JP5657553B2 - インピーダンス測定を実施する際に使用される装置、浮腫の有無または程度を診断する際に使用される装置、及び身体組成分析において使用される装置 - Google Patents

インピーダンス測定を実施する際に使用される装置、浮腫の有無または程度を診断する際に使用される装置、及び身体組成分析において使用される装置 Download PDF

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Description

本発明は、実施されたインピーダンス測定の結果を分析する置に関し、特に、被検者の部位内の体液レベルを決定する置に関する。
本明細書におけるいかなる先行文献(またはそれから得られる情報)あるいは周知の事項への言及も、先行文献(またはそれから得られる情報)あるいは周知の事項が、本明細書が関わる努力傾注分野において、一般常識の一部を形成するという認識または容認あるいは何らかの示唆として解釈されるべきではない。
心機能、身体組成、および浮腫の存在といった他の健康状態指標など、被検者に関する生物学的指標を決定する一つの従来の手法は、生体電気インピーダンスの使用を伴う。このプロセスは典型的に、皮膚表面に配置された一連の電極を用いて、被検者の身体の電気インピーダンスを測定する測定装置を使用することを伴う。身体の表面で測定される電気インピーダンスの変化は、心周期、浮腫などに関連する体液レベルの変化などのパラメータを決定するために使用される。
特許文献1には、浮腫、および、特にリンパ浮腫の存在に関する組織評価の方法および装置が記載されている。当該方法は、一つの低周波電圧における生体電気インピーダンスの測定に基づく。測定値が被検者の二つの解剖学的領域について採取されるとともに、分析されて組織浮腫の兆候を提供する。
特許文献2には被検者の組織浮腫を検出する方法が記載されている。当該方法は、第一および第二の身体部位の測定インピーダンスを判定することを含む。次に、細胞内液に対する細胞外液の比を示す指標値が各身体部位に対して計算され、これらは第一および第二の身体部位に関する指標値に基づいて指標値比を決定するために使用される。指標値比は、例えば、指標値比を基準値または事前に決定された指標値比と比較することによって、組織浮腫の有無または程度を判断するために使用され得る。
国際公開第0079255号パンフレット 国際公開第2005122888号パンフレット
本発明は、従来の構成の一つまたは複数の欠点を実質的に克服、あるいは少なくとも改善することを目的とする。
第一の広範な形態において、本発明は被検者に対してインピーダンス測定を実施する際に使用される装置を提供し、装置は処理システムを備え、処理システムは、
a)三つの周波数の各々において、被検者の少なくとも一つの身体部位に関する第一および第二のインピーダンスパラメータに対して、第一および第二のパラメータ値を決定し、
b)第一および第二のインピーダンスパラメータに関して定義される円を示す連立方程式を、三つの周波数の各々において第一および第二のパラメータ値を用いて解いて、円パラメータ値を決定し、
c)円パラメータ値を用いて、それぞれの周波数において第三のインピーダンスパラメータ値を決定し、かつ
d)第三のインピーダンスパラメータ値を用いて、被検者の身体部位内の相対的な体液レベルを示す指標を決定する。
典型的に、指標は細胞外液レベルを示す。典型的に、指標は浮腫の有無または程度を示す。典型的に、第三のインピーダンスパラメータは、ゼロ周波数におけるインピーダンスを示す。
典型的に、処理システムは、
a)第一および第二の身体部位の各々に対して、それぞれの周波数における第三のインピーダンスパラメータ値を決定し、
b)第三のインピーダンスパラメータ値を用いて比を決定し、かつ
c)比を用いて指標を決定する。
典型的に、第一および第二の身体部位は対側肢の部分である。
典型的に、処理システムは、
a)比を基準値と比較し、かつ
b)比較の結果を用いて指標を決定する。
典型的に、基準値は、
a)所定の閾値、
b)正規母集団から決定される許容範囲、および
c)所定の範囲、
の少なくとも一つを含む。
典型的に、基準値は、被検者に対して事前に決定される指標を含む。
典型的に、事前に決定される指標は、
a)外科手術、および
b)治療
の少なくとも一つを被検者が受ける前に決定される。
典型的に、処理システムは、
a)円パラメータ値を用いて、それぞれの周波数において第四のインピーダンスパラメータ値を決定し、
b)第三および第四のインピーダンスパラメータ値を用いて、細胞内液に対する細胞外液の比を示す指標値を決定し、かつ
c)指標値を用いて指標を決定する。
典型的に、処理システムは、
a)第一および第二の身体部位に対する指標値を決定し、かつ
b)第一および第二の身体部位に対する指標値に基づいて指標値比を決定する。
典型的に、第一および第二の身体部位は、異なる種類の身体部位である。典型的に、第一および第二の身体部位は四肢である。典型的に、第一の身体部位は脚であり、第二の身体部位は腕である。
典型的に、処理システムは、
a)インピーダンスパラメータ値からパラメータRおよびRの値を決定し、かつ
b)次式を用いて指標値(I)を計算する。
ここで、Rはゼロ周波数における抵抗であり、Rは無限周波数における抵抗である。
典型的に、処理システムは、
a)第三のインピーダンスパラメータ値、
b)第一および第二のインピーダンスパラメータ値、
c)円パラメータ、
d)細胞内液に対する細胞外液の比、および
e)被検者内の組織浮腫の有無または程度の少なくとも一つの兆候
の少なくとも一つの兆候を表示する。
典型的に、装置は、
a)複数の周波数の各々において、交流信号を発生する信号発生器と、
b)発生した交流信号を被検者に印加する少なくとも二つの供給電極と、
c)被検者の信号を検出する少なくとも二つの測定電極と、
d)被検者の信号を決定する測定電極に接続されるセンサであって、センサが処理システムに接続され、それによって、処理システムが、測定されたインピーダンスを判定することを可能とするセンサとを備える。
典型的に、装置は複数の電極システムを含み、各電極システムは、
a)センサと、
b)信号発生器とを備える。
典型的に、電極システムは、
a)信号発生器およびセンサが実装された第一の基板と、
b)少なくとも二つの導電性パッドが実装された第二の基板であって、導電性パッドは使用時に信号発生器およびセンサを被検者に結合する第一および第二の電極を形成する第二の基板とを備える。
典型的に、電極システムは、第一の電極と第二の電極との間の容量結合を相殺するための容量相殺回路を備える。典型的に、容量相殺回路は、信号発生器出力部をセンサ入力部に接続する反転増幅器を備える。典型的に、反転増幅器は、容量相殺信号をセンサ入力部に印加し、それによって第一の電極と第二の電極との間の任意の実効容量を相殺する。
典型的に、反転増幅器出力部は、
a)抵抗器、
b)コンデンサ、および
c)インダクタ
の少なくとも一つを介して、センサ入力部に接続される。
典型的に、抵抗器およびコンデンサの少なくとも一方は調節可能であり、それによって、センサ入力部に印加される容量相殺信号を制御することができる。典型的に、電極システムは、センサ入力部における実効入力容量を相殺する入力容量相殺回路を備える。典型的に、電極システムは、センサ出力部をセンサ入力部に接続するフィードバックループを備える。
典型的に、フィードバックループは、
a)抵抗器、
b)コンデンサ、および
c)インダクタ
の少なくとも一つを備える。
典型的に、抵抗器およびコンデンサの少なくとも一方は調節可能であり、それによって、センサ出力部からセンサ入力部への電流フローを制御することができる。典型的に、フィードバックループは、入力容量相殺信号をセンサ入力部に印加して、センサ入力部における任意の実効容量を相殺する。
典型的に、処理システムは、ソフトウェアを格納するメモリと、メモリに格納されたソフトウェアの制御下で動作するプロセッサとを備え、プロセッサは、
a)三つの周波数の各々において、被検者の少なくとも一つの身体部位のインピーダンスに関する第一および第二のインピーダンスパラメータに対して、第一および第二のパラメータ値を決定し、
b)第一および第二のインピーダンスパラメータに関して定義される円を示す連立方程式を、三つの周波数の各々において第一および第二のパラメータ値を用いて解いて、円パラメータ値を決定し、
c)円パラメータ値を用いて、それぞれの周波数において第三のインピーダンスパラメータ値を決定し、かつ
d)第三のインピーダンスパラメータ値を用いて、被検者の身体部位内の相対的な体液レベルを示す指標を決定する。
第二の広範な形態において、本発明は、被検者に対してインピーダンス測定を実施する際に使用される方法を提供し、方法は、処理システムによって、
a)三つの周波数の各々において、被検者の少なくとも一つの身体部位のインピーダンスに関する第一および第二のインピーダンスパラメータに対して、第一および第二のパラメータ値を決定することと、
b)第一および第二のインピーダンスパラメータに関して定義される円を示す連立方程式を、三つの周波数の各々において第一および第二のパラメータ値を用いて解いて、円パラメータ値を決定することと、
c)円パラメータ値を用いて、それぞれの周波数において第三のインピーダンスパラメータ値を決定することと、
d)第三のインピーダンスパラメータ値を用いて、被検者の身体部位内の相対的な体液レベルを示す指標を決定することとを備える。
第三の広範な形態において、本発明は浮腫の有無または程度を診断する際に使用される方法を提供し、方法は、
a)三つの周波数の各々において、被検者の少なくとも一つの身体部位のインピーダンスに関する第一および第二のインピーダンスパラメータに対して、第一および第二のパラメータ値を決定することと、
b)第一および第二のインピーダンスパラメータに関して定義される円を示す連立方程式を、三つの周波数の各々において第一および第二のパラメータ値を用いて解いて、円パラメータ値を決定することと、
c)円パラメータを用いて、それぞれの周波数において第三のインピーダンスパラメータ値を決定することと、
d)第三のインピーダンスパラメータを用いて、被検者の身体部位内の相対的な体液レベルを示す指標を決定することと、
e)指標を用いて、浮腫の有無または程度を決定することとを備える。
典型的に、浮腫はリンパ浮腫である。
第四の広範な形態において、本発明は、身体組成分析において使用される方法を提供し、方法は、
a)三つの周波数の各々において、被検者の少なくとも一つの身体部位のインピーダンスに関する第一および第二のインピーダンスパラメータに対して、第一および第二のパラメータ値を決定することと、
b)第一および第二のインピーダンスパラメータに関して定義される円を示す連立方程式を、三つの周波数の各々において第一および第二のパラメータ値を用いて解いて、円パラメータ値を決定することと、
c)円パラメータ値を用いて、それぞれの周波数において第三のインピーダンスパラメータ値を決定することと、
d)第三のインピーダンスパラメータ値を用いて、個人の身体組成を決定することとを備える。
第五の広範な形態において、本発明は、浮腫の有無または程度を診断する際に使用される装置を提供し、装置は、
a)三つの周波数の各々において、被検者の少なくとも一つの身体部位のインピーダンスに関する第一および第二のインピーダンスパラメータに対して、第一および第二のパラメータ値を決定し、
b)第一および第二のインピーダンスパラメータに関して定義される円を示す連立方程式を、三つの周波数の各々において第一および第二のパラメータ値を用いて解いて、円パラメータ値を決定し、
c)円パラメータ値を用いて、それぞれの周波数において第三のインピーダンスパラメータ値を決定し、
d)第三のインピーダンスパラメータ値を用いて、被検者の身体部位内の相対的な体液レベルを示す指標を決定し、かつ
