JP5663062B2 - 成膜方法、成膜装置、圧電体膜、圧電素子、液体吐出装置、及び圧電型超音波振動子 - Google Patents

成膜方法、成膜装置、圧電体膜、圧電素子、液体吐出装置、及び圧電型超音波振動子 Download PDF

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Description

本発明は、プラズマを用いた気相成長法により基板上にターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜方法及び成膜装置に関するものである。本発明はまた、この成膜方法により成膜された圧電体膜、及びこれを備えた圧電素子と液体吐出装置と圧電型超音波振動子に関するものである。
スパッタリング法は、基板とターゲットとを対向配置させ、減圧下でプラズマ化させたガスをターゲットに衝突させ、そのエネルギーによりターゲットから飛び出した分子や原子を基板に付着させる成膜方法である。気相成膜においては通常、基板は絶縁体であり、かつ電気的にアースから絶縁されており、フローティング状態にある。
特許文献1には、基板に入射する陽イオンの入射エネルギーを高めるために、基板に所定のバイアス電位を与えてスパッタリングを行うことが提案されている。
特許文献1には、プラズマ発生用高周波電源が接続されるスパッタ電極と正バイアスをかけるために直流電源あるいは高周波電源が接続される基板電極との間のプラズマ放電空間を内包する第3の電極を設け、この第3の電極にターゲット材を設置すると共に負の直流電圧を印加することが提案されている(請求項1)。
特許文献1には、基板電極にバイアスをかけるための直流電圧を印加する直流電源を接続すると共に、スパッタ電極に高周波電源と直流電源とを接続し、交互印加手段によってターゲット材がスパッタされる閾値以下の直流電圧と閾値以上の直流電圧とを交互に印加し、整合回路制御手段によって直流電圧の変化に同期して高周波電源の整合回路(マッチングボックス)の回路定数を変化させることが提案されている(請求項4)。
特許文献1には、スパッタ電極に高周波電源を接続すると共に、基板電極に直流電圧を印加する直流電源を接続し、さらにフローティング電位検出手段によってプラズマ放電空間のフローティング電位を検出し、または基板電極と直流電源との間に設けられた高周波電流検出手段によって基板に流れる電流値を検出し、検出されたフローティング電位または電流値に基づいて、基板電位制御手段によって基板電極に印加する直流電圧を制御することが提案されている(請求項5)。
特許文献2には、スパッタリング中の薄膜の静電破壊を防止するために、基板電位を略ゼロに制御して、スパッタリングを行うことが提案されている。
特許文献2には、プラズマ発生用の負電圧を印加するスパッタ電源が接続されたターゲットとバイアスをかけるための所望の電圧(例えば負電圧または交流電圧)を印加する交流電源であるバイアス電源が接続されるウェハステージ上の基板との間のスパッタ空間の側方位置に制御電極を配置し、基板をフローティング電位に置き、制御電極に基板の電位が略ゼロVになる制御電圧を印加しながらスパッタを行うことが提案されている(請求項1)。
スパッタリング法において、理論的には成膜される膜組成はターゲット組成と略同一となるはずである。しかしながら、膜の構成元素の中に蒸気圧の高い元素がある場合、その元素が成膜された膜表面で逆スパッタされやすく、ターゲット組成と略同一の組成を得ることが難しい傾向にある。
逆スパッタリング現象は、構成元素間でスパッタされやすさ(スパッタ率)に大きな差がある場合に、ターゲットにおいてはほぼ同じ組成でスパッタされるのに対して、基板上においては、堆積された元素のうち、スパッタされやすい構成元素が膜表面において優先的にスパッタされて膜からたたき出されてしまう現象である。
例えば、強誘電性に優れたペロブスカイト型酸化物であるPZT(チタン酸ジルコニウム酸鉛)あるいはその置換系では、TiとZrに比してPbが逆スパッタされやすく、膜中のPb濃度がターゲット中のPb濃度よりも減少してしまう傾向にある。AサイトがBiあるいはBaを含むペロブスカイト型酸化物においても、これらの元素の蒸気圧が高く、同様の傾向にある。
その他、Zn含有化合物においても、Znの元素の蒸気圧が高く、同様の傾向にある。例えば、インジウム錫酸化物(ITO)に匹敵する優れた電気的・光学的特性を有し、かつ低コストで資源的にも豊富なInGaZnO(IGZO)等の酸化亜鉛系の透明導電体膜又は透明半導体膜においても、他の構成元素に比してZnが逆スパッタされやすく、膜組成がターゲット組成に比してZnの少ない組成となりやすい。
上記例示したような系では、所望組成を得るために、逆スパッタされやすい元素の濃度を高めに設定したターゲットを用いるなどの工夫がなされている。
特開平6−145972号公報 特開2002−129320号公報
本発明者は、市販のスパッタリング装置を用いて6インチφ以上の基板にPZTあるいはその置換系の圧電体膜の成膜を実施したところ、面内方向にPb濃度のばらつきが生じることが分かった。逆スパッタリングが起こりやすい組成では、面内方向の成膜条件をよりシビアに均一に制御する必要があると考えられる。
特許文献1,2は、一般的なスパッタリング成膜に関するものであり、圧電体膜やZn含有化合物膜に関する記載はない。また、組成に関係なく、膜組成の均一化について特に工夫はなされていない。
上記問題はスパッタリング法に限らず、基板とターゲットとを対向させて、プラズマを用いた気相成長法により基板上にターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜方法において、同様に起こり得る。また、かかる問題は基板サイズが大きい程、例えば6インチφ以上で顕著となる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、逆スパッタリングが起こりやすい組成系等に好ましく適用することができ、成膜する膜の組成及び基板サイズによらず、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化することが可能な成膜方法と成膜装置を提供することを目的とするものである。
本発明は上記成膜方法により成膜され、面内方向の組成等の膜特性が高度に均一化された圧電体膜を提供することを目的とするものである。
本発明の第1の成膜方法は、基板とターゲットとを対向させて、プラズマを用いた気相成長法により前記基板上に前記ターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜方法において、
少なくとも前記基板の外周から前記基板の側方に10mm離れた位置までの電位を、前記基板と同電位に調整して、前記成膜を行うことを特徴とするものである。
本発明の第2の成膜方法は、基板とターゲットとを対向させて、プラズマを用いた気相成長法により前記基板上に前記ターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜方法において、
前記基板を該基板と同電位に調整された壁面で囲んで、前記成膜を行うことを特徴とするものである。
本明細書において、「電位」は、ラングミュアプローブを用いてシングルプローブ法あるいはトリプルプローブ法により測定するものとする。原理的に測定可能であれば他の手法でも構わない。
本発明の第1,第2の成膜方法において、前記基板にプラス(+)電位を印加して、前記成膜を行うことが好ましい。
本発明が適用可能な気相成長法としては、スパッタリング法が挙げられる。
本発明は、前記膜が圧電体膜である場合に好ましく適用できる。
本発明は、前記膜が下記一般式(P)で表される1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を主成分とする圧電体膜である場合に好ましく適用できる。
一般式ABO・・・(P)
(A:Aサイトの元素であり、Pb,Ba,Sr,Bi,Li,Na,Ca,Cd,Mg,K,及びランタニド元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
B:Bサイトの元素であり、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Mg,Sc,Co,Cu,In,Sn,Ga,Zn,Cd,Fe,Ni,Hf,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
O:酸素。
Aサイト元素とBサイト元素と酸素元素のモル比は1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
本明細書において、「主成分」とは、含量80モル%以上の成分と定義する。
本発明は、前記膜が前記一般式(P)で表され、かつAサイトがPb,Bi,及びBaからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素を含む1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を含む場合に好ましく適用できる。
本発明は、前記膜が前記一般式(P)で表され、かつAサイトがPbを含む1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を含む場合に好ましく適用できる。
本発明は、前記膜がZn含有化合物を含む場合に好ましく適用できる。
本発明は、前記膜が下記一般式(S)で表されるZn含有酸化物を含む場合に好ましく適用できる。
InZn(x+3y/2+3z/2) ・・・(S)
(式中、MはIn,Fe,Ga,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素である。x,y,zはいずれも0超の実数である。)
本発明の第1の成膜装置は、
内部に互いに対向配置された基板ホルダ及びターゲットホルダが装着された真空容器と、
前記真空容器内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、
前記真空容器内にプラズマ化させるガスを導入するガス導入手段とを備え、
プラズマを用いた気相成長法により基板上にターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜装置において、
