JP5666953B2 - 半導体装置および半導体装置の製造方法 - Google Patents

半導体装置および半導体装置の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、半導体装置に関し、特に発光素子を含む半導体発光装置に関する。
自動車用のヘッドランプの光源として、ハロゲンランプやメタルハライドランプを用いたものが一般的であるが、近年、低消費電力、長寿命といった特長を持つLED(発光ダイオード)を自動車のヘッドランプ用光源として採用する動きが広がりつつある。自動車のヘッドランプ等の比較的高い光出力が要求される用途向けに複数のLEDをアレイ化した発光装置が提案されている。一方、発光装置の高出力化に伴ってLEDから発せられる熱量も増加し、これによる効率低下および半導体膜の劣化等が問題となる。これを解決するために半導体膜の結晶成長に用いられる比較的熱伝導率の低いサファイア基板等の成長用基板を除去し、これに代えて比較的熱伝導率の高い材料からなる支持基板を半導体膜に接合する構成がとられている。
特開2002−359402号公報 特開2005−303295号公報 特開2010−45419号公報
複数の発光素子をアレイ化した半導体発光装置は、例えば半導体膜と支持基板とを金属接合層を介して貼り合わせて作製される。複数の発光素子を直列接続する場合、発光素子を互いに電気的に分離する必要があることから、半導体膜の裏面に設けられる裏面電極と金属接合層との間にSiO等からなる絶縁膜を設ける必要がある。
SiO等からなる絶縁膜中にはピンホールと呼ばれる微細な貫通孔が複数存在することが知られている。ピンホールは、絶縁膜の成膜条件等によってその発生状況は変化するもののこれを完全に排除することは困難である。絶縁膜に隣接する金属接合層または裏面電極を構成する金属は、電界の影響を受けてピンホール内を移動し得る。すなわち、絶縁膜に隣接する金属のマイグレーションによって絶縁膜中にピンホールを介した電流リークパスが形成され得る。絶縁膜中にリークパスが形成されると、直列接続された発光素子のいくつかは光出力が低下し、若しくは非発光となるおそれがある。
絶縁膜中おけるリークパスの形成を回避する手法としては、絶縁膜を互いに異なる絶縁材料からなる複数の層で構成することが考えられる。この場合、下層と上層の材料が異なる故、下層で生じたピンホールは上層に伝搬しにくく、ピンホールを絶縁膜の厚さ方向において不連続とすることができる。しかしながら、絶縁膜を互いに異なる材料からなる複数の層で構成した場合、各層の熱膨張率差に起因して熱ストレス印加時に絶縁膜にクラックや剥離が生じ得る。絶縁膜にクラックや剥離が生じると、絶縁膜の絶縁機能が損なわれ、半導体発光装置に深刻な影響を及ぼすこととなる。このような問題は、素子間の絶縁が必要とされる他の半導体装置(例えばトランジスタアレイ)においても共通である。
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、支持基板上に絶縁膜を介して半導体素子を搭載した半導体装置において、絶縁膜の絶縁性能が改善された半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る半導体装置は、支持基板と、前記支持基板上に設けられた金属層と、前記金属層上に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜上に金属層を介して設けられ半導体膜と、を含み、前記絶縁膜は、第1の絶縁体層と、第2の絶縁体層と、前記第1および第2絶縁体層の間に設けられた金属酸化物導電体層と、を含むことを特徴としている。
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、成長用基板上に半導体膜を形成する工程と、前記半導体膜上に金属電極を形成する工程と、前記金属電極上に第1の絶縁体層を形成する工程と、前記第1の絶縁体層上に金属酸化物導電体層を形成する工程と、前記金属酸化物導電体層上に第2の絶縁体層を形成する工程と、前記第2の絶縁体層に金属接合層を介して支持基板を形成する工程と、前記成長用基板を除去する工程と、を含むことを特徴としている。
本発明に係る半導体発光装置によれば、第1および第2の絶縁体層に挟持された金属酸化物導電体層がピンホールの成長を停止させるとともにリークパスを遮断するように作用するので、絶縁膜の絶縁性能の改善を図ることが可能となる。
