図6は、従来の一般的なストリップライン構造を有する信号線路500の断面構造図である。なお、図6は、信号線路500の延在する方向に垂直な断面構造図である。信号線路500は、例えば、携帯電話等の電子機器において、信号発生源と負荷回路との間を接続するために用いられる。信号線路500は、本体502、信号線504及びグランド導体506(506a,506b)を備えている。
本体502は、可撓性材料からなる複数の絶縁シートが積層されて構成され、変形することができる。信号線504は、高周波信号が伝送される線路である。該高周波信号は、図6の紙面垂直方向に伝送される。グランド導体506aは、信号線504の積層方向(図6の上下方向)の上側に設けられ、信号線504と重なっている。また、グランド導体506bは、信号線504の積層方向の下側に設けられ、信号線504と重なっている。
前記信号線路500によれば、信号線504とグランド導体506a,506b間に容量が発生し、信号線504のインピーダンスが低下する。その結果、信号発生源と信号線504と負荷回路とのインピーダンス整合が取られる。
しかしながら、信号線路500は、以下に説明するように、U字状に曲げにくいという問題を有している。より詳細には、信号線路500は、可撓性材料により構成され、電子機器内においてU字状に曲げられた状態で用いられる。これにより、電子機器内の回路基板等のレイアウト設計の自由度を高くすることが可能である。
ところが、信号線路500は、信号線504及びグランド導体506a,506bの3層の導体層により構成されている。信号線504及びグランド導体506a,506bは、一般的に、金属膜で作製されているため、本体を構成している絶縁シートに比べて曲がりにくい。そのため、信号線路500は、比較的にU字状に曲げにくいという問題を有している。
上記問題を解決する方法としては、例えば、信号線路をマイクロストリップライン構造とすることが挙げられる。マイクロストリップライン構造を有する信号線路は、信号線路500において、グランド導体506aを取り除いたものである。これにより、グランド導体506aが存在しない分だけ、信号線路をU字状に曲げ易くなる。
しかしながら、マイクロストリップライン構造を有する信号線路では、ノイズの不要輻射が発生してしまう。より詳細には、高周波信号は信号線路500の電気長よりも短い波長を有している。よって、信号線内を高周波信号が伝送されると、信号線内に複数の定在波が存在するようになる。そのため、これらの定在波によりノイズが信号線内から信号線外へと輻射される。ここで、ストリップライン構造を有する信号線路500では、信号線504は、図6に示すように、グランド導体506a,506bにより挟まれている。そのため、信号線504から輻射されたノイズは、グランド導体506a,506bにより吸収される。そのため、ノイズは、信号線路500外に殆ど輻射されない。
一方、マイクロストリップライン構造を有する信号線路では、グランド導体は、信号線の一方側にしか設けられていない。そのため、信号線から輻射されるノイズは、信号線の他方側から信号線路外へと輻射されてしまう。以上のように、ストリップライン構造を有する信号線路500、及び、マイクロストリップライン構造を有する信号線路では、U字状に曲げ易くすることと、不要輻射を低減することとを両立することは困難であった。
上記問題を解決しうる信号線路としては、例えば、特許文献1に記載のプリント配線板が知られている。図7は、特許文献1に記載のプリント配線板600の断面構造図である。なお、図7は、プリント配線板600の延在する方向に垂直な断面構造図である。
プリント配線板600は、本体602、信号線604及びグランド導体606(606a〜606d)を備えている。本体602は、可撓性材料からなる複数の絶縁シートが積層されて構成され、変形することができる。信号線604は、高周波信号が伝送される線路である。該高周波信号は、図7の紙面垂直方向に伝送される。グランド導体606a,606bは、信号線604の積層方向(図6の上下方向)の上側に設けられ、信号線604と重なっている。ただし、グランド導体606a,606b間には、スリットS600が設けられている。また、グランド導体606c,606dは、信号線604の積層方向の下側に設けられ、信号線604と重なっている。ただし、グランド導体606c,606d間には、スリットS602が設けられている。
