ところで、中空本体の内部に発泡接着剤を介して補強部材が配設された中空構造物において、補強部材の外周面を中空本体の内面に沿う板状の周壁部によって形成するとともに、この周壁部をコアバック法を用いて成形し、かかる補強部材を中空本体の内部に発泡接着剤を用いて取り付ける場合、補強部材の周壁部にシート状の発泡接着剤を設け、この補強部材を中空本体の内部に配設した後に、発泡接着剤を発泡させて補強部材を中空本体に接着結合させることが考えられる。
しかしながら、コアバック法を用いて発泡性樹脂の発泡を促進させた発泡性樹脂からなる補強部材(発泡補強部材)を成形する場合、発泡性樹脂を成形型のキャビティ内に注入した後に成形型の少なくとも一部をキャビティの容積を拡大する方向に移動させても、キャビティの容積を拡大する方向に移動させた成形型のキャビティ対向面の端部において該成形型の移動に完全に追従して発泡性樹脂が発泡成形されず、発泡成形された部分の端部において補強部材が所定形状に成形されないことがある。
補強部材の周壁部をコアバック法を用いて成形する場合、周壁部を複数の部分に分割して、分割された部分ごとに可動コアを用いて発泡成形させることが行われるが、この場合、可動コアのキャビティ対向面の端部において該可動コアの移動に追従して発泡性樹脂が発泡成形されず、可動コアによって成形される周壁部の一部である中空本体との接着面部の端部において所定形状に成形されないことがある。
そして、このように、中空本体との接着面部の端部が所定形状に成形されない補強部材に所定厚さを有するシート状の発泡接着剤を設けて中空本体の内部に配設した後に、発泡接着剤を発泡させて補強部材を中空本体に接着結合させると、発泡接着剤は、発泡倍率が補強部材の接着面部の端部に設けられた部分では該接着面部の中央部に設けられた部分に比して高くなって補強部材と中空本体との結合強度が弱くなり、中空構造物への補強部材の補強効果が低下する畏れがある。
図5は、発泡補強部材が発泡接着剤を介して取り付けられたサイドシルの断面図である。図5に示すように、上面部101、下面部102及び両側の側面部103、104によって略矩形中空状に形成された中空本体107を備え、該中空本体107の内部に中空本体107を横切る方向に延びる板状の隔壁部115と該隔壁部115に結合され該隔壁部115の周囲を覆う板状の周壁部116とを備えた発泡補強部材110が発泡接着剤105を介して接着結合され、発泡補強部材110の中空本体107との接着面部である周壁部116が発泡成形された中空構造物としてのサイドシル100を製造する場合、先ず、発泡補強部材110と中空本体107とが別々に所定形状に成形される。
なお、図5に示す発泡補強部材110では、中空本体107と接着結合される周壁部116は、中空本体107の上面部101、下面部102及び両側の側面部103、104に略平行に設けられ該面部にそれぞれ接着結合される中空本体107との接着面部である上面部111、下面部112及び両側の側面部113、114を備えている。また、図5及び後述する図6から図8では、発泡補強部材110の周壁部116の内面を破線L1で示し、発泡補強部材110の周壁部116の発泡前の状態を二点鎖線L2で示している。
図6は、中空本体との接着面部が発泡成形された発泡補強部材の成形方法を説明するための説明図であり、図6では、発泡補強部材を射出成形によって成形するための成形型の断面図を示している。図6に示すように、発泡補強部材110を成形する際には、発泡補強部材110の形状に応じて略矩形中空状に形成されたキャビティS1を有する成形型120を用いて成形され、成形型120は、上下左右4つの可動コア121、122、123、124とこれら可動コア121、122、123、124の間に配設される固定コア125、126、127、128とを備えて構成されている。
また、成形型120は、これら可動コア121、122、123、124及び固定コア125、126、127、128の図面の表面及び裏面に、図示しない固定型及び可動型を備え、該固定型及び可動型はそれぞれ、キャビティS1の一部を形成するキャビティ対向面を備えている。
そして、発泡性樹脂111aを注入する図示しない注入手段によって成形型120のキャビティS1に発泡性樹脂111aを充填した後に、成形型120の可動コア121、122、123、124をそれぞれキャビティS1の容積を拡大する方向に成形型120の外方側へ移動させると、可動コア121、122、123、124の移動に伴って発泡性樹脂111aの発泡が促進されて発泡成形され、中空本体107と接着結合される接着面部である周壁部116が発泡成形された発泡補強部材110が成形される。