図1(a)は本発明の実施例に係る半導体発光装置の構成を示す上面図である。図1(b)は本発明の実施例に係る半導体発光装置の等価回路図である。 図1(a)における2−2線に沿った断面図である。 図3(a)は比較例に係る半導体発光装置の構成を示す断面図である。図3(b)は、本発明の実施例に係る半導体発光装置の構成を示す断面図である。 図4(a)および図4(b)は、本発明の実施例に係る金属酸化物導電を構成するITOの表面構造を示す図である。 図5(a)〜(c)は本発明の実施例に係る半導体発光装置の製造方法を示す断面図である。 図6(a)〜(c)は本発明の実施例に係る半導体発光装置の製造方法を示す断面図である。 図7(a)〜(c)は本発明の実施例に係る半導体発光装置の製造方法を示す断面図である。 図8(a)および(b)は、絶縁膜の評価に使用されたテストピースの構成を示す断面図である。 絶縁体層の評価方法を示す図である。
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。尚、各図において、実質的に同一又は等価な構成要素、部分には同一の参照符を付している。
図1(a)は、本発明の実施例に係る半導体発光装置1の構成を示す平面図、図1(b)は、本発明の実施例に係る半導体発光装置1の等価回路図、図2は、図1(a)における2−2線に沿った断面図である。
半導体発光装置1は支持基板60上に互いに直列接続された複数の発光素子100a〜100dが設けられたLEDアレイを構成する。すなわち、発光素子100a〜100dは、支持基板60上に一列に並んでおり、導体配線80によって一方の発光素子のカソードが隣接する他方の発光素子のアノードに接続されている。終端に位置する発光素子100aのアノードおよび発光素子100dのカソードは、それぞれ給電パッド110および111に接続されている。尚、図1(a)および図1(b)において4つの発光素子100a〜100dが示されているが、発光素子の数量は適宜変更することが可能である。
半導体膜10は、例えばGaN系半導体からなるn型半導体層、活性層、p型半導体層を積層して構成され、発光ダイオードを構成する。n型半導体層は光取り出し面となる半導体膜10の上面側に配置され、p型半導体層は光反射面となる半導体膜10の下面側に配置される。
半導体膜10の下面には反射電極20が設けられる。反射電極20は、半導体膜10に対して駆動電流を供給する電極として機能するとともに半導体膜10から発せられた光を光取り出し面側に向けて反射する光反射面を形成する。反射電極20は、半導体膜10とオーミック接触し得る例えばITO(スズドープ酸化インジウム)等からなるコンタクト層21と、Ag等の反射率の高い金属からなる光反射層22とを積層して構成される。尚、反射電極20の構成はこれに限定されるものではなく、反射率の高い他の金属、例えばAl、Rhまたはこれらを含む合金で光反射層22を構成してもよい。また、反射電極20は、半導体膜10に対してオーミック接触し得る金属層と反射率の高い金属層とを積層したものであってもよく、またオーミック接触性と光反射性を兼ね備えた単一の金属層により構成されていてもよい。
キャップ層30は光反射層22を構成するAg膜の酸化を防止することにより光反射層22の反射率低下を防止するとともにAgのマイグレーションを防止するためのものである。キャップ層30は例えば、光反射層22側からTi層31、Pt層32、Ti層33を順次積層して構成される。
絶縁膜40は、支持基板60上に搭載された発光素子100a〜100dの各々を電気的に分離する。発光素子100a〜100dは、半導体膜10の裏面側に反射電極層20および導電性のキャップ層30を有する故、導電体の上にこれらの発光素子を並置するとアノードが互いに電気的に接続されることとなり、直列接続が不可能となる。絶縁膜40上に発光素子100a〜100dを並置することにより各発光素子は電気的に分離される。
絶縁膜40は、例えばSiO等の絶縁体からなる第1の絶縁体層41aおよび第2の絶縁体層41bと、第1の絶縁体層41aと第2の絶縁体層41bとの間に挟まれたITO(スズドープ酸化インジウム)等の金属酸化物導電体からなる金属酸化物導電体層42と、により構成される。すなわち絶縁膜40は、絶縁体層−金属酸化物導電体層−絶縁体層からなる積層構造を有する。絶縁体層41aおよび41bの層厚は例えば300nm程度であり、金属酸化物導電体層42の層厚は例えば100nm程度である。尚、絶縁体層41aおよび41bは、SiO以外の他の絶縁体、例えば、SiやSiON等により構成されていてもよい。
