JP5669050B2 - 骨セメント - Google Patents

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、骨セメントに関し、特に、薬剤が長期間にわたり放出される骨セメントに関する。
【背景技術】
【0002】
国内で年間1万例ほどある人工関節手術後に生じる感染症や、年間5千例ほどある骨折等に伴う感染症は、骨髄炎等の難治性の細菌感染症であり、この治療には手術による感染源の除去と4週間以上の抗生物質投与が必要となる。
【0003】
しかしながら、経口や点滴による抗生剤投与は、血行の乏しい骨内残存感染巣には届きにくく、また、長期投与に伴い腎毒性などの副作用があるため、手術中に感染巣へ抗生物質含有骨セメントを留置する方法が標準的な治療方法となっている。この方法は、必要な部位のみに高濃度の抗生物質を供給できるため、副作用が少なく耐性菌にも効果がある。
【0004】
しかし、従来の骨セメントの留置には2つの問題点がある。
まず、抗生物質の放出が5日程の短期間で終了してしまう点である。これは、骨セメントはポリメチルメタクリレートからなる樹脂のため疎水性であり、表面に露出している抗生物質しか放出されないためである。よって、必要とされる4週間の抗生剤治療を完結するには、副作用の多い抗生剤の全身投与を併用しなければならず患者の負担が依然として大きいという問題点があった。
【0005】
次に、治療に有効とされる量の抗生物質を混ぜると、骨セメントの強度が低下してしまうという点である。これは、ポリメチルメタクリレートに対し抗生物質が5wt%以上添加されると、樹脂の重合が阻害されるためである。場合によっては、体内で骨セメントが破損したり、粉々になって除去できなくなったりするという問題点もあった。