図7は、図6のA部において成形型の可動コアが移動した状態を示す断面図である。図7に示すように、発泡性樹脂111aの充填後、図7において左側の可動コア123を成形型120の外方側(図7において左側)へ移動させると、発泡性樹脂111aは可動コア123の移動に伴って成形型120の外方側へ発泡成形されることとなるが、可動コア123のキャビティ対向面123aの端部123bでは発泡性樹脂111aが可動コア123の移動に完全に追従せずに、可動コア123のキャビティ対向面123aの中央部123cに比してコアバックに伴って増加する厚さが薄くなって成形されることがある。
図6において上側の可動コア121、下側の可動コア122及び右側の可動コア124についても同様に、可動コア121、122、124のキャビティ対向面の端部では発泡性樹脂111aが可動コア121、122、124の移動に完全に追従せずに、可動コア121、122、124のキャビティ対向面の中央部に比してコアバックに伴って増加する厚さが薄くなって成形されることがある。
このように、発泡補強部材110の周壁部116がコアバック法を用いて発泡成形された発泡補強部材110を成形した後、中空本体107の内部に発泡補強部材110が配設されたサイドシル100を製造するために、発泡補強部材110を別途所定形状に成形した金属製の略矩形中空状の中空本体107の内部に配設するとともに発泡補強部材110の周壁部116に所定厚さを有するシート状の発泡接着剤105を設けて、その後に発泡接着剤105を発泡させる。
図8は、発泡接着剤の発泡前後の状態を示す図であり、図8では、図5のB部に対応する部分について示している。図8(a)に示すように、発泡補強部材110の周壁部116に所定厚さを有するシート状の発泡接着剤105を設けた後に、発泡接着剤105を発泡させると、図8(b)に示すように、中空本体107の内部に発泡補強部材110が発泡接着剤105を介して接着結合されたサイドシル100が製造されることとなるが、発泡接着剤105は、発泡倍率が発泡補強部材110の周壁部116においてコアバックに伴って増加する厚さが薄く成形された部分である中空本体107との接着面部の端部に設けられた部分で高くなってしまうこととなる。
図8(a)に示すように、中空本体107と発泡補強部材110の周壁部116との間隙がD1に設定され、厚さt1を有する発泡接着剤105が該周壁部116に設けられる場合、発泡補強部材110の周壁部116が所定形状に成形された部分である中空本体107との接着面部の中央部に設けられる発泡接着剤105aは発泡後に符号105a’に示すように発泡される一方、発泡補強部材110の周壁部116が薄く成形された部分である中空本体107との接着面部の端部に設けられる発泡接着剤105bは発泡後に符号105b’に示すように発泡され、発泡接着剤105は、発泡補強部材110の周壁部116においてコアバックに伴って増加する厚さが薄く成形された部分を含む発泡補強部材110の角部100aに設けられる部分において、発泡倍率が高くなってしまうこととなる。
このように、中空本体との接着面部が発泡成形された発泡補強部材において、補強部材の接着面部の端部が所定形状に成形されない場合に、該補強部材を中空本体の内部に配設するとともに該補強部材の接着面部と中空本体との間に発泡接着剤を設けて、その後に発泡接着剤を発泡させて接着結合させると、発泡接着剤は、発泡倍率が補強部材の接着面部の端部に設けられた部分では該接着面部の中央部に設けられた部分に比して高くなって補強部材と中空本体との結合強度が弱くなり、中空構造物への補強部材による補強効果が低下する畏れがある。
そこで、この発明は、中空構造物への補強部材の補強効果を中空構造物の断面において略均一化させ、発泡接着剤の発泡倍率の高い部分において中空構造物への補強部材の補強効果が低下することを抑制することができる発泡補強部材が配設された中空構造物及びその製造方法を提供することを目的とする。
このため、本願の請求項1に係る発明は、中空状に形成される中空本体を備え、該中空本体の内部に発泡接着剤を介して接着結合される発泡補強部材が配設された中空構造物であって、発泡補強部材は、中空本体の内面に沿う板状の接着面部を備え、該接着面部は、発泡性樹脂を成形型のキャビティ内に注入した後に該成形型の少なくとも一部をキャビティの容積を拡大する方向に移動させることによって発泡成形されるとともに、発泡接着剤の発泡倍率が発泡接着剤の他の部分より高い部分によって前記中空本体と接着結合される部分の板厚が前記発泡接着剤の他の部分によって前記中空本体と接着結合される部分の板厚に比して厚く形成されている、ことを特徴とする。
