JP5654837B2 - 変位測定装置 - Google Patents
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Description
近年、固体スケール、静電容量型センサ、レーザ変位計等の各種測長機器の高性能化が進んでいる。例えば、固体スケールは、スケールピッチの微細化や電気的分割数の向上などにより、ピコメートルオーダの分解能を有するものが出現している。しかし、これらの機器の取り付け作業や信号調整には熟練を要するため、測長機器の性能を最大限に発揮させることが困難となっていた(「牧野内ほか:スキャン光学エンコーダに関する一研究,精密光学会誌,Vol.75,No.10,2009」)。従って、測長機器の高性能化に伴い、これらをピコメートルの精度で校正あるいは性能評価できる装置が求められていた。
従来の測長機器を性能評価する装置としてレーザ干渉測長計が広く用いられている。
レーザ干渉測長計は、レーザ光源から出力されたレーザ光を2つに分割するとともに、それぞれ異なる光路を通過させた後に干渉させるレーザ干渉器の技術を応用し、レーザ干渉器がレーザ光を干渉させて生成した干渉縞に基づき、精密な長さを測定するものである。具体的には、レーザ干渉器の可動鏡を測定対象として、可動鏡の変位量を干渉縞の明暗の変化に置き換え、これを電気的にカウントすることで、変位量を精度よく取得する。
レーザ干渉測長計は、本質的に高感度な測定装置であり、測長機器の評価装置に限らず、工作機械や測定機などに組込まれるなど、各種産業分野で幅広く用いられている。
レーザ干渉測長計で用いるレーザ光としては、通常、可視域の光が用いられている。高分解能化や内挿誤差低減のためには、より短い波長が有利になるが、可視域よりも短波長となる紫外域やX線領域の光を用いた場合、光源の安定性、光学部品の入手性、装置の大型化、安全性などの課題が生じ、実現は容易ではない。
また、特許文献1の光路長を増倍する方法は、見かけ上レーザ光の波長が短くなるため、高精度な測定が期待できる。しかし、光学系が複雑化する、光学素子内を光が何往復もすることで光量が低下する、迷光や漏れ光の影響が生じる、測定における最高移動速度が低下する、などの課題から、光路長の増倍によって得られる改善効果には限度があった。
このような現状に対して、波長可変レーザ光源を用いて、測定対象となる可動鏡の変位量に対応して測定用レーザ光の波長を変化させ、その波長変化量を基に可動鏡の変位量を測定する測長システムが研究されてきている(「Banh・星野・石下・小林・明田川:周波数可変レーザを用いたピコメートル干渉測長法の開発−第5 報:空気の屈折率変動計測とその補正,2008 年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集,F02,pp.441-442」,「Youich Bitou:High-accuracy displacement metrology and control using a dual Fabry-Perot cavity with an optical frequency comb generator, Precision Engineering 33, pp.187-193, 2009」)。
ファブリーペロー共振器は、固定側の反射面および可動側の反射面を有し、該一対の反射面間で前記測定用レーザ光源からの測定用レーザ光を共振させて、両反射面の間隔長で定まる共振周波数のレーザ光を出力する。
光検出器は、前記共振器からのレーザ光出力を検出する。
波長制御手段は、前記光検出器の値に基づき、前記共振器の可動側反射面の変位量に追従するように測定用レーザ光源の波長を変化させて、前記共振器の共振周波数に対する測定用レーザ光の周波数のロック状態を維持する。
周波数検出手段は、前記波長制御手段によって制御される測定用レーザ光の周波数の変化量を検出する。この周波数変化量に基づいて、可動側反射面の変位量が算出されるようになっている(例えば、特許文献2参照)。
上記の測長システムを用いれば、干渉信号の内挿補正を行う必要が無く、サブナノメートル精度の測長が期待できる。
