JP5664079B2 - アクチュエータ - Google Patents

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Description

本発明は、機器に発生した振動を低減する場合の使用に最適であって、複数の円筒状又は角柱状の永久磁石を用いる可動子と可動子が貫通される固定子とを組み合わせてなるアクチュエータに関する。
アクティブ制振装置は、除去したい振動を防振材料にて吸収する従来の振動の低減方法とは異なり、除去したい振動と逆方向の振動をアクチュエータにて発生させて、振動を低減する装置である。このアクティブ制振装置は、防振材料を用いる方法と比べて、大きな防振能力を発揮することができ、自動車から計測機器まで振動が問題となる種々の装置に広範囲で使用されている(例えば、特許文献1,2など)。
特開2009−281507号公報 特開2005−207505号公報
振動を低減するためのアクチュエータは、通常のリニアモータとは異なり、一般的に可動範囲(ストローク)は大きくないが大きな推力を必要とする。また、このような制振用アクチュエータは、ストロークが短いため、通常の同期型リニアモータのような3相交流駆動ではなく直流駆動で使用されることが多い。
直流駆動で広く用いられるショートストローク型のアクチュエータとして、円環状の磁気ギャップを持ち半径方向に磁束を発生させる磁気回路にソレノイド状に巻いたコイルを挿入し、コイルに通電してローレンツ力により推力を得るボイスコイルモータ(VCM)が知られている。ボイスコイルモータは、駆動電流に比例した推力が得られ、また、推力の可動子位置依存性が小さいため、制御性は良好である。しかしながら、最大推力が小さく、推力起磁力比(起磁力に対する推力の比率)が小さいので、大きな電流を印加する必要があり、連続通電時の発熱が問題となる場合が多く、高出力の用途には適さない。
一方、特許文献2に開示されているような磁気ソレノイドを用いた構成では、鉄心を磁化することによる吸着力を利用しており、大きな推力は得られるが、推力が一方向のみであって可動子位置依存性が大きいため、位置制御は困難である。
また、一般的に用いられているコア付き同期型リニアモータは、半径方向に磁化した円筒状又は角柱状の磁石を有する可動子を、貫通孔を有する磁極歯が周期的に配列された軟質磁性体製の固定子に挿入し、可動子の磁石の位置に同期した3相交流を固定子のコイルに印加して推力を発生させる。このコア付き同期型リニアモータでは、可動子位置に依存しないで推力を発生でき、高い推力起磁力比により大きな推力を得ることができる。しかしながら、3相交流駆動であるため、ボイスコイルモータに比べると、駆動・制御回路が複雑になるという問題がある。また、3相交流駆動が前提となる構成であるため、単相ユニットを直流駆動した場合には、電気角90°付近で最大推力となり、電気角が90°からずれると推力は小さくなるので、推力の可動子位置依存性が大きくなり、制御性は悪くなる。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、直流駆動が可能であって駆動・制御回路が簡単でありながら可動子の広範囲の位置において可動子の位置に依存しない高い推力を発生することができ、また、構造が簡単かつ小型であって、低コスト化を図れるアクチュエータを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、単極ユニットの厚さを制御することにより、固定子の大きさに対して、大きな一定の推力が得られる範囲、つまり可動範囲を大きくすることができるアクチュエータを提供することにある。
本発明に係るアクチュエータは、円筒状又は角柱状の可動子を固定子に貫通させてなるアクチュエータにおいて、軸長方向に磁化した複数の円筒状又は角柱状の永久磁石と複数の円筒状又は角柱状の軟質磁性体製のヨークとをそれぞれ一つずつ交互に重ねており、前記永久磁石は、軸長の一方向に磁化した永久磁石と軸長の他方向に磁化した永久磁石とが交互に配されている可動子と、磁極部、該磁極部の外側に配置したヨーク部、並びに、該ヨーク部及び前記磁極部を接続する2つのコア部を有する軟質磁性体製の第1サブユニットと、磁極部、該磁極部の外側に配置したヨーク部、並びに、前記第1サブユニットのコア部と平面視で異なる位置に設けられ、前記ヨーク部及び前記磁極部を接続する2つのコア部を有する軟質磁性体製の第2サブユニットと、前記第1サブユニット及び第2サブユニットの間に、前記第1サブユニット及び第2サブユニットのコア部同士が接触しないように挟まれた軟質磁性体製のスペーサとを重ねた磁極ユニットを複数個重ねてあり、前記複数個の磁極ユニットの第1サブユニットのコア部または第2サブユニットのコア部に捲き線を施してある固定子とを備えており、λ1>λ2の関係を満たすことを特徴とする(但し、λ1:前記固定子の磁極周期(隣り合う一方の磁極ユニットにおけるスペーサの中央位置から隣り合う他方の磁極ユニットにおけるスペーサの中央位置までの距離)、λ2:前記可動子の磁極周期(軸長の一方向に磁化した永久磁石の高さと軸長の他方向に磁化した永久磁石の高さと2個分のヨークの高さとを合計した値))