前記基板ホルダは前記基板の外周から前記基板の側方に10mm以上大きいものであり、かつ、該基板ホルダは該基板ホルダの電位を調整する電位調整手段に接続されており、少なくとも前記基板の外周から前記基板の側方に10mm離れた位置までの電位が、前記基板と同電位に調整可能とされていることを特徴とするものである。
本発明の第1の成膜装置において、前記電位調整手段としては、前記基板ホルダに電位を印加する電源、若しくは前記基板ホルダのインピーダンスを調整するインピーダンス回路を有するものが挙げられる。
前記電位調整手段が前記インピーダンス回路を有する態様において、前記インピーダンス回路の前記基板ホルダに接続されていない側は、接地電位又はフローティング電位とされることができる。
前記電位調整手段が前記インピーダンス回路を有する態様において、前記電位調整手段は、前記インピーダンス回路の前記基板ホルダに接続されていない側に接続された交流電源をさらに有することができる。かかる態様において、前記交流電源の前記インピーダンス回路に接続されていない側は、接地電位とされることができる。
前記インピーダンス回路の前記基板ホルダに接続されていない側に前記交流電源が接続された態様において、前記交流電源は、オンオフ及び前記インピーダンス回路に印加する電位が切り替え可能とされていることが好ましい。
本発明の第1の成膜装置において、前記基板ホルダは前記基板が載置される板状のホルダ本体と前記基板の端部を固定する固定部材とを有するものであり、前記基板ホルダと前記固定部材とが同電位とされていることが好ましい。
本発明の第2の成膜装置は、
内部に互いに対向配置された基板ホルダ及びターゲットホルダが装着された真空容器と、
前記真空容器内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、
前記真空容器内にプラズマ化させるガスを導入するガス導入手段とを備え、
プラズマを用いた気相成長法により基板上にターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜装置において、
前記基板ホルダは、前記基板と同電位に調整可能とされた壁面で囲まれていることを特徴とするものである。
本発明の第2の成膜装置の態様としては、前記真空容器は該真空容器の電位を調節する電位調整手段に接続されており、少なくとも前記基板ホルダ側の面が前記基板と同電位に調整可能とされているものが挙げられる。ここで、前記電位調整手段としては、前記真空容器に電位を印加する電源、若しくは前記真空容器のインピーダンスを調整するインピーダンス回路を有するものが挙げられる。
本発明の第2の成膜装置の他の態様としては、前記基板ホルダは、少なくとも前記基板ホルダ側の面が前記基板と同電位に調整可能とされた壁部材で囲まれているものが挙げられる。
本発明の圧電体膜は、上記の本発明の第1又は第2の成膜方法により成膜されたものであることを特徴とするものである。
本発明によれば、前記一般式(P)で表され、かつAサイトがPbを含む1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を含み、上記の本発明の第1又は第2の成膜方法により成膜されたものであり、Pb濃度の面内ばらつきが±3.0%以内であることを特徴とする圧電体膜を提供することができる。
本発明の圧電素子は、上記の本発明の圧電体膜と、該圧電体膜に対して電界を印加する電極とを備えたことを特徴とするものである。
本発明の液体吐出装置は、上記の本発明の圧電素子と、該圧電素子に隣接して設けられた液体吐出部材とを備え、該液体吐出部材は、液体が貯留される液体貯留室と、前記圧電体膜に対する前記電界の印加に応じて該液体貯留室から外部に前記液体が吐出される液体吐出口とを有することを特徴とするものである。
本発明の圧電型超音波振動子は、上記の本発明の圧電素子と、前記電極に交流電流を印加する交流電源と、前記圧電体の伸縮により振動する振動板とを備えたことを特徴とするものである。
本発明によれば、逆スパッタリングが起こりやすい組成系等に好ましく適用することができ、成膜する膜の組成及び基板サイズによらず、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化することが可能な成膜方法と成膜装置を提供することができる。
本発明によれば、上記成膜方法により成膜され、面内方向の組成等の膜特性が高度に均一化された圧電体膜を提供することができる。
本発明に係る第1実施形態の成膜装置の全体構成を示す断面図 本発明に係る第2実施形態の成膜装置の全体構成を示す断面図 インピーダンス調整器の回路図 第2実施形態の設計変更例 第2実施形態の設計変更例 第2実施形態の設計変更例 第2実施形態の設計変更例 本発明に係る第3実施形態の成膜装置の全体構成を示す断面図 本発明に係る第4実施形態の成膜装置の全体構成を示す断面図 本発明に係る一実施形態の圧電素子及びインクジェット式記録ヘッドの構造を示す断面図 インクジェット式記録装置の構成例を示す図 図8のインクジェット式記録装置の部分上面図 本発明に係る一実施形態の圧電型超音波振動子の構造を示す断面図 実施例1の電位分布を示す図 実施例1の基板内に突入するアルゴンイオンのエネルギー分布を示す図 比較例1の電位分布を示す図 比較例1の基板内に突入するアルゴンイオンのエネルギー分布を示す図
「成膜方法」
本発明の第1の成膜方法は、基板とターゲットとを対向させて、プラズマを用いた気相成長法により前記基板上に前記ターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜方法において、
少なくとも前記基板の外周から前記基板の側方に10mm離れた位置までの電位を、前記基板と同電位に調整して、前記成膜を行うことを特徴とするものである。
本発明の第1の成膜方法において、基板側方の基板と同電位の範囲はなるべく広い方が好ましい。少なくとも基板の外周から基板の側方に30mm離れた位置までの電位を、基板と同電位に調整して、成膜を行うことがより好ましい。少なくとも基板の外周から基板の側方に50mm離れた位置までの電位を、基板と同電位に調整して、成膜を行うことが特に好ましい。
従来は、基板側方の空間の電位について特に調整されていない。導電性の基板ホルダに載置された基板の電位は基板面内均一であると考えられており、さらに基板側方の空間の電位まで均一にする必要があるとは考えられていなかった。
本発明者は、PZTあるいはその置換系の成膜において、基板側方の空間の電位について特に調整していない従来の条件では、基板サイズが6インチφ以上と大きいと、基板の外周部の電位が基板の中心部の電位より低く、基板面内の電位が不均一となることを見出した(比較例1、図13を参照)。そして、基板の外周部では基板に突入するプラズマイオンのエネルギーが大きく逆スパッタが多く生じており、これが組成分布のばらつきに繋がっていることを見出した(比較例1、図14を参照)。
本発明者は、基板側方の空間の電位を調整し、少なくとも基板の外周から基板の側方に10mm離れた位置までの電位を基板と同電位に調整することにより、基板面内全体の電位を均一化することができ、基板に突入するプラズマイオンのエネルギーを基板面内全体に均一化することができることを見出した(実施例1、図11,図12を参照)。本発明の第1の成膜方法によれば、基板面内全体の電位及びプラズマイオンエネルギーを均一化することができるので、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化することができる。
本発明の第2の成膜方法は、基板とターゲットとを対向させて、プラズマを用いた気相成長法により前記基板上に前記ターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜方法において、
前記基板を該基板と同電位に調整された壁面で囲んで、前記成膜を行うことを特徴とするものである。
従来は、基板の側方には真空容器との間に特に部材等を配置せず、真空容器は接地されることが一般的である。本発明者は、PZTあるいはその置換系の成膜において、かかる従来の条件では、基板サイズが6インチφ以上と大きいと、基板と基板を囲む真空容器の内壁面との間の電位差が大きく、基板の外周部の電位が基板の中心部の電位より低く、基板面内の電位が不均一となることを見出した(比較例1、図13を参照)。そして、基板の外周部では基板に突入するプラズマイオンのエネルギーが大きく逆スパッタが多く生じており、これが組成分布のばらつきに繋がっていることを見出した(比較例1、図14を参照)。
本発明の第2の成膜方法では、真空容器を基板と同電位に調整する、あるいは基板と真空容器との間に壁部材を設けて、少なくともその基板ホルダ側の面を基板と同電位に調整するなどして、基板を基板と同電位に調整された壁面で囲んで成膜を行う。本発明者は、基板の周囲の電位を基板と同電位に調整することにより、基板面内全体の電位を均一化することができ、基板に突入するプラズマイオンのエネルギーを基板面内全体に均一化することができることを見出した。本発明の第2の成膜方法によれば、基板面内全体の電位及びプラズマイオンエネルギーを均一化することができるので、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化することができる。
本発明の第1の成膜方法と本発明の第2の成膜方法とを組み合わせることが可能である。かかる構成では、基板と基板の側方と基板の周囲の電位を均一化できるので、基板面内全体の電位及びプラズマイオンエネルギーをより高度に均一化することができ、好ましい。特に基板サイズが大きい場合、具体的には3インチφ以上、6インチφ以上、さらには8インチφ以上のサイズの基板を用いる場合に有効である。
本発明の第1,第2の成膜方法において、基板に印加する電位の正負は特に制限されない。本発明の第1,第2の成膜方法において、基板にプラス(+)電位を印加して、成膜を行うことが好ましい。従来、真空成膜の分野では、基板に電位を印加する場合、マイナス(−)電位を印加することが常識とされている(特許文献2の請求項1等)。しかしながら、基板にプラス(+)電位を印加することにより、成膜時のプラズマ中のプラズマ電位Vs(V)とフローティング電位Vf(V)との差であるVs−Vf(V)を小さくでき、組成の制御性がよく、良質な結晶の膜を得ることができる。これは、成膜中の基板表面に衝突するArイオン等のプラズマイオンのエネルギーを低く抑えることができるので、基板面から再スパッタされる原子が少なくなるためと考えられる。
