JP5664647B2 - 芳香族カルボン酸類製造プロセスの触媒回収に用いるピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法 - Google Patents

芳香族カルボン酸類製造プロセスの触媒回収に用いるピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、芳香族カルボン酸類を製造するプロセスから排出される酸化反応母液より触媒由来の重金属イオン及び臭化物イオンを吸着回収する際に用いられるピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法に関する。
芳香族カルボン酸類は、アルキル基含有芳香族炭化水素類の液相酸化反応により製造され、通常、酢酸溶媒の存在下、コバルト、マンガン等の触媒、又はさらに臭素化合物、アセトアルデヒド等の促進剤を加えた触媒が用いられる。
かかる液相酸化反応により得られる芳香族カルボン酸類を含有するスラリーについては、通常、温度を下げて晶析操作を行った後、常圧に近い圧力状態で固液分離操作を行い、芳香族カルボン酸ケーキを得る。
一方、固液分離して得られた酸化反応母液には、触媒由来の重金属イオン及び臭化物イオンなどの有用な触媒成分が含まれており、工業的に実施する場合、これらの触媒成分を循環使用することにより、製造コストを下げることが必要になる。
最も簡便な循環方法は、前記酸化反応母液をそのまま反応系に戻して再使用することであり、広く商業規模の製造プロセスにおいて行われている。ところが、該酸化反応母液中には、液相酸化反応で副生する様々な有機不純物や装置の腐食に由来する無機不純物などが混在しており、該酸化反応母液をそのまま反応系に再使用すると、反応系におけるこれらの不純物の濃度が次第に高まり、一定量を超えると液相酸化反応に悪影響を与えることがわかっている。
例えば芳香族カルボン酸がイソフタル酸の場合、該酸化反応母液を反応系に戻す割合は、通常、60〜90%と言われており、反応系に再使用しない10〜40%の酸化反応母液は、溶媒である酢酸を回収する工程へ送られる。また、芳香族カルボン酸類が2,6−ナフタレンジカルボン酸の場合は、該酸化反応母液を反応系に戻す割合は、通常、30〜90%と言われており、反応系に再使用しない10〜70%の酸化反応母液は、溶媒である酢酸を回収する工程へ送られる。
かかる酢酸回収工程へ送られる酸化反応母液から触媒成分を回収・再使用する方法としてピリジン環含有キレート樹脂を用いる方法が提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1に記載されているように、ピリジン環含有キレート樹脂は通常の水溶媒系ではなく酢酸溶媒系で使用されるため、事前に該キレート樹脂を酢酸溶媒に置き換え、更に酸化反応母液中には臭化物イオンが高濃度で存在するため、該キレート樹脂が陰イオンとして臭化物イオンを保持した状態にする必要がある。この臭化物イオンを保持した状態を、以下、Br-形と記す。
ところが水を溶媒として含有するピリジン環含有キレート樹脂を酢酸溶媒に接触させると該樹脂の膨潤、発熱、気泡の発生という前処理操作上不都合な現象が起こることが判明した。
ピリジン環含有キレート樹脂の膨潤は樹脂の内部に取り込まれた水溶媒が酢酸溶媒に置き換わり樹脂の溶媒含有状態が変化するために起きる。実際にピリジン環含有キレート樹脂を水溶媒から酢酸溶媒に置き換えると充填体積基準で約1.7倍の膨潤が起き、商業的規模の芳香族カルボン酸製造プロセスで使用する量のピリジン環含有キレート樹脂を処理する場合には樹脂の急激な膨潤による物理的破砕や樹脂同士の圧密による物理的破砕に注意する必要がある。
水溶媒から酢酸溶媒に置換する際のピリジン環含有キレート樹脂の発熱は意外であり、何故発熱するのか詳細はわかっていない。しかし、例えば、塔に充填したピリジン環含有キレート樹脂をアップフロー流れで水溶媒から酢酸溶媒に置換する際に、条件によっては該キレート樹脂層の温度が約30℃上昇することがわかっており、このような発熱は耐熱性に課題のあるピリジン環含有キレート樹脂に悪影響を及ぼす。
ピリジン環含有キレート樹脂の耐熱性については、脱ピリジン環試験として温度110℃、沸騰状態の酢酸90質量%/水10質量%の溶液中に樹脂を添加し、140時間後に溶液中の窒素濃度を測定して樹脂からの脱ピリジン環速度を求めた文献があり(特許文献2参照)、熱によりピリジン環が脱離することが知られている。
気泡の発生についても、塔にピリジン環含有キレート樹脂を充填した場合には、気泡の残留によるチャンネリングの発生や樹脂層の差圧の上昇を引き起こす可能性があり好ましくない。
ピリジン環含有キレート樹脂に関する文献としては、該樹脂の製造方法(特許文献3参照)、該樹脂を用いて金属イオンを溶液から選択的に除去する方法(特許文献4参照)、該樹脂を用いて酸化触媒を回収する方法(特許文献1,5参照)に関するものがある。
また、ピリジン環含有キレート樹脂の膨潤・収縮に関する記述としては、例えば特許文献6には「架橋度が10%より低いと、樹脂構造が酢酸等の反応溶媒によって膨潤や収縮を大きく受けやすいものとなり、破損や変質等が生じるので好ましくない。」と記載されている。また、特許文献7には「イオン交換カラムの中で樹脂を水でスラリーにした。樹脂が膨潤し、・・・」と記載されている。更に、特許文献8には「樹脂体積膨張率の値が20%を超えると、樹脂担体の耐熱安定性および耐摩耗性向上の効果を発現することができない程度に樹脂担体の物理構造の変化が著しくなっているものと考えられる。」と記載されている。しかし、該樹脂の膨潤・収縮に関する特許文献6,7および8の各々の記載は一般的な事項であり、ピリジン環含有キレート樹脂を水溶媒から有機溶媒(メタノール、酢酸など)に置き換える際のキレート樹脂の膨潤、収縮については言及していない。