e)指標を用いて、浮腫の有無または程度を決定する
処理システムを備える。
第六の広範な形態において、本発明は、身体組成分析において使用される装置を提供し、装置は、
a)三つの周波数の各々において、被検者の少なくとも一つの身体部位のインピーダンスに関する第一および第二のインピーダンスパラメータに対して、第一および第二のパラメータ値を決定し、
b)第一および第二のインピーダンスパラメータに関して定義される円を示す連立方程式を、三つの周波数の各々において第一および第二のパラメータ値を用いて解いて、円パラメータ値を決定し、
c)円パラメータ値を用いて、それぞれの周波数において第三のインピーダンスパラメータ値を決定し、かつ
d)第三のインピーダンスパラメータ値を用いて、個人の身体組成を決定する
処理システムを備える。
本発明の広範な形態は、単独であるいは組み合わせて使用されても良く、浮腫、リンパ浮腫、身体組成などを含むが、これらに限定されない様々な健康状態または病気の有無または程度の診断に使用されることができる。
インピーダンス測定装置の一例の概略図。 被検者の部位における体液レベルを決定するためのプロセスの一例のフローチャート。 生物組織の理論的等価回路の一例の回路図。 コール・コール・プロットとして知られるインピーダンスの軌跡の一例を示す図。 被検者における体液レベルを決定するためのプロセスの第二の例のフローチャート。 四肢インピーダンスを測定する際に使用される電極位置の例を示す図。 四肢インピーダンスを測定する際に使用される電極位置の例を示す図。 四肢インピーダンスを測定する際に使用される電極位置の例を示す概略図。 四肢インピーダンスを測定する際に使用される電極位置の例を示す概略図。 図1の処理システムの機能の一例の概略図。 図7の装置を用いて、インピーダンス測定を実施するためのプロセスの一例のフローチャート。 図7の装置を用いて、インピーダンス測定を実施するためのプロセスの一例のフローチャート。 図7の装置を用いて、インピーダンス測定を実施するためのプロセスの一例のフローチャート。 信号発生器およびセンサを組み込む電極システムの一例の概略図。 交差電極容量結合を示す概略図。 交差電極容量相殺回路の一例の概略図。 入力容量相殺回路の一例の概略図。 図9Aの測定装置と電極システムとの間のリード接続の一例の概略図。 リード配置の一例の概略図。 平衡化中に使用される電極構成の一例の概略図。 平衡化中に使用される電極構成の一例の概略図。 図12Aおよび12Bの電極配置に対する実効電気モデルの概略図。
図面を参照して、本発明の例を説明する。
図1を参照して、被検者の生体電気インピーダンスの分析を実施するために適切な装置の一例を説明する。
図に示されるように、装置は、それぞれの第一のリード123A、123Bを介して一つまたは複数の信号発生器117A、117Bに接続され、それぞれの第二のリード125A、125Bを介して一つまたは複数のセンサ118A、118Bに接続される処理システム102を含む測定装置100を含む。接続はマルチプレクサなどのスイッチング素子を介してもよいが、これは必須ではない。
使用時に、信号発生器117A、117Bは二つの第一の電極113A、113Bに接続され、ひいては、これらの電極は信号を被検者Sに印加しうる駆動電極として作用し、一方で、一つまたは複数のセンサ118A、118Bは第二の電極115A、115Bに接続され、これらの電極は被検者Sの信号を感知しうる感知電極として作用する。
信号発生器117A、117Bおよびセンサ118A、118Bは、処理システム102と電極113A、113B、115A、115Bとの間の任意の位置に配置されて良く、測定装置100内に統合されても良い。しかしながら、一例では、信号発生器117A、117Bおよびセンサ118A、118Bは、電極システム内に統合されるか、信号発生器117A、117Bおよびセンサ118A、118Bを処理システム102に接続するリード123A、123B、125A、125Bによって被検者Sの近傍に配置される別のユニット内に統合される。
前述のシステムは、標準的な4端子インピーダンス測定を実施するために用いられる2チャネル装置であり、各チャネルは、それぞれ添え字A、Bで示されている。2チャネル装置の使用は、以下でさらに詳しく説明するように、例示のために過ぎない。
測定装置100を、外部のデータベースまたはコンピュータシステム、バーコードスキャナなど、一つまたは複数の周辺装置104に、有線、無線、またはネットワーク接続によって、接続するために、任意の外部インターフェース103が用いられうる。また、処理システム102は典型的に、I/Oデバイス105を含み、I/Oデバイス105はタッチスクリーン、キーパッド、およびディスプレイなどの任意の適当な形態のものであってよい。
実際には、処理システム102は、ソフトウェアを格納するためのメモリ又は他の記憶装置を典型的に含む。ソフトウェアは、以下でさらに詳しく説明するように、インピーダンス測定を実施したり、解釈したりするために必要なプロセスを、処理システム内のプロセッサに実行させる命令を与える。
使用時に、処理システム102は、第一の電極113A、113Bを介して被検者Sに印加されうる適切な波形の電圧または電流信号などの、一つまたは複数の交流信号を信号発生器117A、117Bに発生させる制御信号を発生するように構成される。次に、センサ118A、118Bは、第二の電極115A、115Bを用いて被検者Sの電圧または被検者Sを通過する電流を測定して、適切な信号を処理システム102に伝達する。
したがって、処理システム102は、適切な制御信号を発生するとともに、かつ測定された信号を少なくとも部分的に解釈して、被検者の生体電気インピーダンスを判定するために適切であり、任意で、浮腫、リンパ浮腫などの疾患の有無または程度、身体組成の測定値、心機能などの他の情報を判定するために適切である任意の形態であってよい。
したがって、処理システム102は、ラップトップ、デスクトップ、PDA、スマートフォンなどの適切にプログラムされたコンピュータシステムであり得る。代替的には、処理システム102は、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)、またはプログラムされたコンピュータシステムおよび専用ハードウェアなどの組合せなどの専用ハードウェアから構成されてもよい。
使用時には、第一の電極113A、113Bは、一つまたは複数の信号が被検者Sに導入されうるように被検者上に配置される。第一の電極の位置は、被検者Sの検査部位によって決まる。そのため、例えば、第一の電極113A、113Bは、心機能の分析のために胸腔のインピーダンスを測定できるように被検者Sの胸部および頸部に配置され得る。代替的には、電極を被検者の手首または足首に配置することによって、浮腫分析などにおいて使用される四肢および全身の少なくとも一方のインピーダンス、ひいては、体液レベルを測定することができる。
電極が配置されると、一つまたは複数の交流信号が、第一のリード123A、123Bおよび第一の電極113A、113Bを介して被検者Sに印加される。交流信号の特質は、測定装置の特質および次に実施される分析に応じて変化する。
典型的には、システムは多周波数生体インピーダンス分析(MFBIA:Multiple Frequency Bioimpedance Analysis)を用い、この分析では、各々がそれぞれの周波数を有する複数の信号が被検者Sに導入され、測定されたインピーダンスは体液レベルの評価に使用される。
一例において、印加される信号は電圧発生器によって生成され、電圧発生器は交流電圧を被検者Sに印加するが、代替的に交流電流信号が印加されてもよい。一例では、電圧源が典型的に対称的に配置され、信号発生器117A、117Bの各々は独立に制御可能であり、被検者の信号電圧を変化させ得る。
第二の電極115Aと115Bとの間において、電圧差および電流の少なくとも一方が測定される。一例では、電圧は差動で測定される。即ち、各センサ118A、118Bは、各第二の電極115A、115Bにおける電圧を測定するために使用され、従って、シングルエンド・システムに比べて電圧の半分を測定するだけでよい。
取得される信号および測定される信号は、ECG(心電図)、印加された信号によって発生する電圧、および環境電磁妨害によって生じるその他の信号などの、人体によって発生する電圧の重畳となる。従って、不要な成分を除去するためにフィルタ処理や、その他の適切な分析が用いられてもよい。
取得された信号は、次に、各周波数において、抵抗およびリアクタンス値などの第一および第二のパラメータ値を判定するために使用される。一例では、この事項は、各周波数において振幅および位相信号を導出するためのアルゴリズムを用いて実現され、これらの値は、さらに抵抗およびリアクタンス値を導出するために使用される。
前述のプロセスの一部として、第二の電極115Aと115Bとの間の距離が測定されて、記録されてもよい。同様に、身長、体重、年令、性別、健康状態、何らかの治療介入、およびこの治療介入が行われた日時など、被検者に関する他のパラメータが記録されてもよい。また、現在の投薬など、他の情報が記録されてもよい。この情報は、次に、浮腫の有無または程度の判定を可能にしたり、身体組成の評価を可能にしたりするように、インピーダンス測定値のさらなる分析を実施する際に使用され得る。
ここで、図2を参照して、体液レベル指標を判定するためのプロセッサの一例を説明する。
この例では、第一の段階は、被検者の少なくとも一つの身体部位に対して実施されるインピーダンス測定に関する。これは典型的に、ステップ200において被検者Sに対し、既知の周波数を有する電気信号を信号発生器117A、117Bが印加するように、信号発生器をプロセッサで制御することによって実現され、被検者の電気信号および被検者に流れる電気信号の少なくとも一方はセンサ118A、118Bを用いてステップ210において測定される。被検者に流れる電流フローと被検者の電圧との両方の兆候(インディケーション)がインピーダンスを計算するために必要であるが、これらの一方は被検者に印加される信号に関する情報に基づいて導出され得るため、これらの両方を測定する必要はない。
インピーダンス測定は、少なくとも三つの周波数で実施される。信号の兆候は、ステップ220において、各周波数における第一および第二のインピーダンスパラメータ値を判定するためにプロセッサによって使用される。インピーダンスパラメータ値の特質は、好ましい実施例に応じて変化する。従って、例えば、インピーダンスパラメータ値は、測定された信号に関する大きさおよび位相情報を含み得る。しかし、一例では、インピーダンスパラメータ値は、大きさおよび位相信号から導出されるような抵抗およびリアクタンスを示す。
ステップ230において、連立方程式が、三つの周波数の各々において決定された第一および第二のインピーダンスパラメータ値を用いてプロセッサによって解かれ、それによって、円パラメータの決定が可能となる。円パラメータは、パラメータ値によって定義される空間内の円の弧の少なくとも一部に対応する軌跡を定義するために使用される。従って、一例では、連立方程式は、以下でさらに詳しく説明するように、リアクタンス/抵抗空間で示される円形軌跡を示し、該円形軌跡は一般に、コールプロット(Cole plot)またはヴェッセルプロット(Wessel plot)とも呼ばれる。
ステップ240において、プロセッサは、円パラメータから理論的インピーダンス値を決定する。いかなる理論的インピーダンス値が決定されてもよいが、一例では、これは低周波インピーダンスを示すインピーダンス値である。典型的に、インピーダンス値は、500kHz未満、典型的には50kHz未満、好ましくは、しばしばRと呼ばれる0kHzの印加信号に対して得られるインピーダンスを示す。