本発明の第1,第2の成膜方法において、基板に印加する電位量は特に制限されない。本発明の第1,第2の成膜方法において、プラズマ空間電位Vs(V)は特に制限されず、通常数十V以上である。このことを考慮すれば、基板に流入するArイオン等のプラズマイオンのエネルギーを低下させて再スパッタを抑えるには、基板に印加する電位は+10V以上が好ましく、+20V以上が好ましい。基板に印加する電位が高くなりすぎると、基板と成膜装置内の他の箇所との間で局所的に放電が起こる可能性があるので、基板に印加する電位は+100V以下が好ましい。
本発明の第1,第2の成膜方法は基板とターゲットとを対向させて、プラズマを用いた気相成長法により基板上にターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜方法に適用可能である。
本発明が適用可能な気相成長法としては、2極スパッタリング法、3極スパッタリング法、直流スパッタリング法、高周波スパッタリング法(RFスパッタリング法)、ECRスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、対向ターゲットスパッタリング法、パルススパッタ法、及びイオンビームスパッタリング法等のスパッタリング法が挙げられる。本発明が適用可能な気相成長法としては、スパッタリング法の他、PLD法、イオンプレーティング法、及びプラズマCVD法等が挙げられる。
本発明の第1,第2の成膜方法は、導電体膜、半導体膜、絶縁体膜、及び誘電体膜等の任意の組成の膜の成膜に適用することができる。従来の成膜方法において、組成分布のばらつきは逆スパッタリングが起こりやすい組成系等に起こりやすい。本発明の第1,第2の成膜方法は、逆スパッタリングが起こりやすい組成系等に好ましく適用することができ、かかる組成系においても、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化することができる。
スパッタされやすさはスパッタ率で表されることが多く、スパッタ率が高いものほどスパッタされやすい。「スパッタ率」とは、入射イオンの数とそれによってスパッタされた原子数との比で定義されるものであり、その単位は(atoms/ion)である。
圧電材料であるPZTあるいはその置換系のスパッタ成膜においては、PZTの構成元素であるPb,Zr,及びTiの中で、Pbが最もスパッタ率が大きくスパッタされやすいことは以前より知られている。例えば、「真空ハンドブック」((株)アルバック編、オーム社発行)の表8.1.7には、Arイオン300eVの条件におけるスパッタ率は、Pb=0.75、Zr=0.48,Ti=0.65であることが記載されている。このことは、Zrに比してPbは1.5倍以上スパッタされやすいということを意味している。
本発明は、圧電体膜の成膜に好ましく適用できる。
本発明は、下記一般式(P)で表される1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を主成分とする圧電体膜の成膜に好ましく適用できる。
一般式ABO・・・(P)
(A:Aサイトの元素であり、Pb,Ba,Sr,Bi,Li,Na,Ca,Cd,Mg,K,及びランタニド元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
B:Bサイトの元素であり、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Mg,Sc,Co,Cu,In,Sn,Ga,Zn,Cd,Fe,Ni,Hf,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
O:酸素。
Aサイト元素とBサイト元素と酸素元素のモル比は1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
上記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物としては、
チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ジルコニウム酸鉛、チタン酸鉛ランタン、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、ニッケルニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、亜鉛ニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛等の鉛含有化合物、及びこれらの混晶系;
チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムバリウム、チタン酸ビスマスナトリウム、チタン酸ビスマスカリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム等の非鉛含有化合物、及びこれらの混晶系が挙げられる。
電気特性がより良好となることから、上記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物は、Mg,Ca,Sr,Ba,Bi,Nb,Ta,W,及びLn(=ランタニド元素(La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,及びLu))等の金属イオンを、1種又は2種以上含むものであることが好ましい。
本発明は、一般式(P)で表され、かつAサイトがPb,Bi,及びBaからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素を含む1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を含む膜の成膜に好ましく適用できる。Pb,Bi,あるいはBaは蒸気圧が高く、逆スパッタされやすい元素である。
上記一般式(P)で表され、Pbを含むペロブスカイト型酸化物としては、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ジルコニウム酸鉛、チタン酸鉛ランタン、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、及びニッケルニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛等が挙げられる。
本発明によれば、一般式(P)で表され、かつAサイトがPbを含む1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を含み、上記の本発明の第1又は第2の成膜方法により成膜されたものであり、Pb濃度の面内ばらつきが±3.0%以内であることを特徴とする圧電体膜を提供することができる。
上記一般式(P)で表され、BiあるいはBaを含むペロブスカイト型酸化物としては、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ビスマスナトリウム、チタン酸ビスマスカリウム、ビスマスフェライト、ビスマスフェライトランタン、及びビスマスフェライトバリウム等が挙げられる。
本発明は、Zn含有化合物を含む膜の成膜に好ましく適用できる。Znも蒸気圧が高く、逆スパッタされやすい元素である。
本発明は、下記一般式(S)で表されるZn含有酸化物を含む膜の成膜に好ましく適用できる。
InZn(x+3y/2+3z/2) ・・・(S)
(式中、MはIn,Fe,Ga,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素である。x,y,zはいずれも0超の実数である。)
上記式(S)で表されるZn含有酸化物としては、透明導電体膜又は透明半導体膜として各種用途に用いられているInGaZnO(IGZO)、及びZnIn等が挙げられる。
以上説明したように、本発明の第1,第2の成膜方法によれば、基板面内全体の電位を均一化することができ、基板に突入するプラズマイオンのエネルギーを基板面内全体に均一化することができ、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化することができる。
本発明の第1,第2の成膜方法は、逆スパッタリングが起こりやすい組成系等に好ましく適用することができ、成膜する膜の組成及び基板サイズによらず、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化することができる。
「第1実施形態の成膜装置」
図面を参照して、本発明に係る第1実施形態の成膜装置について説明する。図1は装置の全体構成を示す断面図である。本実施形態では高周波スパッタリング装置(RFスパッタリング装置)を例として説明する。
図1に示す成膜装置1は、内部に、基板Bが装着可能であり、装着された基板Bを所定温度に加熱することが可能な基板ホルダ11と、ターゲットTが装着可能なターゲットホルダ12とが備えられた真空容器10から概略構成されている。本実施形態の装置では、真空容器10内が成膜室となっている。真空容器10内において、基板ホルダ11とターゲットホルダ12とは互いに対向するように離間配置されている。真空容器10はステンレス等の導電体からなり、接地されている。
基板Bは特に制限されず、Si基板、酸化物基板、ガラス基板、及び各種フレキシブル基板など、用途に応じて適宜選択することができる。基板Bはかかる基板に電極等の任意の膜が形成されたものでもよい。ターゲットTの組成は、成膜する膜の組成に応じて選定される。
成膜装置1においては、プラズマ電極(本実施形態ではターゲットホルダ12がプラズマ電極として機能する。)の放電により真空容器10内に導入されたガスGがプラズマ化され、Arイオン等のプラスイオンが生成する。生成したプラスイオンはターゲットTをスパッタする。プラスイオンにスパッタされたターゲットTの構成元素は、ターゲットから放出され中性あるいはイオン化された状態で基板Bに蒸着される。図中、符号Pがプラズマ空間を模式的に示している。
