JP5662923B2 - 免震装置 - Google Patents

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本発明は、上部構造物と下部構造物との間に設備されて上部構造物,下部構造物の一方から他方へ伝わる震動(振動)を減衰する免震装置に係る技術分野に属する。
免震装置としては、すべり支承構造を備えたものが普及している。この免震装置は、上部構造物,下部構造物の一方にすべり材が固定され他方にすべり板が固定され、すべり材をすべり板に沿って滑動させることで、上部構造物,下部構造物の一方から他方へ伝わる震動を減衰するものである。
この免震装置では、横方向の震動に対して有効に減衰機能を発揮するものの縦方向の震動に対してほとんど減衰機能を発揮しないという特性がある。このため、すべり支承構造を備えた免震装置において縦方向の震動に対しても有効に減衰機能が発揮される技術の開発が要望されている。
従来、すべり支承構造を備えた免震装置において縦方向の震動に対しても有効に減衰機能を発揮させることを指向した技術としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
特許文献1には、上部構造物にすべり板が固定され、下部構造物に蛇腹形の空気ばねを介してすべり材が固定され、下部構造物に空気ばねの伸縮方向を規制するガイドシャフト,リニアブッシングからなるガイド機構が取付けられた免震装置が記載されている。
特許文献1に係る免震装置は、空気ばねによって縦方向の震動に対して減衰機能を発揮させるとともに、すべり材,すべり板からなるすべり支承構造の基本構成を維持して横方向の震動に対する減衰機能が消失しないようにするものである。
特開平10−169708号公報
特許文献1に係る免震装置では、縦方向の震動に対して減衰機能を発揮する空気ばねを有効に動作させるためにガイド機構の付設が必要とされることから、構造が複雑化して設備コストが高くなってしまうとともに、大きな荷重が掛かり細小な機構の付設が不向きな大型の構造物に適用することができないという問題点がある。
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、横方向,縦方向の双方の震動に対して減衰機能を発揮することができて、設備コストが安価であるとともに大型の構造物に適用することのできる免震装置を提供することを課題とする。
前述の課題を解決するため、本発明に係る免震装置は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
即ち、請求項1では、上部構造物と下部構造物との一方にすべり材が固定され他方にすべり板が固定されたすべり支承構造を備えた免震装置において、すべり板はすべり材に向けて中心部から凹状に湾曲するように付勢され非免震動作時に上部構造物の荷重で平板状になるように弾性が設定された円板形の板材で形成され中心部でのみ部分的に支脚によって支持されて固定され、すべり材はすべり板にリング状に当接されるすべり面が設けられていることを特徴とする。
この手段では、すべり支承構造を構成するすべり材に弾性を付与することで、すべり材自体に縦方向の震動に対する減衰機能を発揮させ、特許文献1に係る免震装置のガイド機構を不要にする。また、すべり材のすべり板に当接されるすべり面がリング状に形成されることで、すべり摩擦を過剰に増大させることなくすべり材のすべり姿勢を安定化させることができるとともに、すべり材のすべりを阻害する異物がすべり面の内側へ侵入するのを防止することができる。
また、請求項2では、請求項の免震装置において、すべり板は円板形の本体部の周縁にすべり材側に突出されすべり材の滑動域を規制するすべり材用ストッパが設けられていることを特徴とする。
この手段では、すべり板に滑動域を規制するすべり材用ストッパが設けられることで、すべり材がすべり板の本体部から離脱するのが阻止される。
また、請求項3では、請求項1または2の免震装置において、すべり板が固定された上部構造物または下部構造部にすべり板のすべり材と反対側方向への弾性変形域を規制するすべり板用ストッパが設けられていることを特徴とする。
この手段では、下部構造部に弾性変形域を規制するすべり板用ストッパが設けられることで、すべり板の必要以上の変形が阻止される。
本発明に係る免震装置は、すべり支承構造を構成するすべり材に弾性を付与することで、すべり材自体に縦方向の震動に対する減衰機能を発揮させ、特許文献1に係る免震装置のガイド機構を不要にするため、横方向,縦方向の双方の震動に対して減衰機能を発揮することができて、設備コストが安価であるとともに大型の構造物に適用することがきる効果がある。また、すべり材のすべり板に当接されるすべり面がリング状に形成されることで、すべり摩擦を過剰に増大させることなくすべり材のすべり姿勢を安定化させることができるとともに、すべり材のすべりを阻害する異物がすべり面の内側へ侵入するのを防止することができるため、すべり支承構造による横方向の震動に対する減衰機能が円滑,確実に奏される効果がある。
さらに、請求項2として、すべり板に滑動域を規制するすべり材用ストッパが設けられることで、すべり材がすべり板の本体部から離脱するのが阻止されるため、免震限界を超えた震動によって装置構成が簡単に崩壊することがなくなる効果がある。
さらに、請求項3として、下部構造部に弾性変形域を規制するすべり板用ストッパが設けられることで、すべり板の必要以上の変形が阻止されるため、免震限界を超えた震動によって装置構成が簡単に崩壊することがなくなる効果がある。
本発明に係る免震装置を実施するための形態の縦断面図(要部拡大図を含む)である。 図1のX−X線断面図である。 図1の免震動作を示す図である。 図1の他の免震動作を示す図である。 図1のさらに他の免震動作を示す図である。
以下、本発明に係る免震装置を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