一方、特許文献3,5にはピリジン環含有キレート樹脂を水溶媒から有機溶媒(メタノール、酢酸など)に置き換えることが記載されているが、その結果として該樹脂の膨潤、発熱、気泡が発生するという記述は全く認められない。
また、特許文献4には「樹脂槽を通過して溶液を上昇流の方向に流すことにより樹脂床を膨潤させることにより接触の段階が実施される」と膨潤に関する記述があるが、これは溶液中の金属イオンを除去する際の接触方法に関するものであり、ピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法に関するものではない。
更に、特許文献1にはピリジン環含有キレート樹脂の前処理について、「ピリジン環含有キレート樹脂を臭素型にするには、例えば臭化ナトリウム、臭化水素等の前記臭素化合物の水溶液又は該水溶液と酢酸との混合液を樹脂に接触させた後、氷酢酸又は水分濃度15質量%以下の含水酢酸を用いて過剰の臭素を洗浄する方法があるが、特にこの方法には制限されない。」との記載がある。しかし、ここにも前処理時のピリジン環含有キレート樹脂の膨潤、発熱、気泡の発生に関しては、開示はない。
国際公開2008/075572号 特開平6−315637号公報 特開昭53−10680号公報 特表2003−527950号公報 特開昭53−102290号公報 特開平5−306253号公報 特表平6−506211号公報 特開2002−233763号公報
水を溶媒として含有するピリジン環含有キレート樹脂を、酢酸を溶媒とするBr-形(以下、「Br-形(酢酸溶媒)」と記すことがある)とする際に、該キレート樹脂の膨潤、発熱、気泡の発生をできるだけ抑える方法は工業的には実現されていない。
よって本発明の目的は、上記問題を解決し、ピリジン環含有キレート樹脂の破砕や変質がなく、Br-形(酢酸溶媒)とするピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法を実現することである。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、安定かつ簡易な前処理方法を見出し、本発明に到達した。即ち本発明は、以下の(1)〜(12)よりなる。
(1)芳香族カルボン酸類の製造プロセスにおいて液相酸化触媒を回収する時に用いるピリジン環含有キレート樹脂の前処理時、水を溶媒として含有する該ピリジン環含有キレート樹脂を、酢酸を溶媒とするBr-形とする際に発生する、該ピリジン環含有キレート樹脂の体積膨張および発熱を抑えるピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法であって、最初に、HBr含有量が0.05〜10質量%であり、かつ、酢酸含有率が0〜30質量%である臭化水素酸水溶液を用いて該ピリジン環含有キレート樹脂をBr-形とし、次いで酢酸溶媒と接触させることを特徴とするピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
(2)前記酢酸溶媒の含水率が1〜50質量%であることを特徴とする前記(1)に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
(3)前処理前のピリジン環含有キレート樹脂がOH-形であることを特徴とする前記(1)に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
(4)ピリジン環含有キレート樹脂の体積膨張が1.00〜1.40倍の範囲、かつ、ピリジン環含有キレート樹脂の温度上昇が0〜15℃の範囲であることを特徴とする前記(1)に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
(5)ピリジン環含有キレート樹脂をBr-形とした時に該キレート樹脂に吸着した臭化物イオンの量がキレート樹脂の乾燥重量当たり0.10〜1.60[g/g−乾燥樹脂]であることを特徴とする前記(1)に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
(6)バッチ方式で行うことを特徴とする前記(1)に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
(7)ピリジン環含有キレート樹脂を、Br-形(酢酸溶媒)とする際に、該キレート樹脂を塔に充填し、塔下部より連続的に臭化水素酸水溶液を供給してアップフロー流れで該キレート樹脂と接触させ、次いで塔下部より連続的に酢酸溶媒を供給してアップフロー流れでキレート樹脂と接触させることを特徴とする前記(1)に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
(8)塔下部より供給する臭化水素酸水溶液の供給量が塔の空塔基準の線速度で0.5〜12[m/hr]であることを特徴とする前記(7)に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
(9)塔下部より供給する酢酸溶媒の供給量が塔の空塔基準の線速度で0.5〜12[m/hr]であることを特徴とする前記(7)に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