成膜装置1には、真空容器10内にプラズマ化させるガスGを導入するガス導入手段が設けられている。ガス導入手段は、プラズマ化させるガスGの供給源(図示略)と、供給源から供給されたガスGを真空容器10内に導入するガス導入管18とから構成されている。成膜装置1には、真空ポンプ等の排気手段(図示略)に接続され、真空容器10内のガスの排気Vを行うガス排出管19が備えられている。真空容器10に対するこれらガス導入管18とガス排出管19との接続箇所は適宜設計でき、これらガス導入管18とガス排出管19は真空容器10内のガス濃度がなるべく均一になるように設けられることが好ましい。ガスGとしては特に制限なく、Ar、又はAr/O混合ガス等が使用される。
成膜圧力は特に制限なく、10Pa以下であることが好ましい。成膜圧力が10Paより大きいと、元素の種類によってはターゲットTからたたき出された粒子が散乱等の影響により基板Bに到達する割合が少なくなることがある。成膜圧力が10Pa以下では、プラズマ空間が分子流と粘性流の中間である中間流から分子流の間の条件となるため、ターゲットTからたたき出された粒子が基板Bに到達するまでに散乱される可能性が、元素の種類によらず無視できるほど少ない。
基板ホルダ11は、基板Bが載置される板状のホルダ本体11Aと、ホルダ本体11Aに取り付けられ、基板Bの端部を固定する固定部材11Bとから概略構成されている。基板ホルダ11は、真空容器10の内底面に取り付けられた保持部材15により保持されている。
ホルダ本体11A、固定部材11B、及び保持部材15はいずれもステンレス等の導電体からなり、保持部材15と真空容器10とは絶縁材を介して互いに絶縁されている(絶縁材については図示略)。基板ホルダ11は真空容器10の外部に配置された直流電流印加ユニット(電位調整手段)17に電気的に接続されており、基板ホルダ11に電位が印加可能であると共に、その電位が調整可能に構成されている。直流電流印加ユニット17は、直流電源17Aと整合回路17Bとから概略構成されている。整合回路17Bは必要に応じて設けられるものであり、直流電源17Aと基板ホルダ11との間に整合回路17Bを介在させることで、基板ホルダ11の電位調整が容易となり、好ましい。
本実施形態では、ホルダ本体11A、固定部材11B、及び保持部材15が同電位となっている。基板ホルダ11に直流バイアス電流を印加する本実施形態では、基板自体が導電体である、あるいは基板は絶縁体であっても基板表面に電極等の導電体膜が形成されていることが好ましい。かかる構成では、基板Bと基板ホルダ11とを効果的に同電位にすることができ、好ましい。圧電体膜等の成膜では、通常下地に下部電極が形成されているので、基板電位と基板ホルダ11とを同電位にすることができる。
本実施形態では、基板ホルダ11のホルダ本体11Aのサイズが、基板Bの外周から基板Bの側方に10mm以上大きく設計されている。すなわち、基板Bの外周と基板ホルダ11の外周との距離D1が10mm以上とされている。本実施形態ではかかる設計によって、少なくとも基板Bの外周から基板Bの側方に10mm離れた位置までの電位が基板Bと同電位に調整可能とされている。本実施形態において、D1≧10mmであり、D1≧30mmであることが好ましく、D1≧50mmであることが特に好ましい。
ターゲットホルダ12はターゲットTが載置される板状のホルダ本体からなり、真空容器10に取り付けられた保持部材16により保持されている。保持部材16と真空容器10とは絶縁材を介して互いに絶縁されている。保持部材16は真空容器10の外部に配置された高周波交流電源(RF電源)13に接続されており、ターゲットホルダ12がプラズマを発生させるためのプラズマ電極(カソード電極)となっている。RF電源13のターゲットホルダ接続側と反対側は接地されている。
本実施形態では、真空容器10内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段14として、RF電源13及びプラズマ電極(カソード電極)として機能するターゲットホルダ12が備えられている。
本実施形態の成膜装置1は、以上のように構成されている。本実施形態の成膜装置1を用いることにより、本発明の第1の成膜方法を実施することができる。すなわち、少なくとも基板Bの外周から基板Bの側方に10mm離れた位置までの電位を基板Bと同電位に調整して、成膜を行うことができる。本実施形態によれば、基板面内全体の電位を均一化することができ、基板に突入するプラズマイオンのエネルギーを基板面内全体に均一化することができ、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化することができる。
「第2実施形態の成膜装置」
図面を参照して、本発明に係る第2実施形態の成膜装置について説明する。図2は装置の全体構成を示す断面図であり、図3はインピーダンス調整器20の構成を示す回路図である。第1実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、説明は省略する。
本実施形態の主な構成は第1実施形態と同様であり、本実施形態の成膜装置2には、基板ホルダ11に接続する電位調整手段として直流電流印加ユニット17の代わりにインピーダンス調整器20が備えられている。
本実施形態においても、基板ホルダ11のホルダ本体11Aのサイズが、基板Bの外周から基板Bの側方に10mm以上大きく設計されている。すなわち、基板Bの外周と基板ホルダ11の外周との距離D1が10mm以上とされている。本実施形態ではかかる設計によって、少なくとも基板Bの外周から基板Bの側方に10mm離れた位置までの電位が基板Bと同電位に調整可能とされている。本実施形態においても、D1≧10mmであり、D1≧30mmであることが好ましく、D1≧50mmであることが特に好ましい。
本実施形態では、真空容器10が接地され、真空容器10から電気的に絶縁された基板ホルダ11は電気的にフローティング状態となっている。
一般的なスパッタ装置において、基板は通常、接地電位あるいはフローティング電位にある。基板がフローティング電位にある場合、直流的にはフローティングであっても交流(例えば13.56MHz)においては一定のインピーダンスを持つ。このインピーダンスを積極的に制御することにより、基板電位を調整することができる。本実施形態では、インピーダンス調整器20により基板ホルダ11及び基板Bのインピーダンスが調整可能とされている。
インピーダンス調整器のタイプとしては、Π型、L型、ステップアップトランス型、及び同調トランス型等が挙げられ、基板電位を調整できれば任意のタイプを使用することができる。本実施形態では、Π型を例としている。
インピーダンス調整器20は真空容器10の外部に設けられている。その片側は接地され、もう一方の片側がHNコネクタ20aを介して基板ホルダ11に接続されている。インピーダンス調整器20は、基板ホルダ11のインピーダンスを調整可能なインピーダンス回路22と、このインピーダンス回路22に基板電位(具体的には基板電位と接地電位との間の電位の直流成分Vdc)を測定する検出回路24と、この検出回路24による検出結果を表示する表示ユニット26と、インピーダンス回路22のインピーダンスを調整する調整つまみ28a,28bとを備えている。インピーダンス調整器20の調整つまみ28a,28bの少なくとも一方によってインピーダンス回路22のインピーダンスが調整されることにより、基板ホルダ11のインピーダンスが調整される。
インピーダンス回路22は、電気容量(静電容量)を変えることができる真空バリコン(バリアブルコンデンサ)などからなり、互いに並列に接続される第1可変コンデンサ30及び第2可変コンデンサ32と、第2可変コンデンサ32と直列に接続されるコイル34とを有する。ここで、第1可変コンデンサ30の一方の端部は、並列に接続されるコイル34の一方の端部と接続され、この接続点31は、HNコネクタなどのコネクタ20a及び同軸ケーブル20bを介し、さらに真空容器10に取り付けられたコネクタ20a及び同軸ケーブル20bを介して真空容器10内の基板ホルダ11に接続されている。また、コイル34の他方の端部は、第2可変コンデンサ32の一方の端部と直列に接続されている。第2可変コンデンサ32の他方の端部は、並列に接続される第1可変コンデンサ30の他方の端部と接続され、この接続点33は接地されている。
第1可変コンデンサ30及び第2可変コンデンサ32には調整つまみ28a,28bがそれぞれ取り付けられ、調整つまみ28a,28bによって第1可変コンデンサ30及び第2可変コンデンサ32のそれぞれの静電容量が変えられ、その結果、インピーダンス回路22のインピーダンスが変えられるようになっている。
検出回路24の一方の端部は、接続点31とHNコネクタ20aとの間に接続され、検出回路24の他方の端部は、BNCコネクタなどのコネクタ24aを介して接地されている。
検出回路24は、インピーダンス回路22の接続点31の電位(直流成分Vdc)を測定し検出することにより、基板電位(基板電位と接地電位との間の電位の直流成分Vdc)を測定するものである。検出回路24は、インピーダンス回路22の接続点31の電位を測定できればよく、従来公知の任意の電位検出回路を用いることができる。
表示ユニット26は、検出回路24による検出結果をモニタするために表示する部分であり、測定された基板電位を表示する基板電位表示部26aを備えている。表示ユニット26は必要に応じて、測定された基板電位に基づいて真空容器10の内面へのターゲットTの構成元素の付着量や付着度合を算定し、真空容器10内の清掃時期を表示する清掃時期表示部26bを備えることができる。
検出回路24及び表示ユニット26は、インピーダンス調整器20に内蔵されていなくてもよい。これらは、インピーダンス調整器20に外付けされたものであってもよいし、基板電位測定時にのみインピーダンス回路22に接続されるものであってもよく、適宜設計変更できる。
本実施形態の成膜装置2を用いることにより、本発明の第1の成膜方法を実施することができる。すなわち、少なくとも基板Bの外周から基板Bの側方に10mm離れた位置までの電位を基板Bと同電位に調整して、成膜を行うことができる。本実施形態によれば、基板面内全体の電位を均一化することができ、基板に突入するプラズマイオンのエネルギーを基板面内全体に均一化することができ、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化することができる。
「第2実施形態の成膜装置の設計変更」