以上のようなプリント配線板600では、スリットS600,S602が設けられているので、グランド導体606a〜606dの面積は、図6のグランド導体506a,506bの面積よりも小さくなる。そのため、プリント配線板600は、グランド導体606a〜606dの面積の減少分だけ、信号線路500に比べてU字状に曲げ易くなる。
更に、プリント配線板600において信号線604とグランド導体606とが対向している面積は、信号線路500において信号線504とグランド導体506とが対向している面積よりも小さくなる。ただし、インピーダンス整合をとるためには、プリント配線板600の特性インピーダンスを維持する必要がある。そこで、プリント配線板600では、信号線604とグランド導体606との間に発生する容量を維持するために、信号線604とグランド導体606との間隔を小さくする必要がある。その結果、本体602の積層方向の厚みが小さくなり、プリント配線板600は、よりU字状に曲げ易くなる。
また、プリント配線板600の信号線604には、高周波信号が伝送される。高周波信号は、表皮効果により、図7に示す信号線604の端部T600,T602に集中するようになる。よって、端部T600,T602から不要輻射が発生する。そこで、プリント配線板600では、グランド導体606は、端部T600,T602と重なるように設けられている。これにより、端部T600,T602から輻射されるノイズは、グランド導体606に吸収されるようになる。以上のように、プリント配線板600では、U字状に曲げ易くすることと、不要輻射を低減することとを両立させることができる。
しかしながら、プリント配線板600は、以下に説明するように、高周波特性が悪いという問題を有する。より詳細には、プリント配線板600では、表皮効果により、端部T600,T602に高周波信号が集中して伝送されるようになる。更に、端部T600,T602の内、特に信号線604の角部E600,E602,E604,E606は、信号線604の他の部分に比べて、グランド導体606に近接している。これにより、縁端効果が生じて、信号線604とグランド導体606との間に発生する電気力線は、角部E600,E602,E604,E606から集中して発生するようになってしまう。その結果、プリント配線板600では、信号線604の角部E600,E602,E604,E606のみに電流が流れることになり、信号線604の高周波抵抗成分が大きくなる。これにより、プリント配線板600の伝送特性が低下する。よって、プリント配線板600は、高周波特性が悪いという問題を有している。
以下に、本発明の実施形態に係る信号線路及びその製造方法について図面を参照しながら説明する。
(信号線路の構成)
以下に、本発明の一実施形態に係る信号線路の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る信号線路10の外観斜視図である。図2は、図1の信号線路10の分解図である。図3は、信号線路10を積層方向から透視した図である。図4は、図1のA−Aにおける断面構造図である。図1ないし図4において、信号線路10の積層方向をz軸方向と定義する。また、信号線路10の長手方向をx軸方向と定義し、x軸方向及びz軸方向に直交する方向をy軸方向と定義する。
信号線路10は、例えば、携帯電話等の電子機器内のおいて、2つの回路基板を接続する。信号線路10は、図1及び図2に示すように、本体12、外部端子14(14a〜14f)、グランド導体30(30a,30b),34(34a,34b)、信号線32及びビアホール導体b1〜b16を備えている。
本体12は、図1に示すように、信号線部16及びコネクタ部18,20を含んでいる。信号線部16は、x軸方向に延在しており、信号線32及びグランド導体30,34を内蔵している。信号線部16は、U字状に曲げることができるように構成されている。コネクタ部18,20は、信号線部16のx軸方向の両端に設けられ、図示しない回路基板のコネクタに接続される。本体12は、図2に示す絶縁シート22(22a〜22d)がz軸方向の正方向側からこの順に積層されて構成されている。
絶縁シート22は、可撓性を有する液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂により構成されている。絶縁シート22a〜22dはそれぞれ、図2に示すように、信号線部24a〜24d及びコネクタ部26a〜26d,28a〜28dにより構成されている。信号線部24は、本体12の信号線部16を構成し、コネクタ部26,28はそれぞれ、本体12のコネクタ部18,20を構成している。なお、以下では、絶縁シート22のz軸方向の正方向側の主面を表面と称し、絶縁シート22のz軸方向の負方向側の主面を裏面と称す。
