JP5667221B2 - 複合切削刃具及びワークの切削加工方法 - Google Patents

複合切削刃具及びワークの切削加工方法 Download PDF

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本発明は、複合切削刃具によるワークの切削加工技術に関する。
回転式切削工具は、回転軸(回転ボディ)に切削刃具を設け、切削刃具を旋回させながらワークを切削する。
回転式切削工具は、目的、用途に応じて種々の形態のものが提案されてきた(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
この特許文献1の技術を図面に基づいて以下に説明する。
図9に示すように、複合切削刃具100は、ボディ101の小径軸部102に穴加工用切削刃103を備え、ボディ101の大径軸部104に面取り及び座面加工用切削刃105を備える。ワーク106の穴107を穴加工用切削刃103により切削し、ワーク106の座面108及び面取り部109を面取り及び座面加工用切削刃105により切削することで、1つの複合切削刃具100により穴107、座面108及び面取り部109を切削することができる。
ところで、アルミニウム等の軟質材と鉄等の硬質材とから構成されるワークを切削加工するには、一般的に、軟質材用切削刃具を用いて軟質材を加工した後、工具を切り替えて硬質材用切削刃具を用いて硬質材を加工する。このように、ワークの材質に合致した切削刃具を用いることで、刃具の寿命及び切削性が良好になる一方で、加工工程が増えるため加工工数の増加や設備費用の増大を招くことになる。
対策として、上述した従来技術の複合切削刃具100を用いると、1つの複合切削刃具100で一度に加工が行えるため、加工工数を短縮でき、設備費用の増加を抑えることができる。しかし、同一材質の切削刃で軟質材と硬質材を切削すると、切削刃へ負荷が掛かり刃具の寿命の低下を招き、さらには、軟質材切削時に刃先に構成された付着物により、引っ掻き傷を発生させたりすることがある。そこで、軟質材と硬質材とから構成されるワークを良好に加工し、且つ、設備費用の低減及び加工工数の低減を図ることができるワークの切削加工技術が求められている。
特開2002−52414公報
本発明は、軟質材と硬質材とから構成されるワークを良好に加工し、且つ、設備費用の低減及び加工工数の低減を図ることができるワークの切削加工技術を提供することを課題とする。
請求項1に係る発明は、軟質材と硬質材とから構成されるワークを切削加工する複合切削刃具において、回転ボディの端部に、中心を囲うように環状に前記硬質材を切削加工する複数の硬質材用切削刃を配列し、前記端部に、中心を囲うように環状に且つ前記硬質材用切削刃を取り囲むように前記軟質材を切削加工する複数の軟質材用切削刃を配列し、これらの軟質材用切削刃は前記硬質材用切削刃よりも前記ワーク側に突出することを特徴とする。
また、請求項に係る発明では、軟質材用切削刃は、ダイヤモンドからなり、硬質材用切削刃は、多結晶立方晶窒化ほう素焼結体からなることを特徴とする。
請求項に係る発明は、請求項1記載の複合切削刃具を使用してワークを切削するワークの切削加工方法において、複合切削刃具を準備する複合切削刃具準備工程と、硬質材用切削刃で硬質材を切削する硬質材切削工程と、軟質材用切削刃を、硬質材の加工面の高さまで移動する複合刃具移動工程と、軟質材用切削刃で軟質材を切削する軟質材切削工程とからなることを特徴とする。
請求項に係る発明は、複合刃具移動工程の次に、軟質材用切削刃を横方向に移動させて硬質材の加工面を通過させる通過工程と、軟質材用切削刃を軟質材の加工高さに移動する第2移動工程とを備えることを特徴とする。
請求項に係る発明では、軟質材は、アルミニウムであり、硬質材は、鉄であることを特徴とする。
請求項1に係る発明では、回転ボディの端部に、中心を囲うように環状に硬質材を切削加工する複数の硬質材用切削刃を配列し、端部に、中心を囲うように環状に且つ硬質材用切削刃を取り囲むように軟質材を切削加工する複数の軟質材用切削刃を配列する。