(10)前処理に使用する前記臭化水素酸水溶液及び前記酢酸溶媒の温度が10〜100℃の範囲にあることを特徴とする前記(1)に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
(11)前記芳香族カルボン酸類がイソフタル酸であることを特徴とする前記(1)に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
(12)前記芳香族カルボン酸類が2,6−ナフタレンジカルボン酸であることを特徴とする前記(1)に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
本発明によれば、最初に臭化水素酸水溶液によるBr-形化を行い、次に酢酸溶媒への置換を行うことにより、ピリジン環含有キレート樹脂の膨潤、発熱、気泡の発生を抑制し、該樹脂の破砕や変質を起こすことなくBr-形(酢酸溶媒)とする前処理を行うことが可能である。
[芳香族カルボン酸類]
本発明で言う芳香族カルボン酸類はアルキル基含有芳香族炭化水素類を液相酸化して得られるものである。該アルキル基含有芳香族炭化水素類は、少なくとも一つのメチル基が芳香族性環に置換した化合物であればよく、芳香族性環は、芳香族性炭化水素環、芳香族性複素環のいずれであっても良い。
アルキル基含有芳香族炭化水素類の具体的な例としては、トルエン、オルソキシレン、メタキシレン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、2,4−ジメチルベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド、1,5−ジメチルナフタレン、2,6−ジメチルナフタレン等を挙げることができる。
芳香族カルボン酸類の具体的な例としては、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、メタトルイル酸、トリメシン酸、3,5−ジメチル安息香酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。ただし、テレフタル酸を除く。
[ピリジン環含有キレート樹脂]
本発明で使用するピリジン環含有キレート樹脂とは、芳香族カルボン酸の製造プロセスにおいて液相酸化触媒を回収する時に用いるものであり、4−ビニルピリジン単量体と架橋剤としてジビニルベンゼンとを共重合して得られるピリジン環を有する樹脂のことである。該樹脂の製造方法については特許文献3に詳細に記載されている。
キレート樹脂は一般に金属イオンに配位して錯体を形成する配位子を持ち、水に不溶性の高分子基体であり、特定の金属イオンを選択的に吸着分離する機能を有しており、特にピリジン環を含有することで、重金属イオンを効率よく吸着するという利点を有する。
このようなピリジン環含有キレート樹脂は市販されているものを使用してもよく、市販品としては、例えば「REILLEX(登録商標)425Polymer」(商品名、Vertellus社製)、「スミキレート(登録商標)CR−2」(商品名、住化ケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
なお、上記ピリジン環含有キレート樹脂を用いて回収される液相酸化触媒としては、芳香族カルボン酸の製造プロセスにおいて用いられるものであれば特に制限はないが、例えば、コバルト化合物、マンガン化合物等の重金属化合物、及び必要に応じて、ニッケル化合物、セリウム化合物、ジルコニウム化合物などを組み合わせたものが挙げられる。また、臭素化合物、アセトアルデヒド等の促進剤を加えた触媒が使用できる。
[ピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法]
本発明の前処理方法は、水を溶媒として含有するピリジン環含有キレート樹脂をBr-形(酢酸溶媒)とする際に発生する、ピリジン環含有キレート樹脂の体積膨張および発熱を抑える方法であって、最初に、HBr含有量が0.05〜10質量%であり、かつ、酢酸含有率が0〜30質量%である臭化水素酸水溶液を用いて該ピリジン環含有キレート樹脂をBr-形とし(臭素化)、次いで酢酸溶媒と接触させる(酢酸溶媒置換)ものである。
(臭素化)
ピリジン環含有キレート樹脂がOH-形(水溶媒形)であるときはそのまま前処理を行うことができる。なお、OH-形とはBr-形と同様に、該キレート樹脂が陰イオンとして水酸化物イオンを保持した状態のことである(以下のCl-形やSO4 2-形でも同様)。該樹脂がCl-形やSO4 2-形等である場合は、一般的なイオン交換樹脂の洗浄方法により希アルカリ水溶液(例えば1.5N−NaOH水溶液)による洗浄、水洗浄を行い、該樹脂をOH-形にしてから本発明の前処理を行うのが好ましい。これらの洗浄はバッチ方式、充填塔方式(塔下部より連続的に液を供給)のいずれの方法でも行うことができる。
ピリジン環含有キレート樹脂をBr-形にする際に用いる臭化水素酸水溶液のHBr含有量が高い場合は該樹脂と接触する液量が少なくなり均一に接触することが難しくなり、低い場合は大量の液を処理することになり扱いが容易でない。上記観点から、HBr含有量の範囲は、0.05〜10質量%であり、好ましくは0.05〜9質量%であり、より好ましくは0.05〜5質量%であり、更に好ましくは0.05〜3質量%である。
また、臭化水素酸水溶液としては、酢酸を0〜30質量%含有したものを用いるが、体積膨張、発熱、気泡の発生等の観点から、上記酢酸の含有量は好ましくは0〜25質量%であり、より好ましくは0〜20質量%である。