本発明に係るアクチュエータの可動子は、軸長方向(重ね方向、可動子の移動方向)の一方向に磁化した円筒状又は角柱状の永久磁石、円筒状又は角柱状の軟質磁性体製のヨーク、軸長方向の他方向に磁化した円筒状又は角柱状の永久磁石、円筒状又は角柱状の軟質磁性体製のヨーク、・・・の順に交互に重ねて構成され、軟質磁性体製のヨークの外周の表面に磁極(N極またはS極)が形成される構造である。
本発明に係るアクチュエータの固定子は、可動子が貫通される貫通孔の可動子に対向する面である磁極部、磁極部の外側に配置したヨーク部、並びに、ヨーク部及び磁極部を接続する2つのコア部を有する軟質磁性体製の第1サブユニットと、第1サブユニットと同様の部材を有しており、第1サブユニットに比べて2つのコア部の形成位置を異ならせた第2サブユニットとを重ねた磁極ユニットを複数個重ねてあり、複数個の磁極ユニットの第1サブユニットのコア部または第2サブユニットのコア部に一括して捲き線を施した構成である。
そして、本発明に係るアクチュエータでは、固定子の磁極周期λ1を可動子の磁極周期λ2より長くしている。よって、λ1=λ2としていないので、複数個の磁極ユニットそれぞれで推力が最大となる可動子の位置が異なる。したがって、これらの複数個の磁極ユニットによる推力を合成した場合に、一定の高い推力を維持した状態を可動子の位置に依存せず確保できる。よって、直流駆動が可能であって駆動・制御回路及び自身の構造が簡単であっても、λ1−λ2の値に対応した可動子の広範囲の位置において高い推力を発生する。
本発明に係るアクチュエータは、好ましくは、重なり合う2つの磁極ユニットにあって、一方の磁極ユニットの他方の磁極ユニットに隣り合った第1サブユニットの厚さが隣り合わない第2サブユニットの厚さより厚く、他方の磁極ユニットの一方の磁極ユニットに隣り合った第2サブユニットの厚さが隣り合わない第1サブユニットの厚さより厚いことを特徴とする。
本発明に係るアクチュエータにあっては、各磁極ユニットにおける第1サブユニットと第2サブユニットとの厚さが異なっており、各磁極ユニットにおいて他の磁極ユニットと隣り合った第1サブユニット(または第2サブユニット)の厚さが、隣り合わない第2サブユニット(または第1サブユニット)の厚さより厚くなっている。このような構成により、複数の磁極ユニットでの推力特性において交差する側の推力低下を交差しない側に比べて緩やかにすることができ、λ1−λ2を大きく設定することが可能となり、一定の高い推力を維持する可動子の位置が長くなって、可動範囲は大きくなる。
本発明に係るアクチュエータは、好ましくは、前記λ1,λ2は0<(λ1−λ2)/λ2<0.35の関係を満たすことを特徴とする。
本発明に係るアクチュエータにあっては、λ1,λ2の設定可能条件が0<(λ1−λ2)/λ2<0.35である。この条件を満たす場合には一定の高い推力が広範囲で得られる。
本発明に係るアクチュエータにあっては、各磁極ユニットにおける第1サブユニットと第2サブユニットとの間、及び、磁極ユニット同士の間に、スペーサを設けている。よって、簡単な構成により、第1サブユニットのコア部と第2サブユニットのコア部との非接触(磁気回路の短絡)を実現する。また、第1サブユニットと第2サブユニットとの間隔、及び、隣り合う磁極ユニット同士の間隔の調整を容易に行える。
本発明のアクチュエータでは、固定子の磁極周期λ1を可動子の磁極周期λ2より長くしているので、複数の磁極ユニットそれぞれで推力が最大となる可動子の位置が異なるため、これらの複数の磁極ユニットによる推力を合成した場合に、一定の高い推力を維持した状態を可動子位置の広い範囲で確保できるので、直流駆動が可能であって駆動・制御回路及び自身の構造が簡単であっても、λ1−λ2の値に対応した可動子の広範囲の位置において高い推力を発生することができる。
本発明のアクチュエータでは、重なり合う2つの磁極ユニットにあって、隣り合った第1サブユニット及び第2サブユニットの厚さを、隣り合わない第2サブユニット及び第1サブユニットの厚さより厚くしたので、複数の磁極ユニットでの推力特性において交差する側の推力低下を交差しない側に比べて緩やかにすることができ、λ1−λ2を大きく設定できて、可動範囲を大きくすることができる。