ステップ250において、理論的インピーダンス値は、体液レベルを示す指標を決定する際にプロセッサによって使用される。一例では、低周波におけるインピーダンスは、被検者内の細胞外液(ECF:Extracellular Fluid)の量に正比例し、従って、理論的インピーダンス値は細胞外液レベルの指標として単純に直接使用され得る。しかしながら、このステップは、他の身体部位からのインピーダンス値などの情報と組み合わせられてもよく、そうすることで基準身体部位と比較して身体部位内の相対細胞外液レベルを導出することができる。
さらに、以下でさらに詳しく説明するように、細胞内液と細胞外液との比を示す指数を決定することができる無限周波数における抵抗などの他の情報が利用されてもよい。
図3は、生物組織の電気的挙動を効果的にモデル化する等価回路の一例である。等価回路は、細胞外液および細胞内液(ICF:Intracellular Fluid)を流れる電流フローを示す二つの分岐を有する。生体インピーダンスの細胞外成分はRで示され、細胞内成分はRで示される。細胞内経路の細胞膜の容量はCで示される。
交流電流(AC)のインピーダンスの細胞外および細胞内の成分の相対的大きさは、周波数に依存する。ゼロ周波数では、コンデンサは完全な絶縁体として作用し、すべての電流は細胞外液を流れ、ひいては、ゼロ周波数における抵抗RはRに等しい。無限周波数では、コンデンサは完全な導体として作用し、電流は並列抵抗の組合せ内を流れる。無限周波数における抵抗は、R=R/(R+R)で与えられる。
従って、角周波数ωにおける図3の等価回路のインピーダンスは、次式で与えられる。

ここで、ω=2π*周波数、R=無限大印加周波数におけるインピーダンス=R/(R+R)、R=ゼロ印加周波数におけるインピーダンス=R、τは容量性回路の時定数である。
しかしながら、上式は細胞膜が不完全なコンデンサであるという事実を考慮に入れていない理想的な状況を示している。この事実を考慮に入れると、次の修正されたモデルが得られる。
ここで、αは、0〜1の値を有し、理想モデルとの実際のシステムのずれの指標として考えることができる。
インピーダンス応答は、「ヴェッセル」プロット(コールモデルまたはコール・コール・プロットとも呼ばれる)で示され、これはインピーダンスZに集約される抵抗RおよびリアクタンスXのベクトル和のプロットである。ヴェッセルプロットの一例が図4に示されている。
ヴェッセルプロットは生体インピーダンス分光法(BIS:Bioimpedance Spectroscopy)装置でよく使用されており、この分光法は4kHz〜1000kHzなどの周波数範囲にわたり、この範囲内の256またはそれ以上の異なる周波数を用いて複数の測定を実施する。測定されたインピーダンスデータは、図4に示されるプロットに類似したコールプロットを生成するために使用される。次に、測定データを理論的な半円軌跡に適合させるために回帰手法が用いられ、RおよびRの値が得られる。
回帰分析は、計算コストが高く、計算を実施するために多大な処理能力を備えた装置を必要とし、ひいては装置による電力消費が大きくなり、より大きなバッテリが必要となり、装置の重量とサイズが増大する。
さらなる問題は、回帰分析を実施するために多数のデータ点が必要であり、測定は典型的に各周波数において順番に実施されるので、測定プロセスは、例えば数秒といった多大な時間を要する。この事実は、長期間にわたって残る不快感を被検者にもたらすため、望ましくない。さらに、被検者は測定中に動くことがあり、それによって、例えば、被検者と環境との間、リードと電極との間の容量性結合および誘導性結合の少なくとも一方の変化により、測定されるインピーダンス値に影響が及ぶ可能性がある。この事実は測定値に誤差をもたらし得る。
円は次式によって示され得る。
ここで、iおよびjは円の中心であり、rは半径である。
さらに、円は図4に示されるように、軌跡上に位置する三つの点(x1〜3、y1〜3)の座標によって一意的に定義され得る。従って、次式(4)で示されるように、これらの点に適合する円を示す三つの軌跡の各々に対して一つずつの、三つの連立方程式が定義される。
上記の三つの連立方程式を解くと、半径(r)と円(i、j)の中心の座標とを計算することができる。これらのデータから、RとRが幾何学の第一原理に従って容易に計算される。
従って、この手法は、回帰分析を実施する場合よりも低い計算コストで、Rの値と任意選択でRとを導くことができる。さらに、この手法はデータ点の数が少なくて済む。このため、BISおよび回帰分析を用いる場合よりも速く、かつより簡単なプロセッサでRの値を決定することができ、ひいては、Rの値を決定するために必要な装置を、より安価に製造することを可能にする。
連立方程式の使用に関して考えられる一つの欠点は、インピーダンス測定値の一つが何らかの理由で不正確である場合、この事実がRの計算値に大きなずれをもたらし得ることにある。従って、一例では、インピーダンス測定が三つより多くの周波数で実施され、三つの周波数におけるインピーダンス測定のあらゆる可能な組合せに対して円パラメータが計算される。平均値が、コールモデルに対するデータの適合度の尺度として標準偏差とともに提供される。測定値の一つが不正確である場合、平均値からの最大量のずれを示す測定値、あるいは平均値から所定の標準偏差より大きく異なる測定値など、一つまたは複数の異常測定値を除外することによって平均値を再計算して、より正確な値を提供することができる。
このプロセスは、四つまたは五つの測定値など、さらなる測定値を使用するが、これはBIS測定プロトコルを用いて典型的に実施される256またはそれ以上の周波数より依然としてかなり少なく、測定プロセスをより迅速に実施することができる。
ここで、図5を参照して、片側性四肢浮腫を診断する例で使用され得る体液レベル指標を決定するプロセスの例をさらに詳しく説明する。
この例では、ステップ500において、被検者の詳細が任意で決定され、処理システム102に提供される。被検者の詳細は、典型的に、被検者の年令、体重、身長、性別、民族など被検者に関連する情報に加えて、肢優位性、何らかの医学的介入の詳細などの情報を含む。被検者の詳細は、以下でより詳しく説明するように、適切な基準正規母集団を選択する際に使用され得る。
被検者の詳細は、I/Oデバイス105などの適切な入力手段によって、処理システム102に提供されても良い。このようにして、被検者の測定が実施されるたびに、この情報は測定装置100に入力されることができる。しかし、より典型的には、情報は一度入力されて、適切なデータベースなどに格納され、データベースなどは外部インターフェース103を介して周辺機器104として接続されても良い。データベースは、被検者に対して記録された過去の浮腫指標、ベースライン測定値、またはインピーダンス測定値に関する情報とともに、被検者の詳細を示す被検者データを含み得る。
ステップ510において、患肢、すなわち、「危険性のある」四肢が判定される。特定の四肢が危険に曝されているか不明確である場合、優位四肢が代わりに患肢として示されうる。なぜならこの四肢は、非優位肢とは異なるECFレベルを有する傾向があるためである。四肢は、望まれる実施事項に応じて、多くの方法のいずれか一つで指定され得る。従って、例えば、患肢は、I/Oデバイス105などの適切な入力手段を使用して、指示されることができる。代替的には、この情報は、患肢の兆候または実施される何らかの医学的介入の詳細を含み、ひいては患肢を示唆する被検者の詳細から直接導出され得る。
さらに、被検者が両側性浮腫(bilateral oedema)を有する場合、または両側性浮腫を有することが疑われる場合、脚などの別の身体部位が非患肢として用いられてもよく、この事実は異なる基準が選択され得ることを示している。
ステップ520において、オペレータは、インピーダンス測定を実施するために電極113A、113B、115A、115Bを被検者S上に配置して、リード123A、123B、125A、125Bを接続する。一般的な配置は、手において、図6Aに示すように、指関節の付け根と、手首の骨性隆起の間とに、また、足において、図6Bに示すように、足指の付け根と足首の前方とに電極を配置する。図6Cおよび6Dに示される構成は、右腕631および右脚633をそれぞれ測定することができ、同等の構成によって、左脚および左腕のインピーダンスが測定できることが理解されよう。
この構成は、等電位の理論を使用して、電極位置によってインピーダンス測定に対する再現性のある結果を提供することができる。例えば、図6Cにおいて、駆動電極113A、113Bの間に電流が導入される場合、腕全体が等電位であるため、電極115Bは左腕632に沿って任意の位置に配置されることができる。
この事実は、オペレータによる電極の不適切な配置に起因する測定値の変動が大幅に減少するため有利である。さらに、身体部位の測定を実施するために必要な電極の数が大幅に減少するだけでなく、図示したように限られた接続部を使用して四肢の各々を別々に測定することが可能となる。しかし、任意の適当な電極およびリードの配置が用いられても良い。
この例では、ステップ530において、患肢および対側肢のインピーダンスが、多くの周波数にて測定される。この測定は、一つまたは複数の電流信号を被検者に印加し、かつ次に、被検者Sに誘導された対応する電圧を測定することによって実現される。実際には、信号発生器117A、117Bおよびセンサ118A、118Bは、処理システム102へ、印加信号から生じる電流フローを示す信号と、測定電圧信号とを戻し、それによって、インピーダンスパラメータ値が決定されることができる。
次に、四肢インピーダンス比IRが決定される。インピーダンス比は、ゼロ周波数、特性周波数、または無限周波数におけるインピーダンス(R、R、R)の値などのインピーダンスパラメータ値に基づく。従って、ステップ540において、これらの値は、上述のように、連立方程式を用いて被検者のインピーダンス応答に基づいて導出することができる。
インピーダンス比が体液レベルの全体的な変化の主要な原因となるため、インピーダンス比を使用することによって、一般に、各四肢に対する測定値の増減が比較的一定になり、全体的な体液レベルの変化が誤って一つの四肢のみの体液レベル変化と解釈される可能性が減少するため、インピーダンス比を用いることは望ましい。
浮腫は、患肢における細胞外液レベルの増加を引き起こす。インピーダンスパラメータ値Rは、一般に細胞外液レベルを示すため、式(5)で示されるように、ステップ550において、浮腫の有無または程度を示す体液レベル指標を導出するために使用され得る。
ここで、IRは体液レベルを示すインピーダンス比であり、Rulはゼロ周波数における非患肢のインピーダンスであり、Ralはゼロ周波数における患肢のインピーダンスである。
しかし、他のインピーダンスパラメータが使用されても良い。例えば、インピーダンス比は、それぞれの四肢に対するECFおよびICFレベルの比に基づいて、指標値を計算することによって決定でき、インピーダンス比は非患肢に対する患肢の指標値の比に基づいて決定される。指標値(I)は、式(6)を用いて計算され得る。
この例では、体液レベル指標は次式で与えられる。
ステップ560において、基準値が選択される。基準値は典型的に、検査される被検者に関する(浮腫を患っていない被検者の)正規母集団に対して行われる等価測定から導出される。従って、正規母集団は典型的に、実施される医学的介入、民族、性別、身長、体重、四肢優位性、患肢などの要因を考慮に入れて、選択される。
従って、被検者が優位腕に片側性リンパ浮腫を有しており、かつ女性である場合、正規母集団データベースから引き出される正規化データは、正規母集団データベースに存在する女性被検者からの優位腕インピーダンス比測定値から計算される。被検者が両腕浮腫を有する場合、典型的に、非患肢は被検者の脚の一方であると見なされ、正規母集団の腕と脚との比に基づく基準値が用いられる。