測定可能な可動鏡の変位範囲を広げるため、広範囲に波長を変えられる波長可変レーザを使用することが考えられる。その場合、使用できるレーザ光が制限される、レーザ光源のビームの指向安定性の影響によって測定精度が低下する、光学部品の分散の影響などによって測定精度が低下する、光学部品などを特殊コーティングするなど光学部品に高い性能を付与するための処理が要求される、などと言った新たな課題や要求が生じてしまう。
また、上記の測長システムでは、波長可変レーザの周波数安定化、もしくは波長可変レーザの周波数の精密な測定が必要となる。そのため、測定範囲を広げるために広範囲に波長を変えられる波長可変レーザを使用すると、周波数安定化やレーザ周波数の高精度測定が難しくなってしまう。
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、サブナノメートルの精度での測定が可能で、かつ、広い範囲を測定できる変位測定装置を提供することにある。
前記共振器は、固定側の反射面および可動側の反射面を有し、該一対の反射面間で前記測定用レーザ光源からの測定用レーザ光を共振させて、両反射面の間隔長で定まる共振周波数のレーザ光を出力する。
前記光検出器は、前記共振器からのレーザ光出力を検出する。
前記波長制御手段は、前記光検出器の値に基づき、前記共振器の可動側反射面の変位量に追従するように測定用レーザ光源の波長を変化させて、該測定用レーザ光の周波数を前記共振器の共振周波数に合わせてロック状態にする。
前記周波数検出手段は、前記波長制御手段により制御された測定用レーザ光の周波数の変化量を検出する。この周波数検出手段の検出値に基づいて共振器の可動側反射面の変位量を取得する。
前記測定用レーザ光源は、それぞれ一定の波長可変幅を有する複数の測定用レーザ光源からなり、それぞれ前記共振器に向けて測定用レーザ光を発振する。
そして、前記波長制御手段は、前記間隔長に対して複数存在する共振周波数の中から1つの共振周波数にいずれかの測定用レーザ光源の周波数をロックする第1ロック手段と、
この第1ロック手段でロック中の測定用レーザ光源の波長可変幅内で、ロック状態が解除されている他の測定用レーザ光源の周波数を、第1ロック手段でロックされた共振周波数よりも大きいまたは小さい別の共振周波数にロックする第2ロック手段と、を含み、
1つの測定用レーザ光源の波長可変幅で測定可能な前記可動側反射面の変位範囲よりも広い変位量の測定可能範囲を有することを特徴とする。
前記第2ロック手段は、前記第1ロック手段での再ロック後、該第2ロック手段でのロックを解除するように構成されることが好ましい。
このような構成によれば、例えば2台の測定用レーザ光源を用いる場合、1番目の測定用レーザ光による測定が測定可能範囲の限界に達する前に、2番目の測定用レーザ光に切り替えることができ、さらに2番目の測定用レーザ光による測定が測定可能範囲の限界に達する前に、1番目の測定用レーザ光に切り替えるという動作が可能となる。このような動作を繰り返すことで、より広い変位量を測定することができる。
このような構成によれば、共振器長の変化量の測定で必要となる測定用レーザ光の周波数およびその変化量を高精度に求めることができる。
さらに、測定用レーザ光の導光路にはファラデーローテータを用いたサーキュレータが配置されており、前記サーキュレータは、共振器へ入出力する2つの測定用レーザ光の光路を結合および分離することが好ましい。
このような構成によれば、2つの測定用レーザ光の偏光状態を変えて共振器に入出力することができ、2つの測定用レーザ光の結合および分離を確実に行うことができる。
このような構成によれば、2つの測定用レーザ光を同時にロックさせている間、共振器の間隔長を常に測定することができ、共振器の間隔長を固定しておく必要がない。
また、共振器は、両反射鏡間の光路を真空に保つ真空部を有することが好ましい。
このような構成によれば、空気屈折率の影響が無くなり、空気屈折率の測定が不要であることや、レーザ周波数差による空気屈折率の差などが無視できるようになり、より高い精度で測定できる。
n :空気の屈折率
L :共振器の対向する反射面の間隔長
(共振器の幾何学的距離である。以下、共振器長とも呼ぶ。)