【0006】
すなわち、従来の骨セメントは、長期間の薬効が期待できず、強度を保つためには薬剤添加量も低減しなければならないという問題点があった。
【0007】
特許文献1には、骨セメントではなく、セルロース繊維含有セメント組成物に関する発明が開示されている。これは、アスベスト含有セメントの代替物であって、補強セメントすなわち、添加により強度を向上する土木建築用のセメント技術に関する技術開示である(0003段落、0004段落、表1)。
【0008】
特許文献2には、骨セメントではなく、セルロースにポリペプチド系抗生物質の除去用材料あるいは解毒用材料を結合させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−309655号公報
【特許文献2】特開平10−85329号公報
【特許文献3】WO2007/146946号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、薬剤が長期間にわたり放出され、従来の骨セメントと同等の強度を有する骨セメントを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
【0011】
請求項1に記載の骨セメントは、バクテリアセルロースに抗生剤水溶液を吸収させた後に乾燥して得たバクテリアセルロース粉末と、ポリメチルメタクリレート粉末と、を混合した骨セメントであって、バクテリアセルロース粉末の粒径0.2mm〜0.7mmであり、ポリメチルメタクリレート粉末に対するバクテリアセルロース粉末の重量11%〜14%であり、固化体の4週目の平均抗生剤溶出量が100ng/h・cm以上であることを特徴とする。換言すれば、請求項1に記載の骨セメントは、バクテリアセルロースに抗生剤水溶液を吸収させた後に乾燥して粉砕し、粒径が0.2mm〜0.7mmのものを選別したバクテリアセルロース粉末を、ポリメチルメタクリレート粉末に対して11wt%〜14wt%混合した骨セメントであって、固化体の4週目の平均抗生剤溶出量が100ng/h・cm以上であることを特徴とする、といえる。
【0012】
請求項2に記載の骨セメントは、請求項1に記載の骨セメントにおいて、バクテリアセルロースの乾燥重量と抗生剤の乾燥重量との重量比を1:8〜1:12としたことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の骨セメントは、請求項1に記載の骨セメントにおいて、さらに繊維を混和したことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載した複合骨固定具は、金属製骨固定具を請求項1、2または3に記載の骨セメントで被覆したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、薬剤が長期間にわたり放出され、従来の骨セメントと同等の強度を有する骨セメントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ナタ菌から得られたバクテリアセルロースのグレースケール写真である。
【図2】図1に示した写真を白黒二値で表した写真である。
【図3】薬剤を担持させ、ミルで粉砕した後のバクテリアセルロースの粉末のグレースケール写真である。
【図4】図3に示した写真を白黒二値で表した写真である。
【図5】引張強度の測定試験方法を説明する図である。
【図6】ステンレス繊維を添加した骨セメントの切断面を示したグレースケース写真である。
【図7】図6に示した写真を白黒二値で表した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明は、例えば、次の方法により製造および使用できる。
1)酢酸菌(例えばナタ菌)を培養液中で培養し、バクテリアセルロースを生成させる。
2)バクテリアセルロースに所定濃度(例えば、2wt%〜5wt%)の薬剤水溶液(例えばバンコマイシン水溶液)を吸収させた後、乾燥する。
3)乾燥物をミルで粉砕し、篩にかけて所定の粒径(例えば、0.2mm〜0.7mm)のものを選別する。
4)この、薬剤を担持したセルロース粉末を、粉末のポリメチルメタクリレートに混ぜ、液体モノマーを添加して骨セメントを得る。重合時間は2分から6分程度である。このとき、必要に応じて、繊維を混和する(たとえば、直径0.05mm、長さ1mmのステンレス繊維をポリメチルメタクリレートに対して50wt%混和する)。
5)骨セメントを定法に従い使用する。または、金属製骨固定具(適宜ねじ穴が形成されていても良い)を骨セメントで被覆し複合骨固定具を製造する。
なお、ナタ菌から得られたバクテリアセルロースの写真を図1および図2に、薬剤を担持させ、ミルで粉砕した後のバクテリアセルロースの粉末の写真を図3および図4に示した。
【0018】
<実験例1>
まず、骨セメントの薬剤溶出評価試験をおこなった。骨セメントが適用される部位は、その疾患部位の特異性から薬効は4週間以上の比較的長期間にわたるものであることが望ましく、また、薬剤の有効放出量は100ng/h・cm以上であることが好ましい(Ensing GT, Horn JR, Mei HC, Busscher HJ, Neut D. "Copal bone
cement is more effective in preventing biofilm formation than Palacos
R-G."Clin Orthop Relat Res. 2008;466:1492-1498.)。ここでは、まず、粒径の相違による薬効持続期間と、薬剤の含有量の相違による薬効持続期間について検討した。
【0019】
実験は、薬剤を担持させたバクテリアセルロースの粉末の添加量を変えて添加混合した、直径4.3mm、長さ7.4mmの円柱の骨セメント固化体(体積107mm,表面積100mm)を、0.9%生理的食塩水10mlに浸し、薬剤溶出量を測定することによりおこなった。
【0020】
なお、上記粉末は、バクテリアセルロースの重量比の10倍量のバンコマイシンを担持させて得た乾燥物をさまざまな大きさの粒子に選別したものとし、骨セメント固化体は、この粉末をポリメチルメタクリレートに対して添加量(混合比)を変えて作製した。
【0021】
薬剤の溶出量の経時変化(1週間経過時、2週間経過時、3週間経過時、4週間経過時)を測定した結果を、表1に示す。なお、ここでいう溶出量とは、例えば、1週間経過時とは、0日から7日までの総放出量を単位時間(24時間×7)で割った値、4週間経過時とは、22日から28日までの放出量を単位時間で割った値、すなわち、それぞれ1週目と4週目の平均放出速度を意味する(表2、3、5についても同様である)。
【表1】


【0022】
表から明らかなように、4週目であっても、指標である100ng/h・cmの薬剤放出量を得るためには、粒子径が0.2mm以上、混合比11wt%以上であることが確認できた。
【0023】
<実験例2>
次に、薬剤をバクテリアセルロースに担持させた場合(本発明の骨セメント)と、そのまま添加した場合(従来の骨セメント)とについて、円柱固化体による溶出実験をおこなった。また比較例として、湿潤セルロース(引用文献2)を用いた溶出実験もおこなった。具体的には次の試験体とした。
【0024】
・試験体1(薬剤含有セルロース添加骨セメント):
直径0.4mm〜0.5mmの薬剤含有セルロース粒子をポリメチルメタクリレートに対して13wt%添加した円柱試験体(円柱の大きさは実験例1と同様。以下同じ)。バンコマイシン添加量20mg。
・試験体2(薬剤添加骨セメント):
バンコマイシン20mgをポリメチルメタクリレート160mgに直接混和した円柱試験体。
・試験体3(薬剤含有セルロース):
バンコマイシン20mgを含んだ湿潤セルロース(特許文献2に開示される方法:ゲル状のナタデココを円柱に切り出し、これに20mgのバンコマイシンを含ませたのち乾燥させた状態としたもの)
【0025】
薬剤の溶出量の経時変化(1週間経過時、2週間経過時、3週間経過時、4週間経過時)を測定した結果を、表2に示す。
【表2】