従って、この段階で処理システム102は典型的に、データベースなどに格納された基準母集団にアクセスする。これは、被検者の詳細を用いて処理システム102によって自動的に実施されることができる。そのため、例えば、データベースは、特定の一組の被検者の詳細が与えられる正規母集団を指定する参照テーブルを含んでいてもよい。代替的には、選択は、以前の手順において資格を有する医療オペレータによって行われた選択に基づいて発見的アルゴリズムを用いて導出される所定のルールに従って実現されてもよい。あるいは、選択は、望まれる実施事項に応じて、オペレータの管理の下で実現されてもよい。
オペレータはローカル機器に格納された独自の基準値を有していても良い。しかし、適当な基準値が得られない場合に、例えば、適切なサーバ構成によって、中央格納部から基準値を抽出するように処理システム102が使用され得る。一例では、これは使用回数に応じて実施されても良い。
代替的には、適切な基準値が得られない場合に、所定の標準的基準値が用いられても良い。
一例では、基準値は、健康人母集団で確立されたインピーダンス比の正常範囲に対するインピーダンス比の比較に基づく。インピーダンス比が平均比から3標準偏差より離れた患者は、リンパ浮腫を有するものと定義される。
肢優位性によって、インピーダンス比に対するわずかな周知の影響が引き起こされるため、例えば、女性の腕について、二組の正規インピーダンス比が存在する。優位腕が危険性のある腕と定義される一組と、優位腕でない腕が危険性のある腕と定義される一組である。女性被検者に対する母集団平均および母集団標準偏差の例が、表1に示されている。
一例では、基準値は、平均インピーダンス比と、正規母集団に関する平均インピーダンス比からのインピーダンス比値3標準偏差とに基づいており、値の例が以下に示される。しかし、異なる値が適切に使用されることができ、これらの値は説明のためにすぎない。
肢優位性、性別などに基づく種々の基準値の使用に代わる方法として、さらなる変形例は、肢優位性によって生じる体液レベルの差を考慮に入れるように補正係数を用いて、インピーダンス比を修正するものであり、即ち異なる四肢のインピーダンスを測定する必要があるものである。この場合、インピーダンス比に基づく体液レベル指標が計算されて、次に補正係数を用いて修正され、修正された体液レベル指標がデフォルトの基準値と比較される。補正係数は、リンパ浮腫により影響を受けていない被検者を調査することによって設定されることができ、典型的には、母集団の平均値に基づく。
使用される可能性のある特定の各身体部位の組合せに対するそれぞれの補正係数を設定することによって、共通の基準値を体液レベルのさらなる分析の実施のために利用できる。しかし、代替的には、異なる身体部位または四肢の内部の体液レベルの差は、測定される特定の四肢または身体部位の組合せに対して各基準値を選択することによって、明らかにされ得る。
ステップ570において、インピーダンス比の形態、または修正されたインピーダンス比の形態の体液レベル指標は、基準値に基づく閾値と比較されることができ、比較結果の情報がステップ580において表示される。一例では、これは、インピーダンス比などの体液レベル指標を、基準値に基づく閾値とともに表示することによって実現されて、目視比較することができる。代替的には、比較結果は、浮腫の有無または程度を評価する際に使用される浮腫指標を決定するために使用され得る。
一例では、浮腫指標は、基準母集団、特に基準値の平均値および標準偏差を用いてインピーダンス比をスケーリングすることによって決定される。これは、浮腫の存在が、記憶可能な値によって示されるように実施され得る。これを実現するために、一例では、インピーダンス比の浮腫指標値への変換は、次式によって与えられる。
ここで、L−Dexは浮腫指標であり、IRはインピーダンス比であり、μは基準母集団の平均インピーダンス比であり、3σは母集団平均インピーダンス比値からの3標準偏差であるインピーダンス比値であり、sfはスケーリング係数である。
スケーリング係数は閾値が記憶可能な値に対応するように選択され、特に、スケーリング係数は典型的に整数値であり、より典型的には10の倍数である。従って、一例では、閾値が「10」で生じるように、スケーリング係数は、「10」の値に設定される。その結果、「10」を超える浮腫指標値は浮腫を示し、「10」未満の値は浮腫が存在しないことを示すように使用される。
例えば、危険性のある腕が優位腕である被検者Sが1.207のインピーダンス比を有する場合、被検者のインピーダンス比は適当な正規母集団を用いてスケーリングされる。この例では、正規母集団は1.037の平均インピーダンス比値と、1.139の3標準偏差値とを有する。この例は、次の浮腫指標を得る。
体液レベル指標および任意選択としての浮腫指標は、測定が実施された日時、測定装置100のオペレータの詳細など、任意の関連情報とともに記憶され得る。これによって、測定された浮腫指標を、後で検索して、浮腫の発症および進行の少なくとも一方を追跡する際に利用することができ、治療の有効性や必要性を評価することができる。
情報の表示は、例えばI/Oデバイス105を使用して適切なディスプレイに表示を提供したり、あるいは適切なプリンタを用いてハードコピー形式で表示を提供たりする等の様々な方法で実現されることができるが、任意の適切な手法が用いられ得る。
前述の手法の連立方程式法とBISの回帰分析との比較が、被検者のグループを用いて実施され、その特性が以下の表2に示されている。
ここで、BMIは肥満度指数であり、除脂肪体重は二重X線吸収測定法(DXA)によって評価される。
全身、手首−足首、インピーダンスは、図6Cおよび6Dに示される4極電極構成を用いて測定され、被検者はDXAスキャン(20分)の間、うつ伏せになっていた。インピーダンス測定データは、4〜1024kHzの範囲内の496個の離散的な対数間隔の周波数で収集された。インピーダンス(Ω)および位相(°)が記録された。
得られたリアクタンスおよび抵抗の値は、コールモデルに適合され、インピーダンスパラメータ値R、Rの推定値は、リアクタンスおよび抵抗を半円軌跡に適合させることによって決定された。適合された曲線の半径の推定値の百分率標準誤差が、適合度パラメータとして使用された。
さらに、四つの選択された周波数に対する抵抗およびリアクタンスの値が決定された。
この例では、このプロセスが、それぞれ、MFBIA−1およびMFBIA−2として指定された二つの異なる組の四つの周波数で実施された。選択された周波数は、MFBIA−1:14.2kHz、56.9kHz、187.5kHz、および679.1kHz、MFBIA−2:25kHz、50kHz、100kHz、および200kHzであった。
上記四つの周波数の各々は、コールモデルによって予測されるように、半円軌跡に適合されて、前述の連立方程式法が実施された。円を定義するために円周上の三点のみが必要であるため、RおよびRの予測を行うために、利用可能な四対のデータから三つのリアクタンス−抵抗軌跡の可能なすべての組合せが使用された。
適合度指数として、平均値とそれに関連する標準誤差とが決定された。
各BMI帯における被検者のデータの平均値および標準偏差が計算された。RおよびRの異なる計算方法が、一致相関分析によって比較され、個人の値が、対応あるt検定とBlandおよびAltmanの許容範囲法とによって比較された。
表2に示す適合度の測定値によって示されるように、導出の方法に関係なく、すべてのインピーダンスデータが、5%未満の百分率標準誤差でコールモデルによく適合した。適合度は、パラメータが従来のBIS解析によって推定されたときの三つのBMIグループのすべてと類似していた。両方のMFBIA法では、反復測定の小さい標準誤差で示されるように、RをRよりも高い精度で推定したが、方法MFBIA−1では、被検者のBMIが増加するにつれて精度が低下し、一般に方法MFBIA−2で観察される精度より悪かった。対照的に、Rは、方法MFBIA−2より方法MFBIA−1によって、高い精度で推定された。
得られたインピーダンスパラメータ値の比較を表4に示す。
上記のデータは、RおよびRを推定するための三つの方法のすべてが、高度に相関していることを示している(r_0.91;表4)。
MFBIA測定に基づく二つの方法は、一般に、従来のBISと比べて、RおよびRに対してわずかに高い値を推定したが、このバイアスは小さく、平均2%であり、両方法の大きさは類似していた。
およびRの絶対値は、BMIが増加するにつれて減少し、一般に、MFBIA法とBIS法との相関はBMIの増加とともに、特にRに対してわずかに低下した。BISとの相関は、Rに対するMFBIA−2と比べて、MFBIA−1ではわずかに低かったが、逆のパターンである、MFBIA−2とBISとの高い相関がRに対して観察された。
従って、最適化された周波数法MFBIA−1は、対応するBIS値により近いRを推定したが、方法MFBIA−2は、BISと比べてRの推定において優れていた。それに応じて、BISとMFBIAとの間のRに対する許容範囲は、方法MFBIA−2の場合よりも方法MFBIA−1の場合の方がわずかに大きく、一方、Rに対しては、許容範囲は方法MFBIA−2の場合の方が大きかった。一般に、Rは、基準値としてのBIS値との一致に基づいて、Rより正確に推定された。
従って、この事実は、連立方程式を用いる前述の方法が、より広範なBIS測定プロトコルの適正な代替を提供するとともに、この方法がより簡単なデバイスを用いて短い測定時間で実現され得ることを実証している。
また、測定周波数の適切な選択肢を選択することによって、BIS測定との結果の一致度を改善することができることが明らかである。特に、前述の例では、Rを計算することが望まれるとき、より高い周波数を避けることが望ましいことが明らかである。その一つの理由は、使用される周波数範囲が、計算されるインピーダンスパラメータ値の周波数をより正確に示しているからである。もう一つの要因は、高い周波数の測定ではノイズによる誤差を生じやすいことにある。
一例では、MFBIAおよび連立方程式を用いてRを計算する際に使用される好ましい周波数は、10〜500kHzの範囲内にあり、これにより、多くの誤差を生じやすい高い周波数を回避している。別の例では、使用される四つの周波数が、25kHz〜200kHzの範囲内にある。
誤差の影響を低減させるための手段を講じることによって、さらなる改善が実現され得る。
一例では、このことは、前述のインピーダンス比を生成することによって実現される。インピーダンス比は各四肢に対して測定されるインピーダンスパラメータに基づく。従って、計算されたインピーダンスパラメータに、用いられる計算に起因する誤差がある場合、これは各測定に対して類似した傾向を示すであろう。従って、例えば、計算されたインピーダンスパラメータRは、例えばBISを用いて決定されたより正確な値に比べて、わずかに増加し得る。しかし、各四肢、または四肢部位に対して増加がある場合、この誤差の相対的な大きさはインピーダンス比を計算すると小さくなり、それにより、不正確さがかなり克服される。
この点について、インピーダンス測定の精度は、多くの外部要因に左右され得る。これらの外部要因は、例えば、被検者と周囲環境との間、リードと被検者との間、電極間などの容量結合の影響を含み、これら影響はリード構造、リード構成、被検者の姿勢などの要因に基づいて変化する。さらに、典型的に、電極表面と皮膚との電気的接続のインピーダンス(「電極インピーダンス」として知られる)に変動があり、これは皮膚水分レベル、メラトニンレベルなどの要因に依存し得る。さらなる誤差原因は、リード内の種々の導電体間、またはリード自体の間の誘導結合の存在にある。
このような外部要因は、測定プロセスおよびその後の分析を不正確にし、従って、測定プロセスへの外部要因の影響を抑制できることが望ましい。
発生し得る不正確性の一つの形態は、「不平衡」と呼ばれる状況の非対称である被検者に現れる電圧によって生じる。このような状況は、被検者の身体中心に大きな信号電圧をもたらし、ひいては、被検者の胴部と、被検者が配置される支持面との間の寄生容量から発生する迷走電流を引き起こす。