本発明に係るアクチュエータの可動子の構成を示す斜視図である。 本発明に係るアクチュエータの固定子に使用する第1単極ユニット、第2単極ユニット、スペーサユニット及び第1ペア磁極ユニットの構成を示す斜視図である。 本発明に係るアクチュエータの固定子に使用する第3単極ユニット、第4単極ユニット、スペーサユニット及び第2ペア磁極ユニットの構成を示す斜視図である。 本発明に係るアクチュエータの固定子に使用するスペーサユニットの構成を示す斜視図である。 本発明に係るアクチュエータの固定子の構成を示す斜視図である。 本発明に係るアクチュエータの構成を示す斜視図である。 本発明に係るアクチュエータにおける通電状態と起磁力とを示す断面図である。 本発明に係るアクチュエータの構成を示す断面図である。 可動子位置と推力との関係を示すグラフである。 (λ1−λ2)/λ2と合成推力との特性を示すグラフである。 本発明に係るアクチュエータの他の可動子の構成を示す斜視図である。 本発明の実施例に係るアクチュエータの構成を示す断面図である。 本発明の実施例に係るアクチュエータに使用する電機子素材を示す平面図である。 本発明の実施例に係るアクチュエータにおける可動子位置と推力との関係を示すグラフである。 本発明の実施例に係るアクチュエータでの各ペア磁極ユニットにおける可動子位置と推力との関係を示すグラフである。
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明に係るアクチュエータの可動子の構成を示す斜視図である。可動子1は、2種類の円筒状の永久磁石2a,2bと、円筒状の軟質磁性体のヨーク3とを組み合わせた構成であり、永久磁石2a、ヨーク3、永久磁石2b、ヨーク3、・・・の順に交互に接着させた構成をなしている。
図1において、各永久磁石2a,2bに示された白抜矢符は各永久磁石2a,2bの磁化方向を示している。永久磁石2a,2bは何れも、その軸長方向(高さ方向)、つまり可動子1の移動方向(可動子1の長手方向)に磁化されているが、それらの磁化の向きは互いに180度異なる逆向きである。そして、これらの隣り合う永久磁石2aと永久磁石2bとの間には、円筒状の軟質磁性体のヨーク3が挿入されており、各ヨーク3の表面に磁極(N極、S極)が形成される構造になっている。
本発明のアクチュエータにおける可動子1は、このような構造を有するため、永久磁石として、半径方向に磁化された磁石ではなく、軸長方向に磁化された汎用の平行配向磁石を利用することができて、磁気回路に対する設計の自由度を高くできる。また、永久磁石2a,2bは後述する電機子からなる固定子10からの印加磁界に対して直角方向に磁化されているため、可動子1は、直接減磁磁界が印加されにくい構造であって減磁耐力が高くなる。
図2〜図4は、本発明に係るアクチュエータの固定子10の構成部材を示しており、図2、図3は固定子10を構成する第1ペア磁極ユニット4、第2ペア磁極ユニット5をそれぞれ示し、図4は固定子10を構成するスペーサユニット6を示している。また、図5は、固定子10の構成を示す斜視図である。電機子からなる固定子10は、これらの第1ペア磁極ユニット4と、第2ペア磁極ユニット5と、スペーサユニット6と、後述する駆動コイル7a,7bとを組み合わせて構成されている。
第1ペア磁極ユニット4は、図2(a)に示す第1単極ユニット41と図2(b)に示す第2単極ユニット42とを、両ユニット41,42の間に図2(c)に示すスペーサユニット43を挿入させた態様で接着させた構成をなしている(図2(d)参照)。
第1単極ユニット41は、軟質磁性体にて形成されており、可動子1が貫通されるリング状の磁極部41aと、磁極部41aからの磁束を接続するために磁極部41aの外側に配置された枠体としてのヨーク部41bと、ヨーク部41b及び磁極部41aを接続する2つのコア部41c,41cとを有する。2つのコア部41c,41cは、180度離隔した位置に設けられている。
また、第2単極ユニット42は、軟質磁性体にて形成されており、可動子1が貫通されるリング状の磁極部42aと、磁極部42aからの磁束を接続するために磁極部42aの外側に配置された枠体としてのヨーク部42bと、ヨーク部42b及び磁極部42aを接続する2つのコア部42c,42cとを有する。2つのコア部42c,42cは、180度離隔した位置に設けられている。