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記接着面部は、該接着面部の端部の板厚が該接着面部の中央部の板厚に比して厚く形成されている、ことを特徴とする。
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記中空構造物は、車体の一部を構成する車体構成部材である、ことを特徴とする。
また更に、本願の請求項4に係る発明は、中空状に形成される中空本体を備え、該中空本体の内部に発泡接着剤を介して接着結合される発泡補強部材が配設された中空構造物の製造方法であって、中空本体の内面に沿う板状の接着面部を備え、発泡性樹脂を成形型のキャビティ内に注入した後に該成形型の少なくとも一部をキャビティの容積を拡大する方向に移動させて前記接着面部が発泡成形された発泡補強部材を準備し、該発泡補強部材を中空本体の内部に配設するとともに該発泡補強部材の接着面部と該中空本体との間に発泡接着剤を設け、その後、該発泡接着剤を発泡させて前記発泡補強部材を前記中空本体と接着結合させると共に、前記発泡補強部材の接着面部は、前記発泡接着剤の発泡倍率が前記発泡接着剤の他の部分より高い部分によって前記中空本体と接着結合される部分の板厚が前記発泡接着剤の他の部分によって前記中空本体と接着結合される部分の板厚に比して厚く形成される、ことを特徴とする。
また更に、本願の請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、前記中空構造物は、車体の一部を構成する車体構成部材であり、前記発泡接着剤の発泡は、車体の塗装乾燥時の熱によって行われる、ことを特徴とする。
本願の請求項1に係る発泡補強部材が配設された中空構造物によれば、発泡補強部材の接着面部は、発泡接着剤の発泡倍率が発泡接着剤の他の部分より高い部分によって中空本体と接着結合される部分の板厚が発泡接着剤の他の部分によって中空本体と接着結合される部分の板厚に比して厚く形成されていることにより、発泡接着剤の結合強度が弱くなる発泡接着剤の発泡倍率の高い部分に対応する接着面部の板厚を厚くして補強部材の補強効果を高め、中空構造物への補強部材の補強効果を中空構造物の断面において略均一化させ、発泡接着剤の発泡倍率の高い部分において中空構造物への補強部材の補強効果が低下することを抑制することができる。中空構造物に外部から荷重が作用する場合に、発泡接着剤の発泡倍率の高い部分において応力が集中したり局部的に弱くなったりすることを抑制することができる。発泡補強部材の接着面部を発泡成形することにより重量の増加を抑制しつつ接着面部の厚さを厚くして剛性を向上させるようにした発泡補強部材が配設された中空構造物において、前記効果を有効に奏することができる。
また、本願の請求項2に係る発明によれば、接着面部は、該接着面部の端部の板厚が該接着面部の中央部の板厚に比して厚く形成されていることにより、発泡補強部材の接着面部を成形するための成形型のキャビティ対向面がキャビティの容積を拡大する方向に移動されることにより該接着面部が発泡成形される発泡補強部材が配設された中空構造物において、前記効果を有効に奏することができる。
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、中空構造物は、車体の一部を構成する車体構成部材であることにより、車体の重量を抑制しつつ車体の剛性を向上させることができ、前記効果を具体的に実現することができる。
また更に、本願の請求項4に係る発泡補強部材が配設された中空構造物の製造方法によれば、発泡補強部材の接着面部は、発泡接着剤の発泡倍率が発泡接着剤の他の部分より高い部分によって中空本体と接着結合される部分の板厚が発泡接着剤の他の部分によって中空本体と接着結合される部分の板厚に比して厚く形成されることにより、発泡接着剤の結合強度が弱くなる発泡接着剤の発泡倍率の高い部分に対応する接着面部の板厚を厚くして補強部材の補強効果を高め、中空構造物への補強部材の補強効果を中空構造物の断面において略均一化させ、発泡接着剤の発泡倍率の高い部分において中空構造物への補強部材の補強効果が低下することを抑制した中空構造物を製造することができる。発泡補強部材の接着面部を発泡成形することにより重量の増加を抑制しつつ接着面部の厚さを厚くして剛性を向上させるようにした発泡補強部材が配設された中空構造物の製造において、前記効果を有効に奏することができる。