被検者に現れる電圧が、被検者の実効中心に関して対称にならない不平衡の存在は、「コモンモード」信号を引き起こし、コモンモード信号は、事実上、被検者のインピーダンスと関係のない被検者Sにおける信号の大きさである。
従って、この影響の抑制を補助するために、被検者の身体中心に対して対称な電圧を生じさせる信号を被検者Sに印加することが望ましい。その結果、測定装置の基準電圧に等しい被検者S内の基準電圧は、電極配置に関連して検討されるように、被検者の実効身体中心の近傍にある。測定装置は被検者Sの身体中心が可能な限りグランドに近づき、それによって、被検者の胴部に現れる信号の大きさ全体が最小化されて、迷走電流が最小化される。
一例では、感知電極に関する対称な電圧は、駆動電極113A、113Bの各々に対称電圧を印加する差動双方向電圧駆動方式などの対称電圧源を使用することによって実現されることができる。しかしながら、二つの駆動電極113A、113Bに対する接触インピーダンスが同等でない場合、又は実際の環境で典型的である被検者Sのインピーダンスが被検者Sの丈に沿って変動する場合は、この方法は、必ずしも有効ではない。
一例では、装置は、種々の電極インピーダンスを補償して、被検者Sに現れる電圧の所望の対称性を復元するために、駆動電極113A、113Bの各々に印加される差動電圧駆動信号を調節することによって、この問題を克服する。このプロセスは、本明細書では平衡化と呼ばれ、一例では、コモンモード信号の大きさを抑制するように補助し、ひいては、被検者に関連する寄生容量によって生じる電流損失を低減させる。
不平衡の程度、ひいては、必要とされる平衡化の量は、感知電極115A、115Bの信号を監視し、次に、これらの信号を用いて駆動電極113A、113Bを介して被験者に印加される信号を制御することによって決定され得る。特に、不平衡の程度は、感知電極115A、115Bで検出された電圧から付加的な電圧を判定することによって計算されることができる。
プロセスの一例では、感知電極115A、115Bの各々で感知される電圧は、第一の電圧を計算するために使用され、計算は測定電圧を組み合わせるかまたは加えることによって実現される。それゆえ、第一の電圧は、差動増幅器を用いて決定され得る付加電圧(一般にコモンモード電圧または信号と呼ばれる)であり得る。
この点について、差動増幅器は典型的に二つの感知電圧信号V、Vを組み合わせて第二の電圧を決定するために使用され、第二の電圧は、一例では、被検者Sの関心点に現れる電圧差V−Vである。電圧差は、インピーダンス値を導出するために、被検者に流れる電流フローの測定値とともに使用される。しかしながら、差動増幅器は典型的に、「コモンモード」信号(V+V)/2を出力し、(V+V)/2がコモンモード信号の大きさである。
差動増幅器はコモンモード除去能力を含むが、これは一般に効果が限られており、典型的に比較的高い周波数において有効性が低下し、ひいては、大きいコモンモード信号は、差動信号に重畳された誤差信号を生成する。
ここで、処理システム102によって実施される機能の具体例について図7を参照して説明する。この例では、処理システム102は、メモリに格納されたソフトウェアを介して、適切なソフトウェア制御を用いて機能を実施するが、任意の適切な手段が用いられても良い。
この例では、処理システム102は、タイミングおよび制御モジュール700、インターフェースモジュール701、分析モジュール702、正弦波参照テーブル(LUT)703、704、電流モジュール705、および電圧モジュール706を含む。
以下でさらに詳しく説明するように、処理システム102をセンサ118A、118Bおよび信号発生器117A、117Bに結合するために、複数のアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)727A、727B、728A、728Bと、デジタル・アナログ・コンバータ(DAC)729A、729Bとが備えられる。
使用時に、処理システム102は、被検者Sに印加される信号の周波数および振幅を決定する。タイミングおよび制御モジュール700は、典型的に、インターフェースモジュール701を介して入力部105から受け取られる入力コマンドに従って、この情報を受け取り、この情報を使用して、LUT 703、704にアクセスし、LUT 703、704は指定された周波数と振幅に基づいてデジタル正弦波信号を生成する。デジタル制御信号は、DAC 729A、729Bに伝達されて、電圧駆動信号VDA、VDBを示すアナログ制御信号が生成される。
測定されたアナログ電圧および電流信号VSA、VSB、ISA、ISBは、ADC 727、728によってデジタル化されて、電流および電圧モジュール705、706に供給される。これによって、処理システム102は、二つの電流信号ISA、ISBを用いて被検者に流れる全電流フローを電流モジュール705に決定させることによって、電流フローを決定することができ、この電流フローの値は分析モジュール702に提供される。典型的に差動電圧増幅器等の形態の電圧モジュール706は、差動電圧を決定するように作用し、差動電圧も分析モジュール702に伝達され、分析モジュールは電流および差動電圧信号を用いてインピーダンス値を決定することができる。
上記に加えて、電圧モジュール706は、タイミングおよび制御モジュール700に戻されるコモンモード信号を決定する。これによって、タイミングおよび制御モジュール700は、被検者Sで感知された電圧の任意の不平衡を判定することができ、不平衡は、前述のように、電極に対して基準電圧が被検者S内の中心に位置していないことを示す。
不平衡の程度が許容されない場合、以下で説明するように、タイミングおよび制御モジュール700は電圧駆動信号VDA、VDBを示す正弦波の相対振幅および位相の少なくとも一方を調節することができ、新たな差動電圧、ひいては、任意の不平衡の兆候を判定することができる。
不平衡が許容されることが判定されると、タイミングおよび制御モジュール700は、この結果を分析モジュール702に提供し、これによって被検者に流れる電流フローと差動電圧信号とに基づいて、測定されたインピーダンスの比および位相差を決定するために、位相直交抽出などの適切な分析を用いることができる。比および位相は、次に、リアクタンスおよび抵抗パラメータ値を決定し、かつ体液レベル指標を計算するために使用することができ、体液レベル指標はインターフェースモジュール701を介してディスプレイに伝達され得る。
また、制御モジュール700は、障害検出モジュール708に結合されても良い。障害検出モジュール708は、信号が許容閾値レベル内にであるかを判断するために被検者に印加される信号の大きさを監視する。許容閾値レベル内でない場合、障害検出モジュール708はプロセスを停止させたり、警報を発したりすることができる。
ここで、図8A〜8Cを参照して、インピーダンス測定を実施するためのプロセスの一例を説明する。
ステップ800において、インピーダンス測定タイプが選択される。ステップ810において、処理システム102は、次の測定周波数fを選択し、上述したように、ステップ815において、一連のデジタル電圧制御信号を生成する。ステップ820において、デジタル制御信号は、DAC 729A、729Bを用いて、電圧駆動信号VDA、VDBを示すアナログ制御信号に変換される。これによって、ステップ825において、アナログ制御信号を信号発生器117A、117Bの各々に提供することができ、各信号発生器117A、117Bにそれぞれの電圧駆動信号VDA、VDBを発生し、これらを、ステップ830において、それぞれの駆動電極113A、113Bを介して被検者Sに印加することができる。
ステップ835において、被検者に誘導される電圧は、センサ118A、118Bに感知電極115A、115Bにおいて電圧VSA、VSBを感知させることによって決定され、ステップ840において、感知された電圧信号VSA、VSBは、対応するADC 727A、727Bによってデジタル化される。ステップ845において、電圧駆動信号VDA、VDBの印加によって発生する電流信号ISA、ISBは、信号発生器117A、117Bを用いて、決定される。電流信号ISA、ISBの兆候は、ステップ850にけるデジタル化のために、ADC 728A、728Bに伝達される。
ステップ855において、デジタル化された電流および電圧信号ISA、ISB、VSA、VSBは、処理システム102によって受け取られ、ステップ860において、処理システム102は、印加される電流Iの大きさを決定することができる。これは、前述した図7の機能例において、電流付加モジュール705を用いて実施されても良く、ステップ865において、障害検出モジュール708は、被検者に流れる全電流フローIを閾値と比較することができる。ステップ870において、閾値を超えていると判断されると、ステップ875において、警報が発せられて、プロセスは終了しても良い。
この状況は、例えば、装置が正しく作動していない場合、あるいは一方の電極が被検者の皮膚に電気的に正しく接触していないなど、被検者への電極の接続に問題がある場合に発生し得る。従って、いかなる問題も克服できるように、電極の接続および装置の動作の少なくとも一方をチェックするきっかけを装置のオペレータに与える警報が用いられ得る。例えば、測定プロセスの再起動を試みたり、電極を被検者Sに接続し直したり、被検者に流れる電流の大きさを低減させたりすることなど、任意の適切な形態の是正処置が取られることができる。
ステップ880において、処理システム102は、電極115A、115Bの各々で感知された感知電圧VSA、VSBの大きさに基づいてコモンモード電圧を決定するよう作用し、このことは、典型的に、前述の機能例における電圧処理モジュール706を用いて実現される。コモンモード電圧またはコモンモード信号は、次に、ステップ885において任意の不平衡を判定するために使用される。
ステップ890において、不平衡が許容されるかの評価が行われる。これはコモンモード信号の大きさを閾値と比較したりする等多くの方法のいずれか一つで実施されることができる。一般の、閾値は事前に決定されて、例えば、デバイスの製造中または較正中にメモリに格納される。
不平衡が許容されないと考えられる場合には、ステップ895において、処理システム102は、不平衡を抑制するために電圧駆動信号VDA、VDBを示すデジタル制御信号を修正する。これは、典型的に、身体の中心におけるコモンモード電圧を装置基準電圧にできる限り近づけて維持するために、印加された電圧駆動信号VDA、VDBを調節するアルゴリズムを処理システム102に実施させることによって実現される。dこれは、一般に、被検者に印加される電圧駆動信号VDA、VDBの大きさおよび位相の少なくとも一方を、アルゴリズムを用いて調節することによって実現される。この調節の特質は不平衡の特質に依存する。アルゴリズムの例を以下でさらに詳しく説明する。
プロセスは、次に、DAC 724によって、修正されたデジタル制御信号がアナログ信号に変換されるステップ820に戻ることができ、修正された電圧駆動信号VDA、VDBは駆動電極113A、113Bに印加される。このプロセスは、許容される平衡が実現されるまで反復される。
許容される平衡が実現されると、処理システム102は、ステップ900において、被検者で感知された差動電圧を決定するように作用する。上述した図7の機能例において、これは差動電圧モジュール706を用いて実現され得る。
ステップ905において、分析モジュール702は、電流および差動電圧信号を用いて印加周波数fで被検者Sのインピーダンスを示す比および位相信号を決定するように作用する。上述の機能例において、これは、好ましい実施例に応じて、分析モジュール、および位相直交分析などの何らかの形態の信号分析を用いて実施され得る。