支持基板60は、半導体膜10の結晶成長に用いられるサファイア基板等の成長用基板よりも熱伝導率の高い材料、例えばSiにより構成される。支持基板60は、半導体発光装置1の製造工程および最終製品への組み付け工程におけるハンドリングに耐え得る機械的強度を備えていることを要する。支持基板60の材料は、特に限定されるものではなく、半導体発光装置1の実装形態、使用環境、耐久性などを考慮して適宜選択することが可能である。他の材料として、例えばCuなどの金属、SiCなどの半導体、アルミナセラミックス等の絶縁体などが挙げられる。支持基板60は接合層50を介して絶縁膜40に接合される。
接合層50は、絶縁膜40上に設けられるTi層51、Pt層52、Au層53と、支持基板60上に設けられる共晶接合層としてのAuSn層54により構成される。尚、接合層50の構成は、これに限定されるものではなく、支持基板60と絶縁膜40との接合を適切に行うことのできるものであればよく、例えば支持基板60の材料等に応じて適宜選択することができる。
支持基板60上に絶縁膜40を介して搭載された発光素子100a〜100dは、導体配線80によって直列接続される。導体配線80は、発光素子100aのカソード(n型半導体層)と、発光素子100bのアノード(p型半導体層)とを電気的に接続する。導体配線80は、n型半導体層が表出している発光素子100aの上面から発光素子100aの側面、絶縁膜40の表面、および隣接する発光素子100bの側面に沿って伸長し、発光素子100bの反射電極20に達している。発光素子100b−100c間および発光素子100c−100d間についても同様である。
保護膜70は、SiO等の絶縁体からなり、発光素子の一方の側面を被覆するように設けられる。保護膜70は、発光素子の側面と導体配線80との間に介在し、導体配線80によるアノード−カソード間の短絡を防止する。
図3(a)は、絶縁膜の構成が本実施例に係る半導体発光装置1と異なる比較例に係る半導体発光装置1aの構成を示す断面図である。半導体発光装置1aは、2層のSiO層41a、41bを積層して構成される絶縁膜40Xを有する。絶縁膜40X以外の構成は、上記した本発明の実施例に係る半導体発光装置1と同様である。
絶縁膜40Xを同一材料からなる2層のSiO層41a、41bで構成した場合、図3(a)に示すように、絶縁膜40Xを貫通する複数のピンホール200が生じ得る。すなわち、一方のSiO層で発生したピンホールは、他方のSiO層に伝搬する。絶縁膜40Xに隣接するキャップ層30および接合層50を構成する金属は、ピンホール200内を移動して(マイグレーション)、絶縁膜40X内にリークパスを形成する。図3(a)に示すように、発光素子100aおよび発光素子100bの各々の下方に発生したピンホール200に起因してこれらの発光素子の間にリークパス(破線矢印で示されている)が形成されると、少なくとも発光素子100aの発光強度が低下し、若しくは非発光となる。また、リーク電流の大きさによっては絶縁膜40Xが破壊され、発光装置全体にダメージが波及する場合もある。尚、半導体発光装置1aの構成によれば、支持基板60自体に駆動電流が流れることはないものの、支持基板60には所定の電位(例えばアース電位)が与えられて使用されることが想定され、これによって絶縁膜40Xに電界が生じる故、ピンホール200を介した金属原子のマイグレーションは起こり得る。
一方、図3(b)は、本発明の実施例に係る半導体発光装置1を示す断面図である。半導体発光装置1において絶縁膜40は、例えばSiOからなる第1の絶縁体層41aと第2の絶縁体層41bとの間に例えばITOからなる金属酸化物導電体層42を有する。このように、SiO層の間に異種材料からなるITO層が介在する故、一方のSiO層に生じたピンホールは、他方のSiO層に伝搬することはない。図3(b)に示すように、絶縁体層41aに生じたピンホール200は、金属酸化物導電体層42との界面で終端しており、絶縁体層41bに生じたピンホール200とは不連続となる。このように、本実施例に係る絶縁膜40の構成によれば、金属酸化物導体層42がピンホールの成長を停止させる機能を有する故、絶縁膜40全体を貫通するピンホールが形成されることはない。
一方、絶縁体層41aおよび41bに生じたピンホール200を介した金属原子のマイグレーションは起こり得る。この場合、発光素子100aと100bとの間に図3(b)において破線矢印で示すような金属酸化物導電体層42を経由するリークパスが形成され得る。しかしながら、かかるリークパス上にリーク電流は瞬間的に流れるものの金属酸化物導電体層42の層厚は薄く、電流耐量が小さい故、リーク電流による発熱によって金属酸化物導電体層42が焼損・破断若しくは高抵抗化し、これによってリークパスが遮断される。すなわち、金属酸化物導電体層42は、一定以上のリーク電流によって断線に至るヒューズ機能を有している。金属酸化物導電体層42にリークによる焼損が起ると、それ以外の箇所に比べて黒く見えるようになる。