外部端子14a〜14cは、図2に示すように、コネクタ部26aの表面にy軸方向に一列に並ぶように設けられている。外部端子14a〜14cは、コネクタ部18が回路基板のコネクタに挿入された際に、コネクタ内の端子に接触する。具体的には、外部端子14a,14cは、コネクタ内のグランド端子に接触し、外部端子14bは、コネクタ内の信号端子に接触する。したがって、外部端子14a,14cには、グランド電位が印加され、外部端子14bには、高周波信号が印加される。
外部端子14d〜14fは、図2に示すように、コネクタ部28aの表面にy軸方向に一列に並ぶように設けられている。外部端子14d〜14fは、コネクタ部20が回路基板のコネクタに挿入された際に、コネクタ内の端子に接触する。具体的には、外部端子14d,14fは、コネクタ内のグランド端子に接触し、外部端子14eは、コネクタ内の信号端子に接触する。したがって、外部端子14d,14fには、グランド電位が印加され、外部端子14eには、高周波信号が印加される。
信号線32は、図2に示すように、絶縁シート22cの表面に設けられている。具体的には、信号線32は、信号線部24cの表面をx軸方向に延在している。そして、信号線32の両端はそれぞれ、コネクタ部26c,28cに位置している。
グランド導体30a,30bは、図2に示すように、信号線32よりもz軸方向の正方向側に設けられ、より詳細には、絶縁シート22bの表面に設けられている。グランド導体30a,30bは、信号線部24bの表面をx軸方向に延在している。グランド導体30a,30b間には、x軸方向に延在するスリットS1が設けられている。グランド導体30a,30bの一端は、コネクタ部26bに位置し、グランド導体30a,30bの他端は、コネクタ部28bに位置している。
また、グランド導体30a,30bは、図3に示すように、z軸方向から平面視したときに、信号線32と重なっている。具体的には、信号線32は、図2に示すように、x軸方向に延在している縁部E1,E2を有している。また、グランド導体30a,30bはそれぞれ、x軸方向に延在している縁部E3,E4を有している。縁部E3,E4間には、スリットS1が存在している。そして、絶縁シート22c上に絶縁シート22bが重ねられたときに、図3に示すように、縁部E1は、縁部E3よりもy軸方向の正方向側に位置し、縁部E2は、縁部E4よりもy軸方向の負方向側に位置している。これにより、グランド導体30aは、縁部E3近傍において、信号線32の縁部E1近傍と重なり、グランド導体30bは、縁部E4近傍において、信号線32の縁部E2近傍と重なっている。更に、スリットS1は、図3に示すように、z軸方向から平面視したときに、信号線32からはみ出すことなく重なり、かつ、信号線32に沿って延在している。
グランド導体34a,34bは、図2に示すように、信号線32よりもz軸方向の負方向側に設けられ、より詳細には、絶縁シート22dの表面に設けられている。グランド導体34a,34bは、信号線部24dの表面をx軸方向に延在している。グランド導体34a,34b間には、x軸方向に延在するスリットS2が設けられている。グランド導体34a,34bの一端は、コネクタ部26dに位置し、グランド導体34a,34bの他端は、コネクタ部28dに位置している。
また、グランド導体34a,34bは、図3に示すように、z軸方向から平面視したときに、信号線32と重なっている。具体的には、信号線32は、図2に示すように、x軸方向に延在している縁部E1,E2を有している。また、グランド導体34a,34bはそれぞれ、x軸方向に延在している縁部E5,E6を有している。縁部E5,E6間には、スリットS2が存在している。そして、絶縁シート22d上に絶縁シート22cが重ねられたときに、図3に示すように、縁部E1は、縁部E5よりもy軸方向の正方向側に位置し、縁部E2は、縁部E6よりもy軸方向の負方向側に位置している。これにより、グランド導体34aは、縁部E5近傍において、信号線32の縁部E1近傍と重なり、グランド導体34bは、縁部E6近傍において、信号線32の縁部E2近傍と重なっている。更に、スリットS2は、図3に示すように、z軸方向から平面視したときに、信号線32からはみ出すことなく重なり、かつ、信号線32に沿って延在している。