ΔL:共振器長の変化量
f :レーザ光の周波数
Δf:レーザ光の周波数の変化量
N :次数(整数以外も含む)
c :真空中の光速度
λ0:レーザ光源からのレーザ光の真空中での波長
r :共振器反射鏡の振幅反射係数
R :共振器反射鏡の反射率(R=r2)
図1に示すように、測長システムの基本構成は、測定用レーザ光源10、ファブリ−ペロー共振器12、アクチュエータ制御手段14、ビームスプリッタ16、光検出器18および波長制御手段20を有して構成される。
測定用レーザ光源10は、一定の波長可変幅を有し、ファブリ−ペロー共振器12へ向けて測定用レーザ光を発振する波長可変レーザ光源である。
ファブリ−ペロー共振器12は、筒状の共振器本体22と、この本体22の筒部の一端の開口部に固定された反射鏡24と、他端の開口部に支持されたアクチュエータ32と、このアクチュエータ32によって筒部の軸方向に移動自在に支持された反射鏡26と、を有する。本体22は、固定側の反射鏡24へ測定用レーザ光が入射できる姿勢で配置されている。入射した測定用レーザ光は、反射鏡24の固定側反射面(凹面)28と、反射鏡26の可動側反射面(平面)30との間を多数回往復する。すなわち、両反射面28、30の間隔長(共振器長L)で定まる共振周波数に測定用レーザ光の周波数を合わせれば、対向する一対の反射面28、30間で測定用レーザ光を共振させることができる。この共振器本体22は、両反射面28、30間の光路を真空に保つ真空部を有する。
ここで、高精度測定のベースとなるファブリ−ペロー共振器12の特性について説明する。ファブリ−ペロー共振器12にレーザ光を入射した場合にファブリ−ペロー共振器12から得られる反射率および透過率をRNおよびTNとすると、反射率RN、透過率TNは次式(1)、式(2)で与えられる。
ここでは、共振器12からの出力レーザ光が、固定側反射鏡28からレーザ光源10側に出射する場合、その出力レーザ光を反射光と呼ぶ。また、可動側反射鏡30から出力レーザ光が出射する場合、その出力レーザ光を透過光と呼ぶ。本実施形態では共振器12からの反射光を用いて測長を行う場合を示すが、共振器12からの透過光を用いても同様の測長が可能である。
式(5)を満たす場合のレーザ光の周波数fを共振周波数(対応する波長は共振波長)と呼ぶ。レーザ光の周波数fが次式(7)を満足する値に調整されると、共振器12でレーザ光が共振する。また、式(7)に示されるように共振器長Lが一定の場合、共振器長Lで定まる共振周波数は複数存在し、隣接する共振周波数の間隔は次式(8)で表され、これを自由スペクトル間隔fFSRと呼ぶ。
式(10)より、共振器長の変化分δLは、周波数の変化分δf、屈折率の変化分δnおよび次数の変化分δN(各変化分は、いずれも相対値である。)の影響を受ける。ここで、共振器長Lが変化した際に、次数の変化分δNを打ち消すようにレーザ光の周波数(波長)を制御すると、δNはゼロとなり、式(10)は次式(11)となる。次数の変化分δNを打ち消すように周波数制御するとは、例えば、レーザ光の周波数fを共振器長Lの変化に応じて変わる共振周波数に常に一致させるように、周波数fを制御することを言う。このレーザ光の周波数制御は、図1で示す測定用レーザ光の波長制御手段20により実行される。
式(11)を用いれば、共振器長L、レーザ光の周波数fおよびその変化分δf、空気屈折率nおよびその変化分δnを測定することによって、共振器長の変化分δLを高精度に求めることができる。
まず、共振器長Lを測定するには、例えば共振器長Lを固定した状態でレーザ光の周波数fを変化させ、その際の次数Nの変化をカウントする。この次数Nの変化を基にして式(9)から共振器長Lが得られる。
また、レーザ光の周波数fおよびその変化分δfは、例えば、測定用レーザ光と、絶対波長が値付けられた周波数安定化レーザ光源からの基準レーザ光とのビート周波数を測定することで求められる。
さらに、光路を真空化すると、式(11)は、次式(12)となり、空気屈折率nの影響がなくなり、より高精度な測定ができる。