図面を参照して、第2実施形態の設計変更について説明する。図4A〜図4Dは図3に対応する図面である。
第2実施形態では、インピーダンス回路22の基板ホルダ11に接続されていない側の接続点33が接地電位とされている場合について説明した。図4Aに示すように、接続点33は特定の電位とせず、フローティング電位としても構わない。かかる構成でも、インピーダンス回路22によって基板電位を調整することができる。
図4Bに示すように、接続点33に高周波交流電源(RF電源)35を接続してもよい。図4Cに示すように、図4Bに示す態様において、さらにRF電源35のインピーダンス回路22に接続されていない側を接地電位としても構わない。図4Dに示すように、図4Cに示す態様において、接続点33とRF電源35との間にさらに整合回路36を設けても構わない。図4Dと同様に、図4Bに示す態様においても、接続点33とRF電源35との間に整合回路36を設けても構わない(図示略)。
図4B〜図4Cに示す例では、インピーダンス回路22とRF電源35とが、基板電位を調整する電位調整手段として機能する。図4Dに示す例では、インピーダンス回路22と整合回路36とRF電源35とが、基板電位を調整する電位調整手段として機能する。
インピーダンス回路22の基板ホルダ11に接続されていない側の接続点33にRF電源35を接続した図4B〜図4Dの態様では、インピーダンス回路22のみで基板電位を調整する場合に比較して、基板電位をより広範囲内で調整することができ、好ましい。かかる態様では特に、基板電位をマイナス側に広範囲に振ることができ、基板電位の調整可能な範囲を広げることができる。例えば、基板電位を−10V以上の範囲で調整することができ、−20V以上の範囲で調整することもでき、それよりマイナス側に調整することも可能である。基板電位の上限は特に制限なく、+100V以下が好ましい。
RF電源35は、インピーダンス回路22に印加する電位が固定されたものでも構わない。RF電源35は、オンオフ及びインピーダンス回路22に印加する電位が切り替え可能とされていることが好ましい。すなわち、RF電源35は、オンで使用してもよいしオフで使用してもよく、必要に応じて切り替えられることが好ましい。また、RF電源35をオンで使用する場合、必要に応じて印加電位を調整可能とされていることが好ましい。かかる構成では、成膜する膜組成や成膜温度等の成膜条件に応じて、インピーダンス回路22とRF電源35とによる基板電位の調整を広範囲内で行うことができ、好ましい。
インピーダンス回路22の基板ホルダ11に接続されていない側の接続点33にRF電源35を接続した構成では例えば、基板電位を測定しながら、インピーダンス調整器20及び/又はRF電源35の投入電力と、RF電源35及びスパッタ用のRF電源13の位相調整とを行うことで、基板電位を所望の値に調整することができる。
「第3実施形態の成膜装置」
図面を参照して、本発明に係る第3実施形態の成膜装置について説明する。図5は装置の全体構成を示す断面図である。第1実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、説明は省略する。
本実施形態の成膜装置3において、第1実施形態と同様、基板ホルダ11は真空容器10の外部に配置された直流電流印加ユニット(電位調整手段)17に電気的に接続されており、基板ホルダ11に電位が印加可能であると共に、その電位が調整可能に構成されている。また、基板ホルダ11のホルダ本体11Aのサイズが、基板Bの外周から基板Bの側方に10mm以上大きく設計されている。すなわち、基板Bの外周と基板ホルダ11の外周との距離D1が10mm以上とされている。本実施形態ではかかる設計によって、少なくとも基板Bの外周から基板Bの側方に10mm離れた位置までの電位が基板Bと同電位に調整可能とされている。本実施形態においても、D1≧10mmであり、D1≧30mmであることが好ましく、D1≧50mmであることが特に好ましい。
本実施形態ではさらに、真空容器10が真空容器10の外部に配置された直流電流印加ユニット(電位調整手段)47に電気的に接続されており、真空容器10に電位が印加可能であると共に、その電位が調整可能に構成されている。直流電流印加ユニット47は、直流電源47Aと整合回路47Bとから概略構成されている。整合回路47Bは必要に応じて設けられるものであり、直流電源47Aと真空容器10との間に整合回路47Bを介在させることで、真空容器10の電位調整が容易となり、好ましい。本実施形態では、真空容器10に電位を付与して、少なくとも真空容器10の内壁面10Sが基板Bと同電位となるように調整する。すなわち、本実施形態では、基板Bを基板Bと同電位に調整された真空容器10の内壁面10Sで囲んで、成膜を行う。
基板Bの外周と真空容器10の内壁面10Sとの距離D2は特に制限されない。電位調整効果が効果的に得られることから、D2は20mm以上が好ましく、50mm以上がより好ましい。D2は大きくても差し支えないが、装置の有効スペースを考慮すれば、150mm未満が好ましい。
本実施形態では、真空容器10と基板ホルダ11とを異なる直流電流印加ユニットに接続させているが、基板Bと真空容器10とを同電位に調整できれば、真空容器10と基板ホルダ11とを同一の直流電流印加ユニットに接続させてもよい。
本実施形態では、真空容器10に電位が付与されるので、ターゲットホルダ12の周囲に接地電位のシールド40が設けられている。
シールド40は、ターゲットTの基板B側の外周を取り囲むように配置された複数の金属リング41と、複数の金属リング41間に配置されたスペーサ42と、真空容器10の内面に取り付けられ金属リング41を保持する保持部材43とから構成されている。これら金属リング41、スペーサ42、及び保持部材43はいずれもステンレス等の導電材により構成されている。金属リング41の数は特に制限なく、図示する例では2枚使用されている。金属リング41の枚数は必要に応じて変更することも可能である。スペーサ42は、金属リング41の周方向に間隔をおいて複数個配置され、互いに隣接するスペーサ42間にガスGが流れ易くなるように間隙が形成されている。保持部材43と真空容器10とは絶縁材を介して互いに絶縁されており、保持部材43は接地されている(絶縁材については図示略)。
ターゲットTの周囲に接地電位のシールド40を設けることによって、プラズマの広がりが抑えられ、ターゲットT近傍のプラズマ電位を調整することができる。シールド40の構成及び機能については、本発明者が先に出願している特許第4142706号公報を参照されたい。
本実施形態の成膜装置3を用いることにより、本発明の第1,第2の成膜方法を実施することができる。すなわち、少なくとも基板Bの外周から基板Bの側方に10mm離れた位置までの電位を基板Bと同電位に調整して、成膜を行うことができる。また、基板Bを基板と同電位に調整された壁面(本実施形態では真空容器10の内壁面10S)で囲んで、成膜を行うことができる。本実施形態によれば、基板面内全体の電位を均一化することができ、基板に突入するプラズマイオンのエネルギーを基板面内全体に均一化することができ、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化することができる。
本実施形態において、真空容器10には、直流電流印加ユニット47の代わりに、第2実施形態で示したインピーダンス調整器20を接続してもよい。この場合、真空容器10の少なくとも一部を接地電位から浮かせて、真空容器10の少なくとも一部をフローティング状態とし、真空容器10にインピーダンス調整器20を接続することで、真空容器10の電位を調整し、基板Bと同電位となるように調整することができる。
本実施形態では、本発明の第1の成膜方法と本発明の第2の成膜方法とを同時に実施可能な成膜装置について説明したが、基板側方の電位を基板と同電位に調整しなければ、本発明の第2の成膜方法のみを実施することができる。
「第4実施形態の成膜装置」
図面を参照して、本発明に係る第4実施形態の成膜装置について説明する。図6は装置の全体構成を示す断面図である。第1実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、説明を省略する。
本実施形態の成膜装置4において、第1実施形態と同様、基板ホルダ11は真空容器10の外部に配置された直流電流印加ユニット(電位調整手段)17に電気的に接続されており、基板ホルダ11に電位が印加可能であると共に、その電位が調整可能に構成されている。また、基板ホルダ11のホルダ本体11Aのサイズが、基板Bの外周から基板Bの側方に10mm以上大きく設計されている。すなわち、基板Bの外周と基板ホルダ11の外周との距離D1が10mm以上とされている。本実施形態ではかかる設計によって、少なくとも基板Bの外周から基板Bの側方に10mm離れた位置までの電位が基板Bと同電位に調整可能とされている。本実施形態においても、D1≧10mmであり、D1≧30mmであることが好ましく、D1≧50mmであることが特に好ましい。
本実施形態においてはさらに、基板ホルダ11を囲むように真空容器10の内底面に壁部材45が立設されている。壁部材45はステンレス等の導電材からなり、絶縁材を介して真空容器10とは絶縁されている(絶縁材については図示略)。
壁部材45は真空容器10の外部に配置された直流電流印加ユニット(電位調整手段)47に電気的に接続されており、壁部材45に電位が印加可能であると共に、その電位が調整可能に構成されている。直流電流印加ユニット47は、直流電源47Aと整合回路47Bとから概略構成されている。整合回路47Bは必要に応じて設けられるものであり、直流電源47Aと壁部材45との間に整合回路47Bを介在させることで、壁部材45の電位調整が容易となり、好ましい。本実施形態では、壁部材45に電位を付与して、少なくとも壁部材45の基板ホルダ11側の面45Sが基板Bと同電位となるように調整する。すなわち、本実施形態では、基板Bを基板Bと同電位に調整された壁部材45の基板ホルダ11側の面45Sで囲んで、成膜を行う。
基板Bの外周と壁部材45の基板ホルダ11側の面45Sとの距離D3は特に制限されない。壁部材45による電位調整効果が効果的に得られることから、D3=20〜150mmが好ましい。
