような電流電圧変換アンプを用いる。本実施例では、本発明の効果を確認するため、電流電圧変換率10MΩと100MΩのアンプを用いる。これらのアンプの出力定格は±10Vである。
図1の処理部105は、電流検出部104の出力と遅延光学部103にあるエンコーダから出力される位置情報とをモニタするためのA/D変換ボードを有する。また、装置を構成する各部分を制御するための制御ボードを含む。制御する部分は、遅延光学部103の位置と切替部109である。切替部109の制御にはTTL信号を用いる。具体的には、装置が待機状態のとき「L」を出力し、測定状態のとき「H」を出力する。また、処理部105は、これらのボードを制御しかつ信号処理を行う演算部分をも含み構成される。
図1のバイアス印加部106は、低ノイズの電源を用いる。本実施例では、直流電源を用いる。バイアス印加部106として直流電源を用いるため、本実施例の装置は、テラヘルツ波の信号を無変調で直接的に取得する。ここでは、バイアス印加部106は、約30Vの直流電圧を発生部101に印加する。
図1の電流引き込み部107は、図2(b)のように抵抗部215と引き込み用バイアス印加調整部216とで構成する。抵抗部215としては固定抵抗を用いる。本実施例では100MΩの抵抗を用いる。引き込み用バイアス印加調整部216は、外部より印加電圧を調整できる電源である。印加電圧の調整のために用いる信号はアナログ的でもデジタル的でもよい。本実施例ではアナログ的に行う。本実施例では、バイアス印加部106が直流電圧を出力するので、引き込み用バイアス印加調整部216は直流電圧を抵抗部215に印加する。図1の切替部109は、処理部105から出力されるTTL信号の状態を参照して電流検出部104と調整部108間の信号線を電気的にスイッチングするアナログスイッチである。
図1の調整部108は、電流検出部104の出力と基準信号を比較する比較回路と、比較回路の結果より引き込み用バイアス印加調整部216の調整信号を作り出すための積分回路で構成する。基準信号の値によって時間波形のベースラインの位置を決定する。本実施例では、時間波形のベースラインを0Vにしたいので、基準信号は0Vである。比較回路は、この基準信号と電流検出部104の出力の差分を出力し、積分回路は、この差分信号を積分する。この作業を装置の待機中に繰り返すことで、時間波形のベースラインが0Vに漸近していく。また、調整部108は、切替部109の出力を参照して積分回路の出力を固定化するサンプルホールド回路を有する。具体的には、切替部109の出力が開放状態になった場合、サンプルホールド回路が実行され、積分回路の出力値が保持される。測定中は、引き込み用バイアス印加調整部216は、サンプルホールド回路に保持された値を参照して時間波形のベースラインを調整する。
図1のレーザ源110は、チタンサファイアレーザを用いる。出力されるフェムト秒レーザのパルス幅は50フェムト秒であり、繰り返し周波数は80MHzである。発生部101に照射する励起光の強度は5mW、検出部102に照射する励起光の強度は0.5mWである。
図9は、本実施例の動作例を示したものである。図9(a)は従来の装置で測定した時の電流検出部104の出力をプロットしたものである。図9(b)は本実施例の装置構成で測定した時の電流検出部104の出力をプロットしたものである。これまで述べた測定条件下において、従来の装置構成では、検出部102に約5μAのオフセット電流が発生することが確認された。この結果、電流検出部104の出力がアンプの定格を超えない範囲に調整するために、電流検出部104として、電流電圧変換率10MΩと100MΩのアンプのうちの電流電圧変換率10MΩのアンプを選択する必要がある。このため、図9(a)をみると、電流検出部104の出力定格は±10Vであるのに対し、電流検出部104の出力は約±1Vの範囲に制限されている。この時のテラヘルツ波による信号変化分は、約±0.1μAである。
これに対し、本実施例の構成では、オフセット電流を抑制することで、電流検出部104はテラヘルツ波による信号変化分だけを検出対象とすることができる。図9(b)は、本実施例の構成を適用した時の測定例である。この構成では、オフセット電流は約1nAまで抑制できていることが確認された。そのため、図9(b)によると、オフセット電流の抑制の効果より、電流検出部104として電流電圧変換率100MΩのアンプの適用が可能になり、テラヘルツ波による信号変化分を高感度に検出することが可能になる。一般に、電流電圧変換率が高いアンプ程、ノイズが少なく、かつテラヘルツ波の信号成分をアンプの定格付近に調整することができるので、信号のS/N比の改善が可能となることが分かる。
101…発生部、102…検出部、103…遅延光学部、104…電流検出部、105…処理部、107…電流引き込み部、108…調整部、109…切替部