この形態では、建屋の基礎付近に設備されるものを示してある。即ち、上部構造物Aとして建屋の柱体が対象とされ、下部構造物Bとして建屋の基礎体が対象とされている。
この形態は、図1に示すように、上部構造物Aに固定されたすべり材1と下部構造物Bに固定されたすべり板2とからなるすべり支承構造を備えている。
すべり材1は、上部構造物Aの下端部に固定され、上部構造物Aの下端部の外周面を覆う側壁面11の下部にリング状のすべり面12が設けられている(図2参照)。側壁面11は、すべり面12を上方から支持するとともに上部構造物Aの下端部を補強している。すべり面12は、断面形状が湾曲された形状に形成され、すべり板2に沿った円滑な滑動が得られるようになっている。すべり面12によって囲まれる底面に相当する非すべり面13は、上方に湾曲して凹入する形状に形成され、すべり面12を側方から支持するとともに上部構造物Aの底面部を補強している。
すべり板2は、下部構造物Bに固定された支持ベース3に固定された支脚4に固定され、円板形の本体部21の周縁に上方(すべり材1側)に向けて突出されたすべり材用ストッパ22が設けられている。本体部21は、すべり材1のすべり面12よりも大きな径の円板形に形成され、中心部でのみ支脚4によって支持されて下部構造物B(支持ベース3)から少しのスペースを介するように立上げられている。この本体部21には、弾力が付与されており、上方(すべり材1側)に向けて中心部から凹状に湾曲するように付勢され非免震動作時に上部構造物Bの荷重で平板状(図1の状態)になるように弾性が設定されている。すべり材用ストッパ22は、すべり材1の滑動域を規制するもので、すべり材1がすべり板2の本体部21から離脱するのを阻止して、免震限界を超えた震動によって装置構成が簡単に崩壊しないようにする。
これ等のすべり材1,すべり板2は、鋼材を主材として表面を耐腐食性,耐摩耗性を有するステンレス材とするとうの積層構造が選択される。なお、すべり材1,すべり板2の間では、すべり材1の円滑な滑動を奏するための平滑性が確保されるが、微小な震動ですべり材1が滑動しないようにある程度の摩擦係数が確保される。
また、支持ベース3,支脚4は、鋼材を主材として形成される。なお、支持ベース3は、下部構造物Bに埋込み固定され、周縁にすべり板用ストッパ5が固定されている。すべり板用ストッパ5は、すべり板2の下方(すべり材1と反対側方向)への弾性変形域を規制するもので、すべり板2の必要以上の変形を阻止して、免震限界を超えた震動によって装置構成が簡単に崩壊しないようにする。
この形態において地震等によって下部構造物Bが震動した場合には、図3に示すように、すべり板2の本体部21の上ですべり材1のすべり面12が滑動する(すべり支承構造)ことで、横方向の震動に対する減衰機能が発揮される。
このすべり材1のすべり面12の滑動では、すべり面12がリング状に形成されているため、すべり摩擦を過剰に増大させることなくすべり材1のすべり姿勢を安定化させることができるとともに、すべり材1のすべりを阻害する異物がすべり面12の内側へ侵入するのを防止することができる。この結果、すべり支承構造による横方向の震動に対する減衰機能が円滑,確実に奏されることになる。
また、図4に示すように、上昇する下部構造物Bによってすべり材1のすべり面12に押圧されたすべり板2の本体部21が下方に向けて凹状に湾曲変形することで、縦方向(上方向)の震動に対する減衰機能が発揮される。
また、図5に示すように、下降する下部構造物Bによってともに下降するすべり板2の本体部21が上方に向けて凹状に湾曲変形してすべり材1のすべり面12に対する押圧を維持することで、縦方向(下方向)の震動に対する減衰機能が発揮される。
なお、横方向,縦方向の震動に対する減衰機能が発揮された後には、すべり板2の本体部21の弾力によって原位置(図1)への復元がなされる。
従って、この形態によると、特許文献1に係る免震装置のガイド機構が不要になるにもかかわらず、横方向,縦方向の双方の震動に対して減衰機能を発揮することができる。この結果、構造が簡素化されて設備コストが安価になり、大きな荷重が掛かり細小な機構の付設が不向きな大型の構造物にも適用することがきるようになる。
以上、図示した形態の外に、すべり材1,すべり板2の間に防塵シートを張設することも可能である。
さらに、すべり板2のすべり材用ストッパ22やすべり板用ストッパ5に弾性を付与して、すべり材1,すべり板2を速やかに原位置に復元させるようにすることも可能である。
本発明に係る免震装置は、建屋以外の大型機械装置に設備して機械的振動の減衰にも強することが可能である。また、小型の構造物に適用しても何等支障のないものである。
1 すべり材
12 すべり面
2 すべり板
21 本体部
22 すべり材用ストッパ
4 支脚
5 すべり板用ストッパ
A 上部構造物
B 下部構造物

Claims (3)

  1. 上部構造物と下部構造物との一方にすべり材が固定され他方にすべり板が固定されたすべり支承構造を備えた免震装置において、すべり板はすべり材に向けて中心部から凹状に湾曲するように付勢され非免震動作時に上部構造物の荷重で平板状になるように弾性が設定された円板形の板材で形成され中心部でのみ部分的に支脚によって支持されて固定され、すべり材はすべり板にリング状に当接されるすべり面が設けられていることを特徴とする免震装置。
  2. 請求項の免震装置において、すべり板は円板形の本体部の周縁にすべり材側に突出されすべり材の滑動域を規制するすべり材用ストッパが設けられていることを特徴とする免震装置。
  3. 請求項1または2の免震装置において、すべり板が固定された上部構造物または下部構造部にすべり板のすべり材と反対側方向への弾性変形域を規制するすべり板用ストッパが設けられていることを特徴とする免震装置。
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