壁部材45の高さは特に制限されない。壁部材45の高さが基板表面よりも著しく低いと壁部材45による電位調整効果が効果的に得られず、基板表面よりも著しく高いと壁部材45の存在がスパッタされた粒子の基板への付着を妨げ、膜厚等の成膜均一性が悪くなる恐れがある。壁部材45の高さは基板表面の高さ±20mmの範囲内であることが好ましい。
本実施形態では、基板ホルダ11と壁部材45とを異なる直流電流印加ユニットに接続させているが、基板Bと壁部材45を同電位に調整できれば、基板ホルダ11と壁部材45とを同一の直流電流印加ユニットに接続させてもよい。
本実施形態の成膜装置4を用いることにより、本発明の第1,第2の成膜方法を実施することができる。すなわち、少なくとも基板Bの外周から基板Bの側方に10mm離れた位置までの電位を基板Bと同電位に調整して、成膜を行うことができる。また、基板Bを基板と同電位に調整された壁面(本実施形態では壁部材45の基板ホルダ11側の面45S)で囲んで、成膜を行うことができる。本実施形態によれば、基板面内全体の電位を均一化することができ、基板に突入するプラズマイオンのエネルギーを基板面内全体に均一化することができ、面内方向の組成等の膜特性を高度に均一化することができる。
本実施形態において、壁部材45には、直流電流印加ユニット47の代わりに、第2実施形態で示したインピーダンス調整器20を接続してもよい。この場合、壁部材45をフローティング状態とし、壁部材45にインピーダンス調整器20を接続することで、壁部材45の電位を調整し、基板Bと同電位となるように調整することができる。
本実施形態では、本発明の第1の成膜方法と本発明の第2の成膜方法とを同時に実施可能な成膜装置について説明したが、基板側方の電位を基板と同電位に調整しなければ、本発明の第2の成膜方法のみを実施することができる。
「圧電素子及びインクジェット式記録ヘッド」
図7を参照して、本発明に係る一実施形態の圧電素子及びこれを備えたインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)の構造について説明する。図7はインクジェット式記録ヘッドの要部断面図(圧電素子の厚み方向の断面図)である。視認しやすくするため、構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。
本実施形態の圧電素子5は、基板50上に、下部電極51と圧電体膜52と上部電極53とが順次積層された素子であり、圧電体膜52に対して下部電極51と上部電極53とにより厚み方向に電界が印加されるようになっている。
下部電極51は基板50の略全面に形成されており、この上に図示手前側から奥側に延びるライン状の凸部52Aがストライプ状に配列したパターンの圧電体膜52が形成され、各凸部52Aの上に上部電極53が形成されている。
圧電体膜52のパターンは図示するものに限定されず、適宜設計される。また、圧電体膜52は連続膜でも構わない。但し、圧電体膜52は、連続膜ではなく、互いに分離した複数の凸部52Aからなるパターンで形成することで、個々の凸部52Aの伸縮がスムーズに起こるので、より大きな変位量が得られ、好ましい。
基板50としては特に制限なく、シリコン,酸化シリコン,ステンレス(SUS),イットリウム安定化ジルコニア(YSZ),アルミナ,サファイヤ,SiC,及びSrTiO等の基板が挙げられる。基材50としては、シリコン基板上にSiO膜とSi活性層とが順次積層されたSOI基板等の積層基板を用いてもよい。
下部電極51の組成は特に制限なく、Au,Pt,Ir,IrO,RuO,LaNiO,及びSrRuO等の金属又は金属酸化物、及びこれらの組合せが挙げられる。上部電極53の組成は特に制限なく、下部電極51で例示した材料,Al,Ta,Cr,Cu等の一般的に半導体プロセスで用いられている電極材料、及びこれらの組合せが挙げられる。下部電極51と上部電極53の厚みは特に制限なく、50〜500nmであることが好ましい。
圧電体膜52は、本発明の第1又は第2の成膜方法により成膜された膜である。圧電体膜52は好ましくは、上記一般式(P)で表される1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を主成分とする圧電体膜である。圧電体膜52はより好ましくは、上記一般式(P)で表され、かつAサイトがPb,Bi,及びBaからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素を含む1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を含む圧電体膜である。圧電体膜52の膜厚は特に制限なく、通常1μm以上であり、例えば1〜5μmである。
圧電アクチュエータ6は、圧電素子5の基板50の裏面に、圧電体膜52の伸縮により振動する振動板60が取り付けられたものである。圧電アクチュエータ6には、圧電素子5の駆動を制御する駆動回路等の制御手段(図示略)も備えられている。
インクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)7は概略、圧電アクチュエータ6の裏面に、インクが貯留されるインク室(液体貯留室)71及びインク室71から外部にインクが吐出されるインク吐出口(液体吐出口)72を有するインクノズル(液体貯留吐出部材)70が取り付けられたものである。インクジェット式記録ヘッド7では、圧電素子5に印加する電界強度を増減させて圧電素子5を伸縮させ、これによってインク室71からのインクの吐出や吐出量の制御が行われる。
基板50とは独立した部材の振動板60及びインクノズル70を取り付ける代わりに、基板50の一部を振動板60及びインクノズル70に加工してもよい。例えば、基板50がSOI基板等の積層基板からなる場合には、基板50を裏面側からエッチングしてインク室61を形成し、基板自体の加工により振動板60とインクノズル70とを形成することができる。
本実施形態の圧電素子5及びインクジェット式記録ヘッド7は、以上のように構成されている。本実施形態によれば、上記成膜方法により成膜され、面内方向の組成等の膜特性が高度に均一化された圧電体膜52、及びこれを備えた圧電素子5を提供することができる。
「インクジェット式記録装置」
図8及び図9を参照して、上記実施形態のインクジェット式記録ヘッド7を備えたインクジェット式記録装置の構成例について説明する。図8は装置全体図であり、図9は部分上面図である。
図示するインクジェット式記録装置100は、インクの色ごとに設けられた複数のインクジェット式記録ヘッド(以下、単に「ヘッド」という)7K,7C,7M,7Yを有する印字部102と、各ヘッド7K,7C,7M,7Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、記録紙116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、印字部102のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送する吸着ベルト搬送部122と、印字部102による印字結果を読み取る印字検出部124と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126とから概略構成されている。
印字部102をなすヘッド7K,7C,7M,7Yが、各々上記実施形態のインクジェット式記録ヘッド7である。
デカール処理部120では、巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム130により記録紙116に熱が与えられて、デカール処理が実施される。
ロール紙を使用する装置では、図8のように、デカール処理部120の後段に裁断用のカッター128が設けられ、このカッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター128は、記録紙116の搬送路幅以上の長さを有する固定刃128Aと、該固定刃128Aに沿って移動する丸刃128Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃128Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃128Bが配置される。カット紙を使用する装置では、カッター128は不要である。
デカール処理され、カットされた記録紙116は、吸着ベルト搬送部122へと送られる。吸着ベルト搬送部122は、ローラ131、132間に無端状のベルト133が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部102のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)となるよう構成されている。
ベルト133は、記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(図示略)が形成されている。ローラ131、132間に掛け渡されたベルト133の内側において印字部102のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ134が設けられており、この吸着チャンバ134をファン135で吸引して負圧にすることによってベルト133上の記録紙116が吸着保持される。
ベルト133が巻かれているローラ131、132の少なくとも一方にモータ(図示略)の動力が伝達されることにより、ベルト133は図8上の時計回り方向に駆動され、ベルト133上に保持された記録紙116は図8の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。
吸着ベルト搬送部122により形成される用紙搬送路上において印字部102の上流側に、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、印字前の記録紙116に加熱空気を吹き付け、記録紙116を加熱する。印字直前に記録紙116を加熱しておくことにより、インクが着弾後に乾きやすくなる。