このように、本発明の実施例に係る絶縁膜40の構成によれば、金属酸化物導電体層42は、絶縁体層41aと41bとの間に介在してピンホールの成長を停止させるとともに、リークパス上にリーク電流が流れると、そのヒューズ機能によってリークパスを遮断するように作用するので、絶縁膜40の絶縁機能を向上させることが可能となる。
本実施例において、絶縁膜40は、SiO層−ITO層−SiO層からなる異種材料の積層構造を有する故、各層間の熱膨張率差が問題となる。ここで、図4(a)および(b)は、金属酸化物導電体層42を構成するITOの表面構造を示す図である。尚、図4(a)は、ITOの層厚を120nmとした場合、図4(b)は450nmとした場合を示している。図4(a)および(b)に示すように、ITOは多数の結晶粒(グレイン)の集合体として成膜される。グレインとグレインの境界部は比較的結晶性が低くやわらかい。このため、絶縁体層41aおよび41bを構成するSiOとITOとの間の熱膨張率差に起因して生じる熱応力は、このグレイン間の低結晶部で吸収される。すなわち、ITOのグレイン間に存在する低結晶部は、絶縁体層41aおよび41bと金属酸化物導電体層42との各界面において生じる熱応力を緩和させる機能を持つ。このように、本発明の実施例に係る絶縁膜40の構成によれば、金属酸化物導電体層42自体が熱応力を緩和する応力緩和層として機能するので、絶縁体層41aおよび41bと金属酸化物導電体層42との熱膨張率差に起因するクラックや剥離の問題は、実質的に解消されることとなる。
上記した金属酸化物導電体層42によるピンホールの成長を停止させる機能、リークパスを遮断するヒューズ機能および熱応力を緩和する応力緩和機能は、ITO以外の他の金属酸化物導電体によっても実現することが可能である。例えば、ZTO(Zinc Tin Oxide:Zn2SnO4)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)等のスズまたは亜鉛を含む2種以上の元素からなる混合物の酸化物が好適である。2種以上の元素からなる混合物を含むことにより、グレイン間の低結晶部が顕著に現われ、金属酸化物導電体層42の応力緩和機能を高めることができる。
尚、本実施例に係る絶縁膜40において、金属酸化物導電体層42を金属層に置換して絶縁膜40をSiO層−金属層−SiO層で構成した場合、ITOで得られたようなヒューズ機能を実現することはできなかった。これは金属の延性に起因するものと考えられ、微小なリーク電流による金属破断が生じにくいためと考えられる。
次に、上記した構成を有する本発明の実施例に係る半導体発光装置1の製造方法を図5〜図7を参照しつつ説明する。
(半導体膜の形成)
半導体膜10の成長用基板として使用するサファイア基板90を用意する。有機金属気相成長法(MOCVD: Metal Organic Chemical Vapor Deposition)によりサファイア基板90上にAlxInyGazN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x + y + z = 1)からなるn型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層して半導体膜10を形成する。活性層は、InGaN井戸層とGaN障壁層とからなるペアを繰り返し積層する多重量子井戸構造を有していてもよい(図5(a))。
尚、V族原料としてアンモニア(NH)を使用し、III族原料としてトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMI)の有機金属を使用することができる。また、n型のドーパントとしてシラン(SiH)、p型のドーパントとしてCpMg(ジクロペンタマグネシウム)を使用することができる。
(反射電極の形成)
スパッタ法などにより、コンタクト層21を構成する厚さ50nm程度のITO膜を半導体膜10のp型半導体層上に成膜する。続いて、このITO膜を個々の発光素子に対応させるべく、エッチング法やリフトオフ法などによりパターニングする。その後、酸素を含む雰囲気中で、約600℃の熱処理を行って、ITO膜を結晶化させるとともにITO膜と半導体膜10との間でオーミック接触を形成する。これにより、半導体膜10上にコンタクト層21が形成される。