ビアホール導体b1,b3はそれぞれ、図2に示すように、コネクタ部26aをz軸方向に貫通するように設けられ、外部端子14a,14cとグランド導体30a,30bとを接続している。ビアホール導体b2は、図2に示すように、コネクタ部26aをz軸方向に貫通するように設けられ、外部端子14bに接続されている。
ビアホール導体b7,b9はそれぞれ、図2に示すように、コネクタ部26bをz軸方向に貫通するように設けられ、グランド導体30a,30bに接続されている。ビアホール導体b8は、図2に示すように、コネクタ部26bをz軸方向に貫通するように設けられ、ビアホール導体b2と信号線32とを接続している。
ビアホール導体b13,b14はそれぞれ、図2に示すように、コネクタ部26cをz軸方向に貫通するように設けられ、ビアホール導体b7,b9とグランド導体34a,34bとを接続している。これにより、外部端子14aとグランド導体30a,34aとがビアホール導体b1,b7,b13を介して接続され、外部端子14cとグランド導体30b,34bとがビアホール導体b3,b9,b14により接続されている。また、外部端子14bと信号線32とがビアホール導体b2,b8により接続されている。
ビアホール導体b4,b6はそれぞれ、図2に示すように、コネクタ部28aをz軸方向に貫通するように設けられ、外部端子14d,14fとグランド導体30a,30bとを接続している。ビアホール導体b5は、図2に示すように、コネクタ部28aをz軸方向に貫通するように設けられ、外部端子14eに接続されている。
ビアホール導体b10,b12はそれぞれ、図2に示すように、コネクタ部28bをz軸方向に貫通するように設けられ、グランド導体30a,30bに接続されている。ビアホール導体b11は、図2に示すように、コネクタ部28bをz軸方向に貫通するように設けられ、ビアホール導体b5と信号線32とを接続している。
ビアホール導体b15,b16はそれぞれ、図2に示すように、コネクタ部28cをz軸方向に貫通するように設けられ、ビアホール導体b10,b12とグランド導体34a,34bとを接続している。これにより、外部端子14dとグランド導体30a,34aとがビアホール導体b4,b10,b15を介して接続され、外部端子14fとグランド導体30b,34bとがビアホール導体b6,b12,b16により接続されている。また、外部端子14eと信号線32とがビアホール導体b5,b11により接続されている。
次に、図4を参照しながら、信号線部16の断面構造について説明する。信号線部16では、z軸方向から平面視したときに、y軸方向の中央近傍において、グランド導体30,34と信号線32とが重なっている。よって、信号線部16は、y軸方向の両端から中央近傍にいくにしたがって、z軸方向の厚みが大きくなる断面形状を有している。ただし、信号線部16のy軸方向の中央には、スリットS1,S2が存在し、グランド導体30,34が存在しない。よって、z軸方向から平面視したときに、本体12の表面及び裏面においてスリットS1,S2と重なる部分には、窪みG1,G2が形成されている。この窪みG1,G2は、図中のx軸方向及びY軸方向におけるフレキシブル性の向上に寄与する。
また、グランド導体30とグランド導体34とのz軸方向における間隔は、信号線32が延在している方向に直交する断面(すなわち、yz平面における断面)において、信号線32のy軸方向の中央に近づくにしたがって、大きくなっている。より具体的には、グランド導体30,34と信号線32とがz軸方向に重なっていない位置では、グランド導体30a,30bとグランド導体34a,34bとのz軸方向における間隔は、間隔D1である。一方、信号線32のy軸方向の中央に最も近い位置では、グランド導体30a,30bとグランド導体34a,34bとのz軸方向における間隔は、間隔D1よりも大きな間隔D2である。そして、グランド導体30,34は、信号線32の角部E11〜E14に沿って、信号線32から遠ざかる方向に突出するように湾曲している。これにより、グランド導体30,34は、信号線32に倣った形状をなしている。
また、図4に示すように、信号線32のz軸方向における厚みは、グランド導体30,34のz軸方向における厚みよりも大きい。これにより、グランド導体30,34が大きく湾曲させられている。
以下に、信号線路10の各部分のサイズの一例を挙げておく。グランド導体30,34の厚みは、18μmである。信号線32の厚みは、30μmである。絶縁シート22の厚みは、25μmである。また、図3において、z軸方向から平面視したときに、グランド導体30,34と信号線32とが重なっている部分のy軸方向の幅は、10μmであり、スリットS1,S2のy軸方向の幅は、30μmである。