【0026】
表から明らかなように、4週目であっても、指標である100ng/h・cmの薬剤放出量のあったのは、本発明のみであった。また、比較例から明らかなようにセルロースに薬剤を含ませただけでは、初期に一気に薬剤が放出されてしまい、本発明に想到できる技術でないことが確認できた。
【0027】
<実験例3>
実験例2の薬剤溶出効果がバンコマイシン以外の薬剤でも観測されるかを検討した。具体的には次の試験体を比較した。
【0028】
・試験体4(薬剤含有セルロース添加骨セメント):
直径0.4mm〜0.5mmの薬剤含有セルロース粒子をポリメチルメタクリレートに対して13wt%添加した円柱試験体(円柱の大きさは実験例1と同様。以下同じ)。ゲンタマイシン添加量20mg。
・試験体5(薬剤添加骨セメント):
ゲンタマイシン20mgをポリメチルメタクリレート160mgに直接混和した円柱試験体。
・試験体6(薬剤含有セルロース):
ゲンタマイシン20mgを含んだ湿潤セルロース(特許文献2に開示される方法:ゲル状のナタデココを円柱に切り出し、これに20mgのゲンタマイシンを含ませたのち乾燥させた状態としたもの)。
【0029】
薬剤の溶出量の経時変化(1週間経過時、2週間経過時、3週間経過時、4週間経過時)を測定した結果を、表3に示す。
【表3】

【0030】
表から明らかなように、ゲンタマイシンを用いた場合も、実験例2と同様に、4週目であっても、指標となる100ng/h・cmの薬剤放出量があった。従来例も比較例も、実験例2と同様の結果であった。また、実験例2と実験例3とから、分子構造が異なるバンコマイシンとゲンタマイシンの双方で同様の結果が得られたため、本技術は多くの薬剤において有効であると考えられた。
【0031】
<実験例4>
次に、骨セメントの強度評価試験をおこなった。骨セメントに薬剤を添加すると強度不足を招来する。よって、薬剤を添加しない純粋骨セメントの強度(引張強度)と同レベルの強度を発揮できるものであれば好適であるため、これを指標とした。ここでは、薬剤をバクテリアセルロースに担持させて添加混合した場合(本発明の骨セメント)、薬剤をそのまま添加した場合(従来の骨セメント)、なにも添加しない純粋の骨セメントの評価をおこなった。更に、薬剤をバクテリアセルロースに担持させず、薬剤とバクテリアセルロースとを単に添加して固化した場合の評価もおこなった(これは、特許文献1にいう繊維強化セメントの評価といえる)。具体的には次の試験体とした。
【0032】
・試験体1(薬剤含有セルロース添加骨セメント):
バクテリアセルロース2mgにバンコマイシン20mgを含浸させ、乾燥後直径0.5mmの粒子にし、これを骨セメント160mgに混和した円柱試験体。
・試験体2(薬剤添加骨セメント):
バンコマイシン20mgを骨セメント160mgに直接混和した円柱試験体。
・試験体3(バクテリアセルロース&薬剤添加骨セメント)
バンコマイシン20mgを骨セメント160mgに直接混和し、更に粒径0.5mmのバクテリアセルロースを添加して固化した円柱試験体。
・試験体4(純粋骨セメント)
【0033】
実験は、上記組成にて、直径4.3mm、長さ10mmの円柱試験体を作製し、これを図5に示したように5.5mm隔てた支持台に載置して、下部の中央に深さ0.2mmの切れ込みを入れ、中央上から荷重をかけることによりおこなった。
【0034】
引張強度試験による破断荷重は、次の通りであった。
・試験体1:121N
・試験体2: 92N
・試験体3: 95N
・試験体4:125N
以上の結果から、本発明のみが純粋骨セメントと同等の引張強度を発揮し、また、試験体2と試験体3の結果から明らかなように、薬剤とバクテリアセルロースとを単に添加しただけでは効果的な強度向上は得られないことが確認できた。
【0035】
次に、粒径による引張強度、および、薬剤の含有量による引張強度の変化を検討した。実験では、バクテリアセルロースの重量比の10倍量のバンコマイシンを担持させて得た乾燥物をさまざまな大きさの粒子に選別し、これをポリメチルメタクリレートに対して添加量を変えて円柱固化体を作製した。固化体の大きさは実験例4と同様とした。
【0036】
引張強度の測定結果を、表4に示す。
【表4】