次に、スパッタ法などにより半導体膜10上においてコンタクト層21を覆うように光反射層22を構成する厚さ200nm程度のAg膜を形成する。続いてAg膜を個々の発光素子に対応させるべく、エッチング法やリフトオフ法などによりパターニングする。これらの処理によって半導体膜10上にコンタクト層21および光反射層22からなる反射電極20が形成される(図5(b))。
(キャップ層の形成)
スパッタ法などにより、半導体膜10上において反射電極20を覆うようにTi層31(厚さ100nm)、Pt層32(厚さ100nm)、Ti層33(厚さ200nm)をこの順序で積層してキャップ層30を形成する(図5(c))。
(絶縁膜の形成)
スパッタ法やCVD法などにより、第1の絶縁体層41aを構成する厚さ300nm程度のSiO膜をキャップ層30上に形成する。
次にスパッタ法などにより金属酸化物導電体層42を構成する厚さ100nm程度のITO膜を第1の絶縁体層41a上に形成する。ITO膜の膜厚が過大となると電流耐量が向上するため上記したヒューズ機能が得られなくなる。一方、ITO膜の膜厚が小さすぎると、上記したピンホールの成長を停止させる機能が得られなくなる。従って、これらの機能が確実に得られるように、絶縁体層41aおよび41bの膜質等を考慮して金属酸化物導電体層42の厚さを設定することが好ましい。尚、金属酸化物導電体層42を構成するITO膜に対しては、ITOを電極材料として用いる場合に通常実施されるITOの結晶化促進のための熱処理を行うことを要しない。
次に、スパッタ法やCVD法などにより、第2の絶縁体層41bを構成する厚さ300nm程度のSiO膜を金属酸化物導電体層42上に形成する。これらの処理によって、SiO層−ITO層−SiO層の積層構造を有する絶縁膜40が形成される(図6(a))。尚、金属酸化物導電体層42を構成するITOに対する熱処理を省くことにより、第1の絶縁体層41a、金属酸化物導電体層42、第2の絶縁体層41bをスパッタ装置内で連続的に形成することが可能となる。
(接合層の形成)
スパッタ法などにより、絶縁膜40上に接合層50を構成するTi層51(厚さ約100nm)、Pt層52(厚さ約200nm)、Au層53(厚さ約200nm)を順次形成する(図6(b))。
(支持基板の接合)
支持基板60を構成するSi基板を用意する。支持基板60の表面に、スパッタ法などにより共晶接合層としてのAuSn層54を形成する。サファイア基板90側のAu層53と支持基板60側のAuSn層54とを密着させて熱圧着により支持基板60を接合する(図6(c))。
(成長用基板の除去)
レーザリフトオフによりサファイア基板90を剥離する。レーザ光源としてエキシマレーザを使用することができる。サファイア基板90の裏面側から照射されたレーザは、サファイア基板90と半導体膜10との界面近傍におけるGaNを金属GaとNガスに分解する。これにより、サファイア基板90が半導体膜10から剥離する(図7(a))。尚、レーザ光源はエキシマレーザに限らず、例えばYAGレーザなども使用可能である。
(発光素子の分割)
サファイア基板90を除去することにより表出した半導体膜10(n型半導体層)の表面に発光素子の分割ラインに沿った開口を有するレジストマスク(図示せず)を形成する。続いて、上記レジストマスクを介して半導体膜10にClプラズマによるドライエッチング処理を施すことにより半導体膜10に素子分割ラインに沿った分割溝(ストリート)を形成し、分割溝(ストリート)の底面において、コンタクト層21およびキャップ層30を露出させる。
続いて、ドライエッチングにより分割溝(ストリート)の底面において露出したキャップ層30を更に除去する。これにより、半導体膜10の表面から絶縁膜40に達する分割溝(ストリート)11が形成され、発光素子の各々が分割・区画される。後に形成される導体配線80によって発光素子を直列接続し得るように、分割溝11内においてコンタクト層21の上面を露出させておく(図7(b))。
(導体配線の形成)
分割溝(ストリート)11を形成することにより表出した発光素子の側面を被覆する保護膜70を形成する。保護膜70は、例えばCVD法やスパッタ法によりSiO膜を堆積させた後、リフトオフ法などによりパターニングすることにより形成される。
次に、分割された発光素子の各々を直列接続するための導体配線80を形成する。導体配線80は、例えば、発光素子100a上面において表出しているn型半導体層と、発光素子100bのコンタクト層21とを接続するように形成される。導体配線80は、例えばTi(厚さ1nm)、Al(厚さ2.5μm)、Ti(厚さ200nm)、Pt(厚さ200nm)、Au(厚さ500nm)をこの順で堆積させた後、リフトオフ法などによりパターニングすることにより形成される(図7(c))。