複合切削刃具は、硬質材用切削刃と軟質材用切削刃を備えるので、硬質材は硬質材用切削刃で切削でき、軟質材は軟質材用切削刃で切削でき、ワークを良好に加工することができる。加えて、硬質材用切削刃と軟質材用切削刃とを1つの工具に備えたので、設備費用を低減することができる。
さらに、請求項に係る発明では、軟質材用切削刃は、ダイヤモンドからなり、硬質材用切削刃は、多結晶立方晶窒化ほう素焼結体からなるので、アルミニウム等の軟質材をダイヤモンドで良好に加工でき、鉄等の硬質材を多結晶立方晶窒化ほう素焼結体で良好に加工できる。
請求項に係る発明では、硬質材用切削刃で硬質材を切削する硬質材切削工程と、軟質材用切削刃を、硬質材の加工面の高さまで移動する複合刃具移動工程と、軟質材用切削刃で軟質材を切削する軟質材切削工程とからなる。
切削抵抗の異なる軟質材と硬質材を同時に加工することがないので、いわゆるびびり切削や無理な荷重切削を行うことがなく、硬質材と軟質材のそれぞれの材料特性に応じた適切な加工を施すことができ、ワークを良好に加工することができる。加えて、工具交換することなく、1つの複合切削刃具で硬質材及び軟質材を加工でき、加工工数の低減を図ることができる。
請求項に係る発明では、複合刃具移動工程の次に、軟質材用切削刃を横方向に移動させて硬質材の加工面を通過させる通過工程を備えるので、硬質材の加工面で、軟質材用切削刃の刃先に構成された付着物を落とすことでき、軟質材に引っ掻き傷を発生させたりすることなく、軟質材用切削刃で軟質材を良好に加工することができる。加えて、1つのワークの加工中に、軟質材の加工による軟質材用切削刃への影響を、硬質材の加工後に解消するので、軟質材用切削刃への負担が軽減され、複合切削刃具の寿命が長くなる。
請求項に係る発明では、軟質材は、アルミニウムであり、硬質材は、鉄である。本発明によれば、ワークが、アルミニウム製のシリンダヘッドと、鉄製の軸受け部品とが一体的に構成されるようなエンジン部品であっても良好に加工することができる。
本発明に係る複合切削刃具の斜視図である。 図1の2矢視図である。 複合切削刃具の要部断面図である。 本発明に掛かる複合切削刃具により加工されるワークの正面図である。 硬質材加工工程を説明する図である。 複合刃具移動工程を説明する図である。 通過工程を説明する図である。 軟質材加工工程を説明する図である。 従来の技術に掛かる複合切削刃具を説明する図である。
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
先ず、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、複合切削刃具10は、加工機の主軸に取り付けられるシャンク部11と、このシャンク部11の先端に設けられる回転ボディ12と、この回転ボディ12の端部13の内側に設けられる複数の硬質材用切削刃14と、端部13の外側に設けられる複数の軟質材用切削刃15と、端部13に設けられ硬質材用切削刃14からの切り屑を排出する複数の溝部16とからなる。
次に硬質材用切削刃及び軟質材用切削刃の配置について説明する。
図2に示すように、4個の硬質材用切削刃14が、回転ボディ12の端部13に中心21を囲うように環状に配置される。また、これらの硬質材用切削刃14の外周側において、4個の軟質材用切削刃15が、中心21を囲うように環状に配置される。
4個の軟質材用切削刃15は、中心21から回転ボディ12を等分するように配置され、4個の硬質材用切削刃14は、中心21から回転ボディ12を等分するように配置される。また、4個の軟質材用切削刃15は、4個の硬質材用切削刃14と位相をずらして配置される。
硬質材用切削刃14は、多結晶立方晶窒化ほう素焼結体(いわゆるCBN)である。軟質材用切削刃15は、ダイヤモンドである。なお、硬質材用切削刃14は、多結晶立方晶窒化ほう素焼結体に限定されず、硬質材を切削加工できれば他の材質であっても差し支えない。また、軟質材用切削刃15は、ダイヤモンドに限定されず、軟質材を切削加工できれば他の材質であっても差し支えない。