本発明の測長システムでは、共振器12の可動側反射鏡26の移動範囲が、各種測長機器の測定範囲と同等となるように設定されるため、共振器長Lの変位量ΔLは非常に大きくなる。従って、大変位(ΔL)の測長時にはL/fの変化分を考慮し、次式(13)のように共振器長の変化分δLに対する積分を行なえば良い。
ここからは、測定用レーザ光の周波数制御について説明する。
図3は測定用レーザ光の周波数f(波長)を変化させた場合の、ファブリ−ペロー共振器12より得られる反射光強度の変化を示す。式(7)を満足する周波数fの前後で、反射光強度が鋭く変化する。反射光強度が最小となる周波数は、共振器12の共振周波数に一致する。図中のf1、f2、f3は共振器長Lに対して複数存在する共振周波数を示す。
一方、式(9)より分かるように、測定用レーザ光の周波数fを固定した状態で、共振器長Lを変化させた場合、共振器12の反射光強度は次数Nの変化と同時に変化する。
従って、次数Nの変化が生じないようにレーザ光の周波数fを制御するには、図3に示す反射光強度が常に最小となるようにすれば良い。すなわち、レーザ光の周波数fをいずれか一つの共振周波数に合うように周波数制御(ロック)すれば良い。
従って、図1の測長システムを用いた可動側反射面30の変位量ΔLの基本的な測定方法は、以下のようになる。
(1)まず、可動側反射鏡26を初期位置(任意の位置で構わない。)に合わせて、測定用レーザ光源10に任意の波長のレーザ光を発振させる。また、光検出器18にファブリーペロー共振器12からの出力レーザ光を検出させる。
(2)波長制御手段20は、光検出器18の検出値(反射光強度)に基づいて、共振器12で測定用レーザ光が共振するように、測定用レーザ光源10の波長(周波数f)を調整する。
(3)アクチュエータ制御手段14がアクチュエータ32を駆動して、可動側反射鏡26を変位させる。すると、共振器長Lが変化し共振周波数も変わる。波長制御手段20は、共振器12の共振状態を維持するように、測定用レーザ光源10の波長λを共振器長Lの変化量ΔLに追従させる。すなわち、波長制御手段20は、光検出器18の検出値に基づいて、測定用レーザ光が共振器長Lで定まる共振周波数で常に共振するように、波長可変レーザ光10の波長やアクチュエータ32の変位量を制御する。
(5)また、測定用レーザ光の周波数fおよびその変化分δfを、例えば、測定用レーザ光と基準レーザ光とのビート周波数を測定することによって取得する。
(6)以上の測定で得られた共振器長L、周波数fおよびその変化分δfの測定値に基づき、式(13)で示す積分を演算して、可動側反射面30の変位量ΔLを算出する。
このようにして、ファブリーペロー共振器12の可動側反射鏡26がアクチュエータ32によって変位した量(ΔL)を、共振器12を利用して高精度に測定することができる。
以上の測長システムを用いれば、変位センサなどの測長機器を高精度に評価、校正することができる。
すなわち、図1のように、共振器12の可動側反射鏡26の対面(可動側反射面30の反対側の面)に、変位センサなどの評価対象機器34を配置する。
前述の方法で、可動側反射鏡26の変位量ΔLを測長システムにより測定するとともに、変位センサでも可動側反射鏡26の変位量ΔLを測定する。変位センサが非接触式の測長機器である場合には、反射鏡26に両面反射鏡などを用いれば良い。
測長システムと評価対象の機器とによって同時にファブリーペロー共振器の可動側反射鏡26の変位量ΔLを測定し、その測定結果を比較することで、評価対象機器34の評価や校正ができる。
前述の基本構成を備えた従来の測長システムは、単一の測定用レーザ光を用いたものであった。そのため、測定用レーザ光源10の波長可変量を大きくすることで、測定範囲を広くしていた。その場合、大きな波長変化(周波数変化)を伴うため、レーザ光の周波数fの測定が困難になったり、測定精度が低下したりするなどの課題があった。
2つの測定用レーザ光を用いることで、常にいずれかのレーザ光の周波数fを共振器12の共振周波数にロックさせることが可能となり、広範囲の測定を可能にした。これによって周波数測定における課題や、分散の影響の課題を解決できる。
2つの測定用レーザ光源10、11は、それぞれ一定の波長可変幅を有する。
