JP5655290B2 - ガラスパイプの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、光ファイバを製造するための光ファイバ母材の形成に用いられるガラスパイプの製造方法に関する。
光ファイバを製造するための光ファイバ母材の製造過程において、内付けCVD(Chemical Vapor Deposition)法によってガラスパイプの内側に原料ガスを導入しながらガラスパイプを加熱し、ガラスパイプの内側にガラス微粒子を付着させて堆積させること等が行われる。
そして、このような光ファイバ母材の製造過程では、ガラスパイプの内側にガラス膜を堆積させる工程に先立ち、ガラスパイプの内側にエッチングガスを導入しながらガラスパイプをバーナで加熱し、ガラスパイプの内周面をエッチングすることが行われる(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−315349号公報
ところで、ガラスパイプ内のエッチングを行う際、エッチングガスの流入側から排出側へ向かってバーナを一定速度で相対移動させて加熱すると、ガラスパイプの内面のエッチング量がエッチングガスの流入側の方が排出側より多くなり、ガラスパイプの長手方向で偏肉が生じることがある。
このため、このガラスパイプを用いて形成した光ファイバ母材から光ファイバを製造すると、コア径が長手方向で変動し、光学特性が変動するおそれがあった。
本発明の目的は、ガラスパイプの内面を長手方向で均一にエッチングし、長手方向における偏肉が極力抑えられたガラスパイプを製造することが可能なガラスパイプの製造方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできる本発明のガラスパイプの製造方法は、製品となるガラスパイプよりも内径の大きなダミーパイプが両端に接続された前記ガラスパイプの内側にエッチングガスを導入しながら前記ガラスパイプに対して加熱部を長手方向へ相対移動させて前記ガラスパイプを加熱し、前記ガラスパイプの内面をエッチングするガラスパイプの製造方法であって、
前記エッチングガスの流入側における前記加熱部の相対移動速度を、前記ガラスパイプの中間部、及び前記エッチングガスの排出側より速くすることを特徴とする。
本発明のガラスパイプの製造方法によれば、加熱部の相対移動速度が一定の場合と比較して、エッチングガスの流入側におけるエッチング量が小さく抑えられるとともに、排出側におけるエッチングが促進される。よって、ガラスパイプの長手方向全体におけるエッチング量を均一にすることができ、これにより、ガラスパイプの偏肉を極力抑えることができる。
そして、このようにエッチング処理を施したガラスパイプを用いて光ファイバ母材を作製し、この光ファイバ母材から光ファイバを製造すれば、長手方向でのコア径の変動が少なく、伝送特性に優れた光ファイバとすることができる。
本発明に係るガラスパイプの製造方法を実施することのできるガラスパイプの製造装置の概略構成図である。 両端にダミーパイプが接続されたガラスパイプの断面図である。 ガラスパイプの長手方向位置に対するエッチング処理によるエッチング量を示すグラフである。
以下、本発明に係るガラスパイプの製造方法の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、ガラスパイプの製造装置1は、両端付近に支持部11が立設された基台12を有している。支持部11は、それぞれ回動可能なチャック13を有している。これらのチャック13は、製品となるガラスパイプGの両端部に融着して接続したダミーパイプDをそれぞれ把持し、ガラスパイプGを水平に支持する。
このガラスパイプGは、例えば、フッ素添加ガラスにより形成されたものであり、このガラスパイプGの中心孔G1に、例えば、内付けCVD法によって純シリカからなるコアを形成したり、もしくは、中心孔G1に純シリカからなるコアロッドを挿入して一体化させたりして、光ファイバ母材を作製できる。そのような光ファイバ母材を線引きすることにより、例えばフッ素が添加されたガラスパイプ部分からなるクラッドと純シリカからなるコアとを有する光ファイバを製造することができる。
図2に示すように、ガラスパイプGの両端部に接続されたダミーパイプDは、ガラスパイプGを含む全体重量を極力抑えて振れ回りを小さくするため、ガラスパイプGよりも厚みが薄く軽いものが用いられている。また、このダミーパイプDとしては、エッチングガスのガラスパイプGへの流入及びガラスパイプGからの排出を円滑にすべく、ガラスパイプGよりも大きな内径を有するものが用いられている。例えば、外径80〜85mm、内径17mmのガラスパイプGに対して、外径36mm、内径21mmのダミーパイプDが用いられる。
なお、ガラスパイプGと同じ内径のダミーパイプDをガラスパイプGの端面に融着すると、ガラスパイプGの中心孔G1が溶融したガラスによって狭められたり閉塞したりしてしまうことがある。このため、ガラスパイプGより内径の大きいダミーパイプDを、ガラスパイプGの端面に融着して接続している。