また更に、本願の請求項5に係る発明によれば、中空構造物は、車体の一部を構成する車体構成部材であり、発泡接着剤の発泡は、車体の塗装乾燥時の熱によって行われることにより、発泡接着剤を発泡させるための工程を別途設ける必要がなく、車体の製造時に一般に施される塗装乾燥時に発泡接着剤を発泡させることができるので、既存の製造工程を利用することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、「上」、「下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語など特定の方向を意味する用語を使用するが、それらの使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る発泡補強部材が配設された中空構造物を適用したサイドシルを示す斜視図であり、図1では、センタピラーとの結合部を含むサイドシルを示している。なお、図1では、サイドシルを構成する中空本体の内部に配設された補強部材を明瞭に図示するために、サイドシルインナ及びサイドシルアウタと、センタピラーインナ及びセンタピラーアウタとを二点鎖線で示し、これを透過状態で示している。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る発泡補強部材が配設された中空構造物を適用したサイドシル10は、車体の一部を構成する車体構成部材であり、車体下部において車体前後方向に延びるように配設されるとともに、該サイドシル10に車体上下方向に延びるセンタピラー20が結合されている。また、サイドシル10には、センタピラー20との結合部25の近傍において該結合部25の車体前方側及び車体後方側にそれぞれサイドシル10を補強するための補強部材30及び40が配設されている。
サイドシル10は、中空状に形成される中空本体17と、該中空本体17の内部に配設される補強部材30、40とを備え、中空本体17は、車体の内面の一部を構成して車体前後方向に延びるサイドシルインナ11と、車体の外面の一部を構成して車体前後方向に延びるサイドシルアウタ12とによって形成されている。
具体的には、サイドシルインナ11は、略水平方向に延びる上面部11aと、上面部11aに対向して上面部11aの下方に位置し、略水平方向に延びる下面部11bと、下面部11bから上面部11aまで略垂直方向に延びる側面部11cとを備え、車幅方向内方側(図1では左側である車内側)に側面部11cが膨出するようにして配設されている。
サイドシルインナ11にはまた、上面部11aの車幅方向外方端部に上面部11aから上方へ延びる上フランジ部が形成されるとともに、下面部11bの車幅方向外方端部に下面部11bから下方へ延びる下フランジ部が形成され、サイドシルインナ11は、断面略ハット状に形成されている。
一方、サイドシルアウタ12は、略水平方向に延びる上面部12aと、上面部12aに対向して上面部12aの下方に位置し、略水平方向に延びる下面部12bと、下面部12bから上面部12aまで略垂直方向に延びる側面部12cとを備え、車幅方向外方側(図1では右側である車外側)に側面部12cが膨出するようにして配設されている。
サイドシルアウタ12もまた、上面部12aの車幅方向内方端部に上面部12aから上方へ延びる上フランジ部が形成されるとともに、下面部12bの車幅方向内方端部に下方へ延びる下フランジ部が形成され、サイドシルアウタ12は、断面ハット状に形成されている。
そして、サイドシルインナ11とサイドシルアウタ12とは、上フランジ部及び下フランジ部どうしが接合され、これによって中空本体17が中空状に形成されている。なお、サイドシルインナ11とサイドシルアウタ12とはそれぞれ、鋼板などの金属製の板状素材をプレス加工して形成され、サイドシルインナ11とサイドシルアウタ12とは、例えばスポット溶接などを用いて接合される。
このようにして形成される中空本体17には、サイドシルインナ11の上面部11a及び側面部11cによってそれらの間に角部11dが形成され、サイドシルインナ11の下面部11b及び側面部11cによってそれらの間に角部11eが形成され、サイドシルアウタ12の上面部12a及び側面部12cによってそれらの間に角部12dが形成され、サイドシルアウタ12の下面部12b及び側面部12cによってそれらの間に角部12eが形成され、中空本体17は略矩形閉断面状に形成されている。