第1単極ユニット41と第2単極ユニット42とは同一の構成部材を有しているが、第2単極ユニット42は、第1単極ユニット41のリング状の磁極部41aの中心を回転中心として90度回転させたものである。よって、第2単極ユニット42におけるコア部42c,42cの形成位置(図2(b)では水平位置と定義する)は、第1単極ユニット41におけるコア部41c,41cの形成位置(図2(a)では図2(b)に対して垂直位置とする)から90度回転しており、2つのコア部の形成位置が平面視で異なっている。また、第2単極ユニット42の厚さは、第1単極ユニット41の厚さより厚い。
そして、第1単極ユニット41、図2(c)に示すようなヨーク43aのみからなる軟質磁性体製のスペーサユニット43、第2単極ユニット42をこの順に重ねて接着することにより、図2(d)に示すような第1ペア磁極ユニット4は構成される。第1ペア磁極ユニット4の重なった第1単極ユニット41及び第2単極ユニット42において、それらのヨーク部41bとヨーク部42bとはスペーサユニット43のヨーク43aを介して接しているが、それらのコア部41cとコア部42cとは接しておらず、これらの間に空隙が存在していて磁気回路の短絡を回避している。
第2ペア磁極ユニット5は、図3(a)に示す第3単極ユニット51と図3(b)に示す第4単極ユニット52とを、両ユニット51,52の間に図3(c)に示すスペーサユニット53を挿入させた態様で接着させた構成をなしている(図3(d)参照)。
第3単極ユニット51は、軟質磁性体にて形成されており、可動子1が貫通されるリング状の磁極部51aと、磁極部51aからの磁束を接続するために磁極部51aの外側に配置された枠体としてのヨーク部51bと、ヨーク部51b及び磁極部51aを接続する2つのコア部51c,51cとを有する。2つのコア部51c,51cは、180度離隔した位置に設けられている。
また、第4単極ユニット52は、軟質磁性体にて形成されており、可動子1が貫通されるリング状の磁極部52aと、磁極部52aからの磁束を接続するために磁極部52aの外側に配置された枠体としてのヨーク部52bと、ヨーク部52b及び磁極部52aを接続する2つのコア部52c,52cとを有する。2つのコア部52c,52cは、180度離隔した位置に設けられている。
第3単極ユニット51と第4単極ユニット52とは同一の構成部材を有しているが、第4単極ユニット52は、第3単極ユニット51のリング状の磁極部51aの中心を回転中心として90度回転させたものである。よって、第4単極ユニット52におけるコア部52c,52cの形成位置(図3(b)では水平位置と定義する)は、第3単極ユニット51におけるコア部51c,51cの形成位置(図3(a)では図3(b)に対して垂直位置とする)から90度回転しており、2つのコア部の形成位置が平面視で異なっている。また、第3単極ユニット51の厚さは、第4単極ユニット52の厚さより厚い。
そして、第3単極ユニット51、図3(c)に示すようなヨーク53aのみからなる軟質磁性体製のスペーサユニット53、第4単極ユニット52をこの順に重ねて接着することにより、図3(d)に示すような第2ペア磁極ユニット5は構成される。第2ペア磁極ユニット5の重なった第3単極ユニット51及び第4単極ユニット52において、それらのヨーク部51bとヨーク部52bとはスペーサユニット53のヨーク53aを介して接しているが、それらのコア部51cとコア部52cとは接しておらず、これらの間に空隙が存在していて磁気回路の短絡を回避している。
第1ペア磁極ユニット4、図4に示すようなヨーク6aのみからなる軟質磁性体製のスペーサユニット6、第2ペア磁極ユニット5をこの順に重ねて接着することにより、図5(a)に示すような固定子本体を作製する。
第1ペア磁極ユニット4と第2ペア磁極ユニット5との共通の隙間部分4a,5a(図2(d),図3(d)参照)を貫通して第1単極ユニット41における一方のコア部41c及び第3単極ユニット51における一方のコア部51cに一括して捲き線としての駆動コイル7aを巻回するとともに、第1ペア磁極ユニット4と第2ペア磁極ユニット5との共通の隙間部分4b,5b(図2(d),図3(d)参照)を貫通して第1単極ユニット41における他方のコア部41c及び第3単極ユニット51における他方のコア部51cに一括して捲き線としての駆動コイル7bを巻回する。そして、駆動コイル7aと駆動コイル7bとを、通電時に逆向きに磁束が発生するように接続する(図5(b)参照)。図5(b)における白抜矢符は、駆動コイル7a,駆動コイル7bでの通電方向を示している。このように接続することにより、隣り合う単極ユニットに互いに逆極性の起磁力が印加されるため、捲き線の構造を簡素化できる。