周波数検出手段50は、測定用レーザ光と基準レーザ光とのビート周波数を検出して、それぞれの測定用レーザ光の周波数変化量Δfを検出するためのものであり、周波数安定化レーザ光を発振する基準レーザ光源52と、ビート周波数測定用の導光路と、光検出器54、55を有する。光検出器(PD)54は測定用レーザ光源10からの測定用レーザ光と基準レーザ光との干渉光強度を検出し、両レーザ光のビート周波数を出力する。光検出器(PD)55は測定用レーザ光源11からの測定用レーザ光と基準レーザ光との干渉光強度を検出し、両レーザ光のビート周波数を出力する。
また、図6に示すように、2つの光検出器18、19からの信号は、波長制御手段20に設けられた第1ロック手段62、第2ロック手段64に送られる。第1ロック手段62は、測定用レーザ光源10の波長を制御し、第2ロック手段64は、測定用レーザ光源11の波長を制御する。
以下、測定方法を説明する。
測定用レーザ光源10による測長方法
測定用レーザ光源10から出射されたレーザ光を図5中、実線で示す。このレーザ光は、測定用レーザ光源10→ISO→λ/2→PBS42→FR44→λ/2→PBS46→ファブリ−ペロー共振器12の順番でファブリ−ペロー共振器12に入射する。
ファブリ−ペロー共振器12内で、レーザ光は、反射鏡24、26間で複数回往復し、その一部が左端の反射鏡24から出射される。このレーザ光(同図中、実線で示す。)は、ファブリ−ペロー共振器12→PBS46→λ/2→FR44→PBS42→PD18の順番で光検出器(PD)18に入射する。
なお、ISOは光アイソレータであり、光源からの光(順方向の光)を透過させ、逆方向の光を透過させない光デバイスである。また、PBSは偏光ビームスプリッタであり、内部の反射面で入射光をP偏光とS偏光に分離するものである。FRはファラデーローテータであり、レーザ光の偏光方向を45°回転させるものである。
PD18より得られる信号は、ファブリ−ペロー共振器12の反射率に依存した信号である。信号は波長制御手段20の第1ロック手段62に送られ、測定用レーザ光源10の波長制御に用いられる。
測定用レーザ光源11から出射されたレーザ光を図5中、破線で示す。このレーザ光は、は、測定用レーザ光源11→ISO→λ/2→PBS43→FR45→λ/2→PBS46→ファブリ−ペロー共振器12の順番でファブリ−ペロー共振器12に入射する。
ファブリ−ペロー共振器12内で、レーザ光は、反射鏡24、26間で複数回往復し、その一部が左端の反射鏡24から出射される。このレーザ光(同図中、破線で示す。)は、ファブリ−ペロー共振器12→PBS46→λ/2→FR45→PBS43→PD19の順番で光検出器(PD)19に入射する。
このPD19より得られる信号は、ファブリ−ペロー共振器の反射率に依存した信号である。信号は波長制御手段20の第2ロック手段64に送られ、測定用レーザ光源11の波長制御に用いられる。
測定用レーザ光源10より出射されたレーザ光(図5中、実線で示す。)は、測定用レーザ光源10→ISO→λ/2→PBS42→反射鏡48→PBS56→P板→PD54の順番で光検出器(PD)54に入射する。
基準レーザ光源52より出射したレーザ光を図5中、点線で示す。このレーザ光は、基準レーザ光源52→ISO→λ/2→BS→反射鏡58→λ/2→PBS56→P板→PD54の順番で光検出器(PD)54に入射する。
このPD54より得られる信号は、この2つのレーザ光の周波数のビート信号であり、周波数カウンタなどで信号を測定することで両レーザ光間の周波数差が判明する。従って、測定用レーザ光源10のレーザ光の周波数fは、基準レーザ光の周波数と、検出した周波数差とから判明する。
測定用レーザ光源11より出射されたレーザ光(図5中、破線で示す。)は、測定用レーザ光源11→ISO→λ/2→PBS43→PBS60→P板→PD55の順番で光検出器(PD)55に入射する。
基準レーザ光源52より出射したレーザ光(図5中、点線で示す。)は、基準レーザ光源52→ISO→λ/2→BS→PBS60→P板→PD55の順番で光検出器(PD)55に入射する。
このPD55より得られる信号は、この2つのレーザ光の周波数のビート信号であり、周波数カウンタなどで信号を測定することで両レーザ光間の周波数差が判明する。従って、測定用レーザ光源11のレーザ光の周波数fは、基準レーザ光の周波数と、検出した周波数差とから判明する。