支持部11によって支持されるガラスパイプGの下方には、ガラスパイプGを加熱するための熱源10が設けられている。この熱源10には、酸水素バーナ、プラズマトーチ、誘導加熱炉、抵抗加熱炉を用いることができる。
熱源10は、支持レール17に装着された移動台18上に支持され、移動台18は、ラック・ピニオン機構により支持レール17の長手方向に沿って移動することができる。支持レール17と、ガラスパイプGとは、それぞれの長手方向が平行になるように配設されている。
また、移動台18の上部には、熱源10の位置を3軸方向に微調節することが可能な3軸ステージ19が設けられていると良い。熱源10は、3軸ステージ19に固定されている場合、移動台18の上で、ガラスパイプGの軸方向、ガラスパイプGの軸方向と直交する方向、ガラスパイプGとの距離方向(図中上下方向)に移動することができる。また、3軸ステージ19を用いない場合には、少なくとも熱源10とガラスパイプGとの距離方向に移動できるような昇降機能を有したステージを用いると良い。
このように、熱源10は、支持レール17と、移動台18と、3軸ステージ19とから構成された可動装置21によって水平面内及び垂直方向へ独立して移動可能とされている。
また、支持部11には、一方側(図中左側)に、ガス導入手段の一部を構成する供給管22が接続され、他方側(図中右側)に排気管23が接続されている。これらの供給管22と排気管23は、ガラスパイプGの中心孔G1と連続した流路を形成している。
また、供給管22には、ガラスパイプGの中心孔G1に導入するガスの導入量を調節する流量調節手段であるMFC(Mass Flow Controller)31が接続されている。このMFC31は、供給管22とともにガス導入手段を構成している。MFC31は、流すガスに応じ、数系統設けることとしてもよい。
また、MFC31は、原料ガス供給装置32に接続されており、原料ガス供給装置32は、制御部33によってガスの供給流量が制御される。制御部33は、熱源10の温度や、熱源10を移動させる可動装置21の動作を制御可能とするように、熱源10及び可動装置21に対しても接続されている。
次に、ガラスパイプGの中心孔G1の内周面をエッチングする方法について説明する。
ダミーパイプDをチャック13に把持させることにより、支持部11に支持したガラスパイプGを軸周りに回転させ、MFC31により供給管22を介してガラスパイプGの中心孔G1内にエッチングガスを導入する。エッチングガスは、六フッ化硫黄(SF)または四フッ化炭素(CF)をベースに、酸素(O)や塩素(Cl)を混合して、予め設定した濃度に調節して用いる。
そして、エッチングガスを導入しながら、エッチングガスの流入側Gaから排出側Gbへ向かって熱源10を移動させ、ガラスパイプGをエッチングガスの流入側Gaから排出側Gb側へ向かって加熱していく。
すると、ガラスパイプGの中心孔G1は、その内周面のガラスがエッチングガスと反応して揮散する。これにより、ガラスパイプGの中心孔G1の内周面がエッチングされ、傷や不純物が除去されて平滑面とされる。例えば、ガラスパイプGの中心孔G1の内周面は、一度の熱源10の移動によって数μm程度削られ、削りたい量に合わせて熱源10を複数回移動させる。その際、熱源10を排出側Gb側から流入側Gaへ戻す時には熱源10の温度を低く(熱源10がバーナであれば炎の大きさを小さく)し、エッチングを行わないようにする。
ガラスパイプGに対して熱源10をエッチング開始から終了まで一定速度にて移動させて加熱すると、ガラスパイプGの中心孔G1の内周面のエッチング量が、エッチングガスの流入側Gaと排出側Gbとで異なり、長手方向で偏肉が生じることがある。具体的には、エッチングガスの流入側Gaでは、エッチング量が多くなり、排出側Gbではエッチング量が少なくなる。
これは、エッチングガスの流入側Gaでは、ガラスパイプGとダミーパイプDとの接続箇所における内径差から生じるエッチングガスの乱流によってエッチング量が増加するためと考えられる。また、エッチングガスの排出側Gbでは、ガラスパイプGとダミーパイプDとの熱容量の差によって熱がダミーパイプDに逃げ、エッチング量が減少するためと考えられる。なお、エッチングガスの流入側GaにおいてもガラスパイプGとダミーパイプDとの熱容量の差によって熱がダミーパイプDに逃げてエッチング量が減少する現象は生じるが、その減少量よりもエッチングガスの乱流によるエッチング増加量の方が大きいものと推測される。
本実施形態では、エッチングを行う際に、エッチングガスの流入側Gaにおける熱源10の移動速度をエッチングガスの排出側Gbより速くする。なお、ガラスパイプGの中間部Gmでは、熱源10の移動速度を、流入側Ga及び排出側Gbにおける熱源10の移動速度の間の一定速度とする。
このようにすると、エッチングガスの流入側Gaにおけるエッチングが抑えられるとともに、排出側Gbにおけるエッチングが促進される。よって、ガラスパイプGの長手方向全体におけるエッチング量を均一にすることができ、これにより、ガラスパイプGの偏肉を極力抑えることができる。