(信号線路の製造方法)
以下に、信号線路10の製造方法について図面を参照しながら説明する。以下では、一つの信号線路10が作製される場合を例にとって説明するが、実際には、大判の絶縁シートが積層及びカットされることにより、同時に複数の信号線路10が作製される。
まず、表面の全面に銅箔が形成された液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂からなる絶縁シート22を準備する。次に、フォトリソグラフィ工程により、図2に示す外部端子14を絶縁シート22aの表面に形成する。具体的には、絶縁シート22aの銅箔上に、図2に示す外部端子14と同じ形状のレジストを印刷する。そして、銅箔に対してエッチング処理を施すことにより、レジストにより覆われていない部分の銅箔を除去する。その後、レジストを除去する。これにより、図2に示すような、外部端子14が絶縁シート22aの表面に形成される。
次に、フォトリソグラフィ工程により、図2に示すグランド導体30を絶縁シート22bの表面に形成する。また、フォトリソグラフィ工程により、図2に示す信号線32を絶縁シート22cの表面に形成する。また、フォトリソグラフィ工程により、図2に示すグランド導体34を絶縁シート22dの表面に形成する。なお、これらのフォトリソグラフィ工程は、外部端子14を形成する際のフォトリソグラフィ工程と同様であるので、説明を省略する。
次に、絶縁シート22a〜22cのビアホール導体b1〜b16が形成される位置に対して、裏面側からレーザービームを照射して、ビアホールを形成する。その後、絶縁シート22a〜22cに形成したビアホールに対して、銅を主成分とする導電性ペーストを充填し、図2に示すビアホール導体b1〜b16を形成する。
次に、絶縁シート22a〜22dをこの順に積み重ねる。そして、絶縁シート22a〜22dに対してz軸方向の正方向側及び負方向側から等方的に又は弾性体を介して力を加えることにより、絶縁シート22a〜22dを圧着する。これにより、図1に示す信号線路10が得られる。
(効果)
以上のような信号線路10によれば、以下に説明するように、信号線部16を容易にU字状に曲げることが可能となる。より詳細には、信号線路10では、スリットS1,S2が設けられているので、グランド導体30,34の面積は、図6のグランド導体506a,506bの面積よりも小さくなる。そのため、グランド導体30,34の面積の減少分だけ、信号線路10を容易にU字状に曲げることができるようになる。
更に、信号線路10において信号線32とグランド導体30,34とが対向している面積は、信号線路500において信号線504とグランド導体506とが対向している面積よりも小さくなる。ただし、インピーダンス整合をとるためには、信号線路10の特性インピーダンスを維持する必要がある。そこで、信号線路10では、信号線32とグランド導体30,34との間に発生する容量を維持するために、信号線32とグランド導体30,34との間隔を小さくする必要がある。その結果、本体12のz軸方向の厚みが小さくなり、信号線路10をより容易にU字状に曲げることができるようになる。
また、信号線路10の信号線32には、高周波信号が伝送される。高周波信号は、表皮効果により、図4に示す信号線32の端部T1,T2に集中するようになる。よって、端部T1,T2から不要輻射が発生する。そこで、信号線路10では、グランド導体30,34は、z軸方向から平面視したときに、端部T1,T2と重なるように設けられている。これにより、端部T1,T2から輻射されるノイズは、グランド導体30,34に吸収されるようになる。以上のように、信号線路10では、U字状に曲げ易くすることと、不要輻射を低減することとを両立させることができる。
更に、信号線路10は、以下に説明するように、高周波特性に優れている。より詳細には、図7に示すプリント配線板600では、表皮効果により、端部T600,T602に高周波信号が集中して伝送されるようになる。そして、端部T600,T602の内、特に信号線604の角部E600,E602,E604,E606は、信号線604の他の部分に比べて、グランド導体606に近接している。これにより、縁端効果が生じて、信号線604とグランド導体606との間に発生する電気力線は、角部E600,E602,E604,E606から集中して発生するようになってしまう。その結果、プリント配線板600では、信号線604とグランド導体606との間において、所望の容量を得ることができなくなってしまう。すなわち、プリント配線板600の特性インピーダンスが低下する。よって、プリント配線板600は、高周波特性が悪いという問題を有している。