なお、以下では、適宜、サイドシルインナ11の側面部11cを中空本体17の車幅方向内方側の側面部である内側面部11cとして表し、サイドシルアウタ12の側面部12cを中空本体17の車幅方向外方側の側面部である外側面部12cとして表し、サイドシルインナ11の上面部11a、サイドシルアウタ12の上面部12aを中空本体17の上面部11a、12aとして表し、サイドシルインナ11の下面部11b、サイドシルアウタ12の下面部12bを中空本体17の下面部11b、12bとして表す。
また、サイドシル10に結合されるセンタピラー20は、車体の内面の一部を構成して車体上下方向に延びるセンタピラーインナ21と、車体の外面の一部を構成して車体上下方向に延びるセンタピラーアウタ22とによって中空状に形成され、サイドシル10との結合部25において、センタピラーインナ21がサイドシルインナ11と一体的に形成されるとともにセンタピラーアウタ22がサイドシルアウタ12と一体的に形成されている。
図2は、本発明の実施形態に係る発泡補強部材を示す斜視図、図3は、図1におけるY3a−Y3a線及びY3b−Y3b線に沿ったサイドシルの断面図であり、図3(a)は、Y3a−Y3a線に沿ったサイドシルの断面図、図3(b)は、Y3b−Y3b線に沿ったサイドシルの断面図である。なお、図2及び図3並びに後述する図4では、発泡補強部材の周壁部の内面を破線L11で示し、発泡補強部材の周壁部の発泡前の状態を二点鎖線L12で示している。
サイドシル10のセンタピラー20との結合部25の車体前方側に配設される発泡補強部材30と、サイドシル10のセンタピラー20との結合部25の車体後方側に配設される発泡補強部材40とは同様に構成されて同様に成形されるので、以下では、発泡補強部材30についてのみ説明する。
サイドシル10を構成する中空本体17の内部に配設される発泡補強部材30は、図2及び図3に示すように、中空本体17を横切る方向に延び、中空本体17の内部を車体前後方向に区切る板状の隔壁部35と、該隔壁部35に結合され該隔壁部35の周囲を覆い、中空本体17の内面に沿って延びる板状の周壁部36とを備えている。
隔壁部35は、図3に示すように、中空本体17の内面形状に対応した外形形状を有し、中空本体17の長手方向と直交する直交断面方向に延びるように形成されている。隔壁部35にはまた、隔壁部35から該隔壁部35と略直交する方向に延びる複数の板状のリブ37が設けられている。
周壁部36もまた、中空本体17の内面形状に対応した外形形状を有し、該周壁部36は、中空本体17の上面部11a、12a、下面部11b、12b、内側面部11c及び外側面部12cにそれぞれ発泡性接着剤15を介して接着結合される中空本体17との接着面部である上面部31、下面部32、内側面部33及び外側面部34を備えて略矩形閉断面状に形成されている。
発泡補強部材30では、周壁部36はまた、上面部31と内側面部33、下面部32と内側面部33、上面部31と外側面部34、下面部32と外側面部34によってそれぞれ形成される角部30a、30b、30c、30dの内面が発泡補強部材30の内方側に設けられ、上面部31、下面部32、内側面部33及び外側面部34の端部では上面部31、下面部32、内側面部33及び外側面部34の中央部に比して厚く形成されている。
この発泡補強部材30は、リブ37が設けられると共に角部30a、30b、30c、30d内面が発泡補強部材30の内方側に設けられること以外は、前述した発泡補強部材110と同様に構成され、発泡補強部材110と同様に射出成形によって成形され、発泡補強部材30の外面形状に応じて略矩形中空状に形成されたキャビティを有する成形型を用い、発泡性樹脂を該成形型のキャビティ内に注入した後に該成形型の少なくとも一部をキャビティの容積を拡大する方向に該成形型の外方側へ移動させて、中空本体17との接着面部である周壁部36が発泡成形されて成形される。
このようにして成形される発泡補強部材30では、前述した発泡補強部材110と同様に、キャビティの容積を拡大する方向に移動させた成形型のキャビティ対向面の端部では発泡性樹脂が該成形型の移動に完全に追従せずに、該成形型のキャビティ対向面の中央部に比してコアバックに伴って増加する厚さ(二点鎖線L12で示す位置からの厚さ)が薄く成形されることとなる。