ステップ910において、周波数の各々における測定が実施されているかが判断され、実施されていなければ、プロセスはステップ810に戻されて、次の測定周波数fでプロセスが反復され得る。逆に、すべての必要な周波数が完了している場合には、測定プロセスが終了し、処理システム102はインピーダンス測定値を分析して、上述したように、体液レベル指標を判定することができる。
従って、上述のプロセスを反復することによって、多数のインピーダンス測定を、三つまたは四つの周波数にわたって、実施することができる。さらに、少なくとも一つの測定の前に、より典型的には各測定の前に、被検者と装置とのコモンモードがほぼ一致し、それによって、測定手順における不正確さ低減することを保証するためにチェックが実施され得る。
ここで、図9を参照して、駆動電極113と感知電極115との両方を組み込んだ単一チャネルの電極システムの一例を説明する。
電極システムは、それぞれの信号発生器117およびセンサ118が実装されたプリント基板(PCB)等の第一の基板950を組み込んでいる。信号発生器117およびセンサ118の一般的な機能は、図示された部品によって示される。実際に、当業者には理解されるであろうが、多数の部品が適切に配置されて使用されてもよく、図示された部品は信号発生器およびセンサ117、118の機能を示すことを意図しているにすぎない。
基板950および関連部品は、当業者には理解されるように、使用中にこれらを保護するために、適切なハウジング内に配置されることができる。
信号発生器117およびセンサ118は、それぞれのケーブル961、962を介して、導電性パッド963、965に接続されており、導電性パッド963、965は第二の基板960上に実装されてもよく、それぞれ、第一および第二の電極113、115を形成する。ケーブル961、962は、導電性パッドを使用後に容易に交換可能とするように、使用時にクリップなどを含んでも良い。
導電性パッドは、典型的に、銀/塩化銀ゲルなどの導電性ゲルを表面上に有する銀パッドから製造される。こうすることで、被検者Sとの良好な電気的接触が保証される。
使用時に、導電性パッド963、965が一定の距離だけ離間して配置されることを保証するように、導電性パッドは基板960上に実装されても良く、これによって測定の一貫性を保証することが容易になる。代替的には、導電性パッド963、965は、ケーブル961、962によって、第一の基板950に結合された個別の使い捨て導電性パッドとして設けられても良い。他の適切な構成が用いられてもよい。
一例では、基板960は、摩擦係数が低いという特徴、弾力性を有するという特徴、及び電極が被検者に結合されるときの負傷のおそれを軽減するために曲線縁を有するという特徴の少なくとも一つを備える材料から形成される。また基板960は、典型的に、手首および足首等の典型的な測定部位において、導電性パッド963、965と被検者の皮膚との間の電気的接触を補助するように配置される。これは、生体構造の不規則な形状および角度に適合し、あるいはこれらに順応するように形成される基板960を配置することによって実現され得る。
この例では、信号発生器117は、ケーブル951に接続された入力部を有する増幅器Aを含む。また入力部は、抵抗器Rを介してグランドなどの基準電圧に接続される。増幅器Aの出力部は、抵抗器Rを介してスイッチSWに接続され、スイッチSWは、典型的に、電圧源を有効化(イネーブル化)するために使用されるCMOS(相補型金属酸化膜半導体)スイッチまたはリレーである。スイッチSWは、ケーブル952を介して、処理システム102から受け取られるイネーブル信号ENを介して制御される。
スイッチSWは、直列に配置された二つの抵抗器R、Rを介して、次にケーブル961を介して、導電性パッド963に接続される。第二の増幅器Aは、二つの直列抵抗器の第一の抵抗器Rに並列の入力部と、抵抗器Rを介してケーブル953に接続された出力部とを備えている。
上記から理解されるように、ケーブル951、952、953は、図1のリード123を形成する。様々な抵抗器の値が使用されても良いが、一例では、抵抗器はR=R=R=50Ω、およびR=R=100Ωの値を有する。
センサ118は、一般に、抵抗器Rを介してケーブル962に接続された入力部を有する増幅器Aを含む。入力部は、抵抗器Rを介して、グランドなどの基準電圧にも接続される。増幅器Aの出力部は、抵抗器Rを介して、ケーブル954に接続される。
従って、ケーブル954は図1のリード125を形成する。様々な抵抗器の値が使用されても良いが、一例では、抵抗器はR=100Ω、R=10MΩ、およびR=50Ωの値を有する。
オプションの電力ケーブル955は、信号発生器117およびセンサ118に給電する電源信号+Ve、−Veを供給するために設けられ得るが、代替的にバッテリなどのオンボード電源が使用されても良い。さらに、ケーブル956が、基板950上にLED 957を搭載するために設けられても良い。LED 957は、電極システムの作動状態を表示するように、処理システム102によって制御され得る。
ここで、信号発生器117およびセンサ118の動作をさらに詳しく説明する。この説明のために、電圧駆動信号、電流信号、および感知電圧は、一般に、V、I、Vとして示され、実際には、これらは、上述した例の電圧駆動信号、電流信号、および感知電圧VDA、VDB、ISA、ISB、VSA、VSBのそれぞれと等価である。
使用時に、増幅器A1は、DAC 729から受け取られたアナログ電圧信号を増幅し、これをケーブル961を介して被検者Sに印加するように作用して、印加電圧駆動信号Vは被検者Sに流れる電流信号Iを駆動する。スイッチSWが閉位置にある場合にのみ、電圧駆動信号Vは印加され、従って、電圧源を被検者Sから絶縁するためには、スイッチSWは開位置に設定される。これは、一対の駆動および感知電極113、115が電圧を感知するためだけに使用されるとともに、電圧駆動信号Vを被検者Sに印加するためには使用されない場合に、使用され得る。信号発生器117を駆動電極113から絶縁すると、本来は増幅器A1の低出力インピーダンスによって存在する意図せぬ戻り電流経路が取り除かれ、それによって、二つの選択された駆動電極113の間のみに電流が流れるように制約される。高インピーダンス出力無効化(ディスエーブル)状態を組み込んだ増幅器を用いるなど、同様の効果を実現するために他の手法が用いられても良い。
被検者Sに印加されている電流信号Iは検出されて、増幅器Aによって増幅され、増幅された電流信号Iは、ケーブル953に沿って、ADC 728を介して、処理システム102に戻される。
同様に、センサ118は、第二の電極115で検出された電圧を増幅器Aで増幅して、作用し、増幅されたアナログ感知電圧信号Vを、ケーブル954に沿って、ADC 727に戻す。
ケーブル951、952、953、954、955、956は、望まれる実施例に応じて、複数の異なる構成で設けられることができる。一例では、ケーブル951、952、953、954、955、956の各々は一本のリードLで提供されるが、これは必須ではなく、以下でさらに詳しく説明するように、ケーブルは複数本のリードで提供されても良い。
誤差の潜在的な別の原因は、交差電極容量結合に起因する。図9Bに示すように、電極113、115と、対応する接続部961、962とが比較的接近していることによって、駆動増幅器Aの出力部と感知増幅器Aの入力部との間に実効容量CDSが生じる。従って、この事実は、増幅器電極A、Aの間に寄生電流を引き起こし、ひいては、高い周波数において特に、測定値に不正確さをもたらし得る。
交差電極容量結合を相殺するために、図9Cに示すように、交差電極容量相殺回路が設けられる。図9Cは使用時の電極113、115の電気応答性をモデル化した等価回路を示している。
この例では、各電極113、115および被検者Sのインピーダンスは、それぞれの抵抗器およびコンデンサ構成によって形成されるそれぞれのインピーダンスZ113、Z115、Zによって示されている。交差電極容量相殺回路970は、駆動増幅器Aの出力部と感知増幅器Aの入力部とに接続され、駆動増幅器Aの出力部に接続された入力部を有する反転増幅器Aを含む。反転増幅器の出力部は、抵抗器R10およびコンデンサC10を介して、感知増幅器Aの入力部に直列に接続される。
この構成では、駆動増幅器Aからの任意の信号出力が反転され、次に、感知増幅器Aの入力部に印加される。抵抗器R10およびコンデンサC10の適切な値を選択することによって、反転信号が実効交差電極容量CDSから得られる信号の大きさに等しい大きさを持つようにすることができる。
一例では、抵抗器R10とコンデンサC10との抵抗および容量の少なくとも一方は、それぞれ、可変の抵抗器またはコンデンサ等の適切な調節可能部品を使用することによって調節され得る。これにより、実効交差電極容量CDSから得られる信号を事実上相殺するように、反転信号の大きさ及び位相の少なくとも一方が制御され得る。部品の調節は、較正プロセス中に実施されても良く、較正プロセスでは、すべての寄生容量が正確に表わされるように関連電極が一体的に取り付けられた完全電極ユニットが典型的に設けられる。
従って、交差電極容量相殺回路970は、負の電流フローが発生するように、駆動電極113と、対応する感知電極115との間に実効負性容量を備え、それによって寄生電流を相殺する。このようにして、駆動電極113と感知電極115との間の任意の容量結合の影響が無効になる。
また、電極システムは、図9Dに例として示す入力容量相殺回路を含んでも良い。
使用時に、感知電極115は、環境に容量結合して、感知増幅器Aの入力部に実効入力容量CEIが生じ得る。実効容量により、信号が感知増幅器の入力部からグランドに漏洩して、増幅器の入力部で得られる信号が低減し得る。
従って、この例では、感知増幅器Aの正入力部を、抵抗器R11およびコンデンサC11を介して、感知増幅器の出力部に接続する入力容量相殺回路980が設けられる。この回路は、増幅された信号の特定の比率を、増幅器の入力部に戻すことができる正のフィードバックループとして作用する。この回路は、実効入力容量CEIによって生じる増幅器入力部における信号の減少を相殺するように作用し、従って、増幅器入力部における実効入力容量CEIの影響を相殺する実効負性容量を提供する。さらに、入力容量相殺回路はチューニングを必要とし、チューニングは抵抗器R11及びコンデンサC11の少なくとも一方の値の適切な調節によって、較正中に実現され得る。
上述したように、電圧信号Vおよび電流信号Iに個別のリード123、125が使用される場合、リード123、125の間の誘導結合が、リード123、125内にEMFを誘導する可能性がある。EMFの大きさは、リード123、125の間の結合の程度、ひいては、これらの物理的な分離に左右され、さらに電流信号Iの周波数および大きさに比例して増加する。
リード123、125内に誘導されるEMFは、センサ118の入力部に実効EMFを引き起こす。その結果、感知電圧信号Vの成分は、誘導EMFに起因しており、ひいては、決定された電圧信号Vおよび電流信号Iに不正確さを引き起こす。
誘導結合の影響は、リード123、125の物理的分離に応じて変化する。従って、一例では、リードの間の誘導結合の影響は、リードを可能な限り物理的に分離することによって低減し得る。従って、一例では、ケーブル951、952、953、954、955、956は、個別の物理的に分離されたリードで提供される。しかしながら、この構成に関連する問題は、誘導結合の量が物理的なリードの配置に応じて変化し、ひいては、各測定の間で変動し得る。その結果、任意の誘導結合の大きさが変化する可能性があり、インピーダンス測定を分析する際に、これを考慮することが困難になる。