ピリジン環含有キレート樹脂に吸着させる臭化物イオンの量は該樹脂の乾燥重量当たり0.10〜1.60[g/g−乾燥樹脂]であることが好ましく、0.10〜1.00[g/g−乾燥樹脂]であることがより好ましい。これは該樹脂に触媒由来の重金属イオンを吸着させる際にその吸着活性を十分に引き出すためであり、該樹脂の保持する臭化物イオン量が少ないと重金属イオンの吸着活性が低下してしまう。一方、該樹脂の臭化物イオン保持量が過剰な場合、重金属イオンの吸着・回収時に余分な臭化物イオンが脱離して、臭化物イオンのロスが発生する。以上の観点から、ピリジン環含有キレート樹脂に吸着させる臭化物イオンの量は該樹脂の乾燥重量当たり0.20〜0.95[g/g−乾燥樹脂]であることがより好ましく、0.30〜0.90[g/g−乾燥樹脂]であることが更に好ましい。
(酢酸溶媒置換)
ピリジン環含有キレート樹脂をBr-形にした後、酢酸に置換する際に用いる酢酸溶媒としては含水率が1〜50質量%含水酢酸が好ましい。これは実際にピリジン環含有キレート樹脂が使用される時の酢酸溶媒中の水分濃度がその範囲になるためであり、含水率が50質量%を超えると該樹脂に吸着した臭化物イオンの一部が脱離するので好ましくない。上記観点から、酢酸溶媒中の含水率は、1〜30質量%であることがより好ましく、1〜13質量%であることが更に好ましい。
(前処理条件)
ピリジン環含有キレート樹脂の前処理においては、前記臭化水素酸水溶液及び酢酸溶媒の各々との接触は、いずれもバッチ方式、充填塔方式(塔下部より連続的に液を供給)のいずれの方法でも行うことができる。
バッチ方式の利点は前処理中の該樹脂の状態を観察できることであり、容器内で攪拌しているために該樹脂が膨潤や収縮を起こしても樹脂同士の物理的接触による破砕を受けにくい。また、樹脂全体を均一に処理することができる。前処理による熱の発生も平均化されるために該樹脂への影響が出にくく、気泡の発生も問題にならない。しかし、前処理の終了したピリジン環含有キレート樹脂(Br-形(酢酸溶媒))を最終的な使用形態である塔に充填するには有機溶媒や強酸が人体や環境に暴露しない方法を取る必要があり、操作が煩雑になる。
充填塔方式の利点は水を溶媒として含有するピリジン環含有キレート樹脂の状態で塔に充填できることであり、充填作業を安全かつ安定に行うことができる。また、前処理を行う前に該キレート樹脂の微粉をアップフロー流れで除去する際に水溶媒を制限なく用いることができ、確実に微粉除去を行うことができる。
しかし、塔充填後に前処理を行う際に適当な条件を取らないと該樹脂の膨潤、発熱、気泡の発生による物理的破砕や化学的変質を起こし、該樹脂の性能を損なうことになる。
充填塔方式で塔下部より連続的に臭化水素酸水溶液を供給する際の目安は、塔内に充填された該キレート樹脂層が上昇流で流動化することであり、流動状態では該樹脂への物理的及び化学的影響を無くすことができる。このような流動状態は、供給液が塔内を上昇する線速度(塔の空塔基準)を好ましくは0.5〜12[m/hr]、より好ましくは1〜8[m/hr]、更に好ましくは2〜6[m/hr]の範囲にすることで実現できる。
同様に充填塔方式で塔下部より連続的に酢酸溶媒を供給する際の目安は、塔内に充填された該キレート樹脂層が上昇流で流動化することであり、流動状態では該樹脂への物理的及び化学的影響を無くすことができる。このような流動状態は、供給液が塔内を上昇する線速度(塔の空塔基準)を好ましくは0.5〜12[m/hr]、より好ましくは1〜8[m/hr]、更に好ましくは2〜6[m/hr]の範囲にすることで実現できる。
前処理に用いる臭化水素酸水溶液及び酢酸溶媒の温度はピリジン環含有キレート樹脂に影響のない範囲で任意に設定できる。温度が低いと液の粘度が増して該樹脂が流動化しにくくなり、一方温度が100℃を超えると該樹脂中のピリジン環が脱離し易くなることを考慮すると、上記温度は、好ましくは10〜100℃、より好ましくは15〜90℃、更に好ましくは20〜85℃の範囲が好ましい。
本発明によれば、最初に前記臭化水素酸水溶液によるBr-形化を行い、次に前記酢酸溶媒への置換を行うことにより、ピリジン環含有キレート樹脂の膨潤、発熱、気泡の発生を抑制し、該樹脂の破砕や変質を起こすことなくBr-形(酢酸溶媒)とする前処理を行うことが可能となる。この結果、本発明においては、前記ピリジン環含有キレート樹脂をBr-形(酢酸溶媒)とする際に発生する膨潤による体積膨張は好ましくは1.00〜1.40倍、より好ましくは1.00〜1.35倍、更に好ましくは1.00〜1.30倍の範囲とすることができ、かつ、ピリジン環含有キレート樹脂の発熱による温度上昇は好ましくは0〜15℃、より好ましくは0〜12℃、更に好ましくは0〜8℃の範囲とすることができる。
以下、実施例等により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
各実施例及び比較例では、ピリジン環含有キレート樹脂として「REILLEX(登録商標)425Polymer」(商品名、Vertellus社製)を使用した。
また、体積膨張率、吸着臭化物イオン量および臭化物イオン濃度等は以下により求めた。
<体積膨張率>
前処理時におけるピリジン環含有キレート樹脂の体積膨張率は処理前後の該キレート樹脂層充填体積(静置状態)より求めた。処理前の充填体積をV1[m3]、処理後の充填体積をV2[m3]とすると、体積膨張率は以下のようになる。
体積膨張率[倍]=V2/V1
<吸着臭化物イオン(Br-)量>