図2に示すように、発泡補強部材30の周壁部36を構成する内側面部33について、内側面部33の端部33aでは、内側面部33の中央部33bに比べてコアバックに伴って増加する厚さが薄くなって発泡成形されることとなる。発泡補強部材30の周壁部36を構成する上面部31、下面部32及び外側面部34についても同様に、上面部31、下面部32及び外側面部34の端部では、上面部31、下面部32及び外側面部34の中央部に比べてコアバックに伴って増加する厚さが薄くなって発泡成形されることとなる。
サイドシル10では、このようにして成形される発泡補強部材30の周壁部36が中空本体17の発泡補強部材30との接着面部と略平行になるように、具体的には発泡補強部材30の周壁部36を構成する上面部31、下面部32及び両側の側面部33、34がそれぞれ中空本体17の上面部11a、12a、下面部11b、12b及び両側の側面部11c、12cと所定の間隙を有して略平行になるように中空本体17の内部に発泡補強部材30が配設され、発泡性接着剤15を介して中空本体17と発泡補強部材30とが接着結合される。
これにより、サイドシル10ではまた、発泡補強部材30が、隣接する2つの接着面部、具体的には上面部31と内側面部33、下面部32と内側面部33、上面部31と外側面部34、下面部32と外側面部34を備えるとともに、中空本体17が、発泡補強部材30の隣接する2つの接着面部にそれぞれ接着結合される隣接する2つの接着面部、具体的には上面部11a、12aと内側面部11c、下面部11b、12bと内側面部11c、上面部11a、12aと外側面部12c、下面部11b、12bと外側面部12cとを備え、発泡補強部材30の2つの接着面部によって形成される角部30a、30b、30c、30dと中空本体17の2つの接着面部によって形成される角部11d、11e、12d、12eとが接着結合される。
このようにして構成される発泡補強部材30が中空本体17の内部に配設されたサイドシル10を製造する場合、先ず、別々に所定形状に成形した発泡補強部材30と中空本体17とを準備する。前述したように、中空本体17は、サイドシルインナ11とサイドシルアウタ12とがそれぞれ、鋼板などの金属製の板状素材をプレス加工して所定形状に成形される一方、発泡補強部材30は、発泡補強部材30の形状に応じて略矩形閉断面状に形成されたキャビティを有する成形型を用い、発泡性樹脂を該成形型のキャビティ内に注入した後に該成形型の少なくとも一部をキャビティの容積を拡大する方向に該成形型の外方側へ移動させて、中空本体17との接着面部である周壁部36が発泡成形されて所定形状に成形される。
発泡補強部材30を成形するための成形型は、成形型120と同様に、発泡補強部材30の周壁部36を構成する上面部31、下面部32及び両側の側面部33、34がそれぞれ発泡成形されるように上面部31、下面部32及び両側の側面部33、34を成形するためのキャビティ対向面を有する上下左右4つの可動コアとこれら可動コアの間に配設される4つの固定コアとを備えて構成されている。
また、発泡補強部材30を成形するための成形型は、成形型120と同様に、上下左右4つの可動コア及びこれら可動コアの間に配設される4つの固定コアの両側に設けられる固定型及び可動型を備えているが、該固定型及び可動型のキャビティ対向面は、図2及び図3に示す発泡補強部材30の形状に対応して形成されている。
そして、前記成形型のキャビティに発泡性樹脂を充填した後に4つの可動コアをそれぞれキャビティの容積を拡大する方向に成形型の外方側へ移動させると、可動コアの移動に伴って発泡性樹脂の発泡が促進されて発泡成形され、サイドシル10と接着結合されるサイドシル10との接着面部である周壁部36が発泡成形された発泡補強部材30が成形される。
前述したように、可動コアを成形型の外方側へ移動させると、可動コアのキャビティ対向面の端部では発泡性樹脂が可動コアの移動に完全に追従せずに、可動コアのキャビティ対向面の中央部に比してコアバックに伴って増加する厚さが薄くなって成形されることとなる。
本実施形態では、発泡補強部材30の上面部31、下面部32及び両側の側面部33、34がそれぞれ可動コアを用いて発泡成形され、上面部31、下面部32及び両側の側面部33、34の端部において上面部31、下面部32及び両側の側面部33、34の中央部に比べてそれぞれコアバックに伴って増加する厚さが薄くなって成形され、発泡補強部材30の角部30a、30b、30c、30dではコアバックに伴って増加する厚さが薄くなって成形されることとなる。