図示を略するが、測定用レーザ光源10、11のレーザ光には、変調器や共振器内PZTによって、位相変調を与える。ファブリ−ペロー共振器12より得られる反射光をPD18、19によって測定する際に、この変調信号と同期検波をすることで、反射光の微分信号を得る。第1ロック手段62、第2ロック手段64は、PD18、19からの微分信号のゼロクロス点に、測定用レーザ光源10、11の周波数fをロックするようにする。測長の開始時点では、第1ロック手段62が、共振器長Lに対して複数存在する共振周波数の中から1つの共振周波数に測定用レーザ光源10の周波数fをロックする。
必要に応じてファブリ−ペロー共振器12内を真空光路とすることで、空気屈折率nの変動の影響を低減することができる。
2つの測定用レーザ光の導光路40には、ファラデーローテータ(FR)44、45を用いて構成された光サーキュレータが配置されている。測定用レーザ光源10および測定用レーザ光源11からの各測定用レーザ光を偏光させることによって、2つの測定用レーザ光を結合および分離する構成としている。図7は、測定用レーザ光源11の測定用レーザ光の光学系の詳細を示す。なお、測定用レーザ光源10の測定用レーザ光の光学系についても同様である。この構成では、ファブリ−ペロー共振器12の手前にあるPBS46に十分な消光比のものを用いることで、測定用レーザ光源10、11からの各測定用レーザ光のクロストークを著しく低減することができ、確実に2つの測定用レーザ光の結合と分離が行われて、測定性能を高めることができる。
図5、図6に示す測長システム100において特徴的なことは、測長のタイムスケジュールの中に、2つの測定用レーザ光源10、11からの測定用レーザ光を2つ同時に測長に用いるゾーン1と、一方のみを測長に用いるゾーン2とを設け、常に少なくともいずれかの測定用レーザ光を共振器12の共振周波数にロックさせることにある。測長の過程で、一方の測定用レーザ光の波長可変幅が不足した場合には、ロックを解除してレーザ光の波長の引き戻しを行い、共振周波数への再ロック動作を行う。一方の測定用レーザ光による測長が中断している間、もう一方の測定用レーザ光のみによる測長を行っている。2台の測定用レーザ光源10、11の測定領域同士にオーバーラップ(ゾーン1に相当する。)を設けることで、2つのレーザ光による測定結果を誤差無く接合し、共振器長Lの連続的な変化に対して測長を行ない続けることができる。これによって、共振器長Lの可変範囲によって定まる限界の長さまで、測定範囲を容易に拡大することができる。
2つの測定用レーザ光を用いた具体的な測定方法を図8および図9に示す。
図8に示すように、第1ロック手段62、第2ロック手段64が2つの測定用レーザ光1、2について、各レーザ光の波長を調整して、共振器12の隣り合う共振周波数(図中のf1、f2)にそれぞれ波長をロックする。また、ファブリ−ペロー共振器長Lの変化に波長を追従させて、各レーザ光のロック状態を維持する。この2つのレーザ光によって、ファブリ−ペロー共振器長Lの変化を測長する。測長については式(11)〜(13)などに基づいて行われる。
ファブリ−ペロー共振器長Lが増加した際に、一方のレーザ光1の周波数fがその周波数可変範囲(波長可変幅)の限界付近に到達した場合、まず第1ロック手段62がそのレーザ光1のロックを解除する。周波数可変範囲限界は、測定用レーザ光自体の周波数可変範囲、ビート周波数の周波数測定範囲などによって決まる。
次に、第1ロック手段62は、解除したレーザ光1の周波数fを、共振器12の異なる共振周波数に再ロックする。この間、その測定用レーザ光1による測長は中断するため、もう一方の測定用レーザ光2のみによる測長を行なう。
また、第2ロック手段64は、第1ロック手段62での再ロック後、該第2ロック手段64でのロックを解除する。さらに、第2ロック手段64は、第1ロック手段62でロックされた共振周波数f3よりも大きい(または小さい)方の別の共振周波数に再ロックするという動作を繰り返すことで、より広い変位量を測定することができる。