そして、上述した図1に示す可動子1を、各磁極部41a,42a,51a,52aが連なって形成される固定子10の中空部8(図5(b)参照)に貫通させることにより、アクチュエータ20が構成される。図6は、アクチュエータ20の構成を示す斜視図である。
このようなアクチュエータ20では、駆動コイル7a,7bに逆方向に直流電流を流すことにより、固定子10の中空部8に貫通された可動子1が固定子10に対して往復直線運動を行う。
図7は、アクチュエータ20における通電状態と起磁力とを示す断面図である。図7において、「●(紙面の裏から表への通流)」、「×(紙面の表から裏への通流)」は駆動コイル7a,駆動コイル7bへの通流方向を示しており、白抜矢符はコイル通電によってコア部に印加される起磁力の向きを示している。駆動コイル7a,駆動コイル7bに逆向きの電流を流すことにより、各単極ユニットの全てのコア部に磁界が生じる。
図8は、上述したような可動子1及び固定子10から構成される本発明に係るアクチュエータ20の構成を示す断面図である。図8において、λ1は固定子10の磁極周期を示し、λ2は可動子1の磁極周期を示す。また、T1,T2,T3,T4はそれぞれ、第1単極ユニット41,第2単極ユニット42,第3単極ユニット51,第4単極ユニット52の電極歯を示す。
固定子10の磁極周期λ1は、スペーサユニット43の中央位置からスペーサユニット53の中央位置までの距離であり、具体的には、スペーサユニット43の厚さの半分、第2単極ユニット42の厚さ、スペーサユニット6の厚さ、第3単極ユニット51の厚さ、及びスペーサユニット53の厚さの半分を合計した値である。一方、可動子1の磁極周期λ2は、一のヨーク3の中央位置からその2つ先のヨーク3の中央位置までの距離であり、具体的には、永久磁石2aの高さ、永久磁石2bの高さ、及び2個分のヨーク3の高さを合計した値である。
一般的なアクチュエータにあってはλ1=λ2の関係を満たすが、本発明のアクチュエータ20にあってはλ1>λ2の関係である。また、0<(λ1−λ2)/λ2<0.35の条件を満たしている。
図9(a)は、λ1>λ2の関係である場合の可動子位置と推力との関係を示すグラフである。また、比較例として、λ1=λ2の関係である場合の可動子位置と推力との関係を図9(b)のグラフに示す。図9(a),(b)において、固定子10を構成する第1単極ユニット41の磁極歯T1及び第2単極ユニット42の磁極歯T2と可動子1との相互作用で発生する推力を破線Aで表し、第3単極ユニット51の磁極歯T3及び第4単極ユニット52の磁極歯T4と可動子1との相互作用で発生する推力を破線Bで表し、それらの推力を加算した合成推力を実線Cで表している。
λ1=λ2である場合(図9(b))には、磁極歯T1及び磁極歯T2による推力が最大となる可動子位置と、磁極歯T3及び磁極歯T4による推力が最大となる可動子位置とは同じであり、合成推力もその同じ位置で最大となる。そして、その同じ位置からはずれると、合成推力が低下する特性を呈する。
これに対して、本発明のλ1>λ2である場合(図9(a))には、磁極歯T1及び磁極歯T2による推力が最大となる可動子位置と、磁極歯T3及び磁極歯T4による推力が最大となる可動子位置とは異なり、その最大となる両可動子位置の間隔はほぼλ1−λ2となる。そこで、第1ペア磁極ユニット4(磁極歯T1及び磁極歯T2)による推力と、第2ペア磁極ユニット5(磁極歯T3及び磁極歯T4)による推力とが最大推力の50〜60%程度に低下する位置が重なるようにλ1−λ2の値を設定することにより、この区間では可動子位置によらずに一定の推力が得られる領域(図9(a)の推力平坦領域)を確保することができる。ここで、推力平坦領域とは、合成推力の平均に対し±15%以内のバラツキにおさまった領域をいう。
したがって、ボイスコイルモータと同様な良好な制御特性と、コア付きアクチュエータと同様な高出力特性とを兼ね備えたアクチュエータを実現することができる。
第1ペア磁極ユニット4における磁極歯T1及び磁極歯T2の可動子移動方向の厚さ(第1単極ユニット41及び第2単極ユニット42の厚さ)t1及びt2を異ならせることにより、可動子位置と推力との関係を推力最大位置に対して左右非対称とすることができる。これは、磁極歯が厚い場合には、可動子1の変位に対して長く磁束の捕捉が可能であるために推力低下の割合が小さくなるからである。同様に、第2ペア磁極ユニット5においても、磁極歯T3,T4の厚さt3,t4を異ならせた場合に、左右非対称の特性が得られる。