そして、中空本体17の内部に発泡補強部材30が配設されたサイドシル10を製造するために、発泡補強部材30の周壁部36に所定の厚さを有するシート状の発泡性樹脂15を設けた後に、発泡補強部材30を中空本体17と所定の間隙を有するようにサイドシルインナ11とサイドシルアウタ12との間の所定位置に配設した状態でサイドシルインナ11とサイドシルアウタ12とを接合し、発泡補強部材30を中空本体17の内部に配設するとともに発泡補強部材30の中空本体17との接着面部である周壁部36と中空本体17との間にシート状の発泡接着剤15を設ける。なお、発泡補強部材30は、図示しないクリップ等を用いて中空本体17の内部の所定位置に保持することができるようになっている。
図4は、本発明の実施形態に係る発泡補強部材に設けられた発泡接着剤が発泡する前のサイドシルの断面図であり、図4(a)は、図3(a)に示す断面において発泡接着剤が発泡する前の状態を示し、図4(b)は、図4(a)のC部を拡大して示している。なお、図4(b)は、前述した図8(a)に対応する断面について示している。
図4に示すように、発泡補強部材30の周壁部36に所定厚さを有するシート状の発泡接着剤15を設けた後に、サイドシル10を備えた車体には防錆処理として電着塗装が施される。サイドシル10では、この車体の電着塗装の乾燥時の熱によって発泡接着剤15が発泡され、中空本体17と発泡補強部材30とが発泡接着剤15を介して接着結合されたサイドシル10が製造される。なお、電着塗装の乾燥は、例えば150〜170℃の温度に30分保持することにより行われる。
このように、発泡接着剤15の発泡は、車体の塗装乾燥時の熱によって行われることにより、発泡接着剤15を発泡させるための工程を別途設ける必要がなく、車体の製造時に一般に施される塗装乾燥時に発泡接着剤15を発泡させることができるので、既存の製造工程を利用することができる。
前述したように、発泡接着剤15が発泡されると、発泡接着剤15は、発泡補強部材30の周壁部36のコアバックに伴って増加する厚さが薄くなって成形された部分33aに設けられた部分(図4(b)の符号15bで示す部分)では発泡補強部材30の周壁部36のコアバックに伴って増加する厚さが所定厚さに成形された部分33bに設けられた部分(図4(b)の符号15aで示す部分)に比して発泡倍率が高くなってしまうこととなる。
発泡補強部材30では、発泡接着剤15は、発泡補強部材30の上面部31、下面部32、内側面部33及び外側面部34の端部33aに設けられた部分では、該上面部31、下面部32、内側面部33及び外側面部34の中央部33bに設けられた部分に比して発泡倍率が高くなり、発泡補強部材30の角部30a、30b、30c、30dに設けられる部分で発泡倍率が高くなってしまうこととなる。
しかしながら、サイドシル10では、発泡補強部材30の中空本体17との接着面部である上面部31、下面部32、内側面部33及び外側面部34は、該接着面部の端部の板厚が該接着面部の中央部の板厚に比して厚く形成され、発泡接着剤15の発泡倍率が発泡接着剤15の他の部分より高い部分によって中空本体17と接着結合される部分、すなわち上面部31、下面部32、内側面部33及び外側面部34の端部の板厚が発泡接着剤15の他の部分によって中空本体17と接着結合される部分、すなわち上面部31、下面部32、内側面部33及び外側面部34の中央部の板厚に比して厚く形成されている。
これにより、発泡接着剤15の結合強度が弱くなる発泡接着剤15の発泡倍率の高い部分に対応する接着面部の板厚を厚くして補強部材30の補強効果を高め、サイドシル10への補強部材30の補強効果をサイドシル10の断面において略均一化させることができ、発泡接着剤15の発泡倍率の高い部分においてサイドシル10への補強部材30の補強効果が低下することを抑制することができる。
また、発泡補強部材30の隣接する2つの接着面部によって形成される角部30a、30b、30c、30dと中空本体17の隣接する2つの接着面部によって形成される角部11d、11e、12d、12eとが接着結合されることにより、中空本体17の角部11d、11e、12d、12eを効果的に補強したサイドシル10を製造することができる。例えば側突時に、サイドシル10に外部から荷重が作用する際に、中空本体17の角部11d、11e、12d、12eを効果的に補強することができ、中空本体17の断面変形を効果的に抑制することができる。
本実施形態では、発泡補強部材30について、周壁部36がコアバック法を用いて発泡成形されているが、隔壁部35についても同様にコアバック法を用いて発泡成形し、該隔壁部35の板厚を厚くすることが可能である。かかる場合には、重量の増加を抑制しつつ発泡補強部材の強度及び剛性を向上させることができ、補強部材の補強効果をさらに効果的に高めることができる。