図9は、共振器長Lが増加する際に、2つの測定用レーザ光1、2によって共振器長Lを測定する方法について示す。上述のように、2つのレーザ光1、2によって同時に測長を行なっているゾーン1と、一方のレーザ光のみで測長を行なっているゾーン2とがある。共振器長Lの連続的な測定は、ロック中のいずれか一方のレーザ光による測定値を時間的に接続させることで行う。
2つのレーザ光1、2の周波数によって同時に測定しているゾーン1を設けていることで、連続的な測定が実施できる。この接続は、コンピュータ上の演算によって、容易に実行できる。
共振器長Lの変位量を測定する際に、共振器長Lの絶対長を求める必要がある。本実施形態では、次の方法により、その絶対長を求める。
共振器12の絶対長を測定するには、共振器長Lを固定し、その状態でレーザ光の周波数fを変化させる方法が従来から用いられている。この場合、式(5)に基づき、位相δが変化するため、ファブリ−ペロー共振器12から得られる反射光は、図3で示したように光強度が変化する。このため、周波数変化量Δfを与えた場合に、この光強度の次数変化量ΔNを求めることで、式(9)は、次式(14)と書け、Δf、ΔN、nを測定することで、共振器の絶対長Lを求めることができる。
2つの測定用レーザ光をそれぞれ異なる共振周波数へ同時にロックさせ、その際の2つのレーザ光の周波数差を求める周波数差検出手段を用いることで、共振器の絶対長を求めることができる。この周波数差検出手段を用いれば、2つのレーザ光を同時にロックさせている間、共振器の絶対長を常に測定することができ、方法1のように共振器を固定しておく必要は必ずしも無い。
2つの測定用レーザ光の周波数差は、個々の測定用レーザ光を基準レーザ光とビート測定しているため(図5)、得られる2つのビート周波数から求めることができる。測定用レーザ光1および測定用レーザ光2について、それぞれ基準レーザ光とのビート周波数f1beat、f2beatを測定する。この際に、測定用レーザ光1と測定用レーザ光2との周波数差fdは、一例として次式(15)によって求めることができる(図10参照)。
測定用レーザ光1と測定用レーザ光2と、基準レーザ光との周波数の大小は、測定用レーザ光1や測定用レーザ光2の周波数を変化させた場合のビート周波数の変化方向から判断できる。この測定では、基準レーザ光の周波数は相殺するため、基準レーザ光の周波数安定度の影響は問題になりにくい。
従来のサブナノメートル精度の測定法と比較して、測定精度の改善と測定範囲の拡大の両立ができる。
(1)測定精度の改善
測定用レーザ光の波長可変幅が小さくても測定可能となるので、レーザ光源のビームの指向安定性の影響が改善される、光学部品の分散の影響が改善される、などの点から測定精度が改善できる。必要に応じて測定用光路を真空化することで、空気屈折率の影響を受けず、高精度な測定が可能となる。さらに、測長を行なう上では、共振器の絶対長を求める必要があるが、これは2つの測定用レーザ光によって高精度かつリアルタイムで測定できる。
測定用レーザ光の波長可変幅や、測定用レーザ光に対する周波数測定範囲などによって測定範囲が制限されにくくなり、ファブリ−ペロー共振器の共振器長可変範囲限界まで測定範囲を拡大することができる。測定用レーザ光の波長可変量を低減できるため、測定用レーザ光は必ずしも大きな波長可変量を持つ必要は無く、レーザの選定やシステム設計の自由度が増す。また、測定用レーザ光の波長可変量を低減できることで、測定用レーザ光と基準レーザ光とのビート計測における周波数差が少なくなる。このため、測定用レーザ光の周波数測定のための光学系や電気系の設計がより簡単になる。この他、光学部品類のコーティングはより簡単になる。これらのことは、装置の低コスト化にも有利である。
測定用レーザ光の結合および分離について、上述の例では、ファラデーローテータ(FR)44、45を用いた構成を示したが、図12のように、共振器と共振器の手前のPBSとの間にλ/4板(1/4波長板)47を配置する構成によっても実現できる。この構成では、λ/4板47の不完全性による影響、測定用レーザ光源10、11への戻り光などが生じる点では不利になる可能性があるが、ファラデーローテータを使用しない点でより安価となる。