そこで、第1ペア磁極ユニット4にあっては磁極歯T2(第2単極ユニット42)を磁極歯T1(第1単極ユニット41)より厚く(t2>t1)、第2ペア磁極ユニット5にあっては磁極歯T3(第3単極ユニット51)を磁極歯T4(第4単極ユニット52)より厚く(t3>t4)することにより、2つの推力特性曲線(図6(a)の破線A及び破線B)が交差する側の推力低下を交差しない側に比べて緩やかにすることができるため、λ1−λ2の値を大きく設定することが可能となる。この結果、一定の高い推力を維持できる範囲を大きくできて、固定子10の大きさに対して可動子1の可動範囲を長くすることができる。
以下、λ1とλ2との数値関係に関する考察について説明する。λ1−λ2の値で評価する場合にはアクチュエータの全体長の影響を受けるので、(λ1−λ2)/λ2をパラメータとして考察する。
図10は、(λ1−λ2)/λ2を横軸とし、合成推力を縦軸とした特性を示すグラフである。図10において、実線Aはt1=t2,t3=t4の場合を示し、実線Bはt2>t1,t3>t4の場合を示している。
t1=t2,t3=t4の場合には、0<(λ1−λ2)/λ2<0.25の範囲において推力の低下が合成推力の平均に対し±15%以内に抑えられ推力平坦領域となっており、アクチュエータとしてのλ1,λ2の設定可能範囲は、0<(λ1−λ2)/λ2<0.25である。つまり、可動子1の磁石周期における電気角で90°まで広げることが可能である。(λ1−λ2)/λ2の値が0.25以上になるようにλ1を設定した場合には、磁極歯T1及び磁極歯T2からなる磁極歯群と磁極歯T3及び磁極歯T4からなる磁極歯群との間に電気角で90°以上の差が発生するため、可動範囲内において推力の向きが反対になる領域が生じて、両磁極歯群の相互間で推力を打ち消すことになって合成推力が低下し、推力平坦領域でなくなる。また、(λ1−λ2)/λ2<0.25の範囲でしか推力平坦領域がない場合、可動子1の周期長が固定子10の周期長と同じであると、可動子1は前後に可動子周期長の1/2しか最大移動できない。
これに対して、t2>t1,t3>t4の場合には、0<(λ1−λ2)/λ2<0.35の範囲において推力の低下が合成推力の平均に対し±15%以内に抑えられ推力平坦領域となっており、アクチュエータとしてのλ1,λ2の設定可能範囲は、0<(λ1−λ2)/λ2<0.35である。
t2>t1,t3>t4とした場合には、t1=t2,t3=t4の場合と比べて、両磁極歯群の相互間で推力を発生できる推力平坦領域を広く取ることができ、(λ1−λ2)/λ2の値を0.35程度まで拡大でき、固定子10の大きさに対して可動子1の可動範囲を長くすることが可能である。可動子1の周期長が固定子10の周期長と同じ場合、可動子1は可動子周期長の70%まで最大移動でき、振動を低減するためのアクチュエータの可動範囲全域を推力平坦領域とすることができる。
なお、上述した実施の形態では、2個のペア磁極ユニットを設ける構成としたが、ペア磁極ユニットの個数は3個以上であっても良い。また、第1単極ユニット41のコア部41c及び第3単極ユニット51のコア部51cに一括して駆動コイル7a,7bを巻回するようにしたが、第2単極ユニット42のコア部42c及び第4単極ユニット52のコア部52cに一括して駆動コイル7a,7bを巻回するようにしても良い。
また、各単極ユニットにおける上述したコア部の構成は一例であり、磁極部を中心としてほぼ点対称の位置に2つのコア部を形成するのであれば、その形状は任意であって良い。また、ペア磁極ユニットにおける2つの単極ユニットが、90度回転させた形状関係を有する例について説明したが、この回転角度は90度に限定されない。
なお、上述した実施の形態では、隣り合う両単極ユニットの間に、枠状のヨークのみからなるスペーサユニットを挿入することにより、各単極ユニット全体を均一の厚さにしても、両単極ユニットのコア部同士が接触しないようにしている。この実施の形態では、全体が均一の厚さである電機子素材をそのまま利用できて、コア部の厚さをヨーク部の厚さより薄くするような加工処理が不要であり、作製処理の簡素化を図れる。
これに対して、各単極ユニットにおいて、コア部の厚さをヨーク部の厚さより薄くして、両単極ユニットを重ね合わせた場合に、両単極ユニットのコア部同士が接触しないように構成しても良い。このような構成にあっては、上記のようなスペーサユニットが不要である。
なお、上述した実施の形態では、可動子が円筒状である場合について説明したが、可動子は角柱状であっても良い。この例の可動子では、複数の角柱状の永久磁石と、複数の角柱状の軟質磁性体のヨークとを組み合わせた構成をなす。ここで、角柱状とは長手方向に同じ面を有する形状であり、具体的には三角柱、四角柱、六角柱、八角柱などが挙げられる。