臭素化処理によりピリジン環含有キレート樹脂に吸着した臭化物イオンの量は以下のように算出した。
・供給臭化物イオン量:M1[g]
・臭化水素酸水溶液供給量:X1[g]
・供給臭化水素酸水溶液のHBr含有量:C1[%]

1=X1×C1/100

・排出臭化物イオン量:M2[g]
・排出液量:X2[g]
・排出液のHBr含有量:C2[%]

2=X2×C2/100

・前処理するピリジン環含有キレート樹脂量:RW[g]
・ピリジン環含有キレート樹脂の含水率:Y[%]
・乾燥樹脂ベースのピリジン環含有キレート樹脂量:RD[g]

D=RW×(100−Y)/100

・ピリジン環含有キレート樹脂に吸着した臭化物イオンの量:A[g/g−乾燥樹脂]

A=(M1−M2)/RD
<臭化物イオンの濃度の測定方法>
臭化物イオンの濃度は、以下装置を用いて測定した。
滴定装置:電位差自動滴定装置 AT−510(京都電子工業株式会社製)
<酢酸溶媒の含水率>
カールフィッシャー法にて測定した。
<実施例1>
(樹脂充填)
ガラス製の塔(内径100mm、高さ1500mm、下部に80メッシュSUS316製網の目皿付)にREILLEX(登録商標)425Polymer3.85[kg]を水溶媒で上部開口部より充填した。次に目皿より下部にある下部供給口より水溶媒(温度24℃)を30[L/hr]で2時間供給して上部オーバーフロー口に排出し、塔内のアップフロー流れで該樹脂の微粉を除去した。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは750mmであった。
(第一処理:臭素化)
HBr含有量が1.2質量%である臭化水素酸水溶液(温度24℃)を下部供給口より30[L/hr]で供給し(空塔基準の線速度3.8[m/hr])、アップフロー流れでピリジン環含有キレート樹脂のBr-形化を行った。上部オーバーフロー口の排出液中に臭化物イオン濃度が200ppmを超えて検出されたところで操作を終了した。この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で3℃上昇した。また、臭化物イオンの供給と排出の収支より、該キレート樹脂に吸着した臭化物イオンの量は0.71[g/g−乾燥樹脂]であった。気泡の発生は見られなかった。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは900mm(体積膨張率1.20倍)であった。
(第二処理:酢酸溶媒置換)
含水率が7.0質量%である酢酸溶媒(温度24℃)を下部供給口より30[L/hr]で供給し(空塔基準の線速度3.8[m/hr])、アップフロー流れでピリジン環含有キレート樹脂の酢酸溶媒置換を行った。上部オーバーフロー口より排出される酢酸溶媒の含水率が10質量%以下になったところで操作を終了した。この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で5℃上昇した。ごく僅かに気泡の発生が見られたが、該キレート樹脂層に影響を与えるほどではなかった。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは920mm(体積膨張率1.23倍)であった。
結果を表1に示す。
<実施例2>
(樹脂充填)
実施例1と同様にキレート樹脂を充填した。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは750mmであった。
(第一処理:臭素化)
実施例1と同様に第一処理を行った。
この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で3℃上昇した。また、臭化物イオンの供給と排出の収支より、該キレート樹脂に吸着した臭化物イオンの量は0.75[g/g−乾燥樹脂]であった。気泡の発生は見られなかった。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは900mm(体積膨張率1.20倍)であった。
(第二処理:酢酸溶媒置換)
酢酸溶媒の温度を24℃から58℃に変更した以外は実施例1と同様に第二処理を行った。
この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で2℃上昇した。気泡の発生は見られなかった。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは925mm(体積膨張率1.23倍)であった。
結果を表1に示す。
<実施例3>
(樹脂充填)
実施例1と同様にキレート樹脂を充填した。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは750mmであった。
(第一処理:臭素化)
HBr含有量が5.0質量%である臭化水素酸水溶液(温度24℃)を下部供給口より30[L/hr]で供給し(空塔基準の線速度3.8[m/hr])、アップフロー流れでピリジン環含有キレート樹脂のBr-形化を行った。上部オーバーフロー口の排出液中に臭化物イオン濃度が200ppmを超えて検出されたところで操作を終了した。この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で4℃上昇し、更に気泡の発生は見られなかった。静置した状態での該キレート樹脂層高さは900mm(体積膨張率1.20倍)であった。また、臭化物イオンの供給と排出の収支より、該キレート樹脂に吸着した臭化物イオンの量は0.98[g/g−乾燥樹脂]であった。