まず、図中のゾーン1で、レーザ1を共振周波数f1にロックして測長を進める。ゾーン2で、レーザ1と同一の共振周波数f1にレーザ2をロックして、2台の光源で測長を行う。そして、ゾーン3では、レーザ1をアンロックにしてレーザ2だけで測長を進める。ここで、レーザ1の周波数をその周波数可変範囲に存在する別の共振周波数f4にロックする。ゾーン4では、2台の光源で測長を進める。このようなゾーン1からゾーン4の動作を繰り返すことによって、1台の光源での測長範囲よりも、2台の光源での測長範囲を広げることができる。
28 固定側の反射面
30 可動側の反射面
12 共振器
18、19 光検出器
20 波長制御手段
44、45 ファラデーローテータ(FR)
50 周波数検出手段
54、55 光検出器(ビート周波数検出器)
62 第1ロック手段
64 第2ロック手段
100 測長システム(変位測定装置)
Claims (6)
- 一定の波長可変幅を有する測定用レーザ光源と、
固定側の反射面および可動側の反射面を有し、該一対の反射面間で前記測定用レーザ光源からの測定用レーザ光を共振させて、両反射面の間隔長で定まる共振周波数のレーザ光を出力する共振器と、
前記共振器からのレーザ光出力を検出する光検出器と、
前記光検出器の値に基づき、前記共振器の可動側反射面の変位量に追従するように測定用レーザ光源の波長を変化させて、該測定用レーザ光の周波数を前記共振器の共振周波数に合わせてロック状態にする波長制御手段と、
前記波長制御手段により制御された測定用レーザ光の周波数の変化量を検出する周波数検出手段と、
を備え、前記周波数検出手段の検出値に基づいて共振器の可動側反射面の変位量を取得する変位測定装置であって、
前記測定用レーザ光源は、それぞれ一定の波長可変幅を有する複数の測定用レーザ光源からなり、それぞれ前記共振器に向けて測定用レーザ光を発振し、
前記波長制御手段は、
前記間隔長に対して複数存在する共振周波数の中から1つの共振周波数にいずれかの測定用レーザ光源の周波数をロックする第1ロック手段と、
この第1ロック手段でロック中の測定用レーザ光源の波長可変幅内で、ロック状態が解除されている他の測定用レーザ光源の周波数を、第1ロック手段でロックされた共振周波数よりも大きいまたは小さい別の共振周波数にロックする第2ロック手段と、を含み、
1つの測定用レーザ光源の波長可変幅で測定可能な前記可動側反射面の変位範囲よりも広い変位量の測定可能範囲を有することを特徴とする変位測定装置。 - 請求項1記載の変位測定装置において、
前記第1ロック手段は、前記第2ロック手段でのロック後に、該第1ロック手段でのロックを解除するとともに、第2ロック手段でロックされた共振周波数よりも大きいまたは小さい別の共振周波数に再ロックし、
前記第2ロック手段は、前記第1ロック手段での再ロック後、該第2ロック手段でのロックを解除するように構成されることを特徴とする変位測定装置。 - 請求項1または2記載の変位測定装置において、
前記周波数検出手段は、周波数が安定化されたレーザ光を発振する基準レーザ光源と、該基準用レーザ光と前記測定用レーザ光とのビート周波数を検出するビート周波数検出器と、を有し、前記基準レーザ光の波長とのビート周波数の変化量から前記測定用レーザ光の周波数の変化量を取得することを特徴とする変位測定装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載の変位測定装置において、測定用レーザ光の導光路にはファラデーローテータを用いたサーキュレータが配置されており、前記サーキュレータは、共振器へ入出力する2つの測定用レーザ光の光路を結合および分離することを特徴とする変位測定装置。
- 請求項1から4のいずれかに記載の変位測定装置において、
2つの測定用レーザ光の周波数差を検出して、該周波数差から前記共振器の間隔長を取得する周波数差検出手段を備えることを特徴とする変位測定装置。 - 請求項1から5のいずれかに記載の変位測定装置において、前記共振器は、両反射鏡間の光路を真空に保つ真空部を有することを特徴とする変位測定装置。
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