例えば、1.5mmのエッチングを行う際、熱源10の移動速度を、流入側Gaでは15mm/分、中間部Gmでは13mm/分、排出側Gbでは10mm/分と、段階的に変化させた場合には、熱源10の移動速度を長手方向全体にわたって10mm/分で一定とした場合と比較して、エッチング量の長手変動量を、例えば0.53mm(速度一定の場合)から0.34mmに減少させることができる。
このようにエッチング処理を施したガラスパイプGを使用して光ファイバ母材を形成し、この光ファイバ母材から光ファイバを製造すれば、長手方向でのコア径の変動が少なく、伝送特性に優れた光ファイバとすることができる。
つまり、本実施形態によれば、長手方向における偏肉が極力抑えられて光ファイバ母材用として好適なガラスパイプを製造することができる。
なお、この熱源10の移動速度の制御は、エッチング量が長手方向全体にて均一となる移動速度を実測して予め求めておき、その求めた移動速度のデータに基づいてフィードフォワード制御すれば良い。エッチングしているガラスパイプGのエッチング量を測定しながら熱源10の移動速度をフィードバック制御する場合と比較して、測定装置や複雑な制御装置が不要であり、設備構成も簡略化することができる。
また、上記実施形態では、熱源10の移動速度を段階的に変化させたが、連続的に変化させても良い。
熱源10の移動速度を変更した下記の3つの条件でエッチング処理を行った。エッチング量の目標値は1.5mmとした。そして、それぞれの場合におけるガラスパイプGの長手方向位置に対する中心孔G1の内面のエッチング量を測定した。なお、ガラスパイプGの径は、上記実施形態と同様に外径80mm、内径17mmである。また、下記条件の流入側Gaの範囲は、エッチングガス流入側のガラスパイプGの端部からガラスパイプGの全長の30%としており、排出側Gbの範囲は、エッチングガス排出側のガラスパイプGの端部からガラスパイプGの全長の30%としている。つまり、中間部Gmの範囲は、流入側Gaと排出側Gbの間のガラスパイプGの全長の40%の範囲である。
(エッチング処理の条件)
(1)実施例1
熱源10の移動速度を、エッチングガスの流入側Gaでは15mm/分、中間部Gmでは13mm/分、排出側Gbでは10mm/分と、段階的に変化させた。
(2)実施例2
熱源10の移動速度を、エッチングガスの流入側Gaでは20mm/分、中間部Gmでは13mm/分、排出側Gbでは10mm/分と、段階的に変化させた。
(3)比較例1
熱源10の移動速度を、エッチングガスの流入側Ga、中間部Gm及び排出側Gbにて全て10mm/分と一定にした。
(測定結果)
ガラスパイプの長手方向位置に対するエッチング処理によるエッチング量の測定結果を図3に示す。なお、グラフの縦軸のエッチング量は、エッチング処理の前後で測定した内径の差を相対値で表したものであり、グラフの縦軸の中心(エッチング量=1)が平均値を示している。また、グラフの横軸の0は、エッチングガスの流入側のガラスパイプGの端部であり、横軸の1は、エッチングガスの排出側のガラスパイプGの端部である。すなわち横軸は、各測定例において、パイプ全長を「1」に正規化したときの、相対的な位置を示している。
図3に示すように、熱源10の移動速度を変化させた実施例1及び実施例2では、エッチング量の変動が長手方向にわたって抑えられることがわかった。特に、流入側Gaで熱源10の移動速度を実施例1より大きな20mm/分とした実施例2では、流入側Gaのエッチング量の変動が良好に抑えられることがわかった。
これに対して、熱源10の移動速度を一定とした比較例1では、流入側Gaでエッチング量が大きく増加し、排出側Gbでエッチング量が大きく減少した。
すなわち、実施例1,2のように、エッチングガスの流入側Gaにおける熱源10の移動速度をエッチングガスの排出側Gbより速くすると、速度を一定とした場合と比較して、エッチングガスの流入側Gaにおけるエッチングが抑制されるとともに、排出側Gbにおけるエッチングが促進され、よって、ガラスパイプGの長手方向全体におけるエッチング量を均一にすることができることがわかった。これにより、ガラスパイプGの偏肉を極力抑えることができる。
したがって、実施例1,2にて製造したガラスパイプGから光ファイバ母材を作製し、この光ファイバ母材から光ファイバを製造すれば、長手方向でのコア径の変動が少なく、伝送特性に優れた光ファイバとすることができることがわかった。
10:熱源(加熱部)、D:ダミーパイプ、G:ガラスパイプ、Ga:流入側、Gb:排出側、Gm:中間部

Claims (1)

  1. 製品となるガラスパイプよりも内径の大きなダミーパイプが両端に接続された前記ガラスパイプの内側にエッチングガスを導入しながら前記ガラスパイプに対して加熱部を長手方向へ相対移動させて前記ガラスパイプを加熱し、前記ガラスパイプの内面をエッチングするガラスパイプの製造方法であって、
    前記エッチングガスの流入側における前記加熱部の相対移動速度を、前記ガラスパイプの中間部、及び前記エッチングガスの排出側より速くすることを特徴とするガラスパイプの製造方法。
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