(第二処理:酢酸溶媒置換)
実施例1と同様に第二処理を行った。
この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で5℃上昇した。ごく僅かに気泡の発生が見られたが、該キレート樹脂に影響を与えるほどではではなかった。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは920mm(体積膨張率1.23倍)であった。
結果を表1に示す。
<実施例4>
(樹脂充填)
実施例1と同様にキレート樹脂を充填した。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは750mmであった。
(第一処理:臭素化)
HBr含有量が10質量%である臭化水素酸水溶液(温度24℃)を下部供給口より30[L/hr]で供給し(空塔基準の線速度3.8[m/hr])、アップフロー流れでピリジン環含有キレート樹脂のBr-形化を行った。上部オーバーフロー口の排出液中に臭化物イオン濃度が200ppmを超えて検出されたところで操作を終了した。この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で5℃上昇し、更に気泡の発生は見られなかった。静置した状態での該キレート樹脂層高さは910mm(体積膨張率1.21倍)であった。また、臭化物イオンの供給と排出の収支より、該キレート樹脂に吸着した臭化物イオンの量は1.53[g/g−乾燥樹脂]であった。
(第二処理:酢酸溶媒置換)
実施例1と同様に第二処理を行った。
この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で5℃上昇した。ごく僅かに気泡の発生が見られたが、該キレート樹脂に影響を与えるほどではではなかった。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは930mm(体積膨張率1.24倍)であった。
酢酸溶媒へ置換中に該キレート樹脂に吸着した臭化物イオンの一部が溶離し、処分に困る酢酸廃液が発生した。
結果を表1に示す。
<比較例1>
(樹脂充填)
実施例1と同様にキレート樹脂を充填した。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは750mmであった。
(第一処理:酢酸溶媒置換)
含水率が7.0質量%である酢酸溶媒(温度24℃)を下部供給口より30[L/hr]で供給し(空塔基準の線速度3.8[m/hr])、アップフロー流れでピリジン環含有キレート樹脂の酢酸溶媒置換を行った。上部オーバーフロー口より排出される酢酸溶媒の含水率が10質量%以下になったところで操作を終了した。この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で30℃上昇し、更に気泡の発生により樹脂が押し上げられ、該キレート樹脂層が分割した。終了後に気泡を抜き、静置した状態での該キレート樹脂層高さは1250mm(体積膨張率1.67倍)であった。
(第二処理:臭素化)
HBr含有量が1.2質量%である酢酸溶媒(含水率8.1質量%)(温度24℃)を下部供給口より30[L/hr]で供給し(空塔基準の線速度3.8[m/hr])、アップフロー流れでピリジン環含有キレート樹脂のBr-形化を行った。上部オーバーフロー口の排出液中に臭化物イオン濃度が200ppmを超えて検出されたところで操作を終了した。この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で7℃上昇した。また、臭化物イオンの供給と排出の収支より、該キレート樹脂に吸着した臭化物イオンの量は0.77[g/g−乾燥樹脂]であった。気泡の発生は見られなかった。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは940mm(体積膨張率1.25倍)であった。
結果を表1に示す。
<比較例2>
(樹脂充填)
実施例1と同様にキレート樹脂を充填した。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは750mmであった。
(第一処理:酢酸溶媒置換)
含水率が50質量%である酢酸溶媒(温度24℃)を下部供給口より30[L/hr]で供給し(空塔基準の線速度3.8[m/hr])、アップフロー流れでピリジン環含有キレート樹脂の酢酸溶媒置換を行った。上部オーバーフロー口より排出される酢酸溶媒の含水率が55質量%以下になったところで操作を終了した。この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で22℃上昇し、更に気泡の発生により樹脂が押し上げられ、該キレート樹脂層が分割した。終了後に気泡を抜き、静置した状態での該キレート樹脂層高さは1020mm(体積膨張率1.36倍)であった。
(第二処理:臭素化)
比較例1と同様に第二処理を行った。
この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で5℃上昇した。また、臭化物イオンの供給と排出の収支より、該キレート樹脂に吸着した臭化物イオンの量は0.77[g/g−乾燥樹脂]であった。気泡の発生は見られなかった。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは930mm(体積膨張率1.24倍)であった。
結果を表1に示す。