図11は、本発明に係るアクチュエータの他の可動子の構成を示す斜視図である。可動子1は、2種類の四角柱状の永久磁石2a,2bと、四角柱状の軟質磁性体のヨーク3とを組み合わせた構成であり、永久磁石2a、ヨーク3、永久磁石2b、ヨーク3、・・・の順に交互に接着させた四角柱状の構成をなしている。
図11において、白抜矢符は各永久磁石2a,2bの磁化方向を示しており、図1に示した例と同様に、永久磁石2a,2bは何れも、その軸長方向(高さ方向)、つまり可動子1の移動方向(可動子1の長手方向)に磁化されているが、それらの磁化の向きは互いに180度異なる逆向きである。そして、これらの隣り合う四角柱状の永久磁石2aと永久磁石2bとの間には、四角柱状の軟質磁性体のヨーク3が挿入されており、各ヨーク3の表面に磁極(N極、S極)が形成される構造になっている。
(実施例)
以下、本発明者が作製したアクチュエータの具体的な構成と、作製したアクチュエータの特性とについて説明する。
図12は、本発明の実施例に係るアクチュエータ20の構成を示す断面図である。永久磁石2a、ヨーク3、永久磁石2b、ヨーク3、・・・の順に交互に配列させた可動子1を、第1ペア磁極ユニット4(第1単極ユニット41、スペーサユニット43、第2単極ユニット42)、スペーサユニット6、第2ペア磁極ユニット5(第3単極ユニット51、スペーサユニット53、第4単極ユニット52)の順に配列させ、駆動コイル7a,7bを一括して巻回してなる固定子10の中空部8に貫通させて、アクチュエータ20は構成される。
まず、図1に示すような永久磁石2a,2b及びヨーク3を含む構成をなす可動子1の作製工程について説明する。
使用する永久磁石2a,2bは、軸長方向(高さ方向)に磁化したNd−Fe−B系希土類磁石であって、外径32mm、内径22mm、高さ6mmの円筒状に切り出した。また、ヨーク3は、電磁軟鉄であって、永久磁石2a,2bと同一形状である外径32mm、内径22mm、高さ6mmのサイズに切り出したものを使用した。
そして、これらの永久磁石8個とヨーク9個とを準備し、永久磁石2a、ヨーク3、永久磁石2b、ヨーク3、・・・の順に交互にエポキシ系接着剤にて接着させて、可動子1を作製した。永久磁石2a、永久磁石2bの磁化方向は軸長方向(可動子1の移動方向)に向いているが、その方向は互いに逆方向である(図1の白抜矢符参照)。
次に、固定子10の作製工程を説明する。図13に示すような平面形状をなす電磁軟鉄からなる電機子素材から厚さ8mmの電磁軟鉄板を切り出し、切り出したものを第1単極ユニット41及び第4単極ユニット52として使用した。また同様に、図13に示す電機子素材から厚さ12mmの電磁軟鉄板を切り出し、切り出したものを第2単極ユニット42及び第3単極ユニット51として使用した。
更に、図13に示す電機子素材の枠の部分のみ(外側84mm×84mm、内側74mm×74mm)から厚さ2.4mmの電磁軟鉄板を切り出し、切り出したものをスペーサユニット43及びスペーサユニット53として使用した。また同様に、枠の部分のみから厚さ4.4mmの電磁軟鉄板を切り出し、切り出したものをスペーサユニット6として使用した。
切り出したこれらの各ユニットを、第1単極ユニット41、スペーサユニット43、第2単極ユニット42、スペーサユニット6、第3単極ユニット51、スペーサユニット53、第4単極ユニット52の順に配列してこれらを接着させて、固定子本体を作製した。
次いで、第1単極ユニット41の一方のコア部41c及び第3単極ユニット51の一方のコア部51c、並びに、第1単極ユニット41の他方のコア部41c及び第3単極ユニット51の他方のコア部51cに、直径0.7mmのエナメル被覆銅線をそれぞれ100回ずつ巻き付けて、駆動コイル7a,駆動コイル7bとした。そして、これらの導線に通電した場合に互いに逆向きの起磁力がコア部に与えられるように、これらの2組の導線(駆動コイル7a,駆動コイル7b)を直列に接続した。
そして、このようにして作製した固定子10の中空部8に、上述したようにして作製された可動子1を貫通させて、その貫通方向に移動できるようにボールスプライン軸受けを用いて可動子1を中空部8の中心に固定した。
ここで、図12に示すように、固定子10の磁極周期λ1は30.8mm(=(1.2+12+4.4+12+1.2)mm)であって、可動子1の磁極周期λ2は24mm(=(6+6+6+6)mm)であり、λ1>λ2の関係となっており、(λ1−λ2)/λ2=0.28である。
作製したアクチュエータ20の推力を測定した。図12に示された可動子1の位置を変位0mmとして、図12の右側を+方向、図12の左側を−方向とし、可動子1を1mm単位で移動させてロードセルを介して固定した後、駆動コイル7a,7bに種々の大きさの直流電流を印加して推力を測定した。測定結果を、図14に示す。