また、本実施形態では、中空本体の内部に発泡接着剤を介して接着結合される発泡補強部材が配設された中空構造物をサイドシルに適用した場合について記載しているが、例えばセンタピラーなどのその他の車体構成部材にも適用することができる。また、車体構成部材に限らず、中空本体17との接着面部が発泡成形されてなる発泡補強部材が発泡接着剤を介して接着結合されるその他の中空構造物にも適用することができる。
なお、本実施形態では、これに限定するものではないが、発泡性樹脂に用いる樹脂として、PP樹脂、PA6樹脂、PA66樹脂、MXD樹脂などの樹脂を用いることができ、該樹脂にフィラーとしてガラス繊維、炭素繊維、タルクなどを含有させるようにしてもよい。例えば、発泡性樹脂として、30重量%ガラス繊維を含有させたポリアミド6樹脂である商品名:T−402(東洋紡績株式会社製)を用いることができる。また、発泡性樹脂に用いる発泡剤としては、超臨界状態にした二酸化炭素又は窒素等の不活性ガスを用いることができ、その他の物理発泡剤、あるいは化学発泡剤を使用することも可能である。
一方、発泡接着剤としては、エポキシ樹脂やウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができ、該樹脂にフィラーとして無機系のガラス繊維、炭酸カルシウム、タルク、クレーなど、有機系フィラーのパルプ繊維や木粉などを含有させるようにしてもよい。例えば、発泡接着剤として、商品名:L−5520(エルアンドエル・プロダクツ社製)を用いることができる。また、発泡接着剤に用いる発泡剤としては、超臨界状態にした二酸化炭素又は窒素等の不活性ガスを用いることができ、その他の物理発泡剤、あるいは化学発泡剤を使用することも可能である。
また、発泡補強部材30に設けられる発泡接着剤15は、発泡補強部材30と同様に射出成形によってシート状に成形することができる。例えば、発泡補強部材30を成形した後に、別の成形装置の成形型に発泡補強部材30をインサートし、発泡補強部材30の外周にシート状の発泡接着剤15を射出成形によって成形することができる。また、発泡補強部材30を成形するための成形型において発泡補強部材30を成形した後に該成形型を所定厚み開き、その隙間に発泡接着剤15を射出成形によって成形する、所謂二重成形(二色成形)によって発泡接着剤15をシート状に成形することも可能である。
このように、本実施形態に係る発泡補強部材30が配設された中空構造物10では、発泡補強部材30は、中空本体17の内面に沿う板状の接着面部31、32、33、34を備え、該接着面部31、32、33、34は、発泡性樹脂を成形型のキャビティ内に注入した後に該成形型の少なくとも一部をキャビティの容積を拡大する方向に移動させることによって発泡成形されるとともに、発泡接着剤15の発泡倍率が発泡接着剤15の他の部分より高い部分によって中空本体17と接着結合される部分の板厚が発泡接着剤15の他の部分によって中空本体17と接着結合される部分の板厚に比して厚く形成される。
これにより、発泡接着剤の結合強度が弱くなる発泡接着剤の発泡倍率の高い部分に対応する接着面部の板厚を厚くして補強部材の補強効果を高め、中空構造物への補強部材の補強効果を中空構造物の断面において略均一化させ、発泡接着剤の発泡倍率の高い部分において中空構造物への補強部材の補強効果が低下することを抑制することができる。中空構造物に外部から荷重が作用する場合に、発泡接着剤の発泡倍率の高い部分において応力が集中したり局部的に弱くなったりすることを抑制することができる。発泡補強部材の接着面部を発泡成形することにより重量の増加を抑制しつつ接着面部の厚さを厚くして剛性を向上させるようにした発泡補強部材が配設された中空構造物において、前記効果を有効に奏することができる。
また、接着面部31、32、33、34は、該接着面部31、32、33、34の端部の板厚が該接着面部31、32、33、34の中央部の板厚に比して厚く形成されていることにより、発泡補強部材の接着面部を成形するための成形型のキャビティ対向面がキャビティの容積を拡大する方向に移動されることにより該接着面部が発泡成形された発泡補強部材が配設された中空構造物において、前記効果を有効に奏することができる。
更に、中空構造物10は、車体の一部を構成する車体構成部材であることにより、車体の重量を抑制しつつ車体の剛性を向上させることができ、前記効果を具体的に実現することができる。
なお、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。