一方、信号線路10では、図4に示すように、グランド導体30とグランド導体34とのz軸方向における間隔は、yz平面における断面において、信号線32のy軸方向の中央に近づくにしたがって、大きくなっている。これにより、グランド導体30,34は、信号線32の角部E11〜E14に倣った形状をなしている。そのため、信号線路10では、グランド導体30,34と信号線32との間隔のばらつきが少なくなる。したがって、角部E11〜E14が信号線32の他の部分に比べてグランド導体30,34に大きく近接することが緩和される。その結果、縁端効果の発生が抑制され、信号線32とグランド導体30,34との間には、満遍なく電気力線が発生するようになる。その結果、信号線路10では、信号線32とグランド導体30,34との間において、所望の容量を得ることが容易となる。すなわち、信号線路10の特性インピーダンスの低下が抑制される。よって、信号線路10は、優れた高周波特性を有している。
また、信号線路10では、グランド導体30aとグランド導体34aとは、ビアホール導体b7,b10,b13,b15により接続され、グランド導体30bとグランド導体34bとは、ビアホール導体b9,b12,b14,b16により接続されている。これにより、スリットS1,S2が設けられていても、グランド導体30a,30b,34a,34bの電位をグランド電位に安定させることができる。
また、信号線路10では、信号線32のz軸方向における厚みは、グランド導体30,34のz軸方向における厚みよりも大きい。よって、絶縁シート22の積層時に、グランド導体30,34は、大きく湾曲するようになる。これにより、角部E11〜E14が信号線32の他の部分に比べてグランド導体30,34に大きく近接することがより効果的に緩和される。その結果、信号線路10は、より優れた高周波特性を有するようになる。
また、信号線路10では、z軸方向から平面視したときに、本体12の表面及び裏面においてスリットS1,S2と重なる部分には、窪みG1,G2が設けられている。これにより、信号線路10をより容易にU字状に曲げることができるようになる。より詳細には、z軸方向の正方向側に突出するように信号線路10をU字状に曲げる場合には、本体12のz軸方向の正方向側の主面(表面)が引き伸ばされ、本体12のz軸方向の負方向側の主面(裏面)が縮められる。そして、本体12の表面が引き伸ばされる場合において、本体12のz軸方向の厚みが大きな部分は、大きな弧を描くので他の部分に比べて強く引っ張られ、応力が集中する。
そこで、信号線路10では、図4に示すように、信号線部16の表面及び裏面のy軸方向の中央近傍には、窪みG1,G2が設けられている。これにより、最も応力が集中する部分における信号線部16のz軸方向の厚みが薄くなっている。その結果、信号線部16の表面及び裏面のy軸方向の中央近傍に集中すべき応力は、信号線部16の表面及び裏面のy軸方向の中央近傍の周囲に分散される。その結果、信号線路10をより容易にU字状に曲げることができるようになる。
(変形例)
以下に、第1の変形例に係る信号線路10a及び第2の変形例に係る信号線路10bについて図面を参照しながら説明する。図5は、第1の変形例に係る信号線路10a及び第2の変形例に係る信号線路10bの断面構造図である。
信号線路10では、図4に示すように、グランド導体30,34の両方にスリットS1,S2が設けられている必要はない。具体的には、図5(a)に示す信号線路10aのように、グランド導体30にはスリットS1が設けられ、グランド導体34にはスリットS2が設けられていなくてもよい。この場合,グランド導体34側が内側となる向きの曲げ性に優れる。また、グランド導体30にはスリットS1が設けられておらず、グランド導体34にはスリットS2が設けられていてもよい。以上のような構成を有する信号線路10aによっても、信号線路10と同じ作用効果を奏することができる。
また、信号線路10では、図4に示すように、信号線32は、必ずしも、長方形状の断面構造を有している必要はない。したがって、図5(b)に示す信号線路10bの信号線32'のように、円形の断面構造を有していてもよい。この場合、信号線32'には角部が存在しないので、より効果的に縁端効果を抑制することができる。よって、信号線路10bは、より優れた高周波特性を有するようになる。