ケーブル951、952、953、954、955、956の各々に対して、物理的に分離したリードを用いることに対する代替案は、単一の結合されたリードLを使用することである。リードは、ケーブル951、952、953、954、955、956が実質的に一定の相対的な物理的構成で維持されるように、形成される。一例では、リードLは、それぞれのケーブルの各々を拠り合わせることにより、一定の幾何学的配置を提供するように形成される。しかしながら、密接な接触を維持するようにオーバーモールドされる別個の非絶縁シールドケーブルからリードを製造する等の代替的な製造方法が用いられても良い。
物理的形状が一定である結果として、リード123、125に沿って誘導される任意のEMFが実質的に一定であり、較正プロセス中に、これを考慮することができる。
従って、測定装置100が最初に構成される時に、特に、インピーダンス測定値を決定するために、電圧信号Vおよび電流信号Iを分析するためのアルゴリズムが生成される時に、これらは誘導EMFを考慮する較正係数が用いられ得る。特に、較正プロセス中、測定装置100を使用して、基準インピーダンスから測定を行うことができ、結果としての計算を用いて誘導EMFの影響が判定され、それにより、以後の測定値からこれを差し引くことができる。
リード配置に関するさらなる問題は、ここで図10に関して説明されるように、それぞれのケーブルの間の容量結合の問題である。この例においては、明確にするためにケーブル951、953、954のみが示されている。
この例では、測定装置100は、PCB 950A、950Bに接続されて、電極113A、113B、115A、115Bの各々に対して接続を提供する。同様に図に示すように、ケーブル951、953、954の各々には、それぞれのシールド1051、1053、1054が施されている。シールドは、それぞれのケーブル951、953、954の間の結合を防止することを補助するために用いられる。従って、ケーブル951、953、954は、一般に、シールドされたワイヤー・コアから製造される。実際には、シールドケーブルは、50Ω伝送線路であって良く、それは高周波における信号伝送歪みを最小化し、ひいては誤差を最小化する。これに加えて、シールド1051、1053、1054は、典型的に、各端部において、それぞれの接続部1055、1056を介して、グランドなどの基準電圧に相互接続される。
このようにシールドされるとともに、接地されたケーブルを使用することは、容量結合の影響を低減させることを促進し、得られた測定値の不正確さを、さらに低減させることを促進する。
さらなる潜在的な問題は、異なるリードLの間の誘導結合、並びに被検者とベッドとの間の容量結合の問題である。この点について、寄生容量により、高周波電流が身体内の意図された電流路を迂回して、測定誤差を引き起こす。この問題を考慮するために、一例では、各電極システムのリードLを、物理的に可能な限り分離することができ、かつ/または、使用時のリード長を最短にする配置で設けることができる。ここで、これを実現する配置の一例を、図11に関して説明する。
この例において、測定システムは、末尾をA、B、C、Dで示す四つの測定チャネルを備える。これは、上述したような、さらなるADC 727、728およびDAC 729を備える修正型の測定装置100を使用することによって実現され得る。
この例では、被検者Sは、ベッド1100の上に横たわっており、腕1131、1132は被検者の脇に配置され、脚1133、1134は、測定装置100を組み込んだ支持体1140の上に載せられている。支持体は、任意の形態の支持体であってもよいが、典型的には、成形発泡体などから製造され、測定装置100が実質的に被検者の両膝の間に位置するように、被検者を配置する。測定装置100は典型的に、測定装置100に対する被検者の正確な位置を保証するとともに、測定装置100のハウジングとの摩擦または他の衝撃によって引き起こされる損傷から被検者Sを保護するために、支持体内に組み込まれる。
4チャネル配置を提供することにより、それぞれの電極システムを被検者の四肢の各々に取り付けることができる。従って、図に示すように、各四肢1131、1132、1133、1134には、それぞれの基板760が取り付けられており、それによって、各手首および足首に駆動電極113および感知電極115が提供される。電極113、115は、基板750上に取り付けられたそれぞれの信号発生器およびセンサに接続され、信号発生器およびセンサは、それぞれのリードLA、LB、LC、LDを介して、測定装置100に接続される。
リードは、各リードLA、LB、LC、LDが、異なる方向に沿って、測定装置100から離間するように延びるように配置され、それにより、リードの物理的分離が最大化され、ひいては各リードの間の任意の誘導結合を抑制することを促進する。
さらに、リードLA、LB、LC、LDは、測定装置100および被検者Sの両方から垂直に延びるように構成されることが望ましく、それにより、容量結合の影響がさらに抑制される。
さらに、測定装置100を被検者の膝の近傍に配置することにより、測定装置100が被検者の手首と足首との間におよそ等距離で配置される。従って、測定装置100をベッド1100の下端に向けて配置することにより、被検者Sの手首および足首に電極を配置するために必要なリードLA、LB、LC、LDの長さが短縮される一方で、実質的に等しいリード長が維持され、誘導結合の影響と容量結合の影響との両方をさらに抑制することを促進する。この点について、任意の誘導結合の影響から発生するEMFも、関連するリード長に比例し、ひいては、種々のリードに対するいかなる影響も等しくなる。同様に、電流分路を生成し得るリード(グランド)と被検者との間の容量結合も最小化される。
前述の配置は、例示のためにすぎず、実際には、被検者の大腿の近傍に(手首と足首との間のほぼ中間に)、測定装置100を配置するための任意の適切な機構が使用されることができる。従って、例えば、これには被検者の脚上に測定装置100を単に載せること、特注の支持体を設けることなどが含まれ得る。この配置では、四つの第一の電極および四つの第二の電極を四肢に配置することによって、種々の四肢および全身の少なくとも一方のインピーダンス測定を実施できる。
図11に示す電極構成は、図12Aおよび12Bを参照して説明されるように、代替的な平衡化プロセスを実施するために用いられ得る。
これらの例において、被検者Sは、腕1231、1232、脚1233、1234、および胴部1235を有し、測定装置300(明確にするため図示せず)は、図9に示されるものと同様の多チャネル構成で設けられ、駆動電極および感知電極のそれぞれの対113A、115A;113B、115B;113C、115C;113D、115Dが被検者の手首および足首に取り付けられる。図12Aおよび12Bには、活性電極のみを示す。
各例では、駆動信号を駆動電極113B、113Dに印加する駆動電極構成が使用され、従って、点線1240で示されるように、信号は、腕1231、胴部1235、および脚1233を通過する。
図12Aの例では、腕1231および脚1233に取り付けられた感知電極115B、115Dを用いて、平衡化が実施される。対照的に、図12Bの配置では、対側肢1232、1234に取り付けられた感知電極115A、115Cを用いて、平衡化が実施される。これにより、図12Cに示されるように、平衡化プロセスに対して異なる実効電気モデルがもたらされる。実効電気モデルは、それぞれ駆動電極インピーダンス113B、113D、腕1231、胴部1235、および脚1233のインピーダンスを示すインピーダンスZ113B、Z113D、Z1231、Z1235、Z1233を含む、駆動信号によってもたらされるインピーダンスを示している。
図12Aの電極構成では、感知電極が腕1231および脚1233上に取り付けられ、それによって、被検者内に誘導される電圧が、駆動電極113B、113Dとそれぞれの四肢1231、1233との間の点において効果的に感知される。電極115B、115Dにおいて測定された感知電圧は、それぞれVSBおよびVSDで示され、これらには腕1231、胴部1235、および脚1233に流れる電流フローを効果的に考慮したものとなっている。
平衡化を実施するとき、駆動信号はVSB≒−VSDとなるようにコモンモード電圧を最小化するように、制御される。この構成では、実効グランド基準電圧Vは、感知電圧VSB、SDの間の電気的中心に位置し、従って、基準電圧Vと各感知電圧VSB、VSDとの間の差ΔV、ΔVはほぼ等しく、ΔV≒ΔVとなる。従って、これは典型的に、異なる接触インピーダンスから生じる駆動電極113B、113Dのインピーダンスの差を考慮したものであり、電極の一方が他方の電極よりも著しく高いインピーダンスを有する場合に、電極の後に身体に印加される信号は、感知電極115B、115Dに関して依然として対称である。
腕のインピーダンスZ1231は胴部インピーダンスZ1235および脚インピーダンスZ1233よりも一般に高いため、一般に、腕1231にかかる信号電圧差は、胴部1235および脚1233にかかる信号電圧差を結合したものに、ほぼ等しい。従って、基準電圧Vの位置は、一般に被検者の身体の幾何学的中心では発生せず、むしろ被検者Sの肩部領域の近傍のいずれかの場所で発生する。その結果、被検者の身体中心電圧Vは、感知電圧VSB、VSDに従って平衡化することによって、必ずしも最小化されず、被検者の身体中心に対応する被検者の胴部1235の中心に、著しい残留信号電圧Vが存在する可能性がある。従って、身体中心電圧V=V≠Vとなる。残留信号電圧によって、被検者と、被検者が配置されるベッドなどの環境との容量結合による電流フローが引き起こされる。この残留信号電圧は、ひいては、インピーダンス測定値の精度に影響を与える。
一方、図12Bに示す配置は、対側肢1232、1234上に取り付けられた感知電極115A、115Cを用いて、被検者の電圧を感知する。対側肢1232、1234を通る電流フローが存在しないため、対側肢1232、1234はそれらの全長に沿って、事実上、同一の電圧(すなわち、等電位)にある。従って、感知電極115A、115Cは、図12Cにも示されるように、胴部1235が腕1231と脚1233とをつないでいる点の電圧を効果的に測定する。
この例では、平衡化が実施される場合、基準電圧Vと各感知電圧VSA、VSCとの差ΔV、ΔVが、ほぼ等しく、ΔV≒ΔVとなるように、基準電圧Vは感知電圧VSA、VSCの間の電気的中心に置かれる。全駆動信号Vによって誘導される電圧は胴部のみに対して測定されるため、かつ上胴部および下胴部は同様のインピーダンスを有するため、基準電圧Vは胴部1235に沿って中間に置かれる。基準電圧は典型的に0Vに設定されるため、駆動信号によって誘導される胴部1235の信号電圧の大きさが最小化され、ひいては被検者とベッドとの間の容量結合の影響が抑制される。
従って、平衡化は図12Aの構成を用いて実施されることができるが、これは典型的に駆動電極113B、113Dの電極インピーダンスの変動を考慮するのみである。これはまた、一般に被検者の胴部の全電位を低下させ、ひいては寄生容量の影響を抑制するが、身体内の電圧は、必ずしも胴部に関して対称的に平衡化されない。従って、一例では、図12Bに示される電極構成を用いることが好ましい。
従って、平衡化は、電圧駆動信号が印加される四肢と同じ四肢上の電圧を検知することを含む種々の電極構成に対して実施され得る。しかし、一例では、平衡化は、第一肢、胴部および第二肢に沿って信号を通過させ、異なる第三肢および第四肢によって電圧信号を測定することによって、実施される。異なる四肢上の電圧を測定することによって、被検者の胴部を中心として平衡化が実施されることが保証され、ひいては、被検者と環境との間の容量結合の影響が抑制される。
実際には、身体中心電圧が平衡化されているときにも、胴部からいくらかの寄生電流が常に存在する。これは、胴部の物理的サイズが比較的大きいことによるものである。しかしながら、身体中心電圧を平衡化するプロセスは、この誤差を最小化しようとするものであり、再現可能な基準点を実現可能にする。
当業者によって理解されるように、数多くの変形形態および修正形態が明らかになる。こうした全ての変形形態および修正形態は、本明細書で広範に説明された発明の精神および権利範囲内に含まれる。