印字部102は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図9を参照)。各印字ヘッド7K,7C,7M,7Yは、インクジェット式記録装置100が対象とする最大サイズの記録紙116の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙116の送り方向に沿って上流側から、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応したヘッド7K,7C,7M,7Yが配置されている。記録紙116を搬送しつつ各ヘッド7K,7C,7M,7Yからそれぞれ色インクを吐出することにより、記録紙116上にカラー画像が記録される。
印字検出部124は、印字部102の打滴結果を撮像するラインセンサ等からなり、ラインセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まり等の吐出不良を検出する。
印字検出部124の後段には、印字された画像面を乾燥させる加熱ファン等からなる後乾燥部142が設けられている。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けた方が好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
後乾燥部142の後段には、画像表面の光沢度を制御するために、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144では、画像面を加熱しながら、所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で画像面を加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして得られたプリント物は、排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット式記録装置100では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り替える選別手段(図示略)が設けられている。
大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列にプリントする場合には、カッター148を設けて、テスト印字の部分を切り離す構成とすればよい。
インクジェット記記録装置100は、以上のように構成されている。
「圧電型超音波振動子(超音波トランスデューサ)」
図10を参照して、本発明に係る一実施形態の圧電型超音波振動子の構造について説明する。図10は圧電型超音波振動子の要部断面図である。視認しやすくするため、構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。
本実施形態の圧電型超音波振動子9は、裏面側からリアクティブイオンエッチング(RIE)加工されて、空洞部171と振動板172と振動板172を支える支持部173とが一体形成されたオープンプール構造のSOI基板170と、この基板上に形成された圧電素子8と、圧電素子8の電極151、153に交流電流を印加するRF電源(高周波交流電源)190とから概略構成されている。圧電素子8は、基板170側から下部電極151と圧電体膜152と上部電極153との積層構造を有している。
下部電極151及び上部電極153の組成や厚みは、図7の圧電素子5の下部電極51及び上部電極53と同様である。圧電体膜152は、本発明の第1又は第2の成膜方法により成膜された膜である。圧電体膜152の組成や厚みは、図7の圧電素子5の圧電体膜52と同様である。
圧電素子8の電極151、153に超音波領域の電気交流信号が印加されると、印加された電気交流信号と同じ周波数で圧電素子8に撓み振動が生じ、振動板172は圧電素子8と一体となって撓み振動する。このとき、振動板172は支持部173により周縁部が支持された状態で振動することにより、振動板172の圧電素子8と反対側から、印加された電気交流信号と同じ周波数の超音波が放射される。
本実施形態の圧電型超音波振動子9は、以上のように構成されている。
本実施形態の圧電型超音波振動子9は、超音波モータ等に使用できる。
本実施形態の圧電型超音波振動子9はまた、特定周波数の超音波を発生し、対象物より反響して戻ってきた超音波を検知するセンサ等として使用でき、超音波探触子等に使用できる。対象物より反響して戻ってきた超音波を受けて振動板172が振動すれば、その応力により圧電体膜152が変位し、圧電素子8にはその変位量に応じた電圧が生じる。これを検出することで、対象物の形状等を検出することができる。
(設計変更)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
本発明に係る実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
200mmφのシリコンウエハ上にスパッタリング法により、10nm厚のTi膜と150nm厚のIr下部電極とを順次成膜した。得られた基板上に、RFスパッタリング法により4μm厚のNb−PZT圧電体膜を成膜した。
本実施例では、図2,図3に示した第2実施形態の成膜装置2を用いた。基板ホルダは基板の外周より30mm大きいサイズであり(D1=30mm)、基板ホルダにインピーダンス調整器が接続された成膜装置を用いた。真空容器は接地電位とした。基板の外周から真空容器の内壁面までの距離D2=60mmであった。成膜中の基板電位をモニタしながら、インピーダンス調整器により基板ホルダのインピーダンスを調整して、基板電位を+70Vに調整した。
その他の成膜条件は以下の通りとした。
ターゲット:Pb1.3(Zr0.52Ti0.480.88Nb0.12焼結体(300mmφ)、
基板温度:525℃、
成膜ガス:Ar/O=100/1(モル比)、
成膜圧力:0.5Pa、
ターゲット−基板間距離:80mm、
RFパワー:3kW。
成膜条件における電位分布をシミュレーションした。結果を図11に示す。図11において、右図は基板とターゲットとの位置関係を示す図であり、左図がこの位置関係に対応した電位分布図である。
図11において、横軸は横方向(基板の面方向)の位置を示し、基板の中心位置を原点(0mm)としてある。この例では、基板は100mmの位置まであり、ターゲットは150mmの位置まである。縦軸は基板面に対して垂直方向の位置を示し、ターゲット面の位置を80mm、基板面の位置を160mmとしてある。
電位分布図はカラー図面を白黒にしてあるのでカラーグラデーションの表示が難しいが、概ね電位の高い側から原図の赤、橙、黄、緑、水色、青に対応した6段階(VI、V、IV、III、II、I)で表示してある。図に示すように、本実施例では、基板の外周から基板の側方に約30mm離れた位置までの電位が、基板と同電位に調整されていた。
基板内に突入するアルゴンイオンのエネルギー分布をシミュレーションした。結果を図12に示す。図11と同様に横軸は横方向(基板の面方向)の位置を示し、基板の中心位置を原点(0mm)としてある。この例では基板は100mmの位置まであり、真空容器の内壁面の位置が160mmである。図に示すように、基板面内の全範囲において、基板内に突入するアルゴンイオンのエネルギー分布は均一であった。さらに、基板の外周から側方に約20mmの位置まで基板内に突入するアルゴンイオンのエネルギー分布は均一であった。
得られたNb−PZT膜についてXRD分析を実施したところ、ペロブスカイト構造を有する(100)配向膜であった。面内方向に多数の領域に分割して各領域のXRD分析を実施したところ、面内全体的に結晶配向性の良い良質な膜が形成されていた。
得られたNb−PZT膜について、エッジ5mmの領域は除いて面内方向に9箇所の領域に分割して各領域のXRF組成分析を実施したところ、Pb/(Zr+Ti+Nb)のモル比のばらつきは1.05±0.02(ばらつき1.9%)であり、ほぼ均一であった。
最後に、Nb−PZT膜上にTi/Pt上部電極(Ti:20nm厚/Pt:150nm厚)を蒸着して、本発明の圧電素子を得た。
得られた圧電素子について、エッジ5mmの領域は除いて面内方向に9箇所の領域に分割して各領域の圧電定数d31の測定を実施した。圧電定数d31=245pm/V±4%であり、圧電定数d31の均一性が高く良好であった。
膜組成を真性PZT膜に変えても、同様に組成分布が均一なPZT膜を成膜することができた。基板ホルダにインピーダンス調整器の代わりに図1に示した直流電流印加ユニットを接続しても同様に成膜を行うことができ、同様の性能のNb−PZT膜を成膜することができた。
(実施例2)
圧電体膜の成膜装置として、実施例1の装置においてD1=12mmとしたものを用いた以外は同様にして、本発明の圧電素子を得た。得られたNb−PZT膜について、エッジ5mmの領域は除いて面内方向に9箇所の領域に分割して各領域のXRF組成分析を実施したところ、Pb/(Zr+Ti+Nb)のモル比のばらつきは1.05±0.03(ばらつき2.8%)であり、ほぼ均一であった。
(実施例3)
圧電体膜の成膜条件を変えた以外は実施例1と同様にして、圧電素子を得た。
実施例1と同様、図2,図3に示した第2実施形態の成膜装置2のように、基板ホルダにインピーダンス調整器が接続された成膜装置を用いた。本実施例では、基板ホルダは基板の外周より50mm大きいサイズとした。図6に示した第4実施形態の成膜装置4のように、真空容器は接地電位とし、基板ホルダの周りにインピーダンス調整器が接続された壁部材を設けた成膜装置を用いた。基板の外周から壁部材の基板ホルダ側の面までの距離D3=50mmとし、壁部材の高さは基板表面より10mm高く設定した。
成膜中の基板電位をモニタしながら、インピーダンス調整器により基板ホルダ及び壁部材のインピーダンスを調整し、基板電位及び壁部材の基板ホルダ側の面の電位を+70Vに調整した。その他の成膜条件は実施例1と同様とした。
得られたNb−PZT膜についてXRD分析を実施したところ、ペロブスカイト構造を有する(100)配向膜であった。面内方向に多数の領域に分割して各領域のXRD分析を実施したところ、面内全体的に結晶配向性の良い良質な膜が形成されていた。
得られたNb−PZT膜について、エッジ5mmの領域は除いて面内方向に9箇所の領域に分割して各領域のXRF組成分析を実施したところ、Pb/(Zr+Ti+Nb)のモル比のばらつきは1.05±0.02(ばらつき1.9%)であり、ほぼ均一であった。
得られた圧電素子について、エッジ5mmの領域は除いて面内方向に9箇所の領域に分割して各領域の圧電定数d31の測定を実施した。圧電定数d31=246pm/V±3%であり、圧電定数d31の均一性が高く良好であった。