図14は、各駆動起磁力(駆動電流×コイル巻き数)における可動子位置と推力との関係を示している。図14に示す測定結果の特性から、可動子1がその中心位置(変位0mm)から±2.5mmである範囲(長さ5mmの範囲)において、ほぼ一定の高い推力が得られていることが分かる。
次に、固定子10を中央で分割し、第1ペア磁極ユニット4(第1単極ユニット41、スペーサユニット43、第2単極ユニット42)と、第2ペア磁極ユニット5(第3単極ユニット51、スペーサユニット53、第4単極ユニット52)との2群に分けて、僅かに隙間を空けた後に、それぞれのペア磁極ユニットをロードセルを介して固定した。そして、可動子1を各ペア磁極ユニットの中心位置に移動させた後に固定し、駆動起磁力600Aを印加して、各ペア磁極ユニットに発生した推力を測定した。測定結果を、図15に示す。
図15は、各ペア磁極ユニットにおける可動子位置と推力との関係、及び、可動子位置と両ペア磁極ユニットでの合成推力との関係を示している。第1ペア磁極ユニット4(電極歯T1,T2)により発生した推力が最大となる可動子位置と、第2ペア磁極ユニット5(電極歯T3,T4)により発生した推力が最大となる可動子位置とには、図12に示すλ1−λ2に相当する5mm程度の差が存在する。そして、両ペア磁極ユニットにおいて推力が最大となる可動子位置の間では、ほぼ一定した合成推力が得られている。
以上のことから、固定子の磁極周期(λ1)を可動子の磁極周期(λ2)より大きく設定することにより、その周期の差に相当する範囲で、推力の変動が小さく、一定の大きな推力を得ることができることを確認できた。
1 可動子
2a,2b 永久磁石
3 ヨーク
4 第1ペア磁極ユニット(磁極ユニット)
5 第2ペア磁極ユニット(磁極ユニット)
6,43,53 スペーサユニット(スペーサ)
7a,7b 駆動コイル(捲き線)
8 中空部
10 固定子
20 アクチュエータ
41 第1単極ユニット(第1サブユニット)
42 第2単極ユニット(第2サブユニット)
51 第3単極ユニット(第1サブユニット)
52 第4単極ユニット(第2サブユニット)
41a,42a,51a,52a 磁極部
41b,42b,51b,52b ヨーク部
41c,42c,51c,52c コア部

Claims (3)

  1. 円筒状又は角柱状の可動子を固定子に貫通させてなるアクチュエータにおいて、
    軸長方向に磁化した複数の円筒状又は角柱状の永久磁石と複数の円筒状又は角柱状の軟質磁性体製のヨークとをそれぞれ一つずつ交互に重ねており、前記永久磁石は、軸長の一方向に磁化した永久磁石と軸長の他方向に磁化した永久磁石とが交互に配されている可動子と、
    磁極部、該磁極部の外側に配置したヨーク部、並びに、該ヨーク部及び前記磁極部を接続する2つのコア部を有する軟質磁性体製の第1サブユニットと、磁極部、該磁極部の外側に配置したヨーク部、並びに、前記第1サブユニットのコア部と平面視で異なる位置に設けられ、前記ヨーク部及び前記磁極部を接続する2つのコア部を有する軟質磁性体製の第2サブユニットと、前記第1サブユニット及び第2サブユニットの間に、前記第1サブユニット及び第2サブユニットのコア部同士が接触しないように挟まれた軟質磁性体製のスペーサとを重ねた磁極ユニットを複数個重ねてあり、前記複数個の磁極ユニットの第1サブユニットのコア部または第2サブユニットのコア部に捲き線を施してある固定子と
    を備えており、
    λ1>λ2の関係を満たすことを特徴とするアクチュエータ。
    (但し、λ1:前記固定子の磁極周期(隣り合う一方の磁極ユニットにおけるスペーサの中央位置から隣り合う他方の磁極ユニットにおけるスペーサの中央位置までの距離)、λ2:前記可動子の磁極周期(軸長の一方向に磁化した永久磁石の高さと軸長の他方向に磁化した永久磁石の高さと2個分のヨークの高さとを合計した値))
  2. 重なり合う2つの磁極ユニットにあって、一方の磁極ユニットの他方の磁極ユニットに隣り合った第1サブユニットの厚さが隣り合わない第2サブユニットの厚さより厚く、他方の磁極ユニットの一方の磁極ユニットに隣り合った第2サブユニットの厚さが隣り合わない第1サブユニットの厚さより厚いことを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ。
  3. 前記λ1,λ2は0<(λ1−λ2)/λ2<0.35の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
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