例えば、上述の手法は、インピーダンスパラメータRおよびRの値を決定するために使用可能であり、従って、この情報が役立ついかなる状況においても使用されることができる。この状況には、例えば、浮腫、リンパ浮腫などを含むが、これらに限定されない様々な健康状態および病気の有無または程度の診断を含み得る。当該手法は、例えば、相対脂質値などを検査する身体組成分析を実施する場合にも使用されることができる。
上述の例では抵抗器を使用しているが、被検者のインピーダンス応答をシミュレートする際に使用され得る任意の適切な電子部品が使用されることができる。インピーダンスという用語は、抵抗、リアクタンス、またはアドミッタンスの測定を含む、任意の形態のインピーダンス測定をも網羅するものである。

Claims (33)

  1. 被検者に対してインピーダンス測定を実施する際に使用される装置であって、前記装置は、
    a)三つより多くの周波数において被検者の少なくとも一つの身体部位のインピーダンス測定値を決定し、
    b)インピーダンス測定値の複数の組合せであって、各組合せが三つの周波数におけるインピーダンス測定値を含む、前記複数の組合せを決定し、
    c)各組合せに関して、
    前記三つの周波数の各々において、前記インピーダンス測定値に関する第一および第二のインピーダンスパラメータに対して、第一および第二のパラメータ値を決定し、
    ii)前記第一および第二のインピーダンスパラメータに関して定義される円を示す連立方程式を、前記三つの周波数の各々において前記第一および第二のパラメータ値を用いて解いて、円パラメータ値を決定し、
    iii)前記円パラメータ値を用いて、それぞれの周波数において、第三のインピーダンスパラメータ値を決定し、かつ
    d)記被検者の身体部位内の相対的な体液レベルを示す指標であって、該指標は、各組合せに関して決定された前記第三のインピーダンスパラメータ値の平均である、前記指標を決定する
    処理システムを含む装置。
  2. 前記指標は細胞外液レベルを示す請求項1に記載の装置。
  3. 前記指標は浮腫の有無または程度を示す請求項1又は2に記載の装置。
  4. 前記第三のインピーダンスパラメータは、ゼロ周波数におけるインピーダンスを示す請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
  5. 前記処理システムは、
    a)第一および第二の身体部位の各々に対して、それぞれの周波数において、第三のインピーダンスパラメータ値を決定し、
    b)前記第三のインピーダンスパラメータ値を用いて比を決定し、かつ
    c)前記比を用いて前記指標を決定する
    請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
  6. 前記第一および第二の身体部位は、対側肢の部分である請求項5に記載の装置。
  7. 前記処理システムは、
    a)前記比を基準値と比較し、かつ
    b)前記比較の結果を用いて前記指標を決定する
    請求項5又は6に記載の装置。
  8. 前記基準値は、
    a)所定の閾値、
    b)正規母集団から決定される許容範囲、および
    c)所定の範囲
    の少なくとも一つを含む請求項7に記載の装置。
  9. 前記基準値は、前記被検者に対して事前に決定される指標を含む請求項7に記載の装置。
  10. 前記事前に決定される指標は、
    a)外科手術、および
    b)治療
    の少なくとも一つを前記被検者が受ける前に決定される請求項9に記載の装置。
  11. 前記処理システムは、
    a)前記円パラメータ値を用いて、それぞれの周波数において第四のインピーダンスパラメータ値を決定し、
    b)前記第三および第四のインピーダンスパラメータ値を用いて、細胞内液に対する細胞外液の比を示す指標値を決定し、かつ
    c)前記指標値を用いて前記指標を決定する
    請求項1乃至10のいずれか一項に記載の装置。
  12. 前記処理システムは、
    a)第一および第二の身体部位に対する指標値を決定し、かつ
    b)前記第一および第二の身体部位に対する前記指標値に基づいて指標値比を決定する請求項11に記載の装置。
  13. 前記第一および第二の身体部位は、異なる種類の身体部位である請求項12に記載の装置。
  14. 前記第一および第二の身体部位は四肢である請求項13に記載の装置。
  15. 前記第一の身体部位は脚であり、前記第二の身体部位は腕である請求項13に記載の装置。
  16. 前記処理システムは、
    a)前記インピーダンスパラメータ値からパラメータR0およびR∞の値を決定し、かつ
    b)次式
    を用いて指標値(I)を計算し、R0はゼロ周波数における抵抗であり、R∞は無限周波数における抵抗である請求項11乃至15のいずれか一項に記載の装置。
  17. 前記処理システムは、
    a)前記第三のインピーダンスパラメータ値、
    b)前記第一および第二のインピーダンスパラメータ値、
    c)前記円パラメータ、
    d)細胞内液に対する細胞外液の比、および
    e)被検者内の組織浮腫の有無または程度の少なくとも一つの兆候
    の少なくとも一つの兆候を表示する請求項1乃至16のいずれか一項に記載の装置。
  18. 前記装置は、
    a)複数の周波数の各々において、交流信号を発生する信号発生器と、
    b)前記発生した交流信号を被検者に印加する少なくとも二つの供給電極と、
    c)前記被検者の信号を検出する少なくとも二つの測定電極と、
    d)前記被検者の信号を決定する前記測定電極に接続されるセンサであって、前記処理システムに接続され、それによって、前記処理システムが、測定インピーダンスを判定することを可能とするセンサとを含む請求項1乃至17のいずれか一項に記載の装置。
  19. 前記装置は複数の電極システムを含み、各電極システムは、
    a)センサと、
    b)信号発生器とを備える請求項1乃至18のいずれか一項に記載の装置。
  20. 前記電極システムは、
    a)前記信号発生器およびセンサが実装された第一の基板と、
    b)少なくとも二つの導電性パッドが実装された第二の基板であって、前記導電性パッドは使用時に前記信号発生器および前記センサを被検者に接続する第一および第二の電極を形成する前記第二の基板とを備える請求項19に記載の装置。
  21. 前記電極システムは、第一の電極と第二の電極との間の容量結合を相殺するための容量相殺回路を備える請求項19又は20に記載の装置。
  22. 前記容量相殺回路は、信号発生器出力部をセンサ入力部に接続する反転増幅器を備える請求項21に記載の装置。
  23. 前記反転増幅器は、容量相殺信号を前記センサ入力部に印加し、それによって、前記第一の電極と前記第二の電極との間の任意の実効容量を相殺する請求項22に記載の装置。
  24. 反転増幅器出力部は、
    a)抵抗器、
    b)コンデンサ、および
    c)インダクタ
    の少なくとも一つを介して、前記センサ入力部に接続される請求項22又は23に記載の装置。
  25. 抵抗器およびコンデンサの少なくとも一方は調節可能であり、それによって、前記センサ入力部に印加される容量相殺信号を制御する請求項24に記載の装置。
  26. 前記電極システムは、センサ入力部における実効入力容量を相殺するための入力容量相殺回路を備える請求項19乃至25のいずれか一項に記載の装置。
  27. 前記電極システムは、センサ出力部をセンサ入力部に接続するフィードバックループを
    備える請求項19乃至26のいずれか一項に記載の装置。
  28. 前記フィードバックループは、
    a)抵抗器、
    b)コンデンサ、および
    c)インダクタ
    の少なくとも一つを備える請求項27に記載の装置。
  29. 抵抗器およびコンデンサの少なくとも一方は調節可能であり、それによって、前記センサ出力部から前記センサ入力部への電流フローを制御する請求項28に記載の装置。
  30. 前記フィードバックループは、入力容量相殺信号を前記センサ入力部に印加して、前記センサ入力部における任意の実効容量を相殺する請求項28又は29に記載の装置。
  31. 前記処理システムは、ソフトウェアを格納するメモリと、前記メモリに格納された前記ソフトウェアの制御下で動作するプロセッサとを備え、前記プロセッサは、
    a)三つの周波数の各々において、前記被検者の少なくとも一つの身体部位のインピーダンスに関する第一および第二のインピーダンスパラメータに対して第一および第二のパラメータ値を決定し、
    b)前記第一および第二のインピーダンスパラメータに関して定義される円を示す連立方程式を、前記三つの周波数の各々において前記第一および第二のパラメータ値を用いて解いて、円パラメータ値を決定し、
    c)前記円パラメータ値を用いて、それぞれの周波数において第三のインピーダンスパラメータ値を決定し、かつ
    d)前記第三のインピーダンスパラメータ値を用いて、前記被検者の身体部位内の相対体液レベルを示す指標を決定する
    請求項1乃至30のいずれか一項に記載の装置。
  32. 浮腫の有無または程度を診断する際に使用される装置であって、
    a)三つより多くの周波数において被検者の少なくとも一つの身体部位のインピーダンス測定値を決定し、
    b)インピーダンス測定値の複数の組合せであって、各組合せが三つの周波数におけるインピーダンス測定値を含む、前記複数の組合せを決定し、
    c)各組合せに関して、
    前記三つの周波数の各々において、前記インピーダンス測定値に関する第一および第二のインピーダンスパラメータに対して、第一および第二のパラメータ値を決定し、
    ii)前記第一および第二のインピーダンスパラメータに関して定義される円を示す連立方程式を、前記三つの周波数の各々において前記第一および第二のパラメータ値を用いて解いて、円パラメータ値を決定し、
    iii)前記円パラメータ値を用いて、それぞれの周波数において第三のインピーダンスパラメータ値を決定し、
    d)記被検者の身体部位内の相対的な体液レベルを示す指標であって、該指標は、各組合せに関して決定された前記第三のインピーダンスパラメータ値の平均である、前記指標を決定し、かつ
    e)前記指標を用いて、浮腫の有無または程度を決定する
    処理システムを備える装置。
  33. 身体組成分析において使用される装置であって、
    a)三つより多くの周波数において被検者の少なくとも一つの身体部位のインピーダンス測定値を決定し、
    b)インピーダンス測定値の複数の組合せであって、各組合せが三つの周波数におけるインピーダンス測定値を含む、前記複数の組合せを決定し、
    c)各組合せに関して、
    前記三つの周波数の各々において、前記インピーダンス測定値に関する第一および第二のインピーダンスパラメータに対して、第一および第二のパラメータ値を決定し、
    ii)前記第一および第二のインピーダンスパラメータに関して定義される円を示す連立方程式を、前記三つの周波数の各々において前記第一および第二のパラメータ値を用いて解いて、円パラメータ値を決定し、
    iii)前記円パラメータ値を用いて、それぞれの周波数において第三のインピーダンスパラメータ値を決定し、かつ
    d)人の身体組成であって、該身体組成は、各組合せに関して決定された前記第三のインピーダンスパラメータ値の平均である、前記身体組成を決定する
    処理システムを備える装置。
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