膜組成を真性PZT膜に変えても、同様に組成分布が均一なPZT膜を成膜することができた。基板ホルダにインピーダンス調整器の代わりに図1に示した直流電流印加ユニットを接続しても同様に成膜を行うことができ、同様の性能のNb−PZT膜を成膜することができた。
(比較例1)
圧電体膜の成膜時の基板ホルダを基板の外周より7mm大きいサイズのものに変えた以外は実施例1と同様にして、圧電素子を得た。
得られたNb−PZT膜についてXRD分析を実施したところ、ペロブスカイト構造を有する(100)配向膜であった。面内方向に多数の領域に分割して各領域のXRD分析を実施したところ、面内全体的に結晶配向性の良い良質な膜が形成されていた。
成膜条件における電位分布をシミュレーションした。結果を図13に示す。図13は実施例1の図11と対応している。図11と同様、横軸は横方向(基板の面方向)の位置を示し、基板の中心位置を原点(0mm)としてある。この例では、基板は100mmの位置まであり、ターゲットは150mmの位置まである。縦軸は基板面に対して垂直方向の位置を示し、ターゲット面の位置を80mm、基板面の位置を160mmとしてある。
図11と同様、電位分布図はカラー図面を白黒にしてあるので、カラーグラデーションの表示が難しいが、概ね電位の高い側から原図の赤、橙、黄、緑、水色、青に対応した6段階(VI、V、IV、III、II、I)で表示してある。図13に示すように、本比較例では、基板の外周部の電位が基板の中心部の電位より低くなっており、さらに基板の側方では基板の外周から30mm以内の基板の近傍領域でも基板の中心部の電位より大幅に低くなっていた。
基板内に突入するアルゴンイオンのエネルギー分布をシミュレーションした。結果を図14に示す。図12と同様に横軸は横方向(基板の面方向)の位置を示し、基板の中心位置を原点(0mm)としてある。この例では基板は100mmの位置まであり、真空容器の内壁面の位置が160mmである。図に示すように、基板のある横軸0mm〜100mmの範囲内において、基板内に突入するアルゴンイオンのエネルギーに大きなばらつきが見られた。特に基板の外周部では基板内に突入するアルゴンイオンのエネルギーが大きく上昇していた。
得られたNb−PZT膜について、エッジ5mmの領域は除いて面内方向に9箇所の領域に分割して各領域のXRF組成分析を実施したところ、Pb/(Zr+Ti+Nb)のモル比のばらつきは1.05±0.05(ばらつき4.76%)であり、ばらつきが大きく、外周部のPb量が中心部より低い傾向にあった。図14に示したように、基板の外周部では基板内に突入するアルゴンイオンのエネルギーが大きく上昇していることから、基板の外周部ではPbの逆スパッタが多く生じており、Pb量が低くなっていると考えられる。
得られた圧電素子について、エッジ5mmの領域は除いて面内方向に9箇所の領域に分割して各領域の圧電定数d31の測定を実施した。圧電定数d31=245pm/V±7%であり、圧電定数d31の均一性が悪かった。
本発明は、プラズマを用いる気相成長法による任意の組成の成膜に適用することができる。本発明は、インクジェット式記録ヘッド、磁気記録再生ヘッド、MEMS(Micro Electro-Mechanical Systems)デバイス、マイクロポンプ、超音波探触子、及び超音波モータ等に搭載される圧電素子/圧電型超音波振動子/圧電型発電素子等、あるいは強誘電体メモリ等の強誘電体素子に用いられる圧電体膜の成膜、あるいはZn含有化合物を含む導電体膜又は半導体膜の成膜等に好ましく適用することができる。
1,2,3,4 成膜装置(高周波スパッタリング装置)
10 真空容器
10S 真空容器の内壁面
11 基板ホルダ
11A ホルダ本体
11B 固定部材
12 ターゲットホルダ(プラズマ電極)
13 高周波交流電源
14 プラズマ発生手段
18 ガス導入管(ガス導入手段)
17 直流電流印加ユニット(電位調整手段)
17A 直流電源
17B 整合回路
20 インピーダンス調整器(電位調整手段)
22 インピーダンス回路
35 高周波交流電源(電位調整手段)
45 壁部材
45S 壁部材の基板ホルダ側の面
47 直流電流印加ユニット(電位調整手段)
47A 直流電源
47B 整合回路
G ガス
B 基板
T ターゲット
D1 基板の外周と基板ホルダの外周との距離
5 圧電素子
7,7K,7C,7M,7Y インクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)
50 基板
51,53 電極
52 圧電体膜
70 インクノズル(液体貯留吐出部材)
71 インク室(液体貯留室)
72 インク吐出口(液体吐出口)
100 インクジェット式記録装置(液体吐出装置)
8 圧電素子
9 圧電型超音波振動子(超音波トランスデューサ)
151、153 電極
152 圧電体膜
172 振動板
190 RF電源(高周波交流電源)

Claims (18)

  1. 基板とターゲットとを対向させて、プラズマを用いた気相成長法により前記基板上に前記ターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜方法において、
    前記基板を該基板と同電位に調整された壁面で囲んで、前記成膜を行うことを特徴とする成膜方法。
  2. 前記基板にプラス(+)電位を印加して、前記成膜を行うことを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
  3. 前記気相成長法はスパッタリング法であることを特徴とする請求項1又は2記載の成膜方法。
  4. 前記膜は圧電体膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成膜方法。
  5. 前記膜は下記一般式(P)で表される1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を主成分とすることを特徴とする請求項4に記載の成膜方法。
    一般式ABO・・・(P)
    (A:Aサイトの元素であり、Pb,Ba,Sr,Bi,Li,Na,Ca,Cd,Mg,K,及びランタニド元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
    B:Bサイトの元素であり、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Mg,Sc,Co,Cu,In,Sn,Ga,Zn,Cd,Fe,Ni,Hf,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
    O:酸素。
    Aサイト元素とBサイト元素と酸素元素のモル比は1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
  6. 前記膜は、前記一般式(P)で表され、かつAサイトがPb,Bi,及びBaからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素を含む1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を含むことを特徴とする請求項5に記載の成膜方法。
  7. 前記膜は、前記一般式(P)で表され、かつAサイトがPbを含む1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を含むことを特徴とする請求項6に記載の成膜方法。
  8. 前記膜はZn含有化合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成膜方法。
  9. 前記膜は下記一般式(S)で表されるZn含有酸化物を含むことを特徴とする請求項8に記載の成膜方法。
    InZn(x+3y/2+3z/2) ・・・(S)
    (式中、MはIn,Fe,Ga,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素である。x,y,zはいずれも0超の実数である。)
  10. 内部に互いに対向配置された基板ホルダ及びターゲットホルダが装着された真空容器と、
    前記真空容器内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、
    前記真空容器内にプラズマ化させるガスを導入するガス導入手段とを備え、
    プラズマを用いた気相成長法により基板上にターゲットの構成元素を含む膜を成膜する成膜装置において、
    前記基板ホルダは、前記基板と同電位に調整可能とされた壁面で囲まれていることを特徴とする成膜装置。
  11. 前記真空容器は該真空容器の電位を調節する電位調整手段に接続されており、少なくとも前記基板ホルダ側の面が前記基板と同電位に調整可能とされていることを特徴とする請求項10に記載の成膜装置。
  12. 前記電位調整手段は、前記真空容器に電位を印加する電源、若しくは前記真空容器のインピーダンスを調整するインピーダンス回路を有することを特徴とする請求項11に記載の成膜装置。
  13. 前記基板ホルダは、少なくとも前記基板ホルダ側の面が前記基板と同電位に調整可能とされた壁部材で囲まれていることを特徴とする請求項10に記載の成膜装置。
  14. 請求項1〜7のいずれかに記載の成膜方法により成膜されたものであることを特徴とする圧電体膜。
  15. 請求項7に記載の成膜方法により成膜されたものであり、Pb濃度の面内ばらつきが±3.0%以内であることを特徴とする圧電体膜。
  16. 請求項15に記載の圧電体膜と、該圧電体膜に対して電界を印加する電極とを備えたことを特徴とする圧電素子。
  17. 請求項16に記載の圧電素子と、該圧電素子に隣接して設けられた液体吐出部材とを備え、該液体吐出部材は、液体が貯留される液体貯留室と、前記圧電体膜に対する前記電界の印加に応じて該液体貯留室から外部に前記液体が吐出される液体吐出口とを有することを特徴とする液体吐出装置。
  18. 請求項16に記載の圧電素子と、
    前記電極に交流電流を印加する交流電源と、
    前記圧電体の伸縮により振動する振動板とを備えたことを特徴とする圧電型超音波振動子。
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