表から明らかなように、強度を維持するには、粒子径は0.7mm以下、好ましくは0.5mm以下、混合比率は14wt%以下、好ましくは13wt%以下、更に好ましくは12wt%以下であることが分かった。
【0037】
以上の実験から、バクテリアセルロースに薬剤を担持させると重合を阻害せず、薬剤放出期間の観点からも強度の観点からも好適な骨セメントを得られることを確認できた。粉末粒径は0.2mm〜0.7mmが好ましく、粉末ポリマーに対する、バクテリアセルロース粉末の重量は11%〜14%が好ましい。
【0038】
なお、一般的な混和例としては、
セメント(粉末ポリマー) 40重量部
バクテリアセルロース乾燥質量 0.3〜0.8重量部
薬剤乾燥質量 4〜6重量部
液体モノマー 18〜25重量部
とすることができる。
【0039】
なお、酢酸菌によるバクテリアセルロースは、太さが数十ナノメートルの3次元のメッシュ構造を有するセルロース繊維であり、湿潤した状態で液体薬剤を含浸させると、乾燥重量比で、バクテリアセルロース:薬剤=1:8〜1:12となる。

【0040】
次に、更に繊維を混和した骨セメントの薬剤溶出評価試験とその強度評価試験をおこなった。繊維は、ステンレス繊維またはポリエチレン繊維を用いた。
【0041】
<実験例5>
まず、薬剤溶出評価試験をおこなった。具体的には、次の試験体を比較した。
・試験体1(薬剤含有セルロース添加骨セメント(繊維無添加)):
直径0.4mm〜0.5mmの薬剤含有セルロース粒子をポリメチルメタクリレートに対して13wt%添加した円柱試験体(円柱の大きさは実験例1と同様。以下同じ)。バンコマイシン添加量20mg。
【0042】
・試験体2(ステンレス繊維10%):
ポリメチルメタクリレートに対するステンレス繊維量を10wt%(16mg)として、上記試験体1の組成に追加混和して得た円柱試験体。なお、ステンレス繊維は、直径0.05mm、長さ1mmのものを用いた(以下ステンレス繊維について同じ)。
・試験体3(ステンレス繊維50%):
ステンレス繊維量を50wt%(80mg)として、上記試験体1の組成に追加混和して得た円柱試験体。
・試験体4(ステンレス繊維80%):
ステンレス繊維量を80wt%(128mg)として、上記試験体1の組成に追加混和して得た円柱試験体。
【0043】
・試験体5(ポリエチレン繊維0.3%):
ポリメチルメタクリレートに対するポリエチレン繊維量を0.3wt%(0.48mg)として、上記試験体1の組成に追加混和して得た円柱試験体。なお、ポリエチレン繊維は、直径0.03mm、長さ20mmのものを用いた(以下ポリエチレン繊維について同じ)。
・試験体6(ポリエチレン繊維1%):
ポリエチレン繊維量を1wt%(1.6mg)として、上記試験体1の組成に追加混和して得た円柱試験体。
・試験体7(ポリエチレン繊維3%):
ポリエチレン繊維量を3wt%(4.8mg)として、上記試験体1の組成に追加混和して得た円柱試験体。
【0044】
・試験体8(薬剤添加セメント(繊維無添加):
ポリメチルメタクリレート160mgにゲンタマイシン20mgを直接混和した円柱試験体。
・試験体9(ステンレス繊維40%):
ポリメチルメタクリレート160mgに、ゲンタマイシン20mgとステンレス繊維64mg(ポリメチルメタクリレート粉末に対して40wt%)とを添加して得た円柱試験体。
・試験体10(ポリエチレン繊維1%):
ポリメチルメタクリレート160mgに、ゲンタマイシン20mgとポリエチレン繊維1.6mg(ポリメチルメタクリレート粉末に対して1wt%)とを添加して得た円柱試験体。
【0045】
薬剤の溶出量の経時変化(1週間経過時、2週間経過時、3週間経過時、4週間経過時)を測定した結果を、表5に示す。
【表5】