以上の各工程を経ることにより半導体発光装置が完成する。
本発明者らは、本発明の実施例に係る半導体発光装置1に設けられた絶縁膜40の絶縁性能および耐電圧性能の評価を行った。評価にあたり、以下の2種類のテストピースを作成した。
図8(a)は、本発明の実施例に係る半導体発光装置1に設けられた絶縁膜40と同様の層構造を再現したテストピースAの断面図である。すなわち、テストピースAは、サファイア基板200上にAg層201(厚さ150nm)、Ti膜202(厚さ200nm)からなる下部電極203を形成し、下部電極203上にSiO層401a(厚さ300nm)、ITO層(厚さ100nm)402、SiO層401b(厚さ300nm)を順次積層した絶縁膜400を形成し、絶縁膜400上にAlからなる上部電極204を形成したものである。このように、テストピースAは、半導体発光装置1に設けられた絶縁膜40と同一の層構造(SiO層−ITO層−SiO層)を呈する絶縁膜400を有している。
尚、SiO層401aおよび401bは、いずれもスパッタ法により形成した。成膜条件は同一であり、成膜温度200℃、到達真空度4×10−4Pa、成膜圧力0.1Paとし、スパッタ処理に使用したArガスとOガスの比率を95:5とした。電極へのアクセスを容易とするために、絶縁膜400を部分的に除去して下部電極203の一部を露出させた。
図8(b)は、絶縁膜の構成が異なる比較例に係るテストピースBの断面図である。すなわち、テストピースBは、サファイア基板200上にAg層201(厚さ150nm)、Ti層202(厚さ200nm)からなる下部電極203を形成し、下部電極203上にSiO層401a(厚さ300nm)およびSiO層401b(厚さ300nm)を順次積層した絶縁膜400Xを形成し、絶縁膜400X上にAlからなる上部電極204を形成したものである。
尚、SiO層401aおよび401bは、いずれもスパッタ法により形成した。成膜条件は同一であり、成膜温度200℃、到達真空度4×10−4Pa、成膜圧力0.1Paとし、スパッタ処理に使用したArガスとOガスの比率を95:5とした。すなわち、テストピースAおよびBにおいてSiOの成膜条件は同一である。電極へのアクセスを容易とするために、絶縁膜400Xを部分的に除去して下部電極203の一部を露出させた。
テストピースAおよびBのそれぞれについて、絶縁膜400および400Xの絶縁性能を評価した。図9は、その試験方法を示したものである。尚、図9においては、テストピースAを試験する場合が例示されているが、テストピースBを試験する場合も同様である。下部電極203と上部電極204に当接させたプローブ500を介して絶縁膜400および400Xに100V印加した。リーク電流の大きさをリークパス上に設けられた電流計501で測定した。テストピースAおよびBのそれぞれについて、100V印加時におけるリーク電流が顕著に大きいものの割合(絶縁不良率)を調査した。表1の左欄にその結果を示す。テストピースAにおいて絶縁不良率は0%であった。一方、テストピースBにおいて絶縁不良率は18%であった。
次に、絶縁膜400および400Xの耐電圧性能を評価した。具体的には、図9に示す試験回路において、絶縁膜400および400Xに印加する電圧を徐々に上昇させて、絶縁膜400および400Xが絶縁破壊に至る電界強度(絶縁破壊耐量)を測定した。表1の右欄にテストピースAおよびBのそれぞれの絶縁破壊耐量の平均値を示す。テストピースAにおいて絶縁膜400の絶縁破壊耐量の平均値は3.0MV/cmであった。一方、テストピースBにおいて絶縁膜400Xの絶縁破壊耐量の平均値は、1.3MV/cmであった。
以上の結果より、絶縁膜をSiO層−ITO層−SiO層からなる積層構造とすることによりSiO層のみからなる絶縁膜と比較して絶縁膜の絶縁性能および耐電圧性能が大幅に改善されることが確認された。
以上の説明から明らかなように、本発明の実施例に係る半導体発光装置において、複数の発光素子は絶縁膜40上に設けられ、互いに電気的に分離される。絶縁膜40は、第1の絶縁体層41aと第2の絶縁体層41bとの間に金属酸化物導電体層42が設けられた積層構造を有する。かかる絶縁膜40の構成によれば、金属酸化物導電体層42が絶縁体層41aおよび41b内に生じるピンホールの成長を停止させるように作用する。従って、絶縁膜40全体を貫通するようなピンホールの発生を防止すること可能となる。