<比較例3>
(樹脂充填)
実施例1と同様にキレート樹脂を充填した。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは750mmであった。
(第一処理:酢酸溶媒置換及び臭素化)
HBr含有量が1.2質量%である酢酸溶媒(含水率8.1質量%)(温度24℃)を下部供給口より30[L/hr]で供給し(空塔基準の線速度3.8[m/hr])、アップフロー流れでピリジン環含有キレート樹脂の酢酸溶媒置換及びBr-形化を行った。上部オーバーフロー口より排出される酢酸溶媒の含水率が10質量%以下になり、かつ臭化物イオン濃度が200ppmを超えて検出されたところで操作を終了した。この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で29℃上昇し、更に気泡の発生により樹脂が押し上げられ、該キレート樹脂層が分割した。また、臭化物イオンの供給と排出の収支より、該キレート樹脂に吸着した臭化物イオンの量は0.78[g/g−乾燥樹脂]であった。終了後に気泡を抜き、静置した状態での該キレート樹脂層高さは940mm(体積膨張率1.25倍)であった。
結果を表1に示す。
<比較例4>
(樹脂充填)
実施例1と同様にキレート樹脂を充填した。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは750mmであった。
(第一処理:臭素化)
HBr含有量が0.03質量%である臭化水素酸水溶液(温度24℃)を下部供給口より30[L/hr]で供給し(空塔基準の線速度3.8[m/hr])、アップフロー流れでピリジン環含有キレート樹脂のBr-形化を行った。上部オーバーフロー口の排出液中に臭化物イオン濃度が200ppmを超えて検出されたところで操作を終了した。この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で1℃上昇し、更に気泡の発生は見られなかった。終了後に気泡を抜き、静置した状態での該キレート樹脂層高さは890mm(体積膨張率1.19倍)であった。また、臭化物イオンの供給と排出の収支より、該キレート樹脂に吸着した臭化物イオンの量は0・62[g/g−乾燥樹脂]であった。
臭素化に要した時間は、実施例1では4時間であったのに対し6日間であり、大量の排水が発生した。
(第二処理:酢酸溶媒置換)
実施例1と同様に第二処理を行った。
この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で5℃上昇した。ごく僅かに気泡の発生が見られたが、該キレート樹脂に影響を与えるほどではではなかった。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは915mm(体積膨張率1.22倍)であった。
結果を表1に示す。
<実施例5>
(樹脂充填)
実施例1と同様にキレート樹脂を充填した。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは750mmであった。
(第一処理:臭素化)
HBr含有量が1.2質量%である臭化水素酸水溶液(酢酸含有量25質量%)(温度24℃)を下部供給口より30[L/hr]で供給し(空塔基準の線速度3.8[m/hr])、アップフロー流れでピリジン環含有キレート樹脂のBr-形化を行った。上部オーバーフロー口の排出液中に臭化物イオン濃度が200ppmを超えて検出されたところで操作を終了した。この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で12℃上昇した。また、臭化物イオンの供給と排出の収支より、該キレート樹脂に吸着した臭化物イオンの量は0.74[g/g−乾燥樹脂]であった。ごく僅かに気泡の発生が見られたが、該キレート樹脂層に影響を与えるほどではなかった。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは940mm(体積膨張率1.25倍)であった。
(第二処理:酢酸溶媒置換)
実施例1と同様に第二処理を行った。
この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で1℃上昇した。気泡の発生は見られなかった。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは930mm(体積膨張率1.24倍)であった。
結果を表1に示す。
<比較例5>
(樹脂充填)
実施例1と同様にキレート樹脂を充填した。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは750mmであった。
(第一処理:臭素化)
HBr含有量が1.2質量%である臭化水素酸水溶液(酢酸含有量50質量%)(温度24℃)を下部供給口より30[L/hr]で供給し(空塔基準の線速度3.8[m/hr])、アップフロー流れでピリジン環含有キレート樹脂のBr-形化を行った。上部オーバーフロー口の排出液中に臭化物イオン濃度が200ppmを超えて検出されたところで操作を終了した。この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で21℃上昇し、更に気泡の発生により樹脂が押し上げられ、該キレート樹脂層が分割した。終了後に気泡を抜き、静置した状態での該キレート樹脂層高さは1000mm(体積膨張率1.33倍)であった。また、臭化物イオンの供給と排出の収支より、該キレート樹脂に吸着した臭化物イオンの量は0.75[g/g−乾燥樹脂]であった。