【0046】
表から明らかなように、薬剤含有セルロース(試験体1)に、ステンレス繊維またはポリエチレン繊維を追加混和した場合には、薬剤放出量がさらに増加することが分かった。すなわち、より長期間の薬剤放出効果が確認できた。この増加割合は、時間とともに顕著となり、第4週の放出量はステンレス50wt%混和やポリエチレン3wt%混和で約2倍にもなった。また、ステンレス繊維やポリエチレン繊維の混和量が多いほど薬剤放出量が増加することがわかった。一方、バクテリアセルロースを含まない場合(試験体8)には、ステンレス繊維やポリエチレン繊維を混和しても薬剤放出量はほとんど増加しなかった。
【0047】
この結果から、ステンレス繊維やポリエチレン繊維の混和は、本発明のバクテリアセルロースを用いた場合に効果があるのであって、独立した効果は有さないことが確認できた。なお、従来の骨セメントに用いられる薬剤の粒子径は、0.1mm以下であることから(G Lewis, S Janna. Estimation of the optimum loading of an antibiotic
powder in an acrylic bone cement. Acta Orthopaedica 2006; 77: 622-627.)、薬剤含有セルロース粒子の径は、0.2mm程度以上が望ましいと考えられる。
【0048】
<実験例6>
次に、繊維を添加した場合の骨セメントの強度評価試験をおこなった。試験体の組成は実験例5と同一とし、同一組成のものは、同一の試験体番号とした。試験は、実験例4と同様にしておこなった。
【0049】
引張強度試験による破断荷重は、次の通りであった。
・試験体1: 121N
・試験体2: 126N
・試験体3: 141N
・試験体4: 81N
・試験体5: 119N
・試験体6: 124N
・試験体7: 94N
・試験体8: 92N
・試験体9: 112N
・試験体10: 89N
【0050】
以上の結果から、薬剤含有セルロースとステンレス繊維とを混和すると、条件により強度が上昇することが確認できた。また、ポリエチレン繊維の場合は、強度維持が可能であることが確認できた。すなわち、繊維を適正量混和した場合には、薬剤の長期放散効果を高めつつ、強度を維持ないし向上する骨セメントが得られることが確認できた。
【0051】
なお、実際の使用に当たっては、金属繊維の場合は、骨に十分に適合するため、すなわち、不定形の骨の隙間に入り込ませるため、直径0.1mmより小さく、長さが2mmよりも小さな繊維を用いることが好ましい。図6および図7に実験例5の試験体3(ステンレス繊維を添加した骨セメント)の写真を示した。黒い円状の部分が薬剤含有セルロースであり(径0.4〜0.5mm)、白い部分がステンレス繊維(径0.05mm)である。
【0052】
なお、柔軟なポリエチレン繊維の場合は、長さに関しては20mm程度のものでも実用に適しているといえる。
【0053】
なお、骨セメントは、生体内で使用することを想定していることから、素材としては、ナイロン繊維や絹糸繊維やコラーゲン線維、チタン繊維も採用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の骨セメントを用いて、感染した金属インプラント治療に役立てることができる。まず、感染した金属インプラントを抜き取り、代替インプラントとして抗菌剤担持バクテリアセルロース骨セメントを一時的に挿入する。これにより、感染症を制圧するとともに、空間を保つことが可能となる。その後、再度金属インプラントを挿入すればよい。
【0055】
また、感染した骨折の治療にも役立てることができる。金属製骨固定具の周囲を本発明の骨セメントで被覆し、複合骨固定具を作製する。これを骨折した骨に埋め込み固定すればよい。これにより、感染症を制圧でき、そのまま骨を固定可能となる。なお、セメント髄内釘の回旋を防止する横止めスクリューを本発明の骨セメントで作製してもよい。

Claims (4)

  1. バクテリアセルロースに抗生剤水溶液を吸収させた後に乾燥して得たバクテリアセルロース粉末と、ポリメチルメタクリレート粉末と、を混合した骨セメントであって、
    バクテリアセルロース粉末の粒径0.2mm〜0.7mmであり
    ポリメチルメタクリレート粉末に対するバクテリアセルロース粉末の重量11%〜14%であり、
    固化体の4週目の平均抗生剤溶出量が100ng/h・cm以上であることを特徴とする骨セメント。
  2. バクテリアセルロースの乾燥重量と抗生剤の乾燥重量との重量比を1:8〜1:12としたことを特徴とする請求項1に記載の骨セメント。
  3. さらに繊維を混和したことを特徴とする請求項1に記載の骨セメント。
  4. 金属製骨固定具を請求項1、2または3に記載の骨セメントで被覆したことを特徴とする複合骨固定具。
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