また、実施例では、軟質材用切削刃15及び硬質材用切削刃14は、それぞれ4個ずつ等分に設けたが、4個に限定されず、1個又は2個、3個等複数個でもよく、等分に配置されなくても差し支えない。さらに、軟質材用切削刃15と硬質材用切削刃14との位相が同じでも差し支えない。
次に硬質材用切削刃及び軟質材用切削刃の配置を断面図に基づいて説明する。
図3に示すように、複合切削刃具10は、シャンク部11が主軸22に保持された状態である。複合切削刃具10の下方に、ワーク30が配置される。なお、実施例では、縦型フライスとしたが、これに限定されず、横型フライスであっても差し支えない。
硬質材用切削刃14、14同士の外径は、D1である。軟質材用切削刃15、15同士の外径はD2であり、D1<D2である。軟質材用切削刃15の先端は、硬質材用切削刃14の先端よりも距離L1だけ、ワーク30側に突出している。
仮に、複合切削刃具10で外径D2よりも大きい平坦な面を加工すると、ワークの平坦な面は外側の軟質材用切削刃15のみで切削加工することができる。また、軟質材用切削刃15、15同士の内径D3よりも小さい範囲の面は、硬質材用切削刃14のみで切削加工することができる。
次に本発明に係る複合切削刃具により切削加工されるワークについて説明する。
図4に示すように、ワーク30は、例えばエンジンのシリンダヘッド30である。シリンダヘッド30は、本体部である軟質材31と、軸受け部である硬質材32とからなる。軟質材31はアルミニウムであり、硬質材32は鉄である。軟質材31は、2箇所の加工面33、34を有する。
硬質材32は、1箇所の加工面35を有する。加工面35は、略円形であり、その外形はD4である。図3に示す軟質材用切削刃15同士の内径D3と、加工面35の外形D4との関係は、D4<D3である。軟質材用切削刃15同士の内径D3よりも硬質材32の加工面35の外形D4が小さいので、硬質材用切削刃14のみで硬質材32の加工面35を切削加工できる。
なお、実施例では、軟質材31の加工面33、34と、硬質材32の加工面35とは同一高さ(図表裏方向)とするが、これに限定されず、加工面33、34と加工面35との高さが異なっても差し支えない。
次に本発明に係るワークの切削加工方法について複合切削刃具の軸方向から説明する。
図5に示すように、軟質材31と硬質材32とから構成されるワーク31の上方に、図3に示す複合切削刃具10を移動させる(複合切削刃具準備工程)。
S1は、複合切削刃具10が回転したときの、硬質材用切削刃14の切削領域である。S2は、複合切削刃具10が回転したときの、軟質材用切削刃15の切削領域である。
複合切削刃具10を、硬質材用切削刃14の加工面35の加工位置に移動させる。そして、複合切削刃具10を矢印(1)のように移動させ、硬質材用切削刃(図3、符号14)で加工面35を切削加工する(硬質材切削工程)。なお、硬質材切削工程において、領域S2は、軟質材31の加工面34、35に重ならないように設定される。
次に硬質材切削工程から軟質材切削工程までの複合切削刃具の高さについて説明する。
図6は、ワーク30に対する複合切削刃具10の高さを説明する図である。(a)に示すように、複合切削刃具10で1つ目のワーク30を加工すると、軟質材としてのアルミニウム31が切削熱等により溶融し、軟質材用切削刃15の刃先に付着物40が構成される。また、硬質材としての鉄31の切り屑が付着することもある。
硬質材用切削刃14の先端を加工面35に合わせ、複合切削刃具10を、矢印(1)のように移動させる(硬質材切削工程)。
硬質材用切削刃14により加工面35を切削後、(b)に示すように、複合切削刃具10を矢印(2)の向きに距離L1だけ上昇させ、(c)に示すように、軟質材用切削刃15の先端を加工面35の高さまで移動させる(複合刃具移動工程)。
さらに、複合切削刃具10を矢印(3)のように移動させる。(d)に示すように、軟質材用切削刃15を移動させ、加工面35を通過させることで、付着物40が加工面35の端部に当たり軟質材用切削刃15の刃先から矢印(4)のように落下する(通過工程)。複合切削刃具10を回転させた状態で加工面35を通過させるので、軟質材用切削刃15の刃先全体の付着物40が取り除かれる。