(第二処理:酢酸溶媒置換)
実施例1と同様に第二処理を行った。
この操作中、該キレート樹脂層の温度は最大で1℃上昇した。気泡の発生は見られなかった。終了後に静置した状態での該キレート樹脂層高さは935mm(体積膨張率1.25倍)であった。
結果を表1に示す。
Figure 0005664647
本発明は、芳香族カルボン酸類を製造するプロセスから排出される酸化反応母液より触媒由来の重金属イオン及び臭化物イオンを吸着回収する際に用いられるピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法に関する。
本発明によれば、最初に臭化水素酸水溶液によるBr-形化を行い、次に酢酸溶媒への置換を行うことにより、ピリジン環含有キレート樹脂の膨潤、発熱、気泡の発生を抑制し、該樹脂の破砕や変質を起こすことなくBr-形(酢酸溶媒)とする前処理を行うことが可能である。

Claims (15)

  1. テレフタル酸を除く芳香族カルボン酸の製造プロセスにおいて液相酸化触媒を回収する時に用いるピリジン環含有キレート樹脂の前処理時、水を溶媒として含有する該ピリジン環含有キレート樹脂を、酢酸を溶媒とするBr-形とする際に発生する、該ピリジン環含有キレート樹脂の体積膨張および発熱を抑えるピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法であって、最初に、HBr含有量が0.05〜10質量%であり、かつ、酢酸含有率が0〜30質量%である臭化水素酸水溶液を用いて該ピリジン環含有キレート樹脂をBr-形とし、次いで酢酸溶媒と接触させることを特徴とするピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
  2. 前記酢酸溶媒の含水率が1〜50質量%であることを特徴とする請求項1に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
  3. 前処理前のピリジン環含有キレート樹脂がOH-形であることを特徴とする請求項1に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
  4. ピリジン環含有キレート樹脂の体積膨張が1.00〜1.40倍の範囲、かつ、ピリジン環含有キレート樹脂の温度上昇が0〜15℃の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
  5. ピリジン環含有キレート樹脂をBr-形とした時に該キレート樹脂に吸着した臭化物イオンの量がキレート樹脂の乾燥重量当たり0.10〜1.60[g/g−乾燥樹脂]であることを特徴とする請求項1に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
  6. バッチ方式で行うことを特徴とする請求項1に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
  7. ピリジン環含有キレート樹脂を、酢酸を溶媒とするBr-形とする際に、該キレート樹脂を塔に充填し、塔下部より連続的に臭化水素酸水溶液を供給してアップフロー流れで該キレート樹脂と接触させ、次いで塔下部より連続的に酢酸溶媒を供給してアップフロー流れでキレート樹脂と接触させることを特徴とする請求項1に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
  8. 塔下部より供給する臭化水素酸水溶液の供給量が塔の空塔基準の線速度で0.5〜12[m/hr]であることを特徴とする請求項7に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
  9. 塔下部より供給する酢酸溶媒の供給量が塔の空塔基準の線速度で0.5〜12[m/hr]であることを特徴とする請求項7に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
  10. 前処理に使用する前記臭化水素酸水溶液及び前記酢酸溶媒の温度が10〜100℃の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
  11. 前記芳香族カルボン酸がイソフタル酸であることを特徴とする請求項1に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
  12. 前記芳香族カルボン酸が2,6−ナフタレンジカルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
  13. 前記芳香族カルボン酸が安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、メタトルイル酸、トリメシン酸、3,5−ジメチル安息香酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
  14. 前記酢酸溶媒の含水率が1〜30質量%であることを特徴とする請求項1に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
  15. 前記酢酸溶媒の含水率が1〜13質量%であることを特徴とする請求項1に記載のピリジン環含有キレート樹脂の前処理方法。
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