また、本実施例の絶縁膜40の構成によれば、金属酸化物導電体層42を経由するリークパスが形成され得る。金属酸化物導電体層42は、リーク電流の流入によって焼損・破断若しくは高抵抗化し得るので、これによってリークパスを遮断してリーク電流の流入を停止させることが可能となる。また、テストピースAのITO層402は100nmであるところ、リーク電流による焼損・破断若しくは高抵抗化は金属酸化物導電体層が薄いほど生じやすいと考えられることから、金属酸化物導電体層42の層厚を100nm以下とすることにより金属酸化物導電体層42によるリークパスを遮断するヒューズ機能が発揮される。
また、金属酸化物導電層42は複数のグレインの集合体として成膜され、グレイン間の境界部に形成される低結晶部が絶縁体層41aおよび41bと金属酸化物導電体層42との熱膨張率差に起因する熱応力を緩和するように作用する。すなわち、本実施例に係る絶縁膜40の構成によれば、金属酸化物導電層42自体が熱応力を緩和する応力緩和層として機能するので、絶縁体層41a、41bと金属酸化物導電体層42との熱膨張率差に起因する剥離やクラックの問題は、実質的に解消されることとなる。
尚、上記した実施例においては、支持基板上に複数の発光素子を設ける構成を例示したが、単一の発光素子を有する半導体発光装置に本発明を適用することも可能である。例えば、導電性の実装基板上にそのような単一の発光素子を有する発光装置を複数搭載し、ワイヤボンディング等で各発光装置を直列接続するような場合において顕著な効果を奏する。また、発光素子以外の他の半導体素子を含む半導体装置(例えばトランジスタアレイ)に本発明を適用することも可能である。
1 半導体発光装置
10 半導体膜
20 反射電極
30 キャップ層
40 絶縁膜
41a、41b 絶縁体層
42 金属酸化物導電体層
50 接合層
60 支持基板
80 導体配線
90 サファイア基板

Claims (7)

  1. 支持基板と、
    前記支持基板上に設けられた金属層と、
    前記金属層上に設けられた絶縁膜と、
    前記絶縁膜上に金属層を介して設けられ半導体膜と、を含み、
    前記絶縁膜は、第1の絶縁体層と、第2の絶縁体層と、前記第1および第2絶縁体層の間に設けられたリーク電流による発熱により焼損、破断または高抵抗化されることでリークパスを遮断する金属酸化物導電体層と、を含むことを特徴とする半導体装置。
  2. 前記第1および第2の絶縁体層はSiO2からなり、前記金属酸化物導電体層はスズドープ酸化インジウムからなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
  3. 前記金属酸化物導電体層の層厚は100nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
  4. 前記絶縁膜上に設けられた複数の半導体素子を有し、
    前記複数の半導体素子の各々は、導体配線によって互いに電気的に接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の半導体装置。
  5. 前記複数の半導体素子は、発光ダイオードであり、前記導体配線によって直列接続されていることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
  6. 成長用基板上に半導体膜を形成する工程と、
    前記半導体膜上に金属電極を形成する工程と、
    前記金属電極上に第1の絶縁体層を形成する工程と、
    前記第1の絶縁体層上にリーク電流による発熱により焼損、破断または高抵抗化されることでリークパスを遮断する金属酸化物導電体層を形成する工程と、
    前記金属酸化物導電体層上に第2の絶縁体層を形成する工程と、
    前記第2の絶縁体層に金属接合層を介して支持基板を形成する工程と、
    前記成長用基板を除去する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
  7. 前記成長用基板を除去することにより表出した前記半導体膜の表面から前記絶縁体層に達する分割溝を形成して複数の半導体素子を分割・区画する工程と、
    前記複数の半導体素子間を電気的に接続する導体配線を形成する工程と、を含むことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
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