Claims (9)

  1. 時間領域分光法によりテラヘルツ波の時間波形を測定するテラヘルツ波測定方法であって、
    光伝導素子により、テラヘルツ波に依る電流を含む信号を電流信号として検出する電流検出工程と、
    前記電流検出工程で検出される電流信号を電圧信号として検出する電圧検出工程と、
    前記電流検出工程で検出される電流信号のうち、テラヘルツ波の電界の変化に依らないオフセット電流を、前記電圧検出工程の前段で引き込む引き込み工程と、
    前記電圧検出工程で検出される電圧信号に基づきオフセット電流を監視し、監視結果を受けて前記引き込み工程で引き込むオフセット電流量を調整する調整工程と、
    前記引き込み工程を実行しながら前記電圧検出工程で検出される電圧信号に基づき前記テラヘルツ波の時間波形を取得する取得工程と、
    を含み、
    前記調整工程でのオフセット電流の監視と調整は、前記テラヘルツ波の時間波形の測定を行わない待機中に実行することを特徴とする方法。
  2. 前記調整工程でのオフセット電流の監視と調整は、前記待機中に、前記電圧検出工程の検出と前記引き込み工程の引き込みと共にループを形成し、前記電圧検出工程で検出される電圧信号の出力を前記電圧検出工程における基準電位に近似した値にする様な引き込み電流量を求めることで行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記電流検出工程が、テラヘルツ波を発生する発生部と前記光伝導素子とに夫々到達する励起光の時間差を、遅延光学部を用いて、前記励起光が伝搬する光路長によって調整する遅延工程を含み、
    前記調整工程では、第1の時間波形の測定が終了する前記遅延光学部の位置から、第2の時間波形の測定を開始する前記遅延光学部の位置への移動に要する期間を前記待機中とし、該待機中に、前記電圧検出工程で検出される電圧信号の出力をモニタし、モニタした信号の直流成分より引き込み電流量を求めることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 前記調整工程では、前記電流検出工程で検出される電流信号の出力の変化速度が測定装置の時定数を超える速度となる様に、前記待機中における遅延光学部の移動を行わせることを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. 前記調整工程では、前記待機中に、前記電圧検出工程で検出される電圧信号に基づきオフセット電流波形を取得することで、前記取得工程で取得されるテラヘルツ波の時間波形を構成するデータ列のデータ要素毎にオフセット電流値を定義し、前記引き込み電流量を前記データ要素毎に調整できる様にすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  6. 前記調整工程では、前記待機中に、前記光伝導素子に到達するテラヘルツ波を遮断することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
  7. 時間領域分光法によりテラヘルツ波の時間波形を測定するテラヘルツ波測定装置であって、
    光伝導素子を含み、テラヘルツ波に依る電流を含む信号を電流信号として検出する検出部と、
    前記検出部が出力する電流信号を電圧信号として検出する電流検出部と、
    前記検出部が出力する電流信号のうち、前記検出部に到達するテラヘルツ波の電界の変化に依らないオフセット電流を、前記電流検出部の入力部分で引き込む電流引き込み部と、
    前記電流検出部で検出される電圧信号に基づき前記オフセット電流を監視し、前記電流引き込み部が引き込む電流量を調整する調整部と、
    前記電流検出部から前記調整部に至る信号経路の接続と遮断との間で選択を行う切替部と、
    前記電流検出部で検出される電圧信号に基づき前記テラヘルツ波の時間波形を取得する処理部と、
    を有し、
    前記切替部は、前記処理部が前記時間波形の取得を行わない当該装置の待機中に前記信号経路を接続し、前記処理部が前記時間波形の取得を行うときに前記信号経路を遮断することを特徴とする装置。
  8. テラヘルツ波を発生する発生部で発生されたテラヘルツ波を検体に照射し、
    前記検体を透過或いは該検体を反射したテラヘルツ波を前記検出部で検出し、
    前記処理部で得られた時間波形を用いて前記検体の情報を取得することを特徴とする請求項7に記載の装置。
  9. 請求項1から6の何れか1項に記載の方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
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