複合切削刃具10を矢印(5)のように移動させ、(e)に示すように、軟質材用切削刃15で軟質材31の加工面34を切削加工する(軟質材切削工程)。なお、軟質材31の加工面34の高さが、硬質材32の加工面35高さと異なる場合、通過工程の次ぎに、軟質材用切削刃15の先端を軟質材32の加工面34の高さに合わせるように、複合切削刃具10を移動させる(第2移動工程)。
次に通過工程について複合切削刃具の軸方向から説明する。
図7に示すように、硬質材用切削刃(図3、符号14)で加工面35を加工した後、領域S2が加工面35に重なる前に複合切削刃具10の横移動を停止する。軟質材用切削刃(図3、符号15)の先端の高さが加工面35に合うように複合切削刃具10を移動させ、複合切削刃具10を矢印(6)のように移動させる。
結果、領域S2が加工面35を通過する(通過工程)。なお、複合切削刃具10は回転しているので、領域S2全域が加工面35を通過する(軟質材切削工程)。この後、続けて次ぎのワーク30を複合切削刃具10で切削加工する。複合切削刃具10を退避させて、軟質材用切削刃(図6、符号15)から付着物40を取り除く必要がないので、ワークの切削加工のサイクルタイムを短縮することができる。
次に軟質材切削工程における領域S2の位置について説明する。
図8に示すように、軟質材用切削刃(図3、符号15)で加工面34を切削加工し、複合切削刃具10を矢印(7)のように移動させ、さらに軟質材用切削刃15で加工面35を加工する。想像線で示す領域S2は、加工面34、35全域を通過する。
尚、本発明のワークは、実施の形態ではエンジンのシリンダヘッドに適用したが、これに限定されず、軟質材と硬質材とから構成させるワークであれば、他の機械部品に適用することは差し支えない。
本発明の複合切削刃具及びワークの切削加工方法は、エンジンのシリンダヘッドの切削に好適である。
10…複合切削刃具、12…回転ボディ、13…端部、14…硬質材用切削刃(多結晶立方晶窒化ほう素焼結体、CBN)、15…軟質材用切削刃(ダイヤモンド)、21…回転ボディの中心、30…ワーク(シリンダヘッド)、31…軟質材(アルミニウム)、32…硬質材(鉄)、40…付着物、L1…硬質材用切削刃に対する軟質材用切削刃の突出高さ。

Claims (4)

  1. 軟質材と硬質材とから構成されるワークを切削加工する複合切削刃具において、
    回転ボディの端部に、中心を囲うように環状に前記硬質材を切削加工する複数の硬質材用切削刃を配列し、
    前記端部に、中心を囲うように環状に且つ前記硬質材用切削刃を取り囲むように前記軟質材を切削加工する複数の軟質材用切削刃を配列し、
    前記軟質材用切削刃はダイヤモンドからなり、前記硬質材用切削刃は多結晶立方晶窒化ほう素焼結体からなり、
    これらの軟質材用切削刃は前記硬質材用切削刃よりも前記ワーク側に突出することを特徴とする複合切削刃具。
  2. 請求項1記載の複合切削刃具を使用して前記ワークを切削するワークの切削加工方法において、
    前記複合切削刃具を準備する複合切削刃具準備工程と、
    前記硬質材用切削刃で前記硬質材を切削する硬質材切削工程と、
    前記軟質材用切削刃を、前記硬質材の加工面の高さまで移動する複合刃具移動工程と、
    前記軟質材用切削刃で前記軟質材を切削する軟質材切削工程とからなることを特徴とするワークの切削加工方法。
  3. 前記複合刃具移動工程の次に、
    前記軟質材用切削刃を横方向に移動させて前記硬質材の加工面を通過させる通過工程と、
    前記軟質材用切削刃を前記軟質材の加工高さに移動する第2移動工程とを備えることを特徴とする請求項記載のワークの切削加工方法。
  4. 前記軟質材は、アルミニウムであり、
    前記硬質材は、鉄であることを特徴とする請求項又は請求項記載のワークの切削加工方法。
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